[携帯モード] [URL送信]

小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第35話 『掟破りな登場と旅立ち』



エル・イル・クスクス『しゅごしゅごー♪』

エル「今日もドキっとスタートドキたまタイムなんですっ! 今回は歌唄ちゃんのお話なんですっ!!」

クスクス「違うよー! りまのお話だよー!?」

イル「いや、お前ら・・・・・・間違っちゃあいないけどそれ違うだろ。恭太郎とティアナさんの話だろうが」





(やっぱりここでも呼び捨てな新しい古き鉄や、その他色々な面々が画面に登場。そして、なんかキャンディー出てきたり)





エル「ノンノーンっ! イルは甘いのですっ!! このお話の真の主役は、歌唄ちゃんなのですよっ!?」

イル「それは絶対違うだろうがっ!!」

クスクス「違うよー! りまだよー!?」

イル「だからお前も落ち着けー!!」

エル「とにもかくにも、歌唄ちゃんとエルとイルが悪者退治にズババーっと頑張っちゃうのでよろしくなのですっ! というわけで・・・・・・!!」

エル・イル・クスクス『ドッキドキ♪』

ラン・ミキ・スゥ『ちょっと待ってー! 出番を取らないで(くださいです)ー!!』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・じいちゃん達がターミナルに到着するちょっと前。もっと言うと、前回冒頭と同時刻。





俺は、全速力で結界の中を走っていた。風を切り・・・・・・いや、俺が一陣の風となり、空間を駆け抜けていた。屋根を飛び降り、歩道に着地。そのまま速度を維持して突っ込む。





そして、右の蒼ビルトと左の金ビルトを逆手に持ち、速度は維持したまま緑のゾンビっぽい連中をぶった斬っていく。





数はそこそこ居るし、意外と手ごたえが硬くて何体かは仕留め損なう。

だけど、それに構わずに俺は敵陣を縦横無尽に駆け抜け、斬り抜ける。

・・・・・・大丈夫、俺には優秀なガンナーがついてる。



もう、その優秀なガンナーは俺が何も言わなくてもとっくに動いてる。半分は俺を追いかけ、そしてもう半分は自分へと迫ろうとしている連中をしっかり見据えているはず。










「クロスファイア・・・・・・!!」





後ろで二丁の銃を構える女の子の周りに、残った敵と同じ数の弾丸が生まれる。



そしてそのまま、その女の子・・・・・・ティアナさんは、銃口を連中に向け、引き金を引いた。





「シュートッ!!」





放たれたオレンジ色の弾丸は、真っ直ぐにゾンビ連中に向かう。連中は逃げようと右往左往するけど、そんなので逃げられるわけが無い。

弾丸は、的確に胸元や頭、急所と思しき箇所を貫き、ゾンビ達を緑色の塵に変えた。・・・・・・さすがにいい腕してるわ。安心して背中は任せられる。

とにかく、目に付く奴は片した。俺はそのまま、黒笠に突っ込んでる。そして、逆手に持った蒼ビルトを袈裟から殴るようにして叩き込む。



黒笠はそれを手に持った刃で受け止める。そこから、鍔迫り合い。





「・・・・・・てめぇ、あのおかっぱしゅごキャラになんの用だ」

「話す必要は・・・・・・ない」



ものすごい力で、黒笠が俺を弾き飛ばす。俺はその勢いに逆らわずに後ろに飛ぶ。

だけど、瞬間的に黒笠が間合いを詰めてきた。空中に居ながら、距離は0に変わる。そして黒笠はそのまま、黒い刃を振るう。



「ふんっ!!」





一度ではなく、踏み込みながらも連続でやってきた斬撃に対して俺は、両手のビルトでそれを払い、退けていく。空中を飛ぶ俺の目の前で何度も火花が散る。

そうして着地。すぐさま身体を左に捻る。頭の上から叩き込まれたのは刃。その一撃を避けつつ、俺は金ビルトを順手に持ち変える。

地面を斬り裂いた刃が、すぐさま返されて俺の右側から打ち込まれた。俺は後ろに大きく跳んで、それを回避。近くの屋根にそのまま着地する。



そいつも同じように飛んでくる。・・・・・・いや、俺の後ろに回りこみ、斬撃を浴びせてくる。しゃがんでまずは一撃を回避。だけど、当然それで止まるはずがない。

続けざまに幾度もそいつは刃を叩き込む。逆手に持った刀は、まるで生き物のようにうねり、俺へと迫る。

しゃがんだ後、頭上から叩き込まれた刃は地面を転がって回避。続けて真一文字に打ち込まれたのは、後ろに身体を回転させながら回避。



それでもなお、刃を返し、突き出してくる。その一撃を後ろに回りこむ形で回避。今度は俺が金ビルトを叩き込む。

それを黒笠は身体を後ろに逸らして避ける。それだけじゃなく、避けながら右足を俺に叩き込んできた。

蒼ビルトで受け止めて・・・・・・足、踏ん張り切れない。そのまま俺は、後ろに吹き飛ばされ、数度屋根の上を転がる。



転がりながらも屋根に拳を叩きつけて、身体を跳ね上げる。そうして空中で身体を捻って、何とか滑りながらも着地。だけど、もう目の前に黒笠が迫っていた。

刃が、俺の首を狙って右側から真一文字に打ち込まれた。それを蒼ビルトで受け止める。そして、踏み込む。踏み込みながらも立ち上がって、体勢を整える。

俺の方が体格は小さいし、身長も30センチ近く違うから、こうしないとすぐに潰される。



蒼ビルトの刃と、黒笠の黒い刃が擦れて、また火花が上がる。そうしながらも、すぐさま金ビルトの切っ先を黒笠に突きつける。刃には、金色の魔力が一瞬で宿る。

狙うは首の右側、人間だったら、生物だったら、間違いなく急所に当たると思われる場所。なお、一部例外は除いた上で言っているので、あしからず。

だけどそいつは、それを身体を捻って避けた。刃が、僅かに首を包む黒い鎧をかする。その地点から火花が散る。



・・・・・・せめてそこから、伝わる手ごたえから、こいつの身を包む鎧の硬さを覚えようと、神経を研ぎ澄ます。





「ふんっ!!」





俺がそんな事をしている間に、左足で蹴りが入る。それを腹にまともに喰らい、体勢が崩れる。そこを狙って、また左足が飛んでくる。今度は顔面に食らった。

そこを狙って黒笠は左足を引き、右足を軸にして身体をその場で回転させる。そうしながらも無理矢理俺に刃をねじ込もうとする。

足元の屋根が、踏み込む足の力で音を立てて砕ける。俺はその勢いに逆らわず、一気に吹き飛ばされる。



いや、後ろへ飛んだ。だって、このままだと俺まで巻き込まれるから。・・・・・・放たれていたオレンジ色の弾丸の数々に。

俺はその間に少し離れた屋根に着地。頭をブンブンと横に振って、衝撃でボヤけてた意識をハッキリさせる。

つーか・・・・・痛ぇ。あの野郎、もうキレた。マジで叩き潰してやる。



黒笠はそれに対して正面から突っ込み、刃を幾度と無く振るい、その全てを斬り裂く。斬撃で弾丸を構築する魔力が拡散され、黒い鎧をその礫が叩くけど、基本的に問題ないらしい。

だって、そのままティアナさんの方を向きながらも地面へ降り、一瞬かがんだと思ったら一気に飛び上がり、そのまま屋根伝いに跳びながら移動を開始したから。

当然のように、俺は黒笠の進行方向に回り込んで立ちはだかる。前衛の仕事の一つ、ここでやらなきゃ、意味がない。





「邪魔を、するな」





そんなことを言いながら、刃を逆手に持ち、俺に叩きつける。





「お前がなっ!!」





俺も同じように蒼ビルトを叩きつける。黒い刃と銀色の刃は交差し、また火花を上げた。



・・・・・・右わき腹に違和感。つーか、斬られた。鋭い痛みと、血の熱さが肌を伝う。





≪恭太郎っ!!≫

「大丈夫だ。まだ、やれる」

「・・・・・・いい腕だ」





くそ、自信満々に上から目線で言い放ちやがって・・・・・・!!





「だが、少々温い」





そうして、黒笠がティアナさんへ迫る・・・・・・いや、迫ろうとした。

だけど、足が止まった。頭にかけている黒笠の前の部分にヒビが入ったから。

そして、ヒビは一気に後方部分に到達。そのまま『パキリ』と音を立てて割れた。



俺達が足場にしている屋根に、二つに割れた黒笠が、鈍い音を立てて落ちた。





「・・・・・・お前もまぁまぁやるな」





俺はそれにニヤリとしつつ、振り返る。当然、構えは崩さずに。



そして、自信満々に言い放ってやる。





「けど、温過ぎだ。俺のじいちゃんには全然及ばない」

「ほう、お前の祖父は私より強いのか」





黒笠・・・・・・いや、狼の顔をしたそいつは、俺に振り返る。





「いや、お前よりもか」





不釣合いなくらいに綺麗だと思えるほどの青い瞳で俺に睨みを利かせつつ、また構えた。刃を、両手で持つ。

その構えは、今までとは違っていた。今まではどちらにしても片手持ちだったのに、今は両手。

両手で黒木拵えの刃を持ち、その刃を前に突き出す。いわゆる、正眼の構えを取った。



身体から出されている殺気が、さっきより鋭くなってる。それを見て俺は思う。これは・・・・・・次で勝負をつける気だと。





「あぁ、強いさ。俺なんかよりもずっとな」





なお、今のじいちゃんじゃなくて未来のじいちゃん基準なので、あしからず。



今のじいちゃんなら・・・・・俺が本気出したら、ぜってー俺の方が強いし。





「だから・・・・・・どんだけ殺気出そうが、お前なんざ全然怖くねー」





足に力を溜める。黒狼も同じく。



互いにタイミングを計っている。飛び出し、相手を叩き斬るタイミングを。





「そうか。では・・・・・・お前を人質に、その祖父とやらと手合わせしてみるか」





どこか楽しそうにそんなことを言ってきやがった。いや、楽しいんだ。



俺もコイツと同類だから、なんとなく分かる。だけど・・・・・・残念ながらそれは。





「無理だ」





両手のビルトを鞘に収める。刃に宿すのは魔力。



それを用いて、薄く、鋭く、全てを斬り裂く刃と化す。






「・・・・・・ここで俺に叩き潰される奴には、絶対にな」





低く、かがむように構える。両手は当然のようにビルトの柄に当てる。さぁて、集中しろ。もう硬さは覚えた。

大丈夫、俺は斬れる。コイツの刀も、鎧も、コイツ自身も。もう斬れる。

・・・・・・いや、斬る。そうだ、斬るんだ。俺の意思で、俺の勝手で、コイツを斬る。



そうだっ! 俺が斬ろうと思って斬れないもんなんざ、この世の中のどこにもねぇっ!!





「ふ、面白い。やれるものなら・・・・・・やってみろっ!!」





黒狼の刃も、黒いエネルギーが溜まっていく。刀身に同じ色の火花がほとばしる。





「雷輝・・・・・・」





俺は、そのまま踏み込んだ。





「双閃っ!!」










黒い狼は、刀を両手で順手に持ち、袈裟に叩き込んできた。





振り抜かれた刃から、まるでスターライトの如くエネルギーの奔流が放たれ、屋根や周囲の物を吹き飛ばす。





そして俺は・・・・・・金色の光となり、両手のビルトを鞘から抜き放ち、刃を叩きこんだ。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第35話 『掟破りな登場と旅立ち』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・・・・薙旋』





黒い光と金色の光が交差したその一瞬で放たれたのは、4つの閃光。逆手に持った両手の刃で、鞘走りも使いつつ打ち込んだのは奥義。

御神流奥義・薙旋。雫師匠から教わった御神流の技。両手に持った刃での乱撃。一応、俺の得意技の一つ。

放たれた閃光の全てが、黒い刃を、そこから放たれた光を、そして・・・・・・黒い鎧で包まれた狼の身体を、微塵に斬り裂いた。



・・・・・・つか、ギリだったかも。蒼ビルトの刃、ちょっと欠けてるし。





「・・・・・・様、申し訳」





そいつは、そう声を上げながら、足場にしていた屋根に倒れた。





「ありま、せん」





で、そのまま爆発。・・・・・・炎の中に消えた。



・・・・・・つか、痛ぇ。身体中なんか痛ぇ。てゆうか、ジャケットがあっちこっち破れてるし。





「ビルト、大丈夫か?」

≪この程度なら自己修復は効きます。問題ありません。というか、あなたの方が問題でしょ。あっちこっち血が出てるし≫





そう、ビルトの言うように向こうの斬撃のエネルギー余波で、体中が傷だらけだ。



でも、問題はない。致命傷になりえそうな部分はあまりないから。あ、でもわき腹はすぐに止血しないとまずいかも。





≪しかし・・・・・・・また空気を読みませんでしたね。普通逃がして最終決戦で対峙というのがパターンなのに≫

「うっさい。てゆうか、DTBではそういうのあんまりないだろうが」





じいちゃんから勧められて見たこの時代のアニメ。・・・・・・最高だった。レトロアニメと侮っていた自分を恥じるくらいに最高だった。

あの無駄に引き伸ばすとか、相手を逃がしてレギュラー化とか、そういうアニメのお約束なんてない、スタイリッシュな戦闘シーンに俺の心は痺れた。

戦闘シーン自体の時間は他のアニメに比べて少ないし、いわゆる敵のライバル化も少なめではあるけど、それでも楽しい。てか、俺はアレの方が好み。



あー、いいなぁ。思い出したらなんか楽しくなってくるくらいにいいなぁ。





「・・・・・痛てて。やばい、やっぱ致命傷あるかも。なんか痛いし」

≪それだけ元気があれば問題はありませんよ。咲耶に愛ある治療を施してもらえれば、あっという間に治るでしょ≫

「それは勘弁して欲しいんだけどっ!?」

「恭太郎っ!!」



声がする。それは、女の人の声。てか、俺のよく知っている人の声。

そちらを見ると、なんか心配そうな顔して俺を見てた。



「アンタ大丈夫っ!?」





向こうから屋根伝いにティアナさんが飛んできた。で、俺は軽く右手を上げて答える。



・・・・・・あー、痛い。やっぱ要治療かな、これ。





「あー、なんとか。しかし・・・・・・コイツら、なんなんだ?」





・・・・・・数秒待つ。だけど、答えはどこからも帰ってこない。



うーん、どうやらお約束は成立しないらしい。普通、ここで補足みたいに第三者の声がするのに。





「・・・・・・そんだけ言えれば大丈夫ね。とにかく、戻りましょ。アンタの怪我の治療もしなきゃいけないし」

「うん、そうする」










・・・・・・速攻で倒した事で、ちょっと失敗したなと思う事がある。それは、コイツらの襲撃の理由。





今までの会話の中で、コイツらがあのしゅごキャラを狙って来てたのは事実だ。そこは間違いない。だけど、その理由が分からない。





うーん、やっぱあの子から直接聞くしかねぇか。それしかないって。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・というわけで、悪い。なんも収穫なかった」





自宅に戻って、リビングでソファーに座らされ、傷の治療を受けつつリインさんとシャーリーさんにそう話す。で・・・・・・当然のように視線が向く。



俺にじゃない、咲耶にだ。





「咲耶、献身的ですね。恭太郎、あんまり心配かけちゃだめですよ」

「うーん、恭太郎感謝しないとだめだよ? というか、咲耶の何がいけないのか、私には分からないよ」

「いやいや、リインさんもシャーリーさんもいきなりなんの話っ!? そして俺の言葉に対しての返答じゃないよね、それっ!!」





あはははは、こんな会話になる理由? そんなの決まってるだろ。



ナース服の上から白衣を着て俺を包帯でぐるぐる巻きにしてるからだよ。





「・・・・・・咲耶さん、もういいんじゃないの? 恭太郎、そのままじゃゾンビになっちゃうし」

「そうだよー。咲耶さんやりすぎー」



りま、クスクス、お前達はちょっと間違ってる。『ゾンビになっちゃうし』じゃない。もう俺はゾンビになってる。

外見だけならなんちゃってゾンビだよ。もしくはピラミッド系ダンジョンに居るアレだよアレ。このままお化け屋敷のバイトしてもいいくらいだと思うし。



「ダメです」

「いや、それダメって・・・・・・・てゆうか、なによその統合性の無い服は。ナースがしたいのか女医がしたいのかよく分からないし」

「いえ、恭さまがナース属性か女医属性か分からなかったもので、両方併せてみました」



お前一体どんな気使ってるっ!? てゆうか、その真剣な目で答えるのやめろー!!



「なるほど、そういうことなら納得だわ」

「そう言っていただけると嬉しいです」

「お前も納得するなー! つか、このツッコミありどころの状況に対して納得って言う言葉を持ち出すのはおかしいだろっ!!」

「てゆうか、あれよ恭太郎」



え、俺の的確なツッコミは全部スルーですかっ!? てゆうか、最近このパターン多いんですけどっ!!



「アンタも恭文の親戚ならもうちょっとハッキリしなさいよ。恭文ならその辺り凄まじくハッキリしてるわよ? きっとフェイトさんが同じことしたら・・・・・・」

「したら?」

「ためらい無く『昔懐かしく黒色ロングスカートなメイド服。もちろん、フリフリカチューシャ付きが好み』って言い切るに決まってるんだから」

「お前はじいちゃんに対して一体どんなイメージ持ってるっ!? いくらじいちゃんでもそんなことするわけが・・・・・・わけが・・・・・・わけ・・・・・・が・・・・・・」



・・・・・・とりあえず、リインさんとシャーリーさん、ティアナさんに咲耶、りまにクスクスとイル、ついでにエルも見る。みんな、今の俺と同じで『ありえる』って言いたげな顔してた。

あぁ、そうだよな。じいちゃんだったらそう言うよな。だって、ティアナさんを目の前に『ツンデレ・オブ・ツンデレ』って言い切るくらいだし。しかも何度ぶっ飛ばされても懲りないの。



「まぁ、おじいさまの話はともかく・・・・・・恭さま、わき腹の傷、思ったより深かったんですよ? お願いですから安静にしててください。とりあえず、2、3日は戦闘行為は禁止ですから」



咲耶やリインさんが治療系魔法を使える関係で傷は塞がっているとは言え、もうちょっと深かったら命に関わってたらしい(咲耶談)。

なので、こんな滅多にやらないような真剣な顔でこんなことを言うのだ。まぁ、ここは俺も・・・・・・頷いた。



「それで、どういうことなの? 唯世が消えた事とか、アンタやティアナが戦った妙な連中とか、その子とか」

「そうなのですっ! よくよく考えたらその辺りの説明を全然受けてないのですっ!! 説明をぷりぃずなのですっ!!」

「モウリョウ団の仕業だ」





そうそう、モウリョウ団の仕業・・・・・・え?



俺達の視線が、リビングの入り口に向く。そこから入ってきたのは、二人の男性と・・・・・・二人のイマジン。



待て待てっ! 今頃お約束展開っ!? ちょっと遅すぎるだろこれっ!!





「恭太郎、お前・・・・・・またなにその格好? ありえないし」





そう言って笑いをこらえているのは、俺の幼馴染。

黒い皮製のジャンパーとパンツを履いて・・・・・・俺より身長が20センチ近く高い。

髪は黒く、その形は割合じいちゃんとかに近いかも知れない。



・・・・・・とりあえず、今の俺の格好が面白いのは分かった。ツボだったのも分かった。けど、笑うな。おのれが今頃のこのこ来るまでの間に俺は色々大変だったんだよ。





「悪いな、勝手に入らせてもらった。つーか・・・・・・鍵は閉めとけ。無用心だろうが」



続けて話すのは、茶色の髪に白い半そでのベルト付きの上着に、黒のシャツを着て、ジーンズを履いた男性。



「どうも、お邪魔します。
というか・・・・・・みんなー! 久しぶりー!! 元気してたかなー!?」

「みなさん、お久しぶりです」



その二人の後から入ってきたのは、黒い外套のような装飾を身に纏い、指の先に銃口があるイマジン。現在、その両手を大きく広げて手を振っている。

で、青い鬼。青い身体に銀色のラインが入っている。そして、両手を身体の前で組み、静かにお辞儀。



「・・・・・・侑斗さんにデネブさんっ!!」

「てゆうか、幸太郎にテディまでっ! どうしたですかっ!?」










そう、目の前に現れたのは、桜井侑斗さんとデネブ。で、幸ちゃん・・・・・・俺の幼馴染の野上幸太郎と、そのパートナーイマジンのテディだった。










「悪いが話は後だ。・・・・・・初対面の顔も居るが、全員ちょっと来てもらうぞ」

「え?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



まぁ、とにもかくにも事情説明だ。もちろん、歌唄とエルとイル、りまとクスクスに対して。俺達は場所をゼロライナーに移して、説明した。なお、どういうわけか電車が普通に走ってる。





俺と咲耶、ビルトの事とか、電王の事とか、唯世が消えたのが時間の異変関係の可能性が高いってことも一緒に話した。





で、当然のように・・・・・・もう頭を抱えられるわけだ。










「・・・・・・ありえないのですっ! いくらなんでもフリーダム過ぎなのですっ!! こらー! お前らー!! この愛の天使・エルを騙そうとしたってそうはいかないのですよっ!?」

「やかましいっ! お前は黙ってろっ!!」



ゲシっ!!



「あぁぁぁぁぁれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



とりあえず、イルに蹴られて壁に叩きつけられた空気を読まない真性・フリーダムは放置することにする。てか、付き合うつもりもない。



「・・・・・・まぁ、ありえないって言えばありえねぇけどな。でも、実際に目の前に居るもん否定するのもあれだろ。
それ言ったら、アタシらだって十分ありえないぞ? てか、外の景色もありえないし」

「ドアを潜ったら、いきなり砂の世界だものね。私、びっくりした」

「クスクスもー」



そう言っているイルとりま、クスクスが目を向けるのは、ゼロライナーの外。

ゼロライナーは現在どこかへ向かっているのか、すごいスピードで虹色の空と砂と岩だけの世界を走っている。それにどうにも呆気に取られているというかなんというか。



「確かにな。俺もデネブも、お前らみたいなのは見たことねぇし」



あははは、侑斗さんハッキリ言うなぁ。ハッキリ過ぎてビックリだよ。

・・・・・・なお、幸ちゃんは俺の幼馴染。なので当然、しゅごキャラのことも知ってる。もちろん、テディもだ。



「てゆうか恭太郎、お前・・・・・・恭文の孫、なんだよな」

「あぁ。まぁ、今じゃなくて未来の時間のだけど」

「ようするに、おじいさんになった恭文が暮らしてる時間ってことよね。・・・・・・でも、なんだか私は納得した」



抱えていた頭を上げて、どこか嬉しそうにそう言ってきたのは歌唄だった。その理由が分からなくて、俺達は顔をしかめてしまう。

それが分かったのか、歌唄はそのまま言葉を続けた。



「だってアンタ、恭文の面影があるもの。今までは親戚だからってことで納得してたけど、孫か・・・・・・」



歌唄がもう一度俺をジッと見る。見て・・・・・・納得したかのように頷いた。



「そうね、そっちの方が納得出来るかも。それで、私は恭文の第三夫人になっているの?」

「話の文脈おかしくないかっ!? あと、未来で誰と誰が結婚してるとか、どうなるかとか、そういう情報は一切教えられないからあしからずっ!!」

「そうなんだ、残念。・・・・・・まぁいいわ。今大事なのは、唯世のことだもの」

「そうね。とりあえず話を纏めると」



りまが、エプロン姿のデネブさんが淹れてくれたお茶を飲みつつ、話を進める。

幸ちゃん達が来てくれたおかげで、こっちでも色々と分かったから、そのおさらいだ。



「まず、私達・・・・・・というより、未だに眠ったままのあの子しゅごキャラを狙って来たのは、モウリョウ団と言う時間の中の犯罪者集団」



どうやら俺とティアナさんが相手をしたのは、そいつらの一味らしい。幸ちゃん達の話だと、以前やりあった鬼みたいなものに近い連中で構成されているとか。



「だけど、何のために狙っているのかとかは一切不明。そして、そいつらの行動が原因で唯世が消えた可能性も高い・・・・・・と。簡潔に言えば、そういうことよね?」



ティアナさんが、車両に備え付けられたソファーに座っている、侑斗さんと幸ちゃん達を見る。で、二人は頷いた。



「それで、なんで侑斗さんや幸ちゃん達が俺達のとこに?」

「あー、それなんだけどよ・・・・・・。とりあえず恭太郎、お前これが片付いたら一度未来に連れて帰るから。
つーか、未来の時間の恭文じいちゃん達から説教だな。覚悟だけは今のうちからしとけ。そうとうカンカンだぞ?」



・・・・・・はぁっ!?



「恭太郎、まぁ・・・・・・あれだ。お前もチビを見習え。もうちょっと身辺整理する必要あるだろ」

「そうだよ、恭太郎。その辺り、恭文君はちゃーんとしてたよ? なのに、孫が出来ないのはダメだって」



え、どういうことよそれっ! つーか、お願いだからちゃんと説明してくれー!!



「バカ、お前が原因でもう一つとんでもないことが起こってんだよ」

「だからなにっ!? 俺、何もしてねーんだけどっ!!」

「そうです、恭さまは何もしていませんっ!! ・・・・・・私の心を奪ったこと以外は・・・・・・・もう、恭さまのハート泥棒」

「はい、お前黙れっ!? つーか、普通に俺はそんなことはしてねぇっ! そして顔を赤らめるんじゃねぇよっ!!
ね、幸ちゃんも侑斗さんも、どういうことっ!? 頼むからちゃんと話してくれよっ! じゃなきゃ、俺わけがわかんねぇしっ!!」



なぜだろう、そう言うと俺をとても悲しい目で見始めた。

・・・・・・ね、怒っていい? 俺は怒っていいのかな。つーか怒っていいよな。だって、マジでワケわかんねぇし。



「・・・・・・そっか、マジでコイツは自覚がないのか。チビだってもうちょいまともだってのに」

「悪い、侑斗さん。こいつはこう・・・・・・ちょっとアレなんですよ。外見に精神が引っ張られているというか」

「誰がウルトラスーパーアルティメット米粒野郎だってっ!?」

「誰もそこまで言ってないだろっ! つーか、普通にビルトビルガーセットアップしようとすんなよっ!!
あぁもう分かったっ! お前はマジで分かってないらしいから1から話してやるっ!! 実はな・・・・・・」










とにかく、俺は事情を聞いた。簡潔に言えば、かえでとリースが何をして、今現在どうなっているのかを。










「・・・・・・幸ちゃん、それマジ?」

「マジだ。そのせいで、向こうはすごい騒ぎになってんだよ。はやてさんなんてもうこの世の終わりかってくらいに狼狽しまくってる。
恭文じいちゃんもかなり大変な目に遭ってるぞ? てゆうか、関係各所に凄まじい勢いで謝り倒してる」

「そっか。それで話は変わるけど、今日ってエイプリルフールだっけ」

「残念だけど違うぞ。こっちもそうだし、向こうも同じくだ」










で・・・・・・当然のように崩れ落ちて、隅っこで頭を抱えて『ごめんなさい』状態になった。





どうやら俺には、ここで『かえでの自業自得だ』なんて言い切る神経はなかったらしい。てゆうか・・・・・・あぁ、みんなの視線が痛い。すっごく痛い。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「もう信じられない。恭太郎、アンタ女をなんだと思ってるの? マジで恭文見習いなさいよ」

「歌唄ちゃんの言う通りなのですっ! 恭文さんは、ちゃんとフェイトさんとリインちゃん一筋で、歌唄ちゃんのアプローチもしっかりお断りでノーサンキューなのですよっ!?」

「・・・・・・いや、だからそれは一筋じゃ・・・・・・あぁ、もういいや。アタシは気にしない事にした」



イル、奇遇ね。私も全く同じ意見なのよ。それ一筋と違うんじゃないかとか思ってたけど、もう気にしない事にしたわ。

てゆうか、この子やっぱりアイツにアプローチ・・・・・・まぁ、話に聞いた『月詠幾斗LOVE』よりはいいのかも知れない。アイツは大変だけど。



「りまー、恭太郎最低だねー」

「そうね。てゆうか、普通にはた迷惑よ」



あ、なんか突き刺さった。そして思いっきり泣き出し始めた。咲耶がなんか慰めてるけど、効果がない。



「恭太郎・・・・・・ごめん、正直私もちょっと引いてる。てゆうか、しっかり断らないからこういうことになるんだって」

「ですですっ! というか、咲耶が好きだってハッキリ言わないからそういうことになるですよっ!?」

「そうなのですっ! 愛の天使・エルが思うに、咲耶さんとの愛があるから付き合えないと言えば全ては丸く収まるのですっ!! なのに・・・・・・アンタはー! アンタって奴はー!!」

「あー、はいはい。とりあえずみんな落ち着きなさいよ。恭太郎のことは未来のアイツやフェイトさんに任せれば問題ないでしょ。それよりも・・・・・・やらなきゃいけないことがあるわ」



・・・・・・アイツがフェイトさんと付き合うようになった時もそうとう揉めたとは聞いてる。てゆうか、実際揉めた。

でも、ここまではなかった。こんな壮大でくだらない問題はなかった。なので、当然のようにみんなの視線が厳しくなるのも分かる。だけど、そこはとりあえず置いておく。



「・・・・・・でも、アンタ達がどうしてそれを? しかも、なんでわざわざ私達の所に来たのよ」

「あ、恭文じいちゃんから連絡が来たんだよ。俺と侑斗さんに同時にね」

「アイツからっ!?」





・・・・・・幸太郎の話を纏めるとこうなる。アイツとフェイトさん達は、無事に良太郎さん達と会えて、ターミナルに立ち寄った。連絡は、そこの駅長に頼んでしてもらったとか。

それだけではなく、デンライナーでさっきの話に出てきたはやてさんの孫のパートナーであるリースとも会った。そしてターミナルで、みんなはモウリョウ団の事を聞いた。

みんなは今、モウリョウ団を倒すために行動を開始している。なんでも、明治11年の京都にその答えがあるとかなんとか。



・・・・・・え、ちょっと待って。てゆうことは、そのまま明治11年に向かったってことよね。待って待って、あむとかも居るのにそれどうなのよ。家に帰せなくなるし。





「どっちにしても、チビや野上達にその日奈森あむってのは、こっちに帰れねぇよ」



そう言ったのは、侑斗さん。腕を組みながら、相変わらず・・・・・・こう、しかめッ面でそう口に出した。

当然のように、私の耳にその言葉が引っかかった。なので、視線を向けて聞く。



「・・・・・・どういうことですか、それ」

「こっちの時間も歪み始めてるってことだよ。モウリョウ団の連中のせいでな」

「そのせいで、デンライナーの線路からじゃあこっちの時間に入れなくなってるんだ。野上と恭文君達は、みんなこっちに帰れなくなってる。
俺達はゼロライナーで来たから、なんとか大丈夫だったんだけど・・・・・・デンライナーを使ってこっちに戻ってくるのは、今は無理だ」



あぁ、なるほど。そういうことか。歪みの原因がモウリョウ団にあるなら、連中をぶっ飛ばした方が速いと。

・・・・・・アイツやモモタロス辺りが考えそうなことだわ。まぁ、この場合だと私でもそうするけど。



「もしかして、二人がいきなり私達全員をゼロライナーに乗せたのって」

「悪い。ちょっと急がなくちゃいけなくてさ」



幸太郎の言葉で、私は納得した。つまり、ゼロライナーでも時間移動が出来なくなるのを危惧したため。

てか、また随分と慌ててたのね。魔法の事とか知ってるかどうかも分からない歌唄とりままで巻き込んだし。



「問題はありません。おじい様から、歌唄さんとりまさんは魔法の事は知っているとお聞きしましたから」

「あと、大体の事情とかもな。最悪の場合は助けて欲しいって頼まれたんだよ」



・・・・・・納得した。てか、アイツは何時の間にそこまで頭回るようになったのよ。私はビックリなんだけど。



「なんでも、野上のアイディアらしいぞ? ターミナル出る前に、出来るならやっておいた方がいいとか言われたとか」

「・・・・・・納得しました」



そうよね、アイツはそこまで頭回らないわよね。だって、普通に脳筋だし。



「ということは・・・・・・恭文さん、このままだとユニゾン出来ないじゃないですかっ! リインも咲耶もこっちにいますし、アギトちゃんだって今は仕事中ですしっ!!」

「あぁそうだ。だから、じいちゃんズも俺達に連絡したんだよ。・・・・・・オーナーの話だと、モウリョウ団の戦力がどれだけあるかは不明らしい。
じいちゃんズやフェイトさんにディードさんとスバルさん、モモタロス達だけでどうにかなるかわかんないんだ。まぁ、侑斗さんは下がってていいとか言ってたけど」



幸太郎の言葉に思い出すのは、あの赤い色の戦士の姿。そう言えば・・・・・・カード使ったら、対価を払うんだっけ。

それも、キツくて、重い対価。私もその重さは分かってるつもり。フェイトさんの記憶が喰われた時、アイツ・・・・・・相当だったから。



「バカ。そんなこと出来るか。てゆうか、俺達でも元々連中の動きは追ってたんだよ」

「侑斗さん、そうなのですか?」

「あぁ。アイツら、絶対なにか企んでやがる。早く止めないと、とんでもないことになるぞ」

「だけど、情報があんまりに少なくて・・・・・・。そんな時に恭文君から連絡が来たんだ」





で、渡りに船の状態で、そのまま幸太郎を迎えに行って、私達のところへ来たと。

幸太郎も同じくよね。未来の時間は大混乱らしいから。まぁ、やるべきことは決まった。

とにかく私達も明治11年に行って、モウリョウ団を倒す手伝いをする。



・・・・・・あはは、なんでいきなりこんな形になるんだろ。おかしいな。





「・・・・・・恭文さん、待っててください。リインが助けに行くのです」

「いや、リインちゃんそういうことじゃ・・・・・・って、そうだよね。リインちゃんは恭文君優先だよね」

「恭文さんへの愛でリインの心は一杯なので、当然なのです♪」





・・・・・・何故だろう、全員がほぼ同じタイミングでため息を吐いたのは。ね、アンタ・・・・・・マジでリインさんも幸せにしなさいよ?

この人不幸にしたら、アンタ絶対幸せになれないって。とにかく・・・・・・あぁ、そうだ。

歌唄とりまはどうしよう。今のところそのモウリョウ団とやらの行動の影響は出てないみたいだけど。



てゆうか、さすがにこのまま同行はまずいかも知れない。





「私達もこのまま行くわよ」

「当然よね」



私が、どうしようかと悩んでいると、とってもいいタイミングで二人からそんな返事が帰ってきた。

で、それにシャーリーさんやリインさんが顔を苦くする。・・・・・・あと、私も。



「あの、二人とも待って? さすがに今回はだめだよ。実際どうなるかなんてわからないし」

「問題ないわ。てゆうか・・・・・・キャラ持ち抜きでこの子のこと、どうするつもり?」



歌唄が言いながら視線を向けるのは、小さな女の子。

ゼロライナーに乗り込む時に一緒に連れて来て、未だに目を覚まさない子。・・・・・・確かに、そうだ。



「確かに、私達は戦うなんて専門外よ。でも、しゅごキャラのことは」

「同じしゅごキャラと、キャラ持ちにお任せなのですっ!!」



この子、モウリョウ団に狙われてるのは確定だし、かと言ってしゅごキャラが絡むとなると、私達だけで対処出来るかどうかわかんない。



「てゆうか、向こうにはあむも居るし、歌唄は心配してるんだぜ?」

「そうなのですっ! そして特に恭文さんの事が心配で心配でたまらないのですっ!!」

「エルもイルも余計な事言わないでっ! 私は、その・・・・・・別に心配なんてしてないわよっ!!」



歌唄、腕を組んでそっぽ向きながらそんなこと言っても、ちっとも説得力ないわ。

・・・・・・よし、私は気をつけよう。



「りまも同じだよね? 恭文もそうだし、あむのことも心配してるー」

「・・・・・・まぁね。というより、ここまで来て私達だけさようならはありえないわよ」



でも、さすがにこれは・・・・・・・。まじでどうなるかなんて分からないし。



「そうだな、歌唄、りま・・・・・・お前達もこのまま来い」

「恭太郎っ!?」



後ろを見ると、とっても青い顔をした恭太郎がふらふらと立ち上がっていた。で、咲耶が肩を貸してそれを支えている。

・・・・・・意外と復活早かったな。もうちょっとヘコんでるかと思ってたのに。



「ちょっと待って? さすがにそれはだめだよ。というより、それやるとなぎ君辺りに怒られそうだし」

「モウリョウ団に狙われる危険性がある・・・・・・っつってもか?」

「えぇっ!?」



・・・・・・あ、そっか。



「アレが本当にモウリョウ団なら、相手は時間移動まで可能。というか、普通に家まで把握してた」

「そうだよ。下手をすれば、俺達が歌唄達を置いてった後に襲撃。そこで捕まって、そのまま人質として利用って可能性もある。今離れる方が、危険度は高いかもな。てゆうか・・・・・・」

「まだなにか?」

「あぁ。・・・・・・歌唄もりまもキャラ持ちだ。もしも連中がしゅごキャラって理由であの子を狙ってるとしたら、やっぱり危険なのには変わりねぇ。
記憶をなくしてるややと海里達と違って首を突っ込んでるわけだし、むしろこのまま居てもらった方が安全じゃないかと、俺は思う」





・・・・・・恭太郎の言う可能性・・・・・・あぁ、ありえる。十分にありえる。私も、この子が狙われてるのはしゅごキャラだからじゃないかっていうのは、少し考えてたから。



あと、時間の歪みで今の時間に入れなくなるんじゃないかという疑問を持つ人も居るだろう。だけど、もし連中がその歪みをものともせずに移動出来るとしたら?

そうなれば、その疑問は無意味なものになる。なにより、さっきは接触してないけど、歌唄とりまが私達の関係者だと知られていない保証はどこにも無い。

肝心要の預け先だって、当然関係者の中に限られる。そこを知られてしまった場合、そこの人達まで利用される可能性は、かなり高い。



そう考えて・・・・・・私は、決めた。私は歌唄とりまを見る。二人の目はさっきと変わらない決意の瞳。それを見ながら、そのまま決断を口にした。





「歌唄、りま。しばらく付き合わせちゃうけど・・・・・・いいかな」

「問題ないわ」

「まぁ、素敵なレディになる試練と考えれば、大丈夫よ」

「そっか。ありがと」










とにかく二人には、単独で行動しないように、戦闘時には電車の中から出ないようにと、口をすっぱくして言った。





・・・・・・まぁ、いつぞやみたいに電車バトルとかしなければ・・・・・・問題はない、はず。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・でも、これが時の列車の中。なんて言うか・・・・・・飾りっ気ないわね」

「むむ、そんなことはないぞっ! いっつも綺麗に掃除はしてるんだっ!!」

「確かに、塵一つないわよね。・・・・・・てゆうか、アンタすごい綺麗好き?」

「もちろんっ!!」



とりあえず、なんか話し出したデネブさんと歌唄とりまはいい。



「あ、そうだ。みんなにこれあげるね」



とか言いながら、デネブさんがまたかごを取り出して、そこに右手を突っ込んで色々出してるけど気にしない。



「・・・・・・これ、なによ」

「キャンディー?」

「そう、デネブキャンディー。美味しいよー。あ、エルちゃんにイルちゃん、クスクスちゃんにも、はい」



なんかキャンディー配り始めたけど、気にしない。なんか全員普通にしゅごキャラ見えてるのとかびっくりだけど、そこもいい。



「お、悪いなー。・・・・・・中々美味いな、これ」

「ほんとだー。おじさんありがとー」

「どういたしまして。でも、お、おじさんって・・・・・・」



デネブさんがちょっとヘコんでるのとかも・・・・・・あ、そこは気になるな。さすがにおじさんは辛いだろ。



「こらー! イルもクスクスも簡単に買収され過ぎなのですっ!! もうちょっと疑う心を持つとか出来ないのですかっ!?」



そして、当然のようにイルとクスクスが疑いの眼差しをエルに向ける。

だって、そう言いながらデネブさんの顔が付いたキャンディーを美味しそうにぺろぺろしてるんだから。



「おいデネブっ! お前なにやってんのっ!?」

「いや、恭文君の友達だし、仲良くしておかないといけないと思って。さっきはバタバタしてちゃんと挨拶も出来なかったし。
・・・・・・あ、侑斗のこともよろしくね。侑斗もみんなと友達になりたいと、心の中では思ってるから」

「思ってねぇっ! つーか・・・・・・デェェェェェネェェェェェブゥゥゥゥゥゥッ!!」



とりあえず、目の前でまたラリアットを食らって、続いて腕十字ひしぎを痛そうに受けているデネブさんと、仕掛けている侑斗さんは放置することにする。



「ゆ、侑斗・・・・・・ギブっ! ギブギブっ!!」

「うるせぇっ! ちったぁ真面目にやれっ!!」



だって、いつものことだし。もうシャーリーさんやリインさんなんて普通に雑談してるし。



「・・・・・・ねぇ、恭太郎」

「なんだ、歌唄」



なお、普通に二人もデネブキャンディーを舐めてる。りまに至っては気に入ったのか、結構一生懸命に。



「この人達って、いつもこうなの?」

「残念ながらな」



まぁ、そんな変わらない二人の話はさて置くとして、とにかく俺達は作戦会議だ。

・・・・・・それで幸ちゃん、俺達はどうする? このまま直で明治11年かな。



「いや。・・・・・・結構ギリなタイミングになるかも知れないが、ミッドに行く」

「ミッドに? そりゃまたどうして」

「呼んで欲しいって頼まれた増援は、お前やティアナさん達だけじゃないってことだよ。ま、おまけも連れてきちまったけどな」



なんて言いながら見るのは、歌唄とりま。



「なによ、おまけはそっちでしょ?」

「そうよ。いくらなんでも私達の事舐め過ぎよ」



とか言いながら二人の口は動く。結構緊張感なく動く。



「・・・・・・とりあえずお前らはキャンディー舐め過ぎだって言っといてやる。てーか、そんなに美味しいか」

「「うん(えぇ)」」

「即答かよっ!!」



で、当然のように視線が俺に向く。そして幸ちゃんとテディは、やっぱり俺にこう聞く。



「・・・・・・なぁ、恭太郎。この二人はやっぱりこの頃からこうなのか?」

「こう・・・・・・私達の知っているお姿とあまり変わりがないのだが」



結構疲れた感じで聞いてきたので、俺はやっぱりこう答える。



「残念ながらな。で、増援でミッドって・・・・・・あ、そういうことか?」

「そういうことだ。時間がないから、パパっと行くぞ」










というわけで、まず俺達は全速力でミッドへ直行。





そして・・・・・・地上本部、ミッドの首都防衛隊の個室オフィスで仕事をしていたあの二人を直撃した。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・というわけなんです」

「なるほど、なんかスッゲー大変な事になってんだな。それで、いきなりこんな大人数で押しかけてきたと」

「そうなの。・・・・・・すみませんけど、アギトをしばらくお借りしますね。私達やフェイトさん達だけで手数が足りるかどうか、分からないんです」

「・・・・・・・・・・・・ティアナ、お前はまたどうしてそういきなりなんだ。というか、段々と蒼凪に似てるきてるぞ?」



そう、直撃したのはアギト。現在はある人の補佐官として、日夜忙しく働いている烈火の剣精。



「気のせいです」

「そう言い切れるところもそっくりだな。蒼凪も以前全く同じ言い回しでリインを連れ回した事があった。いや・・・・・・あの時は主はやてが相当で、私達みんな大変だった」

「そうですか。でも、私とアイツが似ているというのは、絶対に気のせいです。私、アイツみたいに性格悪くありませんから。
・・・・・・そうよ、確かにパートナーとしては認めてるけど、絶対違うんだから。てゆうか、似てたら私、自分が嫌いになりそう」

「お前、そこまでかっ!? 一体蒼凪と何があったっ!!」





そして、目の前のビジネスデスクに座って、苦い顔をしつつ私の話を聞いているのはシグナムさん。

・・・・・・アギトはアイツとパスがあればユニゾン出来る。それでらしい。あと、リインさん曰く『三人居ればてんこ盛りが出来るのです』とか。

なぜだろう、その言葉に安心感ではなく、とても嫌なものを感じてしまったのは。



てんこ盛り・・・・・・あぁ、アレかぁ。アレよねやっぱり。てゆうか、アレしかないわ。





「とにかく、侑斗さんにデネブさんもそうだが、恭太郎に幸太郎もだ。いきなり来たと思えばこれとはどういうことだ。あまりにいきなり過ぎて、お茶すら出せない」

「あ、大丈夫ですよ。お茶なら俺が淹れますから」

「・・・・・・いや、そういうことではないのですが」



とりあえず、頭を抱えるシグナムさんの気持ちも分かる。分かるけど・・・・・・あぁ、やっぱり私もツッコみたい。

なんか普通に急須を前掛けから取り出して来てるし。てゆうか、そこから出した物で淹れたお茶なんて私は飲みたくない。



「どうもこうもねぇよ。・・・・・・大事な仲間が一人、消えかけてるんだ。そのために力を貸して欲しいってだけの話だ」

「いや、だが我々にも仕事が」

「そうそう、仕事があるんだよ。だからよ・・・・・・パパっと片付けちまおうぜ」



シグナムさんの隣で、妖精モードでプカプカと浮かびながら今まで腕を組みながら静かに話を聞いていたアギトが、一言言い切った。

表情は明るく、どこか楽しげに見える。



「アギトッ! お前はまた・・・・・・!!」

「いいじゃねぇかよ。それにさ、リインはガーディアンの連中に相当世話になってんだぜ?
そのうちの一人がピンチなんだ。こりゃ、八神家の一員としては助けにいかないって選択肢はないだろ」

「いや、そういうことではなくてだな。私が言いたいのは」





シグナムさんは止めようとする。まぁ、当然だろう。仕事をほったらかして人助けしようとするんだから。



ある意味では、局員としては正解。だけど・・・・・・それでアギトが止まるわけがない。嬉々として、私達の方へやってくる。





「つーわけで、とっとと出発しようぜー! さー、久々にブレイズフォームで大暴れだー!!」

「いや、だから・・・・・・頼むから私の話を聞けっ! 嬉しそうに仕事を放り出して飛び出そうとするなっ!!」










なお、こんなシグナムさんの言葉が非常に無意味だったのは、言うまでもないと思う。てゆうか、私達にはマジに時間がない。手間取ってる余裕も無い。





というわけで・・・・・・アギトを迎え入れた私達は、再び時間の中へと突入した。だけど、突入して時の砂の中を走り出した少しの間、電車が非常に揺れた。










「・・・・・・マジでギリだったらしいな」

「みなさん、アレを」





テディの言葉で私達は後ろを見ると・・・・・・線路が、歪んでいた。



というより、歪んでいく。真っ直ぐだった銀色の線路が、空間が、ねじれて螺旋状になる。





「じゃあ、さっき思いっきり揺れてたのって」

「シャーリー、間違いなくアレのせいですよ。本当にギリギリでした」

「まぁいいじゃねぇか。間に合ったんだしよ。さーて、暴れるぞー。楽しみだなー」



・・・・・・非常に楽しそうなアギトを見ていると、さっきちょっと半泣き状態だったシグナムさんを思い出していた。

そう言えばシグナムさん、アイツとアギトが仲いいのちょっと気にしてたっけ。『ロードは自分のはずなのに・・・・・・』ってさ。なんて言うか、ごめんなさい。



「そういやよ、リイン」

「はいです?」

「・・・・・・このツインテールの子と、髪の長い子って」



そう言って、自分を興味深げに見ているりまと歌唄を見る。

そしてそのまま、言葉を続けた。



「またあのバカがフラグ立てたって言う子達か?」

「正解なのです」

「リインさん、一体どういう説明の仕方してるんですか。いや、間違ってはいませんけど。
アイツがまた性懲りも無く頑張っちゃったのは、何一つ間違っていませんけど」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・いや、ジガンの受け渡しが無事に終わってよかったな。





てゆうか、今回はとっても平和に終わった。まぁ、日帰りだったし、そういうのもあるんだろ。

・・・・・・そう、俺とヒロは普通に本局に帰り着いた。時間の経過に伴う技術の進歩とは、とても素晴らしい。

辺境世界と言われた地球からでも、中継ポートの経由無しですぐに帰れるようになるんだから。










≪10年前は、最低でも3つは経由しなければなりませんでしたしね。素晴らしいことです≫

「そうだねー。・・・・・・でさ、これからどうする? 一応今日はもう一日休みだしさ。
てかサリ、早く帰ってドゥーエさんにサービスでもしたら? 最近はジガンの製作で帰りも遅かったんだしさ」

「そうしたいのも山々なんだが、さっきメールが来た。ドゥーエ、妹達の様子見に行くって言って出かけてるらしいんだよ」

「・・・・・・え、どうやって? だってあの人」



あぁ、ナンバーズだ。証拠不十分で立件こそ不可能らしいけど、それでもナンバーズだ。

だから、奥の手を使う。そう、とても便利な能力を、あのお姉さんは持っていらっしゃる。



≪まさか、『変装』か?≫

「正解だ。『変装』して見に行くんだとよ。・・・・・・やっぱ、話した方がいいかなぁ」



いちいちこれは、ドゥーエも辛いんじゃないかとちょっと考えてしまった。だって、妹達に顔や正体を晒せないわけだから。

まぁ、話したら色々と法的処理をする必要が出てくるんだが・・・・・・うーん。



「その辺りはドゥーエさんと話していきなよ。てか、そうしてんでしょ?」

「あぁ。これが中々有意義な時間だよ。・・・・・・マジでケジメつけたくなるくらいにな」

「ほう、そりゃいいことだ。まぁ、その時はぜひとも式に」



そんな時だった。・・・・・・普通に携帯の着信音が鳴った。

なお、曲はクラッシックで某爆竜大佐も使っている『ワルキューレ騎行』。それに俺とヒロの顔が苦くなる。



≪姉御≫

≪主≫

「言うな、何も言うな。聴こえない、俺にはなんにも聴こえない」

「ほらサリ、遠慮なく着信を切りなよ。そして電源から切りなよ。それが幸せだって」



周りを通り過ぎる人達が、着信音のせいなのか俺達を見る。・・・・・・あぁ、それだけじゃないか。俺が全然通信に出ようとしないからだ。同じ事のように聞こえるけど、微妙に違う。

なお、当然のように理由がある。この着信音は、ある人が俺の端末に通信をかけて来た時のみ、鳴るようにセットしてある。なお、俺だけじゃなくてヒロも同じ。



「だけど・・・・・・切ったら切ったで大変だろうしなぁ。それにほら、別口って可能性もあるしよ」

「まぁね。じゃあ、賭ける? なお私は予想通りの案件だと思う」

「そうか。じゃあ、賭けにならないな。俺も同じくだから」



とにかく、通信を繋いだ。勢いよく展開される空間モニターに映るのは、非常に暗いオーラを出した烈火の将。

それを見た時、俺達は悟った。今日一日の予定は、もう明日の朝まで埋め尽くされたと。



『・・・・・・突然の通信、申し訳ありません』

「た、確かに突然でしたね。てか、どうしたんですか?」

『アギトが・・・・・・アギトがまた、嬉しそうに蒼凪の元へ・・・・・・!!』



やっさん、またお前かっ! てか、アレからほんの2、3時間しか経ってないのに、一体なにが起こったっ!?

つーか、アギトもなんで遠慮なく飛び出すわけっ!? フォローする羽目になる俺達の身にもなってみろっ!!



『私が・・・・・・私がアギトのロードのはずなのにっ! なぜ、なぜアギトは・・・・・・!!』

「あぁ、泣かないでくださいっ! 大丈夫、私が思うにロードフラグがシグナムさんには立ってないだけですからっ!!」

「バカっ! お前も普通にトドメを刺すなっ!! ・・・・・・あぁ、だから泣くなー! 泣きたいのは俺達なんだよっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・つーわけで、アタシがアギトだ。よろしくな」

「月詠歌唄よ。よろしく」

「真城りま。・・・・・・てゆうか、リインと同じなのよね」

「おう、アタシもユニゾンデバイスなんだ。で、一応家族」



あー、なんかまた楽しそうに・・・・・・てか、イルとアギトさんって似てるよな。こう、キャラ的に。

とにもかくにも、電車は時の砂漠の中を進む。退路は断たれた。だから、ただひたすらに前へだ。



「侑斗、あとは」

「あぁ、ジークだけだ。けど・・・・・・アイツ、どこ行ったんだ?」

≪ジークさん、居ないんですか?≫

「うん。みんなの所に行く前に、連れて行こうと思って、ジークの居る時間に寄ったんだけど、どこにも居なくて・・・・・・」





ジークさんというのは良太郎さんが以前関わったイマジン。モチーフは白鳥の湖の白鳥。そして、王子キャラ。

ジークさんの元々の契約者は、まだ母親のお腹の中に居る赤ん坊で、その赤ん坊が生まれてくるのと同時に姿を持った。

ただ、普通のイマジンと違うところがある。それは、『誕生』という出来事を契約者の赤ん坊と一緒に経験したことで、普通のイマジンでは使えないような、とても強い力を持ったこと。



まぁ、紆余曲折あって、その契約者の赤ん坊の母親が結婚した時間に飛んで、そこで平和に暮らしている。

だけど、何かあった時には駆けつけて電王組を助ける・・・・・・という感じで、付き合いが続いている。いわゆる劇場版限定キャラだ。

なお、魔導師組で言うとエリオおじさんと仲がいい。というか、お供その5に任命されている。



そして、王子様キャラだけど、なのはさんには絶対勝てない。じいちゃん曰く『なんか一回すっごい威圧された事があるらしくて、知らないうちに名前呼びになってた』・・・・・・らしい。





「・・・・・・そのジークって言うのも、このデネブやアンタのテディと同じイマジンなのよね」

「そうだ。・・・・・・なぁ、恭太郎。なんで居ないと思う?」

「そりゃあ・・・・・・今までのパターンから考えると」



腕を組みながら、あれこれ考えて・・・・・・。



「鬼退治した時みたいに、時間の歪みに巻き込まれてどっかに跳ばされた・・・・・・とか?」



結局、コレしか出てこなかった。

とりあえず、今思いつくパターンはそこくらいだな。あとは分からねぇ。



「おじいさま達が増援として呼ぶように頼んだという事は、デンライナーが既に連れて行ったというのは削られますし、恐らくそれですわ」

「うーん、だったら増援どうこうは抜きにして、ジークさんは探さないとだめですよ。このまま放置は可哀想です」

「確かに・・・・・・色々お世話にはなってますし、放置もちょっと違いますよね。それに、ジークさんが居れば良太郎さん達も『アレ』が使えますし」



リインさんとシャーリーさんは優しいらしい。俺は普通に放っておいても勝手に出てくるとか考えてたから。

・・・・・・いや、だってそういうキャラだろ。あの人は。



「だけど、あの鳥がどこに居るか分からないんですよ? それじゃあ探しようが・・・・・・」

「ティアナさん、魔法でなんとかならないの?」

「なんとかなったらとっくにやってる。うーん・・・・・・・よし、ここは」

『ここは?』

「人を頼りましょ」










・・・・・・全員、ティアナさんの発言に対して一瞬沈黙し、心の中でため息を吐きつつ、その言葉に頷いた。





いや、まぁ・・・・・・そうだよな。俺達だけで広大な時間の中を探すなんて無理だよな。うん、分かってた。





とにかく、俺達も向かう事になった。その辺りについて知ってそうな人が居る場所。・・・・・・ターミナルに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・ある日突然に、不可思議な事が起こる事もある。





そう、それも全ては風が運んできた事。この街ではよくある話だ。










「ふむ・・・・・・。おい、そこの娘。お茶を持って来い。濃い目で熱いのを頼むぞ」





そう、この街では風が全てを運んでくる。喜びも、幸せも、悲しみも、涙も。そして・・・・・・事件も。



言うなれば、うちの事務所のど真ん中でなんか居座ってる白いのは風だ。そう、風だ。てゆうか、きっと幻覚だ。





「うっさいバカっ!!」




なんか、いきなり頭を叩かれて、ソファーに優雅な感じで座っていた白い鳥っぽいのがずっこける。まぁ、ここはいい。



とにかく、俺は指を動かす。とりあえず、あれだ。お前ら、頼むから俺のハードボイルドを乱さないでくれ。





「な、何をするか娘っ! 主に向かって無礼であるぞっ!!」

「うるさいわよっ! てゆうか、アンタほんとに一体なんなのっ!? あたし、こんなの聞いてないしっ!!」

「全く、物覚えの悪い・・・・・・。いいか、よく聞け。我が名はジーク。お前達の主だ」

「だからなんでそうなるっ!? もうワケわかんないしっ!!」





奇遇だな、中学生。俺も聞いてない。・・・・・・とにかく、いきなり『俺の』事務所に飛び込んできた白い鳥を模したと思われる人外の存在は、平然と羽を撒き散らしながらここに居座っている。おかしい、真面目におかしい。



あぁもう、こうしている間にもまたぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー騒ぐし・・・・・・!!





「うるさいんだよお前らっ! ちったぁ静かにしろっ!! つーか、喧嘩するなら出てけっ!!」

「はぁっ!? 何言ってんのよっ! こんなの連れて出れるわけないでしょっ!! てゆうか、さっきまで黙ってたくせに、なにいきなり口出ししてんのよっ! てか、アンタこれなんとかしなさいよっ!!」




そう言って、目の前の女は外を指差す。・・・・・・おかしいのは、残念な事に中だけじゃなかった。外もおかしい。非常におかしい。

なんつうか・・・・・・警官がサーベル(西洋刀)を腰に差してたりする。牛鍋(現代のすき焼き)屋なんてのがあったりする。文字が右から読みだったりする。

なお、色々手管を使った上でちょっと調べたところ皆さんご丁寧にもここは東京で、今は明治11年だと教えてくれた。あ、つい最近、『当時』の明治政府のトップである大久保卿が暗殺されて大騒ぎになったとか。



あははは、マジでこれどうなってんだ? つーか、いきなり過ぎてワケが分からない。





「出来たらやってんだよっ! 俺だってなんでいきなりこれなのかワケわかんないんだよっ!!」

「とりあえず・・・・・アレよっ! コイツ退治すればいいんじゃないのっ!? ほら、半分こ怪人でドカーンとさっ!!」



なんて言って、アイツは白い鳥野郎の首根っこをとっ捕まえて、俺の前に突き出してくる。



「だから、W(ダブル)だって言ってんだろうが」

「いいでしょ、どっちでも」

「よくねぇっ!!」



で、俺達がこんなやり取りをしている間に当然のように、鳥野郎はその手を払いのける。



「無礼なっ! というより、これは私のせいではないっ!!」

「なに言ってんのよっ! アンタが来た早々外がこんなことになってんだから間違いなくアンタのせいでしょっ!? ほら、早く焼き鳥になんなさいよっ!!」

「・・・・・・残念だけど、そんなことをしても、僕達は元の時代には戻れないよ」



なんて言いながら、俺が使うハットをいくつもかけてある事務所のドアから出てきたのは・・・・・・あぁ、なんか分かったのか。いや、待ちくたびれたぜ。



「ごめんね。ちょっと重要なキーワードが見つかって」

「重要なキーワード?」

「翔太郎、君は知っているかな? ・・・・・・すき焼きというものをっ!!」





なんか自信満々に俺を指差してそう言い放った。で、当然のように俺は前のめりでずっこける。



すき焼きって・・・・・・はぁっ!?





「いや、実に興味深かった。・・・・・・いいかい? すき焼きはこの時代で言うところの牛鍋。その味付けには関西風と関東風の二つがあり、起源は」

「待て待てっ! なんでまずすき焼きからっ!? 俺はこっち最優先って言ったよなっ!!」

「そうだよっ! なんでまずそこから行っちゃうのかなっ!!」

「何を言ってるんだい。君が昨日の昼食に作ってくれたじゃないか。関西風のそれを」





フィリップが亜樹子に視線を向けてそう言う。で、当然のように俺も視線が向く。



若干睨み気味になっているのは気のせいだ。・・・・・・訂正。思いっきり睨んでる。





「い、いや・・・・・・なんというか、あたしが食べたくなっちゃって、それでその・・・・・・。ほら、ここで猫探しとかしたおかげで依頼料も入ったじゃない?
だけど牛鍋屋はちょっと高いし、だったら自分で作ってみようかなーと。で、一人はあれだから、フィリップ君と一緒に食べたの。あはははは」



そう言って、目の前の女は笑う。なので、立ち上がってどしどしと詰め寄っていく。後ずさりするけど、間合いはどんどん詰めていく。



「あはは・・・・・・じゃねぇよっ! てーか、またお前のせいかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
お前、コイツに余計な事教えんなって何度も言ってんだろっ!? てーか、なんで俺はすき焼き食ってないんだよっ!!」

「仕方ないでしょっ!? アンタは調査とか言って、外に出てたんだからっ!!」

「・・・・・・なるほど、確かにそうだな。お昼だから仕方ないよな。で、なんでその事を俺に黙ってたんだよ。夕飯だったら俺もここに居たし問題ないだろうが」

「ま・・・・・・まぁ、そこは気にしないで?」



気にするに決まってんだろうがっ! そして置いていけるかー!!

あぁ、崩れていくっ! 俺のハードボイルドがどんどん崩れていくー!! 誰かこいつらなんとかしてくんないかっ!?



「とにかく、彼を退治しても意味がない。僕達がここに居るのは、時間の歪みに巻き込まれたせいなんだからね」

「「・・・・・・時間の歪み?」」



てゆうか、聞いたことが無いぞ。そんなの。



「何者かが、過去で大きく歴史を変えようとする。すると、当然のように現在で生きている人間や物にも影響が出る。それを時間の歪みと言うらしい」

「タイムパラドックスとかなんとかってやつか。・・・・・・じゃあ、俺達が事務所ごとここに飛ばされたのも」

「正解。なんの偶然か、僕達はそれに巻き込まれてしまったんだよ。そして彼・・・・・・ジークも、その歪みで僕達のところに飛ばされてきただけのようだね。
しかし、イマジン・・・・・・電王・・・・・・時の列車。その関連項目は10万を越えていた。いいね、ゾクゾクするよ。特にクライマックスという単語が多く見られた。ここも実に興味深い」



・・・・・・いや、フィリップ。お前なんかスッゲー楽しそうだけど、また余計なものまで検索してないか? 電王ってなんだよ。時の列車ってなんだよ。

つーか、もしかしてやたらと時間かかってたのはそのせいかっ! だからまず今の状況優先でって言ったのになんでそうなんだよっ!!



「え、それじゃあ、本当にコイツのせいじゃないの?」



で、アイツは鳥野郎を指差す。指差すと、目の前の男・・・・・・フィリップが、右手で本を持ったまま頷いた。鳥野郎も頷く。



「そうだよ。僕達が元の時代に、そして風都に戻るなら、今起きている時間の歪みをなんとかしないといけない。そして、その原因は彼じゃない。
彼一人では、今起きている規模の歪みは出せないと結果が出ている。というより、彼を倒しても、ハッキリ言って無駄で無意味で僕達の自己満足なだけだ」

「うんうん、その通りだ。娘、分かったか? 分かったら、早く茶を持って来い」



鳥野郎が両手を後ろに持っていき、腕を組みながらアイツの顔を覗き込む。それに悔しそうに両拳を握り締める。



「・・・・・・うぅ、納得出来ないー! あたしそんなの聞いてないしー!!
てゆうか、アンタ絶対なんか隠してるでしょっ! 電王とかってなにっ!?」



なんて言いながら、鳥野郎の首をギューギューと・・・・・・。



「く、苦しい・・・・・・! こら娘、離せっ!! お前は一体どこのなのはさんだっ!?」

「あ、なんか情報出したっ! フィリップ君検索っ!! キーワードは・・・・・・『なのはさん』っ!!」

「了解。では早速」

「だからやめろっ! 無駄なことで時間使ってたら、マジで帰れなくなるだろうがっ!!」










とにかく、なんかまた暴れ始めたバカを止めるために動く。あと、また勝手に関係ないと思われることを検索しようとしてるのもだ。





そして、そんなことをしている間にドアがノックされた。それに全員の視線がドアに向く。





で、俺が頭にかぶっている黒のハットを正していると、ドアが開いた。それも勢い良く。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「やぁ、鳴海探偵事務所へようこそ。ここへ来たということは、何か」

「あ、ほんとに居たですよっ!!」

「ぬ、そこに居るのは・・・・・・いつも少年に寄り添っている小さき娘っ! こんなところで会うとはなんという偶然っ!!」



『鳴海探偵事務所』と書かれた、やけにカラフルな看板がかけてある建物の二階。私達がそこのドアを開けて一番に見つけたのは、もうすっかりおなじみな白鳥王子。

アイツも、私達を見て自分の首の掴んでいた女の子の手を払って、こっちへゆっくりと歩いてくる。



「それに、幸太郎にツンデレの娘まで・・・・・・そうか、主を迎えに来たのだな。ふむ、大儀であった。誉めてつかわそう」

「・・・・・・あの、ちょっと?」



な、なんか無茶苦茶自己完結してるし。そして一つとして的を外してないってどういうことよ。確かに迎えに来たのは事実だから、何も言えない。

とりあえず代表として迎えに来た私と幸太郎、それにリインさんは、顔を見合わせて頷いた。三人とも、話が早くて助かるという方向性で納得する事にしたのは、言うまでもないと思う。



「まぁ、迎えに来たってとこだけは正解よ。あと、私はツンデレじゃないから。それ、誰から教わったのよ」

「当然、少年からだ」

「あのバカ・・・・・・! 会ったら絶対ぶん殴ってやるっ!!」



なんでこんなくだらない事教えてるわけっ!? つーか、アイツマジでなにやってんのよっ!!

よし、殴る。バカなことしなくなるように殴る。今決めた。そして有言実行よ。今のうちから右拳を握り締めているのはそれが理由よ。



「ふむ、やはりフラグとやらが立っているのか」

「違うわよっ!!」

「いや、ちょっとっ!? 頼むから俺を無視するなっ! てーかおたくらなにっ!!」





まぁいいわ。話が早くて助かる。てゆうか、明治11年に来てくれてて助かったわ。

普通にこのまま京都に向かえば、すぐにみんなと合流出来る。とにかく、急がないと。

・・・・・・ターミナルで見せてもらったあの新聞記事。あの火事が起こるまで、今日を入れるとあと二日しかない。



みんなと合流して、とっとと時間の歪みを直して、唯世も取り戻さないと。というわけで・・・・・・。





「そうよっ! アンタ達、いきなりなにっ!! てゆうか、コイツの仲間っ!?」

「あー、そんなとこだ。てゆうか、迷惑かけて悪かったな。話してる時間ないから、すぐに連れ帰るわ」

「ごめんなさいね、お礼はまた今度させてもらうから。・・・・・・さ、行くわよ」



とにかく私は、ジークの首根っこを片手でがっしりと掴む。



「こ、こらっ! 娘・・・・・・離さぬかっ!! というより、主はもっと敬」

「いいからっ! こっちは時間ないのよっ!? とっとと来るっ!!」



掴んで、そのまま外に引きずり出す。



「ちょ、こら待てー! なによ、アンタ達も時間の歪みがどうとかってのと関係してるわけっ!?
ちゃんと話しなさいよっ! これがなんとかならないと、あたし達帰れないんだからっ!!」

「だから、その歪みも俺達が直すからいいんだよ。それじゃあ、邪魔したな」

「失礼しましたですー♪」










そのまま、ドアを開けて、飛び込む。そのまま一気にドアを閉じた。だって、普通にあの小さな歌唄やりまと同年代くらいの女の子が飛び込んで来そうだったから。





一瞬、何か衝撃を感じたけど、きっと気のせい。・・・・・・とにかく、これでジークはとっ捕まえたから、増援部隊は完成。





ま、これだけのメンツが居れば、相手がゆりかごとか持ってない限りはなんとかなるでしょ。





・・・・・・一瞬、『ゆりかご持ってたらどうしよう』とか考えてしまったけど、気にしないことにする。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・痛ぁ。もう、なんなのよ」





うちの自称所長が、ドアに顔面をマトモにぶつけたせいで、痛そうに鼻を抑えてる。



それに怒ったようで、瞳を鬼のように険しくして、ドアを開けてあの乱入者を追いかけようとする。だけど、やめた。



どうやら、諦めたらしい。もう姿が見えなかったんだろ。





「アイツら・・・・・・! 所長のあたしを無視してコレってどういうことっ!? マジありえないしっ!!」

「いや、所長は俺だから。てゆうか、なんだよこれ。俺、何も聞いてないんだけど」

「このアホっ!!」





パチコーンッ!!





「痛ぇっ! お前、何しやがるっ!!」





てか、またいきなりスリッパで頭はたかれたっ!?





「やかましいっ! それあたしのセリフだからねっ!? 所員の分際で、勝手に所長のセリフ使うなっ!!」

「だからなんでお前が所長なんだよっ! 俺は・・・・・・・あれだ、認めてないからなっ!!」

「あたしがここのオーナー家主〜」

「ぐ・・・・・・!!」





と、とにかく時間の歪みってやつだ。フィリップに早速検索を・・・・・・。



俺はフィリップに視線を向けて、気づいた。なんかまずいことになっていると。





「・・・・・・フィリップ君? おーい、フィリップくーん。どうしたのかなー?」





その声に、アイツは答えない。てゆうか、普通にマジックペンを走らせて、壁に文字を書き始めてた。





「・・・・・・少年、フラグ、いつも寄り添う小さき娘。蒼凪・・・・・・恭文。これはすごい、67万もある」





ま、まさか・・・・・・検索モードに入ったのかっ!?





「魔導師・・・・・・ミッドチルダ・・・・・・フラグメイカーか。いいね、ゾクゾクする。今までにないくらいにゾクゾクする。
20人近く恋愛対象が居る・・・・・それだけの人間の興味を引く・・・・・・あぁ、すごい。実に興味深い」

「ちょ・・・・・・フィリップ君、なんかスイッチオンになってない?」

「『なってない』じゃなくてなってんだよっ! あぁもう・・・・・・どうすんだよこれっ!? これじゃあしばらく動けないだろうがっ!!」










アイツら・・・・・・邪魔なの引き取ってくれたのはいいが、余計なキーワード残していきやがってっ!!





つーか、蒼凪恭文って誰っ!? そして67万って多すぎだろっ! いつまでこのモードなのか、俺にも予想出来ないぞっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「でもでも、ジークさんお久しぶりですねー。なんでここに居たですか?」





とにかく、俺達が少し待っていると、ティアナさん達はお目当てのものをしっかりと確保した上で、ゼロライナーに戻ってきた。

ジークさんは今、なぜか首をマッサージしながらソファーに座っている。てゆうか、ティアナさんをちょっと怯えた目で見ている。

俺、正直何があったかとかあんま聞きたくなかったりするんだけど、間違ってないよな?



しかし、ジークさんは首が辛そうだ。なんかグキグキ言ってるし。





「小さき娘、そこは私にも分からぬのだ。突然あそこに飛ばされてしまって・・・・・・」



マジで予想通りだった。・・・・・・怖いな、色々と。



「とにかくアンタの力が必要なの。悪いんだけど、ちょっと手を貸して」

「ふむ・・・・・・仕方ない。家臣の願いを聞くのも、主の役目。姿は見えぬが、当然姫と良太郎達も居るのだろうし、私も働こう」

「えぇ、お願い」










とにもかくにも、俺達はじいちゃん達と合流するために、京都へと進路を取った。





・・・・・・火事まで、明治の時間で言うと今日を入れてあと二日。時間はあんまりない。




















(第36話へ続く)




[*前へ][次へ#]

16/35ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!