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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第24話 『その日、機動六課? 祭りの始まり編』



「うぉうっ!!」

「はやて、どうしたの?」

「いや、なんか・・・・・・めっちゃ寒気を感じてもうた。それはもうすごいレベルでや」





・・・・・・あぁ、なんだかすごい事になってるよ。というか、完全にギンガとティア達が引いてるし。



逆に、ヤスフミやシスター・シャッハにシグナムは楽しそうなんだよね。うぅ、アレは大丈夫なのかな。



それで、リインはまた冷静にサードモードの調整を・・・・・・あれは、慣れてるんだよね。うん、分かってた。





「・・・・・・ちょお気になって、モニター開いて見たらこれとは。あぁもう、そうやな。三人揃うたらこうなるわな」

「ミッド剣友会のメンバーの大半が揃ってるしね。これでフェイトちゃんを入れたら、さらに凄いんじゃ」

「わ、私は普通だよっ!? こんな無茶はしないものっ!!」



・・・・・・その、はず。そうだよ、ちゃんとみんなが無茶したら止めてるし、大丈夫。私は普通だよ。



「まぁアレや、みんなレベルアップしてるし、えぇ経験には・・・・・・ならんな。
こりゃあかんな。ひょっとしたら、新しいトラウマ残るかも知れん」

「だ、大丈夫だよ。・・・・・・多分。あ、それでいい経験と言えば、私も六課でいい経験させてもらってるよ?」

「そーか?」



なのはは嬉しそうに頷く。・・・・・・私は、少しあいまいに笑うだけに留めた。

ただ、いい経験というか、きっかけにはなってる。自分の事、しっかりと見つめ直すことは出来てるから。



「でも、あの空港火災から、もう4年半なんだよね。ね、はやてちゃんのあの日の夢は、ちゃんと叶っていってる?」

「うーん、どーかなぁ。夢ってゆーたら綺麗やけど、中身はようするに自分のワガママやからなぁ」



コーヒーカップを持ちながら、少しはやてが視線を落とす。落としながら、言葉を続ける。



「憧れてるだけならまだえぇけど、本気で動き始めたら、キレイ事だけや真っ直ぐさだけじゃ、どーにもならん事の方が多いもん」



言いながら、ゆっくりとコーヒーを飲む。私も、同じく。

コーヒーの苦さが現実の苦さと被ってきて、少し・・・・・・胸が痛む。



「そうだね、私もそういうのはよく分かる」



なのはが、ゆっくりとカップを持ち上げながらそう言った。

視線に、今のはやてと同じ色を見つけたのは、気のせいじゃない。



「そやね」

「まぁ、あの日聞いたことからはやてちゃんの夢が、今に至るまでにどんな風に変わっていっているのかは分からないよ?
でも、少なくとも今の機動六課この場所は、はやてちゃん一人の夢じゃなくて、私達三人で一緒に見た夢を、はやてちゃんが叶えてくれたんだと思う」

「・・・・・・うん、そうだね。ただ、そんな私達にも内緒で悪巧みをするのは、はやての悪い癖だよ。
だから、ヤスフミやアルトアイゼンに『狸』とか『体型から入ってる』とか言われるんだよ?」

「あははは、堪忍・・・・・・ちょお待ってっ!? なんやその『体型から入ってる』ってっ!!
アレか、うちが狸体型って言いたいんかっ! ア、アイツらはマジで・・・・・・!!」



あれ、もしかして私余計な事言ったかな。ま、まぁ・・・・・・大丈夫だよね。

というか、私は彼女なんだから、厳しくいかなきゃいけないんだもの。うん、いいの(注:違います)。



「・・・・・・ね、フェイトちゃんはその辺り、どうかな?」

「私? ・・・・・・私は、正直よく分からなくなってるんだ。
色んな事があったから、今までの自分が嫌いになりかけてるの」



別に、はやてに対しての嫌味とかじゃない。ただ、簡単に迷った自分に少し腹が立ってる。

清濁合わせて飲み込むのは、やっぱり慣れない。そこまで私、強くないみたいだから。



「だから、今は探してる最中かな。9歳や15歳の頃の私が描く夢じゃない、今の私が描く夢を。
だけどそれは、一つじゃないんだ。執務官に限らず、たくさんやりたい事、見つけていこうと思ってる」

「そっかぁ。なぁ、それって恭文の事を男として意識するようになったからか?」

「てゆうか、いつの間にかお付き合いしてるんだもの。私達、ビックリしたよ」

「・・・・・・そ、そうだね。あとは、ヤスフミにしゅごキャラが生まれたからだね」



今の迷ってる自分と本当の意味で向き合えるようになったのは、多分そこが一番大きいと思う。

見た事も聞いた事もなかった存在。こころの中にあるたまごから、『なりたい自分』が生まれた存在。



「ヤスフミの中から出てきた、二つの『なりたい自分』を見て、触れた時に思ったんだ。
夢や可能性、それに憧れって、あいまいだとしても、沢山あっていいんだって、気づいたの」

「あいまいでも?」



私はなのはの言葉に頷く。・・・・・・うん、あいまいで、あやふやでもいいの。



「それはまた意外やなぁ。夢やなりたい自分ちゅうんは、形にしていかなあかんのに」

「私もね、そう思ってた。現実の仕事に照らし合わせて、迎合する形でもちゃんと固めていくものだって。
・・・・・・だけど、少し違ってた。場合によっては、それが自分の可能性を狭める事にもなるみたいなの」





青いスターライトのたまごの子と、緑色で十字架のたまご・・・・・・シオン。

ヤスフミの『なりたい自分』は、最低でも二つある。

それが何かを、ヤスフミは考えている最中。あやふやであいまいな答えを探している。



だけど、なんでだろう。ある意味悩みで迷いであるはずなのに、どこか楽しそう。





「ヤスフミがね、言ってくれたの。もっと、色んな私が居ていい。
執務官で、エリオやキャロの保護者だから私じゃないんだって、教えてくれた」

「そっか。・・・・・・うちもたまごは見せてもらったし、リインやヴィヴィオにスバルが見えてる言うから、一応は信じる事にしたんよ」



はやてとシグナム達にも、ヤスフミはたまごを見せた。そして、理解は得た。

まぁ、最初はかなりびっくりされたけど。特にシグナムは『ありえない』って言いまくるし。



「でも、なんつうか不思議やなぁ。ほら、うちらの子どもの頃に、こころのたまごなんて、見た覚えがないやんか」

「あ、そうだね。私も見た事なかった。フェイトちゃんも同じくだよね?」

「うん。だから、たまごが産まれた時は本当にびっくりした」



たまごを触らせてもらったから大丈夫だけど、普通に疑ってた。

だって、あんまりに常識外というか、めちゃくちゃというか・・・・・・。



「もしかしたら、夢が一応の形でも、早くに叶っちゃったからかも知れないね。
私だったら教導官で、フェイトちゃんだったら執務官」

「えー、それならうちは? うちの夢はまだまだ発展途上なんやけど」

「はやては・・・・・・うーん、よく分からないね」



というか、普通に私達も持っていていいんだよね。

まぁ、しゅごたまじゃなくても、こころのたまご・・・・・・未来への可能性を。



「うーん、謎や。普通に謎や。うちは常に純真な心を持っとるっちゅうに」

「はやてちゃん、さすがにそれは自意識過剰じゃ。というか、そういう人はあんな小説書かないから」

「いや、純真過ぎて逆にあぁなるんよ」

「よく分からないよそれっ!!」










・・・・・・祭りの時は、もうすぐそこまで来ていた。ただ、私達の知らない間に、色々と変わってきている。

例えば、私。まぁ、ここは知っているところだね。私は、今・・・・・・迷っている。

局員として、保護者としての自分に、存在価値の全てを置いていたことに気づいたから。





だから、探している最中。今の私の『なりたい自分』を。何にも依存しない、ただの私を。

それだけじゃなくて、アリシアの出来損ないであることも、私を証明する一つの荷物として、持っていく。

そうして強くて、優しくて、鋭く斬れる折れない剣に、一歩一歩近づいていこうとしている。





例えば、無限の欲望と、銀色の髪の女の子。・・・・・・この時の私は、まだ知らなかった。

鉄は、引き合う。そして、頑なな世界を壊す力を持っている。それは、私自身もよく知っている。

二人は、その影響を受けて、少しだけ自分の求める世界に、今の自分に、疑問を持ち始めていた。





もしかしたら、欲する答えと、そのための手段は歪み、間違っていたのかも知れない。

だけど、それでも・・・・・・私達がこれから戦う闇は、私達自身でもある。

きっと、声をあげていた。狭い世界で生きる事を強いられ、もがいていた。広い世界を見たいと、ずっと。





そして、ヤスフミ。ヤスフミは、やっと自分の夢に、『なりたい自分』に向き合えた。

母さんが言っていた不透明な部分。今の私なら、それが何かハッキリと分かる。

それは、ヤスフミ自身がそれに向き合えなかったせい。あまりに大きな願いに、戸惑っていたから。





守りたいもの全てを守れる、そんな『魔法j』が使える魔法使い。それが、あの子の願い。

そして、私には見えないけど、あの子の願いは形になってる。大丈夫、きっと叶う。

・・・・・・でもそうなると、私は魔法使いの恋人ということになるのかな。そ、それは結構嬉しいかも。





とにもかくにも、このお話の数日後、事件は起こる。世界を賭けた・・・・・・ううん、違う。

自分という存在を、自分を縛り付ける『すばらしい世界』を壊して欲しい。

そんな願いの篭った無限の欲望と、それに連なる者達の叫びが、世界に木霊する事になった。





そして、私達はその声に応え、本当の意味で戦う事を選ぶ。・・・・・・そう、私達自身で、選ぶ。

局のためでも、部隊や世界のためでもなく、私自身のわがままで、その手を取る。

誰でもなく、悲しく、救いを求める叫びを上げるあなた達に、出来る事があるから。





まだ見えぬ夜の先に、あなた達を苦しめる幻を破って、伝えたい言葉があるから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・最近、ドクターの様子がおかしい。まぁ、おかしいのはいつもの事として、それでもおかしい。

チンクちゃんやセインちゃんはなにやら色々話してるみたいで、ちょっと気になるわねぇ。

まぁ、いいわ。計画に支障が無ければ問題なしなし。そう、もうすぐだもの。





私達の夢・・・・・・本当に自由な『すばらしい世界』が手に入るのは、もうすぐなんだから。

愚鈍な虫けら共は全て消してー。ドクターの研究に役立ちそうなサンプルだけ残してー。

そうして、私達の楽園を作り上げる。ふふふ、楽しみだわ。あぁ、想像するだけで飛んじゃいそう。





さぁて、邪魔な蛆虫共をブチブチ踏み潰せるのも・・・・・・・もうすぐねぇ。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第24話 『その日、機動六課? 祭りの始まり編』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文、大丈夫かなぁ」

「てーか、ありえないわよ。会場警備のお泊りが楽しみで、知恵熱出すなんて」

「うぅ、私もやっぱりついて行けばよかったかな」





9月の13日。時刻は、午後の8時。私達機動六課のスターズ分隊とリイン曹長は、これからお仕事。

あ、それにギンガさんもね。私の隣に座って、心配そうにしてる。

内容は、明日ミッド中央本部で行われる、公開意見陳述会の会場警備。



理由は、中央本部を対象としたテロが起こる可能性があるから。

とは言え、正直疑わしくも思ってる。だって、そんな事したらガチで管理局に喧嘩売るのよ?

大体、旨味が無いでしょ。潰したって、特にいいことがあるとも思えないしさ。



・・・・・・フェイトさんの話だと、今の私が言ったようなのが地上本部の総意というか、総合的な見解。



まぁ、間違ってはないのよね。私もそうだしギンガさんも、かなり疑ってるから。





「問題ねぇよ。アレ、凄まじくしぶといからな」

「フェイト隊長とシグナム副隊長、シャマルさんも付いてるし、問題ないよ。
本局の医療施設は、普通に恭文君のテリトリーだから」

「色々お世話になってますしねー。もしかしたら、すぐに復活して明日現地入りするかも知れないですよ?」



どうも、そうらしい。まぁ、そこは大丈夫かな。深刻な状態ってわけじゃないし。

でも、わざわざ転送魔法使って直接本局に跳ばすなんて・・・・・・相当危険って見られたのかな。



「でも、なのはさん」

「うん、どうしたのかな。スバル」

「ヴィヴィオにすっかり懐かれてますよねー」





・・・・・・フェイト隊長と八神部隊長にシグナム副隊長は、明日現地入り。

シャマルさんとザフィーラ、エリキャロは・・・・・・隊舎に待機。

一応二人って感じだけど、エリキャロはアレよね。きっとエリオの方に対しての処置だ。



エリオ、あれ以来対人戦がさっぱりになっちゃってる。いや、普通の戦闘もかなりギリギリ。



さすがに危ないと判断したんでしょ。とは言え、そこを直接言っても追い討ちをかけるから、これである。





「確かにそうですね。なぎ君と、フェイトさんと一緒に、もうすっかり親子になってます」

「そ、そうかな。だと嬉しいんだけど」

「というか、リインが思うにこのままなのはさんの養子にしちゃったらどうですか?
恭文さんやフェイトさんは、パパやママでも、やっぱりなのはさんとは違いますし」



・・・・・・確かに、ヴィヴィオのなのはさんに対しての『ママ』は、意味合いが深い感じがする。

というか、アイツのパパ呼びは修正したい。絶対なんかたらしこまれてるし。



「さ、さすがにそれは・・・・・。あの、受け入れ先は今も探してもらってるの。
それで、とてもいい家庭が見つかったら、そこの子になってもらって・・・・・・」

「でもなのはさん、あの様子だと絶対納得しないと思うんですけど。
私がヴィヴィオでも、あれからいきなり知らない人の子になれって言うのは、無理ですって」

「う・・・・・・」



私の言葉に、なのはさんが固まる。どうやら、自分でもそう思っていたのか、かなり苦い顔になる。

まぁ、あんまり言うのも違うか。だって、親になるのだってそこそこ覚悟が居るんだし。



「と、とにかくね。そこは話して納得してもらうよ。・・・・・・いい子だもの。幸せになって欲しいから」

「・・・・・・そうですね」










夜は深まる。色々な事を包み込むように、ゆっくりと、夜は深まる。





なんだろ、なんかこう・・・・・・胸騒ぎがするな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・蒼凪、手続きは済んだぞ。これで、お前はここに入院したことになる」

「スタッフの人達も、みんなヤスフミの顔見知りだから、話が早かったよ。
あ、でも今度差し入れ持ってくるようにだって。基本的には、いけないことだから」

「うん、分かってる。フェイト、ありがと。シグナムさんもありがとうございます」



まぁ、みんなを騙す形で悪いんだけど、ここは仕方ないか。備えは必要だから。

とにかく、これでヤスフミはここに入院した。あとは・・・・・・アレだよね。



「ヤスフミ、早速キャラチェンジ、いける?」

「大丈夫、シオンもやる気満々だから」



困ったように言うヤスフミに、私は苦笑を返す。・・・・・・シオンは今回の話、乗り気らしい。

どうも、自分が身体の主導権を握れるキャラチェンジが楽しいらしいから。



「・・・・・・しかし、今ひとつ信じられん。本当にそんなものが居るのか?
これでも長生きはしてるが、そんなものは一度も見たことがない」

「私も同じく。・・・・・・でも、私は信じるわっ! だって、愛するあなたの言う事ですものっ!!」



はぁっ!? シャマルさん、いきなりなに言ってるんですかっ!!



「だから待てっ! 僕彼女持ちなんですけどっ!? てーか、あなたの隣にその子居るからっ!!」

「大丈夫。あくまでも、ファン的な意味合いだから」

「迷惑だからやめてっ!? あぁ、フェイトも視線を厳しくしないでー!!」



と、とにかく・・・・・・ということは、しゅごキャラは相当珍しいらしい。

シグナムやシャマルさんの『長生き』は、本当に長生きだもの。



「とにかく、シオンは居ますよ。旅行の時から、ヤスフミにいっぱい力を貸してくれてます。ね?」



シオン・・・・・・は見えないから、私はヤスフミに笑いかける。

ヤスフミも、同じように笑って、頷いてくれた。



「んじゃシオン、キャラチェンジ・・・・・・お願い」





次の瞬間、ヤスフミの髪の右側に、銀色の十字架のアクセサリーが付いた。というより、突然現れた。

それから、姿が一瞬で変化した。・・・・・・服装は、聖王教会のシスター服。そして、髪と瞳の色が違う。

髪は、翠色で腰まであって、瞳は透き通るような青。なんだろう、顔立ちまで変わった感じがする。



これが、キャラチェンジ・・・・・・というか、シオンがヤスフミの身体を借りた状態なんだ。





「フェイトさん」

「・・・・・・あ、うん」

「シグナム二尉とシャマルさんもそうですが・・・・・・一応、初めましてになるんですよね」



出てきた声は、ヤスフミのそれとは全然違う。優しくて、心に染み渡るような声。

口調も違うし、これだけ見たなら、本当に別人としか思えないよ。



「そうだね。私もシグナムも、あなたがずっと見えてなかったから」

「でしょうね。逆に、私はよーく見ていました」

「そっか。それで、シオン・・・・・・で、いいんだよね。
今はヤスフミの身体を借りてるけど、それでもシオン」



シオンは、少し不安げな私の言葉に、微笑みながら頷いて、肯定してくれた。

ヤスフミのそれとは違う、優しく、人を安心させる笑顔。



「はい」



・・・・・・あ、別にヤスフミの笑い方が嫌いとか、そういう話じゃないよ?

ただ、また趣が違うという話。そこのところは、勘違いしないように。



「初めまして、お兄様のしゅごキャラのシオンです。よろしくお願いします」

「うん、よろしく。・・・・・・シグナム」

「あ、あぁ。よろしく頼む。・・・・・・だめだ、私は今ひとつ納得出来ない」



あぁ、シグナムが頭を抱え出してるし。まぁ、そこは分かるかも。

私だって、最初はこんな感じだったから。



「ありえない、さすがにこれはありえないぞ。みんなして私を騙そうとしていないか?」

「シグナム二尉、ありえないことなど、ありえないのですよ?
目に見えるものだけが全てではありません」



言いながら、シオンは右手で天井・・・・・・ううん、天を指差す。



「星の輝きと同じですわ。例え厚い雲に、太陽の光に阻まれても、輝きはそこにある。
目に映るものばかりに囚われるのは、人生をつまらなくする最大の要因です」

「確かに、そうだが。それで蒼凪・・・・・・いや、シオン」

「・・・・・・可愛いー!!」



あ、なんかシャマルさんが目をキラキラさせてる。



「当然です。だって、私は選ばれし者なんですから」



ちょっとシオンっ!? 意味分からないよそれっ!!



「あぁ、シオンこっち向いて? ・・・・・・そうそう、いい感じよ」

「あとは、こんな感じでしょうか」

「えぇ、もう最高よー!!」



パシャパシャパシャッ!!



「てゆうか、普通にシャマルさんも端末出して、写真撮ろうとしないでー!!」



・・・・・・そして、もうシグナムは考えるのが辛くなったのか、普通に話す事にしたらしい。

今目の前に居るのは、シオン。それでいいと思ったみたい。



「それでシオン。このバカは放置していい。・・・・・・蒼凪は、今どうなっている?」

【・・・・・・泣きそうになってますよ。そして、シャマルさんは写真を撮ろうとするな】



シオンが、上げた腕をゆっくりと下ろしている間に、私達の耳に届いたものがある。

そのどこからともなく響いた声は、ヤスフミのものだった。



「蒼凪、お前喋れたのかっ!!」

「そ、そうだよっ! 私、そこは聞いてなかったんだけどっ!!」

【ちょっと気合い入れないとだめだけどね。なので、あんま喋れないや。
・・・・・・てーか、これキャラチェンジじゃないよね。絶対違うよね】



あ、あれ? ヤスフミがなんだかすごくダウナーな声出してる。



【キャラどころか、人格変わってるし。てーか、どこのリュウタロスだよおのれは】

「問題ありません。世界は、私のためにあるんですから」

「そうよ、可愛いから大丈夫よ? いっぱい写真も撮るし」

【大有りだよボケっ! あと、写真はお願いだから撮らないでー!!
シャマルさん、映像は後で消去させてもらいますから。当然、SDカードも回収】

「そんなー!!」



とりあえず、ヤスフミは本気で辛くなると思うので、シャマルさんの端末は私とシグナムとで取り上げた。

シャマルさんは『いけずー!!』なんて言ってたけど、私は気にしない。だって、ダメージあるだろうし。



【・・・・・・シオン、やることは分かってるよね】

「はい、問題ありません。フェイトさん、手続きの方は」

「大丈夫。・・・・・・初めましての挨拶をしたばかりで、いきなり負担かけちゃうね」



私がそう言うと、シオンは不敵に笑って、右手で長い髪をそっとかき上げた。

そうしながら、『問題ありません』と、力強く言ってくれた。



「シオン、ごめんね。私達の・・・・・・局の都合や、妙な事件に巻き込んじゃって。
本当なら、ヤスフミのしゅごキャラであるあなたを巻き込むのは、違うんだろうけど」

「ですから、大丈夫ですよ。というより、フェイトさんは勘違いをしています」

「え?」



シオンは、私の様子を見て、ため息を吐く。そして、一気に言い切る。



「しゅごキャラはいつだって、宿主と一心同体。そして、宿主の一番の味方です。
すなわち、お兄様の敵は、私の敵。お兄様の行く手を邪魔する者は、私にとってもそれ」



な、なんかいきなりキャラが変わったっ!? すごい挑発的な事言い出したしっ!!

・・・・・・あ、これがキャラチェンジなんだね。納得したよ。



「相手が何者かなど、関係ありませんわ。私とお兄様が突き進むのは、言うなれば天の道」



シオンが、また右手の人差し指で天を指す。これ・・・・・・好きなのかな。



「その邪魔をするのであれば、破壊します。・・・・・・それこそが、私の真髄であり、プライドです」



そして、ニッコリと笑う。私達を安心させるように、優しく。だけど、明るく。



【・・・・・・まぁ、こういう感じの子だから、心配いらないよ。腕っ節も頭も強いから】



私は、シグナムの方を見る。シグナムも、力強く頷いてくれた。

なんだろう、この子の言葉には説得力がある。とても強くて・・・・・・力がある。



「分かった。じゃあ、すぐに行動開始だよ」

「まずはどうなさるのですか?」

「打ち合わせ通りかな。このまま、私達と一緒に隊舎に来て」



色々と偽装工作を施した上で・・・・・・というのが、付くけど。



「それで、明日私達と一緒に、会場入りしてもらうから」

「了解しました」










・・・・・・整えられる対策は、整えた。やれるだけの事は、やったと思う。





あとは、明日どうなるかだよ。こればかりは、開けてみないと分からないよね。



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・9月の13日。公開意見陳述会の会場は、前日から警備の局員でひしめいていた。

なお、時刻は午後9時。スターズ分隊とギンガ・ナカジマ陸曹とリイン曹長は、現地入り。

てーか、俺が運んできた。で、シグナム姐さんや部隊長にフェイト隊長は、明日の昼に現地入りだ。





ただし、会場に来れないメンバーも居る。それは、ライトニングのちびっ子二人。

まぁ、エリオの調子が全然だからな。控えメンバーとして、二人揃って隊舎に残ることになった。

で、次がシャマル先生にザフィーラの旦那。こっちも二人と同じくだ。





あとは・・・・・・坊主か。全く、ガキじゃねぇんだし、いきなり知恵熱ってありえねぇだろ。

しかも、相当の高熱出してて、危険だからわざわざ本局のかかりつけの医者のとこまで搬送だしよ。

今は、フェイト隊長とシグナム姐さん、シャマル先生も、そっちに付いてる。しかし、フェイト隊長はすごいな。





・・・・・・もしかして、マジで付き合ってんのかね。あれを見て俺は、色々考えちまったよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・で、アンタがチビスケのしゅごキャラっちゅうやつか?」

「そうですね」

「あかん。うちこれでも頭柔らかい方やのに、なんか納得出来ん。
てゆうか、なんでうちはアンタが見えんのよ。普通に夢あるのに」

「簡単です。あなたが欲望に塗れた汚い心を持っているからです」

「ずいぶんハッキリ言うな、自分っ!!」



隊舎に戻ってきて、一応部隊長室にシオンを連れて来た。というか、あの・・・・・・ねぇ?

初対面でまた思いっきり強いボールを投げるなぁ。



「あら、そんなの当然です。・・・・・・部隊長室で、こっそりとニコ動を見ていたじゃありませんか。
それも、R18コーナー。有料の会員登録をして、初めて見れるサイトを」



・・・・・・・・・・・・はぁっ!? あ、R18で有料って・・・・・・一体なにっ!!



「アンタ、なんで知ってるんっ!? ま、まさか・・・・・・見てたんかっ! うちの同人誌作成のための資料集めを、見てたんかっ!!」

「すみません。暇潰しに散歩をしている時に、窓からちらりと。でも、ずいぶん楽しそうでしたね。
息も荒げにペンを持って、一時停止を繰り返してデッサンを本当に入念に」

「見るなぁぁぁぁぁぁっ! そして言わんといてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



とりあえず、落ち込むはやてはともかくとして、私は・・・・・・隣に居たシグナムを見る。そして、頷き合う。



「この覗き魔がっ! 自分、今すぐたまご戻らんかいっ!! てーか、目玉焼きにしたろうかっ!?」

「主はやて」

「八神部隊長」

「なんやっ! うちは今忙しい」



ようやくはやては私達を見てくれる。そして、冷や汗なのかな。

顔から汗を、だらだらと流し続ける。



「・・・・・・あ、あのシグナム? フェイトちゃんも、なんでそんな怖い目をするんよ。
てゆうか、そんなんあかんよ。ほら、可愛い顔が台無しやから」

「ありがとうございます。ですが・・・・・・先ほどシオンが話していた事、少しお聞きしたいのですが」

「私も同じく。というか、はやて・・・・・・隊舎で、しかも仕事場で一体、何してるのかな」

「い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





・・・・・・ここから、少しだけ私達二人でお説教タイムとなった。うん、当然だよね。



だ、だって・・・・・・エッチなのはだめだよっ! しかも仕事場でなんて、絶対だめっ!!





「部隊長というのも、大変ですね」

≪・・・・・・なるほど、宿主より性質が悪いのか。これなら、彼のあの様子も納得出来る≫

「バルディッシュ、聞こえていますよ? それはどういう意味ですか」

≪言葉通りの意味だ≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「うわぁ、本当にシオンだ。というか、パパ居るの?」

【居るよ。・・・・・・あ、でもヴィヴィオ。この事は絶対内緒だよ?
シオンがパパだって今のうちから他の人にバレちゃうと、色々うるさいの】

「うん、分かった。『禁則事項』・・・・・・なんだよね」

【そうそう】

「ヴィヴィオ、よくそんな難しい言葉知ってるね。私、ビックリしたよ」



はやてへのお説教が終わってから、私はシオンを連れて、ヴィヴィオのところに戻ってきた。

ヴィヴィオはシオンがしゅごキャラ状態でも見えていたから、結構すんなり受け入れてる。



「そう言えばヴィヴィオさん、ママのお見送りをしてたんですよね」

「うん」



私とシグナム、シャマルさんが本局に行っている間に、みんなは出発した。

それで、ヴィヴィオもヘリポートに出て、なのはのお見送りをしたとか。



「なのはママ、何かあったら必ず戻って、助けに来てくれるって、約束してくれたの」

「そうですか。・・・・・・なら、安心ですね。ヴィヴィオのママは、とっても強いですから」

「うん」










・・・・・・明日、なんだよね。まぁ、陳述会が始まるまではあまり心配ないかな。





問題は、始まった後だよ。そこから終わるまでが、多分一番危険だから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ん?」



ヘリのコックピットで待機してると、コンコンとドアを叩く音がした。で、起き上がってそこを見ると・・・・・・ティアナが居た。

右手には、携帯用のポット。で、左手にはコップ。どうやら、お茶が入ってるらしい。



「おう、どうした」

「警備の方から、お茶の差し入れをもらいました。よかったら」

「お、気が利くな。てーか、悪いな」



俺は一旦ヘリから降りて、お茶をもらう。そして、フーフー言いながら飲む。



「熱そうですね」

「猫舌なんでな。昔っから熱いのは、少し苦手だ」



まぁ、飲めないってほどじゃないが。・・・・・・あー、身体が暖まるな。

なんだかんだでもう9月の半ばだしな。こんな時間に寒いのは、当たり前か。



「他の連中はどうしてる?」

「・・・・・・警備の端っこの方で、のんびりやってます。
スバルとギンガさんが、恭文のこと心配してますけど」

「そっか。お前さんは、どうだ?」

「とりあえず、あのバカにはあとで見舞いに行きます。で、笑ってやります」



軽く冗談めいた口調で、ティアナはそう言い切った。前だったら、こんな風に笑ったりしない。

色々、変化してきてるんだろ。それもいい具合にだ。



「確かに、知恵熱出して仕事がNGなんざ、俺も聞いたことねぇしな。
うし、笑ってやるか。胃が痛くなるとかじゃなくて、熱出すなんざどんだけってな」

「そうですね、笑ってやりましょう」

「おう。・・・・・・そういやよ、ティアナ」



まぁ、ちょっと前から気になってたから、少し聞いてみる。



「お前さん、坊主の事が好きなのか?」

「・・・・・・はぁっ!? いきなり何言ってんですかっ! そんなんじゃないですってっ!!」



・・・・・・顔を真っ赤にして、そう否定するが、今ひとつ説得力がねぇ。

なーんかさ、俺ぁピンと来たんだよ。それも相当だ。



「まぁ、嫌いじゃないですよ? アイツと居ると楽だし、通じ合える感じがします」

「おう」

「てゆうか、ほっとけないんですよ。だって、アイツバカだし、性悪だし。
放っておいたら、またバカなことやるに決まってるし。それで・・・・・」

「それで、なんだ?」



・・・・・・ティアが少し固まった。お茶の入ったコップに視線を落として、瞳が少し悲しげな色になる。



「それで・・・・・・一緒に居るのが、楽しいんです。アイツがフェイトさんの事見てると、イラってするんです」

「そりゃ、間違いなく惚れてるな。最低でも、恋のなり立てだ」

「やっぱり、ですか?」

「やっぱりだ」



色々と自覚はしていたようだな。結構、アッサリと認めた。

実は、気づいてた。これでも人生経験は多いからな。



「まぁ、アレだ。一応告白でもしたらどうだ?」

「だけど、なんかフェイトさんと付き合ってるっぽいですし」

「だが、お前さんの気持ちもあるだろ。・・・・・・そういうのはな、当たってみないと後悔するもんだ」



少しだけ冷めたお茶を飲む。・・・・・・やっぱ、熱ぃ。



「俺もあるぞ? 相手が居たからって言って、告白しないで後悔したことが。
ぶつかってみろ。それで、お前が坊主とどうしたいのか、ちゃんと言え」

「許される・・・・・・でしょうか」

「相手に許される許されないの問題じゃねぇよ。
お前が、自分をそれで許せるかどうかの問題だ」



ティアナは、また俯く。俯いて、少し考えて・・・・・・顔を上げた。

そこには、もう迷いが無かった。いつものアイツの顔だ。



「アイツと、話してみます。言いたい事、他にもありますし」

「おう、頑張ってこい」

「はい。それじゃあ、失礼します」

「あぁ。・・・・・・あ、お茶ありがとな」



ティアナは俺がそう言うと、ニコリと笑って、そのまま警備に戻った。

俺は、ふーふー言いながら、お茶をまた一口。・・・・・・はぁ。



「ストームレイダー」

≪はい≫

「青春ってのは、いいもんだねぇ」

≪そうですね≫










・・・・・・あー、俺もあれくらいに戻りたいねぇ。そうしたら、色々やり直せるってのに。





そうだな、ほんと・・・・・・色々、やり直せんだよな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・9月14日の午前11時頃。フェイトさん達が会場に出発する時間が来た。

僕は、隊舎で待機。キャロやシャマルさん、ザフィーラと一緒にだ。

だけど・・・・・・なんだろう、とても悔しい。





僕は、まだ迷ってる。戦う事が・・・・・・怖い。










「・・・・・・あの、フェイトさん。八神部隊長。こちらの方は」

「あ、この人は恭文の代理なんよ。ほら、あのバカが知恵熱出したやろ?
それで、急遽聖王教会から援軍として、駆けつけて来てくれたんよ」



翠色の髪に、青い瞳に、聖王教会のシスター服・・・・・・あ、あれ?

なんだか、僕はすっごい見覚えがあるんだけど。



”エリオ君、この人・・・・・・あの、というかこの子”

”キャロもそう思う?”

”うん。だって、そっくりだもの”



だから、僕達は顔を見合わせて頷き合って、しっかりと聞いてみる。



「え、えっと・・・・・・ちなみにお名前は」

「・・・・・・シオンと言えば、お分かりになりますか? というより、寂しいです。
何度もお会いして、お話しているのに、私を忘れてしまうなんて」



その声は、僕とキャロが聞いたことのある声。

というか、二人で顔をまた見合わせた。



「「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」



ま、まさか・・・・・・ヤスフミのしゅごキャラのシオンっ!? あの、これって一体どういうことなのっ!!

だって、シオンはしゅごキャラで、小さくて、普通の人には見えなくて・・・・・・なんでそれがこれっ!?



「その辺り、色々事情があるんだ。でも、二人が知ってるシオンなのは間違いないから。
・・・・・・ごめんね、帰ってきたら、ヤスフミと一緒にちゃんと説明する」

「「は、はい。それじゃあ、あの・・・・・・お気をつけて」」

「うん、ありがと。じゃあ、シオン」

「はい。・・・・・・あぁ、それとモンディアルさん」



シオンは、ゆっくりとしゃがんで、僕を見る。まるで何かを見通すように、真っ直ぐに。

というか、本当にシオンだ。シオン、基本的に僕達のこと、ファミリーネームで呼ぶから。



「あの、なに・・・・・・かな」

「・・・・・・戦う事を、怖がっていいんです。誰も、責めはしません」



まるで、何かを見通すような言葉。



「というより責める権利など、誰にもありません。なぜなら・・・・・・選ぶのは、あなただからです」



いや、見抜かれてる。だって、僕はともかく、シオンはずっと僕を見ていただろうから。



「大事なのは、怖くても、あなたの中に守りたいものが、抗いたいものがあるかどうかです。
傷つけるという業を背負ってでも、未来に繋ぎたいものがあるかどうか。それだけなんです」



・・・・・・僕の中に、今の怖くてしょうがない僕の中に、守りたいものが、抗いたいものがあるかどうか。

そして・・・・・・業を背負ってでも、未来に繋ぎたいものがあるかどうか。



「向き合ってください、あなたの中の真実と。・・・・・・何から逃げてもいい。
だけど決して、あなた自身からは、逃げないでください」



両手で、僕の肩を掴む。そして、真っ直ぐに僕を見ながら、最後の一言を言い切る。



「そんな事をしても、救いなど一欠けらとして、存在していません。
救いは、自身を知ろうとする勇気を持つものにだけ、与えられる光なのですから」

「・・・・・・それで、今までの自分が壊れたとしても? 信じられなくなったとしても?」

「例えそうだとしても、今ここに居て、迷うあなただからこそ、決められる事があるんです。それには、無限の価値が存在します」



そして、ゆっくりと肩から僕の右手に触れて、優しく掴んでくれる。



「もう、あなたはこの手に答えと、未来を掴んでいます。
あとは、それと向き合う覚悟を決めればいいだけです」



シオンはそのまま、優しく深い微笑みを、僕に向けてくれた。



「大丈夫、少しずつでいい。本当に、少しずつでいいんです。それだけ、忘れないでください」



僕は、バカだ。バカだから、間違える。バカだから、向き合う事から逃げた。

バカだから・・・・・・僕は、この子の言葉に、こんな陳腐な事しか言えない。



「あの・・・・・・ありがと」

「いいえ」



それでも、この子は安心したように笑ってくれる。それが嬉しくもあり、情けなかった。



「それでは、また後で」










シオンは、そのままフェイトさん達と会場に向かった。

僕は、それからずっと考える。今の僕だから、決められる事が何かを。

業を背負ってでも、守りたいもの。戦う事が怖くても、抗いたいもの。





なんだろう、やっぱり・・・・・・よく、わからないや。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



”・・・・・・余計な事して”



あら、いいじゃありませんか。少しくらいのアドバイスは必要でしょう。

それに、あの程度なら充分許容範囲です。問題はありません。



”そういうもの?”

”そういうものです”



・・・・・・しかし、ヘリというのも楽しいですね。中々にいい乗り心地です。



「シオン、ありがと」



フェイトさんが、私の方を見て、嬉しそうにお礼を言う。

というか、八神部隊長やシグナム二尉も同じ表情。



「何がですか?」

「エリオの事。アドバイス、してくれたから」

「問題ありません」



座席に座りながら、そっと髪を右手でかき上げる。

・・・・・・私の、癖。私が私である証の一つ。ちょっとしたことだけど、とても大切。



「しゅごキャラは、『なりたい自分』。宿主の一番の味方。だけど、それだけではありません。
『なりたい自分』を見失ってしまった、彼のような迷い子の味方でもありますから」

「・・・・・・そっか」

「でも、アンタは昨日うちの味方はしてくれんかったなぁ」



八神部隊長が、とても恨めしく私を見る。それに、思わずため息を吐いてしまった。



「八神部隊長の味方をするくらいなら、私は自決します」

「アンタ、そこまでかっ!? てーか、うちのこと嫌いやろっ!!」

「いえ、とんでもありません。ただ、からかったりネタを取得してゆすると楽しいと思うだけで」

「あのチビスケと同じ思考かっ! いや、それより性質悪いっ!? くぅ、マジでムカつくー!!」










失礼な。私はお兄様よりもずっと性格がいいです。

一緒にしてもらっては困ります。・・・・・・でも、大丈夫かしら。

私が見えなくなったということは、相当悩みは深いと思う。





・・・・・・ここは気にしても仕方ないわね。月詠さんの言うように、過度な手助けは出来ない。





答えという名の宝石は、他者から与えられるのではなく、自分の手で見つけ出すからこそ、無限の価値があるのだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



時刻は12時。私とティア、それにヴィータ副隊長とリイン曹長は、会場入りする部隊長達の出迎え。

なお、それだけじゃないよ? 一応途中経過とかも、簡単に報告するの。

だけど・・・・・・あの、えっと・・・・・・ヘリから降りて来たメンバーの中に、おかしい子が居る。





翠色の長い髪で、青い瞳で、聖王教会のシスター服で・・・・・・というか、シオンっ!?










「・・・・・・あの、こちらの方は」

「察するに、聖王教会の方だとお見受けしましたが」

「ティア、ギン姉もなに言ってるのっ!? シオンだよっ!!」



・・・・・・って、そうか。ティアとギン姉は、シオンが見えてなかったんだよね。

こんなこと言われても分からないか。だけど、あの・・・・・・えぇっ!?



「こちら、シスター・シオン。ヤスフミのピンチヒッターとして来てくれたんだ」

「なお、聖王教会のシスター・シャッハの紹介だ」



名前まで同じっ!? というか、どうなってるのこれー!!



「シスター・シオンは、うちらと同じく中に入る。ヴィータ、リイン、外の方はしっかりな」

「おう、任せといてくれ」

「しっかりやるです。あ、シオンも頑張ってくださいです」

「はい。全力でやらせていただきます」










そう言いながら、笑う姿はやっぱりシオンで・・・・・・あぁ、本当にどうなってるのっ!? お願い、誰か説明してー!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



時刻は14時。ようやく、会議は始まった。

フェイトちゃんとはやてちゃん、シグナムさんも、会場入りしてる。

あと・・・・・・シスター・シオンだね。というか、あの・・・・・・ごめん。





やっぱり信じられないんだけどっ!? だ、だっていくらなんでもおかし過ぎるよっ!!










”・・・・・・なぁ、マジでそのシオンってのが居るんだよな?”



外でスバルとリイン達と警備しているヴィータちゃんが、少し疲れたような声で聞く。

なお、私は中の警備中。フェイトちゃんとシオン、他の局員さん達と一緒に、結構のんびりやってる。



”居るよ。さっき挨拶されたもん。というか、ヴィータちゃんもでしょ?”

”まぁな”



えっと、キャラチェンジ・・・・・・だったよね。それで、恭文君とシオンのキャラが入れ替わった。

今は、シオンが恭文君の身体を借りる形になってる。というか・・・・・・変装?



”けどよ、いくら武装持ち込んでるのがバレないようにとは言え、これはねぇだろ”

”なさ過ぎるから、充分に網の目もすり抜けられるんだよ。そして、誰も思いつかない”



私も、恭文君からアイディアを聞いた時はビックリしたよ。まさか女装するなんて。

でも・・・・・・これなら、簡単にはバレないと思う。あ、キャラチェンジどうこうは抜きだよ?



”アイツ、完全に別人になってるしな。アレから普段のバカ弟子は、連想出来ねぇ”

”でしょ?”

”あと、アレだろ? キャラチェンジってのは、普通バカ弟子みたいにならねぇ”

”どうもそうらしいの”





イギリスの旅行中に偶然会った、しゅごキャラを持ってる女の子に、色々相談したらしい。

なんでも、フィアッセさんのファンで、歌手の『たまご』とか。そうしたら、呆れられたって言ってた。

・・・・・・普通のキャラチェンジは、あくまでも本人のキャラが『チェンジ』するだけ。



つまり、人格そのものがしゅごキャラと入れ替わるチェンジするというわけじゃない。



どこをどうしたらそんな風になるのかと、その女の子に頭を抱えられたとか。





”で、なのは。レイジングハートやバルディッシュは、スバル達に預けてあんだよな”

”うん。フェイトちゃんにも確認した。さすがにそこまでは無理しちゃうと、危ないから”





まぁ、六課の立ち位置を考えると、横からチェックが入るかも知れないから、ここは予定通り。

要するに、私達が本当に武装を預けて警備してるか、誰かが確かめに来るってことだね。

シオンが全部持ち込むのも可能だったそうだけど、ここはなしにした。そうなったら、さすがに怖い。



なので、私達の中で武装してるのは、恭文君・・・・・・シオンだけ。うぅ、バレないことを祈るよ。





”出来れば、通例通りに持ち込みはして欲しくなかったんだけど”





みんな居るし、私もフェイトちゃんも、デバイスが無くても魔法戦闘は出来る。・・・・・・まぁ、一応。

なにより、六課だけじゃない。他の部隊の人達も居る。私がこう思う理由は、ここが重要。

確かに、危ない要素はあるけど、それだけじゃない。管理局だって、バカじゃないんだから。



そういうの、少しでもいいからちゃんと信じて欲しかったんだけどな。そこは、正直な感想。





”無理だろ。やっぱ、昔の事があるしよ”

”・・・・・・そうだね”





恭文君は本当に最初の時、武装無しで襲われたことがある。だから・・・・・・だもの。

私はそういうのが無い。だから、きっと今みたいな事が言えるんだと思う。

運よくユーノ君と出会えて、運よくレイジングハートって言う高性能なデバイスと出会えたから。



でも、恭文君は違う。本当の意味でそれがどんなに怖い事か、ちゃんと知ってる。

だから私も、あんまり言えなかった。というか、言う権利・・・・・・ないよね。

こういう時、恭文君が遠く感じる。見えてるものが違うことが、少し寂しく感じる。



局の規律とかに対しての信頼に対する温度差も、多分それ。

私は、本当に人に恵まれてる。だから、裏切られたりとかって言うのも、ない。

正直、ここはアルフさんと同じかも知れない。うん、私もここが不満。



どうして、私達の仕事場を、居場所を、その場所の仲間をもっと信じてくれないのかなって、思う。

・・・・・・やめよう。これはもう、仕方ないんだ。恭文君と私は、違う人間なんだから。

始まりも、経験も、考え方だって違う。だから、これは仕方のないことなんだ。



というか、同じ経験をしているリインも、相当ピリピリしてるとか。

中の様子、本当に気にしているらしい。・・・・・・自分が情けないような、悔しいような。

恭文君とリインの気持ちを、100%理解してあげられないのが、凄く嫌だ。



違っていても大事で、大好きな男の子のはずなのに、自分勝手に悲しくなっているのが、凄く嫌だ。





”でよ、なのは。今回の予言、内部のクーデターの線はないんだったよな”

”アコース査察官の調査の結果では、そうらしい”





管理局崩壊と言っても、色んなシチュがある。この場合、大きく分けると二つかな。

今言った内部からのクーデターによる、既存の組織の在り方の崩壊が、一つ。

そして、もう一つは外部からのテロによる崩壊。こっちは、徹底的に局は否定される。



聖王教会の見解でも、このどちらかというお話だった。

だけど、クーデターの方はアコース査察官の調査では、ないらしい。

クーデターを起こすにしても、戦力は必要。だけど、それらしい動きはない。



もちろん、完全に可能性がなくなったと考えるのは危険。分からなかっただけかも知れないから。



とりあえず、それがないとした場合、残ってるのは・・・・・・外部からのテロによる崩壊。





”なら、スカリエッティ一味だっけか。ソイツらがやったとして、狙いはなんだ?
単なる威力証明にしたって、その相手に管理局を選ぶ理由が分からねぇよ”

”やっぱり、はやてちゃん達が考えている『世界征服』って線が強いのかな”

”それはそれでまた、ありえねぇけどな”



私も、最初に聞いた時は呆れた。ただ、今出ている札から考えると、あながちバカに出来ない。

現に、恭文君に接触してきた戦闘機人らしい子が、それらしい事を言ってる。



”というかね、フェイトちゃんやはやてちゃんも、ずっとそこが気になってたらしいの”

”あぁ、アタシも聞いた。単に自分達の武装の威力証明なら、他にいくらでも手はある。
さっきも言ったが、局を敵に回すのは、リスクが大き過ぎるんだよ”

”売れる前に、潰されちゃうよね”

”多分な。襲撃なんて、犯罪の証拠をこっちに提示しまくるようなもんだ”



私も、最初は威力証明か何かかなぁと思ってたんだけど。リスクは抜きにすれば、かなりアリだと思うの。

現行で次元世界の法と治安維持を取り仕切っている管理局を倒せる武器なら、欲しい人はいくらでも居るだろうし。



”あと・・・・・・シオンがね、恭文君を通じて、フェイトちゃん達に言ったらしいの”

”なんてだ?”

”管理局が崩壊する事で、現行の貨幣や物の価値にも、少なからず影響が出てくる。
その場合、何を利益とするかが問題になってくるって”

”なるほど、そりゃ道理だ。向こうが欲しがってる利益が手に入るとは限らないよな。
利益ってのは、それが他から見て、多少なりとも価値があるから、言える言葉だ”





・・・・・・この話には、ビックリした。普通にシオンは恭文君達に、色々とアドバイスをしているらしい。

フェイトちゃんの話だと、シオンは恭文君の理性的な部分を補完してるとか。ようは、頭のいいキャラ。

恭文君、基本的に脳筋だもの。だから、シオンはこういう推理・洞察力がとても強い・・・・・・らしい。



確かに、さっき話した感じでも頭が良さそうだった。聡明で、とても理性的。



でも・・・・・・恭文君、脳筋って言われるの、かなり気にしてたのかな。





”なのは、お前は他になんか思いつくか?”

”・・・・・・うーん、そうだなぁ”



少し考え・・・・・・って、必要ないか。



”ここは別にいいんじゃないかな。私達には、信頼できる上司が居る”



まぁ、色々とあったけど、それでもそこは変わってない。長年の友達でもあるもの。

考えて、個人ではなく部隊全体を円滑に動かすようにするのは、はやてちゃん達の仕事。



”そして、その上司がちゃんと指示をくれる。私達は、その通りに動く事だけ、考えよう?”

”・・・・・・だな”



うん、それだけでいいよね。私達は、それだけでいいんだ。



「愚かですわ。自分で考えていくこともせず、全て丸投げなんて。
高町教導官、あなたにお兄様を脳筋チビなどと言う権利はありません」



・・・・・・ひっ!!



「シ、シオンっ! お願いだからいきなり背後から声をかけないでっ!? てゆうか、念話を読まないでー!!」










とりあえず・・・・・・何事もなく終わって欲しい。あの子の心配が、今回だけでも杞憂で終わって欲しい。

それで、私は笑って言うの。『ほら、考えすぎだったでしょ?』と。・・・・・・別に、笑いたいわけじゃない。

バカにしたいわけでもない。ただ、そんな風になって欲しいだけ。恭文君、なんだかんだで優しいから。





何かあって、誰かが傷ついたら・・・・・・やっぱり、気に病むと思う。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・18時ですか」





現在、時刻は夜の18時。会議開始から、4時間が経過。

まだまだ夏の名残か、ミッドの太陽は、まだ世界を照らしている。

でも、それでも夕方の風景が窓から見える。もうすぐ、会議は終わる。



うん、もうすぐなんだよね。ここまではなにも起こってないのは、ちょっと嬉しい。





「シオン、疲れてない?」

「問題ありません。こちらに来る前に、しっかり休ませていただきましたし」



なら、いいんだけど・・・・・・うーん、やっぱり心配だよ。

私は歌唄ちゃんみたいなキャラ持ちじゃないから、その辺りのフォローも出来ないし。



「ね、中のヤスフミはどうかな」



小声で、そっと聞いてみる。するとシオンも、同じくらいのボリュームでそっと答えてくれた。



「大丈夫です。ただ、少し退屈していますね。実際動けているわけではありませんし」

「そっか」



別にシオンの身体にヤスフミの意識が移るというわけじゃないらしい。

つまり、ヤスフミの意識は身体の中。その中で、ずっとジッとしてる。



「確かに、それは退屈だね」

「そうですね。戻ったら、ちゃんと身体をお返ししないと」





真剣な顔でそう言うシオンを見て、少し笑う。シオンは疑問顔だけど、それでも。

シオンは、ヤスフミの身体を借りている意識らしい。だから、大事にする。

見ていて、気づいた。シオンは身体に傷がつかないように、本当に慎重に動いてる。



・・・・・・ヤスフミの一番の味方ってことは、ヤスフミの事が好きだと思う。だからなんだよね。





「・・・・・・出来れば、このまま終わってくれると嬉しいんだけど」

「フェイトさん、それは完全に事件が起きるフラグですよ」

「そうなのっ!?」



シオンが、力いっぱいに頷いた。それに、思わず汗が頬を伝う。

あ、危ないよね。それは。私、もしかしなくても地雷を踏んだかも。



「踏みましたね。だから、緊急警戒警報が鳴り響くわけですよ」



そう、シオンが言った通りに鳴り響いた。・・・・・・え?

緊急警戒警報が鳴り響いた。けたたましく響く音に、辺りが一瞬で緊張に包まれる。



「シ、シオンっ!!」

「・・・・・・私とした事が、地雷を踏んでしまいました。こうやって例え話で言うのも、フラグだと言うのに」

【そうだよバカっ! てーか、フェイトよりおのれの発言の方が問題だよっ!? どうしてくれんのさこれっ!!】



あ、ヤスフミの声だ。よかった、ちゃんと起きてたんだね。

・・・・・・って、だめだよっ! そんな大声出したら、他の人に気づかれちゃうっ!!



「だが、断る」

【意味分からないからっ!!】

「だから、ダメだってー!!」










とにかく、なのはと合流して、会場の状態も確認して・・・・・・よし、落ち着いてきた。





異変が起きてるのは間違いないんだ。だったら、今私がやるべき事をやる。うん、しっかりしよう。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・フェイトちゃん、シオン、そっちはっ!?」

「だめ。階段もエレベーターの入り口も、完全に閉じてる」

「会場への道筋も同じくです。少なくとも、私達がここから入るのは無理でしょう」

「というか、会場内に高濃度のAMFが敷かれてるみたい。中で魔法は使えないよ」





・・・・・・この辺りは、予想通りだね。というか、動力系統も全部やられちゃってる。

警報が鳴って数分。外から、エネルギー砲撃や、ガジェットの攻撃する様が見える。

ガジェットが中央本部を守る魔力バリアへ突撃して、それを中和。そうして開いた穴から、他が侵入。



事前にシミュレートした通りに動いてる。まずい、この流れで来ると・・・・・・早目にスバル達と合流しないと。



いや、訂正が必要か。シミュレートよりも、速度が何割増しかで速い。なんで、こんなに?





「今、他の局員さんがエレベーターのドアを開けてくれてるんだけど・・・・・って、シオンっ!?」



シオンが、なのはの言葉を気にせずにそのままスタスタと歩く。目指すは、そのエレベーターのドア。

開けるために四苦八苦していた局員さんを手で払いのけ、シオンは・・・・・・両手を伸ばした。



「・・・・・・・・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



そして、強引にエレベーターのドアを、力ずくで開けた。

僅かに開いていたドアの隙間は、一気に開いた。



「ふぅ。中々に頑丈でした」

「な、なにあのバカ力っ! フェイトちゃん、あれなにっ!? 魔法とか使ってないよねっ!!」

「う、うん。そのはずなんだけど・・・・・・。とにかくなのは。あそこから」

「・・・・・・うん」





シオンが開けてくれたエレベーター・・・・・・というより、それを牽引するためのワイヤーを使って、私達は下に下がった。

手に魔力を宿して(シオンは不思議な光)、そのままワイヤーを握って、一気に降下。

結構なスピードが出てるけど、大丈夫。訓練校でこういう訓練はやったから。



というか、シオンが手馴れてる。なんというか、ここはビックリかも。





「・・・・・・こんなの、訓練校以来だけど、色んな訓練、やっぱりやっておくものだねっ!!」

「そうだねっ! というか、シオンはさっきの一体どうやったのっ!?」



なのはが、自分の下に居るシオンに、そう声をかける。

そして、シオンはワイヤーを滑りながら、同じくらいの大きさの声で、返した。



「キャラチェンジは、元々宿主の可能性を引き出す能力ですっ! あれは私というより、お兄様の持っている可能性の力ですわっ!!」

「じゃあ、恭文君も将来的にはあんなこと出来るようになるのっ!?」

「可能性はありますっ!!」



そ、それは恐ろしいかも。というか、すっごい力持ちだよね。魔法とか使わずにあれなんて。



「とにかく、まずはナカジマさん達と合流ですねっ!!」

「そうだよっ! それから、現状に対処っ!!」

「面倒ですわねっ!!」

「うぅ、そこは言わないでっ!? というか、基本的にルール違反はダメなんだからっ!!」










なのはとシオンが仲良くそんなことを言っているのを、ちょっと微笑ましく思いつつ、私達はどんどん下がっていく。





そして、すぐに最下層・・・・・・中央本部の駐車場のところまで出てきた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



現在、うちとシグナム。カリムとシスター・シャッハは、会議場の中。

そして、とっても困っている。うん、その理由は簡単や。

10数分前に色々やらかしてくれとる襲撃者のせいや。そのせいでうちら・・・・・・あはははは。





現在、思いっきり閉じ込められてます。










「・・・・・・電力が落とされたっ!?」





ちゅーか、ドアも閉まって出入りが出来んようになっとる。

あぁもう、こういう時自動式は嫌やわ。時代はやっぱ、アナログやて。

あと、それだけやない。AMF濃度がめっちゃ濃い。



これ、魔力が完全に結合出来んくなってる。





「シグナム、通信は」

「だめです。妨害を受けているようで、繋がりません」

「・・・・・・やられたっ!!」



・・・・・・・・・・・・って、言うわけあるかいボケっ! この程度、想定済みやっちゅうねんっ!!



「ふふふ・・・・・・TV版のうちらと同じ思うたら、大違いやでっ!? あんなお間抜けするわけあるかっ!!
とまと版機動六課は、最初から最後までクライマックスなんやからっ!!」



そこまで言って、固まる。そしてうちは、頭を抱える。



「・・・・・・あかん、マジで恭文の口癖が移っとる」

「はやて、ヒロリスの口調も移ってるわ。最近、それをよく言ってるの」

「マジかっ!? あぁ、弟子仲間やからもしかしなくても当然やったりするよなっ!!」





とにかく、みんなに指示は飛ばしてる。シオン・・・・・・恭文も、ちゃんと隊長二人と居る。

フォワードも、絶対に単独行動はせんように言うてる。うちらがやれる事は、基本的に全部やっとる。

この辺り、ナカジマ三佐やクロノ君にリンディさんに、協力してもらった成果や。マジ感謝しとる。



てゆうか、あれや。情けないことに、ここも予想通りなんよなぁ。予想より侵攻スピードが速いけど。

会議場の人間を誰一人出られんようにするちゅうところも、実は想定したシチュの中にある。

で、悲しいけどもう一つついでに、うちとシグナム、シャッハとカリムが閉じ込められてるのも、予想通り。



なんやろ、ちょおムカつくわ。あー、普通にシグナムに、最初にトイレとか行かせとけばよかったわ。



で、ずっと戻って来ないんよ。女の子は、色々大変やからなぁ。・・・・・・そう、スターリンのようにや。





「シグナム」

「はい」

「うちら、やっぱ本格的に手出しは出来んようや」

「そのようです。とにかく、私はシスター・シャッハと一緒に出入り口の確保を」

「うん、お願いな」










そう、全部想定の範囲内や。うん、結構ガチにな。そやから、恭文の武装持ち込みも認めたんやし。





あぁ、そやけどイライラする。マジでイライラする。うち、ファイズベルト借りとくべきやったかも知れん。





せっかく、アイツ以外でも使えるようになったっちゅうに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・駐車場に出ましたか。事前にお兄様とやった打ち合わせでは、ここからすぐのはず。

まぁ、素直に行ければという感じだけど。出来れば、素直であって欲しいとも、思ったりする。

そう、何事も素直が一番。だから、私達は合流地点に向けて、走り出す。・・・・・・そして、気づく。





私達の前方から、数本の投擲用の短剣が飛んでくるのに。それは、目の前に着弾して、爆発する。










「・・・・・・お二人とも、大丈夫ですか?」



渦巻く爆煙に、私達は痛感する。局のルールなんて、クソ食らえだと。

そのおかげで、下の人間は非常に迷惑をこうむる。そう、今の私達のように。



「うん、なんとか」

「私も、同じくだよ。てゆうか、これってまさか」





高町教導官の顔が、青ざめている。本当に、敵の侵攻スピードが速過ぎるから。

お兄様達の予測より、ずっと速い。その上、相手はこちらの先回りまでしてきてる。

でも、どうやって? 普通に内部で誰が警備するなどは、極秘事項のはずだったのに。



あぁもう、考えるまでも無い。敵の攻撃速度を考えれば、答えは一つだけ。



局の内部に、スカリエッティの内通者が居る。だからこそ、攻撃対象の行動まで把握出来ている。





”だから言ったでしょうが。武装は絶対必要だってさ。あぁもう、こうなるんじゃないかと思ったよ”

”お兄様、今更ですよ。・・・・・・これは、戦闘機人のISでしょうか”

”多分ね。それも、相当に強めの能力だよ”



気配は・・・・・・一つ。それも、相当強め。油断したら、簡単に負ける。

というか、フェイトさんも高町教導官も武装をしていない。そこを考えると、かなりまずい。



「・・・・・・IS、ランブル・デトネイター」



声は聞き覚えの有るもの。幼い少女のようでありながら、大人のようにも聴こえる。



”この、声・・・・・・!!”



・・・・・・私は、あなたの事を知っている。あなたは知らないだろうけど、それでも。



「それが、あなたの能力ですか」

「そうだ」

「察するに・・・・・・ナイフを爆発させる能力」



私は、そこまで言って考えを変える。というか、ちょっとだけハッタリをかます。



「いえ、違いますね。金属物質を爆発させる能力・・・・・・と言ったところでしょうか。
金属という名の触媒があれば、何であろうと起爆させられる力」



爆煙が晴れていく。その向こうに見えたのは、青紫のスーツの上に、灰色のコートを着た女の子。

その子の気配が、私がそう言った途端に少しだけ変わった。感心したような、驚いたようなものに。



「ほう、初見で姉の能力を見抜くとは・・・・・・驚いた。何者かは知らないが、中々の使い手と見える」

「あら、簡単な推理ですよ。子どもでも出来ます」



能力名・・・・・・デトネイターは、起爆剤という意味だもの。単純明快も、時には仇ね。

なお、金属物質どうこうは、完全な当てずっぽう。正直、外れてもいいくらいの勢いで言った。



「というより、否定しないんですか」

「する必要もない。・・・・・・知られたところで、今のお前達では、対処は出来ない。
・・・・・・あぁ、そう言えば自己紹介がまだだったな。ナンバーズの、チンクだ」

「これはご丁寧に。私は、シスター・シオンと言います」

【なにのんきに自己紹介っ!? お願いだから、空気読んでー!!】










そして、彼女は両手でそれぞれ二本ずつのナイフを構える。・・・・・・投擲による中距離攻撃。

今のを見る限り、複数のものに同時に能力をかけての攻撃は可能。そこは厄介。

そして、現状では投擲だけではあるけど、それだけしかしないとは限らない。ここは警戒対象。





あぁ、そうそう。あとはここが重要か。お兄様に身体を返したとしても、苦戦は必死。

なぜなら、お兄様の手札とチンクさんの能力は、あまりに相性が悪過ぎる。絶対的に不利。

その上、あの威力を考えると、フェイトさん達は戦力外と言ってもいい。





そして、ここでお兄様に身体を返した場合、どういう手に出るだろうか。

もう想像するのもバカらしいくらいに、そこは分かり切っている。

お兄様は、とールガンを使おうとする。そうして、チンクさんを・・・・・・殺す。





お話することを諦め、この状況で自分達を守る一番いい手を使うに決まっている。

なにより、この状況で躊躇う事を、戦闘者としてのお兄様が、許すはずがない。

私が身体を返した瞬間にコインを取り出して、ドバーンですよ。・・・・・・なら、やるしかないか。





私は、お兄様に諦めて欲しくない。何も、諦めて欲しくないから。




















(第25話へ続く)




















あとがき



古鉄≪というわけで、2009年最後の更新なのに、普通に気になるところで終わりました。
みなさん、今年は大変お世話になりました。本日のあとがきのお相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「蒼凪恭文です。・・・・・・というわけで、シオン対チンクに・・・・・・って、ちょっと待ってっ!? この展開ありなんかいっ!!」

古鉄≪大丈夫ですよ。当初のプロットでは大苦戦して、そのままキャラなり覚醒して、無双という展開でしたが、それだと『お話』にならないと気づいたので、それはありません≫





(注:事実です)





恭文「そ、そうなんだ。まぁ、それなら安心だね。・・・・・・でも、相性悪いよなぁ」

古鉄≪普通に接近戦で相手は無理ですね。中距離戦での手札をフルオープンにする必要があります≫

恭文「マジックカードとかブレイクハウトとかだね。普通にやったら、チンクさん強いもの」

古鉄≪オーバーSのゼストさんも、隙を突けたからとは言え倒してますから。
シェルコートによる防御能力は、施設爆発レベルの破砕でも防げるそうですし≫





(注:Wiki参考です)





恭文「ただ、救いはあるのよ。スカリエッティ一味の戦闘機人は、全部IS頼みで戦うから。
あと、マルチスキルじゃないから、一人につき使う能力は一つだけ」

古鉄≪一種の特化キャラクターなんですよね。そのため、そこに対する対処が出来れば、勝機はあります。
そしてチンクさんの場合は、空を飛べないというのもマスターにとっては大きいアドバンテージの一つですね≫

恭文「ようするに、空中とか・・・・・・は、屋内戦闘だからアウトだけど、宙に浮いた状態の機動力は、僕の方が上」

古鉄≪それで、アレですよね? 勝ってまたフラグを立てるんですよね?
チンクさんの柔らかで可愛らしい身体を好き勝手に弄りまわし≫

恭文「そんなことしないよっ! てーか、フラグなんて立てないからっ!!」





(その言葉に青いうさぎ、青い古き鉄をとっても疑わしい目で見ている)





古鉄≪でも、空海さんとかは誰かを助ける度にかっこいいこと言って、フラグ立ててますし≫

恭文「空海と一緒にしないでよ。普通に、アレはすごいじゃないのさ。てーか、人生の中で1万人だっけ?」

古鉄≪らしいですね≫

恭文「空海が不幸なのってさ、イマジンブレイカーのせいじゃないよね?」

古鉄≪あぁ、あなたもそう思いますか。実は、私もなんですよ。
普通に、それだけ女の子のフラグを立てるから、あぁなるんじゃ≫

恭文「人生の中で、色々なバランスを取っているんだね。分かります」





(どこからか、『だからそれは俺じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』という声が聞こえたけど、二人はまったく気にしない)





古鉄≪現に空海さんは、原作やテレビで歌唄さんのフラグを立ててますから≫

恭文「あぁ、仲良かったんだよね。で、エルとかイルが段々と関係を疑ってる。・・・・・・何したのかな」

古鉄≪知らないところで、右手で助けたんですよ。こう、かっこいい説教なんかかました上で≫

恭文「アレだよね? 『まずはその幻想を、ぶち殺すっ!!』・・・・・・ってやつ」

古鉄≪かっこいいですね、空海さん。さすがはガーディアンのJチェアですよ≫





(やっぱり、どこからか『だから、マジで人違いなんだよっ!!』)





古鉄≪そう言えば、何の話でしたっけ≫

恭文「えっと・・・・・・空海の幻想殺しなら、チンクさんの能力も相手出来るってとこまでだったよね」

古鉄≪あぁ、そうでしたそうでした。異能の力なら、なんでも消せますから≫

恭文「でもさ、投擲されたナイフは爆発しないだろうけど、ナイフで怪我はするんだよね」

古鉄≪アレが消すのは異能の力だけで、物質的なものは消せないそうですから≫

恭文「例えば、炎を発生させる剣とかの炎は消せるけど、それだけで剣自体は残るとか」





(ニコ大百科に書いてたような・・・・・・)





古鉄≪ただ、物質の存在に魔術や異能の力が深く関わっているなら、触れただけで消去ですよ≫

恭文「だから、服がびりびりーだしね。・・・・・・そうなると、爆発とか消せるかなぁ」

古鉄≪爆発消しつつ、対処して説教をかましつつ、右手で殴るわけですね。分かります≫

恭文「とにかく、これからの空海の活躍に期待ってことで、本日はここまで。お相手は、蒼凪恭文と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンでした。いやぁ、次回の空海さんVSチンクさんの戦いは、楽しみですね≫

恭文「そうだね。空海の右拳がチンクさんにうなるかな? でも、空海は女の子キャラを基本殴らないしなぁ」

古鉄≪やっぱり、お説教で戦闘不能状態に追い込むんでしょうか≫

恭文「そこだよね。・・・・・・あ、みなさんよいお年をー」

古鉄≪よいお年をー≫










(何かを色々と間違えつつ、二人の話は盛り上がる。で、そのままカメラフェードアウト。
本日のED:川田まみ『masterpeace』)




















空海「・・・・・・いやいやっ! 二人揃って、一体なんの話してんだっ!! あと、アレは俺じゃねぇぞっ!?
てーか、普通に俺出ねぇよっ! なんで途中から俺がチンクさんと戦うみたいな事になってんだっ!!」

唯世「相馬君、頑張ってね。僕、相馬君のお説教を楽しみにしてるよ」

空海「唯世、お前も落ち着けっ! 普通に俺は出ないんだよっ!!」

唯世「そうなのっ!?」

空海「そこビックリするとこじゃねぇよっ! お前だって、Remixは出ないだろうがっ!!」

海里「しかし、ついに襲撃が始まりました。・・・・・・どうなるのか、楽しみですね」

空海「確かにな。今回は中の話だけで終始しちまったけど、外だって大混乱なんだしよ」

唯世「なお、外の話も次回以降ちゃんとやるらしいよ? もっと言うと、ナカジマさん達やヴィータさんにリインさん」

海里「そして、相馬さんの説教が炸裂するのですね」

空海「そうそう。・・・・・・って、炸裂しねぇよっ! 海里、お前まで乗るっておかしくねっ!? あぁ、なんか不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










(おしまい)





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