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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第18話 『男には、時として仮面をつけていなくちゃいけない時もある』(加筆修正版)



フェイトちゃんと恭文君とエリオとキャロが、お休みから帰ってきた。

お土産を貰ったり、恭文君が何も言わずにはやてちゃんをどついたりとか色々あった。

そんな事があった翌日、早速休み明け一発目の訓練。今日は、恭文君も参加。





なんだけど・・・・・・おかしい。波の音が聴こえて、朝日は眩しい。





いつもの海沿いの集合場所のはずなのに、全然風景がいつもじゃない。










「・・・・・・えっと、恭文君」

「何?」



爽やかな訓練前の風景に、ある一つの黒色が混じる事によって、世界がカオスな方向になっている。

だから私は、その原因に対して当然のように声をかける。そうしたら、こんな答えが返ってきた。



「何じゃないよっ! こっちが『何?』なんだよっ!? なんなの、その格好はっ!!」



現在、恭文君の格好がおかしい。黒一色の上下にブーツに長袖のコート。そして、顔には白い仮面。

口元が笑顔だったり、片目に雷撃をイメージしたような紫色の装飾達があって・・・・・・なんなのコレっ!!



「いやいや、見て分からないの?」

「分からないから聞いてるんだけどっ!?」



ほら、見てみてっ!? スバル達もそうだし私もヴィータちゃんもフェイトちゃんもシグナムさんも唖然としてるからっ!!



「なのは、常識無いね」



うわ、なんかすっごい平然と私が悪いみたいな言い方したしっ!!



「常識あるよっ!? 少なくとも恭文君よりはあると思うなっ! てゆうか、どうしてその格好なのかなっ!!
しかも普通にその格好で訓練場まで来ちゃったしっ! お願いだからちゃんと教えてー!!」

「いやいや、DARKER THAN BLACKのヘイじゃないのさ。ほら、格好そのままだし」



言いながら恭文君は、太ももに手を伸ばす。そうして取り出したのは、一本の大ぶりな両刃のナイフ。

刃渡りは25センチ程度で、刀身の切っ先から鍔元までに真っ直ぐなスリットが入ってる。



「汚れた指先でー♪ 夜を注ぎこんでー♪ 千切れるまでー君ーを抉じ開けてー♪」

「歌わなくていいからっ!!」



よく見ると、両の太ももに同じものが他に三本ある。太ももに、ホルスターが付けてあったんだ。

そのままの格好で普通に来るから、私達ビックリして気付かなかったよ。



「それで歌われても分からないからっ!!
そんな『知ってて当然』みたいな体で言われても」

「あ、あのアニメか。お前好きだもんなー」



ヴィータちゃんどうしてそこで納得するのかなっ! というか、これってアニメのコスプレっ!?



「てか、そのナイフや服や仮面はどうしたんだよ」

「あ、友達が誕生日プレゼントって言って送ってくれました」



どんな誕生日プレゼントっ!? いやいや、色々ここは聞き逃せないからっ!!



「というのは冗談で」

「冗談なのっ!?」

「友達がDARKER THAN BLACKを最近見て、コスプレ用に装備作ったんですよ。
で、僕がテストを。ほら、僕だったら黒の武装は守備範囲ですし」



ただ、服と仮面だけは恭文君用に新しいのを仕立てて送ってくれたらしい。

なんでも、身体がサイズが違うからそうするしかなかったとか。というか、装備ってなに?



「あぁ、そういう事か。確かにお前だったら出来るよな」

「ヴィータちゃんもお願いだから納得しないでっ!? ツッコミ所満載だからっ!!
・・・・・・というか恭文君、それ・・・・・・楽しい?」



試しにそう聞いて見ると・・・・・・・・・・・・平然と頷かないでー!!

そして私を見ながら首を傾げないでっ!? まるで私がおかしいみたいだからっ!!



「浅い眠りの中ー♪ 剥がれた想いが軋むー♪」



歌わなくていいからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 別に私達は続きを歌って欲しいとかこれっぽっちも思ってないよっ!?



「・・・・・・蒼凪、お前ふざけてるのか? 今日はスバルと模擬戦のはずだろ」



怒り心頭という顔で、シグナムさんが恭文君を睨む。それを見て、恭文君は仮面の下から鼻で笑った。



「ふざけてるとは失礼な。ふざけてるのはシグナムさんの方じゃないですか。
いっつも訓練なのに訓練着も着ないで制服で・・・・・・戦闘訓練と制服をナメてるんですか?」



確かにシグナムさんは、訓練着を着ない。すぐにバリアジャケットになるからと言って、着ない。

だから恭文君の指摘に固まって、少し黙る。そこを狙って恭文君が畳み掛ける。



「あ、なのははいいんですよ? 教導官制服はそういう使い方も視野に入れられてますし。
でも、陸士制服はそうじゃないでしょ? 全然違うでしょ? それ、隊長としてどうなんですか?」



うん、そうだよ。私が着ている教導官制服は、普通の制服より動きやすくて汚れてもいい感じで作られてるから。

だから、シグナムさんはとても苦い顔をして恭文君を見る。だって、今も制服なんだから。



「全く、自分の格好を見てから話してくださいよ。TPOって分かりますか?
訓練の時には、訓練に使える服を着るべきなんです。それなのにシグナムさんはいつもいつも」

「よし、お前そこでジッとしていろっ! 今すぐレヴァンティンの錆にしてくれるっ!!
私は今のお前にだけはそこを言われたくないっ! それは屈辱以外の何ものでもないんだっ!!」



あぁ、シグナムさん落ち着いてー! というか、恭文君の方が口が上手いんですし、乗っちゃだめですからっ!!



「シグナム、落ち着いてください。・・・・・・ヤスフミ」

「・・・・・・何もかも今はー全て消しされたらー♪」



また歌い出したっ!? あの、普通にそれ好きなのかなっ!!



「いやぁ、いい歌だよな。アタシも西川ちゃんは好きだ」



ヴィータちゃん、お願いだからツッコんでっ!? 普通にこれは怒っていいところだからっ!!

今日はどうしちゃったのかなっ! 何時もだったらアイゼン持ってフルボッコだよねっ!!



「うん、歌わなくていいんだよっ!? そこはもういいからっ!!
・・・・・・ヤスフミ、ドッキリはもういいから訓練着に着替えてくれないかな」

「あ、だめ」



当然のように、その言葉に私達はズッコケる。だって、ありえない。その返答はありえないもの。



「どうして即答なのっ!?」

「別にドッキリのためだけに、こんな格好してるわけじゃないって事」



とりあえず、恭文君はナイフをホルスターに納めながら言葉を続ける。

真剣な口調だけど、楽し気なのは絶対気のせいじゃない。



「さっきも言ったけど、装備のテストをさせてもらいたいのよ。
で、あとは僕的にもちょっと試したい事がある」

「・・・・・・試したい事?」



その言葉に、私達みんな顔を見合わせる。見合わせて、フェイトちゃんが代表して聞く事になった。



「ヤスフミ、それなにかな?」

「内緒。大丈夫、それでスバルの腕が吹き飛ぶなんて事はないから。基本的に危なくはない」



うーん、こういう場合・・・・・・恭文君は危険が無い限りは絶対話してくれないだろうなぁ。

あはは、みんな戸惑い気味だよ。当のスバルの視線が厳しいもの。



”実は・・・・・・かくかくしかじか・・・・・・なのよ”



どうやら、危険はあったらしい。だから、今話してくれた。それを聞いて私達は、一応納得した。

確かにそういう趣旨ならまぁ、この格好も分かる。今教えてくれた装備内容も分かる。



≪そういうワケなので、お願い出来ませんか? この人、久々にやる気になってるんで。
服に関しては防弾・防刃式なので、このままでも問題なく出来ます≫

「・・・・・・なのは」

「まぁ、試したい事があるならそれでもいいけど」



ちゃんと話してくれたから、私達は了承した。うん、ちゃんと話してくれたから納得出来るの。



「でも、危ないと思ったら止めるからね?」

「大丈夫。止める前にスバルがみっともなく地面に倒れる事になるから。
多分あれだね、僕が一発攻撃したら『ミルクッ!!』とか叫んで倒れるね」

「それは全然大丈夫じゃないよっ! そしてそれはどんな断末魔っ!?」



だから挑発しないでっ!? ほら、スバルの視線がすっごく厳しいからっ! あぁ、恭文君本当にどうしたのっ!!

なんか旅行から色々振りきれてないかなっ! ちょっと暴走し過ぎだと思うんだけどっ!!



「スバル、そういうわけなんだけど大丈夫?」

「もし嫌なら、さすがに僕も無理は言えないもの。普通にいつも通りにやるけど」



何気に引く所は引くと言っている恭文君が、仮面を装着したままスバルを見る。

というか、固まった。私とフェイトちゃん達も固まった。スバルが、凄まじく燃えてる。



「・・・・・・問題、ないですよ? えぇ、大丈夫です。私・・・・・・勝ちますし」

「ならよかった。でもスバル・・・・・・残念ながらそれは無理だよ。六課最強はこの僕なんだから」

「だから挑発しないでー! というか、いつの間にそこ決まったのっ!? 私達は何も聞いてないんだけどっ!!」

「大丈夫。なのはは六課『最凶』で、フェイトは六課『最高』だから」

「なんで私だけそんな禍々しい文字が入ってるのっ!? 絶対そこおかしいよっ! 私も『最高』って言ってよっ!!」



・・・・・・だから首を傾げないでー! 仮面で顔見えないけど、『この人何言ってんの?』って顔で笑ってるのが分かるからっ!!



「あー、でも問題があるんだ」

「問題? ・・・・・・恭文君、どうしたのかな。どうしてそんなにまた俯くのかな」



仮面を付けたまま俯く恭文君は、私達の注目を集めながら・・・・・・小さく呟いた。



「仮面が息苦しい。いや、思ってたより圧迫感が」

「だったら外そうよっ! 普通にそこは外していいからっ!!」

「ダメだよっ! これがフォーマルな正装なんだよっ!? 仮面を含めて全部なんだからっ!!」

「それをフォーマルって言わないでっ!? フォーマルという言葉の使い方を間違えてるからっ!!
そんなフォーマル、私は絶対認めないよっ!!」










こうして、朝から騒がしくフルメンバーでの六課の日常は再開された。





というか、恭文君・・・・・・ちょっと元気になった? 部隊の中でも、いつものノリだし。





いや、なり過ぎではあると思うんだけど、もしそうならそこは本当に嬉しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・叩き潰す。ふざけるのもいい加減にして欲しいよ。
私達みんな、真面目にやってるんだよ? それなのに・・・・・・それなのに」



あの不審人物は、普通に仮面は外さずに準備運動してる。ぶっちゃけ、不気味。

もしもあんなのが平然とこっちに挨拶してきたら、私は即逃げるわ。



「スバル、アンタ落ち着きなさいよ。何簡単に挑発に乗ってる?」

「そうですよ。落ち着いてください。・・・・・・恭文の格好と発言は、スバルさんにプレッシャーをかけるためのものですよ」



スバルとは正反対に、エリオはとても冷静だ。というか、最近のアレコレの中で1番冷静かも知れない。

事件中のアレコレを自分なりに反省して、色々自主勉強してるらしいしそのせいでしょ。



「前に読んだ教本で、そういうのがありました。あえて奇抜な行動を取る事で、相手のペースを乱すんです。
例えば拳法とかでも挑発や威嚇を兼ねた動作を取り込む事で、動揺を誘う構えがあるそうですから」

「あ、なるほど。それと同じと考えれば、アイツがいきなりあの格好で来たのも充分納得出来ると。
あの不審なコスプレや一見常識のない行動をする事で、スバルの能力を半減させようとしてるわけね」

「はい」



あとは私の時のアレコレか。そう考えると、一応は納得出来るから不思議よね。

・・・・・・楽しそうに鼻歌口ずさみながらストレッチしてる様を見ると、そうは思えないけど。



「戦いは対峙する前から始まっていると考えるなら、ここでそれをやった理由も分かります。
そして、テンションや心理状態に対してのプレッシャーと考えるなら、納得も出来ます。・・・・・・一応は」



ただ、それでもエリオは苦い顔。理由? そんなの、あの屈伸してる不審人物に決まってるじゃないのよ。

そこを疑問に思ってしまう程に楽しそうなのよ。なんかすっごい歌ってるし。しかもやたら上手いし。



「だったら、それで正解だよね。だってスバルさんのペース、乱れまくりだもの」



だから、私達は不審人物からスバルに視線を移す。スバルは俯きながら・・・・・・右拳を握り締めていた。



「スバル、そういうワケだから落ち着きなさいよ? 格好だけで判断してカッカしてたら、足元すくわれるし」

「そうだ、負けるか。絶対負けるもんか。あんなふざけたやり方に、絶対負けないんだ。
私の拳はギン姉が教えてくれて、なのはさん達が鍛えてくれたんだ。だから絶対勝つんだ」

「・・・・・・僕達の話、聞いてないみたいですね」

「スバルさん、この調子だとまた負けちゃうね。私達でフォロー、考えておこうか」

「そうしておこうか」











エリオとキャロが何を言っているかは分からない。ただ、こうして二人の模擬戦は始まった。

なお、アイツはあの不審人物ファッションで、スバルは訓練着でデバイス装着。

とりあえず・・・・・・スバルがやたらとカッカしてるので、勝敗はもう決していると思う。





だから私達は、アイツの動きに注目する事にした。いや、あの不審人物がどう戦うか楽しみだし。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常


第18話 『男には、時として仮面をつけていなくちゃいけない時もある』





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・フェイト」





本日の戦闘のシチュは、廃棄都市。で、僕はスバルの正面に立っている。

いやぁ、どこぞの猛牛みたいになってて面白いよ。

僕達の前後に道は開けていて、いわゆるビルの合間に立ってる。



なので、左右両側には大体3〜4階建ての崩壊しかけなビル達。

屋上には手すりなんてあるけど、あっちこっち歪んでる。・・・・・・リアルだよなぁ。

これが全部空間シミュレーションで構築された作り物とは思えない。



シャーリーが頑張って、なのはが監修したけど・・・・・・このこだわり様は凄い。



何気に六課も、面白いところが沢山あるんだよね。ここは新発見だ。





『うん、どうしたの?』

「ホントの事言っていい? 仮面外さない理由」

『え?』

「・・・・・・なんか、外れないの。全然外れないの。
さすがにこっち来る前に外そうとはしたんだけど、さっぱりで」



いや、ぴったりくっついてるせいかな。サイズが小さいのかな。なんかこう・・・・・・あれ?

おかしい。普通に両手で引っ張っても仮面が外れないんですけど。



『そうなのっ!? それ、どうして早く言わないのかなっ!!』

「なんか、言ったら負けって感じがじて。ほら、働いたら負けと同じだよ。シグナムさんだってそうでしょ?」

『意味分からないよっ! それにシグナムはちゃんと働いてくれてるからっ!!
あと、今噛んだよねっ!? 今『じて』って言ったよねっ!!』

「・・・・・・恭文、こっち向いてっ!!」



なんか叫んでるのでそっちを見ると・・・・・・前方に青い猛牛が居た。その猛牛の名前は、スバル・ナカジマ。

本日のデータ取りの相手であり、実験のためのモルモットとも言える。なお、全部褒め言葉。



「約束してっ! 私が勝ったら、もう今日やこの間みたいなおふざけや危ない事は無しだってっ!!」



言いながらもなんか構えてくるので、僕は右手でナイフを取り出す。取り出して、順手に持つ。



「なんで?」

「そんなの決まってるっ! 私達、真剣にやってるんだよっ!? この間とか今日みたいにやられたら、みんなに迷惑だよっ!!」



順手に持ちながら、僕はその切っ先を数十メートル先に居るスバルに向ける。

いや、そこから腕を少し降ろして・・・・・・僕達の間に向ける。



「どうして普通に出来ないのかなっ! 普通に仲良くして、訓練して、みんなと一緒に頑張ればいいだけじゃないっ!!」

「あぁ、それは無理だわ。てゆうかスバル、それ以上こっち来ない方がいい。死ぬよ?」

「そうやってまたふざけて・・・・・・!!」



その瞬間、僕の右手に電撃が宿る。そして、ナイフが射出された。



「ふざけてないよ?」



それは・・・・・・こちらへ踏み込もうとしたスバルの眼前の路面に命中。



「・・・・・・え?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私が突撃しようとしたら、恭文の手に持ったナイフが凄い勢いで飛んできた。

投擲したとか、そんなレベルじゃない。あれは、撃ち出されたんだ。

どういう原理かは知らないけど、撃ち出されたナイフが私の目の前の路面を砕く。





砕いて、クレーターを作る。いや、射出された勢いで衝撃波が辺りに撒き散らされる。

それが身体に当たって、動きが一瞬止まる。・・・・・・目の前に、何か爆発したように爆煙が生まれる。

炎の煙じゃない。衝撃で砕けた路面の破片が、粉塵みたいになってるんだ。





私の目の前の視界は、それによって埋め尽くされた。だけど、気づいた。

私がその光景に唖然となっている間に、私の右側に回り込んだ影が居るのを。

それは恭文。あの状況でも、普通に私に対して突っ込んできた。





何をしたかは分からない。でも、また普通じゃない事をしているのは分かった。

・・・・・・勝つんだ。それでそんな事しなくても、強くなれるって教えるんだ。

恭文は、すごく強い。クレイモアやあんな危ない質量兵器を使わなくても、充分強い。





こんな事しなくても・・・・・・ううん、こんな事する必要なんてない。

私は右拳を引いて、マッハキャリバーで走る。

リボルバーナックルのカートリッジを2発ロード。ただ、前へと突撃した。





狙うは、黒い恭文。絶対にもうこんな事・・・・・・させちゃいけない。





恭文は普通だもの。普通なのに普通じゃない事・・・・・・しちゃ、いけない。










「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



放たれたナイフの衝撃で、コンクリ製と思われるひび割れた路面が砕ける。

それにより、土砂が舞い散る。まるで何かの爆煙のように。

だから僕は動く。前へと踏み込んで、スバルの右サイドに回り込む。





スバルは目の前の光景に呆然としていた。でも、すぐに対処。

突撃してきた僕に向かって、走り出した。マッハキャリバーで全速力で。

僕は左の太もものホルスターから、ナイフをもう一本取り出す。





逆手に持って、そのままスバルに斬りつける。










「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





スバルはカートリッジを2発ロードした上で、僕に右拳を叩きつけてくる。

怒ってる割に、何気に攻撃が冷静だ。そして、拳とナイフが正面衝突した。

僕とスバルは、そのまま交差。・・・・・・衝突した衝撃に耐えきれず、ナイフは砕けた。



あぁもう、やっぱこうなったか。とりあえず、ここは予測してた。

耐久性に関してのレポート内容は決まったな。うし、ここは後で纏める。

そしてスバルはすぐに踵を返して、僕に飛び込んでくる。



右に大きく数度跳んで、20メートル近く距離を開けつつその拳を避けた。

スバルは拳を避けられたと知るやいなや、急停止して方向転換。

カートリッジを1発ロードして、突撃しながら右拳を向ける。





「リボルバァァァァァァァァッ!」



それは前の模擬戦でスバルが使った技。スバルにとっては数少ない遠距離攻撃・・・・・・バカが。

モーションと予備動作が以前と同じじゃないのさ。だから僕は余裕で回避行動を組み立てられる。



「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥトッ!!」





放たれたのは不可視かつ広範囲の衝撃波。僕は左手をベルトのバックルに当てる。

当てて引っ張り出すのは、バックルに内臓されているワイヤー。なお、人くらいは軽く吊るせる。

ワイヤーの先端には、小型のカラビナが装着されていて、これが鋼糸で言うところの重しになる。



それを左に走りつつ、そっちの方向に投擲。ビルの外壁の手すりにワイヤーの先を巻きつけた。

そのまま飛び上がると、僕の身体は宙に浮いて衝撃波を避けた。そして、そのまま身体が上に移動する。

ベルトのバックルのリールが、ワイヤーを巻き上げてるのよ。それで、身体も一緒に引っ張られてる。



・・・・・・これ、簡易型デバイスになってるのよ。ワイヤー仕込みって言うのは、比較的使い古されてるギミック。

だから、すぐ出来たと言っていた。なお、機構にかなりこだわりを入れたらしい。

魔法仕掛けというよりは機械仕掛けになってるから、魔法がAMFで完全キャンセルされようが使える。



上に昇った僕を、スバルは当然のように追撃。だから、足元に青い道が生まれる。





「ウィングロォォォォォォォォドッ!!」





生まれた青い道は、僕に向かってまっしぐら。なお、漢字にすると驀地。

だからワイヤーを左手で持ったまま、ビルの壁を走る。

スバルからすると右に逃げたように見えるので、当然のように追撃。



拳と共にスバルが僕へと迫る。またまたカートリッジがロードされて、攻撃態勢はバッチリ。

だから僕は・・・・・・ワイヤーを巻き上げつつ、また上に跳んだ。

スレスレで打ち込まれた拳を、上に動く事で回避する。



スバルは、僕がそれまで足を付けていたビルの壁を打ち抜いた。

衝撃で辺りに爆煙が渦巻き、轟音が響き、ビルの壁の破片が撒き散らされる。

そんな中僕は、当然だけどスバルの真上を飛んでいた。



左手で掴んでいたワイヤーを引いて、手すりに巻いていた分を外す。

外してすぐに巻き戻して、再び投擲する体勢を整える。

右手で、右太もものホルスターに入れてあるナイフを抜く。



身体は高く飛び上がるけど、空中で一旦停止する。

それは、落下し始める前の刹那に起こる現象。

身体が重力に従い、下に落ちようとする瞬間にそれを投げる。



ナイフが狙うのは、スバルの首元。スバルは当然のように、僕の投擲に反応する。いや、マッハキャリバーがか。

ナイフの射線上に発生したのは、青いオートバリア。スバルの首・・・・・・いや、体全部を守るようにしている。

オールレンジで発生させているわけじゃない。少なくとも、僕が投擲した角度からは、絶対に身体には当たらないようにしている。



それによって、ナイフは防がれる。その間に、スバルがこちらに振り向く。

ナイフは弾かれあらぬ方向に跳ぶ。さすがに何の魔法も無しだと、アレは破れない。

破れないから、僕は落ちながらも左手を動かした。そして、ワイヤーを投擲。



投擲しながらもウィングロードの上に着地。だから・・・・・・これで詰み。

・・・・・・ワイヤーはスバルの足元に投擲した。今それは、スバルの右足に何重にも絡んでる。

ナイフの投擲は囮だよ。あんなので魔導師倒せるなんて、思っちゃいない。



本命はこれ。アレでオールレンジ防ぐようなバリアを張るとは思ってなかった。

だって、普通にナイフを投擲されただけだよ? スバルが自分で対処してもいいくらいだ。

さっきの『アレ』があるから、マッハキャリバーが気を利かせて、念入りにしただけ。



でも、充分じゃなかった。バリアの範囲には当然死角がある。

その死角・・・・・・バリアの下スレスレを狙って、ワイヤーを投擲したのよ。

ナイフがバリアにぶつかり、弾かれるまでにも僕の身体は落下を続けていた。



僕がナイフを投げたのは、跳躍の最高地点だもの。下に落ちれば、当然死角を狙えるというわけ。





「またこんな物使って・・・・・・! でも、こんなのすぐに」



スバルは、ワイヤーを両手に掴んで引きちぎろうとする。



「三流が」



だから次の瞬間、身体が震える事になる。



「がががががががががががががががっ!?」

≪相棒っ!!≫



ワイヤーを通じて迸るのは、青い雷撃。なお、僕の魔力による電気攻撃。



「無理な理由、教えてあげようか。それはね・・・・・・お前が狭い枠の中に居るからだよ」



相当な高圧電流だから、フィールド越しでも無効化なんて絶対無理。

ワイヤーをたわませて、余った分を首に引っける。スバルは首からも電撃を食らう。



「お前は弱い・・・・・・いいや、強いという枠の中に居るから、こうやってふざけてる人間にすら勝てない」



・・・・・・手応えはあった。自分がどんだけ色んなもんに頼り切っていたかというのも、よーく分かった。

美由希さんとの組み手やすずかさんの好意、無駄にはならなかったよ。



「それが『魔導師だから』? それが『普通だから』? ・・・・・・ザケるな。
そんな言葉で止まってる奴になんざ、負けるわけにはいかないのよ」



そしてスバルは煙を上げながら、身体を横に倒す。だから僕は、ワイヤーを引く。

そのままだと、身体は数メートル下に落ちるもの。そうして、ウィングロードの上に倒れてもらった。



「・・・・・・一応は、成功かな」



スバルは・・・・・・倒れて動かない。とりあえず、これで終了らしい。



≪手応えはありましたか?≫

「もうバッチリ。とりあえず、これらは採用」



なんて言ってると、バックルが小さく爆発した。花火みたいな音を立てて、煙を上げている。

そこを見ると、バックルに内臓されたリールやワイヤーがめちゃくちゃになっていた。



「・・・・・・じゃないね。電圧に耐え切れなかったか」

≪あなた、どんだけ高圧で流したんですか? ほら、スバルさんの髪が面白い事に≫

「とりあえず、念入りに?」





・・・・・・魔力の属性変換には、基本的に三つの種類がある。

一つは僕とリイン使う凍結。シグナムさんが使う炎熱。そして、フェイトとエリオが使う雷撃。

まぁ、僕とリインは前に説明した通り、先天的にこういう技能を持ってるわけじゃない。



あくまでもプログラムを介して、適切なコントロールを行なった上で魔力変換を行なってる。

逆を言えば・・・・・・それがちゃんと出来るなら、二つの変換を同時に保有出来るという事なのよ。

現にクロノさんがそれ。炎熱変換と凍結変換の二つを習得してる。



ただ、どっかのメドローアみたいな事は出来ないのよ。一度に使える変換は、一つだけ。

それでも多数の変換を保有する事は、状況への対応力と攻撃力の上昇に繋がる。

変換された魔力自体が、通常より強い攻撃力を発揮するのが、その理由の一つ。



実は電撃変換も前々から練習だけはしてて、一応使えるレベルにはなってた。

ただ・・・・・・なぁ。こう、チートって呼ばれるのが嫌で封印してたのよ。

もうここまで言えば分かると思うけど、一連のアレコレは全部電撃変換を試すためのもの。



あとは二つあって、一つはこのワイヤーの実験だね。意外といい調子で助かったよ。

最後に壊れなければ。まぁ、データが取れただけでもありがたかったとしよう。

そしてもう一つは・・・・・・攻撃以外は魔法無しでどこまで対処出来るか、試したかったの。



お休みで色々振り返って、僕の基本の一つは『魔導師だから』で言い訳しない自分と改めて感じた。だからというわけ。





「でも、色々実験データは得られたからいい感じだね。うし、大勝利ー♪」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・えっと、なんでみんなお怒りモード?」



なんか、普通にスバルがキャロとエリオに介抱されている。で、何故かみんながお怒りモード?



「恭文君、あの冒頭でぶっ放した攻撃はなにっ!? あれ、明らかに殺る気満々だったよねっ!!」

「そうだよっ! というか、アレ・・・・・・まさか超電磁砲レールガンなんじゃっ!!」

「あ、正解。さすがフェイトだね」





超電磁砲レールガンというのは、電気エネルギーを応用した武装の一つ。

フレミングの左手の法則と言う、電流と磁場と運動エネルギー力場の法則を利用した攻撃。

簡単に言えば、電気エネルギーとそれで構築する力場を用いて、弾丸を超高速で撃ち出す武装なのよ。



電撃の魔力変換を使って僕は手元でその力場を構築。そうして、金属製のナイフを超高速で撃ち出した。

レールガンの弾丸には伝導体・・・・・・ようするに、電気エネルギーが伝わるものなら基本なんでも使える。

ただ、実際のレールガンの弾丸はゴムなどの絶縁体らしい。じゃないと、膨大なエネルギーで弾丸が溶けちゃうから。



とは言え、それじゃあ撃ち出せないので、その弾丸の膜として金属物質を使う。

これが火薬式の銃で言うところの、火薬の役割を果たして発射出来るらしい。

で、僕が使ったのはガチで研究されてるのよりは威力が低め。さすがに人に当たったらヤバいけど。



でもどうやら、それがフェイト達は不満らしい。うーん、どうしてだろう。



さすがに危ないから外したのに。警告したのに。てゆうか、予め電撃変換使うって教えてたのに。





「さすがじゃないよっ! ヤスフミ、何考えてるのっ!? スバルに当ててたら死ぬ所だったよっ!!」

「いや、だから警告したし。それで外したし」

「アレだけじゃ分からないよっ!! ・・・・・・というか、試したいってこれだったの?」

「うん。あとは魔法無しでどこまでやれるかの実験。
電撃以外は魔法全く無しで魔導師を倒せるかどうか・・・・・・だね。ここは説明した通り」



起き上がって、頭をぶんぶん振るスバルに聞こえるように、大事なところをしっかり強調した。

横目で顔を見たら、呆然としてる。まさか僕がそんな事してるとは思ってなかったらしい。



「それと、ワイヤーやナイフのテストだっけ」

「そうそう」

「確か・・・・・・お休みのあれこれで、振り返ったおかげでこれだったよね」

「うん。で、色々分かった。僕が現状でどんだけ魔法に頼っているかとか、色々ね」





でも、反省だなぁ。攻撃にも魔法使わない方向で出来なきゃ、意味ないもの。

電撃変換のテスト込みだったから、圧勝出来た。

でも、ガチに魔法無しだったら・・・・・・うーん、普通に負けてたかも知れない。



だから、両腕を組んで軽く唸ってしまう。反省点が多くて、どれから消化したもんかと悩むのよ。





「そう思う原因は察するに、オートバリアとかかな」



なのはも不満そうだけど、もう何も言わない事にしたらしい。

というか、自分にも思い当たる節があるのか、ちょっと苦笑い。



「そうだね。やっぱオートバリア・・・・・・ううん、防御関係を何とかすれば、スバルくらいだったら楽勝というのが分かった」

「そこはスバルが陸戦魔導師というのもあるだろうな。
なのはやテスタロッサのように、空戦適性が有り遠距離攻撃が可能な人間相手では、そうはいかない」

「確かに。機動性と移動能力、そしてレンジまで負けている。
僕が魔法無しで空が飛べるとかじゃないと、勝ち目ないですよね」





魔導師の防御というのは、意外と硬い。シールド、バリア、フィールドの三種の防御魔法。

そしてそこに物理防御も加わると、最大四種類の盾で魔導師は守られてる。

これらを貫き、相手にダメージを与えられて初めて、魔導師は倒せる。



そこを念頭に置いた上で、攻撃魔法ってのは構築されているのよ。ここは、昔からだね。

魔導師って、エースやストライカー級じゃなくても能力高いのよ?

魔法という要素のおかげで、常人では得られない攻撃力と防御力を保有しているんだから。



そういう意味では、さっきも言ったけど僕の電撃もアウトなんだよなぁ。うーん、そうすると攻撃力か。

ぶっちゃけ、移動能力は舞空術なり習得しない限りはどうしようもないので、ここは置いておく。

防御力も、サイコバリアとか張れるようにならない限りはだめっぽいので、同じく。



防御をすり抜けて、相手を仕留めるだけの力が必要なんだ。ここは課題だな。

・・・・・・ここを剣術の技能だけで補えるようになったら、そうとう強い形になると思う。

なら、あの手応えを確実なものにするべきだ。うし、これで目標は見えたね。





≪いや、意外と必死だったじゃないですか。普段と戦い方を全く変えちゃうから≫

「言うな」

「なら恭文君、そろそろその仮面も外してもらえるかな。もういいよね? ほら、訓練も続きがあるし」

「え、無理」



そう言い切ると、フェイトもなのはも師匠もシグナムさんも固まった。固まって、こう叫ぶ。



『なぜっ!?』

「いやいや、さっきフェイトには言ったじゃないのさっ! 仮面が外れないのよっ!!」

「あぁ、そう言えばそうだったっ! と、とにかく・・・・・・えいっ!!」



言いながらフェイトは両手で僕の仮面の端を掴んで、思いっ切り引っ張る。



「痛い痛いっ! フェイト、真面目に痛いからやめてー!!」

「あぁ、ごめんっ!! ・・・・・・どうしよう。これ、完全に食い込んでるみたい」

「一体どこの呪いのアイテムかなっ!? というか、それはそれで大変だよねっ!!」



うん、横馬に言われるまでもなく分かってる。だってこれだと僕、普通にご飯も食べられないもの。

確か、装着時に細かくサイズ調整するとかなんとか言ってたけど・・・・・・もしかしなくてもそのせいっ!?



「うし、だったらアタシとアイゼンで叩き割ってやる。それならいいだろ」

「待て。ここは私とレヴァンティンで真っ二つに」

「そこの二人はデバイス持ち出すのやめてっ!? それやられると、僕の顔まですごい事になるからっ! うぅ、どうしよー!!」



さすがに仮面は戦闘以外は無しの予定だったんだよっ! それなのにこれは何っ!? 僕が何したって言うのさっ!!



「と、とにかくもう一回引っ張ってみるよ。ヤスフミ、ちょっと痛いかも知れないけど我慢してね?」

「う、うん。フェイト・・・・・・優しく、してね?」

「分かってる。ヤスフミが出来るだけ痛くないようにするから」

「フェイトちゃん、そのやり取りはやめてっ!? 普通にいかがわしいからっ! 乗っちゃだめだからっ!!」










そして、僕の仮面は結局取れなかった。これ、どうなってんの? 真面目に呪いのアイテムだし。





とりあえずレヴァンティンやグラーフアイゼンに頼るのは最終手段として、僕は何とかして仮面を取る事にした。





したけど・・・・・・普通にある人から呼び出されて、それは後回しになった。それは、ギンガさん。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・・・・・・アイツ、バカやろ」

「そうなんだよね。うぅ、どうしよう。あのまま一生仮面が取れなかったら」

「テスタロッサ、恐らくそっちではないと思うぞ。・・・・・・だが、蒼凪はおかしいぞ。
魔法無しで魔導師を倒す方法を考えたり、あんな扱いのめんどくさそうな暗器のテストを受けたり」

「そうか? ・・・・・・アレだよ、アイツももう1段階強くなりたいとか考えたんだろ。
で、今まで普通に頼っていたものが無かった場合ってのを、色々考えてんだ」





部隊長室で、はやてとシグナムとフェイトとお茶なんぞ飲みながら話だ。

あー、やっぱバカ弟子のお茶の方が美味しいな。まずくはないけど、比べちまうや。

それはさておき、話の中身はうちのバカ弟子関連。ま、前途は多難って感じで。



ただ、やる気が出てきてくれたのはアタシとしては非常に嬉しい。





「特にほら、JS事件でAMFなんて出てきてるから、アイツとしては余計に考えるんだろ」

「あぁ、そうやな。あの子、『魔導師だから』で言い訳せん子やもん」





それは、バカ弟子の強さの一つだと思う。アイツは、狭い枠の中に自分を置くのを嫌う。

魔導師だから、局の関係者だからで止まったりなんてしない。それを止まる理由にしない。

だからどこまでだって強くなれるし、前に進める。それは・・・・・・うん、じいちゃんそっくりだ。



そういうのぶち壊せるパワーがあるのは、本当にそっくりだ。そこはアタシも常々見習いたいとこだ。



まぁ、教官なんて仕事してるとさ。そういうのを考えたりするんだよ。どう教えて育てるべきかーってさ。





「普通に今までより対策整えておく必要とか、考えたかも知れんな。
・・・・・・あれ? いやいや、アイツが部隊の中で自主的にそれするってなんやおかしくないか?」



はやても気づいたらしい。てか、アタシも気づいた。ようするに、六課の中ではそこが出来てないんだよ。

普通にそれがオーケーなら、ただ訓練参加するだけで大丈夫だろ? でも、そうしなかったんだから。



「私達もそこを考えるべきなのかな。AMFによる魔力リンクの完全キャンセルは、可能だもの。
だけど・・・・・・うぅ、どうしよう。私達じゃ、ヤスフミや美由希さん達みたいな事は今すぐは無理だし」

「テスタロッサ、それは当然だ。こればかりは日々の鍛錬が重要になる。
そして、魔法関連の訓練だけではそこは補えない」

「それはそれで、別口に鍛錬する必要があるちゅうわけやな。うーん、どないしよ。
やっぱ考えておかんといけんか。ご時世がご時世やし、模倣的にやってくる奴多そうやしなぁ」





つか、アタシとしてはスバルをもうちょっと何とかしたい。いくらなんでも目くじら立て過ぎだろ。

アタシが冷静だったのは、みんながその辺りどういう風に受け取るかがちょっと気になったからだ。

この間の事もあるから、一応な。エリオ辺りが意外と冷静だったのに・・・・・・うーん、どうしたもんか。



お説教じゃあ意味ないんだよな。こういうのは、知識量と経験量の問題だしよ。

エリオの場合は知識量で冷静さを保ってる感じだ。なんかすっげー勉強してるし。

アタシやシグナムにも、色々昔の戦闘理論とか戦術とか、聞きまくってくる。



なんか事件の中で色々反省点を見つけて、それを変えていきたいらしい。・・・・・・いい事だ。

ただそう考えると六課フォワード陣は、現場での対人戦の経験が圧倒的に少ないんだよなぁ。

基本ガジェット相手で、ラスト近くでナンバーズとやり合ったり・・・・・・だけだよなぁ。



それでスバルとティアナは前所属がレスキュー。キャロは辺境の自然保護隊。

エリオに至っては、六課に初所属だ。だから、アタシやなのはやフェイト達に比べると、少ないんだよ。

現場で犯罪者とガチで戦ったりする経験が。・・・・・・やっぱ、訓練じゃ足りない部分あるよなぁ。



うん、足りないな。JS事件で戦ったスカリエッティ一味は、確かに強敵だった。

それでアタシやなのはも、ぶっ叩いて育ててはいる。ただ、それは基本に忠実な型と言える。

アタシやなのはが教える技術や力や戦術は、局の理念や道理が絶対的な前提になってる。



犯罪者の未来をも守り、更生を促すために殺しはしない。そういう考えが前提だ。

そして、もっと言えばチームワークや、連帯的なものもここでは重要視されている。

だから、逆に弱いんだよ。変則的というか、色々な口八丁手八丁を持ってるタイプには。



そして、そのタイプが少数でもそこそこ強くて、こっちのやり方や心理状態を突いてくるとしたらどうだ?

別にバカ弟子の事を言ってるんじゃない。アタシがはやての手伝いとかで戦った連中を見た上で言ってる。

正直さ、そういう意味ではスカリエッティ一味やナンバーズはまだ楽な方なんだよ。あれ、正面衝突だし。



裏の世界には連中よりもっと手強くてド汚くて、エグいヤツだって多いんだ。

場合によっては、魔法無しで強いのだっている。アタシらの周りだと、裏の世界じゃないけど高町家の面々がそれだ。

なら、ここからの教導のテーマはこれか? どうしたもんかとなのは共々かなり相談はしてたけど、これでいいだろ。



何時起こるか分からない事件に対応する必要は、今の段階では無くなったんだ。

こっからはアイツらが六課を出た後、その先に役に立つものを教えていきたい。これだって、その一つだ。

世の中は綺麗な奴ばかりじゃないって教える必要、あるな。でも・・・・・・うーん、手数が足りないな。



こういうのになると、なのはは若干サッパリなところがあるんだよなぁ。アイツも良識派だから。

だけど、だからってアタシ一人で全員に1から10まで教える? 無理だって。

アタシと同じくそういうのが分かってるシグナムやシャマル、ザフィーラ・・・・・・あぁ、なんかダメだ。



特にシグナムがダメだ。今アタシの目の前でお茶を飲んでる女は、人に教えるという事が苦手なタイプだし。

出来ても一人だけだろ。エリオと組み手とかしてるらしいし、マンツーマンで実戦形式なら、まだいける。

なら、比較的今居るメンバーの中でそういうのが出来るバカ弟子・・・・・・いや、これもだめだ。



バカ弟子も恐らくシグナムと同じだ。まだ理論的ではあるだろうが、それでも複数の生徒相手の教導向きじゃない。



こう考えると・・・・・・あれ、もしかしてアタシとなのはだけじゃ、手の届かない所がかなりある?





「ヴィータ、どうしたの? かなり考え込んで」

「いや、なんでもねぇ」



心配そうにアタシの顔を覗き込むフェイトには、軽くそう答える。

とりあえず、ここは後でなのはと相談だな。さすがに気になってきた。



「・・・・・・そういや、ちょっと気になってたんだけどよ」

「なんや?」

「いや、アイツ前より相当タフになってねぇか?
アタシもなのはも、試験がもうすぐだから相当厳しくやってるんだけど、平然としてやがるんだよ」





それだけじゃなくて、全体的な戦闘スキルが前よりずっと上がってる。

具体的に言うと、ここ1〜2年くらいの間に相当だ。

元々やる奴ではあったけど、より洗練されてきてる。



同じ行動でも、比べてみると違いが分かる。視野も相当なレベルで広がってる。

まぁだからこそ、はやて達もバカ弟子に昇格試験受けさせたくなったんだけどな。

特に今日のだよ。攻撃以外は魔法なしで、スバルを完全に押さえ込んだ。



やっぱ成長速度がおかしい。何かきっかけが無かったら、あんな風にはならないぞ。





「あぁ、そういう事か。実はな、元教導隊の魔導師の人達と友達になったんよ」

「はぁっ!?」

「元教導隊の魔導師っ!? 待ってはやて、私は何も知らないんだけどっ!!」

「あ、そうなんか? ・・・・・・いやいや、知っとるやないか。
フェイトちゃん、アンタ恭文がジャンプ式の訓練してたの、聞いとるやろ?」



ジャンプ式・・・・・・あぁ、なんか砲撃の雨あられがどーのこーのってやつか。アタシもちょこっと聞いてる。



「私達もここ1〜2年は訓練の相手など・・・・・・いや、テスタロッサは違うのか」

「そうですね。スケジュールを合わせて、かなり頻繁に訓練してましたから」



距離離れてるつっても、何気に顔合わせる事多いんだよなぁ。

出張とかしてなかったら、週1とかそれくらいか? ・・・・・・仲、良いよなぁ。



「とにかくだ。その時に知りあって、お世話になったそうだ。
蒼凪の今までを聞いて、いつかのヴィータやトウゴウ先生のように、本当によくしてくれたらしい」

「つまり、その人たちに厳しく鍛えられてたと」

「だからヤスフミの戦闘スキルが、本当に高くなってるんだね。
それで、私達も知らなかった電撃の魔力変換とかも使えるようになった」





アタシとフェイトの言葉に、はやてとシグナムが頷く。なんでも、相当無茶苦茶強い人達らしい。

それで剣術や魔法戦も含めて、あれこれ教えてもらってたとか。

なるほど、それならまぁ納得だ。アイツ一人に、なのはが二人がかりで教えてるようなもんだし。



しかし、アタシはダメだな。アイツの師匠なのに、そういう事ちゃんと出来てやれねぇ。

自分の事にかかりっきりだ。それで死にかけてりゃあ、世話ねぇよ。

・・・・・・アイツは、その場に居なかった戦いに対してあーだこーだ言うやつじゃねぇ。



だから、六課に来てからも、アタシのゆりかごでの無茶については何にも言わねぇ。至って普通にしてる。

あ、なのはは別だな。アイツがここに来る事になった直接の原因だし、また無茶されてもアレだからだけどよ。

それでも、辛い思いとかさせたって考えると・・・・・・口に出さないだけで、そういうのを感じないってわけじゃないし。





「・・・・・・師匠失格だな、アタシは。やっぱり自分の事だけで手一杯だ」

「そんな事はないだろう。お前の言葉と導きがあったからこそ、アイツは今ここに居る。
そして、今も変わらずに戦えると言ってもいい。お前は蒼凪の師だ。自信を持て」

「せやで、ヴィータ。アンタはヘイハチさんと肩を並べとる、恭文の先生やろ?
恭文かてそう思っとるから、師匠って呼び続けてるんやからな」

「・・・・・・だな。悪い、ちと弱気になってた」

「構わんさ。実際、我々もこの1〜2年のアイツの成長速度には驚いている」





ホント、ビックリだよなぁ。バカやってるように見えて、ちゃんと頑張ってんだよなぁ。

頑張った上で、バカやってんだよなぁ。そして、やっぱりバカなんだよなぁ。

・・・・・・やばい。もうちょっとアタシも頑張らないと、すぐに置いてかれそうな気がしてきた。



とりあえずアレだ。あのバカにはまだ負けたくない。負けたら、アタシは何かこう・・・・・・自信無くす。





「ただ、アイツにはちゃんとした理由がある。当然といえば当然か」





・・・・・・あったな。そこでなんか唸って一人の世界に入った奴を守りたいって思ってる。



フェイトの今と笑顔を、フェイトの幸せを誰よりも望んで、叶って欲しいと思ってる。



なんつうか、やっぱ騎士だよアイツ。そういうガラじゃねぇかも知れないけど、間違いなくな。





「とにかくヴィータもシグナムも、恭文の事お願いな。
試験もあとちょっとで1ヶ月切ってまうし」

「心得ました」

「大丈夫だよ。きっと上手くいく。・・・・・・アタシの横の奴以外は」



それで、アタシ達は全員フェイトに視線を向ける。うん、そうなるよな。俯いてブツブツ言いまくってるし。



「教導隊・・・・・・あぁ、だからなんだ。どうしよ、ヤスフミに紹介とかしてもらって挨拶した方がいいのかな。
でも、あんまりヤスフミの人間関係に口出しも違うよね。だけど家族としては・・・・・・どうしよ」

「とりあえずアレや、フェイトちゃんは放置でえぇから」

「うん、分かってる」

「元よりそのつもりです」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、僕は現在海上隔離施設に居る。原因は、ギンガさん。

チンクさん達の授業の一環で、調理実習をする事になったとか。

急ではあるけど、それの手伝いを頼まれたのだ。僕、料理関係得意だから。





だからさ、許可をもらってすっ飛んできたのよ。なのに、みんなの視線が微妙だ。










「・・・・・・恭文、姉は一つ質問がある。その仮面はなんだ?」

「そこは私もすごい気になるな。恭文、あの・・・・・・それはなに?」



チンクさんとディエチが、それぞれにピンク色のエプロンを装着した上でそう言ってくる。

なお、双子コンビも遠目で疑問顔。特にオットーの視線が『・・・・・・変態?』と言ってるような気がする。



「これはDARKER THAN BLACKというアニメで黒というキャラクターが、戦闘時装着している仮面です」



だから、隔離施設内のだだっ広い調理場で、みんなが怪訝そうな顔で僕を見るんだ。



「そうか。・・・・・・では、なぜそれを装着した上で、お前は花柄エプロンをかけているんだっ!?
どう考えてもおかしいだろっ! 普通に姉は怖いんだがっ!!」

「そうだよっ! 恭文、今自分がどれだけ不釣合いな格好してるか分かるっ!?
私、また会いに来てくれて嬉しくはあるけど、さすがに怖いよっ! というか、おかしいよっ!!」

「チンク姉とディエチだけじゃなくて、私らも同じくっスよっ! 普通に不審人物じゃないっスかっ!!」

「恭文、あの・・・・・・なんて言うか、マジでどうしたの、それ」



チンクさんとディエチと双子コンビだけじゃなくて、ウェンディとセインまで僕に何かを疑ってる眼差しを向けている。

なお、すっごい警戒して距離を取ってる赤いショートカットの子が居たりするけど、気にしない。



「そんなの、空いているエプロンがこれしかなかったからに決まってるじゃない。
あと、仮面は外れないの。どんなにやっても、外れなかったの」

「そ、そうか。だが、それでよくここに入れたな。止められなかったのか?」

「顔パス余裕でした」

「顔パス出来るわけがあるかっ! むしろそれでパス出来たら、奇跡だぞっ!?
・・・・・・ギンガ、今恭文を呼んだのは、色々と不味かったのでは」



チンクさんがそう言いながら見るのは、ギンガさん。青いエプロン姿で、心配そうに僕を見ている。



「そうだね。まず、この仮面を外すところから始めないと。
それなら・・・・・・なぎ君、私が仮面を叩き割るから」

「その師匠やシグナムさんと同じ行動はやめてくんないっ!? 普通に僕の顔まで叩き割れるからっ!!」



とりあえず、仮面はどうしよう。普通にどうしよう。



「恭文さん、ギンガ」



・・・・・・なんて考えて頭を抱えていると、いつの間にか双子コンビが後ろに居た。



「それなら、これはどうでしょうか」



ディードがそう言いながら両手で持ってきたのは・・・・・・サラダ油。

あれだよ、調理場だからそういうの置いてあるのよ。



「これを隙間に流し込んで、滑らせて取る。それなら行けるとボク達は思うんだけど」

「あ、なるほど。・・・・・・なぎ君」

「まぁ、サラダ油がちょっともったいないけど・・・・・・うし、ディードもオットーもお願い。さすがにこれは辛いの」

「分かりました。では、全力でやらせていただきます」



そして数分後、三人で顔や手が油塗れになりながらも仮面は・・・・・・ようやく、外れた。



「取れたー! 油塗れだけど取れたー!!」

「良かったですね」

「とりあえず、これで不審人物じゃなくなったね」

「うんうん、二人ともありがとー!!」



両手で二人の手を・・・・・・だめだ。サラダ油だらけでベトベトしてる。



「大丈夫だよ。だって、ボク達も同じくだし」



僕の様子からそこを察したのか、言いながらオットーが両手を見せる。ディードも同じく。

楽しげに微笑んでいるのは、気のせいじゃない。・・・・・・こんな顔、出来たんだ。



「なら・・・・・・ありがと」



両手で、二人の手を取る。二人は握り返してくれた。それがなんだか嬉しい。

・・・・・・あぁ、そっか。別にこの子達の事、嫌いではないんだよなぁ。うん、そこも分かった。



「いえ。ですが・・・・・・この仮面は危険ですね」



ディードは僕の手を握りながら、キッチンの上を困った顔で見る。そこには、油塗れの例の仮面。



≪多分、自動調整機能がおかしいんだと思いますけど、普通にダメですよ≫

「ここも報告しないとダメだね。てゆうか、ガチに呪いの仮面だったし」

「・・・・・・なぎ君、ディードもオットーもタオル持ってきたよ」



ギンガさんが、僕達に三枚のタオルを差し出してくれた。

それは、油も綺麗に取れる万能タオル・・・・・・らしい。



「あ、ギンガさんありがと」

「ありがとうございます」



とりあえず、それで顔や首、手を拭く。・・・・・・おぉ、すっごい綺麗に拭ける。

もうスッキリだし。ベタベタ顔が、一気に綺麗な顔だし。このタオル凄いなぁ。



「あぁ、良かった。顔が拭けるとか触れるとかって、普通に幸せだったんだ」

「・・・・・・さっきまでの現状を考えると、あんまり笑えないよね。あ、それでなぎ君」



ギンガさんが、調理室の隅に居た一人の女の子を呼び寄せる。

その子は、ちょっとそっぽ向きながらこっちに来る。そして、僕の前に立った。



「・・・・・・ノーヴェだ」

「ノーヴェ? ・・・・・・あぁ、チンクさんの妹さんか」

≪初めまして、古き鉄・アルトアイゼンです。で、こっちは不審人物です≫



この間ここに来た時に会えなかった子だね。うん、思い出したよ。

赤い髪をショートカットにして、背丈やスタイルはスバルと同じくらいか。というか、似てるな。



「違うわボケっ!! ・・・・・・えっと、僕は蒼凪恭文」

「チンク姉から聞いてる。まぁ、その・・・・・・よろしく」

「うん、よろしくね」



なんて挨拶している間に、僕もディードもオットーも油を完全除去。

服には支障が無いように色々処理はしていたので、ここからようやく調理実習スタートだよ。



「ギンガさん、タオルありがと。というかごめんね。世話かけちゃって」

「ううん、大丈夫。じゃあ、そろそろ始めたいんだけど、いいかな」

「うん。それで今日は何作るの?」

「ショートケーキだよ」



・・・・・・待て待てっ! いきなりショートケーキってどういう事っ!? 難易度高くないかなっ!!



「ね、みんなって料理経験とかって」

「当然だけどないね。私らみんな、ドクターの所に居る時はレーションとか冷凍食とかが主だったんだ」



そんな風に、軽い口調でかなりヘビーな補足を加えてきたセインは笑う。

どこか照れくさそうだけど、僕は全然笑えない。普通に昔の自分を思い出してしまった。



「いや、それなら普通粉吹き芋とかチャーハンとか、そういうとこから始めない?」

「みんなのリクエストを取ったら、こうなったの。それも満場一致で」



あー、そういやみんな受刑者だったなぁ。甘いもの、飢えてるのかな?



「うー、飢えてるっス〜。ぎぶみぃしょぉとけぇきっス〜」



どうやら、さっき聞いたような貧相な食生活でも、普通にそこの辺りはオーケーだったらしい。

今のウェンディや、他のメンバー・・・・・・チンクさんすらも、強く頷いている。



「あー、とりあえずウェンディはアレだ。受刑者としての自覚がない」

「そんな事無いっスよっ! 私はいつだって真面目っスっ!!」

「あー、そうだね。うんうん、ウェンディは真面目で偉いね〜」

「・・・・・・なんか手抜きっスね」

「うん、だって手抜いてるんだもん♪」



なんか睨んでるのは置いておく。とりあえず確認っと。



「えっと、材料は揃ってるし、器具もOKなんだよね?」

「うん。私となぎ君とで教えながらだったら、すぐ作れると思うの」

「だね。よし、だったらすぐに始めようか」

「・・・・・・ギンガ」



もう何を言ってもアレなので気合を入れようとすると、ルーテシアが話しかけてきた。そしてその隣には、アギト。



≪ルーテシアさん、それにアギトさんも、今まで空気でしたね≫

「ギンガが、知らない人には近づかないようにって教えてくれたから」

「・・・・・・そっかぁ。やっぱそうなるかぁ」

「そうなるな。てゆうか、お前・・・・・・その呪いの仮面は誰が作ったんだよ」

「アギトとルーテシアも知ってる人だよ。で、どうしたの?」



なんか、ルーテシアの顔が真剣だ。うん、表情に変化がないように見えるけど、真剣な感じがする。



「・・・・・・まだ来ない」

「あぁ、そういえばそうね。もうすぐのはずなんだけど」

「ギンガさん、来ないって誰? 他に増援呼んでるって事かな」

「ううん、そうじゃなくて・・・・・・あー、でもそうなるのかな。実は」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あー、すっかり遅くなっちゃったー!!」





ルーテシアやみんな、待ってるわよね? もう、先生がもたもた検査してるからー!!

・・・・・・はい、突然だけど新キャラです。今日の調理実習、私も参加させてもらう事にした。

まぁ、アレよ。親と子のコミュニケーションも兼ねてね。あと、あの子達とも。



確かに色々と複雑よ? 過去のアレコレを考えれば、腹が立たないと言えば嘘になる。

あの子達は、私の相棒や上司の敵でもあるわけだし。私、恨み辛みを抱かないほど、性格良くないの。

でも、少なくともルーテシアは、そういうのも含めてもあの子達を嫌ってはいない。



むしろ、色々教えてもらって、お世話にもなったと言っている。

だったら、母親である私が器量の狭いところを見せちゃ、あの子の情操教育の妨げになるだけ。

時間をかけて、あの子達の事を知っていく事にしたの。



胸の中に渦巻いているわだかまりも、その中で消していく。

あ、これは私の恩師でもあり友達でもあるヒロちゃんの助言ね?

いやぁ、久々に話したら泣かれたし。ヒロちゃんの荒っぽいけど涙もろいところは相変わらずだったなぁ。



で、色々相談して、今みたいな結論に達した。

明日は明日の風が吹くって事で、いいでしょ。うん。

とにかくもう施設内には到着はしてるし、急いで向かわないと。



だから私は、急いで車椅子を走らせる。もう、どこかのイタズラ小僧かと言わんばかりに。

まさか、子どもの頃にイタズラで車椅子レースをやっていたのが、ここで役に立つとは思わなかったわ。

あ、みんなはもちろん真似しちゃだめよ? うん、絶対に。車椅子はオモチャじゃないんだもの。



自分はどうかと言われてしまえばそれまでだけど、こっちには大義名分がある。問題はないわ。

天国のクイントにゼスト隊長、見ていてっ! 私・・・・・・元気ですっ!!

そうして見えてくるのは、隔離施設の受付。私はそこに向かって全速力で・・・・・・・飛んだ。



多分、段差かなにかがあったのだろう。私の身体は宙を舞い、見事に飛んだ。

あぁ、やっぱり車椅子で敷地内で20キロとか出すものじゃないのね。ごめん、ルーテシア。

お母さん・・・・・・飛ぶわ。羽ばたいた鳥の歌を歌うわ。きっと将来は武道館よ。



私は落下の痛みを覚悟して目を閉じる。・・・・・・優しくは、してくれないわよね。





≪Sonic Move≫

「え?」



痛みは無かった。車椅子が落ちた音は聴こえたけど、私は・・・・・・誰かに抱きとめられた。



≪間一髪でしたね≫

「うん。・・・・・・あの、大丈夫ですか?」





耳元から、くすぐるような声がする。柔らか味のある優しい声。でも、私の思考は別のところにあった。

だって、この人・・・・・・私の胸、触ってるんだもん。それも、思いっきり鷲掴み。

あぁ、どうしようっ! なんでこんなベタな事になっているのっ!?



あ、でもこの感じは結構久々だし、この人の手は温かいから好み・・・・・・いやいやいやっ!!

で、でも・・・・・・これも運命の出会いよ。旦那はとうの昔にいなくなったもの。

私は正真正銘のシングルマザーだし、運命の出会いなんてしても問題はないはず。



あぁ、自由恋愛バンザイよっ! さぁ、目を開けて、勇気を出して・・・・・・!!





「あの、ありがとうございます。あははは、こう・・・・・・運命ってあるんですね」

「はい?」



私が目を開けると、そこに居たのは栗色の髪と黒い瞳をした・・・・・・え?



「女・・・・・・の子?」

「・・・・・・男の子です」





あぁ、それなら安心だわ。さすがに百合の気は無いし。

・・・・・・ちっちゃっ! え、本当に男の子っ!?

だって、よく考えたら声とか顔立ちとか女の子で通るし。



身長だって、今は蹲って抱きとめられているけど私より下よっ!?



・・・・・・あれ、この子・・・・・・なんか覚えがある。あ、もしかして。





「・・・・・・なんか元気そうで安心しました。
というか、思考が顔に出てますよ? というか、口からも出てました」

「あ、ごめんなさいね。ところで」

「はい?」

「ひょっとしてあなた、蒼凪恭文くん?」

「え、えぇ」



やっぱり。ルーテシアや、ヒロちゃんから聞いてた特徴と同じだったもの。



「あ、私はメガーヌ・アルピーノ。よろしくね。・・・・・・あの、ヒロちゃんから聞いてないかな」

「えっと、メガーヌさんですよね。ヒロさんと友達だって言うのは本人から」

「そうだよ」





ヒロちゃんの一回り下の友達で、魔導師。なかなかに見所のある面白い性悪な子。

なお、全部褒め言葉・・・・・・の、はず。私にはよく分からないけど。

あとはルーテシアとアギトちゃんからも聞いていたの。この子、なのよね。



ゼスト隊長の最期を見てくれた子。そして、その仇を取ってくれた子。

そういう訳だから私とも色々繋がりはあって・・・・・・どんな子と思って期待してた。

だけど、それよりも先にお姉さんは、君に言いたい事があるわ。



別にこのままでも・・・・・・いいけど。でも、ここはやっぱりしっかりしないと。





「ね」

「はい?」

「君・・・・・・意外と大胆なんだね。でもだめよ?
いきなり初対面の女の子の胸を触るなんて・・・・・・めっ!!」










そう言うと、その子は手元を確認した。私の胸を鷲掴みにしている自分の手に、そこでようやく気付く。.

すぐに顔を真っ赤にして、私の前でひたすらに土下座を繰り返して謝り倒した。

あぁ、気付いてなかったのね。・・・・・・私、そこそこある方だと思うんだけどなぁ。





ひょっとして、慌ててたのかな? 慌てていて、私を助けるのに必死で・・・・・・だとしたら、可愛い♪




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ほら、そんなに落ち込まなくても大丈夫よ?」

「いや、でも」





僕は、ルーテシアの母親であるこの人、メガ―ヌ・アルビーノさんを迎えに向かった。

ギンガさんはチンクさん達についててなくちゃいけないし、僕しか居なかったのよ。

で、そうしたらいい感じで鳥人間になりかけているところに遭遇した。



その昔、フェイトから教わっていたソニックムーブを使って、メガーヌさんをキャッチ。

したんだけど・・・・・・いや、まさかあんなベタな事するとは。

だって、慌てて気付かなかったんだもん。普通に、いきなし目の前に鳥人間だよ? ビビるって。



ついさ、シャマルさんと初めて会った時の事を思い出してしまったよ。

・・・・・・気付いた途端に感触が襲ってきたのですが、張りがありつつも柔らかったです。

Eカップだという変な情報までいただきました。つか、アルトがさっきから黙っているのが非常に辛い。





≪大丈夫です。全ての事には話すべき時というものがあります。
時期というものがあります。それが来るまでは・・・・・・内緒にしておきますから≫

「お願いだから一生内緒にしててくれないかなっ!? てーか、時期なんてないからっ!!」

「そうね、それはお願いしたいかな? 私だって女だもの。
殿方に身体を預けた事を広めて欲しくはないよ。そういうのは、二人だけの秘め事なんだし」

「変な言い方しないでくださいよっ! そんないかがわしい事はしてないでしょうがっ!!」



いや、胸を触るのは充分にいかがわしいんだけど。でも、あれは・・・・・・あぁ、ごめんなさい。僕が悪かったです。



≪そういう事なら仕方ありませんね。まぁ、結婚式の話のタネにでも取っておきましょう≫

「うん、お願いね。スピーチは期待してるから。あ、それまでヒロちゃんにも内緒にしてるね」



いったい何のお願いっ!? そして誰の結婚式っ! つーか、なんでそんなに意気投合してるっ!!



「こう、アルトアイゼンちゃんとは、気が合うの。ね〜♪」

≪ね〜♪≫

「そうか、そりゃなっと・・・・・・出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
お前らおかしいよっ! つーか、なんで一瞬で2対1の図式が出来上がってるのっ!?」



まぁ、そこはいいさ。よくはないけどいいさ。ただ、気になる事がある。



「・・・・・・あの、お母さん。お願いですから、上目で僕を見るのはやめてください」



仕方ないんですけどね。でも、瞳が妙に艶っぽく感じるんです。



「お母さんなんて呼ばないで? メガ―ヌって・・・・・・呼んで欲しいな」

「だから、上目遣いはやめてください。いや、仕方ないですけど」





メガ―ヌさんがまた暴走などしないように、僕がしっかりと後ろから車椅子を押している。

なので、当然のようにメガ―ヌさんより僕のほうが視点は上なので、そうなるのだ。

ちなみに、車椅子の方はなんともなかった。傷がいくつかついただけである。



しかし、この人は本当にあの物静かなお子様の親ですか? 行動と発言がぶっ飛びすぎでしょ。





「あ、ひょっとしてルーテシアとそういう関係なの? もう、それならそうと言ってくれればいいのに」

「はぁっ!?」

「大丈夫よ。私、そういうのには理解がある方だから。これでも意外と経験豊富なんだ。
前の旦那がちょっとアブノーマルで、色々と大変だったのよ。なんて言うかさ、毎晩毎晩」

「どうしてそうなるんですかっ! というかその話は知りたくないので、黙ってくれませんかメガ―ヌさんっ!?」

「あ、別にさん付けにしなくていいよ? むしろ、呼び捨てにして欲しいかな」



だめだ。本能が告げている。この人には勝てない。絶対に、勝てない。

多分シャマルさんとかと同じタイプだ。下手な発言をすれば、僕の尊厳とか立場とか命が危ない。



「・・・・・・そう。そうなんだね」

「へ?」

「こんなおばさんと話すのが嫌なのね。いいよ、それなら仕方ないわ」



言いながら、車椅子の上で俯き涙ぐむ。というか、やたらと声が大きくなる。



みんなに・・・・・・というかヒロちゃんに、さっき私がされた辱めを伝えるから。
あなたが出会い頭に私の・・・・・・私の乳房を淫らに・・・・・・!!


「それはやめてー! お願いしますから、ヒロさんにだけは言わないでっ!? そして淫らじゃないからっ!!」



正真正銘殺されちゃうからっ! あの人敵に回すなら、フェイトとガチにケンカするほうが楽なんだよっ!!



「・・・・・・呼び捨ては色々と危険な気がするので、さん付けで我慢していただけるとありがたいです。
お願いします。それで手を打ってください。それ以上は無理なんです」

「仕方ないなぁ。じゃあ、二人っきりの時は呼び捨てにしてね?」

「どこの恋人ですかそれはっ!?」



なにやら、秘密の関係というのも楽しそうとかどーとか言ってるけど、気にしない事にする。

とにもかくにも、車椅子を押しながら調理場に戻ってきた。・・・・・・長い旅路だった。



「・・・・・・あ、なぎ君おかえり」

「・・・・・・お母さん」

「あー、ルーテシアごめんね。ちょっと病院でもたついちゃって」





言いながら、メガーヌさんは車椅子を自分で動かす。僕は背もたれの後ろの持ち手から手を離す。

メガーヌさんはそのまま駆け寄ってくるルーテシアの方に行く。で、僕の方を少し振り向いて右目でウィンク。

普通にそれが可愛いというか綺麗というか、不覚にもドキっとしてしまった。・・・・・・ふ、不意打ち過ぎる。



というか、綺麗な人ではあるんだよね。紫の髪に、明るい黄色のワンピースが凄く映えてる。



あるんだけど・・・・・・あははは、暴走し過ぎだって。





「恭文、随分とお疲れのようだな。・・・・・・良ければ飲むといい」



チンクさんが、コップに水を入れて持ってきてくれた。何気に気のつく人らしい。



「あ、ありがとうございます」



僕はお礼を言ってから、それを飲み干す。あぁ、火照った身体に染み渡るわー。



「なにかあったのか? 少し帰りが遅かったようだが」

「いえ、ちょっと話込んじゃいまして」

≪ベタな出会い方をしたのでいろいろと大変だったんです。しかも、意外とオープンな方でしたし≫



ツッコんでやりたい。だけど、ツッコんだら絶対にバレる。なので・・・・・・ここは流す。

でも、オープンというのは同意見。あんまりにもおっぴろげ過ぎて、対応に困ったもの。



「オープン?」



チンクさんが不思議そうな顔してるので、視線であの母子を追いかけながら説明する。



「僕達、ルーテシアがあんな感じなんで、もっと落ち着いたキャラを想像してたんですよ」

「あぁ、そういう事か。だが、見ての通りメガーヌ殿は明るくて優しい方だ。姉達にも、実に普通に接してくれる」



そう口にするチンクさんの言葉の中に、何かこう・・・・・・言いようのない重いものを感じた。

その重さは、言葉だけじゃない。チンクさんの視線の中にも詰まっていた。



「ルーテシア、やっぱり表情が明るいですよね」

「そうだな。母君と話している時は、いつもだ」





ルーテシアはいつも大人びていて、どこか達観してる印象を受ける。

だけどメガ―ヌさんと話している時は、年相応の子どもだ。

エリオやキャロも、フェイトに対してあれくらいしてもいいのに。



だからなのかな。余計に気になった。申し訳なさそうというか、後悔の篭った目をチンクさんがしているのを。



そしてその視線の先に居るのは、当然あの母子。・・・・・・よし。





「チンクさん、エプロンがズレてますよ?」

「え?」



チンクさんの返事を待たずに僕は、チンクさんの背中に回り込んで、エプロンを直す。

まぁ、ほとんどズレてないんだけど、こういうのは気持ちの問題だから。



「これでよしっと。・・・・・・それじゃあそろそろケーキ作り始めましょうか。
さー、美味しいの作って、いっぱい食べるぞー! おー!!」



僕は普通に、仮面付けたまんまだった。だから、お腹がぺこぺこなのよ。

だから頑張りたい。普通に僕は頑張りたいのだ。



「恭文・・・・・・すまないな」

「なにがですか?」

「いや、なんでもない。・・・・・・そうだな、美味しいケーキを作るとするか。
姉は、糖分が欲しい。ただひたすらに糖分が欲しい。これでも何気に甘党なんだ」

「はい」



こうして、ようやくケーキ作りが始まった。・・・・・・なんだか楽しくなりそうで、ちょっとワクワクしてた。



「・・・・・・あら、これ・・・・・・仮面? わ、かっこいい」



ただし、そんな予感はこの言葉で砕かれた。僕達は全員一斉にそちらを見る。



「あ、お母さんだめ。それは」

「えい」










・・・・・・そしてそれから10数分、メガーヌさんの顔に装着された呪いの仮面を外すのに四苦八苦する事になった。





それで、みんな僕への視線が厳しくなったりもした。いや、僕も被害者・・・・・・はい、僕が悪いんですよね。ごめんなさい。




















(第19話へ続く)




















ネタバレ込みなあとがき



サリエル「えー、いつも誤字報告してくれる方々、本当にありがとうございます。
作者、とても助かってるとの事です。さて、本日のあとがきのお相手はサリエル・エグザと」

恭文「蒼凪恭文です。・・・・・・ついに出たよ。メガーヌさんが」

サリエル「やっさんの天敵だな。というか、キャラ濃いなぁ。これ、普通に原作通りじゃないんだろ?」

恭文「ですね。資料が少ないし、シリアスキャラだと他の話やらキャラにかぶるから、オリジナル風味多めです」





(TV版StSでメガーヌさんは、二言三言しか喋りません。そして、CVは中原麻衣さんです)





恭文「ちなみにコンセプトの一つは、中の人だよ。もっと言うと、エロい話が出来て大人な女性な中原麻衣さんだよ。
そしてもう一つは、男にとって理想の女性でありながらも理想の母親。ある意味では相反する二つが同居しているわけですよ」

サリエル「やっさんに対して母性的というかお姉さん的というか、バカやりながらも距離感はちゃんとしてたりする所だな」

恭文「えぇ。そして・・・・・・発言が危ない。普通にシモに走る」

サリエル「やっさん、次はメガーヌさんIFでいいだろ。いいじゃないか、普通に短く終われそうだぞ?」

恭文「でも、どういう展開にしようか迷ってるんですよ。いきなりシモも・・・・・・うーん、やっぱゼストさん絡みかなぁ」





(やるなら、そこから発展させていくしかないとか思ったりした今日この頃)





サリエル「あぁ、色々縁があるんだよな。アレだよ、そういうところから互いに・・・・・・だけでも話になるしよ」

恭文「じゃあ、作者にはちょっと考えてもらいましょ。普通にいいキャラだし、書いてら楽しそうだし」

サリエル「というわけで、何気に改定前の17話も分割されたな」

恭文「さすがに追加シーンも纏めてだと、分量が多くなりますし。でも・・・・・・うーん、魔法って便利だけど、怖いなぁ」

サリエル「色々考えていくと、使えるだけでそうとうなアドバンテージではあるのは、間違いない。
とにかく・・・・・・次回だ。あの呪いの仮面がどうなるか、是非注目してくれ」

恭文「というわけで、本日はここまで。お相手は蒼凪恭文と」

サリエル「メガーヌさん、普通にいいキャラだと思うサリエル・エグザだ。じゃあ、またなー」










(本日は、男分多めで収録しました。なお、現・魔法少女は自宅で宿題に追われています。
本日のED:水樹奈々『Phantom Minds』)




















ヒロリス「・・・・・・お、やっさんからメールだ」

サリエル「なんだって?」

ヒロリス「ん、テストを頼んだ武装についてのレポート。早速試してくれたんだって。なお、相手はスバルちゃん」

サリエル「スバル・・・・・・あぁ、ギンガちゃんの妹か。六課に居るから、丁度よかったと」

ヒロリス「そそ。・・・・・・ナイフはカートリッジ2発ロードのリボルバーナックルとぶつかって、粉砕」

サリエル「粉砕って・・・・・・アイツ、何やってんだよ」

ヒロリス「そして、その前段階でレールガンの弾丸にして、ナイフは合計二本粉砕」

サリエル「アイツ、マジで何やってんだっ!? しかもレールガンって・・・・・・あぁ、完全にコイツのバカが感染してるしっ!!」

ヒロリス「あと、私の自信作の仮面が外れなくなった? あー、こんなのどうでもいいや」

サリエル「どうでもよくないだろっ! 気にするべき不具合じゃねぇかよっ!!」

ヒロリス「それで、ワイヤーを活用して電撃で痺れさせて沈めたと。
だけど、使用直後にワイヤーベルトが・・・・・・爆発して壊れた?」

サリエル「爆発って・・・・・・あぁ、やっさんの電撃にベルトの機構が耐え切れなかったのか」

ヒロリス「そうみたい。ただ、ベルト自体はちゃんと稼働したから、あとは耐久性の問題だって。
あー、やっぱワイヤーベルトはもうちょい煮詰めないとダメか。やっさんの電撃に耐えられないようじゃ、ちょっとなぁ」

サリエル「いやいや。まずお前は、あんなワイヤーアクション無理だろ。
ワイヤーベルトを煮詰める前に、お前のActionを煮詰めろよ」

ヒロリス「大丈夫だよ。人間やろうと思えば何だって出来る。
やろうと思えば、練習開始初日で黒張りのワイヤーアクション出来るんだよ」

サリエル「絶対無理だからなっ!? 人間やろうと思って、そこからの積み重ねがあって初めてなんとかなるんだよっ!!
てーか、お前はどこのニュータイプ気取りだっ! ちったぁその自信過剰なところを直してくれー!!」










(おしまい)






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