[携帯モード] [URL送信]

小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第34話 『飛び込むは新時代』



ラン・ミキ・スゥ『しゅごしゅごー♪』

ラン「どきっとスタートドキたまタイムー! さぁ、いよいよ始まった超・電王編の第二話だよー!!」

スゥ「消えた唯世さんとキセキを助けるために行動を開始したあむちゃんと恭文さん達。謎の敵と戦う事になった恭太郎とティアナさん達。うー、どうなるかどきどきですぅ」




(映像が流れる。砂の世界にある駅と、あの方)





ミキ「というか、真面目にどうなるんだろ。結構気になってるんだけど」

スゥ「またまた台本をもらってないで収録してますしね〜」

ラン「とりあえず、今回は恭文のお話中心らしいよ?
とにかく、さっそくいってみよー! せーのっ!!」





(というわけで、恒例のポーズ)





ラン・ミキ・スゥ『ドッキドキ♪』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



窓の外で、砂ばかりの景色は流れる。デンライナーこの電車が走るのは、時という名の線路。今の行き先は、その時の中にある駅。





消えた友達を、仲間を取り戻すための旅は、もう始まっていた。










≪うー、ドキドキなの。主様と初めて会ってから早速冒険なんて、スリリングにもほどがあるの≫

≪ジガン、お遊び気分はそこまでですよ。時の運行を守るというのは、簡単ではないんですから≫



青い目をしたウサギがピッと指を指す。その対象は、大きく硬い盾。なお、ロボット形態。



≪大丈夫なの。ジガン、主様とお姉様の助けになるために、力を尽くすの≫



当然のように、ロボットがガッツポーズを取る。だけど、声とは非常にミスマッチで、ちょっとアレ。



≪なら、問題はありません。ジガン、あなたのやるべきことは分かっていますね?≫

≪はいなの。ジガンは、虐められると喜んじゃういやらしい主様専用のメス犬として、主様のSな欲求のはけ口になるの≫

≪正解です≫



そして、ロボット型のぬいぐるみは喜んだように両手を上げてワーイワーイと・・・・・・するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!



「正解ちゃうわボケっ! いきなりなにとんでもないこと口走ってるっ!? つーか、こっちはマジな話してるんだから黙ってろっ!!」

「というか、ジガンはどうしてそんな事言うのっ!?」



そう言って慌てるフェイトは知らない。ジガンがなのはの思考パターンを元にしていると。てゆうか、これを見ると教えることが出来ない。ごめん、僕には無理。



「だ、ダメ・・・・・・絶対ダメっ! ヤスフミは私の恋人なんだからっ!!」



右隣に座る女の子は、今までよりも強めにギューっと僕の腕を抱きしめる。胸の感触が心地いいけど、それを堪能出来ないのが悲しい。

このボケAIをどうしたもんかと思うから。てか、なのははどんだけ潜在的に強いM衝動を溜め込んでたわけ? これはおかしいでしょ。



≪うー、フェイトさんは頭が固いの。フェイトさんはフェイトさん、ジガンはジガンなの。もっと言うと、フェイトさんは恋人としてだけど、ジガンは卑しいメス犬として≫

「だからやめろー! つーか、フェイトが居るのに他の女の子とそんなこと出来るかっ!! てゆうか、しないよっ!? 真面目にSM趣味とかないからっ!!」

≪大丈夫なの主様、ジガンにだけは本当の自分をさらけ出しても≫

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



なんか机の端で鎮座しているストフリノロウサギとSDガンドロはどうにかならないもんかとちょっと思ったりもする。だって、さっきまでのアンニュイな気分が台無しだもん。



「・・・・・・恭文、話は変わるけど、このぬいぐるみどうしたの?」



スバルがなんか疑問顔で聞いてきた。というか、あむと良太郎さん達も同じ。・・・・・・そう言えば、説明してなかったな。



「あ、アルトとジガンの自立行動用のボディ。アルトのウサギボディは元々作ってたんだ」

≪なお、高出力バッテリーを使った物で、武装もあります。例えば・・・・・・≫



そうして、ウサギは腰のビームライフルを取って、ビシっとポーズを取る。それから、ビームライフルを元の位置に装着しなおしてから、腰の後ろ側にある二つの筒を取り出し握る。

そこから、青色の光の粒子が剣の形を取った。そう、いわゆるビームサーベル。なお、マジで斬れます。



「青豆、お前・・・・・・青ウサギじゃねぇかよ」

「先輩、もうちょっと気の利いたコメント出来ないわけ? でもまぁ・・・・・・な、なんというかすごいね。いつの間にこんなの作ったの?」

「元々アイディアはあったから、ちょこちょこ作ってたんですよ。なお、ジガンのボデイはサリさん作成」

≪これも気に入ってるけど、ジガンは女の子なボデイがいいの。だってだって、そうすれば主様に一杯いじめてもらって≫

「だからそれはやらないからっ!!」










・・・・・・とにかく、僕達はリースからターミナルに着く間に詳しく話を・・・・・・聞く前に、またもや説明。





リースがここに居る以上、もうアレに関してあむ達に説明しておかないといけないのだ。










「・・・・・・というわけで、恭太郎は僕の孫なの。で、ビルトビルガーや咲耶も恭太郎と同じ時間で生きてる存在」

「しゅごキャラ・・・・・・というより、エンブリオ捜索と、イースター対策を手伝うために、時間を越えて私達の所に来てくれたんだ」





そう、恭太郎達の事だ。おそらく今後『孫』とか『未来』とか、そういうキーワードが出てくるのは明白だったので、もう話すことにした。



すると、あむはうんうんと頷きながら、こういうのである。





「あぁ、なるほど」





あむはすぐに納得してくれた。どうやら、ここ数ヶ月のあれこれで柔軟になってきているらしい。



うん、いいことだ。





「・・・・・・って、納得出来るわけないでしょっ!? ありえないっ! それマジでありえないしっ!!」





机をバンと叩き、それはもう不服そうに言うのは同級生の女の子。・・・・・・あ、やっぱり?



いや、そうじゃないかと実は思ってたのよ。いくらなんでもすんなりし過ぎてたからさぁ。





「いえ、事実です。今恭文くんとフェイトさんが説明したように、恭太郎君とビルトビルガー、そして咲耶さんは、このデンライナーに乗ってあなたの時間にやってきた、未来の時間の住人です。そして、恭文くんの・・・・・・孫です」

「あむちゃん、信じられないのは分かるけど、事実なんだ。恭太郎は、僕の孫・・・・・・あ、幸太郎って言うんだけど、その子と幼馴染で友達で、僕もモモタロス達も、何度か会った事があるから」

「それに、恭文に似てるでしょ? 色々とさ」



そう言ったオーナーと良太郎さんと豆芝の方をあむは見る。そして、両手で頭をかきむしり始めた。



「あぁぁぁぁぁぁぁっ! 唯世くんの事だけじゃなくてデンライナーとか孫とかワケ分かんないしっ!! てゆうか、マジで頭おかしくなりそうなんですけどっ!?」

「あ、あむちゃん落ち着いてー!!」

「大丈夫だよっ! 孫だろうとなんだろうと恭太郎達は変わらないんだからっ!!」

「そうですぅっ! 心頭滅却すれば火もまた涼しですよぉっ!?」



スゥ、それは絶対に違う。とりあえず、違うと思う。

まぁ、あむが落ち着くまでにやることちゃっちゃっとやっておくか。僕は机の上で申し訳なさそうな顔で様子を見ていたリースに視線を向ける。



「リース、ごめんおまたせ。それで」

≪そろそろ話していただきたいんです≫

「あ、はい。なぜ・・・・・・私がここに居るかということですよね」



僕もフェイトも頷く。そして、ディードにスバル、良太郎さん達もリースに視線を向ける。

リースはそれを受け止めつつ、少し怯えた様子も見せながら・・・・・・話し始めた。



「私がここに居るそもそものきっかけは・・・・・・ある魔法の実験が原因です」

「ある魔法?」

「時間移動の魔法です」



時間移動っ!? つ、つまり・・・・・・デンライナーみたいなことが出来るってことかっ!!

僕達は顔を見合わせて驚く。そのまま、リースの言葉は続く。



「最近・・・・・・あ、未来の私達の時間でですね。最近、聖王教会が保管していた一冊の古い書物が解読されて、その中にその術式があったんです。術式が作られた年代は古代ベルカ。丁度聖王のゆりかごなどが存在した時代の書物です」



・・・・・・また古代ベルカですか。あの時代は本当に色んなもんが山積してるなぁ



「だけど、どうしてそんな術式を開発したのでしょうか」

「もしかしたら、未来の技術を盗用しよう・・・・・・とか考えたのかも。その時代の統一戦争に勝つために、今ここにはない技術を求めた」

「はい。今フェイトさんがお話してくれたような目的ではないかと、聖王教会の解読スタッフも一応の結論付けをしていると聞いています」



まぁ、実際にその術式が使われたかどうかは分からないけど、それは存在していた。そして、恭太郎や咲耶、かえでにリース達の時間の中で、それは日の目を見た。

いや、見てしまった。



「ただ、ここで問題が一つ。さすがに物が物だったので、実験をするかしないかとか、術式ごと本を処分しようかとか、色々揉めに揉めたんです。この術式が世に広まれば、確実に取り返しのつかない事になりますから」

「そうだね、自分の都合のいいように過去を改変しようとする人間は絶対に出てくる。というかリース、問題はそれだけ?」

「いえ。その術式は古代ベルカ式で、消費魔力も多く、使える人間が非常に限られると判断されたんです。
とにかく、結局は秘匿級のロストロギアと同等・・・・・・いえ、それ以上の代物と判断して、本は処分することにしました」



『この辺りは、はやておばあ様やロッサおじい様が尽力してくださった結果なんです』と、リースは言葉を続けた。

まぁ、ここで終わればめでたしめでたしだったんだけど、そうはならなかった。話は、残念ながらまだまだ続く。



「だけど・・・・・・かえでちゃんが実験台に志願したんです。術式が本当に時間移動を可能にするかどうか、試してみてからでも遅くはないのではないかと。
結果、術式を処分するのを惜しいと考えていた派閥の人達に取り入る形で、おばあ様達には内緒で、実験は開始。私もさすがに放置はしておけなくて・・・・・・」




過去に、飛んだらしい。それに、僕達は呆れるというか、何にも言えなくなってしまった。



やっぱり、まずは理由を知るところかと思い、僕はリースにそこを質問することにした。





「ね、リース・・・・・・それはまたなんで?」

≪そうなの。時間移動がどれだけ危険を伴うのか、ジガンにだって分かるの。それなのに、どうしてかえでちゃんはそれをやろうと思ったの?≫

「まず一つ目に、かえでちゃんもデンライナーや電王の事は知っています。そこが理由です」



つまり、自分が戻れなくなった場合、なんらかの方法で助けてくれると踏んだからか。

また無茶なこと考えるな。オーナーは理由はどうであれ、勝手にデンライナーを動かすような真似はしないってのに。



「そして二つ目に、かえでちゃんはおばあ様譲りの高い魔力資質を持っていて、なおかつ古代ベルカの使い手でした。
まぁ、戦闘スタイルははやておばあ様とはずいぶん違うんですが。それともう一つは・・・・・・」



リースがなぜか僕を真っ直ぐに見る。そして、フェイトも。

それに僕とフェイトは首を傾げる。



「おじいさん達の時間に居る恭太郎さんに、会いに行きたかったからです」

「・・・・・・え?」

「あの、おじいさん達はご存知ないかも知れないんですが、恭太郎さんはそちらに滞在する前に、少しトラブルを起こしまして」



僕とフェイトはやっぱり顔を見合わせる。というか、ウサギ姿のアルトもこちらを見る。

そして、当然のように僕達は念話を繋ぐ。



”フェイト、ま・・・・・・まさかとは思うけど、リースの言う『トラブル』って”

”間違いなくアレだよ”



なお、説明するまでもないとは思うけど、一応補足。『アレ』とは、恭太郎がシャーリーの孫とオールでカラオケしたってやつのことである。

詳しくは、この話の第3話を見ていただきたいと思います。そうすれば、きっとすぐに分かる。



”アレですよね。『To LOVEる』しちゃったやつですよ”

”そうして『トラブル』に発展したってやつだね。え、ということはもしかして・・・・・・”

”ヤスフミ、もしかしなくてもそうなるよ。私も同意見”

”・・・・・・やっぱり?”

”やっぱりだよ”





まぁ、結論だけ言うとですよ。



全部・・・・・・うちのバカ孫が原因かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!





「でも、どうしてその術式に賭けるような真似を? 恭文さんのチケットや、未来の電王である幸太郎さんという方に協力を頼めば」

「それはダメだったんです。まずおじいさんのチケットは、あくまでもおじいさんのもので、かえでちゃんが使う事は出来ませんから。
というより、おじいさんの許可をいただいてチケットを共有しても、それだけでは過去・・・・・・今のおじいさん達の時間には遡れません」



なお、幸太郎の方もだめだと思う。ディードは会った事がないから、今ひとつ分かってないみたいだけど、会った事のある人間なら誰しも納得する。



「あとよ、デンデン虫。幸太郎はこういうのに協力する奴じゃねぇぜ? てゆうか、どうせいつもの仏頂面で『バカ言うな』とか言ったんだろ」

「てゆうか、幸太郎でもだめよ。オーナーが許さないもの」

「はい。そのように言われました。幸太郎さんは普段の口調はともかく、根は良太郎さんに似てすごく真面目な方ですし」





あぁ、そっかそっか。ようやく分かったぞ。で、どうするかと悩みに悩んだ挙句、たまたまその術式の話を聞いた。



そこで、その術式を使って過去に遡ることを考えた。きっと、未来の僕達は凄まじく大騒ぎだろうなぁ。これ、どっちにしても死亡フラグ立ってるんじゃ。





「・・・・・・リース、あなたのマイスターのかえでは、もしかしなくても相当無茶な子なのかな」

「恭太郎さんが関わった時に限りです。普段はここまで無茶じゃありません。うぅ、私もなんとか止めたいとは思っているんですけど、かえでちゃんの頑固は凄まじくて」



どこか呆れているようにリースがそう言ったのは、気のせいじゃない。



「なんというか、さすがははやてさんの孫。こう・・・・・・行動力がすごいよ」

「スバルちゃん、それ誉めてないわよね。というか、行動力どうこうはスバルちゃんに言われたくないと思うんだけど」

「あははは、確かに」



てゆうか・・・・・・やっぱあのタヌキはやての孫だよ。ネジが一本飛んでるのは血脈なんだ。

だけど、これで分かった。なんでリースがここに居るのかもようやくだ。でも、そうすると・・・・・・うーん。



「・・・・・・困りますねぇ」



普段の厳格な表情を崩さず、オーナーが声を上げる。

それに、リースが身をすくませる。どうやら、分かるらしい。オーナーはちょっとお冠だと。



「恭太郎くんと咲耶さんは、未来の情報を恭文くん達の時間に極力持ち込まない事を条件に、あくまでも特例として長期間の滞在を許しているんです」



そう、オーナーがお冠な理由はここ。



「なおこれは、今恭文くんとあむさんが関わっているエンブリオ関連の事件が、時の運行に重大な影響を与える可能性を考慮した上での判断です」





二人の行動が、時の運行に支障をきたす物だと言うのが原因。現に、リースがデンライナーに飛んで来た事で、これだけの騒ぎになってるんだから。



そのまま、オーナーはまたチャーハンを食べる。

そして・・・・・・旗は倒れない。その様子を満足げに見ながら、口を動かして、チャーハンを飲み込む。

二口目に取り掛かる。旗を倒さないように、慎重に。





「にも関わらず、同じ未来の時間の人間であるあなた達がデンライナーを介さずに勝手に移動されては、時の運行に支障が出ます。これは問題ですよ?」

「・・・・・・すみません」

「オーナー、難しいお話は後でいいじゃん。今はリースちゃんの事だって。
・・・・・・ねね、君はようするに、その魔法を使ってデンライナーに来たってことだよね」



リュウタが怯えさせないように距離を取りつつ、そう言ってきた。で、他の面々も続く。



「つまり、あれか? そのデンライナーのパチモンみたいな魔法は失敗したっちゅうことか」

「そう言えば、さっきそれらしいこと話してたしね。・・・・・・というか、そのかえでちゃんはどこに居るのかな? あのはやてさんのお孫さんならさぞかし美人だろうし、ぜひともお近づきになりたいなぁ」

「亀、お前早速それかよ。つーかよ、紫妖精だけなんだから、どっかの時間の中に落ちたんじゃねぇのか? ほら、いつぞやの俺達みたいによ」





モモタロスさんの言葉に、内心頷く。確かにそう考えるのが妥当かも。



てゆうことはアレですか? またいつぞやみたいにアッチコッチの時代を探さないといけないとかかな?





「あの・・・・・・違うんです」





それは、僕達の予想を裏切る言葉。リースの表情が、一瞬で泣きそうなものに変わる。

そう言えば、さっきかえでを助けて欲しいとかなんとか言ってたよね。

僕はさっきも言ったように、モモタロスさんの言うように転移の影響ではぐれたものだと思ってた。多分、皆も同じ。



リースが、俯いていた表情を上げて僕を見る。瞳が今にも泣きそうになってた。





「転移には、一応ではありますけど成功したんです。私もかえでちゃんも、一緒に過去に飛びました。ただ・・・・・・」

「ただ?」

「あの術式、未完成の物だったようなんです」



その言葉に、背筋が寒くなる感じを覚えた。未完成の術式を使った。そして、リースだけがここに居る。

なら・・・・・・かえではマジでどうなってる?



「というより、失敗作だったのかも知れません。コントロールは完璧だったのに、転移中に年代の設定がバグで狂って、おじいさん達が居る時間より前の時代に二人揃って飛んでしまったんです」



・・・・・・よし、ここはいい。とにかく、二人とも過去に飛んで、はぐれなかったって事が大事なんだから。

それがどうして現状に繋がるかを聞かなくちゃいけない。



「リース、それってどれくらい前なの?」

「・・・・・・幕末の京都です」

「幕末の京都っ!?」





さて、幕末というものについて説明しておかなければならないだろう。江戸時代の末期、江戸(今の東京)に黒船が来襲。それに乗っていたペリー提督が開国を迫った事がきっかけ。年代で言えば、黒船来航(1853年)から戊辰戦争(1869年)までを指す。

その時、日本・・・・・・江戸幕府は、鎖国という政策を取っていた。これは、簡単に言えば諸外国との貿易や交流を遮断するというものである(当時の長崎などの出島はその限りではない)。

ペリー提督が迫った開国というのは、ようするにその鎖国を解除して、自分達も含めた外国との貿易や交流をどこでも行えるようにしろというものである。幕末は、そこから数年に渡って起きた日本を真っ二つに割った騒乱の時代と言っていい。




・・・・・・あ、結構簡単に説明してるから、細かいところは自分で調べてね?





「しかし、寄りにも寄ってその時幕末の京都に行くなんて・・・・・・なんつう厄介な」



こりゃ、下手をすると助けるのかなり厄介になるぞ。あの時代の京都は・・・・・・地獄もいいところだから。



「それでリース、その後はどうしたの?」

「・・・・・・京都に着いてから、また術式を使おうとしたんです」



ここは聞くまでもない。今度はその時代から未来・・・・・・自分達の今に近づこうとしたんだ。



「そうしたら・・・・・・妙な人達に襲われて」

「妙な人達? その当時の人間でしょうか」





それならありえる。さっきも言ったけど、幕末の京都なんて危険地帯もいいところだから。



ただ、そこも違うらしい。





「違うんです」





リースがまた首を横に振ったから。



そして、涙が今にも零れ落ちそうなくらいに、瞳に溜まる。





「・・・・・・よく分からないんですけど、イマジンと似た感じの怪物を連れた男の人が二人と、それに・・・・・・尻尾が9本ある女の人に襲われたんです」

「はぁっ!?」




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第34話 『飛び込むは新時代』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・リースの話を纏めるとこうだ。そいつらにかえでは結界を張った上で応戦。だけど、負けそうになったらしい。





それで、かえでは自分と同じように古代ベルカ式に精通しているリース一人に例の術式を使用させて、そこから逃がした。

未来・・・・・・自分達の時間にたどり着けるように。そうして、この時代で何かが起きていると知らせるために。

術式の設定がバグったのは、自分とリースの二人で飛んだせいかも知れないと考えたのかも知れない。



ただ・・・・・・なんつうか、やっぱ無謀だよ。

いや、そうしなかったらリースもそのままって可能性もあったと考えたからだとは思うけどさ。

で、結果リースはここに来たというわけである。










「じゃあ、そのかえでって人、大ピンチじゃんっ!!」



あむが驚きの声を上げる。というか、僕達も驚いている。

普通に話がデカくなったから。というか、これで52話まで行くんじゃないかとちょっと怖い。



「正体不明の敵・・・・・・でも、どうしてかえでさんとリースを襲ったんだろ」

「もしかして、二人が未来から来たって分かったからなのかな。それで、術式を手に入れて・・・・・・」

「でもでも、それは魔導師の魔法ですから、普通の人は使えないはずですよぉ? あむちゃんが恭文さん達の魔法を使えないのと同じですぅ」





確かにそうなんだよなぁ。まぁ、どっちにしろ幕末でなんかきな臭い事が起こってるのは間違いない。行き先はこれで決まった。



だけど・・・・・・寄りにも寄って京都だなんて。まずい、下手な行動は絶対にまずい。





「・・・・・・恭文、そうなの?」



あ、なんかあむが疑問顔。・・・・・・てか、待て待て。歴史の授業で習ってないんかい。



「ごめんヤスフミ、正直私もそんなに詳しくないの」

「実は私もです」

「あははは、ごめん。私もさっぱり」



ディードやスバルはともかく、地球で長年暮らしてたはずのフェイトまで・・・・・・。中学で教わってなかったんだろうか。



「フェイト、やっぱり高校行っておくべきだったって。これ、日本で暮らしてるなら、ある意味常識よ?」

「そ、そうなのっ!?」



僕は全力全開で頷いた。それに、あむとフェイトが驚く。なお、良太郎さんやハナさんは・・・・・・大丈夫。

うん、さすがは常識人。ちゃんと知っているのがありがたい。てゆうか、もしかしてこれは説明する必要・・・・・・ある?



「いい? 幕末は簡単に言えば佐幕派(当時の幕府の権威や存在を守ろうとする派閥)と討幕派(幕府を倒し、新しい時代を築こうとする派閥)に分かれてたの」





なお、これは本当に簡単に言った。実際はその中にも攘夷派(日本文化を守るため、外国との交流を制限すべきという派閥)や開国派(日本の発展のために海外の文化を積極的に取り入れるべきという派閥)なんてのもある。

その他にも、尊王論とか新撰組とか寺田屋事件、鳥羽・伏見の戦いやエトセトラエトセトラエトセトラエトセトラ・・・・・・・・・・・・。

もう用語や主要な出来事を抜き出して説明するだけで、1話分の分量使うんじゃないかってくらいに幕末は複雑なのだ。



なので、ここでは簡単に説明するので、ウィキとか見てね?





「佐幕派は、開国する鎖国を続けるに関わらず、幕府ありきなのは変えない。そして、討幕派は日本の発展のためには幕府やそれまでの体制は邪魔だと考えてた」

「恭文さん、それはどうしてですかぁ?」

「黒船の来訪が原因なんだよ。当時、日本はこの出来事で衝撃を受けた人がたくさん出てきた。
そしてその人達の大半が、現状の日本の体制や国力に疑問を持ったの。それが討幕派」





討幕派が疑問をもったのには理由がある。黒船というのは、海外で製造された戦艦。それも、当時の日本では作られない規模の代物。

それを見て、誰もが痛感したのだ。日本という国は、諸外国に比べて発展が遅れてると。

それだけじゃなく、徳川家康が天下を平定してから200年以上に渡っての平安で、日本という国は腑抜け切っているとも思った。



だって、黒船が港に停泊もせずに、ただ陸地から多少離れた場所に碇を下ろして、開国を迫る条文を渡すためにその場に留まっただけで、日本がひっくり返るような騒ぎになったんだから。





「そんな大騒動に発展してしまった根源はなにかと考えて、行き当たったのは・・・・・・」

「あ、ボク分かった。それまでの鎖国政策だね。もっと言うと、それをずっと続けていた幕府」

「だから、幕府を倒そうとしたってこと?」





ミキとあむの言うとおりだ。そのため、日本は大きく分けると討幕派と佐幕派という二つの派閥に二分された。



まぁ、そこに長州藩やら薩摩藩やら色々絡んでくるんだけど、ここは省く。





「そして、その当時・・・・・・佐幕派と討幕派の志士達が毎日のように殺し合いをしていた場所がある。それが・・・・・・幕末の京都だよ」

≪当時の京都は、日本の首都・・・・・・今で言うところの東京なんですよ≫



これは、幕末よりずっと前からだね。なお、東京の由来は『東の京』になる。



「え、でもそうすると江戸とかどうなるのかな。だって、将軍様とか居たんでしょ?」

≪江戸はあくまでも政治の中心地としての役割でした。首都とは違います。あとあむさん、天皇は分かります?≫

「うん、それはなんとか。テレビに出てるし」

≪当時の天皇も、京都に居たんです。その関係で、討幕派は京都に集結して、幕府を倒す・・・・・・違いますね。日本をひっくり返すための行動を取っていました。
そして、それは幕府から見ればテロリストも同じです。佐幕派は当然のようにそれを守ろうとします。結果・・・・・・血を血で洗う抗争が数年に渡って続いたんです≫





当時は、京都に色んな幕末志士が集まった。討幕派・開国派で言えば、坂本竜馬や桂小五郎、西郷隆盛。

あの新撰組も京都の治安維持のための組織なんだから、当然のように近藤勇、土方歳三に沖田総司、斉藤一も居た。

たくさんの人達が、形は違うけど日本の未来を、そこに住む人達の今を憂い、自分なりの理想を掲げて、日夜戦った。



・・・・・・結果、たくさんの人間も死んだ。それが、幕末の京都という地である。





「・・・・・・ヤスフミ、そこにかえでが取り残されてるのって、かなり危険なんじゃ」

「だからそう言ってるじゃないのさ。例えその連中から逃げおおせてたとしても、討幕派と見られれば、多分当時の京都の奉行所や新撰組に狙われる。
逆に佐幕派と見られれば、京都に潜伏してる志士連中に狙われる。話しても、多分分かってくれないだろうね。早急になんとかしないとまずい」

「それどうしようもないじゃんっ! てゆうか、話して分からないって信じられないっ!! それってアリなのっ!?」

「アリだよ。てゆうか、そういうご時世だったんだよ。今と同じと考える方が間違ってる」





・・・・・・ちなみに、海里は凄まじく詳しかった。まだ海里がイースターのスパイだって知らなかった頃かな。帰り道でそういう話になって、盛り上がった。

宮本武蔵も好きだけど、維新志士・・・・・・特に土方歳三が好きらしい。土方歳三は、戦術の鬼才であり新撰組の鬼の副長。同志を次々と亡くしながらも、最後まで新撰組副長として戦い抜いた男。

結果は時代の流れに押し潰された形になったけど、それでもすごい人物なのは変わらない。自分もガーディアンのJ(ジャックス)チェアとして、見習っていきたいと目を輝かせながら話していた。



なお、僕も好き。僕の使う平突きも、元々は土方歳三が考案したものらしいし。





「でも恭文、なんつうか・・・・・・自分めっちゃ楽しそうに話すなぁ」

「そうですか?」

「金ちゃんの言うとおりだよ。目を輝かせながら話してたもの」



・・・・・・フェイトとディードを見る。二人も頷く。というか、リュウタにハナさん、モモタロスさんに良太郎さんにオーナーも。そして、あむとキャンディーズも。

うーん、やっぱり幕末の逸話が好きだからかな。というか、男として憧れる。



「とにかくヤスフミ、その京都に早く行かないと」

「そうだね。・・・・・・リース、詳しい年代って分かる?」

「あ、はい。術式のデータを見れば多分・・・・・・今出します」



僕達の目の前に画面が開く。・・・・・・やっぱり普段僕達が普段使ってる術式と全然違う。もうさっぱりだし。



「えっと、ここです。この数字」



リースが指を指す。画面の左下の方に・・・・・・あ、ホントだ。ちゃんと載ってる。



「リース、この数字はバグってないんだよね」

「はい。飛んだ直後にかえでちゃんと一緒に場所と年代の調査を行いましたから、間違いありません」

≪そこがちゃんと分かったのは奇跡ですね。しかし・・・・・・≫



あー、そうだね。ちょっとおかしいね。



≪お姉様、主様もどうしたの? なんだか、難しい顔してるの≫

「いや、ちょっとね・・・・・・」



えっと、もう一回年代を見直してみよう。

18・・・・・・やっぱりだ。



「リース」

「はい?」

「本当にこの年代で間違いないの?」

「はい」



・・・・・・・・・・・・よし。



「リース」

「はい?」

「これ、幕末じゃない」

「はい。・・・・・・え?」



えー、結論から言おう。出ていた数字は『1879』。これは明治の11年。幕府が無くなり、明治政府と呼ばれる組織により国が運営されるようになってから10年以上経ってる。

つまり・・・・・・あれかな? もしかして、僕のさっきまでの杞憂とかそういうの、全部無駄だったのかな。



「ヤスフミ、幕末じゃないということは、危なくないの?」

「とりあえず、フェイトの金髪とルビー色の瞳を隠せば問題はないはずだよ」



あむの髪はピンクだけど、問題はない。・・・・・・ツッコまないでね? この髪の色はアニメ的な要素なんだから。



「どうしてっ!?」

「簡単だよ。その当時でその髪と目は、色々目立つのよ。まだ外国人に対して差別意識を持つ人も多いしさ」





明治11年とすると・・・・・・まだまだ維新直後で戦乱が続いてたりしたしなぁ。この辺り気をつけないといけない。



人によっては、明治という時代そのものに不満を持っているし、外国文化・・・・・・外国人を嫌う人間も居る。





「分かった。じゃあ、変身魔法で色は変えておく」

「お願い。というか、ごめん」



うー、フェイトの髪綺麗なのに。なんかもったいない。



「ううん、大丈夫だよ」

「・・・・・・・恭文さん、私は大丈夫ですか?」



不安げに聞いてきたのはディード。僕は、ディードの方を見ながら、力強く頷く。



「ディードは大丈夫だよ。栗色なんだし。ただし、目は変えた方がいいけど・・・・・・自分じゃ無理だよね」

「はい」



ディードは戦闘機人。だけど、スバルやギンガさんみたいに魔法の術式を使えるタイプじゃない。

僕かフェイトが変身魔法をかけるって方法もあるけど・・・・・・まぁ、ここはいいか。目だけならピンポイントだし、さほど労力はかからない。



「あとで僕かフェイトがかけてあげるよ。でも、基本そのままで大丈夫だから」

「なら、よかったです」





とにかく、幕末よりは安心だけど、油断はしてはいけない。



確かに幕末から10年経ってる。でも、まだ10年なのだ。人・・・・・・国が本当に変わっていくには、あんまりに時間が足りない。





「ご、ごめんなさい。かえでちゃんが『幕末だー!!』とか『新撰組だー!!』って騒いでたので、それで・・・・・・」

「あぁ、いいよいいよ。リースはミッド生まれなんだし、分からないよね。・・・・・・新撰組に会えるかなって思ってたのに」

「ヤスフミ、何気に期待してたのっ!?」

「あぁ、ごめんなさいごめんなさいっ! 本当にごめんなさいっ!!」



なんか胸の中にぽっかりと穴が開いたような感覚を覚えつつ、電車は進む。

なんだろう、さっきまで楽しかったのに、テンション下がって来ちゃった。



「でも恭文」

「うん、あむどうした?」

「このリースって子がここに来たのは、その時間移動の魔法を自分で使ったせいみたいだし・・・・・・これが唯世くんの事と関係あるのかな」





不安げにそう僕に聞いてきた。キャンディーズも同じ顔。

フェイトとディードが、その言葉に顔を見合わせる。

確かに・・・・・・そうなんだよね。幕末の事で頭が一杯で、唯世の事全然考えてなかった。



うーん・・・・・・。





「正直、分かんない」

「ちょっとっ!?」



そんな怒った顔はやめて欲しい。可愛い顔が台無しなんだから。

というか、僕がこう言う気持ちも分かって欲しい。



「ただ、関連性がないと決め付けるには、あんまりに情報が少なすぎる」

≪主様の言うとおりなの。あむちゃん、焦るのはよくないの。まだ、ジガン達の目の前にあるピースは少ないし、これだけで結論は出せないの≫



かえでとリースを襲った連中の行動がキッカケかも知れないし、そうじゃないかも知れない。別の要因が絡んでこうなったのかも知れない。



「僕達に分かった事は三つ。一つ目は時間の歪みが確実に発生していること。二つ目は明治11年の京都で何かが起こっているということ。
そして三つ目は、どんな形であれ唯世が時間の歪みに巻き込まれているという事。これだけだもの。これだけじゃあどうしようもない」

「その時間の歪みの原因が、明治11年の京都に居るかえでさんやリースさんを襲った人達かどうかも分かってないんですよねぇ。もしくは、歪みが実は二つ有るという可能性も・・・・・・」

「それはありえるね。良太郎さんと恭文にフェイトさん、なのはさんが小さくなった時にはまさしくそれだったから」



あー、そう言えばそうだった。僕達が来る前に、良太郎さん達は色々大変だったらしい。良太郎さんが小さくなって、その原因と思われる時間の歪みの一つに対処。

それで解決したと思ったら、実は全然別なのが原因で、それが分かった直後に僕達が来て、結果僕達も小さくなって・・・・・・って。



「そうだよね、関連性どころか唯世くんが居なくなっちゃったそもそもの原因も、実際のところはあたし達は何も分かってないんだよね。うー、どうすればいいのこれー」

「大丈夫だよ」



そう力強く、優しく言ったのはフェイト。その言葉はあむに対して。

あむは、その言葉に驚いたように目を見開いて、フェイトを見る。



「あむ、どちらにしろターミナルで情報をもうちょっと仕入れないと、ちゃんとした判断は無理だよ。ただ、不安にはならないで欲しいな。絶対にこのままにはしない」

「かえでさんの件と唯世さんの件が別扱いだったとしても、私もフェイトさんも、もちろん恭文さんも解決に尽力します。唯世さんもそうですし、かえでさんも絶対に助けます」

「フェイトさん、ディードさんも・・・・・・あの、ありがとうございます」

「私もありがとうございます。うぅ、かえでちゃんの無茶のためにご迷惑をおかけして・・・・・・」



とりあえず、ハンカチを出す。出して、ぽろぽろ泣き始めたリースの頬を吹く。

小さいから、傷つけないように優しく、そっと。



「あー、もう。泣く必要ないから。・・・・・・大丈夫だから。ね?」

「は、はい」

「どうせ未来に帰った後に死ぬほど怒られるんだし」

「それは全然大丈夫じゃないですよねっ!?」



さて、話はまとまった。・・・・・・ところで、いつターミナルには着くんだろ。



「あ、もうすぐですよ。・・・・・・ほら、見えてきました」



ナオミさんのその言葉に、僕達は食堂車の窓から前方を見る。・・・・・・マジでテレビ通りだ。



「久しぶりですねぇ。今回は時間が無いようですし、駅長と対決出来ないのは残念です」

「オーナー、時間があったらやるつもりだったんですか」

「もちろんです」



もちろんなんかい。いや、分かってたけど。

窓から見える光景は、赤い電車の乗り入れ口がいくつもある。砂の中の世界で、それは少し異様で・・・・・・というか、でかい。



「恭文、あれが・・・・・・」

「うん、ターミナル。時の電車が旅の途中で立ち寄る駅だよ」










・・・・・・なんか分かると嬉しいんだけど。





とにかく、デンライナーはターミナルに停車。僕達はそのままターミナルに降り立った。










「・・・・・・なんか、ホントに駅なんだね」

「そうですね・・・・・・」



あむとディードがびっくりしてる。それはもう見事に。



「あ、ディードさんも初めてなんですか?」

「はい。実は、デンライナーに乗ったのも初めてだったんです。私はずっとミッドの施設に居ましたから」

「あ、なら一緒ですね」

「そうなりますね」



僕とフェイト、それにスバルは、いつぞやの鬼退治の時に横馬とヴィヴィオと一緒に来たことがあるんだけど・・・・・・うーん、この空気いいなぁ。



「しっかし、久しぶりやなぁ」

「そうだね。ただ、のんびり観光というわけにはいかないのが辛いところだけど」

「まぁ、いいじゃねぇか。パパっと用事済ませちまおうぜ?」



状況が状況だからあんまり表には出せないけど、やっぱりワクワクしてきてしまう。

だって、ここはある意味異世界で、普段知っている領域とは違う場所で・・・・・・。



「恭文君、楽しそうだね」

「・・・・・・分かります?」

「分かるわよ。もうさっきから実はウキウキしてるなーって、良太郎だけじゃなくてモモ達や私も思ってたもの」



どうやら、デンライナー組には見抜かれてるらしい。なんか視線が生暖かいもの。



「あははは・・・・・・なんというかすみません。状況がコレなのに」

「構いませんよ。というより、私はとてもすばらしい事だと、思いますがねぇ」

「そうですか?」

「はい。そこは、ディードさんが言われた通りです。未知なるもの、見知らぬものを恐れることなく触れて、知って、受け入れていく心。それはあなたの強さの一つでしょう」



な、なんというか・・・・・・この人オーナーに誉められるとくすぐったいなぁ。

それはフェイトも同じかな。『仕方ないなぁ』と思いつつも、ニコニコしてる感じがする。うぅ、やっぱりくすぐったいよ。



「それでオーナー。あたし達、これからどこへ行くんですか?」

「まずは駅長室ですね」

「ということはぁ、ターミナルここの駅長さんに会うんですかぁ?」

「そうです」










ということで、オーナーの先導で僕達はターミナルの中へと歩を進める。





・・・・・・唯世、必ず助けるから。少しの間待っててよ?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・はーい、どうも〜」





左手でかぶっていた帽子取って、お辞儀してきたのは、白い制服姿をしている男性。



ただし、非常にツッコみたいところが一つ。





「駅長、お久しぶりですね」

「はいー。オーナーもお久しぶりです」





そう、この人こそが駅長。駅長は左手に取った帽子をくるりと回転させながら脇に抱えて、右手を伸ばす。



そしてオーナーは、その右手を取り、硬い握手。





「・・・・・・なんつうか、相変わらずそっくりだよな」



なお、オーナーと制服以外は顔も体型も声もそっくり。ここが僕のツッコみたいところである。



「ホントだよねー。でもでも、兄弟とか双子とかそういうのじゃないんだよね」

「そうなのっ!?」

「おう。なんか」

『他人の空似です』



こちらに二人が顔をグイっと向けて、ハモりながらそう言って来た。



「・・・・・・らしいぜ?」



それに、あむがちょっと後ずさりする。



「そ、そうなんですか」

「そうなんですよ〜。日奈森あむさん」



駅長がニコニコしながらそう言ったのに、僕達はビックリする。



「へ? あ、あの・・・・・・あたしの名前」

「はい。そうですね」

「いや、そういうことじゃなくて」



あむが驚くのも当然。

だって、あむと駅長は初対面なはずだから。



「・・・・・・あの駅長、あむちゃんのこと知ってるんですか?」

「はい。エンブリオは時の運行にも影響を及ぼす可能性がありますから、一応関係者の名前だけは」



・・・・・・あぁ、だからか。納得したよ。どんな願いも叶えるたまごなら、時間をどうにでも出来てもおかしくないだろうし。



「それで、今日みなさん揃ってここに来たのは、現在発生している時間の歪みに関してですね?」

「そうです。・・・・・・彼女、日奈森あむさんと恭文くんの同級生がそれに巻き込まれた。ただ、それだけではないようなんです。
明治の11年の京都にイマジンとはまた違う何かを従えている方々が居る・・・・・・らしいんです。なにか、知りませんかね?」

「あぁ、それはきっとモウリョウ団ですねぇ」



答えは、本当にあっさりと出た。僕達がビックリするくらいに。というか、モウリョウ団ってなに?

いや、かえでを襲った連中というのは分かるんだけど。



「最近、時間の中で何かと悪事を働き出した集団です。あ、名前は私の方で勝手につけました。いわゆる魑魅魍魎・・・・・・妖魔の類に近いのが、その理由です。
そうですね、みなさんに分かりやすいように言うと、牙王と同じ感じでしょうか。明日辺り、その事に関して時を走る各列車に警告を出そうと思っていたところです」

「時の中の犯罪者集団というわけですか。では、もしや今回の時間の歪みも」

「その可能性は非常に高いです。実際、今回の歪みはその時代近辺にあります」



とにかく、かえでを助けたかったらそいつらとやりあう覚悟は決めておかないといけないってわけか。

まぁ、ここはいいや。で、僕としては確認しておきたい事がある。



「駅長、歪みは一つだけなんですか? 例えば、唯世が居なくなった事とそのモウリョウ団の悪事とは別件とか」

「そうですねぇ。今のところ観測された歪みは一つだけですし、その可能性は低いと思いますよ?」

「なら、その悪い人達をやっつければ、唯世くんが・・・・・・」

「戻ってくるかも知れませんねぇ」



あむがまた嬉しそうな顔を・・・・・・そんなに心配かい。いや、分かってたけど。

とにかく、収穫はあった。あとは、オーナーだ。



「オーナー、この場合」

「行くしかないでしょう。かえでさんや辺里唯世くんの事を抜きにしても、時の運行を守るためにも、モウリョウ団を放置しておくわけにはいきません。とりあえず、日奈森あむさんをご自宅に送ってから」

「あぁ、それは無理ですね」



駅長がそう言った。いつも通りの明るい顔で。



「駅長、それはいったいどういうことでしょうか」

「彼女を元の時間に帰すのは、今は無理ということです」

『はぁっ!?』



あむを帰せないって・・・・・・どういうことっ!?



「いえ、つい先ほど部下から連絡が来まして、時間の歪みの影響であなた方への時間への道筋までが歪んでしまったんですよ。つまり」

「線路が無くなってるのと同じ。したがって、デンライナーで彼女を帰すのは不可能・・・・・・ですか」

「はい」



あむがその言葉に、顔を青くする。というか、動揺する。



「そ、そんなっ! じゃああたし、マジで帰れないんですかっ!?」

「とりあえず、デンライナーを使っては無理ですねぇ」



あむは立ち尽くす。まさかいきなり家なき子状態になるとは予想してなかったのだろう。

というか、どう声をかけていいか分からない。むちゃくちゃ落ち込み始めた。



「ターミナルの職員が全力で対処してますが、当分は無理です。もしかしたら、皆さんでモウリョウ団を倒して、時間の歪みを解消した方が早いかも知れませんねぇ」



ま、またタイミングの悪い・・・・・・。あ、ということはちょっと待って?



「・・・・・・僕達も帰れないんじゃ」



フェイトとディード、スバルがハッとした顔になる。これはようするに、僕達の時間への道が使えないということ。

つまり・・・・・・まずい。すっごくまずい。



「そう言えばそうだよっ! あぁ、どうしようっ!? 今日のお風呂掃除の当番、私なのにー!!」



そう言って、フェイトがギャグ顔で慌てふためき・・・・・・って、おーいっ!? こんな時に天然モード発動ってどういうことさっ!!



「フェイトさん、気にするところはそこではありません。恭文さん、どうしましょう」

「どうするもなにも・・・・・・やるしかないでしょ」



くそ、すぐ帰るつもりだったからリイン連れてこなかったのは失敗だった。咲耶も同じくだから、僕はユニゾン出来ない。



「ディード、ツインブレイズは」

「はい、持ってきています」



ディードが胸元に手を伸ばして、服の内側に入っていたペンダントの先を取り出す。

首にかかっているペンダントのその先には、二つの柄型のアクセサリー。それがキラリと輝く。



「誰が相手であろうと、決して足手まといにはなりません」

「そっか。てか・・・・・・ごめんね、いきなりこれで」

「いえ、大丈夫です。だって、私はあなたの妹ですから」



そう言って、安心させるように微笑んでくれる。それで、少し気持ちが楽になる。

あー、それとあの子にもだ。ちゃんと言っておかないと。



「ジガン」

≪分かってるの。ジガンは、主様とお姉様を守る強くて堅い、大きな盾なの。今が主様にとって戦うべき時なら、ありったけでその意義を通すの。
ジガン、Mモードはちょっと封印で真剣モードで頑張るから、遠慮なく頼って欲しいの≫

「そっか。・・・・・・なら、頼らせてもらうね。ありがと」

≪はいなの♪≫



だけど、戦力としては十分だと思う。フェイトもディード、スバルも居る。良太郎さんにモモタロスさん達も居る。・・・・・・油断せずに、慎重に・・・・・・だね。



「あむ、悪いけど家に帰るのは当分先。最後まで付き合ってもらうよ」



だけど、あむは落ち込むばかり。・・・・・・どうしようかこれ、僕が巻き込んだのと同じだから、あんま言えない。



「分かった」



一言そう言って、顔を上げる。



「唯世くん取り戻すって決めたんだから、最後までやる。てゆうか、元々そのつもりだったんだし、よく考えたら問題ないじゃん。
そのモウリョウ団って悪い人達をぶっ飛ばせば、なんとかなるんでしょ? 最悪、うちには帰れる。だったら、あたしやるよ」

「そっか」



安心した。いや、どうなるかなとか思ったんだけど・・・・・・やっぱこの子は強いわ。



「そう言えば、確認していませんでしたね? 良太郎くん、また戦うことになりますが、大丈夫ですか?」



オーナー、呼んでおいて今更それはないでしょ。というか、返事は決まってるだろうし。



「大丈夫です」



そう、良太郎さんはこう口にする。真っ直ぐに、オーナーの視線を受け止めながらだ。



「その人達をなんとかしないと、唯世君も戻ってこない感じらしいですし、あむちゃんも恭文君も、僕も家には帰れないのに、放ってはおけないです。・・・・・・みんなも、それでいい?」



良太郎さんは振り返り、自分の後ろに居たモモタロスさん達を見る。四人は、力強く頷いた。



「当然だろうがっ! へへ、久しぶりに派手に暴れるぜー!!」

「まぁ、可愛い女の子の危機を見逃すようじゃあ、釣り師としては失格だしね。ここは頑張りますか」

「良太郎が行くっちゅうんなら、俺は着いて行くだけや。心配いらん」

「というかというか、恭文の友達の危機だもん。やらなくてどうするのさ。僕、頑張っちゃうよ?」



リュウタ・・・・・・なんというか、やっぱりありがたい。

うぅ、みんないい人だよー! そしてリュウタはいい子だよー!!



「スバルもそれでいい?」



僕は、スバルに視線を向ける。そして、良太郎さんもだ。

なぜだろう、良太郎さんがすごく心配そうな顔になるのがなぜか気になる。



「いいもなにも、やるしかないでしょ?」

「あのね、スバルちゃん。もしなんだったら、スバルちゃんは下がってても」

「大丈夫です、休暇はしっかり取ってますから。それに・・・・・・良太郎さんがまた戦うのに、見てるだけなんて出来ないですよ」



ニッコリ笑うのは、皆様ご存知我らが豆芝。



「私も、戦います。良太郎さんと一緒に。誰でもない、私がやらなきゃいけないことだって思うから。だから、大丈夫です」

「・・・・・・そっか。スバルちゃん、あの・・・・・・ありがと」

「はい」



というか、なんか空気が甘い。すっごく甘い。砂糖だ。砂糖が分泌されてる。

つーか、このカップリングはなんだかんだで成立ですか? 僕はビックリなんですけど。



「なんというか・・・・・・ヤスフミ、甘いね」

「そうだね、すごく甘いね。僕達負けてるよね」

「うん」



瞬間、みんなの僕達を見る目が非常に微妙なものに変わった。

なんというか、温度すら変わった感じがするのは、なぜだろう。



「・・・・・・なぁ、ガキンチョとデンデン虫。青坊主と金髪姉ちゃんは相変わらず自覚ねぇのか?」

「ありません。フェイトお嬢様はともかく、恭文さんまでが無自覚なんです」

「なんというか、ここさえなければ・・・・・・って、あたしはガキンチョじゃないからっ! ちゃんと『日奈森あむ』って名前があるのっ!!」

「お、そっかそっか。悪い悪い。・・・・・・あんみつだっけか?」

「あむっ!!」



まぁ、ここはいい。コミュニケーションが取れていて、いいことだと思う。

しかし、関係は継続中か。というか、スバル楽しそうだなぁ。初めて会った時と比べると、なんか綺麗になったとも思うし。



「恋をすると、人は素敵になっていくって言うしねー。でも恭文、スバルさんと良太郎さんって・・・・・・本当にそうなの?」



ミキが小さく僕に近づいて聞いてきた。



「まさかテレビの中のヒーローとそうなってるとは・・・・・・」

「スバルさん、すごいですぅ」



というか、ランとスゥもだ。近づきながら、興味深げに甘い空気を出しまくる二人を見る。

そして、それを見て思う。僕とフェイト・・・・・・やっぱり負けてる。こんなの出来ないもん。



「・・・・・・本当に自覚がないんだね」

「ミキ、何か言った?」

「ううん、なんにも。でもさ、実際のところはどうなの? その辺り友達なんだし、詳しいよね」

「うーん、どうだろう。友達以上恋人未満ってやつ?」



なんか初々しく談笑し始めた二人を見つつ、僕は小声で話す。

というか、固有結界作ってやがる。あれだよ、『無限の糖製』だよ。アンリミテッド・シュガー・ワークスだよ。



「だから、それは恭文にだけは言われたくないって」

「なんでよ。・・・・・・あぁ、そうだミキ。あとあむも」

「なに?」

「ちょっと来て」



とりあえず、ミキとあむを引き連れつつ、ついでにランとスゥも引き連れつつ、ちょっと移動。みんなに断ってから、駅長室から出る。

出て・・・・・・周りを確かめた上で、会話開始。



「場合によってはミキとのアレキャラなり、お願いしたいの」



ミキが、僕の前にプカプカと浮かびながら驚きの表情を浮かべる。というか、あむとランとスゥも同じく。



「それは別にかまわないけど・・・・・・どうして?」

「ミキの言う通りだよ。別に今回は×たま絡みの事件とかじゃないよね」

「リインや咲耶が居ないから、変身ユニゾンは出来ない」



その一言で、四人は納得してくれたらしい。



「恭文、アンタまさか」

「そうだよ。だからあむにも聞いてもらってる」



だって、全員考え込むような顔になったから。



「その代わりにミキとキャラなりってこと? でもでも、電王になれる良太郎さんも居るし、モモタロスさん達にフェイトさん達も居るのに」

「そうですよぉ。みなさん居るんですし、大丈夫じゃないですかぁ?」

「大丈夫じゃないかも知れない。・・・・・・例のモウリョウ団がどんだけ戦力あるか分からない」





とりあえず、リースの話だとイマジンに系統が割合近い雑魚敵に、男が二人。そして、九本の尻尾の女。

情報はこれだけではある。戦力として見るなら、少ない方だろう。ただ、これだけじゃない可能性は、考えておかないといけない。

もしかしたら、僕達だけで相手は非常に危険という場合もある。口には出さないけど、フェイトやディード、スバルに良太郎さんもその辺り考えているはず。



そんな時に僕が奥の手の変身ユニゾンが使えないのは、ちょっと痛い。





「確かにボクとのキャラなりアルカイックブレードは強力だけど・・・・・・うーん」

「もし出来るようなら、力を貸して欲しいんだ。・・・・・・大丈夫、かな?」

「いつもの×たま相手とのバトルとは違ってくるよね」



僕は頷く。間違いなく違ってくる。本当なら頼みたくはないんだけど、万が一には備えておきたい。



「どちらかと言えば、魔導師同士の戦いに近い」

「そうだね」



ミキが考え込むように腕を組む。そして、うなる。・・・・・・やっぱまずいよなぁ。

我ながら言っててアレだったもの。キャラなりでガチな戦闘したいなんてさ。



「分かった」

「いいの?」

「うん」



いつものおすまし顔で、ミキが頷く。



「恭文が『なりたい自分』を忘れないことが条件だけどね。・・・・・・ただ戦うためじゃない、ただ壊すだけじゃない。そうしてでも守りたいものがある。
戦って、守りたいもの全部を守る。そんな『魔法使い』になりたいって気持ち、絶対忘れないこと。じゃなきゃ、ボクは力を貸さない」

「・・・・・・うん、忘れないよ。ミキや皆のおかげでちゃんと受け入れられるようになった気持ちだもの。忘れたりなんてしない」

「なら、いいよ」



そう言って、ミキがウィンク。それに・・・・・・ホッとする。

というか、感謝だ。ひたすらに感謝だ。



「ちょっとミキっ!? あたしまだ考えてる途中だったんだけどっ!!」

「あー、ごめんねあむちゃん。でも、恭文の言うことも分かるからさ」

「いや、『分かるからさ』って・・・・・・。恭文、ミキはあたしのしゅごキャラなわけだよ」



・・・・・・うん、知ってる。そんな睨み気味に言わなくても知ってる。



「正直、危険な事させたくないし、戦う道具みたいに使って欲しくない」



うん、分かってる。だから、あむにも話してるわけだし。ここであむを無視とかは無かったから。




「だから、絶対に怪我とかさせないように。ミキのこと、ミキとした約束、ちゃーんと守るように。で、アンタ自身も怪我とかしないように。いい?」

「・・・・・・へ?」



少し固まって、ポカーンとバカみたいに口を開けてしまう。

数瞬、あむが腕を組み、そっぽを向きながら言っている事の意味が分からなかった。



「・・・・・・だから、いいって言ってんの。なにバカみたいな顔してんの」

「誰がバカみたいな顔だってっ!? ・・・・・・というか、いいの?」

「いいの。ミキはやる気だし、恭文がミキを戦う道具にするような奴じゃないって知ってるもん。てゆうか、あたしは多分、後ろでヤキモキしながら見てるだけになりそうだしさ」



自嘲するように、あむは笑う。それを見て、少し胸が痛む。

確かに、あむは×たま浄化はともかく、ガチな戦闘はちょっとダメだし・・・・・・そうなるか。



「恭文があたしのしゅごキャラミキの力が必要だって言うなら、唯世くんやかえでさんを早く取り戻す手伝いが出来るなら、協力したいんだ。
あ、ただし・・・・・・さっきあたしが言った事をちゃんと守ってくれるのが条件だよ? そうじゃないなら、ミキとのキャラなりは許せない。それだけ、約束して欲しい。出来る?」



僕の目を見ながら言ったあむの言葉に、頷く。約束すると、思いを込めて僕もあむを見る。



「約束する。あむ、ありがと。・・・・・・あー、でも僕の怪我は保証出来ないかも」



なんだかんだで、こういう時は大体傷を負うからなぁ。軽傷が多いけど、そうじゃない場合もあったり。



「だめ。そこもちゃんと約束してくれなきゃ、あたしは協力しないよ?」

「・・・・・・かすり傷もだめ?」

「だめ」



それはいくらなんでも条件が厳しいと思う。ノーダメクリアなんて、ゲームでも難易度ベリーベリーハードよ? 現実なら更に高い。

僕は、両手を合わせて拝むようにしながら、更に言葉を続ける。なんとか難易度を下げてもらうために。



「リメイクハニーで治すのもだめ?」

「だーめ」

「そんなー」



それはマジで難易度高いってー。ミキを怪我させるつもりはないけど、やっぱ高いってー。



「てゆうか、恭文はあたしより強いんだからなんとかしなさい。うん、全力全開で」

「それは魔王みたいだから嫌だ」

「なにそれっ!?」





・・・・・・とにもかくにも、こうして僕達は明治11年の京都に向かう事になった。



しかし、マジで何が起こってんの? てゆうか、恭太郎達心配するよなぁ。さすがにいきなりだし。





「・・・・・・あ、ヤスフミ、あむっ! 早く来てっ!!」

「フェイト、どうしたの?」

「いいからっ!!」



とにかく、あむと顔を見合わせつつ僕達はもう一度駅長室に入る。入ると、全員が駅長室の中のデスクに集まり、なんか声をあげてる。

・・・・・・一体どうした?



「恭文君、あむちゃんもこっちに。・・・・・・ついさっきね、ターミナルの駅員の人が、これを送ってくれたんだ」



良太郎さんが脇を空けて、僕達を招き入れる。で、見てみるとそこには一枚の用紙。

・・・・・・これ、新聞?



「でもでも、これ読めないよー。文字が逆だし」

「ラン、昔の日本では文字は左からじゃなくて、右から読んでたんだよ。・・・・・・これ、明治11年って書いてるよね。あ、もしかして」

「かえでさんが居る時代ですかぁっ!?」



とにかく、僕もあむも新聞の内容に目を通す。・・・・・・なになに?

京都・・・・・・大火・・・・・・街の大半・・・・・・。



「京都の町が大火災で消失っ!? なによこれっ!!」

「死傷者もたくさん出て・・・・・・って書いてるよね。というか駅長、これなんですか?」

「見ての通り、京都大火と呼ばれる火災・・・・・・いえ、災害を知らせる記事です。ただし、この日にこんな出来事が起きたなどという事実は、歴史上には存在しません」





確かに、僕も聞いた事がない。とにかく、記事を読む。読みつつ、寒気が襲ってきた。だけど、文字を追う速度は緩められない。ありえない史実が、そこに存在しているから。

・・・・・・火災の原因は不明。一説には甲鉄艦(当時の軍用の戦艦)による襲撃とも、元維新志士による寺田屋事件で新撰組に潰された京都の焼き討ち計画を実行したとも言われてる。

そして、死亡者・行方不明者の名前がずらーっと載ってる。一人や二人とかじゃない。数十人・・・・・・ううん、100人単位がそこにある。



そこに何気なく目をやると・・・・・・ある名前が目を引いた。





「あむ、これ」



僕はそれに指を指す。すると、あむがそこをじーっと見て・・・・・・目を見開いた。



「辺里・・・・・・唯之介」



被害者の中に、僕達のよく知る人間とよく似た名前があった。年は・・・・・・今の唯世と同じくらい。

なぜだろう、それを見てるとなぜか心がざわつく。なんというか、嫌な感じがする。



「あの、もしかしてこれ」

「唯世のご先祖かも知れないね」

≪つまりつまり、唯世くんが主様にあむちゃん達の前で消えちゃったのは・・・・・・≫

「本当の歴史では存在しないこの災害のせい。そして、もしかしたらこの災害を引き起こしたのは・・・・・・モウリョウ団」



そう考えると色々とつじつまが合ってくる。しかし、なんのために京都を火の海に? 目的がさっぱりだし。



「駅長、オーナー、この歴史は・・・・・・もう確定しているんですか?」



新聞から目を離さず、僕は二人に声をかける。そして、数秒の間をおいて、答えは返ってきた。



「いえ、まだ確定はしていません。ただ・・・・・・これからどうなるかはわかりません」

「人の記憶は歴史ですから。その修正がままならなければ、このままです」



やっぱりかい。・・・・・・考えても、意味がない。ここは行動あるのみだ。



「わわわ、なんだかすっごく大変な事になって来たですぅ」

「もうその唯世って子やかえでちゃんだけの話じゃないね。この本来なら存在しない災害のせいで、同じように消えちゃった人や時間が存在しているはずだもの」

「ウラタロス君の言う通りです。このままこの火災の首謀者を放置し続ければ、次はどうなるか分かりません」



・・・・・・どっちにしろ、京都に行くしかない。

僕は、机から身体を離す。そして・・・・・・良太郎さんを見る。



「良太郎さん」

「うん、行こう。迷ってる時間はないよ」

「では、すぐに出発しましょう。駅長、すみませんが我々はこれで」

「はい。では、よい旅を〜」










・・・・・・歪んだ歴史。謎の犯罪者集団。そして、唯世によく似た名前の子。





とりあえず・・・・・・あれだ。京都に全部の答えがある・・・・・・はず。




















(第35話へ続く)





[*前へ][次へ#]

14/35ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!