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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第10話 『知り合い同士でゲームをやるのは、なんであれ楽しい』



前回のあらすじ・・・・・・というか、現状。





ギンガさんに告白されて、抱きつかれて・・・・・・今、ギューってされてます。





・・・・・・・いやいや、おかしくないこれっ!?










「・・・・・・なぎ君」

「あ、あのギンガさん」



やばい。たわわな胸の感触とかギンガさんの温かさとかで、心臓がバクバク言ってる。だけど、落ち着け。落ち着け僕。

これは、ダメ。ダメなんだ。とにかく、ギンガさんの両肩に手をかけて、ゆっくりと、優しく・・・・・・離せない。ギンガさんの方が力強い。



「私じゃ、ダメ・・・・・・かな」



その必死で、ささやくような声に理性が飛びかける。耳元をくすぐる吐息がそれに拍車をかける。

だけど、落ち着け。落ち着け僕。何度も言ってるけど、とにかく落ち着け。



「・・・・・・ギンガさん」

「うん」



とにかく、深呼吸だ。少し呼吸して・・・・・・しながら、自分の気持ちを再確認。

そうだ、僕には・・・・・・ちゃんと居るじゃないのさ。心の中を占めている、大事な女の子が。・・・・・・どういうわけか二人。



「ギンガさんがそう言ってくれたのは、すごく嬉しい。あの、ホントに嬉しい」



それは事実。というか、実際揺らいだし。それもかなり。



「でも、ごめん。ギンガさんとは、そうなれない」



瞬間、ギンガさんの僕を抱きしめる力が弱まった。そして、少し震える。



「・・・・・・フェイト、さん?」

「うん。フェイトと付き合ってるから。フェイトの事が好きだから。だから、ギンガさんとは付き合えない」

「リイン曹長は、どうなるのかな」



う、そこを言われると弱い。確かに、三人体制な感じになってきてるし。



「・・・・・・リインはまた、特別だから」

「そう、だよね。とても強い、切れない絆で繋がってる。・・・・・・私とは、そうなれないかな」



また、力が強まる。それに、決意が揺らぎそうになる。



「第三夫人でも、いいよ? 少しでいい。私との時間・・・・・・考えて欲しい。即答は、やっぱり傷つく。
だめ、なの。なぎ君の事が欲しい。このまま・・・・・・なぎ君だけのものになりたい」










声は、必死に・・・・・・そして、切なげに僕の心に響いた。





だから、僕は・・・・・・。





















魔法少女リリカルなのはStrikerS


とある魔導師と機動六課の日常 Second Season


第10話 『知り合い同士でゲームをやるのは、なんであれ楽しい』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・家に、帰って来た。帰って来て、ベッドに倒れこむ。





疲れた。多分、数年分の勇気を使った。





暗い部屋の中で思い出すのは、数時間前のあの出来事。生まれて初めて、男の子に告白した。





言うだけでいいと思ってたのに、自然と求めてた。第三夫人でもいいから、付き合って欲しいって。・・・・・・私、ずるいな。全然諦め切れなかったんだ。










「・・・・・・なぎ、君」










大事で、大好きで、大切な男の子。それは、今も変わらない。変えたりなんて、出来ない。





・・・・・・どうしよう、泣きたくなってきた。





なぎ君・・・・・・。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あれ、やっさん。今日はログインしないんじゃなかったの?」





家に帰りついて、ログインして、何と無しに一人・・・・・・普通に蜂を狩っている僕に声をかけて来たのはヒロさん。

僕は前日ログアウト・・・・・・落ちる時に、みんなにそう言っておいた。ギンガさんと会う用事があったから。

でも、まぁ・・・・・・なんとなしに。



・・・・・・違うな。





「いえ、やっぱりちょこっとだけでもレベル上げ頑張りたくて」

「そっかそっか。まぁ、始めてすぐだしね、そりゃ当然か。・・・・・・よっとっ!!」



そのまま、二人で蜂を狩る。ひたすらに狩る。・・・・・・本当は、あの告白があったから、このままだと眠れなさそうだったからなんだけど。

ヒロさんは両手に持ったロングソードを振るい、僕は刀を打ち込む。というわけで、ちょっと実験。



「鉄輝・・・・・・!!」



刀身を、青い魔力が包む。そしてそのまま、袈裟にHP満タンなミミズに向かって・・・・・・打ち込んだ。



「一閃っ!!」



青い斬撃がミミズを斬り裂き、ダメージカウンターがその上に出てくる。そして、ミミズのHPは半分近くまで減った。

あとは、そのまま数撃やり取りをして・・・・・・沈黙させた。あ、レベル上がった。



「おめー」

「ありがとうですー」



拍手されたので、お礼を言ってペコリとお辞儀。そのまま、その場に座って回復。



「やっさん、もう攻撃スキル修得してるんだ」

「はい」



そう、今使ったのは攻撃スキルの一つ。MPを消費して、攻撃力を増加させた一撃を敵に打ち込むもの。

いわゆる必殺技? いや、スキル表を見てると新しいのが色々あったので、早く覚えていきたいのだ。



「てゆうか、方向性決まったの?」

「決まりましたさ。氷結系使い目指そうかと」

「・・・・・・また?」

「またですよ」





スキルにより、育てる方向性は多岐に渡る。で、僕が初期から続けているのは、リアルと同じ氷結系の能力使い。



もちろん、ここには理由がある。それも、かなり重大な。





「はやてに『ゲームの中やからって、身長が高いとか、炎とか雷の能力使うとかやめような? 主人公キャラ目指すことないから』って冗談半分に言われた事があるんですよ」

「・・・・・・あぁ、だからいつもそれなんだ。あてつけなんだ」

「えぇ」



自信満々に言い切った。画面の中のヒロさんPCが、なぜかため息を吐くモーションをした。

・・・・・・謎だ。



「ちなみに、はやてちゃんの反応は?」

「何度か謝り倒しましたけど、このままで通してます。だって・・・・・・そっちの方が楽しいでしょ?」

「アンタ、マジでドSだね。容赦なさ過ぎでしょ。・・・・・・あー、そういやさ、やっさん」

「ほい?」



とりあえず、回復したので立ち上がる。うーん、レベル上がったからスキルポイントを割り振ってと・・・・・・お、丁度いい魔法があるな。これを覚えちゃおうっと。



「実はさ、アンタが居ない間におもしろいことが起きてんのよ」

「おもしろいこと?」



とりあえず、覚えた魔法を試しつつ話を聞いた。なんでも、サービス開始記念のイベントが開催中とか。

・・・・・・あ、今ログに乗ったこれか。えっと、クリアしたら賞金が出て、限定アバターパーツが出て・・・・・・また豪勢な。



「で、サリさんもリインもあのジン・・・・・・じゃなかった。シンも」



ジンのPCネーム。まぁ、ゲーム中の会話ではPCネームで呼ぶのが基本なので。



「目の色変えて探しまくってると」

「そうそう。それらしいヒントが出てないのよ。まぁ、何か進展したら私も参加するけどね。で、アンタやる?」

「もちろん。おもしろそうじゃないですか」

「やっぱりか。ただ、覚悟はしておいた方がいいよ?」





とりあえず、もう少し強めの敵として、ファンタジーの敵の王道であるオークに斬りかかる。

身体は緑色で白一色の二つの目。デカイ口にボロボロの布切れで作った服を纏った怪物が、そこに居た。なお、武器は両手槍。

他にも拳だけとか、片手斧とか、そういうタイプも居るのだ。とにかく、槍での攻撃を避けながら僕は斬撃を加え続ける。



そうこうしている間に、ゲームの世界の時刻は夜。造られた世界の中でも、星が見えて来た。

ノンビリと、だけど確実にヒロさんと狩りを進めながらも、話は続く。





「覚悟と言うと?」

「リインちゃんが、アンタと同じパーツ付けてフェイトちゃんと差をつけるって気合い入りまくってるのよ。もうすごいすごい」

「・・・・・・覚悟しておきます」

「うん、そうした方がいい」





ただひたすらに、休憩して敵を倒して休憩して敵を倒してを繰り返す。レベルも10台半ば。ゲームに慣れているおかげとは言え、結構ハイペースな方だと思う。



とにかく、一度狩りを切り上げることにした。理由は簡単。サリさん達がイベントを進めたから。僕達もそこに便乗である。



で、二人で草原を走り、フィールドが街の近くになり、もうすぐだと思いながら走っていると・・・・・・街の近くで、モンスターの列を見た。





「・・・・・・トレインしてるね」

「また楽しそうに」





トレインとは、ネットゲームの用語の一つ。戦闘中に他のモンスターがからんでくる事をリンクと言うのだけど、トレインはそれから逃げている間に、ルート上に居る他のモンスターまでリンクしてしまって、結果的にモンスターの集団に襲われてしまっている状況を言う。



その様子が列を作っている・・・・・・というより、電車のようなので、トレインと言う。つまり、あの先頭に居るPCはピンチなのだ。





「・・・・・・てゆうか、ちょっと待って」

「やっさん、どうした?」





よーく画面を見る。トレインの先頭に居て、オークやらウサギやら蜂やらに追い回されるのは、二人の女性型PC。

一人目は、白いローブにツインテールで小さな女の子。

そして、それに追従するような金色の髪をツインテールにした子。体型は同じ感じで、服装は黒のスーツにマントを羽織ってる。



で、PCネームを見る。



・・・・・・・・・おーいっ!? なにやってんのあの人っ!!





「あぁもうっ!!」

「ちょ、やっさんっ!?」





とりあえず、全力で目の前を通り過ぎようとしてたトレインに迫る。



で、迫りながら・・・・・・叫ぶ。





「そこのPC二人っ! とりあえず一旦止まってっ!! すぐに助けるからっ!!」





その言葉が届いたかどうかは分からないけど、二人は少し走って・・・・・・止まった。

で、僕は即座に行動開始。まず狙うは、オークから。コイツはアクティブと言って、自分から視覚に入ったPCを襲うタイプのモンスター。

で、この中だと1番攻撃力が高い。しかも格闘タイプだから、一度の攻撃で右拳と左拳を叩きつけて、連撃してくる。



なので、パパっと片す。





「氷花・・・・・・!!」



刃に纏うのは、青い氷結の刃。武器に氷属性の魔力を付与した状態での攻撃。当然、さっきのより攻撃力が高い。

なので、金髪ツインテールに殴りかかってるオークを、背後から一刀両断。



「一閃っ!!」



その攻撃により、オークのHPは一気に真っ赤になる。そして、僕に対して殴りかかってくるけど、無駄。

一歩下がって、そのまま右拳での攻撃を回避。左拳の突きを、左に横転して回避。そこからまた一歩踏み込んで、刀で胸元を突く。そうして、終了。



「あ、あのありが」





黒服が、片刃の剣を構えて、殴ろうとする。



なので、当然のように僕はそれを止める。





「お礼も攻撃もいいから、じっとしててっ!!」





お礼を言いつつ殴りかかろうとしていた黒服はともかく、白い服はやっぱり色々分かっているらしい。ちゃんと援護行動を取らずにジッとしてる。



なので、僕は次々と僕に対して攻撃を始めたウサギや蜂に対して応戦。





「で、でもこれは私達のせいですし、やっぱりちゃんとしないとダメです。ということはここで交戦する事は絶対に必要で、やっぱりこのままお任せするというのはそれはきっといけない事で」





だぁぁぁぁぁぁぁぁっ! ナチュラルにいい人過ぎてついでに食い下がって来たっ!? 説明する余裕ないのにー!!





「フェイトちゃんっ! ここで何かしちゃだめだからっ!!」





そうそう、ダメなのよっ!? フェイト・・・・・・って、名前同じなんだ。



なお、ゲーム内でフェイトって結構使われることの多い名前だったりする。ウィハンだけじゃなくて他のゲームでも。・・・・・・そういや、某ネギまでもあったしなぁ。





「そ、そうなのっ!?」

「そうなのっ!!」





うし、白服は空気読めてる。とりあえず、余裕も出てきたし、いい機会だから、これ。





「フリーズ」



左手の人差し指の先には、小さな魔力スフィア。使うのは、ついさっき覚えた氷結系の初級呪文の一つ。なので、詠唱もアッと言う間だった。

それをそのまま、蜂に向かって打ち込む。



「アローっ!!」





放たれた氷の矢は蜂に直撃し、そのまま蜂は氷漬けになる。これはステータス異常の『凍結』。これを喰らうと数秒動けなくなる。

で、その間に他の連中に横薙ぎに刃を打ち込んで、満遍なくダメージを与える。すると、僕に目標を変えてくれた。

敵が密集してる状態でよかった。これなら、一気にやれる。



・・・・・・この手のゲームでは、モンスターはヘイトと呼ばれる変動する数値を持っている。簡単に言えば、攻撃対象となるPCが複数居た場合、一番高いPCを攻撃するのだ。

その数値は、他のPCへの回復や自身への攻撃。あと、魔法の使用なんかで上昇する。初期段階だと、追われていた二人の方がそのヘイトは高かった。

なので、初手でスキルを連発することで、こちら側へのヘイトを高めている。あとは二人が余計な行動をしなければ、このまま僕がやれる。



さっき黒服の子の行動を止めたのは、ここが理由。ここで戦闘に参加されると、普通にまた敵が攻撃を仕掛けてくるのだ。そうなったら、助けられない。僕は今のとこ回復スキル覚えてないんだから。

で、敵も数体居るけど、強さ的には問題ない。もう僕はここのフィールドの敵がリンクしようがトレインしようが、やられるようなレベルじゃない。

さっきまでもう一つ先のフィールドの敵と戦ってたんだから。文字通り、練習相手にもならないのである。



・・・・・・いや、僕だけじゃなくて、もう一人もか。





「はぁっ!!」





雷撃を纏った斬撃が飛ぶ。それは、ヒロさん。攻撃スキル・・・・・・武器に対する魔力付与エンチャント・サンダーを使用しての攻撃。

あー、ようするに、そのスキルを使うと通常の攻撃の他に属性ダメージがプラスされる。もっと簡単に言えば、殴ったり斬ったりした時のダメージが増える。それも一定時間ずっと。

で、ヒロさんはそのエンチャント系の中の雷撃系のスキルを使った上で、普通に斬りかかっていた。てゆうか、いつの間に覚えたんだろ。さっきまで使ってなかったのに。



僕より行動が遅れてはいたけど、それでも来てくれた。てゆうか、元々ヒロさんはこういうの率先してやるほうだしなぁ。





「ほらほら、こっちこっちっ!!」





ヒロさんの身体が輝く。その光を纏いながら、クイクイと左の指を動かして、未だにしつこく黒服を攻撃していたウサギを挑発する。・・・・・・これも戦闘用のスキルの一つ。

さっき言ったヘイトの数値を瞬間的に高めて、自分へとターゲットを向けさせるのだ。というか、そのためのスキル。なお、高まったヘイトは固定ではなくて、徐々に少なくなっていく。

PTプレイだと、前衛がこういう形で敵を引き付けて、その隙に後衛がヘイトを高めすぎて自分が攻撃されないように、前衛の援護や攻撃をするのが、基本である。



とにかく、そうこうしている間に刀を打ち込んで、ウサギと凍結から解放された蜂をぶった斬って倒す。



ヒロさんはあっさりとウサギを串刺しにすると、ようやく落ち着いて・・・・・・。





「・・・・もう一体来たっ!!」





横から、右手に片手斧を持ったオークがもう一体。斧で斬りかかられたので、連続横転で距離を取ってから、そいつに一気に突っ込む。

『攻撃喰らっても問題ないでしょ?』とかは、言う事なかれ。回避とか防御はやれるならちゃんとしておいた方がいいのだ。



・・・・・・せっかくだし新実装された魔法、試して見るか。MPは一発分なら行ける。





「・・・・・・アイシクル」





左手の拳を握る。その拳の前に、青い魔力スフィア。



斧を持ったオークは、それを袈裟に振りかざす。だから、真横に回りこんで攻撃を回避。



そのまま身体を回転させて・・・・・・その拳を、そしてスフィアを、オークに叩きつけた。





「ステークっ!!」





瞬間、スフィアは巨大な氷の杭へとその姿を変えて、撃ち出された。



それがオークの右横腹から左の横腹までを貫通して、僕より50センチほど大きい巨体を吹き飛ばした。



HPゲージは、瞬間的に0になって、そのまま倒れた。・・・・・・うし。これでOKと。





「・・・・・・やっさん、どんだけ攻撃スキル偏重でSPスキルポイント使ってるわけ? しかも、前衛必須の挑発覚えないでさ」



武器を納めていると、呆れたようにヒロさんが言ってきた。・・・・・・いや、だって・・・・・・新しい攻撃があったから、ついついそっちに。



「なに言ってんの。その前に挑発だよ挑発。次は絶対に挑発覚えるように。さっきのだって、それ1発で簡単に引き剥がせたじゃないのさ」

「はーい。・・・・・・で、大丈夫?」

「あ、はい。ありがとうございます。あのなの・・・・・・え?」





全員が見る。倒れている白服ツインテール・・・・・・というか、なのはを。

そう、このPCはなのは。つーか、なのははかなりデザインを変えてた。前はフェイトもびっくりなボンキュッボンキャラだったのに。

だから、ぱっと見だと僕は気づけなかった。だけど、PCネームだけは変えてなかったから、それで分かった。なので、飛び込んだ。



なお、PCネームは『なのたん』です。





「な、なのはー! しっかりしてー!! あぁ、どうすればいいのっ!? これどうすればいいのっ!!」





ヤバイ、黒服の子がおもしろいくらいに右往左往してる。もしかして、ゲーム初心者なのかな。

いや、もしかしなくてもそうか。さっきの反応がアレだったし。



とりあえず・・・・・・tellと。





”なのは、なんでそれ? てゆうか、どうしたのよ”

”うぅ、さっき絡んできたオークに背後からザシュって・・・・・・。それがクリティカルで、1発だった”



で、同時進行でログを遡ってチェック。・・・・・・あ、ホントだ。ダメージ受けたログが残ってる。

ごめんごめん、普通に攻撃してて気づくの遅れた。



”・・・・・・恭文君に殺された”

”失礼なこと言うな”

”失礼じゃないよ。挑発スキル覚えてれば”

”それよりも攻撃スキルでしょ。自分だってそうするくせに”

”後衛の私は、まず回復スキルからだよっ! 恭文君みたいなイケイケプレイヤーと一緒にしないでっ!?”



死亡したら普通の会話はムリだけど、PTやギルド会話。そして今みたいなtell会話はオーケーなのだ。



”てか、早速始めてるとは思わなかった。で、どうしたのよ。リンクやトレインなんて、らしくもない”



なのははなんだかんだでゲーム上手い方だし、こういうのはあんまりないのに。



”え、えっとね。二人で戦闘してたんだけど、フェイトちゃんが慣れてなくて、普通に複数の敵に攻撃しちゃって。
うー、リアルでも慌ててるよ。すっごい慌てて謝られてるよ。これどうしたらいいの?”

”それでこれと。納得した。てか、リアルで謝るって”



・・・・・・あれ? 今おかしい単語が聞こえたぞ。

リアルってなに。なんで現実で慌ててるなんて話になるの?



”・・・・・・横馬、今なんて言った? なんでリアルどうこうって話になるのよ”

”あ、もしかして気づいてないの?”

”なにがよ”

”このPCはフェイトちゃんだよ”



よし、僕落ち着け。ちょっと落ち着け。冷静に考えよう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・うし、答えが出た



”僕の恋人のフェイト?”

”そうだよ”

”歩く萌え要素のフェイト?”

”そうだ・・・・・・って、フェイトちゃんへの認識どうなってるのっ!? ・・・・・・とにかくそうだよ。一緒にキャラ考えて、一緒に始めたんだ。なお、モチーフは私達の小さい頃”

”はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?”





え、この可愛いくらいにオロオロしてるの・・・・・・フェイトのPCっ!?





”嘘だぁぁぁぁぁぁぁっ! 一緒に相談しながらPC作るのとか想像してたのにー!!”

”あ、それは私がやったよ。もうね、二人で相談しながらPC作ったんだけど、すっごく楽しかったよー”

”そのまま死んでろっ! つーか、消えてしまえっ!!”

”なんでっ!? いきなりひどいよー!!”




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・くそ、無茶した。普通にHP減ってる所にスケルトンが生体感知で絡んできて・・・・・・今現在、アタシは砂浜で死んでます。





あー、スケルトンみたいなアンデット系のモンスターは、PCのHPが半分以下とかだと、それを感知して襲ってくるんだよ。なんつうか、めちゃくちゃ怖い。





うー、蘇生待ちかなぁ。どっちにしろ今ので今日は切り上げるつもりだったし、このまま1時間くらい待って誰も来ないならそれも仕方ねぇよな。





てかよ、アタシ・・・・・・PT、誘われないなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・とにかく、僕達の誰も蘇生魔法をまだ使えなかった。





なので、なのははセーブ地点へと戻った。なお、このゲームでは特定のNPCと話してセーブ地点を決めると、死亡した時や、特定の魔法を使った時に、その場所に戻ってくることが出来るのだ。




死亡した時はともかく、特定の魔法を使える場合はこれを活用して、遠くの街に行った時、帰りはその魔法で一瞬で戻るという手を使う事も出来る。





で、そのセーブポイントで全員集合。PT会話であれこれお話です。










「・・・・・・本当にはやてちゃんから見せてもらった写真そっくりです」

「なのはちゃんが後衛で、フェイトちゃんが中衛か。またリアル通りって」

「あー、でもこれで結構賑やかになりましたよね。というか、PTのバランス取れてません?」



なんて口々に言うのは、リインとサリさんとジンである。

三人とも、二人が作ったPCを感心した顔で見てる。



「いやいや、ジン坊。その前にやることがあるよ」

「やること?」

「やっさんに挑発スキルを覚えさせないと」



・・・・・・ドキ。



「お前、覚えてなかったのかっ!?」

「挑発は前衛の基礎・基本スキルですよっ!? それを抜かしてたですかっ!!」



あ、あはははは・・・・・・やっぱり、だめ?

それに、フェイト以外の全員が頷いた。あ、だめだったか。



「マジで覚えてなかったのよ。普通に攻撃スキルにだけSPを注ぎ込んでたみたいで、普通に新しく実装された魔法使ってたし」

「ヤスフミ、それはダメな前衛の代表じゃねぇかよ。どうなんだ、それ」

「い、いいじゃんいいじゃんっ! みんなだって同じでしょっ!? 新しい攻撃があったら、そりゃ使いたいに決まってるじゃんっ!!」



僕がそう言うと、全員があらぬ方向を見て・・・・・・に、逃げたっ! 普通にこいつら逃げやがったっ!!



「でも、ヤスフミはそのままだよね。みんなこう・・・・・・願望がにじみ出てるのに」



フェイト、何気に容赦ないね。てゆうか、普通に毒吐いてるし。

きっと、みんないろんな意味で突き刺さってるよ。リアルにグサって来てるよ。



「フェイトちゃん、そこは言ってやるな。ヒロが泣く」

「うっさいっ! それはアンタでしょっ!? なんだよ、そのテンプレ通りな主人公フォルムっ! 一緒に歩いてるだけで恥ずかしいしっ!!」

「どう言う意味だそれっ!!」



まぁ、どっちもどっちなのでここはいい。



「フェイトさんには・・・・・・リインの気持ちが分からないんですっ! リイン、フェイトさんみたいにタプタプのプニプ二のポヨポヨになって、恭文さんを悩殺してR18コースを行きたいんですっ!!」

「そしておのれはいきなり何のカミングアウトしてるっ!? おかしいでしょうがっ!!」

「そ、そうだよっ! 私はヤスフミを悩殺してR18コースなんて行ってないよっ!? まだ清い関係なんだからっ!!」

「フェイトも反応するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



とにかく、話を逸らそう。てーか、普通に会話には気を付けるようにって言っておかないとまずいな。ネットゲームで恋愛事情なんてバラされたくない。

しかし・・・・・・なんで二人はそんな劇場版スタイル? 普通にビックリしたし。劇場版の宣伝とかじゃないよね?



「えっとね、なのはが今回は小さい女の子キャラ使ってみたいって言ってたから、一緒にゲームするんだから合わせたいなと。
でも・・・・・・ヤスフミが私より背が高いのはちょっと新鮮。見上げる感じになってるから」



フェイト・・・・・・というか、フェイトのPCが僕を見上げる。あ、確かにこれは新鮮かも。外見的特徴は、昔のフェイトのまんまだし。



「そうだね、僕も新鮮。というか、こういうことも出来るし」



なので、モーションでフェイトのPCの頭を撫でる。こういうことも出来るのだ。

背伸びもせずに、普通に僕の胸元くらいの身長の女の子を撫でる。



「あ、あのヤスフミ。これはその・・・・・・恥ずかしいよ」

「・・・・・・てゆうか、ゲームの中でもイチャつくんかい」

「うー、リインは撫でてくれないですかっ!? というか、ハグですハグー!!」

「あのリインさんっ!? 俺が思うにそれは絶対違うと思うんですけどっ! てゆうか、どんだけヤスフミ好きなんですかっ!!」



まぁ、皆がなんか騒がしいけどいい。僕は楽しいのだから。

とにかく、本題に入ろう。サービス開始記念クエストだよ。



「とりあえず、今日は時間も遅いし、それを受けて終わりにしとくか」

「えー、私は普通に徹夜いけるよ?」

「それはお前がおかしいからだろっ!? 俺・・・・・・はまぁ、それに付き合ってるからともかく、フェイトちゃんや高町教導官達まで巻き込むなよっ!!」



あー、そう言えばヒロさんは普通に廃人だしなぁ。徹夜明けでも平然と仕事するって言うし。

ただ、サリさん・・・・・・実は間違えてる部分がある。それも相当。



「サリさん、なのはも同じです。教導官の仕事してるのになんでここまでって言うくらいにレベル上げてました。てーか、師匠と同レベルです」

「マジかっ!?」

「あ、あの・・・・・・仕事の合間合間にだよ? やっぱり、お仕事優先なのは変わらないし」



それでもおかしいのよ。このゲームはソロでも比較的レベル上げしやすいせいなのかも知れないけど、それでもスピードがおかしいから。

あ、でも後衛を専門にやってるから、そのせいでPTとか誘われやすいんだよね。その上、さっきはアレだったけどプレイヤースキルも高いし。



「ま、とにかく俺とリインちゃんにジン坊はもう受けてるから、サポするよ。・・・・・・あ、それとやっさん」

「ほい?」

「頼むから、マジで挑発は覚えてくれ。いや、真面目にだぞ?」

「・・・・・・次に覚えたい攻撃スキルあるんですけど。それもヒット数稼げて大ダメージに繋がりやすいって言うの」

「頼むからやめてくれっ! そういう初期のヒロみたいなのは一人で充分なんだよっ!!」










とにかく、全員でそのクエストを受けられるNPCに離しかけて、その日はログアウト。





・・・・・・色々あったから、少しそう言う気分が薄れたのは、心地よかった。





ギンガさん・・・・・・。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで翌日。解散間際の処理も片付きつつあるので、普通に全員仕事が終ってから即ログインしてた。





なお、なのはは教導データの編集や確認もした上でだね。少し遅れるけど、それでもログインすると。ヴィヴィオやフェイトとあれこれ言いながらプレイするのは楽しいらしい。










「あの、ヤスフミ。昨日は言われるがままに話しかけたんだけど、どういうことなの?」

「うーん、簡単に言えばお使いだね」





NPC・・・・・・ノンプレイヤーキャラが言うには、最近魔物の出現率が非常に高いと。その原因は、近くのダンジョンに魔族・・・・・・まぁ、オークの親戚なのが居るせいだと。



なので、それを探し出してやっつけて欲しいと言う、基本的なアレだね。で、そのダンジョンも分かってる。



あとは、そこに行ってそのボス魔族を倒すだけである。ただ、問題がいくつかある。





「でも、私達昨日始めたばかりなのに、出来るのかな。主にレベル的な問題で」

「・・・・・・うん、だからレベル上げなのよ?」

「そっか、納得したよ」





まず、フェイトとなのはのレベル的な問題。サリさんがネットで調べた所、せめて10は欲しいという事なので、みんなで協力して二人のレベル上げをすることになった。



てゆうか、僕は普通に自分の狩りの途中で寄っただけだけど。





「まぁ、実際に進む時は、敵も掃除しつつだから問題ないでしょ。で、フェイトちゃん。ウサギの皮何個集まった?」

「えっと・・・・・・6個です。さっき連続で出たので」

「うん、だったらもうすぐだね」



問題の二つ目は、そのバトルフィールドに入るために、アイテムが必要と言う事。まぁ、適当に街周辺の敵を倒して手に入るものばかりなんだけど。



「さ、こっちは私とサリで何とかしとくから、やっさんはレベル上げなレベル。そして挑発覚えな」

「うー、ヒロさんが僕とフェイトとを引き剥がすー。ロミオとジュリエットみたいになってるー」

「やかましいっ! アンタみたいな性悪な男役は、シェイクスピアの作品には出てこないよっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さて、今更だけど舞台説明。僕達がスタート地点として選んだのは、ガンダージュ王国。深い森と山間に存在する、その名の通り王国制を取っている巨大都市。





だけど、その山間にはオークの集落がある。しかも、それが都市部の近くにあり、常にその脅威に晒されているという設定の国である。

で、その国から出て、南に下がって行くと、森を抜けて草原に出る。その草原を抜けると、そこは砂漠・・・・・・というか、砂丘。

そこには港街が一つあるだけ。そして、そこから船が出てたりする。それは、別の大陸へ向かうための船。





港街というのは、船による運搬で収益を上げ、食っている部分がある。それはここも同じ。

なお、この船にはPCも乗れる。お金を多少取られるけど、ゲーム内の移動手段の一つ。つまり、船は運搬船であると同時に、遊覧船でもあるのだ。

だけど、いつも優雅な船旅とは思う事無かれ。潮風の匂いをイメージしながらそれに乗っていると、海賊船に襲われてモンスターが大量発生とか言うのもたまにあったりする。





え、『なぜこのバージョンでは最初からやりなおしのはずなのに、そんなことを知っているか』って? あははははは、決まってるじゃないのさ。





今、丁度海賊に襲われてるから。










『ギシャァァァァァァァァァァッ!!』





甲板のあっちこっちで、動き回るのは魑魅魍魎。人の骨が何の支えも無しに両手鎌を振るう。物によっては剣と盾まで携えて、そこに居合わせた魔導師達に切りつける。

なお、普通に海賊船に対処しなくても問題はない。時間になれば港に到着するから。ただ、こういう場合海賊船の敵だけが落とすアイテムとかも有ったりするので、応戦出来るなら応戦しちゃったりするのである。

で、現状がそれ。さほど広くない甲板に送り込まれた死せる兵隊達を相手に、魔導師達が持てるスキルを生かして戦う。



ある者は魔法で焼き払い、ある者は斧を上段から叩きつけてその身を砕き、ある者は拳を持って叩き伏せる。それぞれにそれぞれの戦いが、青い空と変わらぬ潮風の中で進行している。



で、それは僕も変わらず。





「氷花・・・・・・一閃っ!!」





とりあえず、スキルを併用して海賊船から送られてきたスケルトンを攻撃。

だけど・・・・・・あー、やっぱり効果が低いー。ダメージが思ったよりも出てない。

スケルトン・・・・・・アンデット系は火とか雷とか、あっちの攻撃の方がダメージ多いしなぁ。



ちなみに、氷結属性はスケルトン相手だと苦手項目。凍結の異常も出にくい方だし。





『ギシャァァァァァァァァァァっ!!』





スケルトンが声を上げ、両手に持った鎌を袈裟に打ち込んでくる。それをバックステップで避けて、一撃加える。だけど、通常攻撃でも一撃でぶっ飛ばすってわけにはいかない。



・・・・・・まずいな。皆自分の敵で手いっぱいだし、これは僕でなんとかしないといけない。一応避難場所はあるんだけど、そこに入る前に絡まれちゃったから、絶対に逃げることは出来ない。



もしこれで避難場所に突入すれば、それを追ってきたスケルトンコイツがそこで大暴れして、僕よりレベルの低いプレイヤーはただひたすらに蹂躙されるだけ。そこはエリア移動で行くってわけじゃないから、普通に追っかけてしまうのだ。





”・・・・・・やっさん、私は確かレベルを上げろって言ったよね”

”あぁ、そうですね”

”なのに、なんでアンタいきなり海賊と交戦状態に入ってんのっ!?”





スケルトンの攻撃を避けつつ、刃で斬りつけつつ、ヒロさんからのtellに答える。



なお、ついさっき今何しているのかと聞かれたので、普通に答えたら、どういうわけかお冠だ。





”向こうの港街のPTに誘われたんですよ”

”そっちから向こうってことは・・・・・・潮騒の街?”

”はい”





砂丘には、結構強めのモンスターも居る。そこにある港街を拠点にして、そこでPTを組み、レベル上げに勤しむ方々も多い。



それは、船に乗った先にある港街でも同じ。で、そこでPTを組んでいた人から、一人抜けた穴埋めで来て欲しいと言われたのだ。



鎌が、一瞬で何度も振るわれる。骨が使う攻撃スキル。それを後ろに飛び下がって避ける。だけど、スキルを使いながら僕の方に来る。刀を前にかざし、防御。直撃は避けられたけど、HPが少し削られる。





”・・・・・・挑発ないのに?”

”大丈夫です。全員前衛のタコ殴りPTで、そういうの抜きですから”



相手のスキル発動の直後の隙を狙って、スケルトンの肩に斬りつける。それで、HPが少し減る。

今の僕のレベルから見ると、コイツは僕より少しだけ強い相手。普通ならもう2人くらい欲しい所。アクション制で回避が自力だから何とかなってるだけ。



”あぁ、分かった。理解したわ”



で、直後にスケルトンの横薙ぎに振るわれた鎌が腹を薙ぐ。それにより、HPの8分の1が減る。・・・・・・くそ、攻撃力高い。一気に持ってかれた。

8回喰らっただけでおしまい。ネットゲームでは結構シビアな感じ。ただ・・・・・・アクションなら、また違う。シビアってのは、1発受けたらやられる状況のことを言うんだから。



”すみません、ヒロさん。ちょっと集中するんで、少しの間応答出来ません”

”分かった。てーか、邪魔して悪かった。まぁ、気を付けてね”

”はい”










・・・・・・とりあえず、持っていた回復薬を使って、その分を回復。そして、エンチャント・アイシクルを発動。





そう、ヒロさんがなのはとフェイトを助ける時に使ってた魔法の、氷結属性版。僕も覚えてた。ただ、スケルトン・・・・・・骨相手には氷属性はあまり効かない。使わないよりはマシというレベル。





ただ、それでも使わないよりはマシなのは確か。だから、使う。使える手札は切って行く。





そして、楽しくなってくる。・・・・・・ギリギリの綱渡りな感覚が、とても楽しい。倒されたらデスペナルティとして、経験地が減っちゃうから、それがその感覚に拍車をかける。





集中しろ。手ごたえはある。そして、コイツは決して僕一人で倒せないような、ブッチギリの相手じゃない。油断さえしなければ、勝機さえ逃さなければ、勝てる。つーか、勝つ。





さぁ、行きますか。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・え、ヤスフミ早速海賊とやりあってんですかっ!?」

「そうなのよ。それも普通にPT誘われたから船乗って『あー、海綺麗だなー』って言ってる時に、こう・・・・・・おどろおどろしい音楽が流れてきて、それで自分より強めなスケルトンとタイマン」





レベル上げが何とか終了・・・・・・ようするに、10にはなれたので街に帰ってクエストというのを進めようとすると、そんな話になった。



というか、オンラインゲームってすごい。海賊船なんてあるんだ。





「・・・・・・それ、マズイんじゃないですか? 骨相手にアイツのスキルは効果薄いでしょ」

「ふれいほ・・・・・・じゃなかった、シン君。そうなの?」



危ない危ない。ヤスフミに『一応ゲーム中での会話は、PCネームで呼ぶように』って言われてたのに、忘れるところだったよ。

ただ、ヤスフミはヤスフミでいいみたい。というか、みんなそうしてる。・・・・・・どうしてだろ。



「そうなんですよ。アイツが主に覚えてる氷結属性の攻撃は、骨・・・・・・スケルトンにそれほど効果があるわけじゃないんです。どっちかって言うと、そういうのは炎とか雷とかの方がダメージ出ますから」





あ、そっか。ゲームの中ではダメージの通り方とか、そういうのがちゃんと決まってるんだ。ということは、シン君の言うように、やっぱりヤスフミはピンチ?





「まー、やられても経験地少し無くして、こっち戻ってくるだけではあるけどね。ゲーム最初からやり直しーとかではないから、大丈夫でしょ。
てゆうか、船の状態サーチしたら、廃人レベルな高レベルプレイヤーも丁度かなりの数乗ってるのよ。で、やっさんの手札に、ちゃんと骨対策用の攻撃あるんだし」

「・・・・・・あ、そういやそうですね。しかし、1発目で海賊って」

「ヤスフミ、ゲームの中でも運が悪いのかな。普通は、ないんですよね」

「普通はね。・・・・・・どうなってんだろ、マジで」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



なんて話を向こうがしているのと同じ時、僕は普通に骨と斬り合ってた。





斬り付けた箇所に氷が発生するエフェクトが出て、追加ダメージを叩き出す。叩き出して、ダメージカウンターが数字の形で出る。





それを見て、ちょっとヘコむ。効果ないにしても、これはないだろと。まぁ、いい。

これでも前衛。普通にもうちょっとってとこまで削れては来てる。こっちも結構ギリだけど。

何かのミスで連続で攻撃を食らえばおしまい。さっきみたいな鎌を連続でブンブンなんてスキルを使われてもアウトだ。




・・・・・・落ち着け。攻撃は避ければいい。回復アイテムもまだある。振るわれた鎌を、ジャンプで避ける。そのまま、頭に向かって斬りつける。

ゲームの中では、残酷にもダメージ値という形で全ては処理される。普通なら必殺の一撃でも、この世界の中ではそうはならない。

だから、未だに立ち続ける骨が鎌を横薙ぎに振るう。僕の右側から、鎌が襲って来る。それをバックステップで下がって回避。










「・・・・・・アイシクル」





その鎌を振った事で出来た隙を狙って、スキルを発動させつつ近づく。

・・・・・・骨に氷結属性の攻撃は効果が薄い。だけど、これに関しては例外。

骨は鎌の柄尻を僕に叩きこむ。前転でそれを回避。僕は、骨の懐に入り込んだ。



・・・・・・骨は打属性、または衝撃属性と言われる属性を持った攻撃を苦手とする。ようするに、殴ったり蹴ったり吹っ飛ばされる攻撃だね。師匠が使ってるハンマーみたいなので殴ると、ダメージが増えるのだ。

そして、コレは衝撃属性持ち。だから、使う。

これなら、残った分のHPを一気に削れるはずっ!!





「ステークっ!!」




突き出された氷の杭は、骨を貫き、吹き飛ばした。



だけど、HPが僅かに・・・・・・本当に画面で言うとミリ単位で残った。



仕留め切れなかった。だけど、あれなら一撃当てればカタが付く。そう思った瞬間、異変が起きた。





『ギシャァァァァァァァァァっ!!』




骨が叫ぶ。そして、両手鎌を頭上に掲げる。瞬間、僕の身体の動きが止まった。



・・・・・・ヤバイ、スタンってログが出てるっ! つまり・・・・・・動けないっ!?



で、当然のように骨は走り寄って、遠慮なく斬撃を加える。鎌は命を・・・・・・HPを容赦なく刈り取る。



一撃、二撃、三撃・・・・・・。動けない僕に向かって鎌は何度も打ち下ろされ、満タンだったHPはあっという間に危険領域になる。



それだけじゃなく、黒い霧のようなものまで発生して、HPを削る。



ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ。



スタンが解けた。だけど、遅い。もう鎌の切っ先は、僕のPCの身体へと近づいて・・・・・・。





「ヒールっ!!」




白くて、強い光が身体を包む。攻撃を喰らったけど、本当に・・・・・・本当に僅かに、命を繋ぎ止めた。その数値は、4。



だから迷わずに、僕は刀を袈裟に振り下ろす。刃は確実に骨を斬り裂き、ダメージカウンターを叩き出す。



そして、骨は音を立てて、鎌と共にその場で崩れ落ちた。





「か・・・・・・勝てたー」





戦闘後の戦利報告として、ログに入って来た経験値や戦利品・・・・・・ようするに、手に入れたアイテムが表示される。



ん? 古ぼけたお守りって・・・・・・何かのクエストアイテムかな。他のPCに渡したりとかは出来ないみたいだし。





「・・・・・・危なかったね、大丈夫?」



そう話しかけてきたのは、一人の女性。紫色の長い髪を束ねて一つにし、白くて、赤いラインが何箇所も入ったローブを羽織ったPC。なお、スタイルは着痩せする感じだと思う。

あ、そっか。さっきの回復魔法、この人なんだ。えっと、PCネームは・・・・・・レナ。



「あの、ありがとうございます。おかげで助かりました」

「ううん。でも、助けるのが遅くなってごめんね。私もちょっと手こずってたから」



なんて話している間に、海賊船が離れて行く。そして、モニターから聞こえる音楽が、海賊船に襲われる前の穏やかな物に変わる。

どうやら、これでおしまいらしい。・・・・・・いや、助かった。マジで助かった。



「いや、本当に助かりまし」



言いかけた瞬間、僕は・・・・・・倒れた。というか、戦闘不能になった。



「・・・・・・え? あの、君大丈夫っ!? というか、しっかりしてー!!」





な、なんでっ!? どうしてこれなのっ!!

と、とにかくログを・・・・・・。

ログを追って分かった事があった。黒い霧のせいで、ステータス異常になっていた。



それは・・・・・・毒。つまり、毒のせいでHPが一気に4削られて、この状態である。



あ、あはは・・・・・・やっぱプレイヤースキル下がってるのかも。普通に気づかなかったし。





”えっと・・・・・・蘇生した方がいいよね?”

”スキル覚えてるんですか?”

”うん。ついさっきレベルが上がったから”

”・・・・・・すみません、お願いします”




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、レナさんに蘇生してもらってようやく復活した。




で、港街にも到着した。





到着したんだけど・・・・・・。










「・・・・・・PTメンバー大半が寝落ちしたから解散って」





寝落ちというのは、ゲームプレイ中に寝てしまうこと。



一人でやってる最中ならともかく、PT組んでる途中にこれは非常に迷惑なのだ。



なお、ヒロさんは何回かやらかしてる。





「あ、あははは・・・・・・。大変だね」

「あれ、今日厄日ですかね。なんというかおかしい」



結構頑張って来たのに、無駄足になってしまった。隣で海を一緒に見てるレナさんが苦笑いのモーション使うのも分かる。

僕だって半笑いだ。いや、PCじゃなくてリアルで。



「あ、そう言えば自己紹介がまだだったよね」



クルリと僕の方を向いて、ニコリとその人は笑う。

作られた世界の作られた人の笑顔でも、素敵と思ってしまうのは、中の人から何かにじみ出てるせいだろうか。



「私はレナ。見ての通りの通りすがりのヒーラー」

「あ、かなめです。あの、色々とありがとうございました」



回復とか蘇生とかあれこれとか。



「ううん。・・・・・・うーん」



そして、ジッと見る。・・・・・・どうしたの?



「あ、ごめんね。・・・・・・ね、ちょっとtellに切り替えていいかな」

「あ、はい」



で、tellに切り替わる。僕達二人だけにしか聞こえない、大事なお話。



”あの、じろじろ見ちゃってごめんね。なんというか・・・・・・こう、似てたんだ”

”似てた?”

”うん。私、最近失恋してさ”



・・・・・・え、いきなりカミングアウトっ!? さ、さすがにこれは予想外なんですけどっ!!



”それがね、丁度あなたのPCに似てるんだ。それで、ちょっと思い出しちゃって”

”そうだったんですか・・・・・・”



でも、待て待て。僕に似てるって言う事は、小学生とかそれくらい?

・・・・・・いいもん、自分で言ってて悲しいけど泣かないもん。



”その子ね、すごく優しくて、強くて・・・・・・かっこいい子なんだ”



とりあえず、人には抱えてるものを吐き出したい時もある。きっとレナさんは今がその時なのだと思って、僕は黙って聞く事にした。



”ただね、私の方を見てくれなかったんだ。その子、他に好きな子が居たから。というか、ヒドイんだよー? 私、弄ばれたの”



え、待って待って。弄ばれたってなに? 中の人は年齢低いのかと思ってたんだけど、もしかして、違うの?



”初めて会った時に、胸触られたの”

”はぁっ!?”

”それで、こう・・・・・・運命的な出会いをしたのに、あっさり他の子に行っちゃうんだよ? ヒドイと思わないかな”



そ、それはひどいかも。・・・・・・あれ、なんか突き刺さるな。



”しかもね、私だけじゃないんだ。他にもフラグを立てられてる女の子が沢山。みーんな同じ感じなんだ。というかね、鬼畜なんだ。
立てるだけ立てて回収しないって言う鬼畜プレイもいい所なんだから。うー、惚れた弱みがあるから何も言えないけど、やっぱりヒドイよ”

”え、えっと・・・・・・他に何か被害は”



ヤバイ、なんか心にグサグサ突き刺さってる。それも結構痛い。覚えがある・・・・・・うん、ある。

だってつい24時間前に、それをやらかしたんだから。フラグ回収なんてしなかったんだから。



”あー、最近あったのが、その子がまた女の子に告白されたらしいの。でも、断ったんだ。でね、それで信じられないのが、その子第二夫人まで居るの”



あ、あれ? なんか覚えがあるぞ。



”第二夫人が居るなら、私も第三夫人に加えて欲しいんだけどなぁ。というか、私一杯尽くすよ? もうすごい勢いで尽くして尽くして私無しでは生きられないようにするんだからっ!!”

”アンタ一体何するつもりっ!? ・・・・・・てゆうか、あれですよあれ。きっと第二夫人までが限界って思ってるんですよ。どうしても二人とも好きなのはギリギリだけど”



ちなみに、『ギリギリアウト』という意味である。



”三人はブッチギリでアウトになるんですよ。そうなんですよ”

”私は大丈夫よ? 普通に浮気されるよりは、一夫多妻制の方がまだマシだし。というか、三人とか四人とかでするのはコツがいるから、私は経験者としてちゃんと教えて”

”だから何の話をしてるっ!? てゆうか、それアウトですよねっ! 普通にR18だしっ!!”

”あ、大丈夫。私もう32だから”



そういう問題じゃ・・・・・・32っ!? 僕より年上・・・・・・つーか、ヒロさんと同い年っ!!

あ、あれ? なんかひっかかるぞ。よ、よし。一つ質問だ。



”・・・・・・時にレナさん”

”なにかな”



海は、変わらずに穏やかに輝いている。空も同じく。だけど、僕の心は思いっきり暗雲が立ちこめてきた。

いや、まさか・・・・・・まさかとは思うけど、一応聞こう。



”え、えっと・・・・・・32歳?”

”うん。でも、あんまり言わないで欲しいな。これでも女の子だから、年齢のことは結構気にしてるの”



そ、そうですか。そうなんですか。まぁ、そこはいい。ここはいい。

うし、じゃあもうちょっとツッコんでみよう。



”えっと、失礼を承知で聞きますね。・・・・・・リアルでは何を?”

”あ、シングルマザーやってるよ。10歳の子どもの親”










・・・・・・ヒロさんと同い年。シングルマザー。10歳の子どもが居る。





そして、最近第二夫人まで確定している僕に似た男の子に振られた。というか、その子に恋人が出来た。そいつは最近別の女の子を振った。





あ、そっか。





このPC・・・・・・アンタメガーヌさんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!










”・・・・・・ぷ、ぷはははははははははっ!!”





いきなり大笑いし出した。というか、そういうモーション使ってきた。





”やっと気づいてくれたー! もう恭文くんニブ過ぎだよっ!! 私、すっごくヒント出してたんだよっ!?”



あぁ、そうでしょうね。よーく見たら、外見がメガーヌさんそっくりだもん。口調もそんな感じだもん。改めて考えたら、よーく分かったわ。



”やっぱりアンタかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!”



僕は、一度もリアルの名前を名乗ってない。なのに普通にこう言ってきた。つまり、この人は間違いなく・・・・・・。



”うん。恭文くんの現地妻4号の、メガーヌ・アルピーノでーす♪”

”その呼称はやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! てゆうか、マジでアンタなにしてるっ!?”

”あ、ヒロちゃんに誘われて始めたんだ。私がルーテシアと行く世界でもウィハン出来るように整備進めるから、連絡ツールとしてやってみないかって。
そうしたら、意外とおもしろくてさー。元ゲーマーの血が沸きに沸きまくって、もう発売初日から徹夜で頑張り続けちゃったの”



あ、あっけらかんと言い切った。画面の向こうでニッコリ笑ってる顔が見える。すっごい見える。



”で、そうしたらたまたまさっきのアレでしょ? もう驚いちゃった。なんて言うか・・・・・・私達、運命の赤い糸で結ばれてるんだね”

”その言い方やめてくださいよっ! てゆうか、僕彼女持ちですよっ!?”

”あ、大丈夫だよ。ここなら、フェイト執務官も居ないし”

”居ますよ”



・・・・・・あ、なんか固まった。

そして数秒後、こうコメントされてた。



”・・・・・・君の心の中に? でも、そこは今は忘れて、私を恋人として扱って欲しいな。大丈夫、どんなことでも受け入れるよ?”

”何上手い事言って何とかしようとしてるっ!? てか、そうじゃないからっ!!
・・・・・・色んな偶然でソフトを入手したんで。今、ヒロさん達とレベル上げしてます”

”そうなのっ!? ・・・・・・うぅ、神様ひどいよー。せっかく恭文くんとラブラブ出来ると思ってたのにー”



ゲーム内でなにかまそうとしてるっ!? てゆうか、マジでそういうのはやめてー! 普通にバレたらフェイトやリインに怒られる・・・・・・というか、ぶっ飛ばされるからっ!!



”でもさ、ここでそういうのだったら浮気にはならないと思うんだ。だって、肉体的接触や繋がりがあるわけじゃないし”

”だから落ち着けー!!”

”まぁ、そこはいいか。・・・・・・あ、でもフェイト執務官としてみるのはいいかも。意外と互いに興奮して、そのままじゃ満足出来なくて、夜遅いけど会おうってことになって”



だからそれは・・・・・・いいかも。ま、まぁフェイトがオーケーするとは思えないから、ここはいいか。



”そう言えば、恭文くん”

”ほい?”

”ギンガちゃんの告白、断ったんだって?”



・・・・・・とりあえず、頷いた。てゆうか、なんでバレてるのかが分からない。



”あー、ギンガちゃんが話したとかじゃないよ? ナカジマ三佐からね、相談されたんだ。ギンガちゃんがそれで、ちょっと落ち込んでるんだけどどうしたらいいのかって。自分は男親だから、こう言う時はどうしたらいいかよく分からないってね”

”納得しました”

”というか、ギンガちゃんを第三夫人って言うのは、考えられなかったんだね”



そう、断った。理由はメガーヌさんの言う通り。

僕の心の中には、フェイトが居て、形は違うけどリインが居て・・・・・・二人でいっぱいだったから。



”まぁ、ギンガちゃんは大丈夫だよ。今はちょっと落ち込んでるけど、ちゃんと立ち上がれる。私達も協力するしね。で・・・・・・”

”はい?”

”君は、どうなの? 三人体制、上手くやっていけそう?”



・・・・・・実は、ここがよく分からない。上手くいくかどうか、かなり不安だったりする。

というか、今でも迷いまくってる。気持ちが事実ではあるけど、それは違うんじゃないかとかなんとか。



”迷ってるって感じかな”

”そう、ですね。フェイトやリインは乗り気なんですけど。別に不義理なことはしてないし、少しおかしい関係かも知れないけど、自分達は三人がいいって・・・・・・言って、くれます”



リインは、フェイトが僕の好きになった相手だからと認めて、フェイトは、リインが僕の一部で、大事なパートナーで・・・・・・絶対に繋がりを切れないからと、認めてくれている。

でも、僕はちょっとそれについていけないでいる。本当にそれでいいのかと、迷ってる。リインの事、引き受けるって決めたのに、我ながら情けない。



”うーん、そういうのは難しいよね。三角関係とかじゃなくて、三人体制だもの。それで、恭文くんの中にちゃんと二人への好きはあるんでしょ? もちろん、形は違うけど、同じくらいに強くて大事な気持ち”

”・・・・・・はい”

”だったら、三人体制でいいんじゃないの? てゆうかさ・・・・・・君の中の気持ちがそうなってる以上、引き受けるしかないよ”



文字だけでも、この人の真剣な口調は伝わる。結構グサって来てるから。



”それで、二人とも絶対に幸せにする。それで、君も幸せになる。それだけでいいんだよ。難しく考える必要はない。・・・・・・好き、なんだよね”

”はい”

”即答かぁ。うん、その気持ちを忘れないなら大丈夫だよ。てゆうか、リイン曹長はまだ子どもなんだし、そういうのはもっと後でもいいよ。今の内に考えておくことは必要だろうけどさ”



そうして、そのまま頭を撫でてくれる。メガーヌさんの身長そのままであろうPCは、僕よりも当然のように背が高い。

だから、ポンと撫でられる。撫でられて・・・・・・少し、場違いにも思った。ゲームにハマったの、この中だと今の段階でも自由に歩きまわれるおかげなのかなと。



”まぁ、アレだよ。困った事があったら、私にいつでも相談してきていいよ? これでも、そういう関係だったこともあるし”

”・・・・・・え?”

”いえね、二人目に付き合った人がそんな感じで、三人体制の一角を担った事が”



キャー! なんか知りたくない過去を暴露し始めたー!! お願いだからやめてくれませんっ!? そこなんかすっごい触れたくないんですけどっ!!



”でも、貴重な体験が出来たのはいい思い出かな。特に、そこで初めて”

”だからやめてー! 普通にそれは聞きたくないからー!!”

”大丈夫、色々守らなくちゃいけないことはあるけど、互いの理解と愛情があれば、そういうのは超えていけるから”

”超える必要ないからっ! てゆうか、リインはまだ8歳ですよっ!? ありえないしっ!!”





結局、その場で三人体制での行動というモノについて色々と詳しく聞く事になってしまった。



そして、僕の知識のレベル上げは行われた。うん、一気に10くらいレベルアップしたさ。



・・・・・・いやいやっ! 行われてどうするっ!?





”あ、そうだ。恭文くんレベル上げしたいんだよね”

”はい”

”だったら、私がサポしてあげるよ。一応レベルは上だし”



・・・・・・え、いいんですか? てか、普通に自分のレベル上げはどうするんですか。



”うん、大丈夫だよ。・・・・・・ちょっとね、最近PT組む度に『リアルで会いたい』って言われまくって疲れてたから”

”サービス始まって一週間も経ってないのに、アンタ一体なにしてるっ!?”

”うー、恭文くんのせいだからねっ!?”

”だからなんでそうなるー!!”




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、翌日。





残念ながら挑発は覚えた。だけど、メガーヌさんの協力のおかげで予想以上にレベルも上がったので、それ以外も何とかなった。





そして、僕達全員必要なアイテムを手にした。ようするに、準備は整った。










「というわけで、早速イベント攻略・・・・・・いってみよー♪」

『おー!!』





全員でPTを組んで、こんな事をするわけですよ。



・・・・・・よし、ちょっと待とうか。





「ヒロさんヒロさん」

「なに」

「なんでメガーヌさんが居るんですか。てゆうか、なんで普通に自分がリーダーみたいに号令かけてるんですか」

「私に聞くな。普通にここに来て普通にPT入れてって言ってきたんだよ。なお、当然のように拒否権はナッシングだった」



・・・・・・納得しました。というか、分かってた。うん、僕分かってたよ。



「でも、メガーヌさんまでゲームしてるなんて驚きました。というか、意外です」

「そうなの?」

「はい。なんというか、そういうの興味ない人なのかなと」



フェイトがメガーヌさんのPC・・・・・・レナさんを見ながらそう言った。どうも、フェイトの印象だとそうらしい。

てゆうか、よくよく考えたらフェイトはこのお姉さんメガーヌさんにどういう印象を持っているんだろう。



「ふふふふ、実は私、これでもかなりのゲーマーだよ? もうね、ドラクエの発売日には行列するくらいに頑張るの。あぁ、今から9の発売楽しみだなー♪
というかさ、私が仮死状態だった間にFFってあんなに出てるんだよね。PSも2を超えて3とか出るって言うし、今度13とか出るってヒロちゃんから聞いたし、私はもうビックリで」

「アンタマジで何してるっ!? てゆうか、リハビリしてよっ!!」

「いやだなぁ、恭文くん。ちゃんとリハビリもした上でやってるよ?」

「だったら余計おかしいわっ! どこにそんな余裕があるのよっ!!」



なお、突然の仕様変更やらで発売日が伸びに伸びまくって、この1年とちょい後にドラクエ9が出るとは、メガーヌさんも僕達もまだ知らなかった。いや、もうちょい早く出るもんだと思ってたのよ。

ついでに言うと、メガーヌさんが『9は何時発売するのー!? ルーテシアと一緒にやろうと思ってるのにー!!』と悲しい声を上げたとか上げなかったとか。



「でね、ゲーム好きになったのにはキッカケがあって・・・・・・」



聞いてもないのに、なんか語り出したっ!?



「15歳の頃かな、初めて付き合った彼氏の影響でね。あと、色んな事を教えてもらったりしたの。例えば」

「よーしっ! その話は置いておくとして、とっとと出発しよー!! ほらほら、急ぐよー!?」

「ああん、恭文くんのいけずー! 最後まで話をさせてよー!!」

「させられるかボケっ!!」










そうして、僕達は歩き出す。





やばい。このまま次回へ続くなんだけど、色々と不安だ。





てゆうか、ネットゲームのはずなのに、なんでこんな知り合いばっかが集まる形になってんのっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・目に付いたのは、黒い鎧を身に纏った体長1メートル20センチ程度の生物。





片手にはシミターを持ったそいつは、RPGのオーソドックスな生物。ゴブリン。世界のあっちこっちに居る奴だったりする。





てゆうか、結構ここまでは早く来たよなぁ。まぁ、ここからがまた長いんだ。ネットゲームはじっくりのんびりってのが基本だから、いいんだけどよ。





しかし・・・・・・PT、誘われねぇなぁ。アタシ、なんか呪われてんのかな。




















(第11話へ続く)




















あとがき



古鉄≪というわけで、このまま次回に続きます。果たして師匠はPTに誘われるのか。
そこに期待している古き鉄・アルトアイゼンと≫

ティアナ「多分、この中編の中では出番は0だと思うティアナ・ランスターです。というか、アレよアレ。普通にゲームの話だけじゃないのよ。隊舎の様子とか全く描かれてないし、それでどうやって私やスバル達は出るのよ」

古鉄≪ゲームすればいいんですよ≫





(サムズアップで答えたウサギ。なんか輝いている)





ティアナ「そんな余裕ないわよっ! 普通になのはさん達の訓練は密度そのままなのに、どうしろってのっ!?」

古鉄≪そうなんですよね。普通に仕事して、普通にゲームしてますから。あのバイタリティはどこから出るんでしょうか≫

ティアナ「なんかさ、それくらい出来ないともしかしたら『エース・オブ・エース』とかって呼ばれないのかも」

古鉄≪あー、そうかも知れませんね。・・・・・・だったら、やっぱり頑張ってみます?≫

ティアナ「でも、余裕はないのよね。やっぱりもうすぐ解散だし、教導には集中したいしさ。・・・・・・そっか、もうすぐ解散なのよね」





(ツンデレガンナー。なんだかしんみりモード)





ティアナ「なのに、なんであんなゲームばっかりしてるんだろ。あの人達」

古鉄≪しかたないじゃないですか、基本子どもなんですから≫

ティアナ「・・・・・・まぁね」





(『まぁね』で済ませられるってどうなんだろう)





ティアナ「でもさ、メガーヌさん・・・・・・やっぱキャラ濃いって。普通に濃いって。シリアスモードはともかく、ギャグモードは無茶苦茶じゃないのよ」

古鉄≪すみません、あの人は咲耶とかシスター・シオン張りに暴走させやすいんですよ。それはもう盛大に。だけど、いいじゃないですか。メガーヌさんですから≫

ティアナ「意味分かんないわよそれっ!! ・・・・・・とにかく、次回ね」

古鉄≪はい。まぁ、そういうわけで、知り合いのみで構成されたオンラインな雰囲気が全く無いパーティーの冒険はどうなるか。こうご期待です。
それでは、本日はここまで。お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

ティアナ「ティアナ・ランスターでした。というか、この話が終わったらどうなるの?」

古鉄≪いよいよ、Second Seasonのメインイベントであるアレです。きっと恐ろしい事になると思います≫

ティアナ「そうよね、プロットだけ見せてもらってるけど、きっとすごいことになるわよね。いや、マジで怖いしこれ。ある意味ホラーよホラー」










(色々気になる発言をしつつ、カメラはフェードアウト。
本日のED:田村ゆかり『童話迷宮』)




















ジン「・・・・・・なぁ、ヤスフミ」

恭文「うん、どうしたの?」

ジン「メガーヌさんって、確かルーテシア・アルピーノのお母さんだよな」

フェイト「そうだよ」

ジン「俺、エリキャロから色々話聞いてたんっすけど、なんかアレは違いませんかっ!? すっげー、物静かなお子様のお母さんとは思えないんですけどっ!!」

フェイト「そ、そうだね。実は私もびっくりしてる。私と話す時は、穏やかで落ち着いた人だったから。というか・・・・・・ヤスフミ、メガーヌさんと仲良さげだよね」

リイン「あー、そう言えばそうですね。ちょっと前に隊舎に来た時もなんだか親しげでしたし」

恭文「そ、そんなことないよ?」(や、やばいっ! FS17話のアレとかコレとかがバレたら絶対まずいー!!)

ヒロリス「・・・・・・メガーヌ、アンタのせいでなんか一部空気が悪いんだけど」

メガーヌ「大丈夫だよ? フェイト執務・・・・・・って、役職呼びはまずいね。フェイトちゃんやリインちゃんが居るのに、恭文くんにアプローチなんてしないよ。ちゃんと弁えるって」

ヒロリス「ごめん、全然信用出来ないわ」

メガーヌ「うー、ヒロちゃんがいじめるー」

ヒロリス「その泣くモーションはやめないっ!? つーか、嘘泣きっぽいってっ!!」










(おしまい)





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