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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第21話 『カウントダウン、スタート?』



「・・・・・・へぇ、なのはさんからそんな問答を出されたんだ」

「うん」



あの私達がほとんど何もしていない出動に色々と苦い顔をしつつも、私はギン姉と一緒にお弁当を食べる。

で、今日出された問題を、ギン姉に相談していた。こう・・・・・・今ひとつ分からなくて。



「というか、ギン姉。今日は小食だね。お弁当、まだ10前後しか食べてない」

「今日はデスクワークが主だったしね。というか、スバルだって同じくらいだよ?」

「うー、恭文無双だったせいで、私達はほとんど何もしてないんだ」



つまり、そのせいでお腹があんまり空いてないってことだね。



「というか、無茶苦茶だよ。『ノリのいい方が勝つ』なんてさ」



そして、お弁当のとんかつの一切れをパクリ。・・・・・・うーん、色々考えてしまう。

それもかなり。なんでだろう、こう・・・・・・何かが引っかかってる。



「・・・・・・まぁ、なぎ君はああいう子だから。でねスバル、問題の話なんだけど」

「あ、うん」

「私としては、否定すべき答えだと思うな。・・・・・・母さんがね、言ってたんだ。
『刹那の隙に必倒の一撃を叩き込んで終わらせるのが、打撃系のスタイル』」



ギン姉が、左拳を握り締める。握り締めながら、その拳を強い瞳で見つめる。



「出力がどうとか、射程や速度や防御能力、相手と自分のどちらが強いかさえも、そんなの全部関係ない」



握り締めていたギン姉の左手が、鋭く閃く。そして、次の瞬間には私の首に当てられていた。

というか・・・・・・見えなかった。



「相手の急所に正確な一撃。狙うのは、ただそれだけ。・・・・・・私も、こう考えてるんだ。
そして、今日のなぎ君とリイン曹長、アルトアイゼンにも同じことが言えるよ?」

「え?」

「というか、今日のなぎ君の行動やその言葉の中に、答えがあるんじゃないかな」

「えぇっ!?」



恭文の行動や言葉の中に? ・・・・・・どういうことだろう。

少しだけ振り返りつつ真剣に考えるけど、よく分からない。



「まぁ、私は友達付き合いももうすぐ3年目に突入だから、分かるのかな?
なぎ君がよく言っている『ノリ』。それは、なぎ君にとっては、自分らしさだと思うんだ」

「自分らしさ?」

「それで、ノリを自分らしさで変換してなぎ君の言葉や行動を思い出すと、色は違うけど母さんの言葉と重なる」



ノリのいい方が勝つ。もっと言えば、自分のらしさを通せた方が勝つ?

アレ、なんか引っかかる。そう言えば恭文、強い方が勝つんじゃなくて・・・・・・あ、そっか。



「ギン姉」

「分かった?」

「うん、少しだけ・・・・・・掴めた気がする」

「ならよかった」










よし、それじゃあ隊舎に戻ってから、ティア達にも協力してもらった上で再調査だー!!




















魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第21話 『カウントダウン、スタート?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ようやく、隊舎に戻ってきた。で、スバルからギンガさんとの話の内容を聞いた。





それを聞いて・・・・・・私達全員は、再び問題と向き合うことになった。










「・・・・・・らしさを貫く、ねぇ」



いや、確かにあれはすっごいパワーだったとは思うわよ? でも、さすがになぁ。



「だけど、大きいヒントだと思うんだ。というかさ、私達の疑問自体が、間違ってたんじゃないかな」

「それ、どういうことよ」

「・・・・・・あ、私分かりました」



キャロが、手を上げた。エリオは・・・・・・あれ? なんか沈んでる。

そう言えば、今日も様子がおかしかったけど、どうしたんだろ。



「私達は、『誰が強いか』って聞いてましたよね? もっと言えば、単純な最強を答えとして求めてた」

「まぁ、そうよね。・・・・・・あれ?」

「多分、そこから間違いだったんです。恭文さんはともかく、隊長達の『自分らしさ』を、考えてなかったんじゃないでしょうか」



自分らしさ・・・・・・それはなに? 魔導師の技能や、戦闘方法と仮定した場合、どういう答えになる?



「あぁ、そういうことか。よし、じゃあもう一度隊長達に聞きに行くわよ」

『了解っ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・他の隊長達に勝つ方法?」



私が聞くのは、八神部隊長。で、質問の仕方を変えた。



「はい。八神部隊長のスキルは、昼間お聞きしましたけど、それでどうやって勝つかを聞きたいんです」

「まぁ・・・・・・そうやな。射程外から広域魔法をぶち込むっちゅうんが基本やな。
うちは詠唱こそ遅いけど、火力は相当やもん。一発決まれば、それだけで終わる」



八神部隊長は、固定砲台。そして、これが八神部隊長の魔導師としての『らしさ』。



「あとは、チーム戦やな。うちの子達との連携戦なら、そない簡単に負けたりはせぇへん」

「なるほど・・・・・・」





話を聞きながら、思った。欲していた答えは、これだと。単純な最強なんて、きっと居ない。

勝つのはノリ・・・・・・自分らしさを貫ける人間なんだ。強いから勝つなんて単純な考えは、きっとだめ。

てーか、そんなのバカの考える事だったのよ。それなら、私なんかはなのはさん達には絶対に勝てない。



戦いは、強い方が勝つなんて、単純なものじゃない。そうでなくちゃいけない。

そうでなければ、全部スペックだけで決まってしまうから。だけど、実際は違う。

そう、強いから勝つなんて、間違ってるのよ。そんな考え方、否定するべき。





「なんやティア、めっちゃ嬉しそうやけど、どないしたんや?」

「いえ、なんでも」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・キャロも、誰が強いのとか興味あるの?」



私は、今度はフェイトさんに直接話を聞きに来た。

フェイトさんは、しゃがみながら優しく私の目を見てくれる。



「えっと、そういうのじゃないんです。後衛として、正確な戦力の把握は必須スキルですし」



あとは、スバルさん達が一生懸命考えているので、自分でも考えたくなった。

それで、もう一つ理由がある。・・・・・・それは、恭文さんがキッカケ。



「スーパーオールラウンダーを目指す場合、どういう風にすればいいのかなぁと」

「そっか。・・・・・・でも、大変だよ? 現状の局で、そういう立ち位置の人は本当に少ない」

「だけど、なってみたいんです。恭文さんに戦闘映像を見せてもらってから、その気持ちが強くなって」



今まで、私は後衛としての自分で精一杯だった。だけど、あの映像を見て価値観が変わった。

私が魔導師として目指す強さは、私らしさは、あそこにあるんだって、そう気づいたから。



「えっと、ダメ・・・・・・でしょうか」

「ううん、ダメじゃないよ。ただ、今は事件がいつ起こるかもわからない。
だから、中々難しいってこと。そして、教導だけでどうにかなる話でもないんだ」





中途半端なスキルを持っていても、実戦では通用しない。

それは、なのはさんとヴィータ副隊長にも、言われた事。

だからこそ、今の私はフルバックとしての修練が主。



他のポジションの技能習得は、多分・・・・・・スカリエッティ関連の事件が、終わってからになると思う。





「キャロが、これから自分でも努力して、たくさん時間をかける必要はある。
壊れないように、無茶しないように、じっくりと。そこだけ、覚えていて欲しいな」

「・・・・・・はい」

「うん、いいお返事だ。でも、ちょっと納得したよ」



フェイトさんが、嬉しそうに笑う。それがどうしてか分からなくて、私は首をかしげてしまう。



「キャロが、シオンを見れる理由。多分、そういう風に『なりたい自分』を見つけたからだね。もっと言うと、目標と言うか、夢」

「・・・・・・かも、知れないです」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・というわけで、みんなで答えを考えてきました」



隊舎に戻ってきたスバルが、いきなりオフィスで仕事を終えようとしていた私にこんな事を話した。

なので、当然のように私はビックリする。普通に、もっと時間がかかると思ってたのに。



「えっと、私が昼間出した問題の・・・・・・だよね?」

「はい」



一応確認してしまうくらいに、驚いていた。

だって、私とフェイトちゃんが前に、ファーン先生から問題を出された時・・・・・・一週間かかったのに。



「それで、答えは・・・・・・」



・・・・・・答えは?



「『戦いはノリのいい方が勝つ』ですっ!!」



その言葉に、私は机に突っ伏した。それも思いっきり。なんだろう、急に頭痛がし出した。

あぁぁぁぁぁぁっ! 恭文君の悪影響を思いっきり受けてるっ!? というか、正解ではあるけど違うからっ!!



「あ、間違えました。えっと、そうじゃなくて」

「うん、そうじゃなくて?」

「自分より『総合力で』強い相手に勝つためには、自分が持っている相手より『強い』部分で戦う・・・・・・です」



その答えに、さっきまで感じていた頭痛が一気に吹き飛んだ。

というか、私もしかしたら凄く嬉しそうな顔してるのかも。うん、してるね。



「もっと言うと、自分らしさを貫けた方が勝ちます。単純に強い方が勝つなんて、簡単なものじゃない。
自分の得意な部分を磨き上げて、これなら誰にも負けないって自信と気概を持って、戦いに当たる」

「・・・・・うん」





・・・・・・うん、そうだよ。それでいいの。それが正解だよ。強い方が勝つってだけなのは、間違いなんだよ。

例えば、スバルならパワー。ティアは幻影と射撃。エリオはスピード。キャロは支援と召喚。

恭文君なら、持って生まれた高い戦闘センス。そして・・・・・・敵さえも巻き込む、嵐のような強烈なノリ。



技量でも、心構えでも、なんでもいい。大事なのは、これだと思える武器を強くしていくこと。

絶対の正解じゃないけど、『強さ』という言葉への一つの答え。それが、この問題。

・・・・・・うん、これなら大丈夫かな。てゆうか、本当に早く分かっちゃったなぁ。



私やフェイトちゃん、もしかしたらそうとうダメだったのかも。だって、恭文君も即答だったのに。





「それに、チームがそれぞれの強い部分を持ち寄れば、より万全に近くなる。
だから、問題の言葉は正しくもあり、間違ってもいる。・・・・・・という感じなんですが」

「じゃあ、それが正解かどうか、これから実地で確かめていかなきゃね」



ニッコリ笑顔で言うと、スバルが『え?』と呟いて固まった。



「なな・・・・・・なのはさんっ!? 正解は教えてくれないんですかっ!!」

「明日の朝練で多分分かるよ」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」










そう、教えないよ? これはあくまでも答えの一つなんだから。





だから、自分達だけの答えは、その手で探していこうね。大丈夫、きっと見つかるよ。





手を伸ばせば、探していこうとすれば、答えはいつだって、目の前にあるんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



スバル達がなにやら色々納得した後、ライトニング両隊長と、チビスケはここに集合。





なお、場所は部隊長室や。で、色々とお話して、ようやく一区切り付いたところ。










「・・・・・・スカリエッティは子どもかぁ。で、世界征服したいから管理局潰そうとしてると。
なぁ、フェイトちゃん。うちや後見人の皆々様に、それを信じろ言うんか?」



普通にありえへんで? そんな世界征服しようとする犯罪者やなんて。

うち、あんまりにぶっ飛び過ぎてて、信じられへんもの。



「でも、そう考えると今まで疑問だった部分が綺麗に解けるんだ。
ほら、どうして管理局を潰そうとしてるのかって、結構謎だったよね」



うちと、同席しているシグナムは、当然のように疑問顔。・・・・・・まぁ、言うてることは分かる。



「主はやて、私もまぁ・・・・・・突飛ではありますが、納得出来る部分は多いと感じます。
クーデターという線が消えた場合に限りですが、単純な分この答えは分かりやすいです」

「分かりやすいから、納得出来る部分も多いっちゅうわけやな。
確かにそうなんやなぁ。例えば武力証明にしても、管理局相手はリスク高いもん」





武力証明と言うのはようするに、ガジェットや戦闘機人なんかを、別の悪党に売りつけるっちゅう話に繋がる。

売るにしたって、ちゃんとした使えるもんやと分からんとあかん。そのための証明が必要。それが武力証明や。

そやから管理局を襲ってぶっ潰して、証明する。・・・・・・でも、これはあんまりにリスクが高過ぎるんで、疑問やった。



そういう証明なら、わざわざミッド中央本部や本局襲わんでも出来る。なにより、これ犯罪よ?

バレんように色々やり方があるんに、なんでそっち行くかが分からんわ。

で、そこにフェイトちゃんと恭文が唐突に思いついた言う案を、乗っけてみようか。



スカリエッティはアダルトチルドレンで、自分の研究が大好き。せやけど、その研究は犯罪行為。

自分がもっと色んな事をするためには、法律・・・・・・それを施行している局が邪魔。

だったら、局を潰せばスッキリするし、自分達の好き勝手出来るんやないかと、考える。



・・・・・・あかん、普通にすんなり納得してまうわ。少なくとも、今まで感じてた疑問は、解決出来る。





「それでねはやて、スカリエッティの狙いがそういう世界征服だって考えると、AMFやガジェットを持ち出して来てるのも、まぁ納得出来るのよ」

≪現行の局では、ミッドに限らず魔導師が主戦力です。そして、防衛のための設備も、やはり魔法技術を使っている≫



というか、それしかない。質量兵器も、許可が取れれば確かに持てる。

そやけど、それは魔法の補助みたいな扱いや。絶対に、主戦力とちゃう。



≪あの男の手札は、現時点で見えているのに限りという条件こそ付きますが≫

「対魔導師戦・魔力を使用した防衛設備の制圧戦に特化したもんばっかり、揃えてる言うわけか。
・・・・・・管理局と、真正面から戦争でもする気かい。正気の沙汰とは思えんで」

「そうだね。だけど、それだけじゃなくて、支配した後も含めてるとしたら?」



例えばの話や。局が犯罪者に負けて、納得するわけがない。

当然、残存勢力はスカリエッティの排除に向けて、抵抗を開始するやろうな。



「結局それも、魔導師が中心になるだろうし。そうなったら、一般ピーポーはお手上げだよ」

≪全く、魔法や魔力に頼り過ぎですよ。だから、AMFを持ち出されただけでお手上げ状態になるんです≫

「仕方あるまい。お前達が試そうとした超伝導レールガンのように、ぶっちぎりな質量兵器が前時代には多数有った」





別に、管理局が推奨しとる、今の魔法文化万歳な風潮は、何の理由もなしにやっとるんとちゃう。

前時代にそういうので散々やらかして、甚大な被害を呼び起こしたことから、学習・反省した結果や。

人もそうやし、世界がいくつも滅びた例もある。そんな愚かな歴史に終止符を打ちたかったんよ。



そうやな、次元世界全体が質量兵器アレルギーを起こしとるって言えば、分かるやろうか。

質量兵器の『製造してしまえば、誰でも簡単に使える』という部分が、余計にそれに拍車をかけとる。

まぁ、魔法も似たようなもんではあるけど、アレルギーのおかげでまだえぇもんと受け取られてるわけや。





「次元世界全体が、魔力に頼らない武装に対して、強いアレルギー反応を持っていると言ってもいい。ある意味では、仕方の無いことだ」

「けど、今回はそれがぶっちぎりで仇になってるんのも、事実や。
うちらかて、例外ちゃうもん。AMFで魔力完全キャンセルとかされたら、途端にただの人や」

「僕は違うけどね。555ジャケットも、今日ヒロさん達が送ってきた装備も、魔力が完全キャンセルされても使えるし」



あぁ、あれやな。カステラと一緒に送ってきた、あのZERONOSジャケットの改修版。

なお、まだ未完成やから、シャーリーが調整しとる。もうちょい時間かかるとか。



「・・・・・・マジでデータ取らせて欲しいんやけどな。
てーか、アルトアイゼンとジガンスクードにも、同じ改修しとるやろ」



シャーリーから聞いとるよ? AMF対策の一環として、頼まれたってな。

てーか、うちらにも内緒ってどういうことや? マジでそのデータ欲しいんやけど。



「それはだめ。知り合いから、局には教えないで欲しいって言われてるし。
あ、シャーリーに口割らせようとしてもだめだよ? その辺り、しっかりお願いしてるし」

「・・・・・・ヤスフミのお友達、局のこと嫌いなのかな」

「というより、外部に流出したら、結局いたちごっこだもの。そこを恐れてるんだよ」



つまり、犯罪者もAMF関係なく、セットアップとか出来るようになるのは、怖いと。

まぁ、そういうことなら納得やな。・・・・・・どっちにしても、遅かれ早かれ直面しそうな問題やけど。



「そっか。それなら、一応は納得だよ。じゃあ、シャーリーもバックアップは取ってないんだよね?」

「うん」










とにかく、話戻そうか。スカリエッティの戦力の事やけど、うちも気にはなってた。

なんで戦闘機人で、なんでガジェットで、なんでAMFなのかと。そやけど、答えはこれで出るな。

今の話から考えていくと、それらを中心に(うちらの見える限りで)手札構築してるのも納得行くんよ。





AMFは魔導師殺しもいいところ。戦闘機人の能力は、魔法とちゃう。つまり、AMFに干渉されない。

局の戦力や設備は、シグナムが言うたような歴史背景がある故に、魔法技術に頼り切っとる。

スカリエッティが、最初から局を潰す事を考えた上で、そのチョイスをしたとしたら、どうや?





色々オリジナリティに欠ける部分は確かにある。そやけど、AMFも戦闘機人も昔からある技術や。

逆を言えば、下手に新技術を持ち込むよりは、リスクが少ない。古い分、信頼性が高いっちゅうことやな。

ほら、ゴルゴ13かて新商品のライフルに手出さん言うし。兵器というのは、信頼性が物を言うんやから。





100回使って壊れん古い武器と、100回使った内1回壊れてまう武器。どっちがいいかは明白やろ。

その辺り考えて、目新しさより技術の信頼性を取ったんやろ。だから、変に凄いのとか無いわけや。

まぁ、その辺りは『犯罪者でさえなければ歴史に名を残せる』とまで言われてる奴としては、どうかと思う。





でも、マジで世界征服考えとるんかなぁ? 考えてるとしたら・・・・・・笑えんジョークや。





あははは、なんつうか、うちらはこれやとアレやな。戦隊物とかに出てくる正義の組織や。










「で、そうなってくると・・・・・・もしかしたら、今までうちらが考えてたよりも、もうちょいストレートに来るかも知れんなぁ」



なんたって、相手は『子ども』やもん。絶対色んなお約束やらを踏まえた上で、喧嘩を売ってくるに決まっとる。



「舐められていますね。管理局という組織を相手に、そんな子ども染みた理由で戦いを挑むなど・・・・・・愚かです」

「だけど、それがスカリエッティの全力ですよ。てゆうか、シグナムさん忘れてません?
管理局はアイツが最初に仕掛けてきたかくれんぼに、見事に負けてるじゃないですか」



そう言われて、シグナムが固まる。てゆうか、今そう言った恭文をとても苦い顔で見る。

で、恭文は・・・・・・なんやろ、なんか楽しそうな顔をしているように見える。



「で、向こうとしては、そういうルールを踏まえた上で勝たなきゃ意味が無い。
まぁ、僕とフェイトの推論が正解なら、そういう奴になってきます」

「確かにそうだな。だが、ここからはもう負けられない。
恐らく別の遊びに切り替わる事は無いだろう。負ければ・・・・・・終わる」

「そうです。ところではやて、鬼ごっこって得意だった?」



いきなり話を切り替えてきた。で、何を言っているんやと言いかけて思い出す。

コイツが、さっき今の現状を管理局とスカリエッティ一味の鬼ごっこと比喩していたのを。



「あいにく、うちはアンタも知っての通り、幼少期は車椅子で薄幸の美少女やっとったからな。
犯罪者相手の追跡はともかく、鬼ごっこはあんま経験無い。フェイトちゃんはどうや?」

「うぅ、私は鬼ごっこ苦手だった。小学校の頃に数合わせで何回かやったんだけど、いつも鬼の男の子に捕まるの。
私の方が足も速いし、動きも俊敏なのに、それでも。それでそれで、どうやっても私は捕まえられなくて・・・・・・」





あー、そうやったな。うち、その光景は何度か目にしてたわ。・・・・・・その時も思ったことがある。

フェイトちゃんをそういう遊びに誘うんは、決まった子や。もち、男の子。

3年の時から小学校卒業まで、どういうわけか同じクラスで、ずっとフェイトちゃんの隣の席やった子や。



あの子、フェイトちゃんの事が、好きやったんやないか?

普通にそれでフェイトちゃんが涙目になっとったら、慰めてたし。

まぁ、ここはえぇか。うーん、でもそう考えるとフェイトちゃんは色々勿体ないなぁ。



かなりチャンスはあったはずやのに、さっぱりやもん。うち、うらやましいわ。





「・・・・・・ぷぷ」

「うぅ、ヤスフミ笑うの禁止っ! というか、そういうヤスフミはどうなのっ!?」

「得意だよ? だから、この勝負も実は勝つ気満々だったりする」



うわ、即答かいっ! てーか、アンタ鬼ごっこなんてしてたんかっ!!



「さざなみ寮の管理人の子どもとか、海千山千の方々の相手とかでちょこちょことね。
なお、制限ルール付きの鬼ごっこは、かなり得意」

「あぁ、影踏み鬼とかそっちやな。・・・・・・なんや、フェイトちゃんが勝てんのは無理ないよ。
こういうんは性格の悪さが出るんやから。ほら、フェイトちゃんはえぇ子やもん」

「何言ってんのさ。僕の方がいい子だよ。
てゆうか、性格悪いのはこそこそ隠し事していたはやてでしょ?」

「・・・・・・うぅ、反論出来ん」










・・・・・・とにかくや、今の話も含めた上で、もう一度整理やな。

あと、スカリエッティへのプロファイリングも同時進行や。てーか、気づくの遅過ぎやし。

うち、余りに手持ちの資料からの印象だけに、頼り過ぎてた。こないな事じゃ、あかんわ。





とは言え・・・・・・出来れば、今の話通りやと嬉しいなぁ。

そうしたら、絶対分かりやすいアクションばかりしてくるやろうし。

世界征服を狙う『悪の組織』には、そういうお約束をしっかり踏まんとなれんのよ。





さて、この鬼ごっこ・・・・・・勝つんは、うちらか向こうか。





ここから先、打ってく一手で、それは決まると見てえぇな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あの、ドクター。一体なにを見ているんですか? そろそろお休みの時間ですが」

「あぁウーノ、すまないね。いや、少し『悪の組織』というものについて勉強していたんだ」

「・・・・・・はい?」

「私達は言わば、それになるだろう?」





そこまで言うと、ウーノが納得したような顔をした。



いや、苦笑だな。優しく・・・・・・私を温かく見守ってくれている。





「確かに、そうですね。察するに、先人達から学ぼうということでしょうか」

「そんなところだ」





私はウーノにそう答えたが・・・・・・実際は違う。きっかけは、蒼凪恭文が装備していたジャケットだ。

あれを検証した結果、『仮面ライダー』というのが出てきた。それは、地球の特撮ヒーロー。

私は知らなかったが、ミッドでも有名らしい。どうやら、彼はそういうものに憧れがあるようだ。



なんというか、幼稚で笑ってしまった。だからこそ、彼は戦ってるのかとさえ、思う。





「私はもう少しだけ検証を続ける。ウーノ、君はもう休んでいていい」

「・・・・・・分かりました。では、お先に休ませていただきます」










だが・・・・・・暇潰しにその作品を見始めてから、その認識を私は改めた。

彼が『仮面ライダー』に惹かれる理由が、理解出来た。そう、幼稚と言うなら、それは私も同じだった。

まず最初に、彼のベルトの元になっている『ファイズ』という作品について軽く調べた。





それから、初代と呼ばれている作品を見ている。

具体的な話はこうだ。まぁ、思いっきりお決まりではあるが。

・・・・・・世界を征服しようとしているショッカーと呼ばれる組織が居る。





その組織に捕まり、改造されてしまった人間が居る。これが主人公だ。

しかし、洗脳のための脳手術の直前に、そこから奇跡的に脱出する。

そして、そこから『仮面ライダー』として、孤独な戦いに身を投じるというものである。





なぜだろう、見ていて震えが止まらない。映像はフィルム式で汚く、アクションも今と比べれば稚拙。

稚拙なのは、話の内容もだ。このような正義の味方、本来ならば存在するわけがない。

それなのに、この仮面ライダーというのに、なぜ私は自分を重ねようとしているのだろう。





なぜ私は、画面の中で動く架空のヒーローに、これほどの興味を惹かれているのだろう。










「ですが、あまり夜更かしなどされないようお願いしますね? 大事な作戦が控えているのですから」

「あぁ、分かっている。・・・・・・お休み、ウーノ」

「はい、お休みなさい。ドクター」










そのまま、ウーノは自室へと戻った。それを見送ってから、私はまた画面を見る。

・・・・・・ショッカーという組織は、管理局とよく似ている。

漫画が特撮映像になったそうなので、その原作についても調べてみた。





原作でショッカーは、ただの悪の組織ではない。その正体は、地球にある日本という国の政府だった。

そして、原作のみで言えば主人公は自分が住む国・・・・・・世界を相手に戦っていたのと同じだ。

まぁ・・・・・・私も同じようなものだと考えた。だが、次の瞬間にそれを自分で否定する。





画面の中で、例え作り話だとしても、必死に戦う彼の姿に自分を重ねる事を、私の本能が否定した。

先ほどから、何度もこれを繰り返している。同じだと、私は言い切れない。

その理由を自分で考える。・・・・・・私はヒーローなどではない。





いや、むしろ悪の組織の首領だと気づいた。その位置は、正義のヒーローとは真逆。

というより、さっき自分でそう言っていた。そうだ、私は悪の組織の首領だ。

今は中堅所ではあるが、それももうすぐ終わる。そう、私が首領になる。





私には夢がある。それは、刷り込まれた夢だ。だが、私はそれさえも自分の意思だと思っていた。

叶えたいのは、私の願いで、私の意志だと。だからこそ、今までこの道を歩いていた。

だが・・・・・・今、画面の中で戦うヒーローを見ていたら、言い切れなくなってしまった。





私には、あるだろうか。例え孤独でも、世界と戦う勇気が。自分の意思とやらで、その道を選ぶ勇気が。

自分の人形となる娘達を作り、刷り込まれた夢さえも自分のものだと言う今の私に、出来るだろうか。

そこまで考えて気づく。私は、迷っているのかと。そう自分に問いかける。問いかけて・・・・・・笑った。










「くくくく・・・・・・ふはははははははははっ! あぁははははははははははははははっ!!」





誰も居ないラボ、その中で私は笑った。いや、笑う事しか出来なかった。



胸の中に・・・・・・今まで感じた事のないようなポッカリと穴が開いたような感じがした。



私は、それを埋める事が出来ない。だから、それしか出来なかった。





「・・・・・・・・・・・・うるせぇっ!!」



ゲシッ!!



「グハッ!!」



後ろから声がした。というより、蹴られた。痛みに顔を顰めつつそちらを見ると・・・・・・怒りの形相の娘達が居た。

なお、全員寝巻き姿だ。当然、私の趣味。これも実験の一つだと解釈してもらえると、ありがたい。



「ドクター、いい年こいた大人が何夜中に大笑いしてんだっ!?
つーか怖いしっ!! 何よりアタシ達が眠れねぇだろっ!!」

「そうっスよっ! 乙女に寝不足は厳禁なんっスよっ!? そこの辺り、分かってないっスよねっ!!」

「姉は・・・・・・眠い」

「ドクタァ、色々とはしゃぎたいお気持ちは分かるんですけどぉ、出来ればそういうのは昼間にしていただけると、クアットロもとぉぉぉぉぉっても嬉しいですわぁ」

「・・・・・・・・・・・・す、すまん」










なお、この後とても辛いお説教の時間が待っていたのは、言うまでもないだろう。そして、私は正座だ。

ビンタや拳が飛んできたのは、いつものことなので、置いておく。・・・・・・そうだ、いつものことなんだ。

ただ、娘達の私へのお説教を聞いていると、先ほどの穴がまた大きくなるのを感じた。





私は、どうしたと言うのだろう。なぜ迷う。なぜ・・・・・・こんな事を思う?

私は無限の欲望。そのままに進み続けるのが、私の存在意義だと言うのに。

もう一度、画面の中のヒーローを見る。私が説教を受けている間も、変わらずに戦い続ける英雄を。





・・・・・・彼らならば、あるいは、彼らのような人間ならば、答えを知っているだろうか。

教えてくれ。私の中の『欲望』が答えを求めている。だが、知らないんだ。

私の中の知識には、私を取り巻く世界の中には、答えがないんだ。





私は、なぜ迷った? 君達を見た時から・・・・・・いや、違う。

彼女に、『タマナシ』と嫌味をぶつけられた時から、私は迷っている。

私は、このために時間を、願いを、私自身を賭けてきたつもりだった。





だが、実際は違った。今感じている本当の意味で賭けた事による充足感など、なかった。

そう、私は私の夢に賭けていたつもりで、手を伸ばしていたつもりで、何もしていなかった。

安易な保険に逃げ、無限の欲望を謳いながらも、その看板に泥を塗り続けていた。





私は、欲望のままになど生きてなかった。どこかでその事実を、突きつけられたような感じがした。

もし、本当に賭けていたのであれば、私は躊躇い無く最初から、コピーなど作らなかったはずだ。

安易な逃げより、生きている事を感じさせるこの充足感を選んでいた。だが、実際は違う。





そうだ。本当に私の『夢』は、私が目指す『世界』は、私の欲望を満たすものなのかと、迷い続けている。

だが、私の中にその答えはない。私の知る存在の中にも、答えはない。

ならば、どこにあるのだろうか。今は、それさえも分からない。そして、なぜだろうか。





分からないと思うことが、思い通りにならない自分が、とても楽しく思ってしまう。

本当に、私はどうしたというのだ。私は、このような事が嫌いだったはずだ。

思い通りにならない世界が、憎かったはずだ。なのに、なぜ・・・・・・私は。





娘達に殴られつつ、こんなことを考えてしまうのだろう。まずい、色んな意味でダメになっているのかも知れない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・出動の翌日、お昼に僕は、シャーリーとフェイトにちょっと相談事をしていた。





場所は、六課のデバイスルームのラボ。そう、先日のアレで送ってきてもらったものがあるので、それの相談だ。










「・・・・・・なぎ君、なぎ君の友達って一体何者なの?」



画面を見ながら、シャーリーが呆れているとも、感心しているとも言える声でそう言ってくる。

画面に映るのは、もう一つのパワーアップアイテムの図面。



「うー、私負けてる。こんなの、今の私じゃ1からなんて作れないよ」



とか言って、頭をかきむしる。・・・・・・どうやら、シャーリーにとってこれは相当ショックだったらしい。



「あぁ、シャーリー落ち着いて? 大丈夫だから。・・・・・・でもヤスフミ、そのお友達って本当に何者?」 



フェイトの視線が厳しい。というか、お仕事モードに入っている。

普通に気になっているという領域を超えている。もう、明らかな疑問だ。



「そろそろ、教えてくれてもいいんじゃないかな。私、名前も知らないよ」

「ん、普通の人達だよ」

「違うよね。このジャケットも555ジャケットも、ヤスフミが使いやすいように本当に細かいところまでセッティングされてる。
その上、AMFの影響も受けないようにしてるみたいだし、どういうことなのかな。これ、普通じゃないよ」

「・・・・・・説明しないと、だめ?」



で、フェイトはしっかりと頷いた。シャーリーも同じく。



「というか、紹介してよっ! これだけの物が作れる人達なら、ぜひお会いしたいしっ!!」

「あぁもう、分かったよっ! ちゃんと説明するから、フェイトもその怖い目はやめてっ!?
・・・・・・実は、先生の弟子だった人達なんだよ。てーか、フェイトには前に話したよね?」

「先生? ・・・・・・ヘイハチさんっ!?」

「そうだよ」



で、改めて説明した。今は局の魔導師を引退して、特殊車両開発部に居ることとか。

無茶苦茶強いこととか、その人達とここ2年前後、修行してたこととか。



「・・・・・・でも、よく考えたらその人達は?」



フェイトが、ハッとしたような顔で言った。そして、僕に顔を近づける。



「そうだよ、この間は気づかなかったけど・・・・・・ヤスフミの現状がコレなんだから、その人達だって」

「大丈夫、今は聖王教会に居るから。はやても、知ってる」

「そうなのっ!?」

「うん。・・・・・・そのうちの一人、ヒロさんって言うんだけどね。
ほら、昨日カステラと一緒にこれを送ってきてくれた人」



ヒロさんがクロスフォードの分家の娘で、その関係でカリムさんとは姉妹同然なのも説明した。

そして、フェイトが納得した顔になる。ううん、違う。安心したような顔だ。



「ということは、聖王教会・・・・・・ううん、騎士カリムが保護している。だから、安心?」

「うん」

「はやてが知ってるのも、そのせいなんだね。・・・・・・でも、私達には何にも」

「二人とも、基本的に一般人だしね。そのせいでしょ」



なお、デバイスルームに変な術式や機械が、仕掛けられてないのを確認した上で話しているので、あしからず。



「とにかく、事情は分かった。でも、はやてはともかく、ヤスフミはどうして教えてくれなかったの?
ヒロさんとサリさんの事もそうだけど、お二人と一緒にしていた修行の事とか」

「・・・・・・だって、そんな大声出してアピールなんて恥ずかしいし。
修行だって、僕の勝手でやってたことだもの」

「もう、そんなこと気にしなくていいのに」



なんて言いながら、フェイトが僕の頭を撫でる。

・・・・・・うー、子ども扱いされてるみたいでなんか素直に喜べない。



「あと、ヒロさん達からも、出来れば教えないで欲しいって言われてたんだよ。
自分達は引退組で、あんまり目立つような真似はしたくないからって」

「そっか、納得したよ。ところで・・・・・・その人達は、どういう人達?」

「・・・・・・僕より強くて、同じタイプ」



そこまで言うと、フェイトが固まった。というか、シャーリーは苦笑い。

二人とも、僕の言いたい事が分かったらしい。だから、困った顔をする。



「・・・・・・・・・・・・現場で、大暴れとかするかな。うぅ、出来れば下がってて欲しいんだけど」



ごめん、フェイト。僕をそんなお願いする目で見ないで? 僕でも、二人は止められないんだから。



「とにかくシャーリー、このベルト、リインとのユニゾン時のジャケットも構築するよね。
この・・・・・・ヤスフミが一人で装着するのは大丈夫そうだけど、そっちの調整って、結構時間かかりそう?」

「あー、少しかかりますね。骨組みは出来てますけど、それでも。
だけど、仕方ないんですよね。こればかりはリアルタイムのデータがないと」

「そうだね。ヤスフミとリインのユニゾンを、直接には見てないだろうから」

「私も他の仕事があるから、これにずっとかかりっきりというのは無理ですけど」



そして、シャーリーは二本指を上げた。ピンと、高く。



「二週間ください。完璧な物に仕上げますから」

「うん、お願い。というか、ごめんね。いきなりこんなこと頼んじゃって」

「シャーリー、ありがと。助かるよ」

「ううん、大丈夫。・・・・・・さーて、忙しくなるなー♪」



シャーリーが楽しそうだ。なんだろう、喜んでくれて僕は嬉しいよ。

でも、新ジャケット・・・・・・あー、なんか楽しみだなー。



「でもヤスフミ、このジャケット扱い切れるの? 機構も独特だし、オプションパーツもあるし」



フェイトが、画面データを見ながら心配そうに言ってきた。というか、どうやら分かっていないらしい。



「大丈夫だよ。今すぐ変身したとしても、すぐに使いこなせる。
・・・・・・これね、僕が好きな特撮ヒーローのコスプレアイテムなのよ」

「えぇっ!?」

「あ、フェイトさんは知らないんですね」



ビックリするフェイトとは違い、シャーリーは納得顔でそう言い切る。



「これ、仮面ライダー電王って言う作品のキャラクターなんですよ。というか、2号ライダー」

「あ、ヴィヴィオとなのはが見てるのだ。私はお仕事が重なっちゃってて、見れて無いんだけど、そうなの?」

「そうだよ。それで、ゼロガッシャーも原作に出てる」



だって、ゼロノス好きだし。かっこいいし。『Action-Zero』が神だし。

そう、なんの問題もないのだ。ある意味では555ジャケット以上に、僕向きなアイテム。



「使い方ならばっちり頭に入ってるもの。問題ないよ」

「な、ならいいんだけど・・・・・・ヤスフミ、本当にその人達は引退組なの? これを個人レベルで作るって、おかしいよ」

「趣味と実益を兼ねてるのよ、気にしないで」

「・・・・・・あ、そうだ。フェイトさん、少し思いついたんですけど」



うん、なんですか? というか、またシャーリーはとても悪い顔をしている。



「なぎ君が最初に預かった555ジャケット、性能はともかく、AMFの影響を受けないように設計されてるんです。
さっきも話しましたけど、魔力の完全キャンセル状態だろうと、これは普通に装着・戦闘が可能なんです」



まぁ、さすがにそれで飛行とかは出来ないけど。だって、飛行だって魔法なんだから。



「うん、そうだよね。というかこれ、普通に質量兵器レベルなんじゃ」

「気にしたら負けですよ。魔法技術を使ってるんだから、大丈夫ですって。
それで、今このジャケットはなぎ君にしか使えないようになってるんです」

「・・・・・・うん、知ってるよ。ついさっきやったら弾き飛ばされたもの」



なんか、フェイトがちょっと『変身』ってやってみたくなったらしくて、そうしたのだ。

すると、見事に『Error』で変身出来なかった。そして、壁に叩きつけられた。



「で、でしたね」

「フェイト、お願いだから涙目やめない? てーか、教える前にやっちゃったじゃないのさ」

「普通はあんな風になるなんて誰も思わないよっ! というか、私痛かったんだよっ!?
うぅ、許さないから。うん、許さないよ。後でランチでも奢ってもらわないと、痛いの消えない」



膨れてそう言うフェイトを見て、僕とシャーリーは顔を見合わせる。



「・・・・・・フェイトさん、真面目にどうしました? キャラ違いますって」

「あの、僕もビックリした。どうしたのさ」

「え、えっと・・・・・・はやてが、ヤスフミはこういうキャラが好きだって言ってて」



あのバカかっ! てーか、一体フェイトに何教えてるんだよっ!!



「あのバカの言うことは気にしなくていいからっ! あと、そういうのも好きだけど、僕はいつものフェイトも好きだよっ!?」

「ちょっとなぎ君っ! なんでそこ惚気ちゃうのかなっ!! というか、フェイトさんも顔を赤くしないでもらえますっ!?」



フェイト、段々壊れていくなぁ。・・・・・・もしかして、恋愛しようと一生懸命になってくれてるのかな。

だとしたら、嬉しいな。うし、後でランチは奢ろう。それで、いっぱいお礼を言おうっと。



「それで、その設定の解除・変更コードも一緒に送ってきてもらってるんですよ。
なぎ君は新型ジャケットがありますし、もしもの備えでこっちは、フェイトさんが使ったらどうかなーと」

「わ、私がっ!?」

「あ、それいいかも。シャーリー、ナイスアイディア」

「でしょ? 自動認識で、ジャケットの性能をフェイトさん仕様にも出来るし、保険にはなると思うんだ」



賊は、戦闘機人とAMFを有効利用しようとするに決まっている。

シャーリーの言うように、保険としては充分過ぎるくらいでしょ。



「でも、ヤスフミのベルトだし」

「僕は大丈夫だよ? 新型があるんだし、そんな三つも四つも使えないよ。
それに、フェイトならすぐ使いこなせるだろうし。・・・・・・持ってて、いいよ」

「いいの?」

「うん。てゆうか、『変身』ってちょっとやってみたかったんだよね?」



少し照れたように顔を赤くして、フェイトが頷く。それを見て、シャーリー共々思う。これは可愛いと。



「や、やばいよなぎ君。フェイトさんがすっごい可愛くなってる。
なぎ君、真面目に何した? これは破壊力強すぎるって」

「えっと、相互理解を更に深めていくことにしたの。
とにかく、シャーリー。僕は大丈夫だからフェイトにも使えるようにしといてくれるかな」

「大丈夫、こっちもばっちり調整しておくから。
というわけでフェイトさん、すぐに『変身』って出来ますから、好きなだけしてくださいね」

「シャ、シャーリーッ! そういう意地悪禁止っ!!
うー、ヤスフミも笑わないでっ!? あの、恥ずかしいっ!!」










とにかく、心機一転新しいジャケットが完成する事になった。





でも、・・・・・・あー、いいな。楽しみだなー♪




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、フェイトとシャーリーとの新装備についての相談から二日後。





六課に、再び新しい風が吹き込む事になった。










「・・・・・・あー、そう言えば出向してくるって話してたよね」

≪すっかり忘れてましたよ≫

「なぎ君、何気にひどいね。私、傷つく」

「だって、色々あり過ぎてギンガさんの影が薄くなってたから」

「確かにその通りだとは思うけど、そこは言わないでー!!」



早朝訓練の場に居るのは、僕とスバル達。なのは達にあと二人。

ギンガさんと、マリエルさん。なんでもマリエルさんは、しばらく地上に用事があるとか。



「なので、二人揃ってしばらく六課に滞在なのですね」

「うん、リインちゃんもよろしくね。というか・・・・・・本当に恭文くんの側に居るんだね」

「元祖ヒロインなので、当然なのです♪」



あぁ、視線が痛い。朝からだけど視線が痛い。すっごく痛い。

あれ、これはどうして? 色々おかしくないかな。



「ヤスフミ、大丈夫だよ? 私はその・・・・・・リインに負けないように頑張ろうって決めてるし」

「リインも、フェイトさんには負けないのです。というか、同盟を組んだ同志で、生涯のライバルなのです」

「うん、ライバルだね」

「はい〜」



ワケが分からないんですけどそれっ!? てゆうか、どういうことになってるのか誰か説明してー!!

・・・・・・あぁ、視線が痛いっ! 痛いけど、僕に言われても困るからっ!! 僕だって知らないのよっ!?



「とにかく、朝の訓練始めるぞ。あとバカ弟子、あとでちょっと付き合え。しっかり事情説明してもらうぞ」

「いやいや、僕も分からないんですけどっ!?」










というわけで、訓練は・・・・・・始まらなかった。





理由? 簡単ですよ。突発イベントが起きたから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・空の上に、青い道と紫色の道が出来る。スバルとギンガさんのウィングロード。

で、当然のように二人はその上に乗って、全速力で走りながらも道を構築。

互いに拳や蹴りを浴びせ、交差し、またぶつかるという事を何度も、何度も繰り返す。





空に描かれた道は、場違いなほど綺麗で、早朝のミッドの空に何か絵を描いているようにも見える。

というか、リボンかな。うーん、見ようと思えば色んなものに見えるから不思議だよなぁ。

・・・・・・そう、イベントはコレ。ギンガさんとスバルの模擬戦。なお、タイマンです。





僕達は、下で見上げてる。うーん、さすがだ。










「ギンガさんが圧倒かと思ったんだけどなぁ。てゆうか、ギンガさんも腕上げてる」

「アンタ、分かるの?」

「分かるよ。108ではちょくちょく仕事してたし、ギンガさんの訓練に付き合ったりもしてたから」



その度に、局入りの話をされるのはキツかったなぁ。あははは、まぁ悪気は無いってわかってるんだけどさ。



「ヤスフミ、ギンガとは仲良しなんだよね」



一瞬、怖いものを感じた。だけど、フェイトの目を見てすぐにそれが消えた。

フェイトの目は、普通に・・・・・・僕に仲のいい友達が居る事を、喜んでいるようだったから。



「まぁね。うん、仲良しだよ。初っ端で喧嘩したりしたせいかな」





実際は、少し違う。2年前の『幕間そのに事件』のせいだ。

その話はフェイトにはもうしているから、大体事情が飲み込めてるんだと思う。

だから今、納得した顔になる。僕も、アレで、色々と話せるようになったから。



もちろん、ギンガさんも話してくれた。本当に色んな事を、少しずつ。

あと、フォン・レイメイの一件の後も、特にギンガさんは変えたりしなかった。

てゆうか、フェイトと全く同じ事を言ってくれたっけ。大好きで、大事な友達だから、絶対に変えないって。



それは・・・・・・うん、本当に嬉しかったな。





「ずっと、友達続けていければいいんだけどね。ギンガさんの事、大好きな友達だと思ってるし」

「出来るよ、きっと。ヤスフミがそう望めば、きっと出来る。ギンガだって、同じじゃないかな?」

「そうかな」

「そうだよ、きっと。・・・・・・あ、終わったね」



フェイトがそう言いながら空を見る。・・・・・・ギンガさんが、スバルの顔面に拳を打ち込んでいた。なお、寸止め。

でも、あの状態からすぐに鼻先に向かって、リボルバーナックルを叩き込む事も出来る。だから、詰み。



「うーん、やっぱりギンガさんにはまだ敵わないか」

「でも、スバルも凄くよかったよ。うん、ちゃんと成長してる」

「当然だよ。入隊当時から、ずっとクロスレンジの基礎固めをしてたもの」



どこか自慢げに、そして嬉しそうに、なのはが言ってきた。

そういや・・・・・・そんなこともしてたねぇ。



「てゆうか、普通に模擬戦形式で叩き込めばいいのに。僕は、そんな感じだった」

「いやいや、アレはマジで時間が無かったからじゃねぇかよ」



普通にポロっと言うと、師匠がアイゼンを担ぎながら、呆れたように言ってきた。



「あんな無茶な教導、お前以外では絶対アタシはしたくねぇし」

「ヴィータ副隊長、恭文さんはそれでいいんですね」

「コイツはバカだからな。理屈教えるより、1回そのシチュで戦った方が、学習が早い。
アレだな、色んな意味で局の方針や、普通の教導だと絶対に芽が出ないタイプだ」

「・・・・・・なんだろう、ちょっと複雑」










季節はもうちょっとで9月に突入。嵐のような8月は終わりを告げ始め、ミッドの季節は秋へと変化していく。





・・・・・・これが嵐の前の静けさだと思うと、今ひとつ堪能出来ないのがアレなんだけど。






















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・それでギンガ、スバルの出来はどう?」





姉妹対決が終わった後、師匠やシグナムさんと反省会なスバルは置いておくとしよう。

僕とフェイトになのはとリインは、ギンガさんとお話。

この模擬戦は、ギンガさんにスバルの出来を見てもらう意味もある。



なので、なのはが聞くのは当然なのである。





「ビックリしました。前回の出動から比べても、攻防の切り替えが凄くスムーズで、威力も段違いで」

「合格?」

「はい、ものすごく」



嬉しそうにギンガさんはそう言う。・・・・・・スバルの師匠もやってるって言うし、そのせいでしょ。



「しばらくは同じ部隊だから、一緒にがんばろう?」

「はい、フェイトさんよろしくお願いします」





で、ギンガさんがフェイトを見て、とっても嬉しそうにしてる。なお、理由がある。

フェイトに、4年前の空港火災で助けられたのがきっかけで、憧れてるらしい。

まぁ、フェイトは執務官・・・・・・捜査官としても優秀だから、そのせいもあるんでしょ。



それから、僕の方を見て、にっこりと笑う。





「あ、なぎ君もよろしくね。・・・・・・スバルから少し聞いてるけど、みんなと上手くやれるようになったんだよね」

「馴れ合いは避けたかったんだけどね。てーか、別に僕はここでみんなと上手くやる必要ないし」



僕の仕事がシメ役って言うのは、もう決定なのだ。あんまり馴れ合いはしたくない。

そんなつもりで言ったのに、なんでかフェイトやなのは、ギンガさんが嬉しそうに笑う。



「お二人とも、あとリイン曹長も・・・・・・なぎ君は相変わらずコレですか?」

「うん、相変わらずこれ。でも、恭文君がどういう子かはみんなもう分かっちゃってるから、あんまり厳しくしても意味ないんだよね」

「むしろ、普通に話した方が効率がいいくらいだもの。
私は、いいことだと思うんだけど、ヤスフミ的には納得がいかないようなの」

「特にエリキャロに関しては、凄く厳しくしてるのですよ。でもでも、あまり意味がないのです」



なんだろう、この全員が出している。『仕方ないなぁ』オーラは。

なんかムカつくんですけど。すっごくムカつくんですけど。



「あ、そうだ。せっかくだから・・・・・・よし、全員集合っ!!」





なのはが号令をかけると、フォワードメンバーも全員集まる。というか、師匠達も。



そして、なのはは宣言する。そう・・・・・・魔王の宴の開催を。





「せっかくだからギンガも入れたチーム戦。フォワードメンバー五人対前線隊長四人対恭文君」

「・・・・・・え?」



ギンガさんが目を見開く。そして・・・・・・驚きの声を上げる。



「えぇっ!?」



とりあえず、僕はアルトをセットアップ。そっと、横馬の首に刃を当てる。



「・・・・・・横馬、なんで僕はロンリーソルジャー? あれか、袋叩きにされろってか」

「ご、ごめん。冗談だよ。5対5のチーム戦。さすがにスバル達に恭文君まで参加は、少しキツイから」

「いいじゃん、きっといいダイエットになるよ? この間体重が3キロ増えたって話してたし」

「増えてないよっ! というか、そんな話してないよねっ!?」





とにかく、話は分かったので僕は準備をする。

・・・・・・フェイトに貸す前にもう一度だけ、あのベルトを使おう。

どこからともなく、銀色のアタッシュケースを取り出す。そして、開ける。



だから、軽く鼻歌なんて歌うのである。





「いや、あのねギン姉、コレ・・・・・・時々やるの」

「隊長達、かなり本気で潰しに来ますので」



だだーだーだだだー♪ だだーだーだだだー♪

だだーだー♪ だーだーだーだー♪



「まずは地形や幻術を駆使して、何とか逃げ回って」

「どんな手を使ってでも、決まった攻撃を入れることが出来れば、撃墜になります」



だだーだーだだだー♪ だだーだーだだだー♪

だだーだー♪ ・・・・・・1・2・3・GO♪



「くきゅー」





で、中からメカニカルなデザインの銀色のベルトを取り出す。

左にデジカメを装着。右側にポインターを装着。

取り付け可能なアタッチメントがあるので、すぐに装着出来る。



そのまま、ベルトを持って立ち上がる。





「ギンガはスバルと同じく、デバイス攻撃ね。左ナックルか蹴り」



それを、そのまま後ろの部分のジョイントを接続して、腰に装着。

あとはケースの中に入っていた携帯を取り出して、開く。



「じゃ、やってみようか」

『はいっ!!』



ファイズフォンを開き、ボタンを押す。押すボタンは・・・・・・これ。



≪5・5・5≫



そして、エンターと書かれたボタンを押す。



≪Standing by≫



そのまま、ファイズフォンを閉じる。ファイズフォンから、着信音のようなものが鳴り響く。

それに、ギンガさんやスバル達が視線を送る。いや、師匠とシグナムさん、なのはもか。



「え、えっと・・・・・・恭文君、なにしてるの?」



なんて言いながら、ジャケットを装着する横馬に視線を向けずに、僕は答える。



「え、ジャケット装着だけど、何か?」

「いやいやっ! それ絶対おかしいよねっ!? というか、またそれってどういうことかなっ!!」

「いい? 今から本当の変身ってやつを」

「だからどうしてまたモモタロスっ!? それおかしいからっ!!」



そのまま、携帯を持った右手を頭上高く掲げた。

だから、こう叫ぶのである。なお、音声入力も込みなので、やらないと装着出来ない。



「変身っ!!」





右手を下ろして、ベルトに携帯を装着する。ベルトのバックル部分には、ちょうどスライダーがある。



そこに、携帯の下部をはめ込み、携帯がその向きを90度回転して、ベルトにぴったりとハマる。



それにより、電子音声が聞こえてくる。そう、あの声だ。





≪Complete≫





ベルトのバックルの両側にある赤いラインの装飾が光を放つ。

その光は線となり、身体を包む。それが描くのはアーマーの形。

次の瞬間、僕は銀色と黒で彩られたアーマーを身に付けていた。




瞳は大きく『φ』という記号を象った物。二本の小さな角に、黄色い大きな瞳。

それは、普段の僕とは全く違う姿。それに、全員が目を見張る。

なので、そこは気にせずに・・・・・・右腕を軽く一回だけスナップさせる。



・・・・・・ふふふ、これが555ジャケットッ! 僕の趣味全開な新装備っ!!





≪身長は伸びてませんけどね≫

「うっさい」

「というか、いつぞやと全く同じっ!? 恭文君手抜き過ぎるよっ!!」



右手首を、一回スナップ。・・・・・・ふふふ、やっぱりこれは楽しいっ!!



「なるほど、そうやって装着するんだね。・・・・・・私、出来るかな」

「音声入力も必要だから、忘れないようにね? あと、手首スナップですよ」



で、試しにやると、フェイトが食い入るように見る。



「それ、必要なの?」

「必要だよ。攻撃の合間にこれをやることで、ファイズの戦闘能力は5割上昇するの」

「そ、そんなにっ!? ・・・・・・そっか、よくは分からないけど、そういう機能が搭載されてるんだね」



・・・・・・あれ? なんか勘違いしてるような。ま、いいかー♪



「あ、手で首元を正すのはやっちゃだめだよ?」



試しに、やってみる。で、またフェイトは食い入るように見る。



「これ、死亡フラグだから」

「わ、分かった。えっと、それをやると能力が下がっちゃうんだね」



あれ、なんか勘違い・・・・・ま、いいかー♪



「あとで練習しておくよ。とりあえず、右手でスナップだね」



とりあえず、フェイトがビュンビュンスナップさせてる。おー、いい感じいい感じー。



「フェイトちゃんも、普通に使い方とか教わらないでー! お願いだから、恭文君を止めようよっ!!」

「というか、あの・・・・・・これ、いいんですか?」



なぜだろう、ギンガさんが僕を指差して、とっても疑問顔で見ている。その理由が、よく分からない。



「一応、デバイス攻撃になるから問題はないぞ。無いけど・・・・・・お前、またかよ」

「またですけど、なにか問題が?」










なんか取り乱しまくっているなのはの事は、気にしない方向で行く。てゆうか、これは普通に楽しいぞ。





あぁ、みんなが僕をジッと見ている。きっと今この瞬間、僕は輝いているのだろう。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そういやよ、ヒロ」

「うん、なに?」

「やっさん、555ジャケット使って、現場に出たらしいぞ」



・・・・・・はぁっ!? アイツ、マジでアレ使ったんかいっ!!



「で、ガジェットを潰しに潰しまくって、無双したとか」

「・・・・・・やっさん、バカだバカだとは思ってたけど、そこまでか」

「そうだな。でも、とりあえずお前に言われたくないだろうな。お前は、間違いなく同類だろうが」

「失礼な。私は、ちゃんとTPOは弁えるよ」



そう、弁えた上で装着するから、問題ないのさ。

とりあえず、紅茶を一啜り。・・・・・・あぁ、カリムは本当にいい茶葉使ってるねぇ。



「それでサリ、予言の方ってどうなってんの?」

≪そういやそうだよな、解読チームが必死こいてんだろ?≫

「あぁ。それで、ついさっき一応の目処が付いた」



サリによると、カリム率いる解読チームが、局の重要なイベントなども考慮した上で、色々考えたとか。

で、本当にようやく、連中が行動を起こしそうな日が、分かったらしい。



「それ、何時よ」

「聞いて驚け。なんと、その日までもう三週間を切ってる。
・・・・・・9月14日に、ミッド中央本部で、ある会議が行われる」

「ミッドの中央本部で会議? あ、まさか」

「そうだ。お前の親戚も多数出席する、公開意見陳述会だ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、模擬戦はあっという間に終わった。てゆうか、当然僕達の勝ち。





いやぁ、楽しかったなぁ。普通にクリムゾンスマッシュとか使ったし。





やっぱり、今日の僕は輝いている。ここは決定だよ。










「輝いてねぇよバカっ! てゆうか、なんでファイズッ!?
お前、マジでそのベルトはレギュラー決定かよっ!!」

「・・・・・・蒼凪、それはなんのコスプレだ?」

「そうだよっ! お願いだからおふざけなしでお願いしたかったんだけどっ!?」

「まぁ、戦闘能力は高いんだよね。うん、よく分かったよ。
私でもヤスフミみたいにしっかり使いこなせば、かなり有効なアイテムになるんだね」



そう口を開いたのはフェイト。なので、全員がフェイトを見る。



「それで、右手でスナップなんだよね」

「うん、そうそう」

「テスタロッサ、お前は何を言っているっ! というより、そういう問題なのかっ!?」

「というか、フェイトちゃん騙されてるよっ!? 手首をスナップは、装着者の癖ってだけなんだからっ!!」



横馬、何を失礼なことを言うか。ノリを良くするためには、こういう手が必要不可欠なのよ。



「・・・・・・確かに、ジャケットとしても性能高いから、いいっちゃあいいのか。
よし、バカ弟子。後でアタシにもやらせろ。それなら問題ねぇ」

「でも、僕とフェイト以外は使えませんけど。エラーになりますから」

「マジかっ!?」



試しにフェイトがやってみたら、エラーになった。・・・・・・あ、ここは前に説明したね。



「・・・・・・エラーとはなんだ?」

「ファイズギアってのは、話の中だと、装着出来る人間に条件があるんだよ。
それに適合しないと、変身しようとした途端に、身体が弾き飛ばされる」

「待て、まさかそこまで再現してるのかっ!?」

「うぅ、アレ痛かったよ。というか、ヤスフミひどいよ。私、思いっきり壁に叩き付けられた」

「そして、お前はそれで弾き飛ばされたのかっ!!」



あー、そうだね。タンコブ出来てたもんね。そのために、僕はランチを奢るハメになったもんね。

一応検査してもらったから大丈夫ではあるんだけど、大きいのが出来てたよね。



「いやいや、僕が教える前に自分でやったんじゃないのさ。そこ言われても困るって」

「で、でもヤスフミはファイズって知ってるんだから、あぁなるって分かってたよねっ!?」



・・・・・・ギク。



「だったら、もっと早く教えてくれても、よかったんじゃないかなっ!!」

「いや、はやてと話した時にエラーになるって言ったよねっ!?」

「あれだけであんな派手に弾き飛ばされるなんて、分かるわけないよっ! 私はファイズ、本当に見たことないんだよっ!?」

「あー、お前ら痴話喧嘩はそこまでにしとけ。・・・・・・な、カイザのベルトはあるよな?」



カイザ・・・・・・あー、どうなんだろ。僕の知る限りは、存在していないはず。

二人が、なんかあのベルトは死亡フラグ過ぎて、作りたくないって言ってたし。



「師匠、死亡フラグって知ってますか?」

「・・・・・・お前の言いたい事は分かる。でも、いいじゃねぇか。
アタシはカイザも草加も、好きなんだしよ」

「でも師匠、あれはぶっちぎり過ぎますって。普通に怖いですって」

「ま、まぁな。そこは正直、否定出来ねー」





そういや、師匠は本当にファイズ好きなんだよなぁ。というか、僕より大好き。

だって、劇場版のパラダイス・ロストにも、エキストラで出てるし。

さいたまスーパーアリーナで行われた、最終決戦のギャラリー役ですよ。



アレの公募に受かって、師匠は最終決戦の撮影を、生で見た。もう凄かったと何度聞かされたことか。





「有ってもダメですよ。装着したら死ぬんですし。一回変身したら、解除した後に灰になります」

「そこまで再現する必要なくねぇかっ!? てーか、再現出来たら怖過ぎるだろっ!!」

「なお、デルタのベルトは装着したら、副作用でヘタレになります」

「バカっ! デルタのベルトにそんな副作用はねぇよっ!! そして、それは三原かっ! 三原の事かオイっ!!
お前、三原をバカにすんじゃねぇよっ! アレはたいした奴だろっ!? なんだかんだで最後まで生き残ってるしよっ!!」



そして、師匠はとっても不満顔。どうやら、自分が装着出来ないのがお気に召さないらしい。

・・・・・・でさ、シオン。



”お兄様、突然ですね”



そう、シオンだ。なお、ちゃーんとこの場に居て訓練を見ていた。



”一応確認、ギンガさんは・・・・・・シオンの事、見えてる?”

”いいえ、先ほど目の前に行ってニッコリと笑いましたが、さっぱりでした”



マリエルさんもさっぱりだったらしいし・・・・・・うし、バレる危険性はない。



”ただ、ナカジマさんが教えていましたけど”

”あのKYはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! ふざけんじゃないよっ!!”

”大丈夫です、頭を心配されていましたから”

”そっか、ならよかった”



え、そう言える理由? スバルだからですが、何か問題でもあるかな。



”なお、モンディアルさんとルシエさんは空気を読みました”

”ならいいや”



よし、あの二人には後でジュースでも奢ってやろう。そしてスバルは、一発ぶん殴る。

てーか、もう一回クリムゾンスマッシュ打ち込んでやろうか。



”何発打ち込もうと、ナカジマさんのKYは直りませんよ。・・・・・・お兄様”

”なに?”



訓練はこれで終わりなので、全員で隊舎に戻るという話になる。

だけど、僕はとりあえずシオンとお話。声色で、真剣な話というのは分かった。



”実は、今までお話していなかったんですが、しゅごキャラ・・・・・・いいえ、キャラ持ちには、特殊能力があるんです”

”特殊能力?”

”キャラチェンジと、キャラなりです”










・・・・・・キャラチェンジと、キャラなり?




















(第22話へ続く)




















あとがき



恭文「・・・・・・さて、なぎひこ」

なぎひこ「なに?」

恭文「スカリエッティのアレは・・・・・・なに?」

なぎひこ「・・・・・・えー、スカリエッティはもうヘタレな方向で書くと作者さんが決めたらしいよ?」

あむ「もう、普通の悪人にはなれないんだよね。というか、無理だって」

恭文「まぁ、テレビ本編でも喋らなければ大丈夫な人だったし、仕方ないって」





(とまと版スカリエッティは、どうやらヘタレになりそうです)





なぎひこ「そんなわけで、最近色々と大変な藤咲なぎひこと」

あむ「なぎひこは、本当に大変そうだと思う、日奈森あむと」

恭文「一応、なのはとヴィヴィオの二人には、しっかり言っておいた、蒼凪恭文です」





(蒼い古き鉄、ここは妥協しなかったらしい)





恭文「ヴィヴィオはともかく、なのはがかなり大変だったけどね。
てーかさ、自覚ないのよ。自分が凄まじく紛らわしい言い方してたってさ」

なぎひこ「あぁ、それなら謝りのメールが来たよ。まぁ、大丈夫だけどさ」

あむ「普通に年齢とか説明してなかったから、こうなるんだよね。でも、よかったじゃん」

なぎひこ「まぁね。でも、大変だったなぁ。何時飛針投げつけられるかと、びくびくだったもの」





(説明しよう、藤咲なぎひこは、高町なのはの恋人と言う誤解をされていたのだ)





恭文「まぁ、これに懲りずに仲良くしてあげてよ。二人とも、なぎひこのこと好きではあるからさ」

なぎひこ「うん、そこはもちろんだよ。これで縁を切ったり距離を置くのも、ちょっとどうかと思うし。
でもさ、なにあれ? あの聖王教会のカリムさんとか、教導隊のすごい偉い人とかさ」

恭文「全員、なのはの『IKIOKURE』を心配していた方々だね。なのはが男の子に対してあんな風にいい評価出すの、滅多にないのよ」

あむ「だから余計に・・・・・・かぁ。これ、普段の色々な積み重ねから来てるんじゃないの?」

恭文「間違いなくそうだね。・・・・・・あぁ、でも」





(蒼い古き鉄、またまた言いかけてやめた)





恭文「本日のお相手は、蒼凪恭文と」

なぎひこ「待って。なんでまたそれ? ・・・・・・何か隠してるのかな」

恭文「・・・・・・なぎひこ、世の中には知らない方がいいこともあってね?」

なぎひこ「ちゃんと話して」

恭文「分かったよ。・・・・・・高町家の面々が、もういっそなぎひこでもいいから、相手を見つけてくれとか言い出してる」

あむ・なぎひこ「「はぁっ!?」」





(運命の一小節が、鳴り響く。それはもう派手に)





恭文「このままじゃあ、『IKIOKURE』は決定だしね。てーか、今度のコミケの商品もおかしいでしょ。
なんですか、なのはとフェイトとヴィヴィオを合わせて、高町一家の岩盤浴シートって」

あむ「・・・・・・そういえば、公式だとフェイトさんがなのはさんの旦那さん的なポジションなんだよね」

なぎひこ「え、えっと・・・・・・でもほら、ユーノ・スクライア司書長とか、ジン・フレイホークさんとか」

恭文「どっちも、今ひとつだしねぇ。・・・・・・てゆうかさ」

なぎひこ「なに?」

恭文「たまに、僕になのはを第三夫人でいいからもらってくれって言ってくるのよ」





(蒼い古き鉄、そこで非常に重い顔で頭を抱える)





あむ・なぎひこ「「・・・・・・マジ?」」

恭文「マジだよ。でも、僕はもうフェイトとリインの三人体制でギリギリアウトだしさ。無理だって言うのよ。
言うと、泣かれるのよ。じゃあどうすればいいのかって聞かれるのよ。でも、聞きたいのは僕だって」

なぎひこ「・・・・・・そこまで心配されるって、なのはさんは大丈夫なの?」

あむ「公式での扱いも、それに拍車をかけてるんだろうね。そう言えば、恋愛的な要素とか、0だし」

恭文「一応、『なのちゃん』だったら、向こうの世界のクロノさんが居るんだけどさぁ。こっちはもう・・・・・・『高町一家』だし」





(そう、公式的には、『なのは×フェイト』で、娘がヴィヴィオなのだ)





恭文「というわけで、本日はもう終わります」

あむ「そ、そうだね。これ以上は疲れるだけだと思うし、終わっておこうか」

恭文「・・・・・・とりあえず、なぎひこはダメだし、なのはの『IKIOKURE』対策はどうしたものかと思う、蒼凪恭文と」

あむ「恋愛って、お話上重要な要素だと思う、日奈森あむと」

なぎひこ「段々と、僕も心配になってきた、藤咲なぎひこです。・・・・・・でも、本人にその気が無いなら、無理は言えないんだよね」

恭文「確かにその通りなのよ。だから、余計にみんな頭を抱えてる」

なぎひこ「・・・・・・納得した」










(とりあえず、あの『高町一家』はどうかと思いつつ、本日は終わる。
本日のED・・・・・・というか、Remix27話からのテーマソング:abingdon boys school『PINEAPPLE ARMY』)




















フェイト「・・・・・・公式から百合って、いいのかな」

恭文「もう言っても仕方ないよ。とらハだと、そんなことないんだけどね」

フェイト「恭也さんは忍さんでしょ? それで、幕間で出てきた2の主人公である槙原耕介さんは、いとこである愛さん」

恭文「『なのちゃん』も、向こうのクロノさんとお付き合いするしね。うーん、難しいなぁ。
まぁ、リリカルなのはは恋愛関係書く話じゃないから、これでもいいと言えばいいんだろうけど」

フェイト「でも、私はその・・・・・・特に百合というわけじゃないんだけど。その、ヤスフミのこと好きだから」

恭文「あの、ありがと。僕も・・・・・・好き」

あむ「・・・・・・また甘くなってるし」

なぎひこ「でも、なのはさん大丈夫かなぁ」

あむ「なんか、初恋もないとかって言ってたしね。とは言え、あたし達が色々言うのも違うか」

なぎひこ「そうなんだよね。・・・・・・でもさ」

あむ「なに?」

なぎひこ「ヴィヴィオちゃんが、バスケしてる時にポロっと言ってたんだ。
『もしもパパが出来たら、こんな風に遊びたい』って」

あむ「うわ、それはまた・・・・・・」

なぎひこ「なのはさんはともかく、ヴィヴィオちゃんはパパとかって欲しいのかも知れないね。恭文君はまた違うみたいだしさ」

あむ「恭文とフェイトさんは、親戚のお兄さんやお姉さん的な位置らしいから、そうなるよ。うーん、なんというか難しいなぁ」










(おしまい)




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あきゅろす。
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