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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第7話 『戦いの爪痕は深い?』



シャマル先生から連絡をもらって、本局の医療施設に運ばれたやっさんに会いに行った。

というか、局長の制止を振り切り飛んで行った。後で当然のように叱られた。まるで子どもみたいに。

瞳を赤くして、少し疲れた顔をしていたあのバカは、俺を見るなりいきなりりゅうのあなの紙袋(サイズ特大×2)を渡してきた。





あと、領収書まで渡してくれた。なお、それにより色々と視線が厳しかったのは言うまでもないだろう。

具体的には、あのやっさんのソウルパートナーとかシャマル先生とか。

やっさん、お前はたまにKYになるな。普通に中身が中身だから、誰にも知られたくなかったってのに。










「しかし・・・・・・いやぁ、笑った笑った。後半はともかく、前半はギャグな休日だったんだね。
でもさ、あのギンガちゃんの妹なのに、そこまで空気読めないなんてすごいって」

「・・・・・・なぁ、スバル・ナカジマ宛に不幸の手紙とか送っていいか?」

「サリ、八つ当たりって最低だよ? てーか、アンタがあんな買い物頼まなきゃ良かったんじゃないのさ」

「うるさいよっ! そういうのを含めてもあのシャマルさんとリインちゃんの説教は異常な程に凄まじく怖かったんだよっ!!
その仕返しをして何が悪いっ! てーか、アレはもう空気読めないってレベル超えてるだろっ!? 同人ショップで問題発言し過ぎだっつーのっ!!」





・・・・・・鬼となったシャマル先生とリインちゃんのお説教を超えてから、俺は涙目になりつつもそれをありがたく受け取った。

うん、ちょっと泣きそうだった。だって、あんまりに説教がアレだったから。

つーか、スバル・ナカジマ・・・・・・ぜってぇ仕返ししてやる。とにかく、それから俺達六人で色々と話。



そうして・・・・・・現在、時刻は夜の10時。ここは俺達以外誰も居ないオフィス。

そこでやっさんとアルトアイゼンからもらったデータを見て(シャマル先生の許可をもらった)色々と検証中。

そして、やっさんはKYなところもあるが、なんだかんだで約束は守ってくれる。



色んな意味で喜べない成り行きではあるが・・・・・・しっかりと、それも合法的に俺達に渡してくれた。そう、あの召喚師のデータだ。





「・・・・・・サリ」

「なんだ?」

「やっさん出入り禁止になったら、同人本とか一緒に買いに行けなくなるね」

「あぁ、そう言えば・・・・・・って、違うだろっ! もうその話題はいいんだよっ!!」



で、ヒロはようやくシリアスモードに戻って話してくれた。

画面に映るのは、アルトアイゼンが撮っていた戦闘映像。



「この陰険そうなおっちゃんの対処法とかって」

「俺でも殺す。お前はどうだ」

「同じくだね。てか、この子達が止めた理由が分かんない。
再生能力に馬鹿げた魔力量にやっさんと同じ能力・・・・・・ありえないでしょ」





やっぱり、今のご時勢ではやっさんみたいなのは異質らしい。

話によると、ギンガちゃん以外には頭ごなしに否定されたそうだから。確かに、時代は変わった。

力を守るためだけに使うなんて甘っちょろい理想を貫いても、持っていてもいい時代になった。



俺らの頃とは違う。もちろん、ヘイハチ先生の頃とも違う。やっさんがこの子達と同じであっても、問題は無い。

いや、きっとそれを求められている。・・・・・・だが、それがいいことなのか、俺には分からない。同じであることは尊い事だ。

だって、人は違う事が前提の生き物なんだから。だからこそ、同じであることを必要以上に求めるのは、歪んでいる。



選択肢や道筋、世界が色々とあるから、人生ってのは楽しいんだ。同じじゃなくたって、いいんだよ。





「・・・・・・大丈夫だ、その辺りはレイオに頼めばなんとかなる。
シャマルさんや隊長陣も、フォローはするだろ。しかし、よりにもよってコイツかよ」

「知ってるの?」

「スカリエッティには負けるが、そこそこ危ない奴だ。後で罪状見てみろ。
お夜食が食べたい気分が一気に冷め・・・・・・ないな。うん、お前は女捨ててるから大丈夫だわ」

「失礼なこと言わないでくれる? 私はこんなに女らしいってのにさ」





シャマル先生がデータを見ることを認めてくれたのは、やっさんとリインちゃんの行動へのフォローのためだ。

二人は相当苦い顔をしていたが、要するに『あの場で逃がさず、殺す選択しかなかった』という立証をするため。

そうすりゃ、問題に発展するのだけは避けられる。一応、六課内でもフォローはするそうだが、やっぱり色々と後押しは欲しい。



俺もヒロも今でこそこれだが、昔はブイブイ言わせてたので、その辺りを協力して欲しいと頼まれた。

まぁ、実際にそういう結論を公式的に出すのは俺達ではなく、俺とヒロの知り合いで、教導隊に居るレイオ・ガーランドという奴がやる。

てか、俺達がやっても意味がないだろ。やっぱりここは今実際に現場に出てる奴の意見が優先されるだろうし。



とにかく、コイツの事に関しては明日の朝一で六課にレイオ経由で検証データを送る。残るもう一つの方は・・・・・・どうかな。





「でよ、お前の方はどうだ」



ヒロが、一端あの男の画像を下げて、別の画像を出す。それは、一人の女の子。

召喚獣を連れて、使役している様子もあるから・・・・・・これでビンゴだろうな。



「正直、わかんない」



そう、だから俺の予想通りにこんな答えを・・・・・・おーいっ!? 一体どういうことだよそれっ!!



≪サリ、落ち着けって。姉御が最後にルーテシア・アルピーノと会ったの、1歳になるかならないかの時だぜ?≫

「・・・・・・あ、そっか。つまり分からないってそういう意味か」

「そうなんだよね。たださ、この召喚獣はやっぱガリューなのよ」





ヒロには、一人の友達が居た。その名は、メガーヌ・アルピーノ。

8年前にある事件に巻き込まれて消息不明・・・・・・実質、死亡扱いを受けている女性。

そして、この召喚獣や召喚師が使う術式は、メガーヌ・アルピーノのそれ。



ヒロがやっさんにデータを流して欲しいと頼んだのは、この召喚師がメガーヌだと思ったからだ。

普通にやっても、ヒロにデータが回ってくるはずがない。かと言って、普通に協力を申し出ても断られる。

だって、俺達ロートルだし。普通に考えて、そんなの認めてくれるわけがない。



ただ、やっさんに相談する前に俺がハッキングという手も考えた。というか、試しにしてみた。

そうしたら・・・・・・六課隊舎のサーバーシステムのガードが、どこの国務機関だって言うくらいに厳重で用意周到。

侵入は不可能だと結論を出したのは、言うまでもないだろう。てゆうか、普通に俺は負けた。



俺達で勝手に調べられるんならやっさんに頼んだりしない。どっちにしろ、危ない橋を渡らせるわけだから。

・・・・・・ちくしょお、あのシステムに入れなかったのは悔しい。つーか、どこのバカだよ。

あんな無駄に構築に時間がかかりそうなシステム作った奴。ぜひともお目にかかって友達になりたいぞ。





「それに、面影はある。・・・・・・多分、間違いない」

「そっか。しかしこうなると・・・・・・ヒロ」

「うん、そうだね。メガーヌが所属してた首都防衛隊が全滅した一件、そうとうキナ臭いよ。それで」










そうだ、それで・・・・・・スカリエッティが絡んでるのは確定。しかも、それだけじゃない。





どうやら俺達は、メガーヌ・アルピーノの事がなくても、この一件に関わる定めだったらしい。こっちも、今日の一件で確定だ。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第7話 『戦いの爪痕は深い?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



色んなことがあったその日の夜。フェイトから・・・・・・通信がかかってきた。





なぜかうちに来てしまったシャマルさんとリインはお風呂中。僕は、少し怖かったけど、繋いだ。










『・・・・・・そっか、今は二人ともお風呂中なんだ』

「うん、さすがに僕が入るわけにはいかないしさ」

『確かにそうだね』



フェイトは、触れない。普通に、お疲れ様というのと、軽い雑談をする。

だから・・・・・・僕は、触れた。自分から、フェイトが通信をかけた本当の理由に。



「ごめん」



ただ一言、唐突にそう言うだけでフェイトは分かったらしい。表情が重くなったから。きっと・・・・・・傷つけてるよね。



『・・・・・・謝らなくていいよ。というより、謝ってもしょうがない』

「確かに、そうだね。・・・・・・うん、しょうがない。どうしようもないんだし」



あははは、これは本格的にフラグ消滅・・・・・・だよね。

そう、だよね。フェイトはスバル達と同じで優しいから、きっと・・・・・・ダメだよね。



『うん、そうだよ。もうどうしようもない。だから・・・・・・変わらないんだよ?』

「うん、変わらないよね。殺した事は、絶対に」

『違う、そっちじゃないよ。ヤスフミ、お願いだからちゃんと私の目を見て』



少しだけ、フェイトが怒ったような声を出す。だから僕は、俯いていた瞳を上げる。

そこには、悲しそうなフェイトの顔があった。それを見て・・・・・・胸が、締め付けられる。



『・・・・・・ヤスフミ、好きだよ』



・・・・・・はいっ!? て、てゆうかあの・・・・・・いきなり何言い出すのさっ!!



『確かに、ヤスフミのしたことはいけない事だと思う。というか・・・・・・多分ヤスフミはそれをちゃんと分かってる。
うん、分かってるよね。きっと、私よりもずっと。だから、そこは何も言わない。でも、これだけ言いたいの。私は、ヤスフミが好き』



好きって、あの・・・・・・その・・・・・・えっとっ!!



『ヤスフミの事、大好きで、大事な男の子だと思ってる。変わらないのは、そこなんだ』



顔が真っ赤になる。というか、あの・・・・・・えっと、フェイトはきっと家族的な意味合いだと思う。

で、でも嬉しいよっ! だめ・・・・・・凄く泣きたくなるっ!!



『ヤスフミ、どうしたの? 顔すごく赤いけど』

「だ、大丈夫。大丈夫だから気にしないで? でもフェイト・・・・・・いいの? だって僕」

『うん、スバル達の事振り切ったよね。それだけじゃなくて、リインも巻き込んだ』



・・・・・・・・・・・・うん。



『でも、だからってヤスフミが私との繋がりを切るべきとか、諦めていいなんて、絶対に思わないよ。
・・・・・・ヤスフミ、ヤスフミはどう思ってる? お願い、話すの怖いかも知れないけど、聞かせて欲しいの』

「・・・・・・フェイト」

『私、ちゃんとヤスフミの今の気持ちが知りたい。他の人はともかく、私は知らないままは嫌だ。教えて、くれるかな』



・・・・・・・・・・・・自然と、画面の中のフェイトに手を伸ばす。そして、空間モニターの中のフェイトの頬にそっと触れる。

そのまま・・・・・・僕とスリープモードのアルトしか居ない部屋の中で、想いを吐き出す。



「フェイトが・・・・・・好き」

『・・・・・・うん』

「僕も、フェイトの事が大事で、大好き。だから、離れたくなんてない。
フェイトとの繋がり、フェイトとの時間・・・・・・諦めたくなんて、ない」

『諦めなくていいんだよ? 私も、ヤスフミと繋がる事を諦めたくないから』



その言葉に、胸が震える。というか・・・・・・だめ、また涙が。



『だって私達、両想いだもの。全部を含めて、互いに繋がって行きたいって思ってる。
だから、変える必要なんて、ない。・・・・・・ありがと、教えてくれて』



画面の中のフェイトが、そっと手を伸ばす。そして、重ねる。

自分が見ているモニターの中に移っている僕の手に、自分の手を。



『私、すごく嬉しい。ちゃんと気持ち、通じ合ってたから』

「フェイト・・・・・・!!」





それで、またボロボロと泣き出した。フェイトは少し困った顔をして・・・・・・でも、すぐにいつもの優しい顔に戻った。



そのまま、泣き止むまで優しく『大丈夫だよ』と声をかけ続けてくれた。



泣き止んでから、また話をする。少しだけ、さっきより自然に笑えるようになったから、笑顔で。





『・・・・・・それで、腕の調子はどうかな?』

「うん、特に変なものを混入された形跡もないから、大丈夫。一週間くらいで元通りに動かせるって」

『ならよかった。あと・・・・・・ジガンスクード、壊れちゃったんだよね』

「うん。・・・・・・なんか、悪い事しちゃったよ。僕達の無茶に付き合わせちゃったから」



そう言うと、フェイトが気づいたように目を少しだけ開く。それから安心させるように僕に話しかけた。



『あ、そっちはヴィータに預かってもらっていたのを、今シャーリーが直してる。
いい機会だから、マリーさんとも相談して少し改良するって言ってた』



あ、そこは知らなかった。というか、僕の許可・・・・・・あぁ、聞かないよね。

てゆうか、僕も同じ事考えてたからいいや。うん、気にしない。



『フォワードや私達のデバイスの事もあるから、思いっきり改良というのはちょっと無理みたい。
一種のバージョンアップに留まるとは思うって言ってたけど、ジガンスクードも大丈夫だよ?』

「そっか、ならよかった」










そして、色々と身体の調子とかを話して・・・・・・通信は終わった。





なんというか、フェイトに感謝だよね。うん、真面目に感謝だ。





というかあの・・・・・・僕、やばい。またフェイトにフラグ立てられたのかも。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして翌日。目が覚めると・・・・・・シャマルさんとリインが同じ布団の中に居た。





僕はシャマルさんの胸に顔を埋めていて、リインがフルサイズで後ろから抱きついてる。










「・・・・・・・・・・・・なんでっ!?」





ま、待て待て・・・・・・シャマルさんはパジャマ着てる。

リインも同じく。二人ともスヤスヤと嬉しそうに寝てる。

・・・・・・お、落ち着け。なんでこうなる? なんでこんな形になるのさ。



とにかく、考える。リインとシャマルさんの腕を起こさないように外しつつ考える。





≪そんなの、二人があなたを放っておけないと言って泊まりに来たせいでしょ?≫



枕元でプカプカ浮かぶのは、我が相棒。

なんだかいつもの調子なのがおかしくて、うれしくて・・・・・・布団から起きながら、僕はアルトを見る。



「アルト、おはよ」

≪おはようございます。・・・・・・気分は、どうですか?≫

「まだあんまりよくない。でも」



右手を見る。そして・・・・・・強く、握り締める。



「全部持ってくわ。結局、それしか出来ないんだし。
それに、『最初に言っておく』ってやったしね。これで逃げるのはダメでしょ」

≪なら、いいです。・・・・・・私も背負ってあげますから、まだ大丈夫でしょ。
それで、恭也さん達にも相談してみましょうよ。話すだけでも、変わるでしょうし≫

「うん、そうだね」





さっきは起きた時の情景があんまりだったけど、ようやく思い出した。

・・・・・・昨日、あのまま家に帰ることが許されて、僕は帰路に着いた。で、シャマルさんとリインもついて来た。

少しだけ、優しい空気の中一緒にご飯を食べて、更にカウンセリングという名目でお話をした。



それで・・・・・・何時の間にかお泊りって話になって、遠慮したんだけど大丈夫だからと言われた。

それで、結局そのまま添い寝した。また、甘えてしまった。

だけど、どうしても止まらなかった。ただ抱きしめてくれることが、凄く嬉しくて。



でも、それが申し訳なくて謝った。シャマルさんは『それでいい』と言ってくれて・・・・・・。

少しだけ、リインと二人で自分のやったことと向き合えた。多分、平気なふりして忘れようとしてた。

殺した重さを、苦しさを。シャマルさんは、そんなのだめだって言ってくれた。



・・・・・・んだよね。なんか妙に嬉しそうだったけど。それがなんか気になったけど。



まぁ、そこはいいや。シャマルさん・・・・・・ありがと。





「アルト」

≪はい≫

「色々考えたんだけどさ」



そう、向き合えた。だから、気づいた事がある。アイツは・・・・・・あの男は。



「多分、僕のことも狙ってた」

≪でしょうね≫



さすがは我が相棒、僕の言いたい事が分かってくれたらしい。まぁ、伊達に年上じゃないしなぁ。



≪あの男は、あなたが自分を殺せないという前提に対して絶対の自信を持っていました≫





そして、それがアイツの隙であり弱点にもなってた。まぁ、だからこそ僕はそこを突いて殺せたんだけど。

そうじゃなかったら、負けてたかも知れない。というか・・・・・・殺されてた。

そうだ。アイツの敗因はスバルやギンガさん、エリオと言った捕獲対象が居たから。



そうじゃなかったら、広範囲魔法で一気に終わっていた危険もある。





≪で、あの男はあなたの経歴や能力を事前に知っていた≫

「リインとの約束のこと、話してたしね。間違いないよ。
僕について相当嗅ぎ回ってた。だからこそ、殺せないとタカを括ってた」

≪私もそう思います。大体、瞬間詠唱・処理能力の事だって基本的には秘密事項ですし≫





この辺りは、レアスキルじゃないからということで隠すのは結構容易。

僕が資質的にこの能力を100%使い切れてないというのも、皮肉だけどそこの助けになってる。

ようするに、端から見ると気づかれにくいってこと。隠し手は、多ければ多いほどいいもの。



そこを知ってるってことは、データベースかなにかに入られたのかな。そうすると・・・・・・やばいな。



『向こう』に僕の手札、あらかた知られちゃってるかも。





「そして・・・・・・なによりだよ」

≪えぇ、あなたに対しても本当にわずかにですが、攻撃が甘い部分がありました≫



ただ、ブレのようなものがある。僕に対してだけは、本気で殺してもいいとか思ってたんでしょ。

見る限り自分に正直なタイプの男だ。だから、余計に分かる。



「でも、どうしてなんだろ。例えば、スバルやギンガさんは・・・・・・言い方は悪いけど分かる」

≪エリオさんも同じくですね。アイツはエリオさんを『プロジェクトFの遺産』と呼びました≫



そう呼んでいた。僕は確かにその単語を聞いた。そして、それがなにかを知っている。



≪・・・・・・フェイトさんと同じように≫

「まぁ、この辺りはいいじゃないの。フェイトがエリオの保護責任者を買って出た理由の一端は理解出来たし」

≪だから、あの人は余計に入れ込んじゃうですかね。それがいいこととは私には思えませんけど。
ある意味では究極の傷の舐め合いじゃないですか≫



また朝っぱらからキツい事を・・・・・・いや、僕も全く同じ事考えたけどさ。



「いいじゃないの、傷の舐め合いが必要な時だってあるよ?
ちゃんと消毒しないと、化膿して肉が腐っちゃうんだから。ちゃーんと治療出来てれば、それでよし」

≪惚れた弱みですか?≫

「そうよ。男はね、惚れた女の子のちょっとバカな部分も笑って受け入れなくちゃいけないのよ。
で、相手の都合に思いっきり振り回されるのも覚悟するの。前に知佳さんがそう言ってたよ」

≪・・・・・・アバンチュールの時に言ってましたね。私もその場に居たから覚えてますよ≫






なお、カナダの仕事場に居る同僚の男の人がそんな話をしてたって教えてくれた。決して知佳さんの主観じゃない。

まぁ、そこはともかくですよ。僕が狙われる理由・・・・・・あぁ、出自以外なら思い当たる節があるわ。

問題児やってれば局内外問わず、それなりに恨みも買うさ。ただ、それで報復とかはない。



・・・・・・2年前にヒロさんとサリさんが広めた好き勝手な噂が、凄まじいことになってるから。

ぶっちゃけなのはのスラングは噂レベル。でも、僕の噂はもう噂じゃない。真実になってる。

尾ひれに尾ひれがつきまくった挙句、僕が管理局の真のトップで、裏表両方の世界を牛耳っている何て言うのもある。



さすがにそれを信じてる人間は居ないけど・・・・・・普通に悪党が報復なんて選択肢をポイ捨てしても仕方のないレベルになっている。

なんだよ、秘匿級のロストロギアを眼光一つで破壊したとか、中身は最凶最悪のダークデーモンって。

僕は普通に何処にでも居る17歳の男だっつーに。そんなどこぞの魔王みたいな真似は出来ないってーの。





≪ですが、今回はそれとは違うでしょう。アイツはあなただけを狙ってきたわけじゃないんですから。
それは他も同じ。ギンガさんとスバルさんだけでも、エリオさんだけでもない。全員ひっくるめてです≫

「そして、自分ならそれが可能だと本気で思ってた。・・・・・・まぁ、その通りだったけどさ。
やっぱりさ、守る刃や倒す刃より強いのは・・・・・・殺す刃だよね」

≪使い手にもよりますよ? ただ、基本はそうです。鋭さに差が出ますから≫





・・・・・・この場合、やっぱりスカリエッティが絡んでるのかな? まぁ、状況的に見てそれだとは思う。

でも、なんで僕? 僕はスカリエッティとは何の接点もない。

それに瞬間詠唱・処理能力だって珍しい能力だけど、そこまですごいってわけじゃないもの。



うーん、謎だ。なぜ僕に対してそんな風にするのかが分からない。





「・・・・・・やすふみ、くん」



シャマルさんが、目を開ける。眠そうに、けだるそうに、僕を見上げる。



「あ、ごめんなさい。起こしちゃいました?」

「ううん、大丈夫。・・・・・・でも」

「でも?」

「昨日は、とっても激しかったね。でも、すごくよかったよ」



とりあえず、近くの枕で遠慮なくシャマルさんの顔面を叩いた。



「いったーいっ! いきなり何をするのっ!?」

「やかましいっ! 普通にエロな事言うなっ!!」

「だって・・・・・・私の夢の中ではそうだったのよ?」



はぁっ!? アンタ、僕を抱きしめながら一体なに考えてたっ!!



「あ、まさか・・・・・・夢の中までそういうことをする権利はないって言うのっ!? ひどいっ!!
それはひど過ぎるわっ! せめて夢の中だけは『私×恭文くん』を成立させたっていいじゃないっ!!」

「おのれの夢なんて知るかっ! 別に夢見ても妄想してもいいけど、お願いだからそれを現実に持ち出さないでっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・フォン、レイメイ」

「そうや。で、資料を見てもらえば分かると思うけど、次元世界でもベスト20に入るくらいの凶悪犯罪者や。
スカリエッティと同じく、第一級捜索指定もされとって、裏表問わず散々やらかしとる。しかし、よりにもよってコイツやなんて」

「はやて、知ってるの?」

「知っとるもなにも、前に追っとった事件の主犯や。もちろん未解決」





朝、はやてに呼び出されてある資料を見せてもらっていた。それは、昨日ヤスフミとリインが殺した男。

名前はフォン・レイメイ。スカリエッティと同じ違法科学者で、自身も優秀な魔導師。そして、ヤスフミと同じ能力を持った相手。

それだけじゃなくて、検死とスバル達が持ち帰ってくれた戦闘データの検証の結果、生体改造を施されていたことが分かったらしい。



主な効果は、魔力量の増加、千切れた腕を一瞬で生やすという肉体の瞬間的な再生能力。

それがヤスフミとスバル達が七人がかり・・・・・・違う。

ヤスフミとリインがスバル達を振り切ってでも、殺すという手段を取るしかなかった一番の原因。



そして、私は少し言い間違いをした。多分・・・・・・自分で施したんだ。

だけど、それよりなにより目を引いたのはその犯罪歴。あまりにひどい。

大量虐殺に誘拐。生体改造に実験・・・・・・見ているだけで、虫唾が走るし吐き気がしてくる。





「でな、これ見たうちの子達の意見としては・・・・・・『捕縛なんて無理』って即答やったわ」

「シグナム達でもそうなの?」

「そうや。能力的な事どうこうもあるけど、なにより話を聞く限り、精神がイカレとる。
シグナム達曰く、古代ベルカでもここまでのはあまり会わないそうや」



それは・・・・・・相当だね。シグナム達、戦闘経験は私達よりずっと上なのに。



「資料に載っとる罪状かて、あくまでも表に出てる部分だけよ? 実際はきっとこれより上や。
正直な、うち恭文とリインを責められんわ。これを捕縛しろなんて、無茶振りにもほどがあるやろ」

「そうだね。多分普通にやったら、私やなのはでも無理かも知れない」

「ヴィータの到着を待ってればって意見もあるんやけど、あの時点で全員ギリギリやったみたいやし、そりゃ無理な注文やて」

「でも、二人が居ればスターライト」



・・・・・・あぁ、無理だよね。



「地下で使うには威力が大き過ぎる」

「そうや。これやとまず、チャージのための時間が取れん。撃てても落盤でそのまま生き埋めがオチやろ」





そして逃がすのもアウトだった。というより、また来ても捕縛出来るかどうかがわからない。

そう、この男は絶対にまた来た。報告では、スバルやギンガ、エリオ・・・・・・それに、私のことも狙っていた様子だったから。

ここで逃がせば、後でどうなるか分かったものじゃないというのが、はやてやシグナム達の総意。



・・・・・・なんだろう、素直に喜べない。二人の行動や判断が正しかったと立証されたのはよかったけど、それでも・・・・・・やり切れない。





「・・・・・・ねぇはやて、その意見って誰から?」

「アンタの可愛い保護児童を含めたフォワード陣三人と、話を聞いた交代部隊のみんなよ。
恭文に対してそうとう嫌悪感見せとる。リインに対しても同じ感じやな」





苦い顔でそう言ったはやての言葉に、胸が苦しくなる。・・・・・・やっぱり、一般的な局員の意見はそこなんだ。

噂には聞いていた。ヤスフミ、こういう目で見られることがあるって。でも、そんなことないと思ってた。ヤスフミ、何も言わなかったから。

・・・・・・見せなかっただけだと、今更気づいた。今更気づいて、自分を心の内でののしる。



本当に私、だめだ。あの子がどういう子か、ちゃんと知ってたのに。





「とにかく、この情報はすぐにみんなに公開やな。てか、どちらにしろ捜査のために資料渡さんとあかんし」

「そうだね。それで少しだけでも分かってくれるといいんだけど」





ヤスフミとリインは、きっと何も言わない。どんなに言われても、何も言わない。

言ったら、殺した自分を正当化することに繋がるから。リインはともかく・・・・・・ヤスフミ、いつだってそうだよ。

言い訳してもいい、迷ったり躊躇ったりしてもいいって言ってるのに、いつもこれなんだから。



でも、そこまで考えて反省する。だって、それがヤスフミなんだから。そして私は、それを認めている。



・・・・・・だから、これでいいんだ。ただ、このままではいけないというだけの話。





「・・・・・・フェイトちゃん、実はうちからひとつお願いや」

「なにかな」

「フェイトちゃんは、アイツの味方で居て欲しいんよ」



はやてはそう言いながら、真剣な目で私を見る。



「別にアイツ擁護しろとか、みんなに殺すのは仕方がなかったとか、そういうことを言えいうんやない。
ただな、アイツはアンタのことめちゃくちゃ好きやし、大事に思うとる」



さっきまでとは違う、本当に友達を心配している瞳。



「そのアンタにまでこの事について責めるような事言われたら、アイツマジで追い詰められてまう。
そやから・・・・・・お願いや。思うところはあるかも知れんけど」



きっと、今の私やなのはと同じ瞳だ。見て・・・・・・頭を下げた。



「は、はやて。どうしたの? というか、大丈夫だよ。
私はその・・・・・・ヤスフミの友達で、仲間で、家族なんだから」

「なら、大丈夫なんか?」

「・・・・・・うん。自分でも不思議なくらいにね、怖く・・・・・・ないんだ。
というか、昨日少しだけ、ヤスフミと通信で話したの」

「そうなんかっ!?」





話を聞いて、今はそっとして置こうかと思った。でも、やっぱり心配になった。

一人で談話室に入って、通信をかけた。

出てきたあの子は、少し疲れた顔をしてて・・・・・・それに胸が苦しくなった。



それから、『ごめん』と謝るヤスフミを見て、私の気持ちは固まった。



それで・・・・・・昨日の話の内容をそのまま伝えた。すると、はやてが安心したように表情を柔らかくした。





「・・・・・・そっか」

「うん」



でも、おかしいんだよね。ヤスフミ、そう言うとすっごく顔を赤くしたの。もうトマトかって言うくらいに。

うーん、謎だなぁ・・・・・・。私、変なこと言ってないよね? ヤスフミも『すごく嬉しくてこうなってる』って言ってたし。



「フェイトちゃん・・・・・・アンタ、自覚ないんやな」

「なにが?」

「いや、なんでもない。とにかく、安心したわ。もうここだけはなんとかせなあかんと思ってたからなぁ」

「ごめんね、心配かけちゃってたみたいで。でも、大丈夫だから。・・・・・・それでね、はやて」



実は、私も用件がある。それは三つ。まず一つ目からいくことにした。



「私もそうだけど、はやてやみんなも大丈夫? リイン・・・・・・重荷を背負ったわけだし」

「うちらはもう覚悟しとるよ。で、うちらも実は昨日リインとちょおお話した。
言うたことは・・・・・・うん、フェイトちゃんと変わらんよ。そやから、大丈夫」

「そっか、ならよかった」



一つ目の危惧が、私の思い過ごしだと分かって、内心ホッとした。まぁ、はやてやシグナム達だから大丈夫とは思ってた。

でも、安心した。とにかく次。さっき、部隊長室に入る前にグリフィスから聞いたことがある。



「・・・・・・六課に近々査察が入るって本当?」

「本当や。それもオーリス三佐・・・・・レジアス中将の秘書の方が直々にや」





理由は察しがつく。六課が地上に居るのが気に食わないんだ。六課は本局所属。

だから、ミッド地上にありながらもレジアス中将が実質的にトップを勤めるミッド地上本部の管轄から外れてる。

私が思うに、レジアス中将は本局嫌いで有名だし、好き勝手やられるのが気に食わないってところかな。あとは、昨日の戦闘。



私もなのはもはやても、限定解除しちゃったから、市街地付近でSランク魔導師を三人も投入したことになる。

それが問題視されてこれなのかも。でも、大丈夫なのかな。地上部隊の査察、相当厳しいって聞いてるし。

それに、うちの部隊は私やはやてを筆頭に、叩けば埃の出る人間ばかりだから。



・・・・・・なんだろう、自分で言ってて、胸が痛む。



今顔が浮かんだあの子もその中の一人として見られるのかと思うと、すごく・・・・・・嫌だ。





「まぁあれや、そんないちゃもんつけるような真似はせんと思うから、多分大丈夫・・・・・・なはず」

「さすがにそれはやらないとわからないよね。・・・・・・それではやて、もうひとつ」

「なんや?」



これが、三つ目。実は最近・・・・・・ううん、違う。六課設立時から、ずっと気になってたことがある。



「そろそろ六課設立の本当の理由、教えてくれないかな。なにか・・・・・・隠してるよね」





六課は、色々とおかしい部分がある。普通ならこんな編成にしないもの。

私やなのは、はやてにシグナム、ヴィータのようなSランク魔導師ばかりを揃えたりなんて出来ない。

というより、リミッターをかけたとしても一蹴される。だけど、現実として六課は設立し、動いている。



後見人に騎士カリムやクロノにリンディ母さんが居るとしても、ちょっとありえないように感じる。

というか、ありえないよね。ヤスフミが教えてくれた非公式の後見人の話も含めると、かなり。

だから、今聞いている。さすがにもう知らないふりは出来なくなったから。あと・・・・・・ここが一番重要。



実は、今までのは適当なつじつま合わせだったりする。10年来の友達としての勘が言ってる。



はやて・・・・・・また私達に内緒で隠し事してるって。ヤスフミじゃないけど、私も見えるもの。狸耳と尻尾と髭に四つの足が。





「・・・・・・そうやな。もうここで話さんとあかんやろ。
てゆうか、フェイトちゃん的には恭文のこともあるから、余計話して欲しいんやろ?」

「そうだね」



言い方は悪いけど、ヤスフミは六課の任務中に重荷を背負った。やっぱり、隠し事されてるのは気分がよくない。

まぁ、ヤスフミはその辺りの事は気にしないと思うけど、それでも、私は気にする。



「分かった。ほな、ちょうどクロノ君も地上に降りてきとるみたいやし、ちゃんと話すわ。当然、恭文とリインも込みでな」



・・・・・・ヤスフミとリインも? 私ははやての言葉に首を傾げる。そこはあまりに予想外だったから。



「うちもな、これでも色々考えとるんよ。それに・・・・・・二人には、ちゃんと話す必要がある。
そうした上で今後どうするか考えてもらわんとあかん。ま、その話も現地でするわ」

「分かった」





とにかく、通信でなのはに事情説明をする。二人で壁にかけてある時計を見て、頷きあう。

なのは、聖王教会の医療施設に預けられたあの子が気になって、シグナムと一緒に様子を見に行ってた。

でも、時間的にはもう帰ってる頃。だからこそ、私達は通信をかけた。



理由は一つ。なのはにも六課の隊長の一人として話を聞いてもらうため。





『びぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』



開いた画面に映るのは、一人の女の子。それは、あのレリックを運んで来た子。

その子がなのはの足に抱きついて、泣き喚いてる。



「「・・・・・・え?」」



そしてなのはも・・・・・・周りに居るスバル達も困り果ててる。



『あ、フェイトちゃんはやてちゃんっ! お願い、助けてー!!』

「いやいや、助けてって言うたかて・・・・・・どないしたんや、その子」

『ちょっと色々あって、医療施設から引き取ってきたの。
でも、仕事があるからみんなに任せようとしたら、これで・・・・・・』



・・・・・・懐かれちゃったのかな。そう言えば、泣き喚くというより、寂しくて甘えてる泣き方だ。うーん、これは。



『・・・・・・ったく、横馬は相変わらず知能指数が低いね。
懐かれてるのに離れようとしたら、泣くに決まってるじゃないのさ』

『ですです。なんというか、優しさが足りないのですよ』



通信画面に映る影がもう二つ増えた。それは、青いインナースーツを着込んだ男の子と、陸士制服を着た小さな女の子。

男の子の胸元には青く光る宝石。左腕を包んで固定するのは、白い三角巾。そして、その顔は少し呆れてる様子だった。



『恭文君っ!? というか、リインもっ!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



朝、隊舎に来た。なお、二人と一緒にである。で、昨日フェイトからなのはも相当心配していると聞いていた。

なので、一応元気な顔だけは見せておこうと、リインと一緒に来たのだ。

で、来たら・・・・・・魔王が子どもを泣かせてた。まったく、だから魔王属性は修正しろって言ってるのに。





とにかく僕は床に落ちていた、かわいらしいうさぎのぬいぐるみに右手を伸ばして取る。で、その子の前にしゃがんで、声をかける。










「こんにちは」

「こんにちはですよー」





その子はこちらを見る。で、ちょっとびっくりする。だって、視界にはうさぎのぬいぐるみの顔があるんだから。

・・・・・・フェイトに教えてもらって、カレルとリエラにも試して好評だったこの技に、この子はいい感じで食いついてくれた。

で、うさぎを右に動かす。その子の顔も右に向く。左、上、下・・・・・・どうやらぬいぐるみは、この子のもので確定らしい。



とりあえずあれだ、エリオ辺りが『近づかないでください』みたいな空気出してるけど、気にしない。





「初めまして」

「は・・・・・・はじめまして」

「あ、ヴィヴィオ」



どうやら、それがこの子の名前らしい。なのはが声をかけることで、視線が上を向いたから。



「この子は、恭文君。私の大切で、大好きな男の子」

「・・・・・・大好き?」

「うん、そうだよ。大好きで、仲良しなんだ。うーん、男の子の友達の中で言うと、一番かも」



なんだろう、色々と語弊があるような言い方に聞こえるのは気のせいだろうか。うん、気のせいだ。

間違いなく気のせいだ。なんとなしに、なのはに視線を向ける。なのははそれに気づくと、優しく微笑んでくれた。



”私も、変えないよ”

”・・・・・・いきなりなにさ”

”だって、恭文君は私の大事で、大好きな男の子だもん。昨日一晩考えてね、そう結論が出た。
何も変わってないし、変えてない。だから・・・・・・恭文君も変えないで欲しい”



どこか、懇願するような声。その声のまま、なのはは最後の一言まで言い切る。



”うん、絶対に変えないで欲しい。私達が仲間で、友達で・・・・・・そんな関係、絶対変えないで欲しい”

”あー、それなら心配ないや。だって、変えちゃったらなのはをいじめられなくなるし”

”な、なんでそういう方向に行くのかなっ!? ・・・・・・でも、いいよ。
恭文君がいじめるのが、私達が友達で、心を許し合ってる証拠になるなら、いっぱいいじめて欲しいな”



・・・・・・まぁ、嬉しい。そう言ってくれるのは本当に嬉しい。フェイトも同じことを言ってくれた時、マジで泣いたから。

ただ、気になることがあるので一応ツッコんでおく。うん、かなり全力で。



”なのは、言いたいことは分かるけどその発言はヤバイって。
全力全開で『私ドMです』宣言だよ? 『私、男の子にいじめられるの大好きです』宣言だよ?”

”ち、違うよっ! あくまでも物の例えだよっ!? 私、いじめられて悦ぶような変態さんじゃないもんっ!!”





なのはがちょっと顔を赤くする。それにヴィヴィオが首をかしげるけど、何も察しないで欲しい。

ヴィヴィオ、あなたが僕達の会話の意味の全てを知るのはあと10年先だよ。

とりあえずあれだ、その首をかしげた時に感じた気持ちをぜひとも忘れないで欲しい。きっと、それは大事な宝物だから。



なお、僕は11歳くらいの頃にはもう分かってたけど、見習わないでね?





「・・・・・・うー、なのはさんひどいですっ! どうして祝福の風であり、古き鉄・・・・・・恭文さんの一部である私をどうして忘れるですかっ!?」

「あ、ごめんごめん。・・・・・・それでね、この子はリイン。
私のお友達の家の子で、恭文君が私達の中で一番大好きな女の子」

「ヴィヴィオ、よろしくですよー♪」

「あの・・・・・・よろしく」



なのは、その最後の説明要らない。なんかリインがすっごい誇らしげなのが色々と気になるんですけど。

とにかく、突き刺さるような冷たい軽蔑の視線が、なのはとリインを対象に含めた戸惑いの視線に変わったのは気にせずに、僕は言葉を続ける。



「ね、ヴィヴィオ。この子はヴィヴィオのお友達・・・・・・かな」

「うん」

「じゃあ、はい」



僕は、うさぎさんをヴィヴィオに手渡す。ヴィヴィオは、少し考えてから、ゆっくりと受け取った。



「お友達、寂しがってたよ? ヴィヴィオと離れちゃってたから」

「そうなの?」

「そうなの。・・・・・・それで、寂しいと言えばさ、ヴィヴィオも寂しいのかな。なのはと離れちゃうの」



ヴィヴィオは、それにコクリと頷いた。瞳にまた涙が溜まり始める。どうやら、まじで懐かれたらしい。

なのは、一体なにしたの? 昨日会って今日これは、相当強烈な刷り込みでしょうが。



「そっか、寂しいんだ。じゃあ、ヴィヴィオはなのはのこと好き・・・・・・なのかな」

「・・・・・・うん」

「そうなんだ。あー、でもねヴィヴィオ。なのはもお仕事があって、それをやらないといけないんだ」



ヴィヴィオがなんか泣きそうになる。で、慌てて言葉の続きを言う。

や、やばい。なのはが離れるって事が無条件で世界の終わりレベルの出来事だと思ってる。



「だけど、ずっと居なくなるわけじゃないから」

「そう、なの?」

「そうだよ。仕事が終わる時間になったら、ちゃんとここに帰ってくる。
ね、なのは。なのはもそうするつもりだったよね」



で、僕はなのはを見る。・・・・・・で、横馬はヴィヴィオに視線を向けて頷いてくれた。どうやら、空気は読めるらしい。



「だからね、僕達になのはのこと、少し貸してくれないかな。なのはが居ないと、少し困っちゃう人も居るんだ。
なのはも、お仕事が出来なくて困っちゃう。・・・・・・ヴィヴィオは、なのはのこと困らせたいわけじゃないんだよね」

「・・・・・・うん」

「なら、お願い。協力してくれないかな」



僕達に対して視線で『ほんとに?』と言ってくるヴィヴィオの瞳を見つめながら、僕は・・・・・・ううん、僕とリインは、力強く頷いた。



「大丈夫、僕もみんなも、ちゃんとなのはがヴィヴィオのところに帰れるように、お仕事手伝うから。約束する」

「約束?」

「うん、約束」



ヴィヴィオは、少し考えて・・・・・・コクンと、頷いてくれた。で、指切りまでした。

ヴィヴィオが指切りを分からなかったので、僕が手を取って教えた。



「・・・・・・ヴィヴィオ」

「なに?」

「僕の手・・・・・・触っても大丈夫? 怖く、ないかな」



自然と聞いていた。聞いて、すぐに後悔した。

だけどヴィヴィオは、首をコクンと縦に動かし、頷いてくれた。



「怖く、ない。それに・・・・・・とっても温かい」



指切りしていた手を離して、僕の右手をギュっと触ってくれた。



「あの、えっと・・・・・・腕、怪我してるの?」

「あー、うん。少しね。でも、すぐによくなるんだ」

「そうなんだ。でも・・・・・・痛そう」



ヴィヴィオは、多分・・・・・・なんとなくやったんだと思う。

それでも、怖がらずにそっと右手を伸ばして、僕の三角巾で固定された腕を優しく撫でてくれた。



「ヴィヴィオ、ありがと」

「ううん、早く良くなるといいね」



そう言って、ヴィヴィオは少しだけ笑う。その可愛い笑顔がなんだか嬉しくて、なんかこう・・・・・・胸の中が暖かくなって。



「恭文さん、よかったですね」

「・・・・・・うん」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・うそ、あの子をあっという間に手懐けた。私やみんな、なのはさんがどんだけ言っても聞かなかったのに。





てゆうか、なんであぁなるのよ。私、マジで不思議なんだけど。










「そりゃそうや、恭文は子育て経験ありやからな」



後ろから声。そちらを見ると、八神部隊長とフェイトさんが嬉しそうな顔でなのはさん達を見てた。

い、いつの間に・・・・・・あ、さっき通信してたから、そのせいで来たのかな。



「あのフェイトさん、子育て経験ありってどういうことですか?」



まさかアイツ、もう結婚してるとかっ!? もしくはシングルファーザーっ!!

私達の顔から、そんなとんでも理論が読み取れたのか、苦笑しつつフェイトさんが補足を入れてくれた。



「ヤスフミ、私の義姉が子どもを産んだ時、1年程魔導師の仕事を休んだの。
それで子育てを手伝ってくれてたんだ。だから本当に小さな子とお話するの、結構得意なの」

「アンタらが前に行った翠屋で、子どもの相手とかもしたことが結構あるんよ。本人も結構子ども好きみたいやしなぁ」



確かにそうだ。なんだか楽しそうにヴィヴィオと話し始めた。もちろん、なのはさんやリイン曹長も絡めて。

なのはさんがどういう仕事をしてるかについて説明してるらしい。それらしい単語がちょこちょこ聞こえてくる。



「でも、なんというか・・・・・・エリオとキャロには冷たいんだよね。
もう少し、あんな風に柔らかくなって欲しいんだけど」

「あんな、フェイトちゃん。恭文、前に言うてたんよ。『現場に子どもの魔導師が居ても、職場だから、子どもじゃなくて、大人として見た上で接するのは当然』って」



・・・・・・アイツ、そんな事言ってたの? 初耳なんだけど。



「なんや、嘱託の仕事してる時には、基本そうしてるって言うてたよ?
二人に対しても同じやろ。特に今は事件に関わってる最中やし、そりゃ仕方ないって」

「あ、そういうことなんだね。・・・・・・うん、納得した」





フェイトさんや八神部隊長は受け入れられてる様子だ。今のアイツを、これを普通のこととして。

だけど、別人のような雰囲気のアイツに、私も・・・・・・スバルも、エリオもキャロも、戸惑っていた。

そうだ、本当に別人なんだ。というか、ワケがわかんない。昨日あんな事があったばかりよ?




それでなんで笑えるのよ。アイツ、絶対おかしい。あと、リイン曹長も・・・・・・よく分からない。





「・・・・・・おかしいですよ」



ただ、私はまだ自重する気持ちがあった。スバルも、キャロも同じ。でも、自重しなかったのがいる。それはエリオ。

それを言えばフェイトさんが、八神部隊長がどう思うかも分かってるのに、それでも吐き出した。だから、フェイトさんが少し表情を曇らせる。



「きっとなにも思ってないんだ。だからあんな風に笑える。昨日だって、普通にしてた。あんなの、おかしい」

「別におかしくねぇだろ」



その言葉を、小声でぶった斬ったのは・・・・・・え?



「ヴァイス君っ!?」

「ヴァイス陸曹、どうしたんですか?」



フェイトさんが聞くのも無理はない。だって、普通に突然出てきたし。



「いや、出発の準備が出来たんで呼びに来たんっすよ。シャマルさんに聞いたら、ここだって言ってたんで。
・・・・・・で、ちびっ子。お前は坊主と曹長の様子について疑問があるらしいが、おかしいのはむしろお前だろ」

「どうして・・・・・・ですか? だって、昨日あんな事があったのに笑ってるんですよ?
おかし過ぎるじゃないですか。人を殺しておいて、あんな風に」

「それがあの小さい子に関係あんのか?」



ヴァイス陸曹の声が少しだけ低い。それで気づいた。陸曹は少しだけ・・・・・・怒っていた。



「坊主と曹長はなんにもおかしくないだろ。小さい子どもの前で、笑顔でいようとしてるだけだ。
今のあの小さい子には、昨日の坊主と曹長の行動とは、何も関係がねぇ」



だからエリオも固まる。言っている事が分かるから。私達も何も言えない。

むしろ、さっきまで感じていた恐れや不安が、あまりに理不尽なもののような気さえしてくる。



「俺らの仕事のことも、ここがどこかも関係ない。それなのに、なんでいちいち辛気臭い顔しなきゃいけねぇんだ。
てーかちびっ子、アレがどんだけすごいことか、お前分からないのか? お前が同じ立場で考えてみろ。同じ事が出来るか?」



少しだけたしなめられるような言葉に、エリオは何か言いたげだったけど、すぐに口を閉ざして俯いた。言ってる事は分かったらしい。



「まぁ、お前らはガキだから分からねぇかも知れねぇけどよ。
世の中にはそういうのを誰であろうと見せんのが嫌いな奴も居るんだ」



その様子にヴァイス陸曹はため息を吐いて、言葉を続けた。



「死ぬほど嫌いでどんだけ辛かろうが苦しかろうが、普通通りにしている奴がな」



私はもう一度アイツを見る。変わらずに笑っている。本当に変わらずに。

だけど、もしアレが変わってないように見せているだけだとしたら? だったら、アイツは・・・・・・そうなの?



「・・・・・・つーか、もう終わった事にグダグダ言うな」

「ヴァイス陸曹は、現場に居なかったからそんな事が言えるんです。
あんなの・・・・・・あんなの見て、なにも言うななんて、僕には出来ません」

「そうだな。で、お前らは実際に何かしたのか?」



私達はまた固まる。その要素を見てもなお、ナイフのような鋭い言葉は続く。



「お前らは、話を聞く限りただ見ていただけ。
つーか、アイツが責められるべきなら、お前らだって責められて当然だろうが」



鋭いから、エリオが不快そうに顔を歪める。それはスバルやキャロも同じく。



「いや、お前らの方がずっと罪が重いな」

「ヴァイス陸曹、どうしてそうなるんですか? だって、アレは恭文が勝手な行動を取ったから」

「だが、お前らはそれを止められなかった。そして、殺すという手段以外で被疑者を止める手段を構築しなかった。
お前らよりずっと汚いもんを見て、悪党ってやつをよく知っているアイツや曹長さんを納得させるだけのものを、お前らは何一つ出さなかった」



だけど私は・・・・・・何も言えなかった。だって、マジに突き刺さったから。



「結局は何も出来ず・・・・・・いや、何もしなかった自分達が、被害者ヅラ出来るとでも、本気で思ってんのか?」



あの場の現場リーダーは私だから。それは引いては私の責任になる。だから、余計に。



「けどそれは、ヴィータ副隊長の命令で・・・・・・僕達は止めたかったんです。
いいえ、止めました。でも振り切られたんです。それでどうしろと言うんですか?」

「なるほど。だったらアレか、命令されたから何もしなかったって言うなら、命令されれば殺したか?」



エリオが口を開く。それを、私は手を使って塞ぐ。



”ティアさんっ!? あの、離してくださいっ! さすがにこんなこと言われて黙ってるわけにはいきませんっ!!”

”エリオ、その辺りにしときなさい。あと、スバルとキャロもよ。・・・・・・ヴァイス陸曹の言う通りよ。
私達に、昨日のアイツの行動をどうこう言う権利は存在していない。私達は”



そう、私達は・・・・・・そうなのよ。うん、私は分かってた。ただ目を逸らしていただけ。



”経緯や理由はどうあれ、アイツとリイン曹長に全部押し付けたのと同じなのよ?
止められなかった。倒せなかった。命令されて、それを理由に傍観者に回った。それは事実”

”そう・・・・・・なのかな。でも、止めようとしたのに”

”私達、みんな止めようとしました。なのに”

”そうね、止めようとした。でも、何もしない人間になった。
私達の言葉も、想いも、意味がなかった。無力だった”



・・・・・・その通りだ。私達の道理は、選択は、アイツが抱えた危機感を何一つ払拭出来なかった。

振り切られて当然だ。無力な言葉に、想いに、現実に押しつぶされそうな理想に、何の意味があるの?



「まぁ・・・・・・アレやな」



まだ納得がいかないという顔のエリオやスバルを見て、今まで黙っていた部隊長が口を開いた。



「アイツの行動の是非を問うんは、資料を見てからにして欲しいんよ。
なお、アレは隊長陣でも普通じゃ止められん言う話で、今んとこは納まっとる」



エリオが何か言いたげだったけど、口は開かなかった。どうやら、エリオの中ではアイツの判断は完全な間違い。

だけど、八神部隊長やフェイトさん達の判断なら、問題ないということらしい。だから、まず見てみる事から選択した。



「みんながそれ見てまだ言うんやったら、うちらはもうよう言わんわ」



・・・・・・なんて言うか、これはいいのかしら。



「部隊長、それでいいんですかい? 正直、コイツらの行動は、局の魔導師としての礼儀に反するでしょ」

「でも、ヤスフミの行動に否定されるべき部分があるのは間違いないですから」

「現場リーダーの命令無視に身内への攻撃行動、そこを抜かしては何も言えんやろ。・・・・・・ヴァイス君ありがとな」

「あー、いいですよ。ちょっと気になっただけですし」










それからすぐに、隊長達とアイツ、それにリイン曹長は聖王教会に出発した。

で、副隊長から昨日やり合ったアイツの資料を見て・・・・・・私達は愕然とした。

あんな化け物相手に生き残れたことが幸運に思えるくらいに。





推測数値で示されてる魔力量も、どこかのオーバーSなんて軽く超えてる。

ただ、その数値は真実味があった。多分、実際に戦った人間だけが分かる重さだ。

普通に非殺傷設定の魔力ダメージで殴ったり撃ってたんじゃあ倒れるはずがない。





とは言え、別にそれでアイツの行動を認めるとかそういうつもりはない。命を奪うなんて、絶対に否定するべき。

ただ・・・・・・少し、言い過ぎたかなと、反省してしまった。ヴァイス陸曹の話を聞いていたら、どうしてもそう思ってしまった。

てーか、そうよね。陸曹の言う通りだわ。私達・・・・・・ううん、私は結局、何もしなかったんだ。隊長達が居る時なら大丈夫と甘えていた。





現にあの時、居ない状態だったのに。自分達では何もしないことを選択して、アイツとリイン曹長に重荷を背負わせた。





そうだ、隊長達に押し付けようとしてたんだ。私・・・・・・最低だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「うー、ごめんね。お騒がせしちゃって」

「ううん、大丈夫だよ」

「そうそう、大丈夫やて。面白いもんも見させてもろうたしなぁ」

「フェイト、はやて、二人揃ってなに言ってる?
てか、大丈夫じゃないから。なのは・・・・・・まじめに考えようよ」



あんな懐いてたら、うまい言い方しないとあぁなるって予測出来たでしょうが。全く、これだから脳筋は。



「うぅ、反省しています」





ヘリの中、フェイトの隣をしっかり確保しつつ、向かい側に座るなのはをちょっと睨む。

・・・・・・やっぱり、この女は戦闘関係以外のことがちゃんと発達していないんじゃないだろうか。

で、そんな横馬にあの子が懐いたのは、もしかしたら一つの奇跡なのかも知れない。



ただ、問題は残る。その奇跡にこれからどう対処するかだ。





「うーん、医療施設に帰すのはだめっぽいですよね」

「かも知れない。ここに連れて来たのも、全然離れてくれなかったせいなの。
私やシグナムさんがいくら言っても聞いてくれなくて・・・・・・」

≪あれですね、あなたに対して完全に刷り込みが起きてるんですよ≫

「そやなぁ。仕事云々隊舎云々は抜きにして言えば、今なのはちゃんがあの子の側を離れるんはちょっとなぁ。
あの子の精神衛生上にもよろしくない言うんが、うちの意見なんよ」



確かにその通りだ。てか、横馬からここに来るまでに聞いた話だと、一度病室から抜け出してるらしい。

もし、無理に納得させた上でまた預かってもらったとしても、横馬が居ないのが寂しくてそれが二度三度という可能性もある。



「こうなったら覚悟決めて、あの子の世話するしかないんじゃないの?
フェイトがエリオ達みたいにしてる形まではいけなくてもさ」

「ようはヴィヴィオの側に居て、一緒に暮らすということだよね」

「そうそう。・・・・・・フェイト的にはどう? 僕は、なのはの仕事もあるから正直無理は言えないかなって思ってる」



教導官もなんだかんだで忙しい仕事。てーか、このバカは普通以上に熱を入れるので、必要以上に忙しくなる。

そんな状況で女の子一人の世話? ぶっちゃけ無理言えないって。第1話みたいに叩くわけにはいかないでしょ。



「実は、私もヤスフミと同意見なんだ。はやて、私達はこんな感じだけど、部隊長的にはどうかな。何か問題とかある?」

「いや、そこは大丈夫や。うちもみんなと同じで、その方がえぇかなと思う。
なにより、あの子は事件の重要参考人や。そこ考えると、隊舎で保護言う選択肢もないわけやない」



そう、あの子がレリックを持ってたのは事実。

犯罪行為なんかに手を染めてるとは思えないけど、事件の核心に迫る何かがあるのは決定だと思う。



「もしかしたら、隊舎で保護する方が安全かも知れないですね。
というか、安全ですよ。ここにはなのはさんもそうですし、リイン達も居ますから」

「確かにそうだね。戦力を考えても、普通に攻撃とかは仕掛けられないよ」



いや、だからフェイト? 本部が襲撃って展開は、結構あって(以後省略)。



「なら、あとはなのは次第かな。ヤスフミの言うように、無理は言えないもの」

「とにかくなのは、帰ったらもう少し話してみてよ。
今はきっと、周りに味方が居なくて寂しくて、不安だと思うから」

「・・・・・・分かった。というか、言われなくてもそうするつもりだったから、大丈夫だよ」





そして、ヘリは少しの間空を飛んで、聖王教会のヘリポートに到着した。



ヘリを運転してくれていたのは、お馴染みのヴァイスさん。



隊長達が降りて、僕とリインも降りて・・・・・・ヴァイスさんは、帰りまで待機らしい。大変だ。





「・・・・・・なぁ、坊主」

「ほい?」



なのは達の後を追いかけようと歩を進めると、ヴァイスさんに声をかけられた。で、ジッと僕の目を見る。



「まぁアレだ、交代部隊や他の連中には俺がしっかり言っといてやる。
てーか、あんまりにグダグダ抜かしてやがったから、交代部隊は軽くシメといてやった」



はぁっ!? し、し・・・・・・シメるってなにっ!!



「まったく、これだから最近の若い連中は・・・・・・他の魔導師に対する礼儀も分からねぇのか。
見ててイライラしたし。何もしてねぇ奴が横からグダグダ抜かすなってんだ」

「・・・・・・え、いきなりなんですか。あの、話が見えないんですけど」

「いいから聞け」



なんか真剣な目で言ってくるので、黙って聞くことにした。そのまま、ヴァイスさんの口が開く。



「おチビの曹長さんは実のところあまり心配してねぇ。八神部隊長達やシグナム姐さん達がいるからな。
で、問題はお前だ。・・・・・・負けんじゃねぇぞ。これで六課から逃げ出すような真似、絶対すんな」



開いて、飛び出た言葉はなぜか、そんな応援の言葉だった。



「ここで逃げたら、お前・・・・・・ずっと逃げることになんぞ? だから、苦しくても六課に踏ん張れ。ここに根を下ろせ。
・・・・・・いいか、俺はお前の行動を正しいと言うつもりはさらさらねぇ。だが、批判するつもりも、さらさらねぇ」



ただ、何に対して言ってるのかは、すぐに分かった。



「俺はよ、実際に現場に居なかった奴が、何もしなかった奴は何も言うべきじゃねぇと思ってる。
事後にゴチャゴチャ批判する権利なんざ、誰にもねぇよ。それが局の魔導師の礼儀の一つだ」

≪確かに、そういう風潮はありますね。特に地上部隊には多いです≫

「だろ? 何がダメとか、アレがまずかったとか、そんなもん周りが言うまでもなく、本人が一番分かってんだ。つーか、分からなきゃいけねぇ」



僕の、昨日の行動について言ってる。それについてのフォローをしてくれたんだ。

でも、どうして? 僕とはあんまり話してないのに、なんでそこまで。



「まぁ、お前さんはそこの辺りは大丈夫そうだが、一応な。・・・・・・言いたいことはそれだけだ」



なんとなく、ヴァイスさんの僕をジッと見る瞳に、今の心と似た色を見つけた。それだけで、十分だった。

言葉だけじゃなく、理屈だけじゃなく、心から分かった。だから、僕はこう口にする。



「ありがとうございます」



そう、お礼の言葉だ。ヴァイスさんはそれに視線を背けて、そっぽを向く。



「礼なんざいらねぇよ。つーか、早く行って来い。隊長達待ってんだろうが」

≪あなた、呼び止めておいてそれはひどくありません?≫

「・・・・・・そうだな、反省した。てーか、突き刺さった」










そして、ヴァイスさんにお辞儀を返してから、早足でみんなに追いつく。心の中で、重ね重ねお礼を言いながら。





・・・・・・少し、はやてにヴァイスさんのことを聞いてみようかとも思ったけど、やめることにした。





人のこと勝手に調べるような真似をするのは、悪党に対してだけでいいでしょ。





とにもかくにも、こうして真実は僕達の目の前に姿を現す事になる。





祭りの時まで、時間はそれほど残されてはいなかった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ストームレイダー。俺・・・・・・かっこつけ過ぎたかな?」

≪・・・・・・・・・・・・問題ありません、相棒≫

「その言う前のタメについては少し話したいな。てーか、やっぱりそう思ってたのかよ」

≪多少は≫










コイツは・・・・・・。まぁ、いいや。しかし、らしくねぇことしたな。俺、いつからこんなキャラになったんだ?

・・・・・・別にあの坊主のためとかじゃねぇ。ただ、部隊の連中の態度が目に余ったからだ。

どいつもこいつも、うっとおしいったらありゃあしねぇ。まぁ、しゃあないと言えばしゃあない。





犯罪者への攻撃は、非殺傷設定が基本だ。俺も訓練校でやんなるくらい教えられた。

・・・・・・・・・・・・逃げんじゃねぇぞ・・・・・・か。あははは、俺が言えた義理じゃねぇっての。

俺は逃げて逃げて・・・・・・それでこの様だってのによ。なんでそんなことアイツに言えんだか。





あー、だから言えるって考え方もあるな。とはいえ、いずれにしても・・・・・・らしくねぇことしたなぁ。





俺は、ヘリのコクピットに体重を預けながら、空を見る。空は・・・・・・俺の今の心と違って、青く、澄んでいた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・そう言えば恭文君、さっきヴァイスさんとなに話してたの?」

「あ、なのははM属性たっぷりなんで、いじめると面白いですよって言ってたの。
それで、今度ヴァイスさんもいじめてくれるって。よかったね、なのは」

「なにそれっ!? というか、私マゾじゃないもんっ!!」

「そうだよね、MはMでも『魔王』属性だもんね。
だから、このシリーズ開始冒頭から砲撃かましてファンを唖然とさせ」

「それは言わないでー! あの時のことは黒歴史にしたいくらいに反省してるからー!!」



いつも通りに、大事な友達を適度にいじめる。まぁ・・・・・・色々感謝してるので、いつもより優しめだ。



「恭文君、今日は少しいじめ方が優しいよね」

「そんなことないよ? 普通ですよ普通」

「・・・・・・そっか。でも、いつもそういう風に優しくいじめてくれるなら、嬉しいかな」

「なのはちゃん・・・・・・それは普通にエロいて。普通にR18行くって」

「なのはさん、普通に自覚0なんですね」



現在、僕達は聖王教会の中。通路を歩きながら目指すのは、ある場所。

なんて話していると、もう目的地の前だった。なので僕達はそこに入る。。



「失礼します」



なんて言いながら部屋に入ると、そこに居たのは一人の女性。それと・・・・・・あ、珍しい。また制服姿だし。



「お初にお目にかかります。高町なのは一等空尉と」

「フェイト・T・ハラオウン執務官であります」



敬礼つきでそう挨拶をするのは、局員二人。つーか、堅苦しい。もうちょいなんとかならないものか。



「お二人とも初めまして。聖王教会のカリム・グラシアです」



そして、その人は僕の姿を見つけて、安心したように笑ってくれる。・・・・・・このお姉さんは、カリム・グラシア。

聖王教会の理事で、ヒロさんの年の離れた幼馴染。そう、僕達はこの人に会うためにここに来た。



「・・・・・・恭文君、お久しぶり。あ、それにリインさんも」

「いや、すっかりご無沙汰しちゃってすみません、カリムさん」

「カリムさん、お久しぶりなのですー♪」



・・・・・・で、今日はなんで僕呼ばれたんですか?



「今日呼んだのは、あなたの軟派なところをシャッハに修正してもらおうと思って」

「誰が軟派ですか誰がっ!!」



ま、まったく・・・・・・誰だよ、妙なことをカリムさんに吹き込んだのは。



「・・・・・・はやて?」

「なんでうちを真っ先に疑うんよっ!!」

「いや、他に・・・・・・居るか」



ヒロさんとか、ヒロさんとか、ヒロさんとか。もしくはサリさんとか。

修行で聖王教会の修練場使っていた時に、色々お世話になったから。



「正解よ」



やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁっ! あの二人は余計なことをっ!!



「・・・・・・え、えっと・・・・・・あの」

「はやてとリインはともかく・・・・・・ヤスフミ、もしかしなくても、騎士カリムとお知り合いなの?」



二人が口を開けて呆けている。で、僕とカリムさんを交互に見る。

その様子が少しおかしくて、カリムさんと一緒に笑ってしまう。それから、僕は二人の言葉に頷いた。



「えぇ、そうです。私と恭文君は、個人的にお付き合いのある関係なの」

「「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」

「フェイト執務官、ご挨拶が遅れてしまって本当にごめんなさいね。
本当なら、真っ先にあなたのところへ伺わなければいけなかったのに」



カリムさん、なんでそうなる? そしてその『私達付き合っています』的な言い方はやめて。



「一応、恭文君の元祖ヒロインで現時点で本妻最有力候補のリインさんには、ちゃんと挨拶していたのだけれど」

「されちゃいましたー」

「今後とも、もしよければ仲良くして欲しいわ。よろしくね」



あの・・・・・・いや、だからね? 僕、本命フェイトだから。カリムさんだってそういうのじゃないでしょうに。

そして、元祖ヒロインって言うのやめてっ!? ちょっとおかしくないかな、それっ!!



「い、いえ・・・・・・あの、なんというか、恐縮です」



で、フェイトはその場でぺこぺこしつつ、横目で僕を見る。というか、なのはも同じく。

そして視線が言ってる。『どこでどうやってこうなるのっ!?』と。なので、説明する。



≪以前、聖王教会でカリムさんの護衛の仕事を引き受けたご縁で、仲良くさせていただいているんです≫

「というか、僕の紅茶の淹れ方の師匠2号なの」





あぁ、あれもキツかったなぁ。カリムさん、意識してかしていないのかわからないけど、身体くっつけてくるんだもん。

というか、密着ですよ密着。僕がどれだけ着やせしてると思ってしまうような感触にどきどきしたと?

まぁ、年齢も離れてるから、あんまそういう感じでは僕を意識していないんでしょ。カリムさん、そういうのにはちょい疎いし。



なお、カリムさんの側近であるシャッハさんに以前、その辺りを聞いた所・・・・・・ドンピシャだった。

カリムさん、シャッハさんの知る限り・・・・・・いや、ここはやめておこう。触れても僕は楽しくない。

ただ、カリムさんは色んな意味で頑張り屋さん過ぎるかも知れないとだけ、言っておく。



もしかしたら、フェイトと同じ・・・・・・なのかな。





「そっか、二人は知らんかったなぁ」

「「え、はやて(ちゃん)知ってたのっ!? ・・・・・・いや、改めて考えたら当然だけどっ!!」」





なんでそこまでというくらいにハモるフェイトとなのはを見て、僕達は苦笑するしかなかった。

・・・・・・フェイト、別に僕は好きになった相手がなのはとかでも、応援するよ?

大丈夫だよ、同性愛も異性愛も同じなんだから。言い訳とかじゃないなら別にいいよ。



僕、ニコ動にアップされてた、某らきすたのMAD見て、同性愛とかの認識変えたのよ。





「うち、カリムと仲えぇもん。なんやカリムは、恭文がお気に入りらしくてなぁ。
楽しそうによう話しとるもん。なんかのノロケかっちゅうくらいになぁ」

「もうはやて・・・・・・そういう言い方はやめて?
あくまでも、いい友人としての付き合いに留めているんですから」



・・・・・・いや、いかがわしいことは何もないよ? うん、本当に。

そしてカリムさん、留めているってなに? お願いだからその言い方やめてください。



「とにかく、立ち話もなんですから、こちらへ」





というわけで、カリムさんに案内されて窓際の丸いテーブルへ移動する。

・・・・・・つか、地上に降りていたんですよね。知ってました。

僕達より先に来ていたのか、さっきからそのテーブルに座りっぱなしの男性が一人。



時空管理局が誇る優秀な人材の一人で、僕の優秀な師匠達の一人、クロノさんだ。

なお、今日は珍しいことに提督の服。いつもはあの地味目なバリアジャケットなのに。

そこで気づいた。昨日の通信・・・・・・もしかして、提督服を着用していたのは、ここに来たのが原因だったのかと。



というか、そうだよね。はやてが能力リミッター解除したとか言ってたし、多分間違いない。



僕はクロノさんと同じ後見人でリミッター解禁の権限も持っている、カリムさんがやったのかと思ってたんだけど。





「・・・・・・クロノ提督、少しお久しぶりです」

「あぁ、フェイト執務官も。元気そうでなによりだ」



・・・・・・ねぇ、あなた方おかしいから。敬礼つきで役職つきで挨拶する兄妹がどこの世界に居るのよ?

もうちょい何とかならないのかね。まったく、堅苦しいったらありゃあしない。



「・・・・・ほら、ヤスフミも」

「あー、そうだね。クロノさん、久しぶり・・・・・・じゃないですよね」

「そうだな、なんだかんだでちょこちょこ会っているからな。というより、昨日話したばかりだ」

「そうなんですよね。こう・・・・・・全然新鮮味ないですね」



まぁ、いいことではある。僕はともかくクロノさんは忙しいもの。

それでも以前と変わりなく会えるのは、とてもすばらしい。



「あの、ヤスフミ。そうじゃなくて・・・・・・ね? 今は公式な場なんだから」



うっさい。何時いかなる時もあるがままを通すのが僕のジャスティスなのよ。・・・・・・ジャスティスなのよっ!!



≪大事なことだから二回言うんですね≫

「なぜ思考が読み取れるのさ。・・・・・・つかさ、堅苦しいの無しにしようよ。ここ、顔見知りしか居ないんだからさ」

「あのヤスフミ、お願いだからもうちょっと」

「あぁ、いいのよ。フェイトさん、恭文君の言う通りだもの。ここはいつもどおり・・・・・・ね?」




と、カリムさんがいい感じで締めてくれたところで、全員席に座る。

・・・・・・さて、このメンバーでどんなカードが出てくる?

この場合、ロクなもんじゃないとは思うけどさ。



てか、よく考えたらなぜ僕が呼ばれてる? おかしくないですか、これ。





「さて・・・・・・そろそろ始めようか。機動六課の今後の運営方針と、設立の裏事情に関してや」










やっぱりおかしい。普通にリインはともかく、僕が呼ばれる意味が分からない。





うーん・・・・・・どうして? というか、なんか嫌な予感がするんですけど。




















(第8話へ続く)




















あとがき



歌唄「・・・・・・ね、エリオ・モンディアルってアレでいいの? ちょっとムカつくんだけど」

古鉄≪いいんですよ、もう5話くらいでまたゴタゴタしますから。とにかく、今回のあとがきのお相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

歌唄「ほしな歌唄でお送りします。・・・・・・それで、最近『Cyclone Effect』って歌を練習してるのよ。超・電王編のために」

古鉄≪またなんでそこ行くんですか≫

歌唄「処刑用ソングを歌うからよ。プレイやブレイブフェニックスはフェイトさんが歌うし、私はもうちょっと恭文よりにしてみることにしたの」





(・・・・・・プロの歌手として、それはいいのだろうか)





歌唄「もちろん、カバー的にアレンジするわよ。で、今回のお話だけど・・・・・・ヴィヴィオの登場ね」

古鉄≪あなたは面識ありませんけどね≫

歌唄「私、しゅごキャラクロスの13話を超えるまで出番がほとんどなかったもの。仕方ないわよ。
でも、六課残留フラグってマジ? これはこれで辛いと思うのに」

古鉄≪ですが、そうしないとJS事件話と全く同じになってしまうんですよ。そして、残ったが故に描ける話もあるわけです。少なくとも、ティアナさんフラグは立てられるじゃないですか≫

歌唄「まぁ、それはね。・・・・・・でも、現段階で書いてるのだともう三角関係じゃない感じっぽいんだけど」





(ギク)





古鉄≪そこは作者がIFフェイトさんルート書きたくて書きたくて仕方なかったからでしょ。
とにかく、次回は色々被るところも多いネタバレ話です。みなさん、ご期待ください≫

歌唄「お相手はほしな歌唄と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンでした。それでは、また≫










(そして、ドS歌姫と青いウサギがなんだか楽しそうに話しているのを映しつつ、カメラフェードアウト。
本日のED:Labor Day,『Cyclone Effect』)




















エリオ「・・・・・・納得、出来ない。僕達は間違ってない。間違ってるのは、あの人だ」

キャロ「でもエリオ君、ヴァイス陸曹の言う事も事実じゃないかな。それに、隊長達の見解やデータにも説得力があるし」

エリオ「キャロ、フェイトさん達は優しいから、あぁ言ってるだけだよ。あんなの、絶対納得出来ない。だって、魔法は守るための力だよ?
みんなそうしてる。なのに、あの人が出来ない理由が分からない。受け取った想いと力をあんな風に使う事がどんなに悲しい事か、分かってないんだ」

キャロ「・・・・・・エリオ君」

エリオ「フェイトさん達だって、きっと同じだよ。ただ、昔馴染みだから庇ってるだけ。ホントは間違ってると思ってる。
そうだ。僕達は認めない。僕もそうだし、みんなも認めちゃいけないんだ。だって、あの人は間違ってるんだから」

スバル「・・・・・・エリオ、お冠だね」

ティアナ「色々好感度が上がったところでアレだったから、余計になんでしょ。
ごめん、正直若干引いてるわ。別に正しいなんて言うつもりはないけど、コレはない」

スバル「ティアは、納得したの?」

ティアナ「私達がアイツにめんどくさいことを押し付けたってとこはね」

スバル「そう、なのかな。ごめん、私はやっぱり・・・・・・引っかかってる」

ティアナ「まぁいいわよ、アンタの場合特にってのがあるんでしょうし。
でもスバル、もうあーだこーだと言うのはマジでやめてよ? これで面倒ごとなんて、ごめんだし」

スバル「それは・・・・・・あの、うん」

シグナム「さて・・・・・・どうする、ヴィータ」

師匠「とりあえず、バカ弟子の動向次第だな。今回こそはさすがに、六課を出る選択も考えないとまずいだろ。
アタシらがこれ以上バカ弟子に対してフォローしたら、ティアナの時の二の舞だしよ。あぁもう、なんでこんな面倒な事ばかり起こるんだよ」

シグナム「確かにな。とにかく、フォワード達のフォローをしておくか。
交代部隊や他の人間には、グリフィスやヴァイスがやってくれている。なら、私達はあっちだ」

師匠「だな。・・・・・・でもよ、ヴァイスってバカ弟子と仲良かったのか?
なんか自分から進んで動いてたって言うしよ」

シグナム「あまり話してはいないようだ。だが、ヴァイスには少し事情があってな、
恐らくだが・・・・・・今の蒼凪に昔の自分の姿を見たんだろう。だから世話を焼いた」

師匠「・・・・・・そっか」










(おしまい)




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