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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第27話 『見てのお楽しみと言って、本当に楽しみにするだけの価値のあるものが入っていることは、本当に少ない』(加筆修正版)























恭文「・・・・・・あの、もしもし?」

古鉄≪なんですか?≫

恭文「いや、なんですかじゃなくて。もう始まってるよ?」

古鉄≪そうですか≫





(・・・・・・数分お待ちください)





恭文「・・・・・・あの、ちょっとっ!? なんで話進まないのっ!!
つか、なんでいきなりあとがき形式っ! こんなにダラっと始める必要ないよねっ!!」

古鉄≪いえ、ありますよ≫

恭文「なんでっ!!」

古鉄≪この話も26話まで来ました≫

恭文「まぁ、今回で27話目。新しいスタートにはなるよね」

古鉄≪アニメ本編なら最終回。1年続く作品なら、折り返しですよ。まぁこの話の場合、まだ続くわけですが」

恭文「まぁ、まだ色々と書くことあるしね。フェイトとの楽しい今後とか」

古鉄≪・・・・・・あなたはまずそこですよね。そして楽しいのは決定済みですか。とにかく、それでこれなんですよ。
せっかくあなたも心機一転で頑張ろうとしているわけですし、ここは特別編で行こうかと」

恭文「あ、なんか納得。それで、来週からOPやEDが変わるとかなんだね。
でも・・・・・・それならなんで素直に始めないの」

古鉄≪簡単です。せっかくですし今回から色々と新しい手法を盛り込んでいこうかと。最近オーラがめんどかったですし≫

恭文「・・・・・・作者、自由だよね。それで、どうするの?」

古鉄≪まずは、これからの方向性を決める意味でも、現在起きている問題をピックアップしてみましょう≫





1・空戦AAA+の試験



2・ハラオウン家の家庭問題



3・恭文の進路問題



4・恭文×フェイトルートが開いたことによる、現地妻・・・・・・もとい、ギンガ・すずか問題



5・はやて×ヴェロッサ問題





恭文「・・・・・・事件起きてないのにこれっておかしいよね」

古鉄≪今さらですよ。それでマスター的には何かありますか? 早々に書いて欲しい話があるとか≫

恭文「あー、ある」

古鉄≪なんです?≫

恭文「ゆかなさんIFエンド」





(バキューンッ!!)





古鉄≪・・・・・・撃ちましたよ?≫

恭文「色々おかしくないっ!? 今の行動とかその言動とかっ!!
普通にいいじゃんっ! ゆかなさんエンドの何がいけないのさっ!!」

古鉄≪痛過ぎます。作者がバカとは言え、やりませんって。
大体、そんなもの書いて誰が特するんですか? 夢小説とかにするんですか?≫

恭文「はぁ? アルト、何言ってんのよ。そんなのするわけないじゃん。
僕はただひたすらにゆかなさんの婿であり嫁だよ? 他の男に譲るわけがない」

古鉄≪・・・・・・バカでしょ≫





(蒼いうさぎ、本気で呆れているようだ。でも、蒼い古き鉄はどこ吹く風)





古鉄≪というか、Remixやルート話でティアナさんの若い身体をその百戦錬磨の毒牙にかけておいて、まだ求めるんですか。淫獣ですね≫

恭文「違うからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! つーか毒牙って何っ!?
百戦錬磨ってなにっ! 人を女ったらしみたいに言うなっ!!」

古鉄≪何言ってるんですか? あなたを一言で言うと≫





1・豆



2・性悪チビ



3・可哀想な子



4・『このチート野郎っ!!』



5・≪私の相棒兼友人兼イジる対象≫





古鉄≪・・・・・・と、なるんですよ≫

恭文「なるかボケっ! つか、毒牙も淫獣もどこ行ったっ!?
何より四番目で最近僕がティアナやキャロから言われて気にしてる傷でしょっ!!」





(あとは読者?)





恭文「僕の傷口に遠慮なしに爪を突き立てたのは誰っ!? あと、最後はアルトの幕間そのにでの発言じゃないのさっ!!
もうあれ一言でもなんでもないしっ! 何より何より、おのれは一体何がしたいっ!! ワケ分からんわっ!!」

古鉄≪そんなの、現在過去未来でこのページを開いている全員が思ってますよ。
あなたそんなことも分からないんですか? 全く、だからあなたは主役が出来ないんですよ≫

恭文「だったら最初からやるなぁぁぁぁぁっ! てゆうか、この話の主役は僕だからねっ!?」





(・・・・・・こうして、話は進みます)





恭文「進むのっ!?」

古鉄≪進みますよ。・・・・・・あ、それとそろそろ今回の話に行きたいと思います≫

恭文「そーだね。キリもいいし。で、今回の話は?」

古鉄≪私が主役になります≫





(青い古き鉄、固まる。それはもう見事に)





恭文「・・・・・・は?」

古鉄≪私が主役です。今回は、全編私視点です。そう・・・・・・返り咲いたんです≫

恭文「はぁっ!? つか、返り咲いたって言うなっ! 主役は僕だからねっ!?」

古鉄≪それでは行きましょう。主役の返り咲きです≫

恭文「無視するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」






















魔法少女リリカルなのはStrikerS  外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第27話 『見てのお楽しみと言って、本当に楽しみにするだけの価値のあるものが入っていることは、本当に少ない』



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・さて、改めて自己紹介です。みなさんどうも、毎度お馴染みの私です。

私は古き鉄・アルトアイゼン。アームドデバイスと呼ばれる機械です。

なお、私の名前は私の前マスター・・・・・・グランド・マスターが命名。





あの人がつけてくれた大事な名前です。私が私であることの証明と言っていいでしょう。

アルトアイゼン・・・・・・グランド・マスターの先祖が居た世界のとある国の言葉。

『古き鉄』を意味する言葉が私の名前。私はこの名前が大好きだったりします。





某孤狼がどうとか言う人が居ますが、一応その国の言葉なんですよ?

ジガンスクードも同じです。いや、国は違いますけど。

そこの所をちゃんと踏まえていただきたいと、勝手ながらに最近思ったりします。





少し話が逸れましたが、この言葉はグランド・マスターの心根そのもの。

あの人という人間をそのまま映し出していると、私は勝手ながら思っています。

・・・・・・私にとってそれを否定されるということは、存在そのものを否定されることです。





大体、どいつもこいつもうざったいんですよ。評論家気取りにも困ったもので。











「待て待てっ! なにいきなり妙な話してるのっ!? いきなり過ぎてびっくりしたわっ!!」

≪いえ、ちょっと≫



今話しているのは、皆さんご存知私の現マスター。二人目の男とも言えるでしょう。



「アルト、その呼称はやめて」

≪あなたこそ人の心を読み取るの、やめてもらえます? ・・・・・・このハート泥棒がっ!!≫

「おのれのハートを盗んでどうするっ!? 僕に何を求めているのさっ!!」

≪そんなの、私の引き立て役としての動き方に決まってるじゃないですか。ほら、私がとまとの真・主人公ですし≫

「だからとまとの主人公は僕なのっ! なんで普通におのれの方が上なのさっ!!」





そして読者の皆様を除くと、グランド・マスターと同じく、私を『アルト』と呼んでいる人間です。

いえ、ちょっと違いますね。私がそう呼ぶことを許している、ただ一人の人間です。

グランド・マスターのデバイスとして産み出された私が、自分の意志でマスターと認めた人間。



それが彼です。グランド・マスターと同じく、心に錆びた鉄を持っている難儀な人。

・・・・・・ま、能力は比べるまでもないですが。

今はこの辺りはいいでしょう。この人がヘタレなのは、新暦が始まるより前に決定していること。



今私達が気にしなくちゃいけない問題はそこじゃありません。





≪あの、どういう事ですか?≫

「お願い、何も言わないで」

≪私、さらば電王見たかったんですけど。ミッション話の名言を実行したかったんですけど≫

「僕だって同じだよ。・・・・・・あぁ、なんでこんなことに。本気で逃げればよかった」

≪逃げても捕まえられそうですけどね≫



捕捉が必要ですね。現在は10月。つまり・・・・・・第1話の段階です。

まぁ3クール目突入記念の特別編ですし、まずは私視点でのダイジェストが妥当かと。



≪しかし・・・・・・高町教導官達はまた無茶を≫

「・・・・・・本気で六課に居ればよかったと、ちょち後悔してるよ。
これだけトラブル尽くしだったら、今頃フェイトにバストタッチくらいは」

≪出来てませんよ。というより、出来ていたら奇跡でしょ≫



・・・・・・そう、機動六課という部隊への出向を依頼されたのです。

この辺りの経緯は・・・・・・って、説明する必要ありませんよね。1話で言いましたし。



「とりあえず、書類関係だね。全く、休みも無しで二期突入っておかしくない?」

≪その通りですよ。我々の都合を考えてから無茶をして欲しいです≫










まぁ、そんな事を言っても仕方ないのですが。





放っておけるほど、この人はクールにはなれません。





・・・・・・身内には甘いんですよ。だから、ハーフボイルドです。



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・そうして、書類を必死で片付けて六課に出向となりました。





ただ、ご存知の通り色々な困難と苦労があったわけです。










「・・・・・・アルト」

≪はい?≫

「六課ってことは・・・・・・居るよね」



・・・・・・あぁ、居ますね。フェイトさんの保護児童が。



「どうしようか」





・・・・・・実は、マスターはその子達にヤキモチを妬いていました。

その子達の世話で、フェイトさんとの時間が少ないですしね。

そのせいで、今まで一度も会ったことが無いのです。



あとは心配要因でもあるわけですよ。フェイトさんは自己犠牲癖が強い人ですし。





≪どうしようも何も、極力仲良くしていくしかないでしょう。
フェイトさんとの関係を進展させようと思ったら、関わらないわけにはいきませんよ≫



まぁ、きついですよね。色々と。本気で何を話していいか分からないようですし。



「・・・・・・そーだね。気合い入れないと、ダメか」

≪アレですよ。いきなり模擬戦とかすればいいんですよ。肉体言語で仲良くなればいいでしょ≫

「あー、それがいいかも。・・・・・・でも、そんなどっかの魔王みたいなことするのもなぁ」

≪そうですね。相手は魔王でも冥王でもないんですし、普通にコミュニケーションすればいいでしょ≫



あんな魔王みたいな真似をしていたら、人間関係は普通壊れますよ。

主人公キャラの補正がかかっているから、上手くいくだけなんです。



「それもそうだね。・・・・・・あはははははははははっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・きっと、こんなことを言っていた私達は、まだ幸せだったんでしょう。





あ、もしくはバチが当たったのかも知れません。なぜなら・・・・・・現状がコレですから。










「・・・・・・で、アンタにちょっと聞きたいんだけど。何で途中までカートリッジ使わなかったのよ」





そう、本当にやりましたから。相手はスバル・ナカジマ。

六課所属の陸戦魔導師で、マスターと私の友人であるギンガ・ナカジマ・・・・・・ギンガさんの妹さん。

いや、まさかいきなりこうなるとは。というか、なぜ姉妹揃ってこういう流れになるんですか。



ゲンヤさん、あなたは娘さん達の育て方を少し間違えています。魔王のように肉体言語で(ry





「いや、省エネ思考だから。僕は世界にもっとも優しいエコロジー魔導師なのよ?
あれだよ、そういう協会に入ってるんだから。あ、会員証見る?」

「そういう問題じゃないわよっ! スバルが全力でかかってきてるのに、それにちゃんと応えないってどういうことっ!?
あと、そんな協会ないわよねっ!? 私は局員だけどそんなの聞いたこともなければ見たこともないわよっ!!」



そうでしょうね。だって、現実にそんな協会ありませんから。

というか、そんなのがあったら魔王はタコ殴りでしょ。世間の評価的に。



≪あー、別にそういうわけではないんですよ。
元々私達は、カートリッジやデバイスの機能は使わずに戦うようにしているんです≫





私の方に視線を向けたのは、オレンジ髪のツインテールの女の子。

それに10歳前後の男の子と女の子。あ、三人とも六課部隊員です。

ツインテールの方が、ティアナ・ランスター。まさにツンデレですね。



そして、男の子がエリオ・モンディアル。女の子がキャロ・ル・ルシエ。六課所属の陸戦魔導師です。

なお、エリオさんとキャロさんが、マスターの懸念事項だったフェイトさんの保護児童です。

まぁ最初からゴタゴタしてもあれですよね。どうせ後からゴタゴタするでしょうけど、しっかり説明しましょう。





「えっと・・・・・・アルト、どういう事かな」

≪キャロさん、すみませんがアルトアイゼンでよろしくお願いします。
私をそう呼んでいいのは、マスターと認識している人だけですので≫

「あ、ごめん」



まぁ、ここはハッキリしておきましょう。私にとっては大事な要素ですから。



「・・・・・・ってそうじゃないっ! 使わないようにしてるってどういうことよっ!!」

≪ほらマスター、説明しろ≫

「なんでいきなり命令口調っ!? ・・・・・・あー、分かったよ。
まず僕には、魔法での戦い方を教えてくれた人が二人いたの」



まぁ、この辺りは毎度おなじみの『・・・・・・かくかくしかじか』という感じですね



「・・・・・・つまり、そのチートレベルで無茶苦茶強い先生の教えと」



否定は出来ませんね。あの人だったら多分、スーパーサイヤ人とだってやり合えるでしょうし。

いや、もしかしたら色んな偶然でもうやり合っている可能性もあります。だってあの人、フリーダムですし。



「それでヴィータ副隊長やみんなも承知の上で」

「そうだよ。その手のを使わなくても、エース級やらなのはやフェイトみたいなオーバーSに勝つのが目標なの」



目標というより必須項目ですけどね。この人運が悪いから、妙なのとやり合う事が多いんですよ。

腕を斬っても一瞬で再生とか、無機物・・・・・・銃器などと融合してその能力を使えるとか。



≪まぁ、まだまだですけどね≫





現にスバルさんには後半圧されっぱなしでしたし。ただ、ここは仕方ないでしょ。

バインドや射撃は使いたくなかったですし、クレイモアも躊躇いましたから。

本気でスバルさんを『潰そう』と思えば出来たでしょうけど、それは当然ダメ。



・・・・・・よくよく考えたら、適当に負けるという選択肢もあったんですよね。



ただ、最初が肝心ですしそれはやっぱり無し。色々と難しいものです。





「・・・・・・でも、今日それをする必要はあったんですか?」



そう言ってきたのは一人の少年。というか前述のエリオさん。・・・・・・やっぱりご不満ですか。



「エリオ君の言う通りです。一種の歓迎会みたいな感じだったのに、それでやる必要ありません」

「そうよ。言ってることは分かるけど空気読みなさいよ。ここで通す必要は」

≪残念ですが、それで戒めを解除する理由にはなりませんよ≫



私達・・・・・・というか、この人がそれをする理由にはならない。

もちろん、ここもちゃんと理由があります。別にこの人がKYとかじゃないんですよ。



「・・・・・・ぶっちゃけると、初対面の人間の前で戦闘に関する手札を晒したくないってのもあった」



この人、秘密主義が人の皮来て歩いてるようなもんですから。必要じゃなかったら、普通に手札切りません。



「まぁあれだよ。フリーの魔導師なんてやってるとさ、結構色々な状況で戦うのよ」



特にヒロさんとサリさんと親しくなってからはそうですね。実戦訓練と称して、仕事をすることもありましたから。

で、さっき言ったような感じで・・・・・・まずいですね、やっぱりこの人は運がありませんよ。



「味方・・・・・・局員に内通者なり裏切り者が居て、こっちの情報が駄々漏れとか。
その手の連中に偽の情報掴まされて、奥まった所でいきなり襲撃とか」

≪あー、ありますね≫

「もうちょい言うと、こっちのスキルバレバレ? そういうのに備えて手札はあんま見せたくないのよ」



悲しいかな、それは現実です。管理局というのは、綺麗な組織では無いんですよ。



「・・・・・・あの、僕達はそんなことしませんよ?」

「そうですよっ! それに・・・・・・あり得ませんっ!!
そんな風に局の、同じ部隊の仲間を疑うなんて・・・・・・!!」



・・・・・・坊やですね。年齢もそうですけど、思考からそれですし。



「ガキンチョ共、バカじゃないの?」

「バカってなんですかっ!? バカは恭文さんの方ですっ!!」

「じゃあ、お前らが関わったJS事件は誰が起こしたのさ」



この人がそう言うと、二人は口を閉ざしました。ここは当然ですよね。

最高評議会やレジアス中将が原因で起きた事件。それが・・・・・・JS事件です。



「別に主犯である最高評議会やレジアス中将が、ぶっちぎりで誰からも信頼されてなかったってわけじゃないでしょ。
連中を信じて、自分の命や覚悟、信頼を預けて仕事してた人間はたくさん居る。つまり、そういう事でしょ」

「で、でも私達はレジアス中将とは違います。フェイトさんやなのはさん達だって居ます。
例え他の人がそれでも、私達は絶対に違います。お願いですからここではちゃんとしてください」

「違わないでしょ。お前らが局員で、不正や汚職をやった人間のお仲間だってのは変わらない。
あのさ、こういうところで仕事してんだから、少しばかり自覚持った方がいいんじゃないの?」



非常にめんどくさそうな顔で、この人は言います。・・・・・・まぁ、いいでしょ。

普通に慣れ合いもめんどいですし、ここでそれをやるのも私は嫌いです。



「お前らが着てるその制服は、なんのためよ。自分達が管理局という組織に、想いを預けた証でしょ。
それを着ている以上は一蓮托生。極悪人が遠い位置に居たとしても、同列と見なされるのが常識」





だからこそ、局の支持率が下がると局員が白い目で見られるわけです。

不祥事したのは別の人間だから、自分達には全く無関係なんて言うのは、嘘ですよ。

本人達はどうあれ、同じ制服を着ている以上、そういう事になります。



まぁ、ここが完全無欠に知り合いだけならまだいいですよ? でも、そうじゃない。

だからこの人だって、これだけ言うわけです。しかし、フェイトさん達は何してるんですか?

普通にこの辺り、言われなくても納得するでしょ。いや、してなきゃおかしいですよ。





「もう一度言うね。JS事件の主犯は、管理局。そしてお前らはその主犯の仲間。それは絶対に変わらない。
それなのにいきなり人に信用されるなんて、期待しない方がいいね。少なくとも市井の方々はそういう思考だよ」



・・・・・・蓋を開けてみればスカリエッティが悪の組織の中ボスの位置だったのには、ビックリしましたけどね。

ただ、そこも事実なんですよね。人としての道理どうこうを除くと、世間の目って冷たくて残酷なものですから。



「・・・・・・そんな」



さて、そこはともかくそろそろ止めますか? 普通にこの人、イライラモード出してますし。



「・・・・・・あー、もうわかったわよ」

「ティアさん、でも」

「仕方ないでしょ? 言ってることは間違いじゃない。まぁ、アンタ達は知らないかも知れないけどさ。
そういうのが原因で部隊が危機に陥るって、多いのよ? 実際ミッド地上でもその手の事件は今も起きてる」



・・・・・・意外と簡単に納得しますね。ふむ、興味深いです。というか、マスターと同じ匂いがします。



「あと、組織どうこうも同じ。アンタ達だって、管理局の支持率が下がってるのは聞いてるでしょ?」

「それはあの・・・・・・僕もキャロもニュースで」

「同じ制服着てるって言うのはね、コイツの言う通りの意味があるのよ。そうじゃなくちゃ、なんのための制服か分からない」



管理局が市民の安全と平和を守るという趣旨で動いている組織なのは、変わりません。

これはただの飾りではなくシンボル。局員同士の意思統一も、制服がある意味合いに含まれています。



「『全部が悪いわけじゃない』とか、『自分や自分の周りは違う』とか、私達にとっては言い訳よ。
別に他の責任取るために命捨てろとは言わないけど、そういう目で見られる覚悟は必要だと思う」



そう言われて二人は・・・・・・あぁ、キャロさんの方ですね。エリオさんはまだ軽いです。

俯いて、軽く反省モードです。そしてあの人は・・・・・・勝ち誇った顔してますね。・・・・・・仲良くなれませんよ?



「で、そこは置いておいて一応確認。・・・・・・他に理由はないの?」

「あとは・・・・・・僕、ポテンシャル低いからさ。知られると対処されやすくなるからとか?」



ティアナさんが、少し目を細めます。そして、マスターを見極めようとしているのか、ジッと見ています。



「なのはやフェイトみたいに天才でもなければ、みんなみたいなエリートでもないもの。
凡人の一魔導師が戦場で生き残るためには、疑いという鎧も時には必要なのよ」



・・・・・・・よく言いますよ。基本知らない相手にはその鎧を全開装備しているヘタレのくせに。

魔導師どうこうじゃなくて、中身がヘタレで一部例外を除いて人見知りだからじゃないですか。何嘘ついてるんですか。



「・・・・・・分かった、私は納得したわ。ただし、スバルにもちゃんと説明して。で、私らは手貸さないから」

「うん、もちろんそのつもり。揉めるのもゴメンだしね。
局員は嫌いだけど・・・・・・スバルは別に、今のところ嫌いじゃないもの」

「そっか。まぁそう言ってもらえると色々助かるわ」





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・まぁ、あとは皆さんご存知の通りですね。揉めるんですよ、別口で。

こんな感じで六課の日々は始まっていきました。まぁ、中々楽しかったですけどね。

懸念事項とも少しずつ仲良く出来始めて、すっかり上下関係が出来上がりましたし。





というか、なんでキャロさんルートなんて話が出てるんですか?





理由に覚えのある方はぜひ詳しく教えてください。私の好奇心を満たすために。










「・・・・・・アルト、それ分かったら僕にも教えて。真面目に分からないの」

≪そうですよね。私も分かりません≫

「・・・・・・二人とも、何を話してるの?」

≪気にしないでください≫



・・・・・・さて、ダイジェストはここまでです。ここからは本編ですよ、みなさん。

現在、最近色々な意味で進展したフェイトさんとお話中です。理由は。



「うーん、分かってはいたけど結構資格関係って大きいよね」

「そうだね。補佐官資格も大きいけど、やっぱり他も取ってみたらどうかな」

「・・・・・・でもなぁ」

「やっぱり興味が出ない?」



最近、二人で進路の事をあれこれ話しているんです。今も仕事が終わってから談義中。

色っぽい話題はありませんが、それでもコミュニケーション出来ているからよしとしましょう。



「ごめん。なんかさ、局の仕事に関わる気が本気で無いんだ」

「謝る必要ないよ。・・・・・・私達が今までの積み重ねで、ヤスフミの信頼を損ねちゃったのが原因だもの。
あ、それなら局に関係なく色々活用出来る資格なんてどう? 取っておくと便利・・・・・・みたいな」

「あ、なるほど」





なお、本日の議題は資格関係です。話の流れでそうなりましたが、この人はやっぱり乗り気じゃありません。

とにかく魔法能力以外でもそういうのがあると、この先色々と便利です。今日はそんなお話をしています。

救いはフェイトさんが前ほど局入りを押してこなくなったことでしょうか。私が大変だった時に、色々あったようです。



だからこの人も、前よりはずっと素直にフェイトさんの言葉を聞けます。





≪この人の場合、戦闘バカな傾向が強いですしね。仮にフェイトさんの補佐官になった場合≫



少し考えます。そしてよーく考えます。そしてお金は大事・・・・・・結論、出ました。



≪あ、それでいいかもしれませんね。そもそも、それ以外で勝てないでしょう≫

「・・・・・・言わないで。確かに色々負けてるけど、言わないで」



渉外・事務・デバイス整備関係に強いシャーリーさんに、捜査官として動くであろうティアナさん。

そしてこの人・・・・・・戦闘能力とノリ以外では勝てませんね。普段はバカですし。



「でも、それでも資格取得は考えていいと思う。繰り返しになるけど、スキルアップは大事だもの」

「・・・・・・あ、それなら取りたいのが」

「なに?」

「デバイスマイスターの資格」



・・・・・・フェイトさん。その不安そうな顔はやめてあげてください。

いや、分かりますよ? とんでもないのを作りそうとか思いますし。



「・・・・・・フェイト?」

「あ、あの・・・・・・なんで?」

「だから、なんでちょっと涙目なのっ! 顔が青ざめてるって、おかしくないっ!?」

≪いや、無理ありませんから≫



・・・・・・本気で杭打ち機とか、アレとかコレとか作りたいと思ってるのかと考えてしまうんですよ。



≪ほら、私のか弱いハートだってビクビクなんですよ≫

「いや、どこがか弱いのっ!?」

≪全てです≫



ホントですよ? 私、普通に全てにおいて完璧ですけど、それでもビクビクです。



「自意識過剰だねおいっ! そして即答かいっ!! どんだけ自分に自信持ってるっ!?
どうしてそうなるのかぜひとも詳しく聞きたいんですけどっ!!」

≪あなたより私の方が人気があるからに決まっているでしょ? だからこその特別編なんですよ≫

「うっさいバカっ! つーか人気の話を今ここでするなっ!!」

「まぁまぁ。でも、どうして?」



きっと、杭打ち機を作りたくて。



「取ったら自分でアルトのメンテしたり、なにかあってもすぐに応急修理してあげられるかな・・・・・・と」

≪・・・・・・え?≫

「ヤスフミ、そうなの?」

「うん。ヒロさん達も開発局に入ってからアメイジアや金剛にはそうしてるって言うし、僕も資格取るなら・・・・・・いいかなって」



あぁ、言ってましたね。だから・・・・・・なんというか、この人バカですよ。

なんで自分のスキルアップのための資格を、私のために取るんですか。



≪マスター≫

「うん?」



まぁそれでもこういうのは必要でしょ。きっと。



≪ありがとうございます≫

「・・・・・・うん」

「なら、AAAの試験が終わったら勉強してみようか」

「そうだね。優秀な先生が、ちょうど三人も居るわけだし」





全く・・・・・・この天然フラグメイカーは。私のフラグまで立てるつもりですか。

・・・・・・いや、嬉しいですよ? マスターに気遣ってもらえて、デバイスとして嬉しくないはずがありません。

ま、どんなにバカでもこういう人だから、私も一緒に戦えるんです。そこだけは間違いない。



小さな枠に縛られない、縛られる言い訳をしない自分を目指しているこの人だからこそ、パートナーと認めたんです。





「でも、やっぱり羨ましいな」

「どうして? というか、いきなりだね」

「だって、ヤスフミとアルトアイゼン、本当に繋がっているから。いっぱいコミュニケーション出来るし」

≪・・・・・・まぁ、あれですよ。この人バカですし、ちゃんと話さないとダメなんですよ≫

「そんな理由っ!? もうちょい良い言い方してよっ!!」



・・・・・・分かってないですね。普通にあなた誉めて誰が得するんですか?



≪分かってないですね。そんなこと言ってもつまらないじゃないですか≫

「断言するなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

≪主に私がっ!!≫

「だからなんで断言するっ! それもさっきよりも力を込めてっ!! そして『私が』ってなにさっ!?」










なお、なぜかフェイトさんが優しい顔で笑っているのは、気のせいとしましょう。





そして話を終えて自室に戻る道すがら、通信がかかりました。・・・・・・問題ありませんね。ポチ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『もしもし、なぎ君』

「ギンガさん?」





かけてきたのはギンガさんです。確認した上で繋ぎました。

はい、こういうの結構やります。だって、この人の反応が面白いですから。

しかし、また嬉しそうな顔を・・・・・・やはり、真ヒロインですね。



普通にギンガさん、この人の事が好きなんじゃないかと思う時があります。えぇ、たまに。





「どうしたの?」

『えっと、なぎ君に話が』



あぁ、なるほど。つまり・・・・・・そういう事ですか。



≪愛のこくは≫

『違うわよっ! お願いだからなぎ君も顔を赤くしないでっ!!』

「じゃ、じゃあ・・・・・・どうしたの?」

『だからどうしてドギマギしてるのっ!? ・・・・・・だから、その・・・・・・聞いたよ』



聞いた? 何を誰にでしょ。というか、あなたもドギマギしてるでしょ。



『・・・・・・今、かなり辛い状況だって』

≪「はい?」≫



ついハモってしまいました。・・・・・・なにか悔しいですね。



『・・・・・・違うの? あの、自宅をリンディ提督に占拠されて追い出されたって』

「・・・・・・ううん、違わない。てゆうか、何故にそれ?」



なお、マスターや私は話していません。・・・・・・あ、予測がつきました。



『えっと、スバルから』

「あの豆芝ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



・・・・・・スバルさん、知っていますしね。というか、普通にあの人バカでしょ。



『あ、スバルは怒らないであげて? ・・・・・・なぎ君の事、心配しての事なんだ』

「え?」

『自分達の前では平気にしてるけど、そんな状況で辛くないはずない。
だからもしよかったら友達として、力になってあげて欲しいって』

「・・・・・・マジ?」

『うん』



・・・・・・あの人、KYだと思ってたんですけど、一応色々考えてるんですね。ビックリですよ。



「・・・・・・まぁ、スバルにはあとでお菓子でも奢ってあげる」

『うん』



素直じゃないですけど、一応は感謝らしいです。というかギンガさん、これが分かってたから話しましたね?



「というか、用件ってそれだけ? それだったら、また遠慮なく愚痴らせてもらうけど」

『ううん。最近どうかなーって思って。ほら、結局アレ以来あんまり会えてないから』

「そう言えばそうだったね」



そしてこんな話をしながらも歩いていきます。

廊下では迷惑になるので、一旦方向転換。隊員寮のロビーの方に。



『あのね、なぎ君』

「うん?」

『・・・・・・うちに来ない?』

「・・・・・・ギンガさん?」

『ごめん、ここは冗談。まぁ、ちょっと相談したい事の前振りなんだ。
・・・・・・なぎ君も知っての通り、地上の戦力不足は深刻だから』



ミッド地上は慢性的な戦力不足が騒がれています。JS事件後は特にですね。事件が起きた遠因でもありますから。

ですが、管理局は愚鈍ではあっても、バカではありません。現在、その見直しの真っ最中です



『正直ね、うちの部隊長も困ってるの。ほら、AMFとかは教導隊で対策は整えてくれるわけじゃない?
ただ、それを待っているだけでいいのかなーって、今現在かなり悩んでる』

「あー、そういう事か。確かに教導隊の改善プログラムがいつ出来るかとかは、分からないしなぁ」

『うん。現実問題として、うちは対AMF戦関連はさっぱりだし。
なぎ君をあの時誘っていたのは、まぁそういう意味合いもあるの』

≪その辺りの補填というか、補充要員としてですか≫



画面の中のギンガさんが、少し困った顔で頷きます。・・・・・・今こうして繋がれるのは、友達だからですね。

友達だから局員でも繋がれる。当たり前な事のように見えて、大事なことだと私は思います。



≪でも、AMFなんてなんとかなるでしょ。ギンガさん、あなたノリが足りませんよ。
戦いは、ノリのいい方が勝つんですから。ノリと勢いがあればどうにでもなります≫

「あ、そうだね。何事も勢いだって。勢いがあれば、なんとでもなるよ」

『ならないよっ! というか、ノリでなんとかなるのはなぎ君達だけだからっ!!』



失礼な。この人はともかく、私は世界のスタンダードですよ。・・・・・・すみません、冗談です。

現になんとも出来ない人間が居ますから。例えば六課隊長陣だって、例外じゃありません。



『それに私やスバル、なぎ君みたいな特殊例はともかく、普通の魔導師は完全キャンセルされて質量兵器なんか使われたりしたら』

「・・・・・・僕、改めて思うんだけどさ。訓練校でそういうフィジカルな訓練ってしてるじゃない?
なんでそこで『魔法無し』で相手をぶっ飛ばす技能とかを、局は叩き込まないのよ」





局の魔導師や前線に出るメンバーの大半は、魔導師です。

ここは管理局が魔法文化を推奨している関係でそうなってもいます。

では、魔法能力を持たない人は? そういう人は前線には基本出れません。



例え某御神の剣士張りに強かったとしても、そこは同じくなんです。

魔法以外の武装で、それを全く経由しない技術で戦うことは、局員にはご法度も同じ。

魔法文化を推奨している組織であるが故に、そういう所は厳しいんです。



あとは殺しですね。管理局は犯罪者の未来をも救うというのを理念の一つにしています。

非殺傷設定という効率のいいシステムが産まれたからこその綺麗事・・・・・・ですが、同時に理想。

今ようやく、長い年月を積み重ねてそれが普通の事として捉えられるようになりました。



だからこの人だって、アレだけ散々言われるわけですよ。





「空飛んでドンパチってのは無理だとしてもよ? 普通に肉弾戦なりトラップ使えば、充分可能なのに」

『それは仕方ないよ。局の風潮として、魔法エネルギー以外の戦力は保持しないようにとしているし。
それに銃器関係の扱いだって、基本そのサポートみたいな物でしょ?』

「まぁね。・・・・・・あー、そっか。つまりそういう訓練をする事自体が、局の風潮や理念に逆らっていると。
基礎訓練や護身術程度はともかく、魔法に全く依存していない戦闘のための訓練はアウト」

『うん。少なくとも私が訓練校の時は、そんな理由で魔法無しでの戦闘訓練とかはなかった。
多分スバルやティアナ、エリオ君達にうちの部隊員、六課隊長陣も同じじゃないかな』



メンドイですね。ただ、だからこそ今普通に問題になっていると考えれば、分かりますけど。

普通のベルカ式魔導師だって、魔法無しだとガジェット一体輪切りに出来ない有様・・・・・・ん?



「あの、ギンガさん。一つ質問」

『なに?』

「魔法無し・・・・・・AMFによる完全キャンセル化状態での戦闘訓練って、マジで経験ないの?
ギンガさんだけじゃなくて、108の部隊の人もだよ」



・・・・・・頷きましたか。うん、それなら良い機会ですね。



「うし、それならギンガさん・・・・・・明日暇なら六課に来て」

『え?』

≪あ、それはいいですね。あなたやゲンヤさんの懸念の答えの一つ、お見せ出来るかも知れません≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして翌日。朝一番でやってきたギンガさんも加えて、ある一大イベントが行われました。





その場所は六課の訓練スペース。シチュは廃棄都市群。





廃ビルが建ち並ぶその中で行われたイベントとは・・・・・・これです。。










「・・・・・・つーわけで、今回は私とサリと特別ゲスト達による、ちょっとハードな特別講習〜♪」

≪ドンドンパフパフ〜♪≫

『サーイエッサー!!』



・・・・・・アメイジア、ファンファーレなんて流さないでください。データ領域の無駄でしょそれ。



「・・・・・・楽しそうですね」



あとマスター、高町教導官を初めとした隊長陣も、頭を抱えないでください。

いや、分かりますよ? 何で居るのかと聞きたくなりますし。



「あれ、恭文・・・・・・というか、みんなどうしたの?」

「・・・・・・どうしたのじゃないからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! アンタ、何で居るのっ!?」





そう言ってマスターが指差すのは一人の女性。

黒髪の三つ編みに抜群のスタイル。その身を包むのは、エリオさん達と同デザインの練習着。

なんと言うか、あれですよね。・・・・・・ほんとになんで居るんですか?



色々垣根超え過ぎでしょ。私、普通にビックリなんですけど。





「いや、エイミィ経由でサリエルさんに頼まれたから」

「こないだ、やっさんちに行ったついでにな。いや、マジで助かりましたよ。ツーと言えばカーでしたし」

「いえいえ。私もこっちの世界には興味がありましたし、あと・・・・・・会いたかったしね」



そう言いながらマスターを見るのは、きっと愛ゆえにでしょう。いや、なんか艶っぽいですけど。



「サリエルさんっ! どういうことですかこれっ!?」



高町教導官、動揺してますね。まぁ、仕方ないでしょう。



「いや、問題ないだろ? つか、特別講師としては適任だったんだよ。
御神の剣士の噂は、俺もやっさんから聞いてたしな」

≪本当は兄上様の方も呼びたかったのですが、さすがに無理でした≫



あの人、普通にドイツですしね。簡単には呼べませんよ。



「ま、とにかく・・・・・・みんな久しぶり。本日、特別講師に任命された高町美由希です」





高町美由希。まぁ、今さら説明もいらないでしょうが、軽く話しておきます。

高町教導官のお姉さんであり、マスターの公式的な現地妻3号です。

・・・・・・マスターにとっては、アンオフィシャルですが。



現在は翠屋の2代目店長に納まっている女性ですが、それは彼女の姿の一つに過ぎません。

高町家は以前説明しましたが、御神流という小太刀の二刀流による実戦剣術の家。

いえ、暗殺術と言った方がいいでしょう。とにかく、それを継承している家系なんです。



高町教導官と、母親である桃子さん以外の全員が、この御神流を継承しています。

もちろん美由希さんも。あとはマスターもですね。ただ、正式に教わったわけじゃありません。

技を盗んだんですよ。組み手の中で、自分の目と身体を通して。この人の得意技の一つです。



なお、美由希さんはその中でもスピードと突き技に特化しており、それはまさに神速。

実際、マスターは本気の美由希さんには、第17話のようにギリギリついていけません。

私の見立てでは・・・・・・クロスレンジであれば、オーバーSとガチでやりあえるでしょう。



防御フィールド? そんなもの斬れるに決まってるでしょ。バリアも発生する前に斬れます。

相手の攻撃は全部回避ですね。広範囲攻撃でもないかぎり、無意味でしょう。

一応言っておきますが、高町家は高町教導官以外は全員非魔法能力者です。



全ての戦闘行動は、鍛え抜かれた技と身体能力で行っています。



改めて考えると恐ろしいですね。いや、本当に・・・・・・この人達なんなんですか?





”・・・・・・まって”



聞こえた声は・・・・・・ギンガさん。相当疑問顔だったので、マスターが説明してました。

それはスバルさんとティアナさんも同じですけどね。エリオさんとキャロさんはまだ大丈夫ですが。



”えっと、私はなぎ君から聞いてたからまぁ、納得出来るの。
でもお願い、それでも言わせて。・・・・・・嘘だよね?”

”いや、ホントだって。てゆうか、ギンガさんは僕のアレコレ知ってるんだから、問題ないじゃないのさ”

”それでもビックリなのっ! 色々鑑みて納得しかけても、私はビックリなんだからー!!”



ギンガさん、必死ですね。まぁ分かりますよ? 恐らく常識外の存在でしょうから。



”そうよ。魔法無しで、何かのレアスキルも銃器もなしでそんな真似が出来るわけないでしょ?
クロスレンジならオーバーSも圧倒出来る? 無理、無理よ。魔法無しでの戦闘って、そんな簡単じゃ”

”・・・・・・本当です。実際僕は見せてもらいましたし、相手をしてもらいましたけど・・・・・・凄かったです”

”エリオ君もフェイトさんもなぎさんも、相手になりませんでした”



あ、ティアナさんは絶句しましたね。まぁ、仕方なしですか。

さて、そんな美由希さんを呼んでまでなにがしたかったかというと。



「今日は、隊長陣を含めたみんなに『AMFによる魔力の完全キャンセル化状態での対質量兵器戦』を体験してもらう」



これが原因です。美由希さんは、恭也さんと香港の警防で質量兵器・・・・・・銃器相手での戦闘訓練もしてますから。

マスターからその辺りの話を聞いていたサリさんが、そういう視点からの意見を言ってもらうために、呼んだそうです。



「あー、美由希ちゃん。後で組み手してもらえる? 私はやっさんから話聞いてて、戦ってみたくて戦ってみたくて仕方なかったのよ〜」

「あ、俺も頼みます。魔法無しのガチ組み手を」

「はい、是非やらせてくださいっ! 恭文からお二人のこと、少しだけ聞いていましたしっ!!」

≪・・・・・・まぁ、説得力無いですよね≫

「うん、無いね。仕事と私情を見事に混同してるよ」



なお、今回こんな特別講習を隊長陣にも受けてもらうのには、理由があります。



「みんなも知っての通り、AMFは魔導師殺しもいいとこだよ。
実際、中央本部が襲撃された時には完全キャンセル化されて、厄介だったしね」

≪で、怖いのはだ。ガジェットはともかく、AMF自体は別に特別でもなんでもないってことだぜ≫



なお、AMFは使用適正ランクがAAAってバカ高いだけで、それ自体は昔からある魔法技術。

使おうと思えば、誰でも使える魔法です。



≪魔法でどうこうってだけじゃねーぞ? ガジェットみたいに、機械的な発生装置を使うって手もあるしな≫





・・・・・・スカリエッティの作ったガジェットが厄介だったのは、AMFが特殊だったからではありません。

その魔導師殺しなフィールドを、小型の自立兵器でありながら使用出来たことにあります。それも単独でです。

その上それが集団で出てくるんですから、恐ろしいことこの上ありません。



そして、アメイジアの言うようにAMF自体は昔から存在する魔法技術です。





「つまり、悪用しようとする人間は必ず出てくるというわけですね?
JS事件のおかげで、魔導師に対するAMFの有用性は、図らずとも証明されていますし」

「シグナムさん正解です。その場合、完全キャンセルにして、質量兵器や物理的なトラップを使ってくる可能性は高い。つか、俺ならそうする。
『魔導師は 魔法出来なきゃ ただの人』・・・・・・だしな。なので、みんなには一回その辺りを経験してもう」

≪そうして自身の能力でその状況に置かれた場合の打開策を、皆さんで考えていこうというのが、この講習の意義です≫



この辺りは個人差もありますが、一度経験しておけば心構えは出来るでしょう。そう意味もあります。

それで高町教導官達は納得したようです。ヒロさんサリさんの後ろにいらっしゃる迷彩服を着こんだ集団がなんなのか。



「で、このむさい男共がその質量兵器を使って、皆をぶっ飛ばそうとする仮想敵ってわけ」

「俺が入ってるサバゲー同好会の連中だ。ただ、舐めてかからない方がいいぞ?
全員、質量兵器使用の許可持ちの武装局員だから。扱いは相当だ」





・・・・・・局では、厳重な審査の元でなら、質量兵器・・・・・・銃火器の保有が認められています。

ただそれは、せいぜいピストル程度なんですが。

バズーカやらミサイルはNGです。複数保有も原則的には禁止です。



しかし、よくそんな人間ばかり集めましたよね。私はビックリですよ。





「みんなの勝利条件は簡単。廃ビルに立てこもったこいつらを全員ぶっ飛ばせばいいから。
・・・・・・んじゃお前ら、説明した通りで頼むぞっ!!」

『サーイエッサー!!』



そしていきなり大きな声を出しますね。普通に全員ビックリじゃないですか。



「ケガしても安心しろっ! 俺と美人の女医さんがすぐに治してやるっ!!」

『サーイエッサー!!』



それでも変わりません。この人達、普通にサリさんが隊長みたいにしてますし。



「特に美人の女医さんってとこが嬉しいだろっ!!」

『サーイエッサー!!』

「お前ら正直だなっ!!」

『サーイエッサー!!』





本当に正直な人達ですね。でも、残念ながらダメですよ。あの人はマスターに首ったけですから。

なお、相手の使う銃器はマシンガンやアサルトライフル(サバゲー用)。弾はペイント弾。

こちらは単独での作戦行動中に敵方の罠にハマったという仮定の元なので、デバイスは起動状態です。



ただし完全キャンセルされているので、形状変換や魔法の行使は出来ません。

カートリッジやフルドライブなどの機能も同じく。

この前提の元、互いの安全を考慮した防護作を整えた上で、行います。



・・・・・・温いとか言わないでくださいよ? 訓練でケガするのもバカらしいじゃないですか。





「・・・・・・それで私はどうすればいいんですか?」

「まずは皆にやらせますんで、美由希さんは採点をお願いします」

「魔導師とかそういうのは関係無くやっちゃっていいから」

「分かりました」



ま、とにかく・・・・・・ここから特別講習がスタートするわけですよ。



「それじゃあ特別講習、始めるよっ!!」

『よろしくお願いしますっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ヒドイね」

「ごめん、ぶっちゃけ俺はここまでとは思わなかった」

「アンタら・・・・・・どんだけ魔法至上主義なのさ。クリアしたのが三人だけって、おかしいでしょ」

≪ガール達、本気で魔法出来なきゃただの人だよな≫

『・・・・・・面目ありません』



マスターを含めた全員が午前いっぱい使ってチャレンジしたのですが、結果は散々足るものでした。



「とは言え、ティアナちゃんとキャロちゃんは仕方ないんだよ。ポジションとスキル的な問題があるし」



まぁ、キャロさんやティアナさんは仕方ないですよ。後衛は、本気でただの人になりますし。



「でも、あれじゃあだめです。すぐに捕まりましたし」



ティアナさんは凄まじく不満顔ですが。



「ティアナ的には不満?」

「当然よ。私、執務官志望だしね。単独捜査をやる状況も出てくるに決まってる。そんな時にあれじゃ」

≪・・・・・・確かに問題かもしれませんね≫

「かもじゃなくて、間違いなく問題よ。本気でなんとかしないと」

「私だって同じだよ。捕まって、人質にでもされたら、それで詰まれる。でも・・・・・・うーん」



・・・・・・バックス二人は、色々と考えたようです。これだけでも、この特別講習は成功でしょう。



「まぁ、その辺りは今後一緒に考えていくから、心配しなくていいよ。シグナムさんとヴィータちゃんはさすがでしたけど」

「まぁちと怖かったですけど、あれくらいならなんとか」

「我々は質量兵器の相手をしたことが、無いわけではありませんでしたから」



だ、そうです。というか、クリアした二人です。で、あと一人が。



「ま、やっさんはクリア出来なきゃおかしいよ」

「改めて思いっ切り賞賛するまでもないな」

「なんか冷たいですね」



そう、マスターです。ただ、これはマスターの能力どうこうじゃないんです。深い理由があるんですよ。



≪何言ってるんですか。ヒロさん達とこの訓練してたでしょ≫

「そうだよ。それに、私と恭ちゃんと一緒に警防の演習にも参加したじゃない。
恭文はこれくらいは出来て当然。というかヒロリスさんじゃないけど、出来なきゃおかしい」

「・・・・・・はい」



経験値が違うんですから、ここで誉める理由が分かりませんよ。えぇ、全く。



「アンタ、そうなのっ!?」

『サーイエッサー!!』

「あー、まーね。美由希さんと一緒にやったのは、しばらく前だけど」



なお、そのきっかけは幕間そのよんからそのはちまでを御覧下さい。



「でも訓練自体はガジェットのAMF対策の一環で、こちらのお兄さん達にも協力してもらって、やってたのよ」

『サーイエッサー!!』



なお、理由は・・・・・・まぁこんな感じです。



「「だって、コイツ運悪いから、完全キャンセルされた中に閉じ込められそうだったし」」

「・・・・・・ヤスフミ」

「お願いフェイト。そんな目で見ないで」



そのせいでこの訓練の比率は非常に多かったです。いや、真面目にありえそうなんですよ。



「・・・・・・納得した。そりゃやらなきゃいけないわ」

「なぎさん、本当に運無いしね。最近のアレコレとかが特に」



・・・・・・これで納得されるってどうなんでしょ。



「で、エリオ君は・・・・・・うん、惜しかった。ちょっとビックリした?」

「はい。こう、思ったよりいつもと違う感じで」

「うん、それで正解だと思う。でも、その違いに合わせていければ次は大丈夫だと思うな。頑張ってね」

「・・・・・・はいっ!!」



美由希さん的には好感触だったわけですね。そして問題は・・・・・・ここからですよ。



「それで問題は、フェイトちゃんにスバルちゃんにギンガちゃん。あと・・・・・・なのはだね」

『はい、すみません』

「わ、私もっ!? ・・・・・・あのお姉ちゃん? 私、ティアナと同じポジションでありまして」

「・・・・・・いや、仕方ないでしょ」



マスターが言うのも無理はありません。不意討ちしようと相手に飛びかかっていって・・・・・・アレですし。



「漫画みたいにこけたし。お兄さん方が一瞬固まったじゃないのさ」

『サーイエッサー!!』

「うぅ」

≪あれはポジションどうこうのレベルじゃありませんよ。
あなた、そんなに萌え要素を増やしたいんですか?≫

『サーイエッサー!!』



ほら、お兄さん達も『その通り』って言ってますよ? さすがにアレはヒドいですって。



「なのは、正直お姉ちゃんは悲しい。というか、そういうのが許されるのは15歳までだよ? 来年20歳でこれはないって」

『サーイエッサー!!』



ホントですよ。あれ、色々アウトですし。



「みんなでヒドイよっ! というか、どうして同意しまくっているんですかっ!?」

『サーイエッサーッ!!』

「意味が分かりませんよっ! というか、それしか言えないんですかっ!?」



まぁ、こっちはいいでしょ。確かにスキル面での問題はありますから。さ、次いきましょ。



「・・・・・・なんていうか、状況に合わせていけてなかったね」

「そうだな。それは俺らも思った」

「はい、面目無いです」



・・・・・・フェイトさん、すっかり落ち込んでいますね。まぁ、仕方ないでしょ。ある意味ブービーですから。



「恭文、どう思った?」

「・・・・・・うーん、フェイトに関して言うなら・・・・・・迷いが見えました」



そしてあなたは、フォローどころか突き落としますか。フェイトさん、何かが突き刺さりましたし。



「『魔法無しで戦いたくない。攻撃したくない』とか思ってるのかなと。
フェイトの身体能力や反応なら充分対処出来るレベルなのに、そのせいで出来てない」

「・・・・・・だ、そうだけど、フェイトちゃん的にはどう?」

「・・・・・・正解です。あの状況だと、組み手みたいに加減出来る自信がなくて。
うぅ、失敗です。銃器相手も経験してるはずなのに、魔法無しだとあんなに違うなんて思ってなかった」



やっぱりですか。まぁ、普段は非殺傷設定でどかーんですしね。無理が無いと言えばないですが。



「うーん、やっぱフェイトちゃんは能力どうこうじゃなくて、まずメンタル面からだね。
普段はいいさ。でも、特殊状況下に放り込まれた時があまりに弱い」

「自分でもそう思います。それにティアナの言うように、執務官の仕事中にこんな状況になったら」

「アウト・・・・・・だよね」



・・・・・・マスターの表情がそう言いながら、重いものに変わります。

想像したんでしょ。そうなった時の状況を。だってこの人、フェイトさんの騎士ですし。



「というかヒロリスさん、あとサリエルさんに魔導師の先生やってるなのはもなんだけど」

「うん、何?」

「私はフェイトちゃんと組み手してるから、フェイトちゃんのスキルの高さは凄く知っている。
なのにコレって・・・・・・局では魔法無しでの戦闘に関して、どういう教え方をしているの?」

「えっとね、基本的にはご法度という事にしてあるの。局は魔導師・・・・・・魔法エネルギーが主な戦力だから」



この辺りは昨日も私視点で・・・・・・・あ、そう言えば今回は全編私押しでしたね。ここは当然ですか。



「ようするに、私や恭文がやってたみたいなガチで魔法無しで相手を倒すための訓練はしてないと」

「うん。警防でやってたような、銃器相手の訓練はしない。やるにしても、魔法があること前提。
そこだけはどこの学校も間違いないよ。フィジカルの訓練は、あくまでも基礎的なものに留まってる」



つまり、倒すためとかではなく、単純な土台作りのためですね。

そこの辺りの差が、昨日話したガジェット輪切りですよ。



「そうですね。そこは俺らが現役時代の頃からそうなってます。
ただ、それも仕方のない事なんですよ。・・・・・・ま、ここは後でまた説明しますんで」

「分かりました。それで、スバルちゃんとギンガちゃん。二人も・・・・・・同じくかな」

「・・・・・・はい」

「いつもみたいに全く動けませんでした」



なお、二人には戦闘機人モードの発動無しでやっていただきました。

リハビリ中のギンガさんはともかく、スバルさんは身体能力だけでも充分行けると思ったのですが。



≪やはり普段とは違うことが、その能力を鈍らせてしまいましたか≫

「まぁ二人は隠し技使えばOKだけど、こういう状況に関しての心構えと対策は決めておいた方がいいね。特にスバルちゃん、アンタは念入りにね」

「・・・・・・私ですか? 捜査官のギン姉とかじゃなくて?」

「そーだよ。理由は簡単。アンタの志望は災害救助担当・・・・・・傷ついた命を背負って、助ける仕事だ。
背負っている時にどっかのバカのおかげでこうなったら・・・・・・どうする? 隠し技も使えなかったら」



ヒロさんの言葉にスバルさんは考えて・・・・・・考えて・・・・・・考えて・・・・・・ショートしました。



「スバルっ!? ・・・・・・熱っ! どんだけ考え込んでたのさっ!!」

「あの・・・・・・! それでも、それでも私・・・・・・!!」

「助けたいんでしょ? 絶対に」



頭から煙を出しながらも、スバルさんは頷きます。

それを見たヒロさんは満足そうに笑うと、こう言いました。



「それなら一緒に考えようじゃないのさ。まぁ、これを一人で打開ってのは無理かもしれない。
でも、状況で心が潰されるような事は回避していくよ」

「・・・・・・はいっ!!」

「あー、そんなに気合い入れると、またフラつくよ。・・・・・・ほい」



マスターがスバルさんの頭に手を乗せます。

すると顔が赤く、熱い感じだったスバルさんの顔が少し楽な表情になります。



「ふぁ・・・・・・冷たくて気持ちいい」

「・・・・・・なぎさん、なにしてるの?」

「冷却属性の魔力を手のひらに薄く覆わせるように構築して、それで頭冷やしてるの。まぁ、冷えピタ程度の温度だけどね」





マスターの得意とする凍結・冷却属性への魔力変換技能。



その力の使い方の一つです。ちなみに、マスターは魔法のこういう使い方が好きです。



戦うだけでも、壊すだけでもない。ただ癒し、ただ幸せを作る。それが、嬉しいんでしょう。





「蒼凪、お前器用だな」

「そんなこと無いですよ。氷結系の魔力はそんなにコントロール難しくないですし」

「いや、難しいだろ。物を冷やすって、簡単じゃねーんだぞ?」



マスターは魔力コントロールがずば抜けて上手いですしね。しかし、スバルさんはまた幸せそうですね。



「・・・・・・恭文、私もして欲しいんだけど」

「熱出したら、してあげますよ」

「恭文・・・・・・気持ちいいよ」

「スバル、お願いだからその言い方やめてっ!!」










・・・・・・この時、私は気付いてはいけないものに気付きました。

一つはギンガさん。こう・・・・・・見てました。形容しがたい色を瞳に込めて。

そして、もう一つは・・・・・・フェイトさん。なんというかつまらなそうでした。





というか、不愉快なものを見る目でマスターとスバルさんを見ていました。





それが良いことなのかどうかは・・・・・・マスター次第ですね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・で、スバルちゃんの熱も冷めたところで、一応のまとめね」

『はいっ!!』

「みんなにやってもらったこと。で、その中で各自が感じたこと。・・・・・・ま、それがAMF対策の一つの形だね」



ヒロさんとサリさんが話を進めます。六課隊長陣も、まるで生徒のようにその話に耳を傾けます。



「・・・・・・というと?」

「魔法ってやつが使えなくなった時、自分に何が出来るかちゃんと把握しておくの。で、使えなくても戦える手段を構築していく」

「そうすれば、テンパったりしなくて済むしな。ただ、別に一人で状況を打破する必要はないぞ?
バックヤードの援護が来るまで持たせられるようになるだけでも、充分だ」

≪ヒロリス女史、主。それは私が言ったことです≫

「「うっさいなぁっ! 分かってるよっ!!」」



・・・・・・まぁ、言うのは簡単ですが、やるのは難しいですよね。

相手をするのが人間ばかりとは限りませんし。



「この辺りにフェイトちゃんとティアナちゃんが懸念した事柄への答えがあるんじゃないかな。
単独でどうこうではなく、ちゃんと後ろをしっかりすること。そのための土台を作ること」

「これからのご時世、執務官でも単独行動はアウトだと俺らは思うな。
やるなら、最低でもツーマンセルのチーム体勢を作るべきだろ」

「・・・・・・確かにそうですね。今から一人でどうにかしようとしても、時間はかかるでしょうし。
よし、それならティアナ、一緒に居る間にそこの辺り、入念に考えてみようか」

「はい。よろしくお願いします」



現在の執務官と未来の執務官が納得した所で、話は進みます。次に口を開いたのは、美由希さんです。



「あと・・・・・・気構えが必要かな」

「気構え?」

「そうだよ」



・・・・・・二人に並ぶようにして立っていた美由希先生が、話は続けます。



「まぁ、フェイトちゃん達を見ていて思ったんだけど、こういうのって・・・・・・いつものみんなの戦い方とは違うわけでしょ?」



その言葉に全員が頷きます。そう、違います。根本となる魔法が使えないのですから。



「あのね、フェイトちゃんやみんなが感じた『いつもと違う』とか、そういう戸惑いは正解なんだ。
私もそうだし恭文だって、そういうのを感じて訓練したの。単純に恐怖もあるし、状況の異常さもある」



普通はそんな無茶な真似、やりたいとは思いませんしね。ここは同意です。



「それになにより、みんなはバリアジャケットや高い攻撃力に守られてるでしょ?
普段は魔法という、そんな鎧で守られている事。それがそう思う一番の原因なんだよ」

「・・・・・・あの、美由希さん・・・・・・どういう事でしょうか。私、よく分からないんですけど」



スバルさんがそう聞くと、美由希さんは変わらない様子で答えていきます。

基本お姉さんキャラですから、人を安心させるように少し微笑んでいたりするのが特徴です。



「えっとね、私も経験あるんだけどそういう強い力・・・・・・自分の身を守る鎧に守られていると、自然と隙が出来るの。
本当に無意識の間にその隙は出来ていて、どんなに全力を出したとしてもその隙がある限り、全力になり得ない」



アレですよ、スプリガンで終盤に御神苗優さんがAMスーツ使わなくなったのと、同じ理屈ですね。

つまりどんな訓練をしていても普段のみなさんは、魔法という鎧有りきの戦い方をしているわけです。



「ただ、今日の様子やみんなの話を色々考えて、魔導師と私みたいなのって明らかに違う路線だと感じた。
一概に私達のやり方をみんなに当てはめるのもまた違うなーとも思ってる。だけど、まずそういう側面がある事は覚えておいて?」

「強い力・・・・・・そういうのがあるから、私達は全力を出し切れていない。それも、無意識にですよね」

「そうだよ。強いということは、逆に仇になる場合もあるってこと。
とても能力がある人間は、それを除くと逆にとても弱いのかも知れないね」

「・・・・・・はい」



スバルさんがそう返しながら、マスターを見ます。なにか納得したような顔になるのは・・・・・・色々あったせいでしょ。



「とにかくそうなると、当然出てくる結果もいつもとは違うと思うんだよね。
・・・・・・多分、私や恭文、ヒロリスさん達寄りになるんじゃないかな?」



真剣な顔で美由希さんが言うと、全員の表情に影が差しました。言いたいことが分かったからです。

非殺傷設定で安全に殲滅など出来ない。場合によっては・・・・・・・そうなります。



「・・・・・・美由希さんの言う通りだな。完全キャンセル化内での戦闘を考えていく場合、その問題は外せねぇ」

「そうだな。かと言って、今後の事を考えると、回避というわけにもいかん」

「悪党と外道は狡猾って、相場が決まってますから。俺らも現役時代にそういうのはやんなるくらい見ています」



サリさんが言ったようなシチュエーションは充分にありえますね。

・・・・・・あー、空気が重いですね。よし、いい話をしますか。



≪問題はないでしょ。相手を殺せるくらいに強くなればいいんです≫

「アルトアイゼンっ!?」

「アンタ、いきなりなに言ってるのよっ!!」



あー、若い方々はどうしてこう拒絶反応を起こすのか。全く、どうしてこうなんですか。



「あー、みんな落ち着いて。別にアルトは殺せばいいなんて、言ってないから。・・・・・・でしょ?」

≪その通りです。・・・・・・みなさん、『活殺自在』という言葉を知らないんですか?≫

「かっさつ」

「じざい?」

「あ、なるほどね」



・・・・・・さすがに美由希さんやシグナムさんに師匠は気付きましたか。



≪まぁ簡単に言ってしまえば、相手を殺すだけの技量と覚悟を持った人間だけが、相手の命を奪わない戦い方が出来るという考え方です≫

「え、どういうことっ!? それワケ分かんないよっ!!」



スバルさんはそうですよね。えぇ、分かってました。

・・・・・・綺麗事過ぎて私やマスターは好きじゃないんですけどね。



≪殺すということは、相手の命を奪う事です。
もっと言えば相手の生きる権利を掌握し、好きに扱う事とも言えます≫

「アルトが今言ったのはようするに、相手方の生殺与奪権を握るってことだね。ただ」

「それが出来るということは、相手の命を奪わずに組み伏せることも出来る・・・・・・って考え方なんだ。
地球にもそういう考え方の剣術があるんだ。相手を殺すためではなく、制すために力と技を追求するの」



そういう力を、それを成せるだけの強さを自身の中に内包しているからこそ、出来る技です。

・・・・・・ね、綺麗事でしょ? こんなの普通に簡単じゃないですって。



「まぁ、アルトアイゼンの言った事はあらゆる意味で相手を越えていないと無理なんだけど」

「どうしてですか?」



エリオさんがそう聞きたくなるのも当然です。それは局の魔導師の理念と沿っている部分もありますから。

だからこそ、普通になぜ無理なのかと疑問を持つんでしょ。そしてその答えは、マスターから出てきました。



「・・・・・・その場合やらなきゃいけないのは、生かした上での完全な敗北を相手に突き付けることだからだよ。そんなの簡単じゃないよ」



・・・・・・そんな苦い顔をしてどうするんですか。落ち着いてくださいよ。



「完全な・・・・・・敗北」

「やっさんの言う通りだよ。・・・・・・スバルちゃん、分かる?
私初めて会った時に、アンタに同じようなこと言ったでしょ」

「あ、はい。今思い出してました。あの時の・・・・・ですよね」

「そうだよ。ハッキリ言っておくけどみんなが普段使ってる非殺傷設定だけじゃあ、活殺自在なんて無理なのよ。
美由希さんの言う『鎧』の力だけじゃ、私らは完全敗北なんて相手に突きつけられない。必要なのはもっと別の力だから」



なにやら、あの模擬戦でそういう話をしたそうです。だからスバルさんが、らしくも無くシリアスな顔で納得するわけですよ。



「ぶっちゃけこういうのは簡単じゃない。私やサリも出来ない時の方が多い。
現に私はあの時のスバルちゃんに対して、それは無理だった」

≪だから姉御はブルーガール2号に負けたわけだ。この辺りから難しさは察してくれ≫

「でも・・・・・・この問題の答えの一つではある。端から見ると過激で、危なっかしいのは確かだけどね」



でも、皆さんにはいいかと。『殺し、傷つけるしかない』ではなく、それさえも自分の選択の一つという考え方ですし。



「・・・・・・そっか、魔法無しでもそれくらい強くなればいいんだ。
魔法という鎧に頼らないでも、それが出来るようになる」

「確かに、簡単じゃないですよね」

「でも強くなることは、やらなきゃいけないんですよね。
もちろん個人の力だけで何とかする必要はないけど」

「基本はチームでの連携による、状況下での孤立を防ぐこと。まずはそこからか。
でも救援来る前に捕まるとかは・・・・・・アウトよ。つか、あれはもうごめんだし」










・・・・・・ティアナさん、そこまで悔しかったんですか。いや、見事な潰され方でしたけど。





そして六課でこの講習は、解散まで続いていくことになります。





まぁマスターはどこまで行っても『出来て当然的な扱い』でしたが。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「では、今日の特別講習はここまでっ! みんな、お疲れ様っ!!」

『お疲れ様でしたっ!!』





・・・・・・あの後、美由希さんも同じ条件でチャレンジ。その凄さで、周りを唖然とさせました。

いや、仮想敵の方達がスカウトしてましたし。御神の剣士は次元世界レベルで凄いことが証明されましたね。

時刻はすでに夕方。このすぐ後に飲み会というサバゲーチームな方々には重ね重ねお礼を言ってお見送り。



その後で私達は全員で隊舎を目指します。マスターと私はその最後尾です。いや、なかなかに楽しめましたね。





「・・・・・・そうだ、恭文」

「はい?」



隣を歩いていた美由希さんが、マスターに話しかけてきました。



「クロノ君から伝言が二つ。もうすぐ迎えに来れそうだって」

「本当にっ!?」

「うん。必ず解決するから、安心して欲しい・・・・・・って、言ってた」



・・・・・・こちらへ来る時の手続きなどを、クロノさんにお世話になったそうです。その時に、ですか。



≪よかったですね。マスター≫

「うんうん・・・・・・!! 本当に・・・・・・アイツら結局居座ってんだよっ!? 絶対ありえないよねっ!!」

≪・・・・・・泣かないでくださいよ≫

「で、もう一つは・・・・・・『忘れても、誰も責めない。もうそれが許されるだけの時間が経っているのは確か』・・・・・・だって」



あー、私は察しがついてしまいましたよ。というか、どれだけ勘がいいんですかあの人。



「・・・・・・そうですか」

「あ、まだ続きがあるんだ。『だが』」

「だが?」

「『それでも忘れたくないなら、それでいい。お前はお前だ。僕達の事なんて遠慮なく振りきってしまえ』。
・・・・・・そう伝えて欲しいってお願いされた。結構、真剣な顔でね」

「・・・・・・ったく、あの人は」



あの人、本気でいいお兄さんですよね。ただ・・・・・・どこで知ったんですか?

というか、それならマスターに直接言えばいいのに。



「ね、恭文」

「はい?」

「話は変わるけど、フェイトちゃんと何かあった?」



あ、マスターが固まりましたね。やっぱり、あれとかこれとかでしょうか。



「えっと」

「・・・・・・恭文、ハッキリ言って。二人の雰囲気を見れば、それくらいは分かるよ」

「・・・・・・あの、少し話をして弟や家族としてじゃなくて・・・・・・男の子として、見たいと言ってくれました」



・・・・・・そう聞いた時、一瞬だけ浮かべた美由希さんの表情を、私は忘れないでしょう。

寂しさと切なさが混じった顔を。だけどそれは一瞬。その次に浮かべたのは、優しい笑顔でした。



「そっか、よかったね」

「・・・・・・はい」

「ね、恭文」

「はい?」

「あんまり、フェイトちゃん以外の女の子に優しくしちゃだめだよ?」



・・・・・・美由希さん、普通にお姉さんですよね。私、色々とビックリですよ。



「恭文、本当に優しいから、ついやっちゃうんだろうけど、ダメ。そんなんだから、フラグ立つんだよ。
もっとフェイトちゃんが好きだって気持ち、出していいと思う」



だからアドバイスですよ。お姉さんキャラとして、優しく・・・・・・沢山です。



「じゃないとフェイトちゃんだって恭文の気持ちが分からなくて、戸惑っちゃうよ」



ですが・・・・・・正直、遅すぎますよ。今、心からそう思います。



「まぁ、あれだよ。頑張ってね。応援してるから」

「・・・・・・はい」










・・・・・・夕暮れは闇へと変わります。私とマスターと美由希さんはそんな話をしながらも、歩いていきます。

夜の闇のせいか、美由希さんの表情が泣いているように見えたのは・・・・・・気のせいだとしておきます。

さて、今回の話はここまでです。結局の所、いつものノリではまだまだありませんね。とにかく、次回です。





でも、私視点というのも面白いですが・・・・・・疲れますね。私はやっぱり、適当に横から口出ししていくことにしましょう。





やっぱり主役は、私の大事な相棒ですよ。・・・・・・多分ね。




















(第28話へ続く)







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