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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第5話 『守るために壊すという矛盾? 前編』



平和な休日は始まったばかり。僕は気分も軽くなったので、僕は呑気に市街を散策。

というか、りゅうのあなで同人誌を漁って購入の予定。なお、エロ込み。

もちろんエロ込みなのには理由がある。サリさんが仕事でいけないから買ってきて欲しいと言ってきたのだ。





一応出れるかどうか確認のために連絡したのに・・・・・・なぜ使いっ走りになるのだろうか。

で、サリさんの要望の元、買ったのは・・・・・・女賢者と僧侶と勇者物でしょ。

コードギアスのカレンとCCがメインをやってるのを一冊ずつ。





あとTo Heart2のタマ姉とこのみの百合百合。ひぐらしの詩音×悟史。

それとそれと、最近ミッドで大流行の某熱血魔法バトルアクション物だね。

だけどこの話、無駄に百合百合なんだよね。





特に主人公の女の子と、それとぶつかるライバル役の女の子の絡みが大人気らしい。

まだ小学三年生なのに。・・・・・・まずいな、色々と将来が不安になる。

別に同性愛を否定するつもりはないけど、小さい頃からそれだけってのも違う気がする僕は間違ってるのかな。










≪しかし、またドッサリ買うことになりましたね≫

「あと、僕の分もあるしね。ふふふ、うったわれる〜もの〜♪」

≪歌わなくていいですから。というか、あなたそんなに好きですか?≫

「だって、力也さんと柚姉面白いじゃん。中原麻衣さんと桐井さんが出てた特別版は最高だった」



あれだよ、あれは神回だもの。というか、大好きだよ。



「ラジオではオボロボロボロなんて言われてたけど、あれは嘘だね」

≪あぁ、言われてましたね≫

「アニメはアレだけど、ゲームではオボロ無双出来るんだから。
攻撃力最大値まで上げれば、クーヤだって一撃なんだから」

≪というか、してましたね。ほとんどの敵オボロだけで倒せるんじゃないかって言うくらいにやってましたよね≫





とにかく、せっかくの休みだし、こんな話を相棒としながら歩く。

そういう気晴らしは必要なのだ。ただ、今日は買い物を終えたらこのまま家に帰る。

しかし、平日の昼間だってのに人が多い。無駄に多い。



あぁ、早く家に帰って引きこもりたい。それで色々考えたい。

あー、でもせっかくだから映画とか見に行こうかな。

今の気分としては、何も考えずに笑って見れるようなのが欲しいな。



例えば・・・・・・電王ってアンコール上映してないかな。





「電王ってアンコール上映してないかな」

≪難しいでしょ。てゆうか、DVDあるじゃないですか≫

「いや、劇場のでっかいスクリーンで見たいの」





あれはよかった。うん、まじでよかった。『俺、誕生』も『クライマックス刑事』もよかった。

てゆうか、僕もデンライナー署の一員になりたい。『俺達、参上っ!!』ってやってみたい。

やっぱりさ、劇場で見る娯楽作品は、あれくらい単純明快で暴れてる方が楽しいって。



とりあえず、そんな事を考えて携帯端末で、今上映している映画を検索する。



・・・・・・うそ、マジで『俺、誕生』がアンコール上映してるしっ!!





≪だったら、やることは決まりましたね≫

「うん。・・・・・・ミッドのフリーダムな上映スケジュールに感謝だよ。これで思いっきり気晴らしが出来る」



あー、でもどうしよう。最後の良太郎の(うったわれる〜もの〜♪)のシーンで泣いたら。

というか、また泣いたら。・・・・・・まぁ、いいか。一人で見に行くんだし、号泣しようっと。



「というわけで、劇場へ・・・・・・ゴー!!」

≪いやぁ、楽しみですね≫



ということで、うきうきと楽しくスキップをして劇場へ進み出した。

もう、僕を邪魔するものは存在しない。つーか、してたら原子レベルで叩き潰す♪



「・・・・・・恭文ー!!」










・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?




















魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第5話 『守るために壊すという矛盾? 前編』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ヴァイス陸曹から借りたバイクで、私達は首都へと繰り出した。





繰り出して、久々に感じるプライベートな時間に自然と足取りも軽くなる。うん、とても嬉しい。





だから、隣を歩くスバルもニコニコ顔。まぁ、私もよね。










「・・・・・・ね、ティア」

「なに?」



スバルは黒を基調としたスカートルック。私は白と黄色の上着にミニスカート。

久しぶりに袖を通した私服の感触が、とても嬉しい。そんな気持ちの中、スバルが口を開く。



「恭文ってさ、やっぱり優しいんだよね。うん、ギン姉の言ってた通り」

「なによ、突然。てーか、アイツはどう考えても性悪よ? いい加減だし本音を晒さないし割りとキツいし」

「そんなことないよ。それだって、ちゃーんと理由があったでしょ?」



あれねぇ・・・・・・。なんというか、微妙に疑わしいのはどうして?

その話をしている間、アイツはずっとなのはさんを恨めしそうに見ていたし。



「それにほら、お休みの話をした時にも」

「・・・・・・あぁ、アレね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「あ、ヤスフミも同じくだよ。ずっとお休みなかったし、今日一日は羽を伸ばして来て欲しいな」

「あぁ、そうなんだ。・・・・・・じゃあ、一言言わせてもらおうかな」



フェイトさんが『何?』と首をかしげる。そしてアイツは・・・・・・言い放った。



「お前ら揃いも揃ってバカでしょっ!!」

「「「いきなり何っ!?」」」

「なんでそういう事を前もってスバル達に言わないわけっ!? 当日にいきなり『休みです』なんて言われたって、簡単にはその日の予定決められないでしょっ!!」



アイツがそう言うと、隊長三人が顔を見合わせて『確かにそうかも』という顔をする。

だけど、私達四人は戸惑いまくる。あんまりにいきなり過ぎて、ちょっと混乱してるかも。



「てゆうか、外暮らしな僕はともかく、隊舎暮らしなみんなは普段隊舎に缶詰も同じで、こういう機会は滅多にない。
なのにどうしていきなりお知らせ? 全く理解出来ないし。・・・・・・例えばスバルだよ」

「え、私っ!?」

「スバルだったら事前に知っていればギンガさん辺りと待ち合わせ出来るでしょうが。
ギンガさんに前に聞いた話だと、休みを合わせてちょくちょく買い物とかしてるらしいし」



アイツはギンガさんと友達だし、そこは知っていて当然か。うん、納得した。

でも、互いに仕事を持ち、日々忙しく働く身。いきなりはやっぱり無理・・・・・・あ、なるほど。



「僕達の仕事はよっぽどじゃない限りは、『今日休みます』って言っても休めないでしょ?
ギンガさんは絶対休めないよ。てか、僕だって困る。もちろんエリキャロもだよ」

「いえ、僕達はそれほど・・・・・・特に外に友達が居るとかではありませんし」

「海鳴のハラオウン家は?」



二人はアイツにそう言われて、ハッとする。そして、顔を見合わせた。



「エリオとキャロなら、日帰りで海鳴に行って、アルフさんとかに会いに行くという手もあったよ。
事前に知らせてもらって、転送ポートの使用許可が取れればね」



なお、許可なんて最低でも前日までに事前申請しなければ、局の緊急業務でもない限りは取れない。



「同じ理由で僕も日帰り帰郷は無理。・・・・・・ほら、フォワードの大半はいきなり知らされたら出来ることに限りが出てくるじゃないのさ。これ、ぶっちゃけどうなの?」



とりあえず、私達はなのはさん達を見る。アイツも、呆れた視線を向ける。

それで隊長三人は、なんか更に落ち込み始める。



「あの・・・・・・ごめんね。確かにヤスフミの言う通りだよ」

「みんな、いきなりそう言われても、少し困っちゃうのは確かだよね。
うぅ、ごめん。ビックリさせようと思ってそこを考えてなかった」

「そうだよな、言われてみればその通りだよな。お前ら、基本隊舎から出ねぇんだし。
これじゃあ、そういうこと出来ないよな。・・・・・・悪い。アタシまで失念してた」



なのはさん達はもうすっかり反省モード。

いやいや、これはさすがにどうなのっ!? 言ってることに間違いがないのはあれだけどっ!!



「うん、てーかマジに反省しときな? 特にエリキャロに対して申し訳なく思いなさい。
遊びたい盛りなのに、こんなところに日ごろ缶詰なんだし」

「あ、あの・・・・・・みなさん、大丈夫ですから。
お休みくれただけでもう嬉しいですし、遊びにならティアやみんなと行きますし」

「そうですよ。・・・・・・てか、アンタ言い過ぎ」



せっかく休みもらえたのにいきなり文句つけるって間違ってるでしょ。

くれるだけありがたい。うん、ありがたいの。少しくらいはそういうのを分かって欲しいわ。



「何を言うか、どっからどう見ても正論でしょ?」

「まぁ・・・・・・都合を合わせないと中々会えない相手と遊びたいって考えると、そこはね。
でも、きっとアンタにだけはそこを言われたくない。秘密主義の塊のくせに、何様よ」

「蒼凪恭文様だけど、何か問題ある?」

「問題大有りよっ! なにその過剰な自信っ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「恭文って、きっとすごく不器用なんだよ。でも、同じくらいにすごく優しい。
今日、それがやっと分かった。なんだかね、それがすごく嬉しいんだ」

「・・・・・・そっか」



なんというか、どう返事をしていいか困って、こんな言い方をしてしまう。・・・・・・優しいか。

確かにそういう部分はあるかな。普段があんまりに意固地で個人主義で秘密主義過ぎるけど。



「あー、せっかくだから一緒に遊びに行きたかったのにー! いつの間にか姿消しちゃってるんだもんっ!!」

「フェイトさん以外は行き先も知らなかったしね。・・・・・・アイツ、マジで協調性ないわよね。
私やアンタはともかく、エリキャロは話したがってたのに、さっさと居なくなってる」





お休みのことで色々進言したのを見て、エリオとキャロはアイツと休みを一緒に過ごそうとした。

まぁ、コミュニケーション取ろうとしたわけよ。でも、アイツはフェイトさんと少し話してすぐに出たらしい。

通信も端末の電源を切っているのか繋がらない。二人は少し残念そうに、そのまま隊舎を出た。



多分、仕事用の回線なら開いてるだろうけど、さすがにプライベートな用事では使えない。

アイツはどうやら、マジで私達と休みを過ごす気はないらしい。てーか、普通に避けられてる。

なんだろう、ムカつく。普通にこれはムカつく。別にスバルみたいに誘おうなんて考えてなかったけど、ムカつく。



・・・・・・まずいな、私アイツの事ばかり考えてるし。だめだめ、別にそういうのじゃないんだから。





「もう少しだけ」

「ん?」

「本当にもう少しだけ、心を開いてくれるといいよね」





スバルが空を見上げる。私も、釣られるようにして空を見上げた。

なぜだろう、空の青さの中に、アイツの影を見つける。

初夏に近い少し暑い空気の中見る空は、とても青い。



・・・・・・そして、二つの月がその中に浮かんでいた。





「だって私達、理由はそれぞれだけど、同じ場所に居るんだから。
きっと仲良くなれるし、一緒に進んで行けると思うんだ」

「・・・・・・だといいわね。まぁ、アイツは致命的に素直じゃないから、簡単じゃないでしょうけど」

「あははは、そうだね。特に、エリキャロには凄く厳しいしなぁ。バシバシダメ出しもするし」

「あぁ、確かにアイツは二人には厳しいわね。下手すると隊長達以上よ。
で、普通に要求レベルも高いから、それで二人がまたヘコむし」





それから、また歩を進める。進めながら、スバルがどこか楽しそうに話す。

・・・・・・やっぱり、色々と気になるところがあるから厳しくしてるのかな。

普通に嫌っているというのとは違う感じがしてたから、それなら納得が出来る。



まぁ、言ってる事は間違ってはないのよね。



ただ、あんまりに要求レベルが高過ぎて、無茶振りになってるのがアレなだけ。





「あ、でもフェイトさんが少し過保護なところあるみたいだし、ちょうどいいのかも」

「それもそうね。もしかして、だからアイツが厳しくしてバランス取ってるのかも知れないわよ?」

「あ、ありそうありそう。・・・・・・・・・あれ?」





スバルが、前を見ながら固まった。で、何かと思ってその視線の先を見てみる。

・・・・・・噂をすればなんとやらって、本当だと思った。まさかここで遭遇するとは思わなかった。

栗色の髪に黒い瞳。私より小さい男の子は、スッキリしたような顔で目の前を通り過ぎていく。



だからだと思う。普通に・・・・・・スバルが嬉しそうな顔で、上下ジーンズ姿のアイツに声をかけたのは。





「・・・・・・恭文ー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・恭文ー!!」




その声は右の方から。そして、視線を感じる。声は一つだけど、視線は二つ。

・・・・・・なんか聞こえるけど無視。気のせいだ。うん、気のせいなんだ。

僕は何も聞こえなかった。そうだ、僕は何も聞こえなかった。



だから・・・・・・全速力でダッシュして逃げた。





「・・・・・・って、なんで逃げるのー!? こら、待てー!!」

「アンタ、いきなり無視ってありえないでしょうがっ! とっとと止まりなさいっ!!
てーかスバル、アンタ全速力で捕まえてっ! 絶対逃がさないんだからっ!!」

「了解っ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「美味しー! いやぁ、ここのアイスは最高だなー♪」



そりゃあ美味しいだろうさ。人の奢りでそんな12段も重ねたアイスの一つを、一口で食べればさ。

てーか、この女は外でもこの食欲かい。やっぱりギンガさんの妹だし。



「ホントにね」



そして、楽しそうにツインテールもアイスを舐める。上品にペロリと。

うん、これだけ見ると可愛いよね。性格は可愛くないけど。



「うっさい。アンタにだけは性格のことをどうこう言われたくないわ」

「なぜ思考が読み取れるっ!?」





結局、捕まった。捕まってアイス奢らされた。訂正、奢らされている。

ちくしょお、僕の休みが・・・・・・素敵な休みが・・・・・・。

隙を見て逃げ出そう。電王の映画が僕を待ってるんだ。うん、絶対逃げよう。



あぁ、なんで僕こんな運悪いのっ!? 絶対おかしいからこれっ!!





「ね、アイス食べたら三人でゲーセン行こうよ」

「あ、いいわね」



え、僕の素敵な願いを蹂躙する気満々っ!? ふざけんなー! 勝手に数に入れるなボケっ!!



「・・・・・・ね、アンタってゲームする?」

「知るかボケ、いいから僕を早く開放して」



というわけで、アイスを食べた。全部食べた。

早く食べるためにあえて一つしか積まなかった。うん、オーケーだ。



「それじゃあ二人とも、よい休日を」



そのまま立ち上がって、僕はスタスタと二人から離れる。



「だから待ちなさいよっ!!」



だけど、ティアナに手をしっかりと掴まれた。

・・・・・・くそ、反応が早すぎる。普通にアウトだし。



「なにっ!? アイス奢ったんだからもう僕の役割は終わったでしょっ! 後は若い二人で楽しめばいいじゃないのさっ!!」

「そんないかがわしい言い方しないでくれるっ!? 私とスバルはそんなんじゃないわよっ!!
・・・・・・とにかく、せっかくだからアンタも付き合いなさい。こうして偶然出会ったのも何かの縁でしょ」

「そうだよ。というか・・・・・・さっき、ちょっと悲しかったんだよ? 無視されるし、逃げられるし。
あのね、私達みんな、恭文ともっと仲良くなりたいんだ。ティアの言うように、せっかくなんだし」

「嫌だっ! てーか、僕はおつかいの途中よっ!?」



うし、サリさんに感謝だっ! 普通に断る名目が出来たっ!!

サリさんありがとうっ! あなたのことは決して忘れないっ!!



「おつかい?」

「そうだよ。仕事中の友達に頼まれて、買い物ですよ。
だから、二人の休日には付き合えない。分かった?」

≪なお、言い訳ではなくて真面目にです。なんなら、頼んだ人間に今から通信して話してもらうことも出来ますけど?≫



で、二人は顔を見合わせる。そして、少し残念そうな顔をする。

うし、これで話は纏まった。あぁ、これで楽しい休日になる。うん、幸せだ。



「なら、付き合うわよ」



え? ま、待って。朝にフェイトと話した時に想像した光景がありありと思い浮かぶんですけど。



「ごめん、ティアナさん。普通にあなたのおっしゃっている言葉の意味がよく分からないんですが」

「だから、私達もそのアンタのお使いに付き合うって言ってんの」



・・・・・・普通に寒気がするんですけど。というか、やばい。まじめにこの状況はやばい。



「そうだね。お使いがあるなら、それを済ませてから遊ぼうよ。
ほら、それなら問題なしっ! よし、決まりー!!」

「決まってないわボケっ! 僕とアルトだけで行きたいからついて来るなっ!!
なんで自分達が邪魔だってことが分かんないのっ! お願いだからその辺りの事を自覚してっ!?」

「・・・・・・あのね、恭文。もうそんな言い方しなくても、もう大丈夫だよ?
私もティアも、もう分かった。ちゃんと分かってるんだから」

「へ?」

「恭文が、私達のお休みの邪魔をしたくないと思ってくれてるのは、ちゃーんと分かってるから」



きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! すっごい笑顔で言って来てるー!! てーか、ティアナも『素直じゃないわね』って顔してるのはどうしてっ!?

ちくしょお、横馬のやつマジで余計なことしてくれやがってー! こういう認識持たれてたら僕の仕事が出来ないでしょっ!? アイツ、絶対僕のこと嫌いだろっ!!



「でもね、私達は恭文と一緒に、お休みを過ごしたいんだ。だって、同じ部隊の仲間だもん。
今は友達でもなんでもないかも知れないけど、少しずつでも、これから仲良くなっていきたいんだ」

「てゆうか、別に仲良くなりたくないワケじゃないって言ったの、アンタでしょ?」



・・・・・・確かに、そうだ。ティアナの言う通りだ。てゆうか、真面目にあそこでぶった斬るべきだった。

あぁもう、我ながらミスジャッジだ。嫌われるくらいでいいって言いながら、ちゃんとそれが出来てないし。



「だったらゴチャゴチャ言わない。私達は、とにかくお使いに付き合う。で、それからアンタと遊ぶ。これはもう決定なの」

「あぁもう、分かったよっ! 分かりましたっ!! ・・・・・・ただし、今から行く場所で騒いだり、他の人やなにより誰より僕に迷惑をかけないように。いい?」

「うん、分かってるよ。というか、ありがとね」










そして、三人でアイスを食べてからりゅうのあなに向かった。





そこでのことは・・・・・・ごめん、全てを察して? ぷりぃず。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・すごかった。





てゆうか、普通にありえない。マジでありえない。





私でも知ってるようなアニメキャラクターがあんなことされてる漫画やゲームが沢山で・・・・・・。










「・・・・・・もうあの店行けない。つーかもうお前らくたばれよ。もっと言うとスバル、マジでくたばれ。
僕最初に言ったよね? 騒いで他の人や、誰より何より僕に絶対迷惑をかけるなって」

「ごめん、普通ならツッコむとこなんだけど、私は何も言えないわ。
アンタ、店中の人間がどんだけ厳しい視線で私達のこと見てたか分かる?」

≪もう異物か害虫かウィルスかというレベルでしたね。これ、間違いなく出入り禁止ものでしょう≫

「・・・・・・ごめん」





アイツの友達から頼まれたという買い物を終えて、私達は全員こう・・・・・・テンションが変だった。

スバルはスバルで顔赤くしてるし、私はなんか頭痛いし、アイツはすっごいヘコんでるし。

とにかく、買い物は無事に・・・・・・じゃないわね。私はまぁ、ギリギリで抑えたの。うん、かなりギリギリ。



だけど、スバルがひどかった。普通に叫ぶしアイツに色々聞くし客や店員に変な目で見られるし・・・・・・。



アイツが私達を連れて来たくなかった理由が、ようやく理解出来た。これを想像してたんだ。





「で、でも・・・・・・なんであんなもの大量に買うのっ!? 絶対おかしいよっ!!」

「おかしいのはおのれの思考じゃボケっ! 世の中には需要と供給ってのが有って、どんなものでも需要があるから供給されるんだよっ!!」





まぁ、そこは分かる。コイツが買ったのとかも、需要があるから作られて、売れるわけだもの。

スバルが表紙とか裏とか中身を見て『こんなの買うなんて信じられないー!!』なんて叫んだ物も、その理屈には当てはまる。

でもさ、アレはないって。なによ、あの・・・・・・普通にエロくても楽しく読めそうなのもあったのよ。エロ抜きで面白そうなのもあったのよ。



だけど、女をバカにしてるとしか思えないような代物も数々あった。

あれは正直、作った人間の神経を疑うんですけど。

絶対あんな風にはならないって。もう賭けてもいいから。なお、私は無理。



なんというか、同人・・・・・・だっけ? よく分からないわ。





≪同人関係のエロは、基本的にあんな感じですよ。さすがに商業物であそこまでやるのはないですけど≫

「というか恭文、そういう趣味だった・・・・・・あの、ごめん。私が悪かったと思うから、両手でアイアンクローはやめて?
あの、痛いっ! すっごい痛いっ!! 頭割れちゃうよっ! お願いだから本当にやめてー!!」

「いいじゃん、割るんだから」

「あぁもう、落ち着きなさいよっ! そうよね、アレは友達に頼まれたものなのよねっ!!
私もスバルもちゃんと分かってるから、そのマジな目はやめてっ!? 見てるだけで寒気がするのよっ!!」



とにかく、アイツをなんとか止めて落ち着かせる。スバルは、恐怖のためか若干怯えた目でアイツを見てる。

ただ、今回は私は何も言えない。だって、アルトアイゼンの言うように、普通に出入り禁止なレベルだと思うから。



「と、とにかくゲーセンよ。徹底的に遊んで、嫌なことはスッキリ忘れちゃいましょ」

「・・・・・・スバルをここでぶん殴る方がスッキリすると思うんだけど」

「あの、私が悪かったと思うからそれはやめてー! もうあんなこと絶対しないからっ!!」










・・・・・・どうしよう、今回はガチにスバルが悪いから私は何もフォロー出来ないわ。





とにかく、相当不満顔なアイツを引っ張って休日を楽しむことにした。





少しだけ・・・・・・本当に少しだけでも、仲良く出来るといいなと思いつつ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ということで、うきうきと楽しくスキップをして劇場へ進み出した。





もう、僕を邪魔するものは存在しない。つーか、してたら原子レベルで叩き潰す♪










「そう言いながらどこ行こうとしてるっ!? てーか、普通に私達と会った事そのものを無しにしようってどういうことよっ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・どっかのバカのせいでお店一軒から出入り禁止を食らったからだけど、なにか?
てーか、現実逃避くらいさせてっ!? もう僕はこれからどこで同人関係買えばいいのか分からないんだよっ!!」

「・・・・・・ごめん」





まぁ、もういいだろう。豆芝も反省という言葉を知っているようだし、もうやめておこう。

どうせもう離れられないんだ。どうせもう僕は夜まで二人とお別れ出来ないんだ。

なので、豆芝の頭に手をやって、少し乱暴に撫でて、首都の歩道を歩く。



豆芝がなんか嬉しそうな顔するけど、絶対気のせいだ。





「てか、アンタゲーム上手いわね。普通に10人抜きとかだし」



・・・・・・あぁ、さっきの格闘ゲームか。別にアレくらい問題ないのに。

ストレス解消のために多少加減なくハメたりはしただけだもの。



「なのはの方が強い。結局11人目でやられちゃったし。
なのはだったら普通に20人くらいは出来たでしょ」

「そうなの?」

「うん。なのはとはやて、師匠は相当ゲーマーよ? 僕より上」



普通にあの方々は仕事してるのに、なんで僕より練度が高いんだろう。

おかしい、絶対おかしい。実は仕事サボりまくってるんじゃなかろうか。



「そうなんだ。・・・・・・なんか、ちょっと意外ね。ヴィータ副隊長とか、そういうのしなさそうなのに」

「そりゃあそうでしょ、二人は仕事場や訓練での師匠やみんなしか知らないんだから」

「プライベートはまたアレとは違うか。まぁ、それなら納得出来るかな」





少しだけ嬉しそうに、興味深そうにスバルもティアナも笑う。で、僕を見る。

そして、視線が言ってる。もっとその辺りの話を聞きたいと言ってる。

なので、ため息を吐いて少しだけ話すことにした。まぁ、差し障りの無い程度に。



なお、皆の文句を言わせない。人の仕事の邪魔やら、KYな行動の数々を僕にかましてくれてんだから。

で、ポツリポツリとでも話をしようと思った。まぁアレだよ、楽しい休日にここからしていこうと考えた。

だけど、そうはいかないらしい。どうやら、僕はマジで運が悪いようだ。うん、知ってた。



知ってたからこそ、少しだけ抵抗をしたくなる。運が悪いから関わるなんて、そんな素直に受け入れたりなんてしたくない。





≪マスター、全体通信です≫

「・・・・・・六課から?」

≪それ以外にありますか?≫





ここで説明しよう。全体通信とは、部隊用の緊急のオンライン回線のことである。



ようするに、部隊の人員全体に緊急で連絡したい場合に使う、通信回線ってことだね。



つまり、それが来たってことは・・・・・・。





「無視しようか」

≪そうですね≫

「何ナチュラルに部隊の緊急通信無視しようとしてんのよっ! アンタ達マジでバカでしょっ!!」



真横から声が聞こえた。それにビックリしつつそちらを見ると・・・・・・ツンデレが居た。

なんか真剣な顔でデバイスとにらめっこしてる犬も隣に居た。



「ティアナ、なぜここにっ!? てーか、どうして僕の後をつけてるっ!!」

「つけてないわよっ! 普通にさっきまでゲーセンで遊んでたり、一緒に歩きながら話してたでしょっ!!
・・・・・・とにかく、急ぐわよ。休みは返上」

「そっか、大変だね。まぁ頑張って?」










・・・・・・当然のように、こんなことを言ってなんとかなるわけがなかった。





そう、楽しい楽しい休日は、ここからが本番となったのであった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ねぇ、なんで僕こんな薄暗い路地に居るの? おかしくないかな。応援したじゃん、応援したじゃないのさ」



だったらいいじゃん。僕が居なくても世界は回るよ。太陽は昇り、そして沈み、風は吹き抜けるんだよ。

ほら、僕がここに居なくても問題ない。というわけで、さようなら。



「だから帰るな」



そう言って、ティアナが僕の肩を掴む。結構力いっぱいに。



「あと、疑問があるようだから答えましょうか。それはね、アンタが六課の前線メンバーに登録されてるからよ。応援だけで済ませられるわけがないでしょ」

「知るかボケっ! お前、緊急の仕事と僕の休日とどっちが大事だと思ってんのっ!?
つーかくたばれよっ! もうギャグ的にすぐ復活する感じでおのれは今すぐくたばれっ!!」

「なに鉄火場に突入する前に不吉なキレ方してるっ!? つーか、アンタマジでバカでしょっ!
そしてアンタがくたばれっ!!」



・・・・・・りゅうのあなの紙袋を両手に、僕はとても頭が痛かった。

どうやら、今日はマジで最悪の部類に入るらしい。いくらなんでもおかしい。



「ティアナ、最低だね。人に『くたばれ』なんて・・・・・・アレだよアレ、もうアレがアレしちゃってアレになっちゃうよ?」

「ワケ分かんないわよそれっ! てか、最初に言い出したのアンタよねっ!?」

「僕はもうアレがアレしちゃってアレになっちゃってるからいいんだよ」

「よくないわよっ! てか、アレって何っ!?」



とりあえずあれだ、僕の休みがその根源から無くなってしまった原因は分かった。

今地面に寝かされて、隊舎から飛び出てきたシャマルさんの診察を受けている女の子が原因だというのはよく分かった。



「シャマルさん、すみませんけどその子の目を今すぐ覚まさせてくれませんか?
ちょっと2〜3時間ほどキツく説教したいんですよ。主に、空気を読むのがいかに大事かってことについて」

「あなたは一体なにをするつもりっ!? というか、それは無理よっ!!」

「この子の体調的にですか? なお、人道的にだって言うなら遠慮なく無視しますけど」

「体調的によ。・・・・・・相当衰弱してる」





うん、あれだね。男だったら見捨ててるとこだけど、6歳くらいの幼女なら仕方ない。

子どもには優しくしないといけないんだから(エリキャロ除く)。

なお、僕は二人に対しては子ども扱いは基本せずに厳しくいくと決めているので、あしからず。



とにかく、現状を整理。この女の子は市街全域に張り巡らされてる地下水路(要するに下水道)の中からここに出てきたらしい。

エリオとキャロがそれを発見して、この騒ぎである。全く、はた迷惑もいいところだ。

で、普通ならともかく・・・・・・この子、足首に繋がれた鎖に結び付ける形で、レリックとそれが入ったケースを持ってた。



そして、鎖の長さから判断して、あと一つある。水路の中にケースごと落としたのではないかというのが、みんなの判断。

この子が発見された時に持っていたケースとその中のレリックは、とっくにキャロが封印処理を施してる。

これから、シャマルさんが付き添う形で、ヴァイスさんが操縦するヘリで医療施設に搬送するとか。



で、僕とティアナ達フォワード陣は、地下水路にあるレリックの捜索である。

あと、お客さんのお出迎え。賊は、本当に誉めたくなるくらいに行動が素早い。

地下水路にガジェットが出てきてる。あと、海上のほうにも大量出現してるらしい。





「・・・・・・てか僕、空戦魔導師なのに」

≪そうですよ、そこはいいんですか?≫



なのはとフェイトは、その海上のガジェット掃除。

で、一緒に来てくれたリインは・・・・・・。



「フェイト、リイン借りていいかな」





なお、なのはも居る。なのはは現在、例の女の子を抱きかかえている。

というか、さっき僕に凄まじく謝り倒して来てた。

まぁ、当然無視して『地獄へ落ちろ』と言ってやったけど。



ここは当然として欲しい。さすがにアレはムカついたのだ。





「うん、それはヴィータ副隊長と八神部隊長から許可が出てるから大丈夫。
・・・・・・何か嫌な予感、してるの?」

「そういうわけじゃない。ただ、念には念を入れたいなと」



で、108に教導のために日帰り出向していた師匠は別ポイントで、同じく海上のお掃除。

でも、僕はお空が飛べるのに地下水路ですよ。空戦魔導師ってアドバンテージ、使えないってどういうことさ。



「ヤスフミは地上戦・・・・・・特に屋内戦闘の方が得意だもの。むしろこっちに居て欲しい。
空の方も、私となのはが居るから大丈夫。あと、ヴィータも来てくれるから」

「そっちは心配してない。・・・・・・シャマルさんの方だよ」



ヘリが攻め込まれたら、あっという間に落とされる。シャマルさんだけでなんとかなると思えないし。



「そこもなのはと協力してなんとかしていくよ。ヤスフミはみんなの方をお願い。
あと・・・・・・ちゃんと仲良くしなきゃだめだよ。さっきもティアナのこと、からかったりして」

「あれくらいは言いたいよ。てゆうか・・・・・・僕がどういう目にあったかを知っている上で話してる?」

「なにかあったの?」

「とりあえず、フェイトに話した未来予想図が現実になったとだけ言っておく。あははは、出入り禁止食らったよ」



そこまで言うと、フェイトには伝わったらしい。何もいわずに僕の頭を、そっと撫でてくれた。

それになんか涙が出てくる。・・・・・・うぅ、なんでこんな目に? やばい、今日はマジで最悪の部類かも。



「とにかく・・・・・・みんなの事お願い。その、出入り禁止はショックかも知れないけど」

「分かってるよ。目の前で死なれても迷惑だし、ちゃんとやる」



まぁ、そんな感じで答えた。フェイトは、苦笑してた。・・・・・・地下水路か、嫌だなぁ。

下水道なんてヒーローが入るところじゃないって。絶対違うって。



「あ、それと」



フェイトが両手を差し出した。・・・・・・なに、それ?



「荷物、邪魔だろうから私が預かっておくよ。ヘリに置いておけば、問題ないし」

「いや、僕が持ってる」



問題は大有りだ。ヘリは特に問題が大有りだ。絶対にそれは避けたい。

なので、僕は両手でその荷物を守る体勢を取るのだ。



「てーかだめ」

「あ、あの・・・・・・大丈夫だよ? 中身を見たりなんてしないから」

「分かってる。フェイトがそんなことするとは思えないし。・・・・・・それでも、だめ」





そう、ダメだ。この中にはあんなキャラが触手で縛られてあんなことされたり、こんなキャラがこんなシチュでこんなことをされちゃうなんて言うのもある。

これを万が一にもシャマルさんとか・・・・・・もっと言うと隊舎に居るであろうはやてとシャーリーを筆頭としたメンツに見られたらマズイ。

死ねる。僕はリアルに死ねる。リアルに地獄行きの片道切符を手にするも同然なのだ。



もしかしたら人格を疑われるかも知れない。そして、友達に頼まれたなんて言っても、信じてはくれないだろう。



・・・・・・絶対に手元から離してはいけない。離した瞬間に僕の大事な何かが砕け散る。





「アルトに収納しておくから、大丈夫だよ」

「・・・・・・ならいいんだけど」

「フェイト、ありがと。気持ちだけ受け取っておくわ。
でも、これは・・・・・・これだけは預けられないの。お願い、分かって」



もっと言うと中身について分かって欲しい。色々察して欲しいの。・・・・・・お願い。



「あの、大丈夫だから。うん、ちゃんと分かったよ。とにかく、気をつけてね」

「うん」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・アイツ、あんな本持ち込んで仕事する気? どんだけ自由気ままよ。

てゆうか、フェイトさんとまた仲良さげに・・・・・・あ、仲良いのは当然か。だって家族なんだし。

とにかく、現状を頭で整理。やることを一つ一つ順序立てていく。





色々と不安要素があるけど、よく考えたら現場に出る以上それはいつものことなんだ。問題、ないわよね。










「それじゃあみんな、お休みは堪能したわね?
ここからはお仕事モードに切り替えて、きっちりしっかり解決っ! ・・・・・・行くわよっ!!」

『おうっ!!』





アイツはその声の中に加わってない。とっととセットアップして、自分の装備を確認し始めてた。

そして、一旦目を閉じ、数秒後に開く。そこには、普段のアイツの姿は無かった。

普段とも、模擬戦の時とも違う、本当に戦闘者としての顔。



表情だけは同じだけど、空気が変わったのを、私は感じた。





「アルト、リイン。行くよっ! つーか、徹底的に暴れてやるっ!!」

「はいですっ!!」

≪アンコール上映が見られなかった上に、りゅうのあなに出入り禁止を食らった憂さは、しっかり晴らしますか≫

「・・・・・・そんなことがあったですか。あぁ、泣かないでください。よしよしですー」










その空気は、鋭く、冷たく、そして頑なな刃にも似ていて・・・・・・私達を寄せ付けないような物に見えた。

それに少し寂しさを感じつつも、私もセットアップ。私達六人と一匹は、地下水路へ突入した。

やっぱり私達、アイツにまだ『味方』として認識、されてないのかな。





なんだろう、それがとても悔しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・薄暗い。ちょっとじめじめ。そして寒い。匂い・・・・・・あ、それほどでもないな」

≪なんだかんだで自動整備システムがしっかりとしていますから、そのせいでしょう≫

「納得した。でも、やっぱり下水道を舞台に戦うなんて主人公やヒーローのやることじゃないってー」

「リインも同意見ですー。いくらなんでもこれはありえないのですー」





地下水路に突入し、五人で通路を走る(リインは飛行)。通路の真ん中を下水が流れ、僕達はその両端にある足場を全力疾走。

・・・・・・ボヤきつつも、シチュの環境を身体に叩き込む。下水道は閉鎖空間。

だけど、人の手が入り続けてるから、どこかの洞窟の中などとはまた違う。



温度、湿度、空気の流れを感じ取り、嗅覚や聴覚と言った五感はどこまで働かせられるかなど、神経を研ぎ澄まし確認していく。

嗅覚・・・・・・ちょっと利き辛いか。そんな犬レベルで出来るわけじゃないからここはいい。

聴覚・・・・・・少し微妙だな。ここはまだいいけど、音が思いっきり反響する所だと、察知はともかく正確な位置の把握は難しい。



空気の流れやその他もろもろ・・・・・・うん、大丈夫。夜の冷たい空気に近いものがある。これなら経験でいける。

使える魔法・・・・・・砲撃は少なくとも通路内ここでは当然アウト。いくらなんでも狭過ぎる。

クレイモアも同じくだ。一人ならともかく、誤射の危険性が高い。つまり、ピンポイントで誤射しないように立ち回る必要がある。





「シグナムさんは聖王教会から直接移動。フェイト達と師匠は海上のガジェット掃除。
シャマルさんはヘリ・・・・・・やっぱ僕もヘリに乗るべきだったかな」

「アンタ、横でごちゃごちゃうるさい。てか、独り言多過ぎよ」

「大丈夫、おのれの『パンツめくれ』に比べたら全然うるさくない」

「なんですってっ!? てか、そんなこと言ってないわよっ!!」



なんて言ってるので、そのまま飛び込む。踏み込んで40メートル近くある距離を一気に縮める。



「フリジットダガー!!」





僕の横をすり抜けるように飛んでいくのは、一本の氷の短剣。それの着弾地点は、一つの曲がり角。

そして、それからすぐに僕もそこに足をつける。視線を向けると、曲がり角の先におにぎりがうじゃうじゃ。

そこから出てこようとした、先頭のおにぎりを抜き打ちで真一文字に斬る。



おにぎり・・・・・・ガジェットは真っ二つになるけど、気にせずに上に 跳ぶ。

跳んで、襲い来る熱光線を避ける。そのまま着地して、一体を唐竹割りに斬る。

そこからまた跳ぶ。通路の壁を蹴って、残り四体の背後に一気に回りこむ。



着地したら・・・・・・前に踏み込む。袈裟、逆袈裟と刃を交互に打ち込み、それらを真っ二つにする。



そして、爆発音が連鎖的に響く。・・・・・・うし、絶好調。いい感じだわ。で、通路に出てみんなと合流。





「こらナハト01! てゆうか、リイン曹長もっ!!」



なお、ナハト01は僕のコールサインです。はやてに勝手に決められた。



「なに二人でいきなり戦闘行動っ!? 隊列守りなさいっ!!」

「そうですよっ! 何かあったらどうするんですかっ!!」

「問題ない。てか、リインとでやった方が数倍早い。それに・・・・・・」



全員が僕を疑問顔で見る。なので、言い切ってやる。



「そんなことしたら、僕の八つ当たりの対象が減るだろうがっ!!
あの子に八つ当たり出来ない以上、ガジェットにするしかないでしょっ!?」

「下水道で暴れるなんて、リインの趣味じゃないのですっ!!
だから、これで憂さを晴らさないと楽しくないのですよっ!?」

「アンタバカ過ぎでしょっ! そんなことのために飛び出したのっ!?
そしてリイン曹長はキャラ違いませんかっ!? どうしてそうなるんですかっ!!」



なお、今回の現場リーダーはティアナ。これも勉強だと言って、リインがティアナに任せちゃったのだ。

・・・・・・空曹長すごいよ。普通にティアナが素直に敬礼したし。



「問題ありません。てゆうか、不意打ちしそうなのはリイン達が潰していくので、みんなは残りをお願いするですよ」

「そういうこと。んじゃ、もっとぶっ飛ばしますか。
ストレス解消のために・・・・・・邪魔する奴は全員地獄行きじゃボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「だから落ち着きなさいよっ! 普通に怖いからっ!!」





とにかく、僕とリインはそのまま前方へ進行。みんなも後からついて来る。トップを走りながら、意識を集中させる。

・・・・・・空調のせいで空気の流れとか、そういう部分で察知はちょっと難しい。

でも、嫌な感じが前方からたっぷりする。それは、今まで培ってきた戦闘者としての感覚。



どうやら待ち伏せされてるらしい。こうなると、考えなきゃいけないことがある。





≪レリック、確保されてるかも知れませんね≫

「もしくは、本隊が向かって確保しようとしてるですよ」





そして、また踏み込む。前方には、ガジェットの群れ。おにぎり型がこちらの行く手を阻もうとわらわらと出て来る。

踏み込み、刃を振るい、ガジェット達を真っ二つにしていく。なお、当然魔力は無し。

銀色の刃が閃光となり、意識なき悪意を次々と斬り裂く。薄暗い通路の中で、アルトの刃が鈍く光る。



リインのフリジットダガーが装甲を貫く。そうして動きを止めたところを僕がアルトで仕留める。それから、左に飛ぶ。

すぐ真横で、僕に迫っていたガジェット3体が凍りつく。というか、足元に魔法陣が浮かんでいた。でも、大丈夫。

リインがどのタイミングでどういう攻撃をするのか、手に取るようにわかる。多分、リインも同じ。



それがとても心地良い。ほんの1分やそこらで、18体ほど居たガジェットは苦も無く掃除出来た。





「リイン、魔力は大丈夫?」

「問題ありません。これでも温存してるくらいですよ」

「ならよかった。んじゃ、先急ぐよ」

「はいですっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あ、あははは・・・・・・。リイン曹長も恭文も、なんかすごいなぁ」

「恭文さん、魔力使ってませんよね? それでガジェットを両断なんて」





水路を走りながら・・・・・・てゆうか、暴走しまくりな二人の後ろを追いかけながら呆れるやら関心するやら。

リイン曹長があんなアグレッシブに攻めるタイプだとは思わなかった。小さいのに、ガンガン前へ行く。

てゆうか、普通にどれもこれも一歩間違ったらミスショットレベルじゃないのよ。なんであぁなるわけ?



そこまで考えて、分かった。あの二人、互いに信頼し合って、繋がりが深いんだと。私やスバルなんて、きっと足元にも及ばない。

だから、リイン曹長はスレスレに攻撃を撃ち込める。だからアイツは、その攻撃を避けた上で追撃をかませる。

だから、二人とも楽しんでいるようにさえ見える。この状況で、遠慮なく戦える。



アイツが、仲間だと、信頼出来ると思った相手と戦うと、こんなに強いんだと言うのを、私達は見せ付けられている。

それが、少し苦しい。思い出すのはビックリするばかり、戸惑うばかりの模擬戦。

一緒にやっていても、アイツは常に一人な気がしてた。・・・・・・マジでムカつく。一体なんなのよ、アイツ。



色々話さなきゃいけないとか思っても、てんでダメだし。



なにより私・・・・・・どうしてこんなにアイツのこと気にしてるんだろ。





『・・・・・・実は、先ほどある事故の現場検証をしていました』

『事故?』

『はい。事故自体は食料品を載せたトラックが横転して・・・・・・というものでした。
ただ、奇妙なんです。いきなり何かに襲われたと運転手が証言していて』





前方のモニターに映るのは、ギンガさんの顔。・・・・・・そう、スバルのお姉さんのギンガさん。



なんでも、今回の一件に関係ありな案件に関わったらしくて、捜査協力を申し出てきた。



現在、ギンガさんも地下水路を進行中。もちろん、私達と合流するために。





『しかもそこで、こんなものを見つけたんです』



そのギンガさんの隣に別画面が開く。そこに映るのは、生体ポッド。

簡単に言えば、生命体を運ぶためのもの。・・・・・・そのまんまね。



『サイズとしては、5〜6歳くらいの子どもが入るもので、これが落ちていた現場にはガジェットの残骸がありました』



・・・・・・はぁっ!? ちょっと待ってっ! 食料品を積んでいたトラックが何かに襲われて・・・・・・ってとこは、まぁ分かるわよっ!!

でも、なんでそこに生体ポッドやガジェットの残骸っ!? おかしいでしょ、それっ!!



『そして、私は最近起きた事件で、これと非常によく似た物を見ています。・・・・・・恐らくですが』

「ギンガさんそこまでっ!!」



突然声が上がった。出てきたガジェットをアルトアイゼンで一刀両断しながらも、前進するアイツの声だった。

私達は何事かと思ってアイツを見る。たぶん、画面の中のギンガさんも同じ。ビックリした顔してるもの。



『な、なぎ君っ!? どうしたの突然っ!!』

「どうしたもこうしたもじゃない。・・・・・・分かんないの? この通信、シャマルさんも聞いてる」



画面の中のギンガさんが、ハッとした顔になった。・・・・・・あぁ、そういうことか。

シャマルさんは今、あの子と一緒に居る。5〜6歳くらいの女の子であるあの子と。



『そやな。シャマル、画面は閉じといてくれんか?』



全体通信のためのチャンネルを使ってるから、当然、部隊員であるシャマルさんが聞いていないわけがない。

もし、私達みたいに画面を開いた状態で聞いてるなら・・・・・・その子にも聞こえる。



『はい、分かりました』



そして数瞬後、会話は再開された。



『でなギンガ、偶然にもうち、全く同じもんを見てるんよ。・・・・・・人造魔導師計画の、素体培養器』

『はい。・・・・・・問題の子は恐らく人造魔導師の素体として、生み出されたのではないでしょうか?』





納得出来た。どうしてアイツがいきなりギンガさんの話に割り込んで来たのか。

万が一にもあの子が目を覚ましていて・・・・・・狸寝入りでも、目が覚めた直後でもなんでもいい。

とにかく、その場合いきなりこんな話をされるのがよくないとか考えたんだ。



なんて言うか、よく分からない。やっぱりアイツ、変な奴だ。うん、そこは間違いないな。





「あの、人造魔導師って・・・・・・」



キャロが走りながら、疑問顔で聞いてきた。どうやら、マジで分からないらしい。

・・・・・・エリオの様子がおかしいけど、今は気にしない。



「クローン技術とかを使って、人工的に生み出された子どもに、投薬や機械部品を埋め込んだりするの。
そうして、後天的に強い魔力を持たせる技術を、人造魔導師って言うんだ」



私が説明する前に、スバルが話し出した。どこか言葉に苦いものを感じるのは・・・・・・あぁ、分かってる。

もう知ってるもの。だから、なに考えてるかくらいは分かるわよ。



「ただね、今の技術だとどうやっても無理が生じるし、コストもかかる。
普通は頭のイカレた連中しか手を出さないような行為なんだけど・・・・・・」

「でも、そんな子がどうしてレリックを持ってたりしてたんでしょう」

「さぁね。まぁ、そこはいいでしょ。とりあえず、私達は私達の仕事をするわよ」

『了解っ!!』










で、アイツとリイン曹長は遠慮なく暴れてる。・・・・・・つーか、普通に空気を読んで欲しい。





まぁいい。とにかく私達も、立ちはだかるガジェット達へと踏み込んだ。






















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕達の行く手を阻み、立ちはだかるのは鉄機。どう考えてもお邪魔虫。なので、疲れない程度に叩き潰す。





で、当然のように僕達だけで対処はしていない。一番手で突っ込んだけど、さっきよりも勢いを落としてる。










「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」





エリオが飛び込み槍を振るう。スバルがナックルを使いガジェットを殴り飛ばす。

それだけじゃなく、ティアナも射撃でガジェットを撃ち抜く。

まぁ、隊列を守れと言われたし、体力の温存も必要なので。



で、オープンにしている全体通信に耳を傾けながらもアルトを打ち込み、ガジェットを一掃する。





「・・・・・・なんだか、空も大変なことになってるみたいね」

「そうですね」





海上のガジェットはフェイト達で一掃された。で、当然のように増援。だけど、それが問題だった。

幻影と実機の混合編隊。それも師団かって言うくらいに大量。それにより、フェイト達はそれらの対処で足を止められてしまっている。

視覚でも、レーダーでも本物にしか見えない幻影を、大量に混ぜて・・・・・・こうなってくると、どうなる?



警戒を緩めず、アルトの刃を振ってガジェットのボディの礫を払う。払いながら、考える。





≪居ますね、ガジェット以外の戦力が。そして、それはここかヘリの方に来てる≫

「ぶっちゃけ、海上のは捨て駒。オーバーSで天才様なフェイト達を止めるための生贄。
で、そんな集団を止めりゃあ、後はツインテールとガキ二人とショートカットだけ。それならなんとかなると」

「アンタはなんでそこを髪型で話しちゃうのっ!?」





何回か出動はしてるわけだから、フォワードチームが基本陸戦限定だって言うのはバレてると見ていい。

海上なら、当然のように空戦魔導師であるなのは達が出るしかない。・・・・・・戦力、やっぱり意図的に分断されてる?

僕がなのはとやりあった日の夜に出てきたガジェットが、単なる機体調整のテストに留まらず、そのあたりの最終確認の意味もあったとしたら?



つまり、海上で出せば出てくるのは隊長陣だけかどうかを見極めた。

例えスバル達が出てきても、その空戦能力のほどを確認出来る。損はないというわけだ。

この辺り、ガジェットの対処やレリックが六課専任になってるのが大きい。



あぁもう、だから手は限界ギリギリまで隠しとけって言ってるのに。





「だとしたら、許せないよね。いくらなんでも私達のことバカにし過ぎだよ」

「それが間違いだったって、教えてあげなくちゃいけませんね」

「そうだよ、がんばらなきゃ」





普通になんか学芸会の決意表明みたいなノリで『がんばろー!!』って言ってる三人と一匹。

なお、一匹は鳴き声。・・・・・・ごめん、リアルにアレはついてけない。

なんて考えたのが悪かったのだろう。僕達のすぐ近くの通路の壁が、爆発した。



で、当然のようにそっちを見る。・・・・・・やっと来たのか、遅いって。





「ごめんみんな、お待たせ」





爆煙の中から現れたのは、青くて長い髪を靡かせた一人の女性。

紫に近い色合いのジャケットに、金属製の胸当て。首からネクタイなど下げたりして、どこか制服チックな服装。

そこに白銀に近い色合いのナックルを左腕に、ローラーブーツを両足に装着している女性は・・・・・・僕の、友達。



その人は、僕達を見ながら微笑むのである。





「ギンガさんっ!!」

「ギン姉っ!!」



そう、ギンガ・ナカジマ・・・・・・スバルのお姉さんだ。



「二人とも久しぶり。・・・・・・まぁ、挨拶は後かな。急いで一緒にケースを探しましょう?
ここまでのガジェットは、ほとんど叩いてきたと思うから」

「うんっ!!」

「はいっ!!」





エリオとキャロの二人がギンガさんをジッと見る。



それに対して、ギンガさんはニッコリと安心させるように笑いかける。二人は、敬礼で答えた。



なんて言うか、相変わらず初対面の人には硬い子達。ま、いいか。





「リイン曹長も、お久しぶり・・・・・・じゃないですね」

「はい。ちょくちょく会ってますから。ギンガ、ブリッツキャリバーの調子はどうですか?」

「はい、もう絶好調です」





なんでも、ギンガさんは六課からデバイスを支給されたとか。それが、今両足に装着してるブリッツキャリバー。

ブリッツキャリバーは、スバルのマッハキャリバーと同型機で、妹分。そして、色違い。

マッハキャリバーが青色メインなのに対し、ブリッツキャリバーは白と紫がメインカラー。



この辺り、ギンガさんのイメージに合わせていると思う。ちょっと大人っぽい感じがマルである。





「それで・・・・・・なぎ君は挨拶無しなのかな?」



僕の方に視線を向ける。ちょっといじけた様に膨れるのは、ポーズだとすぐに分かった。

なので、僕も軽くニコニコしながら返すことにする。



「・・・・・・あー、ごめんね。ギンガさん、お久しぶり。
いやさ、あんまりに素敵な登場の仕方だったから、惚れ直してたの」



・・・・・・・・・・・・あの、ギンガさん。なんで顔赤らめるの? 軽い社交辞令だったのに。



「あ、あの・・・・・・その、ありがと」

≪すみませんね、ギンガさん。この人自覚無いんですよ。まぁ、お久しぶりです≫

「うん、お久しぶり。あと・・・・・・自覚が無いのは分かってたから」

≪そうですか、それはよかった≫










とにもかくにも、ギンガさんを加えて七人PT(+一匹)となった僕達は、地下水路を進む。





ガジェットを投げて斬って撃って燃やして殴ってやっぱり投げて・・・・・・・そうして、ようやくレリックの推定位置近辺まで来た。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・なぎ君、どうしちゃったの?」





たどり着いたのは、今までのような通路ではなく、大きな広間。

世の喧騒の下で、こんなに静かで、広々とした空間があると思うと、ちょっと感動する。

ここが目的地。てか、ここまでだいぶ距離があったけど・・・・・・。



あの小さな子が、鎖に繋がれたケースを引きずった上で来るなんて、ちょっと信じられない。

もう、ここは市街から外れてる。ここは位置的には廃棄都市部の真下だ。

それだけの距離を、エリオ達が発見した位置まで歩いて、そして出て来た。やっぱり考え辛い。



・・・・・・あぁ、もういいや。今気にしなきゃいけないことはそこじゃない。僕に声をかけてきたギンガさんだ。





「なにが?」

「さっきから一言も喋ってない。それに、スバル達とも距離が妙にあるし」

「距離は元から。つーか、鉄火場でグダグダ馴れ合いするつもりない」



ギンガさんに視線を向けずに言う。少しだけ、ため息のようなものが漏れたように聞こえた。



「出来れば、そういうのはやめて欲しいな。あの子スバル、なぎ君と仲良くなりたいって常日頃思ってるんだから」

「そう。でも、僕は今のとこそんなつもりはさらさらない」



今気にしなきゃいけないことは、そこじゃない。・・・・・・そう、そこじゃないんだ。

おかしい、さっきからおかしい。



「なぎ君、私怒るよ? いくらなんでもそんな言い方」

「ギンガさん」

「なにかな」

「少し黙ってて」



なんか、嫌な予感がする。それも、最大級に悪い感覚。



「恭文さん、何か気になってるですか?」

「・・・・・・かなり」



・・・・・・なんだろう、ここに近づく毎にその予感が強まる。不安だけが強くなっていく。

そして、事態が動いた。キャロが両手にあの見覚えのあるケースを持って、声を上げた。



「ありましたー!!」



その瞬間だった。・・・・・・音が響く。何かを叩くような音。そして、その音がする間隔が、どんどん短くなる。



「・・・・・・なによ、この音」

「さ、さぁ・・・・・・」



音が途切れる。その瞬間、キャロに向かって飛び込む風があった。

それは空中で止まり、四つのエネルギー弾を出す。



「キャロっ! 避けてっ!!」



エリオが声を上げる。どうやら、気づいたらしい。



「え?」



キャロに迫る影があることを。そして、それは悪意をしっかりと持っていることを。だけど、キャロは動けない。

一瞬の事で身体が動かずに、その影をただ見てるだけだった。だから僕は・・・・・・。



「・・・・・・死んでろ」





そいつの首に向かって、刃を前から叩き込んだ。・・・・・・この襲撃者は姿は消してる。

だけど、攻撃行動の瞬間を狙ったから、気配は丸出し。問題なく打ち込める。

てゆうか、僕はコイツを知ってる。・・・・・・コイツは攻撃を中止して、左の爪を盾にする。



だから、軌道を下げて胴に向かって叩き込む。それを見て、コイツも腕を下げた。

刃は爪ではなく腕に、手首と肘の間、肘の付近に食い込む。

僕はそのまま・・・・・・斬で肉と骨を断ち、腕を斬り落とした。



斬り落とされた腕が飛ぶ。そして、地面に落ちてゴトリと音を立てる。

腕の断面から紫色の血が噴き出すけど、気にせずに刃を返す。

斬ったのは、腕だけ。身体を下げて胴体への攻撃は避けた。



だから、もう一発・・・・・・いや、回避。やっぱ、そう簡単にはやらせてくれないらしい。

瞬間、ケースを確保したキャロを攻撃するために生成したエネルギー弾が、僕へと殺到する。

うん、分かってた。なので、きっちり対処する。





≪Sonic Move≫





青い光となって、その場から緊急離脱。エネルギー弾はそいつの目の前で衝突し、すべて爆発する。

僕はキャロの前に立つ形でそいつと対峙した。

ゆっくりと煙が晴れる中・・・・・・いや、その下に生まれた影を見据える。



僕より40センチ近く高い身長、黒い甲殻のようなボディに紫のマフラー。そして、赤く光る四つの瞳。

これはホテル・アグスタで戦った、あのダークヒーローもどき。

そいつは今、ここの地面に着地して痛みと怒りのせいか、鳴き声を上げる。





「・・・・・・運が悪かったね。つーか、ここで飛び込んでくるなんてバカでしょ」





まだ胸の中で渦巻く嫌な予感は消えない。だけど、確実に一つ消えた。

あの音・・・・・・アイツが壁を蹴りながらこっちに近づく音だ。

あの時、アグスタでコイツが地面を蹴ると同じような音がしてた。だから分かった。



そしてあの攻撃。それだけでもう分かった。分かったから、飛び込んで刃を振るってた。

前回のように邪魔が入る前に首を落とそうかとも思ったけど、中々上手くいかないね。

咄嗟に躊躇ったし。我ながらまだまだ甘い。そして、緩い。



もっとだ、もっと研ぎ澄ませ。こんなもんじゃ、足りない。





「もう、お前の硬さは覚えた。斬れないわけがない」

≪すみませんね。この人、そういうのだけは無駄に得意なんですよ≫





とりあえずキャロの方を見る。ケースは無事。両手でしっかりと守るように抱いている。

そして、僕を怯えた瞳で見る。僕と、あのダークヒーローもどきの血が付いたアルトの刃を見る。

僕はそれだけ見て取ると、アルトを一回右から左へと振る。



その動きで刃に付いていた血が前に飛ぶ。飛んで、水路の床部分に血は叩きつけられた。

それからゆっくりと構える。構えは正眼。もどきの奴は、右腕だけで戦うためにゆっくりと構えた。

・・・・・・もう、躊躇わない。前回の怪我の借りも返さなくちゃいけないんだ。



ここで、お前にはリタイアしてもらう。





「・・・・・・ガリュー、来て」





声はもどきの後ろ側から。僕達が来たのとは逆方向の通路から、女の子が出てきた。

少々ゴスロリチックな肩出しの服で、スカートルック。淡い紫色の長い髪をした女の子。

そして、両手にはキャロが装着しているケリュケイオンと同じ形のグローブ。



それにもどきが視線を向ける。向けて、大きく後ろに飛んだ。その女の子の傍らに来る。

そして、僕に対して敵意の視線を向ける。その瞳には明らかな怒りの感情が見える。

みんなはそれぞれに構える。丁度、その子を包囲して追い詰めるように。



どうやらちゃんと仕事はしてくれるらしい。いいことだと思った。





「あなた、ガリューにこんなこと・・・・・・許さない」

「へぇ、そいつガリューって言うんだ。名前を付けるんだから、そうとう大事なんだよね」

「そうだよ。だから、許さない」

「そりゃあ結構な事だ。でも、おかしいなぁ」



構えを解き、ニッコリと笑って言い放つ。



「大事なら、どうして一人でこんなところに送り込んだのかな」



僕がそう言うと、その子が目を見開く。



「どうして、犯罪行為に手を染めさせてるのかな。
犯罪者の仲間って見られるの、その子にとっていいことじゃないはずなのに」



見開いたけど、すぐにどこか無機質な顔に戻る。



「あなたには、関係ない」

≪ところがどっこい、あるんですよ。あなた方、私達に喧嘩を売ったんですから≫

「どうやら分からないみたいだし教えてあげようか。・・・・・・お前は、その子の事が大事じゃない。単なる道具だと思ってる。
だから、犯罪行為の手伝いなんてさせてるんだよ。くくくく、嘘つくのやめようよ。本当は使い捨ての効く」



左腕が動く。飛んできたのは紫のエネルギー弾。大きさはバレーボールほど。

それを僕は刃を唐竹割りに叩き込んで、真っ二つにする。しながら、言葉を続ける。



「ただの道具と思ってるんでしょ? ほら、だから今攻撃したんだよ。図星を突かれて怒ったから」

「・・・・・・違う」

「違わないなっ! だったらお前はどうして今僕に攻撃を仕掛けたっ!?
お前の言葉と想いは全部嘘だっ! 今のお前の行動が、それを証明しているっ!!」



僕とあの子を隔てるのは爆煙。それに構わずに、言葉を続ける。心を傷つけ、踏みつける最低の言葉を。



「・・・・・・はーい、これで二人揃って公務執行妨害成立ね? で、当然抵抗するよね?
だから、お前の道具には再起不能になってもらう。で、お前も潰すから」





一瞬思い出すのは、僕の良く知っている女の子。優しくて、温かくて、穏やかな心を持った子。

その子も同じような状況だったと思い出して、怒りが増す・・・・・・って、らしくない。冷静になれ。

そんなの今は関係のない話だ。今この状況においてやるべきことは、たった一つ。



だから、それを通すだけ。





「お前も、その召喚獣も・・・・・・壊す。一生歩く事も動く事も出来ず、ベッドとお友達くらいは、覚悟しとけ」





そのまま、僕は飛び込んだ。距離は一瞬で零に変わる。そして、ガリューと呼ばれた召喚獣が立ちはだかる。

僕はそれを斬り伏せるために刃を振りかぶり・・・・・・足を止めた。止めて、一気に左に飛んだ。

その瞬間、空間を縛り付ける黒い鎖が音も無く姿を現した。身体を回転させながら、僕を縛ろうとする鎖を斬り裂く。



・・・・・・これ、魔力バインド? それも設置型・・・・・・でも待て、いつ使ったんだよ。

床に着地する。すると後ろに気配。振り向きながらアルトを打ち込む。いや、防御した。

そいつは僕に向かって唐竹割りに両手剣を叩き込む。その勢いのまま、僕は吹き飛ぶ。



吹き飛ばされ、向かい側の壁に叩きつけられた。





「・・・・・・なぎ君っ!!」

「恭文さんっ!!」



・・・・・・・・・・・・かは。



「ふむ、あれを察知して避けますか。なんというか・・・・・・その野獣並みの感覚、見習いたいものです」





振り下ろした刃をゆっくりと上げながら、そいつは喋る。

僕は瓦礫の中から脱出しつつそいつを見た。瞬間、寒気がした。

・・・・・・銀色の髪に喪服のような黒い服。デカイ両手剣を持っている。



顔立ちから40代くらいに見えるそいつは、僕やみんなを見てる。ただその瞳が問題だ。

・・・・・・濁っていた。黒く、歪んだ色で瞳が支配されていた。感じられるのは、悪意。

もうそうとしか言えない感情ばかりだった。その瞬間、悟った。



さっきから感じまくっていた嫌な予感の大本はコイツだと。





「・・・・・・アギトさん、今のうちに彼女を」

「おう」



そいつの傍らから出てきたのは、小さな赤い妖精。リインと同サイズで、結構薄着。



「アギト」

「ルールー、ここは引くぞ。てか、アタシや旦那が居ない時に一人で出歩くからそうなんだよ」

「だめ、まだ」

「ここでアイツとやりあっても勝てねぇよ。・・・・・・ガリューが大事なら、もう休ませてやるんだ。
ここで戦わせたら、マジでガリューを道具扱いしちまう。ルールー、それでいいのか?」



・・・・・・ユニゾンデバイスか? こんなのまで居るんかい。

その子は小さい子と僕を見比べるように顔を一度だけ動かして、首を横に振った。



「うん、いい子だ。・・・・・・で、お前はどうすんだよ」

「そうですね・・・・・・よし、決めました。私は土産を確保します」



土産? ・・・・・・おいおい、まさかとは思うけど。



「まぁ、適当に遊んでいますので、ご心配なさらず」

「心配なんざしてねぇよ。つーか、勝手にしろ」





そのまま、その小さな子は召喚師と思しき女の子の側に行き、ガリューと呼ばれた召喚獣と一緒に逃げた。

足元には転送魔法・・・・・・いや、その子の足首を掴む手があった。その手が一気に、地面の中にあの子を引きずりこんだ。

地面がまるで水面のように波紋を立て、その中に赤い子も沈む。というか、飛び込んだ。



波紋はすぐに消えて、地面は元の硬い質感を取り戻した。な・・・・・・なんですか、あれ。





「あ、こら待てっ!!」

「待つんだっ! 君には聞きたいことが」



スバルと隣に居たエリオが踏み込んで捕まえようとする。だけど、それを止める存在があった。それは30発以上の黒い弾丸。

それらがスバルとエリオの行く手を阻むように、撃ち込まれる。二人の肌を、髪を、ジャケットを掠めてから壁を貫く。



「・・・・・・余所見はいけませんね。タイプゼロ・セカンドとプロジェクトFの遺産」



それはあのおっちゃんだった。左手を挙げ、一瞬で大量の魔力弾を生成して発射した。

それらは警告の意味合いを持っていた。殺そうと思えば、殺せた。でもそうしなかった。



「・・・・・・嘘でしょ。あんな、一気に弾丸を生成して、それを瞬時にコントロール・・・・・・出来るはずない。
ううん、違う。一瞬のタイムラグもなしであんな真似、、出来るわけがない」



ティアナが動揺してる。どうやらあんなのを見るのは初めてらしい。だから、現実を否定する。

だけど・・・・・・残念ながら、それは無意味だ。僕は、僕達は、それを可能とする力を知ってる。



「いいえ、出来ます」

「リイン曹長?」

「・・・・・・・・・・・・瞬間詠唱、処理能力か」



僕が立ち上がりながらそう呟くと、そいつは嬉しそうに歪んだ笑みを浮かべた。



「そうです、あなたと同じですよ。・・・・・・粗悪品」










ゆっくりと、アルトを構える。もう一度アイツの目を見た。





・・・・・・躊躇ったら、迷ったら、甘い手を使ったら、ここで全員死ぬことになるか、それより辛い目に遭うことになる。





なら・・・・・・僕が取るべき手は。




















(第6話へ続く)




















あとがき



古鉄≪というわけで、前回のあとがきやお話の反響が凄くてちょっとビックリしている古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「細かい言い回しやニュアンスは決して誤字ではないと言いたい蒼凪恭文で、あとがきをお送りしたいと思います。もっと言うと、前回のクロノさんの『それで迷惑をかける? バカを〜』とか」

古鉄≪あぁ、そこ大事ですね。結構現代的な喋るを意識している分、細かい喋りは多少雑にしていますから≫

恭文「そうそう。・・・・・・まぁ、そんな個人的な返答はともかくとして、今回は・・・・・・やばい、普通に最悪だ」





(青い古き鉄、結構ヘコみ気味)





古鉄≪久々に運の悪さ爆発じゃないですか。私はビックリですが≫

恭文「なんかね、スバル達と遭遇するって話になったらこうなったんだって。
で、最後にアイツが出てくるでしょ? とまと唯一の絶対悪でスカリエッティ以上とか言われてるの」

古鉄≪普通にスカリエッティは遭遇した時点で瞬殺されていいレベルですしね。
ぶっちゃけ、何度も言ってますけど悪党としてはどう優しく見ても三流以下ですよ。というか、その予定でしょ?≫

恭文「拍手の返事でいいアイディアが思いついたらしいからそうするんだって。
トーレとかセッテとかと一緒に瞬殺されて、その後に暴走・・・・・・って感じ?」

古鉄≪まぁ、24話に関してはJS事件話で一度再構成してますし、またそことは重ならない形で変えなくちゃいけませんしね、そういうのもありと言えばありでしょ≫





(実は、この辺りかなり悩んでいます。どこぞの宇水さんの如く全否定した上で死亡ルートか、救済ルートを出すか)





恭文「普通に悪党路線で行くなら別にスカリエッティはあそこで死んだっていいキャラなのよ。
あのどっか勘違いしたまま死ぬもよし、死の間際に色々悟って『死にたくない』とみっともなくあがくもよし」

古鉄≪てゆうか、悪党路線で美味しく行くなら死んだ方がいいと思うんですけど≫

恭文「死んでどうこうって話の構成の仕方は嫌いだけど、もしやるとしたらそっちが美味しくはある。ただし、悪党路線を突っ走ること限定でね?」

古鉄≪はい。一人の人間として救済されるルートと考えると・・・・・・死亡ルートはアウトなんですよね。
とは言え、普通に24話のやり取り再現では、そのルートへは入れないんですよ≫

恭文「まぁ、この辺りはまたじっくり考えようさ。とりあえず、拍手の返事がなかったら死亡ルートが濃厚だったけど」

古鉄≪濃厚でしたね。・・・・・・それでは、本日はここまで。お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「蒼凪恭文でした。それではまた」










(スカリエッティの明日がどうなるか・・・・・・それは、きっと誰にも分からない。作者にもまだ分からない。
本日のED:175R『夢で遭えたなら・・・・・・』)




















???『ドクター、あの男が機動六課のフォワード達と接触しました。
ルーテシアお嬢様達は、セインが無事に保護。現場から離脱しています』

???『そうか、それはよかった』

???『ですが・・・・・・あの男に任せて大丈夫なのですか?
下手をすれば、捕獲対象もろともという可能性も』

???『大丈夫だ。恐らく彼が、あの男を始末するだろう』

???『ですが、それでは意味が・・・・・・まさかドクター、最初からそのつもりで?』

???『実はそうなんだよ。サンプルH関連の対象者の捕獲のために雇ったはいいが、あまりに危険過ぎる。
娘達でも、ただではすまないだろう。いい機会だ、ここで消えてくれるとありがたい。まぁ、彼に後始末の礼も出来ないのは心苦しいが』

???『納得しました。・・・・・・ですが、もう一人の方はどうします? 報復も考えられますが』

???『いや、それはない。彼女のあの男を見る目は、恐怖しかないよ。むしろ、死んだ事を喜ぶだろう。
その辺りについては私から話してみるさ。よければ、このまま協力してくれないかとね』

???『分かりました。ですが、万が一の場合は』

???『あぁ、適切な処置を頼む』










(おしまい)





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あきゅろす。
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