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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Report01 『Confused world』



・・・・・・管理局システム。それは、長く悲惨な歴史が導き出した一つの答え。

世界を一つにし、安定と平和を求めた故の先人達の答え。それが新暦と呼ばれる時代の世界を治めていた。

ただ、絶対じゃない。約70年という時間の中で、システムや組織自体も様変わりしていた。





一般的には、良いように変わっているとされる。でも、それだけなのは間違い。

実際には管理局の既存の在り方やシステムだけでは、対応し切れない事件も起きている。

例えばJS事件などもそれになるだろう。六課という人身御供がなければ、管理局は破壊されていた。





巨大であり、絶対的に見られがちな組織だからこそ手の届かない場所がある。助けられない人達が居る。

そんな人達に手を伸ばすのは誰? なお、自分で自分を助けろというのは無しだ。

それが出来ない状況なのは、もう言うまでもない前提。そんな時その人達を助けるのは、やっぱり人。





ただし、管理局ではない。管理局は巨大だけど、管理局だけが警察機構なわけじゃないから。

今回お話するのは、ある事件のお話。今回の主役は、管理局という組織ではない。

管理局の外・・・・・・管理局とはまた違うルールの中で生きている人達のお話。





そして、ひとつの世界が激動と変革の時を迎えて、新しい領域に踏み出そうとしている時の話である。





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・新暦74年の夏。電王の映画の余韻も冷めやらぬまま、僕はある世界に来ていた。

そこは第36管理世界。というか、位置的には地球のお隣さんの世界で、名前は『ヴェートル』。

お隣さんゆえか、地球と比較的気候や地形、文化が似ている世界である。





というか、漢字使ってるし漢字。とにかく、僕達はこの世界に来ていた。そう、お馴染みな三人です。










「・・・・・・なんで、僕ここに居るんだろ」

≪謎ですね≫

「謎です」



とにかく、転送ポートから降りて、この世界の地上本部から出て、路上を歩きつつ思い出す。

なぜこんな事になったのかと、よーく考えてみる。確か、ヒロさんから頼まれたんだ。



「というか恭文さん、どうしてリイン達は制服やアンダースーツみたいな局関連の服がアウトなのですか?
リインはスーツっぽいワンピース探すのが大変だったのです。というか、恭文さんもまたGジャンGパンですし」

「その友達からのアドバイスだよ。なんでもここでそういうのを着ていると、普通に白い目で見られるらしい」

≪ここは色々入り組んでいるんですよ。まぁ、察してください≫





知り合いがちょっと苦労してるから、ピンチヒッターで仕事を手伝えと。

もっと言うと、修行期間の纏めに入ると。で、シャマルさんから頼まれたんだ。

リインがはやてと『今、エロはありかどうか』について喧嘩をしてると。



そんなアホな理由ために家出したから、しばらく預かってて欲しいと。

そんなこんなでこの燦々と照りつける太陽の下、僕達は歩いてるんだよ。

リインを置いてくわけにはいかないから、そのまま連れて来たんだよ。



・・・・・・あー、風の中に潮の匂いがする。マジで海が近いんだね。



浮遊した人工島の上だって聞いてたけど、ホントなんだ。





「それで恭文さん、どこのお手伝いをするんですか?」





なお、リインがガチでこれからの仕事の事について知らないのには理由がある。

出発当日・・・・・・今朝にさっき話したような自体になったから。

どうやらはやてや師匠達から、詳しいことは全く聞いてなかったらしいのよ。



僕とアルトがこの世界に行く事を決めた理由とか、そういうのも全くね。





「えっと・・・・・・局のスポンサーが作った、半民間の警備組織。
聖王教会みたいな外部組織って言えば分かる?」

「あ、はいです」

≪名前はGPO。ガード・ポリス・・・・・・最後、なんでしたっけ≫

「ごめん、忘れた。オブサーバーとかオプティカルとか、そんな感じじゃなかった?」





この人工島・・・・・・EMP(イースタン・メトロ・ポリス)って言うの。

この世界では、過去の災害のせいで地表の大半が水没。

そのために、こういう巨大な浮遊人工島があっちこっちにあるとか。



で、その大きさもハンパないのよ。普通に何千万人ってレベルで住んでるらしい。

そしてここでは、次元世界でも有数なレベルで、妙な犯罪者やらが居たりする。

まぁここまではいいんだけど、問題はこの世界の今の状況。



実は管理世界の中でもこの世界は、現在進行形で結構特殊な位置にある。

結論から言えば、この世界は管理世界になって4年も経っていない。

そして管理世界に登録された途端に、次元世界の技術で犯罪する輩がドンと増えた。



こういう言い方は悪いけど、管理世界認定直後はよくあるパターンらしい。

大体科学力というか技術力に差があって、魔法とかも使われてそのせいで・・・・・・だね。

だから中央本部を建てて局は事件に対応する。だけど、ヴェートルでは問題がある。



管理局はここEMP・・・・・・もっと言えば、未だにこの世界の方々に馴染まれていない。





≪EMPは管理局が運営するヴェートル中央本部と、現地政府の警察機構。
あと私達がこれから仕事をする警備組織の三つによっての治安維持が行われています≫

「三つ? え、それじゃあ色々と大変なんじゃ」

「管理局と現地政府の歩み寄りって言うの? EMPだけじゃなくて、ヴェートルの主要都市はそういう形にしてるらしい。
あくまでもテストケースの一つとして各組織が協力し合う形での治安維持を行って、より効率のいい形を目指してるんだって」

「へぇ・・・・・・すごいですね。というかというか、それはそれで面白そうなのです」





・・・・・・そんな局員連中とは別に、ある方達があらゆる分野から人員を集めた半民間の警備組織を設立。

そうして、EMPで起きる凶悪事件に対応・解決していっている。なんでも美人ばかりそろえてるとか聞いてる。

もっと言えば、局の系列組織になるので、それで局の印象をよくするためのスポークスマン広告塔としての側面が主・・・・・・だったらしい。



『だった』と言うのは簡単だ。その組織は普通に色々な難事件を解決し、手柄を立てて、もう定着してるとか。

というより、局よりもそっちの方を住民は頼りきってるとか。ようするに、局は負けてるのである。ざまぁみろ。

柔軟な思考を持ち、それに基づいた効果的な行動が出来る優秀なメンバーのおかげと、ヒロさんはおっしゃっていた。



で、そこの長官とヒロさんがお友達なのだ。そこの長官が打診をしたら、僕を送るという話になった。





「・・・・・・あれ、おかしいな。なんか道理としておかしい」



修行の成果を試すとか、そういうのを含めても考えてもおかしい。どうなってんの、これ。



≪そうですね、おかしいですよね≫

「うん、おかしいよね。なんでリインがいるのかとかさ」

≪そこではありません。アレを見てください≫

「・・・・・・え?」



そう言われて、とりあえず周辺を見渡す。そう、確かにおかしいものがあった。



「幼稚園バスが襲撃されてますね」



そう、襲撃されていた。それはもう分かりやすいくらいに。



「されてるね。天井に張り付いている、ターミネーター的なのに襲われてるね」



天井に向かって拳を叩き付けようとしている。いや、叩き付けた。そして、天井に穴が開いた。



≪世界は平和ですね≫

「そうですね」



なので、そのまま車道を走っていて、襲われた幼稚園バスを見過ごして、目的地へ。

・・・・・・行けるかボケェェェェェェェェェェェェェッ! いくらなんでもおかし過ぎるでしょうがっ!!



「待て待て待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」





僕は声を上げながら、リインと一緒にセットアップ。そのままアルトを抜いて、ターミネーターもどきに飛び掛る。

着地地点は幼稚園バスの天井。それを突き破ったもどきに刃を打ち込んだ。

短い金髪に黒いサングラス。そして黒いレザースーツを着込んだ暑苦しいおっちゃんは、左腕で僕の斬撃を受け止めた。



というか、そのまま腹を全力で蹴り飛ばす。おっちゃんは体勢を崩し、後ろによろめく。



僕はそのまま、僕は天井に着地する。それから、吹きすさぶ強い風の中、ゆっくりと立ち上がる。





「・・・・・・さぁ」



右手を胸の前に持って行き、左の体の側面をおっちゃんに向ける。

向けながら、左手で奴を指差す。それから、奴を見る。



「お前の罪を数えろ」



・・・・・・決まった。すっげー決まった。あぁ、僕かっこいい。



「・・・・・・またそれですか」

「それなのよ」

「何者だ。そして何の話をしてる」

「それは」



突撃し、数撃打ち込む。おっちゃんは腕で全てを受け止める。



「秘密だ」





てか、コイツの腕・・・・・・おかしい。手ごたえが金属だ。何か仕込んで・・・・・・違う、腕が機械なんだ。

とにかく、一旦刃を引き、至近距離で一気にしゃがむ。こんなところで派手に暴れられない。まずはステージを変える。

しゃがんで、胴体を狙って徹を込みで右足で蹴りをかまして、その場からもどきなおっちゃんを叩き落す。



おっちゃんは地面に転がり、すぐに立ち上がる。そのまま、こちらに走り寄ってくる。





「このまま逃げてっ!!」



天井に空いた穴から声をかけてから、僕もバスから飛び降りて車道に降りる。

それから僕は、おっちゃんの前に立ちはだかった。おっちゃんはそのまま両手をかざし、構えた。



「管理局の人間か」

「違うよ」



警戒を緩めずに、一気に踏み込み僕はアルトを叩き込む。



あんなもん管理局のためになんざ、1ミリたりとも動きたくねぇし」



両手でそれを受け止め、そのまま圧し合う。



「ならば私の課題の邪魔をするな。すれば・・・・・・怪我をするぞ」

「知らないね。つーか、怪我するのはお前だ」



刃を引くと、男が拳を打ち込んでくる。突撃しながらの攻撃を、後ろに飛びのいて避ける。

1発だけではなく、連続でそれが来る。おっちゃんは地面を砕きながら、拳を僕に叩き付ける。まぁ、全部避けてるけど。



「そうか、では・・・・・・障害として」



両腕を前にかざす。中ほどから折れて、出てきたのは・・・・・・銃口。



「お前を、排除する」





瞬間的に弾丸達が僕を襲う。それを左に跳んで回避。つーか、やっぱりサイボーグ関係かい。



・・・・・・そして僕を影が覆う。同じタイミングで上から、殺気を感じる。でもこれって・・・・・・上?



横を見ると、さっきまで乱射されていた弾丸達が消えていた。そう、つまりこの影は。





「トルネード」



拳を炎が包む。それは隕石のように地面に衝突。一瞬で舗装された路面を砕き、クレーターにする。



「パンチッ!!」





そこから爆炎が立ち上る。立ち上った炎は周辺の空気を焦がす。

温度を熱という暴力的な表現の似合うそれに変えて、辺りを蹂躙する。

おっちゃんが、ゆっくりと立ち上がる。立ち上がって・・・・・・辺りを見回す。



そりゃそうだ。僕の姿が消えているんだから。





「鉄輝・・・・・・!!」



・・・・・・教えてあげるよ。僕は、お前の後ろだ。刃は鞘から抜き放たれる。放つのは、横薙ぎの一閃。

それが熱を、炎を、空気を斬り裂く。空間を飲み込んだ炎が斬り裂かれ、その隙間から僕が存在を表した。



「一閃っ!!」





おっちゃんは斬撃を喰らい吹き飛ばされる。・・・・・・いや、踏み留まった。

だけど、地面にあるものが落ちた。それは、おっちゃんがガードに使った右腕。

そう、僕が叩き斬った。そして、その斬り口から火花が散る。



構成された機械部品がそこから見える。すぐに、僕は後ろに大きく飛びのいた。





「・・・・・・ふんっ!!」





おっちゃんはそれにかまわずに左拳を引く。次の瞬間、それが叩き込まれた。

拳は僕を叩き潰すように上から打ち下ろされた。拳は地面を砕き、クレーターをもう一つ作り上げる。

轟音が辺りに響き、それに続くように爆発が起きた。



生まれた爆炎から即座に離れると、おっちゃんが飛び出してきた。



・・・・・・まだ、やるつもりらしい。ゆっくりと片腕を構えて、僕を見据える。





「・・・・・・データ検索、照合完了」



サングラスの奥、あいつの左目の部分で赤い光が点滅する。

その光は・・・・・・まるで何かのビーコンのようだ。



「青い魔力光、刀型のデバイス。そうか、貴様・・・・・・古き鉄か」

「へぇ、よく知ってるじゃないのさ。だったら、僕を相手にした奴がどういう目に遭うかも、知ってるよね?」

「問題はない、お前のデータはもう入手した」



データどうこうでどうにかなると思ってる時点でアウトでしょ。まぁ、ここはいい。

・・・・・・一気に叩き潰すんだから。とにかく、僕は前へと踏み込んだ。



「そこまでよっ!!」





声がした。僕が刃を打ち込もうとしたその瞬間、おっちゃんを数発の弾丸が襲う。

おっちゃんはそれを身体でガードする。弾丸は金属の皮膚を叩き、黒のジャケットを斬り裂く。

けど、致命傷にはならない。不釣合いな金属同士がぶつかりあうような甲高い音が聞こえる。



僕もおっちゃんも、その声の方を見る。そこに居たのは、金髪ロングなポニーテールが綺麗な女神。



・・・・・・ごめん、つい見惚れちゃった。だって、普通に綺麗だったから。





「・・・・・・また性懲りも無く出てきたわね、グリアノス」

「ランサーか」





身長は170程度で、青と白で構築された制服のようにも見えるアーマーを上半身に装着。

黒いグローブを着けた手で大型のリボルバーを構えてる。

金色の髪をポニーテールにして、青い瞳から厳しい視線をおっちゃんに向けてる。



てか、ランサー? なんか唐突に新用語が飛び出したけど・・・・・・なんでしょ。





「さぁ、大人しく縛に付きなさいっ!! ・・・・・・さ、あなたもこっちへ。
というか、だめよ。魔導師みたいだけど、子どもがこんなことしちゃ」



・・・・・・無視。とにかく、あのおっちゃんに突っ込む。



「ちょっと、君っ!?」



袈裟に刃を打ち込むと、おっちゃんが消えた。僕の斬撃は、空気を斬る音を立てただけだった。

・・・・・・逃げられた。てか、転送魔法? 魔力反応もあったし・・・・・・でも、サイボーグだったよね。



≪なんですか、あのターミネーターは。あんなの、ミッドとかでは簡単に見かけませんよ?≫

「いわゆる魔法も使える次世代のサイボーグってわけか。・・・・・・あるっちゃあ、ありだよね」

≪えぇ。というより、ここはそういう世界でしょ?≫





・・・・・・この世界では、魔法が絶対というわけではない。

管理局としてはそれを推し進めたいのだけど、世界の事情や状況がそれを許さないのだ。

なので、普通にあちらこちらでミッドやらよりも多く、質量兵器が使われてる。



この世界では魔法と言う技術は、管理局の存在は、絶対ではない。いや、素晴らしいね。





「あー、そうだったね」



とりあえずアルトを鞘に納める。納めて、辺りを見る。・・・・・・こりゃすごいことになってるな。

もうマジでターミネーター暴れたみたいだしさ。てか、どこのアクション映画?



「恭文さん、大丈夫ですかっ!?」



バスに付いていてもらったリインが、こちらに来る。



「問題ない。ちょっとジャケットや髪が焼けただけだから」

≪しかし、中々に強敵でしたね≫

「・・・・・・仕留められなかったの、失敗だったかも」



とにかくセットアップを解除。すると、あともう一人も僕に近づいてくる。



「ちょっと君っ! どうして私の言うことを聞かずにまた飛び込んだのっ!? あれ、すごく凶悪な犯罪者なんだからっ!!」

「問題ない。あれより怖いのとここしばらくやりあってるし」



・・・・・・姉弟子と兄弟子ヒロさんとサリさんは、あんなターミネーターもどきの数倍怖いのだ。

あははは、この1年鍛えられて正解だったなぁ。その前だったらもうちょい手こずってたかも。



「というわけで、どなたかは知らないけど後始末、よろしくお願いします。
僕達はこれからちょっと行かなきゃいけないところがあるので」

「いや、あの・・・・・・もしもしっ!?」

「あぁ、お礼なんていいですよ。善良な一市民として当然のことをしたまでですから。というわけで、さーようならー♪」



そのまま、全力疾走で・・・・・・逃げました。いや、だっていきなり局とかのお世話になんてなりたくないし。



「待ちなさいっ! 待たないと撃つわよっ!?」

「いきなり攻撃行動っておかしくないっ!?」



振り向かなくてもわかる。銃口マジで向けてる。きゃー、なんでバイオレンスなお姉さんなのさー。

きっと行き遅れだね。間違いなく行き遅れだね。いや、あれは行き遅れるって。間違いなくさ。



「・・・・・・ホントに撃つわよ? 今、不埒な事考えてたでしょ」

「だからやめんかいっ! 普通に考えて僕撃つってありえないでしょっ!? 僕、善良な協力者じゃないのさっ!!」

「善良な協力者は、この状況でとっとと逃げようなんてしないわよっ!!」

「だって、処理やら事情聴取やらに付き合うのめんどいじゃんっ!!」



そう、僕が逃げたかった理由はここ。普通に到着して、中央本部から出て10分立ってないのよ?

それなのに、いきなりこんな修羅場なんてありえないし。



「・・・・・・この世界は、この世界に住む人達が何とかするべきなんだ。僕がなんとかする道理はない」

「そんなこと自信満々に言い切らないでよっ! もっともらしい事言えばなんとかなるとか思ってるでしょっ!!」

「思ってるけどなにかっ!? てゆうか、逐一ツッコむなっ!!」



くそ、普通にツッコミ気質っ!? あぁ、どうしてこんなことにっ! 僕、まだ上陸して10分経ってないのにー!!



「とにかく、ちょっと付き合ってもらいます。いいですね?」

「お断りします」

「だから断らないでよっ!!」



・・・・・・こうして、スリリングで楽しい日々は始まった。

そう、マジで始まったのだ。まるでどこぞの劇場版のように。



「・・・・・・というか、息合い過ぎです。リイン、全然口を挟む余裕がありませんでした」

≪同じくです。あぁ、もしかして知り合いですか?≫

「「・・・・・・いや、初対面」」

「ハモってるです」

≪なるほど、前世で恋人だったから≫



その言葉に、僕と金馬は互いを見る。そして、頷き合った。



「「ないっ! それは絶対ないからっ!!」」

「やっぱり息が合ってるです」

≪そうですね≫

「「合ってないからっ!!」」




















『とまとシリーズ』×『メルティランサー THE 3rd PLANET』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と祝福の風の銀河に吼えまくった日々


Report01 『Confused world』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・来た早々、ずいぶんとご活躍だったそうだな」

「いやぁ、それほどでも」

≪そうほめられると照れてしまうじゃないですか≫

「ですねー」





目の前には、黒いスーツで決めた女性。黒の髪をショートカットにして後ろに流すキャリアウーマン。

この人がヒロさんのお友達。メルビナ・マクガーレン。なんでもクロスフォード家と並ぶ管理局のスポンサー企業の秘蔵っ子だとか。

現在、僕は非常にめんどくさい取調べを受け、あの金馬に車でここに連れられてきた。ここはGPOのEMP分署。



つまり、ここが僕達の目的地。で、ヘラヘラと挨拶してると、なぜか目の前の方はとっても不満顔。





「まぁ、クロスフォードから『覚悟はしておくように』と言われて、何故そんなことを言うのだろうと疑問に思っていたのだが」

「あ、だったら大丈夫ですね」

「よくないっ!!」



いきなり立ち上がり、僕達を睨み付ける。



「結果的に襲撃された幼稚園バスは無事だったとは言え、あの辺り一体の補修には当分かかるっ! 被害は0ではないのだぞっ!?」

「僕がやったんじゃないんですけど? まぁ、殺してでもすぐに止めろというのがGPOここの方針なら、納得ですけど」

「そうは言ってないっ!! ・・・・・・いや、確かに今のは私が悪かった」



あ、なんかすぐに引き下がった。うーん、意外と素直な人なんだな。

ただ、いまだに苦虫踏み潰したような顔してるけど。



「ただ、お前を当分の間うちで預かるという話は、こちらの中央本部や地元警察EMPDにも通している。
多少嫌味を言われる立場の人間の苦労も分かってもらえると、助かる」

「・・・・・・こんな言葉があります」



長官室と思われるこの部屋の窓を見て、僕は思う。



「『上司の仕事は、部下に面倒ごとを押し付けられること。
それが嫌なら絶対に出世するな。出世したなら、押し付けられることを受け入れたのと同じ』・・・・・・と」



空は青く、雲は流れる。・・・・・・あ、ハトだ。

よし、今日の夕飯は焼き鳥にしよう。焼き鳥でご飯をパクパクだ。



「そうか、それなら・・・・・・待てっ! それは一体どういう意味だっ!!
それはアレかっ! 普通に分かるつもりはないと言う意味かっ!?」

≪JACK POT!!≫

「大当たりではないっ! このバカ者っ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・というわけで、このバカ者・・・・・・もとい、この者達がしばらくの間、お前達の仕事を手伝ってくれる」

「メルビナ長官、その間違いは正直どうかと。せっかく遠路遥々、我々のために来てくださったのですから」

「言うなサクヤ。お前も彼らと3分会話すれば、今の私の気持ちが分かる」





なんだろう、すっごくバカにされた気がするのはなぜ?



とにかく、自己紹介する。目の前の素敵な女神様達に対して、しっかり自分をアピールしなければ。



初対面での挨拶は大事なのです。どこかの横馬みたいに(ry





「えっと、初めまして。蒼凪恭文です」

「初めまして、リインフォースUですー」

≪そして私がマライア・キャリーです≫

「「違うよねっ!?(違うですよねっ!?)」」



なんか、くすくす笑われてるけど、気にしてはいけない。てゆうか、アルトはこれで十分だ。

えー、現在。あのお説教だかなんだか分からない時間を越えて、綺麗で広いロビーでミーティング・・・・・・というか、自己紹介です。



「・・・・・・え、ちょっと待ってくださいメルビナ長官っ! この子達が先日話していた秘密兵器なんですかっ!!
メルビナ長官の飲み友達が紹介してくれた、とっても強い腕利き魔導師って・・・・・・えぇっ!?」

「そうだ。シルビィ、お前は見たはずだ。まず彼はあのグリアノスと戦い、一蹴するだけの戦闘能力を保有している。
そして、こちらの彼女は管理局では空曹長の階級を持った有能な人材だ。能力に不満があるとは言わせんぞ?」

「ま、まぁ・・・・・・それは確かに」



・・・・・・そう言えば、あのターミネーターを少なくともそこの金馬は知っている感じだった。

で、グレアノス・・・・・・だっけ? アレがあのターミネーターの名前。愛想もあったもんじゃない名前だ。



「・・・・・・長官、この子で本当に大丈夫なんですか? 色々と性格に問題ありのような気が」

「シルビィ、お前がそれを言えるのか?」

「どういう意味ですか、それっ!!」

「てーかよ、まだ子どもだよな。いくら管理局が子どもも働かせてるからって、これいいのかよ」



金馬と黒い服と帽子をつけた女の人がこう・・・・・・驚いている。

いや、みんなそうなんだけど。そして僕は子どもじゃない。普通に17だっつーの。



「安心しろ。さっきも言ったが、実力は折り紙つきだ。
丁寧な事に、こちらに来る直前に実力を証明してくれた。いや、GPO始まって以来の快挙だ」

「・・・・・・長官、ちょっとヤケになってません? あれは色々と処理が大変ですけど」



・・・・・・僕、知−らない。僕は全力で止めただけだし。



「いや、実力どうこうより、私の淡い期待を返してくださいよっ!!
私、すっごい美男子が来ると思って期待してたんですよっ!?」

「いや、だから来てるでしょうが。僕が。すっごい美男子が」

「違うっ! 全然違うっ!! 私が求めていたのは、身長178センチ以上ですらりとした細身で」



・・・・・・カチン。



「甘いルックスと甘い声、私を包み込む包容力を持ったとてもダンディな人ですよっ!? それなのにこんな小さ」



とりあえず、飛び込んで右足で蹴り飛ばした。



「キャンッ!!」

『いきなり蹴り飛ばしたっ!?』

「誰が顕微鏡でないと見れない、お米にお経書ける達人でも『ごめん、これは無理』ってすぐに投げ出しちゃうくらいにミニマム人生送ってそうな豆だってっ!?」

『誰もそこまで言ってないからっ!!』



やかましいっ! 僕の身長について触れた奴は、女子ども関係なくこうするって決めてるから、いいんだよっ!!



「あぁ、シルビィしっかりしろっ! 大丈夫、傷は浅いぞっ!?」

「アンタ・・・・・・いきなり攻撃行動っておかしくない?」

「そうよっ! こんな可愛いレディに一体なにするのよっ!!」



あ、なんか復活した。・・・・・・10秒か。意外と早かったな。



「大丈夫、僕は男女平等主義者だから」

「聞いた事ないわよ、こんな平等主義っ! てゆうか私、あなたとはロマンス出来そうにないからがっかりなんだけどっ!?」



な、なんか平然と言い切ったっ!? ほうほう、だったらこっちも言わせてもらおうかっ!!



「あぁそうかいっ! だったら奇遇だねっ!!
僕もいきなり人に銃口向けるような女とは、アバンチュールなんて無理だしっ!!」



金馬の頭から、湯気が出てる。でも、事実でしょうが。

あんな、どっかの横馬みたいなことをしているようで(ry



「てーか、普通に誰だろうと金馬相手だなんて絶対無理だしっ!!」

「なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」

「つーか、どんだけ厨二っ!? どんだけ14歳の病気引きずってるんだよっ!!
そんなに素敵な恋愛したいなら、ゲームショップ行けっ! もう好きなだけ恋愛出来るからっ!!」



てゆうか・・・・・・寒っ! いくらなんでもその恋愛感は寒すぎるからっ!!



「うるさいっ! てゆうか、なによその金馬ってっ!!」





もちろん目の前の女のあだ名である。横馬はサイドポニーだから、横馬。

で、金色のポニーテールだから金馬。ほら、問題ない。

まぁ、ここはとまと読者なら知っていて当然でしょ。うん、初級中の初級問題だって。



・・・・・・てか、知らないならモグリだね。FS1話から、読み返すべきだね。かなり初期に説明してるもの。





「金髪ポニーテールだから、金馬。ほら、素晴らしい」

「なによその単純なネーミングッ! それなら・・・・・・あれよっ!?
あなたは『ボクちゃん』よっ! ほら、身長がそんな感じだしっ!!」

「誰が顕微鏡でなくちゃ見れないほどにミニマムだってっ!?」

「えぇい、やめんかお前らっ! 話が進まないだろうっ!!」

「メルビナ長官、いつもの事ですから大丈夫ですよ?」



そうそう、この程度はいつもの事だ。何の問題もない。



「私達にとっては全くいつもの事ではないんだっ!!
とにかく・・・・・・お前達、古き鉄と言えば分かるか?」

「あぁ、あの人外鬼畜と名高い魔導師よね」



額にちょうちょ結びのリボンをかけて、赤いローブのような服を来た女の子が、当然のことのようにそう言った。



「・・・・・・へ?」

「それで羽が6枚あって、腕が斬っても0.1秒以内に再生して」



そして、それに帽子を被ったお姉さんが乗っかる。



「私は、体長が4メートルあると聞きました」



青い髪をポニーテールにして、白を貴重とした法衣を着たお姉さんも乗っかる。



「それでそれで、どんなロストロギアも美味しくガリゴリと食べちゃうすっごい悪い奴なのだっ!!」





・・・・・・最後に獣耳を生やしてレザー色なヘッドギアを着けて、栗色の髪をショートカットにしたちんまい子。

ちんまくて、すっごく可愛らしくて、元気一杯という感じだけど、それでもとんでもない事を言った。

てゆうか、あれかな。シャーリーの聞いた噂がすごい勢いで広まってるのかな。



いくらなんでもコレはおかしいと思うんだけど。やばい、なんか八つ当たりしたい。



ちくしょお、さすがにちょっと僕だって傷つくんだぞ? うん、普通に傷つくんだから。





「でも長官、その凶悪生物と今の状況と、何が関係あるんですか?」



そして金馬、おのれまでその認識かい。普通にもう人間扱いしてないよね。



「・・・・・・・・・・・・帰って、いい? てゆうか、帰る」

「頼む、コイツらには後で謝らせるし、私も謝る。だから、本気で帰ろうとするのはやめてくれ。
・・・・・・いいか、落ち着いて聞け。彼がその古き鉄だ」



全員、固まった。そして、次の瞬間笑う。すっごい大笑いする。

で、真剣なメルビナさんの顔を見て・・・・・・固まる。



『えぇぇぇぇぇぇぇっ!?』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・泣いて、いい? てゆうか泣く」

「頼む、やめてくれ。うずくまってしくしく言うのはやめてくれ。私も本当に謝るから」

「あははは、そうだね。全員謝って欲しいなぁ。いくらなんでもおかしいもの」





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・というわけで、僕は羽も生えてないし腕を斬られてもすぐに再生なんてしないし、ロストロギアをガリガリ食べるとか出来ないですけど、いいですか?」

「いや、悪い。マジで悪かったよ。うん、あの・・・・・・あたしは歓迎するからさ。いや、大丈夫だって」

「ごめんなのだ」

「とりあえず、アレよ。その恨めしい目はやめなさい。色々引っかかるから」



・・・・・・うん、みんな分かってくれたのでもういいだろう。

とりあえず、金馬は・・・・・・あ、なんかベーってしやがった。



「うーん、なんでだろう。一番好感度は上がってるはずなのに。あ、ツンデレなのか。納得納得。
でもね、金馬。ツンデレならツインテールだって。ツインテール頑張ろうよ、ツンデレなんだからさ」

「上がってないわよっ! あと、別にツンデレとかじゃないわよっ!?」

「・・・・・・先ほどまでの会話の数々でそう思えるお前の神経は、一体どうなっているんだ?
あぁ、もういい。とにかくメンバーの紹介だ。GPOには現在、六名のランサーと補佐官が居る」

「あ、ランサーってのは局で言う所の捜査官だ。勤務形態は局とはまた違うけどな」



・・・・・・この組織は、メルビナさんの実家がスポンサーになって作った民間警備組織ってことになってる。

そこにスカウトされた有志が集まった感じらしい。だから、メンバーがすさまじくバラバラ。



「まずは、シルビィ・・・・・・シルビア・二ムロッド。
元々は局員だったが、私が彼女の能力を見込んで、GPOにスカウトした」



どうやらそれが金馬の名前らしい。というか、普通になんか自慢げなのは気のせい?



「射撃の腕は抜群で、私の補佐として他のランサー達をよくまとめてくれている。
まぁ、若干妄想癖というか暴走癖があるのがたまにキズなんだが」

「あぁ、さっきのアレですね。アレは頭が痛いですよね」

「そうだ。私も常々、頭を痛めている」

「長官ひどいー! てゆうか、君にそこ言われたくないんだけどっ!?」



とりあえず、ベーってしてやる。なんか睨んで来てるけど気にしない。



「シルビィ、早速仲良しさんなのだ。さっきも一緒に遊んでたし」

「アンジェラ、違うからっ! 私は子どもは趣味じゃないわよっ!!」

「恭文さん、今年で17歳ですよ?」

「うそっ! 私とそこまで大きく変わらないっ!!」



そして全員が驚いた表情で・・・・・・あれ、おかしいな。



「メルビナさん、さっき資料見せましたよね。なんでこんな普通に、理解してないんですか。
僕の年齢って言う基本的なところから理解してないんですか。おかしいでしょ、これ」

「・・・・・・すまん。全員仕事は出来るんだが、若干こう・・・・・・アレなんだ」

「14歳の病気を抱えてるんですね。かわいそうに」

「よし、私はツッコまないぞ。とにかく、次はアンジェラ」

「今、リインを食べようとしてる子ですね」



うん、なんか美味しそうにリインを見つめて、あっという間に捕まえて・・・・・・ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!



「離せですー! リインを食べていいのは、恭文さんだけなのですよっ!?」

「普通に誤解を受けるような事を言うなっ! 僕という人間が疑われるからやめてっ!?」

「うー、アンジェラ別に食べようとしてないよ。
普通に可愛い可愛いしてるだけなのだ。リインちゃん、よろしくなのだー」

「・・・・・・まぁ、こういう奴だ。多分、お前とは気が合うと思う」



メルビナさん、どういう意味ですか? 僕は色々気になるんですけど。



「そして、次はサクヤ・ランサイワ。お前も聖アーカネスト寺院の事は知っていると思うが」

「あぁ、知っていますよ。前にそこのボケ司祭の犯罪に巻き込まれて、散々な目に遭いましたから」

≪遭いましたね。全く、あの時はもうあそこの関係者には、関わるまいと思ったもんですよ。
アレですよアレ、あそこは神様信仰してるんじゃなくて、邪教を信仰してるでしょ≫

「あの、アルト? さすがにそれは言いすぎでしょ。一部を見て全てを決めていいはずが」





聖アーカネストというのは、次元世界に広まっている宗教の一つ。

特に宗教的な縛りも少ないので、新興宗教としては大きめな組織。

まぁ、古代ベルカな聖王教会には負けているけど、それでも凄いところ。



で、サクヤと言われたそのお姉さんは、僕をとても悲しそうな顔で・・・・・・あ、あれ?



なんか空気が微妙だなぁ。てゆうか、なぜに魔法少女っぽい子は、僕に殺気を放つのだろう。





「・・・・・・サクヤは、その聖アーカネスト寺院の司祭だ」



その言葉に僕達は固まった。そして、もう一度青い髪をポニーテールにした女性を見る。

で、メルビナさんを見る。・・・・・・とっても疲れた顔で頷かれた。



「えっと、布教活動か何かでこちらにいらっしゃったりされちゃったりするんでしょうか」

「違う。彼女はランサーの仕事とそれの兼任という形で、働いてもらっている」



や、やばい。あの白と青のラインの分厚い服は、よーく見たら聖アーカネストの司祭服じゃないのさ。

どうしよう、さすがにこれはもうごまかせないよね。無理だよね。くそぉ、全ては金馬のせいだ。



≪すみませんね、サクヤさん。この人はデリカシーというものが存在していないんですよ。ほら、ちゃんと謝ってください。
いくらなんでも『宗教関係者と関わりたくない・邪教を信仰している』は言い過ぎでしょ。どんだけ恨みあるんですか≫

「ちょっと待ってっ!? なに僕一人が悪いって体で話してるのさっ!!
てーか、それ言ったのアルトでしょっ! 僕のせいにするなっ!!」

≪それでメルビナさん、次はどなたですか?≫



華麗に無視するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!



「・・・・・・う」

「あぁ、泣かないでくださいっ! マジで悪かったと思いますから泣くのはやめてー!?
というか、ごめんなさいっ! 本当にごめんなさいっ!!」

「次はジュン・カミシロ」



そしてアンタも普通に話を進めるなよっ! 色々間違ってるでしょうが、その行動はっ!!



「元々はこの世界の現地住民で、まぁ色々とあってな。
ランサーの活動に協力してもらっている。ジュン、挨拶を・・・・・・ジュン?」

「・・・・・・くくく、あぁ、悪い悪い。いや、お前ら面白いな。アタシはもう腹が痛かったし」



なるほど、黒服で帽子を被った女の人がジュンって人か。うん、よく分かった。

そして、色んな意味で誰かの影が被るのは気のせい? うん、気のせいだよね。



「まぁアレだ、これからしばらくはこっちに居るんだろ? あたしが色々教えてやるから、よろしくな」

「あははは、よろしくお願いします。・・・・・・こんな感じなんですが、大丈夫ですか?」

「あぁ、問題ない。てーか、むしろ気に入った。あと、敬語じゃなくていいよ。
あたしにもシルビィ相手に『金馬』って言うくらいの勢いで、接してくれて構わないからさ」



金馬がなんか不満そうだけど、ここを気にしてはいけない。

だって、これでようやくさっきまでの妙な空気が吹き飛ばせそうなんだから。



「なら・・・・・・ジュン?」

「おう、恭文・・・・・・でいいよな」

「うん」



そう言いながら僕が頷くと、ジュンが嬉しそうに微笑む。

・・・・・・あ、意外と綺麗かも。もうちょっとボーイッシュかと思ってたけど。



「で、次は小生意気なのだ」

「ちょっと、誰が小生意気よ。・・・・・・てゆうかアンタ、来た早々サクヤを悲しませるなんていい度胸ね」



きゃー! また殺気ぶつけられてるっ!? てーか、普通に怖いよー!!



≪ほら、怒ってるじゃないですか。あなた、ちゃんと謝った方がいいですよ≫



うん、おのれもね。というか、まずおのれが謝ろうよ。僕の前におのれが謝れ。



「私はアンタにも言ってるんだけどっ!? てゆうか、主にアンタよっ!!
なに普通に責任逃れしようとしてんのっ! コイツは謝ったけど、アンタは謝ってないでしょっ!!」

≪何を言ってるんですか、世界は私を中心に回っているんですから、問題ありませんよ≫

「大有りよっ! ・・・・・・あぁもう、デバイスがデバイスならマスターもマスターじゃないのよ」



失礼な事言わないでっ!? 僕はアルトと違って良識的だよっ!!




≪失礼な。この人みたいなヘタレと一緒にしないでくださいよ≫



ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てゆうか、おのれは僕の事嫌いっ!? 普通に僕に対しての扱いが悪いわボケっ!!



「別になにやってもいいけど、私とサクヤに迷惑だけはかけないでよね。いい?」

「・・・・・・この子は何処の宗教の信者ですか?」



とりあえず、メルビナさんを見ながら聞いてみる。で、なぜかメルビナさんは頭を抱えた。



「私はどこの宗教に入ってないわよ。アンタ、まずそこからっておかしいわよ」

「普通にさっきの二の舞は嫌だからですけど、なにか?」

「・・・・・・へぇ、人並みに学習能力はあるのね。うん、感心感心」



そして、気になる事がある。さっきから一切名前も何も教えてもらってないんですが。

とりあえず、小生意気で僕に対しての好感度がマイナスに近くて、サクヤって人が好きなのは分かった。



「彼女はナナイ・ナタレシオン・ナインハルテン。まぁ、少々系統は違うが、お前と同じ魔導師だ」

「ちょっとメルビナ、こんなのと一緒にしないでよっ! 私はプロミスランドの近衛隊長なのよっ!?」

「・・・・・・とりあえず僕がツッコんじゃいけない単語があると思うので、そこは無視します。で、なんと呼べば?」



名前長いもん。さすがにこれ全部は無理だって。



「あ、ナナでいいぞ? あたしやみんなはそう呼んでるし」

「なら、それで。で、最後はメルビナさんですか? で、メルビナさんはどちらの宗教に」

「私は入っていないから、安心しろ。あと、実は 六人というのは私を抜かしている」



ということは、もう一人居るのか。でも・・・・・・誰?



「今戻りました」

「戻りましたー」



後ろを振り返ると、黒いスーツに身を包んだ男の人に、褐色の肌に黒い髪の女の子。

女の子は、白と焦げ茶色のボディスーツを着て・・・・・・あれ、どなた? 普通に入り口から入って来たけど。



「あぁ、丁度いいところに。・・・・・・まず、彼は私に代わって現在この分署を預かっている補佐官で、ツグロウ・フジタ。そして、彼女は」

「初めまして、蒼凪恭文です。よろしくお願いします」

「おいっ!? 私の紹介がまだなんだがっ!!」



戦いとはなにか。そう、先手必勝だ。どこぞの横馬みたいに初対面でバインドかけるようでは、人間関係は構築出来ない。

『初めまして』と『よろしくお願いします』は基本です。うん、ここ大事なのよ?



「で、お二人はどちらの宗教の派閥の方ですか?」

「「・・・・・・はぁ?」」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・それでいきなり、俺とパティに宗教の派閥を聞いてきたのか」

「そ、それはなんというか・・・・・・失敗でしたね」



いや、色々とあったのですよ。それも相当に。

・・・・・・もう、宗教関係で妙な発言するの、絶対やめようっと。



「とにかく、俺もアーカネストの信者ではないし、特に信仰している宗教もない。安心しろ」

「私も同じくです」

「あぁ、そうなんですか。・・・・・・よかった、なんかやっと安全圏に来た感じがする」

「・・・・・・いきなり泣くな。とにかく初めまして、ツグロウ・フジタだ。
現在、メルビナ長官に代わり、この分署の指揮を取っている、よろしく頼む」

「はい、よろしくお願いします」










ツグロウ・フジタ。この世界の現地住人で、この世界の『元々』の政府の役人。





2ヶ月前に、分署に来たとか。戦闘人員じゃなくて、普通にデスクワーク。





・・・・・・確かヒロさんの話だと、色々EMP上層部の思惑がどうとかって言ってたっけ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・やっさん、もう向こうに着いたって?」

「うん、着いたって。で、早速なんかやりあったらしいよ?」

「はぁっ!?」



で、やっさんが送ってきたメールを回してもらう。

というか、アルトアイゼンの戦闘データもだ。それをデータバンクと照合して・・・・・・出た。



「広域次元犯罪者グリアノス。アイツ、到着して10分経たずに初戦闘って・・・・・・あれ、コイツ」

≪主、確かヴァネッサーズの一人では?≫

「なによ、そのヴァネッサーズって」

≪あの世界が管理世界に認定されてから、ちょくちょくとちょっかいを出している連中です。
三人組の次元犯罪者のグループで、狙う理由は世界征服のため≫





俺は目の前にモニターを展開。ヴァネッサーズの主要メンバーを出す。

と言っても、三人だけ。まず、やっさんが交戦したグリアノス。・・・・・・ターミネーターだな。

そして、チームの参謀でサブリーダーのリゲル。めがねをかけた優男。



最後に、リーダーのヴァネッサ。白衣に赤髪でめがねをかけた女。



出身世界は、三人とも管理世界の一つであるフォートマキシマ。





≪なんでまたそんなことすんだよ。どこぞの悪の組織じゃあるまいし≫

「嘘か真かは知らないが、三人ともフォートマキシマにある悪の大学ってのに通ってて、そこの単位獲得のためにあの世界を征服したいんだとよ」

≪んなバカなっ! 単位獲得のために世界征服しろなんて、アホ過ぎるだろっ!!≫

「アメイジア、俺も同感だ。しかしヒロ、今やっさんをあそこに送るのは、ちょっとまずいんじゃないのか?」



・・・・・・コイツ、ポッキー食べながら呑気にあくびしてやがるし。お前、送っておいてそれはないだろ。

現在、新暦74年の8月の末。ヴェートルはある一件で、次元世界中の注目を浴びている。



「アンタの言いたい事は分かってるよ。カラバの公女と公子様の事でしょ?」

「そうだ。絶対とんでもないことになるぞ」

「だろうね。でも、相当濃い経験は積めると思うのよ。あの世界のカオスっぷりは相当だし」

「確かにな」





管理世界の一つに、カラバという世界がある。そこは管理局に認められる形で、王制を取っていた。

だが、ちょうど3ヶ月前にクーデターが起きた。それにより王制は崩れ、クーデター派がカラバの政権を奪い取った。

で、今あの世界には居る。王党派はクーデター派にほとんど殺されたけど、生き残った人間が。



それは二人の人物。・・・・・・公女の『アルパトス・カラバ・ブランシェ』。

そして公子の『アレクシス・カラバ・ブランシェ』。なお、双子の姉弟だ。

二人はそのクーデターから辛くも逃げ延びて、ヴェートルに亡命した。



あの世界は宇宙開発が結構進んでいて、月にコロニー都市も建造されている。

そこにカラバの公女様と公子様は身を隠して、亡命を受け入れたヴェートル政府の保護を受けている。

管理局もクーデターに介入しようとは思っていたが、介入する前に政権が交代した。



なので意味が無かった。で・・・・・・問題はここからだ。これだけで終われば、まだ良かった。





「サリ、管理局の対応は変わらず?」

「あぁ。話はカラバ・・・・・・いいや、ヴェートルの問題。
対応は、現地政府とヴェートルの中央本部に任せるってさ」





ヴェートルの現地政府は、カラバと同じようにちゃんとした自治権を主張している。

まぁこの辺り協議の真っ最中なんだが、今回はそれが悪い方向に動き、ひどい状況になっている。

ヴェートルの現地政府は、カラバの王党派である皇女と皇太子をクーデター派から庇った事になる。



それも局に何の相談もなしで、圧倒的賛成票の元にだ。現地政府の独断で、亡命を受け入れた。

多分、これにより次元世界内で権力の確保でもしたかったんだろ。そして、この行動には理由がある。

現地政府は、管理局による管理を嫌っている。自分達で自分達の世界は守れると、主張し続けている。



それ故に、管理世界になって4年が経とうとしているのに、未だに管理局はおかざりに近い。

魔法というクリーンなエネルギーを推奨し、使っていくというのが思想だけどそれすら浸透していない。

あの世界は、無駄に高度な魔法抜きの兵器や技術で満ち溢れている。管理局の目の下のタンコブだ。



EMPで言えばEMPDと呼ばれる管轄の警察組織が、GPOや中央本部と相当衝突している。

独自に『維新組』と呼ばれる凶悪犯罪専門のチームを作って、対処するくらいだ。それも相当強行的に。

その動きは、EMPに留まらずあの世界全体で起きている。そう、ヴェートルは管理局による管理を否定している。



だからこそのテストケースなんだよ。管理局としては、普通に応急処置というか非常手段だったんだろうな。

ヴェートル側を納得させるために、数年の間は今のEMPのような複数の警察機構での治安維持を続ける事にした。

それで働きぶりを見てもらって、向こうに現実的にも能力的にも納得してもらおうとしたんだろ。だが、それは無理だった。



GPOが無駄に優秀だったり、EMPが法律ギリギリ(アウト)などっかのヒーローみたいな強化服を持ち出したから。

まぁ、現状は問題だけど、俺としては普通に受け入れるのも、それはそれで問題だと思う。

今まで自分達が必死に守ってきた世界を、突然取られたのと同じに考えたんじゃないだろうか。



そしてこういう問題は、今後も起こってくる。多分、やっさんの生まれ故郷である地球でも、いつかは。

だが、今回のヴェートルの現地政府の亡命受け入れの判断は、ブッチギリでミスだ。

その結果、ヴェートル・・・・・・重要拠点が存在しているEMPは、かなりの危険地帯になっている。



ようするに、クーデター派と思われる連中がヴェートルに抗議してきてる。それも、非合法に。

ぶっちゃけると、EMPの中で何回も無差別にテロをかましてきてるんだよ。

どうやらクーデター派は、マジで王党派を皆殺しにしたいらしい。しつこ過ぎて胃もたれしそうだ。





「また温いね。てゆうか、普通に傍観者じゃないのさ。時空管理局として、それはいいの?」

≪もちろんよくはありません。むしろ現場の人間がかなり苛立っているとか。この場合は本局の人間ですね≫



やっさんの話ではハラオウン執務官やクロノ提督・・・・・・次元航行部隊に所属する本局の人間だな。

そういう良識的な現場の人間や一部の上層部は、当然だけど現状をなんとかしたいと思っている。でも、それは無理。



≪クーデター派のテロとするなら、それは広域次元犯罪に該当します。ですが、政治的な事情がややこし過ぎるんですよ。
実態がしっかりと掴めない以上、まず上の人間が不用意な介入を許さない。結果、現場の人間も動けない≫

≪・・・・・・そりゃそうだろ。俺だって、これに進んで関われとか言われたら、諸手を挙げて回れ右するぜ。
だから俺、ボーイが『行く』って即答した時、マジで驚いたし≫



あぁ、即答だったよな。普通に即答だったよな。即答したから、頼んだヒロが逆に驚いたし。



「ヴェートルは現地政府と管理局が小競り合いしてる状態だしな。
下手な介入は、即次元問題に発展するんだよ」





そこはカラバに対しても同じくだ。カラバに対して自治権を認めているのが、ここで響いてる。

というより、今現在起きているテロがマジでカラバ絡みかどうかさえも、掴めていない。

証拠も無いのに抗議どうこうなんて出来るわけがない。そのため、管理局も表立っては動けなくなってる。



まぁ、どっかの誰かが水面下で調査くらいはしてるだろうが。むしろ、してなきゃおかしい。





「で、そんな中有効に動けるのは、半民間組織でお前の飲み友達が長官やってるGPOってわけだ」





向こうの長官のメルビナ・マクガーレンがヒロに相談したのも、その関係だ。

自分は皇女のガードのために、月都市からは基本的には離れられない。

だからと言って、現段階では色々と不安要素がある。で、ヒロはやっさんを送った。



・・・・・・アイツがこの混沌とした状況に首を突っ込むって、もう厄介ごとを増やすフラグにしか思えないんだが。





「でさ、メルビナ曰くそうとう切羽詰ってるらしいのよ。
EMPの市長がなんか首輪を送ってきたし、こっちも備えておきたいってかなり言われてさ」

「あぁ、今GPOの分署の補佐官をやってる奴だな」



あの世界に来た当初、GPOのメンバーの大半はあの世界の事については無知に等しかった。それでは、仕事が成り立たない。

補佐官というのは、現地の役人の中から有能な人材をEMPに派遣。自分達のサポートをお願いした事に起因する。



≪ですが、その制度はもう解除になったはずです。
なのに、補佐官を送ってきた・・・・・・臭いですね≫

「こりゃあ、首輪は首輪でも、鈴と縄付きだね」

「間違いなくな。で、俺はそれについて少し調べろと」










当然のように、ヒロは頷いた。・・・・・・ツグロウ・フジタか。





まぁいいさ、我が弟弟子はどうせ派手に暴れるんだ。そのフォローくらいはするさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いやぁ、すみません。ちょっと下痢気味だったんで」

「大丈夫か? 調子悪いなら、薬持ってくるけど」

「あ、大丈夫大丈夫」





ジュンの言葉に、軽く手を振りながら答える。

うん、大丈夫よ? もうヒロさん達にはメール送ったから。

・・・・・・ツグロウ・フジタさんは、いい感じで自分のオフィスにこもった。



補佐官は、色々お仕事があるんでしょ。うん、納得した。





「あぁ、クロスフォードの様な人間がもう一人居るとは思わなかったぞ。このまま月に戻るのは、非常に心配だ」



なぜだろう、普通に失礼だ。僕はヒロさんよりマトモだって言うのに。



「ごめん、私も心配なんだけど」

「金馬、大丈夫だよ。僕は世界の中心だから」



僕は右手の人差し指で、ゆっくりと天を指す。



「そう、世界は自分を中心に回っている。そう考えると、楽しい。
天の道を往き、総てを司る人のおばあちゃんはそう話していたよ」

「それは勘違いよっ! てゆうか、誰よそれっ!!」



なぜだろう、人は簡単には分かり合えない。というか、金馬が頭をかきむしり始めたんだけど。



≪あなた方、ダメですね。私達のノリはまだまだ上があるんですよ?
・・・・・・で、メルビナ長官。こちらの黒髪の素敵な方が六人目のランサーでしたよね≫

「あぁ、そうだ。彼女はパトリシア・マクガーレン。つい最近、GPOの正式なランサーになったばかりだ」

「それで、こちらはどこの宗教の方ですか?」

「・・・・・・あの、さっきも言いましたけど、私はどこの宗教にも入っていないので」

「お前、さっきのはそこまでトラウマか?」



でも、マクガーレン? ・・・・・・まぁ、色々あるのだろう。うん、気にしない。

だって、身内を補佐官なり部下にするって、管理局でも良くある風潮だし。



「パトリシア・マクガーレンです。よろしくお願いします。えっと・・・・・・恭文くん」

「パティ、一応言っておくけどこの子はあなたより年上よ? 17歳なんだから」

「えぇっ!?」





そっか、年下だと思われてたんだ。というか、絶対子どもだと思われてたんだ。

うん、そうだよね。今、年下に対する言い方だったもんね。

やばい、僕はここでちゃんと上手くやっていけるのかな? なんか分からないんですけど。



もう今までのアレコレのせいで、すっごい不安が残るんですけど。





「と、とにかくよろしくお願いします」

「うん、よろしく〜」

「とにかく、メルビナ長官がサクヤと月に戻るのは明日ですよね」

「あぁ」



なお、月やらなんやらに関しては、次回説明しますので、あしからず。



「つまり」

「アレ、やるわけか」

「そうだ。まぁ、補佐官はプライベートの都合で来れないそうだが」



そして全員が僕とリインを見る。あ、パトリシアさんは少々微妙だ。

とにかく全員僕達を見て、メルビナ長官はこう叫ぶのだ。



「GPO分署恒例っ! 新人の歓迎会だっ!!」

『いぇぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!』

「「歓迎会っ!?」」

「蒼凪、クロスフォードから聞いたがお前は酒にはうるさく、そしてかなり強いそうだな」



え、なぜにいきなりそんなプライベートモードっ!? アンタ、長官なのにそれはいいんかいっ!!



「実は私も酒には一家言持つほどにうるさくてな。少し付き合ってもらうぞ」

「リインちゃんは、アンジェラと一緒にいーっぱい食べようねー?」

「バカ。アンタのレベルで食べたら、この子パンクしちゃうでしょ。サイズを考えなさいよ」

「てーか、お前酒飲めるのか。だったら一緒に飲もうよ。あたしもそこそこいけるんだ」










そう言いながら全員が僕の手や腕や身体を掴み、リインはアンジェラに捕まった。





・・・・・・きゃー! なんか無理矢理に引っ張られているー!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・なるほど、初対面で早速やられたか』

「まぁ事情が事情なので、仕方ないでしょう。しかし、中央本部を出て1分経たずに事件遭遇とは」

『すさまじい運の悪さだな。何かに呪われているとしか思えん』



画面に映るのは、EMPの市長。マサオミ・カイドウ。そして、ここは俺の所有車の中。

連中はまたあのうるさい歓迎会のために、蒼凪恭文達を引っ張っていった。



『だが、歓迎会に君は行かなくていいのか? 付き合いも必要だろうに』

「馴れ合いはごめんですから」



スキンヘッドの頭に鋭い細い目。そして黒のスーツに紫のネクタイ。

30台後半で、この巨大浮遊都市の市長になった切れ者。



『そうか。それで、君の目から見て古き鉄はどうかね?』

「一言で言うなら、爆弾でしょうか」



そして、現在この世界を騒がせている亡命問題の受け入れに反対した、極少数派の一人。

結果論だが、その判断は正しかった。おかげでこの3ヶ月の間に、ずいぶんテロが増えた。



「いい意味でも悪い意味でも爆弾。ただ、その意味合いは状況ではなく人で変わります」

『というと、どういうことかね』

「話して分かりました。『アレ』は、組織の規律や常識という枠に縛られるのを嫌う。そして、その枠を壊せる。
恐ろしいのは、それは『味方』にとって強力な起爆剤になりえる事です。そう、味方にとっては有益な爆弾」



その主犯は二人の人物。カラバのクーデター派の幹部の疑いがある『ダンケルク』と『キュべレイ』。

GPOのランサーが数度対決し、それでも撤退させるのがやっとという強敵。



『なるほど。だが我々のような敵にとっては、その根底から破壊されると』

「はい。それに、思っていたよりは腕が立つようです。アレは、我々や維新組、GPOの人間に近い。
管理局の魔導師共は魔法に頼らなければ何も出来ないと思っていたのですが、彼は違う」

『実際ここに呼ばれたのも、それが原因なのだったな』

「そうです。アレは、魔法なしで銃器相手に剣で戦ったりしたそうです。もちろん、勝っています」



そんな状況を危惧したメルビナ長官が、どこからか呼び寄せたのが、彼だ。

あの隙の無さ。グリアノスに対しての攻撃・・・・・・相当の修羅場を潜っている。



『君でも勝てないかね』

「それはやってみなければ分かりません。ですが、互いに無事ではすまないかと」

『そうか。まぁ、彼の事については、気をつけておいた方がいいだろうね。
今までも相当にやらかしている。広まっている噂を聞くに、ここ1年は特にだ』



そうでしょうね。聞いている噂だけでも相当ですから。眉唾物なのもあるが、真実味があるものもある。

そもそも、噂など根が無ければ広がらない。そして、アイツにはある。その『根』が。



『とにかく、気をつけてくれたまえ。君の事がバレてしまっては、元も子もない』

「はい。それでは、また」










そして、通信を終える。・・・・・・全く、厄介な駒を増やしてくれるな。

まぁいい、俺の仕事は変わらない。そして、古き鉄だろうが邪魔はさせん。

俺の仕事は、今の立場GPOの補佐官を通して、見極める事。





管理局が、次元世界の人間の手が、本当にこの世界にとって必要なものかどうかをだ。

・・・・・・そんなの、もう出ているというのに。この世界に『異星人』の助けなど要らない。

この世界は、この世界の人間の手で守るべきなんだ。そのために俺達が居る。





そうだ、俺達が・・・・・・この世界を守るんだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・じゃあ、今歓迎会の途中なんだ』

「うん。ちょっと抜けさせてもらってるの。やっぱり、心配かけてるだろうしさ」

『そうだね、ちょっと心配』





歓迎会の場所である居酒屋の入り口近く。僕は、ある女の子に通信をかけていた。

それはフェイト。僕の大好きな女の子。そして、今回のヴェートル行きでかなり心配をかけてる子。

実際、止められたしなぁ。ヴェートルの情勢が無茶苦茶アレなのは、確かだから。



ただ・・・・・・街自体はどっかの内戦地域みたいなこともなく、平和に動いている。今、この瞬間もだ。





『でも、上手くやっていけそうな感じ?』

「一応、友達からの頼まれごとだしね。上手くやってくよ」

『そっか。・・・・・・出来れば、この調子で局に入るのも考えて欲しいな。
GPOは半民間組織みたいだけど、それでも組織は組織だから』



うー、やっぱりそこに行くんだ。うん、分かってた。



『ここで上手くやれれば、一つの自信に繋がるとは思うの。
ヤスフミも組織の中でもちゃんとやれるし、居場所も作れる。そういうの、きっと分かるよ』

「嫌だ。局は嫌いだもの。居場所にこだわるのも、嫌い。
てゆうかフェイト、局に入らない僕は・・・・・・嫌い?」



少し意地悪げにそう言うと、フェイトはハッとした顔をして首を横にブンブン振る。



『あの、そうじゃないの。ただ、やりたい仕事とかそういうのを探すくらいのことは、していいと思ってるだけなの。
局の中にだって、いい人は沢山居るよ? そんな人達を信じて自分を預けて頑張ることは、道の一つだから』

「嫌だ、預けたくない。僕はいつだって、自分として戦いたいの。うん、ここは変えられない。
・・・・・・てーか、フェイトやクロノさんは預けて、結局何も出来てないじゃないのさ」



軽く皮肉をぶつける。フェイトが落ち込むけど、気にしない。だって、さすがにしつこいもの。



「カラバとヴェートルの問題、本局はノータッチでしょ? それは今も変わらない」

『・・・・・・うん。ヴェートルの現地政府が、好き勝手やったツケが回ってるだけと言う意見もあるの。
そこで起きているテロは凶悪な広域次元犯罪になる可能性があるのに、上が動こうとしない』

「だから、下であるフェイト達も動けない。で、預けている下っ端で、歯車だから現状も変えられない」



・・・・・・ほら、預けてもダメじゃん。組織の現状も変えられない。

それで今の事件も止められないんじゃ、居る意味が分からない。



「僕はそんなバカなことに巻き込まれえるのも、付き合うのも嫌。
こんなことばっかの組織に自分を預ける? 絶対嫌だ。だって、局は友達でもなんでもないし」

『それは、その・・・・・・うん』



まぁ、理屈は分かる。基本的にその世界で起きている事件は、その世界の中央本部の管轄。

本局がいちいち介入してたらキリがない。なんで中央本部を作ったかも分からなくなる。



『でも、ずっとそのままでいいの? 現状に不満があるなら、変えようとすることも大事なのに。
もちろん、さっき言ったように私達も変えられてないから、説得力は0になっちゃうんだけど』

「うん、ないね」



あるはずがないよ。てーか、あったらここまでは言わない。



『でも、局だけの話じゃないよ。組織・・・・・・今の場所や、取り巻く環境が嫌いだとするじゃない?
それなら、好きな場所に自分で変えていく努力を始める。きっと、みんなはそうしてる』

「僕、局員じゃないけど」



嘱託ですよ? もっと言うと、半民間ですよ? そんな組織改革に付き合う権利も、道理もないって。



『でも、嘱託として局の仕事をしている。関係者ではある。
局は、ヤスフミにとって絶対ではないけど、一つの場所になってるんじゃないかな』

「・・・・・・なるほど、それは道理かも」

『でしょ?』

「でもさ、フェイトの言い方、まるで局に入ることだけしか道がないように聞こえる」



上を見上げる。白くて、大きな月を。どういうわけか、ここからでも月都市の地形が見えたりするのが面白い。



『・・・・・・あの、そうじゃないの。絶対とは言わないけど、ベストな選択だとは思ってるから』

「フェイトは、そうなの?」

『うん。だから、執務官になった。それが、私の夢にもなってる。ヤスフミにも見つけて欲しいの。
自分だけの目標というか、世界の中で変えたい事というか。そんな、ちゃんとした形の夢を』

「だけど、変える前に傷ついてしまう人達は必ず出てくる。
・・・・・・そんなの、見過ごせない。そういうめんどくさいのは、嫌いなの」





僕は、鉄だもの。古き鉄・・・・・・噂になってると聞いた時、あの子の顔を思い出してしまった。

まさか数年経って普通にそんな名前が広まるとは、思ってなかったもの。

でも、すぐに気に入った。そう、僕は古き鉄。だから、こんな状況は見過ごせない。



見過ごせないなら、飛び込んで、変えるだけ。・・・・・・先生と同じように。





「僕、フェイトみたいに頭良くないもの。きっと、戦うことしか出来ない。だから、僕は戦って今を覆す」



7年前、死にかけた時にもらったものがある。そして、それをくれた人に言われた。

『今を、覆せ』と。あれからずっと、胸に残っている言葉。



「だから、世界や組織を変えるのはフェイトやはやて達に任せた」

『え?』

「で、僕はその間に誰かが泣くのを止める。ほら、そうすれば全部守れるでしょ」



軽く冗談めいて言うと、フェイトは少しおかしそうに笑った。



『確かに、そうだね。うん、その通りだ』



そして、笑いながら頷く。



『ただね、私は・・・・・・それでもヤスフミに局に入って欲しいんだ。
戦う事しか出来ないなんて、言って欲しくない。そんなこと、絶対にないから』

「・・・・・・フェイト、局に入らない僕は、自分と一緒に同じ道に行けない僕は、嫌い?」

『あの、そうじゃないの。ただ』



こうしてフェイトが会話をループさせられているということに気づくまで、実に10分という時間がかかった。

ちゃんと定期的に連絡するのを約束した上で、通信を・・・・・・終える前に一つ聞いてみよう。



「ね、フェイト」

『なに?』

「ヴェートルの人達の言う事、どう思う? ほら、『自分達の世界は、自分達で守れる。管理局による世界の管理は、ここでは必要ない』って言うの」



そう聞くと、フェイトは少し困ったような顔をして・・・・・・慎重に、言葉を選びながら話す。



『正直、管理局員としては喜ばしい事ではないと思う』

「でも、自治権なら聖王教会だって認められてるよ? クーデターが起きたカラバも同じく」

『その二つとは、話が全く違うよ。ヴェートル政府は管理局の理念や目的に対して、今以上に理解は示すべきだよ。
その世界は質量兵器やそういう技術が発展し過ぎている様子だし、過去の事例を見れば次元世界にとてかなり危険』



『政治的な部分の暴走が、この事態を引き起こしているのも、事実だしね』と、付け加えた。

確かにその通りだ。だけど・・・・・・なんだろう、なんか僕は釈然としない。



「・・・・・・そっか」

『うん。話はその世界だけですまないもの。もう少し、考えるべきなんじゃないかな。
・・・・・・で、管理局員としての私の意見は、こんな感じ。次に、私個人の意見なんだけど』

「続くのっ!?」

『うん、続くよ?』



にっこりと笑いながら、フェイトはさっきまでのお仕事モードの真剣な表情を崩して、また言葉を続けた。



『私個人としては、これは当然の事だとも思ってる。誰だって、自分の住む世界が好きに決まってる。
言うなれば私達は・・・・・・そうだな。地球の映画にあるような、異星人だと思うんだ』

「・・・・・・なるほど、次元世界を宇宙・・・・・・知らない世界とするなら」

『そう。ここの人達からすれば、そんな異星人に突然自分達の世界を管理・・・・・・好き勝手にされたら、怒るに決まってる。
管理局の理念や目的そのものが間違ってるとは言わないけど、それでも中々理解はされにくいのは、当然じゃないかな』



異星人ね。うん、その通りだ。僕達は、異星人なんでしょ。



『だからこそ、GPOの方々の活動は、本当に意味のあることだと思うんだ。
あ、資料を読んだんだけど、一種の広報活動もしているわけじゃない?』

「らしいね。地元住民との交流を、中央本部よりも重点的に取るようにしてるって言ってた。
てーか、普通に捜査活動とかよりも、そっちの方が多いとも言ってたっけな」



次元世界の概念や常識、管理局の目的などを、ヴェートルみたいな管理世界に認定されたばかりの世界に伝えていく。

そうして、少しずつ次元世界を構成する世界の一つとしての認識と自覚を広めていく。GPOの本来の仕事と理念は、そのお手伝いらしい。



『もちろんそれはヴェートルの人達だけじゃない。私達もヴェートルの人達の気持ち、知っていくべきだと思う。
さっき私、カラバや聖王教会の自治区とは、話が違うって言ったでしょ? 私がそう言った理由は、そこなんだ』

「どういうこと?」

『カラバも聖王教会も、管理局と相互理解をし合った上でそうしてる。両方が、理解し合おうとしている。
今の現状では、まずそこが抜けてるんじゃないのかな。管理局もそうだし、ヴェートル政府もだよ。だから、違うと思う』





ヴェートルの人達は、異星人に自分達の好き勝手されるのはごめん。

で、管理局は自分達のシステムを真っ向から否定しているヴェートルが嫌い。

これでは相互理解は成り立たない。・・・・・・まぁ、そうだよね。成り立つわけがないよね。



相互理解ってのは、自分も相手の事を理解しようとしなきゃ、いけないんだから。





『だから、今回みたいな独断はなしにして欲しい。こういうのは、やっぱりよくないよ』

「管理局の言う通りにしろってこと・・・・・・では、ないよね」

『うん、違うよ。・・・・・・この世界にとって、どうすれば本当にいいことなのか。
管理局とヴェートル政府で、一緒に考えていければいいなってこと』



・・・・・・フェイトの声を聞きながら、空を見る。大きくて白い月は、神々しく光り輝いていた。

そして言っている意味を考える。確かにその方がいいと思った。



「・・・・・・そうだね。きっと、それが一番いいんだよね。
管理局どうこうは関係なく、みんなで一番いい方法を探す』

『そのために対等な関係として手を取り合う事が、相互理解の一つなんじゃないかなと思うんだ。
もしかしたら管理局は余りに高圧的過ぎて、ヴェートルの人達から見てそう思われてないのかも』

「うん、それは正解だよ。・・・・・・ここに来るまでにさ、局員とすれ違った人を何人か見たの。
全員どこか冷たい視線を送ってた。フェイト、こっち来るなら管理局の制服、着ない方がいいよ?」

『・・・・・・そこまでなんだ』



フェイトが悲しげに呟くけど、僕は頷く。だって事実だもの。



「とにかく・・・・・・だから、対等であると示すためにこれとか? EMPでの治安維持のテストも含めてさ」

『そうじゃないのかな。そう考えていくと、今回の事は管理局にも責任があるんだよ』



対等・・・・・・あぁ、そんな風には見られてないよなぁ。

管理局はきっと、自分達が世界を管理して当然とどこかで考えているから。



「てゆうかさ、僕達が異星人って言うなら、僕達から見れば向こうだって異星人だもの。
それを理由に互いにピリピリして喧嘩するなんて、無茶苦茶馬鹿馬鹿しい事だわ」

『うん、そうだよ。きっと・・・・・・今の状況は理由はどうあれ、すごく馬鹿馬鹿しくて悲しいことだよ。
だって私達は互いに手を取り合うことも、認める事も出来ないで自己主張しかしてないんだから』

「早く、そういうのが無くなればいいんだけどね。
上はともかく、付き合わされる街の人達がかわいそうだよ」

『・・・・・・・・・・・・ごめん』



なぜ急に謝るっ!? てーか、涙目になるのやめてー!!



『だって私、さっき自己主張して、押し付けてばっかりだったから。
でも・・・・・・すごく心配なの。戦うだけが、ヤスフミの全部じゃないんだよ?』



・・・・・・でも、僕はそれくらいしか出来ないし。戦って、今を変えることくらいしか、きっと出来ない。

いや、そうやって変えられるかどうかも怪しい。やっぱり僕、バカみたいだからさ。



『別に局じゃなくてもいいの。ただ、戦う以外で目標に出来る職種とかを、一緒に探していけたらいいなと、ずっと思ってて、それで』

「・・・・・・分かってるよ」



だけど、それだけじゃダメなのも分かってる。それだけが、僕じゃないから。

ただ、だからって戦うことを、飛び込むことを迷うのは、大嫌いなのである。



「まぁ局も組織の道理も嫌いだから、正直付き合えないけど、そこは分かってる。
でも、今は戦わせて欲しいな。目の前に変えたい状況があるのに、止まったりなんて出来ないから」

『・・・・・・分かった。でも、約束。少しずつでもいいから、考えて?
お願いだから、戦うだけしか出来ないなんて悲しい事、言わないで』

「・・・・・・ん」










そして、今度こそ通信を終えた。なんというか、フェイトはやっぱりフェイトのまんまなのが、嬉しくなりつつ。





『局に入るかどうかは本当に別問題として、GPOの人達と仲良くやれるといいね』と言われたりしたなぁ。





なぜか、満面の笑みで。・・・・・・うーん、正直僕は、フェイトのあの笑顔の意味が、よく分からない。




















(Report02へ続く)





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