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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第2話 『暗中模索な日々?』



???「しゅごしゅごー!!」

???「ドキっとスタートStS・Remixタイム。今日のお話は、前回の続きですぅ」

???「六課にやってきた恭文は、早速なのはさんと戦闘・・・・・・というか、喧嘩。
まぁ、それでお互いに悪いところがあったと、なのはさんもティアナさん達と仲直り出来てよかったよね」

???「でもでも、その代わりに恭文さんは六課を・・・・・・!!」





(立ち上がるモニターに映るのは、憂鬱そうに窓の外の景色を見る青い古き鉄。
なんだか錆氏王・・・・・・もとい、寂しそう)





???「うぅ、これはあんまりですぅー! 1話目にして新訳の意味がなくなってるじゃないですかっ!!
というか、スゥはプンプンなのですっ! 恭文さんはなんにも悪い事してないじゃないですかっ!! ただ巻き込まれただけですよっ!?」

???「でも、恭文が部隊・・・・・・引いては組織の一員として、ダメな事をしたのは事実。
そこの辺りで責任を取らなきゃいけないのは、当然と言えば当然だもの」

???「うーん、なんだか難しいねぇ。とにかく、そこの辺りも含めて今回も・・・・・・せーのっ!!」

恭文「せーのちゃうわボケっ! なに普通に出てきてるっ!?」





(青い古き鉄、いきなりこれは疑問だったらしい。というか、ちょっと角が生えてる)





古鉄≪というより、時系列で言うとあなた達、この段階ではまだ生まれてきてないじゃないですか。
ちょうど私達が幽霊列車で大変な時に誕生じゃないですか。なんでここに居るんですか≫

???「大丈夫ですよぉ? スゥは、恭文さんの現地妻7号として、精一杯の応援を」

恭文「応援はありがたいけど現地妻としてはやめてっ!? とにかく・・・・・・ほらほら、全員しゅごキャラクロスの方に戻ってっ! ここで出てきてもちょっとアレなんだからっ!!」

???『ひどいよ(ですぅ)ー!!』

古鉄≪唐突に出てくるのが問題でしょ。・・・・・・とにかく、期待の第2話、始まります。
せーの・・・・・・ボンジャーッ!!≫

???「ボンジャーッ!!」

恭文「だからそれやめいっ! しゅごボンバーの話はいいからっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・・・・・・・さて、OPで時系列完全無視な妙な前説入ったけど、早速質問や」

「え、アレ見えてたのっ!?」

「まぁな。・・・・・・アンタ、医務室でゆっくり休んだはずやのに、なんで目の下にクマ作ってるんよ」



そっか、やっぱりそこ気にするか。そうだよね、分かってた。すっごい分かってた。



「・・・・・・・・・・・・寝ようとしたら、中原麻衣ボイスの叫び声がリピートされて、結局夜の10時くらいから一睡も出来なくて」



そこで気づいた。ティアナって中原麻衣さんと声がクリソツだと。あぁ、だからなんか親しみやすい印象だったんだと納得した。

ゆかなさんの次の次くらいだけど、一応ファンだし。そう考えると、ティアナが少し可愛く見えるから不思議だ。



「蒼凪・・・・・・お前、身体を休ませるどころか徹夜とはどういうことだ」

「寝ようとはしました。したけど・・・・・・ダメでした」





だって、しゃあないじゃん。ティアの叫び声があんまりにアレだったんだから。

アレだよ、近年のホラー映画だってあそこまで立派な叫び声は出せないって。

そんな叫び声を真横で上げられたら、脳裏に刻み込まれるって、そりゃあ。



・・・・・・現在、朝。とってもダルい身体で、部隊長室に来た。

で、呆れ顔のはやてとシグナムさんを見て、疲れが増してくる。

なお、隣でプカプカ浮かびながら頭を撫でてくれるパートナーのおかげでなんとか立ててる。





「恭文さん、大丈夫ですか? うー、いい子いい子です」



そう、リインである。・・・・・・あぁ、この慈愛の感触がとても嬉しい。というか、幸せ。



「あんま大丈夫じゃない。・・・・・・ね、立ったまま寝ていい?」

「ダメに決まってるだろうがこのバカ者っ! 全く、お前という奴は本当に・・・・・・!!
昨日自分が何をしでかしたのか、もう忘れたのかっ!?」

「嫌だなぁシグナムさん、8年の付き合いなのに知らないんですか?
僕、過去は振り返らない主義なんですけど」



何故だろう、すっごい勢いで拳が飛んできた。なので、当然のように僕はそれを頭突きで受け止める。

というか、拳に向かって頭突きする。頭を上げると、なんかシグナムさんが右拳を痛そうに抱えていた。



「シグナムっ! アンタ大丈夫かっ!?」

「・・・・・・大丈夫、です。蒼凪、お前・・・・・・いい度胸だな」



うーん、何故だろう。なんかシグナムさんがすっごい勢いで睨んでくる。

うー、怖いよー。おじさん怖いよー。・・・・・・てゆうか、ここはちゃんと言っておこう。



「いやいや、今のは事故でしょ? というか、人にいきなり殴りかかろうとするからそうなるんですよ」



鉄拳制裁など勢いでするものじゃないのですよ。てゆうか、副隊長がこんな喧嘩っ早くてどうするのさ。

お願いだから、もうちょいKOOLになって欲しい。・・・・・・いや、なってるのか。



「頭がすごい勢いで動いて、私の拳に対してピッタリなカウンターをかましておいてなぜそんなことが言えるっ!? 今のが事故なわけなかろうっ!!
えぇい、もういいっ! アルトアイゼンを抜けっ!! いい機会だから部隊人としての覚悟をこの私自らお前の性根に叩き込んで」

「あかんってっ! シグナム、アンタ今の恭文がシャマルからドクターストップかけられてるの知ってるやろっ!!」

「ならば私にどうしろとっ!?」

「とりあえずアンタの望む答えは出せんっ! ちゅうわけやからレヴァンティンに手を伸ばすのやめんかっ!!」



なんか言い出してるので、僕はため息を吐いて懐に手を伸ばす。そして、あるものを取り出す。



「あいにく、そんな覚悟を叩き込む必要はありませんよ」

「なんだとっ!? 貴様、それはどういう意味だっ!!」

「こういう意味です」



そう言いながら、はやての傍らに立っていたシグナムさんにそれを差し出す。

シグナムさんは憮然としながらもそれを受け取って、どこかイラつきながらもそれに目を通す。



「・・・・・・・・・・・・蒼凪」



通して・・・・・・固まった。で、固まったのははやてとリインも。

僕が差し出したあるもの・・・・・・封筒を見て、完全に固まった。



「ね、必要ないでしょ?」

「自分・・・・・・こんなん、いつ用意したんや」

「ここに来る事が決まったその日に」



僕がそうあっけらかんと口にすると、シグナムさんも、はやても、リインも驚いた顔をする。

・・・・・・予想してなかったのかね。うーん、ここは意外。



「てゆうか、こうするのが一番いいよ」





僕をこのまま残しても、隊長陣はともかく一般的な部隊員は納得しないでしょ。

・・・・・・差し出したのは、さっきも言ったけど一つの封筒。

そして、この封筒の表にはこう書かれている。もう頑張ったから、すっごい綺麗な字で。



『契約解除書類・一式』と。これは、嘱託の現場契約の解除書類。

ようするに、今やっている仕事を、拠所ない事情でやめる際に書く書類だね。

で、僕が書かなきゃいけないとこは全部書いてる。それはもうビッシリと。



あとは日付を入れて、はやてのサインとハンコがあれば、問題なく処理出来る。





「・・・・・・恭文さん」

「ごめんね、リイン。さっそくさよならになっちゃったや」

「うー、さよならじゃないですよ」



きっと、これで縁が切れるようなことになるはずがないという意味だと思って、僕は嬉しくなって笑顔でこう言う。



「・・・・・・ありがと」



・・・・・・さて、これからどうするかね。まぁいいや。適当に暴れてくとするか。



「あー、分かってるとは思うけど対外的には、自主退職じゃないからね?
はやて達がクビにしたってことにしておいてよ? それはクロノさんやリンディさん達にも同じく」





簡単だ。こうしなければ示しが付かない。僕が自分からやめたとかバレると、部隊長の英断ではなくなる。

今も少し言ったけど、自主退職では意味がない。そんなことしても、処罰としては効果は薄っぺらい。

ここで重要なのは、部隊の輪を乱せば、誰であろうとキッチリ処罰する。解雇も辞さないという前例を作ること。



こうしておけば、これから先、妙な問題が起こることもないでしょ。

いや、これで『部隊に入りなさい』みたいな声が少なくなると思うとすっきりするね。

だって、不適合なのは確定になったわけだしさ。





「待て、蒼凪。・・・・・・お前は、本当にこれでいいのか?」

「いいもなにも・・・・・・じゃあ、二人は僕をどう処分するつもりだったんですか」

「・・・・・・報酬3ヶ月20%オフで、反省文だな」





それを聞いて、僕はバカみたいに口をポカーンと開けてしまった。

・・・・・・・なんというか、ちょっと意外だった。残す方向で考えてくれてたんだ。

まぁ、そこはちょっと嬉しい。だけど・・・・・・それだとやっぱり不十分でしょ。



僕がここに居ること自体に不満な人間は、確実に出てきてるだろうし、辞めるのが運営上一番いい手だって。





「あんな、恭文。なんか勘違いしとるようやから話しておくと、別にうちらはアンタに対してのエコヒイキのつもりで残す方向で考えてるわけちゃうんよ」

「その通りだ。私達がお前をやめさせたくない理由はただ一つ。お前が居なくなると、気に病む人間が居るからだ」

「それがフェイトとかなのは辺りだったら、遠慮なく僕は仕事やめますよ?」



てーか、部隊長と分隊の隊長と副隊長がそんな甘い判断でいいはずないでしょ。



「そういうわけなので、僕はクビになります。だから、クビにしてください。
お願いだからクビにしてください。というわけで、さようなら」



振り返り、僕は部隊長室を出る。だけど、シグナムさんが手を伸ばして僕の肩を掴む。そして、結構必死に話し出す。



「頼むから、そういうことを言うのは私達の話を聞いてからにしてくれ。
いいか、お前にやめて欲しくないのは隊長陣ではない」

「へ? じゃあ、誰なんですか」

「・・・・・・ティアナだ」



・・・・・・・・・・・・なぜだろう、その言葉にとっても嫌なものを感じていた。昔からの顔馴染み連中なら遠慮なく振り切るところだった。

ところだったんだけど・・・・・・なぜにそのお友達でもなんでもない人の名前が出てくるんだろう。



「あの、実はですね」



僕の横で話を聞いていたリインが口を開く。

リインの方を向く時に首が若干ギシギシ言ってしまっているのは、気のせいとしておく。



「スバルが口を滑らせちゃって、ティアが知っちゃったんですよ。
恭文さんがティアを助けて、なのはさんと喧嘩したこと」

「・・・・・・はぁっ!?」



え、じゃああのツインテール、昨日の僕の行動のアレコレとか知ってんのっ!?

つーか、スバル・・・・・・もしかして相当kYかっ!!



「いやな、うちら全員は黙ってたんよ。知られたらまた面倒な事になる思うてな。
で、そうしたら・・・・・・案の定、昨日は大変やったもん」



・・・・・・僕をクビにするようなことにはならないかどうか、かなり聞いてきたらしい。

あ、あはははは・・・・・・もしかしなくても、嫌な予感的中?



「まぁ、ここまで言えば分かる思うけど、アンタが今ここで六課をやめたら」

「ティアナがそこを気に病むってこと? 自分をかばったせいで僕がクビになったと。
で、それは部隊員のメンタル管理上あんまりよろしくない」





頷いて欲しくなかった。出来れば頷いて欲しくなかった。

だけど・・・・・・遠慮なく三人とも頷いてくれた。それを見て、頭を抱えた。

そして恨む。あの空気の読めないギンガさんの妹を恨む。真面目に恨む。



・・・・・・ちくしょお、僕の人生設計を色々パーにしてくれやがって。



つーか、辞めるつもり満々で散々言いまくったのに残れ? それはあれか、恥辱プレイを強要してるわけ?





「・・・・・・逃げていい? ほら、あのアホ教導官の作画崩れな顔を見て、そのせいで世を儚んで失踪したとかでいいじゃないのさ」

「いいわけあるかいっ! それでアンタはなんにしても今回の一件に関わる気やろっ!?
鉢合わせしまくりに決まっとるやないかっ!!」

「大丈夫だよ。知り合いに頼んで変装用の装備作ってもらってるから」





そう言って取り出すのは、黒を主体とした緑と黄色のラインが入ったベルト。そう、これはゼロノスベルト。

というか、ZERONOSジャケット装着ベルト。これは、物理装甲も組み合わせた特殊ジャケット。

六課に出向になってしまったと話したら、餞別としてサリさんが管理していたものをくれたのだ。



以前、修行ついでに三人で作ったベルトの一つ。・・・・・・ここはとっても感謝である。

まず、普通にカード一枚で一回の変身です。当然、カードを使ったらそれはなくなる。

カード自体が高出力の魔力と電力複合型のバッテリーになっており、それによりジャケットを維持する。



ゼロガッシャーも使えるし、防御力も相当。この辺り、物理的な特殊装甲を組み合わせているおかげ。

あのDEN-Oジャケットと違って、バッテリーからジャケットを構築・維持するので、結構長時間の装着も可能。

なにより・・・・・・装着すると、身長が伸びるサブ機能が使える(オンオフ切り替え可能)。



ここ重要。もうとっても重要。すっごく重要。なお、伸びるのは東宝マジックとして欲しい。納得出来ない人は、キバレンジャーでググれ。





「とにかくや、これは受理出来ん。その危ない匂いがぷんぷんのベルトも使わんでえぇから」

「どうしてー!? せっかく『最初に言っておくっ!!』ってやりたかったのにっ!!
しかもこれ、全フォーム再現可能なんだよっ!? 普通にAMFの完全キャンセル化内でも武装使えるし変身も可能なんだからっ!!」



そう、これはアルタイルフォームもベガフォームもゼロフォームにもなれるのだ。身長が伸びた上で。

試しに家で一人変身した時には、思わず感動してしまった。だって、すばらしいもん。身長伸びたし。



「それだけじゃなくて、デネビックバスターだって使えるんだからっ! しかも音声付きっ!!」



あぁ、これも家で一人で試した時に楽しかったなぁ。構えるだけだったけど、楽しかった。身長伸びたから。

・・・・・・うん、楽しかったのよ? お願いだから『さびしい奴』とか言うのやめてね。ちょっと気にしてるのよ。



「・・・・・・蒼凪、お前それどうしたんだ。というより、普通に質量兵器のレベルだろうが」

「友人と一緒に作ったんです。・・・・・・とにかく、僕はこれを使って二号ライダーになる。
ZERONOSとして、みんなをサポートするから。もちろん、自分の趣味・嗜好を満たしつつ」



よし、これでオール解決だ。問題は無い。僕が恥辱プレイで屈辱を味わうこともないんだ。

僕はドSだから、そういうのは嫌なんだ。どうせやるなら、味あわせる方に回りたい。



「いやいや、まず一号誰っ!? ・・・・・・って、そうやないっ!!
アンタやっぱりそういう装備やったんかっ! なんや、その趣味出しまくりな無駄に実用的なコスプレアイテムっ!!」

「確かにその通りだけど、なんか問題あるっ!? いいじゃん別にっ! 人の趣味にケチつけんなっ!!」

「逆ギレすんのやめんっ!? そして、問題はありまくりやろうがっ! ・・・・・・とにかく、アンタにはここに居てもらうっ!!
もちろん・・・・・・部隊員みんなが納得出来るように、さっきシグナムが言うたより、更に処罰を厳しくした上でな」





正直、それなら気持ちよくクビにして欲しいんですけど。

僕、非常にありがた迷惑じゃないですか。・・・・・・いや、分かるよ?

ティアナがまた情緒不安定になったりとかしたらまずいってのも分かるよ?



フェイト・・・・・・は大丈夫か。なのは辺りが気に病むのもまずいって分かるよ?





「・・・・・・一応聞くね。辞めるって選択肢はなし?」

「なしや。うちらかて、ティアナのことがなかったらクビになってもらう選択は考えてたんよ。みんな悪い部分はあるけど、アンタが一番罪が重い。
だって来て一週間しか経ってへんのに、隊長を再起不能寸前なレベルにまで叩きのめしたんやから。そんなん前代未聞や」

「だから辞めるっつってるじゃないのさ。それでなしってぶっちゃけどうなの?」

「うちもそう思うわ。でもな、この場合はデメリットが大きいんよ。納得してもらえると、助かるわ」





・・・・・・・・・・・・そして、僕はこのまま六課残留が決まってしまった。



なお、反省文と始末書の量が半端じゃなかったのは、付け加えておく。



ごめん、真面目に感謝出来ないわ。あぁもう、どうしてこんなことになるのさ。





「仕方ない、納得しましょ。ただし、条件が一つ」

「なんや?」

「休みはしっかりもらうから。で、纏まった休暇も貰う。てゆうか休暇申請するから許可して」

「アンタまたいきなりやなっ!! ・・・・・・・まぁ、えぇわ。で、いつ休み取るんや?」



・・・・・・大体1ヶ月後だな。日数は3泊4日。とっても楽しい時間が待っているのである。



「イギリスでクリステラ・ソング・スクールがチャリティーコンサートするのよ。
で、見に来てって誘われてるから行く。泊りがけだから、4日だね」

「・・・・・・蒼凪、お前はまたフィアッセさんか?」

「そうですけど、なんか問題あります?」



フィアッセさんとは、僕の婚約者。・・・・・・まぁ、互いに条件付きだから、そこまでしっかりとした約束じゃないけど。

とにかく、フィアッセさんの歌は癒しなので、頑張りたいのだ。うん、かなりね。



「うん、無いわ。だって、婚約者やもんなぁ。・・・・・・分かった。
その休みは受理するわ。それで納得してくれるんやから、安いもんやろ」

「うん、お願いね。で、邪魔したら・・・・・・暴れるから」










というわけで、頑張ろう。だって、フィアッセさんの歌声が待ってるんだから。





うー、楽しみだなー。楽しみだなー。




















魔法少女リリカルなのはStrikerS Remix


とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常


第2話 『暗中模索な日々?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・一応は納得してくれたけど、やっぱアレやなぁ」

「正直、私も蒼凪と同意見・・・・・・まぁ、多少言い方がおかしくはありますが」



いや、シグナム。おかしくないで? アイツがあんまりに割り切り良すぎるんがおかしいだけやから。

確かに、クビにした方がえぇのは分かる。それが一番の示しや。ある意味ではいけにえの羊(スケープゴート)っちゅうやつや。



「ただなぁ、恭文にも言うたけど、この場合やっぱマイナスが大きいと思うんよ。
ティアナだけの話やのうて、スバルやエリオキャロのテンションにも関わるやろ?」

「現に関わってるそうです。相当蒼凪の進退について気にしていますから」



せっかく『みんなで反省して、また頑張っていこう』っちゅう空気出来てるのに、ここでうちらがアイツクビにしたらそれが崩れてまう。

組織は人や。決して感情のない機械だけで構築してるわけちゃう。規律やケジメは大事やけど、そのために部隊運営に支障が出たら本末転倒や。



「で、ここが重要なんやけど・・・・・・別にそこまで六課の人間がアイツを嫌っとるってわけでもないやんか」

「それは不思議なことにありませんね」





むしろ『エース・オブ・エース』に喧嘩を売った大バカと評判になっとる。主に体育会系な整備員からの人気がうなぎ登り。

とは言え、グリフィス君やシャーリー達みたいな知り合い以外の生真面目なのには反感買っとるから、そういうのはむしろ少数派。

まぁ、みんなには厳しめに処罰する言うことで納得してもらおうか。てゆうか、アイツだけが悪いわけちゃうもん。



それ言うたら、極論にはなるけど、問題起こしたなのはちゃん達もクビにしろ言う話になるよ?





「そうですよね。まず、教導官であるなのはさんの指導とコミュニケーションが不足していたのは明白です。
それはなのはさんだけじゃなくて、シグナムやヴィータちゃん、フェイトさんもですね」



まぁ、さっきは部隊長やし、お説教も込みやったから『アンタが一番罪が重い』って言うた。

言うたけど・・・・・・実際はそうやない。アイツがさっき言ってたように、うちらがズルい位置で隊長してたんが原因の一つなんやから。



「我々に内緒で無茶な自主訓練をしたティアナ達にも非があります。
つまり、蒼凪だけではなく、我々も含めた全員で責任を分割して支払うべきです」

「てゆうか、恭文さんは悪くないですよ。なのはさんとティア達のごたごたに巻き込まれたのも同然ですよ?」

「そうなんよなぁ。てゆうか、これでアイツクビにしたらうちら最低やで? アイツに全部の責任押し付けたっちゅうことやないか」





リインとシグナムの言うとおりや。てゆうか、うちの知っとるある人はこう言うとる。

部下がバカやったり裏切ったりするような真似するんは、ある意味では部下という地位に居る人間の当然の権利やと。

部下は、上司に決して少なくないもんを預け取る。うちらの仕事の場合やったら、命や将来のことも含めとる。上司は、それを預かった上で仕事しとる。



部下にバカやられて被害をこうむった事を責める前に、信頼していたのに裏切られたと嘆く前にやることがある。

それは、そういう対応を部下に取らせてしまった自分を責めて、嘆くべき・・・・・・ということらしい。

上の人間がダメやから、部下もそうなる。部下の非を責める前に、自分の非を責めるべき・・・・・・と。



昨日なのはちゃんに同じ事を言うたら、なんか泣かせてもうた。うち、ちょっと罪悪感出てきたし。

まぁ、アレや。上司なんて、基本的に部下に面倒押し付けられるのが仕事言うことや。

ちゅうか話して分かることでギャーギャー騒いで揉めるなんて、バカらしいことこの上ないって。



今回、隊長陣フォワード陣に限らず、みんな等しく悪いところがあったのは明白。

まず、なのはちゃんとうちらは、部下のメンタル面での管理を怠って、部下からちゃんとした信頼を得られなかった事。

ティアナやスバル、それに・・・・・・自主訓練を知っとったらしいエリオとキャロにも、もちろん責任はある。



四人は、抱えとったもんを自分達だけで抱えて、誰にも話さなかったこと。別にうちやなのはちゃん達に話せとは言ってない。

シャーリーとかアルトとかルキノとか、あの子達が仲のえぇ子でもえぇんや。それだけでも、色々変わるはず。

・・・・・・こう考えると、部隊内での隊員同士のコミュニケーション能力、あんま高くないかも知れんなぁ。



そして恭文は・・・・・・一人で暴走して、悪役を買ったこと。話すちゅう本当に基本的な手段を敢えて取らんかったこと。

まぁ、あの状態のなのはちゃん達に話して分かってもらえたかと言う問題は、抜いた上での意見やけど。

とにかく、うちが思うに今回の事はみんな悪い。それやったら、みんなで反省して進んでいけばいいだけなんや。





「うーん、リイン達が居るだけじゃだめなのかも知れないですね。
やっぱり、職場だとお仕事モードになりますし」

「普段通りには中々なれん・・・・・・ちゅうことやな。
うち、もしかしたらそうとう考え甘かったかも知れんわ」










とにかく、予想以上に事件が起きた時にアイツ抱えとるんは爆弾やな。

別に個人としてとかなら問題ないんやけど、事件起きた時はやばいわ。

まぁ、えぇか。うち・・・・・・そういうのを全部含めて覚悟決めたんやもん。





てゆうか、ここでアイツを放り出すような真似はしとうない。

アイツは、うちの大事な友達。そして、仲間や。

うちのバカなとことかアホなとことか、素直に見せられる大事な悪友。





そうやな・・・・・・そやからうちは、ここで諦めたくないんや。





だってうちは、アイツみたいな時代遅れでも、ここに居たいと、ここが自分の居場所だと、そう思えるような部隊を作ってみたいんやから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・でも、よかったね。六課に残れるようになって」



ごめん、どこがいいのかさっぱり分からない。納得はした。だけど、いいと思える要因ないでしょうが。



「4ヶ月給料割引セール実施で、反省文や始末書も、家に持ち込まないと今日中に処理出来ないくらいの量なんですけど?」

「そこは仕方ないよ。やっぱりあの行動に行き過ぎてる部分があるのは否めないし」

「だから責任を取って辞めるって言ったよ」



クビにするのが一番示しがつくだろうからと思って、遠慮なくカードを出したのに・・・・・・却下されたし。



「・・・・・・ちくしょお、スバルのKYには仕返ししてやる」



隣で、車を運転するフェイトに視線を向けずにそう言う。



「それは八つ当たりもいいところだからやめようよっ! スバルだって、悪気があったわけじゃないんだよっ!?」



フェイトは・・・・・・なんというか、困った空気を出す。現在、警備部周りに付き合ってる最中。で、僕は当然のように不機嫌。



「正直、もうクビにして欲しいんですけど。もう辞めたいんですけど。
これなら別の仕事探した方がまだいいんですけど」

「ヤスフミ、ダメだよ。みんな残って欲しいって思ってくれてるのに」

「なんで僕がそのために居たくもない場所に居なきゃいけないの?
それも、自分の生活をギリギリのラインに落としてまで」



そう答えると、フェイトが更に困ったように唸る。運転しながらだから、当然のように視線は前。

唸って、少し考えて・・・・・・フェイトは言葉を続けた。



「でもね、私達やティアナだけじゃなくて、他のみんなも同じなんだよ?
それにね、昨日のことは思ってるより悪い印象には受け取られてないみたいなんだ」

「そこがわかんない。連中、やる気0を通り越してマイナスなんじゃないの?」

「・・・・・・ヤスフミ」



うん、真面目に温い連中だ。なんで入って1週間で、さほど関わりの無い奴にそこまで思い入れが持てるんだろ。

なんというか、よく分からない。そうとう人情家か、相当なバカなんだろう。そして、なによりだ。うん、なによりなのよ。



「てゆうかさ・・・・・・僕の決意と覚悟を返してっ!? これじゃあ僕、普通にダメダメじゃないのさっ!!」



かっこつけて辞表まで出したのに、却下なんてありえないでしょっ!? 前回あんな締め方しておいてこれなんて嫌だー!!

お願いだからやめさせてっ!? 僕はもうそういうルートを通るって決めたんだからっ!!



「そ、そんなことないよ。大丈夫だから。・・・・・・ねぇ、ヤスフミ。六課は、好きになれないかな?
ここを去年のGPOみたいに一つの居場所だとは、どうしても思えないかな」





窓の外の流れる景色を見る。見ながら・・・・・・少し思う。なんかそれもまた違うかなと。

というより、僕にとって六課は、あくまでも仕事場という認識が一番。

はやてみたいに夢の結晶とか、フェイトやなのは達みたいに思い入れがあんまり持てないでいる。



というより・・・・・・そういうの、嫌い。





「思えない。局嫌いだし。なにより僕、居場所や立場にこだわるの嫌いなの。フェイト、知ってるでしょ?」





居場所や立場、そういうのにこだわって何も出来ないのは嫌だ。

躊躇ったり、迷ったりなんて戦ってる時にしたくない。

はやての話を引き受けたの・・・・・・失敗だったと、今更ながら自分を罵ってる。



居場所に、そういうのにこだわりたくないのに、こだわろうとしてる。

僕がどう思うかじゃない。今の行動そのものがそれに矛盾してる。

それが、なんか辛い。自分に対して嘘をついてるような感じがする。



あとは、まぁ・・・・・・はやてに迷惑かけたくないってのがあるかな。

僕、やっぱりダメっぽいし。部隊や組織の『やるせなさ』とやらには、合わないらしい。

正直、これ以上なんかやらかすことになるのは嫌だ。絶対何かあったら飛び出すし。



・・・・・・なお、『だったら普通にしてればいいのに』という意見は却下します。僕は元々普通なの。





「というかさ、僕は来て一週間よ? みんなみたいに最初からずっと居るわけでもなんでもない」



でも、それを言うのがどうにも照れくさくて、なんかちょっと恥ずかしい。だから、こんな言い方をする。



「それでみんなと同じように六課を、そこに居る人達の気持ちを大切に思えって言われたって困る」

「確かに・・・・・・そうだね。ヤスフミ、私の仕事を手伝ってて、他の皆とはあまりコミュニケーションは取ってないし、隊舎にもあまり居ない」





そう、この一週間、主にフェイトの仕事を手伝ってた。仕事内容は、書類の処理や外回りの付き添い。

補佐官であるシャーリーも居るけど、シャーリーは通信主任で他の通信士・・・・・・ルキノさんとかも纏めなくちゃいけないから、おいそれとは隊舎から離れられない。

その点、僕なら特に分隊員とかでもないし、結構自由は利く。そこを生かして、フェイトの助手を買って出たのである。



・・・・・・あぁ、ここはこだわってもいいかも。だって、色々利点があるし。





「だから、今すぐに私達と同じくらいに思い入れを持つというのはちょっと無理だよね。
あと、辞める覚悟を決めた上で啖呵を切ったのに、残るのは辛い」

「分かってもらえると嬉しい」

「なら・・・・・・隊舎に居る?」



・・・・・・・・・・・・はぁっ!?



「隊舎に居て、色んな人達と仲良くなろうよ。そうすれば、きっと六課がいい場所に変わって行く。あの、私は大丈夫だし」

「それは絶対嫌だ」



なので、遠慮なく即答する。



「どうしてっ!?」

「どうしても」





理由? そんなの決まってるじゃないのさ。・・・・・・フェイトと二人外回りとかしてる方が、フラグが立ちやすいからだよっ!!

だって、仕事だけどフェイトを占有してるんだよっ!?予想以上に長時間、二人っきりになれるっ!!

なのに、なんでそのチャンスを自ら手放さなきゃいけないんだよっ! そんなの絶対納得出来るかっ!!



そうだ、どうせ残るならここだけは譲れないっ! ここを譲ったら、六課に居る意味なんざ0を通り越してマイナスだしっ!!





「僕、別に六課に友達作りに来たわけでもなんでもないもの。てゆうか」

「てゆうか?」

「フェイトの手伝いするためってのが、六課に来た大きな理由だもの。・・・・・・まぁ、昨日は色々ぶっ飛ばしたけど」

「・・・・・・うん、ぶっ飛ばしてた。私、視線だけでぶっ飛ばされたもの」



いや、その・・・・・なんというか、ごめん。ちょっと邪魔されたくなかったし。・・・・・・あれだけは、認められなかったから。



「でもね・・・・・・なのはが悪いところがあったのも確かだけど、その気持ちも分かって欲しいの」



分かってはくれたけど、思うところはあるらしい。だから当然のように、反論が来るのですよ。



「みんなそれぞれに立場があって、組織の一員として、譲ってはいけないところがある。
全てにおいて昔通りには、きっとなれないよ。それは・・・・・・私も同じ」

「何言ってんのよ。中途半端なズルい隊長してるくせに。温い馴れ合いしてたくせに」

「それは、その・・・・・・うん、そうだよね。してるよね」



・・・・・・もうここはいいや。事態は既に解決した。あんまり言い続けるのも違うでしょ。

なのはもそうだし、フェイト達だってティアナ達だけじゃなくて自分達も悪いところがあるって考えてるんだもの。だったら、いいでしょ。



「それにさ・・・・・・そのために、大切なものをなくしても、そう言える?」

「・・・・・・それは、ダメだと思う。ね、ヤスフミ・・・・・・やっぱりそういうのが嫌だから、役職に付いたりとかしたくないのかな」

「うん。僕は、そんなの絶対に嫌だ。立場や役職にこだわるのなんて、大嫌いだし。
・・・・・・てゆうかさ、一週間でこれだけやらかすんだよ? 正直・・・・・・さ」



流れる景色は、ハイウェイ独特の街の上のものから、下のものに移っていた。

僕達を乗せた車は、下道に下りた。目的地は、もうすぐらしい。



「部隊や組織って合わないかなって、思ってる。今までよりも強く。一つの実感になってる。
入ってもさ、今回みたいにはやてやフェイト達に迷惑かけるだけだなって、痛感した」





もっと言うと、周りの人間に。108で言うなら、ギンガさんやゲンヤさん、カルタスさんだね。

僕には・・・・・・組織の一員なんて、やっぱり無理らしい。

今、ちょっとイライラしてるのも、そういうのを痛感しちゃったからだと思う。



おかしいな、108でバカやらかした時とかでも、ここまでは感じたことなかったのに。



あははは、なんというかどうしようもないな、これ。





「でも、私は迷惑なんかじゃないよ?」

「ホントに?」



信号待ちの時に、ずっと窓を向いていた視線を、フェイトに向けた。

フェイトは、それに気づいたのか、僕の方を見て、優しく頷いてくれた。



「ホントだよ」

「・・・・・・ありがと」










車は、また走り出す。また、窓の外を見ながら・・・・・・考える。組織に、部隊に、僕は馴染めない。

なんだろう、六課では昔馴染みのみんなと居るはずなのに。それなのに、一人で居るみたいに感じるのは、どうしてだろ。

みんなが僕に対して『居て欲しい』と思ってくれるのはありがたいことのはずなのに。





そうだ、本当にありがたいことのはずなんだ。なのに、それがすごく重荷に感じるのは、どうしてだろ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・じゃあヤスフミ、また明日ね」

「うん」



夜、仕事が終わったので、直帰させてもらうことになった。

現在は家の前。フェイトが、帰り道だからと言って送ってくれたのだ。



「あのね、ヤスフミ」



フェイトが、車の窓から顔を出して、僕を見上げる。

車の座席に座ってるから、今だけは僕の方が身長が高い。



「なにかな」

「明日は私も外回り無いし・・・・・・少し、みんなと話してみたらどうかな」



どうやら、昼間の話をあれこれ考えていたらしい。なんだろう、気分が少し重くなった。



「とりあえず、ティアナとなのは。まだ、二人とは話してないんだよね」

「・・・・・・まぁね」

「なら、まず二人とだよ。・・・・・・居場所を好きになるのは、人を好きになることと同じだと思うんだ。好きな人、増やしてみようよ」

「いや、だから僕は仕事しに来てるんであって、友達付き合いしたいわけでもなんでも・・・・・・あぁもう、分かったよ」





どっちにしろ、二人とは話さないといけないとは思ってた。

・・・・・・なのははともかく、ティアナとなんてめんどくさいのは間違いないけど、やるしかない。

だって、マジで話してないんだよ? せいぜい簡単な挨拶したくらいだしさ。



ちくしょお、ギンガさんとかリンディさん辺りに『部隊でも上手くやれる』なんて思われたくないから、知り合い以外は適当な付き合い方で済まそうと思ってたのに。





「うん。あとね」

「・・・・・・まだなにかあるの?」

「あの、そんな嫌そうな顔はしないで欲しいな。・・・・・・ヤスフミは、一人じゃないんだよ?」

「え?」

「・・・・・・ごめん、なんだか上手く言えないよ。とにかく、お休み。また明日ね」










そのまま、フェイトは車を出した。で、僕は手を振って見送る。





・・・・・・なんだろう、フェイト・・・・・・何が言いたかったんだろ。





てか、来て一週間とかでなんでこんな面倒な事にっ!? 絶対おかしいでしょうがっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・なんだろう、私・・・・・・どうしてヤスフミにあんなこと言っちゃったんだろ。

ヤスフミは今は一人じゃない。絶対に一人なんかじゃない。

だって、ちょっとゴタゴタこそしちゃったけど、私も、なのはも、みんなも居る。





なのに・・・・・・どうしてあんなこと、言っちゃったのかな。どうしよう、自分でもよく分からないよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして翌朝。空は青く、雲は適度な数、空の上で風に流れている。





早朝・・・・・・僕は少し早めに出て、海沿いの演習場まで来た。





隊舎の中にあるそこで、空間モニターとにらめっこしながら色々準備しているのが居る。で、僕に気づいて・・・・・・優しく笑った。










「・・・・・・おはよ」

「うん」

「うー、だめだよ。ちゃんとおはようって言ってくれなくちゃ」

「嫌だ」



いつもと同じ意地悪。・・・・・・だけど、目の前の子は表情を暗くした。

そして、今にも泣きそうな顔になってる。なので、ため息を吐いて、僕はこう言った。



「・・・・・・・まったく、朝っぱらから辛気臭い顔しないでよ。なのは」

「うん・・・・・・え?」

「まぁ、アレだよ。実はさ・・・・・・医務室での話、聞いてたんだ」



隠すのも面倒なので、ぶっちゃけることにした。

で、当然のようにびっくりした顔をする。その後に子どもみたいに頬を膨らませて、僕を睨む。



「・・・・・・悪趣味」

「だって、あんな大きな叫び声を隣で上げられたら、誰だってそうなるって。・・・・・・だから言ったでしょうが。
自分としてちゃんとぶつかれば、話せば、伝わるって。上司どうこう規律どうこうだけで考えるから、こじれるのよ」



とりあえず、なのはの隣まで行く。



「うん、その通りだった。ティアナを撃った時は、ティアナのこと全然分からなかったのに」



なのははそのまま、通信画面に目を向ける。



「少し話しただけで、沢山の事が分かったの。私、なんかダメだった。・・・・・・そうだね、今なら言える。
あの時の私の魔法は、私の魔法じゃなかった。高町なのはの魔法だって、胸を張って言えないようなものだった」

「そうだね、見てらんないくらいだった。でも・・・・・・まぁ、あれだよ」

「うん?」

「少し、言い過ぎた。・・・・・・ごめん」



僕がそう言うと、右手がそっと伸びて・・・・・・頭を撫でてくれた。

なんか、恥ずかしい。だけどなのはは、そのまま撫でる。



「なんで、撫でるの」

「撫でたくなったからだよ。・・・・・・恭文君こそ、どうして謝るのかな」

「謝りたくなったから。まぁ、僕はプータローだし、なのはとは違うしさ」

「そうだね。でも・・・・・・それでも、変えちゃいけないことはあるんだよ」



手を動かしながら、僕に視線を向けながら、言葉は続く。

その感触がなんというか・・・・・・やっぱり心地いい。



「私は確かに教導官で、六課の分隊長で、局員で・・・・・・だけど、変えたくないことがあるの」



手を離して、なのはは再びモニターに目を向け、操作していく。

離れた手の感触が寂しいとか感じたのは、気のせいだ。



「一つは、私が『高町なのは』だということ。そしてもう一つは、恭文君の友達だということ。
他にも沢山あるけど、この二つは最優先で変えたくない」



・・・・・・さいですか。てか、フェイトの前に僕っておかしいでしょうが。なんでそうなるのさ。



「・・・・・・にゃはは、なんというか私、ちょっと組織に染まり過ぎてたのかも。
なんだかね、あれからそういうこと、沢山考えてるんだ」

「なんでそう思うの?」

「うーん、そうだな・・・・・・。恭文君と友達になった時の事とか、フェイトちゃんやヴィータちゃん達と友達になった時の事とか、思い出したからかな。特に、恭文君と友達になった時のこと」




なのはが、僕を見る。その瞳は・・・・・・いつもの、僕の友達の目だった。

どこまでも優しくて、バカで、そして強い女の子の瞳だった。



「その時の私は局員だったけど、ぶつかった時はただの私だったもん。なのに、いつの間にか出来なくなってた。
だから、ティアを傷つけた。そう考えた時ね。ちょっとだけ・・・・・・ううん、すごく悲しくなったんだ」

「・・・・・・そっか」



そう言えば・・・・・・あれ? なんかなのはがティアって呼んでる。

僕の表情から思考が読み取れたのか、なのはが補足を入れてくれた。



「えっとね、昨日お話した時に、呼ばせてもらうことになったんだ」

「・・・・・・なんで?」

「なんというか、マンツーマンに近くはあるんだし、これからはプライベートでも距離を縮めていきたいなと。・・・・・・これね、お兄ちゃんからのアドバイス」



・・・・・・お兄ちゃんというのは、高町恭也さんというなのはのお兄さん。無茶苦茶強いシスコン剣士である。

現在は家族と一緒にドイツで暮らしてるんだけど・・・・・・もしかしてなのは、恭也さんに今回の事を相談した?



「昨日連絡して、話して・・・・・・お兄ちゃんもお姉ちゃんと、同じようなことがあったんだって。
それで、色々相談させてもらうことになったんだ。マンツーマン方式の先生としては、私の先輩になるし」

「なるほど、だから横馬にしては妙に的を得てるわけだね」

「でしょ?」



何故だろう、横馬が僕を見ながら固まった。そして、表情が怒ったものになる。



「・・・・・・って、それどういう意味かなっ! それに、また横馬って・・・・・・ちゃんとなのはって呼んでよっ!!」

「えー、いいじゃん。例えば『この(うったわれるーものー♪)犬がっ!!』とかって呼ぶよりはマシでしょ」

「そんな選びようのない選択を押し付けないでよっ! というかというか、朝からそんなめ、め・・・・・・恭文君の変態っ!!
どうしてそんなエッチでいやらしいことが平気な顔して言えるのか、私分からないんだけどっ!?」

「そんなの、横馬がエッチだからに決まってるじゃないのさ。
ほら、実は心の奥底でそう呼ばれたいという願望があるじゃないのさ」

「そんなことないよっ! 私そんな願望ないからー!!」










・・・・・・とりあえず、第一関門はクリア。クリアしたけど・・・・・・問題は次だ。





あぁ、どうしよう。よく考えたらほとんど話してないんだよなぁ。てか、僕から話すのってのもおかしくない?










「じゃあ分かった。間を取って『魔王』にしよう」

「だから魔王じゃないもんっ! どういう風に間を取ったらそうなるのっ!?」

「ならなら、『ハードボイルド』」

「意味分かんないよそれっ!!」










うーん、どうしよう。真面目にどうしよう。

あぁもう、普段通り近からずも遠からずな程よい距離感でいいのに。

無駄に知り合い多いから、普段通り出来なくなってるってどういうことだろ。





鉄火場でこういう温いの、嫌いなのにさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・で、早朝訓練は開始。僕は遠くからモニターを使って見てる。





そして、ツインテールでどこかすっきりした顔で訓練に打ち込むお姉さんを見ながら考える。どう話そうかと、かなり。





異性と話す場合、これを出すとある程度は会話が弾むと一般的に言われているものがある。

それは、天気の話と食べ物の話と虫歯の話。

天気は、当然のように目の前の事だから。食べ物は、基本的にみんな食べているものだから。





虫歯は・・・・・・あれ、なんでだろ。ド忘れちゃったや。

とにかく、今回はそれを使うことが出来ない。

だって、普通にシリアスモードな話になるのは間違いないんだから。





ティアナと話さずにフェイトの仕事手伝おうとしても、きっとストップかけられるだろうしなぁ。

てか・・・・・・あぁもう、なんでこんなめんどくさいことに。

僕、別にティアナのことかばったわけでもなんでもないのに。





なのはを止めたかっただけなのに。










「・・・・・・なんだ、また辛気臭い顔してんな」



後ろから声がかかる。そこに居るのは、整備服を着た一人の男性。

身長は僕より20センチ近く高くて、髪は黒。中々に色男。・・・・・・誰だっけ。



「おいおい、この間自己紹介しただろうが」

「えっと・・・・・・あぁ、山田さん」

「そうそう・・・・・・って、誰だよそれっ!!
・・・・・・六課ヘリパイロットのヴァイス・グランセニック陸曹だ。ここまで言えば、思い出すだろ」

「・・・・・・全然」





僕がそう言うと、そのお兄さんは派手にズッこけた。いや、だって真面目に覚えてないのよ。

そう言えば・・・・・・最初の時に挨拶周りとかさせられたけど、なんかこう・・・・・・ヘリにワクワクしてて人とかあんま見てなかったような。

だって、ここに置いてあるヘリは武装隊で使われてる最新型よ? 高性能・高機動が売りのとっても素敵なメカ。



それに目を惹かれないわけがない。僕、メカとかやっぱ好きだし。





≪すみません、この人真面目に興味のないことに関しては、記憶力がザルなんですよ≫

「いやいや、本当にすみません。真面目に僕、あなたに興味がなかったみたいで」

「何気にひどいこと言うんじゃねぇよっ! 俺だって傷つくんだぞっ!?
・・・・・・しっかし、また派手にやらかしたなぁ。俺はてっきりクビになるもんだと思ってたんだが」

「あははは、残念ながら首輪付きだったみたいで、生殺しが決定しましたよ。別にクビになってもよかったんですけどね」



首元を右の人差し指で指しながら、苦笑いしか浮かべられないのは、どうしてだろう。

・・・・・・考えるまでもない。ここで辞められればすっきりしたのに、面倒ごとが目の前にあるからだ。



「なるほどな。で、察するに・・・・・・ティアナと話すタイミングを考えてるってとこか?」

「よく分かりますね」

「簡単な推理だ。てか、事情を聞いてりゃあ嫌でも気づく」



で、ヴァイスさんは僕の隣に来て、僕が開いていたモニターを見る。

視線はティアナに向く。そのまま、画面の中で忙しなく動くティアナを見つめる。



「ティアナの奴、動きが良くなってんな」

「そうなんですか?」

「あぁ。お前さんはフェイト隊長と外回りが多かったから知らないたぁ思うが、アイツはセンターガードなのに動き方が全部同じだったんだよ」



なぜだろう、どこか嬉しそうにこの人は話す。それが少し気になった。

まるで、自分の事のように思っているとさえ感じてしまったのは、どうしてだろ。



「シングルでもコンビでもチームでも、立ち回り方は同じ。
けどよ、今は違う。まだぎこちなくはあるが、変わってきてる」

「そうですか」



で、僕もジッと画面の中のティアナを見てみる。・・・・・・確かに、あの模擬戦の時とはダンチだ。キレが全然違う。

まだ二日しか経ってないから、実力的に変わったということじゃない。やっぱり精神的なものが作用しているのかなと思った。



「つーかよ、お前は訓練参加しねぇのか?」

「しません」

「おいおい、またなんでだよ。フェイト隊長やシグナム姐さんもやるってのによ」

「ドクターストップがかかってるんですよ。とりあえず一週間は戦闘行為の一切を禁止されてます。
というか・・・・・・僕の技能を見て、みんなが自信を無くしたら大変でしょ? 僕、かなり強いですし」



結構自信たっぷりに言うと、隣のお兄さんは大きくため息を吐いた。

そして、呆れたような視線を送ってくる。・・・・・・うん、それでいいや。



「で、実際のとこはどうなんだ。察するに・・・・・・手札を晒したくない、か?」



僕は、ヴァイスさんを見る。多少視線が厳しくなってるけど、ここは仕方ない。

てゆうか、この人何者? よくよく考えたら、ヘリパイロットなのにやたらと魔導師の戦い方に詳しい感じだし、今のもきっと経験から言ってる。



「・・・・・・まぁ、そんなとこです。少々アウトなのもあるんで、それを見られてごたごたとか嫌なんですよ」

「そっか。でもよ、ティアナと話したいなら訓練参加はいい手だと思うんだがな。あの中だったら、コミュニケーションは自然と取れるだろ」



ヴァイスさんは、そう話しながらも、ティアナから目を離さない。やっぱり、なんだか嬉しそうにしてると思ってしまう。

まぁ、そこはともかくとして・・・・・・確かにいい手ではある。いい手ではあるけど、やっぱり迷う。



「・・・・・・考えてはおきます」

「そっか。まぁ、頑張れや」










正直、このために使える手を晒したくない。暗器類もそうだけど、砲撃や射撃、クレイモアもだ。





知っている人間ばかりじゃない。だから、何がどうなるかなんて分からない。用心に越した事はないでしょ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、お昼になってしまった。やばい、時間があっという間に経つ。




フェイトはまた隊長陣で固まってご飯食べてて、僕が座る席はない。なので、一人で食べる。





で、昼食のカツカレーを口いっぱいにほうばりながら考える。手札を晒すとして、どこまで晒せるかと。










「・・・・・・・・・へひへ、ふれいほははへは」

≪あなた、何話してるかわかりませんよ≫



カツとご飯をしっかり噛み締め、飲み込む。それから、アルトの言葉に答える。



「大丈夫、母音は同じだから。響きで察して」

≪また無茶振りですね≫

「気にしないで」





とにかく、思考を戻す。ようするに、出来るなら何も晒したくない。

やっても最悪、砲撃や射撃まで・・・・・・あぁ、そう言えば転送魔法が使えるのは晒しちゃったんだ。

くそ、あの場に置いておけなかったとは言え、ここは失敗だ。あとあと、氷結系の変換もだ。



なのはの砲撃を斬るために使ったから、もうバレてる。





「・・・・・・ね、一緒していいかな」

「というか、一緒に食べようよー」

「「お邪魔します」」





ガジェット相手なら問題はない。魔法使わなくても斬れるんだから。

でも、それ以上のが出て来たら? 可能性は高い。

今回の一件の主犯がジェイル・スカリエッティなのは、フェイトの話だと決定らしい。



そうすると・・・・・・。





「・・・・・・・・・・・・ちょっとっ!? アンタ無視ってひどいじゃないのよっ! てーか、こっち向きなさいっ!!」





なんか声がかかった。で、思考を中断してそちらを見ると・・・・・・ツインテールが居た。



そう、あの人だ。





「あ、中原麻衣」

「誰よそれっ! 私はティアナ・ランスターッ!! てか、自己紹介したわよねっ!?」

「で、そのティアナ・ランスターさんが何のご用? しかも、取り巻きまで連れて」

「取り巻きじゃないわよっ!! ・・・・・・あぁ、もういい。とにかく失礼するわね」










そう言いながら、ティアナが何の許可もなく僕の前に座る。で、他の三人も同じく。





そう、三人居る。ギンガさんの妹のスバルに、フェイトの保護児童のエリオとキャロ。

六課フォワード陣が、バカでかいボールとパスタを持ったまま、僕のところに来た。

・・・・・・そう言えば、エリオとキャロとも話してなかったかも。





いや、一応計画では徐々に仲良くなるとかあったんだけど、一昨日のアレでもう諦めてたから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・フェイトちゃん、アレ」

「うん、分かってる」





エリオとキャロとスバル、それにティア・・・・・・あ、私もそう呼ばせてもらうことにした。

もちろん、みんなで話し合った時に許可はもらってる。

四人とも、一人で考え込みながらご飯を食べていたヤスフミの所に腰を下ろして、ご飯を食べ始めた。



というか、色々話しかけてるみたい。・・・・・・ヤスフミの反応が今ひとつ憮然としてるけど。





「アイツは・・・・・・。もうちょっと楽しい顔が出来んのか。エリオとキャロが気にしてるだろうが」

「シグナム、そこは仕方ねぇって。もう辞めるつもり満々で暴れたのに、ここに居るのが辛いんだろ」





やっぱり、そういう部分から来ているのかなと、シグナムとヴィータの会話を聞いて思った。

ヤスフミがあれからみんなとどこか距離を取ろうとしているように感じてしまっていたのは。

・・・・・・昨日、帰り道を車で行きながら色々考えて、ここに行き着いた。



行き着いて、色々と考えてしまった。うん、かなり色々と。





「元々仕事場で、それも事件中に進んで知らない人間と社交的にするような奴でもねぇし、そりゃあこうなるって。てか、アタシが思うにお前だって同じ顔すると思うぞ?」

「いや、私はそんなことは・・・・・・すまん、あるかも知れない」

「そっか。いやいや、お前にちゃんと自覚があって、アタシは嬉しいぞ」





ヤスフミは、居場所を大事にしてない。ここに居て、信じてくれる人達の想いを大事にするのを・・・・・・違うな。

大事には思ってる。だから、私達とも長い付き合いになっている。でも、それに縛られるのを本当に嫌う。

手を伸ばしたいと思ったら、居場所や信頼、そういうのものを振り切って手を伸ばす。



ヘイハチさんと、同じ。守る事に、壊す事に、怖いくらいに迷いと躊躇いを持たない。





「このまま、上手くいってくれるといいんだけど」

「うん、そうだね。というか、きっと上手くいくよ。だって、私達だって居るんだし」










なのはの言葉に、ぎこちなく笑いながら頷く。・・・・・・ぎこちなくしか、笑えなかった。

不安や恐れが、最近胸の中で大きくなってるから。私は今のヤスフミを見ていると、とても怖い。

・・・・・・六課に誘った時に気づいた。私達と同じように局員になる必要なんて、同じ道を進む必要なんて、どこにもないと。





ヤスフミは私達とは違う。ヘイハチさんのように、一つのちっぽけな鉄でありたいと、心から願っている。

どこに居ても、ずっとヘイハチさんの背中を追いかけている。強くて、優しくて、大きい背中を。

でも、それなら・・・・・・ヤスフミはどこに行くんだろう。いったい、今どこに向かっているんだろう。





怖い。ヤスフミが向かう先の終着点が分からなくて。

ヤスフミが具体的にはどこに行きたいのか今ひとつ分からなくて、怖い。怖くて、泣きそうになる。

どうしてなんだろう。私達は、全てにおいて同じじゃなくていいのに。





ヤスフミの理想は局じゃなくて、ヘイハチさんにあるって、ちゃんと分かってるはずなのに。





なのに、なんでこんなに怖いんだろう。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・でもさ、六課を辞める事にならなくて本当によかったね」

「おかげさまでね」





比喩なしで嫌味。というか、これくらいは勘弁して欲しい。

だって、無茶苦茶笑顔でそう言い切るスバルの神経が今ひとつ信じられないから。

・・・・・・耐えろ、耐えろ僕。これはさすがに八つ当たりだ。スバルに悪気は0なんだから。



だから力を緩めよう。スプーンをギュッと握り締める手の力を緩めよう。





「でも、もうあんなことしたらだめですよ。今回は色んな人が好意的に受け取ってくれたおかげで上手く行ったわけですけど」

「何かあったら、フェイトさん達が悲しみます。恭文さんが六課に来るの、本当に嬉しそうにしてたんですから」

「ティアのこと庇ってくれたのは、その・・・・・・嬉しかったの。
でも、アレはだめだよ。あんなことしても、ただ傷つけるだけだよ?」





なんて言うのは、エリオとキャロ。そして、憎き豆芝。

なお、エリオとスバルが凄まじい勢いでビックバン盛りパスタを平らげてる件に関しては一切スルーさせてもらおう。

で、ちょっと聞き逃せないので、にっこりと笑いながら地獄へ叩き落すことにする。



理由? 僕がそうしたいからだけど何か問題あるかな





「・・・・・・ねぇ」

「「はい」」

「なにかな?」

「それは、僕がおのれらのバカに巻き込まれたも同然ってのを踏まえた上で話してる?」



で、当然のようにちびっ子二人は固まる。キャロはパンを掴む手を止め、エリオはパスタを取るためのトングを動かしていた手を止める。

あと、ティアナとスバルもだ。・・・・・・まぁ、ここは言いたい。僕は勝手に首を突っ込んだも同然だけど、それでも言いたい。



「原因の大半は、おのれらがなのはやフェイト達に黙って勝手に無茶で無謀な自主訓練なんぞしてたことにあるんでしょうが」

「「う・・・・・・」」



どうやら、そういうことらしい。その結果があの下手な突撃に繋がったわけですよ。

そして、それを聞いて・・・・・・飛び出してしまった理由に一つ、改めて気づいてしまった。



「あと、もちろんフェイト達が隊長陣としての仕事をちゃんとやってなかったってのもある。
あ、ちなみに僕がキレたのはティアナどうこうは関係なくこれね?」



ティアナの『強くなりたい』という叫びに、きっと自分を重ねてしまった。

僕にも、そういうのが覚えあるから。



「僕、別に友達でもなんでもない人間のために暴れるほど、優しくなんてなれないし。
あれは全部、自分のためにやったのよ。庇ったわけでもなんでもない」





ティアナが少し目を細めるけど、気にしない。

・・・・・・なお、暗にコレは『礼とかそういうのもいらない』と言っている。

どうやら、ティアナはそれで分かったらしい。苦い表情からそれが読み取れた。



察しがいい子で助かる。おかげで無駄なやり取りが省けるんだから。





「まぁ、原因になったって言う噂のアグスタの一件にすら関係もないのに首突っ込む僕も僕だけど。
でもさ、目の前であんなバカやるみんなもみんなだよ。こっちの迷惑も考えて欲しいね」



うん、関係ない。あの場に居てダークヒーローもどきとガチに戦闘とかはしてたけど、それでも関係なんてない。あるわけがない。

・・・・・・おかしいなぁ。アレから1ヵ月も経ってないのに、身の回りの状況があまりに変わり過ぎてる。まぁ、いいか。もう言ってもしゃあないし。



「あの・・・・・・その、えっと・・・・・・ごめんなさい」

「私達、こんなこと言う権利ありませんでした」

「あの、ごめん」

「謝るくらいなら最初から言うな。言われた方はいい迷惑だ」





とりあえず、落ち込む三人は無視しつつカツカレーの最後の一口をパクリ。・・・・・・うし、これでオーケー。



というわけで、手を合わせて僕はこう言うのである。





「ごちそうさまでした」





・・・・・・・・・・・・って、ちがーうっ! 僕なにやってんのっ!? ティアナと話しなきゃいけないってのに、なんでいきなりこんな喧嘩紛いの会話しちゃうのさっ!!



あぁ、やばいっ! なんかやばいっ!! というか、横からなんか視線が突き刺さってきてるっ!? 方向から考えるに・・・・・・間違いなくあの方々だしっ!!





「え、えっと・・・・・・その、アレだよ。だったら、これから仲良くなってこうよ」

「・・・・・・なんで?」





だからー! 普通にこういう言い方をするな僕ー!! ほら、スバルがなんか固まったしっ!!

あぁ・・・・・・視線が厳しいっ! なんかグサグサとすっごい突き刺さってくるしっ!! で、でも仕方ないでしょっ!?

あんまりに『反省してくださいね?』的な言い方だったんだからっ! フェイトとかはやて、シグナムさんに言われるならともかく、コイツらにだけは絶対言われたくないしっ!!



と、とにかく落ち着こう。よし、思考を変えるんだ。今は『ツン』だ。

だから・・・・・・ここから上手い感じで『デレ』に持っていけばいい。そうすれば好感度は急上昇ですよ。

さすがにこのままはまずい。てか、絶対フェイトに怒られるし。



・・・・・・そう、僕は何がなんでも上手い感じで四人と付き合えるようにならないといけない。

『・・・・・・ちゃんとお話するまで、仕事手伝ってくれなくていいから』とか言われたら、六課に居る意義の10割が消失してしまう。

そんなのは絶対にごめんなのだ。さぁて、落ち着け僕。深呼吸だ。ここから『デレ』だ。



ツンがキツければキツイほど、デレの効果が大きくなるんだ。それがツンデレの真髄なんだ。





「そ、それは・・・・・・その、あの・・・・・・」

「・・・・・・僕、フェイトの外回りに付き合うことが多いだろうから、そこまで時間は取れないよ?
みんなと始終一緒にベタベタなんて、無理。それでもいいなら、考えるけど」

「うん、そうだよね・・・・・・え?」



お、なんか食いついた。『もういい』って顔して立ち上がりかけていたティアナも足を止めた。

俯いてたエリオとキャロもこっちを見る。で、スバルもびっくりした顔で見る。・・・・・・よし、ここからデレ攻めだ。



「だから、これから仲良くなってくんでしょ? だけど、僕にだってやることはあるから、そんな思いっきりは無理。
・・・・・・まぁ? 僕も何時六課辞めるかどうか分かんないけど、一応同じとこで働いている同僚ではあるし、進んで仲良くならない理由はあんまないでしょ」



で、当然のようにトドメを刺す。これで勝負はついた。



「僕は別にみんなのこと、現段階では友達ともなんとも思ってない。でも・・・・・・死ぬほど嫌いってわけじゃないもん。
だから、仲良くしたくないとか、そういうわけじゃない。ここは、誤解しないで欲しいな」

「恭文・・・・・・あの、ありがと」

「いいよ、別に」





・・・・・・視線が和らいだ。というか、『・・・・・・素直じゃないなぁ』という感じに変わった。



うし、これでフェイトとの楽しい外回りの日々は継続だ。例えフェイトがどうこう言っても、ここだけは絶対継続だ。うんうん。





「だったら、素直に『仲良くしてもいい』って言いなさいよ。アンタ、なんかめんどくさいわね」

「大丈夫、ガンナーなのにアホな接近戦かます超絶ツンデレなティアナよりめんどくさくないから」





・・・・・・そっか、アレはあほな行動なんかじゃないんだ。なのはは砲撃を撃って戒めるのではなく、誉めるべきだったんだよ。

ようするに、アレはツンデレなんだよ。分からない方のために説明しておくと、ガンナーなのに接近戦を挑むところがツンなんだよ。

で、あのキレのあるセンターガードとしての動きが出来るようになった今が、デレ。今が、デレ。・・・・・・あ、大事な事なので、二回言ってみた。




なんというか、すごい。ここまで『ツンデレ』を体現した人間が、今だかつて居ただろうか。いや、居るわけがない。





「誰がツンデレよっ! てか、それは絶対違うでしょっ!?」

「あぁ、ティア落ち着いてー! 大丈夫、ティアのツンデレはとっても素敵だからっ!!」

「アンタも認めてんじゃないわよっ!!」



やっぱりだ。やっぱり、ティアナはツンデレなんだ。・・・・・・あぁ、素晴らしい。まさしく正統派だよ。

髪型に口調、性格、そして行動・・・・・・その全てがツンデレだと象徴している。つまり、ティアナは『ツンデレ・オブ・ツンデレ』なのだ。



「・・・・・・あぁ、段々アンタがどういう性格か分かってきたわ。そういう風に人の古傷を平然と抉るようなやつなのね?」

「そうだよ。てか、言ったでしょうが。僕・・・・・・優しくなんてないの」



にっこり笑って言うと、ティアナが納得した顔になった。

うんうん、いいことだ。とりあえず、最後の締めに向かおう。



「まぁ、これからよろしくね。ツンデレ・オブ・ツンデレ」

「えぇ、よろし・・・・・・・・・・・・・ねぇ、コイツ撃っていいわよねっ!? マジで撃っていいわよねっ!!
アレとかソレとか全部踏まえた上で撃っていいわよねっ!!」

「だからティアダメだってばー! 大丈夫、ティアのツンデレは世界一だと思うからっ!!」

「だからアンタも認めるなっ!!」










とにかく、これでファーストコミュニケーションは上手く行った。とりあえず、ツンデレは素晴らしいと言う教訓を得たのである。





・・・・・・とりあえず、外回り頑張ろう。フェイトとの時間が癒しになるんだから。




















(第3話へ続く)




















おまけ:古き鉄の暴走の余波




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・ミーティングルームを借り切って、ヒロと二人でご飯を食べる。





で、食べながら・・・・・・笑ってしまう。原因は、あのバカ。





来て一週間で早速大暴れをかましたと本人から聞いて、大笑いしてしまった。










「しかし・・・・・・やっさんもバカだねー。てーか、そこまでカッコつけてやめられないってのがなんというかかんというか」

「やっさんは相当苦い顔してたけどな。てーか、俺もそうだしお前だってするだろ。
だって、辞表まで書いてて覚悟満タンだったのに無碍に却下されたんだしよ」

「それはね。・・・・・・でもさ、あの子そう考えると今は結構辛くない?」



普通に弁当のポテトサラダを摘みつつそう聞いてきたヒロに、俺は頷きで答えた。

辛いに決まってるだろ。なにやら色々と認識してしまったらしいからな。



「でもさ、なんで今頃やっさんを六課に? 戦力って言うなら、もう十分過ぎるくらいあるだろうにさ」

「それなんだけどよ・・・・・・どうも六課って部隊は、色々ときな臭いんだよ」

「どういうことさ」

「まず、戦力をあまりに集中し過ぎている。リミッターかけてまでオーバーSばかり集めてるんだぞ?
それも全員歴戦の勇士って言える連中ばかりだ。あと、俺が気になってるのは六課の後見人だ」



六課の後見人はやっさんとハラオウン執務官の義理の母親であるリンディ・ハラオウン提督と、お兄さんのクロノ提督が居る。

そしてもう一人。ヒロの妹分でここ2年で大変お世話になった、聖王教会騎士のカリム・グラシアさんだ。



「後見人って、カリムにリンディさんにクロノさんでしょ? それがどうしたのよ」

≪ヒロリス女史、実はそこに三人プラスされるんです。・・・・・・主が情報網を駆使して調べたのですが≫

「伝説の三提督が非公式という形ではあるが、六課の設立と運営に手を貸してるんだよ」

「はぁっ!? 三提督って・・・・・・あれだよねっ! 管理局の黎明期を支えた英雄って言われてる爺さん婆さん達っ!!」



そしてヘイハチ先生の同期で盟友だ。そんなのが普通に、局の中の1部隊の設立に手を貸してる。

どう考えてもおかしい。こう言ったらあれだが、レリックがそれほど重要なキーとは俺には思えない。



≪そして、そこの影響が出ていると思われる部分があります。・・・・・・六課は、本局の所属。
しかしながら、所在地はミッド地上。ミッド地上の管理局の命令系統から外れています≫

≪そうだよな、よく考えたら変じゃねぇか? カリムのねーちゃん達は、なんでそんなことしてまで六課を作ったんだよ。
まるでそうする必要か何かがあるみたいに感じるぜ。・・・・・・なぁ姉御、ボーイが六課に居るのって≫

「そうだね、もしかしたら相当ヤバイかも。これだけでもデカイカードが出まくりだ」



非公式な後見人。人材制限に引っかかるレベルの隊長陣。

そしてまるでロンリーソルジャーになれと言わんばかりの指示系統。クサい。いくらなんでもクサ過ぎる。



「てーか、そう考えると後見人やら部隊長は、それを知りつつやっさんを巻き込んでる。
いや、やっさんだけじゃないか。知り合い連中や、何にも知らない人間もだ」

「・・・・・・サリ、一応やっさんにその辺り説明しておいた方がいいんじゃないのかな?
正直さ、私は身内連中ばっかりだから、まぁ大丈夫かなとか思ってたんだけど」

「実は俺もだ。アイツのことだからハラオウン執務官にフラグが立てられずに泣いたりする楽しい日々を過ごすもんだと思ってたが」





いくらなんでも、これはありえない。デカイカードが揃い過ぎてる。

てーか、俺は考えが甘かったと、今さらながら、ここで痛感した。

あとは六課自体もそうだが、レリック事件の進展具合もここに来て早過ぎる。



広域次元犯罪者であるスカリエッティがガジェットの製作者と判明したり・・・・・・嫌な予感がする。



一応予想はしていた。だけど、やっさんや俺らは、とんでもないことに巻き込まれ始めてるんじゃないのか?





≪ですが、ここで蒼凪氏に教えて、下手に警戒心を煽るようなことをしていいのでしょうか?
他人だけならともかく、隊長陣を筆頭に知っている人間も多数居るようですし≫

「・・・・・・いや、教えておこう。こうなってくると、何時どういう形で何が来るか分かったもんじゃない。
あとはシャマル先生にもだな。それとなくやっさんの力になって欲しいとかお願いしとくか」

「なら、やっさんには私が話すよ。・・・・・・ほら、やっさんにちょっと頼みたい事もあるからさ」

「そうだな。じゃあヒロ、任せるわ。俺はシャマル先生に連絡を取る」










・・・・・・まだ、この時点では平和だった。だけど、この平和はもうすぐ壊れる事になる。

俺は、やっぱり弛んでいた。俺の鉄は錆び付いて、往年の輝きを少し無くしていた。

だから、バカな勘違いをしていたんだ。そう、『巻き込まれて始めていた』んじゃない。





もう、とっくに巻き込まれていた。だから俺らは・・・・・・戦う事を選ぶんだ。




















(本当に続く)




















あとがき



なのは「えー、そんなわけで新訳StS第2話はいかがだったでしょうか。本日のあとがきのお相手は高町なのはと」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンです。・・・・・・さて、高町教導官が最終回で死亡する事が決定した今回のお話ですが≫

なのは「ちょっと待ってっ!?」





(あれ、なんだか不満そうだ)





古鉄≪そんなこと、決定して無いよっ! てゆうか、いきなり失礼じゃないかなっ!!≫

なのは「それ私のせりふっ!! というか、分かってるなら言わないでよっ!!」

古鉄≪大丈夫ですよ。高町教導官相手に失礼という言葉はありませんから≫

なのは「あるからっ! 普通にあるからっ!!」





(白の砲撃手、ぜーぜーと荒く息を吐きつつも、話をすることにした。というか、考えるのをやめたらしい)





なのは「それで、2話目なんだけど・・・・・・一応残留は決まったけど」

古鉄≪簡単にはいかない罠ですよ。当然、仲良くなっていこうという決意は普通に消えます。
このあたりは、おまけが原因ですね≫

なのは「ヒロリスさん達・・・・・・余計なことを」

古鉄≪仕方ないじゃないですか。普通に事情も知らずに巻き込まれてる人間が大半なんですから。
ぶっちゃけ、あなたとかもうちょっと怒っていいですよ? いい感じで巻き込まれるんですから≫

なのは「ま、まぁ・・・・・・そこはね? でも、やっぱり私は局員だし、放置はしておけないし」





(大人って、色々大変らしい。うん、本当に大変だ)





古鉄≪とにもかくにも、次回を期待しててください。というか、作者は早くSecond Season書き上げなさい≫

なのは「この話ではほとんど無い巨大生物戦で苦戦してたりするんだよね。
・・・・・・確かに、対人戦闘が主だったから」

古鉄≪最近それでやったのって、JS事件話で出てきたヒロさんが瞬殺したアレくらいですし。
まぁ、なにはともあれ・・・・・・本日はここまで。お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

なのは「高町なのはでした。それでは、また次回にー!!」










(そして、二人楽しそうに手を振る。というか、楽しいらしい。
本日のED:仮面ライダーWの挿入歌:『Cyclone Effect』)




















ヴィヴィオ「あのね、フェイトママ」

フェイト「うん、なに・・・・・・え、ヴィヴィオ出てきていいのっ!?」

ヴィヴィオ「いいの。私思ったんだけど、このままいくとすごいことになるんじゃないかな?」

フェイト「え、どういうことかな」

ヴィヴィオ「保護されてから、恭文と仲良くなるでしょ? そうすると、テレビ通りだと私は瞬間・詠唱能力とか使えると思うんだ」

フェイト「・・・・・・あ、そう言えばそうなるね。
あれ? なんだかすごく強くなりそうな予感が」

ヴィヴィオ「というか、鉄輝一閃とか恭文Verのアクセルとかクレイモアとかブレイクハウトとかベフィス・ブリングとか使えるんだ」

フェイト「ごめんヴィヴィオっ! それ私はすっごく怖いことだと思うんだけどっ!!」

恭文「大丈夫だよ。それを回避するために僕はヴィヴィオを『このクソガキが・・・・・・!!』って冷たくあしらうから」

フェイト「正直それもどうなのっ!? というか、なんだかバッドEND臭がするからやめようよっ!!」

ヴィヴィオ「・・・・・・恭文、ヴィヴィオのこと嫌い? だったらヴィヴィオ、悲しいよ。恭文のこと、好きなのに。
もっと言うと、出会ってからすぐに大人モードが固定になっちゃって」(すっごく泣きそう)

恭文「へ?」

ヴィヴィオ「そのままヴィヴィオは恭文のお嫁さんになってもいいくらいに好きなのに・・・・・・。
うぅ、恭文はヴィヴィオの事好きじゃないんだ。だからそういうこと言うんだ」(というか、泣いている)

恭文「大丈夫だよ。どうせ戦うのはハードボイルド魔王で、僕とフェイトはスカリエッティを捻り潰すんだもの。
いっぱい仲良くしても、よくよく考えたら問題なかったんだよね。よし、ヴィヴィオ。いっぱい仲良くしようか」

ヴィヴィオ「うん♪」

フェイト「ごめん二人とも。私は正直その発言を素直な気持ちで聞けないよ。
というか、大人モードに固定されても、普通にヴィヴィオと六課在籍段階で恋人同士は・・・・・・」

恭文「大丈夫。メルティランサーのゲーム2作目はそういう描写あったから。
なにより、ディードENDが来てる時点でもう・・・・・・もう・・・・・・」(なんだか泣き出した)

フェイト「あぁ、泣かなくていいよっ! ごめん、私が悪かったから泣かないでー!!」

ヴィヴィオ「二次元ならそういうENDもありだと思うんだけどなー。ね、アルトアイゼン」

古鉄≪現実なら絶対に無しですけどね。てゆうか、普通に犯罪ですから≫










(おしまい)




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あきゅろす。
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