小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第4話 『平和な休日?』
・・・・・・そして、朝ご飯を食べる。そう、食べるのだ。
なお、何かの比喩とかではないのであしからず。朝ご飯にシャマルさんを性的に食べちゃったとかでもないからあしからず。
朝早めに来たので、久々にフェイト達とご飯を食べてるだけだ。うん、本当にそれだけだ。
「・・・・・・恭文くん、食いしん坊ね。私を食べておいて更にパンとオムレツとサラダもなんて。
あ、でもさっきはあんなに・・・・・・だし、やっぱりお腹空くわよね」
バシィィィィィィィィィィンッ!!
「痛−いっ! もう、なにするのっ!? しかもお盆で叩くなんてひどいじゃないっ!!」
「やかましいっ! せっかく誤解のないようにフォローしたのに、なんでそれをダメにするっ!!
お願いだから常識的に考えてっ!? 大事な事だから二回言うけど常識的に考えてっ!!」
「大丈夫、私は誤解されても平気よ? というより、真実だもの。
私・・・・・・は、恥ずかしいけど、いつも恭文くんのことを考えて」
「そこを含めないでっ!? そこを含めたらなんでもありでしょうがっ!!」
くそ、この人マジで止まらないしっ! こ、ここは・・・・・・八神家のみんなに頼ろうっ!!
「みんな助けてー! 普通にこのお姉さんおかしいんですけどっ!!」
「・・・・・・それで主はやて、今度の108の会議は私が出席でしたよね」
「そうや。向こうと捜査協力の約束は取り付けたから、ちゃーんと打ち合わせしとかんと。一緒に頑張ろうな」
「はい」
・・・・・・・・・・・・おーいっ! なにみんな平然と無視するっ!? コレ見てっ! おかしい人が一人いるでしょうがっ!!
なにこれを普通の光景として受け入れてるのさっ! この朝の穏やかな風景の中で、僕の周囲だけ明らかに異常でしょうがっ!!
ウォーリーを探せより遥かに楽な間違い探しだと思うのは僕の気のせいっ!?
「まぁそう言ってやるな。シャマルは寂しかったんだからよ。
てか、実際には何もなかったんだろ? そしてあるわけがない」
師匠が平然とポテトサラダを食べながらそう言ってきた。・・・・・・誤解を受けてないのは嬉しい。
だけど、そう言われて『ヴィータちゃんひどーいっ! ほんとにありましたー!!』とか言ってるお姉さんへのツッコミが無しなのは、絶対納得出来ない。
「蒼凪、そう目くじらを立てるな。シャマルの妄想・妄言癖は今に始まったことではあるまい」
「そうだぞ蒼凪、もういつものことだろうが。これくらいのことは笑って許してやれ」
「あー! ザフィーラとシグナムまでひどいー!!」
「ひどくねぇよっ! ひどいのはあなたの妄想・妄言癖のほうだからっ!!」
というか・・・・・・そろそろマジで自覚して欲しい。自分の家族からの認識がおかしいってことに。
「そしてフェイトもなのはも応援オーラ出さなくていいからっ! なにさっきから温かい目で見守ってるっ!? 見守る前にこの人止めてっ!!」
「だ、だって・・・・・・シャマルさんは止まらないし」
横馬、確かにその通りだ。でも、止めようとすることが大事なのよ。行動する事が大事なのよ。
例えば、なんか『あーん♪』とかしてきてるお姉さんをさ。てーか、ここは職場だよ。なんでこんなプライベートモードオンなのさ。
「ヤスフミ、そろそろシャマルさんの気持ちもちゃんと受け止めた方がいいんじゃないかな。
ずっとスルーしてる感じだけど、さすがにそれはひどいよ」
その瞬間、僕を含めた全員の冷たい視線がフェイトに向いたのは気のせいじゃない。
てゆうか、フェイトにだけは言われたくない。絶対言われたくない。プロポーズしたのにスルーってどういうことですか。
「あの、私は」
「だから応援しなくていいからっ! そして僕はそんなつもりないしっ!!」
「・・・・・・うぅ、ひどい。ひどいわ」
あ、なんか崩れ落ちた。で、泣き出した。
「そりゃあ、私はフェイトちゃんやシグナムと比べると胸もほんの少しだけ小ぶりだし」
ほんの少しかい。・・・・・・まぁ、分かる。だって裸見てるし。
そういうわけで、シャマルさんが実はナイスバディなのは分かる。でも両手で自分の胸を触るな。食事の場でそういうことをするな。
「お料理もちょっと苦手だし、年上過ぎておばさんに見られちゃうかも知れないけど・・・・・・でも、恭文くんへの愛は誰にも負けてないのにっ!!
そうよ、伊達に現地妻1号を8年近く続けてきたわけじゃないのっ! 全ては、愛するあなたの幸せを願って」
「・・・・・・リイン、オムレツあげるね。あーん」
「あーんです。・・・・・・うーん、美味しいですー」
「ちょっとっ!? 完全無視ってあんまりよっ! というか、お願いだからみんなも恭文くんの非道を止めてっ!!」
だけど、当然のようにそんな声は届かない。届かないので・・・・・・普通に僕達はご飯を食べるのである。
・・・・・・まぁ、感謝はしておこう。きっと、自分がバカをやることで僕の調子を戻そうとしてくれてるんだ。
うん、感謝しないといけない。ただ、ここでマジで受け入れたりするのは非常にマズイ。
それをやると、『シャマルさん×僕』が速攻で成立してしまう。なので、こういう態度しか取れない。
そう、シャマルさんはあくまでも僕のことを心配した上でこの行動なのだ。
みんなだって、それが分かってるから止めないんだ。特にシグナムさんとはやてはそうなんだ。
そうだ、僕は分かってる。ちゃんと分かってる。そうだそうだ、そうに違いないんだ。
・・・・・・・・・・・・なお、異論は色々あるだろうけど認めない。絶対認めない。僕のために認めない。
なので、今僕を恨めしそうに見ているシャマルさんの表情も気にせず・・・・・・あぁもうっ!!
「あぁもうっ! 分かりましたよっ!! 今度また一緒に買い物とかしましょっ!?
ちゃんと向き合いますから、お願いっ! その捨てられた子犬みたいな目で僕をジッと見ないでっ!!」
「いいのっ!? ・・・・・・それなら、六課解散後、二人で暮らす家を探したいな。
せっかくだから、交通の便のいいところで、お風呂も二人で入れるように広めで」
「一体それはどんな買い物っ!? てか、普通にそんなの買えるかボケっ!!
あと、その発言は普通に引くレベルだからっ! 一体どんなストーカーッ!?」
『・・・・・・続いて政治経済。先日、ミッドチルダ管理局・地上中央本部に置いて、来年度の予算会議が行われました』
それはテレビの声。みんなは平然と食べてるけど、僕は一旦手を止めてテレビを見る。
もっと言うと、間取りとか構造とかについて、熱を入れて話し出したお姉さんから目を背けるようにテレビを見る。
『・・・・・・・・・・・・当日は、首都防衛隊の代表・レジアス・ゲイズ中将による、管理局の防衛思想に関しての表明が行われました』
そう言って映し出されるのは、壇上で威厳を撒き散らしながら声を上げるおっちゃん。
栗色の髪と立派なひげを口の周りに生やし、青い将校服を身に纏うその人は、レジアス・ゲイズ中将。ミッド地上本部の実質的トップ。
『・・・・・・魔法と技術の進歩と進化、素晴らしいものではあるが・・・・・しかしっ!!』
映像の中で声を張り上げているおっちゃんの言葉を、みんなは聞き逃すまいと集中して聞いている。
なぁなぁで聞いている人間は一人も居ないように見える。みんな、中将の言葉に胸打たれているようだ。
『それが故に我々を襲う危機や災害も、10年前とは比べ物にならないほどに危険度を増しているっ!!
兵器運用の強化は、進化する世界の平和を守るためであるっ!!』
上がるのは歓声。なぜだろう、それに心が躍る。この人の言葉に惹きつけられるものがある。
強い意志と平和を守りたいという願いに満ち溢れた力が、この人の言葉にはある。だからかも知れない。
『首都防衛の手は未だ足りん。地上戦略に置いても、我々の要請が通りさえすれば地上の犯罪も発生率で20%』
なお、ここは犯罪の減少率を説明しているのであしからず。
で、そんな話の中・・・・・・本局組は平然とご飯食べてるし。そんな興味ないんかい。
『検挙率に置いては35%以上の増加を、初年度から見込むことが出来るっ!!』
「・・・・・・またハッタリかますなぁ」
≪当然でしょ。演説というのは鼓舞する意味もあるんです。事実から離れ過ぎない程度のハッタリは必要ですよ≫
「確かにね」
演説はまだ続く。その声が、沢山の人に届くように。世界を、平和を守るために力を貸して欲しいと、声を上げる。
だけど・・・・・・残念ながらそれが届かない人間も居る。そう、それが目の前の昔馴染みだ。
「なんつうか、このおっちゃんはまだこんなこと言ってんだな」
師匠がウィンナーを口に入れつつそう言う。
「レジアス中将は昔から武闘派だからな。・・・・・・うちの問題児と同じくだ」
そう言いながら、みんなが僕に視線を向ける。なんか、苦い顔になってたのは気のせいじゃない。
そう、本局組であるみんなは、レジアス中将のことをあまりよく思ってない。レジアス中将、かなり強引な人だから。
「あ、ミゼット婆ちゃん達だ」
師匠が気づいたのは、ある人達が居る事実。テレビの画面の隅に映るのは、老人会。局では伝説の三提督なんて言われてる方々。
ミゼットさんにラルゴさん、レオーネさんの三人で、管理局創設時から世界の平和のためにがんばってきた英雄的な方々である。
現在は、それぞれ相談役やら元帥やら、一種の名誉職に付いており、局の通常の運営には干渉していない。
ただ、今テレビで報道されている予算会議のような局にとって重要な会議などには、まるでどこぞの老人会を思わせるような雰囲気で出席している。
そして、六課の非公式な後見人である。
「・・・・・・だめだ、何度見ても老人会だ。てか、外見だけならもう会議関係なくリラックスしまくってるし」
「バカ弟子、お前もそう思うか?」
「かなり」
師匠の言葉に全力で頷いた。
で、それに対して不満そうな顔をする人がいる。
「ヤスフミ、ヴィータもダメだよ。偉大な方達なのに老人会なんて・・・・・・」
「いやいや、真面目に老人会なんだって。あの人達、先生以上にフリーダムだし」
「だから、ダメだよ。偉大な方達なのにそんな知り合いみたいな言い方・・・・・・あの方達に失礼だよ」
「知り合いだよ?」
僕がそう言い放つと、フェイトだけじゃなくてなのはも固まった。
「「えぇぇぇぇぇぇっ!?」」
固まって・・・・・・こう叫ぶ。
「ヤスフミ、それどういうことっ!? 私、聞いてないんだけどっ!!」
フェイト、なぜそんな当然のことを聞くの? 話してないんだから、知らないに決まってるでしょうが。
僕だってバカじゃない。こんな話を触れ回ればどうなるかは分かる。それに、会ったのも完全プライベートな時だもの。
「先生経由なんだよ。普通に『飯でも奢ってやる』って言われて突然に引っ張ってかれたら、普通に居た」
なんでも、先生の同期で昔馴染みらしい。で、さすがにタマげた。
だって、普通にフェイトの言う『偉大な方』が老酒煽ってたんだもん。もちろん、紳士的な飲み方で。
で、そのまま先生は三人にたかってた。普通に僕までおごってもらった。
なので、当然のように全力全開で謝り倒したのは言うまでもないと思う。そして、あのクソじじいは殴り飛ばしてやった。
≪・・・・・・まぁ、本人はそれに非常に不満そうでしたけどね。
『クソにじじいまで付けおって・・・・・・お前なにさまじゃっ!!』と≫
「いやいや、それどこの吉本新喜劇っ!? というか、何様はヘイハチさんの方だよっ!!」
「ヘイハチさん、そんなことしてたなんて・・・・・・」
「奇遇だね、なのは。僕もなのはと全く同じことを思って、全く同じツッコミをしたよ。
食事時にあんまり連呼出来ない単語が連発しているツッコミをしたよ」
そのせいだろうか、三人の僕に対する好感度がそこで急激に上がった。なんか無茶苦茶優しくなったもの。
「あー、そういやうちらも今のフェイトちゃんやなのはちゃんと同じくビックリしたなぁ。普通に挨拶してたもん」
「え・・・・・・ということはっ! はやて、この話知ってたのっ!?」
「うん」
実は、はやてとヴィータ師匠も、護衛任務でミゼットさんに会ったことがある。
その時、僕もヘルプで手伝ったので、バラしちゃったのである。
「てか、普通に一緒にお茶飲んでたぞ? 普通にコネとか使えそうだったぞ?
・・・・・・お前、なんでそんな交友関係すげーんだよ。アレぜってー孫かなんかと思われてるって」
「僕に聞かないでください。僕は普通に先生に連れられて会っただけなんですから」
でも、おかしい。僕は普通にしてただけなのに。
普通に三次会とかまで付き合っただけなのに。
そして謝り倒して殴り飛ばしただけなのに。
さすがに先生の奢りだと思ってたのが実は先生も奢られる立場だと分かったら、そりゃあそうなるさ。
「それでヴィータもヤスフミもミゼット提督達のこと『老人会』って話したんだね。・・・・・・納得した」
「でもまぁ、もしかしたら逆に謝り倒したんがよかったかも知れんよ?
先生と違うて、弟子は常識的でえぇ子って思われたんとちゃうかな。そんなん錯覚やのに」
「失礼な。僕は常識的な人間だって」
「どこがやっ!? 常識的な人間は、普通来て一週間であんな問題起こしたりせぇへんよっ!!
・・・・・・しかし、話は変わるけど」
なに? てか、なんでまたそんな苦笑気味なのさ。
「アンタは相変わらずレジアス中将、好きなんやな」
「うん。・・・・・・すごい人だから」
テレビの中に映るあの人を見る。やっぱり、少しおかしい。あの人を見てると、近い何かを感じる。
あんな人の下だったら、組織の人間として働いてもいいかなって、ちょっと思う。
「ミッド地上を守るために、そのために何十年も頑張ってる。地上の人間が誰一人くだらない死に方なんてしないように、ありったけで今も進んでる。
うん、僕はみんなと違って、あの人の事好きかな。だって、かっこいいじゃん。守るために、愚直なまでに進んでる人は、誰だってさ」
どこか、先生と同じ感じを受けるのかも知れない。それは・・・・・・僕のなりたい形。
守るために、壊すために、ただひたすらに真っ直ぐに突き抜ける。そんな人になりたい。
組織という柵の中では描けない夢。貫く事自体が許されない理想。
やっぱり、諦め切れないな。これは、僕の本当の気持ちなんだから。
だけど、やっぱり認められないよね。だからかな、怖くて話せないのは。
「でもヤスフミ」
フェイトが声をかけてくる。なんというか、こう・・・・・・微妙な顔だ。
作画崩れかって言いたくなるくらいに崩れてる。
「あの人の手段はあまりに強引過ぎて、問題視されてるのも事実だよ?」
そう、レジアス中将はそういう部分がある。というか、海と陸の仲が悪い原因の一つ。レジアス中将は、本局が嫌い。
だって、本局は長年に渡って地上の現状を無視した戦力強化・・・・・・地上部隊からの優秀な人材の吸い上げを行っていた。
そのせいで地上部隊は常にカツカツ。数十年レベルに渡って、戦力不足に苛まれていた。
細かい説明は省くけど、本局の方が扱う事件の規模が大きい。戦力の吸い上げはそこが理由。
でも、地上にだって事件が起こる。それにより傷つき、泣く人達が居る。場合によっては、それは同じ局員にも及ぶ。
それを助けたくても、戦力が足りなくて助けられないことがある。それがどんなに悔しいことか・・・・・・僕にも、少しだけ分かる。
このおっちゃんは、その現状と何十年も戦ってた。だけど、本局は変わらない。
この人が強引な手腕を使う武闘派として名が売れているのも、当然。
そして、今のフェイトみたいに拒絶反応を示す人間がいるのも、ある意味では当然。
でも・・・・・・それでも、いいんじゃないかなって思う。
だって、目の前で何かが壊されるのは、やっぱり嫌だから。
「そういう部分については、どう思ってる? ・・・・・・あ、別に不満があるとかじゃなくて、ちょっと聞きたいんだ」
「うーん、僕は別にいいと思ってる。てか、本局が現状をあんまりに認識し過ぎてないだけの話じゃん。
アインへリアルだって、運用の仕方さえ間違えなければきっと必要なものだよ」
フェイトが少し興味ありな顔で言ったその言葉を、一刀両断した上でオムレツを一口。
・・・・・・アインへリアルとは、レジアス中将が開発を進めている大型防衛兵器。
今、丁度テレビの中で話を進めてる。戦力不足のミッド地上の現状をなんとかするために作った虎の子。
しかし、実働まで2年ちょいって・・・・・・また頑張ったなぁ。
「うーん、局員がみんなレジアス中将みたいな武闘派ばかりだったら、局に入ってもいいんだけどなぁ。
それだったら肌にも合うだろうし、僕も遠慮なく背中預けられるし、手札も晒せるし」
「・・・・・・そっか。ヤスフミの理想の上司は、レジアス中将なんだね」
「そうだね」
「それで、その理想の上司に頑張って作って欲しい組織の形は・・・・・・察するに、香港国際警防隊かな?」
「そそ」
あの居心地のよい場所を思い出して、なんだか嬉しくなりつつオムレツをパクリ。
・・・・・・美味しさが増してるように感じるのは、気のせいじゃない。
やっぱりなのは辺りが苦い顔してる。で、次点はフェイト・・・・・・あ、フェイトは普通だね。
つい今までの経験から数に入れてしまったけど、多分フェイトは僕が局に入れないのを納得してくれたから、大丈夫なんだよね。
「でもでも、恭文さんがそこまで言うなら、レジアス中将はリインやはやてちゃん達が思ってるより、ずっといい人なのかも知れないですね」
「そうやな。もしかしたら、恭文と同じでただ一生懸命過ぎるだけかもしれんなぁ。
一生懸命過ぎるから、暴走しちゃうんよ。でも、一生懸命過ぎるから、あないに人に慕われる」
「そうかも知れないね。・・・・・・私も、今ヤスフミと話してて認識を変えたよ。
というか、反省した。確かに、かっこいいと言えばかっこいいのかも知れないね」
そう言って、フェイトが画面の中のレジアス中将を見る。
そして、僕を見てからニッコリと優しく微笑んでくれる。それがなんかこう・・・・・・嬉しい。
「それなら納得です〜。恭文さんも、暴走しますし、なんだかんだで人に慕われますしね」
「まぁ、慕われるってとこは間違ってないだろうけど・・・・・・いやいや、リイン? 僕はかなり常識的だけど」
「そやから、常識的な人間は普通に手札を部隊の仲間に晒していくんやで?
少なくとも、チーム組んだ相手には最低限はやるやろ。アンタは全くやる気ないやん」
だから、それはみんなの常識が間違ってるんだって。魔導師とはそもそもなにか本当に分かってる?
魔導師って言うのは、魔導を修め・・・・・・・・・・・・。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
”・・・・・・ね、フェイトちゃん”
”なのは? どうしたのかな”
なのはから念話が届く。ヤスフミが『魔導師とはなんたるか』をはやてと二人でディスカッションし始めたのを横目で微笑ましくそれを見つつ、私は念話に答える。
”恭文君が局員にならないの、本当に認めちゃったの?”
”・・・・・・・・・・・・うん”
なのはは、みんなに念話してると気づかれないために、表情を変えない。
変えないけど、どこか落ち込んだように見える。
”それ、いいのかな。だって、局員にだっていい人達は沢山居るよ? もちろん、海や陸に関わらず。
なにより、探せば恭文君に出来る事、やってみたい事はきっと見つかるよ。私達だって見つけられたんだから”
”多分、無理じゃないかな”
最近・・・・・・ヤスフミを見てて、気づいたことがある。
なんであの時、ヤスフミに『一人じゃない』と言ったのか、ようやく気づいた。
嘱託で、フリーの時は気づかなかった事。家族というフィルターを通してると気づかなかった事。
そして、部隊という中に入ってもらったヤスフミを見て、やっと気づいた事。
”どうして?”
”局には、ヘイハチさんが居ないから”
そう答えると、なのはの表情が僅かに歪んだ。・・・・・・うん、そうだよね。そう思うよね。
”局には、ヘイハチさんが居ない。ヘイハチさんのような人を多分必要ともしてない。だから、だめだと思う”
これはあれから色々と考えて気づいたことの一つ。
”ヤスフミ、さっきレジアス中将の事好きだって言ってたでしょ?”
”うん、言ってたね”
”多分、レジアス中将の武闘派なところが、ヘイハチさんのやり方に割合近いから、そう思うんじゃないかな。
私ね、最近再認識したんだ。ヤスフミのなりたい形は、追いかけたいものは、やっぱりヘイハチさんなんだよ”
ヤスフミが今まで局に入りたがらなかったのは、単純に局が嫌いだというのだと思ってた。
でも、それだけじゃ足りなかった。局を嫌いだと思うその原因は、不正や汚職、腐敗を見ただけじゃなかった。
ヘイハチさんを・・・・・・自分のなりたい姿を、大事な先生を否定して、不要だとまで言う人間が居るからだと思う。
そして、現状の局ではヘイハチさんのようなやり方は間違いなく否定される。局は『英雄』も、『社会不適格者』も必要としてない。
だから、否定される。何を守り、結果がどうだろうと確実に。大好きな人が否定されて、いい気分がするわけがない。
そういうのが、ヤスフミの中の管理局や局員が嫌いな気持ちに、拍車をかけているのかなと、思った。
”・・・・・・別の形は、ダメなのかな”
私も、今のなのはと同じ事を考えた。ヘイハチさんじゃなくても、尊敬出来る人は、なりたい姿はいくらでもある。
代わりで許されるなら、それでいいんじゃないかと思っていた。それもかなり。
”ううん、ダメなんだろうね。というか、それを言うのなんて、きっと最低だよね。
だってそれは・・・・・・恭文君の夢を、願いを否定するのと同じだもの”
”そうだね、きっとだめだよ”
うん、私もあの時はやてに叱られて、やっと気づいた。それが無かったら気づかなかった。
自分の考えた事が、今まで言ってきてた事が、どんな言葉か、知ろうともしてなかった。
どれだけ私の言葉が、ヤスフミを傷つけるものか、気づく事が出来なかった。
誰だって、嫌に決まってる。バカげていても、無茶苦茶でも、ヤスフミにとっては大事な気持ち。
自分の追いかけたいものを、大好きな人を否定されたら、凄く嫌で、苦しむに決まってる。
苦しくて、悲しくて、沢山傷つくに決まってる。それを追いかけ、憧れる自分さえ否定されたように感じるに決まってる。
一人ぼっちになるに、決まってる。そんな言葉と認識の中に居たら、誰と居ても一人だって感じるようになると私は思う。
”・・・・・・・でも”
うん、分かってる。言いたい事は分かるよ。
私も、同じ事を考えてたから。
”それなら、恭文君・・・・・・どこに行くのかな”
”そうだね、どこに行くんだろうね”
局員になる・・・・・・もっと言えば、何かの役職に就く事は、決してゴール地点じゃない。だけど、一つの到達点でもある。
私や母さん、アルフやみんながヤスフミを見てて不安だったのは、局員になってみようと言い続けていたのは、ヤスフミの行動にその到達点が見えないから。
とても強くて、遠い背中を追いかけていくその道には、ゴールなんて無い。役職どうこう階級どうこうで区切りも無い。
だから、不安になる。本当に・・・・・・いつか、遠いところへ消えちゃいそうで、怖い。
やっぱり、話す必要あるよね。このままは、絶対にだめ。というか、一度しっかりと話したい。
ただし、それは絶対に『ヘイハチさんじゃない、別の形を追いかけよう』なんて言う残酷な言葉を伝えるためじゃない。
だってそれは、なのはの言ったように『夢を諦めろ』と言っているのと同じだから。
私はそんなこと、もうヤスフミに言いたくない。ヤスフミの夢は、ヤスフミの物だから。
そうだ、絶対に違う。私の・・・・・・今の私の伝えたい言葉は・・・・・・。
『あなたがどこへ行きたいのか、何をしたいのか、知りたい。もしも分からないなら、一緒に考えていきたい』・・・・・・って、ことなのかな。
魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix
とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常
第4話 『平和な休日?』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「・・・・・・というわけで、もうちょい手札晒しなさい」
「嫌だ。てか、晒したじゃないのさ」
よーく思い出してみよう。今日の模擬戦闘で僕は砲撃撃ったし射撃も撃った。なので、問題はないのよ。
それにほら、なのはも誉めてくれたじゃないのさ。今日はいい感じだってさ。
「アンタの頭には穏便な晒し方って選択肢がないわけっ!? あんないきなり真横から砲撃ぶっ放されたらビックリするでしょうがっ! アンタどんだけフリーダムよっ!!」
「そうですよっ! 射撃だって本当にいきなりで・・・・・・僕ビックリしたんですよっ!? どうしてあぁなるんですかっ!!」
「いやぁ、それほどでも」
「「誉めてないから(ですから)っ!!」」
さて、タイトルコール前のお食事の時間から数日後。今日も今日とて訓練。・・・・・・あー、テンション下がる。
だって、あれから僕もちょこっと反省して、徐々に手札を見せていくように心がけてるわけですよ。
クレイモアもそうだし、今日に至っては虎の子のアイシクルキャノンとスティンガーまで見せてしまった。
訓練は終わり、演習場で締めのお話の最中である。これからのんびりお仕事タイムなのに、何が不満だと言うのだろう。うーん、謎だ。
「不満だらけに決まってるでしょっ!? アンタ、マジでチームの一員って自覚0でしょっ!!」
「そうですよっ! お願いだからもうちょっと僕達のことを信頼してくださいっ!!
僕達は同じ部隊の仲間じゃないんですかっ!?」
「・・・・・・てゆうか、ティアナもエリオも甘いわ」
ため息混じりに、二人に視線を送る。うん、結構睨み気味に。
「そないなことを言っているうちは、ハッキリ言ってセンターガードとガードウィングとしてはまだまだやんか。そしてそれは、自分の無能さに対しての言い訳ちゃんか?」
思い出すのはあの人。
「人の動き方をどうこう言う前に、自分の動き方を磨くところから始めんかい。誰が相手だろうが初対面だろうが長年のパートナーだろうが関係ないやろ。
一流は絶対にそんなこと言わんで? その場で相手の動きと行動パターンと思考と性格を読み取って、適切な行動を行って、ちゃーんとフォローしていくんやから」
初対面にも関わらず連携戦の訓練をやったら、普通にもう痒いところに手が届くようなレベルでサポートしてくれた。
僕がなぜそこまで出来るのかと聞くと、あの人は平然と答えた。『そんなの、初動の動き方とかそいつの性格とか鑑みれば、大体の方向性は掴めるだろ』・・・・・・と。
「で、そん人はセンターガードとガードウィングだけじゃなくて、一人で瞬時に全てのポジションを切り替えて戦うこととかも出来るよ。
ティアナはともかく、エリオは本格的な訓練は初めてやから分からんかも知れんけど、それが一般的なんやから」
と、その人は言っていた。
「・・・・・・相手の動きがいきなりでビックリした? そないなこと言ってるようじゃ、全然ダメや。もうめっちゃダメや。
実戦は常日頃いきなりで突然。『恋はスリル、ショック、サスペンス』ちゃうんか? 愛内里菜さんは素晴らしいちゃうんか?」
もっと言うと『あのバカを相手にしてると、嫌でもそういう舵取りが上手くなるんだよ。・・・・・・あははは、俺なんかすっげー泣きたくなってきたんだけど、どうすりゃいい?』・・・・・・ということらしい。
「言い訳する前に、自分の動き方を反省せんかい。というより、自分の戦闘者としての覚悟の無さを反省せぇや。まず全部そこからやろうが。分かったか?」
「そ、そうですね・・・・・・あの、すみませんでした」
「謝るくらいなら最初から言うなや。言われた方はめっちゃ迷惑やんか」
そして、二人は納得してくれた。・・・・・・いやぁ、よかったよかった。
「ちょっとエリオっ! アンタなんでそこ騙されちゃうのっ!?
よーく思い出しなさいよっ! これ、前回キャロが言われたのと全く同じでしょうがっ!!」
・・・・・・ギク。
「私達、適当なこと言われてコイツに煙に巻かれてんのよっ! しっかりしなさいっ!!」
「・・・・・・あぁっ!!」
ち、ティアナのやつ・・・・・・妙に勘のいい。なのはとフェイトも騙せるところだったのに。
なんかスバルもキャロも『確かにそうかも』って顔してたのに。・・・・・・可愛げのない子。
「そ、そんな・・・・・・恭文君ひどいよっ! 私達まで騙すなんてっ!!
というか、なんで全編に渡ってそんないい加減な関西弁っ!? もうワケ分かんないしっ!!」
「そうだよっ! お願いだからちゃんとしてくれないかなっ!? さすがにこれはだめだよっ!!」
「なのはさんもフェイトさんもその前に自分をちゃんとしませんっ!? どうしたらこんなバカの口八丁に騙されるんですかっ!!」
「「「え、騙されちゃだめなのっ!?」」」
「アンタまで・・・・・・あぁもうっ! マジでバカでしょっ!!」
ごめん、なのはもフェイトもスバルもちょっとアレ過ぎるよ。僕も相当だと思うけど、これに騙されるのはありえないよ。
「バカ弟子、お前さすがに今のは最低だとアタシは思うぞ」
「やっぱりでっか?」
「やっぱりだ。あと、そのエセ関西弁やめろ。なんかムカつく。
・・・・・・てゆうか、お前そこまでかよ。秘密主義通り越して人間不信のレベルだぞ、それ」
「そうよ。いくらなんでも行き過ぎ。てゆうか、これが局や部隊員としては当たり前なのよ。
で、アンタはその当たり前のことが出来てない。もうちょっとそこの辺りに自覚持ちなさい」
・・・・・・・・・・・・ふん。
「うっさい。お前の言う事なんて知ったこっちゃないし」
「ちょ、なによその態度っ! あぁもう、マジでムカつくわねっ!!」
「じゃあ勝手にムカついてれば? 僕は友達でもなんでもない奴がムカついてようが、気にならないし」
なんか叫ぶけど無視。・・・・・・あぁもう、マジで後悔だ。
ちくしょお、一人だったらこんなめんどくさい問題に着手なんぞしなくてよかったのに。
「と、とにかく・・・・・・ヤスフミ、もうちょっとだけみんなに色々と教えて欲しいな。
私達からは話せない以上、やっぱりヤスフミが頑張る必要あるんだし」
「フェイト、分かってないね。いい? そもそも魔導師というのは」
「そこはもういいからっ! どうしてまたループさせようとするのっ!? ・・・・・・とにかくね」
なのはがコホンと咳払いをして、話し出す。
で、僕は適当に聞いておく。だって・・・・・・ねぇ?
「今日の訓練・・・・・・実を言うと、四人の第一段階の見極めテストも兼ねてたんだ」
『えぇっ!?』
・・・・・・そうだったんだー。知らなかったー。
≪今ここに驚愕の事実が明らかにー≫
「そしてCM−。もしくは次回に続くー」
「・・・・・・お前ら、その棒読みやめろ。マジでムカつく。そしてCMにも入らないし次回にも続かねぇよ」
「てゆうか、恭文、知ってたの?」
スバルの言葉に頷いて答えた。
てゆうか、廊下を呑気に歩いてたら、なのはと師匠とフェイトが今日のことについて相談してたのを聞いた。
「で、実は恭文君にも少し前からちょっとお願いしてたんだ。
隠し手とか、そういうのスバル達の目の前でいきなり使って欲しいって」
「はぁっ!? それどういうことですかっ!!」
「うん、ビックリするよね。私もヴィータも、さっき念話で教えてもらったばかりなんだ」
・・・・・・・・・・・・・・・え?
「てかよ、いきなり過ぎなんだよお前。マジでビックリしたし」
「そうだよ、私も本当にビックリした」
「ごめんね。二人には知らなかった人間の目で、みんなを見て欲しかったんだ」
いやいや、ちょっと待って? 僕それ知らないんだけど。てーか、いきなり何の話してる。
「というかコレ、恭文君のアイディアなんだ」
『えぇっ!?』
・・・・・・こらこら横馬、違うでしょうが。僕のアイディアなんかじゃないし。
「あのね、みんなに結構厳しかったり冷たい事ばかり言ってるんだけど、本当はかなり心配してたんだよ? うん、私達よりも心配してたの」
そんなこと誰が言ったっ!? 毎度毎度のこととは言え、勝手に事実を自分の都合の言いように解釈するのはやめんかいっ!!
てーか、どんな妄想っ!? お願いだから落ち着けよっ! この話ありえないだろうがっ!!
「あ、そこは私もなのはからさっき聞いたよ。事件捜査のために108部隊とこれから連携を強めていく。
だから、現場で咄嗟の判断が求められる可能性も高くなるって、危惧してくれてたんだよね」
「フェイトもお願いだからそのバカな翻訳やめてっ!? そしてそんな事は僕は一言も言ってないっ!!」
いやいや、その『大丈夫だよ、分かってるから』という目はやめてっ! マジで話してないんだからっ!!
「だから、なのはの言うようにみんなに対してちょっと冷たい態度を取ってた。
自分が嫌われ役になってでも、みんなに色んな事をちゃんと考えて欲しかった」
え、なんで僕の的確な発言に関しては全無視っ!?
なんで僕をみんなして『そうだったんだ・・・・・・』って目で見るのさっ! この理論、結構穴だらけだよっ!?
「・・・・・・でも、出来ればちゃんと話して欲しかったな。
ちゃんと話せば、私もそうだし、みんなだって分かってくれたよ?」
「違うっつってるでしょっ! てーか、なんでスバル達の心配なんてしなくちゃいけないのっ!?」
あー、なんかまた視線がー! 視線が優しいー!! やめてー! そんなキラキラした瞳(ティアナ以外)で僕を見ないでー!!
師匠もにやけるなっ! お願いだからこのバカな勘違いしてる連中にアイゼンで一喝してくださいよっ!! どう考えてもおかしいでしょっ!? そしてありえないしっ!!
”横馬っ! なに話してくれてんのっ!? どういうことだよこれっ!!”
”だ、だって・・・・・・みんなとの距離を縮めるには、これが1番いいかなと思って。
勝手にやっちゃったのは悪かったけど、さすがに見てられなかったから・・・・・・”
”いいわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁっ! つーか、おのれは組織運営に置いての僕の役割の重要性が分かって無いでしょっ!!
いいっ!? 僕はスバル達に嫌われる役回りでいいのっ! ぶっちゃけ、これ以上仲良くならなくていいんだよっ!!”
”どうしてそういうこと言うのかな。・・・・・・スバル達は、ずっと待ってるよ? 恭文君に認めてもらうの。心を開いてくれるの。
でもそのためには、恭文君だってぶつかる覚悟を決める必要があるんじゃないのかな。そうじゃなきゃ、絶対ダメだよ”
だぁぁぁぁぁぁぁぁっ! このバカマジでふざけてるしっ!!
あぁもう、他の人間に話してなかったの、失敗だったんじゃないのっ!? せめて隊長達には話しておくべきだったー!!
”だから六課に居る間はそんな必要はないって言ってるでしょっ!? どうしてそれが分からないのさっ!!”
「・・・・・・それでは、先生方、どうだったでしょうか」
”おいこらー! 無視するなー!!”
え、また無視かいっ! あぁもう、コイツマジで信じられないしっ!!
「合格」
「「早っ!!」」
フェイト、即答かい。そりゃあスバルとティアナもびっくりするさ。僕もちょっとビックリだったもん。
でも、今の僕のビックリ具合には負けるよ? 横馬、僕の仕事を見事に台無しにしてくれやがったし。
「ま、これだけみっちりやってダメだったら、逆に問題あるってこった」
で、横目で四人を見ると、表情が明るくなった。
・・・・・・ふん、単純な連中。
「というわけで、第一段階クリア。みんな、おめでと」
『・・・・・・ありがとうございますっ!!』
とりあえず、そっぽを向く。だって、フェイトとかの視線が辛いし。てか、僕ツンデレじゃないし。ツンデレはティアナだし。
あー、疲れた。もう正直帰りたい。空気を読まない横馬なんて、もう顔も見たくない。
「というわけで、帰っていい?」
「いきなり何の話してるのっ!? ・・・・・・とにかく、みんなのデバイスのリミッターも一段階解除するから、あとでシャーリーのところに寄ってね」
≪そう言えば、みなさんのデバイスはリミッターがかかってたんでしたっけ≫
「うん。いきなり全開だと、やっぱり危ないから」
なんでも、スバル達が現在使っているデバイスは、六課からの支給品らしい。
それも、官給品じゃないAI付きのもの。そして高性能。
ただ、その能力は四段階のリミッターがかけられてる。その理由は簡単。
いきなりフルパワーで扱い切れるかどうか分からなかったから。最新型だけあって、結構高出力とか。
スバルやティアナはともかく、何回か言ったけどそこのちびっ子二人は本格的なデバイス使用そのものがない。
そう、リミッターはその辺りを鑑みた処置なのだ。で、今日はその一つ目を外してよしと教導担当から認められたわけ。
現状の能力をみんなが扱い切れると判断したら、リミッターを今回のように一段階ずつ解除していく。
搭載されている形状変換も同じくらしい。ということは、みんなも形状変換使えるのか。・・・・・・まぁ、関係ないや。
「・・・・・・というわけで、今日の訓練は全て終了。みんな、お疲れ様」
『ありがとうございましたっ!!』
で、スバル達は首をかしげる。首をかしげて、もう一度なのはの方を見る。
で、僕も見る。ちょっと気になるところがあったから。
「・・・・・・今日の? あの、午前とか午後の訓練は」
なお、今は早朝訓練なので、午前の結構早い時間です。
「えっとね、ここまでみんなはぶっ続けで休みもなかったから、午後は丸々お休み」
え、そうなのっ!? 僕そこは聞いてなかったのにっ!!
で、フェイトと師匠も・・・・・・コクンと頷いた。うわぁ、なんかすっごいいきなり。
「隊舎の方は隊長達が待機してるし、みんなは今日一日お休み。街の方に出て、遊んでくるといいよ」
『やったー!!』
「あ、ヤスフミも同じくだよ。ずっとお休みなかったし、今日一日は羽を伸ばして来て欲しいな」
とにもかくにも、こうして釈然としない気持ちで始まった。
そう・・・・・・今年最悪の休日が。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
・・・・・・とりあえず、横馬にはしっかりと説教してやった。
はやてとシグナムさんに許可をもらった上で、僕が六課に残留した本当の訳も教えた。
きっと、今頃二人に相当叱られていることだろう。でも、同情しない。
ちくしょお、僕の努力を見事にぶち壊してくれやがって。無駄に距離が縮まるのは嫌だってのに。
「それで、ヤスフミはどうするの?」
「選択肢はある。まぁ、顔馴染みと遊ぶってのは省かれるけど。
ここに居る人間も含めて大半が仕事だし」
「うぅ、ごめん」
隊舎の中、私服に着替えた上でフェイトと談話室でお話。
なお、僕は一人で休みを過ごします。うん、呑気に過ごします。
「街に出て、ゲームショップや同人ショップ巡りする」
「なんというか・・・・・・一人で過ごす選択だね」
「当然でしょ? 遊ぶ相手が」
「お願い、そこは悪かったと思うからもうやめてくれないかな?」
「嫌だ。フェイトのこと、もっともっといじめたいし」
ニッコリ見上げながら言うと、フェイトが困った顔をする。なんか、それが楽しい。
「・・・・・・ヤスフミのいじめっ子。私もなのはみたいにいじめられるんだ」
「うん、いじめるよ。いっぱいフェイトをいじめて、意地悪して・・・・・・。
それで、フェイトが僕にいじめられるのが好きになってもらうの」
「そ、それはちょっと嫌かも。いや、こう・・・・・・なんとなく。ちょっと変態っぽいというかなんというか」
フェイトは戸惑い気味な笑いを僕に返す。どうやら、世間で言われてるほどM属性は無いらしい。でも、Sでもない。
フェイトは不思議な属性の持ち主だと、改めて思う。というか・・・・・・本当に独り占め、したいなぁ。
手を繋ぐとかでもいいから、フェイトが僕のことだけ見てくれる時間があったら、きっと泣きたくなるくらいに嬉しくなる。
・・・・・・やっぱり、僕はヤキモチを焼いてるらしい。それを無条件に出来る人間の顔が二人思い浮かんだから。
フェイトがプライベートの、本当にただのフェイトで居られる時間は、きっと少ない。フェイトはまぁ・・・・・・六課での仕事はちょっと抜いて考えてみよう。
普段から本局所属の執務官としてあっちこっちの世界に飛ぶ事が多くて、エリオとキャロの保護責任者として二人の世話をしてて・・・・・・あれ?
なんだろう、この違和感。今、一瞬だけこう・・・・・・。
「ヤスフミ、どうしたの?」
「あ、ううん。なんでもない。フェイトをどうやっていじめようかなーって考えてたの」
適当な笑いを返して、思考を戻す。まぁ、フェイトの前だから少しだけ。
・・・・・・執務官として、六課分隊長兼捜査主任として、保護責任者として。
今のフェイトの時間を占めているのは、そういう肩書きとか責任の付くものばかり。
今、感じてしまった。そこにただの『フェイト』としての時間は本当にあるのかと。
僕の知っている、僕の大好きなフェイトが自分のために使う時間は、ただの自分として前に進む時間は、本当にあるのかと。
なんだろう、それを見てたら・・・・・・今のフェイトの笑顔がとても危うくて、壊れそうなものに見えてしまった。
・・・・・・・・・・・・もしかしたら僕、今までとんでもないことに気づいてなかった・・・・・・いや、目を背けてたのかも知れない。
とにかく、ここは後で誰かに相談しよう。僕だけの話じゃなくなってくるかも知れない。でも、誰がいいかな。
やっぱり、クロノさんとかかな。ヒロさんサリさんだと、今度はフェイトと距離が開いてるし・・・・・・うし、そうしよう。
「・・・・・・ヤスフミ、私になにするつもりだったのかな」
「えっとね、ほっぺたをつついたりとか、むにーってやさしく引っ張ったりとか? あとは頭を撫でたりとか」
両手を使ってモーションを見せると、真向かいに座るフェイトが少しビックリした顔をした。
・・・・・・本格的な『いじめる』を想像してたのかも知れない。顔がちょっと赤かったから。
「こういうコミュニケーションレベルでからかうとかならオーケーでしょ? てか、フェイトと最近そういうスキンシップしてなかったから、寂しいの」
「そっか。うーん、それくらいなら・・・・・・いいかな。あ、それで同じように私もいじめるよ。私ばかりなんて、ずるいもの」
「うん、いいよ。フェイトにいじめられるなら、受け入れられるし」
・・・・・・やばい、想像してちょっと興奮してきたかも。フェイトがほっぺったつついてきたり、むにーって引っ張ったり・・・・・・あぁ、なんか幸せかも。
僕、ドSだけどいいよね? だって、ドSだから打たれ弱くて好きな子にはいじめられたい願望あるんだし。
「ね、それならスバル達と遊びに行ったらどうかな。きっともっと仲良くなれるよ」
「絶対嫌だ」
即答すると、フェイトがこけた。そしてすぐに立ち上がる。
「・・・・・・どうしてかな」
「んなの決まってる。なんで休みの日にまで四人と顔合わせなくちゃいけないのさ。
それに、はやての話聞いたでしょ? 僕は、四人や他の人間に嫌われるくらいでいいのよ」
なお、フェイトにも話した。師匠も知ってる。・・・・・・はやて、頭抱えてたっけ。
「・・・・・・私は納得してないよ。あとでまたはやてと話すつもりだもの」
「え、なんでっ!?」
「当然だよ。ヤスフミにそんな役をして欲しくない」
「でも、師匠とシグナムさんとグリフィスさんだけじゃ足りないでしょうが。
・・・・・・あぁもう、この話はいい。とにかく、僕はその気はない」
毎日毎日、あのバカ四人と漫才してりゃあさすがに疲れる。僕は一人になってリフレッシュしたいのだ。
具体的には趣味の世界に没頭したいのだ。夏のコミケのカタログがそろそろ出回ってるだろうし、それの確認とかしたいのだ。
「・・・・・・ヤスフミ、みんなのこと嫌いなわけじゃないよね。
さっきだってなんだかんだ言いながらも、スバル達のこと気遣ってたし」
「気のせいだよ。別に僕はスバル達のことなんてなんとも思ってない」
フェイトのフラグを成立させるなら、エリキャロとは交流を深めなくちゃいけないんだろうけど・・・・・・なんかそれもなぁ。
「てゆうかさ、フェイト」
「なに?」
「さすがに成人向けの商品が置いてあるコーナーに、スバル達連れてくわけにはいかないでしょ」
フェイトの顔が一瞬で真っ赤になる。そして、動揺する。
それはもう分かりやすいくらいにあたふたと慌てて、僕を見る瞳が揺れている。
「え、えっと・・・・・・どうしてそうなるのかな」
「あのね、同人ショップって基本的にはそういう区切りとかが無いのよ」
簡潔に説明する。ショップは、場合によっては一般向けと成人向けが一緒くたに置かれてる場合もあると。
ようするに、R18みたいな暖簾が無い場合があるってことだね。りゅうのあなとかそれだし。
で、そこまで説明すると・・・・・・フェイトは納得してくれた。
「そういうところに行くのは、ちょっと困るかも。特にエリオとキャロはまだ子どもだし。というか・・・・・・ヤスフミ、そういうの興味あるの?」
「違うよ。行こうと思ってるところがそういう配置だからさ、やっぱり慣れてる人じゃないと連れてくの躊躇うのよ。・・・・・・連中だと、平然とついて来そうだし」
ティアナは言っても意地を張ってついて来る。で、現場でギャーギャー騒ぐのだ。
そして、お店と周りのお客と僕に非常に迷惑をかける。
「・・・・・・ありえそうだね」
「でしょ?」
そして、スバルは空気を読まない。そもそもどういう場所かも分からず『勝手に行動なんてだめだよっ!!』とか言って無理矢理来る。
当然、現場を見て騒ぐ。そしてお店と周りのお客となにより僕に多大な迷惑をかける。
「ごめん、私は何も否定出来ないよ。それもありえそう」
「でしょ? で、最後にエリオとキャロだよ」
二人はなんか普通に僕の後をつけて来そうだ。一緒に行動して交流を深めようと一途な気持ちで。
なので、現場を見て騒ぐ。そしてお店と周りのお客と誰よりも僕にとてつもない迷惑をかける。
・・・・・・だめだ、どう考えても僕の息抜きが出来ない。何のための休日か分からない。
もっと言うと、連中と過ごすと僕は休日にならない。絶対神経すり減らす。
「・・・・・・・・・・・・なんでだろう、何も反論出来ない。100%じゃないけど、ありえそうだもの」
「納得してくれて嬉しいよ。というわけなので、スバルともティアナともエリキャロとも過ごせない。
てか、過ごすと僕は休みにならない。・・・・・・オーケー?」
「うん・・・・・どうしてもだめ?」
「だめ。てゆうか、僕はどうせだったら休日はフェイトと過ごしたかったの」
フェイトと過ごせないのに、スバル達と居たって楽しめるわけがない。
「なので、久々のデート・・・・・・近日中に決行するから」
「・・・・・・あ、あの・・・・・・どうしてかな」
「だって、フェイトはあっちこっちの世界に行ってるし、プライベートな時間は全てエリキャロのために使ってるし」
少し、吐き出すことにした。きっと・・・・・・気づいた事実があんまりに重くて、怖いから。
「僕、ここ1年近く・・・・・・フェイトとプライベートで遊んだ記憶、そんなにないよ? せいぜい年越しとか、本局で一緒にご飯食べたりとか、そういうことくらいで。うん、ぶっちゃけちゃうと寂しい」
「・・・・・・あの、ごめん。やっぱり、お仕事は頑張りたいし、エリオとキャロのことは大事で・・・・・・別にヤスフミのことがどうでもよくなったとかじゃないの。ただ、あの」
「そういうことじゃないよ。まぁ、それもあるけど・・・・・・少し違う」
だからかも知れない。こういう余計な事を言いたくなるのは。今のフェイトを見ていて、怖い。
エリオとキャロ、仕事に自分の全ての時間を使うような生活を送っているフェイトを見ていて・・・・・・怖いものを感じる。
「ね、フェイト。少しだけ真面目な話。・・・・・・フェイト、あんまりにエリオとキャロ、執務官の仕事に時間を費やしすぎてるんじゃないかな」
「・・・・・・どういうこと?」
「さっき話した僕の事はまぁ、一例として聞いて? 例えば・・・・・・うーん、そうだなぁ。
安直ではあるけど、自分の趣味に使う時間とか、友人と遊ぶ時間とか、ちゃんと取れてる?」
フェイトは・・・・・・首を縦に振った。
「嘘だよね」
だから、僕はそれを否定した。・・・・・・うん、知ってる。よく知ってるよ。
まず僕のことが一例としてある。でも、それだけじゃない。
「なのはやはやてみたいな幼馴染と旅行とか、遊ぶ機会も明らかに少なくなってる。
はやてがそれでちょっとボヤいてたって、リインから聞いてるもの」
まぁ、ここは仕方ない。三人がやってる仕事の内容と、勤務地が違うってのもあるんだし。
ただ、三人揃って人事部から散々『お願いだから休みを取ってください』と懇願されてるブラックリスト直行な方なのは、言うまでもない。
その中でダントツなのが、教導官という前線に出ない仕事をやってるなのはってのが一番おかしい。
・・・・・・とりあえず、なのはのことはユーノ先生辺りに話すとしよう。僕はフェイトだ。
「もっと言うと、恋愛。そこまでいかなくても、仲のいい異性と話したりとか、気になる相手を作ったりとか。そういうのもないでしょ」
「そうだね。やっぱり、仕事が好きだし、エリオとキャロが大きくなるまではちゃんと側に居てあげたいんだ。
だって、私は二人の保護責任者で、執務官だから。私のやるべき事、やらなきゃいけない事を一番に考えたい」
「・・・・・・そっか。なら、フェイトの自分のための時間はどうするの?」
「え?」
「今フェイトが話した事は、全部責任と義務ばかり。もっと言えば・・・・・・そうだな。
純粋にフェイトのためだけのわがままや『やりたい事』が一つも存在してない」
執務官も二人の世話も、全部誰かのため。それらは今僕が言った事とは違うと思う。
まぁ、僕も人の事は言えない。うん、言えない。
「自分のためだけに時間を使ったり、気になる相手が出来てドキドキしたり、その人と一緒に居たり。
そういうフェイトだけの時間は、自分のやりたい事をやるための時間は、いつ始まるのさ」
なんだかんだでこの中で一番バカやってるのは僕だから。
言えないけど・・・・・・今までを見る限り、リンディさんもクロノさん、エイミィさんも何も言ってない。
「あのね、フェイト。エリオとキャロのことがあるのもわかるし、仕事のことがあるのもわかる。
でも、そんなこと言ってたら、それ以外の新しい事なんて、何時まで経っても何も始まんないでしょうが」
アルフさんに居たっては『フェイトマンセー』だから気にしない。
まぁ、実際にどうかは分からないんだし、軽く釘を刺すだけに留めておくことにする。
「フェイト、今自分が言ったこと、もう一度だけよく考えてくれないかな。本当にそれがいいことなのか。
・・・・・・僕は今フェイトの話を聞いて、ハッキリ分かった。フェイト、言い訳してる。そして諦めてる」
「・・・・・・ヤスフミ、待って。それどういう意味かな。
私分からないよ。私、言い訳なんてしてない。諦めてもいないよ」
「まず自分で考えて。それでどうしても分からなかったら・・・・・・教えるよ。てか、僕も考え纏めたい」
とにかく、その場で話を打ち切って、外に出た。フェイトは納得していない様子だったけど・・・・・・分かって、くれないよね。
やっぱり、ここは相談か。マジモンだった場合、僕一人でどうにか出来るレベルじゃない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
とにもかくにも、うちに戻る時間も惜しいので、そのまま市内へ出てきた。で・・・・・・当然のようにこの人に通信をかける。
クラナガン市内の公園でぼんやりと空を見ながら、突然の通信にも嫌な顔せずに出てくれたお兄さんに今日気づいたことを話した。
「・・・・・・まぁ、かなり纏まりがなくて、主観的な物言いになっちゃったんですけど」
『いや、問題ない。話は大体飲み込めた。・・・・・・お前よりも僕の方がフェイトとの付き合いは長いんだ。お前の感じたものがどれほどのものかは理解出来る』
そう、クロノさんだ。なんでもどこぞへ移動中とかで、車の中で話してる。で、服装は提督服。
・・・・・・なんというか、似合わない。艦長になってもバリアジャケット(もしくはそのインナー)装着が常な人だから、どうしても違和感がある。
というより、僕は公式行事やお偉方に会う場合以外でクロノさんが仕事中に局の制服を着ているのを見たことがない。
もしかしたら、そういう現場主義で気持ちを常に前線に向けている人だから、部下も付いて来るのかなと思った。
『まず、お前が思っているより執務官としての仕事は忙しい。フェイトの忙しさはまだその中でも普通の範疇だ。なんでもかんでも、学生であった昔通りにはいかないさ』
「そこはまぁ・・・・・・一応は予測していました。ただ、仕事だけの話じゃないんです」
『エリオとキャロのことだな』
クロノさんの言葉に頷いて答える。・・・・・・エリオとキャロだ。
フェイトの保護児童で、フェイトが自分の時間を割いてまで・・・・・・そう、割いてまで守ろうとしている子ども達。
で、僕のヤキモチの対象。だったんだけど・・・・・・もう話はいろいろと変わってきた。
二人のあれこれに構ったりヤキモチを焼いている場合じゃないから。
『エリオとキャロの事、そして執務官としての仕事、それらがフェイトのプライベートな時間・・・・・・。
自分の趣味や人付き合い、恋愛と言った要素にまで影響を与えている。いや、与え過ぎているか?』
「そうじゃないかなと。それで・・・・・・」
どうしよう、口に出すのが怖い。だけど、言わなきゃいけない。
僕は、なんであれフェイトに幸せになって欲しい。フェイトが笑っていないのは絶対に嫌だ。
だから、考えなくちゃいけない。
『フェイトは、自分から望んでそうしている』
ようするにだ、フェイトは自分から望んで、純粋に自分のために使える時間を無くしている。
元々心の中にあるなのは達や家族の存在と、エリオとキャロの世話と、執務官としての仕事だけで自分をいっぱいにしている。
もうこれ以上は入らない。だから、自分のためになんて時間を使えない。そう・・・・・・言ってるように聞こえた。
そして、もしそれが意識せずにフェイトが自分から望んでいたことだとしたら?
そう、意識・・・・・・自覚もせずに望んでいると仮定しよう。その場合どうなるか。
その場合、話は色々と変わってくる。というより、ある可能性が出てくる。
『いや、無意識に自分のために時間を使うことを、そのためにわがままになることを否定・・・・・・恐れている』
クロノさんが言い直したのは言うまでもない。僕も、ハラオウン家のみんなも知ってるからだ。
フェイトが、気づかないうちにその選択を取るに足る理由を。
・・・・・・フェイトの生まれの秘密。それは、一人の女の子のクローンであったという事実。
そして、自分を生み出した母親から否定されたという現実。
もしかしたら今なお、それらがフェイトの事を奥底で縛っている可能性がある。
自分はクローンで、母親から『いらない』と言われた存在。その事実が、フェイトの可能性を狭めている。
そんな自分は、普通の幸せなんて手に出来ないのは当たり前。でも、自分はこんなに幸せになれた。
今はとても幸せ。家族が居て、友達が居て、打ち込める仕事があって・・・・・・。
そう、充分幸せ。もう充分過ぎるから、これ以上はいらない。これ以上は望んではいけない。
フェイトは心のどこかで、そんな風に考えているのかも知れない。
だから、あの時言い切った。エリオとキャロ、そして自分の仕事を言い訳にした。
それへの憧れも見せずに『自分のための時間と幸せはいらない』と言い切った。
少なくとも僕には、そう聞こえた。うん、そう聞こえてしまった。
『もし本当にそうだとしたら・・・・・・重症だな』
「ですよね」
フェイトがハラオウン家の家族になってから、もう10年。人が変わるには充分過ぎる時間。
だけど、たった10年。それだけじゃあ変えられないものもある。そして、それがこれ。
これが事実なら、温かい家族の温もりでも、大事な仲間達に囲まれる日々でも、傷は癒せなかったということになる。
そう、フェイトは全てを払拭出来ているわけじゃなかった。普通と違う部分を理由に、言い訳をしているかも知れない。
言い訳をして、自分の中に新しいものを一つとして入れないようにしているように感じた。
きっと、それはすごく悲しい事。自分で、新しい可能性を殺しているのと同じ。
それがどういう意味を、どういう未来を呼び込むかは、各自の想像に任せることにする。
「・・・・・・クロノさん」
『なんだ?』
「普通と違うって、やっぱり大きいんでしょうか」
空を見上げ続ける。高くて、青くて・・・・・・広い空を。その空に浮かぶ二つの月を見る。
ミッドの月は、昼間でもハッキリと見える。とても綺麗で・・・・・・だけど、今はいつもと違って、少しだけ悲しい色に見える。
「僕は、フェイトが普通と違うから何かを諦めなきゃいけないなんて、絶対に思わない。そんなの、認められない」
これは一つの実感として言ってる。普通と違う人達に、これまで沢山会ってきた。
その人達はみんな自分と他の人達との差異に苦しんだ事があった。
だけど、みんなそれぞれに自分のための時間を。自分のための幸せを探して、手にしようとして・・・・・・。
僕の心配性とかならいい。勘違いとかならいい。幸せの形なんて、人それぞれだから。
フェイトがそういうのも込みで、ちゃんと自覚した上で選んでるなら、多分言う権利は僕にも・・・・・・ううん、誰にもない。
でも、そうじゃないなら・・・・・・意識せずに諦めてるなら、絶対に何とかしたい。
例え選ぶのがフェイト自身でも、何とかしたい。最低でも、自覚はさせたい。
『そうだな。このままではお前はフェイトとは永遠に付き合えないのは確定だ』
「そうじゃありません」
語気を強めて、クロノさんの言葉を否定する。クロノさんがそれに首をかしげる。
・・・・・・だから、こう訂正する。
「フェイトが、自分のための時間を、今とは違う可能性に永遠に触れられないのが、確定なんです。別に、そういう相手は僕じゃなくていいです。
僕は・・・・・・フェイトが笑顔じゃないのが、幸せじゃないのが嫌なだけです。ほら、やっぱり諦めは、後悔に繋がると思うんですよ。それも確実に」
そして、後悔は今ある時間への疑問に繋がる。『もし・たら・れば』なんて言っても無意味だと分かっていても、疑問は持ってしまう。
例え、10秒前まで何の不満のない、幸せな世界と時間だったとしても、そうなってしまえば、もうその幸せは・・・・・・消える。
『・・・・・・そうだな、その通りだ。だが恭文、フェイトが実際にどう思っているかは不明だ』
「ですね。結局、今の話は全部僕の主観で、フェイト自身は全くそんなつもりないかも知れませんし」
『なので、僕も機会を見つけて話す。それでまずいようなら、色々と考えていくということで、どうだ?』
「そうですね・・・・・・うん、それでお願いします」
別に、フェイトが今幸せじゃないとは言ってない。だけど、諦めてる部分があるように感じる。
それも無意識に、自分から遠ざけて、目を閉じて気づかないようにしてる。出来れば、なんとかしたい。
というかさ、さすがにフェイトがずっと独身とかで、百合百合な関係とかも無しだったら、ビックリするもん。
そういう恋愛関係や自分のわがままが全てだとは言わない。言うつもりなんてない。
でも、さっき言った通り、もし自覚のない諦めがあるのなら、なんとかしなくちゃいけない。
きっと後悔する。フェイト自身が惹かれる相手が出てきても、今のフェイトは知らないうちに言い訳をするように思う。
『私にはエリオとキャロのことがある、仕事がある。だからこれ以上はいらない』と言い訳して、止まる。
で、そうこうしている間にその相手は別の誰かとくっついて・・・・・・自覚無しで失恋だよ。
フェイトは理由も分からずにその後悔に苛まれ続ける。そして、自覚がないからそれを繰り返し続ける。
さすがにそれはだめでしょ。まだ確定じゃないとは言え、濃厚なのは確実。だったら、しっかり考えていかないと。
『だが恭文』
「はい?」
『今のお前では、フェイトにその言葉は届けられないぞ』
僕は・・・・・・頷いた。ここ最近色々考えて、まだ悩んでるから。
そして、改めて考えて分かったから。僕も、諦めてる部分が、言い訳してる部分があると。
『なんだ、自覚はあったのか』
「最近気づきました。でも・・・・・・どうしたらいいのか、分からないんです。
僕の目指したいものは、局の中にも、知っている世界の中にも今はなくて」
『完全ではなくても、近い役職の中にその姿を見つけるという方法もあるにはある。
それが社会に出る上で必須とも言うべき折衷案だ。だが、お前は納得出来ないんだろうな』
「・・・・・・僕、やっぱ迷惑かけちゃいます」
・・・・・・・・・・・・だめだ。僕も言い訳してる。『迷惑をかける』と、『みんなと同じになれない』と言い訳して、諦めてるものがある。
フェイトのことを心配する前に、自分をなんとかしたい。僕も・・・・・・諦めたくなんてない。何も、諦めたくなんてない。
でも、忘れる事も、下ろす事もやっぱり出来なくて、局や世界の中に自分の居場所やなりたい形を見つけることも出来なくて・・・・・・。
僕、だめだな。フェイトのこと言えないや。・・・・・・どうしよう。こんなことじゃ、フェイトの今を変えることなんて、出来ないに決まってるのに。
『ならば、迷惑をかければいいだろう』
そう腕を組み、しっかりと俯く僕を見ながら言ってきた。
瞳は逸らさず、力強い輝きで満ち溢れている。
『恭文、お前はバカだ。ハッキリ言って大バカだ』
「な、なんですかいきなりっ!!」
『事実だから仕方ないだろう? ・・・・・・いいか、お前はとても大切な事を忘れている』
真っ直ぐに僕を見るクロノさんの瞳を受けつつ、言葉を待つ。
クロノさんは少し考えを纏めていたのか、数秒後・・・・・・その言葉は出てきた。
『お前が今一番どうしたいのか、どうありたいのか、どこに居たいのか。
何を守り、何を壊し、何を未来に繋いでいきたいのか。それをよくを考えろ』
僕がどうしたくて、どうありたくて、どこに居たいのか。
そして、何を守りたくて、何を壊したくて、何を未来に繋いでいきたいのか・・・・・・。
『考えて、答えを出せ。誰でもない、誰のためでもない、お前の・・・・・・何も諦めたりなどしていない、お前の答えをだ。
そしてそれを貫け。いいか、お前が居たいと思えば、そこがお前の居場所だ。誰にもそれを変える事など出来ない』
クロノさん・・・・・・。
「それで迷惑をかける? バカを言うな。そんな事を言えば、人類は誰でも皆『産まれてごめんなさい』状態だ。
そうして貫いた結果出てくる荷物は、全部持っていけばいい。・・・・・・どうやら、まず自分の事のようだな』
「そうですね、ちょっと考えてみます。あの、クロノさん」
『礼ならいらないぞ。僕はお前の師匠三号なんだからな』
「・・・・・・はい」
そして、行き先に到着したクロノさんに、またと挨拶した上で通信を終える。
ベンチに座りながら、ちょっと背伸び。背伸びして空を見上げる。
空の色は、そして二つの月の中から、、少しだけ悲しい色が無くなっていた。
「あぁ、そうだ。・・・・・・クロノさん」
終える前に、本当に一言だけ言おう。
今日のスバル達を見てて、少し気になってしまったから。
『なんだ?』
「・・・・・・僕に隠してること、ありますよね? 六課の設立関係の話で。
例えば、非公式の後見人が居るとか」
そう口にすると、クロノさんが固まった。それはもうバッチリ。
『・・・・・・サリエルさん達からか?』
「さぁ、どうでしょ。・・・・・・まぁ、何も言いませんよ」
てか、僕には言う権利なんてない。うん、色んな意味で無いのよ。
「でも、局の都合で六課に居る人間の未来を潰すようなことをしたら・・・・・・許しませんから。
顔見知りだけの話じゃない。大事な夢を、想いを貫くためにあそこに居る人間だって居るんですから」
なぜだろう、そう言った瞬間にあのツインテールの子の顔が思い浮かんだ。
・・・・・・まぁ、あの子がその最も足る例だと感じたからだろうね。うん、そうに違いない。
『分かっている。僕達のありったけで、そこの辺りはしっかりやらせてもらう。もちろん、お前も含めてだ。
・・・・・・すまないな。僕は正直、お前にさっきのような偉そうなことを言える立場じゃない。むしろ、謝る立場だ』
「別に構いませんよ。僕はまぁなんとかなりますから、他だけちゃんとしてくれさえすれば。
まぁ、後はまた美味しいものでもご馳走してくださいよ。それでいいですから」
『あぁ、分かった。いい店がないかどうか、探しておくことにする』
うん、それでいい。結局、関わるのは僕のわがままだもの。
ここは今までと同じ。・・・・・・あぁ、そうか。今までと同じなんだ。
なんだろう、こう・・・・・・すごく嬉しくなってきた。
(第5話へ続く)
あとがき
古鉄≪というわけで、色々反響がありそうなフェイトさんの諦めについて描いた第4話、みなさん如何だったでしょうか。
まぁ、誰かのためとかじゃなくて、純粋に自分のためだけのわがままは必要という話をしたかったんですよね≫
あむ「うーん、よくわかんないけど・・・・・・なりたい自分になって、やりたいことを考えるってこと?
仕事とか、そういうこと以外・・・・・・もっと言うと、プライベートな部分で」
古鉄≪そうですね。・・・・・・というわけで、本日のあとがきのお相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫
あむ「えっと、日奈森あむです。うぅ、原作の最新刊10巻でちょっと大変な事になってるけど、あたしは頑張るぞー!!」
(現・魔法少女、ここは大きく叫びたいらしい。というか、宣伝?)
古鉄≪なんというか、しゅごキャラとクロスするようになってから作者が考えていることなんですが≫
あむ「なにかな」
古鉄≪高町教導官やフェイトさんにはやてさんは、本当の意味で『なりたい自分』になれているかということなんですよ≫
あむ「あー、なんか言ってたね。というか、この辺りはアレでしょ?
はやてさんはこう・・・・・・事情込みだからまぁ仕方が無い部分があるとして」
(詳しくはリリカルなのは第二期をごらんください)
あむ「フェイトさんやなのはさんは、普通に色んな選択肢が取れる状態ではあったのに、9歳で局の仕事一本に絞っちゃったのが問題かも知れないと」
古鉄≪というか、問題です。やりたい事とか、能力的な部分が局の仕事に適合したのは分かるんですよ。
ただ、そこから10年も一直線はどうなのかなとか思うわけですよ。ほら、あるじゃないですか。14歳の病気とか≫
あむ「・・・・・・え、なにそれ」
古鉄≪そういうのがあるんですよ。こう・・・・・・真夏の寝苦しい日に、寝付けなくて深夜の2時とか3時くらいまで、深夜ラジオをなんとなしに聴きながら考えるわけです≫
(現・魔法少女、とりあえず聞く事にしたらしい。そのまま青いウサギをジッと見る)
古鉄≪『将来俺、どうすんのかな。10年後、なにやってんだろ。てーか、俺なんで生きてんだろ』・・・・・・みたいなことをですよ。
今や未来の自分にとっての不透明な部分に対しての『なぜ』を考えるのって、誰でも通る道だと思うわけです≫
あむ「え、そういうもんなの? あたしはなんかこう・・・・・・今アルトアイゼンが話したくらいの重さは無いんだけど。
いや、一応そういうのは考えるけど、今の話はなんか重いよ。もう声のトーンから違ってたし」
古鉄≪考えるんですよ。現にマスターや作者はそういうのありました。ただですよ、高町教導官達はなさそうなんですよ≫
(というか、この話の中では無いという体で進めておりますので、あしからず)
古鉄≪まず、9歳の時点で本来不透明であるはずの部分がハッキリしちゃってるじゃないですか。
だから、普通の思春期の人間が経験するほど深い感じにはなっていないんではないかと≫
あむ「・・・・・・まぁ、その辺りについてはわからないけどさ。正直、あたしはそれちょっと嫌かも」
(あ、なんだかグサっと突き刺さる音が聞こえた)
あむ「だって、空海だって前に言ってたし。自分が自分で分からないってことは、どんな自分にもなれるって」
(詳しくは、しゅごキャラ原作第4巻をお読みください)
古鉄≪あぁ、アレもいい台詞ですよね。作者も感銘を受けたんですよ。あと、テレビオリジナルの詩音さん絡みの話でも似たようなことを言っているんですよね≫
あむ「しゅごキャラクロス15・16でやったアレだね。えっと、『どこまでやれるか分からないってことは、どこまでだっていける』っだっけ」
古鉄≪空海さん、やっぱり何気にフラグメイカーですよね。恐ろしい恐ろしい。こういう台詞で女を落とすんですよ≫
あむ「あー、詩音さんもフラグ立った感じだったしなー。・・・・・で、なんの話だっけ」
古鉄≪ようするに、何になれるかを自分の気持ちだけではなく、管理局という組織からもしっかり認められて、決めてしまっているメイン三人はどうなるのかってことですよ≫
(なお、今回はフェイトメインでやってたりします)
あむ「じゃあ、特に生まれがどうこうの話って」
古鉄≪実はそんなに関係ないかも知れません≫
あむ「そうなのっ!?」
古鉄≪本来分からないはずのものが分かってしまっている場合、どうなるのかを書きたいだけだそうですし。
なんか、自分に疑問を持たない感じがするんですよ。もっと言えば、管理局の魔導師以外の選択肢を考えない≫
あむ「いやいや、さすがにそれは・・・・・・あれ、なんか否定出来ない。
普通に大変なことがあっても、現状を変えるために頑張ろうとする姿しか想像出来ない」
古鉄≪なんというか、しゅごキャラを見る前はそれほど違和感を感じなかったんですけど、見てからはその辺りが凄まじいんです。
その選択を取らせてしまう周囲の人間の選択や指導は色々と間違っているんじゃないかと≫
(そうやって考えると、フェイトとエリオとキャロ、なのはとヴィヴィオ、はやてとリインの関係も、また違った色で見えるのです)
古鉄≪まぁ、全くの別作品で一緒にするのはおかしいと言う人も居るかも知れません。
ですが、しゅごキャラのテーマはリアルにどこにでも通じるものじゃないですか≫
あむ「なりたい自分、未来への可能性。それが産む希望や不安・・・・・・あー、なんかなのはさん達通り過ぎてるかも。
すっごいそこを通り過ぎてるのかも。でも、それを言えば恭文・・・・・・はまだいいのか。普通ではないけど、その辺りは割合あたし達に近い」
古鉄≪この辺り、嘱託なのが大きいですね。中に入って一本道に入ってなかったから、まだ違和感は少ないんですよ。
もっと言えば、自分の中でやりたい事やなりたい自分があっても、そこへの道筋を見極められてない状態です≫
あむ「そこを見極めるのが、IFヒロインルートなんだね」
(・・・・・・そう言えば、そんな趣旨になってきているような)
古鉄≪とにかく、リリカルなのはのキャラは一般的な経過ではないですよね。それが悪い事とは言えませんけど。
あむさん、あなたはどうです? この話の中では魔法文化や色んなものに触れているわけですが≫
あむ「うーん、そうだな。やっぱりさ、リンディさんに誘われたりはしたけど、普通に色んな選択を考えたいとは思うんだ。
あのね、恭文にも結構相談してるの。それで、子どもの頃の話とかいろいろ聞いて・・・・・・」
(この後、延々と『なりたい自分』についての話になるので、ここで映像は途切れる。
本日のED:Buono!『こころのたまご』)
フェイト「・・・・・・ヤスフミ、あむとそんな話してたの?」
恭文「あー、ちょくちょくね。ほら、しゅごキャラクロスだとディードを引き取ったりしたしさ。
僕もあむ達と仲良くなって、『なりたい自分』について色々と考えて・・・・・・自然とね」
フェイト「そっか。でも、私になりたい自分・・・・・・なんだろう、執務官やエリオとキャロの保護者というだけじゃダメなのかな」
恭文「ダメではないと思う。ただ、それだけなのがダメなんじゃないかな。例えばフェイトで言うと」
(一期でSLBで貫かれる→アースラに拘留・そこから嘱託になる→二期で執務官になると決める→そしてそのまま三期)
恭文「まぁ、少し省略したけど、執務官・・・・・・職業魔導師になる以外の選択を考えてないんじゃないの?
せっかく海鳴で小学生になって、同年代の子と過ごす機会があったのに、それはダメだと思う」
リイン「もちろん、志望とかやりたいことの方向性が重なったからなのは分かるのです。
でも、あんまりに固まり過ぎて、それだけになり過ぎてるのが問題なのですね。恭文さんにも言えることですけど」
恭文「あー、そこは確かにね。僕はまだあやふやだったけど、それでも方向性はがっしりだったし。
多分、最初の段階から『魔法』が使える魔法使いになりたいと思ってて、そこに一直線だったかも」
フェイト「自分が分かり過ぎてたのがちょっといけなかった・・・・・・って考えればいいのかな。何をしたくて、どうすればそう出来るのとか。
ほら、空海君が言ってたみたいに、分からないということは、どんな自分にもなれると考えると、それは可能性を狭めかねない」
恭文「そういうことだね。・・・・・・よし、フェイト。僕達はもうちょっとディードやエリキャロと話していこうよ。今すぐ分からなくてもいいんだって、しっかり伝えないと」
フェイト「そうだね。どんな自分にもなれる・・・・・・色んな可能性があるのは、とても素敵なことだもの。ちゃんと、ゆっくりでいいから考えて欲しい」
(おしまい)
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