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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第41話 『君にまた、出会うために・・・・・・クライマックスジャンプ』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

エル・イル・クスクス『しゅごしゅごー♪』

ラン「さぁ、超・電王編も最後だよー」

ミキ「ついに外れたキュウビのたまごの×。そして、唯之介君やかえで、あむちゃん達はどうなる?」

スゥ「激しく、そして悲しい戦いの時間は終わりを告げて、いよいよフィナーレなのですぅ」





(そうして画面が立ち上がる。映るのは空に登る二両の列車と、星空を見上げる現・魔法少女と古き鉄)





エル「でもでも、恭文さんがボロボロなのですぅ。普通にエルは心配なのですぅ」

イル「まぁ、結構頑張ったしな。てーか、あのバカ・・・・・・マジで無茶するし」

クスクス「その辺りのお話もちょこっとやりつつ、最後行ってみよー。せーの」





(そして、全員で例のポーズを取る)





チアキ「・・・・・・どっきどき」

キャンディーズ・エル・イル・クスクス『あー、オイシイとこだけ取った(です)ー!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・周囲のゾンビ達の身体に、変化が起きた。突然、身体からそれと同じ色の粒子が噴き出す。





うめき声を上げながら、ゾンビ達が次々に消えていく。










「・・・・・・あ、あのこれって」

「ちょっと待ちなさいよっ! 普通にいきなりこれはないでしょっ!?」



・・・・・・もしかして、恭文ととあむちゃん達がやったの?

だから、敵兵であるコイツらにまで、影響が出た。



『スバル、ティア、聞こえるっ!?』

「フェイトさんっ!?」



いきなり、通信画面が開く。そこにはフェイトさん。



『よかった、無事だったんだね。えっと、こっちで戦ってた相手が突然消えちゃったの』

「こっちも同じくです。・・・・・・多分、アイツとあむがやってくれたんだと思います。クロスミラージュ」

≪現時点でのサーチの結果ですが、アンノウンの反応は、全て消滅しました≫



・・・・・・じゃあ、あとは消火活動と救助だけだね。うん、そこはしっかりやっておこう。



「というかフェイトさん、これならすぐにアイツの所に向かっていいですよ?」

『え?』

「心配、ですよね」



ティアが気遣ってそう言うけど、フェイトさんは首を横に振った。つまり、行かない気らしい。



『それは、だめなんだ。だって私、ヤスフミにこの場を任されちゃったんだから』



そう口にするフェイトさんを見て、私もティアも苦笑する。・・・・・・本当は、すぐに迎えに行きたい顔だもの。



『私はヤスフミを信じてるもの。私の彼氏は、ちゃんと帰って来てくれる。約束、破ったりなんてしないんだから』

「「納得しました」」




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第41話 『君にまた、出会うために・・・・・・クライマックスジャンプ』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・フェイト、それは死亡フラグっぽいからやめて?」

「恭文、アンタいきなりなに言い出してんのっ!?」

「いや、妙な電波をまたもらっちゃって」



とにかく、キュウビはようやく沈んだ。今、僕達の目の前で両腕を広げて、倒れてる。

そして、肝心要のあのたまごなんだけど・・・・・・今、キュウビの胸元だよ。



「というか、恭文。アンタ大丈夫?」



あむは、心配そうに僕に声をかけてくる。・・・・・・そりゃ、そうか。

僕、歌唄に肩貸してもらって、ようやく立ってる状態だもの。



「というか恭文さん、髪真っ白です」

「お前、なんでそうなんだよ。てーか、無茶し過ぎだろ」



エルとイルが、涙目で僕の頭を見る。僕の髪は、現在真っ白。全部白髪になってる。

つーか、体力の消耗も激しい。普通に3日は動けないレベルだわ。



「恭文、そこは私もそうだしりまも同意見よ。・・・・・・本当に大丈夫なのよね?」



歌唄は、僕の方を珍しく泣きそうな顔で見てる。だから、頷く。

ちょっと辛いけど、笑いながらだ。そうじゃないと、不安にさせちゃうし。



「大丈夫。てんこ盛り使ったあと、リイン達はともかく僕はこれがデフォだから」



こりゃ、フェイト達にもちょっと怒られるかな。あはは、やっぱ心苦しいわ。



「髪も、3日も経てば元に戻る。歌唄、みんなも心配かけちゃって、ごめん」

「バカ、謝らなくていいわよ。・・・・・・うん、謝らなくていい」

「そうだよー。でもでも、こういうのはもうだめ」



りまとクスクスも、同じ感じ。・・・・・・無茶苦茶、心配かけてるよね。うん、分かってた。

分かってたとは言え、普通に辛いのは成長の証と取るべきか、ちょっと迷うところだな。



「絶対、だめ。クスクスもだけど、りまも今の恭文見てるの・・・・・・辛いの」

「・・・・・・分かってる。あむにも、もうやらないって約束したしね」

「うん、ならいいのー。あとは」

「アレだね」



とにかく、僕達は見る。キュウビと・・・・・・そのたまごをだ。



「やっぱり、目覚めないんですねぇ」

「たまごの中に込められたマイナスエネルギーは、全部浄化したわ。でも、それと一緒に」

「このたまごの中に居た子も、消えちゃったの?」



ランのその言葉に、ダイヤは沈痛な面持ちで頷く。



「えぇ。もう、ただの抜け殻よ。だから」



胸元のたまごが、光の粒子に変わっていく。そしてそのまま、空に還った。

それを、僕達は見上げる。・・・・・・取りこぼしたのかなとか、ちょっと思いつつ。



「こんな風に、消えちゃうの」

「消えてないよ」



ダイヤの言葉を、あむは否定した。それに、全員の視線があむに集まる。



「消えてなんて、ない。二階堂の時と同じだよ。・・・・・・まだ、間に合うから」



キュウビは、ただ虚空を見上げる。見上げて、呆然としている。

長い黒髪はくすみ、頬は痩せこけて・・・・・・さっきとは、まるで別人みたいだ。



「・・・・・・なぜ、目覚めんのだ。なぜ、置いていくのだ?」



呟く。どこか、遠いところを見て・・・・・・瞳から、僅かに涙が零れた。



「童は、童は・・・・・・ありったけのものを賭けたというのに」

「そうだね、きっと・・・・・・あたしなんか想像のつかないくらいに、頑張ったんだよね」



キャラなりを解除したあむが、そっとしゃがむ。



「だから、もういいよ」



しゃがんで、キュウビの左頬を撫でる。優しく、慈しむように。本当に・・・・・・優しく。



「今は休もう? 休んで、また1から考えればいいよ。今度は、こんなことしない方法を探せばいい」

「そんなもの」

「あるよ。・・・・・・×が付いたのは、アンタのなりたい自分に迷いが出たから。
アンタがやらなきゃいけなかったのは、人のたまごを餌にすることなんかじゃなかった」



優しく撫でながらも、言葉を続ける。僕達は・・・・・・何も言わない。

だって、あむの言葉だから。横から茶々を入れる権利なんて、ないでしょ。



「苦しくても自分の×と向き合って、一生懸命に自分だけの答えを、自分の中から探すことだったんじゃないかな」

「そうそう、その通りっ!!」



ランが、あむの左の肩口から飛び出してきた。それに、キュウビの視線が向く。



「『なりたい自分」が分からなくなっちゃったなら、探していけばいいんだよっ!!
あのね、私達も応援するから、もう一度やり直してみようよっ!!」



それに、続く影がある。それは、あむの肩に疲れた感じで乗っていたミキ。



「まぁ、敵が身内になるって言うのは、ある意味ボク達のお約束だしさ。
・・・・・・さっきまでの事は、少なくともボクはもう気にしないよ」



そして、更に飛び出す影がある。それは、スゥ。



「あなたのたまごは、『なりたい自分』は、いつだってピッカピカにリニューアル出来るんですよぉ?
あなたが変わりたいと思えば、今までのことが有っても全部含めて、ここから変われます」



キャンディーズの言葉に、キュウビは目を背ける。



「・・・・・・嘘じゃ」

「嘘じゃありません。その可能性は、あなたの中にあるんですぅ。
現に、あなたはまだスゥ達が見えてますよねぇ? だったら、大丈夫ですよぉ」



スゥが、キュウビの前まで来てクルリと回転する。そして、それにダイヤが続く。



「夢は、可能性は決して消えないわ。言うなれば、それらは星の光なの」



ダイヤは一瞬だけ僕の方を見て、ウィンクしてきた。



「深い闇の中で迷っていたとしても、厚い雲に覆われたとしても、可能性という名の星の光は決して消えない。
でも、そのためにはある条件が必要になるの。それは・・・・・・あなたが、それを信じていくことよ」



そして、優しく・・・・・・本当に優しく笑いかける。キャンディーズも一緒に、さっきまで戦ってた相手にだ。



「でも今は、ゆっくり休んで? それから、少しずつ探せばいいわ。誰でもない、あなたが見つけるの。
あなただけの『なりたい自分』を。あなただけの、星の光を」

「そうだよ。・・・・・・てゆうか、出来ないわけがないじゃん」

「なぜ、そう言い切れる」

「そんなの決まってるじゃん。アンタが、現時点でたまご生んでて、ラン達もまだ見えてるからだよ」



そこまで言って、あむは苦笑する。自嘲するように、キュウビにその笑みを向ける。



「まぁ、ちょっと偉そうだね」

「そうじゃのう。・・・・・・本当に、偉そうじゃ。そして、もう・・・・・・遅い」



キュウビがそう言うと、その身体に変化が起きた。身体が、さっきのたまごと同じように粒子化していく。

それにあむも、僕達も驚く。あむはキュウビの左手を握るけど、全然止まらない。



「・・・・・・童は、少し昔の人間でのぅ。少々荒っぽい手で、生き永らえていたんじゃ。
じゃが、さすがに・・・・・・無理が生じていたようじゃ。じゃから、遅いんじゃ」

「そんな・・・・・・!! ・・・・・・恭文は、無理か。みんな、これ魔法で」

「無理だよ」



あむの言葉に、僕はそう答える。あむの目が、見開く。



「・・・・・・無理、なんだよ。これは、普通の怪我とは全く違う。
どんな手を使ってたかも分からないんじゃ、どうしようもない」

「ごめん、あむ。私もおじいさんと同じ。『助けたくない』じゃないの」



かえでが、辛そうな顔で言葉を続ける。



「助け・・・・・・られないの。本当に、もう時間がない」



かえでの言葉は、最後通告。だからあむは、必死な顔でキュウビを見る。



「なら・・・・・・スゥっ! キャラなりしてリメイクハニーを」

「娘、よせ。もう遅い。というより・・・・・・頼む、眠らせてくれ」

「遅くなんてないっ! てゆうか、眠るなんて早いじゃんっ!! 今は昼だよっ!?」



キュウビは、そんなあむを見つめる。どこか、優しいものを感じさせる瞳で。

本当に憑き物が落ちた感じになっている。・・・・・・ここから、変わっていけたかも知れないのに。



「・・・・・・娘、なぜ泣く」

「だって・・・・・・あたし、何も出来なかった。偉そうなこと言ってたのに、何にも」

「お前は・・・・・・バカな奴よのぅ。童に殺されかけたのを、忘れたのか?」

「もう気にしないから、いいでしょっ!?」



その様子に、キュウビは呆れたように笑う。そして、瞳を閉じる。



「娘、名は・・・・・・なんと言う」

「え?」

「いいから、早く教えろ。もう長くは持たん」



言っている間にも、キュウビの身体がどんどん粒子化していく。

そうして、半透明のようにもなってきた。あむは焦るように、自分の名を教える。



「あむ、日奈森・・・・・・あむっ!!」

「あむか。良い、名じゃ。・・・・・・童は、月夜つくよじゃ」

「え?」

「これが、童の真の名。忌々しいとさえ思った、人の名じゃ。
あむとやら。よく・・・・・・覚えて、おくのじゃぞ?」



キュウビの左手が、僅かに動く。あむの手を、握り返したようにも見える。



「お前が勝ち、お前に・・・・・・われた、女の・・・・・・名じゃ」

「待って、よく聞こえないよっ! ・・・・・・月夜っ!!」

「聞こえ・・・・・も、よい。あ・・・・・・は温かい、のぅ」



キュウビが消えていく。ゆっくりと、だけど確実に。



「誰かに・・・・・・あぁ、こんなに幸せじゃったか」



光の粒子は、たまごの後を追うように空に消えていく。いや、登っていく。



「この手に、この・・・・・・温かさに、もっと・・・・・・」



声は、最後まで続かなかった。キュウビ・・・・・・ううん、月夜は、空に還った。



「・・・・・・なに、これ」



あむは小さく呟く。さっきまで感じていた温もりを思い出すように、強く手を握り締める。



「こんなの、ないよ。だって・・・・・・やっと止まれたのに。
やっと、振り返る事が出来たのに。それなのに・・・・・・こんなの」



そして、あむは吐き出した。僕達に、この空間にさっきまで居た一人の女性に伝わるくらいに、思いっ切り。



「こんなの、ありえないじゃんっ! どうして・・・・・・どうしてこうなるのっ!? こんなの、こんなの嫌なのにっ!!」



あむは、そのまま崩れ落ちて・・・・・・泣き始めた。声を殺さずに、必死に。



「・・・・・・アンタは、泣かないの?」



横から小声で、歌唄が言ってきた。僕は首を横に振る。



「僕が泣く権利なんて無いよ。きっと、あむにしか無い」

「そうね。でも」

「うん?」

「落ち込むくらいは、きっと許されるわよ」



何かを色々見抜いているような目で僕を見ながら、歌唄は口にする。



「例えフェイトさんやリインが許さなくても、私は許す。だから、落ち込みなさい。
落ち込んで・・・・・・覚えててあげましょう? 私達はそれしか出来ない。だから、それだけはね」



そして歌唄は、視線を移す。そこは・・・・・・月夜が居た場所。



「・・・・・・そうだね、そうする。歌唄、ありがと」

「いいわよ、別に」

「なんというか、お前ら仲良いよな」



左横から聞こえてきたのは、どこか呆れたような声。

そちらを見るとリインにアギト、咲耶にリースが居た。というか、知ってた。



「恭文さん、ついさっきフェイトさんから連絡が来たです。京都の方、大丈夫だそうです。
増殖し続けていたゾンビ達も、全部消失。事後処理なんかはありますけど、一応は終わりです」

「・・・・・・そっか。みんな、お疲れ様。あと、ありがと」



それに、みんなは首を横に振る。で、他のみんなも見る。

泣き崩れてるあむ以外は、全員頷いてくれた。



「歌唄も、お疲れ様。というか、わざわざありがとね。・・・・・・歌唄の歌、嬉しかった」



僕が素直にそう口にすると、歌唄の表情がほころんだ。



「いいわよ。私、アンタと死ぬまで関わる覚悟は決めてるもの」

「うん、知ってる。まぁ・・・・・・あくまでも友達としてなら、いいよ?
ごめんなさい、真面目に第三夫人とか無理なんです。普通に現状でもギリギリアウトなんです」

「あら、一応第三夫人は狙っていくわよ? 私、これでもしつこい方だから」










そのまま、僕と歌唄も、あむ以外のみんなは、空を見る。・・・・・・これで、終わったんだよね。

やり切れないのはいつもの事とは言え、なんかなぁ。とにかく、こうして京都大火は阻止された。

一応、新聞記事では明後日になっていたので、それまでは白べこに滞在させてもらった。





ただ、何も起きずに平和に日々が過ぎたことは、言うまでもないと思う。そう、時間の歪みは・・・・・・消えたのだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・よし、これで蒼凪恭文に」



言いかけていたフィリップさんを見て、私は驚く。だって・・・・・・身体が粒子化していってるから。

いや、フィリップさんだけじゃない。翔太郎さんに、フィリップさんの身体を預かっていた女の子もだ。



「な、なにこれっ!? あたし聞いてないー!!」

「待て待て、俺らまで消えちまうのかっ!?」

「・・・・・・消える? あぁ、なるほど」



フィリップさんは、納得したかのような顔になった。そして、私に視線を向ける。



「フェイトさん、それに電王とゼロノス。どうやら僕達は、これから元の世界に戻るらしい」

≪戻る? どういうことですか、それは≫

「本来、僕達はこの世界と時間にとってイレギュラーな存在だ。
そしてそれに対して、修正力が働くのは当然だもの」



・・・・・・あ、そっか。Wの人達がこの時間に居たのは、モウリョウ団のせい。

でも、その原因は消えた。だから、当然のように歪んだものは修正される。



「あ、でもそれなら報酬は」



今、元の世界と時間に戻っちゃったら、ヤスフミと会わせるという報酬が払えない。

ヤスフミもあむも、他のみんなもまだこっちに戻ってきてないんだし。



「また次の機会にさせてもらいます。どうやら、本当に時間がないらしい」



その人は、残念そうに自分の身体や両手を見渡す。見渡して、私に微笑む。

私を安心させるように、優しく。それは・・・・・・翔太郎さんも同じ。



「必ず、また会いに行きます。彼によろしく伝えてください」

「・・・・・・はい。あの、ありがとうございました」



そして、フィリップさんはそのまま空に登っていった。優しく微笑みながら、そのまま。



「まぁ、そういうこった。んじゃ、またな」



続いて、翔太郎さんも同じように登る。あとは・・・・・・あの子だね。



「というか、あの・・・・・・ねぇ、あたし達真面目に帰れるのっ!? ねぇ、ちょっと誰か教えてー!!」



そして、女の子も右往左往して、私の方に詰め寄るように来ながら消えた。

あと、バイクとあの大きな車もだね。同じように消えていった。



≪・・・・・・ちゃんと、元の世界に帰れるのかなぁ≫

「大丈夫だろ。アイツら自身が時間の歪みとかじゃない限りはな」

「うん、そうですね。きっと大丈夫です。だけど」



私達全員、ずっと気になっている事がある。それも、相当。



≪『・・・・・・・・・・・・あの女の子、一体誰?』≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・まぁ、W(ダブル)な方々が色々大変そうなのは置いておいて、僕達は帰ることになった。

もちろん、僕達の時間へ。あ、僕の身体はもう全開バリバリよ? ただ、なぁ。

やっぱり、フェイトに心配をかけてしまった。てんこ盛りの反動、ハンパじゃないから。





とにかく、そんなフェイトのフォローもなんとか無事に出来た所で・・・・・・お別れです。










「冴さん、唯之介、本当にありがと。というか、食費」



すみません、すごい勢いで食べてしまいました。頑張ってしまいました。

うぅ、スターライト使ってないのに大食いモードっておかしくない?



「あぁ、えぇんですよ。桜井さんや他の方々の分まで、しっかり払っていただきましたし。
というか、恭文君・・・・・・ほんまに帰るん? このまま、うちの店員になって欲しいわぁ」

「す、すみません。さすがにそれは」



とんでもない人数で滞在になったため、僕は自主的に白べこの仕事を手伝った。

で、普通に冴さんからスカウトされたりしてる。僕の働きぶりを、気に入ってくれたらしい。



「あの、恭文さんもあむさんも、本当にありがとうございました。・・・・・・チアキ」

「ありがとうございました」



唯之介に続く形でお辞儀してきたのは、あの正体不明で後半空気と化していたしゅごキャラ。



「あと、恭太郎にティアナさんに、侑斗さん達も・・・・・・ありがとう」



ようやく、この子の正体を僕は知ることが出来た。唯之介の、行方不明のしゅごキャラだったのだ。

それでモウリョウ団のスケロウってのがそれを追って現代に来て、恭太郎が撃退したと。話は、こんなとこだね。



「ううん、あたしの方こそお世話になったから。・・・・・・それで、唯之介君」

「はい?」

「デンライナーのオーナーが、唯之介君には今回すごく迷惑をかけたって言っててね。
唯之介君が好きな時間に、少しだけ居させてくれるんだって」



なお、唯之介や冴さんには、僕達の正体とかはバレてるので、あしからず。

さすがに、あの状況で話さない選択肢はなかったのよ。普通に詰め寄られたし。



「それで、もし望むなら旅一座の方達が居た時間に向かうことも、可能だそうですぅ」

「えっと、つまり・・・・・・みんなに会いに行ける?」

「らしいよ。ただ、歴史を変えるようなことはダメだなんだって」



唯之介の表情が、僅かに曇る。あむも、少し辛そう。

ようするに、過去に行ってもみんなを助けたりとかは、駄目なのよ。



「けど、ちょっと顔を見るくらいのことはしていい。・・・・・・どうする?」



あむにそう聞かれて、唯之介は首を横に振った。つまり、行かないと言っている。



「唯之介・・・・・・ほんまにえぇんか? 会うだけでも会うて来たらえぇのに。
時を越える列車になんて、もう一生関わるかどうか分からんのやし」

「いいんです。だって、僕は・・・・・・ここに居られて、幸せですから。
ここが、今の僕の居たい場所ですから」



冴さんを見上げて、にっこりと笑いかける。笑いかけながら、こちらを見る。



「それで・・・・・・探していきます」



そして、唯之介は僕と咲耶の方を見る。決意に満ちた表情でだ。



「『こんなはずじゃなかった時間』に負けない、僕のなりたい自分を」



・・・・・・あ、月夜との戦いの最中で言ってたことだ。咲耶も気づいたのか、嬉しそうに笑っている。



「ここから始めて、変わっていける僕の時間を」



それから唯之介は、視線を移す。それは、当然のように自分のパートナー。



「・・・・・・チアキと、一緒に」

「唯之介・・・・・・!!」



あー、チアキが思いっ切り抱きついてるし。冴さんには見えてないけど、僕達は微笑ましい。



「・・・・・・分かった。なら、オーナーには僕達から伝えておくよ」

「すみません、よろしくお願いします。あの、本当にありがとうございました」

「ううん、大丈夫。・・・・・・じゃあ唯之介、またね」

「あの、『さよなら』じゃ」



全く、分かってないねぇ。あむもそうだし、フェイトやスバル達も疑問顔っておかしいでしょうが。



「違うよ」



僕が右手の人差し指を立てて、右目でウィンクしながら言う。



「友達との、仲間との別れの挨拶は、何時だって・・・・・・『またね』、なんだよ? そうですよね、良太郎さん」

「・・・・・・うん、そうだよ。それで、いいんじゃないかな。
僕も恭文君やフェイトさん達と、同じような感じで何度もお別れしてるから」



そして、良太郎さんが僕達を見る。それから、嬉しそうな顔で唯之介への言葉を続ける。



「だから、唯之介君・・・・・・またね。いつか、未来で」



その言葉に、唯之介が笑った。いや、あむや他のみんなも同じく。みんな笑って、頷く。



「・・・・・・なら、それで。みなさん、またいつか。いつか・・・・・・未来で」

「うん、唯之介君・・・・・・またね。あの、あたしも同じ。いつか、未来で」

「はい」










そのまま、僕達は手を振りながらデンライナーとゼロライナーに乗り込んだ。

京都の街はこのあと大騒ぎだろうなとか、ちょっと思いつつ。まぁ、大丈夫か。

月夜が襲撃してきた時は、もっと大騒ぎだったんだもの。





・・・・・・時間の歪みは、オーナー曰くちゃんと解消されているらしい。だから、もう大丈夫。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・しっかし、俺ら全然暴れてねぇよな。特に俺だよ俺」



そして、テーブルに着いていたモモタロスさんが、立ち上がって両腕を広げる。



「『俺、参上っ!!』・・・・・・って、やってねぇしよ。なんだよこれ」

「まぁ、えぇやないか。無事に片付いたんや。よしとしようや」

「そうそう。・・・・・・でも、ティアナちゃん本当に久しぶりだよね」



で、その向かい側に座っていたウラタロスさんは立ち上がり、後ろの席のツンデレに近づく。



「誰がツンデレですって?」

「ティアナ」

「うっさいバカっ!!」




僕達がこんなやり取りをしている間に、ウラタロスさんは近づいてティアナの肩に手を回す。



「また随分と綺麗になっちゃって。ね、そろそろ僕に釣られて」

「釣られるわけないでしょっ!? このバカっ!!」



バキッ!!



「ぐはっ!!」



あ、なんか吹き飛ばされた。ティアナ、普通に魔法なしでももうイマジン倒せるんじゃないだろうか。



「・・・・・・あぁ、このツッコミも本当に久しぶりだなぁ。なんか、懐かしくなってきちゃったよ」

「亀ちゃん、懲りないねー。ねね、でもでも・・・・・・ホント久しぶりだよねー。
うー、それであんまりお話出来ないのは、ちょっと残念」

「大丈夫よ。また改めて遊びにくるから。ね?」



ティアナが僕を見て言って来るので、僕は頷いた。今回は、非常にバタバタしちゃったしなぁ。



「リュウタ、またジガンのお礼しに、ケーキでも持ってくるよ。
・・・・・・てか、ありがとね。色々協力してくれて。うん、ホント助かった」

「もう、恭文何言ってるの? 僕達、友達なんだから当たり前じゃん。
唯之介とだけじゃないよ。僕と恭文も、『またね』なんだからさ」

「あははは、そうだね」



あとは、侑斗さんとデネブさん、幸太郎とテディもか。

二人は・・・・・・隅で紅茶飲んでる。なお、僕がお礼代わりに淹れた。



「あぁ、恭文君の紅茶は美味しいなぁ。俺、これだけは再現出来ないんだ。
というか、良かったね。トマト嫌いが克服出来始めてて」

「いや、なんというか・・・・・・デネブさんのレシピのおかげです」



あれで、色々とフェイトが頑張ってくれたもの。うん、本当に感謝だ。



「そう言ってくれると、俺も嬉しい。侑斗も、もうちょっと頑張ってくれたらなぁ」

「相変わらずなんですか?」

「うん。シイタケ嫌い、まだ治らないんだ。一回は食べられたから、大丈夫なはずなのに」



そして、デネブさんはため息を吐く。まるで、反抗期の息子か娘を心配するお母さんのように。

・・・・・・万年反抗期な生活を送っているようなものなので、こういう姿を見るとうちのご母堂様に罪悪感が湧いてくる。



「うるさいっ! てーか、俺の話は別にいいだろっ!? ・・・・・・おい、チビ」

「はい? というか侑斗さん、僕のチビ呼ばわりはやめません?」

「いいだろ、別に」

「良くないから言ってるんですけどっ!?」



・・・・・・侑斗さん、何故に僕をそんな真っ直ぐに見るんですか。僕、色々ドキドキなんですけど。



「こっちに来るまでに、歌唄やリインから色々聞いた。
なんか、色々大変らしいな。まぁ・・・・・・頑張れよ」

「・・・・・・はい、ありがとうございます」

「礼なんていらねぇよ」



そして、侑斗さんはお茶を飲みながらそっぽを向いた。僕とデネブさんは、それを見てクスリと笑う。



「幸太郎も・・・・・・あの、ありがとうね。ヤスフミもそうだし、私も本当に感謝してる」

「別にいいって。てーか、俺はそこのバカを連れ戻しに来たのも兼ねてるし」

「フェイトさん、私も同じくです。お気になさらずに」

「んー! んんー!!」





隅っこで、がんじがらめにされているのは、我が孫。なお、予定通り未来へ強制送還である。

縛ったのは、『反省したから許してくれ』と言って、無駄に抵抗しようとしたから。

というか、僕がリハビリがてら戦って叩き潰した。もちろん、ここにも事情がある。



いやぁ、ビルトビルガーが僕に対して密告してくれたのよ。





「ねぇ、恭太郎。誰が誰より強いって? もっと言うと、僕がおのれより弱いってどの辺りが?」



しゃがんで笑いかけると、恭太郎が顔を青くした。

・・・・・・うん、なんか言ってたらしいのよ。ビルトビルガーが教えてくれた。



≪古鉄師匠、しばしのお別れです≫

≪そうですね。このモードで対決するのは、あなた達が戻ってきてからですか≫



テーブルの上で、なぜだかエクシアリペアUとストフリノロウサのぬいぐるみが握手している。

なお、エクシアがビルトビルガーで、ストフリは我らがフリーダムウサギ。



「んんんー! んん、んんんんんんんんー!!」

≪恭太郎、すみません。でも、今おじい様を敵に回すとこのぬいぐるみをもらえなかったので≫

「んんー!!」



まぁ、色々な事が起こってこうなったのだ。うん、全部行間から察して?
 


「あぁ、僕より自分の方が強いと。・・・・・・だめだこれ、全く反省してないし」

「んー!!」



恭太郎の必死な叫びは無視して、僕は侑斗さんの方を見て、おじぎ。



「・・・・・・侑斗さん、すみませんけどうちのバカ孫と幸太郎達の事、よろしくお願いします」

≪デンライナーは、おじい様達とあむさんを送らなければならないので≫

「あぁ。俺達で責任持って、未来に送り返してやる。咲耶、お前もどうせ来るんだろ?」

「当然です。あ、すみませんがアギトさまもお願い出来ますか?
シグナムさまが、すごい勢いで泣いているでしょうし」



てーか、アギトまで来てくれてたんだよね。というか、これからフォローが大変だ。



「恭文、八神二佐から聞いたけど、夏休みにミッド戻って来るんだよな?」

「うん」

「だったら、絶対ブレイズフォームやるぞ。うん、約束だ」

「分かってるって。てゆうか、そんなに気に入ってるの?」

「当たり前だろ? シグナムはあんな感じだし、普通にノれるのはお前くらいなんだよ」



あぁ、納得したわ。確かにシグナムさんは、僕みたいなノリはダメだよなぁ。・・・・・・で、そこは何を睨み合ってる。



「・・・・・・かえでさま、本当に決着をつける時が来たようですね」



そして、咲耶は睨む。すぐ隣に居るかえでを。

かえでは若干包帯だらけだったりするけど、それでも睨み返す。



「そうだね。でも咲耶、私は負けないよ? うん、絶対に。・・・・・・あ、それと恭文おじいさん」

「なに? あの、うちの孫が非常に迷惑をかけたことについては、謝るので」

「あぁ、そこじゃないです。・・・・・・ほら、リース」

「は、はい」



リースが、僕の前まで来る。そして、爆弾を投げた。



「・・・・・・おじいさん、フェイトさん、私をしばらくお側に置いてください」

「え?」

「咲耶に恭太郎さんが一旦戻る以上、戦力ダウンは免れません。エンブリオの一件は、まだ解決していないとも聞いています。
なので、二人が戻るまでこの私、3代目祝福の風・リインフォースVが及ばずながら、力を貸せればと思います」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』










そうして、デンライナーとゼロライナーは走る。それぞれの時間へ、それぞれの行く先へ。





そして、それぞれの帰るべき場所へ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



風は、何時だって色んなものを運んでくる。喜びも、悲しもも、出会いも、別れも、そして・・・・・・事件も。

というか、俺達自身まで運んでくれた。俺達は、気がつくと懐かしの我が事務所に居た。

とりあえず、亜樹子は窓を見る。というか、窓に向かってそれを両手で思いっ切り開け放つ。





そして、俺達もそちらへ向かう。向かいながら、窓の外の景色を見て安堵する。





だって、なんか外に風車が見えるから。てゆうか、いつも通りの風都の風景。










「・・・・・・やったー! ちゃんと風都に戻って来てるー!!」

「アキちゃん、当然だよ。・・・・・・あぁ、でも残念だ。
キャラなりやユニゾンを見せてもらいたかったのに」

「まぁ、いいじゃねぇか。てーかよフィリップ、また会いに行くんだろ?」

「もちろん。報酬はきっちり・・・・・・いいや」



フィリップは、窓の外のいつも通りな景色を見ながら、どこか嬉しそうしている。



「これは約束だもの。フェイトさんは、きっとそれを守ってくれる。
だったら、僕も守らなくちゃ。・・・・・・フェアじゃないでしょ?」

「あぁ、そうだな」










風は、色んなものを運んでくれる。本当に、色んなものをだ。





こうして、俺達の不思議な時間は終わりを告げ、日常が戻ってきた。





・・・・・・そして、また誰かが突然に事務所のドアを叩く。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いらっしゃいませー!!」

「あ、三名様ですね。ささ、こちらへ」





白べこは今日も大忙し。というより、京都の街は色々お祭り騒ぎ。

あのモウリョウ団という人達を退治した人の事・・・・・・恭文さん達の事だね。

そして、突然現れた空を飛ぶ二つの列車の事が、その原因。



そんな中、白べこは普段にも増して来客がある。話を聞いて、遠方から来た旅行者さんも居るから。





「唯之介」

「うん、なに?」



みんなに聞こえないように、小声でチアキの方を見る。



「女装、やめたね」



あー、そうだね。なんだか気分の問題なんだけど・・・・・・こう、これもいいかなと。



「チアキは、こういうのはだめ?」

「ううん。すごくいいと思う。唯之介、楽しそう」



そうして、チアキは笑う。・・・・・・チアキも、僕から見ると楽しそうに見える。

多分、他のしゅごキャラに会えたせいかな。前より明るくなった感じがする。



「・・・・・・あの、席空いてますか?」



入り口の方から、控えめにそんな声がかかった。



「あ、はい。少々お待ちを」



僕は、一旦皿を下げて、それを洗い場の人に任せてから、手を拭きつつその声の方に向かう。

・・・・・・そして、息が止まった。だって、あの・・・・・・あむさんに似た顔立ちの子だったから。



「・・・・・・あの、どうしました?」

「あ、ごめんなさい。・・・・・・ちょっと、知っている人に似ていたもので。
えっと、席の方ですよね。何名様ですか?」

「あたしとお父様とお母様の三名なんですけど」



僕は、一旦店内を見る。今は満席状態。でも、幸いなことに並んでる人間も居ない。



「少しお待ちいただく形になってしまうんですけど、大丈夫ですか?
今の状況だと・・・・・・大体、10分前後」

「あ、大丈夫です。じゃあ、外で待ってれば」

「はい」










あの時、突き刺さった『こんなはずじゃなかった時間』という言葉。

それとの僕なりの向き合い方、関わり方。それは、まだ見つからない。

だけど、少しずつ探していく。恭文さんやあむさん、それに・・・・・・あの悲しい人を見て、そう決めた。





過去は大事。それがあるから、今がある。でも、それに負けたりしたくない。

もしも、僕なりの向き合い方が見つかったら、いつかまたみんなと会えるのかな。

ううん、僕は無理でも・・・・・・僕の孫とかひ孫とかが友達になったりするのかな。





もしそれが出来るとしたら、僕は・・・・・・すごく、嬉しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「やっと帰ってきましたねー! あぁ、懐かしの我が家ー!!」

「シャーリーさん、はしゃぎ過ぎ。子どもじゃないんだから」

「あら、そう言うりまちゃんだって、足をバタバタしてウキウキモードじゃないの」

「・・・・・・言わないで。あ、私ちょっと部屋で電話してくる」

「うん、行ってらっしゃーい」



りまの様子を見て、私は少し嬉しくなる。最終決戦も本当に頑張ってくれたらしいし・・・・・・うん、嬉しいな。

あの子を預かる事になって色々不安もあったんだけど、結果的には良かった。あの子、本当に明るくなったから。



「・・・・・・というか、リースは真面目にうちに来るですか」

「私、マジでビックリなんだけど。てゆうか、なんでそうなるの?」



うん、リース・・・・・・うちに来たんだよね。かえでにも頼み込まれちゃって、断わり切れなかった。

まぁ、料理関係とか強いらしいし、家事手伝いかな。それで、いざという時にはヤスフミとユニゾン。



「それも、かえでまで来ようとしてたし」

「まぁ、かえでちゃんは半分お説教から逃げたかったんでしょうけど」

「やっぱりですか」

「はい」





・・・・・・でも、もうてんこ盛りはやめて欲しい。使用後のヤスフミの消耗が、あまりに激し過ぎる。

なにより、複数のユニゾンデバイスとの同時ユニゾンなんて、パスの力があるからって無茶過ぎる。

正直、後遺症が出てないのが不思議なくらいだもの。うん、本当にやめて欲しい。



あれは今を使い潰す選択だと思う。というより、あむや歌唄、りま達の心配が凄かったから。





「咲耶と恭太郎さんが帰ってくるまでの間ですが、お世話になります。
ティアナさん、そしてリインお姉様、よろしくお願いしますね」

「お、お姉様・・・・・・!? リース、もっと言ってくださいですっ! リインは、こういうのは初体験なのですよっ!!」

「はい、お姉様」



どうも、リインは普通に受け入れられる感じらしい。もう、頬が緩んでるもの。



「フェイトお嬢様、お疲れ様でした」

「うん、ディードもお疲れ様。・・・・・・だけど、なんか信じられないね」

「そうですね。私達が出発してから、まだ3時間程度しか経ってないなんて」



オーナーが気を利かせてくれて、事件が起きた日に私達を帰してくれた。

あむが喜んでたっけ。さすがにそのまま戻ると、5日近く無断外泊してることになっちゃうから。



「・・・・・・あ、そうだ」

「どうしました?」

「私、今日お風呂掃除の当番だったでしょ? ちゃんとやっておかないと」

「あ、それなら私が」

「いいから、やらせて? ちゃんとやっておきたいんだ」





日常が戻ってきたのを、実感したくなった。日常は、やっぱりこういうところからだと思うから。

・・・・・・そうだ。みんなが寝静まった後にヤスフミとお風呂タイム、しちゃおうかな。

それで二人で洗いっこして、浴槽でまた後ろから抱きしめて・・・・・・幸せ、一杯感じようっと。



私の幸せの一つは、ヤスフミとの時間だから。うん、いっぱい満喫するんだ。





「・・・・・・ね、夕飯ご馳走になってもいいかしら。なんだか、安心したらお腹空いてきちゃって」

「そうだなー。あー、でもやっと解決かぁ」

「色々ありましたけど、エル達すごい冒険したんですねぇ」





そうだね、みんなで冒険・・・・・・そっか、これは冒険なんだよね。

局の仕事とかともまた関係ないから、冒険。

そう考えると・・・・・・不謹慎なのは承知の上で、ちょっとドキドキする。



でも、そのドキドキの前に私は向き合わなくちゃいけない現実があるの。それは、あの子達。





「歌唄っ! というかエルちゃんとイルちゃんも、どうしてまだ居るのっ!?」

「あら、今日は元々恭文に新曲を聴いてもらうつもりだったもの。問題ないわよ」

「大有りだよっ! タクシー呼んであげるから、あなたも早く家に帰ってっ!? ゆかりさんが心配するからっ!!」



トゥルルルルルルルルルッ!!



「あ、電話だ。・・・・・・はい、ハラオウンです。あ、空海?
またどうしたのよ。自宅にかけてくるなんて珍し」



あれ、ティアが固まった。固まって・・・・・・叫ぶ。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「ティアナさん、どうしたですか?」



エルちゃんにそう聞かれて、私達の視線を受け止めながらティアは受話器を耳から離し、通話口を左手で塞ぐ。



「く、空海が・・・・・・唯世の家がさっきまで消えてたって、すごい大騒ぎしてるんです」



・・・・・・・・・・・・え?



『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「りまー、大丈夫ー?」

「大丈夫よ。うん、もう大丈夫。クスクス」



一応、必要な事だからちゃんと言っておく。クスクスの方を見ながら、私は微笑む。



「ありがと」

「・・・・・・うんっ!!」



私は、携帯のボタンを押していく。電話帳を開いて、通話ボタンをプッシュ。

電話がかかって・・・・・・それからすぐ、その電話は取られた。



「・・・・・・もしもし、ママ?」



パパ・・・・・・あぁ、お仕事中か。まぁ、仕方ないわよね。



「うん、大丈夫。恭文もフェイトさんも、本当に良くしてくれてるの。
二人だけじゃなくて、一緒に暮らしてる人達も同じ」



まぁ、恭太郎と咲耶は一旦未来に帰っちゃったけど、ティアナさんとリインにシャーリーさん、ディードさんもそう。

みんな、本当に良くしてくれてる。だから・・・・・・ありがたいし、申し訳なさもちょっとあったり。



「・・・・・・うん、ちょっと声が聞きたくなって。あの、それでねママ」



隣で、クスクスが心配そうにしている。でも、大丈夫。

なんだか、分かった気がするから。私の居たい場所と時間の事。



「夏休みが終わってからになっちゃうんだけど」



ミッドチルダで夏休みを過ごす事は決定したしね。だから、もうちょっとだけ待って欲しい。



「一旦、そっちに帰ってもいいかな」



私の居たい場所と時間は、ここ。友達と仲間が居るから。

でも、それだけじゃない。パパとママのところも、それになる。



「ちゃんと、話したいんだ。私がどうしたいのかとか、どこに居たいのかとか・・・・・・ちゃんと」










星の光は、消えない・・・・・・か。だったら、大丈夫なのかな。

パパとママと、私の三人で笑えるかな。昔みたいに・・・・・・ううん、違う。

昔よりも、今よりも一杯笑うの。笑うことは、バカな事なんかじゃないから。





そんな時間が、今と未来が掴めるように・・・・・・頑張っていきたい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「なぜ・・・・・・なぜ、私ではダメなのですかっ!? なぜ、蒼凪とユニゾンする時はあんなに生き生き・・・・・・!!」

「あぁ、シグナムさん落ち着いてくださいよ。てーか、飲み過ぎですから」

「それは全部・・・・・・あぁ、そうだ。蒼凪のせいだ。よし、奴を斬る」



きゃー! なんか普通に飲み屋のカウンターでレヴァンティンセットアップしようとしてやがるしっ!!

当然のように、俺とヒロは止める。そのために、両側に居るわけだし。



≪なぁ、シグナムねーちゃん。斬っても解決しないぜ? そもそも、アンタとのユニゾンが楽しくないのが原因なんだろうしよ≫

≪バカっ! アメイジアやめろっ!! 真実とは言え、それはあまりにも酷いと思われるぞっ!?≫



アメイジアと金剛の言葉に、シグナムさんが固まった。そして、崩れ落ちて俯いた。というか、泣き出した。



「アメイジア、金剛、アンタら・・・・・・私らが投げることを避けていたボールを、遠慮なくぶつけたね」

≪いや、でもそうだろ?≫

「・・・・・・じゃあ、じゃあ私はどうすればいいと言うのだっ!? あれか、モモタロス殿のように『俺、参上』と言えばいいのかっ!!」

≪やるしかないな≫

「出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










とりあえず、アギトには早めに戻ってもらいたい。てーか、後でやっさんに連絡しよう。

何がどうしてこうなって、アギトが必要になったか説明してもらわないと、俺らも納得出来ないって。

シグナムさんは、もう崩れ落ちて泣くばっかりだしよ。話にならないんだよ。





・・・・・・てーか、その辺りも分からないのに付き合うって、俺らお人好しだよな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あぁ、歌唄ちゃんとりまちゃん、お土産気に入ってくれたかなぁ」

「お前、いくらなんでもキャンディー持たせ過ぎだろ。アイツら、ビックリしてたぞ?」

「でも、他のしゅごキャラの子も沢山居るって言うし、みんなに分ける分も考えると」

「考えるなよ、バカっ!!」



全く、コイツは・・・・・・。でも、なんとか片付いてマジでよかった。あの牛車を見た時は、ビビッたけどよ。

さて、とりあえず俺はもう二仕事だ。まずは、アギトの奴をミッドに送り返す。・・・・・・非常に怖い事になってるだろうけどな。



「アギトちゃん、シグナムさんにもよろしくね。あ、これデネブキャンディー」

「お、悪いなー。・・・・・・な、ついでにもう一個くれないか? これでシグナムの機嫌を取るからよ」

「うん、いいよ」

「んー! んんんー!? んんー!!」



そして、お前はうるさい。なにじたばたしてんだよ。あと、そんなに怯えるな。

いや、分かるぞ? 俺も怖いけど、やめてくれ。マジでやめてくれ。



「恭さま、大丈夫です。未来に帰った後、決着はしっかりつけますから」

「恭くん、大丈夫だよ。・・・・・・私は、恭くんが真剣に考えて出した答えなら、納得するから」

「んんー!!」



正直、こいつの送り迎えはデンライナーに任せたかった。マジで空気悪いし。あぁ、どうすんだよこれ。



「幸太郎」

「テディ、何も言うな。いいか、俺達は送り届けるだけだ。
あとはどんな地獄絵図になろうが、一切関わらないからな?」

「了解した」










幸太郎、それが利口だ。・・・・・・マジで、うまく片付いてくれることを祈る。





またこんなバカげた話がきっかけで事件なんて、俺はごめんだからな。





でも、そう考えるとそのためにカード使って・・・・・・あぁ、気にするのもうやめた。疲れるだけだし。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・で、犬っ子と良太郎はまたデートか? よくやるよなぁ」

「デ、デートとかじゃないよ。まだスバルちゃんのお休みは続いてるし、普通に交流を深めるというか、なんというか」

「それを世間ではデートって言うんだよ? ね、スバルちゃん」

「そうですよー。というか、デートも何回かしてるんですから、そろそろそういう遠慮がちなの、やめて欲しいんですけど?」



そ、それはそうなんだけど・・・・・・こう、慣れないというかなんというか。うぅ、だから怒られるのかな。

最近だと、姉さんもそうだけど尾崎さん達にも怒られるんだよね。僕、ダメだって。



「しっかし、なんや寂しいな。あんだけ居たのが、もう俺らだけや」

「そうよねぇ。・・・・・・でも、日奈森あむちゃんかぁ」

「なんか、すごい子でしたよね。良太郎ちゃんにも負けてないというか、恭文ちゃんがもう一人居るというか」





ハナさんとナオミさんの言葉に、全員が頷く。ここは、共通見解らしい。

結局、キュウビ・・・・・・ううん、月夜を本当の意味で止められたのは、あの子の力が大きいもの。

あむちゃん、君は『助けられなかった』って言ってたけど、少し違うんじゃないかな。



偉そうだし、勝手な推測なんだけど・・・・・・なんだかね、そう思うんだ。

取り零したのは、間違いの無い事実かも知れない。

だけど、それでも手の平にすくえたもの、きっとあったと思う。





「まぁ、性格は随分違いがあるけど、確かに強い子だったよね。
でも、あむちゃん・・・・・・ちょっと、釣られたかも」

「確かに、中々に興味深い娘であった。少年が彼女を認めている理由も、見ていてよく分かったしな。
・・・・・・あぁ、姫。安心したまえ。あの娘も中々ではあるが、姫の魅力には今一歩届かぬゆえ」

「誰も聞いてないから。でも、恭文君はいい仲間に恵まれてるわね」



うん、そこは僕も同意見。それで納得した。恭文君が、あんなにあむちゃんを信頼していた理由。

きっとあの子の強さを認めてるし、大好きだからなんだよね。だから、あんなに仲良し。



「そうですねぇ。あの調子なら・・・・・・エンブリオの一件も、きっと乗り越えられるでしょう」

「あー、そういやアイツらはなんか面倒なことに首ツッコんでんだよな。あれだ、エンジンオー・・・・・・だっけか?」

「・・・・・・先輩、それ全然違う。エンブリオだから。
というか、エンジンオーは前にリュウタがコスプレした赤いのが乗るやつじゃないのさ」



リュウタ、そんなことしてたのっ!? というか、エンジンオーってなにっ!!



「あぁもう、どうしたらそんな風に、毎度毎度懲りることなく聞き間違えられるわけ? もうワケ分かんないし」



・・・・・・エンブリオ。何でも願いを叶えるたまご・・・・・・だっけ? それを巡って、ある人達と争ってるって言ってた。

正直、そこは少し心配。恭文君は大丈夫だけど、フェイトさんやティアナちゃん達はいつも通りに戦えないらしいから。



「まぁ、オーナーの言うように心配ないやろ。あむもそうやけど、恭文はめっちゃ強いんやからな」

「そうですよ。あむちゃんのしゅごキャラも、歌唄ちゃんやりまちゃんにエルちゃん達も、みーんな良い子だったんですし、大丈夫ですって」



まぁ、ダイヤちゃんにはビックリしたけどね。・・・・・・また、寝ちゃったけど。

少しビックリして聞いてみたら、苦笑いされたっけ。



「ねね、それなら今度またあむちゃんを呼んでもらって、一緒に遊ぼうよ。
今回は本当に戦ってばっかりだったしさ。それで歌唄ちゃんと、りまちゃん以外の子も一緒に」

「あ、それいいですね。私も、みんなともうちょっとお話してみたくなっちゃったなぁ。良太郎さんもそうですよね」

「うん。それで、機会はこれから沢山あるよ。僕達、もう友達なんだから」










だから、この言葉でいいんだよね。恭文君、あとあむちゃんにフェイトさん達も、またね。いつか・・・・・・未来で。





それと、僕達は応援することくらいしか出来ないけど、それでも言わせて欲しいな。・・・・・・頑張って。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「なんというか、長かったねー」

「でも、ボク達はやっと帰ってきた」

「なんだか、すごい冒険・・・・・・しちゃいましたねぇ」



僕は、あむを家まで送る途中。外は、もう真っ暗。・・・・・・色々表現おかしいけどさ。



”でも、ダイヤちゃんはぐっすりなの。気持ちよさそうに眠っちゃってるの”



そう、ダイヤはあの後すぐにまたたまごに戻った。まぁ、またなんか有ったら、勝手に目覚めるでしょ。



”ジガン、気にしてはいけません。基本的にアレは、あんな感じなんですよ”



でも、あのキャラがあむのどこに存在しているのかが、非常に気になる。

これで常に目覚めてる状態になったら、すごいことになるんじゃ。



「・・・・・・ね、恭文」

「なに?」

「あたしね、さらわれる前に・・・・・・ディードさんと、少し話したんだ。
知ってしまった現実と、あたしがどう関わりたいかって話をさ」



・・・・・・やっぱり、明治でのあれこれがショックだったらしい。普通にその辺りを悩んだとか。

で、ディードは軽くアドバイスをした。我が妹も色々あるから、そのせいでしょ。



「答えは、まだ出ないんだ。でも、これって明治って時代だけの話じゃないんだよね。
地球や次元世界の中でも、月夜だったり、唯之介君みたいな子が居る」

「・・・・・・うん、居るよ。理不尽な力に想いに晒されて、傷つく人達は居るの。
別にさ、こういうのは普通の人間関係でもありえることなのよ? うん、特別な事じゃない」



人間ってのは、やっぱり怖い部分があるのだ。そこは間違いない。



「それで、そんな人達は『こんなはずじゃなかった時間』を生きてる」

「そうなるね」

「・・・・・・もし、もしもね。あたしの力でそれをなんとか出来るなら、なんとかしたいって・・・・・・ちょっと、思ってる」



歩きながら、いつもの制服姿に戻ったあむが空を見る。空には、星が輝いていた。

多分今日は明治の時と同じ星の光が、空に溢れてる。



「管理局の事、真剣に勉強してみたいんだ。もっと言うと、入るかどうか考えたい」



・・・・・・そう来たか。なんとなく予想はしてた。てーか、なのはも同じ感じだったらしいし。



「あむ」

「分かってる。色々問題多いんでしょ? リンディさんとかからも、少しだけ話聞いてる」



普通に以前聞いた勧誘だけじゃなくて、組織の問題点なども説明したらしい。

・・・・・・というか、リンディさんはその辺り話してたんかい。ちょっとビックリだぞ。



「まぁ、あたしは魔法使えるかどうか分からないしさ。使えても恭文やフェイトさんみたいにはなれないだろうけど」

「それでも?」

「うん、それでも」



あむが足を止めて、真っ直ぐに僕を見る。



「探してみたいんだ。あたしなりの現実との関わり方って言うのを、少しずつ」



だから僕は・・・・・・覚悟を決める。目を見て、これは適当な返事じゃダメだと気づいたから。



「つまり、管理局もあくまで選択肢の一つとして考える?」

「うん」



まぁ、あむが決める道だ。僕はあんまり言えない。そのまま、また僕は歩き出した。



「あむ。今から言う事、忘れないで」

「なに?」



あむは、小走りに僕を追いかけてくる。そのまま、言葉を続ける。



「あむが他の人の世界を全部救う必要なんてないし、そんなこと出来ない。
あむは、神様でもなんでもないんだから。ジョーカーかも知れないけど、それでも無理」



なお、自分にも言ってる。きっと、世界を全部なんて一人では無理なのよ。無理で、いいとさえ思ってる。

きっと一人の人間が何とか出来るのは、何時だって目の前の手の届く範囲の事だけだと思うから。



「何かを守るって、そんな簡単なことじゃない。基本的に今回みたいなことばかり。
なんとか解決しても事件は起きてて、被害者は居て・・・・・・まぁ、そういう話だね」



これは、某特車二課の後藤隊長も言っていた事。でも、僕達の仕事の一つの真実。



「これ、ある漫画のセリフなんだけど、よく復唱してるんだ。・・・・・・僕達の仕事は、風邪薬なのよ」

「風邪薬?」

「まぁ、風邪薬だけじゃなくて、解熱剤とか色々あるけどね。
とにかく、病気事件が発生したら、症状に合わせて投薬される」



なお、薬だから偉いという話ではないので、あしからず。いや、言っておかないと誤解するのが居るのよ。



「それで、世の中身体に蔓延したウィルスを何とか止めて、機能を正常化させる」



そうして、その病気が正常な器官一般市民に被害をもたらさないようにする。それが、僕達のお仕事。



「でもさ、病気になってる時点で、予防は出来てない。・・・・・・つまり、事件は起きてるのよ。
そうなると当然のように被害者は居るし、当然のように加害者も居る。ここは分かる?」

「うん」

「つまり、僕やフェイト、管理局みたいな警察機構の仕事は・・・・・・ぜーんぶ『手遅れ』なの」



あむの顔が驚いたものになる。そして、目を見開く。

だけど、僕は歩きながら構わずに言葉を続ける。



「全部負け戦。これを続けるのはさ、本当に覚悟が居る。てーか、たまに僕やフェイトもやってらんない時がある」



現に、ヒロさんとサリさんはそういうのを仕事的に続けるのが疲れたから、引退の道を選んだもの。

それもまた、一つの選択。先生みたいに、中に居てもなお自分を通すのと、同じ。



「あの、待って? お薬なら・・・・・・その、病気にならないようにするとか」

「残念ながら、予防は風邪薬の本来のお仕事じゃないのよ。
というか、本来なら警察機構は存在しているだけで、その役割をもう十二分に果たしてなきゃいけない」



あむにも分かるようにちゃんと説明して行く。だって、これは僕から始めた話なんだから。



「あむ、健康なのに薬をバシバシ飲んでくのが、本当に良いことだと思う?
予防薬とかじゃなくて、風邪薬とか解熱剤とか」



僕の言葉に、あむは歩きつつも考える。

というか、周りのキャンディーズまで考えてる。そして、答えを出した。



「えっと、つまり・・・・・・あまりに局とか警察みたいなところが、アレコレ言うのはダメってことだよね」

「そうだよ。そうすると、今度は人権どうこうって問題が出てくる。犯罪防止のためとは言え、これは許されないのよ」



一種の支配とでも言えばいいのかな。そういうのに転化する危険性があるから。



「まぁ、そういう側面もあるから、ガチに突っ込むのは・・・・・・やっぱり、事件が起きてから」



そして、僕達は飛び込む。負け戦でも、手遅れでも・・・・・・飛び込む。

もちろん、理由はある。だから振り返り、後ろ向きに歩きながらあむの目を見る。



「だけどね、それでもこの仕事は絶対無意味じゃない。これ以上被害者が増えるのを、止められるから」



そして、今泣いている人の涙を止められる。局とかでは、そう考えてるからみんな頑張ってる。

だから、僕の周りの魔導師関係は局員が多い。うん、普通にね。



「だけど、手遅れで傷ついた人達が出てしまうのも、やっぱり事実。そして、あむも今までそれを続けてる」

「あたしも?」

「・・・・・・×たま狩りだよ」

「あ、そっか。そう・・・・・・なんだよね。あたしさ、今の話を聞くまで考えてなかったけど」



あむは、歩きながら空を見上げる。本当に曇り一つない星空を。



「あたし達も、×が付くのを予防なんて出来てないんだよね。
無事に浄化出来ても、×は付いて・・・・・・それで苦しい思いはしちゃってて」



うん、そうだね。それでさ、浄化出来てもその間に持ち主の子は更に苦しい思いをしてる。

取り戻せなかったら・・・・・・ずっと続くかもしれない。例のおねだりCDの一件とかは、特にそうだ。



「・・・・・・恭文の言いたい事、分かった。
そういうのに関わるんなら、負け戦なのは覚悟しておけってことでしょ?」

「うん。でも、それだけじゃない。それでも、その道を選ぶとするじゃない?
なら・・・・・・あむは、今よりずっと自分を大事にしなくちゃいけない」



まぁ、人生の先輩ですので、たまには偉そうになるのよ。



「まぁ、僕も今回みたいにやっちゃう時があるからあまり言えないんだけどさ」



あむは、そんな僕の話を黙って聞いてくれる。普段よりもずっと、真剣な顔で。



「誰かを助けたいと思って手を伸ばす人間はね、自分も他人も、全部守る覚悟が必要なの。
他人を助けるために自分を犠牲に、今を削って使い潰す選択なんて、だめ」

「どういう、こと? ・・・・・・ううん、あたし分かる。あの時の恭文みたいにしちゃだめってことだよね」

「そうだよ。あと、僕だけじゃないか。以前のなのはだったりフェイトだったりがそんな感じだったからさ。一応、言ってみた」



とは言え、これ以上グダグダ話すのもつまらないよね。もうちょい、簡潔に行くか。



「管理局に入る事も含めて、今から探していく必要があるね。
あむの幸せとか、夢とか、なりたい自分を。何も諦めない、今までよりわがままなあむを」

「・・・・・・うん」

「それが出来るなら、まぁ僕も力を貸すよ? ・・・・・・友達、だしね。
僕、正式な局員じゃないからコネはないけど、相談には乗れるし」



そのまま、振り返って僕はまた歩き出す。あむは、それを追いかける。



「恭文」

「なに?」

「ありがと」

「・・・・・・いいよ」



てーか、普通にお小言も同然だし。礼を言われる意味が分からない。



「そう言ってくれるってことは、あたしとの約束守ってくれるんでしょ? だから、『ありがと』なの」

「・・・・・・まぁね。いやさ、スペック勝負に走っちゃったのがちょっと反省でさ。
もうちょい、自分自身を強くして対処しないと、駄目かなーって。だから、てんこ盛りは封印」



ディードは、その辺り相当頑張ったらしいしさぁ。うん、ちょっとその辺りで反省してるのよ。



「じゃあ、そっち方面があるから使わないの?」

「そうだね。・・・・・・あと、またあむに泣かれるの嫌だし」

「・・・・・・そ、そっか。あの、そうストレートに言われると恥ずかしいって言うかなんて言うか」

「じゃあどう言えとっ!?」





そのまま、僕達は星を見上げながら夜の道を歩いていく。

静かに、ゆっくりと。そして、向こう側から歩いてくる影。

それを見つけて、あむが息を飲む。それから、表情が喜びに溢れる。



僕は・・・・・・そっと、心の中で胸を撫で下ろす。





「唯世くんっ!!」

「あ、日奈森さん。それに蒼凪君も。・・・・・・どうしたの?」



目の前に居たのは、消えた時間・・・・・・唯世とキセキだった。

チェックのシャツと茶色の短パンを身につけて、左肩から鞄をぶら下げてる。



「あ、えっと・・・・・・ちょっと、恭文に勉強教わってたんだ。ほら、恭文理数系強いから」

「なるほど、それでこんな時間までか。恭文、お前はあむに弱いな。フェイトさんがヤキモチを焼くぞ?」

「うっさい。てーか、さっそくそれかい王様」

「当然だ。家来の幸せを願うのも、王の仕事だからな」



・・・・・・おのれ、こっちがどんだけ大変だったと思ってるのさ。まぁ、いいけどさ。

この様子なら、海里とややに二階堂達も大丈夫そうだね。うん、安心した。



「フェイト公認だからいいのよ。唯世は、塾?」

「うん。今は帰り」

「そっか。・・・・・・ね、唯世」



まぁ、あれだよ。僕も色々反省した。33話ではちょっと偉そうな事、言い過ぎたしね。

だから、対価を払う事にする。僕は唯世の目を見ながら、真っ直ぐに言葉を続ける。



「強くなりたいって言ったの、本気なんだよね?」

「えっと・・・・・・蒼凪君、いきなりどうしたの?」

「いいから、答えて」

「・・・・・・うん、強くなりたいよ。僕の『なりたい自分』に、やりたいことに少しずつでも近づけるように」



唯世は、僕を真っ直ぐに見据えて言い切った。キセキの方も見るけど、同じく。これなら・・・・・・大丈夫かな。



「なら唯世、僕がしばらく重点的に、近接戦闘の稽古をつけるよ。
ちょうどミッドで夏休みも過ごすんだし、ビシバシやるよ」

「え?」

「唯世がちゃんとついて来れば、バージョンアップの速度が進むのは約束する。
もち、体調管理も相談に乗る。・・・・・・どうする? やってみる気、あるかな」



唯世は、少し考えて・・・・・・ううん、考えずに、すぐに頷いた。



「お願い。・・・・・・でも、いきなりどうしたの?」

「いやさ、昼間偉そうなこと言い過ぎたかなーって、ちょっと反省してさ。
それなら、人生の先輩としてもうちょい踏み込もうかなと」

「そうなんだ。でも、僕は特に気にしてないよ? というか・・・・・・あの、ありがと」

「ううん」










季節は初夏。もうすぐ夏休み・・・・・・変わる事もあるし、変わらない事もある。

そんな中、僕とフェイト、良太郎さんにあむ達で過ごした冒険の日々は、静かに幕を下ろした。

負け戦で手遅れ。それは今回も変わらない。変わらないけど・・・・・・それでも、勝ちなのも確か。





この手に、確かに勝ち取った今という時間を胸の内で噛み締めながら、僕とあむは唯世と夜の街を歩く。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おいおい、なんだよこれ」

「空海、なんか唯世の家が復活してんだけど、どうなってんだよ」

「知らねぇよ。てーか、なんだよこれ。なんなだよこれ」



普通にさっき電話したら、海里もややも、なぎひこも唯世の事知ってただろ?

で、フェイトさん達にも連絡取れたから話したら、なんかビックリされて苦笑いされるだけだろ?



「俺達、もしかしなくてもすっげー置いてかれたのか?」

「間違いなくな」



なんなんだ? マジでこれ、なんなんだ?



「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 頼むから、誰か教えてくれないかっ!? これ、マジで不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「・・・・・・相馬君、どうしたの?」



声がした。そちらを見ると・・・・・・色々とお騒がせな奴が居た。



「唯世ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「そ、相馬君っ! なんでそんなに睨むのっ!? あの、僕が何かしたかなっ!!」

「何かしたじゃねぇだろうがっ! なんなんだよ、これっ!? なんなんだよ、これはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文、なんか叫び声聞こえなかった? もうなんかすごい勢いの」

「気のせいじゃない? てゆうか、これで聞こえたらまた事件フラグだよ? ありえないって」

「それもそうだね」



まぁ、唯世も本当に無事で良かったなぁ。いやぁ、実は内心ちょっと不安たっだしさ。



「あむ」

「なに?」

「良かったね」

「・・・・・・うんっ!!」




















(第42話へ続く)




















あとがき



恭文「えー、しゅごキャラが週間モーニングに掲載誌を移して『しゅごキャラ・Remix』として表紙を飾りましたね」

あむ「いきなり何の話してんのっ!?」

恭文「それで、今回からXファイル張りのミステリー要素も含めるとか。いや、すごいねあむ。クッキングパパと同じ雑誌なんだよ?」

あむ「そんなの無いからっ! てゆうか、普通にアンタどうしたっ!!」





(青い古き鉄がこんな事を言い出すのには、理由がある。だから、胸を張る)





恭文「だって、作者がそういう夢を見たから」

あむ「夢の話をするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てゆうか、なんでモーニングっ!? なかよし関係ないじゃんっ!!」

恭文「大丈夫だよ、関係ないところから話が発展することもあるんだし」

あむ「これは流石にないからっ!! ・・・・・・というわけで、今回は超・電王完結編。
みなさん、如何だったでしょうか。本日のお相手は日奈森あむと」

恭文「きっと、この夢は現実になると信じている、蒼凪恭文です」

あむ「ならないよっ!!」





(現・魔法少女、さすがにこれは無いと思っているらしい)





恭文「じゃあ、超・しゅごキャラとか」

あむ「なんかそのネーミングは有り得そうだからやめないっ!?」

恭文「でもさ、なんだかんだで長かった超・電王編も・・・・・・ようやく終わったねぇ」

あむ「そうだね。色々あったけど・・・・・・こう、一山超えたよね」





(中々に辛かったです。というか、もうクロスオーバーとか無理。3作品は無理)





恭文「話の主軸を電王にしちゃうと、あむがお飾りになるし、かと言ってしゅごキャラ全開だと・・・・・・で、色々悩んでこれですよ」

あむ「恭文・・・・・・ってゆうか、あたしが主軸な感じには一応なってるよね」

恭文「そうだね。一種のジュブナイルというか、ボーイ・ミーツ・ガールというか、そんな感じ?」

あむ「・・・・・・恭文、アンタ意味分かってないで言ってるでしょ」

恭文「そ、そんなことないよ」

あむ「いいや、絶対そうだって。だって、さっきから目を合わせないじゃん」





(現・魔法少女、付き合いも長くなってきたので、大体読めるようになって来たらしい)





あむ「それで、ここからはしばらく日常話だよね。次回からはゆったりモードだよ」

恭文「うん。拍手でアイディア来てるし、まぁ・・・・・・2話とか3話くらいは普通のお話だね。
で、そこからミッドチルダ・X編だよ。なんだかんだで夏休み中居るみたいな形になってるけど」

あむ「まぁいいじゃん。一種のサマースクールって考えればさ」

恭文「で、ミッドチルダ・X編もいきなり爆発とか起こったりするわけじゃないから・・・・・・あぁ、やっぱりミッドチルダでも基本緩い日常話だね」

あむ「それで、アレだよね」

恭文「うん、アレなの。せーの」





(せーの)





恭文・あむ「「『なぎひこ×なのは』っ!!」」

あむ「・・・・・・普通にこれを押すんだ」

恭文「まぁ、ミッドチルダ・X編から本格登場のなぎひこをフューチャーする意味もある。
ほら、僕とかあむとか唯世に空海とややは、顔見知りだしさ」

あむ「あたしとややからすると、一方的にだけどね」

恭文「りまとの関係は、原作通りだとまぁ・・・・・・だしなぁ。
そうなると、やっぱりヴィヴィオなりなのはが面白いのよ」

あむ「それで、なのはさんやヴィヴィオちゃんの様子とか心情も描きつつ・・・・・・だよね」

恭文「そうするらしい。まぁ、フレンドリーな感じですよ。・・・・・・よし、なぎひこになのはのイジメ方を教えておこう」

あむ「教えなくていいからっ! なぎひこはアンタと違って紳士なんだよっ!?」





(現・魔法少女、意外とひどいことを言う)





恭文「あ、酷いなぁ。僕だって紳士だよ? ドS紳士なんだから。
てゆうか、なぎひこもドSだよ? 男限定で。普通に男に厳しいし」

あむ「・・・・・・アレとかソレ?」

恭文「うん、ソレとかアレ。あ、そう言えば次回のタイトル聞いてる?」

あむ「次回のタイトル?」

恭文「うん。平和な日常を想像させるタイトルで・・・・・・これ」





(『第42話 ガーディアン崩壊の危機っ!?』)





あむ「・・・・・・なにこれっ!?」

恭文「というわけで、本日はここ前。もとい、ここまで。お相手は蒼凪恭文と」

あむ「日奈森あむでし・・・・・・って、だからこれおかしいからっ! 日常話のタイトルじゃないよねっ!? あぁ、どうなんのこれー!!」










(現・魔法少女の叫びは、誰にも届かない。そして、答えは次回に。
今日のED:電王オールスターズ『超 Climax Jump』)




















唯世「・・・・・・僕の家が消えてたっ!? 相馬君なに言ってるのかなっ!!」

キセキ「僕とキセキは、普通に今まで塾に行ってたんだぞ? それはありえないだろ」

空海「いや、マジなんだってっ! あぁもう、どうなってんだよコレッ!!」

キセキ「全く、お前はどうしたのだ? 夏休みボケに入るにしても、時期が早すぎるだろ」

ダイチ「そう言われると、何も返せねーよな」

唯世「とにかく、ちょうどよかった。実は・・・・・・相馬君に相談したいことがあったんだ」

空海「なんだよ、改まって」

唯世「・・・・・・実は、ガーディアンが来年相当マズいことになるかも知れないんだ」

空海「はぁ? なんだよそれ」

唯世「もっと言うと・・・・・・崩壊、するかも」

空海・ダイチ「「はぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」










(おしまい)






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あきゅろす。
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