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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第42話 『ガーディアン、崩壊の危機っ!?』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

ミキ「ドキッとスタートドキたまタイム。超・電王編も終わって、唯世君も無事に戻ってきて・・・・・・なんだけど」

ラン「今回のタイトル、ガーディアン崩壊ってマジっ!? というか、何が起こるのー!!」

スゥ「ラン、落ち着くですっ! きっと恭文さんとあむちゃんなら、解決出来るですからっ!!」





(画面が立ち上がり、映るのは沈痛な面持ちのキング。そして、シリアスモードな青い古き鉄とほんわかクローバー)





ラン「そうだね、恭文とあむちゃんを信じてっ!!」

ミキ「どんな事件が起きても、二人なら乗り越えられるっ!!」

スゥ「というわけで、新展開のスタートなのですぅ。せーの」





(というわけで、いつもどおりにいつもなポーズ)





ラン・ミキ・スゥ『ドッキドキ♪』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・冒険の日々は、終わった。まぁ、日々って言うほど長くも無いけど。

空海がなにやら大変だったけど、僕はとっても幸せを感じている。

だって、あの・・・・・・へへへ、うふふ、おほほほ。





フェイトと、お風呂タイムの最中だから。










「・・・・・・はぁ、安心する」



まぁ、バスタオル着用なのがアレだけど・・・・・・同居人居るしね。一応は気を付けるのよ。

でも、フェイトに後ろから抱きしめてもらいつつ、お風呂に入るのは幸せ。うん、幸せ。



「そうだね。・・・・・・でも、どうしてバスタオル着用?
私達、その・・・・・・もう色々と見せ合ってるわけだし」

「色々って?」

「え? あ、あの・・・・・・その色々は、色々だよ」

「だーめ、ちゃんと話して? ・・・・・・ほら」

「・・・・・・だから、あの」



ゆっくりと、恥ずかしがりながらもフェイトは話した。顔を真っ赤にしながら、囁くように。

それが可愛くて、左手を伸ばして、後ろのフェイトの頭を撫でる。



「うん、よく出来ました。良い子良い子」



濡れているけど、それでも髪はつやつやのすべすべ。その触り心地が、とてもいい。

なお、フェイトは現在髪をアップにしている。まぁ、お風呂だしね。



「・・・・・・ヤスフミ、やっぱり意地悪だよ。私の事いじめて、楽しんでる」

「うん、楽しいよ。いじめられてる時のフェイト、すごく可愛いから」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど・・・・・・あの、恥ずかしいから駄目」



頬が、いつもより赤い。お湯の温かさと、恥ずかしさでこうなってる。

その顔が、やっぱり可愛い。だから、やっぱりまたいじめたくなる。



「いいの。いっぱいいじめて、フェイトには僕にいじめられるの、好きになってもらうんだから」

「・・・・・・ヤスフミの変態」

「じゃあ、フェイトは嫌い?」

「その、えっと・・・・・・ヤスフミの『いじめる』は、優しいからいいよ?」



また囁くように声を出す。恥ずかしいのか、身体が熱くなってるのが分かる。

やばい、これがまた可愛すぎる。破壊力が大き過ぎるから。



「あ、それでバスタオル着けてる理由はね」

「うん?」

「こうすれば、ギリギリ描写出来るから。ほら、FSの16話と同じだよ。
これでエッチなこととか無ければ、描写オーケーでしょ?」

「そっか、納得したよ。・・・・・・ね、身体は大丈夫?」



フェイトが心配そうに、僕の顔を後ろから覗き込んでくる。

その時にふかふかで温かい胸が押し付けられて、幸せが増す。



「うん、大丈夫。ただ」

「ただ?」

「てんこ盛りはかっこいいけど、もうやりたくない。
てーか、変身解除した後の消耗の激しさが辛い」



フェイトは、何も言わずに僕の頭を撫でてくれる。それで、また癒される。・・・・・・あぁ、いいなぁこれ。



「ヤスフミ、あれはカッコいいの?」

「うん、かっこいいでしょ? 色合いとか最高だし」

「・・・・・・そっか」



あれ、なんでフェイトはそんな苦虫踏み潰したような顔をするの? 僕、よく分からないよ。



「あのね、ヤスフミ」

「分かってる」

「私、何も言ってないよ?」

「フェイトもあのかっこよさに惹かれるんだよね。分かります」



もういいよね。あの配色とかさ。僕は初めててんこ盛りを使った時、衝撃を受けたよ。

あんなハイセンスでかっこいいものがこの世界に存在しているのかと、強く感銘を受けたの。



「違うよっ!? というか、あの配色は気持ち悪いからっ! 普通に目が痛くなるよっ!!」



まぁ、冗談はこの辺にしておこう。でも、失礼な。全然気持ち悪くないじゃないのさ。

良太郎さんだって、『すごくかっこいい』って言ってるのに。



「フェイトが言いたい事、ちゃんと分かってるよ。てんこ盛りは使うな・・・・・・でしょ?」



後ろに視線を向けると、フェイトはコクンと頷いた。



「強力なのも、使うことが必要だったのも分かってるの。でも、アレはだめ」

「分かってるよ。だから、てんこ盛りは使わない。てーか、さっき言ったじゃないのさ。
うん、完全封印するわ。・・・・・・まぁ、それになによりさ、なんかムカつくの」

「何が?」

「スペック勝負で、身体への負担がとんでもない。
これ、どっかの誰かさんのブラスターと被ってる感じがして」



まぁ、だから使いたくないんだよね。てんこ盛りはかっこいいけど、僕の主義にはちょっと反するのだ。



「まだまだね、強くなれると思うんだ。魔法とかユニゾンとかキャラなりに依存しない、僕自身を。
いい機会だから、ちょっと初心に帰って自分の技を鍛え直そうかなーって、ちょっと考えてる」

「・・・・・・そっか。なら、安心かな」

「フェイト、ごめん。心配かけてたよね」

「謝らなくて良いよ。だって、彼氏の心配するのは、普通の事でしょ?」

「それでも、ごめんなの」



こういうのをちゃんとするのは、関係を長続きさせる秘訣だって、桃子さんに教わったし。



「でも、鍛え直すって何をするの?」

「こういう場合、まずは初心に振り返る・・・・・・かな。新技の練習でもする。
ちょっとさー、試してみたい技が幾つかあるんだー」

「そうなんだ。あ、でもそれで無茶はだめだよ? それで身体壊したら、意味ないもの」

「うん、了解。でもさ、新技って言っても前々から練習してたのだから、大丈夫だよ?
もっと言うと、未完成な技を完成させるの。・・・・・・なんか、今なら出来そうな気がするの」



九頭龍閃とか、天翔龍閃とかだね。先生は出来てるし、ちょっと頑張りたい。



「どうして?」

「色々変わったから。たまごが生まれたり、たまご関連の事件に関わって・・・・・・『なりたい自分』とか、色々考えるようになったから」

「納得した」



あと・・・・・・アレなんだよなぁ。フェイトが、こういう風に言うのは理由があるのよ。



「あのね、何度も言うようだけど、マジで使うつもりないよ?
今は、過去二回とは全然違うんだし、僕も気を引き締める」



てんこ盛りを使うのは、これが初めてじゃない。まず最初は、幽霊列車騒動の時。

そしてもう一回は、去年の鬼退治の時。



「そうだね。咲耶が戻って来たら、一番クリアするのが難しい条件が整うわけだし」





てんこ盛りは、前にも言ったけどパスの力とリインとアギト、咲耶が居て初めて使える。

まぁ、今回はリースも加わってたけどね。で、ここが重要なのよ。

咲耶は、本来この時間にとってイレギュラーな存在。だって、僕の孫のパートナーだもの。



つまり、てんこ盛りは本来なら使用条件そのものが整うハズがないの。

パスもロストロギア扱いされるのがめんどくて、オーナーに預けてたしさ。

だけど、今は違う。だからフェイトだって、普通にこういう事を言うのだ。





「僕、本当にもっと強くなるわ」



抱きしめてくれるフェイトの手を、撫でる。優しく・・・・・・気持ちを伝えるように。



「今を使い潰さないように。さっき言ったように色々なものに頼らないでも、今回みたいな状況でも戦えるように」



やっぱりさ、色々反省するのよ。楽しいのは楽しいけど、それでもさ。



「それで・・・・・・うん、ここも変わってないな。フェイトの今と笑顔を、守れるように」

「・・・・・・うん」



フェイトの抱擁が強くなる。優しく、温めるように抱きしめてくれる。なんか、すごく心地いい。

触れ合って、温もりが伝わって・・・・・・それだけなのに、すごく幸せになれるから不思議。



「てゆうかさ、この温もりと心地よさは手放せないもの。
僕の守りたい今が、ここにしっかり詰まってる」

「なら、嬉しいな。・・・・・・ヤスフミ」

「なに?」

「おかえり」



・・・・・・一緒に帰って来たのに、おかえりと言う人を見たのは、これで三人目だ。

一人は、さざなみ寮の槙原愛さん。そしてもう一人は、知佳さん。



「ただいま。あ、それなら僕もだね。フェイト・・・・・・おかえり」

「うん、ただいま」



エッチなこととかするわけじゃなくて、二人で湯冷めしない程度にお風呂に入って、色々お話。

今回の事とか、あむの事とか・・・・・・色々。



「・・・・・・てんこ盛りを使わない理由、もう一つあってね」

「うん」

「あむに約束したんだ。もうあんな無茶はしないって。
その時さ、神速を初めて使った時の事思い出して」



あの時も、今と同じ感じだった。コントロール出来なくて、暴走状態だったもの。



「あの時のフェイトの泣き顔と、あむの顔が被ってさ。
・・・・・・使えなくなっちゃったや。特に今回はあむ、泣きっぱなしだったし」

「そっか。・・・・・・あむの事、好きなんだね」

「うん。大事な友達だもの」



そして、フェイトの抱擁が強くなる。というか、胸がギューってされてる。



「ヤスフミ」

「なに?」

「余所見・・・・・・禁止だから」



・・・・・・フェイトさん、ヤキモチモード入りました。



「フェイトが余所見させてくれなかったら、問題ないよ?」



いつもヤキモチモードの時は、動揺してばかり。だから、こうやって返す。



「うん、させないよ。あむや歌唄に負けないくらい、自分を磨く。
・・・・・・女の子として、あなたの彼女として、私もっと素敵になる」





フェイトの身体が、少しだけ離れる。それで・・・・・・顔が真横に来る。

そのまま、フェイトは僕の左頬に右手を添えて、そっと唇を重ねた。

数秒・・・・・・そのまま。ちょっとビックリしたけど、僕はそのまま受け入れる。



それから、フェイトの唇が離れた。離れて、僕のことすごく近くで見てる。





「ヤキモチ焼き、もう卒業したいんだ。このままじゃ、ヤスフミに捨てられそうだもの」

「捨てたりしないよっ!? ・・・・・・というか、ごめん。
不安にさせてるよね。歌唄の事とか歌唄の事とかで」

「そういうことじゃないの。もちろん、ヤスフミが好きじゃなくなったとかじゃないよ?
それは絶対。・・・・・・こう、女の子としてのプライドの問題って言えばいいのかな」



フェイトは、体勢を戻してまた僕を後ろから抱きしめる。抱きしめて、体重を預けてくれる。



「歌唄が第三夫人になりたいって言い出してるのとは、別問題。
歌唄やあむ・・・・・・ううん、ガーディアンのみんなを見てて、思うんだ」



やっぱり、その感触は心地いい。だから・・・・・・フェイトの気持ち、伝わってくる。

不安になっているとか、そういうのとはまた違う。どこか決意したような強さが感じられた。



「新しい私、ちゃんと続けていけてるのかなって、ちょっと考えた。
つまりその・・・・・・自分を省みて、もっと成長したいなと」

「そっか。なら、よかった。フェイトに捨てられちゃうのかなって、ちょっとビックリしたから」

「捨てないよ。ヤスフミが好きなのも、大切なのも、彼女で居たいと思うのも、変わってないから。・・・・・・でも」



体重を預けながら、右耳にささやくように言ってくる。



「この状況であむの話をしたの、ちょっと嫌だったんだ。
だから、あとでいっぱいいじめるね。今日ヤスフミは、私にいっぱいいじめられるの」

「・・・・・・うん」

「というか、今からいじめちゃおうかな。ヤスフミ悪い子なんだし、しっかりお仕置きしなくちゃ」

「それはだめっ! 普通に描写出来ないでしょっ!?」





でも、ようやく帰って来たんだなぁ。なんか、やっと実感してきたよ。だから、ふとお風呂の窓を見る。

そちらを見ると、空は満天の星。そして・・・・・・視線が合った。いや、表現おかしいけど合ったのよ。

フェイトも、僕が固まっているのに気づいてそっちを見る。そして、固まった。



窓の外には白と緑のフリフリの服を着て、金色の髪の女の子。



体長は妖精サイズのリインより少し小さい程度。というか、ガチに妖精。





「ど、どうもですぅ」

「「・・・・・・スゥ(ちゃん)っ!?」」




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第42話 『ガーディアン、崩壊の危機っ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・さてスゥ、どの辺りから見てた?」

「え、えっとぉ・・・・・・『強くなる』という辺りからですぅ」



フェイトと二人、顔が真っ赤になる。つまり・・・・・・キスした所は、見られてる。



「あぁ、ごめんなさい。見るつもりはなかったんですけど、目に入ってしまってぇ」

「あ、そうなんだね。あのね、スゥちゃん。その・・・・・・ごめん、黙っててくれる?」

「大丈夫ですぅ。スゥは、これでも口が堅いですからぁ」



とりあえずお風呂を上がってスゥを取っ捕まえて、今に至る。・・・・・・よかった。

向かい合って洗いっこしてる件とか見られなくて、ホントによかった。



「それでスゥちゃん、どうして来たの? だって、あむと一緒に帰ったはずなのに」



僕の方をフェイトが見るので、頷いた。うん、僕はちゃんと家まで送って来たもの。

なのになぜにまた来た? 僕、普通にビックリなんですけど。



「・・・・・・恭文さん、ミキとのキャラなりがパワーアップしたんですぅ」

「パワーアップ? ・・・・・・あ、そう言えばそうだよね」



フェイトは、実験に付き合ってくれたので知っている。だから、スゥの言葉に納得した。



「私はあの場に居なかったけど、ジャックフォームに変身したんだよね」

「うん」



進化し続ける夢と、未来への可能性を証明した姿。それがアルカイックブレード・ジャックフォーム。

あのジュースのおかげで体力問題が片付いてから、ちょっと試したら出来てしまったのだ。



「スゥ、月夜さんとの戦いの時まで知らなかったですぅ。なので」

「「なので?」」

「スゥも恭文さんとキャラなり出来るようになるために、修行するですぅっ!!」

「「・・・・・・・・・・・・はぁっ!?」」



ちょ、ちょっと待ってっ! 話繋がらないからっ!! なんでそうなるっ!?

でも、スゥ的にはそうなるらしい。もうすっごい勢いで僕を見て、目が燃えている。



「というかというか、ミキとキャラなり出来るならスゥとだって出来るハズなんですぅっ!!
というわけで恭文さんっ! 一緒に頑張りましょうっ!!」

「いや、頑張るって・・・・・・あの、スゥっ!?」

「なので、明日から早速修行ですっ! 準備はいいですかぁっ!?」

「話を聞いてー! というか、フェイトもなんとか言ってっ!!」

「そ、そう言われても困るよっ! キャラなりとかは専門外なんだからっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文、昨日はよく眠れた?」

「うん、ぐっすり・・・・・・眠れるわけがないでしょうが」

「ごめん、一応止めたんだけど聞いてくれなかったの。
なんかスゥ的には、アンタとキャラなりはずっとしたかったみたいでさ」



あむ、僕の方こそごめん。そんな疲れ果てた目はやめて?

罪悪感があのゾンビ張りに増殖し続けるから。



「ということは、あむも?」

「うん、アンタと同じ」



そして、僕達は見る。なんか、腕立て伏せとかしているスゥを。



「・・・・・・スゥ、お前どうしたのだ? 僕は色々と気になるんだが」

「恭文さんとキャラなりするための、修行ですぅっ!!」

「ねぇスゥ、ミキが力を貸してくれてるんだし、私はそこまで無理すること無いと思うんだけど」

「ラン、そういう問題じゃ・・・・・・ないので・・・・・・すぅ」



あ、なんかテーブルの上に突っ伏した。まだ5回しかしてないのに。



「・・・・・・まぁ、言っても聞かない感じだし、しばらくお願い出来る?」

「うん、そのつもり。でも・・・・・・どうしよう。キャラなりって、簡単には出来ないよね」

「多分ね。てゆうか、普通にアンタがたまご産まれる前にミキとキャラなり出来たのも、奇跡みたいなもんじゃん」

「そうなんだよね」



・・・・・・スゥの襲撃の翌朝、リインとあむとりまとティアナと一緒に学校に向かった。

で、勉強して・・・・・・放課後の恒例会議。てゆうか、なんかすっごい久々な感じがするのはどうして?



「・・・・・・あむちーと恭文、会話が怪しいよ? 普通に色々疑っちゃうよ」

「エース、それは深読みし過ぎです。単純に問題が勃発しただけでしょう」

「それもそうだね。てゆうか、恭文モテモテだねー。スゥちゃん、恭文にべったりだし」

「アレでちね、やっぱり二階堂先生との一件が効いてるでちよ」



あぁ、アレかぁ。確かにスゥとの距離感が近くなったのは、アレからだよなぁ。



「それでキング、今日の議題は?」

「うん。実は・・・・・・今後のガーディアンの活動についてなんだ。
特に今日は蒼凪君やリインさん、三条君の意見が欲しくて」



唯世が、実に困った顔をしている。・・・・・・それを見てりまとかあむがやたらと嬉しそうなのは、いいか。



「唯世さん、何が困ったですか? というか、リイン達の意見が欲しいって」

「まぁ、もう言うまでもないと思うけど、ガーディアンというのは生徒による生徒のための、ちょっと特別な生徒会なんだ」



え、いきなり復習? ・・・・・・唯世が何を意図しているのか、よく分からない。

なので、まず話を聞いてから発言することにした。



「それで、当然の事なんだけどガーディアンにはキャラ持ちという事を除けば、聖夜学園の初等部に居る人間しか入れない」



いやいや、そこはすごい当たり前の事だよね? だって、ガーディアンは小学校の生徒会なんだから。



≪・・・・・・唯世さん、何が言いたいんですか? もうちょっとストレートに言いましょうよ≫

「ハッキリ言えば」



そう口にするのは、腕立て伏せ5回でへばっているスゥの近くに居るキセキ。僕達は当然のようにそちらを見る。



「来年度のガーディアンがどうなっていくか。そこを唯世もそうだが、僕も心配しているんだ」



唯世の代わりに、キセキがストレートに言った。これまた当然のように、ある人物を見た上で。



「来年度?」

「もっと言うと、新年度・・・・・・春になってからだな」

「・・・・・・あぁ、そういうことね」



そして、りまも見る。今美味しそうに、リースが早起きして作ってくれたチョコケーキなんてほうばっている子を。



「唯世くん、あたしも言いたい事分かった。確かにあたしとりまと唯世くんは、今年で卒業だしね」

「蒼凪さんも、エンブリオ事件が解決すれば元の仕事に戻る身。
それはリインさんも同じくですし、俺ももうすぐ転校します」

「うん、そうなんだ。新Jも僕達と同じ6年生。当然のように、僕達と一緒に卒業。つまり」



あむと海里、唯世がある女の子を見る。本当に幸せそうな顔で、口元にチョコなんて付けてる子を。



「なるほど、唯世の言いたい事は僕も分かったわ」



そして、僕も見る。というか、さっきから見てた。



「来年度のガーディアン、現メンバーの中ではややしか残らない」



一応おさらい。結木ややは、現体制のガーディアンではAチェアに位置する女の子。

赤ちゃんキャラのペペが、パートナーのしゅごキャラ。そして、現在小学5年生



「・・・・・・うん」



つまり、来年6年生。やや以外の人間はさっき言ったような感じなので、このままだと残るのは本当にややだけになる。

仮に新メンバーが見つかって補充されるとしても、いきなり全部の仕事が出来るわけじゃない。誰かが教える必要がある。



≪それで、あなたはそこが非常に不安なんですね≫



その場合、それを誰がやるかというのは・・・・・・もう、言うまでもないと思う。



「・・・・・・・・・・・・うん」



だからこそ、唯世がなんか泣きそうに・・・・・・って、そこまでかい。そこまで心配なんかい。



「え、どうしたの? というか、みんなケーキ食べないの?」





やや、ケーキを食べる前に、おのれも僕達も現実の苦さって言うのを食べないとダメなのよ?

人生は、甘いだけじゃないの。やばい、普通に僕まで心配になってきた。

新メンバーに6年が居ない限りは、ややがガーディアンの実質のリーダーになるしさ。



ややがどう思おうが、新メンバーは間違いなくややを頼りにする。最初からしない理由があるとは思えないもの。





「ね、唯世にキセキ。ガーディアンメンバーの選出って、唯世とかがスカウトするの?」

「ううん。理事長がどんな手を使ってるのか、キャラ持ちの子を調べて推薦してくるの」





もう一つおさらいだね。聖夜小の理事長は、天河司さんという人。外見は大人な唯世。

校内の外れにあるプラネタリウム(特別資料棟)の管理人も兼任。

そして、ガーディアンの初代キング。あむ曰く、作家の『たまご』らしい。



どこか不思議な雰囲気を漂わせている人で、僕の周りには居ないタイプである。





「唯世もそうだが歴代キングは、それに従う形でガーディアンメンバーを受け入れるというのが習わしだ」

≪意外と伝統的というか、古めかしい選出方法なんですね。私は少しビックリです≫





それで海里を普通にガーディアンに入れたのも、正直びっくりだけどね。

だって、理事長だったら海里のお姉さんの事とかも、最初から分かりそうなのに。

あの人、もしかしてマジで最初から知ってたとかじゃないよね?



いやいや、さすがにそれは・・・・・・なんかありえる。うちのタヌキとはまた違う意味で、隠し事好きそうだし。





≪ですが、そう考えると色々とまずいですね。
どうみてもこの人、リーダーシップ取ったり人を指導出来る人じゃないですし≫

「やっぱりそう? 正直、僕もそこがかなり不安なんだ」



そして、唯世が見る。今は紅茶をノンビリ飲んでいるあの子を。



「・・・・・・あの、なんでみんなそんなに残念な目でややを見るの?」



さすがに、全員から見られると気づくらしい。ややは不満げに僕達を見る。



「というか、さっきから何の話してるのかな。もしかしてやや、バカにされてるのかな」

「違うよやや。僕達は、ややにリーダーシップは期待出来ないと思ってるだけだから」

≪そうですよ、ややさん。来年にはガーディアンは崩壊かなと、強く思っているだけですから≫

≪そうなの、ややちゃん。だから、決してバカにしてるわけじゃないの。
ただ主様達は、現実を見ているだけなの。そして、現実はいつだってほろ苦いものなの≫

「同じことだよね、それっ! というか、ジガンちゃんまでヒドいよー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、お菓子も食べ終わったので僕達は外に出た。





出て、唯世の話の続きを聞く。なんか、ここで待ち合わせらしい。










「で、おのれが来るんかい。それで、ややに特訓と」

「まぁな。・・・・・・恭文、日奈森、あと真城もか。
昨日のアレコレ、いつかしっかり説明してもらうからな」



そう、空海である。元Jチェアで、特訓という体育会系な行動が得意。

で、若干睨み気味に僕達を見る。・・・・・・マジで時間の歪みの影響を受けてないらしい。



「恭文、空海って電王に変身出来るんじゃないの? ほら、こういうの特異点って言うんだよね」

「確か特異点はあんな事があっても、記憶が消えたりしないのよね」



あむが空海の視線に怯えながらも、小声で聞いてくる。というか、りまも。



「じゃあ、良太郎さんと同じじゃない」

「まぁ、ハナさんも特異点だし、ヴィヴィオも同じくだからもう一人くらい居ても驚かないけどさ」

「え、ヴィヴィオちゃんも特異点なのっ!?」



そうなのよ。だから、リュウタ達に憑依されても身体を完全に支配されないし、ミニ電王とかにも変身出来る。

まぁこの会話はいいでしょ。空海にはちゃんと説明することにする。じゃないと、ずっと気にしそうだし。



「・・・・・・それでね、ガーディアン崩壊なんて未来を阻止するために」

「唯世、そのマジ顔止めない? そんな今日明日でどうこうなるって話じゃないんだしさ」



まぁ、現Kチェアとしての立場を鑑みると、気持ちは分からなくないけどさ。

来年、色んな意味でガーディアンの中心になるややは、普通に青い鳥と遊んでるし。



「なにより、いきなりリーダーシップ取れって無茶じゃない? これこそすぐどうこうなる話じゃないよ」



別にややだけの話じゃないのよ。現状からして、目上で同年代ばかりでしょ?

そこから『僕達卒業だから、お前リーダーやれ』なんて、やっぱ無茶ぶりだって



「まぁな。ただ、どっちにしろややが来年度のガーディアンを引っ張ってくのは決定だ。
今の内から、その自覚を持たせておくに越したことはないだろ」

「さすがに僕もそうだし相馬君だって、いきなり出来るとは思ってないよ。
ただ、これを機会に結木さんにはもうちょっと成長して欲しいんだ」



唯世が変わらぬ真剣な顔でややを見る。それに周囲の人間が若干苦笑いだけど、気にしてはいけない。



「結木さんは、今までが今までだったせいか自然と周りに甘えちゃう傾向が見られる。
せめて、そこの辺りを何とかしたいんだ。それだけでも違うはずだから」

「・・・・・・なるほど」



場所は中庭。僕達は、テラスから芝生にしゃがんでいるややを見る。

ややは、実に楽しそうに小鳥と遊んでいる。きっと今、ややは幸せを運んできてもらってるのよ。



「それよりもよ、恭文。お前・・・・・・アルトアイゼンはいいのかよ」

「空海、あれは風景の一部だと思ってくれていいから」



そして、そんなややの隣に勝手にノロウサモードになって遊んでるバカウサギが居るけど、気にしてはいけない。



「・・・・・・結木さんには、特訓が必要だと思うんだ。結木さんには、特訓が必要だと思うんだ」



唯世、それ何回目? 僕の記憶が正しいなら、多分13回目だと思うんだけど。



「結木さんには、まだ沢山の可能性が眠ってる」



唯世は見ている。沢山の可能性の前に、自分が眠っているんじゃないかって思うくらいに緩い顔をしたややを。

だから、僕も見る。カッコつけたポーズを取って、鳥の興味を引いているウサギを。



≪それを空海君との特訓で開花させようということなの?≫

「一応、そうなるね」



そして、そんなややは楽しそうに鳥さんと遊んでいる。で、鳥を見送った。

立ち上がりながら、ややは手を振る。バカウサギはビームライフルを持ってそのまま振る。



「鳥さん、バイバーイ」



その様子を見て、全員がため息を吐く。普通にため息を吐いてしまった。



≪・・・・・・主様、空海君、アレは大丈夫なの?
ジガンから見ても、ややちゃんは人を引っ張っていくタイプじゃないの≫

「ジガン、知ってる? 時として人間には、真実から目を伏せることも必要なの。
真実だけじゃ、人は生きていけない。優しい嘘だって、必要なんだから」

「確か、ジガンスクードっつったよな。・・・・・・仮に最初から負けると分かっていたとしよう。
でも、男にはな・・・・・・それでも戦わなくちゃいけない時ってのがあるんだよ」

≪主様も空海君も、詩人なの。でも、この場合は目を伏せても戦っても、きっとなにも解決しないの≫





分かってますよ。というか・・・・・・うーん、ややに唯世とか海里みたいな感じになれって、無理じゃない?

こうさ、キャラクターそのものから違う感じがするのよ。ややはこう・・・・・・上手く言えないな。

別に、ややは人気が無いわけじゃない。というか、人気はかなりある方だよ。ただ、あむや唯世達とは違う。



後輩とかからも気軽に声をかけられるし、親しまれてる感じ。

ガーディアンメンバーがされがちな、アイドル的な見方がややには少ない。

・・・・・・そうなんだよね、ややは決して人様から嫌われる子じゃないのよ。



ただ、末っ子タイプだからリーダーシップとかそういうのが弱いってだけなんだよね。





「・・・・・・あの」



後ろから声がかかる。それは、僕より小さな子ども達。そのうちの一人が、空の鳥かごを持っているのに気づいた。

困ったような、泣きそうな顔をしている。だから、リインがその子達の前に言って、話を聞く。



「みんな、どうしたですか?」

「あの、私達3年星組の生徒です。実は・・・・・・クラスで買っていたインコのPちゃんが」



あむ達も空の鳥かごを見る。それで、大体の事情が分かった。



「もしかして、逃げちゃったですか?」

「はい。もうすぐ夏休みで、私の家で預かるために別のケースに移そうとしたら」

「なるほど。うし、じゃあ僕達にその鳥の外見とか、教えてくれるかな」










日常から戻ってきて、発生したのは小さな・・・・・・ううん、小さいも大きいもないか。ここは反省。





発生したのは、一つの事件。ガーディアンは、何時だって生徒の味方。





だから、居なくなったインコ探しだって、頑張っちゃうのだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あむ、どう?」



現在、あむの頭頂部で髪を結わえている×の髪飾りは、青いスペード型になってる。

つまり、ミキとキャラチェンジの最中。それで、この子達から話を聞いて鳥の絵を描いてるのだ。



「うん、出来たよ。・・・・・・これで、どうかな」



長方形のスケッチブックを3年の子達に見せる。見せると、みんなの表情が驚きと喜びに溢れた。



「そっくりで、大丈夫?」

『はいっ!!』





あむの言葉に、みんなは力いっぱいに頷いた。うん、ならよかった。

でも、鳥探しか。普通にやったら難しいよなぁ。

あ、でも待てよ。アルトのサーチを使えば何とかなるかも。



なお、絵は鉛筆で描かれているので白黒である。とりあえず、あと確認するのは色だね。





「ね、色は何色?」

「えっと、青です。それで、特徴は絵にもありますけど、くちばしの所の黒い模様です」



もう一度、僕は絵を見る。・・・・・・これで青。確かにくちばしに模様がある。



「大きさは」

「えっと、これくらい・・・・・・です」



3年の子が手の平で示してくれた。大体10センチ前後。結構平均サイズかな。



”・・・・・・あの、マスター”



うん、どったのアルト。



”私とややさん、さっきこの鳥と遊んでました”

”へぇ、そうなんだ。・・・・・・・・・・・・はぁっ!?”










・・・・・・もしかして、あの青い鳥っ!? え、じゃあ捕まえるチャンスあったじゃんっ!!





あぁ、失敗だったー! 普通に青い野鳥なんて、街中で居るのは不自然なのにっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



その日の夜、ややはとっても不機嫌。なので、ママの足に抱きついたりしてる。

うー、だってだって・・・・・・唯世とあむちーと恭文と空海が、ややに鳥探ししろって言うのー。

なんか、さっきまで話してた特訓だって言って、ややだけでなんとかしろって・・・・・・そんなの無理ー。





というか、ママ聞いてるっ!? やや、とっても困ってるんだからっ!!










「はいはい、聞いてるわよ。でもやや、それならどうしてその場でちゃんとお話しなかったの?」

「だって・・・・・・うぅ、3年の子達が、凄い勢いでややを見るの」



もう必死というか、頼り切っているというか、もうややしか当てが無いというか・・・・・・あれで断る選択、なかった。

そして、任されてからすぐに探した。探したけど・・・・・・サッパリだった。全然居ないの。



「やや、お姉ちゃんだから頼られちゃったのね」

「お姉ちゃん・・・・・・かぁ」



とりあえず、ママの足から離れてリビングに行く。リビングでは、つばさと太郎が仲良くテレビ観賞。



『・・・・・・噂の刑事っ! サニー&チャッピー!!』



あぁ、これ最近流行ってるアニメだ。えっと、擬人化って言うのかな(恭文に教えてもらった)。

犬の警部さんと、ねずみの警部補さんが、難事件をパパっと解決・・・・・・解決?



「あぁ、そっかっ!!」










居るじゃんっ! ややの周りに、そういうのが出来る人っ!!





よし、早速相談だー!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「修行その1! 恭文さんと一緒にお掃除なのですっ!!」

「お、おぉ・・・・・・」

「というわけで、恭文さんキャラチェンジッ!!」



そうスゥが声を上げた瞬間、僕の頭の右側に緑色でクローバー型の髪飾りが付いた。

な、なにこれっ!? てゆうか、キャラチェンジって・・・・・・えぇっ!!



「他の人とキャラチェンジ出来るですかっ!?」

「あ、もしかしてヤスフミがたまごを産んでるから出来るの?」

「なるほど、たまごの段階でもキャラ持ちであることには変わりないということですね」



フェイトもディードも納得してないで止めてー! そして、リインもそんな瞳をキラキラさせないでっ!? 突っ込むべき所は、もっと他に沢山あるからっ!!



「その通りなのですぅ。というわけで、修行スタートなのです」

「よーし、頑張っちゃうぞー♪」



きゃー! こんなの僕のキャラじゃないしー!! やばい、あむの辛さが分かってきたしっ!!



「それぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



シャー・・・・・・パタパタパタッ!!



「なぎ君もスゥちゃんも、すごいっ! 家がどんどんピカピカになってくよっ!!」

「今日の恭文さんは、三倍速いのですっ!!」

「なんというか、見習うべき手際の良さです」

「・・・・・・自信無くすよ。私もシャーリーもディードも、お掃除は相当頑張ってるのに」



あぁ、フェイトが落ち込んでるー! ごめん、本当にごめんっ!!



「修行その2! 恭文さんと一緒にお料理なのですっ!!」

「いっきまーすっ!!」



ジャー!!



「わぁ、すごいですっ! というか、これ満漢全席じゃないですかっ!!
あぁ、かえでちゃんも来れればよかったのにー!!」

「りまー、すごいねー。クスクス、初めて見たー」

「私もよ。でも、美味しそう」

「・・・・・・ねぇ、この量を私達だけで食べきれって言うの?」



なお、満漢全席は昔の中国の高官が三日三晩かけて食べたというフルコースです。



「てーか、アンタまでどうして乗ってんのよ。キャラチェンジしてるからって、それはないでしょ」



ティアナ、その呆れた目はやめてっ!? というか、しゃあないでしょうがっ! スゥがすっごいやる気で止められないんだからっ!!



「まだまだ行きますよっ! 修行その3!!」



え、まだあるのっ!? お願いだからやめてー! 普通に満漢全席食べようよっ!!



「恭文さんとキャラなりですぅっ!!」



もうそれ修行じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! 1+1で100とか1000とか出そうとしてるよ、この子はっ!!



「恭文さんとスゥのこころ」



スゥが、僕を見る。なので、僕はそのまま胸元に両手を上げた。なお、選択肢はこれしかなかった。



「「・・・・・・アンロックッ!!」」



・・・・・・シーン



「だがしかし、なにもおこらなかった・・・・・・だね」



シャーリー、いいツッコミだ。そのファミコン時代を思わせる平仮名文字がナイスだよ。

そして、スゥがわなわなと震えながら床に崩れ落ちる。崩れ落ちて、声をあげる。



「何故ですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 修行は、完璧だったハズですぅっ!!」



完璧じゃねぇぇぇぇぇぇぇっ! 色んなもんが抜け落ちてるよっ!?

どうして自分でそれが分からないのかって言いたくなるくらいに、抜け落ちちゃってるからっ!!



≪・・・・・・あなた、普通に辞書で『完璧』って言葉の意味を調べてから、そういう事は言ってくださいよ≫

≪色々な意味でツッコミ所満載なの。というか、そんな修行だけでパワーアップ出来ないの。
出来たら、ジャンプ編集者は困り顔なの。修行編でのストーリーの引き伸ばしが無理なの≫



スゥが崩れ落ちた瞬間に、頭のクローバーが消えた。・・・・・・よ、よかった。普通に開放された。



「あー、あー・・・・・・よし、いつもの声だ。というわけで」



近くに居たフェイトを抱きよせて、ハグ。



「ヤスフミっ!? ・・・・・・あの、えっと・・・・・・辛かった?」

「かなり。ごめん、僕はあむと唯世の気持ちが痛いほど分かったよ」



なお、りまは含めない。だって、りまのキャラチェンジは内緒だって約束してるし。

だから、横目で見るとりまがなんだか嬉しそうにしてる。・・・・・・いいのよ、別に。



「あぁ、癒される。フェイトとハグは癒されるー」

「あの、それは嬉しいけど・・・・・・駄目だよ。みんな見てるし。それになにより」

「あぁ、そうだったね。フェイト、ありがと。もう大丈夫だから」

「なら良かった」



とりあえず、ハグを終了して見る。崩れ落ちたほんわかクローバーを。

・・・・・・どうしようか、これ。普通にもう居座る気満々だし。



「あの、スゥ? ほら、キャラなり出来なくてもスゥと僕が友達だって言うのは変わらないし」



とりあえず、しゃがんでスゥに話しかける。スゥは僕を見て、涙目で首をぶんぶんと横に振る。



「駄目ですぅ。そういうことじゃ・・・・・・ないですぅ」

「じゃあ、どういうこと? スゥ、もし事情があってこれなら、ちゃんと話して欲しいな」

「・・・・・・恭文さん、スゥと二人でお散歩してくれませんかぁ? それで、お話します」









とりあえず、満漢全席食べるのは後にして・・・・・・僕とスゥは、二人っきりで夜のお散歩となった。





でも、なんでこれなんだろう。スゥの勢いが、ちょっとおかしい。必死と言うか何というか・・・・・・うーん。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『鳥探し・・・・・・なるほど、それで私に』



連絡したのは、フェイトさん。フェイトさんは、執務官って言う事件捜査したりするお仕事をしてる。

それでそれで、ややくらいの年からそういうお仕事に関わってたって言うし、きっと力になってくれると思った。



「はい。・・・・・・うぅ、恭文もそうだし、こてつちゃんやジガンちゃんも駄目だって言って、協力してくれないんです」



それはリインちゃんも同じく。すごい笑顔で応援オーラ出されて、取り付く島もないの。



『それはそうだよ。だってこれは、ややに任せられた仕事だもの。基本的に、ややが頑張らないとだめ』



やっぱり、そうなのかぁ。この調子だと、フェイトさんのバルディッシュの力を借りるとかも無理だよなぁ。

いや、ティアナさん・・・・・・あぁ、だめだ。普通に断られちゃいそうだよ。



『なので、私が出来るのもアドバイスだけかな。
・・・・・・まずね、捜査の基本は足。そして聞き込み』

「あ、それは魔法とかがあっても変わらないんですね」

『そうだね。ヤスフミみたいに、事件が起きて普通に黒幕に遭遇して戦闘して解決って言うのは・・・・・・ないんだ』



フェイトさん、ちょっと悲しそうに言わないでください。

というか、恭文はやっぱりそういうキャラなんですか?



「でも、それってこう・・・・・・人というか、犯人を探す時ですよね。相手は鳥ですし」

『それでもだよ。例えば、そのインコを見た人が居るかも知れないし、保護した人が居るかも知れない』



保護? ・・・・・・あ、そっか。Pちゃんが他の人の家に居る可能性も、あるってことか。

つまり、聞き込みでそれを調べる。目撃情報だけでもあれば、大分探しやすいから。



『むやみやたらに鳥網とかごを持ってあっちこっちを走り回るより、ずっと効率はいいと思う』

「なるほど」

『あと、忘れちゃいけないことが一つ。・・・・・・事件が起きてる時は、必ず泣いている誰かが居るということ』



フェイトさんの声が、真剣なものになった。それに、思わず背筋を伸ばす。



『ややに分かるように言うと・・・・・・×たまだってそうでしょ?
出てきた時は、こころに×が付いて苦しい思いをしている人が、必ず居る』





あ、それなら分かる。だから、ややだって×たまが出てきたら何とかしたいって思うんだし。

・・・・・・あむちーが来る前、やや達の中で浄化出来る人間は居なかった。

まぁ、×たま自体がそんなにポイポイ出て来なかったから、ここは問題なかった。



でも、壊すって考えたら凄く嫌で、泣きたくなった事が何度もある。だって、×が付いたってたまごはたまごなのに。



それでもし、ペペちゃんが壊されたり消えたりとか考えたら・・・・・・嫌だもの。





『今回の場合だと、その子達が泣いてる。だって、大事じゃなかったら探そうとするはずがないもの』



そうだ、あの子達泣いてた。クラスで飼っている大事な鳥だからって、すごく。

そっか、鳥がどんな形でもいいから見つからないと、あの子達はずっとあのままなんだ。



『誰かが泣いてるのは、やっぱり悲しいよ。
だから、こういう仕事をしている部分もあるんだ』

「・・・・・・あの、フェイトさん」

『やる気、出てきた?』

「はい。ありがとうございました」

『ううん、頑張ってね』










・・・・・・そうだよね。こんなの、嫌なんだよね。だから、やや達に頼ったんだよね。だったら・・・・・・うん、頑張ってみよう。





ややはフェイトさんとか恭文に唯世達みたいに出来ないけど、それでも頑張りたくなった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・うわぁ、いい眺めですぅ」



スゥが、表情をほころばせる。現在、街中にある高層ビルの上。

フェイトとの飛行訓練中に見つけて、フェイトと二人でたまに来るのだ。だって、景色が凄くいいから。



「でしょ? 今は夏だから、気候もちょうどいいしね」



魔法で姿を消した状態で、ちょこっとだけなら問題はない。監視カメラの類もないし、バレる心配はない。

街のネオンが星の光みたいにキラキラして、夜の闇を彩る。この街全体が一望出来るくらいなのよ。



「それに、ここなら人も来ない。・・・・・・スゥ」



僕は、そのビルの縁際に腰かける。スゥも、同じく。



「はい。スゥ・・・・・・あの時、すごく嫌だったです」

「あの時?」

「恭文さんが、超・てんこ盛りで身体ボロボロになった時ですぅ」



・・・・・・あぁ、アレかぁ。確かにあれはなぁ。フェイトはもちろんなのよ。だってその・・・・・・好きだって、思ってくれるし。

でも、あむにも歌唄にもりまにも、キャンディーズにクスクスにエルとイルにも・・・・・・だしなぁ。



「スゥ、あれからずっと考えてたんです。リメイクハニーでも、恭文さんの体調をすぐには戻せなくて」

「うん、効かなかったね」

「だけどだけど、恭文さんがまたあんな風になるのは嫌で」

「大丈夫だよ。あむもそうだけど・・・・・・フェイトとも、約束したから」



スゥが、僕を見上げる。だから、安心させるように笑う。



「もう、てんこ盛りは封印。使える状況でも、使わない。
あれだよ、てんこ盛りがなくても大丈夫なくらい、強くなればいいんだし」

「強く、ですかぁ?」

「うん、僕自身を強くするの」



言葉が、想いがスゥに届くように、ちゃんとスゥの目を見る。見て、話す。

きっと、本気で心配してくれてるから・・・・・・ちゃんと応える。



「無理とか無茶とかしないで、今を使い潰さないで、少しずつね。
時間はかかるし、ちょっと危なっかしい時もあるだろうけど、それでも」

「そうですかぁ。なら、少し安心ですぅ。それで・・・・・・スゥも、それなんです」

「え?」

「恭文さんは、スゥを助けてくれましたぁ」



・・・・・・二階堂戦の時かな。というか、あれくらいしか思いつかない。



「それで、こんなに弱いスゥの事・・・・・・『強い』って言ってくれましたぁ。スゥ、凄く嬉しかったんです。
それでそれで、スゥも同じように恭文さんの事を助けられたらなぁって、ずっと考えてて」

「・・・・・・うん」

「だから、まず現地妻7号から始めようと」

「お願いだからそれはやめてっ!? 現地妻は絶対間違ってるからっ!!」



あぁ、スゥの勘違いはまだ継続してるっ!? もうマジで本当の意味を教えた方がいいんじゃないかなっ!!



「でも、スゥはしゅごキャラで、身体も小さくて・・・・・・何も、出来ないんですぅ。
フェイトさんみたいに、ハグで恭文さんを抱きしめて癒すとか、キスして元気付けるとかも無理で」



スゥの瞳が、寂しそうなものになる。なんだろ、それに胸が締め付けられる。



「あの時の歌唄さんみたいに、恭文さんが立ち上がれない時でも、スゥは肩も貸せないんですぅ。
仕方の無い事だって分かっていても、スゥ・・・・・それがすごく悔かったんですぅ。本当に、本当に悔しくて」



スゥの両拳が、強く握られる。だから、手を伸ばす。伸ばして・・・・・・そっと指先でスゥの手を撫でる。壊さないように、優しく。

スゥは、そんな僕を見て嬉しそうに微笑んで、手を開く。白いハンカチを右手で取り出して、涙を拭く。



「それで、考えて・・・・・・しゅごキャラのスゥだから出来ること、やりたいと思ったんですぅ」

「だから、キャラなり?」

「はい」



スゥは、迷いなく言った。それから少し浮き上がって、僕の目線くらいの高さまで来た。

月明かりに照らされて、スゥの髪・・・・・・いつもより輝いて、綺麗に見える。



「・・・・・・スゥにとっては、恭文さんの魔法は『魔法』です。
辛いことや悲しいこと、認められない今を壊せる魔法なんです」



スゥが手を伸ばす。僕は伸ばされた右手に対して、同じように手を出す。



「いっつも意地悪で、あむちゃんやみんなの事をからかってて。だけど本当は凄く優しくて、強くて」



スゥは、僕の右手の中指に触れた。そのまま、ギュッと掴むようにする。

力いっぱいにじゃない。優しく、スゥらしい力でやんわりと掴む。



「スゥは、そんな恭文さんだから今を覆す『魔法』が使えるし、『魔法使い』になれるって、そう思ってます。
恭文さんが『魔法使い』として飛び込むなら、ミキだけじゃなくてスゥも・・・・・・恭文さんと一緒に、飛び込みたいんです」

「スゥ・・・・・・あの」

「だけど、やっぱり駄目・・・・・・ですよね。スゥ、恭文さんにわがまま言ってますよね」

「そんなことないよ」



僕は、そんな言葉を吹き飛ばすように首を横に振る。横に振って、その言葉を否定した。



「そんなことない。だから・・・・・・ちょっと頑張ってみようか」

「えっ!? ・・・・・あ、あの、いいんですかぁ?」

「うん。まぁ、なんとか言って引いてもらおうとか考えてたんだけど・・・・・・やめた。
だって、スゥは本気なんでしょ? だったら、僕も本気で応える」



右手を引く。そして、優しく撫でる。目の前に居る小さな女の子を、優しく。



「出来るかどうかは別として、ちゃんと応える。スゥ、ありがと。
・・・・・・ホントに、ありがと。信じてくれて、すごく嬉しかった」

「・・・・・・はい」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そっか、スゥちゃんそんなこと考えてたんだ」

「うん。なんかさ、申し訳なくて嬉しくて・・・・・・いい意味で複雑」

「さすがはヤスフミの現地妻7号だね。本妻としても、嬉しいよ」

「お願いだからそれはやめてっ!? ・・・・・・あぁ、ごめんなさいごめんなさい。フラグ立ててる僕が悪いんです」





夜、お散歩から戻ってきて、満漢全席を少し片付けて(食事的な意味合いで)。

僕とフェイトは、ベッドに腰かけながらで手を繋ぎながらお話。

フェイトは黄色、僕は蒼のストライブのパジャマを着て、楽しくお話。



・・・・・・うん、やっぱフェイトの隣は安心とドキドキで一杯だ。





「でも、実際出来るの?」

「正直、分かんない。でも、試す価値は・・・・・・あるのかなって、そう思うの。
さっき出来なかったのは、もしかしたら僕がスゥの意図が読めなくて迷ってたせいかも知れないし」

「・・・・・・そう言えば、キャラなりは自分の未来への可能性を信じないと、出来なくなっちゃうんだよね」



まぁ、あのお掃除&料理タイムから、それにどう繋がるのかはやっぱり聞いておきたいとこだけどね。



「でも、スゥが名前考えてるのはビックリした」

「え?」

「スゥ、ミキと初めてアルカイックブレードへキャラなりした時みたいに、お告げが来ない可能性を考えてたんだよ」

「あ、納得したよ。そう言えば・・・・・・あぁ、アレも大変だったよね。名前、ずっと決まらなかったから」



色々協議したなぁ。ブルースペードとか、スペードフォームとか、ハイセンスブレードとか。

一応、蒼剣丸とか提案したけど、ミキどころかガーディアンメンバー全員に反対されたっけ。



「・・・・・・ヤスフミ、本当にネーミングセンスは直そう? 大丈夫だよ、ヤスフミが望めば」

「何故にそここだわる? というか、僕は常識的だって」

「全然そんなことないよっ!? ・・・・・・あの、例えば子どもが産まれるとするでしょ?」

「う、うん」



なんか、二人して顔を真赤にしてしまう。というか、手まで熱くなる。

・・・・・・コミュニケーションするようになっても、こうなっちゃうのって不思議。



「子どもの名前って、一生付き合っていくものだし・・・・・・あの、大事だから」

「あ、それでなんだ。・・・・・・うーん、恭太郎は孫で居るから駄目なんだよね」

「そうだね。なら、それ以外かな」



あれ、なんか会話がおかしいな。まぁ、いいか。



「ね、フェイトはやっぱり娘に『アリシア』とか付ける?」

「・・・・・・いきなりどうしたの?」

「いや、二次創作の基本じゃないかなと」

「そういうメタな発言禁止っ!!」



・・・・・・え、メタな発言禁止? もう、分かったよ。じゃあ、この話はこれでおしまい。



「前は、そうしようかなとか思ってた。でも・・・・・・やめたの。アリシアという名前は、使わない」

「どうして?」

「なんだかね、想いや経緯は違うけど、母さんと同じようなことしてる感じがするの」



苦笑するフェイトを見て、その意味を考える。つまり・・・・・・生まれた子をアリシアの生まれ変わりか何かと見る?



「私とヤスフミがその・・・・・・作る子どもなんだから、アリシアとは違うもの。
だから、アリシアという名前は使わない。アリシアは、アリシアなんだから」

「・・・・・・確かにね。フェイトのお姉ちゃんなんだし、その方がいいか」





そして、空の上を見る。フェイトも同じく。思い出すのは・・・・・・あの覗き魔。



連中の発言はヒドかった。普通にヒドかった。てゆうか、まず第一声が『ごめんなさい』だよ?



それで、なんかやんわりバストタッチとキスまでしかしないのかって、責められるしさ。





「とにかく、そうなるとリニスとかプレシアとかも駄目だよね」

「そうだね。でも、それなら何がいいんだろ」



そう言いながら、フェイトはお腹をさする。いとおしそうに・・・・・・嬉しそうに。



「・・・・・・あの、フェイト。まさかと思うけど」

「なにかな。・・・・・・あ、違うよ?」



フェイトは、少しおかしそうに笑う。どうやら、僕の考えが分かってもらえたらしい。



「赤ちゃん出来たからこういう話してるとかじゃないよ。・・・・・・ヤスフミ、ちゃんと避妊してくれてるもの」

「まぁ、マジで偶数日に頑張ったりしてるしさ。その・・・・・・うん、男の責任だよ。
フェイトだって、まだ仕事とか頑張りたいでしょ? そういうの考えると・・・・・・うん」

「ありがと」



フェイトは、そっと顔を近づけて右のほっぺたにキスしてくれる。そっと・・・・・・優しく。



「あのね、深い意味は本当にないんだ。ただ、子どもの名前とかって今までのお話の中でなかったよね」

「そう言えば、今まではこう・・・・・・将来のこととか、結婚して子どもが出来たら仕事の体制はどうするのかとかばかりだったね」

「うん、だからなんだ。でも・・・・・・何がいいかな」

「そうだね。・・・・・・あ、さっきの話から思いついたんだけど、アリシアやプレシアさん達以外で人からもらうって言うのも手だよ?」



アリシアという名前も、そもそもフェイトのお姉ちゃんのもの。

それ以外でいい名前があるなら、知り合いに許可をもらうのも手なのよ。



「それはいいかも。変に考えて難しい名前にするのもアレだしね」

「うん。というかさ、最近DQNネームって増えてるらしいよ? もうひどいの」



子どもにこう・・・・・・色んな意味でアウトな名前を付ける親が居るらしいのだ。

てゆうか、役所もハネなよ。何かで子どもに『悪魔』って付けようとしたのを、超えてるって。



「ひどいって・・・・・・私はそういうのよく分からないんだけど、そうなの?」

「そうなの。えっと、例えば・・・・・・親が織田信長なんだけど」

「いきなり戦国時代っ!?」



うん、いきなり戦国時代なのよ。そして、織田信長なのよ。



「なんか、自分の子どもに『奇妙丸』って付けたらしいのよ」

「・・・・・・あれ、それは中学の歴史の授業で習ったような。でも、まだいいと思うな。
戦国時代で、時代背景も違うわけだもの。まだ私は納得出来るな」

「確かにね。そうなると、現代の方がひどいよ。えっと・・・・・・『亜成』って名前があったね。なお、男」



フェイトの顔が真っ赤になった。・・・・・・でも、実際あるの。

そういう名前を集めてその是非を討議するサイトを見たんだけど、一瞬冗談かと思ったもの。



「なお、読み方は」

「だめっ! それは言っちゃだめだよっ!!」



空間モニターを立ち上げて、ワードパットを展開。ここからは、文字で解説していく。




「『舞羅』と書いてぶら。『二成』と書いてふたなり。こっちも男。
女の子でも、酷いのがあるよ。ネタとかじゃなくて本当にあったやつ」



これは・・・・・・なぁ、普通に僕もビックリだもの。



「『便』と書いてたより」

「・・・・・・あれ、これは普通じゃないかな。私は、綺麗な名前だと思うけど」



響きだけならね。少なくとも、見た感じではさっきのアレよりはマシ。でも、落とし穴がある。



「フェイト、便通って言葉あるよね。もっと言うと、便所とか」

「え、そっち方向なのっ!?」

「うん。まぁ、ひらがななら大丈夫だけど、漢字にすると駄目ってタイプだね」



でもたより・・・・・・あ、いいかも。平仮名で書けば可愛らしいし、変なイメージもない。



「『運子』と書いて」

「ヤスフミだめっ!!」

「なら、『珍子』と書いて」

「それもだめっ! 普通に私でも分かっちゃうからだめっ!!」



まぁ、これはストレート過ぎるしなぁ。てゆうか、普通にこの名前付けた人は何考えてるんだろ。



「『射夢』と書いてじゃむ。『夢星』と書いてむせい。『抱美弟』と書いてダビデ。女の子で『大穴』と書いてだいあな」

「だいあな・・・・・・え、女の子でこれなのっ!?」



これなのよ。さぁ、まだまだ続くよ。なお、さすがにやばい感じがしてきたので、ここからはエロくない方向のをご紹介です。



「『横笛』と書いてふるうと。『星一輝』と書いてしりうす。『最大』と書いてマックス。
『手真似』と書いてサイン。『金銀』と書いてメダル。『二人』と書いてぴったん」

「・・・・・・ヤスフミ、それはなんのクイズ? というか、これは正解出来ないよ」

「奇遇だね、僕もそう思った」



そして、残念ながらまだ続くのだ。この世の中には、どれだけDQNな親が居るのか、正直疑問です。



「『茶亜羅』と書いて」

「あ、これは分かるよ。・・・・・・『さあら』とか?」

「ううん、『ティアラ』だそうなの」

「・・・・・・やっぱり無理矢理だね」



そうなの。無理矢理過ぎて、色んな意味で感覚を疑ってしまうの。



「『羅獣王』と書いて、ライオン。『雄』と書いて、やっぱりライオン。『千愛星』と書いて、やっぱりティアラ」

「ヤスフミ、絶対やっぱりじゃないと思うんだ。絶対私は違うと思うんだ」



フェイトが、だんだんとお怒りモードになってきた。なので、この辺で締めようと思う。



「そして、『しいたけ』と書いてやっぱりしいたけと読む」

「読まないよっ! 普通には読むけど、人の名前としては無しだよっ!!」

「なお、性別は女の子」

「嘘っ!!」



残念ながら、事実らしい。・・・・・・やばい、これはハイセンスな僕でも絶対思いつかない。

というか、無いって。絶対にこれは無いって。どうしたらこうなんの?



「・・・・・・フェイト、名前は慎重に考えようか」

「そ、そうだね」



とりあえず、ワードパットは閉じる。なお、『保存しますか?』というとメッセージが出るけど、当然のようにしなかった。



「でも、そうするとどうしよう。・・・・・・というか、恭太郎や幸太郎も未来の時間ではこれになるのかな」



一種のDQNネームというか、普通のセンスとは離れた感じになるって意味で、フェイトは言っているのがすぐに分かった。



「あぁ、そう言えば今で言うところの『田吾作』レベルだって言ってたしね。
でも、アレは古めかしいというか、そういう感じ・・・・・・え、ちょっと待って」



いま、凄まじく嫌な予感が背筋を駆け抜けた。それも相当に。

これが未来では『田吾作』なんでしょ? えっと・・・・・・あれ?



「もしかして、未来の時間の名前って、こういうのが常識化してるとか」

「それで、幸太郎や恭太郎がダサいって言われるのっ!? そ、それはさすがに・・・・・・あぁ、でもありえるかもっ!!」



やばい、やばいよ未来の時間。普通に怖いよ。マジで人の名前とかどうなってるのか、気になるんですけど。



「フェイト、やっぱり人から名前もらおうか。なんか、自分の感性が信じられなくなってきた」

「今さらなのっ!?」

「待て待て、今さらってなにさっ!!」



とりあえず、左手を伸ばしてほっぺたをぷにーっとしてやる。うん、いじめるの。



「・・・・・・うぅ、ヤスフミがまたいじめる。私のこと、そうやっていじめて楽しい?」

「うん。てゆうか、フェイトだっていじめられるの好きじゃん」

「違うよっ! 私はその・・・・・・ヤスフミをいじめる方が好きなのっ!!」



正直、その発言もどうなのだろう。まぁ、僕はフェイトにだったらいじめるのもいじめられるのも好きだけどさ。



「でも、話を戻すけど・・・・・・名前、本当に慎重に考えないとだめだね」

「そうだね。こうやって考えていくと一生の問題なんだもの。でも・・・・・・平仮名でたよりはいいと思うんだ」

「あ、それは私も思った。蒼凪たより・・・・・・うん、いいかも」

「でも、フェイトはミッド生まれだし、日本的な名付けよりももうちょいそっち寄りがいいんじゃないの?
えっと・・・・・・そうだなぁ。ほら、ティアナとかシャリオとかみたいな感じでさ」



あー、この辺りのすり合わせも必要なんだよね。僕達、なんだかんだで生まれた世界が違うわけだし。



「大丈夫だよ? 日本的な感じも好きだから。・・・・・・あ、それならこういうのはどうかな」



今度は、フェイトがワードパットを開く。そして、ある三文字を打ち込む。



「・・・・・・アイリ?」

「うん。良太郎さんのお姉さんの名前・・・・・・で、大丈夫だよね?」



僕は、フェイトの言葉に頷いて肯定する。うん、お姉さんはアイリって名前だよ。

まぁ、実際は漢字だけどね。愛に理と書いて愛理。



「こういう形にすれば、ミッドでも日本・・・・・・ううん、地球でも、どっちでも親しまれやすいと思うんだ。どうかな」

「あ、なるほど。蒼凪アイリ・・・・・・うん、いいかも。フェイト、ナイスアイディア」

「でしょ? ・・・・・・でも、子どもかぁ」



ワードパットを閉じる。なお、フェイトは保存した。そして両手を膝の上に乗せて、上を見る。



「・・・・・・よし」



フェイトは、一言そう言うと僕の方を見た。しっかりと・・・・・・決意に満ちた顔で。



「ヤスフミ、お願いがあるの」

「なに?」

「今からコミュニケーションして欲しい」



はい? いやいや、ちょっと待ってよ。今日偶数日じゃないよ? 普通の日だよ?



「それで・・・・・・今日は避妊しないで、そのままして欲しいの」

「え?」

「もっと言うと、ヤスフミといっぱい子作りしたい」



・・・・・・はぁっ!? 待て待て、いきなりどうしたっ! てゆうか、その必死な目はやめてー!!



「ごめん、多分困らせてるよね。でも、あの・・・・・・だめなの」



そのままフェイトは、両手を伸ばして抱きしめてくる。・・・・・・うぅ、この匂いと柔らかさは反則。



「ヤスフミと・・・・・・その、頑張りたいの」

「赤ちゃん、産みたくなったの?」

「・・・・・・うん」



フェイトとの・・・・・・赤ちゃん。僕達の、子ども。・・・・・・僕は、さっきまでワードパットを立ち上げていた箇所を見る。

子ども・・・・・・きっと、すごく大変だ。だって、僕達が大人かどうか分からないから。でも、それでも僕は・・・・・・フェイトを押し倒した。



「ヤス、フミ」



黄色いパジャマ姿のフェイトは、頬を赤らめて、潤んだ瞳で僕を見上げる。・・・・・・うぅ、可愛い。

てゆうか、普通に付き合い始めて1年半だけど、可愛さとかドキドキが変わらないってなんでだろ。



「約束して欲しいの。まず一つは、もしこれで出来たら・・・・・・ちゃんと僕に言うこと。絶対に隠したりしないで」



僕達の子どもだもの。絶対にそれはしないで欲しい。てーか、やったら普通に怒る。



「そしてもう一つ。・・・・・・一緒に、親になってくれる? フェイトが前に言ってたみたいに」



親にはなるものじゃなくて、子どもを産んでからなっていくものだって言ってた。

僕だけじゃ・・・・・・不安なの。だから、フェイトの力に力を貸して欲しい。



「約束、出来る?」

「・・・・・・うん」



フェイトは、嬉しそうに微笑んでくれた。左の瞳から涙が少し零れたので、右手を伸ばして親指で拭って上げる。



「じゃあ、あの・・・・・・僕も頑張る。あの、子作りのためのコミュニケーションの事じゃないよ?
フェイトと一緒に、二人で親になれるように。・・・・・・あ、これも新しい夢なのかも」

「そうだね。二人で一緒に、親になる・・・・・・うん、私とヤスフミの二人での夢だ」



そのまま、そっとフェイトと唇を重ねる。少しついばむようにしながら、フェイトの唇を吸う。

それから、唇を離す。顔、すごく近い。吐息がかかるくらいに・・・・・・近い。



「というか、あの・・・・・・ドキドキしてきた」

「私も。だって、子作りのためにコミュニケーションなんて、初めてだから」



普段はこう・・・・・・仲良くなるためだしね。身体をくっつけて、いっぱいラブラブするの。



「フェイト、あの・・・・・・ごめん。いつもよりいじめちゃうかも」

「ううん、大丈夫。でも乱暴なのは、嫌だよ? というか、お返しに私もいじめるから」

「そっか」










・・・・・・子作り、かぁ。うぅ、いかがわしい事を考えてしまっている自分が嫌だ。





でも、あの・・・・・・やっぱり、フェイトの事好き。また、好きが更新されたから。





だって、フェイトが可愛過ぎるんだもんっ! うー、なんか僕幸せだよー!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ヤスフミ、ありがと」

「なんでお礼?」



早朝、フェイトと二人で朝食の準備をしつつお話。で、嬉しそうな顔をしているのは、サラダを仕込み中のフェイト。



「だって、私のわがまま・・・・・・聞いてくれた。一緒に子作り、してくれた」

「いいよ、別に。というか、あの・・・・・・僕だって、嬉しかったんだよ?
僕の赤ちゃん、産みたいって言ってくれたんだから」

「それはそうかも知れないけど、それでもありがとうだよ。・・・・・・なんだか、不思議だった」



あの、フェイトさん? 普通に頬を赤らめて潤んだ瞳はやめようよ。



「初めての時や、ここに来る前のお泊りデートで同じこと・・・・・・してるじゃない?」

「ま、まぁ・・・・・・行為的にはそうだね」

「でも、それとは全然違うの。ヤスフミと繋がって、仲良くするだけじゃなくて」



フェイトは、器用にサラダ用のレタスを手でちぎりながらも、自分のお腹を見る。



「ヤスフミと一緒に赤ちゃん作ってるんだって考えたら・・・・・・うん、すごく不思議だった」

「・・・・・・僕も、同じ。あの、僕達・・・・・・ホントに子作り、しちゃったんだよね」

「うん」



なお、本当に早朝で誰も聞いてないのを確かめた上で話しています。あしからず。



「あ、そうだ。すっかり忘れてたよ」

「なに?」

「昨日、ヤスフミがスゥちゃんとお話している間に、ややから電話があったんだ」



なお、僕はご飯の仕込み中。満漢全席はまだあるけど、それでも必要だから。

ついつい最初に、咲耶が居た時の分量で炊いてしまいそうになったから困る。



「今、ガーディアンで鳥探ししてるんだってね」

「あー、それでフェイトに相談?」

「うん。もちろん、私も手伝ったりはしないよ? でも、ちょっとアドバイスしたから」

「やや、大丈夫そう?」



フェイトは、なんだか嬉しそうに頷いた。なんだかんだでややの事が可愛いみたいだから、頼ってくれたのが嬉しいんでしょ。



「多分、大丈夫だと思う。あ、でもヤスフミも動いた方がいいと思うな」

「一応そのつもり。・・・・・・これでPちゃんが大都会の冷たさに凍えて倒れたら、さすがに気分が悪い」

「夏休み間近だし、その3年の子達にとっても嫌な入り方になるもの。うん、そうしてあげて?
あと、私もそうだしシャーリー達にも頼んで、街を歩く時とかには気をつけておくから」



サラダに使う全てのレタスをちぎり終えながらも、フェイトは僕の方を見て微笑む。

・・・・・・や、やばい。フェイトの可愛さが昨日よりずっと増したように感じる。



「フェイト・・・・・・あの、ありがと」

「ううん。ややにも、見かけたら教えて欲しいって頼まれてるもの。早く見つかるといいね」

「うん、本当にそこは思うわ」










でも・・・・・・うーん、ややにリーダーシップかぁ。昨日から何回か考えるけど、今ひとつなんだよなぁ。





というか、ややはそういう風にしなくてもいいような気がするのよ。・・・・・・なんでだろ。




















(第43話へ続く)




















あとがき



恭文「人としてーその軸がーブレていーるー♪ うぉううぉうん♪」

あむ「うん、アンタの軸は間違いなくブレてるよね。そっかぁ、ようやく分かってくれたかぁ」





(現・魔法少女、なにげに酷い事を言う)





恭文「さて、社会問題なども含めつつ進んだ今回の話は如何だったでしょうか。
本日のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」

あむ「日奈森あむです。なお、今回はテレビの第46話『やや、頑張る』を元に構築しています」

恭文「で、当然のように次回に続くわけですよ。まだ、インコ見つかってないしね」





(Pちゃんどこー?)





恭文「で、原作やアニメでもさほど触れられていないガーディアン崩壊の可能性と、今回は向き合ったわけですよ」

あむ「ドキたまだと、初じゃない? このさり気なく逃げていた話題に触れるのは」

恭文「初めてだね。・・・・・・来年度は、やや一人。恐ろしい、恐ろし過ぎる。しかも、まだ危険性があるのよ」

あむ「あぁ、そうだよね。あたしも気づいてた」

恭文「劇中で話していたのはガーディアンがフルメンバー居る事前提ですよ?」





(青い古き鉄、今回はかーなーり・・・・・・マジテンションらしい)





恭文「まぁ、この話の前半でも少し触れてますけど、本来ガーディアンは四人体制が基本。
だけど、そのガーディアンの席も下手をすれば空席が出来る危険性がある」

あむ「あたしがジョーカーなのも、その空席がなかったからなのが原因の一つだしね。
下手をしたら、マジで来年のガーディアンはやや一人という可能性も・・・・・・」

恭文「ややは一人で一人のガーディアンだよ。ロンリーソルジャーだよ。
まぁ、そんなややの活躍は次回だね。今回の話は、あくまでも問題提起だし」

あむ「あれでしょ? ちゃんと次回で解決する」

恭文「出来たらいいよねー」

あむ「ちょっとっ!? アンタ今回フェイトさんとエロなことばっかだったんだし、もうちょいちゃんとしてよっ!!」





(青い古き鉄、それでも受け流す。そう、右から左へ受け流す)





恭文「というわけで、次回のややの活躍にややご期待ください」

あむ「ダジャレっ!? ・・・・・・と、とにかく本日はここまで。お相手は日奈森あむと」

恭文「フェイトは僕の嫁。蒼凪恭文でした」

あむ「あんた、今回マジでどうしたっ!? 超・電王編終わったからって、気抜いてるでしょっ!!」

恭文「嫌だなぁ。気を抜いてるんじゃなくて、ダラけてるだけだよ」

あむ「ダラけないでっ!? お願いだからちゃんとやってっ!!」










(それでも青い古き鉄はいつも通り。それに現・魔法少女があれこれ言いつつ、カメラはフェードアウト。
本日のED:結木やや(CV:中村知子)『大きくなぁれ』)




















恭文「あむ、おはよー」

あむ「あ、恭文おはよ。・・・・・・どうしたの、また今日はご機嫌じゃん」

恭文「フェイトと、更に仲良くなったの。それが嬉しくてさー」

あむ「へ、へぇ・・・・・・そうなんだ。てか、アレ以上仲良くなるって」

ミキ「もはや病気レベルじゃ」

スゥ「世の中に砂糖が溢れかえっちゃいますぅ」

ラン「というか、フェイトさんまでこれなんだよねー。私、ちょっとビックリだよ」

恭文「あ、それとあむ。あれからインコって見かけた?」

あむ「ううん、こっちはさっぱり。・・・・・・なに、心配してるの?」

恭文「ややじゃなくて、Pちゃんの方だけどね。フェイトとも話したんだけど、これで行き倒れてたりしたらまずいもの」

あむ「あぁ、そういう意味かぁ。うーん、どうする? あたし達もややには内緒で、捜索した方がいいのかな」

恭文「その方がいいのかな。でも・・・・・・あー、やっぱ迷うなぁ」










(おしまい)





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あきゅろす。
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