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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第40話 『W(ダブル)で超・クライマックスッ!! 後編』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

ラン「さぁて、いよいよ最終決戦もラストー!!」

ミキ「今回は、スバルさんとティアナさん、良太郎さんとディードさん。
そして、あむちゃんと恭文に、歌唄とりまのお話だよ」

スゥ「悲しみを止めるために、今を覆すために、正しく超・クライマックスが揃い踏みなのですぅ」





(そして、モニターが立ち上がる。そこに映るのは、Wの超・クライマックス)





ラン「憎しみに囚われ、暴走するキュウビをあむちゃんと恭文達は止める事が出来るのっ!? うぅ、ドキドキだよー!!」

スゥ「大丈夫ですよぉ。これで負けたら、某バルディオス張りのバッドエンドですし」

ミキ「・・・・・・スゥ、それは色んな意味で台無しだって。とにかく、いくよー。せーの」





(そして、当然のように例のポーズを取る)





ラン・ミキ・スゥ『ドッキドキ♪』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そこの子、伏せてっ!!」



全力疾走で見つけたのは、子どもを襲うゾンビ達。本当に、数が多い。

だから、突っ込む。突っ込んで、跳ぶ。跳んで左手を前にかざす。



「一撃、必倒っ!!」



左手首に、環状の魔法陣。色は、当然のように青。そして、手の平には魔力スフィア。

威力を絞って、あの子が怪我しないようにする。大丈夫、出来る。



「ディバイン・・・・・・!!」



右手のリボルバーナックルから、カートリッジを・・・・・・今回は、ロードしない。

とにかく、跳びながら私は拳を突き出す。



「バスタァァァァァァァァァァァァァッ!!」



蒼い奔流は、いつもより細め。でも、それでもその子の目の前のゾンビ達を飲み込み、薙ぎ払った。

私はそのまま着地して、その子の前へ行く。緑色の和服を着た女の子。髪は、私と同じくらい。



「大丈夫っ!?」

「・・・・・・は、はい。あの、異人・・・・・・さん?」



あ、そっか。髪の色とか、元に戻しちゃってるからそう見えるんだね。ちょっと警戒の視線があるし。



「うん、そうなんだ。お姉さん、レスキュー・・・・・・あ、危ない目に遭っている人を助けるお仕事なの」

「え? じゃあ、あの」





右側から襲いかかってきたゾンビの腹に、左拳で1発叩き込む。

怯んだところを、右拳。なお、側頭部に対してのフック。

その間に、後ろから襲ってくるのが二体。私は振り返りながら、そのうちの一体の顔面を打ち抜く。



打ち抜いて、もう一体には左拳で一撃。それから左足で回し蹴り。





「そうだよ。・・・・・・よく頑張ったね、偉いよ。もう、大丈夫」



蹴ってから、カートリッジを1発ロード。ナックルのタービンを高速回転させる。



「リボルバァ・・・・・・! シュゥゥゥゥゥゥゥトッ!!」



後ろの5体に、不可視の衝撃波を撃ち出す。撃ち出して、それらを撃墜。

炎に包まれて、ゾンビ達は消えた。



「安全なところまで、一直線だから」

「クロスファイアッ!!」



周りにまだ10数体居るけど、大丈夫。ティアがちゃんと狙ってくれてるから。



「シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥトッ!!」





放たれたオレンジ色の弾丸が、上から打ち下ろすようにゾンビ達を貫く。

それで、周りに居たのは潰れる。だけど、上からまた20体降り注いできた。

というか、屋根の上に居たっ!? うぅ、どうしてこんなに数が多いのっ!!



さっきフェイトさんから連絡で、増殖能力があるとは聞いたけど、それでもこれはひどいよっ!!





「スバル、アンタはその子をっ! クロスミラージュ、行くわよっ!!」

≪Yes Sir≫



ティアが走りながら、待機状態のクロスミラージュをメガタロスにセット。



「違うわよっ! セブンヴィーナスッ!!」



それを、前面に放り投げる。すると、クロスミラージュがオレンジ色の光に包まれて輝く。



「コード・ドライブッ!!」

≪ZGun Mode Ignition≫





クロスミラージュを包みながら、光が二つに分かれる。

その内の一つはまた四つに別れて、ティアの太ももと背中に当たる。

まず、太ももの光はそのまま形を変えて、ホルスターとなった。



そして、背中の光は大型の皮状のホルスター。それが、ティアの背中へ装着される。

ベルトはティアの身体の前を通り、腰の部分にも元のベルトと融合するようにベルトが通る。

そして、身体の前の部分と腰の部分にもホルスターがある。



そして、残った光がさっきよりも多く分裂して、そのホルスターに装着される。

身体の前の部分の二つのホルスターに、クロスミラージュの通常形態が二丁。

右から挿入されるのは、両手用のマシンガン。左からは、同じく両手用のショットガン。




腰にぶら下げられる形でついているホルスターに挿入されるのは、二丁の銃。

ただし・・・・・・銃身の下の方に、ナックルガードのような感じで刃がついている。

いわゆる銃剣。ティアなら、片手で扱えるサイズの物。



右はガトリングの銃口。左はショットガン。完全な近接戦闘用の武装。

そして、背中に斜めに右から挿入されたのは、この中で1番大きいロングライフル。

ちょっとだけ仕込みで銃身が折れて三連マシンガンに早変わりする優れもの。



『接近されても対応出来るってのは、素晴らしい』って、ティアが嬉しそうに話してた。



というか、セブンガンモード見るのも久しぶりだなぁ。とにかく、ティアはそこから両手用マシンガンを取り出し、突撃する。





「えっと、あの人も」

「うん。私の仲間」





ティアは、マシンガンで先制を取って連中を怯ませる。それから、マシンガンをホルダーに収納。

次に走りながら取り出すのは、銃剣。なんだかんだで、ティアはあれが好きみたい。

そして、不用意に飛び込んできた奴に左のショットガンを発射。散弾で蜂の巣にする。



それだけじゃなくて、右の銃剣の刃で殴るように斬り抜ける。斬り抜けながら、身を翻しショットガンを1発。

自分の右側から来てた3体をそれで撃ち抜く。そうしながら、右のガトリングガンを掃射。

銃口を、時計回りに回転させながら弾丸をばら撒く。ばら撒いて、近づこうとしていた連中全てを仕留める。



ううん、何体か仕留め切れてない。だから、ティアの周囲に8発の弾丸が生まれる。





「沈みなさいっ!!」



その弾丸は一斉に掃射。的確に残っていたゾンビの胸元を撃ち抜いて、爆散させた。

これで、この周囲には・・・・・・うん、居ないね。



「ティア、ナイスー」

「これくらい当然よ。催眠術もないしね」

「確かにね」



それで、足音がした。私とティアが警戒しながらそちらを見ると・・・・・・大人の男の人と女の人が居る。

身なりは、後ろに居る子と同じ感じ。というか、その子を涙目で見ながら走って来てる。



「あの子、君のお父さんとお母さん?」

「はい」

「そっか、はぐれてたんだね。・・・・・・ほら」



私が、少し戸惑い気味なその子の背中を押すと、その子は駆け出した。

駆け出して・・・・・・数メートル進んだ所で、私とティアの方へ振り返る。



「ありがとう、異人さんっ!!」



そう言って、ぺこりとお辞儀をしてその子は両親の胸に飛び込んだ。というか、二人までお辞儀してくれる。



「・・・・・・異人さん、かぁ」

「間違ってはないでしょ?」

「まぁね。それでティア」

「この辺りは一応一掃出来たわね。・・・・・・てゆうか、分裂のパターンが不規則になってる」



そうだね、さっきまでは倒したらもう即湧きーって感じだったのに。

こう、分裂しない時とする時があるの。ただ、問題もある。



「分裂する時は、本当に思いっ切り分裂する。スバル、油断しちゃだめよ」

「分かってる。それじゃあマッハキャリバー、次は?」

≪ここから10時方向に700メートルです。生命反応、多数≫

「了解。それじゃあティア」

「行くわよ、スバル」










とにかく、その子に右手を軽く振ってから、私達はまた走り出した。

・・・・・・良太郎さん、大丈夫かな。この状況だから、ちょっと心配。

ううん、大丈夫だよね。ディードも一緒なんだし、モモタロスさん達だって居る。





良太郎さん、背中を押してくれたんだもの。だったら、自分の決めた事ちゃんとやらなくちゃ。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第40話 『W(ダブル)で超・クライマックスッ!! 後編』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



【あの、キンタロス。大丈夫なの?】

「問題ないっ!!」



真正面から、あの力にぶつかったし・・・・・・というか、ちょっとふらついてる。



”てーか熊、俺に変われっ! これじゃあ良太郎の身体が持たねぇよっ!!”

”いやいや、先輩はこの手のとやったら大体苦戦しちゃうじゃないのさ。ダメだって。
でも、僕達の中で一番の力持ちの金ちゃんがこれだと・・・・・・やばいなぁ”



ディードちゃんの攻撃も、今ひとつ効果が薄い。まず、攻撃力・・・・・・だよね。

でも、キンタロスでもギリギリ。そうなると、やっぱりアレしかないよね。うん、やろう。



「どうした・・・・・威勢がいいのは最初だけかっ!?」



カクロウが、そのまま僕に拳を叩きつけてくる。身体がふらつくけど、気にせずにキンタロスはツッパリをする。



「ふんっ!!」



それに、カクロウはよろめ・・・・・・かない。ツッパリを、左手で止めた。

そして、右拳を叩きつけてくる。キンタロスは、それを左手で受け止めた。



「うぉぉぉぉぉぉっ!!」

「ぐぅぅぅぅぅぅっ!!」



そのまま互いに押し込んで・・・・・・地面が音を立てて凹む。

力は互角。・・・・・・いや、僅かにキンタロスが圧されてる。



「ふんっ!!」



その状態に業を煮やしたのか、カクロウが頭突きを仕掛けてくる。



「うぉりゃっ!!」



キンタロスは、そのまま同じように頭突き。

そして、狼の頭と斧がぶつかって、火花が散る。・・・・・・一歩も引かない。



「・・・・・・やるじゃねぇか」

「お前もな」



あ、あれ? なんだか二人とも嬉しそうなんだけど、どうして?



「お前みたいなめっちゃ強い奴が、なんでキュウビの手下なんかやっとるんや」

「簡単さ。俺もスケロウもヤシロウも、妖の中でははぐれ者でな」



そのまま、腕を、頭を押し込む。ギリギリと音を立て、火花を出しながら二人は引かない。



「キュウビ様には、拾ってもらった恩がある。
だったら、助けになりたいと思って当然だろう」



カクロウの言葉に、嘘は感じなかった。多分、本当の事なんだと思う。



「・・・・・・なるほど、それは俺も」



押し込みながら、ディードちゃんも手出ししにくい状況の中で拮抗は続く。

いつ崩れてもおかしくない拮抗は・・・・・・続く。



「ちょお分かる。俺も、良太郎が居らんかったら、消えてたしな。そやけど」



キンタロスが、一歩踏み込む。踏み込んで、押し込む。

カクロウが足を踏ん張るけど、徐々に押し込まれて足が滑る。



「認めるわけには・・・・・・あかん、なぁっ!!」

「ほう、どうして・・・・・・・だっ!!」



カクロウが更に足に力を込める。それで、滑りは止まった。



「俺らもよう知らんけどたまごが壊れたら、子どもは夢を見れなくなるんやろっ!?」



どうも、そうらしい。たまごが壊れたりなくなっても新しい夢が生まれる可能性も、あるにはある。

だけど、そのまま何も生まれないでこころが空っぽな可能性もあるって、恭文君が教えてくれた。



「そう・・・・・・なるなぁっ!!」

「そんな事・・・・・・認めるわけには、いかんっ!!」



キンタロスは叫びながら、カクロウを押し込む。カクロウは、足を滑らせながら後退する。



「うぉりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ぐ・・・・・・やるじゃ、ねぇかっ!!」



カクロウは、言いながら足を更に踏ん張った。そして、今度こそ動きが止まった。



「ふんっ!!」



頭を引いて、再び頭突きをしてきた。それを受けて、キンタロスがよろめく。

腕が離れた。だからカクロウは拳を少し引いて、胸元を狙って叩きつけてくる。



「どっせいっ!!」



その瞬間、身体が宙を舞った。舞って・・・・・・地面を転がる。い、痛いかも。というかキンタロス、大丈夫?



「なんとか、な」



ゆっくりと起き上がる。そして、カクロウが踏み込んできてる。・・・・・・だから、ディードちゃんが前に出た。

前に出て、二刀を振るいカクロウに斬りつける。でも、腕を盾にされて今ひとつ効果が薄い。



「すまん、良太郎。ちょお無茶した」

【ううん、大丈夫。・・・・・・みんな、いくよ】



こうなったら、迷っていられない。なんだかゾンビがどんどん増えていってるのも、正直怖い。

だから、やるよ。僕達のやらなきゃいけないこと、やるために。



【てんこ盛り・・・・・・ううん、超・てんこ盛り】



鬼退治の時に偶然でも出来たあれなら、きっとやれる。だって、すごいかっこいいし。



”はぁっ!? 待て待て、良太郎っ!! ・・・・・・あれは、あの、無理だろ”

”そうだよ。もっとさ、いい方法考えようよ。ほら、僕達もそっち行くとかさ”

”てゆうか、アレは嫌だー! 鳥さんも入って苦しいし”



だめ、時間がないもの。ディードちゃんが、徐々に下がりながら斬っていってるけど、あんま効果がない感じだし。



【キンタロス、お願いっ! というか、ジークもお願いー!!】



屋根の上で、羽を乱射しながらハナさんを守ってくれていたジークの方に声をかける。

ジークは、こちらを見て・・・・・・頷いてくれた。それに、少し安心する。



「あぁもう分かったっ!!」



そして、キンタロスは右手にケータロスを出して・・・・・・固まる。



「おい良太郎っ! ボタン四つしかないんやけど、どないするんやっ!?」

【あ、そっか。なら、えっと・・・・・・てんこ盛りになる時に、ジークが飛び込めば大丈夫だよ】

「はぁっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「おいおい、良太郎何言ってんだっ!? さすがにそれはねぇだろっ!!」

「というかさ、なんでそこまで超・てんこ盛りにこだわるわけっ!? 普通のてんこ盛りでいいじゃないのっ!!」

「そうだよっ! いつものアレでいいじゃんっ!!」

”だって、かっこいいから”



・・・・・・やっぱり、そういう理由なんだ。まぁ、分かってた。うん、僕は分かってたよ。



”大丈夫、きっと出来るよ。ジークも一緒に心を一つにすれば”

「いやいや、無理だろ」



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



【とにかくキンタロス、急いでっ!!】

「・・・・・・あぁもう、俺はどうなっても知らんでっ!?」



そして、キンタロスが左手でケータロスのボタンを順に押していく。



≪Momo・Ura・Kin・Ryu≫



そして、ケータロスのスイッチを押した。



【みんな、いくよっ! 超・・・・・・てんこ盛りっ!!】



すると、ケータロスはキンタロスの手元を離れて、僕達の周囲を虹色のレールを描きながら飛ぶ。



「ほら、アンタも行ってきなさいっ!!」



キンタロスのアーマーが解除される。そして、僕の周りに赤と青と金と紫の仮面が跳び回る。



「分かった。では、参るとしよう」



そして、そこにジークが飛び込む。ジークは光になって、青い羽根の仮面になった。

虹色のレールを生み出していたケータロスは、ベルトのバックルに装着。小さな角みたいな突起が生えてくる。



≪超・Climax Form≫










赤い、胸元にターンテーブルのある丸みを帯びたアーマーが装着される。

それで、そのレールの上に乗るように、どんどん仮面が装着されていく。

右肩に青・・・・・・ウラタロスの仮面。左肩に金・・・・・・キンタロスの仮面。





胸元には紫・・・・・・リュウタロスの仮面。顔には赤・・・・・・モモタロスの仮面。

それで、背中には蒼い大きな翼の形の仮面・・・・・・ジークの仮面。

それぞれに、電王に変身した時に装着される仮面がアーマーになる。





そして、顔の赤い仮面が剥けた。剥けて、オレンジの色を含んだ仮面が出てくる。これで、完了。





やっぱりこれ、カッコいいよね。前からカッコいいとは思ってたけど、ジークが加わって更にカッコよくなった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・おいおい、マジで出来ちまったぞ?」



頭、痛ぇ。てーか、これありか? いやいや、いくらなんでもおかしいだろ。



【良太郎が無茶するタイプって言うのは、知ってたけど】



右手の親指と人差し指をこすりながら、身体がちょっとくねくねする。

これ、亀だな。てーか、また勝手に動きやがって・・・・・・!!



【これは極めつけでしょ】

【てゆうか、やっぱり気持ち悪いー! 鳥さんが居るのは楽しいけど、それでも嫌ー!!】



そして、胸元がなんかピョンピョンピョンピョン・・・・・・小僧っ! だから勝手に動くんじゃねぇっ!!



【えぇい、リュウタもジッとせんかいっ!!】



で、今度は左腕がどこかへ行こうとする。それに俺・・・・・・つーか、良太郎の身体は、引っ張られる。

お前もジッとしろよっ! あぁもう、毎度毎度これはありえねぇだろっ!!



【こら、やめろっ! そこは触るなっ!!】



で、身体をクルリと動かして・・・・・・鳥野郎、今度はお前かっ!!



【もげる・・・・・・また私の羽がもげるっ!!】

「だったらいっそもげて出てけっ! あぁもう、狭いし気持ち悪いしみっともねぇし・・・・・・なんだよこれっ!!」



普通のてんこ盛りでも相当なんだぞっ!? くそ、マジでこれはねぇだろっ!!



【ね、言った通りでしょ? 心を一つにすれば大丈夫だって】



・・・・・・良太郎、お前はこの状況でもそれ言うのかよ。



「いや、これ・・・・・・一つっていうかなんて言うかよ」

「・・・・・・なんだ、それ」



あ、えっと・・・・・・ぶぶ漬けがなんか呆れてやがる。



「気持ち悪っ! それは気持ち悪すぎるだろっ!!」

「うっせぇっ! てめぇに言われたくねぇんだよっ!!」

「・・・・・・てんこ盛りのどこが」



前で斬り合ってたでんでん虫が、刃を突き出す。それを、ぶぶ漬けはガードした。

・・・・・・いや、刃が突き刺さって火花を上げた。刺さった箇所は、ぶぶ漬けの左手首。



「気持ち悪いんですかっ!!」



そのまま、突き刺した右の刃を振り下ろす。そうして、ようやくぶぶ漬けがたたらを踏んで下がった。



「ぐ・・・・・・!!」

「やはり、関節部は弱いようですね。・・・・・・そこさえ分かれば、やりようはあります」

「へ、やるじゃねぇか。てゆうかよ、女。あれは気持ち悪いぞ」



お前、まだそここだわんのかっ!? あぁ、そうだなっ! 確かに気持ち悪いぞ。これはっ!!



「そんなことはありません。とてもかっこいいと思います」

「「はぁっ!?」」



・・・・・・青坊主っ! お前のせいかこれはっ!!

普通にデンデン虫が嬉しそうにしてるぞっ! おかしいだろ、これはよっ!!



【ディードちゃん、恭文のセンスに毒されちゃって・・・・・・】

【えぇ子やったのに、残念や】

【恭文も、良太郎レベルでセンスないしねぇ】




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・おい、デンデン虫、ちょっと下がってろっ! 一気に決めてやるっ!!」



良太郎さんの身体を借りているモモタロスさんが、デンガッシャーを組み立てながら、私にそう言う。

なお、形態はソードモード。赤い刃が発生し、もう飛び込む気満々らしい。



「いいえ、一緒に行きます。・・・・・・色々と、イライラしてるんです」

「へ、そうか。だったら・・・・・・クライマックス、行くぜ」

「はい」





言いながら、私は後ろに跳ぶ。跳んで、カクロウの拳を避ける。

そうしながら、モモタロスさんの隣に来る。隣に来て、構える。

・・・・・・集中して。面の攻撃では通用しない。必要なのは、点の攻撃。



関節部が多少防御力が低いと言っても、あくまでも多少。集中しなきゃ、貫けない。




「んじゃま・・・・・・行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



そのまま、モモタロスさんは飛び出す。カクロウも同じように走り、カクロウの拳をモモタロスさんは左手で受け止める。



「ぐぬぅぅぅぅぅぅぅっ!!」



それに、カクロウが驚いたように僅かに顔をあげる。そのまま、拳を・・・・・・押し込む。



「へへ、何やってんだっ! 全然効かねぇぞっ!?」



そして、カクロウの左腕が動く前にモモタロスさんはデンガッシャーを胴に向けて振るう。

私よりパワーが上がっているのだろうか、普通にその攻撃でも通用する。



「オラオラオラオラオラッ!!」



規則性もなく、ただ思うがままに刃は振るわれ続ける。その度に、カクロウから火花が上がる。



【さっきはようやってくれたなぁ】



右薙に振るい、一撃を加える。加えてから、モモタロスさんはカクロウの手を離す。



【・・・・・・そやから、お返しやっ!!】



そして、左手でツッパリを一撃。それで、カクロウは怯む。

カクロウは怯んでたたらを踏むけど、すぐに前に踏み込んだ。



「ふんっ!!」



拳を打ち込むけど、それを身を翻してモモタロスさんは左に避ける。そこに、裏拳が飛ぶ。

しゃがむようにしながら、モモタロスさんは避ける。避けて、身体を回転させて胴にまた打ち込む。



【ほらほら、何してるのー!? 遅い遅いっ!!】

【まぁ、仕方ないか。大物ほど、動きは鈍いものだもの】



右足でカクロウの胴に向かって蹴り。カクロウは、後ろに後退りする。

そこから自分に飛びかかったカクロウの攻撃を、モモタロスさんは避ける。



【全く、無粋な】



右にスッと移動して、背中に左拳で裏拳。急に背筋がピンと立った感じになる。

それにより、カクロウは前のめりに倒れる。



【礼儀くらい、弁えたらどうだ?】

「・・・・・・へへ、やってくれるじゃねぇか。さすがは電王って・・・・・・とこか」



立ち上がるから、今度は私が飛び込む。飛び込みながら、右手の刃を突き出す。

カクロウはそれを左手で掴もうとする。だから、私は刃を消した。



「やるのは」



それから、また右の刃を出す。持ち手だけになったから、取り回しは相当楽。

そのまま、刃を突き出す。狙うは・・・・・・左の膝関節。切っ先は、確かにその部分を捉えた。



「あなただけではありませんっ!!」





カクロウの両拳が、私に襲ってくる。・・・・・・ISは、使わない。

私は、瞬間的に左に大きく跳ぶ。そして、また踏み込む。

突き出された左拳を外側に移動する形で避け、そうしながら二刀を胴に叩きつける。



そうしながら斬り抜けて、背後を取る。左の刃を逆手に持ち替えて、膝裏を狙う。

もちろん、左側。そして、刃は的確に膝を貫いた。カクロウの体勢が、少し崩れる。

崩れながらも、私に対して左拳で裏拳を仕掛けてくる。私は後ろに跳んで、スレスレで避けた。



鼻先を拳が通り過ぎる。通り過ぎて、すぐに踏み込む。二刀を握る手に、力を込める。





「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



込めて・・・・・・私は、相手の顔面に刃を叩きつけた。そして、そのまま振り抜く。



「ぐぅ・・・・・・!!」



顔に、確かに二条の傷が刻まれた。カクロウは思いっ切り腕を振り回すので、私は後ろに跳ぶ。

数度、地面を跳ねるようにしてその攻撃を避けながら、私はツインブレイズを振るった。



「モモタロスさん、今ですっ!!」



刃を伸ばし、しならせ、鞭のようにして・・・・・・カクロウを縛り上げた。縛り上げて、拘束する。

でも、持つのは多分一瞬。あの力なら、先程のように刃は砕け、壊される。



「分かってるよっ!!」



モモタロスさんは、私達の後ろから20メートルほど離れた位置に居た。

そして、広げたパスをベルトにセタッチさせる。



≪Charge and Up≫



モモタロスさんがパスをセタッチすると、ベルトから虹色の光が溢れる。



「・・・・・・必殺」



そのまま、上に飛び上がる。ジークさんの羽が、光り輝きながら大きく広げられた。



「俺達の・・・・・・超・必殺技っ!!」




モモタロスさんが右足を一旦引くと、翼が羽ばたく。

光の粒子をまき散らしながら、モモタロスさんが上空から加速した。




「クライマックスバージョンッ!!」



飛び出したモモタロスさんの右足に、光が集まる。それは、虹色の光。

まるで、向かい側から見ると光が突撃してくるような様。



「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





そして、モモタロスさんの飛び蹴りはカクロウの背中に命中した。

命中して、カクロウは吹き飛ばされる。ツインブレイズの拘束も、それにより砕ける。

吹き飛んだカクロウの身体を避けるために、私は左へ即座に移動。



カクロウは私の居た場所を通過し、滑るようにしながら地面に転がる。





「・・・・・・ふ、ふははははは」



カクロウは笑いながら、ゆっくりと立ち上がる。立ち上がって、私達を見る。

私と、地面に着地したモモタロスさんを、しっかりと。



「楽し・・・・・・かった、ぜ」



後ろのめりに倒れて、カクロウは爆発した。爆発して、炎が燃え上がる。

それを見て私達は、ようやく一息つけた。



【・・・・・・やったね。ディードちゃん、大丈夫?】

「はい、なんとか」

「まぁ、俺様達にかかれば、ざっとこんなもんだよな」

「ちょっと、みんな一息ついてる場合じゃないわよっ!!」



真上から声がする。そちらを見ると、ハナさんが私達を見下ろしていた。



「普通にゾンビ達、消えてないっ! というか、数がどんどん増えてるみたいなのっ!!」

【えぇっ!?】



・・・・・・あれ、連絡? これは・・・・・・フェイトお嬢様だ。



『ディード、聞こえる?』

「はい、聞こえます。どうかされましたか?」

『そのゾンビ達、モウリョウ団のキュウビを何とかしないと、止まらないみたいなの』



このパターンは、恭文さんから聞いた事がある。いわゆる、無限増殖する敵。

確かに、カクロウは倒したのにあれが連れてきたと思われるゾンビ達は、まだ近くに居るもの。



【やっぱり、そういう形だったんですね】

【僕と良太郎の予想、当たっちゃったね。なら、ここからはこの気色の悪い連中の掃除・・・・・・かな】



数が増えていくなら、その対処は必須。私達はここを離れられない。

みんなでキュウビの所に行けば、普通に街がゾンビで埋め尽くされるかも知れないから。



「分かりました。こちらも対処を始めます」

『うん、お願いね』










恭文さん・・・・・・やっぱり、心配。私は、これでも妹だから。

血の繋がりもないし、生まれ方も全く違うけど、それでも妹と自負している。

・・・・・・だから、心配になる。だから・・・・・・ううん、今は気にするのはやめよう。





私は、ここに居て戦う事を選んだ。恭文さんがあむさんを助けることを選んだように。だったら、まずはそれを通すこと。





全部は、そこからのはず。なにより、それを言えばフェイトお嬢様だって、同じだもの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「じゃあ、リイン、アギト、咲耶・・・・・・リース」



僕は、後ろを振り返り名前を呼んだ四人を見る。四人も、力強く頷いてくれた。



「行くよっ!!」

『はい(おう)っ!!』





そして、カードに意識を集中させる。すると、四枚のカードは一枚に融合した。



蒼・赤・金・紫が時計回りに配色されていて、その上に氷と火、雷と風のエンブレムが刻まれる。



そのカードを、そのままパスのカードスロットに挿入。





≪Fusion Ride 超・Climax Set up≫



そのまま、パスを閉じる。・・・・・・フェイトに、心配かけちゃうなぁ。

でも、ごめん。これは、やらなきゃいけないことだから。全力で通して、約束・・・・・・守るよ。



『無駄だ・・・・・・何をしようと、無駄だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

「無駄かどうかは、これを見てから言いやがれっ!!」



僕は、左手で変身ボタンを押していく。順序は、上から蒼・赤・金・紫の順。

そして、ベルトの待機音がいつもより豪勢というか、激しい音になる。



「これが、僕達の超・てんこ盛りだっ!!」



そのまま、右手に持ったパスをベルトにセタッチ。その瞬間、四色の光がベルトから溢れた。



≪超・Climax Form≫










クライマックスフォーム。それは、リインとアギト、咲耶との同時ユニゾン。

青いライダーパスの力を借りる事で可能となる、今と未来が一つになった僕達の最強形態。

そして、そこにリースが今回加わる事で、超・クライマックスフォームとなる。





・・・・・・・・・・・・やばい、状況を弁えてないのは承知で、楽しい。普通に楽しい。





とにかく、これで一気に勝負を付けるっ! さぁ・・・・・・行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



恭文がパスをベルトにセタッチすると、リインちゃんとアギトさんに咲耶とリースが、光の球になった。

そして、恭文の周囲をグルグルと回る。で・・・・・・恭文のリーゼフォームから、マントが消えた。

まず、身体の下半身・・・・・・ようするに足の部分。そこに咲耶さんと思われる金色の光が吸い込まれる。





吸い込まれて、ロングパンツが一瞬で金色に染まる。そして、アギトさんの赤い光が左手に吸い込まれた。

片口から左手が、一気に赤に染まる。もちろん、ジガンも含めて。次は、リインちゃん。

リインちゃんの青い光が、恭文の右手に吸い込まれて、同じようにジャケットの色が蒼になった。





それから、最後はリース。恭文の背中にくっついて、6枚の大きい紫色の翼としてそこに生えた。










『なんか生えたっ!?』





その瞬間、ジガンと両足の具足が虹色に変わる。そして、恭文の髪の前面に、四色のメッシュが入る。

左から蒼・赤・金・紫の順に。そして、元の色を保っていた髪も、そこから銀色に変わった。

瞳が・・・・・・うそ、虹色に変わった。とにかく、それで変身完了らしい。



恭文の周りを取り囲んでいた光が、弾ける。そして、四色のそれぞれの属性の羽が舞う。

蒼い氷の羽に赤い炎の羽、金色の雷の羽に紫色の・・・・・・風を纏った羽。

その羽の中で、恭文はニヤリと笑う。というか、これが・・・・・・あの、あの・・・・・・えぇっ!?





「・・・・・・あれ?」

≪どうしました?≫

「いや、なんか違和感が」



恭文が、両手で背中をさする。具体的には、背中の6枚の大きな広がった形の羽を。



「なんですか、このビラビラは」

≪電王の超・クライマックスフォームのアレと、全く同じですね≫

≪そうなの。というか主様、ビラビラなんて・・・・・・すっごく卑猥なの≫

「おのれは一体何を想像したっ!?」



そして、どこからかハープの音のような音が聴こえる。そして、後ろに恭文は振り返る。



【えっと、お邪魔しています。あとジガン、卑猥ってヒドいよ。私、そういうのダメなのに】



聴こえたのは、リースの声。そして、恭文は振り返る。というか、なぜいちいち振り返るんだろう。



「あぁ、やっぱり? うん、すっごい予想してたわ。でも、お約束だから言ってみた」

≪ジガンも同じくなの。リース、気にしては負けなの≫

【意味が分からないよ、それっ!!】

【わーい、久々登場の、てんこ盛りなのですー♪ やっぱりかっこいいのですー♪】



次に鳴り響くのは、ヴィンクルムフォームに変身する時に鳴る待機音。

それが鳴った瞬間、恭文の右腕が思いっ切り上がった。それに、恭文が顔をしかめる。



「痛っ! こらリイン、普通にいきなり動くなっ!!」

【そうだぞっ! お前、こんな狭っ苦しい状態で動いてんじゃねぇっ!!】



そして、次は演歌調な待機音。これは、一回だけ聴いた・・・・・・ブレイズフォーム?

音楽が鳴り響く中、左手が動いて恭文の右腕を叩いた。・・・・・・へ?



【うー、アギトちゃん痛いですっ! 一体なにするですかっ!?】

「だから僕も痛いって言うのっ! アギトも勝手に動くなっ!!」

【アタシ悪くないだろっ!? そもそもコイツが】

【全く、緊張感がありませんわ】



次は、ヒップホップな音楽。これは・・・・・・あ、咲耶さんのアクセルフォームだ。

というか、恭文がなんか急にくねくねし出した。というか、下半身だけくねくね。



【うっせー! というか、そもそもお前が一番邪魔なんだよっ!!
なんだよ、その無駄にデカい胸はっ!!】

【恭さまに毎日揉まれて、大きくなってしまったんです。
デバイスとしての性すら超えるほどの愛撫を受けて・・・・・・私、幸せです】



瞬間、右手と左手が同時に動いて、両足をバシっと叩く。



【ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!】



というか、同時にまた音楽が鳴った。それに、頭が余計に混乱してくる。



【ふざけるなですっ!!】



いやいや、何の話っ!? というか、なんなのあれっ! カラーリングが気持ち悪いんだけどっ!!



「痛ぁ・・・・・・! だから、勝手に動くなってのっ!!」



それ以前に、なんでああなるのっ! アイツ、なに一人芝居してんのよっ!!



【あぁぁぁっ! アギトさんも咲耶も暴れちゃだめー!!】



そして、今度は回転してキュウビに紫色の羽を見せる形になる。

そのまま、なんだかオロオロし出した。普通に声はリース。



【ここ、すっごく狭いんだよっ!? 暴れたら押し出されちゃうからー!!】



恭文は足を視点にくるりと回転して、今度は左腕に引っ張られてる。



【そういうお前も何気にデカくて邪魔なんだよっ! てーか、よくよく考えたらお前誰っ!?
さっきは勢いに流されて気にしなかったけど、普通にお前とは初対面だよなっ!!】



次は、右腕に引っ張られる。こう、ぴょんぴょんと跳ねてる感じで。



【あー、そう言えばそうなのですっ! あなた誰ですかっ!?
というか、咲耶と同じく大人サイズはズルイのですー!!】



そして、足を止めてくねくねし出す。もちろん、下半身だけ。



【ですから、リインさまもアギトさまもおじいさまやシグナムさまに愛情を持った上で胸を揉んでもらえれば】

「だから、お前ら何の話してるっ!?」



そして、恭文が地面をダンと踏むようにして蹴ると、その珍妙な動きが終わった。

・・・・・・というか、マジでなによアレ。もう色々気持ち悪いしダサいし。



【恭文さん、そういうわけなので戻ったらリインのおっぱいを沢山揉んで】



そして、右肩が動く。リインちゃんの声に合わせるようにして、ぴくぴくと。



「揉めるかぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てーか、状況考えてっ!? お願いだから全員しっかりしてっ!!」

【ち、分かったよ。・・・・・・てーかよ、普通にコレはやっぱ全てに置いて気持ち悪いぞっ! その上狭いしよっ!!】



え、今さらそこっ!? もっと気にするべきところがあったのにっ!!



【えっと、私も噂には聞いていたんですけど・・・・・・ヒドいです。
これ、おじいさんのイメージが元ですよね? おかしいですよ】

≪主様、ジガンは主様の全てを受け入れるよう努力はしてく覚悟なの。
でも、ごめんなの。これは受け入れられないの。普通に気持ち悪いの≫



今度は、思いっ切り動かないでそれぞれの箇所がぴくぴく動いてる。・・・・・・器用だなぁ。



【あら、かっこいいではありませんか】

【ですです。もう最高なのですよ?】

「というか、これ普通にかっこいいよね?」

≪ジガン、あなたはまだ生まれたばかりだから、その辺りが理解出来ないかも知れません。
ですから、覚えておきなさい。これが世間で言うところの『ハイセンス』と言うものです≫



いやいや、かっこよくないよっ!? 色調が気持ち悪いし、なんか見てて目が痛くなってくるからっ!!

あぁ、アイツらはマジでどういうセンスしてるのよっ! 絶対おかしいでしょうが、アレっ!!



「・・・・・・なんというか、電王のクライマックスフォームみたいに、身体の一部を乗っとられてるんだね」



事態を一緒に見ていたミキが、呆れたように呟いた。というか、キュウビまで足が止まってプルプル震えてる。



「でも、あの・・・・・・さすがにアレは、私も気持ち悪いと思う」

「恭文さん、センスないですぅ。というか、リインさんと咲耶さんとアルトアイゼンも同じくですぅ」

「・・・・・・そうだよね、あたしもちょっとアレは」



言いかけた時、ダイヤが呟いた。呟きながら、あたしの左肩に半透明で出現。

そして、目をキラキラさせながら恭文達を見る。それに、なんとなく背筋が寒くなった。



【かっこいい】

『えっ!?』

【よし、決めたわ。あむちゃん、私達もアレやるわよ】

『えぇっ!?』



い、いやダイヤっ!? アレやるって絶対無理じゃ・・・・・・というか、あたしは嫌だしっ!!



【というわけで、私達のてんこ盛り・・・・・・いくわよっ!!】

「いや、だからダイヤっ!?」

「流石にアレは嫌ですぅっ!!」

「ボクもだよっ! お願いだから落ち着い」



でも、ダイヤは止まらなかった。遠慮なく爆弾を投下する。



【あむちゃんとランとミキとスゥと私のこころ・・・・・・! 一斉にアンロックッ!!】

『待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



【な、なんですかあれっ!? リイン、あんなの見たことないですっ!!】

「キャラ・・・・・・なり?」





生まれたのは、極光。僕達がドタバタと騒いでいる間に、あむ達に変化が訪れた。

それは、キャラなり。でも、僕達が今までみたことのない物だった。

白い・・・・・・もうウェディングドレスとしか形容出来ない。肩が開いていて、結構大胆なデザイン。



両手にはそれに合わせた純白で清楚なグローブ。髪の左側に髪飾り。





【【【【「・・・・・・キャラなり」】】】】



それは四葉のクローバーの形を象っていて、ピンク・青・緑・金と一葉毎に色が変わってる。



【【【【「アミュレットフォーチュンッ!!」】】】】



・・・・・・キャンディーズとダイヤ、それにあむ。全員の声が同時に聴こえた。

ということはもしかしなくても、僕達と同じてんこ盛りっ!?



「・・・・・・あ、あれ? 気持ち悪いデザインじゃない」



あむ、なんで僕の方を見ながら安心し切ったように言うのさ。



【よかった、ボク達は普通なんだね】

【至って平均的なデザインですぅ】

【だめ、こんなんじゃダメよ。これじゃあ、恭文君達に負けてる。みんな、やり直しよ。
ランは右手でスゥは左手、ミキは胸元で私が背中になるから、それで】

【あの、ダイヤっ!? 別に私達はアレに勝たなくていいんだからっ!!】

「そうだよっ! というか、既に勝ってるしっ!!」



というか、この状況で花嫁衣装持ち出してくるおのれらは、絶対平均的じゃない。



『いつまで・・・・・・くっちゃべっているつもりじゃっ!!』



僕とあむの方に、黒い砲弾が襲ってくる。僕は、右手を握り締める。

あむは、両手をかざして虹色の障壁を張る。



「あぁ、ごめんねっ!!」





そのまま僕は、砲弾を殴る。右拳は、蒼い氷結の息吹に包まれて、その力を砲弾にも及ぼす。

砲弾は忽ち凍りついた。そのまま僕は拳を振り抜き、砲弾をキュウビにお返しする。

キュウビは尻尾の一つを振るって、カウンターで返ってきた砲弾を砕いた。その砲弾は、爆発を起こす。



そして、あむの方の攻撃は虹色の障壁で完全に防がれた。・・・・・・なんか、すげー。デザインとかすげー。





「久々でウォーミングアップしてたのよ。もう大丈夫だから、気にしないでいいよ?」

【というか、普通にムカつくのです。徹底的に叩くので、覚悟しておくですよ?】

『黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』



こちらの言葉を力ずくで叩き潰すように、再び砲弾は放たれる。

あむは先程と同じように、防いだ。・・・・・・だから、僕は前へ一歩踏み出す。



「正直さ、お前のバックボーンなんざ興味ないのよ。何考えてようが、知ったこっちゃない」

【そうだな。てーか、甘えてんじゃねぇよ。お前、何様だ?】



一歩ずつ歩きながら、怒りの声を上げたのは・・・・・・アギト。



【さっきから黙って聞いてりゃあ・・・・・・ふざけたこと、抜かしてんじゃねぇよっ!!】



尻尾の一つが、襲いかかってくる。・・・・・・左拳を、強く握り締める。すると、拳が炎に包まれた。

そのまま、僕は・・・・・・というか、アギトが拳を突き出す。尻尾の切っ先と拳が衝突した。



【そんなことしても、取り戻せるものなんてあるわけねぇだろうがっ!!】



そして、尻尾が炎に包まれ、燃え上がる。キュウビは、根元からその尻尾をパージした。



【それで取り戻せるなら、アタシはとっくにお前と同じことしてんだよっ!!
記憶も、大事な人も・・・・・・全部取り戻せるなら、取り戻したいに決まってるだろうがっ!!】



再び尻尾が襲ってくる。数は5本。いや、その内2本は僕達を迂回してりまの方に向かった。



【ですが、それは不可能です】




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「りまちゃん、来るよっ!!」



かえで、分かってるわよ。・・・・・・大丈夫、やれる。思い出して、ティアナさんから教わった事を。



「センターガードの基本は、視野を広く持ち、攻撃をすばやく撃ち落とす事」



色々な戦闘スタイルがあるから、あくまでも一例だと言ってた。

でも、体力・運動関係が弱い私には、合ってる。私、激しく動くのダメだもの。



「クスクス、行くわよ」



私の周りに、大量にピンが発生する。数・・・・・・12。

今の私の、最大数。で、あとは気合いよ。



【うん、やろー!!】



私は、左手を振り被る。そして、迫って来た尻尾二つにその手を向けた。



「ジャグリング・パーティーッ!!」





ピンは、射出された。ただし・・・・・・真上に。

上から放物線を描き、一本の尻尾につき6つずつ急降下する。

こうすると、どうなるか。簡単よ、尻尾をピン達が叩き伏せる。



なお、倒せなくていい。ただ、軌道をずらせればいいの。





「ダブルリリンッ!!」

「雷輝」





地面を滑りながらも私を狙う尻尾目掛けて、上から落ちてくる影が二つ。

一つは、両手に赤いトライデントを持った女の子。

そしてもう一つは、両手で順手に持った二つの小太刀。



その子達はそれぞれの得物を持って、尻尾に自分達の力を、突き立てる。





「トライデントッ!!」

「双閃っ!!」










私のピンに押さえつけられる形だった尻尾は、簡単に二人の攻撃に捉えられた。





二つの槍の切っ先は、尻尾を中ほどから砕く。そして、小太刀二振りも、尻尾を両断した。





恭太郎、復活したみたい。・・・・・・復活したけど、すぐに崩れ落ちた。あぁ、もう無理っぽいか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕の両足に、雷撃が迸る。金色をした、咲耶の雷撃。僕は少し飛びながら、右足で回し蹴り。

まず、一本を蹴り飛ばす。そのまま回転して左足で回し蹴り。それで、もう一本を仕留める。

僕が直後に着地した所を狙って突き出されたのは、当然のように尻尾。





両足の雷撃が、更に激しく迸る。僕はそのまま宙返りするように蹴りを叩き込んだ。

尻尾は宙に浮き上がり、僕の左隣にズシンと音を立てて落ちた。

全ての尻尾は、痺れたように動きを止めた。キュウビは、これもまた同じように根っこから切り離す。





その途端に、尻尾が黒い粒子と化して消えていく。










【過去は、取り戻せないし変えられません。『こんなはずじゃなかった』時間は、拭えません】



そして、両足が軽くステップを踏み、ターン。



【でも、だからこそ今は変えられるんです】



そして、再び砲撃が放たれる。僕は、右足に雷撃をまとわせた上で、斬り裂くように回し蹴り。

砲撃は、その一撃で潰した。・・・・・・相変わらず、すごいパワー。



【・・・・・・私は、あなたみたいな目に遭った事はない】



そして、残りの尻尾が一斉に僕とあむに襲ってくる。



【私にはきっと何かを言う権利なんて、ない。でも】



それに対応するために、僕はクルリと180度回転した。



【だからって、『みんな殺す』なんて哀しいこと・・・・・・絶対に許さないっ!!】



リースの声と共に、紫色の翼が羽ばたく。羽ばたいて巻き起こすのは、同じ色の風。

風は尻尾達に纏わりつき、尻尾を微塵に斬り裂く。斬り裂かれた尻尾は、同じように粒子に帰る。



「・・・・・・だから、叩き潰すわ」



僕は鞘からアルトを抜き放つ。そして、右薙に振るって風を起こす。

そのまま、キュウビだったそれを見据える。



「だから、僕はお前を叩き潰す。・・・・・・僕は、お前みたいな奴が一番嫌いなんだよ」



泣き言ばかり並べ立てやがって。結局は、ただの言い訳だろうが。

そうだ、言い訳だ。お前が誰かを傷つけるための、言い訳だ。聞く道理なんて、ない。



【恭文・・・・・・みんな】



そうして、壊す。お前のその凝り固まった世界を。たまごの×ごと、壊してやる。

大丈夫だよ、ミキ。『なりたい自分』は、忘れてないから。うん、大丈夫。



「あたしはさ、そういうのとは少し違うんだ」



言いながら、あむが来る。そして、真っ直ぐに怒りで身体を震わせる黒い狐を、見据える。



「てーか、あたし言ったよね? アンタも、この街の人達も、もう泣かないようにするって。だから、止める。
あたしは、自分で言ったことを通す。アンタに対してさっき言った事、嘘なんかにしないって、伝えるから」

『黙れ・・・・・・! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』

「黙らないよ。・・・・・・黙るわけ、ないじゃんっ!!」










キュウビが踏み込んでくる。僕とあむは逃げずに、そのまま前に踏み込んだ。

・・・・・・マジで、お前のバックボーンになんて、僕は興味ないのよ。

そんな事、お前がやったことに対しての言い訳には、なりえないんだから。





そうだ、なりえない。なりえるはずなんて、ないんだ。だから、止める。





もう誰も、こんな事で泣かなくていいように、絶対に止めるから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



襲い来るのは、黒い刃を持った獣。アルトを打ち込み、真正面からぶつかる。





一方のあむはと言うと・・・・・・何もしていない。










【あむちゃん、何かしないとっ!!】

「そ、そんなこと言ったってこの格好じゃ・・・・・・あぁもう、歩きにくいしー!!」










やっぱり、ウェディングドレスで戦闘なんて、無茶らしい。





そんな事を思っている間に、りま達に向かっていた尻尾が消えた。消えて・・・・・・粒子化した。



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



恭文・・・・・・言うまでもないわよ。一旦、大きく跳んで下がった。





それをキュウビが追いかけてくる。そして、両足に炎が宿る。赤くて、熱い炎。










「アギト」

【あぁ、いけっ!!】





その声に従うまま、恭文は飛び出した。左足の炎が、爆発する。

それが恭文の身体を射出して、キュウビに一気に迫る。

迫りながら、恭文はキュウビの胴に右足で蹴りを叩き込んだ。



いや、刃で防がれた。でも、構わずにアギトさん(私よりも年上らしいので、さん付け)が声を上げた。





【爆蹴撃っ!!】





右足から、炎が噴き出す。まるで、何かの砲撃のように。

それがキュウビを飲み込み、その身体を吹き飛ばす。

キュウビは両足を踏ん張りながらもそれに耐えた。



身体から黒い煙が出るけど、気にせずにまた踏み込む。

・・・・・・それで、あむは・・・・・・右往左往してるわね。

というか、ウェディングドレスで戦闘は無理よ。



キュウビが右の刃を打ち込む。そして、その切っ先が突き出される。





【「・・・・・・風花」】



恭文はそれを見切って、時計回りに身体を回転させながらキュウビの右サイドに回り込んだ。

刃が紫色に染まり、刀身を風が包み込む。それは薄く、鋭く研ぎ澄まされた。



【「一閃っ!!」】



デカい羽を背負っているとは思えないような動きで、そのままアルトアイゼンで斬撃を加える。

キュウビはそれを背中に食らう。食らって、そこから火花が散る。恭文はそのまま、アルトアイゼンを振り抜いた。



「ぐ・・・・・・!!」





キュウビは吹き飛ばされながらも、身を翻して右手の刃を砲弾に変える。

それを、そのまま砲撃として撃ち出した。恭文は、その砲撃を避けない。

というか、右手をかざして蒼い氷の盾を出す。ちょうど、プロテクションみたいな形状。



それが砲撃を受け止め、キュウビの攻撃を防いだ。そして、二人の間に爆煙が渦巻く。

二人は、数秒そこから睨み合って動かない。爆煙がある程度晴れて・・・・・・また踏み込んだ。

・・・・・・私は、またピンを出す。バカみたいだけど、コレくらいしかない。





【りまー、タイトロープダンサーでグルグル巻きはー?】

「クスクス、それいいわね。・・・・・・タイミング、狙うわよ」

【了解っ!!】










正直、怖い。あんなの食らったら、死ぬと思う。でも、逃げない。

あれを止める力は無くても、絶対逃げない。・・・・・・あそこには、ある。

私が自分で選んで、居たいと思った場所が。





あの人が私の居場所を、居たいと思う場所を、時間を壊すって言うなら、そんなの認められない。





だから、戦う。怖くても、逃げたくても・・・・・・全力で、戦う。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『小賢しい・・・・・・小賢し過ぎるぞ、貴様らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』



黒い二刀の刃を持ち、キュウビが吼える。そして、キュウビの真正面から僕は刃を打ち込む。

それをキュウビは、受け止める。受け止めて・・・・・・耐えてる?



【悪党のお決まり発言じゃねぇかっ! てーか、普通に往生際が悪いんだよっ!!】

【女の子は、引き際が大事なのですよっ!?】



そのまま、僕は刃を立て続けに打ち込んでいく。



【普通にしつこい女は、男の子に嫌われるのですっ!!】



それを、キュウビは捌いていく。というかリイン、それをおのれが言うの?



「てーか、どこのゲームのラスボスっ!? 再生しまくればいいってもんじゃないでしょうがっ!!」





くそ、なんか知らないけど普通にパワーアップしてるしっ! これ、速めに勝負つけないとやばいんじゃっ!!

足を止めて、腕の動きだけで僕達の斬撃に対処していた。

・・・・・・マジで、パワーアップだし。そして、あむは困ってるし。



そう思った瞬間、キュウビが刃を引いた。そして、僕達に叩きつけてくる。

僕は、それをアルトで受け止める。でも、それがまずかった。

刃と刃がぶつかり合った瞬間、刃は、黒い砲弾と化した。





『死んでしまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』










黒い奔流が、ほぼ零距離で生まれる。ジャケットを、肌を、髪を焼き、吹き飛ばし、力は蹂躙し尽くそうとする。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「・・・・・・恭文っ!!」

【マズイ・・・・・・マズイわっ! あむちゃんっ!!】

「うんっ!!」

『させるかぁぁぁぁぁぁぁっ!!』



両手をかざしたキュウビの頭の上から、黒い弾丸が生まれて、あたしに放たれた。

あたしは、また両手をかざしてシールドを展開。



【あむちゃん、防御以外出来ないんですかぁっ!?】

「なんか、無理っぽいのー! こう、コマンドとか浮かばないしっ!!」





一発は防ぐ。でも、立て続けに来る。ううん、あたしに対してだけじゃなくて、りまや歌唄にも。

かえでさんと恭太郎は、緑と金色の三角形のシールドを展開して、二人と唯之介君を守ってくれてる。

そっちは、安心。でも、恭文に対して砲撃みたいなの、続いてるし・・・・・・これ、どうなるのっ!?



いや、どうなるのじゃない。どうにかしないといけないんだ。でも、あたしは・・・・・・やっぱ、これしかない。





「もう、やめようよっ! ううん、お願いだからやめてっ!!」

『黙れっ! もうよいっ!! もう・・・・・・よいのだっ!!』

「よくないっ!!」

「・・・・・・その通りだよ」



聞こえた声は、キュウビの背中から。そして、キュウビの背中を虹色の散弾が襲った。



『がぁ・・・・・・!!』



氷が、炎が、雷が、風がキュウビの身体を蝕み、貫く。



【【【【「フォルスクレイモアッ!!」】】】】





それをキュウビはマトモに食らう。そのまま、吹き飛ばされる。

でも、まだ終わらない。紫色の翼が羽ばたいて、先程使った風の攻撃を仕掛ける。

キュウビは受身を取って避けようとするけど、普通に範囲が広いらしい。



避けきれずに、身体を切り刻まれる。というか・・・・・・恭文、無事だった。





【恭文さんっ!!】

【あなた達、無事だったのっ!? というか、どうしてっ!!】

「当然、避けたに決まってるでしょ」





でも、魔法とか使った感じじゃ・・・・・・もしかして、前に聞き出した自分の時間感覚を引き伸ばすってやつかな。

脳内のリミッターを解除して、あたし達にとっての1秒を自分にとっては4秒とか10秒にするって言うの。

身体に負担が相当かかるらしいんだけど、それを使うと通常の何倍ものスピードで動ける、魔法とは違う特殊技能。



なのはさん達のお兄さんやお姉さんが使う剣術の奥義だって言ってた。それで名前は・・・・・・神速。





『・・・・・・貴様』



キュウビが、起き上がりながらこちらを見る。忌々しげに・・・・・・というか、あの目は哀しい。

自分の周りのもの、全部拒絶してる目じゃん。あんなの、悲し過ぎるよ。



【恭文さん】

「分かってる。・・・・・・もういっちょ」

「恭文、待って」



あたしは、飛び出そうとした恭文を止める。もう一度・・・・・・もう一度だけ。



「もう一度、言うよ? もう・・・・・・やめようよ」



正直、無駄なのかも知れない。あたしは、戦うことから逃げてるのかも知れない。

でも、嫌だ。まだ・・・・・・まだアンタに言いたい事、沢山あるから。



「こんなの、絶対によくないよ」



あたしは、やっぱりただの女の子で、戦うのとか、よく分からない。だから、声を上げる。

声を上げて、伝えなくちゃいけないんだ。女の子のあたしだから出来る戦い方、しなくちゃいけない。



「こんなことしても、マジで意味ないじゃん。アンタ・・・・・・そうやって、自分で自分の事を傷つけて、泣くだけじゃん」



そうだ、キュウビはずっと泣いてる。黒い狐の姿になってからは、特に。

泣いて、泣いて、泣き叫んで・・・・・・声を上げてる。ここに自分は居るって、ずっと。



『童は、泣いてなどいないっ!!』



あたしの所に、弾丸が降り注ぐ。あたしは、両手を前にかざす。

虹色のバリアを張って、それを全力で防ぐ。



「そうやって・・・・・・!!」



弾丸は、変わらずに着弾し続ける。それを必死に、足を踏ん張りながら防ぐ。

防ぎながら、声を上げる。上げ続ける。目の前のアイツに、伝わるように。



「いつまで自分で自分に、嘘ついてるつもりっ!?」

【・・・・・・あむちゃん、もういいのよ。もう、あなたは充分やったわ】



ダイヤの声が聞こえる。でも、あたしはそれに首を横に振る。何度も、何度も。



「よくない・・・・・・あたし、納得出来ないっ! もうこんな悲しいのなんて、嫌なのにっ!!」

【だから、私達で終わらせてあげましょう? 悲しい時間も、憎しみも、全て。・・・・・・恭文君、お願い】



ダイヤの言葉に、恭文は頷いた。それから、アルトアイゼンを鞘に収める。

右手にパスを出して、パスを開く。そして、左手で一枚のカードを挿入した。



≪Final Attack Ride Set up≫



それからパスを一旦しまって、前へと踏み込む。

もちろん、狙うは黒い獣。キュウビは、即座にそれに反応した。



【みなさん、フルドライブです。おじいさまの魔力を使う事を、忘れないでくださいね?】

【分かってるよ】



恭文の魔法は、あのスターライトのたまごのおかげか、×たま・×キャラの浄化を可能とする。

だから、ユニゾンしていても恭文の魔力を魔法に使用すれば・・・・・・浄化、出来る。



【・・・・・・さぁ、行くぜっ! フルドライブっ!!】

≪チャージアンドアップ・・・・・・なのっ!!≫

【恭文さん、いくですよっ!!】





キュウビは、それを見て両手の平に砲弾を生成。そのまま、黒い奔流を撃ち込んだ。

そして、恭文の姿が消えた。消えて、砲撃は恭文が居た場所を素通りするだけだった。

恭文は・・・・・・キュウビの右横に姿を表した。アルトアイゼンは、まだ鞘に納められていた。



キュウビはそのまま動かない。というか、小さく細い尻尾が姿を表した。



それは、恭文の顔に向かって真っ直ぐに突き出される。





【【【【「烈華・・・・・・!」】】】】



そして、恭文はアルトアイゼンを抜き放った。刃は下から上へと斬り上げるように刃は振るわれる。



【【【【「一閃っ!!」】】】】





姿を表したのは、虹色の太く、大きい閃光。それがキュウビの右腕を、尻尾を斬り裂き、黒い装甲を吹き飛ばす。

キュウビの身体が、それによろめく。そして、左手を動かす。それに対して、刃は再び振るわれた。

閃光は、袈裟に打ち込まれて生成され始めていた黒い刃ごと、キュウビを斬る。



でも、まだ終わらない。・・・・・・恭文は刃を返し、右切上に最後の斬撃を打ち込んだ。





「瞬(またたき)」



身体を回転させながら、キュウビを持ち上げるようにする。キュウビの黒い仮面が、歪む。



「極(きわみ)っ!!」



恭文の声に合わせて、キュウビの腹で虹色の光が爆ぜる。『ドン』と音を立てた。

その音に合わせて、キュウビが斜め上四十五度に吹き飛ぶ。



「タイトロープ」



声は、意外と近くから。隣を見ると、いつの間にかりまが居た。



「ダンサー・スペシャルッ!!」



いつもよりずっと多い縄で、キュウビをぐるぐる巻きにする。

キュウビは、衝撃のためか避けることも、迎撃することもせずにされるがまま。



「あむ、恭文っ! 今よっ!!」

【最後の最後、徹底的に決めちゃえー】





あたしと恭文は、互いに顔を見合わせて・・・・・・頷き合った。

そのまま、あたしは右手でキュウビを指差す。

キュウビは、縛られながらも黒い装甲の破片を撒き散らしながら、落ちてくる。



・・・・・・みんな、行くよ。もう、終わらせる。絶対の絶対に・・・・・・終わらせる。





【【【【「ネガティブハートに、ロックオンッ!!」】】】】




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



【【【【「ネガティブハートに、ロックオンッ!!」】】】】



・・・・・・振り切ったアルトを鞘に納めて、僕は左手でパスを持つ。

そして、そのままパスはセタッチ。もう、カードは入れてるもの。



≪Full Charge≫



僕は、パスをそのまま離す。そして、しゃがむ。



「いくよ、必殺」



僕の周囲に四色の風が巻き起こり、羽が舞い散る。



「僕達の・・・・・・超っ! 必殺技っ!!」





・・・・・・僕は、リースの翼を羽ばたかせながら真上に飛ぶ。そうして、狙いを定める。

黒い狐の仮面の左半分が砕け、呆然とした顔のキュウビが、下に見えた。

あむは、両手をハートマークにして、そんなキュウビに狙いを定める。



もう、本当にこんなことで泣く必要が出ないようにと、願いながら。





「クライマックスバージョンッ!!」





僕は、右足を引き、突撃体制を整える。そして、リースの翼が虹色に輝く。



輝きながら、翼は3倍ほどの大きさになり展開。翼は、青い空で羽ばたく。





「オープンハートッ!!」





あむの両手から、こちらも虹色・・・・・・いつもとは違うハート型のエネルギーが飛び出す。それが、キュウビに直撃。



キュウビが目を見開く。でもあむはそのまま足を踏ん張り・・・・・・力を、放ち続ける。





「フル・ボリュームッ!!」





僕達も飛び出す。翼は同じ色の羽を撒き散らしながら、更に羽ばたく。

その勢いに乗るように、僕は右足を突き出し飛び出した。

翼の羽ばたきのお陰で、アルカイックブレードのビートスラップの時よりも、速度が速い。



そのまま、僕はキュウビに向かう。諦めと絶望を壊し、今を覆すために。





「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」










右足の先が、虹色の光に包まれる。次の瞬間、キュウビの腹に僕達の蹴りは決まった。

生まれたのは、虹色の光の世界。それがキュウビを、僕達を包みようやく・・・・・・そう、ようやくだ。

それに吹き飛ばされ、黒い鎧から開放されたキュウビの胸元からたまごが出てきた。





そのたまごは静かに、自らに付いた×と・・・・・・別れを告げた。




















(第41話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで・・・・・・急遽やると決めた劇場版公開記念スペシャルの第二弾、如何だったでしょうか。
すみません、次回エピローグ話で一話です。というか、分量的にそうなりました」

あむ「まぁ、その分じっくり丁寧に・・・・・・だよね」

恭文「うん。さて、本日のあとがきのお相手は蒼凪恭文と」

あむ「普通に原作の最終決戦にさきがけ、アミュレットフォーチュンが出て、ビックリな日奈森あむです」





(なお、現・魔法少女のてんこ盛りは原作では最後の戦いにしか出ていないフォームなのだ)





恭文「というか、花嫁衣装・・・・・・普通に、場違いだよね」

あむ「まぁね。自分でもそう思ってた。というか、あれ恥ずかしいんだよ?」

恭文「それ以前に、寒いと思うんだ。肩出してるし、意外と薄着な感じだし。それになにより」

あむ「何より?」

恭文「結婚前に花嫁衣裳を、衣装合わせでも無いのに着ると結婚出来ないというジンクスがあってね」

あむ「それは言わないでー! ダイヤから聞いて、マジでビビってるんだからっ!!」





(現・魔法少女、頭を抱えている。というか、困っている)





あむ「とりあえずさ、超・電王編ももうおしまいじゃない? これからの方向性って、どんな感じなんだろ」

恭文「えっとね、作者から聞いてきた。なんか、ここ数話ずーっとバトルモードだったでしょ?
だから、もうドキたま・だっしゅに行くまでは、ノンビリモードなんだって」





(現・魔法少女、普通に資料を受け取る)





あむ「・・・・・・あ、そんなバトルバトルしないんだね」

恭文「やっても、×たまを僕とあむで浄化ーって程度?
ほら、なんだかんだでミッドチルダ・X編にも入るしさ」

あむ「えっと、テレビでやったお話とかやって、オリジナル要素も絡めて・・・・・・だね」

恭文「というかさ、新訳StSもバトルバトルだから、息抜きにゆったり話書かないと辛いみたい。
あれだよ? 僕達は主人公みたいに暴れられるからいいけど、さすがに疲れるって」

あむ「確かにそうだね。あー、でも楽しみだなぁ。やっぱり、日常話って楽しいし」

恭文「うん、僕も好き。やっぱりここは、ゆったりモードでしょ」





(ドキたまだっしゅまでは、大体そんな感じです)





恭文「あ、それと誤字報告とかありがとうございます。作者、普通にバカなので助かっています」

あむ「ちゃんと見返したりしてるんだけど、気づかないんだよね。・・・・・・なんか、疲れてるんじゃ」

恭文「そうかも。・・・・・・それでは、本日はここまで。次回更新までには劇場に見に行きたい蒼凪恭文と」

あむ「劇場でのフェイトさん達の活躍が楽しみな、日奈森あむでした。それじゃあ、またっ!!」










(二年目に期待を寄せつつも、二人はカメラに向かって手を振る。
本日のED:『俺、参上』)




















恭文「・・・・・・終わった、ね」(バタン)

あむ「恭文っ!? ・・・・・・って、何よこれっ!!」

ラン「嘘、恭文の髪・・・・・・真っ白になってる」

ミキ「髪の毛真っ白だし、息荒いし・・・・・・物凄くお疲れモードじゃないっ!!」

スゥ「恭文さん、しっかりしてくださいっ! スゥ達の声、聞こえますかぁっ!?」

ダイヤ「しっかりしてっ! 恭文君、お願いだから返事をしてっ!!」

あむ「リインちゃん、アギトさんに咲耶にリースも・・・・・・これ、どういうことっ!!」

リイン「・・・・・・てんこ盛りはすごい力が出るですけど、恭文さんへの負担が大きいんです」

アギト「アタシ達は全然大丈夫なんだけど、アタシ達の分の負担までかかってる感じなんだよ」

あむ「じゃあ、こうなるって分かってて使ったのっ!?」

恭文「それしか、速攻で終わらせる手・・・・・・無かったでしょ。リイン達のせいじゃないから」

スゥ「恭文さんっ! 大丈夫ですかぁっ!?」

恭文「大丈夫。3日もすれば、元通りだから安心して?
あむ、僕は大丈夫。それより・・・・・・やること、あるでしょ」

あむ「え?」

恭文「ちゃんと、やることやって。アイツに、言いたい事あるんでしょ?
だったら、それを通して。そのためにここまでやったんだからさ」

あむ「・・・・・・分かった。でも、約束。もうこんな無茶・・・・・・絶対、駄目だから。
あたし、アンタがこんな状態になるなんて、絶対嫌だよ。嫌・・・・・・だから」

恭文「分かった、約束する。・・・・・・だから、泣くな」










(おしまい)






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