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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第17話 『これからの二人?』



・・・・・・それから、ヤスフミと少し話した。本当に、ゆっくりと。





ヤスフミは少し混乱して、落ち着いてからポツリポツリと話してくれた。





ヤスフミが・・・・・・その、私に好意を持ってくれていたこと。










「それって、いつぐらいからかな」

「自覚したのは、フェイトの出自の話を聞いた直後」

「え?」



ちょ、ちょっと待って? それって・・・・・・出会ってからそんなに時間が経ってないよね?

ということは、8年前っ!? だ、だけどその間、何にもなかったよねっ!!



≪・・・・・・真面目に自覚がなかったんですね≫

≪Sir、すみません。私は何のフォローも出来ません≫

「バルディッシュもアルトアイゼンも、知ってたのっ!?」

≪分からないはずがないじゃないですか。フェイトさん、思い出してください。
この人、何回もあなたに告白してますよ? プロポーズもありです≫



アルトアイゼンにそう言われて、よーく思い出してみる。・・・・・・あ。

あるっ! 私、何度もヤスフミに告白っぽいシチュで好きって言われてるっ!!



「・・・・・・いや、それ以前に何故におのれら話に突然加わってくる?」

≪当然、スリープモードに入ったと思わせて、盗み見てたからに決まってるじゃないですか≫

≪すまん。だが、さすがにSirの出自の話もあったので、私もさすがに心配で・・・・・・。
だが、感謝する。Sirの傷を、より良き形へ昇華してくれた。私も、これで安心出来る≫

「そうかそうかっ! だったら今すぐ寝てもらえるっ!? てーか、趣味が悪すぎるわっ!!」





それで、何回か告白やプロポーズ(嘱託試験の時のアレ)をしてくれていたこと。

それを・・・・・・私がスルーし続けていたこと。それも相当数。

その全部を、見事に私は家族として、友達としての好きだと受け取っていた。



それを話してくれて、私・・・・・・ヤスフミにまず謝った。なによりもまず一番に謝った。





「・・・・・・ごめん。私、これしか言えないけど、ごめん。
きっとヤスフミのこと、たくさん傷つけてたよね。あの、本当にごめん」





ちゃんと返事もせずに、気づきもせずに、ずっとスルー。

それがどれだけひどい事かくらいは、私にだって分かる。というか、だからなんだ。

すずかとか、ヤスフミの事を好きだって言ってくれる人達の告白を断ってたのは。



・・・・・・私、ずっとヤスフミの事、縛り付けてたんだ。嬉しさもあるけど、やっぱり申し訳ない。





「ううん、大丈夫。というか、あの・・・・・・嬉しいんだ」



ヤスフミが、少し泣く。床に座り、私の目の前でポロポロと、涙を流す。

それがどうしてか分からなくて、私は少し困ってしまう。



「だって、やっと通じた。まぁ、少しおかしい形には、なっちゃったけどさ。
だけど、フェイトにちゃんと好きだって伝えられた・・・・・・よね?」

「うん、伝わったよ。意識してなかったかも知れないけど、あなたの『好き』の気持ち、ちゃんと伝わった」



やっぱり傷つけていたかも知れないと、申し訳なくなってしまう。・・・・・・いや、傷つけてたよね。

だって、8年間スルーだもの。うぅ、みんなが私に時々冷たい視線を送る理由を、ようやく理解したよ。



「なら、よかった。あとね、スルーの事とかは気にしなくていいよ」

「でも」

「いいから。僕だって、悪い部分はあったもの。それで、あのさ・・・・・・フェイト」



・・・・・・恭文が、ジッと私を見つめる。私は、その視線を受け止める。

胸の鼓動が高鳴って、締め付けられて・・・・・・嬉しさと甘い苦しさが、心の中をいっぱいにする。



「僕、フェイトが好き、なんだ。ずっと、好きの気持ち、更新され続けてた」

「うん」

「お付き合いとかして、フェイトとずっと一緒に居られたらいいなって、考えてる。
フェイトの今と笑顔を、ありったけで守りたいって、思うんだ。だから、側に居たい」

「・・・・・・うん」



それで、あの・・・・・・告白には、やっぱり返事だよね。しなきゃ、いけないよね。

もう、私は気づいた。だから、スルーなんてしたくない。



「ありがと。私、すごく嬉しいよ。あのね、それで・・・・・・その」

「・・・・・・ダメっぽい? というか、ダメ・・・・・・だよね」

「どうして、そう思うの?」

「僕、きっとフェイトの事沢山傷つけてる。今だって、あの・・・・・・ちょっと、アレだったし」



そんなことないよ。それを言えば、私だって同じ。・・・・・・うん、同じなんだ。

きっと今のヤスフミの事、本当に分かろうともしてなかった。ヤスフミがダメなら、私もダメだよ。



「・・・・・・ヤスフミとのこと、アリかナシかで考えてたの」





一週間、仕事をしながらかなり真剣に。アレが告白だとしたら、返事をしなくちゃいけないと思ったから。

考えて、考えて・・・・・・今日のお昼に、一緒にハムサンドを食べている時に答えが出た。

ヤスフミとご飯を食べてるのは、楽しくて、落ち着けて、幸せで・・・・・・そうして、気づいた。



その幸せが、前よりも増している事に。前とは、意味合いが少しだけ変わっていることに。





「その、ヤスフミの意図はともかく、かなり真剣に。それで、あの・・・・・・アリかなと」



ようするに、お付き合いというか、恋人関係になっても・・・・・・いいかなと思ってる。

というより、なんと言えばいいんだろう。やっぱり、心苦しいよ。



「あの、本当に私でいいの? だって、8年間スルーだよ?
・・・・・・申し訳なさ過ぎて、自信ないよ。私より、ずっといい子は居ると思うし」

「いいの」



私の言葉を、ヤスフミは自分の人差し指を、私の唇に当てて止めた。

ヤスフミの手は、普通の人よりずっと温かい。だから、熱が唇から伝わる。



「言ったでしょ。好きの気持ちは、更新され続けてるって。
僕が、フェイトがいいって選び続けてるの。だから、いいの」



伝わる熱と、ヤスフミの言葉に鼓動が高鳴る。高鳴って・・・・・・自分を、抑え切れなくなる。

な、なんかだめ。ヤスフミに触れられると、ドキドキし過ぎて、気絶しそう。



「なら、大丈夫・・・・・・かな」



ヤスフミの指が、唇から離れる。それが、少し寂しく感じた。

もっと触ってて欲しいなんて考えた私は、ダメかも知れない。



「うん。てーか、怒るよ? 8年間スルーしたのが申し訳ないからって理由で、断ったら。
僕がナシとか、家族とか友達としてしか見れないなら納得出来るけど、それは嫌だ」

「そう、だよね。あの・・・・・・ごめん」

「謝らなくていいから。・・・・・・ね?」

「うん。・・・・・・ただ、私ね」



もしかしたら、ヤスフミを落胆させるかも知れない。でも、ここはちゃんとしたい。



「よくよく考えたら、男の子としてのヤスフミをそれほど知らないと思うんだ。
ずっと、家族として、友達として、仲間として見てきたから。だから、まず」



うん、ちゃんと言わなくちゃいけない。・・・・・・少しだけ、踏み出そう。



「ヤスフミを男の子として見ていく所から、始めたいんだ。もっと言うと・・・・・・大人な事とかは」

「えっと、付き合うとかはオーケーだけど、まずは清い関係ってこと?
例えば、キスとかエッチなことは、しばらくNG」

「うん。・・・・・・ダメ、かな。というか、ダメだよね。私、勝手過ぎるよね。
8年もスルーしてるし、その上オーケーしたのに、NG部分があるなんて」



男の子って、こういう時に我慢するの大変だって言うし、やっぱりダメ・・・・・・だよね。

私は、申し訳なくヤスフミを見る。ヤスフミは・・・・・・首を横に振った。



「ダメなんかじゃないよ。だって、フェイトからするといきなりな話だもの。うん、大丈夫。
てーか、いきなり大人な関係になるなんて、早過ぎだよ。というより、怖いんだよね」

「・・・・・・うん」



一応、告白された事もある。まぁ、全部断ってたけど。なんだか、恋愛って興味持てなかったから。

あと、仕事やエリオとキャロの事を言い訳にしてた。それだけで、私の中を埋め尽くそうとしてた。



「あの、結構そういう目で見られる事・・・・・・あるの。だから、そういうのは少し苦手。
そんな、無理矢理迫られたり、それで身体を奪われたりしたって言うのは、ないんだけど」

「大丈夫だよ。・・・・・・無理しなくていいから」

「そう言ってもらえると、非常に助かる・・・・・・・かな。
・・・・・・というわけで、今日からは恋人同士、だよね」

「うん、そうだね。・・・・・やばい、なんか泣きそう」



な、なんだろう。改めて口に出すと凄く恥ずかしいよ。というか、あの・・・・・・うぅ、ダメだ。

私、本当にダメだ。今まで気づかなかった分、ちゃんと応えていきたいのに。



「でもヤスフミ、本当に・・・・・・いいの? 私、きっと凄くわがままを言ってる」

「大丈夫だよ。フェイトの事、戸惑わせたり、困らせたくないから」





・・・・・・ヤスフミは、すごく優しい。こういう時、必ず私の事を想ってくれる。

私はようやく、ヤスフミの気持ちに気づいたから、分かることがある。

それは、ヤスフミがいつも男の子として、ありったけで私を守ってくれている事。



だけど、私は・・・・・・それだけじゃあだめ、だよね。確かに、怖い。



怖いけど、今のままだとヤスフミに依存してる。それは、変えなくちゃいけない。





「私ね、思ったんだ」



だって、私はまだ弱くて淡い気持ちだけど、この子とそういう風に付き合いたいと思ってる。

ヤスフミの気持ちと、私もちゃんと向き合いたい。だから、一歩踏み出さなくちゃ。



「きっとヤスフミのこと、振り回してる。負担もかけてる。それも、相当に。
だから、正直に話して欲しい。本当に我慢出来ないなら、私・・・・・・頑張るよ」

「・・・・・・はい?」

「一応、人並み以上には成長してると思うんだ。心はともかく、身体は大人だと思う」

「いや、だからいきなり一体なんの話を」





ヤスフミは鈍いと思う。私、かなり真剣に話してる。

なのに、どうしてそんな呆れた顔が出来るのか、分からないよ。

だから、しっかり話すことにする。あの、きっと大事な事だと思うから。



ここは私のわがままじゃなくて、二人で決めたい。





「つまりその・・・・・・清い関係じゃなくて、いきなり大人な関係になるの。もっとハッキリ言うと」



は、恥ずかしい。だけどだめ、止まっちゃダメだから。8年もこんな私の事を、想ってくれてた。

だから、私はちゃんと応えたい。うん、だから・・・・・・止まれない。



「今日以降・・・・・・その、エッチもコミュニケーションの一つとして、していくの。
というか、今から・・・・・・二人でこのままするかどうか、相談してる。一応、計算したけど大丈夫な日だし」

「はぁっ!? フェイト、いきなり何言い出してんのさっ! ・・・・・・あぁ、そんな必死な顔はやめてー!!」

「私、確かにクローンだけど、赤ちゃんも普通に産めるし、もちろんエッチもちゃんと出来る」



クローンゆえに短命とか、原因不明の病気にかかったりとか、子どもを産めないというのもないらしい。

これは母さんが、アリシアに幸せになって欲しくて、頑張った成果。・・・・・・そこは、やっぱり複雑。



「なにより、自画自賛するみたいだけど、全体的にそこそこ成長してるし・・・・・・大丈夫だと思う」



はやてから、胸の大きさとか、形とか、柔らかさとかは誉められることは多かったし、いい方だと思う。

身体も・・・・・・近接型だから筋肉が多いけど、それで硬いとかじゃない。柔らかみはあると思う。



「だから落ち着けー! そして何が一体どういう具合に大丈夫っ!? 僕には分からないよっ!!」



落ち着いてるよ。・・・・・・うん、落ち着いてる。私、今すごく冷静。だから、この話をしてる。



「お願い、逃げないで。私、ヤスフミにちゃんと、そういう部分も見せて欲しいんだ。
私達がこれから、恋人として繋がっていくなら、絶対に必要なことだから」

「それは分かるけど、だからってその怖い目には繋がらないでしょっ!? おかしいよそれっ!!」

「繋がるよっ! こういうことはちゃんと考えなくちゃいけないって、母さんやエイミィに教わったし、そういう本でも書いてたんだよっ!?」





恋人同士になるなら、話さなくちゃいけない事。それは、そういう性的なコミュニケーションについて。

避妊はもちろんだけど、性欲というのは、人間の欲求。我慢出来ない部分ではある。

それで、あの・・・・・・私も、一応そういう時はある。あまり詳しくは言えないけど、ある。



特に男の子の場合は、抑え切れない時が多いって聞いてる。ヤスフミも・・・・・・同じはず。





「もしかして・・・・・・セックスの相手として、私はナシかな」

「はぁっ!?」

「あの、もしそうなら言って欲しい。改善出来るところは、改善するよ。
ただあの・・・・・・経験があれば少しは分かるんだろうけど」



今まで私、恋とかお付き合いとか、そういうの全く無かった。というより、興味を持とうとしなかった。

性の低年齢化が騒がれる中で、私は多分遅い方で・・・・・・あの、つまりその・・・・・・まだなの。



「私、バージンで、キスもしたことがないから」



・・・・・・なぜか、遊んでる風に見られることもあるけど、全然そんなことない。



「よく分からないの。だから、ヤスフミに自分の経験から教えたりとか、リードとか、出来ない。
ヤスフミ、正直に言って。だから、私とじゃあ今そういうことをする気が、起きないのかな」

「だから、どうしてそうなるっ!?」

「トボけてもだめ。私、知ってるんだよ? 男の子は大人の女の人に、『筆下ろし』されるのが夢だって」



ヤスフミが、口をあんぐりと開けた。私はなぜそうなるのかがよく分からない。

だけど、それでも・・・・・・必死に話す。まだ何も終わってないから。



「よ、ようするに・・・・・・経験のない男の子が、経験のある女の子と・・・・・するの」

「ふぇ、ふぇいとさん? あの、おねがいだから、おちつきましょうよ。ほんと、おちつきましょうよ。
いや、まじめにはなしおかしいですから。あれ、これってあーるじゅうはちしょうせつだったっけ?」



ヤスフミ、すごく声が上ずってる。どうしたんだろ。私、変な話はしてないのに。



「そうして、性行為を実地で教えてもらうシチュエーションが、男の子は大好きなんだよね」

「な、なぜ言い切るの?」

「だって、はやてが前に言ってたよ? それで、ヤスフミもそういうのが好きに違いないって」

「・・・・・・あのバカは一体なにを吹き込んでるっ!? そして、やっぱりあのタヌキの仕業かっ!!
てーか、そういうのは信じなくていいからっ! そういうのは、人それぞれなのっ!!」



ヤスフミの顔が赤くなる。そして、私も同じく。・・・・・うん、経験無い。だから、よく分からない。

はやてに色々聞いたりしたことはあるけど、興味が無くて大半は逃げてた。うぅ、今後悔してるよ。



「だけど、ヤスフミの彼女として、これからは努力して、協力していきたいんだ。
そういうのが夢なら、あの・・・・・・頑張るから」

「何をどう頑張るつもりっ!? だから待って待ってっ! 絶対話がおかしいからっ!!」



だから、あの・・・・・・そういう時はどうすればいいかを、勉強する。



「『筆下ろし』っぽい感じになるけど、ようするに私があの」





どうしよう、かなり恥ずかしいけど・・・・・・が、頑張る。

ヤスフミ、まだ私に遠慮してるから。そんなの、だめ。

私にそういう話をすると、そういう部分を見せると、嫌われると思ってる。



でも、私達はもう恋人同士だから、私から『大丈夫だよ』ってサインを送らないと。





「・・・・・・リードすればいいんだよね? 私が、『こうすればいいんだよ』って、教える」



とりあえず、リードするだけなら、知識さえあれば、きっと何とかなるはず。

でも、実際のそれがどういう流れなのか分からないし・・・・・・よし。



「はやてが、その手の本を持ってるらしいから、それを参考にして」

「しなくていいからっ!!」

「というか、今から借りてくるよ。それで、一緒に勉強しよう?」

「借りようとしなくていいからっ! そして立ち上がらないでー!!
お願い、いつものフェイトに戻ってー! これは酷過ぎるからー!!」



あんまり必死に止めるので、はやてに本を借りに行くのはやめる。

なので、またヤスフミの前に座る。そして、真っ直ぐに見る。



「・・・・・・ヤスフミ、どうしてちゃんと話してくれないの? 私、どうしてそうなるのか分からないよ」

「僕はぶっちゃけ今の話の流れが全く理解出来ないけどね。・・・・・・てーか、どうして?
だって、怖いんだよね。僕はフェイトが怖いのに、無理して欲しくないよ」



確かに、怖い。トラウマがあるとかじゃないけど、知らない領域だから、不安はある。

でも、それだけじゃだめ。私・・・・・・もう諦めないって、決めたんだから。



「あの、前に読んだ本に、そういう性的な部分も、しっかり対話する事が必要って書いてたの。
だから、『僕は大丈夫』で済まさないで欲しいんだ。私は、ヤスフミとちゃんと話したいの」





ヤスフミは今も、大丈夫だって言ってくれる。

だけど、それが本当かどうかちょっと疑ってる。

だって、男の子は年頃だとあの・・・・・・毎日でもしたくなるって本に書いてた。



ヤスフミ、まだ顔を真っ赤にして・・・・・・わ、私だって恥ずかしいんだよ? だけど、逃げたくない。





「お願いだから、照れないでちゃんと私の目を見て?
私は、ちゃんと話して、ヤスフミと二人でどうするか決めたい」

「じゃないと、納得出来ない?」

「うん。・・・・・・お願い」

「わ、分かった。じゃああの・・・・・・頑張る」



ヤスフミが荒い息を吐きながら、ようやく私を見てくれた。・・・・・・どうしてこんなに疲れてるんだろ。

私、真剣に話してるのに。は、恥ずかしいけど・・・・・・それでも、必要なことだから。



「えっと、まず・・・・・・フェイトがそういう相手としてアリかナシかだけど」

「うん」

「アリ・・・・・・だよ」



本当に恥ずかしそうに、私が嫌な思いをするんじゃないかと、怯えたようにも見える。

だけど、ヤスフミはようやくちゃんと話してくれた。それが嬉しくて、そっと頬を撫でる。



「あの、性欲って言うのもあるけど、それだけじゃないの。
フェイトとそういう風に繋がれたら嬉しいなって、考える・・・・・・ことも、多々あったり」

「私、ヤスフミに教えたりとか出来ないけど、大丈夫?
ほんとに、エッチもそうだし、キスもしたことないの」

「だ、大丈夫。というか、あの・・・・・・そういうフェイトは、僕でいいの?」

「ヤスフミだったら、あの・・・・・・いいかなと。恋人同士だし、そもそもナシだったら、断ってたから」



まだ、心の準備とかが色々出来てない部分があるんだけど、それでも・・・・・・頑張りたい。



「そ、そうなんだ。あの・・・・・・ありがと」



・・・・・・だ、だめ。私、落ち着いて。ここでしっかりと話をしなくちゃだめなんだから。

でも、女性としてはちゃんと意識してくれてるんだよね。は、恥ずかしいけど、そこはうれしいかも。



「それで、僕の話だよね。僕も、フェイトならいいんだ。
むしろ、フェイトが経験ないなら、初めて・・・・・・僕にくれるなら、嬉しい。てゆうか、僕も経験ないよ?」

「ホントに?」

「うん。キスも、ほっぺとかにしかした事も、された事も無いし」





・・・・・・フィアッセさんの笑顔が頭に浮かんだのは、気のせいじゃない。

まぁ、フィアッセさんはいいか。外国というお国柄で、あくまでもスキンシップでするから。

だけど、ヤスフミも・・・・・・なんだ。あれ、なんだか嬉しいかも。私達、初めて同士なんだよね。



・・・・・・なお、ほっぺにキスも込みなひと夏のアバンチュールが有ったという事を、私は知らなかった。





「ただ、あの・・・・・・今の段階で、フェイトとそういうことをしていいのかなって、躊躇っちゃうの」

「どうして?」

「・・・・・・ほら、今日話したでしょ? 最終決戦前に大人な意味で男女の関係になるのは、ぶっちぎりで死亡フラグなのよ」



少し、困ったようにそう口にするヤスフミを見て・・・・・・少し固まった。

なんだろう、場違いにも噴き出してしまった。なんかこう、おかしい。



「ヤスフミ、もしかしてそういうの気にしてたの?」

「し、仕方ないでしょっ!? 状況が状況なんだし、気にしないわけにはいかないのよっ!!」

≪恭也さんは大丈夫でしたし、なんとかなりますよ。いいじゃないですか、二人で大人になれば≫

「そしておのれはとっととスリープモードに入れっ! 何故にまた会話に首突っ込むっ!? あと、恭也さんは普通にありえないからっ!!」



だめ、なんかおかしい。怒るべきところなのかも知れないけど、それでも。

本気でそういうの考えて、我慢しようとしてるところが、可愛く感じてしまう。



「あと、あの・・・・・・僕にも心の準備というのがありまして、まさかいきなりこうなるとは思ってなかったの。
嬉しいのと同時に、勢いだけで関係を進展させるのはまずいんじゃないかと、かなりブレーキが・・・・・・」

「でも、『据え膳食わねば、男の恥』って言うよね」

「フェイトは据え膳じゃないでしょっ!?」



でも、安心した。うん、安心したから私は、クスリと笑う。そして、お礼を言う。

私の事、本当に大事にしてくれてるのが分かったから、ありがとうと小さく呟く。



「・・・・・・じゃあ、最低でも事件が解決するまでは普通でいいかな。
というか、私達両方の心の準備が出来るまでは、本当に清い関係」

「うん。でさ、フェイト。・・・・・・真面目に最終決戦前に恋愛関係は、死亡フラグなのよ」





それ、結構言ってるよね。ということは、本当にダメなんだ。なんだろう、やっぱり普通に怖い。

死亡フラグって、ダメだよね。うん、弾き飛ばしていかなきゃ。・・・・・・でも、なんだろう。

その言葉が少し・・・・・・ううん、かなりイラっときた。ヤスフミ、全然分かってない。



私がどういう気持ちで話を切り出したのか、ちっともわかってないよ。





「というかね、あの・・・・・・僕との事、フェイトの仕事の邪魔にならないかな。
今は部隊に居るし、エリオやキャロの事もあるし、フェイトは手一杯ではあるし」

「ならないよ」



少し、きつめに言う。語気の強さに、ヤスフミがびっくりした顔をする。

でも、いいの。ちゃんと言いたいんだから。



「・・・・・・なるわけ、ない。というか、ヤスフミ忘れてる。
私、新しい自分を始めるって決めたんだよ? ううん、始めている」



だから、あの・・・・・・色々あったけど、頑張りたいなと思った。

今までの私なら諦めてた事、目を背けていた事から、逃げたくなかったから。



「新しい私は、死亡フラグなんて吹き飛ばしちゃうくらいに強いの。
例え今ここでヤスフミと一緒に大人になっても、それは同じ」



ヤスフミも、私も、死んだりなんてしない。ちゃーんと無事に事件を超えて、幸せになるの。

まぁ、ヤスフミにも心の準備が必要なのは分かったから、ここはもう言わないけど。



「それで、新しい私は」



そっと、ヤスフミを抱きしめる。優しく・・・・・・さっきまで私がされていたように、沢山抱きしめる。



「新しい私は、今までみたいにヤスフミをスルーしたり、振り回したりなんて、絶対にしないの。
時間がかかっても、男の子としてのヤスフミと向き合って、繋がって、本当の恋人になるんだから」

「・・・・・・いいの?」

「いいよ。私は、その・・・・・・そうじゃなかったらあんなこと、言わないよ。
私、凄く恥ずかしかったんだから。心臓が止まるんじゃないかって言うくらいに、ドキドキした」



今更だけど、身体が震えてきた。だ、だって・・・・・・普段は絶対言えないようなことばかり、言ったから。




「私、ヤスフミの事・・・・・・誘ったんだよ? ちゃんとお話したかったからだけど、それでも。
生まれて初めて、男の子に『私とエッチなことしよう?』って。・・・・・・凄く、勇気使った」

「あの、えっと・・・・・・ごめん」

「謝らなくていいよ。私も、確かにいきなり過ぎたと思うから。そこは、ちゃんと分かった」



私は、私より背が小さい、優しくて強い男の子が気になってる。・・・・・・本音を言えば、戸惑いは半分。

だけど、知らない何かに触れられる楽しみも半分。それが、とても嬉しい。だから、今ヤスフミに話した。



「でも、ホントに僕でいいの? 僕、わがままだよ? それに、意外と独占欲強いし」

「私も同じだから、大丈夫だよ。というか、ヤスフミこそ私でいいの?
私・・・・・・多分女の子としてはすごく面倒くさいと思う」





ヤスフミのこと、傷つけてばかりだった。別にこれだけの話じゃない。

最初の頃、魔導師を続けて欲しくなくて、ヤスフミを否定した。

その後のフィアッセさんを狙ったコンサート襲撃事件の時にも、きっと嫌な思いをさせてる。



それだけじゃなくて、ここ数年は局入りを本当にしつこく進めてた。

・・・・・・そうだ、私は本当にダメだった。恋愛どうこうは抜きにして、たくさん傷つけてる。

ヤスフミとぶつかって、喧嘩して、苦しめてばかり。



その上、付き合うのはオーケーだけどしばらくはキスもエッチもなしとか言うわけの分からないこと言ってて・・・・・・。



だから、一つ聞こう。私も、疑問に思ったから。





「というか、私のどこがいいのかな。私、さっきみたいに思いっきり暴走しちゃうし、ちょっとバカだし」





身体・・・・・・あ、違うか。だってヤスフミ、私の事そういう目で見そうになってた時は、必ず我慢する。

私がそういうの嫌がると思って、ワザとつっけんどんな態度を取って、距離を置く。

さっきだってそうだった。私の事、そういうので不安にさせないようにした。



だから、ここは違う。まぁ、性欲はあるみたいだけど、そのためじゃない。

というか、そのために8年間片思いは・・・・・・ないよね。

私、出会った頃はまだ子どもの身体だったから。それになにより、ここが重要。



それなら、私がさっきOKを出した時に、そのまま押し倒しちゃえばよかったもの。





「あと、ヤスフミとは絶対に相性は良くない」

「そうだね、なんだかんだで喧嘩ばっかりだったもの」

「うん、下手をすると仲直りしてすぐ喧嘩したりしたよね」





最初の頃はそんな感じだった。ぶつかって、仲直りして、またぶつかって・・・・・・。

だけど、絶対に嫌いになんてなれなかった。どうしてだろうと考えた時、分かったことがある。

目の前の男の子と繋がった事が、大切なものだという事。そうして生まれた時間が、大好きな事。



ようするに、私はこの子と一緒に居るのが、好きなんだと、気づいた。





「でも、フェイトと一緒に居るの、楽しいから。喧嘩した時間も、仲良く一緒に居られる時間も、全部」



・・・・・・あ、同じだ。今の私と、本当に同じ。

ヤスフミも同じ事、考えててくれたんだ。



「ただ、だからなんだ。僕達、全然違う。考えてることも、正しいと思うことも、きっと違う」



ヤスフミが、どこか楽しそうに。そして嬉しそうに話す。

なんだろう、それを見るととても胸が強く・・・・・・高鳴る。



「だけどね、フェイトから大切なこと、ぶつかる中でたくさん教えてもらった。
・・・・・・違うから、分かり合えると、嬉しい。違うから、分かり合いたいと思うんだって」

「私から?」

「うん。違ってるのなんて当たり前で、その中で僕達は全然違ってて・・・・・・だからなんだ。
フェイトと分かり合えると、思っていることが伝わると、とても嬉しかった。だから、もっと知りたい」



ヤスフミも、同じように手を伸ばす。右手をそっと、今の私と同じように。

そして、私の頭の後ろを、優しく撫でてくれる。それが嬉しくて、泣きそうになる。



「僕が知らないフェイトの事、もっと知りたい。あのさ、喧嘩したって、相性悪くたっていいじゃん。
それで互いに先に繋がる何かが見つけられるなら、それで。・・・・・・つまり、その」



少しだけ身体を離して、真っ直ぐに私を見る。いつもと同じように・・・・・・ううん、いつも以上に。

私はそれを受け止めて、高鳴る鼓動に胸を苦しくすることしか出来なかった。



「僕は、自分とは全く違う。相性が悪くて喧嘩ばっかりしてて・・・・・・だけど、繋がりたいと思った。
全然違うフェイトだから、惹かれたの。だから、好きの気持ちがずっと更新され続けてきた」

「・・・・・・そっか」

「フェイトは、どう? やっぱり、相性がいい男の人とかがいいかな」



首をすぐに横に振る。そんな言葉を否定したくて。

私は、そんなことは考えていない。考えてるのは・・・・・・あぁ、そうだ。



「私もね、同じ。いっぱい喧嘩して、だけどいっぱい分かり合えたヤスフミだから、いいんだ。私も、ヤスフミから教えてもらったよ?」





人と自分が違うことを怖がる必要なんて、否定する必要なんて、どこにもない。

私はヤスフミから・・・・・・言葉じゃないな。一緒に過ごす時間の中で、そう教えてもらった。

それが嬉しかった。この子から知らないうちに沢山勇気をもらってた。



私が、私自身を怖がる必要なんて無いんだって、ずっと言ってくれてたんだ。

私は、アリシア・テスタロッサのクローン。母さんから見れば、失敗作。

だけど、それでいい。それも全部私だから。私は、私の全部を認めて、抱きしめる。



それで、誰に何を言われてもわがままに声を上げるんだ。全部を含めて、私は私として、ここに居たいと。





「ヤスフミが私から教わったって言ってくれた事と、全く同じ事。私は、ヤスフミから教えてもらったんだ。・・・・・・ありがと。
あのね、私・・・・・・本当にダメな女の子で、彼女になってからもあんまり変わらないかも知れないけど、それでも、お付き合いしてくれるかな」

「僕でいいなら、フェイトと付き合いたい。というか、あの・・・・・・ありがと。
ごめん、なんか・・・・・・夢みたいで、ちょっと怖いかも」

「あの、泣かないで? 夢じゃないし、嘘でもないよ。
私、ちゃんとここに居るよ。あなたの、彼女なんだから」





だから私、本当に真剣に考えたいんだ。この子との時間を、未来を。

あの時の言葉、本当に胸に響いたから。今まで沢山勇気をくれたから。

・・・・・・そうだね、今ならちゃんとハッキリと言える。



私は、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは、蒼凪恭文のことを好きになりかけてる。

もう、確定だよ。私は今、目の前の男の子に・・・・・・恋、してるんだ。

・・・・・・だったら、ちゃんと言わなくちゃいけないよね。少しだけ勇気を出して、言おう。



まだ、私からはハッキリは言ってないから。今の私の気持ち。





「ヤスフミ」

「うん」

「好き・・・・・・だよ」

「僕も、フェイトが好き」










よかった、ちゃんと言えた。ヤスフミの事、好きだって、ちゃんと言えた。

・・・・・・そうだ、これは確かに私の気持ちだ。『我思う、ゆえに我あり』。確かに、その通りだよ。

全部をひっくるめて私は今、ちゃんとここに居るんだ。それだけは、ちゃんとした事実。





とにかく、その・・・・・・清い関係でも、私達はお付き合いをするということで話が纏まった。

やっぱり、ワガママだと思い謝る私に、ヤスフミはいつも通りに『大丈夫だから』と声をかけてくれた。

それが嬉しくて・・・・・・凄く、泣きたくなった。というか、泣いた。





そして、ヤスフミがそっと抱きしめてくれた。それが嬉しくて、また涙が零れた。





















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とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第17話 『これからの二人?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・と、とりあえず彼女って何をすればいいのかな。あの、キスやエッチなことはだめだし」



互いに少し落ち着いて、またお話。というか、普通にフェイトが可愛い。

ど、どうしよう。やっぱり嬉しいよ。泣きたくなるくらいに嬉しい。



「フェイト、落ち着いて。お願いだから顔真っ赤にするのはやめて。
・・・・・・まぁ、今まで通りでいいんじゃないかな」

「それで、いいの?」

「うん。ただし、今までよりもっと仲良しになるの」



言いながら、フェイトの頬を撫でる。うぅ、この柔らかさとスベスベ具合は反則だよ。

何回か泣いて、ようやく実感が持ててきた。あの・・・・・・両想いになったんだよね。



「うん、それは分かるの。というか、あの」

「なに?」

「・・・・・・決めた。私、わがままだよね。だから、わがままな分沢山伝える。ヤスフミの事が好きな気持ち、伝えるよ。
まだ弱くて、生まれたばかりのあなたへの『好き』の気持ち、もっと知って欲しいから、伝えていくよ。今まで言えなかった分も、ずっと」



フェイト・・・・・・あの、やばい。やっぱ破壊力が大きい。

というか、フェイトの可愛さが増してるように感じるのは、気のせい?



「それが、私の彼女としてやりたいこと・・・・・かな」

「なら、僕も伝えるよ。フェイトがビックリしないように、ゆっくり。いい・・・・・かな」

「うん、いいよ。ありがと、私、嬉しいよ」





ど、どうしよう。フェイトがなんか可愛いんですけど。



うぅ、清い関係からでも嬉しい。だって・・・・・・ずっと、好きだったから。





「あ、そうだ。ね、ヤスフミ」

「なに?」

「今決めたんだ。私も、コンサート行くよ」

「え?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「フェイトさん達、旅行かぁ。楽しそうだなぁ」



・・・・・・なんか、地球でアイツの知り合いの歌手のところに行くらしい。

訂正、向かってる。朝早くに出てった。てゆうか、知り合いに歌手なんて居たのね。



「フィアッセ・クリステラさんと言って、昔から恭文さんがすごくお世話になっている人だそうです。
フェイトさんもお会いしたことがあるそうなんですけど、本当に綺麗で優しくて、素敵な方とか」



で、なんかなのはさんのお兄さんとお姉さんの美由希さんの幼馴染とか。

なるほど、その関係でアイツやフェイトさんが知り合いと。納得したわ。



「・・・・・・あぁ、また謝らないと。本気で謝らないと」

「そうだね、すごく謝らないといけないよ?
恭文さん、フィアッセさんの事を話す時、とても楽しそうだから」



それを聞いて、エリオが朝食のパンをかじりながら、頭を抱える。

そういや、この子はその名前知ってたんだっけ。



「そうなの? てゆうか、なんでキャロはその事知ってるのかな」

「旅行に行く前に、どんな人か聞いたんだ。写真も見せてもらったよ。もうとっても綺麗な人なの」





まぁ、色々反省しているようなので、もう何も言わない。それは、みんなも同じかな。

これでマジでなにも学習してなかったら、完全にアウトだった。

けど、そうじゃないもの。なんていうか、甘いわよね。機動六課の面々は。



・・・・・・あ、私も同じか。まずい、私はみんなの事を何にも言えないわ。





「ね、キャロ。そのフィアッセさんとアイツって、そんな親しいの?」

「相当親しいらしいです。頻繁にメールのやり取りはするし、コンサートにも招待してもらうとか。あ、それで写真データをもらったんです」



で、キャロが端末の画面でそれを見せてくれる。・・・・・・映るのは、金色の髪をポニーテールにした女性。

温和な顔立ちで、スタイルもよくて、青い瞳の綺麗な人。そして思った。私、負けてると。特に胸囲。



「わぁ、綺麗な人だねー」

「僕、本当になのはさんや恭文さんに、もう一度謝ろう。じゃないと、ダメな気がしてきた」

「そうだね、アルフの言う事をそのまま言っちゃったのは、反省しないと。・・・・・・ティアさん、どうしました?」

「あ、ううん。なんでもないわ」










・・・・・・綺麗で優しくて、温和な人がタイプなのかな。

考えてみれば、フェイトさんもそのタイプなのよね。私は、違うな。

というか、お泊りでコンサート観覧・・・・・・なんだろ、イライラする。





あれから、なんかフェイトさんとアイツ、距離が縮んだようにも感じるし、なんか気になる。





てゆうか私、どうしたんだろ。ちょっとおかしいや。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・よく考えたら、私はイギリスに旅行は初めてなんだよね」

「あー、そういやグレアムさんの所に来た時は、すぐに戻っちゃったしね」

「後処理もあったしね」





ここは、イギリス。僕達はある敷地の入り口前に居た。

そう、クリステラ・ソング・スクールである。なお、元々僕はこの日に休みを取っていた。

理由は、2話冒頭で説明したフィアッセさんのコンサート。うん、誘われてたの。



で、みんなから事態が事態だから動くなとか言われてたけど、約束は破りたくない。

そこに鶴の一声を出したのが、フェイトである。フェイトは普通に自分も同行すると言って来たのだ。

必ず定期的に連絡するのを条件に、僕達二人はミッドを飛び出した。というか、デート。



・・・・・・フェイトと二人っきりで旅行なんて、すばらしい。



予定がかなり短くなって、1泊2日という強行スケジュールにはなったけど、それでもなのだ。





「というかヤスフミ」

「なに?」

「ヤスフミが前に作ってくれたから知ってはいたんだけど・・・・・・フィッシュアンドチップス、美味しかったね」



テイクアウトしたそれを食べながら、ここまで来た。そして、フェイトは本場の味にホクホク顔です。



「でも、本当に下味も何もなしなんだね。ヤスフミが作ってくれたのは、少し味がついてたのに」

「食が進むように、醤油を少し使ったから。でも、ソース付けると意外といけるでしょ?」

「うん、もうバッチリ」



フェイトは、笑顔でそう言ってくれた。僕の大好きな、優しくて温かい表情。

だからかな。なんというか・・・・・・すごく、嬉しい。



「でもフェイト、なんで同行してくれたの? 反対してたのに」

「えっとね、反省したんだ。ヤスフミにとってフィアッセさんは大事な人。
多分、こういう時だからこそ会いたいんだろうなと思って」



うん、会いたかった。なんというかこう・・・・・・フィアッセさんの笑顔が見たくて。

あの優しくて強い歌声を聴いて、なんか気合いを入れたかったのだ。



「あと、やっぱり旅・・・・・・してみたかったんだよね。
ずっと六課と家の行き来だったから、少しつまんなかった」

「それはまぁ・・・・・・うん」

「だから、一緒に付いて行くことにしたんだ。
・・・・・・ヤスフミは、いつも私の力になってくれる」



フェイトが、そっと僕の右手に自分の手を伸ばして握る。優しく、包み込むように。

同じ優しさを込めた笑みを、僕に向けてくれる。それを独り占めに出来てるのが、なんだか嬉しい。



「だから、私もヤスフミの力になりたかった。だって、一緒に幸せになっていくんだもの。
・・・・・・あとね、人事部から休みを取ってくれってまた言われちゃって、少し困ってたんだ」

「あ、ちょうど良かったんだね」

「まぁ、見も蓋もない言い方をすると・・・・・・そうなる。
とにかく、行こうか。フィアッセさん待ってるよ」

「うん」





とにかく、僕達は敷地内へと足を踏み入れた。・・・・・・本当に少しだけの休息。



なんというか、色々状況を鑑みてないとは思うけど、それでも楽しみである。





「・・・・・・・・・・・・ってっ! フェイトさんも恭文さんもなんでリイン達のこと忘れてるですかっ!?」

「「あ、ごめん」」










なお、リインも来た。うん、ごめん。幸せ過ぎて忘れてたわ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、クリステラ・ソング・スクールの敷地内へ突入。





受付を通して、それから僕達は案内を受けて・・・・・・校長室へれっつごー。





そこに居たのは、三人の女性。そう、お馴染みのあのお姉さん達だ。










「・・・・・・恭文くんっ!!」





いきなりギューってされるのも、もう慣れた。だから、抱き返すのである。

愛情表現とかそういうのもあるけど、親愛の意味のあるハグ。お国柄というやつである。

それ以前に、僕を強く抱きしめるこのお姉さんは、こういうスキンシップが好きだったりする。



そして、身体を離す。離して見えるのは、金色の髪と青い瞳。そして、優しく微笑む端整な顔立ち。





「フィアッセさん、お久しぶりです」

「うん、久しぶり」



そう、皆様ご存知フィアッセ・クリステラさんである。なのはの兄姉の幼馴染で、僕の・・・・・・婚約者。



「・・・・・・あ、リインちゃん、フェイトちゃんも久しぶり」

「フィアッセさん、お久しぶりです」

「お久しぶりですー。というか・・・・・・また抱きついてるです」



や、やばい。なんかリインがまたメドゥーサモードに・・・・・・!!

あぁ、突き刺さるっ! 何かがすっごい突き刺さってるっ!!



「問題ないよ? だって、私は恭文くんの婚約者なんだから」



きゃー! なんかニッコリ笑顔で言い切ったー!!



「問題大有りですっ! リインは元祖ヒロインですよっ!? そのリインを差し置くなんてありえませんっ!!」

「なるほど・・・・・・。それなら二人で抱きついて、恭文くんを占領しちゃおうか」

「あ、それはいいですねー」



や、やばい。さらになにか突き刺さってくるんですけど。というか普通にリインが怖いー。



「あ、えっと・・・・・・エリスさんもイリアさんもお久しぶりです」





話を逸らすために、僕は脇で控えていた二人の女性にお辞儀しつつ声をかける。

一人は、白のスーツをまとい、金色の髪をポニーテールにしている女性。こちらが、エリスさん。

もう一人は青いスーツだね。同じ色の髪をアップにして、メガネをかけている。こちらが、イリアさん。



エリスさんは、スクールの関係者の警護を請け負っているセキュリティの主任さん。

数年前から、フィアッセさんのガードを担当している。なお、フィアッセさんの幼馴染。

イリアさんは、フィアッセさんの補佐役。フィアッセさんのお母さんが前校長を勤めている頃から、スクールを支えている方である。



で、二人は苦笑しながら僕を見る。・・・・・・うん、分かる。なんでか分かる。





「あぁ、久しぶりだな。しかし・・・・・・君はなんというか」

「相変わらずな様子で、安心したというか、呆れたというか」

「お願いだからその微妙な視線はやめてもらえますっ!? 色々と怖いんですけどっ!!」

「・・・・・・ヤスフミ、本当にフィアッセさんと仲がいいんだね。まぁ、婚約者だからここは当然か」





・・・・・・あれ、なんか突き刺さるものが増えたんだけど。

そこに視線を向けると、フェイトがつまらなそうな顔で僕を見ていた。

よく考えたら、いつもの応援オーラ出したりしてない。あ、彼女だからここはいいのか。



な、なんだろう。反応が新鮮だ。新鮮だけど、怖いかも。





「・・・・・・もしかして、色々と変わった?」

「あ、あははは・・・・・・。どうなんでしょ」










とにかく、こうしてドキドキな旅行は始まった。

そう、本当の意味でドキドキだった。ど、どうしよう。旅行中にフェイトとそうなったら。

あぁ、でも死亡フラグが・・・・・・まてよ。決戦直前じゃないなら大丈夫じゃね?





いやいや、やっぱり気をつけておかないとまずいか。くそぉ、スカリエッティ絶対叩き潰す。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『じゃあ、無事にイギリスに着いたんですね』

「うん。・・・・・・そう言えば、エリオの様子はどう?」

『怪我はもう大丈夫です。訓練も、明日には再開していいと、シャマルさんの許可が出ました』



少しだけ離席させてもらって、エリオとキャロに通信。というか、キャロに通信。

エリオは、今は定期健診の最中だから、キャロとだけお話。



『あ、それとフェイトさん』

「うん、なにかな」



あれ、キャロがなんだかすごく嬉しそうな顔で私を見てる。あの、どうしたんだろ。



『恭文さんと、仲良くなれるといいですよね。というか、私は前に言った通り応援してますから』

「キャ、キャロっ! あの、違うよっ!? この旅行はそういうのじゃなくて、リインも居るし」

『・・・・・・あ、すみません。ちょっと呼び出しがかかったので、この辺で。それじゃあ、コンサート楽しんでくださいね』

「あの、キャロっ!!」










そのまま、通信は切れた。な、なにか絶対に誤解・・・・・・じゃないか。

でも、旅行ってチャンスなんだよね。こう、ヤスフミともっと仲良くなれるチャンス。

あと・・・・・・色々お話も、出来るよね。エリオはともかく、キャロはあんな感じになったし。





やっぱり、話してよかったな。二人も分かってくれたから、嬉しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ただの自分の時間を、持ちたい?」

「あの、フェイトさん。僕もキャロも言っている意味がよく分からないんですが」

「あ、そうだよね。えっと・・・・・・まずね、この間のことなんだけど」



・・・・・・あの色々あった日の一週間前に、何があったかをフェイトさんが教えてくれた。

108のナカジマ部隊長に、恭文さんと一緒に部隊に誘われた事。それに自分が頷けなかった事。



「それで、断ったんだけどフェイトさんが話した理由にナカジマ部隊長は納得してくれなくて」

「フェイトさん、自分がどうして執務官の仕事を続けているか分からないんですか?」

「うん」



・・・・・・そう言うフェイトさんは、落ち込むような、自嘲するような顔をして、寂しく笑う。

なんだろう、それに私は胸が締め付けられるような感じがした。エリオ君も、きっと同じ。



「でも、フェイトさんは前に話してくれたじゃないですか。
執務官の仕事で、自分や僕やキャロみたいな人を少しでも減らしたいって」

「それも三佐には話した。でも、納得してくれなかった」

「どうしてですか? 僕が思うに、フェイトさんはちゃんと108に行けない理由・・・・・・あ、そっか」



エリオ君も気づいたらしい。私も、そこまで考えて気づいた。

まず、フェイトさんが話した事は、108への誘いを断る理由として成り立ってないから。



「えっと、私も前にそれは聞いた事がありますけど・・・・・・納得してくれないのは、当然だと思います。
だって、それはフェイトさんが執務官を続ける理由にはなっても、誘いを断る理由にはなりませんから」

「うん、みんなにも同じ事を言われたよ。私、本当にダメだった」



今、私やエリオ君が少し考えて分かった事が、一晩考えても分からなかったらしい。



「それだけじゃなくて、二人の事も言い訳にした。
・・・・・・これも、理由になんてならないって、ヤスフミに叱られるまで、気づかなかった」



恭文さんが言うには、私達の世話を理由にするなら、普通に本局の次元航行部隊より、108の方がいいということらしい。

確かに、フェイトさんはあっちこっちの世界に行って会えない事も多いし・・・・・・そこは分かるかも。



「ヤスフミや三佐、クロノに優しく・・・・・・叱られたんだ。私は、9歳の頃に決めたまま、惰性で仕事をしている。
どうして自分がここに居たいのか、どうしてどこでも出来る執務官の仕事を、本局でしているのか、考えてない」

「あの、フェイトさん。つまり、自分のための時間を持ちたいというのは」

「うん」



フェイトさんは、私の言葉に頷いた。それで、フェイトさんが言う、自分のための時間の意味が分かった。

ようするに、今までおざなりになっていた部分を、考える時間が欲しいということ。



「それだけじゃなくて、なのは達と遊んだり、その・・・・・・恋、したりとか?
そういう時間も、持てるなら持ってみたいんだ。その中で、考えたいの」

「何を・・・・・・でしょうか」



いや、もう聞くまでもない。だって、答えは今までの会話の中に存在しているんだから。



「私が、ここに居たい理由。今の仕事を、本局で続けたい理由。自分にとっての『なぜ』が分からないと、私・・・・・・惰性で生きる事になる。
仕事の事も、エリオとキャロの事も、大切な人達との時間も、みんな惰性に済ませちゃう。そんなの、嫌なんだ。あと」

「あと?」

「ヤスフミと、約束したんだ。一緒に、答えを考えて行くって」



私は、エリオ君を見る。・・・・・・苦い顔をしてるけど、大丈夫。

もう、この間のようなことは無い。ちゃんと、恭文さんと付き合える。



「ただ、二人の世話とかに支障が出ないようには・・・・・・出来ないかも。
もしかしたら、色々迷惑かけちゃうかも。・・・・・・ごめん」



落ち込み、謝るフェイトさんを見て、私は・・・・・・ううん、私達の気持ちは固まった。

エリオ君を見る。エリオ君も、首を縦に振って頷いてくれた。だから、私から切り出す。



「フェイトさん、大丈夫です」

「話は分かりましたし、確かに今の状態で仕事を続けていてもよくはないなと、僕もキャロも思いました。だから、考えてください。
それで、見つけてください。フェイトさんがここに居たいと思う理由を。あと・・・・・・ただのフェイトさんの事も、大事にしてください」

「エリオ、キャロ・・・・・・」



落ち込むように俯いていたフェイトさんが、顔を上げる。

だから、二人でニッコリと笑って、安心させてあげる。



「フェイトさんは、私達をここまで育てるために、対価を払ってくれました」

「え?」





犠牲じゃなくて、対価。うん、犠牲じゃない。だって、犠牲なら私達は繋がれない。

自分を犠牲にして私達を助けたならフェイトさんとは、繋がれないはずなんだから。

犠牲は、自分を捨て置いて何かを先につなげる行為。だから、私はこう思う。



フェイトさんは、対価を払っただけなんだと。だからこそ、私達も手を伸ばせるんだと。





「はい。フェイトさんは、自分の時間を対価に、私達を育ててくれて、守ってくれて」



そう、それで・・・・・・ここからが、とっても大切な事。

最近、少し忘れがちだったことを、私は思い出した。



「私達三人を、家族にしてくれました。だから、今度は私達が対価を払います」



私達は、まだ子どもだけど、出来る事、やれることも増えたから。

そうして、守りたい物がある。ううん、今出来た。それは、フェイトさん自身の時間。



「フェイトさんが、ただのフェイトさんとしても幸せになれるように、私達も協力します」



それが、私達が払う対価。だって、私達のためにただのフェイトさんが幸せになれないなんて、嫌だから。

もちろん、犠牲じゃない。私達も含めて前に進むワガママを通すための、対価だもの。



「だから・・・・・・一緒に頑張りましょう? だって私達、家族なんですから」

「キャロ・・・・・・あの、ありがと」

「エリオ君も、それでいいんだよね? あと、もう恭文さんのこと悪く言うの禁止」

「なんでいきなりその話っ!? あの、もう反省してるからやめてっ!!
自分でも悪い夢を見てたんじゃないかって、心の底から思うくらいなんだからっ!!」





・・・・・・だけど、しっかり言っておくことにする。

だって、エリオ君は恭文さんにヤキモチを焼いてると思うし。

何があっても変わらず、仲良く出来る二人を見て、嫉妬してた。



もしかしたら、そういうのもアレに繋がる要因だったのかなと、私は思う。





「印象操作もダメだよ。というか、それは下手をすればマザコンだよ?」

「キャ、キャロー! というか、あの・・・・・・あぁ、僕が悪かったからその冷たい目はやめてー!!」





・・・・・・だめ、許さないよ。うん、パートナーとして私は色々甘かったと思うの。

だから、これからはビシビシ厳しくしていくことにしたから。覚悟しておいてもらえると、助かるな。

あ、そうだ。ここからは少しだけフェイトさんと、女の子のお話。



今のフェイトさんを見てて、少し気づいた事があるから。





”フェイトさん、一つ質問いいですか?”

”うん、なにかな”

”正直に答えてくださいね。・・・・・・恭文さんのこと、好きなんですか?”



そう聞くと、フェイトさんの顔が一気に赤くなった。そして、私を見る。

なので、視線で言う。『ちゃんと答えて欲しいです』・・・・・・と。



”実はね、ヤスフミからその・・・・・・告白っぽい事を言われたの”

”そうなんですか?”

”そうなの。それで、あの・・・・・・オーケーして、昨日の夜にお付き合いをするということに”



・・・・・・なんだろう、寂しい気持ちも少し有る。だけど、なんだか嬉しい。

今まで知らなかったフェイトさんが見れたような感じがして、私・・・・・・ドキドキしてる。



”フェイトさん、おめでとうございます”

”あの・・・・・・ありがと”

”はい”





一応、恋愛話は自然保護隊に居た時に色々聞いてたりした。

だって、同僚でそういう話が好きな人が居るから。

だから、分かる。うん、私だって女の子だもの。



それくらいは・・・・・・分かる。





”それと”

”それと?”

”私は、恭文さんとなら・・・・・・安心出来ます。反対はしませんから。
あ、エリオ君の事は気にする必要ありませんよ? 私がビシっと言っておきます”




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・というような話をした数日後、私はイギリスに居たりする。

人生って、不思議だよ。そして今は、フィアッセさんとリインの三人で、スクールを見学中。

もちろん、ここに来るのも初めてなので、とてもドキドキしている。だって、みんな輝いてるから。





スクールの生徒の方々は、夢と希望を胸に抱いて、精一杯に輝いている。

一流の歌手を目指すという夢に向かって、まっしぐら。・・・・・・羨ましいな。うん、羨ましい。

なんというか、見ていてうらやましいというか見習いたい気持ちになった。そして、一つ思った。





ヤスフミがフィアッセさんを守りたいと思ったの、これを見たのが理由なんだろうなぁ・・・・・・と。

ヤスフミ、優しいから。キラキラに輝く人達を見て、壊されたくないって、考えたんだよね。

やっぱり、反省だな。だって私、あの時はそういうのを全く理解しようとしてなかった。





ただヤスフミが無事で、危ない事をしなければそれで良しと思ってた。それだけしか、見てなかった。

・・・・・・フィアッセさん達の事、考えてなかった。実際に目の前で傷つこうとしている人が居るのに。

事後にヤスフミと色々話して、反省したっけ。私は人を守る事を仕事にしているはずなのにって。





身内の事だけを考えて、目の前の事から目を背けてた。本気で、反省した。泣いたりもした。

そう言えば・・・・・・前に、とある先輩が言ってた事がある。次元世界というのは、一つの大きな世界。

そして、私達はその世界の住人。だけど、そうなると出身世界の住人ではなくなってしまうと。





例えば、なのはやはやてかな。次元世界には、次元世界のルールがある。

だけど、そのルールに迎合し、守る事は、場合によっては出身世界を見捨てる選択も必要となる。

あの一件で言うと、ヤスフミがみんなを守るために魔法を使った事が、間違いとされるのが、それ。





管理局には、管理外世界の事件や事故に、魔法を使って極力介入してはいけないというルールがある。

管理外世界は、とても未成熟で、危うい。善意でやったことでも、結果的に悪い方向に流れることもある。

そんな訳で、次元世界の技術を平然と管理外世界で使用するのは、いいことではないとされている。





でも、それはどこかで傍観者になる必要があると言う事。はやての言い方を借りると、『上から目線』。

なのはだったりはやては、地球出身だけど、このルールを守ろうとすると、次元世界の住人になる。

だから、出身世界の住人ではなくなる。だって、上から目線になるから。・・・・・・どうも、こういう理屈らしい。





初めて聞いた時は、あんまりな話でびっくりしたけど、改めて考えると、納得してしまった。

あの時の私が、多分それだった。あとは、アルフだったり母さんだね。まぁ、母さんは仕方ないのか。

ヘイハチさんとの約束があるから、そこはちゃんと言わなくちゃいけないと思ったんだろうけど。





でも、きっと私やアルフは・・・・・・上から目線だったよね。だから、ヤスフミやアルトアイゼンだってキレた。

アルフに至っては『どうなろうと、次元世界に関わる以上、見捨てるのが正解だった。そうするのが正しい事だ』とか言ってたから。

確かに、アルフの言うように次元世界の住人なら、それが正しい選択。苦しくても、それを選ばなくちゃいけない。





・・・・・・でもね、アルフ。あとは、あの時の私かな。うん、ここは絶対忘れちゃいけない。

見捨てられるわけがないよ。それは、本当にこの世界で生きてないからそう言えるんだと思う。

私の目の前に広がる、沢山のキラキラとした笑顔を見てたら、そんなこと言えなくなるよ。





本当に、あの時あんな事を言った自分が、恥ずかしく思えるし、疑問だよ。この世界は、私の故郷の一つなのに。

やっぱり私、色々迷ってるんだよね。だから、こんな事考えちゃう。でも・・・・・・あの人達を見てて、ようやく目標を一つ、見つけたよ。

私も、こんな風に輝きたい。10年前の私じゃなくて、今の私が描く夢を見つけて、その・・・・・・思いっきり、キラキラに。





・・・・・・それで、その肝心のヤスフミは、エリスさんとイリアさんとお話してる。何か用事があるとか。

もっと仲良く・・・・・・かぁ。その、少しは頑張りたいな。彼女として、気持ちを伝え合っていくと決めたもの。

でも、どうしよう。ここで思いっきり仲良くなるのって、死亡フラグ・・・・・・なんだよね。





あぁ、どうしよう。アレを聞くと、恋愛話は死亡フラグの塊っぽいんだよね。

でも、ずっとこのままはヤスフミに負担をかけちゃうし・・・・・・あぁ、どうすればいいのっ!?

お願い、誰かどうすればいいか教えてっ! 私、本気で分からないよー!!





というか、スカリエッティが邪魔だと思うのは、気のせいじゃないよねっ!?





よし、絶対早く捕まえようっ! そうすればこんな悩みとはさようならだよっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



イリアさんとエリスさんに連れ出されて、ある一室に入った。





理由は、何か用件があるから。で、用件を聞いた。





聞き終わった瞬間、頭を抱えた。










≪・・・・・・・・・・・・なんでまたこの展開なんですか?
もうギンガさんルートでやってるじゃないですか≫

「アルト、言わないで。それは言わないで。大丈夫、別世界の話なんだからいけるって」

「・・・・・・君達は一体何の話をしてるんだ」

「アカシックレコードでも見ているのですか?」





そう、ここまで言えば大丈夫だろう。今回のコンサート、普通に襲撃の可能性があるそうだ。



なお、警防経由の情報。普通にありえない。てか、なんでそうなる?





「ちなみにお聞きしますけど、フィアッセさんはそのことを」

「当然知りません。というより、知っていればあなた方が来るのを止めています」

「でしょうね」



よーし、落ち着け僕。もうこうなったらどうあがいたって対処するしかないんだ。

・・・・・・なんだろう、いつもの事とは言え、慣れてるのが少し悲しい。



「で、当然エリスさん達はガードに入るとして・・・・・・なぜにそれを僕に?」

「実は、恭也さん達もこちらには来てくださることになっています」



イリアさんの話によると、緊急な呼び出しではあったけど、二人とも快く応じて飛んで来てくれるそうだ。

で、僕に話すように言ったのは、恭也さん。普通にエリスさん達は黙ってようと思ったそうだけど。



≪どうせこの人の事だから、遠慮なく巻き込まれると思ったんでしょうね≫

「そうだ。なお、キョウヤもそうだが、ミユキも全く同意見だった。
ただ、それはこのままコンサートに居ればだ」

「どういうことですか?」

「キョウヤから聞いたんだが、君達は今、ミッドの方で部隊に所属しているらしいな」



なんとなく、二人が言いたいことがわかってしまった。だから、多分僕は今、すごく苦い顔をしてる。



「ここで今回の一件に首を突っ込めば、そこでの居場所を無くしかねない。
それにどうも、管理局という組織は地球でのイザコザに首を突っ込むのを、禁じている節があるようだ」

「・・・・・・ようするに、僕にこのままミッドにとんぼ返りしろと。
恭也さん達に後を任せて、自分のやるべきことをやれと」

「結論だけ言えばそうなる」



・・・・・・・・・・・・ため息を吐く。確かに、その通りだから。

その通りだから・・・・・・納得なんて出来ない。



「無理です」

≪ま、こうなったらやるしかないでしょ≫

「・・・・・・君は、本気か?」

≪「当然です。てゆうか、関わらない理由がないでしょ」≫



お手上げのポーズでエリスさんの言葉に返す。

てゆうか、もうどうしようもないもの。



「フィアッセさんは、僕の婚約者なんですから。
それが危ない目に遭う可能性があるのに、引けないでしょ」

≪なにより・・・・・・お二方、知ってますか? こういうのは、バレなければいいんですよ≫

「君達は本当に・・・・・・というより、フェイトちゃん達はどうするつもりだ」





まぁ、二人には・・・・・・とりあえず、相談してからか。



そうだよね、二人に話してからにするか。六課に本気で関わるってのも、嘘にしたくないし。





「とりあえず、最終結論は二人と話してからにします」

「そうだな、その方がいい」

「ただ・・・・・・」

「ただ?」



どっちにしても、関わる事にはなると思う。理由は、局の転送ポート。



「転送ポートの使用許可、今日使いますって言って使えるようなもんじゃないんですよ。
転送魔法もありますけど、それだってちゃんとした理由が無いと許可出ないですし」



僕はともかく、フェイト達は局員だもの。下手にルール違反させるわけにはいかないって。

うーん、そうすると・・・・・・あぁ、やっぱり相談か。それしかないか。



「つまり、下手をすれば向こうへ帰ることも出来ずに地球で足止めですか。・・・・・・また面倒ですね」

「面倒ですよ。本当にやんなるくらい」










部屋の外から、空を見る。見て、思う。





・・・・・・僕、なんかしたかなと。いや、してるけどさ。




















(第17話へ続く)




















あとがき



古鉄≪まぁ、アレですよ。お話ってのは、ある程度答えを出していかなくちゃいけないんです≫

歌唄「またいきなりね。でも、そこは同感。伏線とかそういうのとは関係なく、テーマの提示は必要よね。
ただひたすらに悩みに悩み続けて、何の答えも出ない話とか、最悪だと思うわ」

古鉄≪言いたくもなりますよ。で、その答えは正しい答えじゃなくていいんですよ。
その話に置いて、一つの区切りというか、そういうのになればいいんです≫

歌唄「そうね、そこは大事だわ。・・・・・・それで、本日のあとがきのお相手は、ほしな歌唄と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンです。あ、なお歌唄さんはあれですよ。きっともうすぐですよ≫

歌唄「そうよね。てゆうか、ここで出なかったら他で出る要素が分からないわよ」





(そう、ドS歌姫は忘れがちだけど、普通に魔法の事は知らない設定なのだ)





歌唄「で、フェイトさん・・・・・・暴走しまくってるわよね」

古鉄≪いや、なんというか本編とペクトルを変えたところ、こうなりました≫

歌唄「普通はならないわよ。あと・・・・・・アレよね、次元世界の住人どうこうって」

古鉄≪作者が噂で聞いたお話で言われていた部分ですね。
ただ、言い得て妙だと思うんですよ。高町教導官が魔法至上主義っぽいのも、そこです≫

歌唄「魔法文化が広まっている次元世界目線で物を考えると。
てーか、それは普通にムカつくわね。理屈は分かるけど、それでもよ」





(ドS歌姫、やっぱりこの辺りは厳しいらしい)





歌唄「もちろん、あんまりに介入し過ぎは大問題なのは分かるわよ?
でも、だからって見捨てるのが正しいってのは絶対おかしいわよ」

古鉄≪個人として考えると、そうなんですよね。私もこういうのは、嫌いです。ただ、この辺りはもう冒頭のお話と同じですよ。
正解なんて、人や立場によって星の数ほどあるんですよ? ぶっちゃけ、それ全部なんて提示出来ません≫

歌唄「そんなことしたら、話が飽和状態になるのは、間違いだもの。それを言えば、スカリエッティもそうよね。
管理局からすると悪とされてるけど、正悪は相対的なものだから、普通にアレが正しいなんていう気持ちの悪いことにもなる」

古鉄≪その通りです。MSG3でも言ってますけど、基本的に時代の相対敵と戦ってるんですよ。
まぁ、何が言いたいかと言うと・・・・・・この話では基本的に、そんな深いとこまでやりませんので≫

歌唄「というか、めんどくさいわ。答えなんて一生出ないわよ」

古鉄≪あくまでも、マスターの答え。フェイトさんの答え・・・・・・という感じですね。
正しいかどうかなんて、どうでもいいんですよ。話として、答えを出せるかどうかが大事です≫





(青い古き鉄、またいい事を言った。きっと、人気がまた上がるだろう)





歌唄「で、そこをツッコまれても対処出来ないと」

古鉄≪当然です。というか、作者が余りに考え過ぎて、もう『そんなんやってられるかっ!!』状態ですから。
やっぱり私達は私達らしく、ぶっ飛ばしていくだけです。えぇ、だって・・・・・・めんどくさいんですよ。作者が投げましたから≫

歌唄「それもどうなのかしら。・・・・・・とにかく、本日はここまで。私の出番が楽しみな、ほしな歌唄と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンでした。・・・・・・真面目にあなた、どう出てくるんでしょうね≫

歌唄「ゲスト出演的な感じらしいけど、気になるわ。どうなるんだろ」










(ドS歌姫、そう言いながらもすっごく気になっている。色々と嬉しいらしい。
本日のED:KOTOKO『涙の誓い』)




















あむ「・・・・・・正しいことが相対的かぁ。なんか難しいなぁ」

恭文「ぶっちゃけさ、そこまで考えていくとめんどいので、作者はもうぶん投げたけどね。
てーかさ、キチンと決められるのは、結局自分の正悪だけよ?」

あむ「でも、それだって相対的だよね?」

恭文「だけど、自分の感情だよ? それくらいはきちんと決めて、信じられなかったら、ダメでしょ」

???「その通りです。一人の人間に変えられるのは、自分という存在の世界と時間だけです。
自分にとっての正義と悪も、また同じく。決して、他人にたやすく決められるものではありません」

あむ「・・・・・・まぁ、確かにね。そんな事言ってたら何も決められないのは、確かか」

???「そうです、だからこそ人は、自分の全てを認めなければいけないんです。
ただ、勘違いしてはいけないことがあります。この場合の認めるとは、認識するということです」

恭文「ようするに、自分を知って、自分の中にあるものを認識するということだね」

???「肯定も、否定も、変革も、全てはありのままの自分を認めた上でしか、成り立ちません。
というより、認められなければ、それらは成り立たないんです。変えるべきところも分かりませんから」

あむ「同じように、認識しなかったら、自分にとっての正しい事も、悪い事も、分からないかも知れないってことかぁ。
うーん、考えちゃうなぁ。・・・・・・でも恭文、マジでアルフさんとかフェイトさんに、あんなこと言われてたの?」

恭文「フェイトは、そんなでもなかった。色々考えたらしいから。
でも、あのクソ犬は酷かった。・・・・・・くそ、あの時犬鍋にしとけばよかった」

あむ「それはもう無理だよ。だって、これはRemixであって、犬鍋のお話じゃないし。・・・・・・って、あれ?」

恭文「ちょっと待って。・・・・・今、誰が喋ったっ!? 僕じゃないし、あむでもないよねっ!!」

あむ「ち、違うよっ! てーか、アンタ誰っ!!」

???「それは・・・・・・10話先ですね」

恭文・あむ「「また結構先っ!?」」










(おしまい)





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