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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第44話 『・・・・・・降臨、満を持して』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

ミキ「ドキッとスタートドキたまタイム。さて、本日のお話は」

ラン「前回ラストに出会ったみや子ちゃんのお話だよー。恭文とりまちゃんの特訓はどうなるのかな?」





(画像が立ち上がると、夕日に叫ぶあの子にツッコむあの人。そして、感動したり誰かを指差したりしている二人)





スゥ「恐らくは、ドキたま1のカオスな回になるかも知れないですぅ。というか、恭文さんもりまさんも暴走し過ぎですぅ」

ミキ「でも、誰も止められないんだよね。だって、暴走してるから」

ラン「二人とも、エンジンかかるとすごいしねー。というわけで、本日も一緒に」





(そんなワケで、お馴染みになったあのポーズ)





ラン・ミキ・スゥ『ドッキドキ♪』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「りまと恭文の・・・・・・お笑い道場っ! クスクスクスー!!」

「・・・・・・ごめん、ボクついていけないかも」

「あははははははははっ! おかしいおかしいー!!」

「とにかく、特訓スタートですぅ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いい? 日本の笑いの基本はツッコミっ! というわけで、ツッコミの素振り100本っ!!
お笑いはリズムとテンポが命っ! ビートを正確に身体に刻んでっ!!」

「同時に、手の動きのキレも鍛えるから一本一本集中してやりなさいっ! 始めっ!!」

「はいっ!! ・・・・・・なんでやねんっ! なんでやねんっ!!」



みや子ちゃんが必死に右手を動かして、ビュンビュンと空気を切り裂きながらツッコミを続ける。

あ、あの・・・・・・これはなに? おかしいなぁ、2年目決定で作者バカになったのかな。



「ほら、フェイトもやってっ!!」

「わ、私もっ!?」

「当然っ! とまとのメインヒロインで僕の永遠の嫁として、頑張っていかなきゃっ!!」

「あむもよっ! ドキたまのツッコミクイーンとして、ドキたま・だっしゅに向けたパワーアップは必要でしょっ!? ボーッとしないっ!!」

「誰がツッコミクイーンだってっ!? ・・・・・・あぁもう、分かったからその怖い目はなしっ!!」



とりあえず、フェイトさんを顔を見合わせて・・・・・・覚悟を決めた。



「「なんでやねん。なんでやねん」」

「「キレが甘いっ! もっと声を張ってっ!! 二人とも、お笑いをバカにしてるのっ!?」」

「「ごめんなさーいっ!!」」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「次は早口言葉っ! バスガス爆発バスガス爆発っ!!」

「バスガス爆発っ! バスガス爆発っ!!」


や、恭文とりまが何気に上手い。



「バスガス爆発っ! バスガス爆発っ!!」



みや子ちゃんも凄いスラスラっ!? え、次はあたしとフェイトさん・・・・・・嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!



「バスガス爆はふばふガスはうはう」



あたし、ボロボロだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!



「バスがつかくはつばすカス爆発」



フェイトさんもボロボロっ! でも、困ってる仕草がなんか反則的に可愛いんですけどっ!!



「あむ、ちゃんとやるっ! この程度出来なくてどうするのよっ!!」

「ごめんなさーいっ!!」

「フェイトも照れてごまかさないっ! 舞台の上ではそんなの通用しないよっ!?」

「あの、私は舞台に立つつもりないんだけどっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「次は、ボケの基本・・・・・・ズッコケよっ! 恭文っ!!」

「了解っ!! ・・・・・・ごめんくさーい」



ズルッ!!



「こりゃまたくさーい」



ペタンっ!!



「ガラスないー!!」

「なんでやねんっ! なんでそこで別の人のギャグになるんやっ!!」



別の人のなのっ!? てゆうか、みや子ちゃんがツッコんだっ!!



「・・・・・・みや子、合格よ。今、みや子のツッコミからあむがまた別のツッコミをした」



あたしの思考が読まれてるっ!?



「これを、超高等技術のツッコミの連鎖と言うの。ボケへのツッコミが実はボケだったというパターンね」

「お笑いの基本の一つは、テンポ。しっかりとしたテンポでボケとツッコミを成す事で、会場の温度は一気に上がる」

「はいっ! ・・・・・・やったぁ、神様から誉められてもうたー!!」



喜ぶみや子ちゃんをよそに、りまと恭文がフェイトさんの方を見る。そして・・・・・・力なく笑った。



「・・・・・・それでフェイトさん、もう・・・・・・いいわ。フェイトさんは、そのままが素敵だもの」

「りま、その冷たい目はやめてっ!? 何か突き刺さるのっ! 私の心に何かが突き刺さるのっ!!」

「フェイト、大丈夫だよ。僕は、何時だってそのままのフェイトが大好きだから」

「そう言いながらりまと同じ目をしてるのはどうしてっ!? 私、本当に疑問なんだけどっ!!」



こんなやり取りをしている間に、みや子ちゃんが身体を押さえる。・・・・・・どうしたの?



「練習とは言え、コケるのは辛いわぁ」

「・・・・・・バカ野郎っ!!」



バシィィィィィィィィッ!!



「「殴ったっ!?」」

「大丈夫、振りだけだから。コントとかではよく使われる動きね」

「そうそう、恭文も当ててないし、みや子ちゃんもちゃーんと当たった振りをしてるよー?」



いやいや、今『バシィィィィィィィィッ!!』って音がっ! これ、マジでどうなってんのっ!?



「・・・・・・い、いきなりなにするんですかっ!!」

「殴ってなぜ悪いっ!!」



基本悪いに決まってるじゃんっ! あと、それ聞きようによっては逆ギレじゃんっ!!



「いいっ!? 殴られるより殴る方が痛いんだよっ! スクールウォーズは名作なんだよっ!!
週間ジャンプはたまに土曜日に出るんだよっ! 魔王のロードが劇場版になったんだよっ!!」



ほとんど全く関係ない話してるしっ! コイツ、マジで今回どうしたっ!? いくらなんでもバカになり過ぎでしょっ!!



「その通りよ」



その通りじゃないからっ! りま、アンタも落ち着けー!! ツッコむべきところは沢山あるよっ!?

主に今回の話の、アンタ達の方向性のおかしさとかっ!!



「恭文が何の理由も無しに殴ったと本気で思ってるの?
甘えるのはやめなさい。あなたはもう、お笑いのロードへ踏み出してるのよ?」



二人は平然と、みや子ちゃんにより高いレベルを要求する。

・・・・・・今日、初対面なのに。初対面なのにこの息の合い方はおかしい。



「その痛みを受け入れろ。幸せだと感じろ。それは、お前が生きている証だ。
生きていなければ、痛みなんて感じないっ! そう、お前は今・・・・・・生きているんだっ!!」

「ヤスフミ、もっともらしい事言ってどうにかしようとするのやめないっ!? 絶対話がおかしいからっ!!」

「だから、乗り越えろっ! 痛みを乗り越えて、前に進めっ!!」

「無視しないでー!!」

「そしてその先に・・・・・・本当の笑いが生まれるのよっ! そう、芸人が痛みを乗り超えなければ、笑いなんて絶対に生まれないっ!!」



あたしとフェイトさんは置いてけぼりの状態だけど、みや子ちゃんには伝わったらしい。

恭文とりまの前に座り込んで・・・・・・涙を右の瞳から一滴、流す。



「心・・・・・・洗われました」

「「洗われたのっ!?」」

「分かればいいのよ。・・・・・・さぁ、最後はあの夕日に向かって走り込みよ」

「ちょうどシチュエーションもいいしね。ほら、砂浜だから」



そして、りまと恭文は夕日を指差す。・・・・・・え、砂浜? いやいや、ここ公園だし。

だけど、そんなの関係なく三人は走り出した。すっごい笑顔で、スローモーションで。



『あははははーーー! あはははははははーーーー!! あははははーーー! あはははははははーーーー!!』

「三人とも何してるのっ!? というか、それは走り込みじゃないよっ! 恋人同士が追いかけっこする時のアレだよっ!!」

「あぁもう、あたしワケ分からないしー!!」

「私もだよっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「結構駆け足だったけど、特訓は終了だよ」

「あくまでも少しだけど、あなたの原石は磨けたと思うわ。
あとはあなたの日々の精進次第。しっかりやりなさい」

「ありがとうございましたー!!」



・・・・・・いや、最後のは関係なくない?



「・・・・・・でも、凄い特訓やった」

「そうなのっ!? ・・・・・・あむ、ごめん。
ツッコミ全部任せていい? 私は正直ついて行けない」

「いやいや、あたしに任されても困りますってっ!!」



ま、まぁ・・・・・・みや子ちゃんは満足そうだし、いいのかなぁ。正直、効果の程は疑問だけど。



「そして、フェイトさん達もよくついて来てくれたわ。二人も合格よ」

「そうだね。僕とりまとみや子のボケにひたすらにツッコめてたし」

「二人とも、よう頑張ったなぁ。先生は嬉しいで」

「それは絶対違うよねっ! というか、なんでみや子ちゃんが先生になってるのかなっ!!」

「てゆうか、アンタ達落ち着けー! 色んな意味でここまでの描写は大問題だからっ!!」



とにもかくにも、特訓は終了。みや子ちゃんは自信を付けて、オーディションに挑む事になった。

当然のように、あたし達が見に行く収録と同じなので・・・・・・楽しみだなぁ。



「さぁ、最後にあの夕日に向かって叫びなさい」

「フェイトは僕の嫁だー!!」

「アホッ! アンタが叫んでどないすんねんっ!!」



パシッ!!



「・・・・・・みや子、成長したね。今のはいいツッコミだった。
的確に笑いを呼び起こすリズムだ。それを、絶対に忘れないで?」

「本当の最終試験、クリアね。おめでとう」

「おめでとう」



え、これ最終試験だったのっ!? あぁ、なんだかみや子ちゃんが感激した顔に・・・・・・!!



「神様ズ・・・・・・ありがとうございますっ!!」

「フェイトさん、三人ともすごく楽しそうですね」

「うん、そうだね。・・・・・・お笑いって、大変だね」

「はい、大変ですね」




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第44話 『・・・・・・降臨、満を持して』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



自室で勉強しつつ考え事。本日のお題は・・・・・・自分の進路の事。

・・・・・・私、マジでどうしようかな。執務官試験、受けるかどうかまだ迷ってる。

正直ね、後方支援専門になっちゃってるし、ここで離脱しても支障はないのよ。





でも・・・・・・友達、出来ちゃったんだ。それで思ってるんだ。

学校生活楽しいなって。うん、かなり思ってる。

今ここで離脱して局の仕事に戻ったら、多分一生こういう時間は過ごせない。





だから迷ってるの。執務官は、私と兄さんの叶えたい夢。

それでさ、フェイトさんの仕事を手伝ったり、この間みたいな事とかあるわけよ。

そういうのを超えると・・・・・・思うの。少しでも、悲しい事とか減らしたいなって。





まぁ、らしくないと思うからあんま言わないけどね。でも、学校生活をもっと送りたいと思うのも事実。





フェイトさんにも相談はした。上司でもあるし、私に試験を受けさせて欲しいって推薦してくれてる人でもあるから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そっか、迷っちゃったんだ」

「はい」



アイツがゼロの問題に対処していた頃。私はフェイトさんの部屋で、ちょっと相談中。

ベッドに二人で腰掛けながら、ゆっくりとお話。用件は・・・・・・私の進路問題。



「学校、楽しいの?」

「楽しい、ですね。友達・・・・・・出来たんです」





私と同級生の女の子二人で、淳とその幼馴染の陽子。

淳が黒髪ロングなおとなしめな感じで、陽子が若干赤の入ったショートカットの髪で元気ハツラツな感じ。

なお、陽子が陸上部で、短距離走の選手。淳が茶道部ね。



転校初期、女子にハブられかけていた私に声をかけてくれて・・・・・・それから、仲良し。



たまに帰りに寄り道して、お茶したりもする。まぁ、適度な感じでね。やっぱ中学生だし。





「私も、アイツと同じなんです」



アイツも最初はアレコレ言ってたけど、あむや唯世達と友達になって・・・・・・うん、それからかな。

学校生活を楽しむようになってきた。やっぱり、そういうのは人間関係が大きく左右するらしい。



「友達が出来て、こんな時間が楽しくて・・・・・・卒業出来たら、いいなって。・・・・・・なんだか、おかしいですよね」



うん、おかしい。だから私は、自嘲気味に笑う。本当に、おかしいから。



「魔法学校でもそういうのはあったはずなのに、それよりずっと楽しいなんて」

「そんなことないんじゃないかな。
だってティア・・・・・・子どもの頃は、ちょっと突っ張ってたんでしょ?」

「そう、ですね」

「だからじゃないかな。年齢の事があっても、その二人の事だったりクラスの事だったり・・・・・・きっと、学校が本当に好きになってきてるんだよ」



安心させるように、フェイトさんは優しく声をかけてくれる。

それで少しだけ・・・・・・凝り固まりかけたものが、ほぐれる感じがした。



「ティア、試験は延期も可能だし、もうちょっと考えてみた方がいいよ。
・・・・・・絶対に自分の夢を言い訳にするような選択は、だめ」

「言い訳、ですか?」



少しだけ胸を貫かれた。なんでだろうと考えて、気づく。私、それに覚えがあるからだ。



「うん。執務官になることは、ティアとお兄さんの夢で、絶対叶えなくちゃいけない。
だから寄り道なんて駄目・・・・・・なんて、少し失礼かも知れないけど、言い訳だと思う」



フェイトさんの言う事を、私はちょっと考えていた。だから、試験を受けて合格したいって思った。

もちろん、実際合格するかどうかは別問題よ? やっぱり難しい試験ではあるから。



「私もね、同じことを考えて・・・・・・その、ヤスフミと付き合う前に告白してきた人を振ったりとかしたの」



フェイトさんの言っている意味を考える。つまり・・・・・・仕事と、あとエリキャロかな。

それらがあるから、あなたとは恋愛出来ませんってこと? ・・・・・・うん、納得した。



「それだけじゃなくて、新しい趣味とか、遊びとか探して見つけようとしなかった。
うん、今は言い訳だったって反省してる。だからティア」

「・・・・・・今までの夢があるからなんて理由で、道を選ぶな・・・・・・ですよね」

「そうだよ。学校生活をせめて卒業するまで過ごしたいって思うのは、ティアの新しい夢なんじゃないかな。
ティアのこころの中に生まれた、まだ小さくて・・・・・・だけど、確実に存在している夢のたまご。だから、大事にして?」



右隣に腰掛けるフェイトさんが、真っ直ぐに私を見る。本当に・・・・・・真っ直ぐに。



「新しく生まれたティアの想いと夢を。どんなに迷ったっていいから、大事にして。
自分で自分の可能性を壊しちゃうような真似は、絶対にしないで。それだけ約束」

「・・・・・・はい。約束、します」

「うん、いい返事だ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうなのよね。フェイトさん、どこか嬉しそうな顔で・・・・・・『ティアがしたいようにしていいんだよ』って、認めてくれた。

それが嬉しかったり、申し訳なかったり・・・・・・私の、夢かぁ。

私にはこころのたまごがある。二階堂に奪われたりしたから、もうここは確定。それは執務官になる事。





それだけじゃなくて・・・・・・そう、なのかな。





学校生活をもう少しだけ、せめて卒業という区切りが付くまで過ごしたいと思うのは、私の・・・・・・夢なのかな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・サリ、やっさんまたてんこ盛り使ったんだって?」

「あぁ」





仕事終わり、家に帰る前にヒロと訓練タイム。まぁ、日課だな。

こういう日々の積み重ねが、戦闘者には大事なんだよ。

なお、場所は本局の訓練スペース。俺のツテでこんな立場でも借りられる。



そこを借りつつ、クールダウンしながらやっさんの話だ。もっと言うと、超・電王編についての話。





「全く、あのバカは・・・・・・使うなってシャマルさんからも相当言われてるんでしょ?」

「てーか、俺も言ってる。デザインも相当アレな上に、無茶過ぎだ」

「え? いやいや、デザインはかっこいいじゃないのさ。ほら、モモ達のてんこ盛り超えてるし」

「お前、さすがにやっさんのてんこ盛りはないぞっ!? 目が痛いし配色気持ち悪いしっ!!」



複数のユニゾンデバイスとの同時ユニゾン。それを可能とするのは、あのパスとカードの力。

だけど、それでもなんだ。てんこ盛りが無茶なフォームなのは変わらない。



「ね、前回使った時はどんな感じだった?」

「とりあえず、使用直後は最大魔力量が10%近く落ちてたな」



ただ、あくまでも一時的なもの。あの白髪が治ったらここはすぐに回復。

・・・・・・つーか、4%ダウンで止まった。そしてそれは、半年程で全快した。鬼退治の時も同様だ。



「てゆうかさ、フェイトちゃんとリインちゃんに言わなかったの、失敗だったんじゃないの?
やっさんのてんこ盛り、少しだけ後遺ダメージが残るフォームだって」

≪姉御、それを言っても仕方ねぇって。てゆうか、誰もこんな状況になるなんて考えてなかったんだしよ≫





・・・・・・そう、そうなんだよ。やっさんのてんこ盛りは、あまりに無茶過ぎてやっさんにダメージが残る。

使用直後のあり得ないほどの疲労と消耗。そして、リンカーコアへの甚大な負荷。

身体自体に痛みが残るとかはないが、魔力量とかにはそれなりの影響が残る。



もちろんちゃんとした生活をして、短いスパンでてんこ盛り連発とかしない限りは大丈夫だ。

現に、過去二回のダメージもそれできっちり回復してる。・・・・・・なお、やっさんはこの事を知ってる。

最初の時に、俺とシャマルさんとで話したからな。だけど、フェイトちゃんやリインちゃんは知らない。



俺達も、フェイトちゃん達には黙ってた。というか、話す事もないと思っていた。





≪本来、てんこ盛りの使用条件そのものが整わないんです。
だからこそ、我々も事を荒立てる必要が無いと思っていたのですが≫



そう、ここが理由なんだ。高町教導官のブラスターみたいに、本人の意志でバシバシ使えるならそりゃあ止める。

でも、やっさんはパスをオーナーに預けてあったし、咲耶も未来の時間の人間。だからまぁ・・・・・・大丈夫かなと。



「俺も同じくだ。でも、状況は変わった。やっさん達が鬼退治した時とも全く違ってきてる」

≪あぁ。ボーイは使おうと思えば、てんこ盛りが使える状況だ。
もう黙ってるってわけにはいかないぜ?≫



咲耶と恭太郎は一旦未来に戻ったそうだが・・・・・・って、当然だよな。

普通にありえねぇし。なんでそんなバカな事で、あんな騒ぎになるんだよ。



「ただ、唯一の救いはやっさんがもう今回のことで懲りて、てんこ盛りは完全封印するってことだな」

「あら、そうなんだ。なんで?」

「あむちゃんともう使わないと約束したらしい。その時に思いっ切り泣かれたとか。
で、それが神速使って倒れた時のフェイトちゃんの顔と、思いっ切り被ったとか」





それを聞いて、納得した。アレと被ったらそりゃあ無茶もしたくなくなるさ。

そういうのに頼らないでも、強くなる方がらしいとも言ってたな。

スペック勝負に走るのは、高町教導官みたいで嫌だとも言ってた。・・・・・・ブラスターの話だな。



そこは安心だった。言葉の端々から、本気でそう思っているのは伝わったから。





「なるほどねぇ。あむちゃんも、なんだかんだでやっさんとは気が合うみたいだし、いい友達してくれてるんだ」

「だな。あー、今度お礼言わないとな。俺らのバカな友達のストッパーしてくれてるんだしよ」

「そうだね。私からも礼をしないと」



・・・・・・うし、クールダウン終了っと。いやぁ、今日もドゥーエの作ってくれる夕飯が美味しいぞ。



「あ、それと」

「なんだ?」

「ほら、例の・・・・・・マリアージュだっけ? アレってどうなってんのよ」





超・電王編のせいで忘れているかも知れないが、現在本局はある事件を追っている。

それは、マリアージュと呼ばれる連続爆破殺人犯が起こしている事件。

狙われているのは、ロストロギアのブローカー。なお、表裏問わずだ。



その死因は主に二つ。爆破されるか、犯人に恫喝されたかは知らないが、普通に自分で喉をグサリ・・・・・・らしい。





「つい昨日の話だ。ヴァイゼンでもう1件起きたらしい。手口は全く同じ」





合計で11件。だけど、捜査はあまり進展していないらしい。

こりゃ、ミッドで起きる可能性がどんどん上がってきてるな。

ミッドは次元世界の中心。そして、次元世界の文化や流通の中心地でもある。



もちろん、ミッドみたいな中心地になっている世界は他にもある。

次元世界自体がかなりの広さ。現状では、ミッドだけではそれを成せない。

ただ結果的に、そういう場所には今回狙われてるようなブローカー連中も集まりやすい。



実際、7件もの事件が起きているヴァイゼンはその中心地世界だ。

この事からも、本局はそういった世界に事件の手が及ぶ事を予期している。

なので、ミッド地上や他世界の中央本部に対して、協力を要請している。



要するに、万が一の時にはってことだな。あとは、警告も込みだ。





≪捜査担当は、相当に手こずっているらしいですね。何しろ、あらかたの証拠が全部爆破されてますから≫





いくら魔法や科学が発達してるからって、それを使った捜査には限界がある。

相当な高熱で現場が爆破されてたら、さすがに調べにだって支障は出る。

そういうのも、捜査が進展しない理由の一つなんだよ。



爆破が魔力関係かそれとも燃料関係使ってるのか、はたまたその複合式なのかすら、分かってない。





≪そして、そのマリアージュってのもそれに大体巻き込まれてる・・・・・・だったよな≫

「そうだ。なのに、事件は11件も起きてる」



犯人であるマリアージュも、逃走せずに一緒に木っ端微塵になってるはずなんだよ。

だけど、どういうわけか次の事件は起きる。結局はそれの繰り返しだ。



「またまた、ホラーミステリーみたいな話になってるね。グラース、大丈夫なの?」

「さぁな。駄目なら、捜査人員増やすなりするだろ。そっちは上の仕事だ。
俺らが気にすることじゃないよ。・・・・・・俺らが気にするべきは、もっと他にあるだろ」

「・・・・・・あぁ、そうだね。もっと言うと、良太郎君レベルで運の悪いうちの弟弟子」

≪なぁ、二人揃って心配の仕方間違えてねぇか? ナンセンスだって。てゆうか、普通なら関わらないだろ。
ボーイ達はエンブリオやイースター専任で、他の事件捜査に回される事なんてあるわけがないしよ≫

≪その通りだ。だが、今までの蒼凪氏のアレコレを考えると・・・・・・その考えこそ、ナンセンスだ≫










・・・・・・・・・・・・そうだ。マジでやっさんが巻き込まれない事を祈ろう。きっと俺達にはそれくらいしか出来ない。

付き合いもそろそろ4年目に入るが、今までのパターン通りだと・・・・・・あり得るんだよなぁ。

まぁさ、別にアイツやフェイトちゃんやリインちゃんはいいんだよ。腕は立つし、経験もある。





ただ、今回の帰郷にはガーディアンのみんなも居る。その上、夏休み中ずっとこっちの予定。

言っておくが、やっさんの運の悪さに巻き込まれて欲しくないという意味じゃない。そこは、絶対違う。

別世界で過ごす初めての夏休みだぞ? こう、色々ドキドキな楽しい夏休みになるに決まってるんだぞ?





それなのに、こんな血生臭い事件に関わる? いち大人としては、さすがに笑えない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そして、公開収録当日ー!!」

「あむちゃんとりまにフェイトさんと恭文にボク達は、スタジオへやって来ました」

「なん、ですけどぉ・・・・・・うぅ、みや子ちゃん大丈夫でしょうかぁ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文とフェイトさんは、直接席の方に向かってるんだっけ」

「えぇ。来る直前にクロノさんって人から、連絡来ちゃったの」



クロノさん・・・・・・あぁ、恭文とフェイトさんのお兄さんだっけ。ということは、仕事絡みかなぁ。



「ミッドへの帰郷の予定の確認も含めて・・・・・・だって。
というか、空気読まないわよね。あむ、クロノさんってそういう人なの?」

「えっと、あたしも会った事ないからちょっと分からないなぁ」



でも、そうだよね。忘れがちだけど恭文もフェイトさんも、お仕事のためにこっちに居るんだよね。

この間のあれこれを見ると、かなり忘れがちだけど。・・・・・・恭文、人生楽しんでるよねぇ。



「それで『素人さん、いらっしゃい』の控え室は・・・・・・あ、ここだね。失礼しまーす」



中に入ると、着物にギターを装備している人とか、セーラ服に黒い学生服を着ているコンビとか・・・・・・うわ、凄いなぁ。

みんな芸人さんを目指してる感じなのかな。・・・・・・あ、奥で隅の方にみや子ちゃんが。



「みや子ちゃん」



あたしが声をかけると、座り込んで緊張気味に唸っていたみや子ちゃんがこちらを見る。そして、安心したように笑う。



「あ、あむ。それに神様その1。わざわざ来てくれたん?」

「うん。あ、フェイトさんと恭文も来てるんだよ」

「神様その2とフェイトさんもっ!? ・・・・・・うぅ、無様なところ見せられんなぁ」



・・・・・・すっかり二人を神様扱いって、いいの? てゆうか、もしかしてアレは一種の洗脳なんじゃ。



「バカね、私達の事は気にする必要ないわよ。あなたは、あなたの笑いを目指しなさい」

「・・・・・・神様っ!!」

「さぁ、あの夕日に向かって叫びなさいっ!!」

「太陽の、バッキャロー!!」



ちょっと待てー! まず夕日どこっ!? そして、ホントに叫んじゃだめだからっ!!



「それから、緊張を解すためにツッコミの素振りっ!!」

「はいっ! ・・・・・・なんでやねんなんでやねんっ!!」



・・・・・・いいのかな、これ。りままで一緒にやってるし。



「まぁ、みや子ちゃんは緊張がほぐれてるみたいだし、いいんじゃないの?」

「身体を動かすと、元気出てくるしねー」

「りまさんも楽しそうですし、大丈夫ですよぉ」

「・・・・・・そうだね」



あー、でも・・・・・・なんか凄いなぁ。これ、みや子ちゃんなりの現実との関わり方、なのかな。

笑って欲しいって気持ちを、夢を通すためにここに居る。・・・・・・あたしも、頑張んなきゃ。



「みなさん」



控え室のドアが開いた。すると、痩せ型の男の人とぽっちゃりした男の人が入ってきた。

・・・・・・あれ、この人達ってテレビで見たことあるような。番組に出る芸人さんかな。



「髭次郎先生が、みなさんにご挨拶したいとわざわざここまで足を運んで下さりました」

「みなさん、髭コールを」

「・・・・・・りま、髭コールってなに?」

「さぁ」

「「ひーげっ! ひーげっ!! ひーげっ! ひーげっ!!」」



とにかく、開いたドアから身体をくねくねさせて・・・・・・あ、髭次郎だ。



「みなさーん、今日は頑張ってねぇ?」



そう言った瞬間、髭次郎のカツラと髭が飛んで、見事につるつるな頭頂部と眉と口元が露出された。



「あらら、いやだー。髭が取れちゃったー♪」



・・・・・・・・・シーン。



「・・・・・・りま、アレなに?」



ごめん、何回かテレビで見た事あるけど、あたしは一回も笑ったことないや。てゆうか、マジつまんないし。



「寒いわ」



もちろん、本人には聞こえないように小声。だけど、出演者の人達も同感らしい。

さっきまでの期待と不安が入り交じった空気が、一瞬で冷たくなった。



「・・・・・・ほら、笑ってっ!!」



そう小声で言いながら、ノッポの人が『笑え』とカンペ・・・・・・いやいや、おかしくない?



『あーはははははははははっ!!』



てゆうか、カンペ出されたらみんな笑い出したっ!? これはもっとおかしくないっ!!



「・・・・・・ほら、君も笑ってっ!!」



そう言われたのは、みや子。みや子は、ずっと髭次郎を見て腕を組みながら『うーん』って唸ってた。

それを見て、髭次郎のお付きと思われる二人と髭次郎が怪訝な顔をする。



「えっと・・・・・・すみません。うちやったらもっとこう」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・髭次郎のギャグに笑わなかったっ!? てゆうか、ダメ出ししちゃったって・・・・・・マジかいっ!!」

「うん。てゆうか、このオーディションってあの人が審査員なんだよね」

「一応、大丈夫だって言って来たけど・・・・・・マズいかも」





僕とフェイトは、出る直前に空気を読まずにクロノさんから連絡が来た。

その対処のために少し遅れてしまったので、客席で席取りをしてた。

で、ちょっと落ち込んだ顔であむとりまが来た。控え室へ、みや子に会いに行ったらしい。



だけど、その時にちょっとした事件があった。その原因は、髭次郎。





”一応、ジガンにも説明しておきましょう。髭次郎とはベテラン芸人の一人ですね。
持ちネタは・・・・・・かくかくしかじかです”

”・・・・・・主様、お姉様、それは何が面白いの? ジガン、クスリともしなかったの”

”ジガン、いいセンスしてるね。昔は一世を風靡したけど、今となっては風化してるのよ”

”ハッキリ言えば、芸歴があるから仕事があると言う人ですね”



しかも、持ちネタがアレだけって言うのがなぁ。ごめん、僕もアレでは笑えない。

実際、控え室に激励に来た時も、お付きの二人が『笑え』とカンペを出したとか。



「ヤスフミ、私は今ひとつ分からないんだけど・・・・・・マズいの? だって、笑わなかっただけだよね」

「マズい。で、しかもダメ出ししちゃったんでしょ? 絶対マズい」





みや子、選りに選って髭次郎の持ちネタに『こうすれば面白くなる』と言おうとしたらしい。

・・・・・・失敗だった。普通にその辺りも教えた方がよかったかも。

もちろんみや子自身は悪気0だし良かれと思ってだろうけど、今回はダメだって。



なんか、誰かに似てる誰かに似てると思ってたんだけど、ようやく分かった。



あの子、空気の読めないところがスバルとかクロノさんにそっくりなのよ。





「ぶっちゃけ、みや子の行動はKYなのよ。みや子が悪いし空気を読んでないって言われたら、僕もその通りだと思う」



まぁ、これで相当無茶ぶりな事だったらそうなるのも分かるのよ。ただ、話を聞く限りそのレベルじゃない。

なので、フェイトとあむが『分からない』と言いたげな顔をしても、僕はこう言い切れるのだ。



「恭文、どうしてそうなるの? あたしも正直よく分からないよ」

「あのね、芸人志望のみや子にとっては、髭次郎が敬うべき先輩芸人なんだよ?」



残念ながら、芸人はただ面白いギャグをやるだけではだめなのだ。

まぁ、この辺りは一般社会でも通じる事なので、覚えておくように。



「そんな人がやったギャグに対して、公衆の面前でダメ出ししたらそれは失礼だって」



年功序列って、芸人の世界だと厳しいって聞く事がある。でも、それは当たり前の事でもあるのよ。

売れなくちゃ、年功そのものが積み重ねられない。つまり、芸歴が長くてある程度仕事があるってことは、凄いことなの。



「・・・・・・そういう意味なら、私も分かるよ。ようするに、髭次郎という人のプライドを傷つけたんだよね。
芸人を目指すのなら、後輩として先輩を立てる事はある程度は必要。それが、ここで言う空気を読む事」

「うん」



さすがに社会人で、執務官としてあっちこっちの人と顔つき合わせて捜査することもあるフェイトは、分かってくれた。

それでよ、今回の場合はそれほど無茶振りでもない。ただ、だからと言ってそこまでダメかって言うと、そうでもない。



「でもね、みや子はまだ子どもなんだよ? あむやりま・・・・・・僕と同じ小学生」

「うん、そうだね。子どものやった事なんだから、大人としては穏便に済ませてあげるのが普通だと私も思う」



言いながら左隣に座ったフェイトが、右手で頭を撫でてくれる。

フェイト、大丈夫だから。別に自分を小学生って言ったからって、ダメージ受けてないから。



「髭次郎がその場はともかく、こういうのを審査だったりに引かない人なら、大丈夫なんだけど」



これはさっきフェイトが言ったみたいに大目に見て、審査は審査できっちりやるってことだね。

ベテラン芸人で、相当高齢でもあるから・・・・・・あれ、なんかすっごい可能性が低い感じがするのはどうして?



「恭文、もし後に引いちゃったらどうなるの?」

「・・・・・・正直、みや子を落胆させたくなかったし、どうなるか分からなかったから言わなかったけど」



どうなるか気づいたのは、僕だけじゃなくてりまも同じらしい。視線をまだ誰もいない舞台の上に向けて、苦い顔をしている。



「ハッキリ言えば、現時点でオーディションの失格は決定よ。いいえ、それだけじゃないわ。
あの人に今後ずっと目を付けられて、みや子はオーディションに合格しないように手を回されるかも」

「そんな・・・・・・!!」

「あぁもう、失敗だった。審査員に先輩芸人が来る事は、番組見てて知ってたのに」

「今さらよ。とにかく・・・・・・始まるわよ」

『はーい、どうもー! 爆笑・ゲラゲラ劇場の公開収録へお越し下さって、ありがとうございまーすっ!!』





そして、一発目から『素人さん、いらっしゃーい』(動き付き)が始まった。

何人かの中々に面白い素人さんが出てきて、当然のように髭次郎が審査委員。

今のところ普通に審査してるけど・・・・・・油断は出来ない。



そしてついに、みや子の出番が来た。





「はーい、それでは次の挑戦者ですっ! なんと、小学五年生ではるばる大阪からやって来てくれましたっ!!」

「百獣の王、みや子ちゃんですっ!!」

「「張り切ってどうぞー!!」」



司会二人にそう紹介されて、みや子がトタトタと出てくる。というか、普通にマズい。

現時点で相当緊張しまくってる。見てて、動きが固いのが丸わかりだもの。



「あら、小学生なんて珍しいですねぇ」

「楽しみですね、先生」



髭次郎のお付きと思われる二人がネタをやり出そうとした所に、横槍を入れる。



「ほんと・・・・・・楽しみよねぇ」





・・・・・・どうやら、後に引くタイプらしい。うん、局の上層部とかにもこういうタイプ居るわ。

表面はともかく、根っこは実は陰険なの。自分に反抗する類に、権力使ってでも嫌がらせする。

まぁ、僕は局員でもないから、あまり関わらないけど。関わっても、適度に殺気ぶつけて黙らせてる。



てゆうか、僕の悪名が広がり過ぎててそれだけで止められる。・・・・・・どんだけ魔王扱いですか、僕。





「酷い。あんなこと言われたら、余計緊張しちゃうじゃん」

「・・・・・・ヤスフミ」



フェイトの言葉に頷いている間に、みや子が動く。だって、舞台はもう始まっているから。



「・・・・・・がおー! がおー!! サバンナの何処かから、助けを呼んでる声がするっ!!」



まずい、声がちゃんと出てない。練習の時と全然違う。



「百獣の王・・・・・・!!」



みや子は腕と身体を動かし、右手と左手を右側に向かって突き出す。



「みや子ちゃんっ!!」



・・・・・・その瞬間、会場が静まり返った。やばい、これはやばい。

僕達の席は少し後ろの方。だけど、そこからでもみや子の顔が明らかに動揺してるのが分かる。



「マズいわ。緊張し過ぎて、キレが甘くなってる」

「というか、あの髭次郎さんの視線を気にしてるみたいだよね」

「うん」



それでも、みや子は動く。いや、動こうとした。



「あぁ、もう良いわ。そんな学芸会みたいな芸を見せられても困るのよ」

「「おっしゃる通りっ!!」」





髭次郎がそんな事を言って、止めたけど。・・・・・・マジで権力行使かい。

初っ端滑ったからって、後で巻き返す事ならコントでは往々にしてある事なのに。

いや、あえてそうして後のボケやテンポを際立たせる手法も、無い事もない。



芸歴も何十年というレベルである髭次郎だって、そこは分かってるはず。なのに、つまらなそうな顔で止めたのだ。





「夏休み前の記念で来られても困るのよねぇ」

「違いますっ! うち、ほんまにお笑い芸人になりたいんですっ!!」

「・・・・・・お笑い芸人って、あなたが思ってるよりずっと大変なのよぉ?
というか、女の子ならもっといい夢があるでしょ。お嫁さんとか」



みや子は、その言葉に首を横に振って否定する。でも、暴力は続く。



「違いますっ! うちはお笑い芸人がいいんですっ!!」

「ケーキ屋さんとか」

「だから、うちは」

「バレリーナとか」



そう、これは暴力なのよ。みや子の夢を、願いを否定してる。でも、あのおっちゃんは気づかない。

会場の空気がどんどん悪くなって、自分に対しての視線が客とスタッフ含めて厳しくなるのに、全くだ。



「「おっしゃる通りっ!!」」



まぁ、それはお付きの二人も同じだね。てーか、バカ過ぎる。

あれだ、空気読み過ぎるとシンパになるんだね。てゆうか、なんか人間関係って難しい。



「違いますっ! うちは・・・・・・うちは・・・・・・!!」

「お花屋さんとか」

「お笑い芸人、一筋なんやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



みや子が髭次郎の言葉を否定し、遮るようにして叫ぶ。

そこで会場を襲うのは一瞬の沈黙。・・・・・・髭次郎が、ニヤリと笑った。



「あなた・・・・・・変な子ねぇ」





そう言われて、みや子の目が見開いた。瞳はと手は動揺と衝撃で揺れて・・・・・・瞳から涙が溢れる。

溢れて、そのまま舞台袖へ走り出した。なお、会場の空気は思いっ切り冷めてしまっている。

司会者二人も、ここから見える限りの袖やら客席横のスタッフも、ただただ呆然としてる。



髭次郎はなんだか楽しそうにニヤニヤしている。お付き二人も同様。

それが余計に、会場の空気を凍りつかせた。とりあえず、大体分かった。

ベテラン芸人髭次郎に、みや子をどうこう言う権利はない。



だって、あれの方がずっとKYだしっ! いくらなんでも空気読まな過ぎだっつーのっ!!





「え、えっと・・・・・・みや子ちゃん、ありがとうございましたー!!」

「それじゃあ、次のチャレンジャー・・・・・・どうぞっ!!」





司会者二人は前に出て、必死に番組を進行しようとするけど客は当然のようにノラない。

さっきまでの調子を取り戻してるのは、髭次郎だけ。あとはもう氷河期突入ですよ。

てーか、マジで最低だ。みや子だけじゃなくて、後に控える人間の事まで潰しやがった。



あんなの見せられた後ですぐに笑える人間なんて、居ないって。とりあえず、僕は無理。





「・・・・・・フェイト」

「うん、行こう」

「あ、あたし達もっ!!」

「当然よ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・みや子ちゃん、どこに行ったんだろうね」



まず舞台袖まで降りて、そこから大道具が置いてある区画に来た。

来たけど・・・・・・何もない。方向的にはこっちだと思うのに。



「・・・・・・みんな、大変っ!!」

「ラン、どうしたの?」

「×キャラの気配がするっ!!」

『はぁっ!?』



その瞬間、前方200メートルの地点の大道具が吹き飛んだ。

慌ててそちらを見ると・・・・・・黒いハリセンを持った×キャラが居た。



『ヘン・・・・・・ヘンっ!!』

「ヤスフミ、アレっ!!」



フェイトが指差した方向は、その×キャラの下。地面に崩れ落ち、虚ろな瞳のみや子が居る。

・・・・・・ああもう、考えるまでもない。みや子のこころのたまごが、×キャラ化したんだ。



「・・・・・・あむ、りま、いくよっ!!」

「うんっ!!」

「フェイトさん、悪いんだけど」

「分かってる。結界を張っておくから、思いっ切り暴れて」



あむはラン、りまはクスクスを見る。二人は頷いて、×キャラを見る。

つーわけで、いつものパンク行ってみよー!!



「恭文、ボクも」

「違いますぅ。修行の成果を試すために、スゥとですぅ」

「悪い、ちょっと今回は休みで。・・・・・・少し、基本に立ち返りたいの」



月夜戦で、色々反省してるのよ。なので、今回はキャラなりとユニゾンは無し。

・・・・・・って、駄目だ駄目だ。リインもリースも居ないんだから、ユニゾンは最初から無しでしょ。



「・・・・・・分かった」

「分かったですぅ」

「いや、あの・・・・・・もしもし? そんな隅っこで落ち込まないでよ」



別にもうキャラなりしないなんて、言ってないんだしさ。てーか、そこまで楽しみだったんかい。



「あたしのこころ・・・・・・!!」

「私のこころ・・・・・・!!」



そして、あむとりまは鍵を開けた。僕も、アルトを右手に持って続ける。



「「アンロックっ!!」」

「変身っ!!」

≪Riese Form≫





三人揃って、身体が光に包まれる。そして、今着ている服を解除。

あむはもうお馴染みなチアガール姿。りまは道化師の姿に変身。

で、僕も白いマントを羽織り、リーゼフォームに変身。



三つの光が弾ける。その中で僕達は、声をあげる。





【【「「キャラなり・・・・・・!!」」】】

「最初に言っておくっ!!」



僕は×キャラに指を差し、いつも通りにこの瞬間に・・・・・・強さを刻む。



【「アミュレットハートッ!!」】

【「クラウンドロップッ!!」】

「僕はかーなーりー・・・・・・強いっ!!」

≪その通りっ!! なの♪≫

『・・・・・・ヘンー!!』



×キャラがハリセンを振り上げる。すると、散弾のように黒い弾丸が降り注ぐ。

僕は左手をその弾丸達に向ける。りまも同じように対処を開始。自分の周囲に、ピンを生成。



「クレイモアッ!!」



前に踏み込みつつ、あむ達の盾になるようにクレイモアを掃射。

掃射されたクレイモアに弾丸が接触して、爆発する。続いてりまも動く。



「ジャグリング・パーティー!!」



残った弾丸は、ピンが全て撃墜。そのまま数本のピンは×キャラを追いかける。

×キャラは、区画の天井近くを飛び交いながらピンから逃走。



【あむちゃんっ! 私達もっ!!】

「分かってるっ! ハート」



あむは右手に例のロッドを出す。そう、もちろん名前は・・・・・・これ。



「ロッドッ!!」



回転しながら飛んでいくロッドも、×キャラを追いかける。

そして、それを見て×キャラが舌打ちした。



『ヘンヘンヘンヘンヘンーーーーー!!』





飛び交いながらも、黒いハリセンを振り回して弾丸を大量掃射。

ピンもそうだけど、僕達や周りのものに見境なしに撃ちまくる。

撃ちまくった結果、回転していたロッドを散弾が撃ち抜いた。



1発撃ち抜いて、回転が止まる。そこに追い打ちをかけるように数発連続命中。





「あぁ、ハートロッドがー!!」



そのまま、ロッドは滑るように床に落ちた。



『ヘンー♪』

【・・・・・・ねね、ヘンーって言いまくってるよ? なんでだろ】

【もしかして、髭次郎さんに『変』って言われた事を気にしてるからなのかな】



なるほど、だからこれか。てゆうか、なんかこっちを見て笑ってるし。

その笑いが、先程の超KY芸人に被ってくるから不思議だよね。



≪それは有り得ますね。×キャラは宿主の特性や心情を映す鏡でもありますから≫

≪うー、あのおじさんムカつくのー! あんなこと言われたら、みや子ちゃんが可哀想なのっ!!
ジガンだって、一生主様専用のメス犬になるって夢をあんな風に否定されたら、泣いちゃうのっ!!≫

「だったら泣いてくれるかなっ!? 僕としてはその夢は全力で否定したいんだっ!!」



言ってる間に、×キャラは錐揉み飛行なんて攻撃してるけど・・・・・・まずい、普通に近づいたら散弾の餌食だ。

かと言って、砲撃とかの攻撃もアウト。火力が出過ぎるもの。・・・・・・僕は、アルトを正眼に構えた。



『ヘンーヘンへンヘンー!!』

≪Flier Fin≫



足元に発生するのは、青色の翼。もうすぐ付き合いも10年目になろうとしている、高速飛行用の魔法。



「あむ、りま、突っ込むから・・・・・・サポート、お願い。そしてジガンはもう黙れ」

「分かった」

「任せて」

≪主様がひどいのー! ジガンが一体何をしたのっ!?≫





さて、ドMバカの発言はスルーして、集中しろ。・・・・・・斬ろうと思って斬れないものなんて、何もない。

僕が斬りたいのは×キャラ? 違う。僕が斬りたいのは、『なりたい自分』に付いた、×だ。



『ヘンヘンヘンヘンヘンヘンヘンヘンヘンッ!!』



可能性を、未来を壊す悲しい絶望。だから、それを斬る。そして、壊す。

自分が自分で信じられなくなる可能性なんて、壊して・・・・・・今を、覆す。



「・・・・・・変じゃないよっ!!」

『ヘンッ!?』



後ろから聞こえたその声に、僕とあむとりまがビックリして後ろを向く。というか、×キャラもそっちを見る。

そこには、真剣な目で×キャラを見るフェイトの姿があった。



「絶対変なんかじゃない。私ね、みや子ちゃんが羨ましいんだ。
だって、人を笑わせたいって言った時のみや子ちゃん、凄く輝いてた」

『ヘンッ!!』



×キャラは、ハリセンを振りかざして散弾をフェイトに向かって撒き散らす。



「フェイトさんっ!!」

「大丈夫っ!!」

≪Defensor≫



フェイトは防御魔法を自分の前面に展開。それにより攻撃を防いで、×キャラの弾丸を1発も通さない。



「・・・・・・どんな夢でも、その人の想いが詰まってるから輝く。
それを信じて、大事にしていくから輝けるんだよ。私は、そう思ってる」



防御魔法を展開しながら、フェイトは目を見開いて叫ぶ。

×キャラに、みや子のなりたい自分に伝わるように。



「絶対にあなたは変じゃないっ! 人の大事な夢を簡単に否定する人の方が、ずっとおかしいよっ!!
そんな人に、そんな言葉に負けたりしないでっ! そんな言葉に負けて、夢を捨てたりしちゃだめだよっ!!」

『・・・・・・ヘン』



どうやら、あむ達にサポートしてもらう必要はないらしい。



「ヤスフミっ!!」

「あいよっ!!」





僕はフライヤーフィンを羽ばたかせた。フィンが羽ばたくと、僕の周囲に青い羽根が舞い散る。

飛び立って、×キャラに向かって一直線に進む。×キャラは気づいて僕に対してハリセンを打ち込む。

・・・・・・アルトの刃を包むのは、青い魔力。疑わず、信じ抜く事で絶望すらも砕く力を有した力。



僕は、唐竹に刃を×キャラに向かってアルトを叩き込んだ。





「鉄輝」



生まれたのは青い閃光。ハリセンが振り抜かれる前に、斬撃は×キャラを斬り裂いた。



「一閃っ!!」



・・・・・・×キャラの額についている×が、真っ二つに斬り裂かれた。そして、砕けて塵に帰る。



『ヘ・・・・・・ヘンーーーーー!!』



×キャラは黒いたまごに包まれる。そして、そのたまごは白色へと変化した。

白い、こころのたまごの本来あるべき姿に。たまごは、ゆっくりと下に降りて行く。降りて行って、変化が起きた。



『・・・・・・おおきになー!!』



そのたまごがパカリと開いて、中から出てきたのは小さな女の子。

翡翠色の髪にショートカット。真ん中の前髪を、ゴムで一つ結びにして上げておでこを出してる。



『百獣の王・・・・・・みや子ちゃんっ!!』



みや子と同じようにライオンとしまうまのぬいぐるみを装着してる。だから、これなの。

でも、おのれはみや子ちゃんって名前じゃないと思うんだけど・・・・・・まぁ、いいか。



「あなたが、みや子ちゃんの『なりたい自分』?」

『そや。・・・・・・フェイトさん、ありがとなぁ。アンタがこの間会った時に言うてくれたこと、みや子はごっつ喜んでたんや』

「ううん。あの・・・・・・私も、あの人と同じなの」



フェイトは言いながら僕を見る。申し訳なさげな顔で、ジッと。



「大事な男の子の『なりたい自分』を、夢を私も勝手な理屈で・・・・・・否定、してたから。
きっと私の知る『普通』とは違うその子を、変だとさえ思ってた。だから、黙っていられなかったの」

『そっかぁ。でも、今はそういうわけとちゃうんやろ? なら、それでえぇやんか。
フェイトさん、結構先になるかも知れんのやけど、見ててなぁ。みや子はきっとすごい芸人になる』



その子はみや子の胸元まで行く。そして、嬉しそうな顔でみや子を見る。



『だって、みや子の人を『笑わせたい』思う気持ちが、うちを生んだんやから』

「うん、見てるよ。・・・・・・頑張ってね」

『ありがとなぁ。ほな、さいならー』



あの子は白いたまごに包まれて、みや子の胸元に吸い込まれた。

・・・・・・うし、浄化完了っと。僕も、フィンを羽ばたかせてそのまま着地。



「フェイト、サポートありがと」



それから、リーゼフォームの変身を解除。あむ達も、キャラなりを解除する。



「ううん。というか、ごめんね」

「大丈夫よ。てゆうか、フェイトが言ってなかったら僕が言ってた。
もしくは、話術サイド代表のあむが言ってた」

「そっか」



そして、フェイトは微笑んでくれる。嬉しそうに・・・・・・あぁ、幸せだなぁ。

うぅ、今さらだけどフェイトやっぱり可愛いよー。歩く萌え要素だよー。



”あ、それと・・・・・・僕、気にしてないって言わなかった?”



多分、嘱託試験の事や、フィアッセさんの一件の事だと思う。あと、局に入るのをずっと断ってた事とか。

付き合うようになってから、たまにそういう時の話になって謝られる事がある。だから・・・・・・すぐ分かった。



”それでもなの。ちゃんと覚えていたいんだ。
・・・・・・また同じことをしたくないというのが、一つ。あとは・・・・・・あのね”

”うん?”

”しゅごキャラのみんなや、たまご関連の事件に関わるようになってからかな。
今までの私、局の事とかで凝り固まってた部分あるなって・・・・・・思ってて”

”そっか。でも、今のフェイトはあのおっちゃんみたいなこと、全くしてないと思うよ?
うん、そこは絶対。フェイトの彼氏兼騎士が言うんだから、間違いない。ホントに、大丈夫だから”

”そうだったら、嬉しいな。あの・・・・・・ありがと”



さて、とりあえず解決か。・・・・・・あの髭次郎の事とかは、全く解決してないけどさ。



「・・・・・・いや、あの・・・・・・もしもし? あたし達の事忘れないで欲しいんですけど」

「あむ、無駄よ。ティアナさんが言ってたわ。二人は万年発情期だって」

【すっごいあまあまだよねー】

【というか、真面目にバカップルだよね・・・・・・】




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ん」



結界を解除してすぐ、みや子ちゃんが目を覚ました。覚まして、ゆっくりと起き上がる。



「うち、どうしたんやろ」

「ちょっと疲れて、眠っちゃってたみたいなんだ。調子はどう?」

「うん、絶好調やー! さっきまでのいやーな気分ももう無いしっ!!」



それを見て、私達は安心する。浄化、ちゃんと上手く行ってるみたいだから。

あー、でも・・・・・・うぅ、髭次郎さんを怒らせちゃったことは解決してないんだよね。どうしよう。



”Sir”

”どうしたの、バルディッシュ”

”会場に戻ってください。少々マズい事になっています”

”え?”



とにかく、みや子ちゃんを連れて会場の袖に戻る。戻って、私達が見たのは・・・・・・完全に冷め切った空気。

舞台袖のスタッフの人達はお手上げポーズで、素人さんいらっしゃいの出場者の人達は、何人も崩れ落ちてた。



「あーらら、髭取れちゃった〜♪」





そんな空気の中、繰り出されるギャグは・・・・・・ごめん、つまらないよ。

はやての年末にヤスフミとやる漫才の方が、数倍面白いもの。

そこに、すかさず出されるのはお付きと思われる人達のカンペ。



カンペには、当然のようにこう書かれている。『笑え』と。でも、誰も笑わない。





「あはははははははははははっ! 髭、髭取れちゃったー!!」



・・・・・・会場は静まりかえっている。ランちゃん以外笑ってないから。

ううん、髭次郎さんに冷たい視線を送り続けている。



「・・・・・・あ、アレ?」



・・・・・・シーン。



「・・・・・・あの、これってマズいんじゃ。てゆうか、どうしてこうなるの?」

「あむ、考えるまでもないわよ。みや子に対しての態度が原因に決まってるでしょ?
ダメ出しが完全にイビリモードだったから、客が白けちゃったのよ」



確かに、誰もちゃんと髭次郎さんの方を見てない。



「帰れー!!」

「お前つまんないんだよっ! 帰れ帰れー!!」

『帰れっ! 帰れっ!!』



というか、『帰れー!!』ってヤジまで飛び出してる。それを聞いて、髭次郎さんは困惑してる。



「・・・・・・なるほど、大体分かった。空気が悪いのを何とかしようとして、髭次郎が首突っ込んだのか」

「無謀ね」

「ヤスフミ、確かあの人って持ちネタあれだけだったよね」

「そうだよ。だからもう打つ手なしだね。まぁ、自業自得・・・・・・って、みや子どうした?」



みや子ちゃんが、周りをキョロキョロしている。キョロキョロした結果、上を見上げた。

私もその視線の先を追いかける。追いかけて・・・・・・・あ、ロープがある。



「よし、アレやっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ど、どうしてっ!? どうして私のギャグで誰も笑わないのっ! というか、帰れコールなんてひどいわー!!」

「先生、落ち着いてくださいっ! これは何かの間違いですからっ!!」

「そうですっ! お気を確かにっ!!」

「アァァァァァァァアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」



髭次郎さんも、カンペを出していた二人も、その声に周りを見渡す。

見渡して・・・・・・気づいた。ロープにぶら下がって飛び込んでくる女の子に。



「アァァァァァァァアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」



その子は一旦舞台の向かい側の袖に行くと、またこちらに戻ってきた。

そこで着地して、小走りしながらロープを持って・・・・・・あ、面白い。



「アーアアー・・・・・・って、走った方が早いっちゅうねんっ!!」



ロープを床に叩きつけるように投げ捨てて、みや子ちゃんは例のポーズを取る。



「百獣の王・・・・・・みや子ちゃんっ!!」



私、お笑いに関してはヤスフミやりまと違ってあまり詳しくない。ただ、それでも分かる。

今の動きはさっきとは全然違う。・・・・・・あ、これがキレとハジケっぷりなんだね。



「さっきからなにをボーッとしとんねんっ! そんなんじゃ、サバンナでは生きていかれへんでっ!?」

「な、何を言ってるのあなたっ! ここはサバンナじゃ」

「何を言うてんねんっ!!」



みや子ちゃんのライオンが、髭次郎さんの方を向く。というか、口をパクパクさせて威嚇してる。



「ここは、お笑いの舞台っちゅう名のサバンナやろうがっ!!」



じわじわみや子ちゃんは、髭次郎さんを威嚇しつつ詰め寄る。

それにベテラン芸人であるはずの髭次郎さんは、みや子ちゃんのプレッシャーに圧されて下がっていく。



「そんな事言う奴は・・・・・・こうやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



みや子ちゃんは叫びながら跳んだ。大きく跳び上がって、一気に髭次郎さんに向かって襲いかかる。



「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



その襲撃を髭次郎さんは避けて、みや子ちゃんは顔から床に激突。



「ガフっ!!」



一瞬だけ、場が静まり返る。静まりかえって・・・・・・私が助けに行こうと決めた時、みや子ちゃんが思いっ切り起き上がった。



「髭っ!!」



起き上がって、身体全体で弾けるようにしながら、見得を切る。それに、観客の視線が釘付けになる。

原因は、みや子ちゃんの口元。口元には、さっきまで存在していなかった物がある。



「付いちゃったっ!!」



それは、さっき髭次郎さんから取れちゃった髭。床に落ちていた髭が、みや子の口元に綺麗に装着されていた。

口元に・・・・・・髭、髭・・・・・・だ、だめっ! なんか・・・・・・おかしいっ!!



『あはははははははははははっ! あーははははははははははっ!!』



観客は大爆笑の渦に巻き込まれ、髭次郎さんは崩れ落ちる。そのまま、舞台の幕が降りた。

お、お腹痛い。髭・・・・・・髭が、付いて・・・・・・サバンナ・・・・・・だめ。



「フェ、フェイトさん笑い・・・・・・過ぎですって」

「そういうあむだって、笑ってるよね? だ、だめ。今回は我慢出来ない」

「あーははははははっ! おかしいおかしいっ!!」



・・・・・・ランちゃん、正直ランちゃんの笑いのツボが私もあむも分からないよ。

髭かな。もしかしなくても、髭がツボなのかな。



「ね、ヤスフミとりま的には今の何点くらいかな」



私とあむが、ヤスフミとりまを見ると・・・・・・二人は、涙を浮かべていた。

というか、感動モードで嬉しそうに微笑んでいた。



「「どうしてこれで感動モードッ!?」」

「素晴らしい、素晴らしいわっ! 一見ノープランで勢い任せで飛び込んだように見えるっ!! というか、見せるっ!!
だけど実際は違うっ! まず、ロープにぶら下がっての最初の飛び込みで、髭の位置を確認っ!!」

「途中のやり取りで間合いを詰めて、髭に向かってジャンプっ! 全部みや子の緻密な計算があっての芸だよっ!!
・・・・・・今、僕達は奇跡を見たっ! もう何も文句の付けようがないくらいだって、これっ!!」

「「そうなのっ!?」」

「「そうなのっ!!」」



とりあえず、こっちに満足そうに戻ってくるみや子ちゃんとそれを見て涙を流す二人はともかくとして、私は気になることがある。

それは髭次郎さん。崩れ落ちて、呆然としている。・・・・・・ウケなかったことが相当ショックだったみたい。



「どうして、どうしてなの。私のギャグがウケないなんて・・・・・・あんな子どもに負けるなんて」





その言葉を聞いて、ヤスフミがため息を吐いて踏み出す。それにりまが続く。

ヤスフミは左手、りまは右手を上げて、みや子ちゃんと手をパンと合わせる。

それから二人は、みや子ちゃんと入れ替わるようにして髭次郎さんに近づく。



なぜか、近づいていく二人にスポットライトが当たる。それに気づいた髭次郎さんが、二人を見る。



二人は立ち止まり、りまは右手、ヤスフミは左手を胸元まで上げる。





「「・・・・・・さぁ」」



それからりまは右手で、ヤスフミは左手で髭次郎さんを指差す。



「「お前の罪を数えろ」」あなたの罪を数えなさい



え、ここでそれ言っちゃうのっ!? というか、りま戻ってきてー! 絶対今回は別キャラみたいになってるからー!!



「あ、あなた達誰っ!!」

「お笑いは人を幸せにして、夢見る元気を与えるためのものだ。
誰かの夢を『変』だとあざ笑う人間の芸なんて、誰が見て笑う? 絶対に笑うわけがないね」



そして思いっ切り無視っ!? あぁ、ヤスフミが珍しくお説教モードに入ってるー!!



「みんなが笑わなかったのは当然だよ。全ての原因は、お前自身にある。
お前の人間としての底の浅さと、自らを磨くことを怠った事がそれ」



その言葉に、髭次郎さんがハッとしたようにみや子ちゃんを見る。



「それこそが、お前の数えるべき罪だ。・・・・・・まさか、僕に半殺しにされなきゃ数えられないなんてことはないよね?」



視線は次に、ヤスフミの方に移る。その表情が、呆然としたものに変わった。



「言うなれば自業自得よ。確かにあなたのギャグは一世を風靡したわ。でも、それだけ。
それに甘え、芸人としての可能性を殺し続けたあなたは、もう芸人としては終わっている」

「そ、そんな・・・・・・じゃあ、私は、私はどうすれば」

「本来なら見捨てるところだけど、今回は特別サービスで教えてあげるわ。
今までの芸がだめなら、新しい芸を生み出せばいいのよ」



あ、なるほど。というか、基本だよね。あれしか持ちネタが無いというのも、問題の一つなんだし。



「無理、無理よっ! 今さら新しいネタなんて、思いつくわけが」

「・・・・・・これを」



ヤスフミとりまは、それぞれの右手と左手を伸ばして髭次郎さんの顔に手を当てる。

そして、手を離すと・・・・・・そこにはつるつるだった眉に、毛が付いていた。



「アンタの今の芸がマイナスなら、目指すべき所はプラス。
落としたら上げる、上げたら落とすがお笑いの基本の一つ」

「今からあなたは・・・・・・眉次郎よっ!!」

『ま、眉次郎っ!?』



いやいや、ちょっと待とうよっ! それはもう完全にやっつけでアドバイスしてるよねっ!!



「・・・・・・か、神だわ」



・・・・・・えぇっ!?



「そうよ、神がここに降臨したんだわっ! あなた達は・・・・・・お笑いの神様だったのねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「そう、僕達は」

「二人で一人の」

「「お笑いの神様だよ(よ)」」

「神様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



そして、髭次郎さん改め眉次郎さんは、二人の足元でわんわん号泣。

だけど、私とあむは置いてけぼり。正直、これでいいのかどうか分からない。



「・・・・・・フェイトさん」

「あむ、なにかな」

「二人とも、楽しそうですね」

「うん、そうだね」



なお、眉次郎さんが今後の芸能界で生き残っていけるかどうかは・・・・・・ご想像にお任せします。

でもごめん、さすがに眉次郎では絶対無理だと思う。素人だけど、そこは分かるよ。



「神様ズ・・・・・・あぁ、感動や。どんな芸人にでも、救いを与える。
あの懐の深さが、神様足る所以なんやなぁ。やっぱり二人とも凄いわぁ」

「みや子ちゃん、しっかりしてっ!? ヤスフミもりまも、神様なんかじゃないからっ!!」

「そうだよっ! あの二人は完全に悪乗りして暴走しまくってるだけじゃんっ! 騙されたらだめだからっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、私達は特訓した公園まで戻った。というか、ここでみや子ちゃんとはお別れ。





おばさんの家に戻って、明日には大阪に帰るらしい。その間に、りまとアドレス交換なんてしてた。





もちろん、私とヤスフミとあむも同じく。うん、私達ファン1号だもの。










「あー、でもおもろかったー。やっぱ、人を笑わせるって最高やー」

「うん、みんな笑ってた。みや子ちゃん、すごいよ」

「えっと、あの・・・・・・ありがとうございます」





やっぱり、みや子ちゃんはキラキラしてる。・・・・・・私は、どうなのかな。やっぱり自信ない。

ただ、しゅごキャラのみんなを見てると、それぞれにあまり確固たる形ではないんだよね。

どこかふわふわしてて、あいまい。でも、それでいい。強い未来への可能性が、人を輝かせるから。



私も・・・・・・輝きたい。輝いて、人間として、女の子としてもっと素敵になりたい。新しい可能性を、もっと探していきたい。

新しい私を始めるんだって、ずっと前に決めたから。それで、あの・・・・・・うん、これが一番なのかな。

女の子として輝いて、ヤスフミに私を好きになり続けて欲しい。隣で笑ってるこの子の笑顔を、夢を守りたい。



・・・・・・これは、夢なのかな。かなりあやふやで、現実的とは言えないけど。

ううん、夢だよね。だって、私がさっき言ったことだもの。

ふわふわしてて、あいまいでもいいんだって。だから、これは夢。



私なりの、私の中から生まれた・・・・・・新しい可能性と、夢。大人だけど、それでも夢。





「・・・・・・フェイト、どうしたの? ボーッとしちゃって」

「ううん、なんでもないよ。ただ・・・・・・楽しいなって思って」

「そっか」





私、フェイト・T・ハラオウン。現在21歳。本局執務官で、二人の子どもの保護責任者。

隣に座って、私の右手を優しく握ってくれる男の子の恋人。それが私の全部じゃないけど、確かに私。

変わる事はもう恐れない。でも、変わらないものも大事にする。そうして、ゆっくり育ててみようと思う。



不思議なたまごやキャラ達と関わって、新しく生まれた私の夢と可能性を・・・・・・少しずつ。

私もいつかしゅごたまを産んだりするのかも。・・・・・・そう考えると楽しいな。

季節は初夏。もうちょっとで夏は本番。夕方の空には、一番星が輝いていた。



その星の輝きが、感じている温もりがなんだか嬉しくて私は・・・・・・みんなと一緒に沢山笑う。





「よし、それじゃあみんなであの夕日に向かって走り込みだっ! ほら、ちょうど砂浜あるしっ!!」

「「はぁっ!? どうしてそうなるのっ!!」」



あと、ここ公園だよっ!? 砂浜ないからっ! ヤスフミ本当に今回どうしちゃったのかなっ!!



「いいわね。いきましょうか」

「神様、お供させていただきますっ!!」



ヤスフミとりまとみや子ちゃんは、三人揃って公園を走り出した。もちろんあの走り方で。



『あははははははははっ! あははははははははははははははははははっ!!
あぁぁぁぁははははははははははっ! あははははははははははははははははっ!!』

「「だから、どうしてまた恋人同士の追いかけっこっぽい走り方っ!? というか、このオチは絶対おかしいからー!!」」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・りま」

「なに?」

「あむに、一応でもお礼出来てよかったね。転校して来てからのあれこれのさ」



みや子の事とかで完全お遊びモードってわけにもいかなかったけど、これでこれはよし。

あむもなんだかんだで収録楽しんでたしね。あー、でもハッピーエンドで終わってよかったよ。



「まぁね。てゆうか、ありがと。チケット取るの手伝ってくれて」



ベランダでお風呂上りにりまとジュースで乾杯。そのまま夜空を見上げる。



「いいよ別に。てゆうか、自分のついでなんだしさ」

「それもそうね。・・・・・・あのね、恭文」

「なに?」

「今の時間に帰って来てから、ママのところに電話したの」



パック式のオレンジジュースをストローで飲みつつ、りまは空を見上げながら言ってきた。



「・・・・・・何かあった?」

「大丈夫、ちゃんと冷静に話せたから。夏休みが終わってからになるけど・・・・・・一旦家に戻るって伝えた」

「そう。気持ち、固まったんだ」

「少しだけ。ただ、それまではここに居ていいかな」



僕はりまの頭に手を伸ばす。伸ばしてそっと撫でる。りまはそのまま受け入れる。



「いいよ。りまが居たいと思うなら、いくらでも居ていいから。
また家出したくなったら、何時でも来てくれていい。僕達がミッドに戻っても同じだよ?」

「・・・・・・ありがと」










空には・・・・・・あぁ、ちょっと曇っちゃってるな。でも、その切れ間から月の光と星が見え隠れする。





僕とりまは、ゆっくりとジュースを飲みながら静かに夜のひとときを過ごした。





静かに流れる平和な時間を、思いっ切り満喫しながら。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いやぁ、ようやく着いただぎゃあ」

「そうね。・・・・・・兄さん、大丈夫?」

「だ、大丈夫だ。やっぱり飛行機は慣れない」

「ルルやナナは平気なのに・・・・・・全くダメダメね」



イン、何気にキツイわね。ただ、兄さんはこういうところがちょっと可愛いと思えるから不思議。

とにかく、やって来たわ。・・・・・・ここに、あるのね。エンブリオが。



「それでルル、これからどうするつもりだ?」

「とりあえず、色々実験や準備もあるから本格稼働は9月からかしら」



まだまだ私とナナの能力、不安要素が多いのよね。もうちょっと細かいところを煮詰めておきたい。

イースターにはフランス支部を通してその旨は伝えてるし、時間はもらってるからここは大丈夫。



「兄さん、悪いけど」

「安心しろ。・・・・・・俺はただ、お前の力になるだけだ。お前のやりたいようにやればいい」

「ありがと」










・・・・・・・・・・・・さぁ、待ってなさいエンブリオ。





この私の願いのために、必ず見つけ出してみせるんだから。




















(第45話へ続く)




















おまけ:その後のちょっとした一幕




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『あーららっ! 眉が付いちゃったー!!』



・・・・・・・・・・・・まぁ、落ち着こうか。落ち着いていこうか。あれ、私は一体何を見たのかな。



「シャーリーさん、すごくつまらないです。なんですか、これ。どうして眉なんですか?」

「リース、私も分からないよ。なんでこれなんだろうね」

「・・・・・・くく」



私とリースは、顔を見合わせて聞こえてきたくぐもった声の方を見る。

そこには、腹を抱えて作画崩壊と言わんばかりに声を殺しながら笑うディードが居た。



「ま、眉・・・・・・眉・・・・・・!!」

「ディードさんっ!? あれ面白いんですかっ! もしかしなくてもあれ面白いんですかっ!!」

「あぁ、ディードの笑いのツボが分からないー! なぎ君、ここは絶対修正した方がいいよっ!!」




















(本当に続く)




















あとがき



恭文「さて、最後はなぞたま編の前振りですね。なお、ルルに関してはオリジナルでお兄さんが居ます」

あむ「・・・・・・いや、いいの?」

恭文「いいのよ。なお、月詠幾斗レベルで強いから。ワイヤーアクションとかナイフ攻撃とか、電撃攻撃とか顔に白い仮面付けてたりするから」

あむ「それ、ブッチギリでアレじゃんっ!! ・・・・・・というわけで、今回はすっごいカオスだったと思う日奈森あむと」

恭文「とっても楽しかった蒼凪恭文です。いやぁ、やっぱギャグ回っていいね。自重しなくていいから」





(青い古き鉄、普段から自重したことがあるだろうか。現・魔法少女は、とても疑問だった)





あむ「今回の話は、TVアニメの第一期にあった『第46話 りま降臨?笑いの神様!』が元になってます」

恭文「ほぼ元の通りなんだよね。眉次郎も当然のように・・・・・・いや、アレできっと大人気だね」

あむ「いや、その前にディードさんはなんとかしない? あれひどいでしょ」

恭文「ん? 別にいいじゃん。てゆうか、僕は嬉しいの」

あむ「いやいや、あれ嬉しいっておかしいって」

恭文「だって、ディードは元々感情を抑制する処置がされてたしさ」





(現・魔法少女、その話は知っていたので固まる)





恭文「だから、ディードがいっぱい笑ってくれると嬉しい。下手にこれはつまらないから笑うななんて、言いたくないし」

あむ「・・・・・・納得した。てゆうか、よく考えたら笑いのツボって人それぞれだしね。あんま言うのも違うか」

恭文「そういうことだよ。とにかく、今回は楽しかったよ。あむもでしょ?」

あむ「あたしとフェイトさんはずっとツッコんでばっかりだったけどね。
でも、なんだかんだでもうすぐ夏休みだよねぇ。このあとの話ってどうなるんだっけ」

恭文「えっと、次がオリジナルで1話やって、その後がリクエストが多かったあむの従姉妹のパティシエの話。
それから、こっちも前にリクエストが来ていたテレビ版36話と37話の黄金の王子の前後編だね」

あむ「それから、ミッドチルダ・X編かぁ。そして、なぎひことなのはさんが仲良くなるんだね」

恭文「そうだね。とりあえずアレだ、僕達は応援の姿勢を整えておこうか」

あむ「了解。・・・・・・というわけで、本日はここまで。お相手は日奈森あむと」

恭文「蒼凪恭文でした。それじゃあみんな、来週も百獣の王・みや子ちゃんをよろしく」

あむ「よろしくじゃないからっ! てゆうか、始まってないよねソレっ!!」










(でも、いつか始まるかも知れない。なんだかんだで二人はそう信じているのだった。
本日のED:真城りま(CV:矢作紗友里『いつかはロマンス』)




















なのは「というわけで、私達の出番ももうすぐだね」

なぎひこ「そうですね。僕はこの調子だと本当に最後に登場という感じですけど」

なのは「そこから、ドキたま・だっしゅ・・・・・・うーん、楽しみだなぁ」

なぎひこ「僕は色々不安ですけどね。僕の青いしゅごたまの生まれるタイミングとかも、変わるらしいので」

なのは「でも、きっと楽しくなるよ。というか、せっかくのミッド上陸なんだし、楽しんで欲しいな」

なぎひこ「・・・・・・そうですね。めいっぱい楽しむことにします」

サリエル「まぁ、そこの二人は置いておくとして、差し当たっては・・・・・・やっぱ、マリアージュか」

金剛≪主、やはりマリアージュというのは≫

サリエル「現段階ではまだ分からない。てか、なんで今頃『アレ』が出るんだ?
言い方は悪いが、この状況であんな不便なもんを持ち出して殺人やってる理由が分からねぇよ」

金剛≪それもそうですね。とりあえず、蒼凪氏・・・・・・いえ、ガーディアンの面々が巻き込まれない事を祈りましょう≫

サリエル「だな。今回に限ってはそこが重要だ。あむちゃん達には、楽しく夏休みを過ごして欲しいしよ」










(おしまい)





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あきゅろす。
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