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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第49話 『Leave all behind/さらば、ガーディアンっ!?』



”・・・・・・恭文さん、大ピンチですね。最終回だから、入り方がいつもと違っちゃうくらいにピンチです”

”そうだね、大ピンチだよね。すっごい捕まってるし。
てゆうか、なんですかシュライヤのキャラなり。あれ王蛇だし”



王蛇というのは、仮面ライダー龍騎に出てきたライダーだね。シュライヤのアーマーの形状が、まさしくそれなのよ。

てゆうか、剣の色が柄とナックルガードが金色になってて、それで刃が赤と色違いなだけで、形状自体は王蛇のソードベントだし。



”最初、私は某英雄王かと思ったんですけど、違うんですよね”

”ややこしいの。類似品に注意なの。てゆうか、違いが細かすぎてジガンはよく分からないの”

”ジガン、丸っぽい鎧を着けてるのが英雄王で、肩が鋭角に飛び出してる鎧を着けてるのが王蛇って考えればいいのよ?”

”それは分かりやすいの。流石は主様なの”



でも・・・・・・あははは、咄嗟に飛び出さなくてよかったよ。目の前で人質が十人以上だしさ。

僕達は草むらに蹲りながら、シュライヤと×キャラ、それに捕まったあむ達の様子を伺う。・・・・・・やばい、マジでヤバイ。



”×キャラだけなら、あなた一人でも即行でやれるでしょ。ただ、問題はあのキャラなりですよ”

”月夜のキャラなりと同じ感じがするの。ジガンでも分かるくらいに、嫌ーな感じがたっぷりなの”

”きっと偽エンブリオの影響で、力を増してるですね。・・・・・・恭文さん、どうするですか”



シュライヤが放った赤い奔流は、あむ達にぶつかるまえに拡散して、そのままあむ達を包み込んだ。

どうやらアレは、一種の拘束技だったらしい。あむ達は赤いシャボン玉に包まれて、捕まってる。



”あむさん達、なんだかプカプカ浮いてるですけど”

”浮いてるね。でも、全然楽しそうじゃない”

”捕まってるから、当たり前なの。うー、これはマトモに出ていけないの”

”当然でしょ。出て行った途端に、人質にされて詰みですよ”



だって、みんな1Mほど浮きながら捕まってるんだもの。ありえないでしょ、これ。



”人質無視・・・・・・ってのは基本として”





ぶっちゃけ、あむ達のためにあれを止められないのはダメなのよ。理由は、あの周りの×キャラ。

偽のエンブリオを所有しているシュライヤは、他の子のこころの中からたまごを抜き出してる。

それをこのまま放置すればどうなるか。こころのたまごを、学校の中で大量に抜き出されることになる。



そうなったら、イースターの思惑は別としてエンブリオ出現だ。そうなったら目も当てられない。





”主様、本気なの?”

”本気だよ。優先するべきは、シュライヤを止める事。あむ達の身の安全は、その次だよ。
このままが学校内の人間がシュライヤに蹂躙されまくったら、エンブリオが出現するかも”

”・・・・・・納得なの。ガーディアンとしてもエンブリオは捕まえたいけど、さすがにシュライヤ王子に期待はだめなの”

”そうなると、取れる作戦は限られます。一つは、シュライヤさんを私達で速攻で叩き潰す事”



ただ、これはリスクが高過ぎる。一発勝負になるし、そうなったら僕達がここに来てる事も当然バレる。

成功すればいいけど、失敗したらあむ達がどうなるか分からない。これは、最後の手だ。



”なら、リインに任せてください。いい方法があるです”

”なに?”

”シュライヤさんと、あむさん達を引き離すんです。そうすれば、直接的に首元に剣を突きつけられる心配はありません”



・・・・・・なるほど。確かにそれが1番いいか。うし、その案採用。さて、冷静にいこうか。

心は熱く、頭はクールに・・・・・・そして、どこまでもハードボイルドにだ。



”ならそれで。・・・・・・リイン、あのランプとあむ達を除いた上で、結界張れる?”

”出来ます。というか・・・・・・今、詠唱中です。というか”



世界が色を変える。見慣れた幾何学色の世界の中、僕とシュライヤだけが存在している。

あむ達にランプに倒れた山吹紗綾に取り巻き達まで、姿を消した。



”発動しました。・・・・・・こっちは、リインが何とかするです”

”出来るの?”

”やります。だから、恭文さんはシュライヤさんの方を”



リインは、躊躇いもなく力強くそう言い切った。それが心強くて・・・・・・つい、口元が緩む。



”了解。リイン、気をつけてね。なお、僕は気を付ける”

”はいです♪”



僕はそのまま立ち上がって、シュライヤの元に歩いていく。

シュライヤは自信満々と言う表情で仁王立ちしながら、僕を待ち受ける。



「・・・・・・これはお前の仕業か」

「そうだよ。僕とお前だけしか、この中には居ない」

「お前まで、僕の邪魔をするか」

「何か勘違いしてない?」



僕は、右手でアルトを持つ。持ちながら、シュライヤを見据える。



「最初に言ったでしょうが。僕は、聖夜小ガーディアンのジョーカーV・・・・・・蒼凪恭文だってさ」



黒い輝きに魅入られた王様は、それでも不遜に仁王立ち。相当に、自信家のようだ。



「ガーディアンってのは、お悩みな生徒を助けるのが業務なのよ。だから、助けるよ」

「全く、お前はおかしい奴だな。・・・・・・後悔するぞ」

「そう言って後悔するのは自分だって、知らないの? それ、負けフラグだから」



軽く笑って答えてあげると、シュライヤが笑う。ただし、それは嘲笑。

・・・・・・今の僕の笑いと、全く同じなのよ。



「アルト、いくよ。・・・・・・変身」

≪Riese Form≫



青い光の中、制服が消える。そこから身に纏うのは、誓いを込めた騎士服。

その服の名は、巨人。白いマントを羽ばたかせながら、僕は騎士としての自分を始める。



「最初に言っておくっ!!」



右手を上げて、シュライヤを指差す。

そして、この時間に・・・・・・自らの想いに揺らがない強さを刻み込むために、最初に言っておく。



「僕はかーなーり・・・・・・強いっ!!」

≪ついでに言っておきます。真・主人公足るこの私の伝説に、揺らぎは存在しません≫

≪ついでのついでに≫

「そうか。なら僕は」



シュライヤの笑みが深くなる。深くなり、シュライヤは刃を振りかぶる



「それより更に強いがなっ!!」

≪あー、ジガンの台詞を取らないでなのー!!≫

「「ついでのついでになんて」」



僕達は同時に踏み込んで、互いの相棒を打ち込む。

赤と銀の刃は衝突し、火花を散らし・・・・・・振り切られた。



「「長過ぎっ!!」」

≪二人揃って酷いのー!!≫









こうして、シュライヤとの戦いの幕は・・・・・・ふざけんなよ。イースターの奴ら、マジで僕に対して喧嘩を売ってきやがる。





ぶち壊してやる。こんな今も、お前らの企みも、全部ぶち壊して・・・・・・その罪、数えさせる。





僕はお前達が笑う未来なんて、絶対認めない。笑うにしても、一度僕に徹底的に壊されてからだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・たまごの中に居ても感じる禍々しい気配、許せませんね。

連中は、本当に私達を一体なんだと思っているのですか?

そして、それはお兄様からも感じています。お兄様は強く、願っている。





こんな状況を、王子を捕えた闇を壊したいと、強く。・・・・・・これならいける。

本当に、こんなに早く目覚める事になるとは思ってなかった。

お兄様、もっと強く願ってください。今という時間を壊したいと。





抑え切れぬ衝動を解き放って、迷いと常識と言う名の鎖と檻を壊す。

そうして初めて選べる進化への可能性が、今ここにあります。

それを、その手で掴みとってください。・・・・・・大丈夫です。





私のありったけで、あなたに力を貸します。というか、勝手にやります。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第49話 『Leave all behind/さらば、ガーディアンっ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「え、なにこれっ!? シュライヤ消えちゃったよっ!!」

『ムリムリッ!?』

『ゴウジャス・・・・・・ゴウジャスッ!?』



驚く×キャラやあたし達の動揺を他所に、頭上から氷の短剣が降り注ぐ。



『ゴウジャスー!!』

『ムリムリー!!』



まるで雨のように、ランプとかそういうの無視で降り注ぐ短剣を、×キャラ達は頭上に手をかざしてバリアを発生。

そうして防ぐけど・・・・・・これ、リインちゃんのフリジットダガー!? あ、みんなも気づいたのか驚いてるっ!!



「・・・・・・リイン版」



障壁を張って攻撃を防ぐ×キャラを他所に、ツッコむ影があった。それは、白いバリアジャケットを纏ったあの子。

ただし、今はいつもの大きさじゃなくて、あたし達も一回しか見たことのない妖精サイズ。



「ビートスラップですっ!!」



言いながら、その子は×キャラが居る方向とは反対方向から突進してきて、右足で飛び蹴り。

その衝撃で、ランプが飛ぶ。飛んで・・・・・・地面に転がった。



「リインさんっ!? いや、しかしそれはどうされたのですかっ!!」

「というか、何よそのサイズっ! なんか小さいしっ!!」

「二人とも小さい言うなですー! リインは、元々このサイズが基本ですよっ!?」



あ、そっか。りまといいんちょはこのサイズのリインちゃんを見るの、初めてだっけ。だから戸惑ってる。

・・・・・・いやいや、そうじゃないからっ! 何してくれちゃってんのっ!? あの中にはラン達が。



「出れたー!!」



あたしがツッコもうとした時、ランがぞろぞろとランプの中から・・・・・・あ、蓋が開いてる。



『ゴウジャスっ!?』



×キャラが、慌てたようにラン達を見る。それから、歯をギリギリと音が立ちそうな位に噛みしめて、リインちゃんを見た。

でも、そこにはリインちゃんは居ない。リインちゃんはもうあたし達の目の前に居た。



「というわけで」



リインちゃんは10本の氷の短剣を生成。まるで円を描くようにして、リインちゃんの周りに発生する。



「一気に行くですよっ!!」



射出された短剣の内5本は、×キャラを追いかける。そして残りの5本は、あたし達に向かう。

短剣があたし達を包む赤いシャボンの端を貫くようにすると、シャボンが割れた。



「・・・・・・え? あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



あたし達は、そのまま地面へと落ちる。高さは1Mも無かったから、なんとか着地。

×キャラは、あたし達から距離を取って短剣から逃げてる。・・・・・・た、助かった?



「あむちゃんっ!!」

「ランっ! それにミキにスゥもっ!!」

「狭くて苦しかったですぅっ!!」



みんなも、それぞれ自分のしゅごキャラと合流。・・・・・・あぁ、よかった。真面目によかった。



「みんな、大丈夫ですか?」

「うんうん、大丈夫ー! リインちゃんありがとー!!」

「ただ、もうちょっと優しくしてくれるとありがたかったでちけど。
ペペ達、ランプの中でミキシングされたでちから」



あはは、それはみんな同じみたい。ラン達も、『うんうん』って頷いてるもの。



「そこはともかくリインさん、シュライヤが」

「結界で隔離しました。恭文さんと交戦中なのです」

「恭文とっ!? ・・・・・・リインちゃん、あたしが結界の中に入るのって、出来る?」



あれ、偽エンブリオの影響でキャラなりしてるんだよね。だったら、もしかしたら月夜と同じくらい強いかも。

そうなったら、恭文一人じゃ対処出来ないよ。・・・・・・あのバカ。また無茶する。



「もちろんです。というか、リインも一緒に行くですよ。唯世さん、×キャラは」

「分かってる。・・・・・・みんな、結界内部は蒼凪君と日奈森さん達に任せよう。
僕達は、山吹さん達の×キャラを浄化する。それでいいね?」

『了解っ!!』










・・・・・・あのバカ、マジで無茶し過ぎだし。まぁ、ここはいいか。





だって、マトモに飛び出したらあたし達人質にされちゃうのは明白だったもの。





とにかく、恭文待ってて? あたしとリインちゃんで、すぐそっち行くから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



踏み込んで、刃をぶつけ合う。火花が幾つも散り、空間に衝撃が爆ぜる。

シュライヤの手元の剣から、突きが繰り出された。僕は身を左に捻って避ける。

避けながら、僕は前に踏み込んでシュライヤのサイドを取る。





右足を軸に回転して、シュライヤの背後を狙って攻撃。

シュライヤは、突き出した剣をそのまま右薙に振るう。

二つの刃が交差して、また火花が散る。だけど、僕は止まらない。





シュライヤに向かって踏み込み、左薙にアルトを打ち込む。

シュライヤはそれをジャンプして避けて、僕の背後を取った。

そして、僕に向かって突きを繰り出す。僕はアルトを打ち込んでそれを弾く。





幾度となく突き出されるそれを、アルトを打ち込むことで機動を逸らしていく。

そうしながら、後ろに下がる。下がりつつ・・・・・・攻撃に対処。

突き出された突きを右に動いて回避。僕も、アルトで刺突を打ち込んだ。





シュライヤは後ろに跳んでそれを避ける。避けつつも、刃を逆袈裟に振るう。

振るわれた刃から、赤い奔流がタイムラグも無しに放たれた。僕は、右に走る。

そんな僕を見て、着地したシュライヤは幾度となく刃を振るい奔流を放つ。





走りながら僕は避けていく。僕のそれまで居た場所を通り抜けた奔流は、木々をなぎ倒していく。

シュライヤを中心として反時計回りに動きつつ、僕は左手を動かす。まず、ジガンからショートブレードを出す。

それから、アンカーワイヤーを出して、ブレードのグリップ底にある部分に、アンカーが接続される。





僕はそのまま、それを投擲した。狙うは、シュライヤの剣。ブレードは、シュライヤの剣目がけて飛ぶ。

シュライヤはそれを見て、ブレードを斬ろうとするけど、無駄。ブレードの向かう先は、シュライヤの手元。

鎧に包まれたそことブレードが接触する時を狙って、僕はワイヤーに電流を流す。もちろん、魔法を使った高圧電流。





シュライヤの手元に閃光がバチバチと音を立ててほとばしる。

シュライヤはそれに怯むようにしながら、数歩下がった。

僕はそれを見て、一気にシュライヤに向かって直進する。なお、ワイヤーは巻き戻している。






シュライヤはそれを見て、再び剣を振るう。またもや赤い奔流が僕に向かって放たれる。

僕はそれを右・・・・・・左と走って避けながら、シュライヤに一気に接近。

・・・・・・左の手元にブレードが戻ってくる。シュライヤは、僕に向かって剣を袈裟に打ち込んだ。





ブレードを逆手に持って、そのまま剣に向かって打ち込む。

剣は赤い光を帯びていて、衝突した瞬間にそれが爆ぜた。

ブレードは、剣を受け止めた所から真っ二つにされた。





僕はそのまま斬り抜けて、シュライヤの後ろに回る。回って・・・・・・すぐに次のアクション。

回って、後ろに大きく跳ぶ。そうして、シュライヤの続けて来た右からの斬撃を避ける。

跳びながら、また左手を動かす。動かして狙うのは、シュライヤの首元。そこに向かってワイヤーを投擲。





ワイヤーはシュライヤの首元に確かに巻き付いた。巻き付いたワイヤーを、シュライヤは斬ろうとする。





でも、その前に電流を流す。次の瞬間、シュライヤの身体が震えた。










「ぐががががががががががががっ!!」





・・・・・・震えながら、シュライヤは開いていた左手でワイヤーを掴んだ。掴んで、思いっ切り引っ張る。

瞬間的にジガンはワイヤーを大量に吐き出す。そうして、僕が逆に引き摺られるのを防ぐ。

宙に撓む形で舞うワイヤーを、シュライヤは剣で斬ってしまう。それで、シュライヤへの電撃攻撃は防いだ。



その代わり、シュライヤの手元に数メートルのワイヤーが残る。シュライヤは、それを左手で持ちながら振るった。

ワイヤーは赤い閃光に一瞬で包まれて、まるで鞭のようにしなる・・・・・・って、再利用しやがったしっ!!

その鞭は、僕を襲う。僕は左に走ってそれを回避。・・・・・・鞭は、地面と木々を斬り倒した。



そのまま、僕を追いかけて鞭は縦横無尽に振るわれる。振るわれた鞭が地面を抉り、木々を斬り倒す。

そして、その先が僕の周囲を囲むように移動する。そのまま、僕を一瞬で縛り付けようとする。

だから僕は、アルトに魔力を込める。込めて・・・・・・時計回りに回転して、迫り来る鞭を斬り裂く。





「鉄輝・・・・・・一閃っ!!」





青い円のような閃光が生まれると、赤い鞭は細切れのようになり、力を失って元のワイヤーに戻る。

そのまま、地面に落ちた。シュライヤは・・・・・・居ない。その姿は、僕の目の前に居た。

踏み込みながら、残っていた鞭を振るう。それを僕はアルトで斬り払う。その間に、また零距離に近づく。



踏み込みながら、刃を僕の顔目がけて左薙に振るった。僕は、しゃがんでそれを避ける。

今度は刃を返し逆に打ち込む。それをアルトで受け止めて・・・・・・鍔迫り合いになる。

そうしながら、僕達は互いに時計回りに歩を運び・・・・・・一歩だけ下がった。



シュライヤが、顔目がけて刺突を打ち込む。僕は右にそれを避ける。避けつつ、次の行動に出る。

左手に鞘をかけて一気に引き抜き、刃を受け止めた。こうしないと、追撃で薙ぎ払いが来るから。

その間に、僕はシュライヤの胸元にアルトで刺突を叩き込む。なお、魔力は込み。



だけど、その刃は受け止められた。火花を立てながら、鎧は僕の刺突に耐えている。



シュライヤがニヤリと笑う。でも、遅い。お前が笑っている間に僕はとっくに対処してる。





≪Break Impulse≫





ブレイクインパルス・・・・・・物質の状態を解析して、それを破砕する振動を流し込む魔法。

本来であれば、その解析には数瞬かかる。でも、僕は瞬間詠唱・処理能力持ち。

その解析も一瞬。そして、発動も一瞬。だから、シュライヤの鎧にヒビが入る。



ヒビが入って、シュライヤは吹き飛ぶ。シュライヤの剣が、鞘と摩擦して火花を上げる。

そのままシュライヤは吹き飛んで、近くの木に思いっ切り叩きつけられた。

胸元から鎧は粉々に砕けて、破片をばら撒く。ばら撒き・・・・・・首元の闇色の宝石が見えた。



僕は、一応鞘を確認。・・・・・・すげー、傷一つ入ってないし。さすがナナタロスは丈夫だし。





≪・・・・・・ちょっと手こずりましたね≫

「アルト、それやめて。ブッチギリで生存フラグじゃないのさ」

「くくく、その通りだ」



シュライヤは、笑いながら・・・・・・あぁもう、やっぱりもうちょっと頑張る必要があるってわけ?

とにかく、黄金の王子は立ち上がる。そして、胸元の宝石の輝きが強くなった。



「この程度では、壊せないっ! 僕の夢も・・・・・・願いも、全てだっ!!」



シュライヤが声を上げると、砕けた鎧が一瞬で修復された。・・・・・・またこのパターンかい。

シュライヤの身体が、黒い光に包まれる。・・・・・・いや、その力は後ろで巨大な怪物を形取る。



「今度はこちらの番だ」



虎のような顔に、二つ足で歩く巨人の姿。そして、禍々しい形の悪魔の羽。

それに蛇の尻尾みたいなのがついている怪物を、光は形取る。



「はぁっ!!」



その光が、シュライヤの身体に吸収されていく。シュライヤの目が、妖しく偽エンブリオと同じ色で輝いた。

輝いて・・・・・・両足に力が灯る。そのままシュライヤは跳び上がった。・・・・・・僕も、同じように跳び上がる。



「アルト、ジガン、新技行くよっ!!」

≪了解なのー!!≫



言いながらジガンは、カートリッジをロードしてくれる。数は4発。



≪分かりました≫



アルカイックブレードにキャラなりするようになってから、フィードバックさせようと思って練習してた技がある。

それがコレ。僕は、シュライヤよりも高く・・・・・・空に跳び上がった。高度にして、10メートル程。



「さぁ」



シュライヤは僕に向かって、黒い光に包まれた両足を突き出す。そのまま、シュライヤは突撃。

僕はと言うと、前転しながらシュライヤに飛び込む。



「貴様の悲鳴を聞かせろっ!!」



シュライヤが、僕に向かってドロップキックを叩き込んでくる。その両足を狙って、僕は右足を突き出した。

右足には、魔力の蒼い光に包まれている。・・・・・・そう、これなのよ。僕の・・・・・・新しい必殺技。



「ビートスラップッ!!」



蒼い光と黒い光が激突し、数秒空中でせめぎ合う。せめぎ合って・・・・・・爆発した。

僕達は互いに吹き飛ばされて、地面に墜落。というか、転がりながらも滑る。



≪主様っ!?≫



ジガンの声に答える間もなく、シュライヤはもう動いていた。風を切る音をさせながら、僕の方に突っ込んでた。

そうして、立ち上がりかけていた僕に向かって、剣で刺突を打ち込む。



「鉄輝」





アルトの刃を包むのは、蒼い光。僕は左薙に、アルトを打ち込む。

打ち込んだ刃は、シュライヤの突きの軌道を上にズラして、直撃を避ける。

赤い刃と蒼い刃は擦れて、二つの色の火花を撒き散らす。散らしながら・・・・・・狙うは胴体。



しゃがみ気味だった足を一気に動かし、前方に跳ぶ。

アルトとシュライヤの剣の摩擦速度は一気に上がり、炎が上がる。

それに構わずに、がら空きだったシュライヤの胴に向かって、アルトを叩き込む。



硬い感触がするけど、無駄だ。僕は・・・・・・もう、この硬さを覚えた。





「一閃っ!!」





青い閃光は、シュライヤの鎧に一筋の亀裂を残す。残しながらもシュライヤの身体を斬り裂いた。

だけど、僕も手傷を追う。シュライヤの突きが、僕の右の二の腕を斬り裂いてたから。

ただ、浅くだからまだ何とかなってる。うん、まだ動かせる。そして、それはシュライヤも同じ。



後ろから殺気がする。僕は振り向くと、シュライヤは僕を嘲笑いながら逆袈裟に剣を打ち込んでた。





≪主様っ!!≫



咄嗟に、ジガンを前面に出す。いや、それだけじゃない。ジガンはドMだけど、ちゃんと仕事をしてくれる。



≪Panzer Mode≫





ジガンの形が変わる。大きさ的には60センチ程度の六角形の盾に。

これが、ジガンの形状変換であるパンツァーモード。見ての通りの、片手用の盾。

その盾が、シュライヤの剣を受け止める。左腕・・・・・・大丈夫。防御力、やっぱ上がってる。



でも、まだ終わらない。シュライヤはそのまま刃を振り切ろうとする。そうしながら、刃は強く輝く。





「消えろっ!!」



シュライヤがジガンと摩擦しながらも火花を上げる刃を、遠慮なく振り切った。

その瞬間、赤い奔流が零距離で生まれて、僕達を飲み込む。



「ふ、ふふふ・・・・・・ふはははははははははははっ! 悲鳴を上げる間も」





シュライヤの口が言いかけて止まる。止まって、振り向きながら刃を右薙に振るう。

だって、後ろには僕が居たもの。なお、ジャケットのあっちこっちが吹き飛んでる。

その刃をしゃがんで避けて、僕は・・・・・・シュライヤの顔面目がけて、アルトを叩き込んだ。



なお、刃は返してるので峰打ち。しっかりと手応えを感じながら、僕は刃を左に振り切る。





「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



シュライヤは、衝撃に耐えられずに吹き飛んだ。吹き飛び、地面を何度もバウンドして数メートル転がる。

転がって、近くの木に叩きつけられて、ようやく止まった。僕は・・・・・・息を、荒く吐く。



「ジガン、アルト・・・・・・大丈夫?」

≪私は問題ありません≫

≪ジガンもなの。というかというか、主様・・・・・・大丈夫なの?≫



砲撃を何とか受けきって、弱くなる瞬間を狙って後ろに回り込んだ。それで、今のやり取りですよ。

ちくしょお、マントがビリビリのボロボロだし。これ、もう慣れて気に入ってるのよ?



「何とかね。てか、まだ休めないわ」



だって・・・・・・シュライヤは、鼻を押さえながら立ち上がってるんだから。それで、僕の方を睨みながら、歩いてくる。

くそ、マジで僕一人でこれをなんとか出来るのっ!? 月夜の件も、結局それは無理だったし・・・・・・!!



”何を弱気な。壊そうと思って壊せないものなど、存在しません。
そう言い続けて、色々なものを斬ってきたのはお兄様でしょう?”



それはそうだけど、さすがに色々考えちゃうのよ。



”お兄様、信じてください。あなたの心を。あなたの想いが生み出す力を。
それがあなたの基本であり、強さのはずです”



・・・・・・そう、そうだ。僕は先生からそう教わった。斬ろうと思って斬れないものなんてないと。



”強く、強く・・・・・・自分を信じるから、強くなれる。迷いも後悔も、躊躇いも背負って、突き抜けられる。
誰が相手でも、どんな状況でもそれが出来るなら、人は誰でも今を覆す切り札になれます”



大事なのは強く願い・・・・・・信じること。誰でもない、自分自身を。力はそこから生まれる。



”・・・・・・そう、それでいいんです。それがあなたの答えの一つです。
壊したいものを壊すことから、新しい可能性は生まれます。だからこそ、あなたは鍵を開けられる”



え、いやいや・・・・・・ちょっと待とうよ。僕今誰と話してるっ!? これ、アルトでもジガンでもないしっ!!



”お兄様、私が力をお貸しします。だから信じてください。自分の可能性を。
あなたの心から生まれる未来を。・・・・・・さぁ、一緒に行きましょう”

”だから待ってっ! その前におのれは誰っ!?”

”お兄様への愛に生き、その愛に殉じる情熱的な女です。覚えておいてください”



・・・・・・この声に喋り口調にそのフレーズ、すっごく覚えがあるっ! ま・・・・・・まさかっ!!



”お兄様と私のこころ、アンロック”




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文っ!!」

「恭文さん、無事・・・・・・って、アレなんですかっ!?」



恭文の身体を翠色の光が包んでた。それにキャラなりしたシュライヤも怯んで足が止まってる。

リインちゃんが、結界が壊れないようにした上でここに突入したんだけど・・・・・・アレ、なにっ!!



「私とお兄様のこころ、アンロック」

「「・・・・・・アンロックッ!?」」



あの、これってまさかっ!!



「恭文・・・・・・キャラなりしてるのっ!?」



で、でもしゅごキャラ達はみんな捕まってたんだよっ!? そんなの・・・・・・あ、まさか恭文のたまごっ!!



「貴様、何者だっ!!」

「そんなの、分かり切っているではありませんか」





そう答えた声は、優しくて心に染み渡る優しい声。・・・・・・その声を上げたのは女の人だった。

髪は翠色で腰までの長さがあって、蒼い瞳。というか、あれ・・・・・・シスター服?

ミニスカなシスター服に、それとは不釣合いな薄目の銀色のガントレット。



両足に黒のニーソックスを履いていて、足には足首までを覆う黒い編み上げのブーツ。





「私はあなたを戒める呪縛を、それを作り出した存在を破壊する者です。
それ以上でもそれ以下でもありません。・・・・・・キャラなり」



言いながら、ガントレットを装備した女の人は右手で髪をかき上げる。

かき上げた髪がさらりと舞って、吹き抜けた翠色の風に靡いた。



「セイントブレイカー」



キャラなり・・・・・・え、ちょっと待って待ってっ! もしかしなくてもアレ、恭文のキャラなりっ!?



「・・・・・・嘘、です」

「リインちゃん?」

「どうして、どうしていきなりシオンになっちゃうですかっ!!」

『え、シオンって誰っ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



≪あわわわわ・・・・・・主様が女の子になっちゃったのっ! 主様、そういう趣味なのっ!?≫



聞こえた声は両手のガントレットから。どうやらこれはジガンが変身したもののよう。

よく見ると手の甲に六角形の意匠がある。そしてそのラインが点滅している。



「ジガン、私はあなたの主様ではありません。・・・・・・私はシオン。
お兄様への愛に生き、愛に殉じる情熱的なしゅごキャラです」

≪えぇぇぇぇぇぇっ!?≫





・・・・・・私達の右横で、リインさんと日奈森さんが驚いている。

というか、さすがにリインさんは知っていましたか。しかしこれは予想外です。

お兄様の身体を完全に私が借りている状態なんですよね。でもこれは・・・・・・うーん。



おかしい。普通ならこんな事になるわけがないのに。まぁ、ここは後でもいいか。





”お兄様、起きてください。いつまで気絶してるつもりですか?
というかあんまりですよ? 私の顔を見た途端に気絶なんて。私、ちょっと傷つきました”

”う、うーん・・・・・・い、嫌な夢を見た。シオンがあの翠色のしゅごたまから生まれてきたのよ”

”残念ながら夢ではありませんよ”



あ、お兄様が黙った。そして・・・・・・叫ぶ。



”嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! な、何これっ!? なんで僕の身体がシオンになってるのっ!!
なんで僕また女装っ!? これ絶対おかしいからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!”

”キャラなりしたからですね”

”それで納得出来るかボケっ! てーか、ミキとのキャラなりはこんなならないしっ!!
・・・・・・え、マジでシオンっ!? ちょ、ちょっと待ってっ! さすがにこれは・・・・・・あぁもういいっ!!”



あ、振り切りましたか。うーん、予想外です。てっきり私を否定するかと思ったんですけど。



”一応キャラなりしてるから、なんか分かるの。ホントに・・・・・・シオン、なんだよね。
僕の女装姿とかだけど、ちゃんとここに居るし生きてる。僕の夢が形になってる”

”はい”

”だったらそれで納得する。これでシオンを否定して消えちゃったら、きっと後悔するし。
・・・・・・そっちの方が、ずっと嫌だもの。せっかく生まれて来たのに、それは嫌だ”

”・・・・・・お兄様、ありがとうございます。それじゃあしばらく身体はお借りしますね”



・・・・・・やっぱりお兄様はすごい。私のこと、もう認めようとしてくれている。



”いや、借りるって・・・・・・あ、ホントだ。マジで身体動かせないし”

”いわゆる良太郎さん方式ですね”

”あははは。全然嬉しくないんだけど、どうすればいい?
てゆうか、これは僕の勝負なんですけどっ!!”

”大丈夫です。私はお兄様のもう一人の自分。つまり、お兄様とは一心同体。つまりこれは私の勝負です。はい、納得しましたね?”

”出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!”



そう言いながらもお兄様はちゃんと私を認めて、信じようとしてくれている。

私、本来なら否定されても仕方のない存在なのに・・・・・・本当に嬉しい。



「・・・・・・ふ、ふふふ・・・・・・ふざけるなっ! 貴様・・・・・・僕を無視するなぁっ!!」



そう言いながらシュライヤ王子が踏み込んでくる。踏み込みながら、刃を袈裟に叩き込む。

私は左手を王子の手首に打ち込んでその軌道を逸らす。刃は地面を砕くだけだった。



「何を言ってるんですか」



言いながら、私は右手を握り締める。握り締めて・・・・・・そのまま王子の顔面に叩きつける。

王子は後ろにたたらを踏んで、下がる。私は、ゆっくりと間合いを詰めて歩いていく。



「そんなケバケバしくて趣味の悪い輝きに心囚われてるあなたは、無視されて当然です」

【え、やっぱりそういうキャラっ!?】





シュライヤ王子はそんな私に向かって右薙に刃を打ち込む。私は少し下がって避ける。そこからまた袈裟。

それも避けて、刃を返して横に一文字。私は右手で王子の手首を握る。握って、左拳を脇腹に叩き込む。

その衝撃でまたもや王子がたたらを踏む。踏みながら、刃を振るう。私はしゃがんでそれを避ける。



振るわれた刃から、また奔流が放たれるけど、その軌道の下に私は居るから問題ない。

立ち上がりながらも、懐に踏み込んで左、右、左と三連発。

それを喰らい、半歩さがった王子は私の胴に向かって刃を突き出す。



私は・・・・・・身体を後ろに、ブリッジするように逸らす。逸らして、その刃を避ける。

私の身体の上に、顔の前に赤い刃が突き出される。だから両手を伸ばす。

両手を伸ばして、刃を白刃取りで掴む。私はそのまま跳ぶ。



刃を掴まれているから、王子は体勢を前のめりに崩す。そこが狙い所。

私は捻りつつ、身体が地面と平行になっている体勢のまま無理矢理に跳んで、右足を振るう。

左薙に放たれた蹴りは、王子の顔の左側面を捉えた。私は両手を離して足を振り抜く。



王子は吹き飛び、後ろで聴こえる着弾音を聴きながら地面にしゃがむように着地。

それから私は右手を動かす。動かして、軽く髪をかき上げる。・・・・・・私の癖。

私が私という存在である証拠の一つ。お兄様が演じる『シオン』にはない部分。



それが私を私にしてくれていると思う。そこが、ちょっと誇らしい。





【・・・・・・シオン、何気に強い?】

「当然です。だって私はお兄様のしゅごキャラなのですから。
その私が強く無いわけがありません。・・・・・・さて、シュライヤ王子」



私が見据えるのは、闇に囚われた王子。・・・・・・そして、輝きを見失った迷い子。



「あなたの夢は、そんな宝石で叶うものなのですか?」



立ち上がる王子を見下ろしつつ、私は言い放つ。出来れば言葉で止まって欲しいと思いながら。



「ドラゴンを家来に冒険の旅に出ると言ったあなたは、とても輝いていました。夢と希望、勇気と力強さに溢れていた。
その輝きに惹かれて、お兄様はあなたに力を貸したんです。・・・・・・あなたは王子どうこうとは関係なく輝いています」



そう、だから私がようやく形になった。そういう意味では、私はあなたに感謝している。

あなたとの出会いがなければ、お兄様は私の存在に気付かなかったかも知れないから。



「そんな偽物の輝きに負ける事のないあなただけの輝きが、世界が確かにここにある。
王子、目を覚ましてください。あなたの輝きは、そんなものに囚われたりするほど弱くありません」

「何を言っているっ! これはエンブリオ・・・・・・僕のものだっ!!
これが有れば、僕は父上を超えられるっ! 父上のようになることを、要求されなくて済むっ!!」

【・・・・・・なる必要なんて、ないよ。そんな要求、ガン無視したっていいでしょ】



お兄様が私の中から王子に声をかける。

どこか悲しい、苛立ちのようなものを感じるのは、気のせいじゃない。



【シュライヤはシュライヤでしょっ!? シュライヤが目指す『自分』になればいいじゃないのさっ!!
父親が立派だから、シュライヤも同じようにならなくちゃいけないなんて、絶対おかしいよっ!!】

「黙れっ! お前になにが分かるっ!? 王子として、みんなに父上のようになれと言われ続ける苦しみがっ!!」

【分かるよっ! 僕も・・・・・・僕もシュライヤと同じだったっ!!
みんなと同じ道を行って、同じような生き方をして欲しいって、ずっと言われてたっ!!】



それに、王子の目が見開く。私を・・・・・・いいえ、私の中に居るお兄様を見る。



【僕、僕と同じような力を持つ周りの人達とは違う生き方してるんだ。それをずっと心配されてたの。
それで思われた。どうして自分達と同じじゃダメなのかと。どうして、自分達を信じてくれないのかと】



王子の目が僅かに揺れている。・・・・・・お兄様の言葉、ちゃんと届いてる。



【だからそういうの、プレッシャーだって分かるよ? ・・・・・・別に本当に嫌いなわけじゃないよね】




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・リインちゃん、あれって」

「はいです。恭文さん、ここに来るまでそうとうみんなから局員になれって言われてたんです。
でも恭文さんはずっと断ってて、それでみんなは自分達の居場所や自分達が嫌いなのかと思ってて」

「色々行き違いがあったんだね。でも、ボクの見る限りそういうの無いように感じるんですけど」

「今はもう無いですよ? けど、それでもかなり。リイン達の周り、局員が大半ですからそれもあったですよ」



だから・・・・・・本当に少しだけ分かるんだ。あぁ、でもそうだよね。局って色々問題も多いらしいし。

というか恭文が組織の中に入ってって、なんか想像出来ないよ。ガーディアンとはまた違うだろうしさ。



【・・・・・・ただ、違うだけ。みんなの要求する『自分』と、心が描くこうありたいと思う『自分』が違うだけ】



恭文の言葉は、まだ続く。さっきまで殺気立ってたシュライヤが、動揺してる。



「そう、だ。違うんだ。僕は・・・・・・父上のような、立派な王様になどなれない」

【でも、みんなはそれを要求する。シュライヤがお父さんの子どもだから。なれないはずがないと思っているから】



みんながどう思ってたかは知らないけど、恭文は魔導師で・・・・・・強い力を持ってるから、とかかな。

古き鉄ってミッドでは相当有名らしいし。悪名が轟きまくってるとか。



「そうだ。要求するんだ。その度に思うんだ。僕はいらないのかと。父上のようになれなかったら、僕はいらないんじゃないかと」

【ならシュライヤは、お父さんの事をどう思ってる?】

「偉大な、方だ。本当に偉大で、偉大で・・・・・・好き、なんだ」

【うん】



やっぱりだ。シュライヤ、偽エンブリオの影響がなくなり始めてる。恭文の声、ちゃんとシュライヤに届いてるんだ。



「だから、余計に苦しいんだっ! 比べられる度に、期待する度に・・・・・・心が砕けそうなんだっ!!
僕が立派な王様になれなかったら、僕はいらないのかといっそ聞いてしまいたくなるんだっ!!」

【でも、聞けない。もしも肯定されてしまったら嫌だから】

「あぁそうだっ! おかしいだろっ!? 僕はあれだけ偉そうな事を言っても・・・・・・父上のコピーになるしか道がないのかと、ずっと怯えていたんだっ!!」

【おかしくなんてないよ。・・・・・・少しだけ、きっと本当に少しだけだけど、分かるよ。僕も同じだった。
みんなと同じになれなかったら、僕はいらないのかと何度も思ったから】



あたしはリインちゃんを見る。リインちゃんは、恭文の方をずっと見てた。シオンじゃなくて、恭文を。

・・・・・・それだけで分かった。これは本当に相当言われてたんだなと。



【でも、例えシュライヤが立派な王様になれなくて、世界中の誰もがシュライヤの事をいらないって言っても、僕は絶対にそんな風に思わない】

「なぜ、だ」

【僕はドラゴンを家来に冒険の旅に出るって言い切ったシュライヤが好きだから。王様じゃなくても、王子様じゃなくても同じ。
シオンの言う通り、シュライヤの輝きに惹かれたんだ。これが僕の気持ち。世界中の誰がなんと言ったって、絶対変えない】

「・・・・・・恭文、お前」



恭文の顔は見えない。だって、今見えてるのはリインちゃんの言う『シオン』の顔だから。

でも、なんだろう。あたしには優しく笑ってる顔が見える。シュライヤを安心させるように、笑ってるの。



【・・・・・・シュライヤ、例えそれが本物のエンブリオでも、きっと今のままじゃ願いは叶わないよ。
シュライヤが本当に何になりたいのか。そこと向き合って探さなかったらきっと・・・・・・何も変えられない】

「お兄様の言う通りです。王子、あなたは何になりたいのですか?
別に王様じゃなくてもいいんです。あなたが本当に望む自分の形は、なんですか?」

【大事な事はきっとそれだけだよ。だから見失わないで? 周りの声で、自分の声を消さないで?
シュライヤの中にあるこころのたまごは、ラミラは一体どんな形か・・・・・・ちゃんと、探してみようよ】

「僕は・・・・・・僕、は」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あれれ、偽エンブリオからのマインドコントロールが弱くなってる?」





全く無駄な抵抗してくれちゃって。でもこれで分かった。この程度じゃダメだってことだね。

もっとこう・・・・・・人格そのものを抑え込むくらい強力じゃないと、きっと誰にやってもこうなる。

ようするに完全に人形になってもらわないとダメってことか。うーん、これは相当頑張る必要があるぞ。



現在の出力じゃ、全然足りない。少なくともこの5倍はないと。





「シュライヤ王子、貴重なデータありがとね。というわけで、君はもう用済みだから適当に暴れちゃってね〜」



とりあえず僕はドーナツを食べながら目の前のモニターのスイッチを押す。



「偽エンブリオのリミッター解除。・・・・・・ポチっと」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

【シュライヤっ!?】



闇色の宝石が妖しく輝き、王子の身体を包み込む。包み込んで・・・・・・黒い風を巻き起こす。

日奈森さんとリインさんはそれに圧されるけど、私は踏ん張って耐える。



「・・・・・・イースターの敵であるお前達を、排除する」

【シュライヤっ!!】



目はつや消しになり、完全に虚ろで・・・・・・剣を構える。く、せっかく説得出来かけていたのに。

やはりあの偽エンブリオを破壊しなければ、何も変わらないということね。うん、よく分かった。



「お兄様」

【なに?】

「・・・・・・王子を、壊します」



私がそれだけ言うと、お兄様には全部分かったらしい。だって私達は深く繋がっているから。



【分かった。シオン、一緒に行くよ。シュライヤを、ラミラを取り戻す】

「はい。それならまずは」



私は右手を上げて、指をパチンと鳴らす。



「お兄様の流儀に合わせて、私もクライマックスで行きましょう」

≪The song today is ”Leave all behind”≫



どこからともなく鳴り響くのは音楽。そのまま右手から取り出すのは銃。

グリップ部分の下が斧の刃のようになっている銃を、私はクルリと回転させる。



「アックスガン」



私はグリップガード付きの丸い銃身を持って構える。

そう、これは銃と片手斧を保持位置を変えるだけで切り替えられる万能武器。



≪どうも、私です。・・・・・・今回はまた珍妙な形ですね≫

≪わわわ、お姉様まで変身しちゃってるのっ!!≫

【アルトっ!? というか、音楽流しちゃってるしっ! てゆうか、アクセルのテーマ曲かいっ!!】

「当然です。だって私、こっちの方が好みですから」



私は左手を胸元に持って握り締めると、一気に王子に向かって指差す。

ただし、この指と今から言い放つ言葉は、決して王子に対してのものじゃない。



【シオン、僕にも言わせて。・・・・・・マジで頭来てるのよ。
あとあむにリイン、手出ししないで。ちょっと憂さ晴らししたいから】

「いや、手出しするなって・・・・・・アンタ、本気っ!?」

【本気だよ。大丈夫、すぐ終わらせるから。それじゃあシオン】

「はい」



お兄様と私は、声を合わせて宣言する。そう、二人で・・・・・・一緒に。



【「・・・・・・さぁ」】





・・・・・・王子を操り、惑わせ、あの宝石の向こう側に居る・・・・・・愚か者共に対して。

耳をかっぽじってよく聞きなさい。これがあなた達への私からの、そしてお兄様からの宣戦布告です。

あなた達は私達しゅごキャラに、夢を描く全ての人間に喧嘩を売った。それが私達は許せない。



今決めた。私はお兄様の力となり、あなた達を壊す。王子のような人が泣いて、あなた達だけが笑う未来を壊す。

戦えず、ただ泣くだけの全ての存在に代わって、私達が戦い、あなた達を叩き潰す。

私はこんな今も、あなた達が笑う未来も、絶対に認めない。笑いたければ私に全てを壊されてからにしなさい。



だから解き放とう。この身を戒める常識という名の鎖を噛み砕いて、心の中の熱を。



その熱で認められない今の全てを焼き尽くす。・・・・・・さぁお兄様、一緒にいきましょう。





【「あなた達の罪を数えなさいお前達の罪を数えろ」】



私は躊躇いなく一歩を踏み出す。・・・・・・私はお兄様のしゅごキャラで、その愛に生き、殉じる女。

それと同時に私は、壊したいと思う全てのものを壊せる魔法使いだから。



「破壊から始まる未来もある。だから・・・・・・そんな未来を紡ぐのが、私の力」

「・・・・・・消えろ」



放たれるのは赤き奔流。先ほどと同じようにそれは撃ち込まれる。だけと私は、それから逃げない。

ただひたすらに直進しながら、アックスを振るう。まずは・・・・・・袈裟に一撃。



「いいえ」



奔流を斬り裂き、爆散させる。そのまま爆煙の中を突っ切るようにして歩く。

そうして出てきた私を見て驚いた王子は、更に刃を左薙に振るう。同じように奔流が撃ち込まれた。



「それは無理です」





次々と襲う奔流を斬り裂きながら、私はゆっくりと歩み寄る。・・・・・・距離は10メートルを切った。

王子は遠距離攻撃は無駄だと悟ったのか、私へと踏み込んで来た。そして剣を振るう。

袈裟に一撃。そして右から真一文字に一撃。それを私はアックスの刃で受け止める。



横薙ぎの一撃を、流すようにして弾く。王子が私の右サイドを通り過ぎた。

私は振り返りながら袈裟に一撃。アックスの刃は王子の鎧を斬り裂き、確かな傷をつける。

王子は振り返りながらまた右から打ち込んでくる。それをアックスで受け止めて弾く。



弾いて踏み込みつつ脇腹を狙って右薙に一閃。

それから身体の正面が向いた所を狙って唐竹に一閃。

王子の左肩口から真っ直ぐに鎧を斬り裂き、また傷を刻み込んだ。



・・・・・・王子は後ろに下がってまた一歩踏み込む。

そうしながらも切っ先を突き出す。私はそれを左薙にアックスを打ち込んで弾く。

王子はそんな私の腹を狙って蹴りを叩き込む。でも、遅い。



弾きながら私は身を翻して王子の左サイドを取る。そうして王子の攻撃を避けた。

そこから袈裟、右薙、左切上、逆袈裟、左薙とアックスを振るい続ける。

袈裟と右薙は直撃したけど、他が防がれた。王子の剣と私のアックスとの間で、火花が散る。



だから私は一旦アックスを引く。そして集中する。・・・・・・アックスの刃に、翠色の光が宿る。

王子は数度跳んで大きく下がって・・・・・・一気に走って来た。そして切っ先を突き出す。

その切っ先目がけて、私はアックスを唐竹に打ち込んだ。





「・・・・・・アバランチアックス」





翠色の光を宿したアックスと王子の剣の切っ先が衝突した。それにより、黒と翠の風が巻き起こる。

その風の発生地点・・・・・・刃と切っ先同士が数瞬だけせめぎ合う。

そして切っ先から赤い奔流がまたもや撃ち込まれた。いわゆる零距離での砲撃。



でも、それすらも私のアックスは斬り裂きながら、王子と力比べをする。

二つに裂かれた奔流が私の両側を通り抜け、地面を削り草木を吹き飛ばす。

それに構わず私は・・・・・・右手に力を込めて、しっかりとアックスを叩き込んだ。



生まれたのは翠色の衝撃。それが砲撃ごと王子の剣を叩き斬った。

まるでドリルのようにねじれた刀身の剣は、粉々に砕けて破片となる。

王子は咄嗟に剣の柄を離す。離した次の瞬間、柄も粉々に砕けた。



王子は衝撃に押されるようにして後ろに数歩下がる。でも、その分私も踏み込む。

踏み込んで、アックスを振るう。一度ではなく数度・・・・・・いわゆる、乱撃。

その度に王子の鎧に傷が刻み込まれ、王子はたたらを踏む。それでも私は手を止めない。



そして10数度目の攻撃。私は王子の腹へアックスを右薙に叩き込んだ。叩き込んで、身を捻る。



時計回りに回転させて、王子を上空に打ち上げる。重い鎧を身に付けた王子の身体は、4メートル程浮き上がった。





「私と言う最強を」



そのまま私は・・・・・・意識を集中させる。右足に先程のアバランチアックスと同じ光が宿る。

光は私達に力をくれる。壊したいものを壊し、そうして今に未来を繋ぐための力を。



「その身に、刻み込みなさい」



私はそのまま背後に落下してくる王子に向かって・・・・・・右足で回し蹴りを打ち込んだ。



【「ビートスラップ」】





高く上げつつ打ち込んだ右足は、反撃のために拳を叩き込もうとしてた王子の左胴を的確に捉える。

鎧が小さな破片をばら撒きながらも私の攻撃に耐える。王子も歯をくいしばる。

だからもう少しだけ本気を出すことにした。・・・・・・鎧とせめぎ合う右足を包む光が、熱を帯びていく。



翠色の光は瞬間的に炎に変わり、王子を包む鎧を、その身体を焦がしていく。

聖なる破壊は、お兄様の『なりたい自分』と未来への可能性は、限界を打ち壊して進化し続ける。

それは別に特別な事なんかじゃない。誰の中にだってその力は眠ってる。



日奈森さんにも、王子にも、フェイトさん達にも・・・・・・誰の心の中にも眠ってるの。



・・・・・・翠色の炎の熱で、鎧が溶け始める。だから私は・・・・・・右足を振り切り、王子を叩き伏せる。





【「アクセル・エフェクトッ!!」】



燃え上がる翠色の炎は、鋭く斬撃のように王子を叩き斬る。

王子は炎に包まれ、そのまま吹き飛んだ。吹き飛んで・・・・・・近くの木に叩きつけられる。



「く、くそ・・・・・・イースター・・・・・・イースターの、敵が・・・・・・!!」



私は身体を若干伏せ気味にしながら、右足を地面に下ろす。



「・・・・・・罪を数えながら、待っていなさい」



焼き尽くされる絶望を見ずに、私はそのまま言い放つ。もちろん王子にではなく、あの連中に。



「私と言う破壊に、全てを砕かれる瞬間を」

「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」










後ろで爆発が起こる。翠色の炎が木や草を焼き尽くし、闇を焦がす。

王子の胸元の偽エンブリオは音を立てて粉々に砕け、そこから黒いエネルギーが放出される。

そのエネルギーもまた翠色の炎に焼き尽くされ、空に還る。





立ち上がり、その様子を振り返りながら見る。・・・・・・消えていく炎の中には、王子が倒れていた。

倒れていた王子の顔の前には、同じように王子のしゅごキャラが倒れている。もちろんしっかり浄化した。

私はその様子に一人胸の中で安堵の息を吐くと、アルトアイゼンを収納。というか、戻ってもらう。





空いた右手で、私は自分の髪を軽くかき上げた。かき上げて・・・・・・それから右手を上げる。





人差し指で高く指差すのは、天。私は右手で天を指差した。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



こうして、イースターの仕掛けてきた偽エンブリオ作戦は失敗に終わった。

シュライヤもシュライヤのしゅごキャラであるラミラも無事。で、山吹紗綾と取り巻き四人も、無事。

唯世達がパパっと浄化しちゃったからね。うん、ここは安心だった。ただ、僕は・・・・・・ねぇ。





中庭で、踞ってヘコんでた。うぅ、ごめん。さすがに女装状態はキツかったの。










「・・・・・・全く情けない。僕にあれだけ偉そうに言っておきながら、あの程度で崩れ落ちてるとは」

「シュライヤ、女装したことないからそう言えるんだよ。アレ、キツイんだよ?」

「あるぞ? 我が王国では、男性が祭りの時などに女装する事は珍しいことではない」

「嘘ぉっ!!」



い、異文化すげー! なんか普通に僕がダメなような気がしてきたんですけどっ!!



「だが恭文」

「何?」

「・・・・・・感謝する」



シュライヤはそれだけ言うと、両腕を組んでそっぽを向いた。

それを見て、僕達はなんだかおかしくなってニコニコ笑ってしまう。



「ううん、大丈夫。あのさ、シュライヤ」

「もう大丈夫だ。・・・・・・もう、大丈夫。お前とシオンの言葉、ちゃんと僕の心に伝わっている」

「そっか」



僕は、膝を抱えて踞っていた僕の側にずっと居たシオンを見る。・・・・・・というか、マジでシオンだ。

聖王教会のシスター服で、髪や瞳、喋り方に声まで同じだし。な、なんかやっぱり色々引っかかるな。



「お兄様、よかったですね」

「・・・・・・そうだね」



ただ、嬉しそうに微笑むシオンを見てると、それもあんま気にならなくなるから不思議。



「でもでも、ややビックリだよ。まさか翠色のたまごの方が先に生まれちゃうなんて」

「・・・・・・というか、あたしもびっくりだよ。キャラなりの時にしゅごキャラに身体乗っ取られるなんて」

「僕もビックリだよ。・・・・・・あぁ、シオンが生まれたのは嬉しいけど、やっぱりアレは嫌だー!!
てゆうか、アルカイックブレードは全然そんな事ないのに、どうしてー!?」



とにかく、僕達はずっと中庭に居るわけには行かない。ロイヤルガーデンの前へと移動を開始した。

到着した頃には、もう夕方になりかけ。なんというか・・・・・・あっと言う間だった。



「・・・・・・シュライヤ様っ!!」

「パールッ!!」

「あぁ、よかった。ご無事で・・・・・・本当にっ!!」



パールさんが、そう言いながらシュライヤに抱きついて・・・・・・あれ?

シュライヤがなんか真っ赤になってるし。あれれ?



「そ、その・・・・・・すまなかった。みんなに助けてもらった。だからその・・・・・・泣くな。僕はもう、大丈夫だ」

「ガウガウー!!」



あれ? なんか叫び声がする。・・・・・・というか、僕の脇から虎が走り抜けた。



「ジンジャー!? こら、お前は来るなっ! さすがに三人はムリだっ!!」

「ガウガウ・・・・・」

「あー、ジンジャー。シュライヤは後でならオーケーって言ってるんだよ?」



シュライヤに飛びかかろうとしてたジンジャーの頭を撫でて、慰める事にする。

・・・・・・でも、そういやジンジャー放置だったな。あれ、もしかしてマズかったかも。



「大丈夫。僕と遊んでたから」



言いながら、突然に僕の後ろに出てきたのは・・・・・・右手に猫じゃらしを持っている司さん。



「司さん、なぜここにっ!?」

「神出鬼没ですね。私でも気配が分かりませんでした」

「おや、新しい子が居るね。・・・・・・なるほど、君が蒼凪君のしゅごキャラかい?」

「そうです。私はシオン・・・・・・お兄様のしゅごキャラであり、天から選ばれし者です」



どんだけ唯我独尊っ!? そして、あの人みたいに天を指差すなー!!



「あははは、これは面白い子が出てきたね。あ、僕は天河司。
プラネタリウムの管理人で、ここの理事長で、小説家の『たまご』。よろしくね」

「はい、よろしくお願いします」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あむちん」

「うん、何かな。やや」

「シオン、キャラが濃いね」

「うん、そうだね。すっごい濃いよね」

「というか、ガチに俺様キャラでちよ? しかも女の子でち」



あぁ、そう言えば男の子から女の子のしゅごキャラが生まれるのって、あんま知らないかも。

あははは、なんかガーディアンメンバーが全員ビックリしてるんだけど、どうするこれ?



「もしかして恭文、あんな風になりたいのかしら」

「あー、それありえるねー。恭文、ちょっとヘタレなとこあるしー」

「むむむ、スゥは負けていられないのですぅ。というかというか、次こそ恭文さんとキャラなりを」

「スゥ、アンタまだそこいくのっ!? てゆうか、普通にあたしのしゅごキャラだってこと、忘れてるでしょっ!!」



だけど、そんな理論もスゥには通用しない。そして、あたし達がこんな事してる間に、話は進む。



「それでシュライヤ、これを」



そう言いながら、管理人さんはシュライヤに白い封筒を渡す。



「これは?」

「君の父上・・・・・・セミオラ国王から、その昔に頂いた手紙だよ。読んでみて?」

「え? ・・・・・・いやいや、なんで司さんがそれを持ってるんですか」

「あぁ、そう言えばみんなは知らなかったな。彼は僕の父上である、セミオラ国王の知人なんだ」

『えぇっ!?』



なんでも、管理人さんが昔してた旅の途中でシュライヤの国に寄った時、お世話になったらしい。

というか、仲良くなったとか。それで子どもの頃のシュライヤとも仲良くなったとか。



「・・・・・・管理人さん、なんか凄いんですね。あたし、感心しちゃいました」

「そんな事はないよ。僕は国王どうこうとは関係なく、あの方の人柄に惹かれただけだしね。それよりもシュライヤ、手紙を」

「あ、はい。ですが」

「大丈夫。君は、読んでおいた方がいいと思うから」










そう管理人さんに促されて、シュライヤは、手紙を開く。

開いて・・・・・・目を通す。ただ、それがいい内容なのはすぐに分かった。

シュライヤの瞳が、強く・・・・・・本当に強く、輝き出したから。




手紙の内容は分からないけど、それでも・・・・・・うん、分かった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



私は、少年時代の2年間を、聖夜学園で過ごしていた。その時、私はこう思っていた。

エンブリオを見つければ、国中の誰もが幸せになれると。

だが、エンブリオが見つからなかった時、私は気づいたのだ。





人々を幸せにするのは、エンブリオではない。

いつか国王になる・・・・・・私自身なのだと。そう気づいて、ここまで来た。

だが・・・・・・私はどうも、国王は務められても、父親としては失格かも知れない。





私は息子であるシュライヤに、嫌われているようだ。

本来であれば、フォローをした方がいいのかも知れないが・・・・・・それは、やめておくことにする。

私は、シュライヤには将来的には国王になって欲しいと思っている。そのために、厳しくもしている。





そして思う。いつか・・・・・・あぁ、そうだ。別に私の後を継がなくてもいい。

この勇気に溢れ、私とは違う強さを持った子が、自分の道を進んでくれたらと思う。

ただ単純に私の事が好きで、だから私の後を追うような事をして欲しくないのだ。





だから、私は嫌われるくらいでいいと思っている。私を理由に、この子には何も諦めて欲しくない。

・・・・・・そう思って、早数年。やはり、色々と考えてしまう。それは今も変わらない

国の民を守る事と、自分の息子の未来を縛らない道を探す事は、非常に難しい。





それも、同じくらいにだ。私は親として、国王として、色々と道を模索する毎日だったりする。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・皆の者、セレモニーに付き合ってくれ」

「シュライヤ、どうした?」

「頼む。・・・・・・知ってる者も居るだろうが、僕は来月即位式を迎え、正式な皇太子になる。
その前に、ここに居るみんなに決意表明をしたいと思う」



そう言って、シュライヤは瞳を閉じて、深く息を吸う。吸って、吐いて・・・・・・目を見開いた。



「ここに僕は宣言するっ! 僕は正式に皇太子になり・・・・・・将来、王になるっ!!
ただしそれは、決して父上のような王などではないっ! そんなものになりたいとは思わないっ!!」



そのシュライヤの言葉に、パールさんの表情が曇る。曇るけど、あたしは・・・・・・なんか笑ってしまった。

悪い意味じゃなくて、嬉しくて。シュライヤの目を見れば、これが悪い言葉じゃないってすぐ分かるから。



「僕は、強くたくましく・・・・・・勇気に溢れる王になるっ! それが、僕の目指す王の形っ!!
僕はそんな、誰にも真似出来ない、僕だけにしかなれない王に・・・・・・なってみせるっ!!」



・・・・・・なれるよ、シュライヤならきっと。だって、今のシュライヤ・・・・・・あたしから見ても、すっごくかっこいい。

シュライヤらしい、シュライヤにしかなれない王様に、あたしはきっとなれると思うよ。



「それで恭文と一緒にドラゴンを家来にして、冒険の旅に出るんだっ!!」

『えっ!?』

「シュライヤ、楽しみだね」

「そうだろそうだろ」

『あーははははははははははははっ!!』



いやいや、ちょっと待たないっ!? ほら、パールさんもラミラもなんだか呆れて頭抱えてるしっ!!

てゆうか、二人して楽しそうに笑うなー! あたし達置いてけぼりじゃんっ!!



「・・・・・・似たもの同士なんですね。ですが、楽しそうです」

「そうだね。それでシオン、片方はアンタの宿主・・・・・・って、アンタも同意見かいっ!!
・・・・・・あぁもう、なんにしても困った王子だよ。これ」

「王子?」



唯世君が、小さく呟いた。それで、全員の視線が唯世くんとあたしに集中。

し、しまったっ! てゆうか、唯世くんの頭の上に王冠がっ!!



「あーはははははははっ!!」



キャー! 唯世くんがキャラチェンジしちゃったしっ!! てゆうか、スタスタと前に歩いてシュライヤに立ちはだかったっ!?



「王は一人で充分っ! お前など、僕の家来で充分だっ!!」

「ふん、何をほざくかっ! 貴様こそ僕の家来になれっ!!」

「いいや、お前だっ!!」

「貴様だっ!!」

「「あーははははははははははははっ!!」」



あぁ、なんか二人がー! 二人が火花散らして衝突しまくってるー!! あぁ、これどうすればいいのー!?



「あははは、楽しそうだね。みんな仲が良くていいなぁ」

「そして管理人さんも納得するなぁぁぁぁぁぁっ! マジでツッコもうっ!? ここはマジでツッコんでいいからっ!!」










・・・・・・それから数日後、シュライヤは故郷に帰っていった。なお、パールさんとジンジャーも一緒に。

ジンジャー、恭文とリインちゃんに懐きまくって、離れるのが本当に大変だったけど・・・・・・それでも、お別れ。

恭文は学校を休んで空港まで見送りに行って、改めて約束したらしい。いつか一緒に、冒険の旅に出ることを。





それを話してる時の恭文、本当に楽しそうな顔してた。マジでドラゴンを家来にしてもいいんじゃないかって、ちょっと思った。





でも、シュライヤが王様になったら、シュライヤの国はどうなるのかな。なんだろ、それがちょっと楽しみ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・王子、国に招待してくれたんだ」

「うん。それでね、フェイト」



夜、シュライヤがパールさんとジンジャーと国に帰った日の事。僕は・・・・・・フェイトとお話。

添い寝して、手を繋いで身体をくっつけて・・・・・・ラブラブしてるの。うぅ、温かいよぉ。



「何?」

「・・・・・・魔法や年齢のこと、話しちゃった」

「えぇっ!?」



いや、なんか話の流れでこう・・・・・・ポロっとね。ただ、シュライヤは普通に受け入れてくれたけど。

むしろ次元世界に興味を示して、いつか僕と一緒に冒険してみたいってまた瞳をキラキラさせた。




「あははは、やっぱまずい?」

「・・・・・・基本的にはダメだけど、まぁ・・・・・・仕方ないか。一緒に冒険するって約束したんだよね」

「うん。その時は次元世界も視野に入れるの。僕もまだ行った事のない世界とかあるしさ」

「やっぱり冒険とかって好きなんだね」



僕は頷いて答える。それで・・・・・・握ってるフェイトの右手を親指で優しくさする。

フェイトは頬を染めて少しくすぐったそうに手を震わせるけど、それでも受け入れてくれる。



「うん。だからシオンが生まれたんだし」

「そうなの?」

「そうなの。・・・・・・シオンは、壊したいものを壊せる『魔法』を使える魔法使いなんだよ。
常識や柵、誰の中にでもある未知なる世界への好奇心や冒険心を戒めるものを叩き壊す魔法」



よくよく考えたら女装時のシオンの時は、僕は普段よりはっちゃけてるからなぁ。

もしかしてそこから一番そういうのに近い姿をイメージしたのかも。



「どこまでも自由に進み続けられる自分になりたいって気持ちから生まれたのが、シオンだと思うんだ」

「・・・・・・それなら、納得だよ。シオンに女装してる時の恭文、普段より暴走してるし」



・・・・・・全く同じことを考えたのは、普段から仲良しの証拠なのかなと思う事にする。



「でも、本当にビックリした。だって・・・・・・そのままだし」

「ティアナに至っては、気絶しかけたしね。てゆうか、ランスターさんってシオンが呼ぶ度に顔青くしてるんだけど、どうして?」

「さ、さぁ。どうしてだろ。・・・・・・それでね、ヤスフミ」

「なに?」

「そろそろ・・・・・・子作り、始めよう?」



・・・・・・あの、そんな顔真っ赤で息荒げで言うのやめて。てゆうか、マジでこれいいのかな。



「・・・・・・フェイト、本当にいいの? 仕事の事だってあるし」

「いいの。というかあの、ヤスフミとだから出来るんだよ?」

「うん、知ってる。僕も、フェイトとだから出来るの。・・・・・・でも、どうしよう。
これ以上頑張ったらフェイトは子どもが出来ても、毎日子作りしたくなっちゃうかも」



そうしたら、フェイトはすごくエッチな子だよね。

だって子作りのためにはコミュニケーションしなくちゃいけないんだし。



「そ、その・・・・・・そういう意地悪、禁止。あ、それなら大丈夫だよ?
妊娠中のコミュニケーションはどうすればいいのかっていう本を買ってるし」

「一体なに買ってるのっ!? というか、マジで毎日頑張るつもりかいっ! 僕はそういうつもりでは全く言ってないよっ!!」










・・・・・・なんて言いながらも、僕達は両手を繋いで、ゆっくりとキスをする。

それからフェイトといっぱい・・・・・・いっぱい、コミュニケーション。というか、子作り。

それと一緒に、互いに大好きって気持ちを伝え合うためだから、単純に気持ちいいってだけじゃない。





幸せで、温かい大切な時間。だから僕とフェイトも、二人揃って笑顔だったりする。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・それでは、ペンネーム・歩くノロイウサギさんからのリクエスト。
これを聴くと、子ども時代のあれこれを思い出すとの事です。曲は・・・・・・JAM Projectで、HERO』



朝の我が家のリビングから流れるのは、ラジオの音。あ、今は歌が流れ始めたね。



『・・・・・・どこかに置き忘れたまま、知らずに通り過ぎてった。とても大切なことを思い出したよ』



ママ、今日は朝から仕事忙しくなりそうだから、テンション上げるためにかけてるの。こういうの、かなり珍しい。

でも、あたしはそろそろ出る時間。だって、ウサギの餌やりの仕事があるの。もちろん、ガーディアンの業務。



「・・・・・・ごちそうさま。それじゃあ行ってきます」

「はい。行ってらっしゃい。・・・・・・あぁ、そうそうあむちゃん」

「何、ママ」

「荷物の準備、ちゃんと出来てる? ほら、もうすぐガーディアンのみんなと合宿だもの。
頑張ってね。夏休み中一緒なんだし、恭文君と仲良くなるチャンスはいくらでも」

「ママ、何度言ったら分かるのっ!? 恭文はちゃんと本命居るし、そういうんじゃないんだからっ!!」



あぁもう、マジで勘違いしまくってるってどういうことっ!? これ、絶対おかしいしっ!!



「・・・・・・許さない。パパは絶対許さないぞ。大体、夏休み中居ないなんて寂しいじゃないか。
そうだ、それにあの二股男にあむちゃんが汚されたら」

「あむちゃん、パパの事は気にしなくていいから。・・・・・・小学校最後の夏休みなんだもの。思いっ切り楽しんできていいからね」

「ママ・・・・・・あの、ありがと。あ、それじゃあ行ってきまーす」

「おねえちゃん、いってらっしゃーいっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



毎朝の恒例。私からの行ってらっしゃいのキスと、ヤスフミからの行ってきますのキス。

私の出来る、精一杯の事。その一つは、ヤスフミを毎朝こうやって送り出す事。

恋人同士で、家族で、大事な仲間だって事をいっぱい・・・・・・いっぱい、伝えるの。





それだけじゃなくて、今日はハグも追加。ヤスフミ、温かくて・・・・・・やっぱり、柔らかい。










「あの、フェイト? ・・・・・・もう、甘えんぼなんだから」



そのまま、ヤスフミは優しく抱き返してくれる。それが嬉しくて、いっぱいヤスフミの温かいのが欲しくなる。

でも、だめ。ヤスフミはこれからあむと一緒に、学校のウサギの餌やりなんだもの。なお、普段より30分ほど早めの出発。



「うん、甘えんぼだよ。・・・・・・ヤスフミのせいだよ。ヤスフミと付き合い出すようになってから、私こうなった。
私、自分がこんなに甘えんぼのヤキモチ焼きだなんて、思わなかったもの。うん、ヤスフミのせいだね」

「うー、僕のせいってのは違わない?」

「違わない。それじゃあ、甘えるのはここまでにして」



私は、名残惜しいけどヤスフミから身体を離す。・・・・・・帰って来てから、いっぱいまた甘えようっと。

今日、なんだかそんな気分なんだ。ヤスフミに、いっぱい甘えたい。甘えて、私の事独占して欲しい。



「ヤスフミ、行ってらっしゃい。気をつけてね」

「うん。行ってきます、フェイト。・・・・・・あ、帰ったらいっぱい甘えて欲しいな。甘えてくれるフェイト、可愛いし、僕も嬉しいし」

「・・・・・・うん」










もうすぐ、夏休み。ここに来てからは、もう5ヶ月が経過しようとしていた。

とっても濃厚で、楽しくて・・・・・・それで、色々な事を考える時間だった。

だけど、それはまだ続く。その間に私は、もっと・・・・・・もっと頑張ろうと思う。





ヤスフミやあむに、ガーディアンのみんなに負けないように、沢山・・・・・・沢山頑張って、キラキラに輝くんだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・お兄様、毎朝アレなんですか?」

「アレって?」

「その、フェイトさんとキス。それも、行ってきますのキスと、行ってらっしゃいのキスで二回」

「うん」



・・・・・・あれ、なんでシオンがちょっと呆れたような顔になるんだろ。おかしいなぁ。



”当然でしょ。というか、ここまでどうして自覚が0なんですか”

”お姉様、主様はきっとアレなの。フェイトさんだけ見過ぎて視野狭窄なの”

”あぁ、そうですね。まさしくその通りと言うような行動しかしてませんし”



なぜだろう、胸元と左手首の相棒までが不満そうだ。別に恋人として普通の行動なのになぁ。



「・・・・・・恭文ー!!」



なんて考えていると、後ろから声がかかる。そちらを見ると、小走りで走ってくる女の子。

ピンク色の髪で、当然のようにブレザーな制服。だけど、ゴスロリチックなアクセサリー付き。



「恭文さん、おはようですぅ」

「おはよう」

「おっはよー! 今日も元気してるー!?」



で、その周りにはキャンディーズ。スゥとミキとランの順である。

で、僕は軽く左手を上げて答える。



「うん、おはよ。なお、僕は全開バリバリよ?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・次のページが開かれるまでは、もうすぐそこだね」





本当にすぐそこだよ。あの子達がこれから先の事を超えられるかどうかは、まだ分からない。

強い光が生まれれば、そこに影も生まれる。そして影はその光が強ければ強い程濃くなるもの。

僕は理事長室から空を見上げる。空は青く・・・・・・燦々と照りつける太陽が、少しずつ昇っていく。



もうすぐ夏休み。理事長としては、生徒達が無事に夏休みを超えられる事を願うばかりだよ。





「でも、きっと大丈夫。可能性と言う名の星の輝きは、何時だって心の中にあるんだから」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あー、でもいい天気だね」

「そうだねー。てゆうか、なんか日差し強いし」

「もう夏だしね」



僕達は坂の上にある学校を目指していく。ゆっくりと・・・・・・だけど、確実に歩きながら。

そんな中感じるのは、朝方だけと強めの日差し。季節は、もう夏本番ですよ。



「・・・・・・こっち来た時は、まだ冬だったのに」



もう5ヶ月とかそれくらいですよ。なんかあっという間だよなぁ。

・・・・・・って、あむ。どうしたの? またそんな僕の顔をジッと見てさ。



「なんかさ、あっという間だったなーって思って」

「何が?」



聞かなくても分かるけど、僕は聞いた。聞いて・・・・・・あむは少しだけ笑いながら、空を見上げる。



「恭文とここで偶然会って」



そう、丁度僕達はあの時始めて会った場所の近くを通り過ぎていた。

だからあむが左側を見ながら、懐かしそうに言う。



「魔法の事とか知って、二階堂先生や歌唄の事があって、デンライナー乗って・・・・・・それで、月夜と会ったりして」

「・・・・・・うん」

「ホントに、あっという間。ね、恭文・・・・・・これからもよろしくね。これからもあたし達は仲間で、友達同士」

「またどうしたのよ」

「いいの。一応、なんか挨拶しときたかったの。ほら、ちゃんと返して」



僕は歩きながら空を見る。それから少し視点を落として、あむの方を見る。

あむは僕の方をジッと見ていた。だからちょっと照れくさくて・・・・・・こんな風に言ってしまう。



「うん、よろしく。魔法少女」

「・・・・・・ちょっと待てー! なんでまたそれっ!? 名前で呼んでよっ!!」

「いや、初心に帰ろうかなーと」

「帰らなくていいからっ! あぁもう、マジでムカつくしっ!!」



なんて頬を膨らませて言うので、それを笑いながら、僕は全速力で前に走った。

あむは当然追っかけてくる。なお、歩道なのであしからず。さすがに車道は危ない。



「こら待てー! 逃げるなー!!」

「逃げるなって言われて逃げない奴なんていないよっ!!」



言いながら、僕達はひたすらに全力で走る。走って、目指すは聖夜小。

朝から強くなってる日差しを背に受けつつ、僕達は・・・・・・ダッシュで走る。



「それでも逃げるなー! あたしの事を、ちゃんと名前で呼べー!!」










こうして偶然な出会いから始まった物語は、一応幕を閉じる。

でも、それは終わるわけじゃない。また次のステージに進むだけ。

ほら、一冊の本に出来るページ数にも限度ってあるでしょ? それと同じなのよ。





僕とフェイト、あむにガーディアンのみんなのドキドキな夢のたまごのお話は、これで一旦おしまい。

おしまいだけど、これは始まり。僕達が次のステージへとダッシュで走り出した証拠でもある。

だから・・・・・・この言葉でいい。この言葉できっと、今は未来に繋いでいけるから。





・・・・・・いつか、未来で。




















(とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご・・・・・・おしまい)





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あきゅろす。
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