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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第19話 『一番強いのは、誰?』



・・・・・・コンサートは、本当に無事に終わった。

というわけで、僕は・・・・・・フィアッセさんの控え室に一人で特攻。お話し合いである。

なお、フェイトとリインには、エリスさんと一緒に居てもらってる。シオンも同じく。





だって、これは・・・・・・僕が、一人でやらなくちゃいけない事なんだから。










「・・・・・・そっか、フェイトちゃんとお付き合いすることになったんだ」

「はい」

「よかったね。気持ち・・・・・・通じて」



言いながら、フィアッセさんが僕の頭を撫でてくれる。優しく、本当に優しく。

表情は嬉しそうで・・・・・・だけど、どこか寂しそうにも見える。



「・・・・・フィアッセさん、あの」

「あ、ごめんね。別に、嫌とかじゃないんだ」



そう言って、フィアッセさんは変わらずに撫でてくれる。手は、温かく僕を癒してくれる。



「ただ、あんなに小さな子どもだったあなたが、もうそんな年頃になったんだなって、ちょっと感慨深くて」



僕は、その手を受け入れる事しか出来なかった。

何も、言えなかった。少しだけ、場が静かになる。



「・・・・・・私が、あの時」



そのまま、思い出すような目をして、フィアッセさんが言葉を続ける。



「空港で恭文くんとお別れする時、『結婚しようね』って言ったのってね、実は理由があるんだ」



そして、僕はしっかりとフィアッセさんの言葉に、耳を傾ける。

きっと、ちゃんと聞かなくちゃいけないことだから。



「理由?」

「うん。・・・・・・恭文くんを見てて、少しだけ怖かったんだ」





言ってる意味が、よく・・・・・・いや、分かった。

だって、僕はこれと同じ響きの言葉をこの数ヶ月の間に聞いてるから。

思い出すのはフェイトの言葉。フェイトも、前にポロっと言ってた。



僕を見ていて怖いと。ふと目を離した瞬間に、どこかへ居なくなってしまいそうだと。



だから、局員になって、自分達と同じ道を進んで欲しいと、そう・・・・・・言ったから。





「恭文くんは凄く強くて、優しくて・・・だけど、同時にとても頑な。あなたの強さは、中々理解されにくい方だと思う。
自分の気持ちのために、何かを無くす事になっても、それがどんなに怖くても、必要なら・・・・それを通す。守るために、飛び込む」

「通してますね。てゆうか、飛び込んでます。今も」

「結構、大事? もしかして、旅行の予定が短くなっちゃったのは、それが理由かな」

「・・・・・・実は。それで、結構大事です」



フィアッセさんは、静かに納得したように『そっか』と、一言言った。

それからまた、言葉を続ける。



「それで、最近ハラオウン家の人達とも、少しゴタゴタしたんだって?」

「なぜに知ってますか」

「美由希から連絡があったの」



あぁ、理解出来た。エイミィさん経由だね。間違いないわ。



「フェイトちゃんの使い魔・・・・・・だっけ? その人がいろいろと騒いだんだよね。
ちゃんと管理局と言う組織の中に入って、普通の局員になって欲しいって」

「・・・・・・しましたね。おかげで、こっちは大騒ぎでしたよ。
フェイトが面倒を見てる子が、そのせいで面倒な事になったりしましたし」



まぁ、僕がトドメ刺したから、あんま言えないけど。



「でも、恭文くんは、そのつもりはないんだよね」



僕は頷く。フィアッセさんの目を見ながら。



「ただ、別に諦めてるとかじゃないんです。
・・・・・・僕は、やっぱ組織のためとか、世界のためとか、そういうの苦手なんで」



その言葉に苦笑しつつも、フィアッセさんは、優しくも暖かい視線を僕に向けながら、言葉を続ける。



「私ね、もしかしたら恭文くんは、周りの人達から認められないんじゃないかと、ずっと思ってたの。
あなたの周りは、組織に属する人ばかりだから。それを良しとしないあなたと、溝があるんじゃないかと」

「・・・・・・溝、あったみたいです。僕はともかく、その使い魔に」

「やっぱりか。・・・・・・恭也や美由希から色々聞いてたけど、なのはも結構勧めてたんだよね?
魔法が使えると、みんな管理局に入った方がいいって風潮が有るみたいだし、そうなるよね」



しかしムカつく。僕はいいけど、フェイトの子どもであるエリオを利用したのが許せん。

・・・・・・マジで犬鍋にしてやろうか。話し振りだと、まだ完全に反省し切ってないらしいし。



「止まれるように、大人になれば問題無いのかも知れない。
けど、あなたはそれが出来ないんだろうなって、思ってたの」

「どうして、ですか?」

「だって・・・・・・私自身が大人になれなかったもの。きっと、私とあなたは、同じ。
私は、何があっても歌を・・・・・・私自身の魂の声を、止めることは出来なかったから」



それがフィアッセさんと会った時の一件の事だと言うのはすぐに気づいた。

・・・・・・まぁ、それだけじゃなかったらしいけど。



「それだけじゃなくて、恭文くんは少しだけお人よしというか、自分の事を軽視する所があるようだったから。
よく、考えてたでしょ? 何か不利益を蒙ったり、傷ついても、自分だけなら大丈夫・・・・・・って。戦って、傷つく事は当たり前だって」

「そうですね、考えてました。・・・・・・ちょっと、馬鹿だったなって思います。
そう言って、傷つけることだってあるのに。自分も含めて守らなくちゃ、未来は繋げられないのに」





いや、それでも止まれないのが、またダメなんだけど。

それなら、大人になればいい。あの駄犬の言うようにすればいい。

忘れて、下ろして、局員として、組織の人間として、そのルールの中で生きればいい。



でも、僕にはそれは無理。そんなの・・・僕じゃないから。

そんなことしたら、あの時、あの夢の中であの人に言った言葉、嘘になるから。

僕は、対価を払い続ける必要がある。今を未来へと繋ぐことで、払い続ける。



・・・・・・僕が、そうしたいの。組織のためとかじゃない。僕のために、そうしたい。





「うん、そうだね。傷ついている誰かを痛みから守るために、あなたは自分から痛みをかぶろうとする。放っておくことが出来なくて、見過ごす事も、その言い訳をすることも出来ないから、飛び込む道を選ぶ」

「そして、今も飛び込んでます。さっき言った通りに」

「というか、エリスから聞いたけど、コンサート警備も飛び込もうとしたんでしょ?」

「・・・・・・実は」



エリスさんのおしゃべり。・・・・・・まぁ、心配してくれてたんだろうね。そこはありがたく思わないと。



「それが悪い事とは・・・・・・言えないな。少なくとも、私はそれに守られたんだから。
でも、そう考えた時、気づいたの。あなたは、凄く刹那的で、消えちゃいそうで、怖いなって」



手が、頬に伸びる。フィアッセさんのすべらかな手が触れて、とても心地いい。



「それで、私はそんな子に何が出来るかなって、また改めて考えて・・・・・・」

「考え・・・・・・て?」

「私は、私だけは・・・・・・あなたの味方で居ようと決めた。あなたがあの時、私の味方で居てくれたように。
あなたの強さが全く変わってなくて、そのせいで周りの人達から見限られても、それは絶対に変えたりなんてしない」



・・・・・・・・・・・・フィアッセ、さん。



「私だけは、あなたの側に居ようって、そう考えたんだ。・・・・・・おかしいかも知れないけど、あなたを見ていてそう思ったの。
だって、私の今は・・・・・・あなたがあの時守ってくれたから、ここにあるもの。そんなあなたに、私なりの・・・・・・お礼がしたかったの」





その言葉に、鼓動が高鳴る。だって、それは・・・・・・あの、リインがいつも言ってくれていることと同じだから。





「あなたの強さも、頑ななところも、優しさも、温かさも、弱いところも、その全てを肯定して、抱きしめたかった。
あなたがどうしても立ち上がれなくなった時に、傷を癒す場所でありたかった。・・・・・・あなたの一番に、なりたかった」



そのまま、両腕を回して・・・・・・抱きしめてくれる。何度も抱きしめてくれたけど、やっぱりドキドキする。

その度に思う。僕は、この人が、この人と一緒に過ごす時間が、本当に大切だと。



「だって、私・・・・・・あなたの事が、大好きだから。
そんなあなたを、一人になんてしたくなかったんだ」





・・・・・・リインも、いつも言ってくれている。

僕が『約束を守れなかった。重荷を背負わせた』と言う度に、考える度に。

あの小さな手を伸ばして、僕を抱きしめながら言ってくれる。



自分がここに居るのは、笑顔で居られるのは、僕が守ってくれたからだと。

ちゃんと約束を守ってくれたから・・・・・・僕は、自分に命だけではなく、時間をくれたからだと。

だから、自分の今は存在出来るのだと。それだけ忘れないで欲しいと、何度も言ってくれる。



僕はバカだから、何度も言わせちゃう。だけど、それでも・・・・・・側に居てくれる。





「あ、もちろんあの時の事は、恭文くんだけじゃなくて、恭也や美由希、エリスやみんなが居てくれたおかげなのは、忘れてないよ? そこは、本当」

「あの、それは分かってますから。つまり、そのために、婚約・・・・・・ですか?」

「うん。なんというか、そういうのがいいかなと」



抱擁が、強くなる。求められてるみたいで、心が・・・・・・震える。



「恭文くん、普通に『友達で居ようね』とか言うと、遠慮しちゃうんじゃないかと思って。
・・・・・・もちろん、条件がクリアされるようだったら、本気でそうなるつもりだったけど」



フィアッセさんが、いたずらっぽくニッコリと笑う。それに僕も笑いで返す。

あんまり上手く笑えてないと思ったのは、気のせいじゃない。



「フィアッセさん、あの・・・・・・ありがとうございます。すごく、嬉しいです」

「ううん。・・・・・・恭文くん、もう・・・・・・大丈夫だよね。
自分の行きたい場所、やりたいこと、ちゃんと見えるよね」



フィアッセさんが、少し身体を離す。顔が・・・・・・凄く、近い。



「あなたが居なくなったら、前に話してくれたお姉さんとの約束、守れなくなっちゃう。
あなたもみんなと一緒に幸せになることが、払うべき本当の対価なんだから。みんなだけじゃ、だめなの」

「・・・・・・はい」



フェイトの事、泣かせたくないし。でも、そう・・・・・・だよね。

人だけじゃだめなんだ。僕も、守って先に繋げないと、ダメなんだ。



「ただ・・・・・・まぁ、飛び込む時は、やっぱり飛び込むんだろうなと、思ってたり。
というか、フェイトにもそう言われたりしてます」

「うん、そうだね。きっとそれは恭文くんのいいところだもの。
変わる事も必要だけど、変えちゃいけない事だってあると思うから。・・・・・・恭文くん」

「はい」

「恋人には、夫婦には、なり損ねちゃったね」



確かにそうだ。・・・・・・それは、ちょっと寂しいかな。



「けど、これからも私と・・・・・・友達で、わがまま仲間で、居てくれる?」

「・・・・・・僕で、いいなら」





フィアッセさんは、僕がそう返事をすると、微笑みながら小さく『ありがとう』と呟いた。



それから、そっと顔を近づけて、キスをしてくれた。





「・・・・・・唇は、フェイトちゃんのものだから」



したのは、ほっぺ。だけど、限りなく唇に近い。



「一応、ケジメ。これからは婚約者じゃなくなっちゃうもの。いいよね?」

「・・・・・・はい」

「ね、恭文くんも良ければしてくれる? ケジメとして」










僕は、ゆっくりと頷いて・・・・・・そっと、口付けをした。





大好きで、大切で、大事なお姉さんに、ありったけの親愛を込めて。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・それじゃあ、三人・・・・・・ね、恭文くんの肩に乗ってる子って、何かな」

「フィアッセさん、シオンが見えてるですかっ!?」





・・・・・・まぁ、フィアッセさんにシオンを見られたりしたのにびっくりしつつ、僕達は帰る時間になった。

フィアッセさんと一緒に見送りに来てくれたエリスさんとイリアさんの目の前で、僕達は跳ぶ。

足元に広がるのは、フェイトが使う長距離転送の術式。ここから、隊舎の中に一直線である。



なお、人目の付かないところでやってるのは、留意してもらいたい。





「あの、お世話になりました」

「いえ。・・・・・・また来てください。フィアッセも喜びますので」

「まぁ、そちらも忙しいだろうが、来てくれると助かる。フィアッセのテンションが違うからな」

「ちょっとエリスっ! イリアもそういうのなしっ!! もう私と恭文くんは、婚約は解消してるんだよっ!?」



その場で全員が『えぇぇぇぇぇぇぇっ!?』と叫ぶけど、気にしない。

それでも、跳ぶ時間は近づいてるから。・・・・・・うし、これだけ言おう。



「あの、フィアッセさん」

「うん、なにかな?」

「・・・・・・守ります」



予言が現実になれば、世界中が変わる。そして、壊れる。

管理局なんて知らないけど、僕の大切なものは、壊れる。だから守る。



「フィアッセさんの歌声も、夢も、願いも、全部守ります。絶対に、消させません。
僕も、フィアッセさんの味方になります。・・・・・・友達として、ワガママ仲間として」

「・・・・・・うんっ!!」



そして、転送が始まる。だから、また声を上げる。



「フィアッセさん、それじゃあまた」

「うん、恭文くんも・・・・・・またね」










そして、フィアッセさんは笑顔で手を振ってくれた。それに手を振り返しつつ、僕達はミッドに跳ぶ。





次の瞬間には、見慣れた隊舎の中庭。・・・・・・無事に、帰ってこれたのである。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・無事に帰ったようですね」

「そうですね。しかし、何事も起きなくてよかった。これで彼にまた世話になるようでは、意味がない」



・・・・・・私は、ゆっくりと空を見る。時刻はもう夜。空には、星と白い月の光が生まれていた。



「しかしフィアッセ、最後のはなんだ?」

「恭文くん、かなり大きな事に飛び込んでるらしいの。多分、なのはやフェイトちゃん達も一緒だね」



今は一緒のお仕事場だから、間違いなくそうなると思う。・・・・・・なんだか、大変だな。



「心配か?」

「かなりね」



心配にならないわけない。あの子は、私の大好きな男の子。それで、元婚約者だもの。



「でも、大丈夫だよ。・・・・・・約束、してくれた。『守る』って。
恭文くんの『守る』と『壊す』は、絶対無敵の魔法の言葉なんだから」

「・・・・・・そうだな」










ね、恭文くん。恭文くんが今関わってることは、もしかしたら私とかにまで影響が及ぶことなんだね。

なんだか、分かっちゃったよ。だから、あんなこと言った。・・・・・・でも、大丈夫だよね。

あなたは、やっぱりあなただったから。ううん、私が知ってるあなたより、ずっと強くなってた。





だから、歌うよ。あなたが今を、未来を守るために、それを脅かす闇を壊すために飛び込むなら、私は歌う。





あなたへの想いを込めた歌を、うたい続けるよ。遠い世界にいるあなたに、届くように。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・シオン、楽しそうですね」

「えぇ、楽しいです。実際にミッドに来るのは初めてですから」



そして、どうやらもう一つのたまごも同じらしい。懐の中でごろごろ言ってるから。

・・・・・・現在、僕達は隊舎で夕飯中。ちょっとだけ僕は、しんみり。



「・・・・・・ヤスフミ、フィアッセさんとお話って、婚約のことだったんだ」

「うん。だって、彼女出来たから。・・・・・・大丈夫、ちゃんとお話して、納得してくれた」

「そっか。うぅ、なんだか申し訳ないな。8年スルーの事があるから、余計に」

「大丈夫だよ。だって、僕が選んだんだから」



目の前のサラダをフォークで突きつつ、僕は・・・・・・少しだけ話すことにした。

誰でもない、フェイトに対して、少しだけ。



「フィアッセさんね」

「うん」

「僕と婚約したの、僕が・・・・・・一人にならないためにしたんだって。
僕の一番の味方になるために・・・・・・だって。フェイトと、同じ事考えてた」



そう言うと、フェイトは分かったらしい。表情が納得したものになるから。



「そっか。・・・・・・やっぱり、ちょっと申し訳ないな。ヤスフミが選んでくれたとは言え、それでも
ヤスフミのこと、きっとフィアッセさんは本当に大切に想ってくれてただろうから。・・・・・・よし」

「フェイト?」

「私、決めた」



そう言って、フェイトが決意に満ちた顔で僕を見る。

瞳は今まで見た事がないくらいに優しくて、強い力に満ち溢れていた。



「フィアッセさんやリインに負けないくらいに、ヤスフミと理解し合っていくよ。
というか、負けたくない。私の中の『好き』の気持ちだって、ホントの気持ちだから」

「・・・・・・あの、ありがと。それなら、僕も頑張るよ。フェイトだけじゃ、だめだから」

「うん・・・・・。なら、一緒にだね」










・・・・・・旅行、行ってよかった。決意が更に固まったから。

そうだ、何も壊させない。僕の背中には、守りたいものがある。だから、全部守る。

自分の守りたいものを守る『魔法j』・・・・・・それが、僕の夢であり、願いなんだ。





そして、僕に喧嘩を売ってくれた礼もしっかりする。さぁて、ここからはまた頑張りますか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、六課に戻ってきた翌日。僕は・・・・・・普通に朝練。

あれ、おかしいな。なんでいきなりこれ?

お休みの翌日から早起きなんてダメっしょ。





うー、グータラしたいー。すっごくグータラしたいー。










「・・・・・・アンタ、マジでやる気ないわね」

「お休みの直後なのに・・・・・・」

「というか恭文さん、いつもよりテンション低いです」

「いや、いつもはいつもで辛らつだと思うんですけど」

「くきゅくきゅ・・・・・・」



隊員寮の入り口で、なぜか訓練着姿の四人が僕を呆れた目で見る。



「んー? 軽い振りだけど何か問題あるかな」

『振りなのっ!?』

「そうだよ。・・・・・・ちょっとマジになんなくちゃいけない理由があってね」

「あぁ、あるですね。アレとかコレとか」





さすがにコンサートで英気を養ってこれはない。普通に僕は元気いっぱいなのだ。

そう、具体的にはスカリエッティ討伐に元気いっぱい。アレがうろちょろしてると、うっとおしいし。

フェイトと関係を進展させることも出来ないし、ラブラブも出来ない。ハッキリ言って邪魔。



生存フラグの極地、無限の生存旗製アンリミテッド・ライブフラグ・ワークスで奴を叩き伏せなくちゃいけない以上、気合いも入って当然だ。





「てゆうか、久々に休日らしい休日を過ごしたんだもの。
・・・・・・いつぞやは、どっかのバカのせいで出入り禁止を食らったり」

≪食らいましたね。ほとぼりが冷めるまでは無理ですよ≫



てゆうか、冷めるのかね。無理っぽいんだけど。



「あー! それは本当に反省してるからもう許してー!!」

「お兄様、普通に許してはいけませんよ? もっともっとギャグ的に苦しめた方が楽しいですから」



僕の頭くらいの高さでぷかぷかと浮かびながらそんなエグイ事を言うのは、当然シオン。

なお、みんなには見えてない。つーか、見えてるわけがない。みんなのしゅごキャラとか見えないし。



”シオン、何気に外道ですね。恭文さんそっくりなのです”

”さすがはあなたから産まれたしゅごキャラですよ。思考がぶっ飛んでますね”



お前らは一体何の話をしてるっ!? てーか、普通に僕のこと嫌いだろっ!!

ちくしょお、後で話して絶対自重させてやる。ここでやると、皆に変な人扱いされるからやらないけど。



「とにかく、そろそろ行きましょ? 訓練場の準備しないと」

『はい』

「うん。・・・・・・あ、そう言えば恭文」



歩き出しながら、スバルがマジマジと僕を見て話し出す。

うん、結構ジーっとこっちを見る。その視線に、なんとなく嫌な予感がする。



「なに?」



あれ、なぜだろう。普通にスバルの視線が、シオンに向いているような気がする。

いや、気のせいだ。ほら、スバルは若干アレだから、常に視線が定まってないだけなんだ。



「いや、恭文の隣で、頭の高さくらいに浮いている小さいのって・・・・・・なに?」

「へ?」



ま、まさか・・・・・・マジでシオンが見えてんのかいっ!!



「はぁ? スバル、アンタいきなり何言ってんのよ」

「ほら、恭文の顔の近くに、緑色の髪で、青い瞳の小さな女の子が居るでしょ?
というか、さっきちょこっと恭文に話しかけたりしてたし。ティアだって見てたよね」





きゃー! なんかすっごい見えてるっ!?

あぁもう確定だよっ! 普通にスバルはしゅごキャラ見えてるしっ!!

でもなんで? フェイトだって見えてないのに・・・・・・あ、そっか。



スバルは『なりたい自分』がしっかりと固まっているから、そのせいで見えるのかもっ!!



いや、もしかしたら生まれてないだけで僕と同じキャラ持ちの可能性も・・・・・・きゃー、色々とミスったー!!





「アンタ、もしかして寝ぼけてんの? そんなのどこにも居ないじゃないのよ」

「えー!? いやいや、居るってっ! ほらここにっ!!」



そうして指を指す。当然のようにシオンの方にだ。

でも、ティアには見えていないから、とっても訝しげな顔をする。



”シオン、ちょっと部屋に戻ってて”

”お兄様、今更ですわ。ここで消えても、きっと問い詰められますよ?”

”大丈夫。見えてるのはスバルだけなんだし、僕は気づいてない振りをすれば問題ない”



僕がそう言うと・・・・・・シオンはとっても不満げな顔をした。



”大有りです。お兄様、男として認知をしないのは最低ですよ?”

”変な言い方しないでっ!? 大丈夫、シオン消えちゃうの嫌だからちゃんと認めてるしっ!!”

”いいえ、ダメです。もっと深く・・・・・・こう、『フェイトさん×お兄様+リインさん+私』が成立するくらいに”

”そんな怖い図式は嫌だよっ! てーか、なんでリインとおのれがプラスっ!? そんな未来は来ないからっ!!”



・・・・・・とにかく、これでごまかせる。てーか、普通にたまごの事とかシオンの事とかを知られたくない。

これで局のレアスキルどうこうなんて話になっても面倒だもの。ここは僕が一言二言とぼければ。



「ティアさん、スバルさんの言うことは本当です。僕も・・・・・・見えてるんです」



え?



「私もです。さっきから気にはなってたんですけど」

「きゅくきゅく」

「あ、フリードも見えてるみたいです」




そう言いながら、まじまじとシオンを見る。そう、二人は僕ではなくシオンを見ていた。



”これ、二人にも見えていますね”

”リインやアルトアイゼンと同じくなのですよ”



きゃー! 空気の読めないのがもう二人居たー!! てゆうか、普通に二人も見えてたのっ!?

や、やばい。さすがにスバルだけならともかく、エリキャロも来たから、ティアもちょっと本気にし始めてる。



「みんな嫌だなぁ、寝ぼけてるのにも程があるよ。というかエリオ、怪我が予想以上に早く治ったからって調子こいてる?
よし、もう一回叩き潰してあげよう。今度はアルト抜くから問題ないよね。うん、そうしようそうしよう。はい、決定」

「決定しないでくださいっ! というか、もうちゃんと分かってますから、する必要ないですよっ!!」

「やかましいっ! 空気の読めないお前は叩き潰されて当然なんだよっ!!
知ってるっ!? 空気の読めない奴は、レジの打てない店員と同じくらいにいらないんだよっ!!」

「・・・・・・恭文、私が思うにそれは最低な発言だと思うんだけど」



気にしてはいけない。僕は気にしないのだから、問題ないのだ。

なお、僕が最低とかそういうツッコミはスルーします。



「よし、恭文。訓練場に行きながらでいいから私達に説明なさい。
スバルだけならともかく、二人まで見えてるんじゃ間違いないでしょ」

「ちょ、ティアっ! それどういう意味っ!?」

「居るのよね? 私には見えてないけど、アンタの近くにそういうのが」

「い、嫌だなぁティアナ。例え居たとしてもそれが僕の関係者かどうかなんて分からないじゃないのさ」



すると、ティアナが普通に僕の首を右手で掴んで引き寄せた。そして、睨みを利かせてくる。



「・・・・・・ティア。そう呼ぶようにってお願いしたわよね」

「ティ、ティア」

「そうそう。というわけで、説明しなさい。てーか、こういうワケ分かんないのはアンタの専売特許でしょ?」

「僕への認識色々間違ってな・・・・・・あぁ、分かった。
説明するから首絞めるのは止めて。普通にくるぢい・・・・・・」





そして、訓練の行きにみんなに説明する事にした。シオンが何者で、どうしてここに居るのかもしっかり。



なお、普通に妙な輩に目をつけられたくないので、絶対に他の人間には黙っておくようにと口をすっぱくして言った。





「・・・・・・特にスバル、真面目にお願いね? てーか、空気を読んで。
今日のは極めつけだよ。誰にも知られたくなかったのに」

「えー、別にいいと思うのに。だって、フェイトさんは知ってるんでしょ?
というか、リイン曹長とアルトアイゼンは見えてる」

「はい。アルトアイゼンも見えてるですよ?」

≪どういうわけか、しっかりと見えていますよ≫



現場に二人が居たしね。もうここはしゃあないのさ。



「だったら、部隊のみんなに話しても大丈夫だよ。というか、きっとみんな喜んでお祝いとか」

「スバル、選択して? 僕に頭を割られるか、1000回くらい殴られて強制的に忘れるか。さ、どっちがいいかな」

「わ、分かったよ。ちゃんと黙ってるから。勝手に話したりもしないよ。だから、その怖い目は止めて?」





・・・・・・真面目に心配だ。さっきも言ったけど、これでレアスキルがどーだこーだと騒がれたくないのだ。

シオンは、そういうのじゃないもの。あくまでも僕のなりたい自分が形になったもの。だから、ここに居る。

それなのに、局や次元世界の勝手な都合に巻き込みたくない。うん、巻き込みたくないの。そういうの嫌だ。



例えばだけど、どっかのバカに捕まって、実験台にされるのとかも正直ごめんだし。





「しゅごキャラ、なりたい自分・・・・・・えっと、マジ?」

「本当です。というか、僕にはしっかりとシオンが見えてますから。キャロもそうだよね?」

「うん。あと、フリードもです」



なんか、動物は無条件に見えるらしいね。びっくりしたよ。



「で、見えないのは私だけと」



どうやら、このメンバーの中で見えていないのはティアだけらしい。

なので、さっきから表情が微妙である。



「・・・・・・あの、なんかムカつくんだけど。
ね、ちょっとほっぺたむにーってしていいかしら」

「いきなりなにっ!?」










・・・・・・くそ、早速バレるなんて予想外過ぎるぞ。でも、この調子で行くとヤバいな。

普通にしゅごキャラが見える人間が、六課内に他に居ても不思議じゃないもの。

シオンに昨日聞いた条件に適合するのは・・・・・・スバル達以外だと、ヴィヴィオとか?





あとは大丈夫そうではあるけど、油断しない方向で考えないと絶対にマズイ。





この調子でいけば、一週間後にはシオンの存在が六課中に広まる事になりかねない。マジで気をつけないと。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第19話 『一番強いのは、誰?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・というわけで、訓練は終了。私は楽しく見学させていただきました」

「さすがに参加は難しいですよね」

≪というより、見えてませんし。どうやれって言うんですか≫

「その通りです」



で、現在なのはを先頭に、全員でご飯のために隊舎に戻ってるところ。・・・・・・なんだろう、なにか足りない。

こう、ウズウズしてるというか、ちょっと試してみたいというか。



「シオン、誰に話してるの? というか、リイン曹長とアルトアイゼンも」

「ナカジマさん、気にしないでください。一応説明は必要ですから」

「あ、私の事はスバルでいいよ?」

「だが断る」

「どうしてー!?」





・・・・・・訓練は平和に行われた。とりあえず、師匠やなのはには見えていないらしい。

今日は同じく訓練参加なフェイトもそうだったけど、やっぱり大人には見えないようだ。

というより、師匠はどうかは知らないけど、二人はたまごがかえってるからなのかな?



だから、シオンが見えてないのかも。10代前半で、『なりたい自分』になってるわけだし。

・・・・・・なんだろ、そう考えると少しつまらないかも。別に言うつもりはないけどさ。

そんな早いうちから『なりたい自分』が、やりたいことや、やれることが一つに固まってるのって、いい事なのかね?



まぁ、ここはいいか。なのははともかく、フェイトは新しい自分を始めるって話してるんだし。

で、指し当たっての問題は、部隊内で他に見える人間が居るかどうかですよ。

あとは・・・・・・誰が見える? てゆうか、ティアが見えてないのが不思議だったりするんだけど。





「シオンの話通りなら、ティアさんも見えて不思議じゃないのに」

「そうだよね、僕達の中で一番なりたい自分に対しての想いが強いのは、ティアさんだと思うし」

「あー、ティアってオカルト関係とか信じてないからかも知れないよ?
つまり、現実的だから、シオンが見えないんだよ」



あらま、そうなんだ。そこは知らなかった。てーか、魔法使っててそれって・・・・・・。

まぁ、僕達が使う魔法は科学に近いしなぁ。そのせいなのかも。



「それではキャラ持ちでも何でもないのに、私が見えるはずがありません。
『なりたい自分』というのは、その概念そのものがあやふやであいまいですから」



で、そのあやふやであいまいな物をしっかりと信じられないと、普通にしゅごキャラシオンは消える。

この辺りは最初にシオンに説明された通りだね。で、今もう一度話したということは、そこに関係ありなのか。



「キャラ持ち?」

「しゅごキャラの宿主をそう呼ぶんです。しゅごキャラの持ち主だから、キャラ持ち。それで、話を戻しますね」

「あ、うん。ティアがどうしてシオンが見えないのかって話だよね」

「はい。・・・・・・どうやら、私が見えないのは性分の問題のようです。
ランスターさんは常識外の事に対してまず疑う方のようですから」



つまり・・・・・・ティアがしゅごキャラの存在に懐疑的だから見えてない?

宿主があやふやな物を信じられなければ消えてしまうのと同じ理屈で、ティアも見えてないのか。



「ティア、シオンはティアが自分が存在してることそのものを疑ってるから見えないって言ってるよ?
というわけで、シオンのこと信じようよー! そうすれば、ティアもシオンとお話出来るよっ!?」

「バカ言ってんじゃないわよ。てゆうか、疑うのなんて当たり前よ」



またハッキリと断言する。そして、非常に疑わしい目で僕達を見出した。



「いきなりなりたい自分が形になったとか言われても、信じられないわよ。
そんなの私、聞いたこともないし。てーか、ホントに居るの?」



で、その目で強く見る人間が居る。・・・・・・僕です。



「みんなで私の事騙そうとしてるとかじゃないわよね。ほら、早く言いなさいよ。
てゆうか、リイン曹長まで乗らないでくださいよ。少し悪趣味ですよ」

「・・・・・・ティア、真面目に信じてないのですね。というか、ビックリですよ」



うん、僕もビックリしてる。ここまでリアリストなのはおかしいって。本当に今年で16歳なの?



「でも・・・・・・納得した」

「なにがよ」

「シオンの言う通りだってこと。ティア、そういう感じだから見れないんだよ」



なんというか、そういうのはつまらない。なので、ため息を吐きつつ首を横に振る。

ティアがなんか視線を厳しくするけど、気にしない。



「見えないから、知らなかったから存在しない。嘘だって言うのは、短絡的にも程があるでしょうが」

「・・・・・・そうかしら。普通はそう思うに決まってるわよ」

「そうかもね。でも、それはきっとつまんないよ。例えば・・・・・・星だよ」



で、僕は歩きながら空を見る。今は真昼間だから、当然のように星は出ていない。



「星の光は、いつでも見えるわけじゃない。空が曇っている日もあるし、太陽が世界を照らしてる時もある。
そんな時、星の光は世界から消えているのも同然。ううん、ここからでは見えないものだってあるよ」



特殊な望遠鏡でも使わないと観測出来ないような星もある。

どんなに強く輝いていても、見えない光は確かにあるのだ。



「いや、それとこれとは」

「同じだよ。・・・・・・全部、同じなんだよ? 例え見えなくても、星の光は、輝きは、知らない世界は、ちゃんとそこにあるの。
それが見えないのは、見ようとしないから。何か厚いヴェールに閉ざされているから。それを外そうとしないから」



例えば太陽の光。例えば雲や雨。例えば、自身の常識や心。そういうヴェールを通すと、見えないものも出てくる。

正直、僕は三つ目で見えないのは嫌い。というか、もったいないと思う。



「しゅごキャラどうこうは抜きにしてさ、今ティアが言った事って、もう一度言うけどつまんないんじゃないかな?
だってそれって、自分にとって常識外な世界や物事を、全部否定してるのと同じなんだよ? 僕は、そういうのは好きじゃない」

「アンタ、そこまで言う? てゆうか、アンタは人のこと言えるわけ?」

「少なくともティアには言える。・・・・・・だって、ワクワクするじゃない」



空を見ながら、隣でどこか楽しそうに微笑むシオンと一緒に前に進む。進みながら、言葉を続ける。



「自分にとって知らない事、見た事も無い事。そんな世界やそこに存在するものに触れるのはさ。
『絶対にない』より、『あるかも知れない』の方が、きっと人生は楽しくなると思うから」

「・・・・・・つまり、信じるかどうかじゃなくて、受け止め方が硬過ぎるって感じかしら」

「そういうことかな。まぁ、つまんないは言い過ぎだとしても、そっちの方が楽しいよ。
こう・・・・・・何か広がるものを感じない? 先に繋がる何かをさ」



フェイトとイギリスに少しだけ旅行した時に、シオンが産まれて話した時にも感じた。

やっぱり、僕はこういうのが好きらしい。純粋に、胸の鼓動が高鳴る。



「そうやって、自分の中にある常識を壊していく。そうしたら、その分だけその世界はどんどん広がる。
別に、世界や他人が変わってるのとかじゃない。きっと、自分が変わっていくんだよ」

「・・・・・・そういうもんか」

「そういうもんだと、僕は思う」

「まぁ、正直さ。アンタの言ってることはよく分かんないのよ。私、やっぱりリアリストだし。でも」



・・・・・・でも?



「アンタがそういう風に色んなものを見るの、『あるかも知れない』の中にある可能性を、すごく好きなんだなって言うのは、伝わった。
そういうのも考えの一つかも知れないわよね。てゆうか・・・・・・それで楽しめたら、それはそれでいいかも」

「うん、好きだよ。だから旅とかも好きなんだ」

「そっか。・・・・・・じゃあ、私も見習おうかな。『あるかも知れない』が楽しいかどうか、確かめるだけでも、違うでしょうし」










・・・・・・・・・・・・また、旅とかしたいなぁ。たまごはもう一つあるから、もう一つの『なりたい自分』について考える旅。





1泊2日とかじゃなくて、もっと長めに。沢山時間をかけて考えながら、色んなものを見ていく。





なんだろう、こう・・・・・・考えるだけで凄く楽しくなってきた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



”・・・・・・ヴィータちゃん、フェイトちゃん”

”おう、どうした?”



いや、分かるよ? すごく分かるの。だって、私達の方にまで聞こえてるし。



”みんな、何の話してるのかな。シオンがどうとかしゅごなんとかとか、なりたい自分がどうとか見える見えないって”

”アタシに聞くな。てーかよ、バカ弟子の方を見ながらも別のもん見てる感じがすんだよ。アレ、一体なんだ?”



ど、どうしよう。しゅごキャラシオンの事は皆には極力内緒にしておくって決めてるし・・・・・・。

というか、どうしてスバル達は普通に見えてる感じなのっ!? 私、訓練開始前にヤスフミから念話で聞いてビックリしたんだけどっ!!



”ね、フェイトちゃんはどう思う?”

”ど、どう思うと言われても・・・・・・あの、ちょっと分からないよ”

”そっか。うーん、訓練は集中してる感じだから問題なさそうだけど・・・・・・やっぱり、少し話した方がいいのかな”



なんだか話が大きく広がってきてるっ!? というか、二人とも凄く心配そうな顔してるっ!!



”かも知れねぇな。もうティアナの時みたいなことはごめんだしよ。折を見て聞いてみようぜ”

”そうだね”










こ、これどうしよう。なんだかなのはやヴィータの間では凄くエンジンかかり始めてるんだけど。





しゅごキャラは私のような大人やキャラ持ち以外は基本的には見えないらしいから安心してたの・・・・・・もしかしなくてもミス?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、そんなこともありつつ食堂に着いた。着いて・・・・・・内心頭を抱えている。





理由は、フェイトからの念話。普通になのは達が気にしてるらしい。










”色々と学習しているわけね”



この場合、学習して欲しくなかったとか思うのは、ダメなのかな。

うん、ダメだよね。知ってたわ。だって、いいことではあるもの。



”・・・・・・シオンのこと、話しておいた方がいいかも知れないよ?”

”どうやって? シオン、普通に目の前に行ったりしてたのに、あの二人は揃って無反応だったんですけど”



たまごを触らせれば・・・・・・とも思ったけど、それでも信じてくれるかどうか微妙な感じがしてる。

もちろん、フェイトは信じてくれた。だけど、今朝のティアを見ると・・・・・・ちょっとなぁ。



”あぁ、そこが大きいよね。私もそうなんだけど、二人も見えてないとなると”

”まず、シオンの存在そのものを信じてくれるかどうかが分からないのよ”



あぁ、頭が痛い。シオンを否定するつもりなんてサラサラないけど、それでも頭が痛い。



”フェイトは、大丈夫?”

”うん、私はなんとか。ほら、私はしゅごたまを触らせてもらってるし、シオンが産まれるところも見ているから”

”ならよかった。・・・・・・まぁ、折を見て話すよ。でも、正直躊躇うなぁ。
普通にたまごを見せても、信じてくれるかどうか微妙な気がする”

”そんなことないと言いたい所だけど・・・・・・ごめん、私もそう思うよ。あんまりに常識外ではあるから”





常識外・・・・・・かぁ。そんなに重要な事なのかなぁ。

知らない事、見た事も無い物、そういうのに触れるのは楽しいのに。

僕がおかしいのかな。でも、楽しいのも事実なんだけど。



とにかく、僕達は食堂に向かい・・・・・・ある姿を見つけた。





「ふぇ・・・・・・」





その子は、感心したような顔で、モニターを見てた。





『このように、空戦機動においては・・・・・・』





なので、当然のようになのはは優しく声をかける。





「ヴィヴィオー!!」

「あ、ママー!!」



そう、ヴィヴィオである。



「ママ達、もうお昼休みなの?」

「うん、そうだよ。なのはママも私もお昼、一緒に出来るから」

「うん♪」



フェイトとなのはに駆け寄り、それに二人は嬉しそうに頬を綻ばせる。

で、僕も近づき、ヴィヴィオにニコリ。



「ヴィーヴィオっ!!」

「あ、恭文パパー!!」

「うん、パパだよー♪」





・・・・・・エリオとの一件を超えてから、ヴィヴィオは僕をこう呼ぶようになった。



ママが居るなら、情操教育上、名目だけだとしてもパパが必要だと言う事らしい。





「パパも一緒にご飯食べられる?」

「うん、食べられるよ。あ、それで旅行中の話してあげるね」

「うん。えっと、フェイトママとラブラブだったんだよね」

「え、えっと・・・・・・え?」



・・・・・・一瞬、誰がこんなこと教えたのか色々と気になるけど、犯人なら推測出来るので気にしない。



「ヤ、ヤスフミっ! というか、ヴィヴィオもそういうこと言わないのっ!!
あの、普通だよっ!? 本当に普通だったんだからっ!!」

「・・・・・・フェイトちゃん、なんでそんなに動揺してるの?」

「お前ら、旅行中になんかあったのかよ」

「き・・・・・・気にしないでっ!!」





まぁ、ヴィヴィオが真っ直ぐ健やかに育つために、パパは必要ではないかと言う話をしたのだ。



・・・・・・・・・・・・リインがね。うん、僕じゃないのよ。さすがに僕はそんな勇気は出なかった。





「まぁ、アレだよヴィヴィオ。その辺りについてはツッコまないで欲しいな。
それが大人のルールなんだよ? 僕達にも色々あるの」

「そうなの?」

「そうなのよ」





大丈夫、カレルとリエラとは違う。だって、なのはもフェイトも独身だし。

というか、パパは誰という話になって、自然と僕になってしまったんだ。

なお、拒否権はなかった。でも、いいの。うん、いいの。



そのおかげが・・・・・・あの、フェイトと両想いになれたし。





「・・・・・・アンタ、マジでこれはありえないでしょ。
子どもたらし込んでまで、フェイトさんフラグ立てたいわけ?」





若干一名、不満気味。そして、二名が不思議な顔をしている。

なぜだろう、その理由が僕にはよく分からない。あと、ティアは非常に妙な勘違いをしている。

うん、勘違いしているね。立てたいわけじゃなくて、もう立ててるもの。



・・・・・・この辺りも、みんなにおいおい話さないと。

というか、触れ回る話でもないけど、僕は何時話してもいいんだけどなぁ。

だって、フェイトは大好きな女の子で、清い関係ではあるけど彼女だもの。



なお、フェイトにそう言ったら、顔を真っ赤にして涙目になってた。・・・・・・どうして?



とにかく、僕はヴィヴィオをよいしょっと抱きかかえながら、ヴィヴィオが見ていた画面を見る。





「ヴィヴィオ、フェイト達のビデオ見てたの?」

≪教材用のビデオですね≫

「うん」



画面に映るのは、ジャケットを着て空を飛ぶフェイトとなのは。KY魔王はともかく、フェイトは素敵。



「ちょっと恭文君っ!? 私だけ扱い悪くないかなっ!!」

「なに言ってるのさ。・・・・・・僕の仕事を遠慮なく邪魔したくせに。
おかげで今や、この通り馴染んでしまってるよ」

「それは言わないでー! はやてちゃんやシグナムさんから凄まじく怒られて、アレも黒歴史にしたいくらいに反省してるのー!!」



だが、当然のように僕は許さない。そう、絶対に許さない。

僕の頭の上に『もう許してやれよ』とタグが付いても、絶対に許さない。



「よくよく考えたら、僕ってみんなと話したり、模擬戦したりする必要なかったんじゃ。
あ、そうだよそうだよ。普通に嫌われてる状態でよかったじゃん」

『あの、ちょっとっ!?』

「ねぇエリオ、あの時間を今すぐ返してよ。あと、スバルも出入り禁止を解除して?
ほら、10秒以内に解除しないと、バインドかけて丸はげにしちゃうから」

『そんなの無理っ! お願いだから、その寒気のする目はやめてー!!』



なんだか四人が叫んでるけど、僕は気にしない。

・・・・・・結局、僕の仕事通してないな。これ、ダメなんじゃ。



「ヤスフミ、そんなこと言わないで? あの、大丈夫だよ。仲良くなった上で厳しくすればいいんだし」

「・・・・・・そういうもの?」

「そういうものだよ」

「なら、納得する」





僕がヴィヴィオを抱きかかえつつそう口にすると、フェイトが本当に嬉しそうに、優しく笑ってくれた。

うぅ、なんか嬉しい。というか、両想い・・・・・・なんだよね。フェイトが、僕を・・・・・・す、好き。

ど、どうしよう。ドキドキする。すごく嬉しくてドキドキする。というか、僕そんな魅力あったかな?



うぅ、頑張ろう。男の子としてもっと素敵になって、フェイトが余所見しないようにしなくちゃ。





「でもヴィヴィオ」



で、スバルはそんな僕の心境など当然のように読まないで、話を進める。

ヴィヴィオは、僕に抱きかかえられながら、スバルに視線を向ける。



「なのはママもフェイトママも、強くてかっこいいでしょー」

「うんっ!! ・・・・・・あ、でも恭文パパの方がかっこいいよ?」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』



なお、僕も一緒に叫んでいる。というか、僕は教導ビデオなんて出てないのに。



「あのね、八神部隊長が模擬戦の映像とか見せてくれたの。
あと、アレも見せてくれたんだー。パパがお友達からもらった新装備」



いや、普通にお試し変身しようとしたら、ヴィヴィオに見られたので・・・・・・色々解説を。



「ヴィヴィオ、アレはただ、蛍光灯みたいにピカピカ光ってるだけなのよ?」

「なにさりげなく失礼な事言ってるのっ!?」

「というかさ、コイツより絶対なのはさん達の方が、かっこいいと思うな」

「そんなことないよっ! 絶対恭文パパっ!!」



ど、どうしよう。ここはとても意外なんですけど。

というか、どの映像を見せたの? あとではやてに確認しよう。



「・・・・・・恭文さん、ヴィヴィオに一体何をしたんですか」

「小さな子どもを騙すのは、ひどいと思います。
これじゃあ、アルフがエリオ君にしたことと、同じじゃないですか」

「そこのちびっ子二人はいきなり何の話っ!? てーか、僕はマジで何もしてないからっ!!」

「あ、そうだ。ね、なのはママにフェイトママ、それに恭文パパ」



で、僕達三人は声を揃えて『なに?』と聞く。

・・・・・・この言葉が、スバル達にとって色んな意味での迷走の始まりとも知らずに。



「なのはママとフェイトママ、恭文パパって誰が強いの?」

「うーん、どうだろ」

「当然僕に決まってるじゃないのさ。・・・・・・ヴィヴィオ、知っている?」



ヴィヴィオを抱きかかえながら、僕は右手の人差し指で天を指した。

ヴィヴィオは、それは興味深そうに見る。



「天の道を往き、総てを司る人のおばあちゃんはこう言っている。世界は自分を中心に回っている。そう考えると楽しい。
つまり、世界は僕を中心に回っている。僕こそが世界の中心。すなわち・・・・・・一番強いのは、僕なのよ」

「ほぇ〜、パパ凄い」

「そんなことないからっ! 恭文君なに普通に嘘ついてるのっ!?
ヴィヴィオ、信じなくていいからねっ! これ、全部特撮ドラマの台詞なんだからっ!!」

「というか、さすがにその理論はどうなのかなっ!? ヤスフミ、本当に落ち着こうよっ!!」










・・・・・・こんな話をしていたから、気づかなかったのかも知れない。





普通にスバル達が疑問顔だったのを。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・スバル達が駐機場で騒いでる?」

「シャーリー、喧嘩ですか? あ、リインはティアが勝つ方に1000円なのです」

『違います。リイン曹長、なぜ最初にそれが出てくるんですか?』



お昼、なのはとフェイトの部屋で五人で楽しく食後のキャラメルミルクを味わっていると、シャーリーから通信がかかった。

内容は、現在スバル達がやっていること。てゆうか、バカ騒ぎ。



『まぁ、一応ご報告というかそんな感じですね。
今のところ、特に喧嘩とかそういうことには、なってないんですけど』

「シャーリー、どういうことかな。というより、スバル達が何を騒いでるの?」



フェイトがそう聞くと、とても苦い顔をしてシャーリーは話しにくそうに答えてくれた。



『それがですね・・・・・・。隊長陣の中で一番強いのは誰かという話をしてるんですよ』

『はぁっ!?』



シャーリーの説明によると、駐機場でロングアーチのアルトさんとスバルが音頭を取って、ある事をしている。

なんでも・・・・・・『第一回・機動六課で最強の魔導師は誰だか想像してみよう大会』を開いているらしい。



『メカニック陣まで乗ってきちゃって、もう凄い状態なんです。トトカルチョまで開催されている始末らしくて』

「・・・・・・なにやってんの? あのバカ四人組。というか、整備員の方々もどうなってんのさ」

「でも、どうしてそんな話に? あの、いきなり過ぎるよ」

『なんでも、なのはさんとフェイトさんのどちらが強いかという話をしたらしくて』



それに、僕達は顔を見合わせる。四人がそんな話をし出す原因を、僕達は知っていた。

もしかして・・・・・・別れる前にしたあの話っ!? アレが発展しまくってこれかいっ!!



『それが色々ぶっ飛んだ結果、六課最強は誰かと言う話に』

「いやいや、最強は僕でしょ?」

『・・・・・・なお、なぎ君はノミネートされてないから』



はぁっ!? どうしてっ!!



『隊長陣じゃないからだよ』



フェイトとなのは、シオンとリインを見る。四人は、力いっぱいにうんうんと頷いた。

・・・・・・おかしい。六課最強を決めるのに、なぜ僕が数に入ってないんだろうか。



「なに言ってるの。僕はナハト分隊の分隊長だよ?
しかも凄いよ? 分隊長で副隊長で分隊員なんだから」

『それ意味分からないからっ!!』

「ほえー、パパ凄いねー。一人でなんでも出来ちゃうんだ」

『ヴィヴィオもそこは信じちゃだめだよっ! なぎ君の口からでまかせなんだからっ!!
・・・・・・とにかくね、そんなわけで今駐機場は凄い騒ぎになってるんだ』



で、とにかくそんなわけで僕はノミネートされてないと。・・・・・・なんだろう、ムカつく。

よし、ここは思考を変えよう。別の思考にしていこう。



「というか、僕を除けば六課最強は決まってるじゃないのさ」

「パパ、そうなの?」

「そうだよ。六課最強はフェイトなんだから」

「わ、私っ!?」



なお、もちろん理由がある。とても素敵ですばらしい理由がある。

なので、自信満々に言い放つ。



「だって、六課の中で一番フェイトが女性としても魔導師としても、魅力的じゃないのさ。
はやてやなのは、シグナムさんは当然勝てないし、師匠もギリ勝てない。はい、納得したね?」

「あ、あの・・・・・・ありがと。すごく嬉しいよ。でも、はやてやシグナムになのはだって素敵だと思うし」

「フェイトちゃんも赤くならなくていいからっ! というか、それは納得出来ないよっ!!
それ、完全に恭文君の大好きフィルターかかってるよねっ!?」

『まぁ、私は予想してたよ。うん、予想してた』



シャーリー、そんなに呆れた目で僕を見ないで? 僕、どうしてそうなるのかよく分からないよ。



『・・・・・・それでなのはさんにフェイトさん、あとリイン曹長もなんですが、どうしましょ。
一応グリフィスやシグナム副隊長は、あまりに騒ぎ過ぎなければ問題なしという判断なんです』

「シャーリー、私達もそれで問題ないよ。なにより、今は私達も含めて休憩時間だもの」



フェイトは、キャラメルミルクの入ったコップを画面の中のシャーリーに見せながら、言葉を続ける。

こういう時でも柔らかい雰囲気を崩さないのは、さすがだと思う。フェイトのいいところの一つだ。



「なのは、リイン。私はそんな感じなんだけど、大丈夫かな」

「うん、大丈夫だよ」

「リインも大丈夫です。シャーリー、わざわざ報告ありがとうです」

『いえ。それじゃあ、休憩時間を邪魔してもアレなので、この辺で』



そうして、画面は閉じる。で、僕はキャラメルミルクを飲みながら、色々と考える。

考えて・・・・・・結論が出た。



「トーナメントでもやる? で、僕が最強だとちゃんと知らしめないと」

「それはいきなり過ぎないかなっ! というか、そんなにノミネートされてないのが悔しいのっ!?」

「当然じゃない。どっかの空気の読めない、バカなスターズ分隊長に劣るとか言われたらそりゃあムカつくさ。
きっとシグナムさんとはやてだって、同列に見られるのは嫌だと思うよ? ほら、なのはを見る視線が冷たい」

「だからそれは言わないでー! あぁ、シグナムさんもはやてちゃんもその目はやめてー!!
死んじゃうっ! 見られているだけで魂まで凍り付いて死んじゃうからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



そして、魔王は部屋の隅で蹲った。半泣き状態でなにやら怖い台詞を呟き続けているけど、僕は気にしない。

フェイトがオロオロしてフォローしたりしてるけど、必要ないと思う。だって、なのはだし。



「・・・・・・パパ、なのはママどうしたの?」

「なのはママはね、ヴィヴィオが来る直前にとっても大きな失敗をしてしまったんだ。
で、それで八神部隊長やシグナムさんからすごく怒られて、それを思い出してるんだよ?」

「ママ、失敗したの?」

「うん、ママだけど、いけないことをしちゃったの。ヴィヴィオ、ママの背中を見てごらん」



そして、ヴィヴィオは本当に真っ直ぐになのはママを見る。

あ、なのはの背中になんか突き刺さってる。



「ママだけど、失敗もするし、たまにヘコんじゃうこともあるんだ。
だけどねヴィヴィオ、ママはあぁやって、ヴィヴィオに教えてくれてるんだよ?」

「ほえ?」

「失敗したら、ちゃんと反省して、前に進む努力をする必要があるんだってこと。
なのはだけじゃなくて、フェイトや僕もそうなんだよ? そうやって、強くなるの」



ヴィヴィオは、今度は僕を見る。僕をキラキラとした瞳で見ながら、話を聞く。

紅と翠の瞳は、とっても綺麗で、見ているだけで吸い込まれそうになったりする。



「ヴィヴィオ、ヴィヴィオも僕・・・・・・はまぁいいか。なのはみたいに、失敗しても頑張れる大人になろうね?
ヘコんだりしてもいいし、泣いたりしてもいいけど、それでも前に進もうとすれば、きっとママみたいになれるよ」

「・・・・・・うんっ! ヴィヴィオ、頑張るっ!!」

「うん、いい子だ」



左手を伸ばし、ヴィヴィオの頭を撫でる。ヴィヴィオは、嬉しそうにそれを受け入れる。

・・・・・・色々思惑があってパパになってしまったわけだけど、これはこれで楽しいかも。



「・・・・・・お兄様、相変わらず口が上手いですね」

「そこも恭文さんの魅力なのですよ。あ、はい。シオンも」

「リインさん、ありがとうございます」



リインはリインで、自分サイズのカップのキャラメルミルクをシオンと一緒に分け合いながら飲んでる。

うーん、なんというか普通にご飯食べたりするんだね。しゅごキャラだから、夢とか食べると思ってた。



「あ、そう言えばパパ」

「なに?」

「リインさんの側に居る緑色の髪の子って・・・・・・誰?」

「・・・・・・はいっ!?」

≪やっぱり見えてましたか≫




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



で、ヴィヴィオにそっと説明・・・・・・と思ったら、横馬が復活して話に割り込んできた。




なので、仕方なくリインとアルトも協力の上で説明した。で、当然訝しげな顔をする。










「・・・・・・えっと、私は見えないんだけど、本当に居るの?」

「居るよー! 今も、パパの頭の上に乗ってるもんっ!!」

「フェイトちゃーん、みんなが私の事騙そうとしてるー。
というか、ヴィヴィオが恭文君に毒されて来てるー」



騙してないよっ! そして、毒されてるって何っ!?

おのれは僕に対して、一体どういう認識を持っているっ!!



「なのは、大丈夫だよ。私も見えてない。だけど、リインとアルトアイゼンは見えてる」

「・・・・・・ほんとなの?」

「ほんとなの。それに、スバルとエリオにキャロもだね。
ほら、さっきみんなが話してたシオンって、ヤスフミのしゅごキャラの事なんだ」



で、もう一度僕を見る。『ホントに?』という顔をしたので、頷いてやった。

てゆうか、普通に頭が固い。久遠の事とか退魔師の事とか知ってるのに。



「それで、ヴィヴィオは見えてるんだよね。そのシオンって言う・・・・・・しゅごキャラが」

「うん。でも、なんでだろ。ヴィヴィオには、シオンみたいな子は居ないのに」

「ヴィヴィオは多分まだ小さいから、こころのたまごが生まれてないんじゃないのかな?
ヤスフミ・・・・・・というか、シオンの話だと、そういう子は見えることがあるらしいから」

「でも・・・・・・どんどんバレるなぁ」



頭痛い。普通に痛い。この調子で行くと、マジで一週間後には、部隊の全員にバレてるんではなかろうか。



「大丈夫だよ。なのはもヴィヴィオも、内緒にするのは約束してくれたんだから」



うん、最初の段階でそういう話はした。で、二人にはしっかりと頷いてもらった上で話した。



「でも、いい話ではあるんだよね。だって、なりたい自分が形になって出てきたんだから。
逆を言えば、それだけ恭文君の中の夢や可能性がハッキリとしている」

「なら、パパおめでとう?」

「うん、おめでとうだよ」





なんだろう、そう言われると色々とくすぐったい。というか、気恥ずかしい。



でも、実は喜んでばかりもいられないのだ。そう、もう一個の星の光のたまごのこと。





「ありがと。でも・・・・・・うーん」

「ヤスフミ、どうしたの?」

「いやね、もう一個のたまごはいつ産まれるのかなーと」



言うなら、あの子はもう一つの僕の可能性。シオンとは別のなりたい自分。

昨日から、実はかなり色々と考えている。でも、どうやら時間がかかりそうだ。



「それは、ゆっくり考えていこうよ。大丈夫、私も一緒に考えるから」

「・・・・・・いいの?」

「うん」

「あの、フェイト・・・・・・ありがと」



フェイトは『ううん』と言いながら、首を横に振る。



「ヤスフミも、私の進路の事とか一緒に考えてくれるから。
その・・・・・・お返し。だから、大丈夫だよ」

「いいの。それでも嬉しいから、ありがとうなんだよ?」

「・・・・・・うん」










あぁ、なんだろう。嬉しい、なんか嬉しい。





フェイトが今までと違うのは、凄く嬉しい。こう、一人の女の子になってるというかなんというか。





というか、僕マジで頑張ろう。こんな素敵な彼女が出来たんだもの。リア充パワーで頑張らなくてどうするのさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なのはママ、リインさん、アルトアイゼン、シオン」

「うん、なにかな」



私はそのシオンって子が全く見えないんだけどね。



「フェイトママと恭文パパ、なんだか幸せそうだね。・・・・・・・・・・・・固有結界ってなに?」



なんだろう、やっぱりわが子(一時的)がなにも無い方向にしっかりと焦点を定めて話している様を見ると、危機感を覚えるよ。



≪固有結界というのは、今の二人が出している空気ですよ。
二人によって、世界の色そのものが変えられているわけです≫

「ほえー、パパとママ凄い。・・・・・・え、アンリミテッド・シュガー・ワークスって・・・・・・なに?」

≪またそれは・・・・・・上手いもじりですね。アレですよ、このままだときっと、無限に砂糖が精製されていきいますよ≫





どうやら、普通にシオンが会話に加わっているらしい。

だけど、私には全然見えないし、声も聞こえないからよくわからない。

でも、なんで私とフェイトちゃんは見えないのっ!?



私達だって、たまごとかあるはずなのにっ! 私達の夢はまだまだ途中なんだからっ!!





「あー、それは正解ですね。・・・・・・そうです、リインが第二夫人なのは決定なのですよ?」

「あの、三人とも? お願いだから、もう少し私が加わりやすい会話をしてくれないかな。
・・・・・・というか、本当に旅行中に何かあったっ!? これはおかしいよっ!!」










恭文君とフェイトちゃんが、もの凄く甘い空気を出してる。というか、手を繋いで見つめあいながら喋ってる。

それでそれで、フェイトちゃんが今まで見た事のないくらいに乙女モードで、なんだか・・・・・・こう、不思議なの。

恭文君とラブラブしてるように見える。8年間ずっとスルーだったのに。そう、二人はラブラブしてる。





こ、これ・・・・・・一体どういうことっ!? なんでこうなるのかなっ! お願い、誰か教えてー!!




















(第20話へ続く)




















あとがき



恭文「そして、誰も教えるわけがないのです。さて、『なぎひこ×横馬』の成立を考えていこうのコーナー。
お相手は、蒼凪恭文です。それで、うわさのこの人です」

なぎひこ「いや、あの・・・・・・ちょっとっ!? いくらなんでも、悪ふざけが過ぎないかなっ!!」

あむ「大丈夫だよ、なぎひこ。とまとは悪ふざけとフリーダムさが売りだから」

なぎひこ「あむちゃんまで、なんか壊れてるー!!」





(噂のお兄さんは、色々頭を抱えてるけど、それで止まるわけがない)





あむ「あ、そういうわけで、日奈森あむです。さて、今回からコミック版StrikerSのお話に突入したね」

なぎひこ「色々と頭が痛い、藤咲なぎひこです。というか、あの・・・・・・シオンが自由過ぎるね」

恭文「でさ、なぎひことなのはとヴィヴィオって、仲いいんでしょ?
拍手で来る、横馬の運動オンチをガーディアンのみんなで改善する会のおかげで」

なぎひこ「え、普通に僕の話の振りはスルー!?」

あむ「あー、仲良いんだよ? ほら、なぎひこって空海に次いで、かなり運動出来る方だからさ」

なぎひこ「あむちゃんまで無視しないでー!!」





(だけど、そんな事じゃあ止まらない)





あむ「しかも、色々相談されてるんでしょ? 運動能力改善のためにさ」

なぎひこ「ま、まぁね。ただ、別に戦闘関係の事じゃないよ。それなら、なのはさんはぶっちぎりの専門家だから。
なのはさん、すごいんだよ? 改善するためにやった木登りとか、バスケとか、そういうの自主練してるんだって」

あむ「相談されてるのは、そのあたりの事?」

なぎひこ「うん。一応読本なんか読むそうなんだけど、さっぱりとか。
だから、たまに暇な時は練習に付き合ったりして、ヴィヴィオちゃんとバスケしたりとかして」

あむ「・・・・・・裁判長、どう思います?」

恭文「これはアレだね、始まってるね。なぎひこにとってのリアルラブプラスが始まってるね」

なぎひこ「始まってないからっ! お願いだから、そういう余計な事は言わないでくれるっ!?」

恭文「大丈夫だって。さすがに僕達はそこまで本気にしてないから」

あむ「そうそう。普通に色々相談されて、仲良くなっただけなんでしょ? バスケ関連で、ヴィヴィオちゃんとも親しくなった。
まぁ、将来的にはって言うのは、もちろん分からないよ? でも、なのはさんだって大人なんだし、可能性は低いよ」

なぎひこ「まぁ、ちゃんと分かってくれてるならいいんだけどさ」

恭文「・・・・・・あ、でも」





(青い古き鉄、言いかけてやめる)





恭文「というわけで、本日はここまで。お相手は」

なぎひこ「待って。今、何を言いかけたの?」

恭文「いや、なんでもないよ?」

なぎひこ「なんでもあるよね。・・・・・・まさか、何か余計な事したんじゃ」

恭文「失礼な。僕は何もしてない。さっき言った通りだよ。・・・・・・ヴィヴィオ、少し色々ある子だしさ。
普通に仲良く遊んでくれて、横馬にも良くしてくれてるなら、それはホントありがたいのよ。たださ」

なぎひこ「なに?」

恭文「・・・・・・いや、知らないほうがいい。きっと、それが幸せな時もあると思うから」

なぎひこ「恭文君、お願い。ちゃんと話してもらえるかな」

恭文「・・・・・・分かった。でも、後悔しないでね?
実はこの話、なのはの実家や、僕達のコミュ一同に伝わってるのよ」





(そして、二人は驚く。驚いて、こう言い放つ)





あむ・なぎひこ「「はぁっ!? なんでっ!!」」

恭文「言っておくけど、僕とかフェイトが話したわけじゃない。そこは、本当」

あむ「なら、なんでなのはさんの実家に、なぎひこの事が伝わってるのっ!? おかしいじゃないっ!!」

恭文「ヴィヴィオが、あっちこっちで話してるのよ。なぎひこに世話になってるってさ。で、決定的なのをやった。
ヴィヴィオ、なのはの実家に、定期的に近況メールを送ってるの。で、それで報告しちゃったのよ。自分とママが、最近仲良くなった男の人って」

なぎひこ「僕の、ことだよね」

恭文「うん」

あむ「・・・・・・うわぁ、そりゃ何にも言えないわ。だって、絶対悪気ないだろうし」

恭文「でさ、なぎひこ。三人でバスケの練習したときに、写真撮ったそうだね」

なぎひこ「あ、うん。記念写真だって言われて、まぁ軽く」

恭文「なぎひこって、現時点でも僕より身長あるじゃない? なのはとギリ同じくらいはある」

なぎひこ「まぁ、ブーツを履いてギリギリだね。・・・・・・って、まさか」

恭文「そのまさかだよ。細かい説明なしで、そんな写真を見たもんだから・・・・・・あぁ、だめだ。これ以上は言えない」





(青い古き鉄、身震いする。どうやら、本当に恐ろしいらしい)





あむ「・・・・・・というわけで、本日はここまで。正直、これ以上は知りたくないと思う日奈森あむと」

恭文「とりあえず、ドイツの恭也さんが震えながらその写真を見て『少し試す』と言ったことを聞いて、寒気がした蒼凪恭文と」

なぎひこ「ふ、藤咲なぎひこでした。
・・・・・・え、試すってなにっ!? そしてそれは誰かなっ!!」

恭文「なのはのお兄さんで、最強のシスコンだよ。で、試すのは多分、実力だろうね。
あー、ちなみに恭也さんは、魔法なしで魔法ありな僕やフェイトでも勝てない相手だから」

なぎひこ「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

あむ「・・・・・・恭文、マジ?」

恭文「空飛べないし、砲撃も出来ないから、陸戦とクロスレンジの戦闘に限りだけどね。
まぁ、大丈夫だよ。さすがに小学生だと分かれば、そんな真似・・・・・・するかも」

あむ「そ、そんな人なの?」

恭文「僕は初対面で、こめかみにコレ(飛針)を投げつけられたから。なお、当たってたら死んでた」

あむ「それは絶対やばいじゃんっ!!」

なぎひこ「あぁぁぁぁぁぁぁっ! これ、どうすりゃいいんだ僕はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










(それを聞いて、みんな『バスケ勝負なら、いけるんじゃない?』と思ったのは、内緒である。
本日のED藤咲なでしこ・なぎひこ(CV:千葉妙子)『花手紙』)




















恭文「しかし、なぎひこも大変だなぁ。まぁ、さすがに命の危険があるから、僕とフェイトから事情説明メールはしておこう」

あむ「そうだよね、アレ投げつけられたら死ぬよね。・・・・・・でも、仲良くなってるんだね」

恭文「子どもだから逆に、なのはも片意地張らずにプライベートモードオンにしちゃうんだろうね。
ほら、なぎひこはエリオやキャロとかと違って、管理局に勤めてるわけでもなんでもないし」

あむ「あぁ、上官どうこうって話にならないから、余計にか。
でも恭文、マジで事情説明はしてあげてね? なぎひこ、恐怖で震えてるから」

恭文「大丈夫。今フェイトに連絡して、すぐにしてもらうことになったから。
僕も後でやる。・・・・・・で、問題はまだあるのよ」

あむ「まだあるのっ!?」

恭文「僕もさっきフェイトからメールもらって知ったんだけど・・・・・・ヴィヴィオ、他にもメールしてるみたいなの」

あむ「はぁっ!?」

恭文「とりあえず、知り合い連中やお世話になっている人は、全員知ってる。
というか、なのはも聞かれて普通に答えるんだよ。好感持てる子だって」

あむ「ね、まず二人を止める方が先じゃないかな。このままじゃ、周りが勝手に誤解するって」

恭文「そうだね。てーか、ヴィヴィオもまた無自覚な。なのはみたいな天然フラグブレイカーにならないといいんだけど」










(おしまい)




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