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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第43話 『やや、頑張りますっ!!』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

スゥ「ドキっとスタートドキたまタイムですぅ。さて、今日のお話は」

ラン「前回の続きっ! 3年星組のPちゃん捜索っ!!」

ミキ「果たして、ややとペペは無事にPちゃんを見つけることが出来るのかっ!!」





(立ち上がる画面に映るのは、全力疾走するAと飛びゆく青い鳥)





スゥ「そして、今後のガーディアンの行く末はっ!? 色々気になるところですけど」

ラン「とにもかくにも今日もスタートっ!! せーの」

ラン・ミキ・スゥ『ドッキドキ♪』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「噂の刑事っ!!」



ジャンッ!!



「やや&」

「ペペでちっ!!」





・・・・・・よし、現状を整理しようか。まずはそこからだって。てーか、させてくださいお願いします。

鳥探しをややに丸投げした。フェイトがややから電話をもらって、なんだか嬉しそうにしていたので安心してた。

まぁ、昨日はあんな風に言ったけど鳥がお亡くなりとかなったら洒落が利かないので、僕も独自に探そうとか考えてた。



で、そんな気持ちを持ったままロイヤルガーデンにみんなが集まったら、ややとペペが壊れていた。



茶色と黒のチェック柄の帽子とケープを纏って、気分はスッカリ探偵。正しく、やや&ペペだ。





「・・・・・・やや、アンタそれなに?」



あむが聞くのも無理はない。冒頭一発目からこれだもの。というより、全員が疑問顔だ。

前回と今回の間で何がどうしてこうなるのか、きっと行間だけでは誰も読み取れないから。



「えー、あむちん知らないの? 今流行りの刑事物のアニメで、こういうのあるんだから」

「・・・・・・やや、もしかして『噂の刑事・サニー&チャッピー』じゃ」

「うんうん。あ、恭文はさすがに知ってたかぁ」





『噂の刑事・サニー&チャッピー』とは、僕達が色んな意味で大変だった4月から始まったアニメである。

なお、キー局は某国営の放送局。放映時間は、毎週日曜の夜7時25分から。

でも、同じ時間帯で別の日に再放送もしてる。だから、昨日も最初の頃の話をやってたのよ。



なお、子供向けなのに本格的な推理物になっており、それが大人にも人気になっている。

で、主人公の声優に人気俳優が出ているので、その俳優のファンにも大人気。

人気俳優が前に某カードバトルアニメで主役やってたおかげで、棒読みじゃないのがいい。



なんか、早々に劇場版が決定したとかって言ってたけど・・・・・・どこまで行くんだろ、あれ。





「あぁ、アレね。私も恭文と一緒に見てるわ。
・・・・・・え、まさかやや、それを真似てるのっ!?」

「りまたんせいかーいっ! ほら、ヤスフミだって電王のベルト真似てユニゾンしたりしてるし、同じ同じー!!」



同じじゃないよっ!? というか、別にあのベルトとパスは真似てるわけでもなんでもないからっ!!

・・・・・・・・・・・・フェイト、一体どんなアドバイスしたっ!? どこをどうしたらこうなるのさっ!!



「・・・・・・よし、ややにペペ。僕から一つ質問」

「というか、俺からもですね」



唯世が、なんだかテーブルに踞って泣き始めた。それは、あむとりま、リインに任せることにしよう。

とりあえず、アレだ。僕はガーディアンの良識派として、質問しないといけない。



「うん、なにかな」

「冒頭一発目から何やってんのさっ! てゆうか、なんでそこでそれにいっちゃうっ!?」

「俺達はエースに鳥探しを頼みこそしましたが、コスプレしてくれと頼んだ覚えはありませんっ!!」

「あのね、捜査の基本は足と聞き込みなの」



え、僕達の質問を丸々無視っ!? あの、やや・・・・・・・会話のキャッチボールが出来てないんだけどっ!!



「だから、刑事になって聞き込みをするでち」



さて、若干頭痛がしてくるけど大体分かった。今のペペの発言で、大体分かった。



「もしかして、姿から入った? それで、エンジンをかけた」

「うん」

「・・・・・・なるほど。それなら納得だ」

「蒼凪さんっ!? これで納得は色々とおかしいと思うのですがっ!!」



いや、クライマックス刑事ってあるしさ。それを考えたら、やや達の行動も分からなくはないのよ。



「でもやや、聞き込みって誰に? 関係者で言うなら、昨日の段階でもう3年の子には話を聞いてるじゃないのさ」

「俺も蒼凪さんと同感です。恐らくは目撃情報を探すおつもりでしょうが、当てはあるのですか?」

≪ややちゃん、捜査の基本戦術の一つは人海戦術なの。
大勢で聞き込みすればすぐに分かるだろうけど、ややちゃん一人で手当たり次第は≫

「大丈夫、ややに任っせなさーいっ!!」



いや、任せてらんない感じがひしひしするから、僕は聞いてるのよ? そこを、ちゃんと知って欲しいわ。



「というわけで、突撃ー!!」

「でちー!!」



ビシュゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!



「・・・・・・全力失踪しやがった」



なお、誤字ではないのであしからず。真面目に失踪でしょ。行き先不明だもん。



≪ややちゃん、暴走機関車なの。決して止まらない永遠のロードを歩いているの。
まるで昨日の主様とフェイトさんなの。二人も朝方まで終わらない≫

「お前は一体僕達の何を知った上でその発言をしているっ!?」



まぁ、ジガンは後で問い詰めることにするとして、今はややだよ。

ヤバい、特訓どうこうってのは抜きにして、ややだけでなんとかなる気が全然しない。



「俺達の質問には、一切答えてくれませんでしたね。蒼凪さん、どうします?」

「海里、聞く意味ある?」

「ありませんね」



なので、僕達は後ろを見る。『ガーディアン、もうだめかも知れない』と落ち込み続ける唯世を。



「リイン、唯世は任せちゃっていい? 僕と海里は、あのバカの後を追う」

「はいです」

「あ、あたしも行く」

「私も」




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第43話 『やや、頑張りますっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ネタは上がってるんだー! 素直に吐けー!!」

「でちー!!」

「おや、よく分かったね」



そう言いながら、理事長室でお仕事をしていた司さんは、大量のお菓子を仕事机の引き出しから出した。



「わぁ、おいしそうー!!」

「もらい物なんだけど、食べ切れなくて困ってたんだよ。もし良ければ、どうぞ」

「いいのっ!? わーい、いただきまーすっ!!」

「いただくでちー!!」



・・・・・・いただくなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てーか、なにこれっ!? 一体なんなのこれはっ!!

なんであの二人は、いきなり理事長室に飛び込んで、お菓子タカってんのさっ! てーか、司さんも出すなよっ!!



「・・・・・・あの子はホントに」

「捜査というか、餌付けされてるじゃないのよ」



現在、理事長室の扉から、こっそり中を覗いています。ぶっちゃけ、怪しいと思う。



「蒼凪さん、これでは本当の意味でエースだけに任せるわけには」

「いかないよね。だって、初っ端から脱線してるんだもの。第一歩から間違いだらけの教科書だよ。
人生に正解なんて無いって言うけどさ、これは間違いなく不正解の類だって言い切れるし」

「なら蒼凪殿、どうする? 我らだけでPちゃんを探すのも手だが」



でもなぁ。それだと意味がないのよ。だけど、この間にPちゃんが猫の餌になってる可能性もあるでしょ?

つまり、アレですか? ややに見つけてもらう感じで頑張ってもらわないと駄目と。



「・・・・・・ジガン、一応サーチお願い。アルトからデータもらって、出来る範囲でいいから調べておいて」

≪分かったの≫

「恭文、もしかして私達だけで探すつもり?」

≪いや、基本ややにやらせる。で、ヒットしたら見かけたって伝えればいいでしょ≫

「だから、どうして僕の台詞を平然とぶんどれるっ!? 長い付き合いだけど、そこだけは未だに分からないわっ!!」










そして、ややとペペは普通になんか食ってる。クッキーとか美味しそうに食べてる。





・・・・・・マジで殴ってやりたい。というか、フェイトに確認しよう。一体どんなアドバイスをしたのかと。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・うーん、Pちゃんどこかなぁ」


そして、迷刑事であるやや&ペペは、普通に街をさまよう。というか、探す。

探して、色々とお話を聞くけどさっぱりのようだ。・・・・・・うん、ここは大丈夫だ。



「一応は、ちゃんとやってるよね」

「そうだね」


電柱の影に隠れて・・・・・・あぁ、怪しいなぁ。怪しい小学生だよなぁ、僕達。

とにかく、怪しさ全開にしながらも、ややを見る。もっと言うと、やや&ペペを。



「・・・・・・うー、Pちゃん見つからないね」

「そうでちね。これは・・・・・・おかしいでち。事件の予感がするでち」



ペペ、いい着眼点だね。でも、気づくのが少々遅いと思うな。もうこれ、既に事件だから。



「事件? ・・・・・・はっ! もしかしてっ!?」



ややの表情が、驚愕の色に染まった。染まって、足が止まり身体が震える。



「これ、誘拐事件なんじゃっ!!」



・・・・・・・・・・・・はぁっ!? なんじゃそりゃっ!!



「な、なるほどでちっ! 誘拐されたから、これだけ探しても見つからないでちねっ!!」

「そうだよっ! 間違いない、Pちゃん・・・・・・誘拐されちゃったんだっ!!」





だぁぁぁぁぁぁぁぁっ! バカかおのれらっ!! それは、絶対ないからねっ!?

・・・・・・いや、待てよ。営利誘拐はぶっちゃけありえない。うん、それはありえない。

でも、営利誘拐・・・・・・てゆうか、誘拐じゃなくて虐待の類だとしたら?



ようするに、動物虐待だよ。動物を痛めつけて憂さ晴らしする奴は、多いもの。



その場合・・・・・・や、やばい。やや&ペペの推理、あながち的外れとも言えない。





「蒼凪さん、エースの方向性が色々おかしくなっているのですが」

「そうだね。でも、あの推理は決して的外れじゃないのよ」

「それはそうですが・・・・・・アレでは、警察に駆け込みかねませんよ?」

「あれ、ボケにボケが二乗されてるもの。ツッコミ役が居ないと、止まらないわよ」



僕達がどうしたもんかと頭を痛めていると・・・・・・ややの電話が鳴った。



「・・・・・・ま、まさか・・・・・・身代金の要求っ!?」



あるかボケっ! なんで3年星組の生徒でもないおのれに要求が回ってくるんだよっ!!

とにかく、ややは携帯を開いて電話に出た。そして、開口一句こう言い放った。



「100億万円も払えませんっ! 身代金おまけしてっ!!」



アホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てーか、身代金をおまけするような犯罪者なんて、会った覚えないしっ!!



「・・・・・・身代金?」

「あむちゃん、きっと気にしたら負けだよ」

「ボクも同感」

「ややさんもペペちゃんも、暴走しまくりですぅ」



とにかく、話が進んだ。怯えまくっていたややの震えが、止まった。



「・・・・・・ミミ子先生?」



ミミ子? え、それはどちら様でしょうか。とりあえず、僕の知っている限りは居ないし。



「ミミ子・・・・・・あ、ややのバレエ教室の先生だよ」

「あむ、知ってるの?」

「うん。1年くらい前に、体験入学したことがあるんだ」



あむがバレエ・・・・・・だめだ、普段のアレ具合を見てるせいで、コケてる図が一番に出てきた。

まぁ、なんだかんだで一生懸命頑張るんだろうけどさ。うん、そこは確定だ。



「えぇっ!? 今から教室に来いって・・・・・・なんでっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・フェイト、真面目にどういうアドバイスをしたの? 僕、 あんな初っ端から選択肢間違えた子、初めて見たし』



お昼、お洗濯をしながら平和な日常を満喫してたら、ヤスフミから通信がかかってきた。

それで、話を聞いて・・・・・・頭を抱えた。あ、あれ? 変だな。私、普通の事しか言ってないのに。



「えっと、捜査の基本は聞き込みと足だと言うのと、事件が起きると泣いている人が出てくるということくらいしか」

『・・・・・・なら、やっぱりサニー&チャッピーか。じゃなきゃ、いきなり『やや&ペペ』になるわけがないし』



サニー&チャッピー? ・・・・・・あぁ、あのアニメだね。うん、私も面白いから好き。

ややの家にはつばさ君と太郎君が居るから、自然と見てるのかも。



「それで、今ややはどうしてるのかな」



これ以上脱線するなら、私もその・・・・・・アドバイスした人間として、ちょっとお話とかしなきゃいけないかも知れないから。



『とりあえず最初の方向性はサッパリだったけど、それからはちゃんとしてる。
街の人に聞き込みしたり、探したりして・・・・・・うん、そこは安心』

「そっか。なら、今も継続中なんだね」



そうヤスフミに言うと・・・・・・なぜだろう。ヤスフミが、どういうわけか固まってしまった。



『えっとね、フェイト』

「うん?」

『驚かないで欲しいんだ』



え、あの・・・・・・どうしてそんな言い方するの? というか、何かあったのかな。



『やや、バレエ教室で白のレオタード着て、バレエしてる』

「・・・・・・・・・・・・えぇっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ガーディアン、もうだめかも」

「唯世、しっかりしろっ! 大丈夫、恭文達がフォローしてくれるっ!!」

「でも、逆を言えばフォローがなければ結木さん一人じゃ」

「唯世っ!!」



・・・・・・普通に困ったのです。正直、ややちゃんが今すぐに唯世さんとかみたいにリーダーシップなんて、無理なのですけど。

うーん、唯世さんの心配性にも、ちょっと困ったものです。いくらなんでも、結果を早く求め過ぎなのですよ。



「ちーす。・・・・・・って、なんだ。唯世とリインだけか」

「珍しいわね。普通にお茶してると思ってたのに」

「あ、空海さん。それにダイチ。というか、ティアもですか」

「おっす、リイン」



むむむ、珍しい取り合わせなのです。まぁ、中等部仲間なので、大丈夫ではあるんですけど。



「ちょっと時間出来たんで、遊びに来たんです。というか・・・・・・あの、リインさん。アイツやあむ達は?」

「それ以前に、唯世はなんでそんなヘコんでんだよ。・・・・・・もしかして、例のインコ探しでなんかあったのか?」

「ややちゃんとペペちゃんが『やや&ペペ』になったので、みんなで見守りに行ってるです」

『・・・・・・・・・・・・はぁっ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「うー、ミミ子先生痛いー!!」

「アララ、フェアリーやや。最近レッスンに来ないからすっかり身体が固くなって」



ギギギギギギギ・・・・・・!!



「ぜ、前屈痛いー! というか、ややも色々ありましてー!!」

「ノンノン、言い訳は要らないわっ! さぁ、今日は今までの遅れを取り戻すために、怪我しない程度に徹底的にやりましょうっ!!」

「ふぇぇぇぇぇぇっ! やや、Pちゃん探さなくちゃいけないのにー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「さて、一応説明ね。今ややが居るのは、羊田ミミ子先生の子どもバレエ教室。
ややがずっと通っている教室で、あむちゃんとボク達もお邪魔した事があるんだ」

「スゥ達が恭文さんと会う前のお話ですぅ。その時に、姫川舞香ちゃんという子にも会いましたぁ。
その子のこころのたまごに×が付いて、あむちゃんとミキが初キャラなりして浄化したんですぅ」

「あ、舞香ちゃんはややと同じでここの教室の生徒で、バレエがとっても上手な子なんだー。
詳しくは原作コミックス2巻か、アニメ第一期の『第6話 キャラなり! アミュレットスペード!』を見てねー」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・ピンクのレオタードに、茶と白が混ざったような髪をアップ。

やたらと濃い頬紅にピンクの口紅。そして、笑顔でありながら有無を言わせない感じ。

うわ、なんつうか中々に濃いキャラだ。そして、見ていると何気に指導が厳しい。





現在、僕達はややが居るバレエ教室の向かい側のビルの屋上から、様子を伺っている。










「恭文、普通に私達だけで探した方がいいんじゃないの?。・・・・・ぱく」

「てゆうかさ、こんな覗きみたいな真似して意味ないって。・・・・・・はむ」



とりあえずあむにりま、双眼鏡覗きながらアンパン食うな。

おのれらはどこの刑事だ。てゆうか、普通にどっから持ってきた。



「そうかも」

「ですが、エースの動向をこのままというわけにはいきません。なんとかして修正せねば」

「だが海里、どうやってだ? 拙者達が普通に介入しては、特訓の意味が」

「いや、ムサシ。この場合俺達が優先するべきは、Pちゃんの安全の確保だ。・・・・・・もぐ」



海里も、何故か双眼鏡でみんなの様子を見つつもアンパン食うな。

てゆうか、これは捜査だからっ!? 捜査だからこれなんかいっ!!



「蒼凪さん、アルトアイゼンとジガンでのサーチはどうでしょうか」

≪駄目ですね。近辺では掴めません≫

「そうですか。・・・・・・そうなると聞き込みか? 手当たり次第になってしまうのが問題だが」



そうなんだよねぇ。でも、あむが描いてくれた絵があるし、上手くいけば・・・・・・うん、ここは足で稼ぐしかないか。



「うーん、ジガンも同じくなの。それっぽいのは居るけど、違うの」

≪主様ー! クスクスちゃんがジガンの台詞を取ったのー!!
確かに反応が掴めてないのは事実だけど、ムカつくのー!!≫



そして、ジガンは僕の腕から離れて、ぬいぐるみモードに変化。そのまま僕にまとわりつく。



「ええい、ぬいぐるみ姿で顔にまとわりつくなっ! うっとおしいっちゅーのっ!!」

「クスクス、似てたわよ。やるじゃない」

「クスクスクスー! 大成功ー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なるほど。ややとペペがそんな調子だから、恭文達まで動いてんのか」

「それで、唯世はガーディアンの未来を憂いて泣いていると。納得しました」

「してくれると、嬉しいのです」



とりあえず、紅茶をご馳走になりつつ、リインさんから話を聞いた。でも、確かになぁ。

満漢全席やスゥのあれこれの影で、ややがそんなことになってたとは。ちょっとビックリ。



「でも空海、あと唯世もなんだけど・・・・・・ややはやっぱり、リーダーシップを取るタイプじゃないと思うのよ」

「まぁ、それは俺達も分かってるんっすよ。だから、今の内から」

「いやいや、そういうことじゃないのよ。多分、タイプ的にはスバルと似てるのかなーって」

「スバルさんと?」



スバル・ナカジマ。私の元パートナーで、親友。・・・・・・あの子も、リーダーシップを取るタイプではない。

少なくとも、唯世とかフェイトさんとか、はやてさんみたいな感じではない。うん、絶対違う。



「ややは、ムードメーカーって言うのかしら。そういう気性が強いと思うの。
あのキャラで周りを和ませて、テンションを上げて集団を盛り上げる」





赤ちゃんキャラだけかなと思ってたけど、そうじゃなかったもの。そう感じたのは、ブラックダイヤモンド事件の時ね。

サリエルさんの『みんなが主人公』って言うのを聞いて、だったら自分達でハッピーエンドにしてやるって言い切った時。

私、あの時感心したもの。ロストロギアなんてものが絡んで、みんな多少戸惑い気味で、止まりかけていた部分もあったのに。



ややのあの発言で、ガーディアンのみんなが覚悟を決めて最終決戦に踏み出したのは、間違いないと思う。





「ややは、私が思うに本当に上に居たとしてもナンバー2がいいと思うの。
集団は唯世みたいなタイプがしっかりと纏めて、ややはメンタル面から押す」





ちょうど六課フォワード陣がそんな感じだった。うん、スバルには助けられたな。

私、今より突っ張ってたから、エリキャロ相手でもちょっと壁作ってたし。

スバルがクッション役になって、接してくれていたから上手くチームとして纏まるようになってきた。



もちろん、エリキャロが経験不足で私達がリードするしかないってのもあるけど。





「正直ね、どっちかしか出来ないわよ? 両方なんて、絶対無理。少なくとも、私はね」



うん、真面目に無理よ。てゆうか、出来る奴が居たら見てみたいわ。



「なるほど。・・・・・・確かにそれは一理あるっすね。ぶっちゃけ、向き不向きを無視しても効率悪いですし」



さすがに、初等部でサッカー部のキャプテンなんてしてた空海は、察しが早い。

人を見る目というか、洞察力は高い方なんでしょ。



「なにより、ややがムードメーカーってのは俺も分かるんっすよ。確かに、アイツが居ると場が明るくなりますし」

「でもティアナさん、ややがそういう役割が得意だとしても、多少はしっかりしてもらわないとマズいのは事実だろ?」

「確かにそうなのよね。仮にガーディアンの新メンバーが、全員ややみたいなタイプって言うのも・・・・・・あり得るわけじゃない?」





そうなったら、誰が先頭を切るの? 当然、ガーディアンの仕事の経験者で先輩でもあるややしか居ない。

空海はなんだかんだでアイツとも仲いいし、ちょくちょく来てはくれてるみたいだけど、それだって毎日じゃない。

アイツとリイン曹長は仕事があるからアレとして・・・・・・あむやりま、唯世となでしこの双子の弟もだっけ?



それらが毎日こっち来るわけにもいかないから、あくまでも多少は頑張ってもらわないとマズいのも、事実なの。





「なんだか色々と頭が痛いですね。新メンバーの選出が、理事長に全任されてるのも不安要素なのです」

「そう考えると、今のメンバーはよく纏まりましたよね。
言い方は悪いですけど、最初は問題だらけだったのに」



アイツは年齢ごまかしてるでしょ? 海里はイースターのスパイだったし、りまは家庭の事情でちょっとツンケンしてた。

なんというか、アイツが『頭痛い』って呟いてた日々が懐かしいわ。普通にこんなに纏まるなんて、思わなかったもの。



「でも・・・・・・やっぱり、頭痛いですね」

「ですです」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とりあえず、ややは目的を忘れちゃいけないと思うの。





というわけで、ミミ子先生に聞いてみるの。ほら、ちょうどあむちーが描いてくれたPちゃんの絵もあるし。










「・・・・・・ややさん、インコを探していたの?」

「はい。こういう鳥で、色は青なんですけど・・・・・・ミミ子先生、見覚えあります?」

「うーん、ごめんなさいね。先生には見覚えないわぁ」

「そうですかぁ。・・・・・・あ、先生ありがとうございました」

「いえいえ」



とりあえず、ミミ子先生は知らない・・・・・・と。あ、でもちょうどいいかも。

ここには子ども達も居るし、もしかしたら知ってる子がイルカ・・・・・・もとい、居るかも。



「・・・・・・ねぇ、結木さん」



とりあえず、練習中の子は駄目だから、休憩している子に話を聞くために、隅に来た。

教室は奥が鏡張りで、全面フローリング。・・・・・・って、今さらか。



「あれ、舞てぃ」





後ろから声をかけてきたのは、栗色の髪をアップにして、今のややと同じレオタード姿の女の子。

瞳はちょっと釣り上がり気味で、キツイ感じだけど実はそうでもない子。

この子の名前は・・・・・・姫川舞香ちゃん。なお、ややは舞てぃって呼んでる。



あ、詳しくは原作コミックス第2巻か、テレビアニメ第一期の『第6話 きゃらなり! アミュレットスペード!』をよろしくー。





「全く、何やってるかは知らないけど、ちゃんと教室に顔を出しなさい。
ミミ子先生や他の子達、ちょっと心配してたのよ?」

「あはは、ごめん。ややもちょっと色々あってさぁ」



ブラックダイヤモンド事件とかで、しばらくガーディアンの仕事に集中してたしなぁ。

うぅ、バレエ好きなのに出来ないのはちょっと辛かったよー。



「そう、分かってるならいいわ。それで、鳥・・・・・・探してるのよね。青いインコ」

「うん」

「それって、アレじゃない?」



舞てぃは、そう言いながら教室の外を指差す。指差して見えるのは、一羽の鳥。

青くて、10センチ前後で、インコで・・・・・・確かにインコだ。



「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! ぴ、Pちゃんだっ!!」

「ややちゃん、恭文張りの引きの強さでちっ!!」

「うんうんっ! というわけで、ペペちゃん・・・・・・いっくよー!!」





早く捕まえて・・・・・・違うな。えっと、保護してあげて、あの子達のところに返してあげようっと。

そうすればあの子達、もう泣かないよね。泣いてるの、悲しいの・・・・・・止められる、よね?

ビルの5階にある教室を飛び出して、やや達は全力疾走で路上に出る。



路上に出て、空を飛ぶPちゃんを追いかけてまた走る。走って・・・・・・躓いた。





「わ・・・・・・あうっ!!」



それで、こけた。思いっ切り前のめりにどーんって。



「ややちゃん、大丈夫でちかっ!?」



ペペちゃんの言葉に答えずにゆっくりと立ち上がると、涙が溢れて・・・・・・ややは、それをこらえた。



「・・・・・・うん、大丈夫っ!!」

「ややちゃん、泣かないんでちか?」

「泣かないっ! 今日は、そういうのは無しだもんっ!!」



・・・・・・ちょっとだけ、分かった気がする。ややの周りに居る、ちょっと年上の男の子の気持ち。

あと、フェイトさん達の気持ち。怖い事件とか、ロストロギアとかの事件に飛び込む気持ち。



「ペペちゃん、いくよっ!!」



・・・・・・きっと、いつもこんな気持ちなんだ。だから、戦うんだ。



「・・・・・・了解でちっ!!」





誰かが泣いてるのとか、悲しいのとか、嫌なんだ。やや、どうして出来るのかなってちょっと疑問だった。

でも、分かったよ。今・・・・・・わかった。だから、もう少しだけ頑張ろう。

ややが出来ることなんて、ホントにちょっとだけ。だってやや、魔法も使えないし、強くだってないもん。



ややは、赤ちゃんキャラなんだもの。でも、それでも・・・・・・あの子達の泣いてるの、止めることは出来るから。





「・・・・・・・・・・・・やや先輩」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ジガンもアルトアイゼンも、何やってんのっ!? Pちゃん、すごい近くに居たじゃんっ!!」

「そうだよっ! 二人ともしっかりしてー!!」

≪アンパンをほうばり続けたランさんには言われたくありません。
だけど、変ですね。何度サーチしても、Pちゃんの反応が無いんですけど≫

≪うー、どうなってるのっ!? ジガン、正式稼動してまだ一週間程度しか経ってないのー!!≫



とにかく、アンパン食べていた僕達は全力疾走でPちゃんを追いかける。さて、どうする。

・・・・・・ええい、迷ってる暇はないっ! ここで逃がしたら、マジで明日にはお亡くなりコースかも知れないんだっ!!



「アルト、ジガン、局所的に結界を展開するよっ!!」

≪≪了解(なのー)≫≫

「蒼凪さんっ! いいんですかっ!? こんな街中で魔法・・・・・・あぁ、なるほど」

「結界を使って、Pちゃんを閉じ込めるのね」



さすがに海里とりまはすぐに気づいてくれた。・・・・・・まぁ、ややが居ないけど、いいでしょ。

見てたら、教室の子達やあの強烈キャラのミミ子先生に聞き込みしてたしさ。うん、アレは安心した。



「・・・・・・あれ、あむちーにみんなっ!!」



走っていると、後ろから声。そっちを見ると・・・・・・赤いケープを付けて、聖夜小の制服を着たややが居た。

なお、当然のように右手には鳥かご。さすがに、ここを忘れるほと抜けてはないらしい。



「ややっ!?」



もしかして、教室からPちゃんを見て追いかけてきた? ・・・・・・だったら、話は早い。



「やや、今から僕とアルトとジガンで結界を展開する」

「結界?」

「それでPちゃんをその中に閉じ込めるから」

「なるほど、それでぺぺ達でPちゃんを確保するでちね」

「了解っ! 恭文、お願いっ!!」










・・・・・・位置はしっかり把握してる。だから、後は術式展開と詠唱と処理だけ。





そして、僕なら一瞬でそれを可能とするっ! つーわけで、結界発動っ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・うわ、お空が幾何学色になってる」

「何度見ても、この風景は不思議でち」

「蒼凪さん、この結界は広さ的には」

「大体半径200メートル前後。高度もそれくらいだね」



・・・・・・あとでフェイト達に怒られるかなぁ。街中で、勝手に閉鎖結界張っちゃったし。

でも、逃がすわけにもいかなかったし・・・・・・納得しようっと。



「恭文」

「どした、やや?」

「あの、ありがと。手伝ってくれて」



なんか、僕の方を見て素直にお礼を言って来た。なので、首を横に振る。



「大丈夫だよ。僕達もたまたま見かけただけだもん」



で、海里とあむとりまを見る。全員、うんうんと頷く。・・・・・・よし、さすがにみんな分かってくれてる。

そして、キャンディーズとムサシ、クスクスも同じく。だけどクスクス、笑うな。ややとペペが不思議がってるでしょ。



「ただし、やや」

「分かってる。決めるのは・・・・・・ややなんだよね」

「そうだよ。僕達が出来るのは、ここまで。あとは」

「うん、頑張るっ!!」



Pちゃんは、近くの電柱から伸びている電線に止まっている。そして、こちらを見ている。

そんなPちゃんに、ややは恐がらせないようにゆっくりと近づいて・・・・・・胸元に両手を持っていく。



「ややのこころ」



・・・・・・・・・・・・え、ちょっと待って?



「アンロックッ!!」

「でちっ!!」



そして、ややの身体を光が包む。ペペはたまごに包まれて、ややの胸元に吸い込まれた。

それから、ややの身を包んでいた光が弾けると・・・・・・え?



【「・・・・・・キャラなりっ!!」】



赤ちゃん服に、大きなウサギの耳。その姿は、まさしくアダルトチルドレン。



【「ディアベイビー!!」】

『キャラなりしたっ!?』



待って待ってっ! 普通に鳥一羽捕まえるために結界張った僕が言うのもアレだけど、そこでキャラなりはおかしいでしょっ!!

ほら、Pちゃんまでなんか首かしげてるし、あり得ないってっ!!



≪・・・・・・ややさん、どうするつもりですか?≫

≪分かってるとは思うけど、Pちゃんは赤ちゃんキャラじゃないの。そういうプレイも趣味じゃないと思うの≫



もう、なんか色々どうでもいいという声でアルトとジガンがそう聞くのも無理はない。僕もこれは予想外だもの。



「うん、こうするの。・・・・・・それっ!!」



ややが、両手を合わせる。手の平の中は少し開けて、何かを握りしめているようにする。

そして、両手から光が漏れる。そのままややは合わせた両手を引いて・・・・・・突き出したっ!!



「メリー」



突き出し、某カメハメ波の如く開かれた手の平から、光が放出される。その光はあるものを形取る。



「メリー!!」



それは、あかちゃんのベッドの上に飾られる回るおもちゃ。・・・・・・あ、なるほど。



「それー、眠れー」



メリーメリーが回りだすと、Pちゃんが興味深げにそれを見る。見て・・・・・・うつらうつらと首を動かす。

そしてそのまま、Pちゃんは電線から落ちた。そう、メリーメリーで眠らせたのだ。



「やや、ナイスっ!!」



あむがそう言って、ややの方を見る。というか、僕達も見る。そして、思い出した。



「すぴ・・・・・・んにゅ、もう食べられないよぉ」

【お菓子・・・・・・いっぱいでち】



ややは、メリーメリーを第24話で使った時、自分まで眠ってしまった事に。



「エースッ!?」

「あぁ、ややー!? なんでアンタそこで寝ちゃうのよー!!」

「・・・・・・マズいわよ、Pちゃんが」



言ってる間に、Pちゃんが落下していく。・・・・・・あぁもうっ! 詰めが甘過ぎるっつーのっ!!



≪Sonic Move≫



青い光に包まれて、僕は前に踏み込む。もうお馴染みの高速移動魔法。

多少低空飛行しつつも、慎重にPちゃんを両手でキャッチ。そのまま、路面に滑るように着地。



「・・・・・・はぁ」

≪結局、色々手出ししちゃいましたね≫

≪なんというか、ややちゃんは普通に放っておけないキャラなの≫

「確かにね。でも、いいか」



僕は、両手の平の上で気持ちよさそうに眠るPちゃんを見る。手には、確かな温もり。

見たところ・・・・・・ケガとかもなさそう。うん、良かった。



「これで、あの子達も安心だし」










ただ、ややの特訓に関しては、また練り直しだけどね。

やっぱ、いきなりこういうのを一人ってのは無茶かも。

でも、自発的になってもらう必要もあるし・・・・・・うーん、どうしよう。





・・・・・・でも、今回はちゃんと出来た方だよね。最初はアレだけど、聞き込みも頑張ってた。





バレエ教室も、突然のトラブルっぽかったし・・・・・・うん、今日のややは頑張った。そこは確定だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・やや、一人の時にメリーメリー使うのは、絶対禁止。
僕達が居たからよかったけど、あれで寝ちゃうなんて危険過ぎるでしょうが」

≪そこに関しては、ペペさんもですね。普通にあなたまで寝ちゃうってどういうことですか≫

「し、仕方ないんでち。赤ちゃんキャラに、アレは凶悪なんでち」

≪仕方なくないですから。だったら使わないという選択しかないはずでしょ≫



とりあえず、アレは見過ごせないので軽くお説教である。なお、結界は解除した。

Pちゃんも、鳥かごの中ですやすや眠っている。そしてややは・・・・・・シュンとしてる。



「うぅ、ごめん。でもでも、ゴーゴーアヒルちゃんだと驚かせちゃうし」

「確かになぁ。・・・・・・とりあえず、メリーメリー使っても寝ないようにしないと。
それなら、この状況で使ったのはすごくベストな選択だと思うし」

「でしょでしょっ!? わーい、恭文に誉められたー!!」



・・・・・・誉めてないのよ? 普通に、まだお小言の最中なのよ?

まぁ、このポジティブシンキングなのが、ややの良いところではあるんだよね。



「とにかく、これでお仕事終了ね。Pちゃんも無事に」

「・・・・・・あれま、ややに・・・・・・あぁ、ややの友達の子達か」



後ろから、声がかかった。そちらを見ると・・・・・・白衣を着た結構なお年のおじいさんが居た。

なお、右手には鳥かご。・・・・・・あ、確かこの人は。



「あー、せんせー!!」



なお、こちらはややもそうだし、ややの弟で双子のつばさと太郎のかかりつけ医さん。ややの家の近所の、小児科の院長先生。

第16話で、半年かけてコツコツ作っていたボトルシップより、病気の子どもが大事だと言い切った名医である。



「せんせー、どうしたの? というか、鳥かご持って」

「いや、うちのインコが逃げ出してな。・・・・・・お、ミチルっ!!」



そして、院長先生がややが持っていた鳥かごの中で寝ていたPちゃんを見る。



「おぉ、お前さん方が見つけてくれてたんじゃな。いや、ありがとうな」



・・・・・・え、ミチル? よし、ちょっと待って。なんかすごく嫌な予感がするんだけど。



「あの、せんせー? この子はPちゃんなんだけど」

「いやいや、この子はミチルじゃ。ほれ、このくちばしの近くの白い模様がなによりの証拠じゃ」

『・・・・・・白い?』



僕達は、全員でPちゃんを見る。すると、くちばしの根元に小さい白い丸の模様があった。

なお、黒い模様は・・・・・・ない。全くない。



『この子・・・・・・Pちゃんじゃないっ!?』



院長先生はすごく嬉しそうだけど、僕達は正直微妙です。というか、落胆が凄い辛い。



”なるほど、だから私達のサーチで引っかからなかったんですか”

”それで納得なの。良かった、ジガンは故障してたわけじゃなかったの”

”僕達的には、全然よろしくないのよっ!? あぁ、なんですかこれはっ!!”




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・じゃあ、まだ見つかってないの?」



時刻は夕方。私は、リースと二人で夕飯の仕込みの最中。というか、温め直しの準備。

だって・・・・・・満漢全席、まだあるから。でも、人数が居るし今日で食べきれるかも。



『うん。まぁ、院長先生は喜んでくれたから、いいと言えばいいんだけどさ』



ちょっと気になってたから、ヤスフミにサウンドオンリーの通信。それで、現状を聞いた。

でも、あの院長先生・・・・・・インコなんて飼ってたんだね。当然だけど、知らなかったよ。



『とにかく、明日も捜索は継続かな。うぅ、真面目に早めになんとかしないとまずいかも』

「そうだね。というか、ごめん。お買い物してくれたシャーリーとディードも、そういう鳥は見かけなかったって」

『そっか。・・・・・・まぁ、こっちはもうすぐ解散だし、あと1時間くらいで帰れると思う』



なんでも、一旦学校に戻って荷物を引き上げてから帰るらしい。そして、今はちょうどその学校の中。



「うん。それじゃあ・・・・・・あの、寄り道しないで帰ってきてね」



少しだけ、勇気を出してある一言を言った。まぁ、昨日・・・・・・子作り、したから。



「あなた」



そして、電話の中のヤスフミが黙った。・・・・・あ、あむとりまの声が聞こえる。

『なんでいきなり真っ赤になってるの?』とか・・・・・・ヤスフミも、真っ赤なんだ。



『い、いきなりどうしたのっ!? あの、パンチ強過ぎないかなっ!!』

「え、えっと・・・・・・そろそろ、こういう練習もしておきたいなと。それに、ちょっと憧れてたから」

『そ、そうなんだ。あ、あの・・・・・・ありがと』

「ううん。それじゃあ、気をつけて帰って来てね。あと、みんなにもお疲れ様って伝えてくれるかな」

『うん、分かった』



それで、サウンドオンリーの通信を終える。・・・・・・でも、言っちゃった。

うぅ、恥ずかしいけど頑張らなくちゃ。だって、その・・・・・・子作りしたってことは、もう夫婦も同然なんだし。



「・・・・・・フェイトさん」

「うん、リースなにかな」

「あの、甘いです。というか、甘ったるいです」

「そんなことないよ。私とヤスフミはいつもこんな感じだし、節度ある付き合い方をしてるから」

「絶対違うと思うんですっ! そこはもう、全力全開でっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・とりあえず、明日も捜索だね」

「うん。でも、Pちゃん大丈夫かなぁ」

「夏だし、凍えるってことはないだろうから・・・・・・とりあえずは」



夕方の学校の中、とりあえず僕達は3年の教室を目指す。一応、途中報告は必要なのだ。

だから、ややもブルー入っている。確保出来たと思ったのにこれだから、余計に。



「でも、急がなくちゃいけないよね。・・・・・・うん、もうちょっとだけ頑張ろうっと」

「うん、その息だ」





でも、ややはそれでも頑張ろうとする。それがちょっと心配であり、安心。

・・・・・・やばい、僕普通に大人目線だ。というか、お父さん目線だ。

とにかく、僕達は若干申し訳ない感じのオーラを出しつつ、3年の教室に入る。



教室の前、教壇側の扉を開いて・・・・・・夕焼けに染まる教室の中に入った。





「あ、やや先輩」



そこには、当然のようにあの子達が・・・・・・あぁ、視線が痛い。普通に痛い。

そして、そんなランランとした瞳で僕達を見ないで? 何かが突き刺さるの。



「あ、あのね。みんな」



それでも、ややは話を切り出そうとする。そして、そんなややにあの子達は近づく。

小走りに寄って来て、全員一気に頭を下げた。



『ありがとうございましたっ!!』

『・・・・・・・・・・・・え?』



ま、待て待て。どういうこと? いや、お礼言われるようなことしてないんだけど。

むしろ、何かこう・・・・・・罵られるんじゃないかとか、ちょっと想像してたのに。



「Pちゃん、戻って来たんです」

『え?』

「やっぱりガーディアンはすごいです。というか、やや先輩すごいです」

『はぁっ!?』



ま、待て待てっ! これはアレかな、新手の嫌味かなっ!? Pちゃんとミチルを間違えた僕達への精神攻撃とかっ!!

・・・・・・あれ、なんか左手の袖が引かれてる。



「恭文、あれ」



引いていたのは、りま。りまが左手で指差す方向を見る。そこは教室の中程。

そこには鳥かご。その鳥かごの中には、青くてくちばしの所に黒の模様が入ったインコ。



「ぴ、Pちゃんっ!? なぜにあそこにっ!!」

「当然です。やや先輩が見つけてくれたんですから」



いやいや、違うよねっ!? なんか全員揃って僕の発言に『何言ってるんですか?』って顔してるけど、絶対そこ間違えてるからっ!!

とにかく、ややはビックリしてPちゃんと思われる鳥のところまで行く。言って、あむが描いた絵とそれを見比べる。



「・・・・・・あ、ホントだ。確かにPちゃんだ。
え、あの・・・・・・えぇっ!?」

『やや先輩、本当にありがとうございましたっ!!』



ややは、教室の中程で。そして、僕達は入り口に固まって呆然とする。

あの、えっと・・・・・・これは、どういうことですか? ねぇ、誰か教えて?



「・・・・・・良く出来た後輩達よね」

「全くですよ」



後ろには、気配。で、そちらを見ると・・・・・・嬉しそうな顔をした四人が居た。



「唯世にリイン、というか、空海と中原麻衣も」



ゴスっ!!



「・・・・・・中の人の名前で呼ぶの、やめてくれる?」

「ぼ、ボディブローもやめてもらえると、嬉しいんですけど」



崩れ落ちて、お腹を抑える。というか、普通に痛かった。

ティアナ、もう絶対普通に素手でイマジンとか魔導師とか倒せるよね? ここは確定だって。



「でも唯世くん、あれ・・・・・・どういうことなの?」

「実はね、みんなが探しに行っている間に、3年の子達も探してたらしいんだ」

「なるほど、それでPちゃんを見つけたのですね。でも、それをどうしてエースの手柄に?」

「ややちゃんの事、立ててくれたんですよ。ややちゃんが一生懸命に探してるの、どこかで見てたらしいです」



僕は、立ち上がりながらもなんか『いや、その・・・・・・よかったよかった』なんて言ってるややを見る。

というか、全員見る。一生懸命・・・・・・まぁ、そこだけは間違いないか。



「唯世、アンタも少しは安心出来たでしょ?
あの子はあの子なりのやり方で、ちゃんとガーディアンの仕事をしてるわよ」



ティアナが、優しい瞳でややを見つつそう口にした。僕にボディブローした女と、同一人物とは思えない。



「はい。僕や日奈森さん達とはやり方は違いますけど、それでも・・・・・・なんですよね。
だから、あの子達も結木さんを立てて、頑張りを認めてくれた」

「えぇ。それでややは、立派なガーディアンのAチェアよ。
・・・・・・変わって欲しいにしてもさ、まずはそこを認めるところからじゃないかな」

「そうですね、僕もようやくそう思えるようになりました」










こうして、Pちゃんは無事に夏休みをクラスの子の家で過ごせることになった。

まぁ、僕達は色々反省かな。ややはなんだかんだで、ちゃんとしてるもの。

・・・・・・やばい、普通にこれはお父さん思考だ。駄目だってこれは。





もうちょっと、若々しさを目指して頑張ることにする。うん、かなりね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



その場は解散となり、自宅に帰りついた。





満漢全席をなんとか平らげて、時刻はもう夜の10時。だから・・・・・・またこれなの。










「・・・・・・Pちゃん、無事に見つかってよかったね」



そう、フェイトとのお話。なお、立ち位置は昨日と同じ感じかな。



「まぁね。うー、でも本当によかったよ。この調子で夏休み突入なんて、ちょっと嫌だったし」

「確かにそうだね。・・・・・・でも、もうすぐなんだね」

「うん、もうすぐ夏休みなんだよね。やばい、なんかワクワクしてきたかも」

「実は私も。ミッドにも久々に戻れるし、めいっぱい楽しもうね」

「うん」





季節は初夏。楽しい夏休みは、もうすぐ。・・・・・・ま、いいか。

夏休みが楽しみでもさ。だって僕、小学生なんだから。

でも、その前にやるべき事があった。そう、次の事件というか出来事は、目の前にあったのだ。



というか、聴こえた。僕達の部屋をノックする音が。フェイトが『はい』と返事すると、ドアが開いた。





「失礼するわね」



入ってきたのは、りまだった。なお、りまは赤と白のラインのパジャマ。

なぜだろう、身体の後ろに右手を持っていって、僕達から隠している。というか、ニヤニヤしてる。



「りま、どうしたの?」

「うん、ちょっと恭文に用が有って」

「僕に?」

「そうよ。・・・・・・恭文、これを見なさい」



そうして、りまが右手をバーンと出してきた。その手に持たれていたのは、4枚の長方形の紙。

というか、チケット。赤色で、そこに大きくロゴが入ってて・・・・・・そのロゴに、僕の目が強く引かれた。



「りま、まさかそれ」

「ついさっき、郵便受けを見たら入ってたの。
・・・・・・そう、当たったのよっ! 夢のチケットがっ!!」

「え、マジっ!? やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! よし、フェイトこれ行くよっ!!
わーい、デートだデート♪ フェイトと久しぶりにお外でデートだー♪」

「え? あの・・・・・・二人とも落ち着いてっ!? いきなり過ぎて、私は分からないよっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・テレビに映る、小太りで赤いローブを纏った結構な恰幅の男性のカツラと髭が取れる。





そして、それで恥ずかしげに両手で顔を隠す。










『あーらら、髭取れちゃった♪』



そして、テレビの中では大爆笑。・・・・・・テレビの中だけは。



「・・・・・・あの、シャーリーさん」

「あぁ、リースは気にしなくていいよ。なんだかね、地球の方のベテラン芸人さんなんだって」

「いや、それならそれで・・・・・・あの、つまらないです」



あ、ハッキリ言った。てゆうか、普通にそうなんだよね。これは・・・・・・なぁ。



「というか、早々に撤退していくんですけど」

「なぎ君曰く、持ちネタそれだけしかないらしいから」

「うーん、なんだかなぁ。これなら、はやておばあ様の年末恒例の漫才の方がずっと」

「・・・・・・未来の時間でも、それやってるんだ」



あれも、なんだかんだでレベルが・・・・・・あれ、なんかクスクス笑いが聴こえる。

自然と、私とリースの視線はその子に集まる。それは、なぎ君の妹兼現地妻5号。



「髭・・・・・・髭、取れ・・・・・・おかしい、おかしいです。こんなギャグがあったなんて」

「ディードさんっ!? あの・・・・・・えぇっ!!」

「ちょっと落ち着こうよっ! さすがになぎ君だってこれでは笑わないのにっ!!
あぁ、どうすればいいのこれっ!? あ、でももしかしたらディードが純粋な証拠なのかなっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あたし、日奈森あむは突然りまに呼び出された。というか、学校帰りにドーナツショップに連れてかれた。

そして、恭文も同席。というか、買い物帰りと思われるフェイトさんも合流してきた。

あたし達四人はドーナツショップでお話。だけど、すごく気になる。なぜかりまが嬉しそうなのが気になる。





そして、恭文もすごく嬉しそうなのが気になる。










「・・・・・・これ」



そう言って、りまはあるものを出してきた。それは、四枚のチケット。

そこには、こう書かれていた。『爆笑っ! ゲラゲラ劇場っ!!』と。



「あの、りま。これなに?」

「当てたの」



いや、当てたって・・・・・・もうちょっと詳しく話して欲しいんですけど。

りま、お願いだからそんな『決まってるじゃない』って感じで言わないで? あたし、ついてけないし。



「あのね、色んなお笑い芸人さんが出てて、クスクス達が毎週楽しみにしてる番組なのー」

「あと、ヤスフミもだね。毎週これは録画してるの」

「お笑い芸人・・・・・・あぁ、お笑い番組なんですね」

「だから、恭文さんも嬉しそうなんですねぇ」





恭文もなんだかんだで、お笑いとかうるさい方だからなぁ。・・・・・・だから、二人とも楽しそう。

てゆうか、普通に最初の険悪ムードが嘘みたい。二回ほど正面衝突してるしさぁ。

りまも、恭文の所で暮らすようになってから、更に明るくなったし。本当に良い顔をするようになった。



月夜の一件が片付いてからは、また更にかな。なんか、あたしから見ても吹っ切れた感じがしてる。





「うん。それで、りまが100枚はがきを書いて公開収録のチケットを当てたのー」



100枚っ!? アンタ、どんだけ頑張ったのよっ! てゆうか、そんなに見たかったわけですかっ!!



「でも、出した後にフェイト達に『重複はがきは大体ハネられて無効にされるよ?』って言われてヘコんだりして」

「ち、違う違うっ! たまたまなのよっ!? たまたま当たったのっ!!
というか、恭文だって同じくらい書いてたじゃないのよっ! あなたには言われたくないしっ!!」

『書いてたのっ!? それじゃあ、合計200枚になるしっ!!』

「・・・・・・うん、書いてたの。普通にりまと一緒に『絶対観覧っ!!』って刺繍がしてあるはちまきを巻いて、こう・・・・・・すらすらーって」



振りつきで説明してくれるフェイトさんも、困った様子で恭文とりまを見る。そして、恭文は平然と答えた。



「だって、フェイトとデート用に欲しくて」



アンタ、やっぱりそれっ!? てゆうか、なんとなく予測は出来てたわっ!!



「うー、もう一枚当たってればなぁ。ディード誘えたのに」

「ディードさん?」

「うん。ほら、ディードって基本家事手伝いだしさ。ちょっとデートというか、外に連れ出そうと思って」



・・・・・・驚いた。というか、恭文は普通にディードさんの事考えてるんだ。

あれ? でもそれならフェイトさん連れてかないで、ディードさんと行けばいいのに。



「一応ね、私もディードに行って来たらって話したんだけど、気を使われちゃって」

「というか、僕も話した。話したけど、やっぱり気を使われちゃってさ」

「・・・・・・納得した」



あれ? でもそれなら三人だよね。四人目は誰なんだろ。

少なくとも、ディードさんを誘えないってことは、来ることが決定してる人が居るんだよね。



「まぁそんなわけなので、フェイトも来るのよ。それでアレだよね」



そして、恭文とりまとクスクスが同時タイミングで、右手で髪をかき上げた。



『素人さん、いらっしゃーいっ!!』



いきなりなにっ!? というか、普通に周りが見てるんですけどっ!!



「・・・・・・の公開収録も見られるし」

「すごく楽しみー」

「僕も楽しみー」



そっかぁ。うん、すっごい分かってたよ。だって、あたしとフェイトさんが置いてけぼりなんだもの。



「というわけであむ、次の休みだから」

「あ、結構近くにやるんだね。・・・・・・え、あたしも来る予定なのっ!?」

『うん』



凄まじく決定事項っ!? というか、四人目はあたしかいっ! ・・・・・・あぁもう、その『何言ってんの』って顔はやめてー!!



「どうせ暇でしょ? あむなんだし」

「そうだね、あむなんだしどうせ暇だよね」

「もう暇ってことまで決定事項っておかしくないっ!? いや、確かに暇だけどっ!!
でも、あの・・・・・・あたし、お笑いはあんまり興味なくて」

『・・・・・・あむ』



そう言ったのがマズかった。恭文とりまとクスクスが、すごいオーラを出して来た。



お笑いを・・・・・・バカに、してるの?

「あぁぁぁぁぁっ! バカになんてしてませんっ!! もう、楽しみですよっ!? えぇ、それは本当にっ!!」

「・・・・・・ごめんね、あむ。二人ともチケットが来てからこんな調子で・・・・・・私も止められないの」










・・・・・・・・・・・・こうして、あたしは公開収録に向かう事になった。





あははは、まぁいいか。普通に楽しくなるだろうしさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・でも、フェイトさんってお笑い興味あるんですか?」

「えっと、ここ1〜2年くらいからヤスフミと付き合う感じで見始めたんだ。
それまでさっぱりだったんだけど。というわけで、実はあの」

「フェイトさんも楽しみなんですね」

「うん。特に『素人さん、いらっしゃい』は、私から見ても面白いから」



とりあえず、もう納得した。普通に恭文とりまが止められないのは、フェイトさんを見れば明白だもん。

というか、なんだか申し訳ないなぁ。この調子だと、あたしはまた恭文に家に送ってもらうパターンだし。



「問題ないない。ここからだと通り道なんだしさ。てゆうか、フェイトも大丈夫だよね?」

「うん。あむ、私の事は気にしなくても大丈夫だよ? というより、この程度でヤキモチなんて焼かないよ」

「あははは、すみません。じゃあ、また恭文お借りします」

「はい、お貸しします。でも、ちゃんと返してね? そのまま持ってっちゃうのは、ダメ」

「もちろんです」



話をしつつ夕暮れに染まりつつある道を歩く。もう初夏という季節だから、普通に汗をかく。



「そう言えば、恭文は身体の調子大丈夫?」

「あ、そうだよね。超・てんこ盛りでかなり無茶してたし」

「大丈夫だよ? もうスッカリ元気元気」



・・・・・・ランとミキが気にしてたのか、聞いてきたのに恭文は明るく答えた。

まぁ、それなら良かった。もう使うつもりもないらしいし、一応安心・・・・・・かな。




「がおー! がおー!!」



そんな風に胸を撫で下ろしてる時だった、近所の公園に通りがかるとあたし達は変な看板を見つけた。

というか、変な声も聞こえる。野獣の叫びというか、なんというかそんな感じ。



「・・・・・・なんだろ、これ」

「ライブステージ?」

「『百獣の王・みや子ちゃん サバンナより愛を込めて』・・・・・・なんですか、これ」

「ツッコミ所満載だね」



ミキ、言うまでもなく分かってる。とりあえず、公園の方を見る。そこには、一人の女の子が痛。

オレンジのタンクトップに白のシャツ。青い髪をショートカットにした女の子が居た。



「今日こそお前を食べてやるっ!!」



そう喋るのは、右手のデフォルメなライオン人形。なお、手袋みたいに装着するタイプ。



「きゃー誰かー!!」



そして、左手の同じような感じのシマウマが喋る。



「まてーいっ!!」

「むむ、この声は・・・・・・!!」

「あぁ、もしかしてあのお方っ!?」



そして、その女の子がポーズを取る。もうビシって決める感じで。



「百獣の王・・・・・・みや子ちゃんっ!!」



・・・・・・看板通りだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!



「お前かっ! 最近サバンナを荒らしているライオンはっ!! ・・・・・・危ないから下がっとき」

「はい」

「こいつめー! こうしてやるー!!」



そして、女の子はライオンに頭突き。



「くそー、やりやがったなー!!」



反撃に、ライオンが頭にかぶりつく。

そんな感じで応酬が続いて・・・・・・決着が付いた。



「・・・・・・こうして、サバンナの平和は守られたっ! 弱肉強食の頂点・・・・・・みや子ちゃんっ!!」



いや、守られたって・・・・・・えっと、えぇ?



「・・・・・・あむ、あれは面白いの?」

「え、えっと・・・・・・どうなんでしょう」

「とりあえず、ボクにはさっぱりです」

「あははははははっ! おかしいおかしいっ!!」



とりあえず、ランには受けてるみたい。スゥもクスクス笑ってるし。



「ね、ヤスフミとりまはどうかな」



そう言いながら、視線を向けた瞬間にフェイトさんが固まった。

というか、釣られるようにして見たあたしも固まった。



「・・・・・・駄目ね」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・!!



「うん、駄目だね」



り、りまと恭文が怒りで燃えてるっ!? というか、炎が黒いからっ!!



「ヤスフミっ!? というか、りまも落ち着いてっ!!」

「嫌だなぁ、僕は冷静だよ?」

「「冷静じゃないからっ! 普通に怒ってる目だよねっ!?」」



てゆうか、どうしてこうなるのっ! あたしもフェイトさんもワケ分かんないしっ!!



「あれじゃあ、ツッコミ所が分からないわ。なにより、笑わせるならもっと全身でハジケないと」

「そうだよ。そもそも、笑いって言うのはツッコミ所が必要だし。
ようするに、『おかしい』って部分がある程度ないと駄目なのよ?」

「なお、海外のコントやギャグではツッコミという文化はないらしいわ。
基本的に、ボケに対して笑ったらそれでギャグは成立する」



さりげなくお笑い講座になってるっ!? ・・・・・・あ、でもそれは知らなかった。



「シュールギャグって言うのもあるけど、それだって基本ラインは同じだよ。
あれじゃあ・・・・・・弱い。光るものは感じるけど、それでもだよ」

「そうね。恭文、行くわよ」

「らじゃ」

「「え、らじゃってなにっ!? あの、二人ともすたすた行かないでー!!」」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「はっきり言おう」

「あなた」



二人は、女の子を指差して言い切った。



「「まだまだだわ(だね)」」

「・・・・・・いや、いきなりなに。それ以前に誰やねん、アンタ達」



あぁ、そうだよね。普通に燃えてる二人が乱入してきたんだもんね。分かってるって。



「えっと、あたしはあむ。この子はりま」

「私は、フェイト・T・ハラオウン。あ、それでこの子は、ヤスフミって言うんだ。よろしくね」

「あ、はい。木崎みや子言います。あの、よろしくです」



あ、フェイトさんが微笑みながら挨拶すると、普通に返してくれた。・・・・・・てゆうか、見とれてる?

フェイトさん、綺麗だしスタイルいいから、女の子でもついつい見ちゃうんだよね。



「ね、今のお笑いのコントだよね?」



そんな挨拶はさておき、恭文が話を切り出す。なお、恭文とりまは今も燃えている。



「パペットマペットと同じ手段ではあるけど、コンセプトは原点回帰という感じかしら。
奇抜でありながらも、古き良きシチュエーション型の三人コントを目指している」

「なおかつ、ライオン・シマウマ・サバンナという分かりやすい要素を扱う事で、万人受けも視野に入れてる」

「お、分かるんかっ!? てゆうか、もしかしてアンタらもお笑い好きなんかっ!!」



あははは、なんか嬉しそうだし。あの炎を見た上でそれが出来るのは、正直凄いと思う。



「まぁ、僕とりまもそこそこうるさい方だとは思う。それで、どうしてこんなとこで練習を?」

「実はな、うちはもうすぐある『爆笑っ! ゲラゲラ劇場っ!!』の公開収録」



みや子ちゃんの言葉に、あたしとフェイトさんは顔を見合わせる。だってそれ、あたし達が見に行くやつだし。



『素人さん、いらっしゃーいっ!!』



クスクスも含めて四人でさっきのポーズ取って声出したっ!?



「・・・・・・に出るんや。まぁ、うちの夢の第一歩やな」

「夢?」

「そうや。うち、お笑い芸人になるんが夢なんや」



・・・・・・人を笑わせる芸人になりたいらしい。それを聞いて、ちょっとだけりまの眉が動いた。



「人って、笑ってる時が一番えぇ顔してるやんか。嫌な事があっても、おもろい奴が居れば笑ってくれる。
そやから、みんなを笑わせられるお笑い芸人になりたいんや。・・・・・・例えば」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「てってけてけてけー! てってけてけてけてー!! ・・・・・・布団が吹っ飛んだっ!!」

『あーはははははははははははっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・いやいや、さすがにそのダジャレじゃ」

「・・・・・・ごめん、私もあむと同意見」

「いや、これはあくまでも物の喩えですよっ!? てゆうか、二人とも空気読んでやっ!!」



とにかく、そのために大阪から上京してきたらしい。現在は、おばさんの家に下宿中とか。

オーディションに合格して、夢への第一歩を踏み出すとか。



「あ、ごめんね。・・・・・・でも、すごいね」

「うん、それは僕も同感。わざわざそのためにここまで来るなんて、度胸あるって」



りまの顔を見ると、同じ感じらしい。で、あたしも同じ。普通に、凄いと思う。



「てか、あの・・・・・・」

「なに?」

「いや、アンタもそうやけど、フェイトさんも変とか思わんのですか? 大人やのに」



みや子ちゃんが、首を傾げる。というか、まじまじとあたし達を見る。



「みや子ちゃん、それはどうしてかな」



フェイトさんがそんなみや子ちゃんに聞くと、少し恥ずかしそうにポツリと話してくれた。



「みんな、変って言うんよ。友達とかも変わってるって言うし、親とかもこんなことせんで勉強しろ言うし」

「・・・・・・そうなんだ。でも、私は本当に凄いと思ったんだ。それは絶対嘘じゃない。
私は確かに大人だけど、それでもだよ。もちろんヤスフミとあむ、りまも同じ」



あたしとりま、恭文は、頷いてフェイトさんの言葉に同意。

そんなあたし達を見て、みや子ちゃんが嬉しそうな顔になった。



「ほんまですか?」

「うん、ほんまだよ」



更に続くフェイトさんの言葉に、みや子ちゃんが嬉しそうな顔になる。・・・・・・でも、ちょっと嫌だなぁ。

だって、みや子ちゃんにとっては大事な夢なのに、それを『変』って言うなんて。



「でも、それなら特訓が必要ね」

「特訓?」

「そうよ。あなたの夢は変じゃない。むしろ、私はいい線を突いているとさえ思っている。
それになにより、あなたには確かに光輝くものがある。でも、それはまだ原石」

「その原石を磨く事は、前に進むなら絶対に必要。そして日々の鍛錬で、原石は磨かれる」



あ、あれ? 話がなんだかおかしくなってるような。やばい、恭文とりまを止めた方がいいのかも。



「わーい、特訓特訓ー」

「頑張れー! ランも応援しちゃうよー!!」

「・・・・・・あれ、なんか聞こえたような」

「あはは、なんでもないよっ!? うん、なんでもないからっ!!」



待って、この子ランとクスクスの声が聞こえた? もしかして・・・・・・こころのたまごがあるんじゃ。



「いや、なんか聞こえた。・・・・・・そうか、これはお笑いの妖精の声や」

「「そんな妖精居るのっ!?」」

「居るんやっ!!」



いやいや、あたしもフェイトさんは聞いたことないしっ! てゆうか、普通に恭文とりまは『うんうん』って頷くなー!! 二人とも、正体知ってるよねっ!?



「あ、待てよ。確か伝説では」

「「伝説っ!?」」

「お笑いの妖精を連れたお笑いの神様が居るって」

「「神様ってなにっ!!」」

「・・・・・・まさか」



みや子ちゃんが、恭文とりまを見る。そして、不敵に静かな笑みを浮かべた。



「・・・・・・恭文、クスクス、いくわよ」

「了解」

「いっくよー!!」



りまの頬に、星と涙のマークが付いた。

というか、キャラチェンジしたっ!?



「「バラバラーンス♪」」



・・・・・・・・・・・・普通にバラバランスしちゃってるしぃぃぃぃぃぃぃぃっ! てゆうか、恭文まで一緒っ!?



「・・・・・・あ、あむ。これって」

「あ、フェイトさんは見たこと無かったですよねぇ。これはぁ、りまさんのキャラチェンジですぅ」

「でも、恭文まで一緒って」

「というか、二人とも楽しそうだなぁ」



そうだね、すっごい笑顔だもんね。笑顔過ぎて怖いくらいだもんね。



「「バラバラーンス♪ バラバラーンス♪ バラバラーンス♪ バラバラーンス・・・・・・」」



てゆうか恭文、アンタまでなんでそんな完璧? 色々キャラ壊れてるでしょうが。

そして、そんなりまと恭文を見て、みや子ちゃんが崩れ落ちた。



「・・・・・・ま、負けた」

「「敗北宣言っ!?」」

「アンタら・・・・・・いや、あなた達こそ、伝説のお笑いの神様ズっ! あぁ、伝説はホンマやったんやっ!!」



感激するみや子ちゃんを見て、二人は満足そうに頷・・・・・・って、二人も頷くなっ! アンタ達は神様でもなんでもないでしょっ!?



「奇跡やっ! 神様ズが現世に降臨なさったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



あぁ、普通にみや子ちゃんが感激して二人の手を握ってるしー! だから二人も頷きながら強く握り返すなー!!

てゆうか、そんな伝説本当にあるのっ!? あたしはマジで知らないんだけどっ! フェイトさんも同じくみたいだしっ!!



「頼みます、うちに・・・・・・うちに特訓をっ! ここで会うたのも何かの縁、うちに力を貸してくださいっ!!」

「「・・・・・・僕(私)達の特訓は、厳しいよ?」」



だから、アンタら神様じゃないよねっ!? 特訓の前にまずそこを否定してー!!



「覚悟の上ですっ!!」

「「覚悟の前に、色々おかしいことに気づいてー!!」」










こうして、突然に特訓は始まった。なお、あたし達には止められなかった。





あははは、どうなんだろこれ。




















(第44話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、コピペ歌唄編Remixなあむルートが8話いってしまった」

あむ「・・・・・・コピペだしね」

恭文「ただ、色々修正してるのよ。海里戦とか歌唄戦とか。
あと、StS・Remix前提だから、歌唄やエル達との関係性とか」

あむ「あー、それだとガチで友達なんだっけ」

恭文「うん。あと、ヒカリとシオンも居るしね。
なお、テーマソングはaccessの『Doubt&Trust』だよ」

あむ「なんか決定しちゃってるっ!?」

恭文「とりあえずあむ、エロはないから安心して?」

あむ「いや、あるわけないじゃん。あたし、まだ小学生なんですけど」

恭文「何言ってるのさ。ラスト1話で16歳とかやるかも知れないじゃない」

あむ「あ、そういう意味か。うん、納得した」

恭文「なら良かった。で、そこはともかく」

あむ「今日のあとがきのお相手は、日奈森あむと」

恭文「蒼凪恭文です。で、今日はややが頑張った話ですよ」





(なお、ほぼテレビの通りです)





恭文「・・・・・・やや、無軌道だよね」

あむ「まぁね。でも、よかったじゃん。結果的にはPちゃんも見つかったしさ」

恭文「それはね。あれですよ、拍手でも来てたけど、ややは後ろから後押しするタイプなのよ」

あむ「少なくとも、今は引っ張ってくタイプじゃないってことだよね」

恭文「うん。てゆうか、原作だとそんな感じだった」





(ガーディアンのAチェアは、実は何気に出来る子なのです)





恭文「で、最後のアレは次回のネタ振りだから。もうね、降臨するよ?
すっごい勢いで神様降臨するから。てゆうか、僕とりまが降臨する」

あむ「・・・・・・恭文、普通にアンタはあれでいいの? アンタ止める立場じゃん」

恭文「大丈夫、あむが居るから」

あむ「あたしに全部任せないで欲しいんですけどっ!?」





(現・魔法少女、さすがにこれは辛いらしい)





恭文「というわけで、来週はこの続き。お笑い道場が大開催です」

あむ「あははは、どうなんだろ。それでは、本日はここまで。お相手は日奈森あむと」

恭文「蒼凪恭文でした。みんな、来週はあむのラブマジックに期待だよ」

あむ「期待するなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










(現・魔法少女の叫びが響くけど、気にせずにカメラはフェードアウト。
本日のED:access『Doubt&Trust』)




















フェイト「でもヤスフミ」

恭文「なに?」

フェイト「やや、一応でもちゃんと仕事を通せてよかったね」

恭文「まぁね。ちょっと手出し過ぎちゃったのは反省だけど」

フェイト「確かにそうだね。もうちょっと任せても良かったかも」

恭文「うー、やっぱ僕はこういうの苦手だなぁ。出れるなら、前に出たいし」

フェイト「その辺りは性格だね。ヤスフミ、あんまり後ろで指示とかするのは向いてないから。・・・・・・ね、ヤスフミ」

恭文「なに?」

フェイト「話は変わるけど、本当に産んでいいの? もし・・・・・・赤ちゃん出来てたら」

恭文「うん、いいよ。僕もフェイトと一緒に親になりたいから。
・・・・・・ね、もう一回子作り頑張る? というか、頑張りたいな」

フェイト「・・・・・・うん、いいよ。あの、一緒に頑張ろ?」(とっても嬉しそうな顔)

リイン「やばいのです、二人ともタガが外れてるのです。普通に暴走特急なのです」

ティアナ「リインさん、今さらですよ。アイツとフェイトさんが暴走してるのは、いつものことじゃないですか」










(おしまい)





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