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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第26話 『その日、機動六課? オープニングセレモニーの終わり編』



フェイト「前回のあらすじ。混乱し続ける中央本部。そして、そんな中始まるそれぞれの戦い」

あむ「ヴィータさんは、リインちゃんと一緒にゼスト・グランガイツとアギトさんを。
スバルさんとティアナさん達は、ノーヴェさんとウェンディさんを」

フェイト「ヒロさんは、彼女と。そして、ヤスフミはチンクと。それで、私となのはは・・・・・・ギャラリー」

あむ「あぁ、泣かないでください。フェイトさん達の装備持ち込みは、諸事情からダメだったんですし、仕方ないじゃないですか」

フェイト「う、うん。・・・・・・とにかく、ヒロさんとヤスフミの戦いには決着が付いた。だけど」

あむ「スバルさん達は、大苦戦。そして、六課隊舎は襲撃を受けて大混乱」

フェイト「この時点で、私達はもう負けているも同然。だけど、それでも止まれない・・・・・・というところから、今回は今まで描かれてなかった隊舎のお話から、始まります」

あむ「うぅ、どうなるんだろ。2クール目の最後の回だし、色々期待しちゃうよ」

フェイト「とにかく、StrikerS・Remix・・・・・・始まります」

あむ「どうぞー」



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「セインちゃーん、そっちはどれくらいかかりそう?」

『ごめん、まだ10分くらいかかる・・・・・・って、予定通りだけど、問題ある?』



まぁ、色々とねぇ。チンクちゃんも何してるのかしら。普通に爆死させればいいだけなのに。

というより、あのシスター・・・・・・おかしいわね。該当データが存在しないわ。



「チンクちゃんが、Fの遺産の確保に手間取ってるのよ」

『はぁ? でも、武装無しのはずじゃ』



そのはずなのにねぇ。戦闘開始から既に5分以上。

中の様子がモニター出来なくなってるけど、それでも瞬殺なのは分かる。



「Fの遺産や例の特殊部隊の部隊長達と一緒に来た、正体不明のシスターに手こずってるようなの。悪いんだけど」

『分かった。こっちが終わり次第になるけど、急いで向かうよ』

「お願いねぇ」










本当なら、すぐにも向かって欲しいところだけど、仕方ないわよねぇ。

セインちゃんの担当ブロックだって、重要なところばかりだもの。抜かしてはいけないわ。

・・・・・・あら。隊舎の方も、ようやく気づいたみたいね。ふふふ、お間抜けさん♪





もう遅いわよ。あなた達は、私達の手の中。抵抗なんて、無意味なんだから。





というわけで、ポチっと♪




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「シャーリーッ! 中央本部の様子はっ!?」

「だめっ!!」



外からの攻撃はひとまず止んだみたいだけど・・・・・・。



「中の様子はモニター出来ないし、隊長達とも連絡が取れないっ!!」



一応、エリオ達は待機してもらってる。とは言え、ここからじゃ出せないよね。

多分、二人が着く頃には全部終わってる。というか、エリオがあの状態じゃ。



「・・・・・・なに、これ」

「アルト、どうしたの?」

「高エネルギー反応多数・・・・・・こちらに接近してますっ!!」



とにかく、メインモニターに様子を出す。大きなエネルギー反応は、二つ。

だけど、その周りに沢山反応がある。これ、ガジェット?



「グリフィスっ!!」

「・・・・・・シャマル医務官とザフィーラ、それとライトニング03と04」



エリオ達も数に・・・・・・って、仕方ないか。この状況で、逃げる手は多分使えない。



「そして交代部隊は今すぐ出動。バックヤードスタッフは、今すぐに避難。あと、近隣部隊に救援要請を」

「分かったっ!!」










でも、この状況でこっちに攻撃なんて・・・・・・。まずい、絶対にまずい。





ううん、もう何を言ってもどうしようもない。覚悟を、決めよう。





隊舎は・・・・・・私達の家は、絶対に守るから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ホント、オイタする子は、嫌ーい。生意気に救援要請なんて、だーめ。

虫けらは虫けららしく、ブチっと潰されてればいいのよぉ?

救援要請はぁ、こっちで相手をしてあげる。ふふふ、良かったわねぇ。





これであなた達は、完全に孤立無援よぉ? もう、負けるしか選択がない。

頼みの隊長達はぁ、チンクちゃんが対処してるからぁ、Fの遺産は捕縛っと。

フォワード達も、ノーヴェちゃん達が足止め。まぁ、こっちもすぐに終わるでしょ。





隊長二人は、デバイスも所持していないようだし、あのおチビちゃんも居ない。

チンクちゃんが、それで手こずるわけがないもの。すぐに決着が付くわぁ。

付いて、それからノーヴェちゃん達の方に向かえば、そこで詰みよ。





居るのは、おせっかいで無謀な、正体不明なシスターだけ。ふふふ、面白いわぁ。





さぁ、クルクル踊りなさい? 無駄なあがきを見せ続けて、私を楽しませてぇ?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「隊舎に襲撃っ!?」

「そうだ。もうすぐ接触する。・・・・・・エリオ」



ザフィーラが、僕を真っ直ぐに見上げる。青い狼が、僕に問いかける。

『逃げても、いいんだぞ』と。嘲りではなく、本気で心配してくれてる。



「逃げないよ」

「いいのか?」

「正直、怖い。間違えるのは、傷つけるのは、すごく・・・・・・怖いんだ」



言いながら、右手を見る。それを見て、ザフィーラやキャロがびっくりしてる。

あはは、そりゃそうだよね。僕、凄まじく震えてるもの。



「だけど、逃げたくない。目の前の現実とか、そういうことからじゃない。
・・・・・・自分の居たいと思う場所から、守りたいと思う気持ちから、逃げたくないんだ」





自分の真実から逃げるな。例え何から逃げてもいいけど、それだけはダメ。

シオン、僕は正直、よく分からないよ。やっぱり、僕は弱くてバカだからさ。

バカだから、間違えた。周りの人達を、勝手な理屈で傷つけた。



一ヶ月前の自分が、嫌いだ。殺してやりたいくらいに、嫌い。今更だけど、すごく後悔してる。

だけど、逃げないよ。僕にはシオンの言ってる事が、よく分からない。

その上、弱くて、バカで、周りの人達を傷つけて・・・・・・って、これはさっき言ったか。



まずいな、恐怖で思考が混乱してるんだ。だけど、自分からはもう絶対に、逃げない。



それだけはもう絶対にしちゃだめだって、心が・・・・・・僕自身が、言ってるんだ。





「エリオ君・・・・・・」

「分かった。エリオ」



なに・・・・・・かな。



「成長したな」

「そう、かな」



自分では全然だと思う。むしろ、弱くなってるよ。

対人戦は怖くて仕方ないし、ガジェット相手もやっぱり怖い。



「そうだ」



だけど、躊躇いなくザフィーラが言ってくれた。力強く、励ますように。



「弱かったり、運が悪かったり、何も知らないとしても、それは何もやらないことの言い訳にはならない」

「え?」

「我の知っている、強くも優しい方々が言っていた。今のお前を見ていたら、なぜか思い出した」



何もやらない事の言い訳にはならない・・・・・・。じゃあ、僕もそうなのかな。

怖くても、逃げたくても、自分から逃げる言い訳、出来ない・・・・・うん、もう出来ないんだよね。



「・・・・・・そろそろだな。二人とも、いくぞ」

「うん。いこう、エリオ君」

「うん」










今の僕に、何が出来るかなんて分からない。多分、足手まといもいいところだと思う。





それでも、守りたい。この場所だけは、絶対に。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第26話 『その日、機動六課? オープニングセレモニーの終わり編』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・怖い。

凄く、怖い。だけど、負けられない。

僕の背中には、守りたいものがある。だから、負けたくない。





そんな想いを込めて、僕は・・・・・・ストラーダを、押し込む。

赤い刃を二振り持つ女性は、そんな僕を簡単に弾き飛ばす。

僕は、空中で身を翻し、ブーストをかける。ストラーダのカートリッジも、2発ロード。





そのまま、飛び出した。真っ直ぐに、その人目掛けて、真っ直ぐに。










「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





怖さは、消えない。かき消すように・・・・・・ううん、違う。

全部抱えて、前に進めるように、僕は声を上げる。

追いつきたい。あの背中に。そして追い越したい。あの日の自分を。



だから、赤に染まる闇を僕は斬り裂く。距離を一瞬で零にして、槍を叩き付ける。





「・・・・・・Fの遺産、無駄な抵抗はやめなさい。私達とあなたは、同じです。仲間なのですよ?」



ストラーダと二刀がせめぎ合う。そんな中で、目の前の人は平然とそんな事を言った。

だけど、違う。それは・・・・・・絶対に違う。だから、声を上げるっ!!



「違うっ! 僕は・・・・・・僕だっ!!」





再び、僕は振り払われ、吹き飛ばされる。・・・・・・だめだ、パワーが足りない。

スピードは勝てるけど、力だけなら間違いなく向こうの方が上だ。

地面を滑るように着地。数メートル滑って停止したら、僕は跳ぶ。



短い髪の子が放ってきた光の矢を、何回も跳びながら何とか回避。





「キャロっ! ブーストお願いっ!!」

「・・・・・・うんっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



エリオが地面を滑っている間に、我は二刀持ちに飛びかかる。

なお・・・・・・珍しく人型だ。この状況、こちらの方がやりやすいだろう。

上を取った。そして、跳び蹴りをかます。それを、女は身を捻って避ける。





そのまま我の右側面を取り、刃を突き立ててくる。それを、裏拳で止める。

・・・・・・しかし、力が強い。かなりギリギリだぞ。

まずいな、格闘戦は得意だが、火力は向こうの方が上だ。油断すれば、一気に落とされる。





そのまま、少し後ろに飛ぶ。追撃をかけようとしたが、一気に大きく後ろに飛んだ。





ガジェットから熱光線が飛んできて、我の邪魔をする。










「邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「フリード、ブラストフレアッ!!」





地面から、我の鋼の軛が現れ、数体のガジェットを串刺しにする。

フリードの炎が、ガジェットを焼く。その間に、女が飛んでくる。

右の拳を引き、我は・・・・・・飛び込んだ。女も、二刀を引いて対抗しようとする。



我は、女の間合いに入る寸前に、大きく上に跳んだ。そして、雷光の槍が現れた。





「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





キャロがブーストをかけたために、桃色の巨大な刃がストラーダから生まれていた。

エリオは、戦いの中で少しずつだが動きが良くなっていた。だからこそ、踏み込める。

女が、決して避けられないタイミングで、刃を突き立てる事が出来る。



これで決まりになるのではないかと、どこかで思っていた。だから、ダメだったのだろう。





「IS、発動」





その瞬間、女の身体が消えた。エリオの刃は、虚空を貫く。

それにエリオが驚いた瞬間、背中に影が現れる。

赤い二刀を上段に振りかぶり、冷たい瞳が若い槍騎士に狙いを定める。



そして、赤い閃光が・・・・・・エリオを斬り裂いた。





「ツインブレイズ」





閃光は、我の眼前でエリオを吹き飛ばした。

地面に叩き付けられた小さな身体は、ストラーダの刃と共に地面を抉り続ける。

そして、数メートル転がって、ようやく止まった。エリオは、動かない。



ストラーダの刃から、ピンク色の刃が消えた。それを見て、ようやくキャロが声を上げる。





「エリオ君っ!!」





固まっていたのは一瞬。自分のミスを痛感したのも一瞬。だが、それだけあれば充分だった。





「邪魔です」





キャロが、バインドによってがんじがらめにされる。





「失礼」










本当に、一瞬の隙だけで充分だったらしい。





次の瞬間、我は背中から、とてつもない衝撃を喰らった。



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



炎の中、共用デバイスを構えて、狙い撃つ。

なお、対象は隊舎に侵入してきたガジェット。

AMFだろうが、遠慮なく貫く。・・・・・・また一体。





で、もう一体。どんどん来るが、かまわずに撃ち抜く。










「・・・・・・うし、腕は鈍ってねぇな」





けど、こりゃ・・・・・・無理か? ライトニングのちびっ子どもと旦那と先生は、相当苦戦してる。

その上、救援も未だに到着してないと来てる。やばい、かなりやばい。

これでも、色々と経験はしてる。だから余計に分かる。これは、完全に俺達の負けだ。



くそ、とっとと隊舎放棄でもしときゃあよかったかな。ま、今更そこを言っても仕方ないか。





「・・・・・・来たか」





息を潜める。・・・・・・集中しろ、一発だ。一発で決めろ。

俺は、前線でドンパチやれるような能力はねぇ。凡人もいいとこだ。

そのために、俺はこれを選んだ。アウトレンジから、敵を撃ち貫く術を。



だからこそ、俺が待ち構えている通路に入ってくる奴は、ことごとく撃ち抜いて来た。

先手必勝、一撃必殺、不意を突く。・・・・・・部隊長が好きな小説にある、戦闘の極意。

攻撃されたら、そこで終わる。だから、一撃だ。全て一撃で決める。



そうして、入ってきたのは・・・・・・黒い虫っぽい奴。

左腕の先が途中から無いそれに、俺は照準を定める。そして、もう一人。

そのもう一人を見た瞬間に、俺は固まった。いや、身体が震えだす。



年の頃だと、10歳くらいのがきんちょ。女の子が・・・・・・そこに、居た。





「あ・・・・・・あぁ・・・・・・」





だめだ、集中しろ。アレは、敵なんだ。撃たなくちゃ、俺がやられる。

集中するんだ。アレは、ラグナじゃない。俺の妹じゃない。

デバイスを構え直す。直すが・・・・・・震える。身体が、震える。



そして、声がした。俺には、あの子は撃てないと、どこからか声がした。





「・・・・・・邪魔」





その子どもが、左手をかざす。俺に対して、デバイスを向けている。

それを見て取った瞬間、俺は吹き飛ばされて、近くの瓦礫に身体を叩き付けられた。

何の容赦も、優しさもない攻撃。それに、身体が痛む。・・・・・・だめ、だ。



痛みのおかげで、思考が戻った。指を動かす。まだ、やれる。まだ・・・・・・撃てる。

俺は、寝転がりながらあのガキに照準を定める。でも、無駄だった。

目の前に、黒い虫が居た。俺は、そいつに首根っこを掴まれ、引き上げられた。



・・・・・・眼下には、人形みたいな冷たい目をした子ども。俺を、じっと見る。





「・・・・・・答えて。ガリューの腕を斬ったあの人は、どこ?」



なんの、話を・・・・・・。



「病院に、居なかった。あなた、知らない?」



病院・・・・・・まさか、坊主・・・・・・か? あぁ、間違いない、坊主だ。

アイツが召喚獣の腕を斬ったとかなんとかって、聞いたことがある。



「知らねぇ・・・・・・なぁ」

「隠すと、ためにならない」



首が締め上げられる。くる・・・・・・しい。て・・・・・・か、あの坊主は、本当に。

色々、火種・・・・・・撒き過ぎだろ。俺ぁ、びっくり・・・・・・だぞ。



「例え、知ってたとして・・・・・・も」



俺は、やっぱりスナイパーなんだろうか。右手でまだ、デバイスを持ってた。

だから、それを虫野郎の腹に突きつけてやる。



「仲間を売るような真似っ!」



そうだ、アイツは仲間だ。六課の、俺達の仲間。誰がなんと言おうと、売るわけがねぇ。

俺を投げようとするが、もう遅い。俺は、遠慮なく数発ぶっ放してる。



「するわけねぇだろうがっ!!」





虫のどてっぱらに、穴が開く。・・・・・・へへ、ざまぁみろ。

そんな事を思った瞬間、俺は思いっきり投げ飛ばされた。

そのまま、地面を転がる。転がって、デバイスを手放してしまった。



立ち上がろうとするが、痛みや失血で、立てない。・・・・・・だが、顔だけは上げた。





「・・・・・・許さない」





見えたのは、紫色の閃光。それが、俺に向かって放たれようとしていた。





「もう、あなた達は許さない。ガリューを・・・・・・また、傷つけた」










それが放たれて、俺はまたまた吹き飛ばされる。





そうして、意識を手放した。・・・・・・悪い、みんな。





俺は、フラグブレイカーには、なれそうもなかったや。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・今日ほど、自分が後衛型なのを恨めしく思ったことは無い。

相手方の能力に、まったく対応出来ない。もう、だめ。

隊舎は、私達の居場所は、炎に包まれている。そして、人も傷ついた。





それだけじゃない。エリオも、ザフィーラも、キャロも、そして私も・・・・・・倒れている。










「・・・・・・ここまで、本当によく持った」

「さすがは歴戦のエースと言ったところでしょうか」





短い髪の、男の子のような子と、長い栗色の髪をした、無機質な顔の女の子。

短い髪の方が、後衛。光の弾丸を放ち、攻撃する能力を持っている。

そして、長い髪の子が前衛。赤い二刀のエネルギーソードの使い手。



それだけじゃなくて、急激なマニューバで相手の背後に回りこみ、二刀で一撃を加えるのが得意らしい。

それで、エリオも、ザフィーラもやられた。キャロも、後衛の子のバインドで縛られて、動けずに居る。

悔しい。私・・・・・・何も、出来なかった。エリオだって、怖くて、逃げたくて仕方なかったのに。



それでも、必死に頑張ってくれたのに。私は今、二人を睨む事しかできない。



そして、二人の周囲に居るガジェットも一緒に、睨む事しか出来ない。





「だが、これで終わりだ。IS・・・・・・レイストーム」










左手に、また翡翠色の光が宿る。それが・・・・・・放たれ、私達を襲う。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・あぁ、ルーテシアお嬢様、ありがとうございます』





ガリューが肩に担いでいるのは、私より年下の女の子。

ここの人達にいじめられていた、かわいそうな子。

ドクターや、今私と通信しているウーノが、そう言ってた。



でも、本当だね。あんな人達ばかりじゃ、この子もかわいそう。





「この子、連れて帰るんだよね」

『えぇ。その子はとても可哀相な子で、私達も心を痛めていたんです』

「なら、よかった」

『それと、ルーテシアお嬢様』



・・・・・・なにかな。



『ガリューの再生治療の手はずが、整いました。見る限り、また傷が増えたようですし』



ガリュー、傷だらけ。腕も、ドクターの計画のあれこれがあったから、時間が取れずにそのまま。

あの人・・・・・・許さない。何も知らないくせに、こんなことして・・・・・・絶対、許さない。



『そちらの方は、クアットロが主導で行いますので、すぐにこちらへ帰還してください。おかえりは』

「大丈夫。余りのU型で帰るから」










・・・・・・ディードやオットーだっけ? ナンバーズの末っ子の子。

その子達と戦ってる人達が気づかないように、私はそっと帰った。

そして、決めた。あの人達は、きっとまた私の邪魔をする。酷い事をする。





だから、叩き壊してあげる。あの人だけじゃなくて、全員、壊す。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『クア姉っ! 大変っ!!』

「セインちゃん、どうしたのぉ?」

『チンク姉・・・・・・倒されてる』

「はぁっ!?」



ちょ、ちょっと待ちなさい。それはありえないでしょ。チンクちゃんの能力は相当なのよ?

それを、デバイスも武装も無しでどうして・・・・・・ま、まさか武装を持ち込んでたのっ!?



『それで倒したの、その正体不明のシスターっぽいんだよ』



・・・・・・イライラする。不確定要素が出て来ることは考慮してたわ。というか、当然よ。

だけど、イライラする。完璧に勝利するはずの作戦だったのに、台無しになってしまった。



「・・・・・・まぁ、そこはいいわ。それでセインちゃん、救出は出来そう? もしくは、Fの遺産の確保」

『無理。もう捕縛されちゃってるから』

「どうして戦闘中を狙わなかったのよ。チンクちゃんとそのシスターが戦ってたなら、後は隙だらけのはずよ?」



本当にアッサリと言い切った。それにまた、イライラが高ぶっていく。だから、こんな事を言ってしまう。



『言われても困るよ。私が到着したらもう、チンク姉グルグル巻きだったんだから』



・・・・・・・なによ、それ。イライラする。完璧な、はずなのに。

ほころびなんてなかったはずなのに、なんでこうなるのか分からない。



「それで、今はチンクちゃんは囚われの身」

『サンプルH−2と聖王教会のシスターが、しっかりガードしてる』

「・・・・・・チンクちゃんはもういいわ」



はっきり言って、戦力ダウンは痛い。負けたのも腹立たしい。

だけど、それでもチンクちゃんは諦めるしかない。



「セインちゃん、あなたは他の子のフォローに。もうすぐこのミッションもおしまいですもの」

『分かった』










まぁ、いいわ。最重要捕獲対象も、しっかりディードとオットー、ルーテシアお嬢様達が確保したようだし。





そうよ、最後に勝つのは私達なんだから。そうして、私達はあの頂へ登り、ある存在になるの。





その名は、神。そう、私達は、この世界の神になるんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・だが、これで終わりだ。IS・・・・・・レイストーム」





左手に、また翡翠色の光が宿る。それが・・・・・・放たれ、私達を襲う。

だけど、それは私達に届かなかった。光の矢は、白い砲撃に飲み込まれたから。

私達の間に入り込む影が、それを成した。まるで風のように、颯爽とその人は現れた。




その人は、安堵の息と共に、ゆっくりと口を開いた。





「・・・・・・ギリセーフってとこか?」



そう言いながら、その人は踏み込む。



「よう、通りすがりのピザ屋の出前だ」

≪そして私は、宅配バイクならぬ、パートナーデバイスです≫





銀色の十字槍が、炎の赤に染まる景色に煌いた。

打ち込まれたそれを、長い髪の女の子は避ける。そして、また背後に回る。

まるで何かのルーティンワークのように、機械的に刃を振り下ろす。



いや、振り下ろそうとした。その瞬間に、槍の柄尻が彼女のお腹に叩き込まれた。





「ISってやつか。だが、いくら速かろうが・・・・・・気配は丸見えだ」



そのまま柄尻を押し込みながら、槍が振るわれる。すると、その子は海の方へ吹き飛んだ。



「ディードっ!!」





短い髪の子を、白いバインドが縛ろうとする。もちろん、槍を持った男性の攻撃。

だけど、それをその子は力づくで引きちぎって、槍を持つ男性に光の矢を撃つ。

それらを全て、その人は槍で斬り払った。エネルギーの粒子が、眼前で煌く。



その間に、短い髪の子は凄い速度で海に落ちた長い髪の子の方へと向かう。





「うわ、バインドを力づくって」

≪主、あちらはいいでしょう。今は≫

「分かってるよ」





その人は、追いかけようとするけど、デバイスからの声でそれをやめた。

それからすぐに、数発の白い魔力弾を、周囲に生成。周辺に居たガジェットに、それらを放つ。

発生したAMFすらも撃ち貫いて、その人に応戦しようとしたガジェット数体は、一瞬で撃破された。



それから、ゆっくりと私達の方へ、降りてくる。





≪シャマル医務官、大丈夫ですか?≫

「遅れてすみません。ちょっと襲撃に気づくのに、時間かかりました。
・・・・・・てーか、最初からこっちに向かってればよかった。可能性は0じゃなかったのに」



その人は、黒いザンバラ髪で高い身長をしていて、私の知っている人。

今は、どういうわけか陸士制服に身を包んでる。



「サリエル・・・・・・さん」

「はい。・・・・・・しっかし、また派手にやられましたね。
とりあえず、応急処置だけはすぐにしますから」










それは、恭文くんの兄弟子で、私の知り合いでもあるサリエルさん。





助けに・・・・・・来て、くれたんだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・とりあえず、これで応急処置はよしっと。

ザフィーラさんも傷は深いが、大丈夫。これならいける。

少年とキャロちゃん・・・・・・だっけか? ハラオウン執務官の保護児童。





こっちも、問題ない。少年は左腕にヒビが入ってるが、それでもだ。










「あの、ありがとうございます。・・・・・・というか、サリエルさんですよね」

「あぁ。・・・・・・え、なんで俺のこと知ってんの?」

「あ、恭文さんから戦闘映像を見せてもらったんです」



ゆっくりと起き上がりながら、キャロちゃんがそう言ってきた。・・・・・・納得した。

そうだよな、やっさんしか居ないよな。他に無いよな。



「というか、別世界に旅に出ていて、今はミッドに居ないと聞いていたんですが」

「あ、あぁ・・・・・・うん、まぁな」



あぁ、別世界だな。聖王教会って言う、シスターが沢山居る桃源郷だよ。

なお、普通に色目使おうとすると、シスター・シャッハの鉄拳が飛ぶけどなっ!!



「サリエル殿、助けてくれた事は感謝するが・・・・・・いいのか? 主はやてから言われていたというのに」

「問題ありませんよ。てーか、たまたま散歩してたらこれなんですから」

「・・・・・・納得した。それで、現状はどうなってる。
我らはあの者達の相手をしていて、そこの辺りが把握出来ていない」



あー、まずそこの報告か。どうしようかね、正直言いにくいんだが・・・・・・まぁ、しゃあないか。



≪まず、隊舎は見ての通り壊滅。スタッフはけが人が多数出ています。
あと・・・・・・高町教導官の保護児童のヴィヴィオでしたか≫

「・・・・・・さらわれたのか」

「えぇ」



データは、事前に騎士カリムに頼んで、もらった。だけど・・・・・・いない。

金剛のサーチでも、該当する人間は、この空間には存在していない。



「多分、あの子達は囮ね。私達が釣られている間に、本命が気配を消して内部に潜入」



少年の怪我の応急処置をしながら、シャマル先生がそう呟く。

その声に、悔しさが見えているのは、気のせいじゃない。



「その本命が、ヴィヴィオをさらった。・・・・・・全く、我ながら情けない。
これでは高町やテスタロッサ、蒼凪にどう謝ればいいのか分からん」



・・・・・・あぁ、そういやパパって呼ばせてたんだっけ? ハラオウン執務官のフラグ立てるために。

それを聞いた時、俺とヒロは大笑いした後に、泣いたっけ。アイツ、そこまでかと。



『・・・・・・今から5分後に』



上空から、声が聞こえる。それは、さっきの短い髪の子の声。

そして、淡々と・・・・・・とんでもない事を言い放つ。



『ガジェットによる、航空爆撃を開始します』



・・・・・・はぁっ!? 待て待て、ガジェットによるって・・・・・・ここだけでも、百以上は居るだろうがっ!!



『なお、これは施設の破壊が目的です。無用な殺生は避けたいというのが、ドクターのご意志。
今のうちに、そこから避難するのであれば、してください。我々は、追撃しません』



それを聞いて、俺は呆れてしまった。言ってる事が無茶苦茶過ぎる。

そして、それを当然だと思っているのが、声から伝わった。・・・・・・なんだよ、これ。



≪・・・・・・ナメていますね。これだけやっておいて、今更逃げろとは≫

「全くだ」



てーか、逃げられないだろ。隊舎の中に居る人間だって、沢山だ。

怪我を負っている身で、5分で逃げろ? 無理、絶対無理だ。



「サリエルさん、あなたでガジェットを殲滅というのは」

「5分じゃなくて、20分は欲しいですね。てーか、俺一人では無理ですって」





やばい、5分以内で全員救出なんてのも、絶対無理。出来て、この場に居る四人だけだ。

そして、シャマル先生やザフィーラさんの協力があっても、救出は無理。

くそ、マジで読みが甘かった。もうちょっと早く到着してれば、色々と変わったってのに。



俺が色々と考えあぐねていると・・・・・・キャロちゃんが、ゆらりと前に踏み出す。

そして、そのまま歩き出して、俺の前に出た。それを止めようとして気づく。

キャロちゃんの魔力が、上がってる。それも、相当に。それだけじゃない。



『何か』を、呼び出そうとしてる。それも、とてつもないものだ。





「・・・・・・竜騎、召喚」





数メートル歩いたキャロちゃんの足元に、巨大な桃色の魔法陣が広がる。

それは、召喚の術式。ミッド式をベースとした召喚術。

現れた魔法陣、赤く染まる炎の熱と輝きにも色あせることなく、輝き続ける。




そのまま、キャロちゃんは声を上げる。





「ヴォルテール」






叫びに呼応するように、仁王立ちで現れたのは・・・・・・って、でけぇっ!!

黒くて、二本足で立ってて、なんか厳つい顔してる竜だった。

なお、体長はざっと見積もっても15メートル前後。それが、咆哮を上げる。



炎の赤と夜の闇の色が混ざり合う世界で、黒き竜は叫ぶ。

そして、腕を、六枚の黒い翼を広げる。まるで、あの子を代理しているかのように、叫ぶ。

これ・・・・・・真龍クラスっ! 確か、アルザスに少数生息している、稀少古代種の黒き火竜っ!!



おいおい、マジかよっ! 真竜クラス召喚出来る召喚師なんて、そうそう居ないぞっ!?





「・・・・・・壊さないで」





ヴォルテールと呼ばれた黒き竜の眼前に、炎の球が現れる。てーか、凄まじくデカイ。

どんどん大きくなっていくそれは、巨大生物のみが持ち得る火力。

決して、人の身では再現は不可能とさえ思ってしまう裁きの炎。



狙うは、遠方からこちらを爆撃するために迫っていたガジェットの増援。

連中は、ガチにこちらを潰すつもりらしい。遠慮なくやってきやがった。

だけど、もう無意味だ。真龍クラスの火力は、それだけで一個師団級だ。



あんなのじゃ、今のキャロちゃんは、この怒れる竜は、止まらない。





「私達の居場所を、帰る場所を、これ以上・・・・・・!」





キャロちゃんの次の言葉を合図に、こちらへ迫っていたガジェットの軍勢に向かって、力は放たれた。





「壊さないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」





放たれた赤き炎の咆哮は、闇を、空間を、その場に居たガジェットを焼き尽くす。

恐らく、魔法だろうと耐え切れないほどの熱量と衝撃。それを喰らい、次々と爆発が起きる。

夜の闇に、爆発の光という花がいくつも咲く。咲いて、俺達に伝える。



相手方からの圧倒的数による蹂躙は、もうこれで許されない。黒き火竜の前に、数は無意味だ。



究極の1に対抗しうるのは、同じく究極の1だけ。・・・・・・うし。





「・・・・・・ザフィーラさん、少年とシャマル先生と、キャロちゃんの事、よろしくお願いします」

「どうするおつもりだ」

「俺は、周辺のやつを叩きます。あのデカブツじゃ、小回りが利きませんから」

≪というより、アレでやろうとしたら、隊舎は完全に瓦解します。意味がありません≫



で、ザフィーラさんはここでみんなのガード。今ここで、それが出来るのはザフィーラさんだけだ。

少年は動けないし、キャロちゃんは召喚中。シャマル先生は攻撃能力0。これじゃあどうしようもない。



「分かった。こちらは任せてくれ。というより・・・・・・すまない」

「いいですよ、別に。だって俺、散歩中なだけですから」

「そうだったな」










あー、出来ればあんま派手な真似はしたくなかったんだが・・・・・・しゃあないか。

やっさんや六課の隊長や他のメンバーはなんか、派手にドンパチしてる様子だったし。

とりあえずアレだ。これで爆撃の危険性はだいぶ減った。あとは、けが人の救出。





関わった以上は、最後まで通す。・・・・・・んじゃま、行きますか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



”ティア、絶対まずいよっ! このままじゃ、なのはさん達にっ!!”

”分かってるっ!!”

”一人だけでも抜けられれば・・・・・・。ティア、幻影でどうにか出来ない?”

”無理です。私一人じゃ、タイミングを計れない”





そこそこ広い通路の空間内に、いくつも空の道が出来る。それらが、ぶつかり合う。

そこを狙って、射撃が飛んで来る。私は、それを何とか撃ち落とし・・・・・・って、ラチがあかない。

幻影は魔力をかなり喰う。それで失敗したら、本気で立ち行か無くなる。



その上、一人は二人がかりでもギリギリだし・・・・・・どうすりゃあいいのよ、これ。





「・・・・・・往生際が悪いんだよ、タイプゼロがっ!!」




その子が、右足で蹴りを放つ。スバルは、カートリッジを2発ロードして、そのまま殴る。

薄暗い通路の中で、蹴りと拳がぶつかって、せめぎ合う。



「タイプゼロじゃ・・・・・・ないっ! 私はスバルで、ギン姉はギン姉だっ!!」

「ばーかっ! アタシら戦闘機人は、戦うのが仕事なんだよっ!!
その存在意義を・・・・・・!!」



・・・・・・やばい、スバルがすごい圧されてる。いや、圧倒されてる。



「守れない奴になんざ、生きてる価値はねぇんだよっ!!」



そして、蹴りは拳を、スバルを吹き飛ばした。スバルはそのまま、地面に叩きつけられて転がる。



「スバルっ!!」



ギンガさんが叫びつつも、2Pカラーに突っ込んでいく。そこを狙って、2Pカラーが左腕を構える。

構えて、6つの黄色い光弾を放つ。ギンガさんは前面に、シールドを展開。



「トライシールドッ!!」





だけど、その三角形の紫色のシールドは、撃ち抜かれた。

咄嗟にギンガさんは両腕で、自分の身体をガードをする。

左の二の腕や右側頭部、太ももに胴を掠り、ギンガさんが怯む。



その間に、2Pカラーがギンガさんに突っ込み・・・・・・両足を引いた。

どうやら、ドロップキックをかますらしい。ギンガさんが回避するタイミングは、無い。

私もフォロー・・・・・・だめ。普通に射撃戦やってたから、間に合わない。



そう、だからだ。





≪Stinger Ray≫

「スナイプショット」






青い光の光弾が、あの子の背中を貫いたのは。





「が・・・・・・」





そのまま、その子は地面に叩きつけられる。

ギンガさんの脇を抜ける形になったので、ギンガさんは無事。

その突然の攻撃に、みんな呆然となる。呆然となって、気づく。



私がこの魔法を知っている事を。そして、これを使う奴がここに居ない事を。





「・・・・・・さぁ」





だけど、それでも・・・・・・ソイツの声がした。



それは、私達の目指すべき進行方向から来た。後ろには、見慣れた顔が二つ。





「お前の罪を、数えろ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「お前の罪を、数えろ」





それから・・・・・・全速力で走る。そうして突っ込むのは、光と衝撃で支配する世界。

スバルとギンガさんが、なんか2Pカラーみたいなのとガチにやり合ってた。

で、ティアはティアで、赤髪アップの奴と射撃戦闘。もう派手にどんぱちだよ。



なので、僕は早速飛び込む。・・・・・・やるべき事は、それほど多くない。





「・・・・・・鉄輝」



打ち上がるのは、青い刃。それを、抜き放つ構えのまま、赤髪アップに飛び込む。

そいつは僕に気づくと、こちらに盾・・・・・・いや、大砲の先を向ける。



「一閃っ!!」



この距離なら外さないとか思ったんでしょ。てーか、僕を弾丸が取り囲む。

・・・・・・いや、取り囲もうとした。僕はもう、そこには居ない。弾丸は、空虚な空間を囲むだけ。



「・・・・・・はいっ!?」





赤髪アップが、素っ頓狂な声を上げる。・・・・・・経験が足りないね。

抜刀の姿勢を取って突っ込んだからって、そのまま斬るとは、限らないでしょっ!!

とりあえず、これでやりたい事の一つはクリア。まず、相手の脇を突っ切る事。



後は・・・・・・すぐにクリア出来る。





「バーカッ!!」





そう言い放つと、赤髪アップが『ムキー!!』と怒り出した。

怒り出して僕に、盾・・・・・・いや、盾兼用のキャノンの銃口を向けて来る。

その瞬間に、右手でカードを5枚。投げつける。それを見て、赤髪アップが弾丸を発射。



弾丸は的確に、カードを撃ち抜くために、直進する。でも、その前に効果発動。

カードから、青い雷撃がバチバチと迸り、空間を埋め尽くした。なお、僕の魔力変換です。

その雷撃に触れ、カードの枚数より少し多かった弾丸が全て爆発する。でも、それだけじゃない。



爆煙を突き破るように、青い魔力に包まれた飛針が飛んで来る。赤髪アップは、それを盾で防ぐ。

飛針は、盾で防がれた。・・・・・・まぁ、ここは予想してた。だけど、これでもう弾丸で包囲なんて、出来ない。

だって、カードと飛針を投げた後に、その上から放物線上に僕が投げ込んだスタングレネードがあるもの。



それに、赤髪アップが気づいて盾の先を向けるけど、もう遅い。スタングレネードは、爆発した。

空間を、雷撃よりも濃い光が埋め尽くす。あ、僕は目を閉じてるからオーケー。

で、そんな中で2Pカラーが起き上がって、僕に突っ込んでくる。なお、すっごい怒ってます。



ダメだねぇ。アレは、カルシウム足りてないね。牛乳飲みなさい。あと煮干を食べなさい、煮干を。





「てめぇ、なんでここに居やがるっ!!」



目を閉じていても、気配で分かる。てーか、声まで出してくれてるから丸わかり。

なので、走りながら魔法を発動。僕は、左手を2Pカラーにかざす。



「バカっ! アタシも射撃は得意なん」



ゴスッ!!



≪・・・・・・あなた、性格悪いでしょ≫

「うっさい」





なんて言うから・・・・・・突然発生した壁に顔面から突っ込むのである。

なお、ブレイクハウトで壁を突然に発生させた。左腕を上げたのは、ポーズ。

こっちのデータを知ってるが故に、判断間違いをした。魔法は、手から撃つって決まってないのよ?



で、僕はその脇を抜けて、ティアのところへ一直線である。いやぁ、楽だねぇ。

・・・・・・楽じゃないか。2Pカラーが、僕が来たところで壁を砕いた。で、脇を走る僕を狙う。

左手を向け、ギンガさんを攻撃したのと同じ光線を撃とうとしてる。だから僕は・・・・・・動く。



身体を急ターンさせ、身体を捻りながら左手に向かって、外側から右足で後ろ回し蹴り。

弾丸は、僕から逸れて有らぬ方向へ飛んだ。そうして、2Pカラーのサイドを取る。

左手で鋼糸を出す。それを2Pカラーの首に巻きつけて、魔法発動。



鋼糸というのは、金属である。なので、思いっきり高圧電流を流してやった。

2Pカラーの身体が震えている間に、僕は鋼糸を伸ばしつつ後方へ大きく跳ぶ。

跳んで、手首を動かし、鋼糸を外して回収。180度回転して、再びゴー。




スタングレネードの閃光が晴れる中を僕は一気に踏み込む。・・・・・・DTB、見ててよかったなぁ。

おかげで、こんな真似が出来るようになったさ。あぁ、ありがとうボンズさん。

とにかく、ティアのところに滑り込むように到着。あと、行くついでにスタングレネードを軽くぶん投げる。



なお、信管は抜いてないので、爆発しない。すると、ティアの腹部にポコっと当たった。



そうすると、なぜだろう。とっても怒った顔で僕を見るのだ。





「アンタ、いきなり何すんのよっ!!」

「普通に幻影かどうか確かめたのっ!!」

「あ、そう・・・・・・って、いやいやっ! なんでここに居るわけっ!? てーか、知恵熱出してたんじゃっ!!」





ティアの言葉に答えずに、僕はティアに左手をかざす。そして、発動。



瞬間的にティアの足元にベルカ式の魔法陣が発動して、ティアはそこから姿を消した。





「・・・・・・うし、これで二つ目クリア。もう、僕達の勝ちだ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・あれ、なにこれ。てーか、転送されたっ!?





アイツ、マジでなにやってんのよっ! てーか、ここは・・・・・・あ、すぐ近くだ。というか、後ろの方。










「ティアっ!!」



その声に振り向くと、すぐ近くになのはさんとフェイトさんが居た。

・・・・・・もう一度、アイツの方を見る。アイツは、勝ち誇ったような顔をしてた。



「なるほど、そういうことですか」

「分かった?」

「えぇ」



だから、私はジャケットに腕を入れて、取り出す。

金色に光る、閃光の戦斧を。フェイトさんの大切なパートナーを。



「ありがと」



言いながら、フェイトさんはデバイスを受け取る。そして、強く握り締めた。



「でも、ティア凄いね。ヤスフミの考えたこと、一瞬で分かるなんて」

「まぁ・・・・・・私、フェイトさんのライバルっぽいですから」



軽く、そんな事を言った。そして、フェイトさんが目を見開いて、私を真っ直ぐに見る。

一瞬。本当に一瞬だけ視線がぶつかる。そして、二人揃って笑う。



「ティア」

「はい」

「私、負けないよ? 今までダメだった分、沢山頑張るって決めたんだから」

「私だって、負けません。選ぶのはアイツですけど、それでも」





・・・・・・あー、私とフェイトさんのアレコレは、とりあえずいいか。

ようするに、アイツは私に隊長達のデバイスを届けて欲しかったのよ。

だから、近距離転送でこっちに跳ばした。隊長達が待機していた場所に。



そうすれば、隊長達は戦えるようになるし、確実に詰める。





「それですみません、レイジングハートはスバルが持ってて」



なのはさんにそう言うと、明らかな落胆の表情が見える。

・・・・・・仕方ないか。さすがに一人で集中して持つのは、危なかったし。



「そっか・・・・・・。なら、レヴァンティンやヴィンデルシャフトは?」

「そっちは、ギンガさんが。あ、八神部隊長のも同じくです」



そして、私は向き直る。・・・・・・全く、あのバカは。事前説明くらいしなさいよ。

まぁいいわ。あとで徹底的に事後説明してもらうんだし。



「分かった。ティア、ありがと。・・・・・・行くよ、バルディッシュ」

≪Yes Sir≫

「セットアップッ!!」










・・・・・・私達三人だけじゃ、あの二人は倒せなかった。

一応幻影で撤退もやろうと思ったけど、私一人だとそれも無理。

なので、逃げずに正面突破を試みてたんだけど、形勢は変わった。





もう、これで詰みだ。最悪でも、撤退に持っていける。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「てめぇら・・・・・・! チンク姉はどうしたっ!!」





僕からの電撃のダメージを、いらだち混じりに振り払いながらも、2Pカラーがそう言ってきた。



・・・・・・結構高めの電圧を流したのに。気絶すらしないって、どういうことっすか。



でも、チンクはまぁ・・・・・・あんな感じだから気づかなかったけど、大胆な服装。





「そうっスよっ! フェイトお嬢様がここに居るはずないっスっ!!」

≪あなた方、バカですか?≫



ティアは、バルディッシュを持ってたのか。だから、フェイトがこの場に加わった。

二人は、僕達に挟まれる形になって、右往左往してる。



「僕達がここに居るってことは、答えはひとつでしょ。
でもチンクって・・・・・・あぁ、あの子? ・・・・・・壊したよ」



そう言うと、2Pカラーの方の瞳に、とても強い感情が宿った。



「なん、だと」

「だから、壊した。うん、かなり徹底的にね。もう苦しみすらも感じてないよ。
というか、僕の目の前でいっぱい啼いてた」



あれ、色々と誤字があるような・・・・・・ま、いいか。音声なんだから、問題ない。



「いやぁ、いい表情してたよね。見てて思わず微笑ましくなったよ。
銀色の髪に綺麗な瞳。そして、すべらかな肌。とっても綺麗な子だよね」



なお、誉めています。普通に、外見を誉めているのよ?



≪もう、あなた方が知っているチンクという女性は、存在していません。残念でしたね≫

「でも、大丈夫だよ。大事に僕が可愛がって、遊んであげたから」



いや、むしろ前半は僕が可愛がられてたけどねっ!!



≪たっぷり可愛がってあげましたよね≫

「うん、可愛がってあげた」






まぁ、友達になるとかだったら、一緒に遊びに行く事もあるかも知れないよね。

あと、海鳴では戦う事を『可愛がり』って表現するのよ。多分ね?

あれ? そうすると『あげた』って言い方は失敗だなぁ。いやぁ、だめだめ。



日本語って難しいよねぇ。表現が多様で、たまに間違って使っちゃうよ。





「チンク・・・・・・姉」



・・・・・・瞳に宿った感情は、怒り。もちろん、対象は僕。まぁ、嘘は言ってないでしょ。うん、言ってないよ?

なんだか、憑き物が落ちたような顔してたし、あの子達が知ってる形じゃないでしょ。



「・・・・・・・・・・・・うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



2Pカラーが、僕に突っ込んでくる。てーか、ウィングロード使ってるし。

ガチで2Pカラーですか。またビックリだね。



「・・・・・また真っ正直だね」



僕は、また構える。それを見て、2Pカラーは速度を上げる。

・・・・・・バカだね。色々忘れてるでしょ。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



フェイトが、突っ込んでその子に向かって、バルディッシュを振り下ろす。

カートリッジをロードして、鎌にして、その刃で腹を刈り取ろうとする。



「ノーヴェッ!!」





赤髪アップがフォローに回ろうとする。だけど、無意味。ティアは、もう動いていた。

オレンジ色の弾丸が、数発襲って来たから。赤髪アップは、それを同じように弾丸を発射して、撃ち抜く。

・・・・・・その間に2Pカラーは、咄嗟に防いだ。髪と同じ色の障壁を張って、鎌の切っ先を止めた。



火花を散らしながら、赤の障壁を突き破るために、金色の鎌の切っ先が鋭く襲いかかる。





「てめぇ・・・・・・邪魔すんなっ! ドクターが居なきゃ、お前は生まれなかっただろうがっ!!」



いきなり、そんな話をし出した。・・・・・・瞳には、嘲りの色が見える。

つまり、フェイトがこれで動揺して、隙を作るのを狙っている。



「つまりお前は、アタシらと同類・・・・・・いや、それ以下の、成り損ないの屑だっ!!」



そんなことを言う。怒りと、嘲りが混じった言葉が、フェイトにぶつけられる。

それに対してフェイトは、こう言い放つ。鼻で笑いながら、遠慮なくである。



「そうだねっ!!」



だけど、通用しない。だって、フェイトはもう受け入れてるから。

アリシアになれなかった自分も、全部認めて、未来に持っていこうとしてる。



「でも、あなたやチンクみたいな弱虫よりは、ずっとマシだよっ!!」



そこから感じるのは、怒りじゃない。挑発に挑発で返して、潰そうとしてる。



≪フェイトさん、変わりましたね≫

「そ、そうだね」

「愛は、人を強くします。当然ですよ」



前だったら、多分キレてたはずなのに。今は、凄く冷静だ。

冷静に、2Pカラーの言葉に返してる。だから、逆に2Pカラーがキレる。



「なんだとっ!!」





多分、伝わったんでしょ。自分の言葉が、全く相手にされてないことに。

いや、それだけじゃない。チンクの事まで出されたから、余計にだ。

てーか、あんな挑発どこで覚えたの? 僕は教えた覚えないし。



・・・・・・2Pカラーの障壁が、ひび割れていく。鎌の鋭い切っ先が、立ちはだかる障害を貫く。





「私は、出来損ないで、アリシアの成り損ないで・・・・・・!!」





障壁は、粉々に砕けた。2Pカラーの目論見も、同じように砕けた。



・・・・・・甘いよ。フェイトは、お前らや僕より、ずっと強い。ずっと、強いんだから。





「だけど、それでいいっ! それが全部」





鋭く、金色の鎌の刃が2Pカラーに迫る。



それに、2Pカラーは驚いたような顔をする。



そこで切り返されるとは、本気で思ってなかったらしい。





「私なんだっ!!」





咄嗟に2Pカラーは両腕で鎌の切っ先をガードする。



だけど、それだけ。ギンガさん達のナックルに似たそれを、金色の刃は易々と貫く。





「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





フェイトが鎌を振りぬくと、2Pカラーはそのまま吹き飛ばされる。

腕に装備していたガントレットが砕け、スーツが破ける。そのまま壁に・・・・・・いや。

受身を取って、赤髪の子と合流した。フェイトは、僕の隣に降り立つ。



腕は、動かない。表情をしかめながら、フェイトを睨みつける。

ティアナとギンガさんにスバルも前に出て、二人を包囲。

・・・・・・戦力差は歴然だ。だけど、油断するな。



相手はこっち対策を整えまくってる。どんな札を出してくるか、分かったもんじゃない。



場合によっては、とールガンで・・・・・・いやいや、ダメだから。これじゃあ前回と同じだし。





「く・・・・・・お前ら、よくもっ! よくもチンク姉をっ!!」

「バカじゃないの? ・・・・・・てめぇが喧嘩吹っかけてきたんだろうが」



大体、勘違いをしてるので、鼻で笑ってやる。そして、言葉を続ける。



「お前、自」



瞬間、水色の髪の女の子が壁から出てきた。

そして、目の前の二人を掴んで、そのまま地面へドンブラ粉。



「分が・・・・・・え?」



そして、場が静まり返った。というか、消えた。もっと言うと、逃げられた。

僕は思わず、フェイトの方を見る。そして、フェイトも僕を見る。で、苦笑いしてた。



「・・・・・・人の話の途中に、逃げるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

≪最近の若い連中にありがちな行動ですね。全く、この調子でミッドの未来は大丈夫なんですか?≫

『あははは・・・・・・』



あぁ、もういい。今度会った時にめっためったにしばいてやるから。

とにかく、一つ気になる事があるので、そこを聞こう。



「・・・・・・そう言えばフェイト」

「なに?」

「あんな挑発返し、どこで覚えたのよ。僕、てっきり激昂するかと思ってたのに」



僕の言葉に、フェイトはニッコリと笑顔で答えた。



「もちろん、ヤスフミの真似」

「そうなの?」

「うん。・・・・・・というか、激昂すると思ったなんて、ちょっと酷いよ?」



フェイトは、少し膨れたような顔をする。それから、またいつものように優しく笑う。



「新しい私は、全部含めて私だって、認められるの。あんな言葉じゃ、潰れない。
それで、大事な彼氏を悲しませたりなんて、しない。だから・・・・・・大丈夫だよ?」

「・・・・・・そっか」

「でも、不思議だよね。あぁやって返したら、全然平気なんだ。というか・・・・・・えっと、ダメだったかな」



はぁっ!? なにさいきなりっ!!



「自分では、かなり再現率が高いと思うんだけど」

『やっぱり・・・・・・』

「いやいや、やっぱりってなにっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「セイン、離せっ! チンク姉が・・・・・・チンク姉がっ!!」

「バカっ!!」



全く・・・・・・この子はマジでチンク姉好き過ぎでしょうが。私は呼び捨てのくせにさ。

とにかく、このまま離脱だ。トーレ姉やセッテ、他の子達も撤退してるようだし。



「バカってなんだよっ!!」

「チンク姉は、捕縛こそされたけど無事ってことっ! アンタ、挑発に乗ってそんな怪我したんだよっ!?」



ディープダイバーで潜りながらそう言うと、ようやっと納得してくれた。

ポカーンとした顔から、すぐに怒りの表情が戻ってくる。・・・・・・忙しい子だね。



「あのチビ・・・・・・!!」

「私ら、負けたっスか」

「そうだね、負けたよ」





いや、戦略という大きな視点で見れば、勝ってる。中央本部は陥落したから。

もちろん、六課隊舎に居る最重要捕獲対象も、しっかりと確保した。

この子達やチンク姉が、六課メンバーを足止めしてくれたおかげで、無事にだよ。



こういう言い方をすると、きっとノーヴェが怒るだろうから、心の中だけで思っておく。

ぶっちゃけ、チンク姉が捕まっただけでは、私らの勝利は揺るがない。

このターンでは、私らは勝った。そして、六課は・・・・・・管理局は負けた。



まぁ、あれだよ。局地的な戦術レベルの戦いの勝利一つ二つじゃ、戦略レベルの敗北は覆らないってことだね。





「・・・・・・少なくとも、あの場とチンク姉は、アイツらに負けた。そこは間違いのない事実」

「んなの関係ねぇっ! てーかセイン、お前なんでチンク姉助けなかったんだっ!?」

「一応助けようとしたよ? だけど、おっかないおばさん達が居て、無理だったの」





サンプルH関連の・・・・・・クロスフォード財団の分家の娘でもあるあのおばさん。

あの小さい子と同じように、壁の中に潜っていた私の気配に、しっかり気づいたし。

いや、それだけじゃない。こちらに視線を向けて、ニッコリと笑ってきた。



そして、視線で言ってた。『やるならやってもいいけど、潰すよ?』・・・・・・と。



全く、サンプルH関連は、みんなあんな感じなの? あれはありえないでしょ。





「・・・・・・許さねぇ」



右腕で抱えたノーヴェが、小さくそう呟く。



「あのチビも、アタシらを弱虫呼ばわりした金髪女も、アイツら全員許さねぇ。
アタシらの存在意義を、生まれを、チンク姉を、バカにしたような目をしやがって・・・・・・!!」










・・・・・・あー、やっぱこの子にドクターの真意を話すのは躊躇うな。間違いなくキレるって。





ね、チンク姉。答えは・・・・・・見つかった? いや、見つかったよね。そこだけは分かるよ。





だってチンク姉。ちょっと見てみたら、捕まってるはずなのになんだか、穏やかな顔をしてたもの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・すみません、遅れました」

「ううん、大丈夫だよ。私達も対策が甘かったから」



なのははレイジングハートを、やっと受け取る。・・・・・・長かったね。



「これで魔王の復活だよ」

≪ここからワルキューレの騎行に乗って、蹂躙が始まるんですね。分かります≫

「始まらないよっ! というか、私は魔王じゃないもんっ!!」



それで、僕はレヴァンティンとヴィンデルシャフトにはやての剣十字を預かる。

ギンガさんが、大事に持っててくれた。・・・・・・まぁ、色々手遅れだろうけどさ。



「ギンガさん、ありがと」

「ううん」

「・・・・・・で、アンタはどうしてここに居るのよ」



ティアがそう言うと、ギンガさんとスバルがハッとした顔になった。

で、当然のように詰問が始まる。



「そ、そうだよっ! なぎ君、入院したんじゃ」

「でも、恭文はここに居て・・・・・・あの、どうなってるのっ!?」

「あ、あれ嘘」

『はぁっ!?』



時間も無いので、簡潔に説明した。僕が変装して、会場の中に入り込んでいた事を。

で、武装も持ち込んだから、途中の襲撃にも対応できたし、フェイト達も無事だと。



「別人にしておかないと、六課に迷惑かかっちゃうしね。色々考慮したのよ」

「・・・・・・呆れた。まぁ、結果オーライだったからいいんだけど」



そうそう、結果オーライだったからいいのよ?



”ね、恭文。もしかして、今日私達が会ったシスター・シオンが、恭文だったの?”

”そうだよ。シオンに頼んで、キャラチェンジしてもらってたの”

”・・・・・・なにそれ”

”後で説明する。とりあえず、今は現状の対処だよ”



さすがに時間がないからなぁ。じっくりお話も出来ないのよ。



「で、アンタが交戦したって言うそのチンクって子は、実際どうなってんのよ?」

「今、シャッハさんとシスターその2が見てくれてる。大丈夫」

「そう。つまり・・・・・・散々フカシこいて、挑発しまくったと」

「そうだよ」



とにかく、これからの事だ。まだ、中に入り込んだガジェットは居る。

あとは・・・・・・戦闘機人だね。



「なのは、そっちはどうなってる?」

「今、確認したんだけど、こっちに襲って来てる戦闘機人達は、大方撤退を始めてるみたい。
あ、隊舎の方も同じくだね。今、シャマルさんから緊急メッセージが来た」



航空戦力を相手にしていた二人や、隊舎を襲ったのも、下がったらしい。

引き際は心得ているようだ。中々に手堅い戦いをする。



「それとフェイトちゃん、隊舎のエリオとキャロ、怪我はしてるけど無事だって。
ほら、さっき話に出てたサリエルさん。救援が、間に合ったみたいなの」

「ほんとにっ!? ・・・・・・よかった」



あー、お願いだから泣かないで? ほら、ハンカチで拭いてあげるから。

・・・・・・心配してないわけ、ないよね。うん、分かってた。ということは・・・・・・か。



「とにかく横馬、そうやって賊の主力が引いてるってことは」

「・・・・・・多分、これ以上は戦闘も、捕縛するのも無理だね。
さっきのドンブラ粉の子も、だから二人を助けたんだろうし」

≪なら、私達のやる事は、現状中央本部に残っている、残存勢力の鎮圧です≫



戦闘機人が引いても、連中が残した相当数のガジェットは、残ってる。

そう考えると・・・・・・だめだね。普通にチンク達の相手だけで終始しちゃってる。



≪あと、武装していない方々も襲われているでしょうし≫

「そっちの避難誘導もしなきゃいけないわよね。・・・・・・まだ、終わってないか」





というか、もうそれくらいしか出来ないんだけどさ。てーか、これだけ数が揃っててこれとは・・・・・・。

やばい、今回は大負けだ。確かにこの場で狙われてるとされる前線メンバーに、被害は出なかった。

だけど、そんな戦術レベルの勝利じゃ、この状況では焼け石に水。・・・・・・ちくしょお、マジで悔しい。



帰る家は壊されるし、結局襲撃に対して有効手は打ててない。

あれだけ事前対策整えても、足りなかった。僕達が立てた対策は、あくまでも『戦術』。

この場で必要とされていたのは、きっと『戦略』。もっと規模が大きい要素。



戦術が六課の部隊員を守るのには有効だったとしても、それだけじゃ勝てない。

まぁ、1部隊に出来る事なんて、たかが知れてるとは思う。いや、知れてていいんだ。

六課だけで管理局全体の戦略なんて、決めていいわけがない。そんなの、ダメだもの。



だけど、それでも・・・・・・自分達の帰る場所すら守れなかったのは、大失敗だよ。



・・・・・・とりあえず、フェイトを見る。フェイトは視線を受け止めて、見つめてくる。そして、頷き合った。





「なのは、こっちは私が指揮を取って、ヤスフミとスバル達で対処する」

「え?」

「だからなのはは、遅いかも知れないけど、今すぐ隊舎の方に向かって」



なのはは、一応でもヴィヴィオの『ママ』。だから・・・・・・約束は守らせたい。



「僕達は大丈夫だから、すぐに向かって」



フェイトと僕に言われて、なのはは・・・・・・首を横に振った。



「なのは、お願いだからそうして? ヴィヴィオと、約束したんだよね」



それでも、なのはは首を横に振る。先ほどと同じように、否定を意味する返事をする。

スバルやティア、ギンガさんも僕達と同じような視線を向けてるけど、それでも。



「気持ちはありがたいけど、それは出来ないよ。なにより、向こうにはサリエルさんが居る。
だから、いい。私は・・・・・・ここに残る。というよりね」



・・・・・・なにさ。てーか、またそんな泣きそうな顔をするな。



「約束、破ったみたいなんだ」





それだけで、僕とフェイト、そして肩で休んでいたシオンは、言いたい事が分かった。

壊され、奪われ・・・・・・あぁもう、今日は本当に嫌な日だよ。

まぁ、あんまり外に言うのはやめとこう。きっと、それを痛感しまくってるのが居るから。



そうだ、僕にはこんな事言う権利無い。自分の手の届く範囲だけ守るって、決めてるんだから。



きっとコレを言う権利があるのは・・・・・・狸みたいに、中から組織を変えようとしている人間だけだよ。





「・・・・・・なのは」

「大丈夫。うん、大丈夫だよ。てゆうか、私バカだ。うん、きっと・・・・・・バカだ」



・・・・・・今なのはを向かわせても、辛い思いさせるだけだ。そんなの、得策じゃない。

んじゃ、全員揃ってうまく負けるために、頑張るとしますか。全然楽しくないけど。



「それじゃあ、これから私とヤスフミは一旦会議場に向かう。はやて達に、デバイスを渡さないと」



一応、はやてからのお達しを守ってくれるらしい。まぁ、僕を守るためでもあるんだろうけど。



「なら、私とギンガとスバルとティアは、今言った通りに動くよ。
・・・・・・みんな、色々あるだろうけど、もう一頑張り。いけるよね?」

『はいっ!!』










・・・・・・そして、1時間後。ようやく全てのガジェットは撃墜され、事態は終息した。

だけど、たったそれだけ。そう、たったそれだけなのだ。

負けた事も変わらないし、奪われたものがあることも変わらない。そう、何も変わらない。





だけど、何も変わらないから・・・・・・僕達は、立ち上がれる。まだ、終わってないんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・はやて」





中央本部は、見事に陥落。うちらの隊舎も、壊された。

ようやっと繋がった通信で、ヒロリスさんから聞いた。

てーか、あの人はなんで・・・・・・あぁ、ここはえぇ。



結果的には助けてもらったわけやし、あんま言うのはやめとこうか。





「予言は、覆らなかった」





戦術レベルでの勝利はあった。そやけど、戦略では完全に負けた。

隊長達は襲撃を受け、その隊長達のデバイスを持っとったスバル達も同じく。

そやけど、それすらも全部足止め。本命は・・・・・・隊舎や。



うちらがその対処に手間取っとる間に、隊舎は陥落。ヴィヴィオがさらわれたらしい。

シャマルによると、死者は出てないようやけど、それでもけが人多数。・・・・・・なんや、これ。

何にも奪わせない、完全勝利目指しておいて、結局このざまや。マジで対策が甘かった。



帰る家と、鍵を奪われた。うちらは、管理局は、スカリエッティに負けた。





「そやけど、まだや」



まだ、終わっとらん。今日は、犯行声明も無くとっとと撤退したテロリストの勝利に終わった。

そやけど、まだチャンスはある。いいや、無くてもこの手で捻り出したる。



「まだ、うちらは・・・・・・機動六課は、終わっとらん」










・・・・・・マジで悔しい。悔しくて悔しくて、泣き喚きたい気分や。





そやけど、それはまだや。あの陰険ドクターぶちのめして、それから思いっきり喚いたる。




















(第27話へ続く)




















あとがき



恭文「というわけで、2クール目最後ですよ。なお、次回からOPテーマが変わる勢いでいきます。あれですよ、absのアテナが似合う感じでいきますよ」

あむ「あ、あの曲いいよねー。あたしも好き。・・・・・・というわけで、やってきました雑談コーナー。本日のお相手は日奈森あむと」

なぎひこ「またまた呼ばれて嫌な予感しかしない藤咲なぎひこと」

恭文「大丈夫、今回は普通にめでたい話だからと、フォローしてみる蒼凪恭文です」

なぎひこ「ホントに? 正直、僕は疑わしく思ってるんだけど」





(新Jは、なんだか疑い深くなっているようだ。返事がない、ただの屍のようだ)





なぎひこ「いやいや、後半のナレーションはおかしいよねっ!? ・・・・・・で、今回は何の用?」

恭文「説明しよう。作者は勢い混じりに、しゅごキャラクロスを44話とかまで書いた。で、ミッドチルダX編に突入した」

なぎひこ「あ、そうなんだ」

あむ「ただ、超・電王編はもうちょっと修正必要だから、出すまでには時間かかるらしいけどね。それで、マジで『なぎひこ×なのは』なお話、書いたらしいよ?」

なぎひこ「はぁっ!?」





(まぁ、1エピソード、仲良くなる感じのお話ですよ)





恭文「あれだよ、いかがわしい話とかじゃなくて、普通に二人の共通点とかそういうのについて話すエピソードだよ」

なぎひこ「僕となのはさんの共通点って・・・・・・」

恭文「まぁ、アレだよ。『とぶ』ということについてだね。で、もしかしたらこのエピソードの関係で、なぎひこのしゅごキャラが産まれるの、かなり早くなるかも」





(なお、てまりではありません)





なぎひこ「そうなのっ!?」

あむ「なんか、書いてるうちにそうなる要素が増えたらしいよ? なぎひこ、よかったね」

なぎひこ「いや、それ・・・・・・いいのかな。と、とにかく分かった。というか、強引とかじゃなくて普通に真面目な話なんでしょ?」

恭文「うん。むしろ、プラトニックな感じだよ? そんな、正面衝突でなぎひこがなのはの胸を鷲掴みにしたとかじゃないし」

なぎひこ「恭文君、それは君の話だよね?」

恭文「・・・・・・そうとも言う」

あむ「あぁ、あのメガーヌさんって人でしょ? だけど、アンタも」

恭文「あむ、何も言わないで。普通になにも言わないで」





(青い古き鉄、居心地が悪くなったので、話を変えようとした)





恭文「でもさ、なのはとなぎひこってなんか絡めやすいのよ。『とぶ』関連の話もそうだけどさ」

あむ「共通点もあるし、なぎひこだとどっかの司書長さんと違ってやりやすいとかって、言ってたよね」

なぎひこ「・・・・・・い、いいのかな。なんというか、いろんな意味で僕は怖いんだけど」

恭文「大丈夫だよ。恭也さんは僕と奥さんでなんとか抑えてるし、普通に斬り合いには発展しないよ」

なぎひこ「そういう意味じゃないよっ!? あと、斬り合いじゃなくて僕が一方的に斬られるだけだよねっ!!」

恭文「なぎひこ、分かってないね。男は誰だってこころにナイフを持っているのよ?
そうして、触るものをみな傷つけるんだよ。それを使えば、どんな強敵とだって渡り合えるよ」

なぎひこ「渡り合えないよっ! というか、そんな80年代とか90年代の歌の歌詞みたいな話をされても、困るんだけどっ!!」





(ちっちゃな頃から悪ガキでー♪)





あむ「とにかく、次回からいよいよ最終・・・・・・決戦?」

恭文「サウンドステージの話も挟むから、ちょこっとだけ間は開くけど、一応そう」

なぎひこ「なんだか、ドキドキだね」

恭文「まぁ、だいぶミッション話と被るとこあるけどね。そっちの方も、Remixですよ」

なぎひこ「でも、恭文君が六課に居るというスタンスは変わらないんでしょ?」

恭文「そうだね。ほら、僕六課と本気で関わるって決めたし。ここでさよならは基本ないよ」

あむ「まぁ、テレビ通りなら六課が動けないとかでもないしね。・・・・・・とにかく、本日はここまで。
次回からの最終決戦にご期待ください。お相手は、日奈森あむと」

恭文「蒼凪恭文と」

なぎひこ「藤咲なぎひこでした。だけど、やっぱり楽しみだな」

恭文「なのはとのエピソード?」

なぎひこ「ま、まぁそっちもだけど、違うって。最終決戦の方だよ」

あむ「あ、一応そこは楽しみなんだね」










(それはそうだろう。ここで強く拒絶などしたら、絶対あの人は泣く。
本日のED:abingdon boys school『HOWLING』)




















恭文「・・・・・・ほい。デバイス、確かに渡したからね」

シグナム「蒼凪、助かる。テスタロッサも、わざわざすまなかったな」

フェイト「いえ。でも、シグナム、あとはやても・・・・・・レヴァンティンやシュベルトクロイツの方にも、特に緊急連絡ってなかったんだよね」

はやて「そうや。アルトアイゼンやレイジングハートに、バルディッシュも同じくなんやろ?」

フェイト「というか、スバル達にも確認したら、マッハキャリバーやクロスミラージュもなんだよ。
おかしいなぁ。こういう時には、各自のデバイスにも緊急連絡が入るようになってるのに」

恭文「確か、隊舎側から操作だったよね? グリフィスさんやシャーリーがミスるとは思えないし・・・・・・うーん」

シグナム「とにかく、そこを気にしても仕方あるまい。今は、目の前の事だ」

フェイト「確かにそうですね。隊舎の方は、一応は大丈夫のようですし」

シグナム「主はやて、私はテスタロッサ達とともに、残存勢力の排除に向かおうと思うのですが、よろしいでしょうか」

はやて「そやな。こっちはカリムも居るし、問題ない。シグナム、しっかり頼むな」

シグナム「はい、おまかせください」

フェイト「なら、私達もだね。ヤスフミ、もう一頑張りだよ」

恭文「うん。・・・・・・連中、ただじゃすまさない。この借りは、絶対返してやる」










(おしまい)




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あきゅろす。
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