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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース18 『ギンガ・ナカジマとの場合 アフター』



・・・・・・季節は3月に突入するかしないかという感じ。僕は、はやてから一日お休みをもらった。

とは言え、何をしたものかと色々考えた結果・・・・・・というより、どこからか話を聞きつけてきた人から誘われた。

だからこそ、僕はここに居る。そう・・・・・・ここは、ミッドにある海上レジャー施設・ラトゥーア。





海上に作られたアミューズメントパーク。ホテルなんかも併設してたりする。

なお、遊びに行くのは当然のように僕一人じゃない。待ち合わせしてるのよ。

でも、問題が一つ。・・・・・・早めに来てしまった。もっと言うと1時間くらい。





うぅ、色々ドキドキしてしまったのが原因だったりする。

とにかく、近くの喫茶店で時間でも潰そうと思ってると・・・・・・見えた。

青い長い髪の一部をリボンで結んだロングヘアーの女の子。





春先ということで、紺色の半そでジャケットに白のワンピースを着ている。ちょっと薄手。まぁ、今日は暖かいしね。





そして、僕の顔を見てびっくりしている。いや、多分僕も同じ顔だけど。だって・・・・・・ねぇ?










「や、恭文・・・・・・君っ!? なんでここにっ!!」

「いや、なんか早く来ちゃって。・・・・・・というか、ギンガさ」

「・・・・・・だめ」



膨れた表情で僕に顔を近づける。

というか・・・・・・近い、すごく近いからっ!!



「あの、バレンタインの時に・・・・・・決めたよね。確かに、私もちょっとだけ恥ずかしいけど。
あの・・・・・・・えっと、これからは恋人としての呼び方をしようって」

「あ、ごめん」

「謝らなくていいから、もう一回」

「・・・・・・ギンガ」










僕がそう言うと、ギンガが笑う。嬉しくて、幸せと言わんばかりの表情を僕に向ける。





・・・・・・僕、蒼凪恭文。目の前の女の子・・・・・・ギンガ・ナカジマと、なんとか恋人続けてます。





でも・・・・・・もう、ダメかも知れない。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先の事


ケース18 『ギンガ・ナカジマとの場合 アフター』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



しかし、恭文もすっかりギンガとラブラブやなぁ。電王の一件超えてからは特にそうや。





きっと、今日の休みも・・・・・・ふふふ、いやぁ今回こそ勝利者になるとえぇなぁ。





話聞いとると、どうもまたちゅーもしてないらしいから。










「・・・・・・八神部隊長、そういう情報はどこから仕入れてくるんですか?」

「ん? うちはギンガから色々相談受けとるもん」



恭文が奥手ちゅうか、ヘタレっちゅうか、二人っきりでラブラブな感じになるやろ?

でも、ハグはしてくれるけどそれ以上は手出してくれんーって、ちょっとプンプンやった。



「えー、いいなぁ。私は全く相談されないのに」





あー、よう考えたらなんでやろうなぁ。むしろ妹の方が相談しやすい思うのに。

もしくは、108でも居るやろ。お姉さま方が沢山。

・・・・・・でも、いくらなんでも一時間近く早く来るんはないやろ。



いや、うちらも同じやから、なーんも言えんけどなぁ。





「とにかくスバル」

「はい、八神部隊長」

「アンタ、お兄さん欲しいやろ?」

「はいっ! もうノーヴェやディエチにウェンディにチンクも恭文を『お兄さん』って呼ぶ練習始めてますからっ!!
父さんも『うちの娘はお前にやるっ!!』・・・・・・と泣きながらも言って送り出す準備は、万端だそうですっ!!」





おぉ、それは初耳や。そっか、ナカジマ三佐がその四人の保護責任者やる言う話やしな。

ギンガとそうなったら、恭文はみんなのお兄さんになるか。

・・・・・・つーか、ナカジマ三佐。そこまでギンガが心配ですか。



やっぱり、ここは・・・・・・アレよな。





「今日こそ恭文とギンガがR18コース歩けるように、うちらが影ながら応援しような」

「はいっ! 八神部隊長っ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ほら、ノーヴェも練習するっスよ。こういう所から二人の関係が進展していくっスから」

「うっせぇ。つーか、兄貴とかでいいじゃねぇか」

「却下っスっ! そんなの可愛くないっスよっ!!」

「呼び名に可愛さ求めてどうすんだよっ! じゃあそういうお前はどう呼ぶんだっ!?」

「・・・・・・えっと、兄リン♪」



その言葉に、全員がずっこけた。それはもう盛大に。



「・・・・・・ウェンディ、それは無いと思うな。普通にお兄ちゃんの方がいいって」

「じゃあ、そう言うディエチはなんて呼ぶっスか?」

「えっと、恭文兄さん・・・・・・とかかな」

「えー、普通でつまんないっスよー! もっとオリジナリティを出すっスっ!!」





とりあえず、あの赤髪はオリジナリティって言葉の意味を間違いなく吐き違えていると思う。

うん、間違いなくね。今度広辞苑を差し入れてやろうと、私は心に強く誓った。

まぁ、そこはともかく・・・ね、チンク。あの子達はなにしてるの?



いや、見れば分かるんだけど、それでも一応さ。





「すまない、ヒロリス殿。最近あの三人は恭文とギンガが結婚した時に備えて、兄としての呼び名を考える事に凝っていて」

≪・・・・・・そっか、やっぱりか。いや、分かってた。俺はすっげーわかってたよ≫

「普通にお父さんでいいと思うんだけどな」

「そうよね、普通にお父さんでいいと思うわ」



私の隣で平然とそう答えたのは、皆様お馴染み召還師親子。

なんつうか、普通に言い切って普通に紅茶飲んでる。



「ルールー、あとルールーのお母さん、それは絶対間違ってるぞ。
てか、もうそれやめてやれ。一回それで、ギンガがすごい不機嫌だったじゃないかよ」

「「嫌だ」」

「いやいやっ! 母子揃って即答っておかしいからなっ!? せめて即答はルールーだけにしてくれよっ!!」





しかし、やっさんとギンガちゃんが付き合うようになって・・・・・・世の中平和だよね。

トラブルも。電王がやってきた一件以外は特にないしさ。・・・・・・うん? 一夫多妻?

はて、なぜか無関係なサリがぼろぼろになった一件のことなんて私には覚えが無いね。



つーか、あんまりに双方の家族の暴走がひど過ぎて、正直忘れたい。



忘れていいことなんて何も無いって言うけど、アレはきっと忘れていいと思うもの。





「でさ、チンク」

「はい」

「アンタは、やっさんやギンガちゃんがまぁ・・・・・・義理とは言え姉とか兄になったら、なんて呼ぶ?」

「一応考えているんだが、やはり兄上とか姉上という形だと思う」





私よりずっと身長が低いけど、大人な眼帯少女は紅茶を飲みながらそんな話をする。

どこか嬉しそうに。そして、そんな日が来るのを待ち遠しくも思っている表情で。

でも、やっさんが兄上か。なんか、イメージとして合わないんだよね。



だって、アイツ今の今までギンガちゃんに手を出さないヘタレだし。





「ね、ヒロちゃん」

「なにさ」

「実は・・・・・・私相当相談されてるの。ギンガちゃん、かなり悩んでる。
どうして、自分にキスもしてくれないのかなーって」



なお、当然のようにキスをしないのは我が弟弟子であり、あのヘタレ外道なのは言うまでもないと思う。



「一応清いお試し期間的な交際かも知れないけど、それでも恋人は恋人なのにって」



・・・・・・あ、そりゃ初耳だ。私から見て上手くいってる感じなのに。



「多分なんだけど・・・・・・恭文くん、無意識にギンガちゃんに遠慮してるんじゃないかと思うの」

「遠慮?」

「ほら、恭文くんって元々フェイト執務官が好きだったわけじゃない? 今はお姉さん化してるけど」



そうだね、お姉さん化しつつあるよ。やっさんも、それはそれでいいかなーって顔してるし。



「でも、普通の恋愛とかと違って、友達で仲間で家族でもあるわけじゃない?
結果的に、好きって気持ちは形を変えて残ってるのよ」

「ルーお嬢様の母上、つまりそれは・・・・・・恭文がまだフェイトお嬢様のことを」

「あー、そこはわかんないわよ? ただ、どういうタイミングでそうなったらいいのか、恭文くんは分からないんじゃないかな。
さっきも言ったけど、一種のお試し期間的な清い交際ってことで入ったから、そこからどう本格的な感じに移行していいのか・・・・・・って」



やっさんはヘタレ外道ではあるけど、一応良識的な部分もある。まぁ、私に比べたらごく僅かだけど。

なので、そのごく僅かな部分でやっぱり迷いはあるのだ。



「フェイト執務官に対しての気持ち、もしかしたら残ってるかも知れないのに、そうなるのは本当にいいのか。
それは、ギンガちゃんの気持ちを傷つけることに、裏切ることになるんじゃないかーって考えてるんだと思う」



・・・・・・なんだろう、妙に納得してしまう。

この女は昔から色恋沙汰に妙に頭が回ってたから、妙に説得力がある。



「まぁ、やっさん一途だしねぇ。だからギンガちゃんだって『8年頑張る』なんて長い目標立ててるわけだし」

「そうなのよね、そこが恭文くんのいい所でもあるんだけど、同時に・・・・・・という所なの。あの子、普段はともかく、根はすごく優しい子だからさ。
新しい一歩を踏み出す時に、人の気持ちとかが絡んじゃうとちょっと迷っちゃうのよ。まぁアドバイスは送ったし、大丈夫だとは思うけどね」

「アドバイス?」

「うん。恭文くんの現地妻4号としては、本妻であるギンガちゃんとは幸せになって欲しいなーって思ってるから」










・・・・・・その言葉に、全員が突っ伏したのは気のせいじゃない。

ねぇ、やっさん。アンタ、ギンガちゃんとの関係進展の前に現地妻ズを潰した方がいいって。

なのはちゃんの幼馴染や美由希ちゃんも、なんだかんだで友達化したけど、未だに名乗ってるんでしょ? 





シャマルさんはもう不治の病も同じだけどさぁ。なんとかしようよ。いや、まじめな話よ。






















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・恭文君と付き合い始めて、もうすぐ三ヶ月目。

そんなに長い時間じゃないけど、密度は濃かったと思う。

だけど、私は不満がある。それもすごい大きな不満が。





それは・・・・・・恭文君が私に手を出してくれないこと。キスもしてくれない。

その、手をつないだり、ハグしたり・・・・・・一回だけだけど、添い寝した事はある。

もちろん、そういう事だけでも幸せだし、楽しい。でも、あの・・・・・・やっぱりちょっとだけ嫌。





私、自分に魅力が無いのかなとか、結構悩んだりした。

メガーヌさんは、そんなこと無いって言ってくれたけど。

とにかく、今日は頑張る。今日は・・・・・・大丈夫な日だから。





念のために『明るい家族計画』も持ってきてる。

私・・・・・・したい。エッチな事自体がどうこうってわけじゃない。

ただ、恭文君ともう少しだけ・・・・・・もう一歩だけ、関係を進展させたい。





心の繋がりも大事だけど、それと同じように身体も繋がりたい。

だって、ずっと私考えてるから。手を繋いだり、ハグ・・・・・・したり、それだけで私は幸せ。

だけど、私は贅沢だからそれだけじゃあちょっと足りない。





もっと深く・・・・・・強く、恭文君と繋がりたい。一つに・・・・・・なりたい。










「・・・・・・まさか、二人して朝早く起きて一時間近く待とうとしてたとは」

「そうだね、あの・・・・・・嬉しいような、恥ずかしいような」



二人で近くの喫茶店で紅茶を飲みつつ・・・・・・あ、これ結構美味しい。

そんなに期待してなかったんだけど、香りが立ってて落ち着く。



「でも、ありがと」

「なにが?」

「誘い、受けてくれて。私、すごく嬉しかった」

「そ、そんなに顔を赤らめて微笑みながら僕を見ないで? なんというか、辛いから。色々辛いから」



・・・・・・どうして? 別に恭文君、悪い事なにもしてないのに。



「あの、色々とあるの。うん、色々と」



よくは分からないけど、私はその言葉に納得することにした。



「最近、どうしてる? 私、忙しくてあんまり会えなかったし」

「うーん、メールした通りかな。普通に新技能の勉強してる」





恭文君は、前々から炎熱系と電撃系の魔力変換を練習してた。ただ、今までは使ってなかった。

なんでも、『チート』と言われると怖かったらしい。・・・・・・ねぇ、そこまで? これくらいは普通なのに。

だけど最近、みんなからせっかくなんだし何か新しいことを始めようと言われて、コレを課題にした。



・・・・・・・・・・・・あれ? 確か、執務官の勉強とかする予定だったんじゃ。





「なぎ君」



あ、また間違えた。・・・・・・うぅ、笑わないでっ!? 恭文君だって、間違えたよねっ!!



「恭文君、執務官の試験勉強とかは?」

「あー、やってない」

「えぇっ!?」



ちょ、ちょっと待ってっ! 前に執務官の資格を取る・・・・・・かどうかは、別って言ってたね。

でも、チャレンジするだけしてみたいってっ! それで、勉強するってっ!!



「なんか、心境の変化が起きたの。こう・・・・・・もうちょっと色々考えたいなぁと」

「色々?」

「うん、色々」





恭文君は、そのまままた紅茶を飲む。そして、天気の話をし出した。

どうやら、この話をここでするつもりはないらしい。態度からすぐに分かった。

だから、私も無理に聞かない事にする。聞いても、答えてくれないだろうから。



・・・・・・でも、楽しみだな。水着なんて着るの久しぶり・・・・・・あれ?





「ね、恭文君」

「なに?」



ど、どうしよう。聞いたら引かれるんじゃないかな。でも、聞かないとまずいし・・・・・・よし、頑張ろう。



「・・・・・・水着って、どういうの買えばいいの?」

「・・・・・・へ?」

「あの、私・・・・・・今思い出したの。プライベートで水着着るの・・・久しぶりで」



何時くらいぶりかと言うと、多分母さんが生きてた頃くらいぶり。それからは、海に行くとかなかった。

ちなみに何をしてたかというと、魔法の訓練や勉強に時間を費やしてた。



「ギンガ、それはなんて言うか、あの・・・・・・ねぇ? 枯れてるよ」

「い、いいのっ! 今日は着るんだからいいのっ!!」

「まぁ、ギンガならそんなに選択に悩まなくていいと思うけど」





なぎ君・・・・・・じゃなかった。や、や・・・・・・恭文君が・・・・・・うぅ、まだ慣れないよ。



ずっと『なぎ君』って呼んでたから、ついこの呼び方になるんだよね。恭文君もちょっとぎこちないし。



とにかく、恭文君が紅茶を一口飲んでから、そう言ってきた。・・・・・・そうなの?





「うん。・・・・・・ギンガさん、スタイルいいよね」





言われて、身体が熱くなる。・・・・・・確かに、いい方だとは思う。



胸も大きい方だし、腰だって鍛えてるから細いと思うし。



でも、負けてるのかな。恭文君にとっては・・・・・・フェイトさんに。





「だから、やっぱりビキニとか」

「は、恥ずかしいよ」

「だったら、レオタードタイプは? パレオなんか巻いてさ」



・・・・・・あぁ、それなら・・・・・・いやいや、ここはやっぱり頑張ってみようかな。具体的にはビキニ。

そ、その・・・・・・もしかしたらセックスアピールが足りないのかも知れないし。それで、ちょっとだけ誘惑してみよう。



「・・・・・・ビキニ、頑張る」

「あ、なんか腹が決まった顔を」

「そ、その・・・・・・恭文君が好きならいいかなって」

「なんでいきなり僕の好みの話っ!?」










・・・・・・いいの。今日は、その・・・・・・頑張っていく日なんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・そして、あっと言う間に夕方。うちらは、無駄に落ち込んでいるギンガを見ることになった。

原因? そんなもん恭文に決まってるやろ。なお、これには当然理由がある。

ギンガは頑張った。手を繋いだり、水着選びで時間をかけたり、プールに入ってる時も出来る限りくっついたり。





でも、あのアホが普段どおりやからや。もううちとスバルの目から見ても至って普通。胸がくっついたりしても、顔一つ赤らめん。





アイツ・・・・・・マジでちょおおかしいんやないか? そりゃあギンガかてヘコむで。










「・・・・・・恭文、ギン姉の何が不満なのっ!? ちょっと話を」

「したらあかんがなっ! うちらが尾行してた事がバレるやろっ!?」

「あ、そっか」





物陰から飛び出そうとしたバカの両肩を掴んで止める。

・・・・・・なぁ、この子マジで特救でやっていけるんか? ちょおうちは危機感を感じてるんやけど。

しかし・・・・・・スバルの言うことも分かる。おかげでなんや空気が悪いし。



ほら、空かてそれを察してかなんか暗・・・・・・い・・・・・・。





「・・・・・・なぁ、スバル」

「はい」

「雨、降ってきたな」

「というより、豪雨ですよ? 八神部隊長」





・・・・・・あれ、なんやうち、この状況にすっごく覚えがあるんやけど。

こう・・・・・・デジャヴというかなんというか。

そして、雨は激しく降りしきり、雷は鳴り響き、海は大荒れ。



外になんぞ出れん状況になった。で、タイミングよくアナウンス。





『ラトゥーアにお越しのお客様にご案内いたします。現在、突然の天候不良のため、レールウェイが運休となりました。
お客様には大変ご迷惑をおかけして、申し訳ありません。繰り返します。現在、突然の天候不良のため・・・』





このラトゥーアは、海の上にある。まぁ、いわゆる人工島や。

で、レールウェイがここと陸・・・・・・首都との主な交通手段になっとる。

一応車やバイクが通れる橋があるけど、うちらはそんなもんに乗ってきてへん。



恭文とギンガも同じや。つまるところ、うちらはこの孤島に閉じ込められた。





「や、八神部隊長。もしかして私達」

「帰れんようになった」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」










あ、ちょお待てよっ! つまり、恭文とギンガも帰れんのやないかっ!? うお、こりゃビックチャーンスっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「部屋、取れてよかったね」

「そ、そうだね」





・・・・・・恭文君、なんだか落ち着かない。いや、私もなんだけど。

だって私達、同じ部屋で泊まることになったから。だ、だって一部屋しか取れなかったから。

でも、この天気だから外の景色はともかく、綺麗で雰囲気のいい部屋だから。



このまま、雰囲気を良くして・・・・・・さっきまでの微妙な感じを一気に吹き飛ばそう。





「それじゃあギンガさん・・・・・・じゃなかった、ギンガ、また明日ね」



そう言って、恭文君が外に出て・・・・・・って、ちょっと待ってっ!!

私は恭文君の手を取って、引き止める。いつかと同じ状況。違うのは、私達の関係・・・・・・かな。



「どこ行くのっ!?」

「いや、ネットカフェに朝まで居ようかと」

「・・・・・・どうしてそうなるのかな」

「だってあの、二人っきりだし、一晩過ごすし」



・・・・・・うん、そうだね。過ごすね。でも、私が言いたいのはそういうことじゃない。そういうことじゃ、ない。

恭文君の手を握り締める。ギュって・・・・・・強く、握り締める。



「・・・・・・ねぇ、恭文君。私じゃ・・・・・・やっぱり、ダメなのかな」

「え?」

「8年頑張っても・・・・・・フェイトさんには、勝てないのかな」





私達は恋人同士で、一応一晩一緒に過ごした事も二回ある。



一度はオールでカラオケ、二回目は添い寝で、何にも無かったけど。



なのに、なんでこんな風に遠慮されるのかが分からない。私、悲しい・・・・・・すごく、悲しい。





「あの、どうしてそうなるの?」

「そうなるよっ! 恭文君、ずっと・・・・・・ずっと私と距離取ってるっ!!」





多分、バレンタインの頃から。どこかよそよそしくなった。さっきだってそうだ。

私、本当に、本当に恥ずかしかったけど、水着でくっついたりしたのに。

無反応で、どこか嫌がってる感じもして・・・・・・すごく、ショックだった。



もし私がフェイトさんだったら、そうならなかったんじゃないかって考えたら、余計にだよ。





「私に近づかないように、触れないようにってしてるっ! 心・・・・・・開いてくれないっ!!」



部屋の中で、今まで抑えてきた感情が爆発する。目から涙が溢れて・・・・・・口から声が漏れる。



「いや、取ってないから」

「取ってるよっ! 今日ずっと一緒に居てよくわかったっ!! ・・・・・・もういい。私、帰る」

「はいっ!? いやいや、この雨だから無理」

「それでも帰るっ! 今の・・・・・・今のなぎ君と居ても意味ないっ!! だから帰るのっ!!」



そのまま、私はドアへとすたすたと歩く。ドアノブに手をかけて開けようとした瞬間、声がした。



≪・・・・・・あー、ギンガさん、待ってください≫



アルトアイゼンの声だった。その声に、動きが止まる。でも、構わずに私は。



≪マスターがあなたの言うような状態だったのには、ちょっと理由があるんですよ≫



その言葉に、今度こそ完全に動きが止まった。・・・・・・理由?



「アルトっ!!」

≪もういいじゃないですか。あなただって、ギンガさんにこんな思いさせたくはないでしょ?
付き合うようになったのだって、惹かれてるからでしょ?≫

「そ、それは・・・・・・あの、確かにそうだけど」



振り帰ると、なぎ君がしどろもどろになっている。悲しげに、そこに立っていた。多分、今の私と同じ表情。

それを見て、頭が冷めた。あんなに噴出していたイライラが、あっという間に静まっていく。



「・・・・・・恭文君、理由ってなに?」

「あの、えっと」

「なに?」



そう言いながら、私はどんどん恭文君に近づいていく。



「やっぱりフェイトさんが好きなの? それなら・・・・・・それで仕方ないよ。
でも、だったらちゃんと言って欲しい。私、言ったよね?」



考えてくれるだけでも・・・その機会があるだけでも、すごく嬉しいって。うん、そう言ったよ。

確定した答えなんて、私は今はいらない。そういうのはこれから作っていくものだから。



「その、ダメなのはやっぱりショックだけど・・・でも、ちゃんと受け止めるから」

「あの、違うのっ! そうじゃなくて・・・・・・あの、その・・・・・・!!」

「・・・・・・イライラするっ! すごくイライラするっ!! 恭文君は男の子でしょっ!? だったらハッキリ言ってよっ!!」

「あぁもう分かったよっ! ・・・・・・勃たないんだよっ!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?



「だ、だからあの・・・・・・勃たないのっ! バレンタインの辺りから全然で・・・・・・全然なのっ!!」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・サリエルさん、恭文くんのEDはどう思います?」

「間違いなく精神的なものでしょ。他に考えられます?」





恭文くんに詳しく話を聞くと、どうもギンガちゃんと付き合うようになった頃から徐々にらしい。



それで、自分で本当におかしいと思うようになったのは、バレンタインにギンガちゃんと添い寝で一晩過ごしてから。



とてもドキドキしてるのに、その・・・男の子としての反応が全くない。





「で、今日に至るまで完全に活動休止状態・・・・・・と。
・・・・・・やっぱりフェイトちゃんの事、まだ完全には吹っ切れてないんでしょうね」

「そうですよね。恭文くん、無駄に一途ですから」



自分から選んだとは言え、ギンガちゃんとどこまで関係を進展させればいいのか色々悩んでた。

まぁ、あとは今後の進路の事とかよね。イマジンの一件以来、色々と思い悩む要因が増えたらしいの。



「ギンガちゃんは、いつそうなってもオーケーって雰囲気を出していたようですし」

「それに圧されに圧された挙句、自分で気づかないうちにその悩みが無駄にこんがらがって・・・・・・これと」





とりあえず、恭文くんにはギンガちゃんとそういうことをするのは余り意識しない。

普通の付き合いからしていくようにとは言ってる。あと、進路問題に関しても同じ。

時間をかけて、焦らなくていいとは言ったんだけど・・・・・・大丈夫かなぁ、今日のデート。



まぁ、天気がこれになっちゃったし、普通に解散という形にはなると思うから、問題ない・・・・・・はず。



あぁ、不安だわ。恭文くんに連絡を取りたいけど、どうなるかが分からなくて非常に怖いわ。





「でも、シャマル先生。ギンガちゃんにこの事話さなくていいんですか? 無関係ではないでしょ」

「うーん、そうすると今度はギンガちゃんが気にすると思うんですよ。自分じゃダメなのかなというのもあるんです。
そういう・・・・・・男の子としての機能に不具合が出るまでに思いつめさせたとか考えるかも知れないですし」

「なるほど、そりゃ道理ですね。なんつうか、あの二人はどうしてこう難しくなるんだ? おかしいでしょ」

「そうなんですよね。やっぱり、前途多難なのかなぁ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・それで、ギンガさんとこう、くっつくのとかって、正直に言うと辛かったの」



ベッドに腰掛けて、恭文君が俯きながら、ようやく教えてくれた。最近悩んでた事とか、考えてる事とか、色々。

そういうのが重なって、精神的な要因でその・・・・・・男性的機能が、働かなくなってるらしい。



「嫌とかじゃないの。ただ、心はどきどきして、すごく嬉しい。
なのに、身体が全く反応しなくて、それについていけなくて・・・・・・それが辛くて」

「・・・・・・だったらどうして、教えてくれなかったの?」

「教えたら、どう思ってた?」





・・・・・・きっと、私じゃやっぱりだめなのかなって考えてた。

フェイトさんなら、こうはならなかったんじゃないかなって悲しくなってた。

現に、そう考えてた。あと、恭文君のこと・・・・・・そんなに追い詰めてたのかなって。



沢山・・・・・・沢山・・・・・・後悔した。私、また気持ちを押し付けてたんだって。





「でも」

「でも?」

「それでも、教えて欲しかった。だって今の方が、ずっと後悔してるから」



私がそう言うと、恭文君は小さく『ごめん』とつぶやいた。それが、胸を貫く。

・・・・・・私は、恭文君を抱きしめる。



「ギンガさん」

「だめ」

「でも、僕」

「私、やっぱり・・・・・・恭文君と繋がりたいの。でも、ただエッチしたいとかそういうことじゃない」



抱きしめる力を強める。少しでも・・・・・・気持ちが伝わるように。

言葉だけじゃきっと足りないから。だから、こうする。



「お願い、そのために心の繋がりまで否定しないで? 何も出来なくても、ただ側に居るだけでも、幸せになれるから。
でもね、それにはちゃんと心が繋がってなくちゃだめなの。ちゃんと、私と心を繋げて欲しい。そうじゃなくちゃ・・・・・・嫌」

「・・・・・・いいの?」

「いいの」

「・・・・・・ありがと、ギンガ・・・・・・さん」



私は身体を離す。というか、押し倒す。だって、ちょっとカチンと来たから。



「・・・・・・呼び捨て」

「ギンガさんだって、さっきなぎ君って」

「あ、あれは・・・・・・その、ごめん」

「いいよ、僕も・・・・・・悪かったし。・・・・・・ギンガ」



その言葉で、胸が熱くなる。まだ・・・・・・恋人同士なんだと思えたから。

ど、どうしよう。さっきあぁ言ったけど・・・・・・あの、その。



「ね、恭文君」

「なに?」

「勃たないの治すの、協力したい」



その言葉に、恭文君が表情を曇らせる。私が何をしたいか分かったらしい。



「あのね、無理でもいいの。ただ・・・・・・今までよりも、ちょっとだけ深く繋がりたいんだ。どう、かな」

「ギンガ」

「だ、ダメだよね。ごめん、さっき言ったのは忘れて」

「いいよ」



・・・・・・・・・・・・え?



「でも、その・・・・・・本当にダメかも知れないし、中途半端なところで終わっちゃうかも知れないけど、いい?」

「・・・・・・うん、いいよ。それで、いい。
ありがと、勇気・・・・・・出してくれて。私ね、凄く嬉しいよ」










そのまま・・・・・・私は顔を近づける。恭文君は、それを見て瞳を閉じる。胸を支配するのは高鳴る鼓動。

耳に聞こえるくらいに激しい音が聞こえる。それでも、止まらない。

今よりも・・・・・・ほんの少しだけかも知れないけど、大好きな男の子と深く繋がれると思うと、嬉しいから。





そして、私達は・・・・・・互いに初めてのキスを、交わした。





でも、恭文君の唇がどこか怯えたように震えていたのが、少しだけ悲しかった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ごめん。無理みたい」

「謝らなくていいよ。うん、大丈夫。少しずつでいいから」

「うん・・・・・・」



・・・・・・まぁ、ここは仕方ないか。少しずつ、少しずつ克服していけばいいんだから。

それに、その・・・・・・いっぱい協力していけばいいんだし。うん、頑張ろう。



「ギンガ」

「なに?」

「・・・・・・僕、やっぱりダメかも」

「・・・・・・うん」



恭文君、落ち込んでる。というか、また負担・・・・・・かけちゃったよね。

メガーヌさんから色々教わったことを試したのに、さっぱりだった。



「ちゃんと、応えられない。無理、かも知れない」

「そうかも知れないね。・・・・・・ね、名前の呼び方戻そうか」

「え?」



もしかしたら、そういうのも負担をかけちゃった要因なのかも。

少しだけでも応えてくれたのが嬉しくて、それで・・・・・・頑張り過ぎちゃった。



「恋人なのはね、正直変えたくないの。私も、諦め切れないから。
でも、恋人としての呼び方はまだ早かったのかも。だから、前に戻す」

「でも、あの」

「お願い。・・・・・・私の事が嫌いになるまで、側に居させて欲しいの。
私、やっぱり納得出来ない。このままなんて、嫌だ。ごめん、なぎ君」



隣に居るなぎ君に手を伸ばして、抱き寄せる。・・・・・・うん、なぎ君でいいの。

今は、これでいい。これで・・・・・・いいから。



「ギンガ・・・・・・さん、どうして謝るの? 僕が悪いのに」

「なぎ君、悪くなんてないよ。私がわがままだから、悪いの」










・・・・・・・・・・・・告白したの、失敗だったなんて思ってない。

して、良かったと思ってる。気持ちを伝えられたから、ケジメを付けられたから。

でも、なぎ君にとっては・・・・・・違うのかな。やっぱり、戸惑わせちゃったのかな。





私がもっと魅力的だったら、なぎ君が余所見出来ないくらいに綺麗だったら、こんなこと・・・・・・なかったのかな。





もちろん、それだけじゃないって分かってるけど・・・・・・でも、やっぱり辛い。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ね、フェイトちゃん」

「なにかな」

「前に色々あった時、恭文君とどんな話したの?」



談話室で、久々に大親友と二人っきりで紅茶を飲みながら、その辺りを聞く。

フェイトちゃんは、少し恥ずかしげに答えてくれた。



「・・・・・・私の事、好きだって言われたんだ」

「そっか」



一応でも、ちゃんと告白は出来たんだね。・・・・・・そこは、ちょっと心配だったから、安心した。



「私、本当に謝り倒したよ。だって私、ずっとヤスフミの事傷つけてたわけだから。
だから、今はちょっと安心してるんだ。ギンガとも、上手くいってる感じらしいから」

「そうだね」



なお、私達はお泊りになった二人が色々と問題になってるのを知らなかった。

だからこそ、こんな呑気な話が出来たんだと思う。



「それでね、約束したんだ。ヤスフミ、夢とかそういうの探すって言ってた。
だから、私も探すの。今までの事だけじゃない、新しい夢とか可能性を」

「・・・・・・え、どういうこと?」

「キッカケは、この間の一夫多妻制事件。私、仕事やエリオとキャロの事、なのはやみんなの事だけになり過ぎてたのかなって。
だから、母さんやクロノ達に凄く心配をかけてた。それだけしか、自分の中に入れようとしなかった。もっと言うと、ワガママじゃなかった」





・・・・・・あぁ、耳が痛い。そういうのは、私にも言えることだもの。というか、恭文君から釘を刺されたの。

修行から帰ってきた時に、軽く。途中で海鳴に寄った時にも私の実家に顔出して、そこでお父さん達が漏らしてたらしいの。

仕事やヴィヴィオの事だけになり過ぎて、新しい出会いややりたい事を無意識に否定してるんじゃないのかって。



だから、私は今年20なのに恋人も片思いもなくて寂しい生活を送っている・・・・・・って、よく考えたらみんな失礼だよねっ!?





「私も、そういう感じなんだ」



フェイトちゃんに思考が読まれてるっ!?



「恋愛だけじゃなくて、新しい趣味とか仕事や子育て以外でチャレンジしてみたいこと。
ヤスフミがあれこれ模索してるのを見て、試しに自分で考えたの。そうしたら」

「そうしたら?」

「何も、思いつかなかったの。ヤスフミに試しに同じことを聞いてみたら、アレがしたいコレがしたいとか、言えるのに」





まず、私も知っている所から。旅をして色んなものを見てみたい。各地の名物料理を食べたり、綺麗な風景を見たりしたい。

あと、はやてちゃんと同人誌を出したいとか。なんか、前にそういう約束をしたらしい。なお、全年齢対象。

それとちょこっと関係した形で、旅に出て手記みたいなものを纏めて、本に出来たら面白いと話していた。



あ、それで今まであった事とか、出会った人達の事も、同じように冒険の手記みたいにしたいとか。





「読んでいる人がワクワクしたりドキドキしたり、知らない世界や知らない人達に想いを馳せて、旅に出たくなる。
そんな風に冒険や旅、誰かとの新しい出会いが好きになるような本を書けたら、楽しいかもって言ってたんだ」

「恭文君が・・・・・・本。な、なんか想像出来ないかも」

「ヤスフミも同じみたい。でもね、なんだか羨ましかったの。
その時のヤスフミの目、すごくキラキラしてたんだ」



フェイトちゃんからすると、本当に羨ましかったらしい。憧れているというか、そういう色が瞳の中に見える。



「でも、私は何も思いつかないんだ。。仕事や子育てがあって忙しいから無理だって言い訳して、考えることすら出来なかった。
無茶でも、今のところ現実味がなくても、ヤスフミみたいに瞳をキラキラ輝かせて言える夢って、私には・・・・・・無いの」

「でも、執務官の仕事は?」

「もちろん、それは私の夢。だけどね、本当にヤスフミの瞳・・・・・・輝いてたの。
私、自信ない。自分の仕事を、夢を語っている時にあんな風に輝ける自信がないの」



・・・・・・何も、言えなかった。だって、さっきから耳が痛いもの。そういう部分、私にもある気がする。

でも、言い訳なのかな? ううん、言い訳なんだよね。新しい事を探そうとするなら、これは言い訳なんだ。



「私ね、それが凄く怖い事に感じたんだ。もしも、仕事やエリオとキャロ、みんなの事が無かったら、どうなる?
そうなったら、私という人間は空っぽなんじゃないかって思った。自分の心から、何も生み出せないんじゃないかって」

「・・・・・・だから、探すの?」

「うん。なんだかね、少しずつでもいいから探してみたくなったんだ。ヤスフミのキラキラした瞳を見てたら、余計に。
私もあんな風になりたいの。・・・・・・もしかしたら、これが私の目指す『強くなる』という事なのかも知れないし」



少し恥ずかしげに、フェイトちゃんは笑う。その笑みを見て、私はなんかこう・・・・・・安心する。

ここ数年、こんなに自然で肩の力が抜けたフェイトちゃんの笑顔、見た覚えがないや。なんでだろ。




「ただね」

「うん?」

「なのはにも前に話したけどヤスフミ、やってみたいことを探すって、話してくれたことがあるんだ」

「うん、聞いてるよ。もっと言うと、夢だね。どういう仕事がしてみたいとか、そういう具体的なの。
それでフェイトちゃんの補佐官になって、執務官の資格取ってみたいって」

「うん、そう言ってくれた。それで、将来的には108でお手伝いするかどうか、考えてるんだ」



なんでも、あのコンサートの一件でそういう話になったらしい。

ただ、ここからはあまりいい話じゃないのは分かった。フェイトちゃんの表情が、重くなったから。



「それでギンガと色々話して、六課に戻ってからも考えて・・・・・・だけど」

「だけど?」

「どんなに考えても分からなくなったんだって。というよりね、ヤスフミがやりたい事に、どうしてもそぐわない。
それで、だったら何がしたいのかって聞いたんだ。そうしたらヤスフミ・・・・・・魔法使いになりたいって言ったの」

「魔法使い?」



フェイトちゃんが、私の言葉に頷く。・・・・・・え、ちょっと待って。魔導師とは違うのかな。

ううん、違うんだよね。だったら、ここで話すわけがないもの。



「これ、リインやヘイハチさん、アルトアイゼンにヴィータしか知らない話なの。
ほら、ヤスフミって魔導師になる前から、ヒーロー物とかそういうの大好きだったでしょ?」

「うん、好きだよね」



そういうの、キラキラした目で見てるもの。それは今でも変わらない。

私もみんなも、見てて微笑ましいの。恭文君の子どもな一面を、そこで見れるから。



「そういうヒーローみたいに、守りたいと思ったら迷わずに飛び込んで、全部守れる力が欲しい。・・・・・・もっと言うと、『魔法』。
そういう『魔法』が使える魔法使いになるのが、子どもの頃からずっと夢だったって・・・・・・ようやく教えてくれたの」

「そっか。それは確かに、ようやくだよね」



恭文君、誰が聞いてもずっとそういうの教えてくれなかったから。でも、ちょっと安心した。

恭文君にも、そういう夢があったから。それは・・・・・・本当に、安心。



「・・・・・・でも、フェイトちゃん」

「うん。無理、なんだよね。ヤスフミ自身もそれが分かってるみたいで、話してる時本当に辛そうだった。
ただね、私はなんだか納得出来たんだ。ヤスフミ、だから今までのアレコレなのかなって」



ようするに、ルール違反でもなんでもそんな魔法使いになりたいって気持ちから、無茶するってことだね。

泣いている誰かを見捨てて、見過ごす言い訳も、きっと恭文君の中の『魔法使い』は、テレビの中のヒーローはしないんだから。



「それでもギンガと付き合うようになってからは、現実の中でやれることを探そうとしてたの。
自分の夢というか、居場所に出来るところや、そういう仕事を探そうとしてた」

「それで、執務官」

「うん」





でも、きっと恭文君の夢は叶わない。だって、誰もそんな魔法は使えないから。

それなら現実の中で出来ることを、やれることを探すのが、正しいと私も思う。

子どもの頃の夢は、きっと子どもの頃の夢にしか過ぎないんだから。



今の自分の描く、現実に沿った大人としての夢が、きっと必要なんだと思う。





「でも、最近それで本当にいいのか、分からなくなったらしいの」

「それでいいのかって・・・・・・どうして? というか、いいに決まってるよ。
フェイトちゃん、それっていつの話? 少なくとも私の見た限りではそういうのは」

「本当に、昨日一昨日くらいかな。ちょっとお話した時に、聞き出したんだ。
なんだか、迷ってるというか戸惑っているというか、そういうの見えたから」



フェイトちゃんは困ったような戸惑うような顔で、紅茶の入った紙コップを両手で握る。

握って、視線を下に向ける。向けて・・・・・・コップの中の紅茶を力なく見る。



「そのきっかけは、良太郎さん達」

「良太郎さん達が? え、ちょっと待って。それがどうして・・・・・・あ」

「うん。良太郎さん達は、ハッキリ言えばテレビの中のヒーローでしょ?」

「つまり、恭文君の理想がそのまま形になって現実に存在してる?」





フェイトちゃんは、私の言葉に頷いた。頷いてくれたから、納得出来た。

だから、恭文君がまた迷い出した。良太郎さん達のような存在は、ちゃんと居るから。

現状では今までの夢を追いかけられなかっただけで、それがダメなわけじゃない。



そう、確かに『魔法使い』は現実に存在した。恭文君の夢は、叶わない物じゃなかった。

みんなは、私やフェイトちゃん達とは違う。組織のためや世界のために戦うとか、そういうのじゃない。

やらなきゃいけないと自分で思ったから、飛び込んで戦い、大切な時間を守る。



そう、まさしく正義の味方だ。・・・・・・そう、か。そうだったんだね。

恭文君が良太郎さん達が来て、あんなに嬉しそうだったの・・・・・・そこも理由なんだ。

恭文君にとって、良太郎さん達が夢の一つの形だとするなら、嬉しくならないわけがないんだ。





「本当に、少しずつだったらしいんだ。修行から戻ってきた時はまだ大丈夫だったの。
でも、時間が経つに連れて、六課での日常が進むに連れて・・・・・・少しずつ」

「疑問が強くなってきたんだね」

「ヤスフミはそう言ってた。私やギンガに言った事、決めた事は嘘じゃない。
でももしかしたらそれは、自分の夢から逃げて目を背けた結果なんじゃないかって」

「そんな・・・・・・!!」



そんなの、違うよ。逃げてないよ。ただ、夢をちゃんとした形にしようとしただけでしょ?

あやふやであいまいなのはダメだから、現実の形にしただけ。ただそれだけなのに。



「フェイトちゃんはどう答えたの?」

「・・・・・・とりあえず、今すぐ結論を出さないでもう少しだけゆっくりと、焦らずに考えてみようって言った」



まぁ、妥当な線だよね。ただ、私はもう少しハッキリ言ってもよかったんじゃないかなと思う。



「というか、何も言えなかったの。だって、本当にようやく話してくれたの。
ここで無理矢理に今までの方向に戻せば、ヤスフミにとっても私達にとっても、絶対いい事にはならない」

「それはそうだけど・・・・・・でもフェイトちゃん、恭文君は逃げてる部分があるのは間違いないよ。
私は、魔法使いになる夢を追いかける方が、本当の『夢』から目を背けてると思う」



私はそう思う。今まで考えてたみたいに、嘱託扱いでも執務官になればいい。その中に新しい夢と理想を見い出せばいい。

現に、私達はそうしてる。私は教導官の仕事に、フェイトちゃんは執務官の仕事の中に、夢と理想があるから。



「そう・・・・・・なのかな。でもなのは、良太郎さん達は現実だよ?」



そう言われて、私はちょっと固まってしまう。固まって、自分の思考に反省してしまう。

そう、その通りだ。良太郎さん達は、別にロストロギアの影響で実体化したとかじゃなかった。



「電王もデンライナーも、ゼロノスにゼロライナーも、本当にあった」



だから、なんだよね。現実に存在していて、逢おうとすれば会える存在だから、恭文君も迷う。

架空じゃないから。そこに有って、触れられて・・・・・・存在し続ける時間だから。



「それはそうだけど」



ただ、それでもやっぱり逃げなんじゃないのかな。恭文君の現実は、私達の世界の中なんだから。

現に、この世界の中にやってみたい事はあった。だったら、それでいいのに。



「うーん、それは少し困っちゃったね。フェイトちゃんも心配でしょ?」

「私は別にいいよ。でも、ヤスフミが相当戸惑ってるの。
本当に戸惑って、多分かなり混乱してる。力になりたいけど、多分なれない」



フェイトちゃんが、コップを握る力を強める。強めて、コップの形が少しだけ歪む。



「だって、私もどこかで否定してるの。そんなの、無理だって。
叶うわけが、叶えられるわけがないって否定してる。何も・・・・・・出来ないの」




中の紅茶が、琥珀色の波紋を立てて揺れる。まるで、今のフェイトちゃんの心みたいに。



「ヤスフミ、眠りかけていた夢がまた目を覚ましたから。正直ね、辛そうなの。
自分の夢が無茶なのは分かってる。でも、芽生えた気持ちはどうしても拭えない」

「・・・・・・そっか」










恭文君、どうして局・・・・・・ううん、ギンガとのあれこれで見えた夢じゃだめなの?

執務官になるのだって、きっと立派な夢だよ。それで108の手伝いをするのだって、同じ。

・・・・・・って、これは恭文君も分かってるか。だからきっと今、フェイトちゃんが言ったみたいに戸惑ってる。





あぁもう、どうしてゴタゴタしちゃうのかな。このまま最後まで、上手く行って欲しいのに。





六課が解散して、フェイトちゃんの補佐官になって色々勉強して、執務官になって・・・・・・それで、よかったのに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・デンライナー、乗って旅がしたいの?」

「うん。出来たらなぁって、考えてるの」

「もしかして、モモタロスさん達とまた会いたいとか」





互いにパジャマに着替えて、今はベッドの中。時刻は、夜の9時。

横たわりながら、なぎ君があるものを見る。それは、デンライナーのチケット。

ヘイハチさんがなぎ君に『買わせた』、無期限のチケット。なぎ君の大事な宝物の一つ。



これを見てると、野上さん達の事を思い出すらしい。そして、とても楽しそうな顔になる。



なぎ君、本当に電王・・・・・・ううん、ヒーロー物とかが好きらしいから、そのせいだね。





「それもある。でも、それだけじゃないよ?
なんというか、やっぱり旅って・・・・・・楽しいから」



楽しそうな顔で、キラキラとした瞳で、なぎ君が言葉を続ける。

それを見てると、私まで楽しい気持ちになってくるから不思議。



「時間の中を旅するなんて、チケットが無かったら絶対出来ないだろうし、やってみたいんだ」

「・・・・・・それもそうだね。そこは、私も同感」





なぎ君と一緒に修行のために旅をした時、本当に楽しかったから。

あれで、なぎ君が本当に旅や知らないものに触れるのが好きなのも分かった。

本当に好きなんだよね。なぎ君の目、観光してる時とかはずっとキラキラしてたもの。



もし本当にデンライナーで旅をしたら、あの楽しくて強い人達と一緒だったら、もっとキラキラするのかな。

・・・・・・ちょっと複雑だな。キラキラしてるなぎ君は見たいけど、旅をしてばっかりなのは不安。

うーん、色々考えちゃうよ。それはもうかなり。一応でも私達、その・・・・・・まだ恋人だから。





「・・・・・・なら、行って来るのも手なんじゃないかな」

「いいの?」

「もちろん、フェイトさん達とは要相談だよ。というか、あのね」

「うん?」



そっと、手を伸ばす。本当にすぐ近くだから、すぐに私の手は届く。

なぎ君の頬に優しくてを添えて、撫でる。・・・・・・すべすべで柔らかい。



「私も、行けるなら行きたいな」

「え? でも、仕事とか」

「だって、旅は楽しいもの。・・・・・・なぎ君と一緒だったら、もっと楽しいかなって思うんだ」

「ギンガさん・・・・・・」



戸惑うようななぎ君の視線を受け止めて、私は頷く。『大丈夫だよ』と、想いを込めて。

それが伝わったのか、なぎ君が安心したように笑う。それが、私も嬉しい。



「うん、旅・・・・・・してみたいな。なぎ君と一緒に、色んな所に行くの」

「例えば?」

「時間の中もいいけど、私・・・・・・地球にまた行ってみたいんだ。やっぱりご先祖様が生まれた世界だもの。
イギリスや日本も、ちょこっとだけではあるけど楽しかったから。うん、あっちこっち回ってみたい。ね、なぎ君は?」

「えっとね、行けるとこは全部行ってみたい。知らない世界も、知らない場所も、全部。
・・・・・・あぁ、また行ってみたいところはあるんだ。あのね、前にある世界で月面歩行したことがあるの」



月面? ・・・・・・あぁ、月の上を歩くってことだよね。

・・・・・・えぇっ!? げ、月面歩行って出来るものなのかなっ! というか、どうしてっ!!



「その世界、宇宙開発がすごく進んでるの。月面にコロニーなんて作っててさ」

「あ、だから月面歩行が出来たんだね。でもなぎ君、それって地球じゃないよね?」

「うん、別の世界。でも、あの時は感動したなぁ。無重力空間で、当然月面だからそこから宇宙空間とか、星が見えるの。それでねそれでね」





なぎ君は、楽しそうに話す。そこに居た月面ウサギという生物を見た時の事とかを、本当に楽しそうに。

・・・・・・なぎ君のこういう話をする時のキラキラとした目を見ると、前は不安が強かった。

どこかへ行っちゃいそうな感じがしたから。でも、今は少し違う。不安もまぁ・・・・・・少しある。



ただ、それよりもなぎ君が局の仕事に関わる時よりもずっと楽しそうなのが、私は嬉しい。

本当に旅が、知らない事や不思議な事が好きなのが分かる。・・・・・・だから、なんだよね。

だから、六課に居る時や仕事の時のなぎ君は、あんまりこういう部分がないのかも。



でも、だから私の身体の事も、普通に受け入れてくれた。

なぎ君は私が戦闘機人だからどうこうなんて、絶対言わない。

あぁ、そうだ。そんななぎ君だから、私は好きになったんだ。





普通と、自分と違うものに怖がらないで手を伸ばせるなぎ君だから、好きになった。





「でも、すごいね。・・・・・・私、それは見てみたいかも」

「じゃあ、行こうよ」



仕事の事とか、そういうのもある。だけど私は頷いていた。



「うん、必ず行こうね」



頷いて、私はなぎ君に笑いかける。思いっ切り、精一杯に。



「私・・・・・・ついて行くよ。なぎ君がどこまでも行きたいなら、どこまでだって」



少しでも、目の前の男の子の事を理解したいから。この子の見ているものを、知りたいから。

そうすれば、ちょっとだけでも近づいて、側に居られるようになるのかなって、そう思った。



「・・・・・・うん」



なぎ君が左手を伸ばす。伸ばして、私の頬を触る。

次は、髪。それから首筋に映る。・・・・・・ゆっくりと優しく撫でてくれる。



「だめ。そんなことしたら・・・・・・なぎ君の事、襲いたくなっちゃう」

「いいの、僕が撫でたいんだから。というか、ギンガさんにもっと触りたい」

「え?」

「だってさっき、いろんなとこ触ったでしょ?」



さっき・・・・・・あ、なぎ君とその・・・・・・愛撫というか、撫で合いっこをした時だね。



「ギンガさんの身体、凄く温かくて柔らかかった。だから」

「もっと触りたくなったの?」



なぎ君は、少し恥ずかしそうに首を縦に振った。・・・・・・性欲、なのかな。

ううん、それはいいんだよね。私に少しでも興味を持ってくれるなら、それだけでいい。



「なら、好きなように触っていいよ。どこでもいいし、どんな風にしてもいいから」

「えっと、それじゃあ」



言いながら、なぎ君が見るのは・・・・・・私の胸。視線を受けているのを感じて、身体が熱くなる。

でも、私は頷いた。なぎ君はそれを見て、少し身体を寄せる。それから・・・・・・私の胸に、両手で触れた。



「・・・・・・なんか、安心する触り心地。特にギンガさんの、大きくてフカフカしてるから」

「そう、よかった」



なぎ君にパジャマの上から優しく撫でられ、たまに揉まれたり・・・・・・その感触が嬉しい。

愛撫というより、子どもに甘えられてる感じ。私は両手を広げて、そのままなぎ君を抱きしめる。



「でも、結構大変なんだよ? 真下とか見えない時もあるし、肩がこる時もあるし」

「そっか。じゃあ、あんまこういうこと言うのもだめかも」

「いいよ。なぎ君が私の胸が好きなら、嬉しい」



服ごしからでも、なぎ君の手の温かさが伝わる。・・・・・・なぎ君の手、普通の人より温かいの。

だから、目をつぶってる時に身体に触れられてても、熱でなぎ君だって分かる。



「でも、あんまりエッチな揉み方はしないでね? これくらいなら大丈夫なんだけど」

「はい? いやいや、どうして」

「・・・・・・興奮してきちゃうの」



し、しかたないでしょっ!? 私だって性欲ってあるんだからっ!!

好きな子に触られて、興奮しないわけないよっ! うぅ、恥ずかしいよー!!



「なぎ君は、どう?」

「・・・・・・僕、かなり来るかも。勃つとかはないんだけど」

「そんな申し訳なさげにしなくていいよ。大丈夫だから」

「というかね、辛いの。その、そうならないから一人でも出来ないし」



あ、そっか。そういうのって大きくならないとダメなんだよね。

・・・・・・やっぱり、早めに何とかしてあげたいな。なぎ君、きっと辛いハズだし。



「うー、バイアグラとか使った方がいいのかな。これはまずいのかも」

「バイアグラ? なにそれ」



そして、なぎ君から聞いた。バイアグラというのは、勃起剤に該当するものだと。

ようするに、男の子の・・・・・・その、あそこを薬の効果で勃起させて、エッチ出来るようにするの。



「そ、そういうのはシャマル先生に頼ろうよ。ほら、個人的判断で導入するとダメだと思うし」

「それもそうだね。・・・・・・ギンガさん、なんというかごめん」

「謝ったりしなくていいよ? というよりね、なぎ君」

「何?」

「やっぱり、そういうのを吐き出せないのって辛いんだよね」



なぎ君は、頷いた。指先が止まらないのは、その反動のせいなのかも。



「なら、私も今後は今日みたいに協力していく。
・・・・・・なぎ君が辛いの、見てられないんだ」

「あの、えっと・・・・・・ありがと。・・・・・・でも、いいの?」

「うん、それでいいよ。だって私、なぎ君の彼女なんだから」










そこまで言うと、なぎ君が安心したような、申し訳なさそうな顔で笑った。

私も同じように笑って・・・・・・そのまま、唇を重ねた。

もう、なぎ君の唇は震えてなかった。そのままいっぱい、求めてくれる。





それが嬉しくて、なんだか涙が出そうになってしまった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして翌朝、私達はラトゥーアから脱出する事が出来た。

なお、天気は快晴。もう雲ひとつない青空。私もなぎ君も、すごくホッとした。

そして、チェックアウトして、手を繋いで・・・・・・玄関を目指す。





結局、予定通りにはいかなかったけど・・・・・・いいのかな。





なぎ君と、もっと仲良くなるという目的は、果たせたんだし。










「・・・・・・ギンガさん」

「うん」

「僕、旅とかして・・・・・・いいのかな」



なぎ君が、歩きながら俯く。それを見て、私は首を傾げる。



「自分の居場所というか、夢というか、現実の中でそういうの探すって決めたのに」

「・・・・・・いいに決まってるよ」



だから私は、繋いでいた左手を握り締める。なぎ君の手の温もりが、より強く伝わる。



「夢って、執務官や仕事の事だけじゃなくていいんだよ。
旅に出て、色んなものを見る事だって、なぎ君の大切な夢なんだから」

「・・・・・・いいの?」

「うん。むしろ、怒るよ? 私との事や、仕事の事を言い訳に今までの夢を諦めたら。
だって私、まだなぎ君と月面歩行もしてないし、月面ウサギも見てない」



少し膨れて、なぎ君をジッと見ながら言うと、なぎ君が笑った。安心したように、優しく。

瞳はキラキラ。昨日の楽しそうななぎ君のまま、笑ってくれてる。それが凄く・・・・・・嬉しい。



「そうだね。だったら、諦められないね」

「うん、諦められないよ。そして、絶対諦めちゃだめ。それが終わっても、また色んな夢を追いかけるんだから」





そう、絶対だめ。私・・・・・・そんなことなぎ君にして欲しくない。

どこに居ても、なぎ君にはキラキラした目で居て欲しい。・・・・・・あぁ、そっか。

私、なんだか分かった。私、バレンタイン以来なぎ君のこういう目が見られなくて、悲しかったんだ。



だから、頑張りたかったのかも。まぁ、頑張り方とか色々間違えちゃったけど。





「今までの夢も、これからの夢も、全部大事にしようよ。
私、力になるよ? なぎ君の彼女として、思いっ切り」

「・・・・・・うん。あの、ありがと」










私、ギンガ・ナカジマ。現在18歳。なお、今年で19歳。

私より背の小さくて、優しくて強い男の子と現在交際中です。

私は、この子の事が好き。・・・・・・うん、好きなの。





乗り越えなきゃいけない壁は、それはもう沢山ある。だから、少しずつ頑張ろう。

本当に、ゆっくりでいい。焦らなくてもいいし、その・・・・・・バイアグラにも頼らなくていい。

私は、繋いだ手の温もりと感触を、しっかりと心に刻み込んでいく。





そのまま、私達はドアをくぐり抜け、太陽が輝く世界へと踏み出した。





きっと今日が、私達の新しい始まりだったから、踏み出せた。




















(ギンガアフター おしまい)




















おまけ:破壊との出会いと旅の始まり




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・ギンガさんと手を繋いで、踏み出して・・・・・・世界が変わった。

というか、二人して固まった。だって、さっきまでと光景が違う。

玄関から見えていた景色は、レールウェイからの送迎バスのロータリーだったはず。





なのに、ここは・・・・・・倉庫街の中。というか、待て待て。ここ、思いっ切り地球の街並みなんですけど。










「・・・・・・なぎ君」

「ギンガさん、何も言わないで。そうだ、このまま引き返そう」





そうして、僕達は後ろを見る。後ろには、何もない。

ラトゥーアの玄関も、ホテルも、何もだ。何も存在していない。

ただ、倉庫の入口があるだけ。つまり、僕達はここから出てきた。



ちょ、ちょっと待とうよ。これどういうこと? 誰か分かりやすく説明してよ。





「アルト」

「ブリッツキャリバー」

≪・・・・・・おかしいんですよ。こんな所、私のデータにはありません。
なお、通信環境も一切だめです。どことも繋がりません≫

≪Sir、私も同じくです。というより、なんですかこれは≫





色々遭遇してきた僕だけど、さすがに今回は頭を抱えた。・・・・・・訂正。抱えようとした。

だけど、そんな暇は無かった。上から僕達を覆う影。というか、明らかな殺気。僕は、当然のように対処。

ギンガさんの手を繋いだ状態でそのまま前に飛んだ。次の瞬間、僕達が居た場所のコンクリが爆ぜた。



コンクリの路面は、拳によって砕かれる。その音が、辺りに響く。響いて・・・・・・着地した僕達はそちらを見る。

そこに居たのは、異形の怪物。筋肉隆々で2M弱はあろうかと言う黒い身体。その上から鎖を数本巻いている。

アリのような二本の触覚に、頭にターバンを巻いている。路面を砕いたのは、ブッチギリで人間離れした力を発揮する右拳。



ソイツは、そのまま叫ぶ。





「◯◯◯◯・・・・・・◯◯◯◯◯◯!!」



でも、ぶっちゃけなに言ってるかワケわかんない。てゆうか、普通にコイツ・・・・・・あれ?



「まさか、グロンギっ!?」

≪・・・・・・とりあえず、映像データとはぴったりですね。これ、テレビに出てますよ≫

「なぎ君、知ってるの? というか、お友達・・・・・・じゃないよね」



ギンガさんが、警戒しながらも後退りしてソイツから距離を取る。というか、僕も同じ。



「ちょ、ちょっと待とうか。ほら、冷静に」





で、当然のように冷静に待ってくれるわけがない。ソイツは、突撃してきた。

僕とギンガさんは、左右に分かれて跳んで回避。転がりながら、向かい側で止まったグロンギを見る。

さぁて、落ち着けよ。イマジンの時みたいに動揺しまくりってわけにはいかないよね。



だったら、やることは一つだけ。僕は立ち上がって、首元のアルトに手をかける。





「アルト、行くよ」

≪勝てない可能性もありますよ?≫



だろうね、テレビの中のグロンギも、筋肉断裂剤とかなんとか使って、ようやくって感じだし。

僕達の魔法が通じる可能性は、実のところかなり少ない。少ないけど、このまま殺されるのはごめんだし。



「んなもん、神様の思し召しご都合主義でどうとにでもなる。僕は泣く子も黙る、主人公キャラよ?」

≪それもそうですね。真・主人公足る私も居ますし≫

「やかましいっ! てーか、僕がとまとの真の主人公なのよっ!?」



集中しろ、斬ろうと思って斬れないものなんて、何もない。てゆうかほら、ディケ・・・・・・あれ?

今、凄まじく嫌なものを感じた。修行とかあれこれのせいで見れなかったあの番組を、思い出した。



「・・・・・・変身っ!!」





僕は、当然のようにいつもの蒼いジャケット姿になる。そして、腰からアルトを抜く。

そのまま飛び出して・・・・・・斬りかかる。えと、アリ型だっけ? あぁもう、覚えてないや。

アリ(仮)型のグロンギは、腕で僕の斬撃をガード。それに構わず、数度斬りかかる。



後退りしながらも、腕でガードして・・・・・・その度に、腕に巻きつけた布が舞い散る。





「くそ、コイツ無駄に固いぞっ!!」

≪もっと集中してください。じゃないと、斬れませんよ≫

「分か」



僕の右薙の斬撃を防いでから、グロンギは僕に向かって突撃。右拳を打ち込んできた。

僕はそれを、右に動いて避ける。というか、交差する感じで避けた。というか、しながらアルトを打ち込む。



「ってるよっ!!」



交差した瞬間に火花が大きく散る。そして、今までよりも大きな手ごたえを得られた。

それから振り向いて、対峙する。グロンギは、数メートル行き過ぎたようで間が出来る。



「アルト、行ける?」



その腹部には、確かに傷。・・・・・・うし、恭也さんとの修行の成果は出てる。

これは、魔導師としての意識じゃ倒せない。意識を、もう一段階上にあげないと。



≪問題ありません。まだまだリミットじゃありません≫



殺すか殺されるか、きっと決着はその二つでしか付かない。とりあえず、アルトをまた正眼に構えた。



「そりゃよかった」



グロンギは、僕に突撃するためにほんの少しだけしゃがんで、足に力を貯めた。そこを狙って・・・・・・弾丸が飛ぶ。



「「・・・・・・え?」」



なお、僕じゃない。てゆうか、僕はこれから本気出すとこだったもん。

ついでに、ギンガさんでもない。当然のように、弾丸の発射地点を追う。



「・・・・・・お困りってとこか?」





ソイツは、白い四角い銃身の銃を持った男・・・・・・のはず。

緑色の瞳に身体中にあるピンク色のライン。というか、基本色がピンク。

ピンクの基本カラーに、黒と白のラインで形作られた・・・・・・仮面、ライダー。



そうだ、仮面ライダーだ。僕、コイツに見覚えがある。





「あの、あなたは」

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」

「か、仮面ライダー!? じゃあ、野上さん達と同じっ!!」

「まぁ、それはいいだろ。まずは」



自分を警戒しつつ立ち上がろうとしてたグロンギを、ソイツはまた銃で狙う。

でも、その間にもう僕は動いてる。・・・・・・つーか、温い。



「鉄輝・・・・・・!!」



刃は青く染まり、グロンギの頭目がけて唐竹に叩き込んだ。

硬さは、もう覚えた。後は・・・・・・叩き斬ろうとする想いだけっ!!



「一閃っ!!」



唐竹に叩き込まれた斬撃を食らって、グロンギが真っ二つになる。

というか、腰のバックルがパカリと割れる。割れて、そのまま爆発して・・・・・・消えた。うし、勝利ー。



「隙だらけ過ぎだって。普通に狙いやすかったし」

「なぎ君、大丈夫っ!?」

「あぁ、問題ないない。もうかるーい感じでさようならですよ」

「・・・・・・・おい、そこのチビっ!!」



あ、なんかこっちに向かって怒った感じで歩いてくる。というか、バックルの両側を両手で引いた。

そして、変身が解除される。中から出てきたのは、警官姿で栗色の髪のお兄さん。



「あぁっ!? 誰が超絶ミクロマーンなミジンコだってっ!?」



言いながら、とりあえず近づいて飛び蹴りをかます。だけど、避けられた。

・・・・・・くそ、身のこなしがいい。普通に逃げるか。



「そこまで言ってないだろっ! お前の耳はどうなってんだっ!? ・・・・・・まぁいい、チビと・・・・・・そこの青女」

「あ、青女っ!? 違いますっ! 私はちゃんとギンガ・ナカジマという名前が」

「あぁ、じゃあギンガマンだな」

「どうしてマンなんですかっ!!」



とりあえず、この初対面で僕をミクロマン呼ばわりした失礼な奴は、普通に会話を進める。

それはもう、普通にだ。てゆうか、えっと・・・・・・待て待て。まぁ落ち着こうか。



「お前達、この世界の人間じゃないんだろ?」

「・・・・・・はい? あの、えっと」

「ねぇ、とりあえず自己紹介から始めない? じゃないと、意味分からないって。
僕は、蒼凪恭文。で、この人はギンガ・ナカジマ。なお、れっきとした女性でマンじゃないから」

「あぁ、それもそうか。ならギンガウーマンだな。略して、ギンガマンだ」



略す必要なくないっ!? そして、そんなにその呼称がしたいのかおのれはっ!!



「俺は門矢士かどやつかさ。お前達については、見ていて大体分かった。てーか、そこのチビはどうせ俺について知ってるんだろ?」

「うん、知ってるよ。・・・・・・仮面ライダー、ディケイド」



先月から始まった、新しい仮面ライダー。なお、さっきも言ったけど色々あって、ほとんど見れてないけど。



「正解だ。そして、ここはクウガの世界」

「クウガ? ・・・・・・あ、だからグロンギが」

「そういうことだ。お前たちも、ここに来たってことはこの世界でやることがあるんだろ。俺と同じくな」










・・・・・・・・・・・・こうして、僕とギンガさんの旅は突然に始まった。本当に、突然に。





そして、この旅の中で僕達はそれぞれの答えを探し、見つけていくことになる。





まぁ、それはまた・・・・・・別の機会のお話ということで。




















(本当に続く)




















あとがき



恭文(IFルート)「さて、熱望されていたギンガさんアフターですよ。そして、おまけですよ」

ギンガ(IFルート)「というか、あの・・・・・・なぎ君、これ書くの? 普通に続き書くんだよね?」

恭文「StS・Remix片付いてから、ちょっとずつね。まず僕達は、チートヴィヴィオとチート横馬と言う大きな壁を乗り越えなくちゃいけないのよ」

ギンガ「それは、本当に大きな壁だね」





(真・ヒロイン、色々納得した)





恭文「というわけで、本日のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」

ギンガ「今回はその・・・・・・色々頑張ったギンガ・ナカジマです。みなさん、私は元気です。
そうだ、元気なんだよ? 普通にティアIFとかあむちゃんIFとかドキたまとかに負けてるけど」





(真・ヒロイン、普通に黒いオーラを出している。というか、左拳を強く握り締める)





ギンガ「真・ギンガエンドを向かえるためにはすごい条件が厳しいとか、色々言われてるけど頑張ってるの。
そうだよねっ!? 私、頑張ってるよねっ! というか、普通にバイアグラに頼ってもいいのに、頑張ったよねっ!?」

恭文「ギンガさん落ち着いてっ!? 大丈夫、大丈夫だからっ! てゆうかほら、頑張ってるからこそみんな心配してるんだってっ!!」





(蒼い古き鉄、真面目にフォローしている。どうやら、色々心苦しいらしい)





恭文「まぁ、今回の話はディケイドクロスのネタ振りというかテーマも含めているのよ」

ギンガ「私となぎ君の旅・・・・・・という事だよね。あと、ドキたまでもやっている魔法使いの話」

恭文「うん。ギンガさんルートでの結論は、ある意味では現実への迎合なのよ。
なのはやフェイト、はやてはもちろんだけど、リリカルなのはの主要メンバーがやってること」

ギンガ「というか、普通にそれでも良かったんだよね。でも、デンライナーのみなさんとの出会いで、揺らぎが出てきた。
ディケイドクロスのテーマとしては、なぎ君が旅の中でその答えを探すってことかな。あ、もちろん私も同じく」

恭文「やっぱりさ、何度もあとがきとかで出してる話だけど、お話の主人公はみんな、何かパズルのピースが足りないのよ。
最後にそれが見つかって、めでたしめでたしになる。ほら、もやしも同じじゃない。記憶がなくて、居場所が無くて」





(なお、当初の予定とは色々と変えていくつもりです。えぇ、それはかなり)





恭文「で、まず旅先でリリカルなのはのメンバーは出さない予定」

ギンガ「そうなのっ!? でも、予告とかだとフェイトさんが」

恭文「それでカード作って・・・・・・ってやってくと、相当数フォーム考える必要があるのよ。
あと、描写する手間もある。正直、そっちはもやしにお任せでいい。僕は基本ナハトフォーム」





(なお、限定新フォームを出す予定はあります。ただ、ディケイド準拠ではないです)





ギンガ「確かに、最終的には19とかそれくらい世界移動してるし・・・・・・大変だよね」

恭文「あとさ、やっぱりこの話ってライダーが主軸でしょ? もっと言うと、司と現地ライダー。
その交流が有って劇場版とかに繋がる以上、こっちをちゃんとしたいのよ」





(もっと言うと、二人はもやしの旅に完全に相乗りしてる形がいいなぁと)





恭文「それと、最初に旅するのは8つの世界。そこから、(うったわれるーものー♪)の世界に行って・・・・・・だね」

ギンガ「あ、これは私も聞いてる。ここが鍵の一つなんだよね」

恭文「というかさ、一応作者の頭の中のプロットは最終回まで出来てるのよ。
ただ、それを形にする前にRemixとドキたまとSecond Seasonをがんばれって話で」

ギンガ「・・・・・・その通りだね。その通り過ぎて、私はなにも言えないよ。
まぁ、ディケイドの話はここまでにして・・・・・・またアフター、私はやりたいな」

恭文「今度はアレだよ、ピリオドだよ」

ギンガ「なぎ君、それ私はどっかで聞いた事があるんだけど。でも、ピリオドならあの話がしたいな」





(真・ヒロイン、相当顔を真っ赤にしている。なぜだろう)





恭文「え、ギンガさん。なんで顔真っ赤? というか、何がしたいのさ」

ギンガ「私となぎ君が、その・・・・・・初めてエッチする話とか」

恭文「はぁっ!? なんでそこ行くっ!!」

ギンガ「だって、ティアとかもしてるしフェイトさんともあんな感じでしょ?
というか、普通にあむちゃんIFも最終回でそういうことするとか」

恭文「アレはまた違うからっ! 原作リリカルなのはへのオマージュってアイディアの拍手でしょっ!!
ついでに、あむが最低でも15歳になってからだよっ!? ギリギリ犯罪じゃないんだよっ!?」





(蒼い古き鉄、誰かに必死に言ってる。きっと、法案に叫んでいるのだろう)





恭文「とにかく、僕達はまずStS・RemixでエリキャロVSダークヒーローもどき&ルーテシアを倒す必要がある。
それから、チートヴィヴィオとチート横馬の対決だよ。それさえ終われば、あとはらくちん。てゆうか、作者は空戦描写が苦手」

ギンガ「だから、対人戦で接近戦が多いしね。・・・・・・えっと、ディケイドクロスも一つの形になりつつあります。
みなさん、もしかしたら結構先かも知れないんですけど、楽しみにしていただけると、幸いです」

恭文「というかさ、まずメルティランサーのクロスの前に、こっちだって。優先順位としては、こっちだって。
・・・・・・というわけで、本日はここまで。お相手は蒼凪恭文と」

ギンガ「今回のアフター、すっごく嬉しかったギンガ・ナカジマです。
・・・・・・一応、キス・・・・・・したしね。うん、嬉しかった」

恭文「そ、そうだね。僕は色々申し訳ないやら辛いやらだったけど」

ギンガ「大丈夫だよ? 少しずつでいいもの。うん、本当に少しずつでいい」

恭文「・・・・・・うん」










(なんだかんだで楽しそうな二人。今後ともどうなるのか、色々と気になるところである。
本日のED:GACKT『Jorney through the Decade』)




















恭文(IFルート)「というわけで、真・ギンガエンドを迎えるために条件をおさらいしてみよう」





・ディケイドクロスを、無事に超える。

・ナカジマ家一同に、自分達がコミュニケーションしてるところを見られる。

・それにより、家族全員が固まり、ゲンヤさんが倒れる。

・なお、ギンガが恭文を責めている時に見られなければならない。

・ギンガが、フェイトの補佐官をすることになった恭文に、ヤキモチを焼き過ぎない。適度な遠距離恋愛関係を作っていく。

・恭文がしゅごキャラクロスに突入して、歌唄とか海里の事とかがあっても、ギンガを放ったらかしにし過ぎ無い。

・3年後に出来ちゃった結婚をする。





恭文「・・・・・・ちょっと待ってっ!? 7つの条件のうち、3つがコミュニケーションを見られる事条件ってなにさっ!!」

ギンガ「そ、そうだよっ! というか、これは全部拍手で来ていた話だよねっ!?
じゃあ、本当に私見られるのっ!? 見られて・・・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁっ! 嫌だ、絶対嫌だよっ!!」

恭文「僕だって嫌だよっ!! ・・・・・・でも、これが無かったら真・ギンガエンドが成立しないのかな」

ギンガ「それはもっと嫌だよっ! うぅ、どうすればいいのこれー!!」










(おしまい)





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あきゅろす。
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