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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第12話 『2010年に成人式を迎えた方、おめでとうございます。とりあえず、お酒で失敗しないように頑張ってくださいね?』



恭文「前回のあらすじ。普通にゲームして、ボス戦に突入しました」

フェイト「ヤスフミ、流石にそれはいい加減過ぎないかなっ!? というか、ダメだってっ!!」

恭文「やっぱり? ・・・・・・とにかく、ドラゴン戦ですよ。てーか、サイクロプスじゃないってどういうこと?」

フェイト「でもヤスフミ、こういうのってよくあるの?」

恭文「滅多にはないよ。ただ、ウィハンはたまにおかしいイベントやる時が有ってさ。
てゆうか、普通にこれは無理だって。初心者がこれは、クリア出来ないって」

フェイト「私、その初心者なんだけど・・・・・・だ、大丈夫なのかな」

恭文「まぁ、なんとかなるでしょ。んじゃ、さっそくいってみよー」

フェイト「ど、どうぞ」










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・僕達が踏み出した一歩は、仮想空間の地面をしっかりと踏みしめる。





そのまま、全速力で駆け出す。見据えるのは、赤きイレギュラーな龍。





先方を務めるのは、僕と師匠とヒロさん、そしてサリさん。










「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










師匠のPCが、高く飛ぶ。高く飛んで、上からドラゴンの頭をぶん殴る。

叩き出されるダメージカウンター。それが出るのと同時に、ドラゴンがうめき声を上げた。

師匠は着地。サリさんが、更にそこに飛び込む。両手で持つ槍の穂先には、白い魔力。





サリさんは、そのまま頭を下げたドラゴンの頭へと突き出した。

当然のように、命中。こちらもそこそこのダメージをt叩き出す。

でも、やっぱ防御力が高い。ここまで遭遇したモンスターよりもダメージ低いもの。





HPゲージ・・・・・・うわ、ほとんど減ってないし。これ、相当長丁場かな。

とにかく、サリさんと師匠の攻撃直後の隙を狙って、ドラゴンが動く。

自身の首を振り回して、二人に攻撃をしてきた。





どこぞの巨大生物張りの、数メートルの巨大な身体。

そこから生まれて当然の質量は、動かすだけで凶器となる。

その凶器に師匠は、ハンマーを前方に構えてガード体勢を取る。





サリさんも同じようにして攻撃に備える。次の瞬間、衝撃が弾けた。

師匠とサリさんの二人は、それにより後ろに吹き飛ばされた。

ガードしてもなお、龍の攻撃を完全には、防ぎ切れなかった。





ダメージ・・・・・・うわ、二人とも結構減ってる。

ガードしてて7分の1減少ってキツイでしょうが。

とにもかくにも、僕とヒロさんも攻撃に回る。





今のタゲは師匠。師匠がぶん殴っている間に、僕達は真横に回った。





ヒロさんの二刀に雷撃が灯る。そしてそのまま、踏み込んだ。










「ブラスト」





踏み込んで、わき腹に向かって二刀を振るう。



白い残光を残しながらも、刃は計四回、ドラゴンに打ち込まれた。





「スラッシュッ!!」





龍は声を上げて、ヒロさんの方を・・・・・・向かない。

さっきの師匠とサリさんの攻撃の方が、ダメージがあった。

だから、ヒロさんにタゲが向かないのである。



だけど、龍の頭が動いた。口に火が溜まり、砲弾が形成される。

砲弾は、すぐに撃ち出された。RPGではいわゆるお馴染みな攻撃である。

それが下がっていた師匠とサリさん目がけて、音を立てて飛ぶ。



二人は、即剤に対応。師匠は右に、そしてサリさんは左に跳んだ。

砲弾は地面に着弾し、爆発する。そして、着弾地点を赤い炎が舐める。

なんというか、普通にエフェクトがすごい。やっぱ、パワーアップしてるなぁ。



で、そんな事をしている間に、僕の左拳に魔力スフィア。そう、あの攻撃である。





「アイシクル」





ドラゴンのわき腹に向かって、全開バリバリで攻撃を叩きつける。



叩きつけて、続けてトリガーを引く。





「ステークっ!!」





氷の杭は、ドラゴンを貫く。さすがにこの巨体ではノックバック効果は薄いらしい。

本当に少しだけ巨体がのけぞっただけで、すぐに攻撃行動に移った。

僕の方へ向き直り、ドラゴンの右腕が持ち上げるようにして動く。



それから、真上から叩きつけるように動いた腕・・・・・・否、爪だ。

そう、ドラゴンの鈍く光る銀色の爪は、僕へと振り下ろされた。

右へ跳んでそれをなんとか避ける。そのまま動くと、普通にコイツは僕へと来る。



ダメージを見ると、さっきの師匠の攻撃よりダメージ値が多い。



そのせいだろう。まぁ、スキル使ったしなぁ。ただ、これは予想より下だ。





「・・・・・・氷攻撃、ダメ低いな」

「まぁ、しゃあないでしょ」










サリさんや師匠に言われるまでもなく分かってる。ダメが、予想適性値より低い。

普通に考えれば、コイツには氷結属性の攻撃が、通用しにくいということだ。

炎には、作品の差異はあれど、大体水属性とかに弱いし。水は炎を消せるから。





だけど、氷属性はその逆。炎に溶かされるから。このゲームでは、そういう構図。

でも、スキル併用ならそこを補える。この場合、僕はダメージ源になれる。

てーか、氷結系スキルばかりだから、選んで使わないとそれにもなれないな。






とは言え、あんまり無茶は出来ない。死んでもメガーヌさんが居るから蘇生は出来る。

けど・・・・・・それだって危険が伴う。蘇生魔法なんて、普通にヘイトを上げてしまう。

そうしたら、今度はメガーヌさんが危ない。回復役が潰れたら、それまでだ。





で、そんな状況で普通にジンは銃を撃つ。というか、地味ーに撃ってる。

パンパンと、銃声のSEが響く。そして、ドラゴンの鱗を叩き続ける。

こちらもダメージ源になるので、継続して攻撃をし始めた僕とヒロさんから距離を取って、ポチポチと。





なお、全力全開のペースではない。普通にそれをやると、今度はジンが狙われるのだ。

ジンは今、後方に下がってなのはやらメガーヌさんと同じ、後衛の位置で攻撃してる。

それで狙われると、ジンにドラゴンが近づく。もっと言うと、なのはやフェイト達に近づく。





それは色々とまずいのだ。だって・・・・・・。










「グルァァァァァァァァァァァァァッ!!」










ドラゴンが叫びを上げる。それにより、僕とヒロさんの動きが止まる。というか、スタン攻撃。

そこを狙うように、ドラゴンが素早く回転させる。身体を回転させ、いわゆるひとつの尻尾アタック。

それの直撃を受けて、僕とヒロさんは壁際に吹き飛ばされた。





当然のようにHPは減る。師匠・・・・・・あぁ、よかった。効果範囲の外だ。

・・・・・・こういう風に、なるのよ。こんなことやられたら、回復と補助だって滞る。

前衛は、如何に攻撃を引きつけつつ、死なないようにするかが、技量の見せどころなの。





師匠は、また前へ踏み出す。尻尾アタックの直後を狙って、ハンマーで殴り始めた。

僕はというと、立ち上がった所に回復魔法をかけられる。身体を、白い光のエフェクトが包む。

これ・・・・・・リインとフェイトだ。てーかフェイト、回復魔法覚えてたんだ。こりゃ、ありがたい。






ヒロさんの方には、メガーヌさんとサリさんがかけてる。こっちも問題ない。

でも・・・・・・攻撃力が高い。アレですか、炎属性だからですか?

RPGで炎属性の敵とかキャラは、攻撃行動が得意とかって、多いけどさ。





これ、僕達なら大丈夫だけど、フェイト辺りのレベルで近づいたら、一瞬でお陀仏なんじゃ。

で、当然のようにサリさんも加えた上で、僕達はもうドラゴンと間合いを詰めてる。

それだけじゃない。ドラゴンの頭目がけて、金色の雷の矢と、青色の水の弾丸が飛ぶ。





雷は、フェイトの魔法。水の弾丸は、なのはの魔法。なのは、普通に魔法使いなのよ。

それでフェイトは、普通に雷系統のスキルを取得しているようだ。リアルと同じだし。

とにかく、それがドラゴンの頭に着弾する。ダメージは、ちゃんと通ってる。





それからすぐに、ドラゴンの身体を縛るように金色の輪のエフェクトが生まれた。

これは敵モンスターに麻痺の異常を与える魔法。

ようするに、何か行動するとランダムでそれがキャンセルされる。





例えば攻撃。例えば回復。例えばさっきみたいな炎を吐いたりする特殊な技。

まぁ、ランダムなので普通にならない場合もあるけど。で、これをかけたのは・・・・・・フェイト。

雷属性のスキルは、こういう麻痺やスタン系統の補助攻撃があったりする。





ようするに、感電イメージ? だけど、輪が縛りきる直前で霧散した。

・・・・・・こういう弱体化魔法は、必ずかかるわけじゃない。

かかる場合と、今のようにかからない場合がある。そして、効果時間の問題もある。





そう、フェイトの魔法は通じなかった。まぁ、レベル差もあるようだし、ここはしかたない。

僕達はそれを見つつ、バシバシと攻撃する。四人で、巨大なドラゴンを袋叩き。

刀が、槍が、ハンマーが、二刀の剣が、ドラゴンの皮膚を叩く。





その間に、ドラゴンに色々な魔法がかかる。ドラゴンの頭に、色々な色のエフェクトが生まれる。

麻痺効果を持つフェイトの魔法は、5度目にしてようやくかかった。

そして、黒い闇がドラゴンの頭辺りを覆う。これは・・・・・・リインか。





今リインが使ったのは、暗闇状態(攻撃の命中立が下がる状態異常)にする魔法。

こっちは、運よく一発でかかる。これは普通に、リインとフェイトとのレベル差だろうね。

そうこうしている間に、ドラゴンの頭が僕の方を向く。口元に、炎が集まる。





すぐに僕の方に、炎の砲弾が・・・・・・いや、吐息ブレスが地面を舐めるように吐かれる。

それをジャンプして回避。炎は、地面を舐めながらそのまま僕の下を通り過ぎる。

だけど、ここで終わらなかった。そこを狙って、ドラゴンの巨体がまたもや素早く動く。





尻尾がビュンと音を立てて飛んできた。これは避けられない。なので、ガードする。

だけど、衝撃は来なかった。・・・・・・画面に出てくるのは、『Miss』という文字。

つまりドラゴンんが僕への攻撃を、ミスしたというログ。これ、普通に助かったかも。





なお、その直後にもう一回炎を吐かれて、焼かれたりしたけど。・・・・・・つーか、熱いわボケっ!!

そして、ジンは非常に地味に銃を撃ちまくる。バシバシ撃ちまくる。一応は命中している。

そうこうしている間に、ドラゴンのHPは6割を切った。・・・・・・うし、軌道に乗ってきてる。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なのは、言われた通りに弱体魔法や弱めの攻撃をしてるけど、いい感じなの?」



私は、今ひとつオンラインゲームでの戦い方というのが、分からない。

だから、なのはにこんなことを聞く。なお、リアルで。



「うん、大丈夫だよ。オンラインゲームでのボス戦の基本は、こんな感じ。
敵の弱体と、コンスタントなダメージを与えていくことだから。あと、ヘイト管理だね」

「あんまり、一人だけで力押し出来ないということかな」



画面の中では、ヤスフミ達がドラゴンの範囲攻撃に苦戦している。

とりあえず、私も初級レベルだけど回復魔法は使えるから、みんなにかけていく。



「一人だけで力押ししちゃうと、ヘイトが高くなり過ぎて集中攻撃を食らっちゃうから。
まぁ、前衛はまだ大丈夫なんだ。ただ、後衛がそれはだめ。回復と補助に支障が出るもの」

「なるほど・・・・・・」










・・・・・・でも、楽しい。なんだか、こういうの本当に久しぶりだから。

仕事をして、エリオやキャロのお世話をして・・・・・・というのが、ここ数年の生活スタイル。

だけど、ちょっと反省した。ヤスフミのこと、男の子として意識するようになってからだね。





それだけが、私じゃないから。私は、19歳の女の子でもある。

別に、エリオとキャロの事や、仕事が嫌いになったとかじゃない。

でも、もうちょっとだけこういう時間も、持ってみようかな。





今までは、『仕事や二人の世話があるから無理』って、言ってた。でも、それはだめ。

理由になるかも知れないけど、それは多分、諦める理由になるから。

それだけで自分を満たして、それだけの人間になっちゃう。・・・・・・そこまで考えて、気づいた。





それって、すごく怖いことなんじゃないかと。それだけということは、新しいものは、きっと生まれない。

例えば、ヤスフミとの恋愛だって、きっと同じ。そっか、私・・・・・・やっぱりなんだ。

私も、諦めていたんだ。ヤスフミだけじゃなかった。私も、自分の中の可能性を、諦めていた。





諦めて、『それだけの人間』になろうとしてたんだ。私、そんな自分になりたくなんてないのに。

・・・・・・また、エリオやキャロ、ヤスフミと話そう。その・・・・・・色々迷惑をかけちゃうかも、知れないから。

何も諦めない、新しい事にも言い訳せずに、こうやってチャレンジしていく私を、始めてみたいって、話そう。





本当に、ヤスフミだけじゃない。私も、もっと変わって、自分の描くなりたい形になっていくんだ。










「フェイトちゃん、なにボーッとしてるのっ!? ほら、回復お願いっ!!」

「ご、ごめんっ! ・・・・・・えいっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ターゲットは、僕達前衛四人で回してるし、後ろの回復もしっかりしてる。





何気にジンの銃がいい感じでダメージ源になってるから、このペースなら数分で片がつく。





あとは、なのはの魔法だね。レベル低いのに中々いいダメージを叩き出す。さすがは、魔王。










「魔王じゃないよっ!!」



襲い来る尻尾アタックを防御していると、横馬がいきなり叫んだ。



「なのはちゃん、どうしたのっ!?」

「今、恭文君がまた私のことを、魔王っていじめたんですっ!!」

「いやいや、そんな事言ってないよねっ!?」



ほら、ログとか残ってないよっ!? 普通にそれは、ないでしょうがっ!!



「嘘っ! 私の恭文君センサーには反応があったよっ!?」



はぁっ!?



「口にも出してないし、チャットで言ってもないけど、考えたよねっ!!」

「なにっ!? その怖いセンサーはっ!!」

「・・・・・・なのはちゃん、恭文くんにいじめられて、そういうの好きになっちゃったのかな」

「違いますよっ! メガーヌさん、どうしてそうなるんですかっ!?」










とにかく、横馬の妙なセンサーは気にしない事にする。あれだ、そういう例えなんだ。

で、なぜかなのはとフェイトのPCが、普通に小刻みに震え出したのも、気にしない。

その間、魔法とか一切サッパリだけど、気にしない。一応、軌道には乗ってるから。





僕は、ドラゴンに何度目かのステークを打ち込む。そして、MPが空になる。

アイテム欄を開いて、MPを自然回復させるジュースをがぶ飲みしてから、また攻撃を開始。

ドラゴンの爪や尻尾や炎の攻撃を回避しつつ、僕達は攻撃をひたすらに繰り返す。





その間に、MPがジュースの効果で満タン近くまで回復する。・・・・・・そんな時、異変が起きた。










「・・・・・・・・・・・・すんませんっ!!」





ジン、どった? てーか、いきなりマジでどうした?

ジンが、さっきまで構えていた銃を下ろしている。

というか、PC越しからでも凄く申し訳ない感じが受け取れる。



そして、なぜだろう。僕は・・・・・・凄まじく嫌な予感がした。





「ジン君、どうしたの? ・・・・・・・・・・・・あ、まさか」





ジンはかなりバシバシ撃っていた。もちろん、僕達からタゲを取らない程度に。

ただ、それでも数はかなり。そんな状況で考えられることは・・・・・・ただ一つ。

だから、なのはも聞いた。そして、きっとリアルではもう気づいている。そう、アレだ。



この時点で、ジンは普通に戦力外通告を受ける事になったのだ。





「弾切れましたっ!!」

『やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』










あぁ、そうだよねっ! うん、分かってたっ!! すっごい分かってたよっ!?





でもね、かなり安心してたんですけどっ! ねぇ、僕の安心を返してっ!?





普通にここに来るまでも相当撃ってたから、大丈夫かなって思ってたのにっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



≪・・・・・・マスター、さすがにそれはありえないだろ≫

「お兄ちゃん、ちょっとダメだよ。恭文お兄ちゃんレベルだと、メイルも思うな」



あぁ、そうだよなっ! リアルで後ろからお前らに言われるまでもなく、分かってるよっ!!

失敗したー! 普通に失敗したー!! ちくしょお、すげー勢いで俺の全財産が消えたー!!



「ね、バルゴラ。お兄ちゃんって、ここからはニート?」

≪メイル、正解だ。射撃スキルに特化しているからな。逆を言えば≫

「あ、なるほど。逆を言えば、射撃バカ。射撃が使えなくなると、ただの人なんだね」

「事実だけど、言わないでくれー! あぁ、みんなのPCからの視線が、すごい痛いんですけどっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「てめぇ、ざけんなよっ! ガンナーが弾ねぇって」





師匠が、自分に突き出された爪を後ろに飛んで回避。

それから、ダッシュで距離を詰めて、ドラゴンの頭を横からぶん殴る。

数発殴って、また突き出された爪をガード。そこからまた殴りつつ、言葉を続ける。



てーか、師匠・・・・・・器用ですね。僕はそれ出来ない。





「ありえねぇだろうがっ!! お前、何してやがんだっ!?」

「このバカっ! 来る前にあんだけバカスカ撃ってるからそうなんだよっ!!
これはゲームじゃないんだよっ!? 現実なんだよっ! アンタ、やる気ないだろっ!!」



なお、ヒロさんも師匠と全く同じ状態で攻撃しているので、あしからず。

あと、その廃人発言はやめてっ!? どんだけゲーム大好きですかっ!!



「ジン坊、アンタ明日の訓練覚えておきなよっ!? 地獄見せてやるからっ!!」

「アタシもだっ! 実戦でこんなことしないように、徹底的にシゴいてやるっ!!」

「あぁ、すみませんすみませんっ! マジすみませんっ!!」



ジン・・・・・・ごめん、フォロー出来ないわ。というか、さすがにこれは・・・・・・。

あぁ、どうしよう。普通にまずい。貴重なダメージソースが、減っちゃったもの。



「あ、それなら大丈夫よ?」





回復魔法をかけながら、メガーヌさんがなんか言ってきた。

てーか、僕達余裕あるなぁ。色々ビックリだよ。

だって、普通に攻撃避けつつ雑談よ? 普通の野良PTとかなら、やらないって。



あぁ、でもこのゆるーい感じが、身内PTぽくって、好きかも。





『え?』

「初期の弾丸だったら、私作れるもの。材料も持ってきてるし」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』










な、なぜに調理スキルだけじゃなくてそっちのスキルまで上げてるっ!? アンタ、何気にヒロさんと同じで廃人かいっ!!

てーか、作れても意味ないでしょっ!? メインヒーラーが一瞬でも抜けたら、誰かが間違いなくお亡くなりコースだってっ!!

というか、僕がお亡くなりになるー! なんか段々と僕に攻撃してくる回数が多くなってるしっ!!





・・・・・・爪が突き出される。牙が迫る、炎の砲弾が、僕の真横の地面を舐める。

というか、僕がタゲ固定みたいになってる。攻撃頻度、気を使ってるのにそれでも。

もうヒロさんやサリさん、師匠がどんだけ斬ろうが突こうが殴ろうがこっちを向かない。





僕は、攻撃ではなく回避の方に比重が多くなってる。てーか、手元が忙しい。

ヒロさん達が攻撃しやすいように、あんまりドラゴンが大きく移動するような回避行動は取れない。

なので、その辺りも考慮した上で攻撃を避けるのだ。じゃないと、ヒロさん達が空振る。





通常攻撃はともかく、スキルがそれで空振りになるのは痛い。

というか、なんだろう。みんなの中で色んなものが固まっていくのを感じる。

そして、僕に対して、非常に重い期待を寄せているような感じがする。





だから、みんなこんな事を言うのである。










「・・・・・・よし、後衛組のMPもちと限界だし」



サリさんが、槍で余裕な三連撃などかまして、言葉を続けた。



「やっさん、お前死ぬ気で10分だけでいいから、ノーダメで攻撃避け続けろ」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「冗談だ。だが、出来る限り当たるなよ?
ここからは休憩回していくから、負担はかけないようにしなきゃなんない」





現在、後衛四人(ジン除く)のMPは、結構かつかつ。

なので、ここからは順次一人ずつ休憩していくのだ。

残りの三人が、その間の回復や補助を回していく。



というか、次に回復する人間がメインでだね。

で、休憩してたのが復活したら、次の人間に回す。

そして、またまたその間・・・・・・という形である。



一応、事前に僕がさっきがぶ飲みしたようなジュースも買ってある。

だけど、それだけじゃあギリギリかも知れない。だからこそ、これ。

今は、バカもかませるくらいに余裕もあるし、安定もしている。



だけど、ドラゴン自体の攻撃力が高いから、油断すれば一気に引っくり返される。

安定と不安定は、紙一重。チャンスはピンチに、一気に早変わり。

普通に殴り続けていても、そのギリギリのラインを全員揃って渡っているのだ。



・・・・・・さすがにメガーヌさんとレベル上げした時に覚えた『アレ』じゃあ、勝負は決められないよなぁ。

こちらの攻撃力とダメージ値と向こうの防御力を考えて、計算する。

だけど、やっぱりだめ。普通に1割とか2割とか、向こうの体力がそこまでいかないと無理っぽいし。



なにより、アレは今のレベルだと一発が限度。MP、全部空になっちゃうもの。

・・・・・・うん、ダメだ。もうちょっと使い時は、しっかり考えないと。

とにかく・・・・・・これからの基本方針は決まった。ドラゴンのHPは、5割を切った。





「つーわけで、キッチリいくぞ」

「了解です」











・・・・・・ゲームにおいての戦闘は、ある意味ではルーチンワークに近い。

いや、均衡を保つためのワークを、ひたすらに繰り返すというべきだろうか。

ゲームの中では、0と1の記号で作られた世界で全てが決まる。





それは、ある意味では現実よりハッキリしていて、そして残酷だ。

特殊なスキルなど覚えていない限りは、HPが0になればそのまま倒れる。

そして、自分から立ち上がることもない。立ち上がりたくても、HPは0だから。





事前に、そういう効果を持つ薬品や呪文を使っていれば、話は別だけど。

もしも立ち上がるなら、呪文をかける必要がある。そう、かける必要があるのだ。

だけど、それはさっき説明した通り、とても大きな隙になるし、危険もある。





なので、戦闘中に倒されるなど、基本はNGだ。有ってはならない。

では、そうならないために必要な事は、一体何か?

敵からの攻撃のダメージ量をしっかりと認識し、HPをコントロールすること。





簡単に言えば、自分達に対して攻撃した時、この敵はこれくらいのダメージを出すかという事。

もっと細かく言うと、それぞれの攻撃のダメージ幅を、しっかりと把握する事。

まぁ、この辺りはレベル上げとかしてて、よく戦う敵とかなら問題ない。だけど、問題は初見。





何の事前情報もなく、見て一発で特殊攻撃も込みというのは、かなりムチャぶり。

所見でどの辺りのラインで回復しないと、危ないのかというのを見抜くのは、難しいのよ。

敵の攻撃は、決して一撃だけじゃない場合もあるのだ。





一度受けた攻撃は、そういうコンボが成立しなかったせいかもしれない。





今みたいに、炎を吐かれた後に尻尾が降りかかって来て、見事に吹き飛ばされる事もまぁまぁあるのだ。










「ヤスフミっ!!」

「大丈夫っ!!」



HPは、本当にギリギリ。残り・・・・・・5。

フィールドの壁際まで吹き飛ばされた僕は、なんとか立ち上がる。



「恭文くん、少し攻撃抑えてっ! ちょっとタゲ取り過ぎっ!!」

「攻撃、ここだと避けるの難しいですっ! 受けるのはヴィータちゃんやサリエルさんに任せちゃってくださいっ!!」



なんて言いながら、メガーヌさんとリインが回復魔法をかけてくれる。

HPは、あっという間に安全領域に到達する。



「了解っ! てーか、ごめんっ!!」

”あ、大丈夫よ? 現地妻4号として、あなたのためなら私、頑張っちゃうもの。
エッチなチャットとかも大丈夫だし、実際に練習相手になるのも”

”テルで戦闘中に妙なこと言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! てーか、落ち着かんかいっ!!”





確かに、ちょっと攻撃ペース上げすぎてた。だから、さっきから攻撃受けまくってたし。

あー、普通に苦手属性だから、遠慮しなくていいと思ったのが失敗だった。

しかし・・・・・・硬い。普通にHPが5割低下してから、防御力上げるスキル使われたから。



でも、この調子なら問題なくいける。確かに、ギリギリなラインではある。



だけど、そのラインさえ割られなければいける。





「さぁ、どんどん行くですよー!! ・・・・・・って、あれ?」





ドラゴンが、一鳴きする。というか、首を上げて、天を仰ぐようにしながらも咆哮をあげる。

上げて、その声が響きながら、ドラゴンの表皮と呼ぶにはあまりにも硬い外殻が、色を変えた。

それは、緑色。そう、先ほどの燃えるような赤色から、色を変えた。その色はさっきも言ったけど緑。



口元から吐き出される吐息も、緑色に変わって・・・・・・HPはそのままだけど、これなにっ!?

その疑問は、すぐに分かった。ドラゴンが羽を瞬かせると、悪意を持った風が前衛組を襲う。

それにより、四人が吹き飛ばされ、地面を転がる。僕も、もう一度壁際に叩き付けられた。



急いでログを見る。・・・・・・これ、風属性の範囲攻撃っ!? え、さっきまで炎属性だったのにっ!!





「まさか・・・・・・戦闘途中で、自分の属性そのものを変えたのっ!?」



なのはが、驚きの声をあげる。・・・・・・チャットだけど。

多分、他の面々も同じ。リアルで、非常に驚いている。



「なのは、それってありえないの?」



だけど、フェイトは今ひとつ分からないらしい。ゲーム、初心者だもんね。



「ありえないどころの騒ぎじゃないよっ! 基本的に、ルール違反もいいところなんだからっ!!」



てーか、今のを見る限り攻撃自体のパターンも、きっと大きく変わってる。

事前情報ありなら、対処出来る。でも、今回はない。・・・・・・やばいかも。



「ただ、攻撃力自体は高くないみたいだから、まだいい・・・・・・のかな」



そうだね、身体が赤かった時より、ダメージは低い。だけど、油断は禁物。

普通に、高火力攻撃を持っている可能性もあるのだ。うん、そこはかなりね。



「・・・・・・もう一発来るっ!?」





そして、なのはの言うように、範囲攻撃はもう一発来る。

ドラゴンに近づき、2〜3発殴っていたみんなは、揃ってまた壁際に吹き飛ばされた。

ちくしょお、ありえない。てーか、全員揃ってダメージを食らうのがありえない。



ダメージ量は低めでも、これを連続で、それも前衛組が一度に受けてたら・・・・・・!!





「ちくしょお、なにが初心者でも出来るイベントだっ! ここの運営、脳みそにウジでも沸いたのかっ!!」

「ヴィータちゃん、今更だよ。メガーヌ、MP管理どう?」

「・・・・・・このままはまずいよ」





あー、そうですよね。分かってました。理由は、さっき僕が言った通りだと思う。

・・・・・・さっきまでは、単体攻撃が中心だったからまだ大丈夫。

でも、これは違う。範囲攻撃で、前衛組全員が食らうような攻撃。これはマズイ。



回復が追いつくかどうかというのもあるし、MPが切れるというのもある。





「でも、こんなの連続で来たら・・・・・・あ、待って」





多分、メガーヌさんは今の僕と同じ事を考えてる。HP・・・・・・3割を切った。

相手は風属性。そして、『僕は』氷属性の攻撃が出来る。

なら・・・・・・この一発で、いけるかも知れない。



いや、最悪いけなくてもいい。それは、高望みだ。



一気に相手を叩き落とす前段階まで、追い詰められれば・・・・・・勝てる。





「恭文くんっ!!」

「分かってますっ!!」





右手を引き、刀の峰に左手を添える。そして、切っ先を緑の風龍の腹に向ける。

構えを取った瞬間に、僕の周りを石の鎧が包みこみ、消えた。

これは、ある一定量の程度のダメージを受け止め、無効化してくれる魔法。



この魔法を使ったのは、メガーヌさん。そして、器用にもPCでウィンクしてきた。

うん、メガーヌさんは『アレ』の事を知ってるからすぐにフォローしてくれた。

それからすぐに僕の身体を、青い光が包み込む。・・・・・・詠唱が、始まった。



・・・・・・もう詠唱に突入してるから、それを止められるとまずい。

魔法・スキル詠唱は、ダメージを受けると止まってしまう。

そのために、メガーヌさんは魔法をかけて、フォローしてくれた。



ダメージを受けて、詠唱が止まらないようにと。・・・・・・再び、嵐が吹き荒れる。



だけど、それは魔法の効果で無効化される。詠唱は、継続。





「行ってっ!!」





メガーヌさんの声がした瞬間に、僕は踏み出す。というより、一気に零距離に間合いを詰めた。

詠唱は、完了した。だから、そのまま刃の切っ先を龍の腹に突き入れる。

刃は中ほどまで龍の腹を突き破る。だけど、ここでは終わらない。



・・・・・・メガーヌさんとレベル上げしてた時に色々聞いて覚えた魔法を、発動する。





「アブソリュートッ!!」





僕のPCの身体を包んでいた光が、刀に集束して龍の身体の中に送り込まれる。



そして、刃の切っ先を中心点として、氷の爆発が起きた。





「ゼロッ!!」





龍の腹を、身体を突き破るように、氷の杭が何本も突き出される。

もちろん、ゲーム上のエフェクトなので、実際にはそんなエグイことにはなってない。

でも、それでもゲーム上では簡潔に、そして残酷にその結果を叩き出す。



これは一つの攻撃じゃない。杭一つ毎にダメージ計算が成されるコンボ攻撃。

そして、このゲームでの風属性の弱点は・・・・・・氷。

氷は風を閉じ込め・・・・・・なんちゃらかんちゃらという理由らしい。



だから、龍のHPが一気に削られ、1割弱・・・・・・ううん、それ以下になった。

その直後、風が再び空間に吹き荒れる。それに僕は吹き飛ばされた。石の鎧は、砕けていた。

でも、もう遅い。他のみんなが動いている。このHPなら、全力で攻撃すれば一気に削れる。



まず、ヴィータ師匠とサリさんが動く。





「ぶちぬけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「これで終わりだっ!!」





師匠のハンマーに、赤い光が灯る。そのまま回転して・・・・・・その勢いのまま一撃を加える。

サリさんも槍を突き出す。槍を包むのは白い光。

二人同時に攻撃を加えて、それでとどめ・・・・・・にはならなかった。



二人はまた風を受けて吹き飛ばされる。殴りかかろうとしていたヒロさんも同じく。

僕? あはははは、さっきのでMP使い切った.

だからもう通常攻撃しか出来ないよ。てゆうか、吹き飛ばされた。





「このぉぉぉぉぉぉぉぉっ! とどめはこの話の主役足る私が取るんだよっ!!」



・・・・・・はぁっ!?



「なに言ってやがるっ! 俺が主役だろうがっ!!」

「いいや、アタシですっ!!」

「悪いけど俺ですっ! てーか、俺が主役やらないでヤスフミ任せって、おかしいでしょうがっ!!」



コイツらなんか余裕ぶっこいて好き勝手なこと言いまくってるっ!?

と、とにかく主役の座を取られないように、僕も緑の龍に向かって走り出す。



「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! とまとの主役は僕だよ!?」

『だが断る』

「それこそ、だが断るっ!!」



攻撃は・・・・・・きっと、あと一撃で決まる。そう、あと一撃で決まるのだ。

とまとの・・・・・・真の主役が。



「・・・・・・あ、弾丸が切れたっ!!」



まず、ジンが脱落した。普通に、ジンはとまとの主役にはなれなかった。



「あはははははは、ジン坊残念だったねっ!!」

「悪いなフレイホークッ! ポっと出のお前に主役の座はやれないんだよっ!!」



ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! ヒロさんも師匠も、二人して好き勝手な事言うなっ!!

てーか、主役は僕だよっ!? それは僕の台詞なんだからっ!!



「あぁ、真・神様ごめんっ! 俺、ここまでだったっ!!」



そして、誰に謝ってるっ!? てーか、真・神様って誰っ!!



「「せいぜいそこでアタシが主役になる様を見てなっ!!」」



そして、おのれらは自由だなっ! 普通に僕とかジンとか無視で突っ込むんかいっ!!



「「ぶちぬけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」





瞬間、ドラゴンの首がヒロさんの方に回って、風の弾丸を吐き出した。

そのブレスはヒロさんを直撃。で、次は師匠。もうポンポンという感じで、攻撃される。

だけど、二人にダメージはない。普通に、HPバーには変化が無い。



それに安堵したのか、ヒロさんが動き出そうとした瞬間、異変が起こった。





「・・・・・・って、スタンっ!?」



そう、二人の動きが止まった。なお、師匠も同じく。二人揃って、スタンで動きを止められたのだ。



「え、なんで動けないのさっ!!」

「まさか、こういう特殊攻撃かっ! おいおい、マジかよっ!!」

「わはははははははっ! ヒロ、ヴィータちゃん、人気投票でベスト20にも入れなかったおのれら如きが主役っ!? 片腹痛いわっ!!」



などと器用に叫びつつ、第一回人気投票8位のサリさんが突っ込む。てゆうか、普通に僕より速い?

や、ヤバい・・・・・・とまとの主役がサリさんになってしまうっ!!



「もらったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



スカッ!!



「・・・・・・・・・・・・え?」



瞬間、嵐が龍を中心に生まれる。そして、僕達はまた吹き飛ばされた。



「ミスったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「あはははははははは、サリのばーかっ!!
大事なところでポカする奴になんて、主役になれるわけないじゃんっ!!」

「うるせー! スタン食らってチャンス逃すよりマシだろうがっ!!
こうなったら、もう一回だっ!!」



そして、僕達はまた走り出す。あと一撃・・・・・・そして、主役を決めるんだ。

だけどその瞬間、白い風が走り抜けた。



「フリーズアローッ!!」



リインが氷の矢を飛ばす。



「サンダーランスッ!!」



フェイトがそれより太い金色の槍を飛ばす。



「アイスバレットッ!!」



なのはが氷の弾丸を乱射する。



「・・・・・・・・・・・・えいっ!!」





いつの間にか接近していたメガーヌさんが、ポカリと龍の頭を遠慮なく袈裟にドツく。

でも、それだけじゃない。そこから返して切り上げ、唐竹、横凪に左右、そして突きが飛ぶ。

というかこれ・・・・・・ワンドの物理攻撃スキルのヘブンストライクじゃないのさっ! 高ダメージが出せるってWikiに書いてたのっ!!



そして、その攻撃でHPが0になった直後。オーバーキルと言うべきレベルで、氷の矢と弾丸と雷の槍が着弾。



僕達を苦しめたドラゴンは・・・・・・見事に沈んだ。





「ね、みんな?」




ゆっくりと・・・・・・メガーヌさんのPCが僕達を見る。



てゆうか、あの・・・・・・えっ!? なんかすっごい怖いんですけどっ!!





「くだらないことで喧嘩しないのっ! そんな子達に主役は出来ないよっ!? ・・・・・・メッ!!」

『・・・・・・・・・・・・ごめんなさい』





そして、とまとの真の主役は・・・・・・メガーヌさんに決まった。



え、えっと・・・・・・あの、どうしてっ!? 僕が主役なのにー!!





「というわけで、主役権限で私は恭文くんの第三夫人になるから。いいよね?」

「そ、それはだめですっ! ヤスフミは私とリインでいっぱいいっぱいなんですからっ!!」

「おのれらも『メッ!!』じゃないかよっ! てーか、第三夫人とか無理だからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」




















魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常 Second Season


第12話 『2010年に成人式を迎えた方、おめでとうございます。とりあえず、お酒で失敗しないように頑張ってくださいね?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、ドラゴンを倒して・・・・・・倒した証拠としてその牙を手に入れる。まぁ、イベントアイテムだね。





それを入手してからダンジョンを出た。というか・・・・・・ちかれたぁ。





すっごい頑張ったもん。うん、すっごい頑張った。で、みんなに街に戻って来て、現在報告中。





これでクエストクリアである。・・・・・・なんか、すごい長かったような気がする。










「でもヤスフミ、あのドラゴン強かったね」

「うん。もう途中で属性変更して攻撃パターンも変わるってどういう設計してるの?」



間違いなく、初心者向けのイベントじゃないし。あの攻撃は、中々キツかったし。



「でも、楽しかった」



嬉しそうに、僕の隣を歩くフェイトのPCが微笑む。それが・・・・・・なんか嬉しい。



「こういう風にみんなで協力して遊ぶのって、結構久々だったから、凄く楽しかった」

「なら、よかった。まぁ、僕も楽しかったかな。
・・・・・・とどめがメガーヌさんなのが、ビックリだったけど」



てゆうか、普通に前出ていいんかい。僕は本当にビックリしたし。



「だってー、みんな妙な小競り合いして、全然決めるつもりなかったんだもん。
私、ビックリしちゃったよ。いきなり主役がどうこうなんて話するし」

「だって、人気投票の順位上げたいし」

「ヒロリスさん何言ってるんですかっ!?
・・・・・・というか、ヴィータちゃんもだよ。ちょっと悪乗りし過ぎ」

「悪い。こうなんつうか・・・・・・ついやっちまった」



アレが『つい』で済ませられるレベルかどうかは正直よく分からない。うん、分からないのよ。

まぁ、楽しかったからよかったけどね。苦労した分、きっと思い出に残るのさ。



「というか恭文さん、あんな魔法何時覚えたですか?
リイン、今ネット開いて調べたですけど、結構高等スキルですよね」

「あ、メガーヌさんに色々話を聞いて、優先取得したのよ。
なんかレベル上げとかボス戦闘とかで、効果が高いらしいから」



なお、さすがに行き過ぎた設定だったらしくて、2ヵ月後のバージョンアップで下方修正された。

まぁ、それでも結構いいスキルではあるから、習得して損したとかはなかったのが救いである。



「というか、エフェクトがかっこいいのよー。もう幸せ幸せ」

「恭文君、やっぱりそういう方向なんだね。・・・・・・それで、報酬はもらったけど」





報酬は、お金と限定アバターアイテムである。

アバターとは、ようするにPCの外見が弄くれるというのだね。

特に装備してすごく強くなるって言うのは、ネットゲームではない。



だけど、それでもこれは嬉しい。苦労した分、価値があるのよ





「アバターアイテム、色々選べるのよね」



開始記念のイベントだからなのか、結構力が入っている。

メガーヌさんのPCが、『うーん』と悩みながらそう言うのも、当然なのだ。



「マントにネックレスに鎧に・・・・・・うーん、仮死状態になっている間にゲームも進化してるなぁ。すごいよ」



発言が、若干ヘビーだけど、気にしてはいけない。なお、僕は気にしないことにした。



「8年前だとこういうのは考えられないっすか」

「そうだね、データそのものから弄くるならともかく」





メガーヌさん、その発言は色々とやばいです。えぇ、かなりやばいです。

そう言えば・・・・・・一時期あった特殊なセーブデータが入ったCD-ROM付きの雑誌も無いよなぁ。

アレですよ、CDをプレステに読み込ませるでしょ? で、データをメモリーカードに入れる。



それを使った上でゲームをやると、限定アイテムが取れるようになってる雑誌があったのよ。

最初から最強データとか、全ムービーが鑑賞可能とかもあってさ。それで最強プレイですよ。

今は、あんなの出すと色々と怒られちゃうんだろうなぁ。・・・・・・いい時代だったなぁ。



あ、ちなみに僕とリイン、フェイトはもうとっくに決めて、アバターアイテムを装備している。





「そう言えば、バカ弟子はもうアイテム決めたのか?」

「うん、決めたよ。ヤスフミもそうだし、私もリインも」

「そうなのか? でも、変化ないよな」

「えっと・・・・・・それは、左手を見てもらえれば、分かるかも」



フェイトがそう言うと、僕達の左手を全員で凝視する。

で、僕たちは三人で一気に両手装備を外す。そして、PCが素手になった。



『・・・・・・なるほど』





みんなが、納得したように、頷いた。・・・・・・僕達がもらったのは、銀色の指輪。

それを、薬指に装備しているのだ。装備箇所も選べるから、これ。

なお、僕のアイディア。それに、リインまで乗って来てたけど。



でも、いいのかも。一応・・・・・・三人体勢だし。



なお、そこまで考えて、僕はリアルで転げ回った。なんか、受け入れてる自分がちょっと嫌だったから。





「でも、こういうのいいわよねぇ。普通に思い出に残るし。・・・・・・あ、そうだ」



転げ回っているのからなんとか復活して、画面に向き合うと、メガーヌさんがこんなことを言っていた。



「実はさ、今日ルーテシアへのプレゼント、受け取って来たの」

「プレゼント? メガーヌ、なんだよそれ」

「えっとね、実はあの一件がある前に作ってもらってた物があるんだ。
まぁ、8年も受け取りに行かなかったから、処分されてるかなーと思ってたんだけど」



ただ、そこの店主の人がとても貴徳な人で、自分のことも覚えていたし、その物もずっと保管してくれてたそうだ。

それがとても嬉しくて、メガーヌさんは何度もお礼を言ったらしい。逆に、その店主の人に気遣わせてしまったとか。



「ただ、これって渡しても大丈夫かなーと、ちょっと心配になって。
まぁ・・・・・・一応、みんなに相談? そんな赤ちゃんグッズとかではないんだけど」

「メガーヌさん、そのプレゼントって、なんなのですか? まず、それによると思うのです」

「あ、そうだね」



リインにそう言われて、メガーヌさんは両手をポンと打つ。

・・・・・・普通にゲーム内のPCでこれだから、不思議だ。



「まずそこからか。あのね、絵本なんだ」

『絵本?』

「うん。ただし、ルーテシアが主人公になってるの」





いわゆる、オーダーメイドの絵本だ。話自体は、結構シンプル。

誕生日に両親に頼まれて、子どもがお使いに行く。その中で、色々な人達に出会う。

そのお使いで色々な事を考えて、家に帰って両親から誕生日をお祝いされる。



そんな経験を通して、自分が生まれてきて、両親に愛されている事を実感するというもの。

まぁ、本当にザックリ説明したけど、だいたいこんな感じのお話なの。

それで主人公の子どもの名前と絵が、ルーテシアになってるのよ。ここが、オーダーメイド足る所以。



メガーヌさんは、自分がシングルマザーであることが、ルーテシアに色々な負担をかけるかも知れないと思った。



だから、まだ赤ん坊のルーテシアのために、作ったらしい。自分は、あなたの事が大好きだと、ずっと伝えるために。





「でも、あの子・・・・・・もう10歳でしょ? 思い出して、受け取ってきたのはいいものの、色々考えちゃって」

「いいんじゃないですか? 渡しちゃっても」



そう言ったのは、僕。そして、そんな僕をメガーヌさんがジッと見る。



「・・・・・・ホントに、そう思う?」

「はい。まぁ、事情説明は必要でしょうけど、それでも。きっと、大事にしますよ」



そして、僕の言葉を後押しするように、子持ちの二人が続く。



「メガーヌさん、私もそう思います。というか、今ちょっと反省してるんです。
エリオやキャロにも、そういうのを渡しておけばよかったなーと」

「あと、私もです。・・・・・・ヴィヴィオに、絵本作るのもいいかなーと。
絶対、絶対渡すべきです。やっと一緒になれたんですし、絶対に」

「メガーヌさん、アタシもそう思います。絶対、渡した方がいいです」



力強く言ってきたのは、師匠。師匠は、そのままチャットで言葉を続ける。



「・・・・・・うちの部隊長、早くに両親を亡くして、二人の記憶がほとんどないんです」



いきなりはやての話になった。だけど、メガーヌさんは疑問をぶつけずに、黙って話を聞く。



「うん」

「ただ、アタシやシグナム達が一緒に暮らすようになってしばらくしてから、新しい遺品が出て来たんです。
まぁ、こっちは絵本じゃなくて、はやてが本当に小さい頃に録音された、誕生日のメッセージが入ったビデオテープなんですけど」

「・・・・・・うん」

「理屈じゃ、ないです。あの時はやて、ほとんど覚えてない両親の愛情に触れました。
それで、本当に嬉しそうでした。きっと、メガーヌさんの絵本だって、同じです」



師匠のPCは、メガーヌさんのPCより少し背が高い。だから、見下ろす感じ。

PC越しでも師匠の気持ちが伝わってくるのが、不思議。



「もしも、自分から渡し辛いって言うなら、アタシ達経由でもいいです。
だけど、このままにしないでください。ちゃんと気持ち・・・・・・伝えましょう?」

「・・・・・・そっか」



メガーヌさんは、少し考えているようだ。本当にちょっとだけ、間が空いた。

だけど、すぐにそのPCは笑顔になる。気持ちを固めたと、ゲーム越しでも伝わるように。



「なら、渡してみる。せっかく作ったんだし、勿体無いもの。
恭文くん、フェイトちゃん、なのはちゃん。あとヴィータちゃんも・・・・・・ありがと」

「・・・・・・いえ」





それに、僕達は安心する。・・・・・・多分、気持ちは固めてたんだと思う。

きっとメガーヌさんは、最後の一押しをして欲しかったんじゃないかな。

人間、そういうのが欲しい時はあるのよ。僕だって、同じ。



まぁ、我がパートナーは厳しいから、そういうの無理だけどさ。





「でもメガーヌ、アンタよくそんなの思いついたね」

「実は、ある人の受け売りなの。前に、うちの隊にヘルプで来てくれた魔導師さんでね。
あ、ヒロちゃんやサリエルさんも知ってる人なの。もういい人でさー」

「へ? 俺らも知ってる人って・・・・・・誰ですか」



その次の発言の中に含まれた名前に、僕達は驚愕することになった。

だって、あまりにも予想外だったから。そして、これが色々な引き金になる。



「フィーネ・スノウレイドさんだよ」

『えぇっ!?』

「なんかね、その人も当時男の子を引き取ってきたらしいの。
それで、その子のためにどういうことが出来るのか色々考えてて」



・・・・・・間違いない、ジンの事だ。ジン、フィーネさんと一緒に暮らしてたんだし。

というか、今モニターの前のジンがきっと凄い顔してるだろうな。もう手にとるように分かるよ。



「それで、そういうオーダーメイドの絵本の事も、調べたらしいの。
まぁ、物心付いちゃってるから、却下したそうなんだけどね」

「な、なるほど。・・・・・・てーかメガーヌ、私はその話知らなかったんだけど」

「私も、ヒロちゃんとフィーネ・スノウレイドさんが友達だったなんて、その時は知らなかったよ?
言われても困るよ。・・・・・・あ、それでね。色々お話したんだ。もう楽しくてさ〜」










普通に、アバターアイテムを考えながらも、僕達は雑談をしていく。

こういう風にノンビリ過ごせるのも、ゲームの楽しさなのだ。

・・・・・・なんか、いいなぁ。普通に楽しいなぁ。というか、フェイトと遊べるのが、楽しい。





こういうの、たまにしか無かったから・・・・・・なんか、幸せ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



先生、俺のためにそんなことしようとしてくれてたんだ。

・・・・・・知らなかった。なんかこう、基本厳しい感じだったし。

やばい、ちょっと泣きそうかも。なんか俺、先生のことを思い出しちまった。





目に溢れる涙を拭おうと、キーボードから手を離した。話しながら、思い出していた。

本当に色々なことだ。修行してた時や、それ以外の事や、お別れする直前の事。

今まで思い出そうとしても、モヤがかかったような感じがしてた。だけど、それはもうない。





本当に鮮明に・・・・・・待てよ。そうだ、ちょっと待て。・・・・・・オーダメイドの絵本?

それをプレゼント? 何か引っかかってる。普通なら、きっと思い出せないほど、小さな事。

でも、今は違う。俺は、思い出せる。本当に辛かった、最後の別れの前後も鮮明に。





・・・・・・・・・・・・あぁっ!!










「お兄ちゃん、どうしたの?」

≪マスター?≫

「思い・・・・・・出した」





なんで、忘れてたんだ。いや、分かる。先生は・・・・・・と言ってた。

それが、あまりにも不吉で、想像したくない未来だったから、記憶の底に封印してた。

正直、確証はない。可能性としては、0に等しい。でも、他に考えられる要素がない。



そうだ、このベリーハードな謎を解く鍵は、確かに俺の中にあったんだ。もう、先生から受け取っていた。





「バルゴラ」

≪なんだ?≫

「グローリー・システム」



ヒロさんとサリさんから、先日ようやく聞き出したシステムの名前を、俺は呟く。

呟いて続ける。失われた流星が隠された宝箱の鍵は、もうこの手にあることを。



「・・・・・・いや、お前のプログラム各種の在処、分かったかも知れない」

≪なんだとっ!?≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



翌日の事。異常にジンがシゴかれたりして、大変だった。・・・・・・マジでお仕置きしたし。あの二人。

だけど、そんな身体を引きずって、ジンは僕とフェイトとなのは、ヒロさんとサリさんを集めた。

話があるというので、ヒロさんは昨日の反省会を始めようとした。だけど、すぐにやめた。





僕も話だけは聞いていた、グローリー・システムの事だと言われて、すぐにシリアスモードに戻ったからだ。










「フレイホーク君、グローリー・システムの起動プログラムの在処が分かったって、本当?」

「まだ確かめてないですけど、手がかりだけは」

「やっぱり、フィーネはお前にちゃんと鍵を渡してたんだな」

「それっぽい感じですけど、多分・・・・・・これで正解です。
というか、他にないんですよ。その『鍵』っぽいのは」



なお、僕は黙っている。だって、この辺りの話は、フェイトやなのは、ヒロさんとサリさんの方が深く関わってるし。



「で、ジン。アンタが『鍵』っぽいと思ったのは、なに?」

「・・・・・・絵本、なんです」

『また絵本っ!?』



普通に昨日のメガーヌさんの話の流れかと、全員で揃って声を上げた。

ただ・・・・・・そこから同じように、全員気づいた。昨日の話の流れなら、そうなるから。



「ジン君、それってまさか・・・・・・フィーネさんも」

「はい。先生、亡くなる直前に、いきなり形見の品の話をし出して・・・・・・。
その中に、有ったんです。昨日メガーヌさんが言ってたような、絵本が」

≪どういうわけか、どこの店でこういう風な話でなどと、詳しく話していたそうだ。
私はその場に居なかったので知らなかったので、マスターだけしか知らない≫





ジン曰く、その店の名前とかも思い出したので、問題はないらしい。

まぁ、起動プログラムどうこうって話は抜きにしても、遺品が一つ見つかるわけだよね。

それはいいのかも。うん、きっといいことだ。だからジンだって、少し嬉しそうなんだし。



あと、サリさんとヒロさんもだね。懐かしさも入っている瞳をしている。





「ならジン坊、その店の名前を教えろ。俺が責任持って、調べてやる。例え店名が変わっていても、同じだ」

「はい、お願いします。・・・・・・あとは、これで当たりだった場合なんですけど」

「まず、私らで一度しっかり実力を見させてもらうよ。じゃなきゃ、あれは危な過ぎる」



・・・・・・とりあえず、フェイトを見る。で、視線で聞いてみる。『危ないの?』と。

するとフェイトは、頷いてくれた。結構困ったような顔で。



「そこは、私達が責任を持ってサポートするよ。でも、正直多用はしないで欲しいな」

「分かってます。正直、無茶な仕様ではありますから」

「・・・・・・ね、ジン。というかみんなもなんだけど、グローリー・システムってなに?」



そして、ジンが少し困ったような顔になった。というか、僕から視線を逸らす。

・・・・・・なぜだろう、なぜ普通にコイツは逃げようとするのだろう。疑問だ。



≪そう言えば、私も聞いてないですね。下僕、教えなさい≫

≪だから、私が何時古鉄殿の下僕になったっ!? ・・・・・・まぁ、そうだな。
ヤスフミや古鉄殿にも、色々と世話になるかも知れんし、マスター、教えてもいいか?≫

「まぁ、しゃあないな。ヤスフミのコントロール技術は一級品だし、参考にしたいかも。・・・・・・あのな」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・バカじゃないのっ!?」

「お前、いきなりそれは酷くないかっ!? 俺の師匠の奥の手なんだぞっ!!」

「無茶過ぎるでしょうがっ! 集束状態を維持して、周辺魔力を取り込みながら戦闘なんてっ!!」





グローリー・システムの詳細は、実に簡単だった。それは、集束技術を応用したもの。

集束技術とは、僕やなのはのスターライトのように、周辺魔力を一箇所に集める技術。

本来なら、それを攻撃に転用する。だけど、グローリー・システムはその使用目的が違う。



それをそのまま、全て術者に回し、能力を底上げするのだ。

例えば攻撃に回して威力を上げる・・・・・・とかね。

もちろん、欠点はある。それは、負担がとても大きいこと。



集束技術によって集まる膨大な魔力のコントロールは、とても負担が大きい。

それを扱うことも、また同じ。だから僕のスターライトは、禁呪扱いなんだし。

どうも、システムを起動し続けている限り、魔力を集束し続ける仕様らしい。



それによりかかる負担が如何ほどの物か・・・・・・もう言う必要はないと思う。





「まぁ、止めても聞かないんだろうし、もう言わないけどさ」

「悪いな」

「いいよ、友達だもの」



ジンが言っても聞かないのは、よく知ってる。だから、僕はもう言わない。

僕より良識派で、弾切れ起こすヘタレガンナーでも、そうなるのよ。



「・・・・・・ただし、なのはの言うように多用は禁止だよ?
ジンだけの話じゃない。バルゴラへの負担だってあるんだから」

「分かってる。・・・・・・とにかく、サリさんもお願いします。
あと、なのはさんもですね。少し、レベルアップしておく必要があるんで」

「分かった。じゃあ、今日の勢いでビシビシシゴくね。もう弾切れなんて、起こさないように」



そして、なのはが笑う。・・・・・・やばい、目が笑ってない。

あははは、もしかしなくても、普通にアレはカチンと来てた?



「お・・・・・・お手柔らかに」

「うん。・・・・・・あ、そう言えばジン君も来るんだよね?」

「はい。一応ご招待はしてもらってますから。でも、いいんですか?」



なお、はやてとヴェロッサさんの、結婚式の話だ。普通に、今日はもう2月の末だもの。

結婚式は、今日を入れるともう4日後。・・・・・・やっと、3月かぁ。長かったなぁ。



「大丈夫だよ。はやても、フレイホーク君の人柄を見て判断してるから。
むしろ、一緒にお祝いして欲しいな。せっかくの晴れ舞台だから」

「なら、遠慮なくお邪魔させてもらいます。でも、結婚式かぁ。
俺、知り合いのに出るのは、初めてなんですよ」

「私達は、クロノ君とエイミィさんの結婚式があるから、まだ大丈夫かな」

「僕は、それだけじゃないけどね。でも、いいものだよね。
みんなで、幸せを祝福するって、響きが素敵だもの」





なんだかんだで、結婚なんだよなぁ。でも、長かったなぁ。

去年の12月のアレコレから始まって、はやての様子がおかしくなったでしょ?

それで、フェイトと二人でご懐妊疑惑に対処して・・・・・・あぁ、それであれだ。



僕達がご懐妊したと、勘違いされたんだ。あれもヒドかった。

そして、現状で全くその辺りを学習していないのが、ヒドい。

なんだろ、真面目にここの方々は、本当に優秀な局員なのかと疑ってしまう。



でも、もうすぐ3月。あとひと月で解散かぁ。ここに来てから、色々あったなぁ。

フェイトと両想いになったのもそうだけど、同じくらいに一番思い出深いのは・・・・・・あぁ、そうだ。

電王と一緒に、イマジンと戦ったことだ。うん、単純に嬉しかったんだ。



思い描いていた、叶わないと思っていた願いが形になっていたのが、凄く。

真っ直ぐに、守るために、今を覆すために戦うヒーロー。

『魔法』が使える魔法使いの、形の一つ。それが、良太郎さんだったり、侑斗さんだったり。



僕は、あんな風にはなれないかも知れない。やっぱり・・・・・・色々あるしね。



ただ、それでも戦おう。壊れそうな今なんて、やっぱり認められないもの。





「・・・・・・フェイト」

「うん、なにかな」

「結婚式、楽しみだね」

「そうだね、凄く楽しみだ。だけど」



フェイトが、苦笑いを浮かべながら僕を見る。

というか、僕も同じ。だって、言いたい事は分かるもの。



「本当にひと月足らずで、全部の準備が整うなんて、思ってなかったよ」

「それは僕も。・・・・・・アリサやすずかさん、大丈夫かなぁ。
大学だって、年度末で色々忙しいはずなのに」

「そうなんだよね。私も、そこは本当に心配」










・・・・・・ただ、僕達の心配は無意味だった。だって、別に心配しなくちゃいけないことがあるんだから。





こうして始まるのは、地獄の時間。次元世界が崩壊するのではないかと、危機感を持ってしまう時間。





それは・・・・・・こういう、ことですよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・やばい。普通に、やばい。というか、なんで僕気づいちゃったの?

待て待て、話を整理しようか。まず、今日は結婚式だよ。それで、ここは海鳴だよ。

普通に丘の上に新しく出来た結婚式場に、凄い人数が集まってる。





この辺り、身内だけと言えどはやてとヴェロッサさんの顔の広さのためだろう。

で、そこはいい。問題は、そこじゃないんだから。現在、時刻は朝の11時。

式は、12時から始まる。さっきも言ったけど、当然のようにお客さんは来ている。





だけど、その中に居ない人間がいる。そう、その人間が問題なんだ。

まぁ、あれだよ。結婚式って、花嫁と花婿が居るじゃない? というか、居なきゃだめだよね。

で、そこからあえて・・・・・・そう、あえて花婿を除外してみようか。うん、除外したね?





現在、その状況なのよ。










”・・・・・・さて、アルトさんや”

”はい”



式場の隅で、楽しげに談笑している方々を他所に、僕達はヒソヒソ話。

隠れるように、気付かれないようにしながら、作戦会議です。



”常識的に考えて、式開始1時間前に花婿が居なくて、姿どころか影さえも見えないって、おかしいよね?”

”おかし過ぎますね。衣装の準備に、花嫁や家族への挨拶とか、色々やることあるでしょうに”





ほんの20分ほど前。式開始前の、どこか浮かれた空気の中、僕は気づいてしまった。

そう言えば、ヴェロッサさん見ないなと。一応、挨拶だけはしておこうと思ってしまった。

そして、探してしまった。知り合いに『見てないか』とか、聞いてしまった。そして、分かってしまった。



ヴェロッサが、この会場内の何処にも居ない事に。なお、連絡も取れない。

海鳴に来てないというのも、ない。普通に昨日談笑したもの。

それで、クロノさんと・・・・・・あと、なぜかこっちに来ていた恭也さんや士郎さんと、意気投合してた。



意気投合して、ご飯を食べに行ったりしてた。うん、つまり姿は見てるの。

だけど、現在はどこにも居ない。そして、連絡も取れない。

みんなは、まだ気づいてない。なんだかんだではやてサイドも、準備があるから。



でも、僕は気づいてしまった。サーチもしてしまった。それでも居なかった。





”アルト、やばい。絶対やばい。普通ならともかく、連絡が全く取れないんだよ?”



なお、念話もだめ。なんか妙なノイズだけしか、返ってこなかった。



”少なくとも、私のサーチの範囲内に、あの人は居ません。
マスター、このままはマズいですよ。前段階であれだけあったのに”





前段階で、ヴェロッサさんはフルボッコにされかけた。もちろん、責任はある。

そして、自分なりにその責任を取るために、結婚することにした。

にも関わらず、式当日に本人が居ない。連絡も、全く取れない。



身内だけって言っても、相当人数が集まってるのよ? それも、オーバーSな魔導師が大半。





”・・・・・・次元世界、崩壊するかも”

”可能性は、非常に大きいですね”

”嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!”










・・・・・・話している間に、時間は刻々と過ぎていく。

式開始まで、残り58分。もう、1時間を切ってしまった。

こうして、僕とアルトは立ち向かう事になる。そう、立ち向かうのよ。





次元世界崩壊という、恐ろしい未来を防ぐために、僕達の戦いは始まった。




















(第13話へ続く)




















あとがき



恭文「みなさん、おはこんばんちわちわ。成人式スペシャルということで、やっと書きあがったセカンドシーズン、どうだったでしょうか?」

あむ「おはこんばんちわちわ、日奈森あむです。なお、次の更新はこの分先延ばしになりますので。
あ、成人式を迎える方、おめでとうございます。まぁ、恭文もなんだよね」

恭文「まぁね。これが終わったら、すぐに成人式に向かうとこ。なお、海鳴でギンガさんと一緒に」

あむ「ギンガさんも? というか、アンタ普通にギンガさんだけって」

恭文「しゃあないのよ。ジンは仕事でドンパチしてるしさ。まぁ、お酒でも飲みつつ親交を深めるよ。・・・・・・ハラオウン家で」

あむ「あぁ、そこ大事だよね。特にギンガさんは、普通にアンタの事好きだったんだし」





(まぁ、そんなことは置いておいて・・・・・・今回の話です)





恭文「というわけで、ウィハン偏は終わり、『史上最大の危機偏』に突入です。
なお、元ネタは海外ドラマ『フルハウス』の、ジェシーとレベッカの結婚式話ですね」

あむ「あ、あたしも再放送で見たことあるよ。あれは面白かったよねー」

恭文「なお、式が起こる前段階の話とかは、次回やります。
もうね、あれですよ。普通に崩壊とかするから」

あむ「いやいや、しないよねっ!? というか、したら大問題じゃんっ!!」





(その通り)





恭文「というわけで、普通にこれをやりたくてセカンドシーズンやってたようなもんですよ」

あむ「というか、やばいよね? 普通にやばいよね?」

恭文「まぁ、そんなヴェロッサさんが一方的に悪いみたいな話にはならないよ?
というか、したらだめだって。お話の基本は、みんな揃ってハッピーエンドなんだから」

あむ「なるほど。でも、それってネタバレじゃ」

恭文「いいのよ、あとがきなんだから。とにかく、とまとの主人公が・・・・・・メガーヌさんに」





(青い古き鉄、泣いているようだ。普通に号泣なようだ)





あむ「でもさ、恭文」

恭文「なに?」

あむ「成人になるって、どんな感じ?」

恭文「うーん、正直そんな泣いて喜ぶとかじゃないよ?
これでも、10歳の頃から魔導師やってたしね。ただ」

あむ「ただ?」

恭文「もう、10年なんだなーって、ちょっと感慨深くなる。・・・・・・なんか、不思議なの。
リインと出会う前と同じだけの時間、生きてたんだなーってさ。うん、本当に感慨深い」





(青い古き鉄、どこか遠い目でそう口にする。それを見て現・魔法少女、なんだか納得してしまう)





あむ「・・・・・・そっか」

恭文「というかさ、普通に大人になったから特に変わるってわけじゃないよ?
子どもでも、大人な子が居るように、大人でも、子どもなのはいる。ようは、中身ですよ」

あむ「確かに、そうだね。年齢って、一つの目安に過ぎないんだし。
・・・・・・ということは、8歳のリインちゃんと恭文がマジでラブラブしても」

恭文「それはだめ。目安だけど、それは常識的な目安なのよ? ・・・・・・法案は、怖いの」

あむ「あぁ、分かったから。でも、ほんとおめでと。あたし、なんも気の利いたお祝いとか出来ないけど」

恭文「いいよ。言葉だけで、嬉しいから。あむ、ありがとね」

あむ「うん」





(現・魔法少女、とても嬉しそうだ)





恭文「というわけで、成人式、本当におめでとうございます。あと、お酒で失敗はしないように。
それでは、本日はここまで。お相手は蒼凪恭文と」

あむ「日奈森あむでした。それでは、また次回に」










(そして、二人とも楽しそうに手を振る。さて、次回はどうなる?
本日のED:CHEMISTRY『Period』)




















恭文「・・・・・・よ、よし。まず対策を考えよう。この場合、協力者が必要じゃないかな」

古鉄≪確かに、私のサーチでもあなたの念話でも通信でもダメですし、そこは必要でしょう≫

恭文「とりあえず、協力してくれそうな人を考えてみようか」





(考え中)





恭文「・・・・・・ダメだしっ! なんで敵しかいないのっ!? 話した時点で、ヴェロッサさん死亡コースじゃんっ!!」

古鉄≪さすがに、結婚式でこれですし、前段階もあるじゃないですか。そうなりますって。
いや、発想を逆転させましょう。ヴェロッサが死亡コースに乗ってそれで済むなら≫

恭文「その逆転のさせ方は間違ってるよっ! てーか、結婚式で死亡とか、そういうのやめないっ!?」

古鉄≪大丈夫ですよ。今回は、はやてさんもキレるでしょうから≫

恭文「全然大丈夫じゃないわボケっ! あぁ、これマジでどうなるのー!?」










(おしまい)






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あきゅろす。
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