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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
NEWステージ01 『交差した『過去』と『未来』の雷光』:1



全ての始まりは、終わりが近づいた三月の末。





色んなことがあった1年も、終わりを告げようとしていた時の事、その列車は・・・・・・私とヤスフミの前に現れた。





二人で警備部回り・・・・・・まぁ、もうすぐ解散なので、いろいろお世話になりましたという挨拶をしていた時のこと。そこの隊舎を出て、駐車場まで歩いているところ。空はもう夜。星が少しだけだけど見えた。





そんな時だった。私達が、異変に気づいたのは。










「・・・・・・あれ?」





最初に声を上げたのはヤスフミ。そして、次に気づいたのは私達。だけど、それじゃあ遅かった。



私達の正面から、骸骨の顔をした列車が走ってきたから。それも・・・・・・半透明。





「な・・・・・・なにあれっ!?」





私が驚きの声を上げている間に、列車は私達へと衝突。・・・・・・いや、すり抜けて、そのまま走り去った。



なんだろう、身体は無事だったけど・・・・・・寒気が、止まらない。なに、これ。



ヤスフミも同じなのか、顔色がとても悪い。ガタガタと震えている。





≪・・・・・・今の≫

「ま、まさか・・・・・・」



ヤスフミが小さくつぶやいたのが聞こえた。もしかして、あの列車の正体を知っている?



「・・・・・・幽霊列車ってやつだ」





声は、正面。そちらを見ると・・・・・・ゆっくりと、歩いてきたのは40代ほどの男の人。金色の羽織を羽織った壮健で・・・・・・どこか、油断を感じさせない空気を漂わせていた。

それだけじゃない。その腰にはベルト。金色のバックルをつけたそのベルトに・・・・・・同じように、金色のパスを通す。

ゆっくりと、だけど確実に。そして、その光景にどこか見覚えを感じた。



あぁ・・・・・・あの人達と同じなんだ。





「変身」





そして、パスがセタッチされた。





≪Gaou Form≫





そうして、その人は纏う。金色の巨大な生物の口を思わせるような牙を模した装飾の数々が見受けられる鎧と仮面を。



そのまま・・・・・・赤い刃に、のこぎりのような刃をつけた刃を右手に持ち、駆け出した。



距離は、私がそれを認識した瞬間に零へと変わる。そして、そのまま・・・・・・。





「悪いな、姉ちゃん。しばらく寝ててくれ」





振り下ろされた。



・・・・・・否。振り下ろされたけど、止められた。私とその男の間に、割り込む影があったから。それは銀色の刃を手に持ち、騎士甲冑を身に纏って、刃を受け止めていた。





「おいおい、俺らが用があるのはそっちの姉ちゃんだけなんだよ。チビ、どいてろ」

「い・・・・・・や・・・・・・だっ!!」




そのまま、腹に蹴りを叩き込み、その男をヤスフミは吹き飛ばす。その光景に、私は止まっていた思考の活動を再開する。

とにかく、ジャケット・・・・・・セットアップ。バルディッシュも手に持って、準備は万端。

ヤスフミは、前で謎の男と斬りあっている。だけど、圧されてる? うそ、リーゼフォームのスピードに追いついて、見切ってる。



ヤスフミが背後を取って飛びかかっても、男は手に持つ刃で斬撃を受け止め、それを弾き、反撃を加える。一撃じゃない、連撃だ。



それをヤスフミはアルトアイゼンの刃で受け止め、なんとかしのぐ。





「おいおい、もうちょっと楽しませろよ。こんなんじゃつまらねぇだろうが」





そう言いながら、男の姿が消えた。その瞬間、背後に金色の牙が現れる。そのまま刃は袈裟に振り下ろされた。



ヤスフミは咄嗟に振り返り、アルトアイゼンの刃を盾にして防ぐ。だけど、そのまま吹き飛ばされ、地面を転がった。



男はそのままヤスフミ・・・・・・いや、私に向かって走りこんで・・・・・・させるかっ!!





≪Plasma Lancer≫





5発のランサーを生成。それを男に向かって発射。だけど、男は走りながらそれらを斬り払う。斬り払いながら、私へと突進する。



私はバルディッシュを打ち込み、男の刃を止める。止めて・・・・・・鍔競り合い。





「あなた・・・・・・何者なの。どうしていきなり私達を」

「うちの大将のご命令だ。アンタを壊したいんだとよ」



私を? 私・・・・・・いや、確かに恨みを買うような真似は色々覚えがある。こういう仕事だもの。

だけど、この人は魔導師でもなんでもない。なにより、あの列車は・・・・・・。



「フェイトっ!!」



ヤスフミがこちらに向かってくる。だけど、その前に立ちはだかる影があった。・・・・・・うそ。

それらは、地面から湧き上がった砂。それが固まって・・・・・・生まれたのは、十数体のモグラ型の・・・・・・イマジン。



「しばらくそいつらと遊んでろ」



そのモグライマジンは一気にヤスフミへと飛びかかった。それに目を取られた上に、イマジンの出現に驚いている一瞬・・・・・・一瞬だけ隙が出来た。

だから気づかなかった。男が左手のパスを、ベルトにセタッチしていたのを。



≪Full Charge≫



男の剣が金色の輝きに包まれる。そしてそのまま・・・・・・。



「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



袈裟に斬撃が打ち込まれた。バルディッシュの柄はそこから斬れ、私はその斬撃をまともに食らい・・・・・・吹き飛ばされた。地面を数メートル転がり、ようやく動きが止まる。



「・・・・・・かは」



口から・・・・・・血。あはは・・・・・・久々に、やられた。生きてはいるけど、結構痛い。

バルディッシュ・・・・・・だめ、返事が無い。動いて・・・・・・お願い。



「全く、弱いな。魔導師ってのはもうちょっと喰い甲斐があると思ってたんだけどよ」





弱い・・・・・・。この1年で何度も言われて、何度も実感した言葉。それが、突き刺さる。

弱い・・・・・・そう、私は弱い。だから、今立ち上がれない。ううん、立ち上がろうとしないだけだ。



私は、私の時間を消されたくなんてないっ! だから・・・・・・動け、動けっ!!





「まぁ、いいや。・・・・・・おい、大将。お望みどおり動けないようにしてやったぜ」

「その大将と言うのはやめなさいと何度言ったら・・・・・・あぁ、まぁいいわ。とにかく、よくやったわね」



その声に、立ち上がろうとする身体が止まる。いや、心そのものが動きを止める。そして、身体が震える。傷や痛みのせいじゃない。

これは・・・・・・もっと、別のもの。



「さて、随分楽しそうに過ごしていたみたいだけど、もうそれは終わりよ? ・・・・・・お人形、私の手の中に戻りなさい」



その言葉に、震えが激しくなる。見れない。あの声のする方を・・・・・・見れない。だって、あの声は、あの声は・・・・・・ここにはもういないはずのものなんだから。

足元に、紫色のミッド式の魔法陣が浮かぶ。そして、雷がばちばちとはぜる。



「そして、教えてあげるわ。あなたに・・・・・・あの子を、アリシアを差し置いて、幸せになる権利など、存在しないとね」





そして、その瞬間・・・・・・私の身体は、放り出された。

倒れていた私の手を掴んで、放り投げた子が居る。青い閃光に包まれて、動けない私をその脅威から救った。

だけど・・・・・・それは、その子はその魔法陣の上に乗ってしまった。



だから、その子は消えた。魔法陣から放たれた光・・・・・・紫の雷光をマトモに食らい、倒れた。



それだけじゃない。その身体が光に包まれ、一枚のタロットサイズのカードになる。それは私に語りかけていたあの声の主の手元へと飛んで・・・・・・その手につかまれた。





「・・・・・・ふん、人形をかばうなど、酔狂なボウヤね。そんなにあの役立たずがいいのかしら」

「おい、話が違うぞ。あの姉ちゃんを捕まえた後は、あれは喰っていいって約束だぞ?」

「予定は色々と変わるものよ。それに・・・・・・壊すというのなら、こっちの方がいいかも知れないわ」





私は、そのカードの軌道を追った。追ったから・・・・・・見てしまった。見たくなかった真実を。

灰色の髪、透き通るというよりも、不健康さを感じさせるほどに白い肌、胸の開いた黒いドレスに、同じ色のケープ。そして・・・・・・二股に分かれた杖。



私の、私の記憶する・・・・・・そのままの存在が、そこに居た。





「久しぶりね、フェイト。・・・・・・いいえ、ガラクタのお人形」

「プレシア・・・・・・母さん」





プレシア・テスタロッサ。私の母親。・・・・・・ずっと前に事故で亡くなったアリシア・テスタロッサのクローンとして、私は生み出された。

だけど、私は・・・・・・アリシアではなかった。アリシアの記憶を持っても、アリシアにはならなかった。

性格、言動、その全てが、私ではあっても、アリシアではなかった。



そうして、色々なことがあって、あの人は・・・・・・次元の狭間に、アリシアの遺体と一緒に消えたはずなのに。






「私を、母と呼ぶのはやめなさい」



瞬間、杖が紫のエネルギー状の鞭となり、私に振り下ろされる。私は動けず・・・・・・それを受けるしかなかった。

痛みと・・・・・・思い出したくない恐怖がよみがえる。いや・・・・・・こんなの、いや・・・・・・!!



「かえ・・・・・・して」

「なにを?」

「ヤスフミ・・・・・・帰して。ヤスフミは、なんの、関係も・・・・・・」



私の言葉に、鼻であの人は笑って返した。そして、嘲りの視線を向ける。



「悪いけど、そうはいかないわ。・・・・・・こんなガラクタに惚れるのが悪いのよ。この子にはたっぷり苦しんでもらうわ。知ってる? このカードの中からでも、外の様子は見える。ここから、アナタをいたぶり、陵辱し、壊れる様を見せてあげる。
ふふふ・・・・・・最高ねっ! アリシアになれなかったくせに、幸せになろうとしていたあなたを壊すっ!! あぁ・・・・・・それがこんなに気持ちがいいものだとは知らなかったわっ! フェイト、ありがとうねっ!! あなたはきっと・・・・・・このために生まれてきたのよっ!!」



・・・・・・言葉が、何も出なかった。そのまま、母さんは笑う。



「あははは・・・・・・あははははははははははっ!!」



狂ったように、本当に私を壊すのが楽しいと言わんばかりに。

悔しい・・・・・・! 何も、何も出来ずに・・・・・・あの時みたいな思い、もうヤスフミにさせないって、決めたのに・・・・・・!!



「そういうわけだから、喰うならこの子にしなさい? 無駄に肉体だけは大人になっているから、さぞかし味はいいと思うわよ」

「・・・・・・そういうのは趣味じゃねぇよ。やっぱり、これだろ」



牙の男が剣を掲げる。それにあの人は呆れたようにため息を吐く。



「好きになさい。ただし・・・・・・残酷に、見ている人間の心が壊れそうになるくらいにずたずたに引き裂いて。そうじゃなきゃ、楽しくないのよ」

「趣味が悪いな。・・・・・・まぁ、いいや。あれだ、恨むなら」





そのまま、男が近づいてくる。





「こんなイカれた女から生まれた自分を恨め」










そして・・・・・・駆け出した。いや、男だけじゃない。私に向かって、イマジンも殺到する。





・・・・・・ヤスフミ、ごめん。私・・・・・・やっぱり、ダメだった。





折れない剣になんて、なれなかったよ。





ごめん・・・・・・!!




















「・・・・・・じいちゃんが言ってた」





え?





「幸せになれる権利なんて、誰も持ってない。必ず幸せになれる確証なんて、どこにもない」





風が吹いた。それは・・・・・・金色の風。





「あるのは、自分なりの幸せを探して、見つけていく道だけだって」





それらが、迫っていたイマジンを斬り裂く。一体だけじゃない。一度に、右から迫っていた半分のモグライマジンを叩き斬った。





「・・・・・・諦めんなよ。アンタはそれを探してきたから、ここに居るんだろ? 大事なもの、沢山出来たんだろ? だったら・・・・・・絶対諦めるな」





そして、爆発が起こる。イマジンの数だけ、爆風という熱を持った風が吹く。





「そういうこった。・・・・・・全く、なにトラウマ呼び起こされた感じで倒れてるの? あのおばさんがいう事なんか、気にしなくていいって」

≪あなたには、あなたを想ってくださる方々が沢山いるはずです。人形でも、アリシア・テスタロッサの代わりでもなく、ただのフェイト・テスタロッサ・ハラオウンとして。ならば・・・・・・≫

「そういう自分として、そこから立ち上がれば、幸せになれば・・・・・・いいんじゃないの?」





私の傍らに、青い・・・・・・青い鎧を身に纏った存在が居た。両手には大きな片刃の銃剣。ナックルガードの近くに顔があって、その口が動いていた。

胸元には銀色のターンテーブル。そして、そこから発生するように四本の銀色のレール。それは、肩アーマーのようにもなっていた。

そして、仮面・・・・・・赤い仮面。以前見たあの人の仮面に似ていた。そうだ、ソードフォームの仮面だ。だけど、こちらの方が鋭角的で鋭い。



ボディには金色のラインが入っていて、それが場を弁えないことを承知で綺麗だとも思った。そして、目を引いたものがある。

金色の・・・・・・デンオウ、ベルト。そして、それは左手に持っていた黒いパスを、セタッチする。





≪Full Charge≫





ベルトから火花のようにも見えるエネルギーが銃剣の柄尻に伝わる。そして、銃剣の刃に、赤いエネルギーが宿り、刀身をその色に染める。



その子はそのまま腰ダメに構えて・・・・・・左から刃を打ち込んだ。





「はぁぁぁぁぁぁっ!!」





その斬撃は赤い閃光を生み出し、それにより迫っていたモグライマジン達のもう半分を両断した。そして、そのまま先ほどと同じように爆発。



・・・・・・これは、一体。





「あー、幸ちゃん。なに俺がいいこと言ったのに、それの尻を取ってんの?」



金色の長い髪に翡翠色の瞳、あと・・・・・・赤茶けたコートを来て、両手に日本刀を持った・・・・・・えっと、男の子かな。とにかく、男の子が青い子に話しかける。



「いいだろ、別に。俺もフェイトさんには色々世話になってるしな。それより集中しろ。・・・・・・来るぞ」



突然の乱入者。それに明らかにあの人は不快な顔をしている。苛立ち混じりに鞭を振るう。

だけど、その鞭の先は長い髪の子の右腕に持った刀で振るった斬撃によって・・・細切れになる。



「・・・・・・あなた達、一体・・・・・・何者っ!? なぜ私の楽しみの邪魔をするのっ!!」

【楽しみ? 娘を恋人の前でいたぶり、惨殺しようとしたことが楽しみ? また随分と腐っていますわね】



声は長い髪の子の中から。というか・・・・・・この声、私に似てる。



「うるさいっ! あなたに一体私の何が分かるというのっ!? そして、あれを私の娘と言うなっ!!」

【ただの八つ当たりしか出来ないヒステリーなおばさんでしょ? 何を今更。それになにより・・・・・・フェイトさまは、正真正銘あなたの娘ですわ。確かに腹を痛めたわけではないかもしれないでしょうけど。
だけど、あなたが生まれて欲しいと望んで、あなたが作り上げた命です。それを自分の望んだ形とは違うから否定? ・・・・・・あなた、何様ですの? 神にでもなったつもりですか】

≪はっきり言って迷惑です。なによりフェイトさんとおじい様に迷惑です。今すぐ地獄の三丁目へ引き返してくださいよ≫

「ついでに言うと、分かるわけねーし。お前、何もかも自分の思い通りにならなかったから、咲耶の言うようにヒステリー起こしてるだけだろうが」



母さんが激昂した顔を浮かべて、右手を向ける。瞬間、紫の雷光があの子を襲う。だけど・・・あの子はそれを右の刃を振るって斬った。



「うるさいうるさいっ! 貴様になにが分かるっ!?」

【分かりませんわ。そして、分かりたくもありません。なぜなら、私達は・・・・・・私は、あなたの取った選択が間違っていると否定しに来たのですから】

「そういうこった。あと、家族を亡くして悲しいのが自分だけとか思うな。そういうのめんどいんだよ。
俺だって、母さんが死んでる。・・・・・・だけど、俺はお前みたいに逃げたりなんてしてない」



そのまま、あの子は構える。右手の刃を順手に、左手の刃を逆手に持つ。



「母さんは、本当に・・・・・・本当に優しい人だった・・・・・・そうだから。俺がそれでアンタみたいに道を間違えたら、きっと天国で泣く。
だから背負う。そして、幸せを掴む。そういう寂しいのとか、悲しいのとかも全部しょった上でだ。それが、せめてもの供養ってやつだろうが」

「・・・・・・うるさい」

「バカの一つ覚えにも程があるだろ? それしか言えないってどういう・・・・・・あぁ、自分の考えを真っ向から否定して、同情一つしない人間には慣れてないのか」



青い子が髪の長い子の傍らに行きながらそう言う。



≪幸太郎、恐らくその通りだ。全く、軟い神経をしているものだ。少しは恭太郎を見習えと言いたい≫

「テディ、後でお話な? 俺は色々聞きたい事がある」



それにより、あの人の顔が憎悪に染まる。



「あなた、この連中・・・・・・殺してっ! 今すぐ殺しなさいっ!!」

「いや、引いた方がいいな」

「なぜよっ!!」

「厄介な連中が来やがった」





どこかから汽笛の声が聞こえる。痛む身体を動かしそちらを見ると・・・・・・空から、電車が走ってくる。あれは・・・・・・デン、ライナー?



そのまま地面に降り、私の後ろで停車する。そして、乗降口から・・・知った顔が沢山出てきた。





「・・・・・・おいおい。金髪姉ちゃん、随分やられてるじゃねぇか。大丈夫か? よっと」



怖い外見だけど、本当は優しい赤い鬼。



「全く、こんなに素敵なレディに散々やってくれちゃって・・・・・・。君達、少し・・・・・・お仕置きが必要だね」



普段は飄々としてるけど、その中にしっかりとしたものを持っている・・・・・・ナンパ好きなのが玉にキズの青い亀。



「そうやな。・・・・・・しかし、なんでアイツまで居るんや?」



浪花節全開で、涙もろくてとっても強い金色の熊。



「そんなのどうでもいいよ。・・・・・・そこのおばさん、あとお前。今すぐ恭文を・・・・・・僕の友達を、返せ。じゃないと、徹底的に倒しちゃうから」



子どもっぽくて、純粋で・・・・・・ヤスフミとヴィヴィオの二人と大の仲良しになった紫の竜。



「フェイトさん、大丈夫ですか?」

「安心してください。すぐに六課の人達も来てくれますから」



優しく、心配そうに声をかけるのは、白い上着に黒のスカートを履いた10歳くらいの女の子。

そして、水色と縞模様のTシャツにジーパン、上着を腰に巻いた・・・・・・優しげで、気弱な印象も見受けられる男の人だった。



「ハナ・・・・・・ちゃん。それに、良太郎・・・・・・さん」

「はい。・・・・・・すみません、また来ちゃいました。とにかくハナさん」

「うん、ここは任せて」





そのまま、良太郎さんは私をハナさんに任せて・・・・・・前に出る。





「なるほど、あなた達が電王というやつね。ふふふ、邪魔しに来たということかしら。だけど、特に私は時の運行とやらに手出しはしてないわよ?
あなた達が邪魔さえしなければ、するつもりもないわ。その人形だけ置いて、とっとと消えなさい」

「悪いけどそれは出来ない。てゆうか、時の運行とかそういうの・・・・・・関係ないよ。・・・・・・フェイトさんや恭文君が居なくなったら、消えちゃう時間がある。
とても大切で、大事な時間が。なにより、僕達は・・・・・・そのためにこのままあなたのする事を見過ごせない」

「そういうこったっ! おい、クソババァっ!! うちのハナタレ小僧のダチとその嫁に手ぇ出しやがったこと・・・・・・後悔させてやるぜぇっ! 行くぜ、良太郎っ!!」

「うん」





そのまま、良太郎さんは左手からベルトを取り出して腰に巻く。装着したのは、銀色のデンオウベルト。



左手でベルトのバックル部分の赤いボタンを押してから、パスを右手に持つ。





「変身」





そのパスを、ベルトにセタッチした。





≪Sword Form≫





良太郎さんにモモタロスさんの身体が半透明になって吸い込まれる。そして、良太郎さんの身体に銀の装甲を持つスーツが装着される。頭には、銀色の線路が真ん中に通った仮面。

それから、周りに赤いプレストアーマーが分割された形で現れ、身体の各所に装着される。

最後に、頭の線路を赤い桃が走る。走り・・・・・・停止すると、真ん中からパカっと割れて、仮面に姿を変える。



・・・・・・電、王・・・・・・だ。私・・・・・・助かったんだ。良太郎さんやモモタロスさん達・・・・・・『また何かあったら助けに来る』という約束、本当に守ってくれたんだ。





「俺・・・・・・!」





赤い電王は、自分を右手の親指で指差す。



そして、両手を広げ、歌舞伎で見得を切るのに似ているポーズを取る。





「参上っ!!」










・・・・・・こうして、また時計の針は動き出した。その時計の針は、私達と良太郎さん達の時間を刻む。





そして、ここから始まった。私が・・・・・・アリシアのクローンとか、母さんの人形とか、そういうことではなく、ただの私・・・・・・フェイト・テスタロッサ・ハラオウンとして、今を、望んだ未来に繋げるための戦いが。




















『とある魔導師と機動六課の日常』×『さらば仮面ライダー電王 ファイナルカウントダウン』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄と時の電車の彼らの時間 NEWタイム


NEWステージ01 『交差した『過去』と『未来』の雷光』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「さぁて、久々の水戸納豆だっ! 派手に行くぜぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「先輩、だからミッドチルダだって・・・・・・あぁもう、この勘違いはいつになったら直るのかなぁ」



なんて言っている間に、向こうの動きが変わった。俺達から距離を取る。・・・・・・ヤバイ。

俺は一気に踏み込んだ。狙うは・・・・・・あのイカれたばあさん。そのまま、ばあさんの喉元を狙って蒼ビルトの切っ先を突きつける。



「そこまでだ」



横から気配。そして、逆袈裟で斬撃。俺は左に飛んで避ける。避けながら、蒼ビルトを引いて、刃を防御。・・・・・・くそ、やっぱ強い。1発食らったら沈むな、こりゃ。

とにかく、その勢いに圧されつつも後ろに飛ぶ。飛んで・・・・・・着地。



「おい、いったん引くぞ」

「何を言っているのっ!? あれを・・・・・・あの人形を壊さずして」

「だからって負けたら意味がねぇだろうが。・・・・・・ほら、行くぞ」



その言葉に、ばあさんが納得したのか、また下がる。だから、俺はまた踏み込むけど、ばあさんの左手が俺に向く。そのまま、紫の雷光が放たれた。俺は左に走って避ける。すぐに追おう・・・・・・けど、遅かった。

紫色のミッド式魔法陣。それに包まれて、ばあさん達の姿が消えそうになってる。



「ふん、まぁいいわ。・・・・・・フェイト、覚えておきなさい。アリシアどころか、私の慰み物にもなれなかったあなたに未来なんていらない。苦しめて苦しめて・・・・・・殺してあげるわ。このボウヤ共々ね」



そんなセリフを残して、ばあさんは消えた。・・・・・・くそ、しくじった。



「・・・・・・って、おいおいっ! 俺様の活躍はっ!? ちくしょぉぉぉぉっ! なんだよこれっ!! 『変身』ってやったばかりなのによっ!!」

【モモタロスっ! そんなこと言ってる場合じゃないからっ!! ・・・・・・フェイトさんのこと、気にして】

「あ」



・・・・・・全く、単細胞ってのは聞いてたけど、予想以上だよ。ひでぇなこれは。フェイトさん、すっげーヘコんでるし。



「・・・・・・あー、わりぃ。金髪ねぇちゃん」

「・・・・・・いいえ。でも、ヤスフミ・・・・・・ごめん」



しかも、泣き出したし。すっごいボロボロ泣き出したし。



「私が・・・・・・私が側に居たから。私のせいで・・・・・・」



だから、俺は近づく。近づいて・・・・・・頭頂部を、蒼ビルトの柄尻でこづく。



「痛っ!!」

「・・・・・・バカ言ってんじゃねぇ。そんなこと言ってグダグダ泣いてるヒマなんかねぇぞ。つーか、ウザいんだよ」

「ちょっと恭太郎っ!? どうしてそういうこと言うのかなっ! フェイトさんの気持ちも考えてよっ!!」

「嫌だね。恋人であるじいちゃんがその言葉を聞いてどう思うかもわかんないバカ女の気持ちなんざ、考えたくもねぇ」



俺がそう言うと、目の前の人が固まった。そして、涙を止めた。



「アンタがそうやって自分を否定したら、自分を責めたら、じいちゃんだってきっとこうする。バカな事言うな。アンタのせいなんかじゃ絶対にない。お願いだから、そんな悲しいことを言って、自分を否定しないで欲しい・・・・・・ってさ。
だから、そんなことをアンタは死んでも口にしちゃだめなんだ。じいちゃんのこと、本気で好きなら、じいちゃんとの時間が本気で大事なら、アンタは誰がなんと言おうと、自分の事、ちゃんと認めないといけないんだ」



そう静かに言った俺を見て、その人は顔をしかめながらも右手を動かし、涙を拭いた。そして、俺を見る。目には・・・・・・さっきまでの動揺や恐れが、少しだけ消えていた。



「・・・・・・そうだね。ヤスフミなら、きっとそう言う。でも、どうして、そこまでわかるの? というか、あなたは、誰?」



あー、そう言えば、自己紹介してなかったっけ。



「・・・・・・俺の名前は、蒼凪恭太郎」

≪私は恭太郎のパートナー。荒ぶる百舌・ビルトビルガーです≫

【そして私は・・・・・・】



俺の隣に金色のポニーテールの髪に、翡翠色の瞳をした女の子が現れる。

服装は金をベースとしたチャイナドレス。なお、これは本人の趣味。そして身長は、俺より10センチ高い。



「その恭さまのパートナーである雷鳴の鉄姫・咲耶と申します。・・・・・・単刀直入に言えば、私達はフェイトさまとおじいさまを助けに来ました」

「まぁ・・・・・・あれだ。俺達、新しい古き鉄だから」

「・・・・・・え?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・それでオーナー、なにが起こっとるんですか? まず、プレシア・テスタロッサがなんで生きとるんですか。
それに、フェイトちゃんとヤスフミが見た言う骸骨の電車は? なんでいきなり恭文さらわれてもうたんですか」





私達は、六課隊舎に戻ってきた。私はシャマルさんの治療魔法のおかげで、なんとか動けるようになった。

バルディッシュも、それほど損傷がひどくなかったから、明日には万全になる。

そして、会議室で・・・・・・六課の主要メンバーは現状について、デンライナーの皆に話を聞いている。なお、今回は刑事じゃないそうなので、デカ長ではなくオーナーとか。



だけど、空気が重い。・・・・・・いきなり、さらわれたから。私、本当に何も出来なかった。





「そうだよ。なんでヤスフミが? こう言ったらあれだけど、そのプレシアって人とヤスフミは面識ないだろ」

「・・・・・・恭文お兄ちゃんにアルトアイゼン、大丈夫かなぁ」

≪メイル、問題はない。ヤスフミは戦闘関係で死ぬようなことはない。そういう星の元に生まれているからな≫

「バルゴラ、お前それはワケわかんねぇよっ!!」



もうすっかり六課の一員になったジンとメイルも・・・・・・そう、そうなんだよね。

面識ないのに・・・・・・あぁ、だめだめ。また怒られちゃうよ。



「あー、まず勘違いがあるな。あのばあさん・・・・・・プレシア・テスタロッサは、生きてなんてねぇよ」



そう言ったのは、栗色の髪を腰まで伸ばして一つにまとめて、赤い瞳をした、二刀流の子。あれはどうやらユニゾンしていたらしい。普通にビックリした。



「ねぇ君。どういうこと? 生きてないというのなら、どうしてそれがフェイトちゃんと恭文君の前に現れて、いきなり襲ってきたのかな」

「その謎は、フェイトさんとじいちゃんが見た列車にあるんだ」

「・・・・・・あれは、幽霊列車です」



オーナーがあの子の言葉を引き継ぐように言ってきた。

幽霊・・・・・・列車?



「・・・・・・あの、オーナー。まさか幽霊列車って、あの幽霊列車ですか?」

「確か君は・・・・・・」

「あ、初めまして。ジン・フレイホークです。ヤスフミの友達で、今は六課で世話になってます」

「そうでしたか。・・・・・・それと、君の質問に答えなくてはいけませんね。正解、です」



オーナーがそう言うと、ジンとヒロリスさんとサリエルさんが顔を見合わせた。

あの・・・・・・どういうことかな。幽霊列車って、なに?



「死者を乗せて、その時間を走ると言われる列車です」



・・・・・・はぁっ!? 死者をって・・・・・・どういうことですかっ!!



「幽霊列車は、いわゆる死後の世界を走っている列車でね。多分、あのプレシア・テスタロッサって人は、何かの原因でその列車に乗っちゃったんだよ」

「そして、あの男・・・・・・牙王もです」

「なるほどなぁ。あれもあのおばさんと同じように、乗っかったちゅうわけか。まためんどいのが出てきたで」



牙王・・・・・・もしかして、あの金色の電王みたいなアーマーを装着した男?



「・・・・・・牙王っ!? 待って、フェイトちゃん・・・まさか、牙王と交戦したのっ!!」

「あ、うん。多分・・・・・・それだと思う。あの、牙王ってなにかな。私が見ている範囲ではそういう人出てないみたいなんだけど」

「あー、フェイトさん。そこは僕から説明しますよ。・・・・・・牙王というのは、時の狭間に居た盗賊・・・・・・というか、ならず者集団のリーダーなんです。
以前、デンライナーをジャックして散々やらかしてくれたんですけど、僕の華麗な活躍と先輩達のそこそこな活躍のおかげでなんとか退治したんです」

「なるほど。退治されて・・・・・・つまり、死んでたから、その牙王ってのも幽霊列車に乗れたと。でも亀、アンタちょっと自分持ち上げすぎじゃない?」

「気にしないで、ティアナちゃん」



死者・・・・・・。あの牙王って人も良太郎さん達が倒した。なら、母さんはもう・・・・・・死んでいたんだ。

死んでいて、それでもまだ、憎悪と妄執に取り付かれていた。以前と同じ・・・・・・ううん、以前よりもより強くなっている。



「で、そこはわかりましたけど、またなんで良太郎さん達がこっちへ来たんですか」

「今回、私達がこちらの世界にまた来たのは・・・・・・ターミナルの駅長から、また幽霊列車が動き出したと警告をもらったことがきっかけです」

「あ、ターミナルというのは、時間の分岐点にある駅の事なんです」

「あの幽霊列車はとても危険なものでしてね、下手をすれば、時間そのものが壊れる危険性もあります。恐らく、彼女・・・・・・プレシア・テスタロッサは、幽霊列車と牙王の能力を使うつもりなのでしょう。
そして、フェイトさん・・・・・・あなたの存在を否定しようとしている。それだけではなく、その上で何か大きな事を、成そうとしている。例えば・・・・・・死者を生き返らせる、とか」



死者を・・・・・・生き返らせるっ!?



「オーナー、そないなこと・・・・・・可能なんですか?」

「可能です。現に、良太郎君を使ってそうしようとした者が居ました。死者の時間と生者の時間をひっくり返せば、生きている人間は死に、死んだ人間は生き返ります。恐らくですが、牙王もそのために協力しているのではないでしょうか」

「つまり、自分が蘇るため・・・・・・ですね。オーナーが言った事件が起こった時、その首謀者も同じ事をしていました。だから、多分間違いないと思います」



もしかして、プレシア母さんは死んでもまだアリシアを蘇らせようとっ! そんな・・・・・・そのためにヤスフミが・・・・・・!!



「それで僕達、色々調べてたんです。だけど、それがどういうわけかこっちの世界に跳んだって聞いて・・・・・・」

「俺達は全員揃ってまたこっちに来たってわけだ。けどよ、遅かったぜ。青坊主と青豆の野郎が・・・・・・」

「ごめん、フェイトお姉ちゃん。ごめん、みんな。僕達が・・・・・・もっと早く来てれば。ほんとに、ごめん」



リュウタロスさんの声が、かすれて・・・・・・小さな涙声になる。



「あぁリュウタ、泣いたってどうにもならないから」

「だって・・・・・・だって・・・・・・! 僕、恭文の友達なんだよっ!? この間の時は、僕達突然来て、ここの皆からするとワケわかんない事ばかりだったのに、恭文一生懸命助けてくれたのに・・・・・・僕、助けられなかった・・・・・・!!」



それを見て・・・・・・頭が冷える。私、バカだ。私だけが辛い思いしてるように感じてた。だけど、そうじゃない。

みんな、同じなんだ。それなのに、一人だけ止まろうとしてた。本当に、バカだ。あの子にコツンとやられても当然だよ。



「・・・・・・バカ、アンタのせいじゃないでしょうが」

「ティアナちゃん、でも・・・・・・」

「そんな泣きそうな顔しないの。大丈夫、アイツのしぶとさはよく知ってるでしょ? なんか起こる前に、取り戻せばいいのよ」



ティアの励ますような言葉に・・・・・・胸が震えた。そっか。取り戻せば・・・・・・いいんだ。

取り戻せば、いいんだ。まだ・・・・・・終わってないから。



「アンタがアイツの友達なのはよく知ってる。だから、助けなさいよ。・・・・・・アンタは、前にもそれをやってるでしょ?」

「・・・・・・うんっ!!」



・・・・・・そう、だよね。リュウタロスさんが恭文の友達で、だから助けるなら・・・・・・私も、同じだ。

私も、私として、ヤスフミの恋人として・・・・・・助ければいいんだ。



「でも、あんま時間はかけらんないぞ? あのばあさんの1番の目的は、自分を差し置いて幸せになっているフェイトさんへの復讐。
・・・・・・いや、八つ当たりだと思う。それならじいちゃんは有効なカードだ。だけど、だからこそ安全も多少だけど確保されている」

「えっと、それって・・・・・・どういうこと?」



スバルもそうだし、みんなの顔にも疑問が浮かぶ。

だから、あの子は続けて答えた。ただ、表情には申し訳なさそうな色が見える。そして、とても言いにくそう。



「つまり・・・・・・まぁ、胸くその悪い話ではあるけど」



そう前置きした上で、その色を強めながら、その子は言葉を続けた。



「じいちゃんを殺したと報告するのと、じいちゃんを目の前で残酷に殺すのとじゃ、フェイトさんへのダメージが違うってことだよ。
その逆もまた然り。何か手を出すなら、必ずじいちゃんとフェイトさんが互いを見れる距離でやらかすはずだ」

≪この場合、通信越し・・・・・・というのはあると思いますか?≫

「俺だったらやらねぇ。目の前で何も出来ず・・・・・・って方が、ダメージはデカイだろうからな」



その言葉に、盛り上がりかけていた感情が、一気に急降下した。というか、なんか・・・・・・涙が。



「つまりだ、フェイトさんに対してより大きなダメージを与える・・・・・・もっと言うと、壊すために、じいちゃんというカードを有効利用してくるに決まってる。
・・・・・・いや、みんな頼むからその睨むのやめてよ。俺ちゃんと前置きしたよな? 胸くその悪い話だって。俺だって言ってて腹立ってきてるんだよ」

「そやなぁ。みんな、この子の言う通りや。決して間違った事は言うてへんから、その目はやめてーな。うちも怖い。
それで、オーナー。この子・・・・・・誰ですか? もうごっつ普通に関係者みたいな顔してここに居るんですけど」

「というより、もう一人の彼とイマジンもです。先日あなた方がこちらに来た時には居なかった顔ですが、あなた方の関係者か何かでしょうか?」



そう、シグナムが今言ったように、髪の長い男の子とユニゾンデバイスの子だけではなく、金色のベルトをした青い電王に変身した男の子と、あの銃剣から形を変えたイマジン。その二人も普通についてきた。

だから正直、私達はさっぱりで・・・・・・。



「いや、自己紹介したじゃん」

「いや、されたけど・・・・・・名前だけだよね。蒼凪恭太郎って」

「それだけだから、分かりませんよ」



スバルとエリオが続けて言うと・・・あの子は大きくため息を吐いた。



「・・・・・・はぁ、スバルばあちゃんとエリオおじさんは若くても鈍いのか」

「ま、予想はしてたよな」

「幸太郎、恭太郎も失礼だぞ? ・・・・・・おばあ様にエリオさん、申し訳ありません。二人とも悪気はないのですが」

「ば、ばあちゃんっ!? ちょっと君達っ! 私はそんな年齢じゃないよっ!!」

「僕だってまだ11歳ですっ! おじさんじゃないですよっ!!」



というか、この子の皆への呼び方がおかしい。

ヤスフミをじいちゃんとか、スバルをばあちゃんとか、エリオをおじさんとか。



「・・・・・・なぁ、アンタ・・・・・・蒼凪恭太郎っつったよね?」

「そうだよ」

≪で、こっちがアレだから・・・・・・姉御≫

「間違いないね」



そして、ヒロさんが力強く頷いた。サリエルさんも発言してなかったけど、どうやらそれで納得したらしい。



「しかしまぁ・・・・・・。またお前は小さいな。・・・・・・遺伝か?」

「そう言われてる。てゆうかさ、俺じいちゃんより小さいんだ。うぅ、サリじいちゃんがうらやましいよ」

「そっか・・・・・・」



あの、サリエルさん? どうしてそんないきなりフレンドリーになるんですか。



「あのな、俺の医療技術でもやっさんの身長を伸ばすのは無理だったんだ。すまない、負の遺産を引き継がせてしまって」

「いや、いいよ。ただ・・・・・・ここだけは似なくてよかったなって、たまに思うんだ」

「すまんっ! マジですまんっ!! 俺はもう謝ることしか出来んがすまんっ!!」



あ、あの・・・・・・話を進めないでくれませんか? それも二人とも涙目で。

とにかくこう、私達は全くついていけないので。



≪オーナー、最終確認です。この咲耶嬢と言うユニゾンデバイスを連れた方は・・・・・・そうなのですか?≫

「そうです」

≪マジかよ。あぁ、でもそれで納得したぜ。面影あるしな≫



オーナーが立ち上がって、私達の前に居た二人の男の子と、一人のイマジンの前に立った。



「では、改めて。・・・・・・まず、彼は・・・・・・野上幸太郎君」



あの青い電王・・・・・・だよね。それに変身していた子。黒髪で、黒い皮製の薄いジャンバーに白いシャツ。そして、ジーパンを履いている。

その子をまずはオーナーが指して・・・・・・あれ? 野上? もしかして、良太郎さんの親戚なのかな。



「野上幸太郎っ! えっと・・・・・・まさか、君がそうなのっ!?」

「まぁ、そうだけど・・・・・・あ、じいちゃんから話聞いてたんだ」

「うんうんっ! わぁ・・・・・・まさかこんなに早く会えるとは思わなかったよー!! あの、私はもう知ってるだろうけど、スバル・ナカジマっ! よろしくっ!!」

「あぁ、よろしく」



スバルが立ち上がって、あの子を興味深そうに見る。というか、すっごい勢いで食いついている。あの、どういうことかな。私達全員置いてけぼりなんだけど。



「幸太郎は・・・・・・アレだ。良太郎の孫なんだよ」



・・・・・・ま、孫っ!? え、いやだって・・・・・・孫がどうしてこんな大きくなった状態で居るのかなっ! おかしいよねっ!!



「えっと、今存在してるわけじゃ・・・・・・ないんだよね? ずーっとずーっと先に生まれて、その時間で生きてる」



あの、それって・・・・・・つまり、どういうこと?

まずい、全員が頭を抱えてる。ものすごく捻ってる。



「あぁ、スバルばあちゃんの言う通りだ。俺はこの時間のずっと先・・・・・・未来から来たんだ」

「今回は緊急事態って事で、幸ちゃんは俺と一緒に連れてこられたんだよ。で、幸ちゃんも良太郎じいちゃんと同じく特異点でさ。電王に変身できるってわけ」

「そういう事。で、こっちがテディ」

「・・・・・・よろしく」



そう言って、両手を自分の身体の前で組んでいる青い鬼のイマジンが、丁寧にお辞儀をする。

・・・・・・あ、だから新しい電王って名乗ってたんだ。つまり、本当に今の電王じゃない。



「そうだよ。幸ちゃんは、未来の時間の電王ってわけ。で、次は俺だな。・・・・・・改めて名乗るよ?
俺は蒼凪恭太郎っ! 幸ちゃんが未来の電王なら・・・俺が、未来の古き鉄っ!!」

≪まだまだ修行中の身ですが≫

「まだまだおじいさまから古き鉄の名を受け継ぐには程遠いですわ。どういうわけか身長とヘタレ具合に天然フラグメイカーに運の悪さはおじいさまそっくりですし」

「はい、ビルトも咲耶もうっさいっ! そんなの俺が一番よく分かってるんだから、んなこと言うなぁぁぁぁぁっ!!」



蒼凪・・・・・・恭太郎。ヤスフミと同じ苗字。そしてこの子はさっき自分を『新しい古き鉄』と言った。そして今も未来の・・・・・・。

えっと、まさか・・・・・・まさかとは思うけど、この子もしかしてっ!!



「・・・・・・はい」



私達の信じられない想像は、良太郎さんの言葉で決定となった。



「幸太郎と同じ時代で生きてる、恭文君の・・・・・・孫なんです」

『えぇぇぇぇぇぇっ!?』





ま・・・・・・孫っ!? ヤスフミの孫って・・・・・・えぇっ! な、なんでそれが今いるのかなっ!! だ、だって孫ってことは・・・・・・えぇっ!?





「・・・・・・なぁ、ば・・・・・・フェイトさん。それはさっき幸ちゃんが説明したじゃないのさ。今、俺が本当に実在してるわけじゃなくて、デンライナーの時間航行で未来からこっちの世界・・・俺から見ると、過去に跳んできたんだよ」

「だ、だって・・・・・・いきなりだものっ! 信じられないものっ!!」



ほら、みんなを見てっ!? 今の私と表情が同じなんだからっ! それで簡単に納得なんて出来るわけがないよっ!!



「あなたが信じられなくても、事実です。・・・・・・今回は事態が事態。手が多い方がいいかと思いまして、幸太郎君だけではなく、恭太郎君にも協力してもらうことになりました。
なお、恭太郎君はあなた方と同じ魔導師ですし、実力も折り紙付きです。足手まといには、ならないでしょう」

「あー、オーナーひでぇ。俺だって幸ちゃんレベルで頑張れますー」

「では、期待させていただきましょう」



魔導師・・・・・・あぁ、そうだよね。さっきの戦闘の様子を見ればそれは当然だよ。



「・・・・・・驚いた。アタシはすっげー驚いた。いや、良太郎さんの孫が電王ってのは映画の話聞いて知ってたんだけどよ。まさかバカ弟子の孫まで居るとは」

「だが、考えてみれば当然だ。蒼凪とて今でこそあれだが、いずれ子を成し、その子が大きくなればまたそれも子を成す。
そこを考えると、今回の一件で恭太郎が来たのは特に問題無いだろう。あながち無関係とも言えないしな」



・・・・・・そっか、もしここでヤスフミに何かあったら、相手どうこうは抜きにしてもこの子の存在は・・・・・・消えるんだ。

ヤスフミの時間が未来に繋がる事で生まれる存在。それが孫と言うこの子だったり、恭文の子どもなんだから。



「そうだな。幸いな事に、相手はもう決まってるわけだしよ」



あ、そっか。だから・・・・・・さっきのアレなんだ。ヤスフミの孫だから、ヤスフミのこと良く知っているから、あんな事を確信を持って言えたんだ。

私、やっと納得したよ。確かに見てると・・・・・・雰囲気と言うか、印象が似てるかも。



「そして、私が蒼凪恭太郎・・・・・・恭さまの本妻であり、パートナーである雷鳴の鉄姫・咲耶です。なお、リインさまやアギトさまと同じユニゾンデバイスですわ」

≪私も同じく恭太郎のパートナーである荒ぶる百舌・ビルトビルガーです。皆さん、よろしくお願いします≫

「な、なんというか、よろしく・・・・・・」

「お願い、します」



丁寧に挨拶されたので、みんな戸惑い気味にお辞儀。なんだけど・・・・・・なんだか、やっぱり信じられない。だって、ヤスフミの孫・・・・・・相手は誰だろう。



「あぁ、恭文くんもそうですが、良太郎君の結婚相手が誰かと言うのは、教えられませんよ?」



その言葉で、ドキっとする。オーナーが・・・・・・私達を一瞥していた。



「知ってしまうことで未来の形が変わることもあります。なので・・・・・・決して、無理に聞き出したりしないように、お願いします。特に、スバルさんとフェイトさん」

「「は、はい・・・・・・って、なんで私達なんですかっ!?」」

「1番気にしてそうやからに決まってるやろ。それでオーナー、大体の事情は分かりました。
だけど、これからどないすればえぇんですか? 追いかけるにしても、そんなんいくらなんでも専門外過ぎて・・・・・・」



・・・・・・確かにそうだ。でも、早くしないとヤスフミがどんなことになるか分からない。最悪、殺されてもおかしくない。

だめ、落ち着いて。あてもなく飛び出したってなにも変わらない。それこそ思うツボだ。プレシア母さんは、私を苦しめるのが目的なんだから。



「それならば、大丈夫です。・・・・・・フェイトさん、恭文くんは以前売ったチケット・・・・・・まだ持っていますよね?」

「あ、はい。いつも懐に入れて、たまに磨いたりしています」

「・・・・・・青坊主、そこまで嬉しかったのかよ」

「なんちゅうか、フェイト嬢ちゃんと付き合うようになってもそれなんやな」

「まぁ、恭文らしいって言えば、恭文らしいけどね。というかさ、チケット磨いたらダメになるんじゃないの?」





私もそう言ったけど、こういうのは気持ちの問題らしい。まぁ・・・・・・布で拭くよりも、チケットを見てデンライナーの皆の事を思い出している時間の方が多いんだけど。

やっぱり、ヤスフミの電王・・・・・・ヒーローへの憧れは消えないみたい。

ヤスフミ、多分だけど・・・・・・自分の『こうなりたい』という姿をその中に映しているんだと思う。



『どこかのヒーローみたいに全部守れて、救えたらきっといいよね』・・・・・・と、どこか遠いものを見ているような目で話してたことがある。そう言った時の気持ちが付き合うようになってよくわかった。





「ねね、オーナー。恭文のチケットがどうかしたの?」

「実はあのチケット、ヘイハチさんから頼まれて作成した、特別製なんですよ。なので、その波長を追えば」

「おいおい、オーナーのおっさん。まさか・・・青坊主の居場所がわかんのかっ!?」

「はい。それだけではなく・・・・・・幽霊列車に、必ずたどり着けます。・・・・・・ナオミ君」

「はーいっ!!」



突然会議室に入ってきたのは・・・・・・デンライナーの客室乗務員のナオミさんだった。

というか、あの・・・・・・なんですか? その右手に持ったドラゴンボールに出てくるレーダーみたいなのは。



「ここに、恭文ちゃんの持っているカードが降りた時間が表示されるんです。まぁ・・・・・・時間の狭間に居る間は全くダメなんですけど」

「あ、僕分かりました。つまり、プレシア・テスタロッサがどこかの時間に降りた時を狙って・・・・・・」

「そういうことです」



確かにそれなら・・・・・・行ける。あ、でも問題がある。それも大きな問題。



「でもオーナー。あのプレシアってばあさんだってバカじゃない。多分一度俺達が攻撃したら、気づくんじゃないか?」

「幸ちゃん、『気づくんじゃないのか?』じゃない。間違いなく気づかれる。正直、ココは賭けてもいいな。
プレシア・テスタロッサは、途中の躓きさえなければ歴史の教科書に載ってたっていいくらいのすげー魔導師だ。そんなことされて不信に思わないわけがない」

「恭太郎君の言う通りだよ。多分・・・・・・ヤスフミを取り戻せるチャンスは、本当に一度だけ」

「それを逃せば、じいちゃんがどうなるかはマジで分からない。最悪、あのサイコばあさんを止められなくても、じいちゃんだけは助け出さないといけない。・・・・・・てゆうかフェイトさん」



どうしたのかな? あの、なんでそんな嬉しそうな目で私を見るの?



「いや、なんつうか・・・・・・エンジン、かかってきた?」

「うん、おかげさまでね。さっきのゴツンが効いたから。私が、私達が・・・・・・助け出せば、いいんだよね」

「あぁ。・・・・・・大丈夫、俺達も手伝うから。つーか、ここでじいちゃんが死んだら俺消えちゃうし。もうすげー必死でやるよ〜」










少しだけ茶化してそう言ってきた恭太郎君に、私は微笑みで返す。





・・・・・・怖い。母さんと戦うことになるのは、すごく・・・・・・怖い。





でも、ヤスフミを失うのも、怖い。





どうしよう、私・・・・・・少し、迷ってるのかも知れない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・くそ、身体・・・・・・指一本も動かない。なんだよ、これ。





アルト、聞こえる?










≪聞こえます。ですが・・・・・・これは無理です。私達、完全に閉じ込められたようですね≫





あー、やられた。完全にアイツらの手の上ってわけか。





≪あなたがかっこつけて自分を犠牲に助けるからこうなるんですよ≫





ごめん、犠牲にした覚えない。逃げようとしたら・・・・・・こうなった。





≪・・・・・・ポカミスでこれですか? それでアレですか?≫





アレ・・・・・・だった。うぅ、フェイトに絶対謝らないと。



でも、あれは確か・・・・・・New電王。でも、もう一人は?





≪あなたの孫とか≫





あ、あはははは・・・・・・・ありえる。普通にありえる。





≪まぁ、こうなっては助けを待つより他ありません。私達の力でこれはどうしようもないでしょう。なにより・・・・・・≫





そうだね。本当に危ういレベルだけど、安全は少しだけ確保されてる。





≪ただし、それも長くは持ちません。あのサイコっ振りを見るに、何時このカードを破るか分かったものでは有りません≫





カード破られて外に出られるならうれしいけど、そうじゃない場合もあるしね。例えば、カードがこの空間から出られる唯一の出入り口の役割をしていて、それが無くなると一生このまま・・・・・・とかさ。





≪そういうことです。フェイトさん達が上手い事やってくれるのを期待しましょう≫





うん、そうする。しかし・・・・・・僕は人質か。あぁもう、完全にポカミスだ。ヒドイにも程がある。





≪もう言っても仕方ないですから、言うのはやめましょう。・・・・・・どうやら、連中の狙いはフェイトさんらしいですね≫





だね。まずはフェイトへの復讐・・・・・・つーか、あの髪の長い子の言うように八つ当たり・・・・・・だね。





≪はい。そして、そこから生と死の時間を引っくり返す・・・・・・ですね。・・・・・・まさか亡霊が死者の復活をかまそうとは思いませんでしたよ。そこまで・・・・・・アリシア・テスタロッサを取り戻したいんですか≫





みたいだね。・・・・・・話を聞いていると、やっぱり牙王がプレシアに協力しているのはそこみたいだから。



あぁもう、どうにかしてここから・・・・・・うーん、うーん・・・・・・だめだ、全く出れない。





『・・・・・・手伝ってあげようか?』





・・・・・・アルト、なんか僕幻覚が聞こえたんだけど。





≪奇遇ですね、私も聞こえましたよ。あれ・・・・・・聴覚センサーがおかしくなりましたかね≫

『幻覚じゃないよ。あと、それを言うなら幻聴だから。・・・・・・君、フェイトの騎士だよね』





まぁ・・・・・・ね。だけど、今回はバカやりまくりのヘボ騎士ですよ。





『・・・・・・なにそれ? とにかく、お願い。母さんを・・・・・・フェイトを、助けて』





母さん? フェイトの事知ってるの? というか、この声・・・・・・あの、もしかして。





『うん。一応、初めまして・・・・・・なのかな。私はアリシア・テスタロッサ。プレシア・テスタロッサの娘で、フェイトの・・・・・・お姉ちゃんだよ』










・・・・・・まじ?










『マジだよ。でね、私はまず色々言いたいことがあるの。どうして君はフェイトに手を出さないのかな?』





え、なんでいきなりそんな話っ!?





『そんな話にもなるよっ! 付き合ってもうすぐ3ヶ月が経つのにキスとやんわりバストタッチまでなんて、最近の中学生より遅いよねっ!? どうしてR18いかないのかなっ!!』

≪・・・・・・そういう性格ですか?≫

『うん、死後数十年だから、こういう性格だよ? ナイスでしょ〜』










全然ナイスじゃないわボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! つーかどっから見てたっ!? マジでどこから見てたおのれはっ!!





ほらっ! 怒らないからちゃんと答えろー!!





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あきゅろす。
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