小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説) ケース27 『日奈森あむとの場合 その9』 前回までのあらすじ。歌唄にロストロギア不正利用の嫌疑がかかりました。 そして、イースターの最終作戦として、ブラックダイヤモンドのデビューシングルが出ます。 ただ、ここで問題が一つ。そのシングルのCD・・・・・・というか、楽曲データだね。 聴いた人間は全員、こころのたまごが抜き出されるらしい。それが歌唄達の作戦の真相。 それもCDだけじゃなくてニコ動みたいなので聴いたり、楽曲のダウンロードデータでもアウト。 そのためのマスターCDとそれだけのパワーを出すために使用される×たまが、明日ロスに飛び立つ。 なお、移動手段はヘリ。それを止めないと・・・・・・世界崩壊である。 世界中の人間の可能性が、全て抜き出される。それがどんな事態を呼び込むかは、推して知るべし。 だけど、ここにロストロギアを捕獲するために本局の機動課に介入されると、非常にメンドイ。 現時点でなら、歌唄はまだ犯罪者と確定したわけじゃない。まだ大丈夫。 つまり僕達が本気のハッピーエンドを目指すなら、二つの勝利条件を満たす必要がある。 ロストロギア・ブラックダイヤモンドの確保。そして、マスターCDの作成阻止である。 ・・・・・・何、この悪条件。ここまでヒドいのは、ヴェートルでのクーデター以来だし。 「・・・・・・そうなると、歌唄ちゃんがブラックダイヤモンドでこれ以上パワーアップしないようにして、止めなくちゃいけないんですよね」 「ブラックダイヤモンドの使用の対価を払わされていてる可能性があるからでちよね。フェイトさん、それが・・・・・・命なんでちか?」 「そうだよ。あくまでも可能性の一端ではあるけど、ありえない話じゃないの」 そして、早期解決という条件が付く。・・・・・・歌唄の命に危険が迫ってる可能性がある。 だからエルだって、さっきから顔を青くしまくってる。 「フェイトさん、もっと言えばそうなるような事をこっちは控えるべきでしょうか。 いつものガーディアンと違うメンバーが居るとか、中途半端に追い詰めるとか、絶対ダメ」 「アニメなどでありがちなパターンだな、そうなると、敵のパワーアップフラグだろう。くそ、これは厄介な」 そんなパターンを踏まないように、フェイトは唯世に聞かれて数秒考えて、答えを出したらしい。 「・・・・・・こうなったら、知らん振りは出来ない。 ヤスフミ、私達でロストロギア・ブラックダイヤモンドを確保するよ。最悪、破壊だね」 「やっぱそれしかないか。でも、大丈夫なの? 本局執務官としては、報告が義務でしょ」 「大丈夫だよ。・・・・・・機動課に知られる前に、私達だけで何とか出来ればって言う条件が付くけどね。 そうなれば、私やクロノの権限でなんとか処理出来る。あの子を犯罪者扱いなんてさせないから」 「そっか。なんか、悪いね」 うん、悪いわ。僕、振り切ってばっかなのにさ。 そう思ったのが分かったのか、フェイトが安心させるように、笑いかけてくる。 「大丈夫だよ。言わなかった? ヤスフミが振り切るなら、私は追いつくって。 ・・・・・・ヤスフミの大事な友達の本当の歌、私も聴いてみたいんだ」 そう言いながら、フェイトは安心させるように笑ってくれる。 苦笑いしか返せないのは、きっと・・・・・・自業自得だ。 「唯世君、そう聞くってことはヘリの出立・・・・・・止めるつもりなんだよね」 「はい。それがガーディアンの仕事ですから」 「そうだね。でも、今回はそこに私達の仕事も入るんだ。私達も明日、そこに行く。 ヤスフミとリインもロストロギアの封印処理と破壊の経験はあるけど、今回は物が物だから」 ・・・・・・そう、だよね。さすがにロストロギアが絡むと、僕だけじゃどうしようもない。 しかも、物が使用者の意思に応じての能力アップ。非常に厄介だ。 歌唄の気持ち次第で、ロストロギアが暴走する可能性もあるんだから。 悲しいかな、局員であるなら、関係者であるなら・・・・・・お仕事優先は基本なのよ。 「だけど、ヤスフミはそのつもりないよね。自分とガーディアンのみんなだけで、対処するつもり」 「・・・・・・まぁね。やっぱ、更に『悪いね』だわ」 「いいよ。私もそっちの方がいいかなって思ってるから」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ・・・・・・何、言ってるのよ。この人も、みんなも、何言ってるの? 今日、何があったか忘れたの? コイツ、死にかけたのよ? 本来なら助ける必要なんてない裏切り者のために、沢山傷ついた。 今だってそうよ。もうここまでされたら、見限ればいいじゃないのよ。 相手はもうこっちをいらないって捨ててるのよ? なのに、どうしてよ。 どうして恭文もフェイトさんも、ガーディアンの連中も助けようとするのよ。 なのになんで・・・・・・なんでまた、傷つくような道を選ぶのよ。 ・・・・・・許せない。そんなの、絶対許せない。私はもう認められない。 もう助ける必要なんてない。無意味に傷つく必要なんてない。 そのために・・・・・・もう、嫌なの。もう、絶対嫌なの。だから私は声を上げる。 納得なんて絶対に出来ないから、このバカを止める。 「・・・・・・ちょっと待ってください」 「ティア?」 「私は、こんなの納得出来ませんっ!!」 魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝 とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先の事 ケース27 『日奈森あむとの場合 その9』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「ちょっと待ってくださいっ!!」 話がまとまりかけてたのに、ティアが不服という顔で僕達の方を見る。 「ティア?」 「私は、こんなの納得出来ませんっ!!」 当然のように、僕達は首を傾げる。・・・・・・ティア、どったのよ。てゆうか、もうやるしかないのに。 「なんでそうなるんですかっ! いくらなんでも、条件が無茶苦茶過ぎますっ!! ・・・・・・フェイトさん、補佐官として進言させてもらいます。機動課に連絡して、対処するべきです」 「それはだめだよ」 「どうしてですかっ! 被疑者がコイツの友達だからって、遠慮するなんておかしいじゃないですかっ!!」 エルの表情が歪む。だけど、ティアは全く気にしない様子で食い下がる。 「ほしな・・・・・・いいえ、月詠歌唄は、もう局の手で捕縛していいところまでやらかしてます」 「遠慮はしてないよ。ティア、忘れてない? 私達が止めなくちゃいけない項目は、二つある」 言いながら、フェイトが右手を上げて、人差し指を立てる。 「一つは、ティアの言うように不正利用の可能性があるロストロギア・ブラックダイヤモンドの確保」 そして、次は中指を立てる。お仕事モードで、真剣な顔をしながら。 「もう一つは、イースターのブラックダイヤモンド計画を阻止すること。この両方を、私達は達成しなくちゃいけない。 世界中の人間からたまごが抜き出されたら、誰も夢を描けなくなる。そうなったら・・・・・・地球と言う世界は、壊れちゃうよ?」 「なら、マスターCDだけ私達で対処しましょう。というか、それでいけるはずです。 計画のキーであるほしな歌唄さえ止められれば、私達の勝ちです」 「この段階で言えば、ほしな歌唄だけを止めても意味がありません」 そう横から言って来たのは、海里。その海里を、ティアは忌々しげに見てる。 「悪いけど口出ししないでもらえる? これは魔導師組の話なの。アンタ、関係ないじゃないのよ」 「そういうわけにはいきません。・・・・・・ランスターさん、マスターCDの音源は既にレコーディングが完了しています。 それもほしな歌唄がジョーカーのしゅごキャラである、ダイヤの力を借りる事で作られた強い力を持った歌声です」 「その音源は恐らく海里の姉上の手にある。 姉上の性格からして、音源の管理は自分の手でしっかりするはずだ」 詰めの大事なところは、普段の大雑把な性格からは信じられないくらいにしっかりする。 弟である海里と、そんな海里の側でお姉さんを見てたムサシはそう言った。 「・・・・・・つまりその音源を持っているであろう、海里君のお姉さんも何とかしないとだめってことだね」 「そうです」 現状では歌唄だけ止めても、ロストロギアを確保出来るけど計画は・・・・・・あれ? つまりイースターにとってはもう、歌唄は切り捨てても何の問題もない存在になってる? 「拙者達もその場に居たから、そこは間違いない。 音源が既に収録されている以上、ほしな歌唄だけを止めても意味がないのだ」 ティアはまるでムサシの声が聴こえてないかのように、無反応で返す。ムサシに、視線すら向けない。 「機動課が絡んでくると、これが難しくなる。普通の人には、しゅごキャラは見えないんだよ? ×たまやエンブリオの事を隠しながら、これだけ私達が独自に対処は無理だよ」 「それになにより、時間が絶対的に足りないですよ。 海里さんの話だと、ヘリの出立までもう24時間切ってるですよ?」 今から本局の機動課に連絡して、事情説明したらどう動く? まず、ブラックダイヤモンドを保有してる歌唄の身辺調査だよ。 物が物だし、次元世界の事も知らない相手だから、慎重にやろうとする。 そして、そんな中で僕達が勝手に動ける? 答えはNOだ。 「リイン達は管理局の関係者として、機動課の捜査に協力。当然足並みを揃える必要があるです。 当然、不用意に監視対象となる歌唄さんに近づくことなんて出来ない。戦闘なんてもっての他ですよ」 「リインさん、そうなると俺達も動けませんよね。 下手に動けば、管理局にしゅごキャラやエンブリオの事がバレてしまいます」 「はいです」 「・・・・・・で、さっき言った通り必要以上の刺激も出来ない」 ここまで悪条件が揃ってると、普通に放り出したくなる。でも、そういうわけにもいかない。 ここでそれをやってしまったら、今までのあれこれが全部パーになる。・・・・・・ハッピーエンドはもうすぐなんだから。 「だから僕とガーディアンのみんなでやるの。まぁ、危険度は大きいけど・・・・・・残念ながら、これがベストだから」 僕達なら、別にその場に止めに行っても全く不自然じゃない。 刺激は少ないし・・・・・・勝負も早くつければ、いける。 「ティア、別に私もヤスフミの心情だけで言ってるわけじゃないんだ。それはヤスフミも同じ。 絶対に個人的感情だけでは話してない。ちゃんと状況を判断してる。納得・・・・・・してくれないかな」 「出来ません」 あぁもう、コイツは・・・・・・どうして納得しないのさ。他に手立てがないでしょ? 「てゆうか、出るなら私達も総出で一気呵成に」 「ダメだよ。話、聞いてなかった? てか、出てきてどうするつもりよ。 ロストロギア相手はともかく、フェイトもティアも×たまの浄化出来ないでしょ」 「そうね。でも、浄化なんてめんどくさい事はしないで、一気に広範囲攻撃で叩き潰せば話は別よ」 一瞬、言ってる事が分からなかった。分からなくて・・・・・・ティアの目を見る。 「そうよ、そうすれば危険はない。ほしな歌唄も、コイツの姉もマスターCDも、全部粉砕する」 フェイトや、ガーディアンのみんなも同じ。同じだから、ティアはため息を吐いてこう言い放つ。 「あむ」 「はい?」 「ダイヤのたまご、諦めなさい」 「え?」 待て、コイツ・・・・・・今、なんて言った。僕はよく、聞こえなかったんだけど。 ・・・・・・いや、聞こえなかっただけだ。言いたい事は分かった。 そして、これを責める権利は僕にはない。あるわけがないし。だって・・・・・アレだよ? ティアにここまで言わせた原因作ったの・・・・・・間違いなく、僕なんだから。 「あの、ティアナさん」 「コイツがここまで機動課の介入を嫌ってるのは、アンタのたまごやマスターCDの×たまの事もあるからよ」 あむが、僕の方を見る。だけど僕は・・・・・・ティアナを見続けてる。 「コイツ、敵に回っちゃった子を助けるために、ボロボロになるくらいにバカなの。知ってるでしょ? その子もほしな歌唄も、全部力尽くで潰せばいいのに、らしくもないキャラだして頑張っちゃってさ」 ・・・・・・僕は何も答えない。確かに、ティアの言う通りではあるから。 「・・・・・・アンタも、さすがにもう分かってるでしょ? 私達は、現状でこの子達の綺麗事に付き合う道理はない。 いい? 私達はチーム。フェイトさんをリーダーとするチーム。アンタの居場所は、ガーディアンなんかじゃない。私達の側よ」 まだ言うか。この女・・・・・・いや、分かってる。きっと本心じゃない。 付き合いも2年目だもの。それくらいは分かる。でも、それを加味しても・・・・・・KYだ。 「あむ・・・・・・いや、アンタ達全員、ここでたまごを助けるのは諦めなさい。 全部諦めて、全部私達に預けて。私達だけなら、こんなのすぐに片付く」 「ティアナさん、何言ってるんですかっ!? それなら、あむちんのダイヤちゃんや×たまは」 やや、聞くまでもない。ティアは最初から、答えを提示している。 だから、ティアは呆れたような目でややを見る。 「壊すことになるわね。もうロストロギアの力を引き出される前に、叩き潰すつもりだから」 「そんな・・・・・・!!」 「ティアナさん、バカ言うなでちっ! そんな事して、本当にいいと思ってるでちかっ!?」 ペペが叫ぶけど、ティアは無視。さっきのムサシと同じく、聞こえてないようにも見える。 「こらー! 無視するなでちー!!」 「不満そうだから、逆に聞くわね。・・・・・・アンタ達、死ぬかも知れないのよ?」 そう言われて、ガーディアンのみんなは、驚いたように目を見開く。 「いや、アンタ達だけじゃない。対処に失敗すれば、この街の沢山の人間が死ぬ可能性もある。 そうなった時、誰にも責任なんて取れない。だから、小学生のおままごとはここまで。後は大人の時間よ」 「でも、ランスターさん」 「でもじゃない。・・・・・・たまごが他に三つもあるなら、一つ壊れても問題はないでしょ。 大体アンタ・・・・・・明確に『なりたい自分』も見えてないじゃないのよ」 拳を、握り締める。握り締めて・・・・・・とりあえず、抑える。まだ・・・・・まだ抑える。 それでも、ティアナは真剣な顔で、呆然とするあむに辛辣な言葉をぶつける。 「私、アンタみたいなのが1番嫌い。アンタは・・・・・・自分の夢を全く大事にしてないでしょ。 だから、たまごを抜き出されたわけでもなんでもないのに、×が付いた。違う?」 「それ・・・・・・は」 「それが壊れて、誰が困るのよ。アンタは自分から、夢を捨てたのと同じなんだから。 もう一度言うわね? アンタはもうあの子を捨てた。だから、今更助けようとしたって無駄」 ティアは、言いながら僕を見る。 「そして、アンタもあんな子を助けるために頑張らなくていい。もういいじゃない。 あの子はアンタや色んな繋がりを、自分から捨てたのよ? これで人生狂っても、自業自得よ」 それからティアはフェイトを見る。あむと僕の方から、目を逸らしながら。 「・・・・・・フェイトさん、そういう事でいいですよね。この子達は、もう下がっててもらう」 フェイトはただ無表情で、ティアを見てた。 「そして一気呵成に制圧して、現状に対処。いいえ、これから事件の全ても同じ。 イースターには私達だけで、そうやって対処しましょう」 「ダメだよ。・・・・・・ティア、みんなに・・・・・・ううん、あむとヤスフミに謝って」 それでも、ティアは譲らない。譲らないから、右拳を握り締める力が強くなる。 「どうしてですか。人の命と、見えないたまごの中のキャラ。どっちが重いかなんて明白じゃないですか。 私達管理局員が優先するべきは、この世界の人達の命です。・・・・・・絶対に、譲れません」 「そうだね。確かにそうかも知れない。でも、私も譲れないんだ。 ・・・・・・謝って。じゃないと、本当に怒るから。私、止められない」 「いいですよ、別に。フェイトさんがいくら言おうが、私は変えません。 というか、それなら私から機動課に連絡します」 ティアは、気づかない。そりゃそうだ。ギリギリまで抑えてるんだから。 「ティア、落ち着いて? さすがに今この状況でそれを言うのは」 「シャーリーさんは黙っててください。・・・・・・フェイトさん、子どもっぽい事言わないでください。 私達はあむのたまごも、×たまも気にせずに、ロストロギア不正利用犯の制圧に全力を注ぐべきです」 エルがまた泣く。何度も・・・・・・何度も犯罪者扱いされるから。だから、何かが切れる音がする。 「そうだね。でも、怒るのは私じゃない。私は・・・・・・きっと、そんな権利ない」 もう、限界だった。踏み込んで、僕は手の平を伸ばしていた。 ティアは、僕の方を見て目を見開くけど・・・・・・遅いんだよ。 「怒るのは、ヤスフミだよ」 手の平は、叩きつけられた。高い音を出しながら、その相手を後ろに吹き飛ばす。 みんなが驚いた顔で僕やその相手を見る。というか、僕も同じ顔でそれを見る。 「・・・・・・え?」 僕の手は、確かに打ち抜いた。でも、それはティアじゃない。 ティアの前に、咄嗟に出る影があった。それは、両手を前に出して僕の拳を防いだ。 「痛ぁ・・・・・・!!」 防いだけど、後ろに居たティアナもろとも倒れた。勢いだけは、殺せなかったらしい。 その子は両手を振りながら、僕を見上げる。てゆうか、あの・・・・・・あむだった。 「あむっ!? あの、大丈夫っ!!」 言いながら、フェイトが駆け寄る。しゃがんで、あむの身体をチェック。 「・・・・・・あぁ、腕が真っ赤になってるっ!!」 「あははは、なんとかギリギリガードです。いやぁ、恭文みたいに出来てよかった」 「ギリギリガードじゃないよっ! これ、骨にヒビとか入ってないかなっ!!」 僕は、右手を見る。・・・・・・あむの事、殴っちゃった。ガードはしたけど、それでも・・・・・・僕。 「恭文、だめだよ」 声がかかったので、前を見るとすぐ近くにあむが居た。というか、立ってた。 それで僕の右手を、両手で握ってくれる。 「アンタがダイヤや×たまのために怒ってくれるの、ちょっと嬉しい。でも、すごく悲しい。 ・・・・・・アンタ、別にティアナさん殴るために強くなったわけでもなんでもないじゃん」 「あむ、あの」 「あたしは大丈夫だから。ちゃんとガードもした。まぁ、ちょっと痛いけどね」 まるで言いたい事が分かってるように、あむは言いながら笑う。 それが、申し訳なかったり、嬉しかったり。 「だから・・・・・・やめよ? こんなことしても、何にもならないよ」 「あむは、それでいいの?」 「まぁ、グサッて刺さったかな。でも、大丈夫。・・・・・・約束、したじゃん。 あたしは、恭文との約束を絶対破りたくないんだ。だから、諦めないよ」 「・・・・・・そうだったね」 僕がそう返すと、あむは満足そうに笑いながらそのまま振り向いて、同じように立ち上がっていたティアを見る。 ティアは・・・・・・あむに対して、厳しい視線を送り続ける。 「確かにあたしは、ティアナさんやフェイトさんやみんなみたいに立派な夢なんてない。 あやふやかって言われたら、その通りだよ。そう答えるしかないよ」 「そう。だったら、納得したのね」 「ばかじゃん? するわけないじゃん。てゆうか、アンタ・・・・・・勘違いしてる」 あむは、僕の右手を左手で繋いだまま、そう言い切る。 それにティアの視線がさらに厳しくなる。でも、あむは全く意に介さない。 「夢だって生きてるよ。誰の夢でもここに居て・・・・・・ちゃんと生きてる。その人の想いっていう命が詰まってる。 人の命が大事なのと同じように、×の付いたたまごの中だって、アンタの中の夢だって、同じくらい大事に決まってる」 「勘違いもいいところよ。夢を見るのにも、命があってのものなのよ? アンタは子どもだから分からないのよ」 「だったら、アンタは大人だから分からないんだね。だから、今のアンタはすごくカッコ悪い」 即座に返したあむに対しての視線が、厳しくなる。当然厳しくしたのはティア。・・・・・・やばい。これ、絶対にやばい。 「どんな形だっていい。どんなに馬鹿げていたっていい。 夢が・・・・・・心の中の輝きがなくちゃ生きていけない。生きてても、ちっとも楽しくない」 ティアは何も返さない。苛立ちを隠すように歯を噛みしめている。 「アンタ、たまごをなくしたり×を付けた人達がどうなるのか、自分の事以外で直接見た事あるの?」 というか、返せるわけがない。ティアは直接的に、その現場を見たことが一度も無いはずだから。 「アンタのアレは、ある意味すごく楽だよ。・・・・・・ただ寝てるだけなんだから。 心がからっぽのまま起きた人達は、ただ呼吸して、ただ現実現実って呟き続けて、寂しい目をしてる」 僕もフェイトもそうだし、みんなも気づいた。あむ、敬語じゃない。今更だけど、そこに気づいた。 「夢も描けなくて、なりたい自分も分からなくて・・・・・・それって、死んでるのと同じじゃないかな」 あむは言い切る。ティアと違って、言い切れるだけの材料があるから。 ガーディアンの仕事の中で、こころが空っぽになった人達を、場合によってはたまごが壊された子を、間近で見ているもの。 「だから、あたしは絶対にアンタみたいな考えは絶対に認めない。アンタの言ってる事、ズレてる。 夢を・・・・・・その中で生きてる子を大事にしない考えなんて、イースターと同じじゃん」 「同じじゃないわよ。私達は、今守るべきものを優先してるだけ。 アンタ、話聞いてなかったでしょ。アンタのそのガキっぽい理論のために、この街の人が」 「そうかも知れないね。でも、やれることやらないで諦めるなんて、100年早いじゃん。 アンタはただ、言い訳してるだけじゃん。言い訳して、守るって『綺麗事』から目を背けてる」 ティアの目が、目を見開いて右手が振るわれる。それは、あむの頬を狙ったもの。 僕は咄嗟に前に出て・・・・・・それにぶん殴られた。なお、すっごく痛い。 「・・・・・・え?」 「恭文っ!?」 「あー、大丈夫だから。てかあむ、もういい。ティアはちゃんと分かってる。 あむの言いたい事も、自分が何言ってるかも、全部分かった上で言ってるから」 「え? ・・・・・・でも」 あむの言葉を気にせずに、僕はティアを見る。ティアは・・・・・・腕を振り抜いたまま、固まっていた。 「ティア、もういい。もう分かってる。分かってるから」 「・・・・・・何も、分かってないわよ。アンタは、何も分かってない」 「分かるよ。僕達は友達でしょ? それだけは、間違いないから。 だから分かる。もういいの。あとは、僕とフェイトからみんなに話すから」 ティアは、ゆっくりと腕を下ろす。下ろして、俯く。 「さっきだって、殴ろうとしたんじゃない。ちょっと落ち着いてもらいたかっただけだから。 そこだけは誤解しないでもらえると非常に嬉しい。・・・・・・ごめん」 「謝るんじゃないわよっ! 謝るくらいなら・・・・・・最初から、最初からこんなことするなっ!! 私、アンタなんて・・・・・・マジで嫌いっ! いっつも勝手で性格悪くて意地っ張りで、バカ過ぎだしっ!!」 「そうだね。よく知ってるよ」 「知ってるなら・・・・・・知ってるなら、傷つけてでもいいから最初から私を巻き込めっ! この大バカっ!! ・・・・・・フェイトさん、私は今日限り補佐官を辞めさせていただきます」 ・・・・・・はぁっ!? ちょ、ちょっと待てっ! 何故に顔上げて思いっ切り全力全開で言い切るっ!! 「荷物纏めて、明日朝1番で出ていきますので。今までありがとうございました」 「うん、分かったよ」 フェイトは、ごくごく冷静にティアの言葉を受け取った。・・・・・・僕、ちょっと感心したかも。 だって、こういう時にビシッと言える上司を出来るんだと思って・・・・・・あれ、なんか驚いた顔になった。 「えぇぇぇぇぇぇぇっ!? あ、あのティアっ! どうしてそうなるのかなっ!!」 気づいてなかっただけかいっ! おのれは本当にポーカーフェイスが出来ないねっ!! 「再就職先は勝手に探します。お手間は取らせませんから」 「ちょっと待ってっ! ティア、落ち着いてっ!? ・・・・・・確かに甘いかも知れないけど、今のはティアが悪いよ。あむやみんなの気持ちを」 「それが甘いって言ってるんじゃないですかっ! 私、もうマジでついて行けないんですっ!! コイツ、助ける必要のない裏切り者のために、無意味に殺されかけたんですよっ!?」 ・・・・・・海里の表情が、重くなる。重くなって、俯く。ティアはそれに気づきながらも、折れない。 「それでもう助ける必要のない女の子のために、またバカやろうとしてるっ! なんでこの状況で、まだコイツら信じるんですかっ!!」 「・・・・・・ティアナさん」 「そんなの私は絶対認めないっ! もういいっ!! これ以上無駄なこと、絶対に」 聴こえていないようだから、その声の主は、両手を思いっ切り目の前のテーブルに叩きつけた。 響く痛々しい音に、ティアも止まる。僕達もそちらを向く。 「ティアナさん、聞こえてないのかな。やや、呼んでたんだけど」 そこに居たのは・・・・・・ややだった。 「ティアナさん、もうごちゃごちゃ言わなくていいよ。やや達、全部分かってるから。ちゃんと分かってるよ。 やや達が魔導師のみんなみたいに強くないから、恭文とミキちゃんにいっぱい怪我させちゃった」 俯いて、顔は見えない。でも、普段のややだったら絶対出さないような声を出してた。 「もう、分かってる。やや、こんなのキャラじゃないけど・・・・・・お願い、もう喋らないで。 やや、本気で怒ってるの。いくらティアナさんでも、言わせない」 低くて、言葉通りに本気で怒っている声。それにティアも気づいてるから、何も言わずにややを見てる。 そしてややの開かれてテーブルに当てられていた両手が、ギュッと握り締められる。 「いいんちょを助ける必要がなかったなんて、頑張った恭文とミキちゃんが無意味だなんて、言わせない。 誰にもそんな事・・・・・・そんな事言う権利なんてないもんっ! そんなの、ややは絶対許さないっ!!」 「そんなの分かってるわよっ!!」 ティアは、ややを見ながら叫ぶ。・・・・・・気づいた。ティア、泣いてる。 「分かってるけど、だったら私はどう言えばいいのよっ! 私はアンタ達の事、今のままじゃ何一つ信じられないっ!! アンタ達に大事な友達を・・・・・・大好きな人を、このままじゃ預けられないのよっ! それで私にいったいどうしろって言うのよっ!!」 . 息荒げに叫んだティアは、そのまま踵を返す。返して・・・・・・スタスタと歩く。 「ティア、ちょっと待ってっ! ・・・・・・ティアっ!!」 そのまま、悪い空気だけを残して部屋に戻った。 ティアの姿が見えなくなった直後、あむが崩れ落ちた。 「あむっ!?」 僕は、右手を引かれる形で前のめりになる。あむは、床にへたり込む形で座る。 「大丈夫。・・・・・・あはは、ちょっと啖呵切り過ぎたかなぁ。ティアナさん、なんかキレちゃったし」 そう笑うあむを見て、頭が急激に冷える。というか、不意のあむの動きで、無理矢理に意識が切り替わった。 「大丈夫だよ、殴られかけたんだし」 「それは、恭文じゃん」 「僕は自業自得だから、いいの」 「確かにそうだね。・・・・・・てゆうか、我慢してくれたね。あたし、殴りかかるかと思った」 「・・・・・・だから、殴るつもりなんて無いって言ったじゃないのさ」 ・・・・・・よく言うよ。ずっと僕の手を強く握って、動けないようにしたくせに。 この子、無茶というか強いというか・・・・・・もしくは、稀代の大バカなんだね。 「そうだったね。あたし、早とちりしちゃったな。でも、だからかな。・・・・・・今は、すごく嬉しい」 言いながら、僕達はややの方を見る。ややは・・・・・・泣いてた。 そのままテーブルの上にポタポタと涙が零れ落ちてた。 「結木さん、大丈夫だから。お願い、泣かないで?」 「やや、見直したぞ。お前はやれば出来るんだな」 「そんなんじゃ、ないよ。・・・・・・悔しいの」 ポツリと漏らした。ややの視線は、テーブルに落ちたまま。だから、涙もその視線の先に溢れる。 「やや、一瞬怖がったの。ちょっとだけ、もう諦めていいかなとか考えたの。 ティアナさんの言うこと、ホントだったの。それが・・・・・・すごく、悔しいの。やや、こんなの初めて」 「・・・・・・そうだね」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ おいおい、どうするよどうするよ。普通に修羅場ってるよ。空気悪いよ。 あー、ややちゃんがなんかスッゲー泣いてるし、あむちゃんはヘタリ込んだままだし。 てーか、俺基本関係者じゃないんですけど。普通に居辛いんですけど。 ”・・・・・・サリエルさん、どうしましょう” ”いや、どうしましょうって・・・・・・どうしようもないだろ” なお、来た念話はディードちゃん。やっさんの義妹というポジションになってしまった子。 てゆうか、やっさんと偶然隔離施設で関わって、またもやフラグを立てられた子。 俺達現在、リビングで普通に立ち尽くしています。だって、いきなりアレだもの。 ただなぁ・・・・・・ティアナちゃんの言う事は分かるから、あんま否定も違うんだよなぁ。 ”ディードちゃん的には、その辺りどうだ?” ”ティアナさんの言っている事は分かりますが、賛成しかねます” ”理由は? てか、現状把握してるのか?” ”一応現状については、シオン達から詳しく聞きました。 まず、ティアナさんの言うようにするのは、そのイースターという連中と同じです” ここはあむちゃんも言ってた事だな。そして、ティアナちゃんも分かってる事。 確かにたまごを物扱いはアウトだろ。てーか、それで仕事が上手くいくわけがない。 ”そして何より、その状態で恭文さんがフェイトお嬢様達に協力するとは思えません。 結果、この執務官チームから浄化能力を持った人間は居なくなります” ”で、やっさんはフェイトちゃん達もイースターと同類と見なすと。 うわ、マジで有り得そうだし。てか、社会人としてそれでいいのかよ” ”それをサリエルさんが言う権利はないかと。ヒロリスさん同様、JS事件の時には色々武勇伝がおありですよね” ・・・・・・まぁなぁ。そこつつかれると、俺は苦笑いしか出来ない。それ言ったら、俺らだって普通に社会人失格だし。 とりあえず泣きながらキッチンの戸棚からクッキー取り出し始めたややちゃんは、気にせずに話を進めよう。 ”なにより、私も少し違う気がするんです。イースターを止めるために、イースターと同様な行動を取る。 それは本末転倒ではないでしょうか。局でも、本来ではそういう状況は可能な限り避けるものですし” 確かにその通りだ。だが、避けられない場合もある。やっさんが殺したフォン・レイメイのようにだ。 救いのない奴は居るし、全部が全部助けられるわけでも・・・・・・そこまで考えて、俺は気づいた。 ”・・・・・・つまりディードちゃんの意見としては、まだそこまでするほどギリギリじゃない?” ”はい。そもそもキャラ持ちが行うキャラなりという能力で、恭文さんがここまで追い詰められるんです。 ここでガーディアンのみなさんを無能と決め付け、手を引かせるのは如何なものかと” なるほど。噂の猫男や海里君と×の付いたムサシのキャラなり相手に、やっさんは相当苦戦した。 他のみんながそれだけ出来ないという道理は、今の所はない。ただ、現状では出来ないだけかも知れないと。 ”現状はともかく、将来性に期待か。まぁ、そういう事なら納得は出来る” ”あとは・・・・・・恭文さんですね。やはりその辺りで、少し迷っているようですから” それが最近のアレコレにも繋がってると。まぁ、元々貧乏くじ引く奴だしなぁ。それも自分から。 ”・・・・・・私、少し話してみます” ”え? ・・・・・・いやいや、話すってどうするつもりだよ” ”簡単です。恭文さんが本当はどうしたいのか。どこに居たいのか・・・・・・正直になってもらうんです” 場はまだ騒然としている。ただ、そんな中でもややちゃんが普通にクッキー食い始めたのは・・・・・・なんでだろうな。 てーか、それ誰のクッキー!? 普通にフェイトちゃんとシャーリーちゃんも疑問顔だし、何やってんのっ!! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ”ディード、ちょっと待ってくれるっ!? 僕の・・・・・・僕の秘蔵のクッキーがー!! てーか、なぜややが隠し場所を・・・・・・あぁ、リインに聞いたんだっ! それしか考えられないっ!!” ”・・・・・・恭文さんのクッキーでしたか” では、手早く終わらせましょう。だってあのクッキー、美味しそうだもの。私もいただきたい。 ”恭文さん、では一言だけ” ”うん?” ”・・・・・・今、恭文さんが何を信じたいかを、一番に考えてください” 恭文さんは、クッキーを食べるややさんから私の方に視線を移す。そして私は、頷く。 安心させるように、勇気づけるように・・・・・・精一杯に笑う。 ”今、恭文さんが一番誰を信じたくて、誰の力を借りたいのか。 重要なのはきっと、それだけです。誰かを巻き込む事を恐れないでください” ”・・・・・・ディード” ”今の恭文さんは、どこに居ますか? フェイトお嬢様の補佐官ですか? 個人として戦っていますか? それとも・・・・・・全く別の何かでしょうか” ・・・・・・これだけでいい。あとは恭文さん次第だ。ただ、答えはもう出ていると思う。 しゅごキャラ達に『変えない』と言われた時の恭文さんの反応や、海里さんへの対応を見れば、もう決定よ。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・・・・・・・・・・うー、むかつくー! ティアナさん、あんなキャラだったっ!? やや、本気でキレてるんだけどっ! 一体なんであんな風になるのかなっ!!」 ・・・・・・泣き止んだと思ったら、僕がさりげなく秘蔵してたクッキーをどこからか持ち出して、ボリボリ食べてる。 きっとさっきのアレは、ガチにキャラチェンジだったんだと思っても、僕は悪くない。 「やや、それは僕が苦労して入手した、お取り寄せグルメなんだけど」 「うん、知ってる。ママの買ってる情報誌で載ってたから。あとリインちゃんから聞いてたから」 「それを知っていながら、何勝手にもしゃもしゃ食ってるっ!? てゆうか、僕にも食べさせろー!!」 そしてやっぱりリイン経由かいっ! くそ、後でお仕置きしてやるっ!! 「・・・・・・お兄様、切り替え早いですね」 「シオン、それが恭文の良い所だ。だが、同時にバカな所でもある」 ややはシリアスが続かない、ただ一人のエースだよ。 ただ、そんなややを見る視線と同じものが、僕にぶつけられてるのが、ちょっと疑問。 「ホントでちよっ! たまご一個一個にペペ達みたいな子が居るってこと、絶対忘れてるでちっ!! 綺麗事を言って、何が悪いでちかっ!? 夢は壊れたら・・・・・・もう二度と、戻らないかも知れないんでちよっ!!」 「全くだっ! それだけではなく、海里とムサシの事まで・・・・・・! 許せん、僕は・・・・・・絶対に許せんっ!!」 「クスクスも許せないっ! 恭文とミキが頑張ったのに、助ける意味が無かったなんて、嘘だよっ!! どうしてあんな事言えるのっ!? もうもう信じられないー!!」 「そう言いながら、おのれらもクッキー食べないでっ!? これ、マジで入手するのに苦労したんだからっ!!」 うわ、ややは落ち着いたけど、ペペにキセキとクスクスがキレてる。 「・・・・・・あ、本当に美味しいですね」 「だな。やっさん、後で俺にも店教えろ。普通に土産にしたいわ」 「そしてなんでおのれらも食べてるっ!? ・・・・・・スゥ、普通におすそ分けしなくていいからー!!」 「だめなんですかぁ?」 「ダメに決まってるでしょっ!!」 とにかく、みんなは相当不満そう。・・・・・・そりゃあなぁ。最後の雄叫び完全無視だと、こうなるって。 「あの、みんな落ち着いて? ランスターさんは、あくまでもこういう状況に立った経験者として」 「それを加味してもアレはないでちよっ! あむやエル達だって可哀想でちよっ!!」 「全くだっ! あぁもう、本当に腹立たしいっ!! なにより、僕達がお遊びだと言った事が許せんっ!!」 キセキは、大事なことなので二回言いました。うん、ここ大事なのよ? 王様の言うことだしね。 「とりあえずお前らはクッキーから手を離せー! むしろ許せないのは僕なんですけどっ!!」 くそ、どいつもこいつも・・・・・・こうなったら、取られないように必死に食べてやるっ!! 「あの、ごめんね。ティア、最近色々あって情緒不安定になってて・・・・・・今のも、悪気は無いと思うの」 「そうよ。みんな落ち着きなさい? ・・・・・・あ、これ美味しいわね」 そしてなんでりまもさり気なくクッキーに手を伸ばすっ!? あぁもう、マジでシリアス出来ない連中だねっ!! 「りまはどうしてそんなに冷静なのー!? クスクスはもうプンプンなのにー!!」 「そしてどうしておのれまで、僕のクッキーを平然と食べてるんだよっ! 僕はプンプンだよっ!?」 「別にティアナさんだけが、全部悪いわけじゃないって事。あと、あなたの物は私の物じゃないのよ」 納得出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 僕はおのれとそこまで親しくなった覚えはないわっ!! 「・・・・・・でも、美味しそう」 唯世も普通に手を伸ばそうとするなっ! このクッキーは一枚たりともやらないからっ!! 「とにかく、情緒不安定の理由の一つはハッキリしてるじゃない。原因やその状況は問題じゃない。 恭文が×たまやイースター絡みの事件で、今日みたいにボロボロになるのが嫌なのよ」 「・・・・・・うん、そうだと思う。ティア、話を聞いてた時に私とフェイトさん以上に顔を青くしてたから」 してたね。気づいてたよ。すっごい気づいてたよ。だから、殴ろうとかは一切考えなかったよ。 「ティアナさんの言うように、私達じゃ能力に差があり過ぎてフォロー出来ない部分があるのは、確かに問題なのよ。 そして今回に限って見ても、本当に危険が大きいのも事実。だったらって考えちゃうのは、仕方ないと思うわ」 「・・・・・・確かにそうだね。ランスターさんが僕達に言った『蒼凪君を預けられない』は、正論だよ。 今回は事前の取り決めが有ってこれだったけど、それが無かったら・・・・・・うん、やっぱり正論だ」 言いながら、りまと唯世が僕を見る。というかシャーリーも僕を見る。いや・・・・・・ねぇ? 「だな。俺もややちゃん達には悪いが、魔導師としてはティアナちゃんと同意見ではある。 ・・・・・・てかやっさん、あれでいいのかよ。お前から話せば、あらかたは解決すると思うんだが」 「いいですよ。辞めるって言ってるんだし、辞めればいいじゃないですか。 何より、そんな事を今この段階で話したくないし、話す必要もありません」 「おいおい。いくらなんでも、今のは言い過ぎだろ。ちゃんと話してやれ」 「嫌です。死亡フラグ立てたくないんですよ」 あ、またややとクスクスに先んじてにクッキー取られた。 くそ、負けてなるものか。このアーモンドクッキーは僕のものだ。 「よし、お前今すぐ右の頬を差し出せっ! 俺が年長者として、修正加えてやるよっ!! あと、どいつもこいつもシリアスな話しながらクッキー食うのやめようぜっ!?」 「えー、だってこのクッキー本当に美味しいんだよー? というか、サリエルさんも食べてるのにー」 「ややちゃん、俺はそういう事を言ってるんじゃないんだよっ!? 俺は空気を読む事の大切さを言ってるんだよっ! そして俺はいいのっ!!」 ≪主、充分に主も空気が読めていないと思われます≫ マジでそうだし。そしてここに関してはもう気にしてはいけない。 僕達は誰にも負けないように、クッキーを争奪しているだけだし。 「とにかくだ。りまちゃんの言うように、お前がここ最近無茶が過ぎてるのも原因なんだぞ?」 「そうですけど、何か?」 クッキーをかじりながら、僕は即答した。うん、知ってる。そうじゃなかったら、あんなこと言わない。 ≪蒼凪氏、分かってて殴ろうとしたんですか?≫ 「いや、それ以前にそれで今のなぎ君の発言は、本当に最低だと思う。死亡フラグどうこうって」 「知ってるけど何か? てか、殴ろうとはしてないって何度言ったら分かるのさ」 サリさん、シャーリーも頭かきむしるの止めてもらえます? ほら、ハゲちゃいますから。 「それにシャーリー、何故におのれが死亡フラグの怖さを認識してないのさ。 その昔、某ヘリパイロットは兄貴キャラとか人にアドバイスなんてしたおかげで、重傷を」 「あぁそうだねっ! でも、あの人の話をされると、真面目に反論出来なくなるから、やめてっ!? ・・・・・・あのね、なぎ君、あとみんなもだけど・・・・・・ティアの言う事はその、間違ってはないんだよ?」 シャーリーは、非常に言いにくそうに言った。シャーリーは、とても空気の読める子だ。 だから、自分が総スカン食らう可能性とかも鑑みて、ちょっと怯えてたりする。 「シャーリーさんまで、何言ってるでちかっ!?」 「お前まで、恭文とミキの頑張りを無意味だと・・・・・・たまごを助ける必要が無いと言うつもりかっ! 海里とムサシを、裏切り者と罵るのかっ!!」 「あぁ、違う違うっ! そっちじゃないよっ!! お願いだから落ち着いてっ!? それとクッキーの粒が撒き散らされてるからっ! シリアスが台無しだからっ!!」 シャーリーが、両手を前に出してぶんぶんと横に振る。 だからだろう。殺気立ったみんなは、ちょこっとだけ止まった。 「あんまりに危険が大き過ぎるという点について言ってるの。・・・・・・みんなの身の安全の問題の事もある。 現場に出たら、それはきっと二階堂先生の時以上だよ。当然のように、みんなは側に居るなぎ君の事もきっと頼れない」 キセキとペペ、クスクスもそうだし、唯世にややもこちらを見る。だから、僕は頷いた。 というか、頼られても困ると思う。僕とリインは、ブラックダイヤモンドにかかりっきりだろうし。 「当然のようにみんなに何かあったら、親御さん達だって心配する」 「あのね、シャーリーとティアの言う事は正解ではないだろうけど、間違いでもないんだ。 まず、ここは絶対に納得して欲しい。私も本局執務官という立場から言えば、同じなの」 殺気立っているしゅごキャラ勢に怯えながらも、フェイトもフォローに入る。 「みんなは局員でもなければ、戦闘訓練もしていないただの一般人。特殊な能力があるというだけで、そこは変わらない。 今回だけに限らず、出来るならティアの言うようにして欲しいと思う部分がないかと言われたら、嘘になる」 入って・・・・・涙目になってるのは、みんなが怖いからだろう。 「私達はこういう仕事だから、危険な事や切り捨てる事に対しても、ある程度の覚悟は決めてる。 ×たまだけならともかく、ロストロギア相手だとその覚悟が必要になる。それは間違いの無い事実」 「つまり、僕達にその覚悟が出来ないなら・・・・・・もう手を引いて欲しいということでしょうか」 「うん。まぁ、みんなの場合は切り捨てるのは無しだろうから、危険に飛び込む覚悟だね。 ティアも言い方は乱暴だったけど、みんなの事やみんなの親御さんの気持ちとか、心配してるの」 それも分かった事の一つ。だから余計に、みんなを下がらせたかったんでしょ。 だからサリさんやシャーリーだって最低だって言うのよ。僕がそこも分かった上で、話さないって言ったから。 「どういう事ですか? てゆうか、なんでやや達のパパとママの話に・・・・・・あ」 「うん、そうだよ」 ややと唯世、それにあむにランとペペにキセキ達は気づいた。 首を傾げてるのは、海里とりま、ムサシとクスクスだけ。だから、フェイトとシャーリーが補足を入れる。 「ティア、家族を全員亡くしてるんだ。幼少期に両親、8歳の頃にお兄さん。 だから知ってる。遺された人間が、どれだけ辛いかって事を」 「そして、りまちゃんの言うように今日のなぎ君の負傷だよ。だから余計になんだ。みんな、本当に分かってる? このまま明日現場に出るということは、みんなが今日のなぎ君の立場になる可能性があるって事なんだから」 授業参観の時に僕とティアの実の親の話になって、あむ達には話した事がある。 その時は、当然だけど今名前を出した四人は居なかった。だから、今驚いたような顔になる。 「・・・・・・納得した。だから彼女は、あんな言い方をしてでも拙者達を下がらせようとしたのか」 「クスクス、ちょっと怒り過ぎたかな。でもでも、ムカついちゃったし・・・・・・うー」 「だからみんなにはこれ以上事件に関わるにしても、一旦止まって・・・・・・慎重に考えて欲しいんだ。 例えここで引いても、私達は誰も責めない。というより、責められるわけがないよ」 「×たまの浄化は、多分今まで通りにはいかないと思う。壊さなきゃいけない事もあると思う。でも、それでもお願い。 みんなは下がって、私達に全部預けてくれないかな。私も後ろから出来うる限り援護はするし、きっとなんとかするから」 「下がらないよ」 あむはそう言いながら立ち上がる。立ち上がって・・・・・・しっかりと、足を踏みしめる。 「あたしはさっき言った通り。だからこんな所で引けない。 歌唄からも、イースターからも逃げるつもりもないです」 「あむ、でも」 「あたしは、あの子も×たま達も、歌唄もエル達も、みんないらない子扱いなんてしたくないから。 だから何も変わらない。あたしは・・・・・・あたしの決めた事、最後の最後までやるだけ」 そう言い切ったあむを見て、フェイトもシャーリーも言葉を無くす。だから僕は・・・・・・下を見る。 いつの間にか、僕の左側に来ていたリインに視線を向けた。 「恭文さん、リインはやるですよ。リインだって、このままはムカつくのです。 局どうこうガーディアンどうこうじゃなく、リインがこの状況をぶち壊したいです」 「僕も同じ。僕はティアやシャーリーの言う事なんて、納得出来ない」 だってそれを聞いちゃうと、あむとエルとの約束を破ることになる。 そして、イースターやりまにケンカを売った時の気持ちにも嘘をつくもの。 助けられるなら、全部助けたい。守れるなら、全部守りたい。 イースターを倒す事は大事だけど、それ以上に大事な事がある。それは、何を守りたいかという事。 「何を守りたくて、イースターをぶっ潰したいか。その前提を忘れたら、意味がない。 どんな言い訳しようが、それを忘れて連中潰しても、全く意味がない」 ≪その通りです。私達はこの戦いの中で、守りたいものをもう見定めています。 だからあなただって、海里さんや歌唄さんに必死に手を伸ばしている。そうですよね?≫ 「うん。僕は・・・・・・夢を守りたい。あむの言うように夢は生き物だから。 どんな形でも夢があるから、本当に人は『生きる』事が出来るから」 僕は・・・・・・たまごの中にある夢を、可能性を物扱いして、壊されるのが嫌だ。 アイツらを倒す事だけを見据えて、助けられる夢や可能性を見捨てるなんて嫌だ。 だからあの時ケンカを売って、今でもそれを通してる。それが僕の前提。僕の願い。 ・・・・・・例え現実ってやつが厳しかろうがシビアだろうが、今だけはそれを貫かなきゃいけないのよ。 今だけは、この戦いだけでも僕は・・・・・・本気で魔法使いキャラ、通さなきゃいけないの。 知っているよ。戦いがそんな甘ったるいもんじゃないって。殺す手も、時として必要な場合もあるって。 ただ、それでも・・・・・・・それでも、今ここでそうしたいと思う気持ちに嘘ついたら、意味ないのよ。 自分に嘘ついて、夢を置いてけぼりにするのなんて、もうごめんだもの。 「・・・・・・恭文さん、あの本当に歌唄ちゃんを助ける事がとても大変なら」 「エル、今更言うな。僕がやるって決めた。だから、やるだけなの。・・・・・・ありったけで、全部守る」 安心させるように笑ってやる。だって、僕はもう決めたから。 今更ここで逃げるなんて、主人公キャラのやることじゃないでしょ。 「結果はどうあれ、そのために飛び込む。そうしなきゃ・・・・・・僕が、僕の夢が嘘になるの。 だからエルは、僕達と一緒に戦ってくれればいい。歌唄を助けるために、全力でね」 「・・・・・・恭文さん。あの、ありがとうです」 ≪私も同じくですよ。この人のバカに付き合うのは、私の趣味ですし。シオン、ヒカリ、あなた達もそうですよね?≫ 今の今まで、口を閉ざして状況を傍観していた二人が話を振られて・・・・・・軽くお手上げポーズを取った。 「聞くまでもないでしょう。私達は、私達の勝手でお兄様に最後まで相乗りすると決めました」 「恭文、お前は勝手に戦ってろ。私達は・・・・・・同じように勝手に戦う」 「そうだね。・・・・・・だからさ、ちょっとだけ僕からお願い」 多分、戦闘者としては最低。だけど、それでも・・・・・・僕はみんなにこう言う。 これはみんなにしか、お願い出来ないから。僕の居たいと思う場所に居るみんなだから。 「今回はティアやフェイト、シャーリーの言うように、下手したら死ぬかも知れない。 そしてみんながこのままイースターの事件に関わり続ければ、大怪我するかも知れない」 ≪残念ながら、それは事実です。ぶっちゃけ今のあなた達では、力不足は否めませんから≫ 「だけどそれでも、僕はみんなに引いて欲しいなんて言うつもりない。むしろ、その逆なんだ。 本当の意味でイースターの連中を潰すためには、みんなの力が絶対に必要だから」 少し呼吸を整えて、右手を自然と握り締めながら僕は・・・・・・みんなにお願いをする。 「お願い。僕とリインとあむと、キャンディーズとヒカリ達と一緒に戦って。 命を、想いを賭ける覚悟を決めて・・・・・・地獄まで相乗りして」 俯いている海里以外が、僕を驚いた顔で見る。その視線を受け止めつつ、僕は頷く。 「ここだけの話じゃない。イースターの連中を徹底的にボコって決着をつけるまで、付き合って。 というか、巻き込むから。みんなが嫌がろうが、最後の最後まで僕達と相乗りしてもらう」 そう言い切ると、全員が息を飲んだ。横目でディードを見ると、嬉しそうに笑っていた。 「なぎ君、ちょっと待ってっ! さすがにそれはないよっ!!」 グダグダうるさいので、視線を向けて少し睨んでやる。シャーリーは、身をすくませて後退りした。 「シャーリー、黙れ。これはガーディアンの話だ。部外者が口出しすんじゃないよ。 てーか、コイツら人のクッキーをむしゃむしゃ食いまくったんだよ? 普通に対価は必要でしょ」 「部外者ってなにっ!? なぎ君、本当に忘れてるでしょっ! なぎ君はフェイトさんの補佐官なんだよっ!! ガーディアンへは局の仕事のために居るんだよっ!? お願いだからまずは、局や魔導師としてのルールを優先してっ!!」 「・・・・・・シャーリーさん、うるさいから黙ってて。 というか、マジで部外者なんだから口出しする権利ないわよ」 「りまちゃんっ!!」 だけど、りまはどこ吹く風で僕を見る。というか、なんか楽しそう。 「全く・・・・・・今更何言ってるのよ。昼間言わなかった? 私達は覚悟は決めてるって」 りまが呆れ気味に、僕の言葉にそう答えた。だから、その隣のクスクスが笑う。・・・・・・今のりまと同じように。 「一応助けてもらった恩もある。クッキーも食べさせてもらった。そしていい女は、借りはしっかり返すものよ? だから恭文、もう遠慮なんてしないで。遠慮なく強引に、私を巻き込みなさい。他はともかく、私は遠慮なく巻き込まれるから」 「言われなくてもそうする。・・・・・・りま、ありがと」 「いいわよ、別に」 「りまがやるなら、クスクスもやるー! てゆうか、放っておけないしー!! ・・・・・・あ、そうだ」 クスクスはリビングの中をふわりと飛んで、海里の前に行く。 俯いて、ただ拳を握り締めるだけの海里を見て、クスクスは優しく声をかける。 「あのね、海里とムサシは、裏切り者なんかじゃないよ? クスクスの、りまの、ガーディアンみんなの仲間。 お願いだから、元気出して? 二人がそんな風じゃ、恭文とミキ、アルトアイゼンが頑張ったのが、ホントに無意味になっちゃうよ」 クスクスの言葉に、海里はハッとしたように僅かに顔を上げる。 だからかも知れない。クスクスが、優しく微笑んだのは。 「クスクスからのお願い。三人の気持ち、嘘にしないで? 二人にしかそれは出来ないの。絶対の絶対に・・・・・・嘘に、しないで」 「・・・・・・そうだな。クスクス、すまぬ。拙者達はまだまだ修行が足らぬようだ。 海里、落ち込む暇などないぞ。拙者達は選んだはずだ。違うか?」 「あぁ、そうだ。俺達は・・・・・・選んだ」 海里が顔を上げて、僕と僕の近くに浮いていたあむを見る。僕は海里の瞳を見て、安心した。 瞳に力が戻ってたから。力強い、真っ直ぐないつもの海里の瞳だ。 「聖夜小4年月組、ガーディアンJチェアの三条海里であることを、俺は選んだ。 ・・・・・・ハラオウンさん、フィニーノさん、お心遣い痛み入ります。ですが、引けません」 「海里君・・・・・・あの、本当にいいの? あなたの場合は、お姉さんと戦うことになるし」 「問題ありません。それを言えば、現時点で蒼凪さんと剣を交えています。 俺にそれで迷う権利は、恐らくないでしょう。蒼凪さん、俺は・・・・・・お付き合いします」 海里は右手でメガネの位置をただしながら、フェイトやシャーリー、そして僕を見る。ムサシも同じようにして、僕達を見ていた。 「なにより・・・・・・俺も、嘘になるんです。ここで諦めれば、蒼凪さんと同じように俺の夢も嘘になります」 海里の夢は、強きを挫き弱きを助く侍。・・・・・・納得した。だから、飛び込むんだ。 海里の夢と僕の夢は、魔法使いと侍という違いはあるけど、同じ方向性だから。 「そうなれば、俺達のために命まで賭けてくれた蒼凪さん達に、もう二度と顔向け出来ない。 俺はそんなのは嫌だ。罪を数え、向き合い、そこから一歩踏み出すと決めた以上、逃げは許されない」 「なに、心配は御無用。拙者達は死ぬつもりなど毛頭ない。 拙者達は、ただ綺麗事を通すだけ。そうして全て守り、ハッピーエンドを目指すだけだ」 「・・・・・・そうだね」 強く、呟くように声を上げたのは、ややだった。ややは顔を上げて僕を含めた全員を見る。 「やや達はガーディアンで主人公キャラなんだから、この事件もパパっと解決しちゃえばいいんだよね。 それでそれで、悪い人達はみーんなぶっ飛ばして、ロストロギアなんて怖いものもちゃんと捕まえる」 「その通りでちっ! さすがややちゃん、単純明快で素晴らしいでちっ!!」 それから、なぜか僕とあむの方をジッと見る。そして、思いっ切り笑ってから言葉を続けた。 「でしょー? それでそれで、みんなでハッピーエンドにする。ややの知ってる主人公キャラは、いっつもそうだもん。 ・・・・・・どんな状況も笑って覆して、ハッピーに持ってっちゃうっ! だからみんな、やろうっ!? やや達で綺麗事、思いっ切り通すのっ!!」 「その通りでちっ! なお、ペペはやると決めまちたっ!! 赤ちゃんキャラにだって、譲れない意地があるでちっ!!」 みんなが、ややとペペの言葉に頷く。今まで口を開かなかった、唯世とキセキも同じ。 「ふん、全く庶民は・・・・・・王たるこの僕を置いてけぼりで話を進めるとは、何事だ。 唯世、恭文はともかく、ややとペペにここまで言われて、引くつもりはなかろう?」 「もちろんだよ。僕達ガーディアンのやることは、何時だって変わらない。 迷えるたまごを、その中の可能性や『なりたい自分』を守る。それだけだから」 「そういうことだ。・・・・・・フェイトさんにシャーリーさん、すまないが忠告は聞けない。 僕達は、誰一人諦めたくなどないし、逃げる事など出来ない。それになにより」 キセキが僕を見て、不敵に笑う。その中に嬉しげというかそういう感情が見えたのは、気のせいじゃない。 「うちの無鉄砲なジョーカーVが、初めて僕達を頼って・・・・・・いや、迷惑な事に巻き込もうとしてくれてるんだ。 ならば王として・・・・・・仲間として、遠慮なく巻き込まれてやるのが道理というものだろう」 笑って・・・・・・右拳を前に出し、しっかりと握り締める。 「恭文、あむ、僕達は地獄の底だろうがなんだろうが、遠慮なく巻き込まれてやる。だから・・・・・・やるぞ」 「みんな、ありがと。特に王様・・・・・・助かるわ」 「ふん、問題ない」 「いや、だから・・・・・・みんな本当に落ち着いてっ! もうみんなだけでどうにかなるレベルじゃないんだよっ!?」 全員の気持ちが固まったのを見て、シャーリーは左手で頭を抱えんながらも叫ぶ。 「あの強化ボディや月詠幾斗の事もあるっ! 私は大人として、これ以上みんながイースターとの事に関わるのは認められないっ!! ・・・・・・×たまを、こころを助けたいと思うみんなの気持ちは凄いと思う。でも、もういいの。みんなはもう充分に頑張った。だから私達に」 「よーし、それでは早速作戦会議を始めるぞ。まずは基本方針からだな。 ・・・・・・まずロストロギアに関してだが、ここは恭文とリインとアルトアイゼンに任せるしかあるまい」 「そこは本当に情けないでちけどね。ただ、ペペ達にはロストロギアを封印する事なんて出来ないし・・・・・・うぅ、申し訳ないでち」 シャーリーが唖然としているのを無視して、僕達ガーディアンメンバーは会議開始。 なお、サリさんとディードとフェイトは『やれやれ』という顔で苦笑している。 「そうだね。結局また恭文やこてつちゃん達任せになっちゃう部分が出来ちゃうもの」 ≪問題ありませんよ。ここは適材適所、きっちり分業していきましょ。 なにより・・・・・・もう、これ以上の怪我なんて、私がさせませんから≫ 「そっか。なら、恭文の事はこてつちゃんとリインちゃんにお任せかな。 やや達は、余計な邪魔が入らないようにしなきゃいけないね。戦力が歌唄ちゃんだけとは思えないし」 「確実に他にも出てくるわよ? 例えば×たま、例えば強化ボディ、例えば・・・・・・月詠幾斗。 この相手に手間取って、マスターCDを乗せてヘリが出立しちゃったら、意味がないわ」 「そうしたら、世界中のみんなのたまごが抜き出されちゃうんだよねー。うんうん、それは絶対だめー」 みんな、どこか楽し気で笑顔なのは・・・・・・まぁ、揃いも揃ってバカなせいだと思おう。 「ならば、速攻でほしな歌唄を足止めして、姉さんも手段は選ばずに確保。 出来ればヘリもどうにかすれば・・・・・・蒼凪さん、魔法でヘリの破壊などは可能でしょうか」 「海里、お前はまた大胆な事を考えるな。だが名案だ。 蒼凪殿、拙者達は魔法に関しては素人だが、それは可能だろうか」 「可能だよ。丁度いい手札を持ってるし、タイミングを見計らってブチ込めば出来る」 あとはヘリの状態だよね。多分加減は一切出来ないし、ヘリに×たまなり人員が居ない事も条件。 でも、ヘリ一台破壊・・・・・・まぁ、戦闘開始の花火としては、派手だしいい感じかな。 「みんなにはマジで露払いをお願いしたいんだ。 あと、僕とリインは絶対にフォローする余裕が無いと思う」 「能力アップした歌唄さん&ロストロギア相手ですから。 そっちが片付かない限りは、リイン達はそんな感じです」 「分かってる。・・・・・・僕達は悔しいけど、蒼凪君とリインさん、日奈森さんのサポートと露払い。 あと、もしも強化ボディを持ち出してくるようなら、×たまと一緒に全力で浄化。基本方針はこれだね」 「ならば、もう少し煮詰めていくか。もう今日のような事にはならないように、しっかりとだ。 ・・・・・・力が無いなら、無いなりの戦い方をする。それが今の僕達に出来る最大限の努力だ」 「みんな、いい加減にしてっ! お願いだから私の話を聞いてっ!!」 だけど、当然のように誰も聞かない。なので、どんどんシャーリーのイライラと声が大きくなっていくけど、当然無視。 「・・・・・・出来れば、一晩かけて慎重に考えて欲しかったんだけど、これは無理そうだね。 シャーリー、もう認めるしかないよ。どっちにしても、ガーディアンのみんなの力は必要だもの」 「フェイトさんっ!!」 そしてフェイトは苦笑い。それを見て、唯世も伝染したかのように苦笑いしてる。 「すみません、フェイトさん。でも僕達・・・・・・ここで何もしない言い訳も、止まる言い訳も出来ないんです」 「ううん、分かってたから。だったら、一緒に頑張ろうか。 私も同じだから。ダイヤのたまごや×たまを見捨てる言い訳、出来ないんだ」 「はい」 その様子を見て、サリさんが何気に満足そうに笑ってる。・・・・・・年長者だから、色々あるんでしょ。 「シャーリー、そういうわけだから」 「あぁもう分かりましたよ。絶対に納得出来ないけど、ここは引きます。これ以上KYみたいに扱われるのは嫌ですし。 ・・・・・・もちろん、勝手に機動課へは連絡しません。ただフェイトさん、クロノ提督にだけは話を通してくださいね?」 「うん、後で連絡するよ。さすがに今回は、負担かけまくっちゃうだろうし」 「あの、恭文さん」 声がかかる。そちらを見ると、ディードが僕を見ていた。心配しているのが瞳を見れば分かる。 赤いフェイトと同じ色の瞳が、少しだけそんな色に染まって、潤んでいたから。 「私も一緒に」 「ダメだよ。話、聞いてなかったの? ここでディードが出てきても、対抗策が無いでしょ」 「それは知っています。そしてこれは、恭文さんのケンカ。私が口出す理由などありません。 それでも・・・・・・それでも、心配なんです。私はあなたの妹ですから」 「そっか、納得した」 とりあえずディードの方に向き直って、僕は手を伸ばしてディードの手を握る。そして、優しく笑いかける。 「・・・・・・大丈夫、必ず帰ってくる。『全部守る』の中には、僕も入ってるんだから」 ティア、確かに僕達はバカだよ。・・・・・・バカだから、振り切るね。 全部守るために、こんな現状を壊すために、全速力でぶっ飛ばすわ。 「それに・・・・・・ほら、知ってる? 日本のことわざには『憎まれっ子世にはばかる』という言葉がある。 つまり、色々ダメな感じの僕は簡単には負けないし死なないのよ。オーケー?」 「・・・・・・はい」 少し冗談めいて言うと、ディードがくすりと笑う。うん、大丈夫。帰る場所も、待ってくれる人も居る。 絶対に帰ってこよう。・・・・・・今、死亡フラグ一つ成立させちゃったけどさ。やばい、マジで気をつけよう。 「それでヤスフミ、身体の調子はどう?」 フェイトにそう聞かれたので、僕は左拳を握ったり開いたりしながら、笑顔で答える。 「問題ない。さっき言ったでしょ? スゥのリメイクハニーはすごいもの。サリさんのお墨付きもあるし」 「そっか。・・・・・・ヤスフミだけじゃないから」 「残念ながら僕は振り切っていくから、フェイトは一人ぼっちだよ? あぁ、それで可哀想に。IKIOKUREだよ」 あー、可哀想に。なのは二号だよ。フェイトはなのは二号だよ。ダブルIKIOKUREの誕生だよ。分かります。 「それはひどくないかなっ!? というか、3年後までに私に恋人出来なかったら、お嫁にもらってくれるんだよねっ!?」 『そうなのっ!?』 「うん、そうなんだよ。それなのに、ヤスフミは酷いの。 今だってほしな歌唄の事ばっかりで、私との約束を守るつもりがあるかどうか」 「今その話関係なくないっ!? てゆうか、みんなもその冷たい視線はやめてー!!」 まぁみんなの疑問の声はともかくとして、フェイトにデコピン。・・・・・・とにかく、僕は振り切るし。 もう全速力ですよ。ありったけでぶっ飛ばして・・・・・・突撃するしさ。 「とにかく私は追いついていく。だから、ヤスフミは一人じゃないの。・・・・・・それでね、ヤスフミ」 「うん」 「ロストロギアに何か変化が起こるようなら、私も一気に介入するし、場合によっては機動課に連絡する」 「あー、そっち方面か。まぁ、確かになぁ」 残念ながら、今回のミッションにはかなり厳しい敗北条件が付きまとってる。 それは僕達の気合いでもどうしようもない。出来るのは、その条件を満たさないようにして勝つ事だけ。 「みんなもお願い。ここは絶対に認めてもらいたいの。ロストロギアは、本当に危険な物なんだ。 大きな災害や事故にとても発展しやすい。だから、もし本気で全部守りたいと思うなら」 「分かっています。僕達ガーディアンで、早々に勝負を決めろ・・・・・・ですよね? 最悪、時空管理局の機動課が乱入しても、問題の無い状況には持っていく」 「それが無理な場合、俺達もバッドエンドを覚悟するべき。 それが、俺達がこの状況で綺麗事を通す上での最低条件」 「そうだよ。・・・・・・ごめん。やっぱり私は、みんなに私達の道理を押し付けてる。 だけど私も、ここだけは絶対に譲れないんだ。分かってくれると、少しありがたい」 みんなは、フェイトの顔を見て真剣な面持ちで頷いた。頷いて、フェイトは・・・・・・僕を見る。 ”それと、ヤスフミ” ”なに?” ”あむと、さっき話してたような約束・・・・・・したんだ” ”うん。一人で無茶するなって、そう言われてね。 するなら、二人で無茶して、歌唄もダイヤも助けようってさ” ”・・・・・・そっか。ね、ヤスフミ。もしかしてあむの事・・・・・・好き?” 何かが、何かが心の奥深くに突き刺さった。普通に×付くんじゃないかってくらいの衝撃が、僕を襲う。 ”あ、恋人とか恋愛感情どうこうじゃないよ? 友達・・・・・・仲間として” ”ねぇ、11歳対象ってやっぱりやばいかな。意識してるの、やばいかな。 あむと一緒に居るの楽しいとか心地良いとか思ってるの、だめかな。うん、だめだよね” ロリコンとかじゃないのに。僕、小学生に興味なんてないのに。てゆうか、持ったらだめなのに。 ”え、本当にそうなのっ!? あぁ、落ち込まないでいいからっ!! 大丈夫、8歳差ならまだ許容範囲だよっ! ただ現状の年齢が問題なだけだよっ!!” ”それが大問題だから、頭抱えてるのー! あぁ、どうすりゃいいのこれー!?” とにもかくにも、明日だ。今度こそ決着をつける。つーか、絶対につけてやる。 鍵はもう、この手の中にある。だから、あとは・・・・・・開くだけだ。 ”というかフェイト、なぜにいきなりそんな話? ・・・・・・あぁごめん、いつもの天然だよね” ”違うよ。というかヤスフミ、気づいてないの?” フェイトが僕の方を見る。それが何故か気恥ずかしくて、少し視線を逸らす。というか、みんなもその視線を追って見る。 それが揃いも揃って僕の方なので、ちょっと身体の温度が上がる。・・・・・・どうした? 「・・・・・・ヤスフミ、あむ」 「はい?」 「なんですか、フェイトさん」 「何時まで、手を繋いでるのかな」 『・・・・・・・・・・・・え?』 次の瞬間、僕達はずっと繋いでいた手を見る。そして、叫ぶことになった。 「気づいてなかったんだ。あむちー達、さっきからずっと繋ぎっぱなしだったのに」 「そうだね。・・・・・・なぎ君、そうなんだ。あぁ、そうなんだ。 だからこれなんだ。ごめん、私はようやく納得したよ」 「ヤスフミ、あの・・・・・・大丈夫だよ。愛さえあれば年の差なんて」 『お願いだからやめてー! 別に今のところそういうのじゃないからっ!!』 ・・・・・・こうして、無謀且つ無茶な合同作戦の火蓋は切って落とされた。 だけどそこはそことして、みんなの視線が痛かった。あぁ、失敗した。 特に唯世の前だし、あむには悪いことした。うぅ、反省だよ。 (その10へ続く) 恭文「というわけで、新年度前記念スペシャル第一弾はいかがだったでしょうか。 さて、本日のあとがきは予定を変更して蒼凪恭文と」 フェイト「えっと、フェイト・T・ハラオウンです」 美由希「えっと、高町美由希です。ねぇ恭文、なんで私達呼ばれたの?」 フェイト「そうだよ。確かこのIFルートでのあとがきって、私とかは呼ばないんじゃ」 恭文「それはね、この場を借りて、二人と協議しなきゃいけないことがあるのよ」 フェイト「え?」 恭文「今日知った話なんだけど」 (現在、平成22年3月29日です) 恭文「・・・・・・なのはがなんか空海とエッチしたいそうですっ!!」 フェイト・美由希「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」 (衝撃的なBGMが流れる。しかし、蒼い古き鉄は静かに頷くだけだった) 美由希「いやいや、空海って・・・・・・あれだよねっ!? 相馬空海君っ!!」 フェイト「ヤ、ヤスフミちょっと待ってっ! 空海君はまだ中学生だよ!? そんなのありえないよっ!!」 恭文「フェイト、美由希さんも信じられないかも知れないけど・・・・・・事実なのよ。もう覆りようがないの。 なのはは、なんでも3年以内にエッチ友達を100人作りたいらしい」 美由希「はぁっ!? え、エッチ友達って・・・・・・どういうことかなっ!!」 恭文「なのは、よりにもよって公共の電波で『エッチ友100人出来るかなー♪』と歌ったんです」 フェイト「そ、そんなの嘘だよっ! なのはがそんな事するわけがないよねっ!?」 恭文「フェイト、信じられないと思う。僕も見た時、衝撃的だった。でも、これを見て?」 (詳しくは『ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm10190379』を参照してください。タイムレールは『6:24』です もしくは『ttp://www.bgata-hkei.com/promotion.html』をどうぞ) 美由希「な、なのはがそんな・・・・・・きゅう」 フェイト「美由希さんっ!? あの、しっかりしてくださいー!!」 恭文「アレだね、ヴィヴィオからのプレッシャーが相当だったんだろうね。 だから、数こなせばオーケーみたいな考えになって・・・・・・うぅ」 フェイト「ヤスフミも落ち着いてー! こ、これはその・・・・・・何かの間違いだよっ!!」 恭文「でもフェイト、変装はしてたけど、これはなのはの声だよ? そして相手は声が出てないけど、空海なのよ?」 フェイト「そ、それはその・・・・・・というか、空海君がどうしてここで出てくるのっ!?」 (詳しくは『B型H系』で検索してください) 恭文「まぁ知っての通り、なのはは色んな意味でさっぱりな残念な子。 その練習相手というか初めてを・・・・・・空海で済まそうとしているのよ」 フェイト「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! そ、そんな理由でっ!?」 恭文「そんな理由だよ。フェイト、これは由々しき事態だよ。空海が幻想殺し使ったなら、まだいい」 (『いや、よくねぇだろっ!?』) 恭文「でも、それすらもない。普通にこれは大問題だよ。いや、空海はまだ中学生だから、下手したら法律に触れて」 フェイト「・・・・・・ヤスフミ、なのはを説得しようよ。というか、初めてをそんな風にするなんてダメだよ。 本編やRemixの話だけど、私はヤスフミに・・・・・・大好きな人に初めてをあげられて、嬉しかったから」 恭文「うん、それは僕も。とにかく、何とかしてなのはを止めよう。まだここはいいんだよ。美由希さん気絶しちゃったし」 (現在、泡を吹いています) 恭文「でもこれが、士郎さんや桃子さん・・・・・・恭也さんに知れ渡ったら」 フェイト「絶対にトンでもない事になるね。まずい、早く解決しないと」 恭文「なにより、ヴィヴィオにだって影響がよろしくないって。ママのH友が100人だよ? でもどうしよう。なのはが相当焦ってこれなのは、まぁ確実だけど」 フェイト「私達、焦らせ過ぎたのかな。だったら・・・・・・うーん」 (そこの辺りを色々協議しまくる。なお、お姉さんは気絶したまま。 本日のED:AAA『Crush』) あむ「・・・・・・いやいや、全く中身の話してないじゃんっ! 何やってんのっ!?」 恭文「あむ、これはもう仕方ないんだよ。それよりもなのはと空海だよ。許していいと思ってるの?」 あむ「単純に新番組でなのはさんと空海の中の人がそれってことでしょっ!? てーか、これって確かアンタの書庫で読んだけど、普通にそうならないもどかしさを楽しむギャグマンガじゃんっ!!」 (ぴんぽーん♪) 恭文「あむ、そこはもうどうでもいいの。大事なのは、家族会議と友人会議の体制が出来てるってことだから」 あむ「そこは大事だけど、ダメでしょっ! てか、暴走し過ぎじゃんっ!!」 恭文「というかさ、あむ・・・・・・B型H系の漫画、書庫のR15コーナーに置いてあったんだけど」 あむ「う」 恭文「それをあむがどうして見てるのかな? あむ、何時からR15になったんだっけ。・・・・・・すけべ」 あむ「す、すけべじゃないしっ! そういう事くらい、保健体育の授業で習ってるんだからっ!!」 恭文「なるほど。習ったから興味が出てきて、漫画で勉強と。うんうん、納得したわ」 あむ「するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 (おしまい) [*前へ][次へ#] [戻る] |