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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
幕間そのじゅうご 『ありえないことなんて、ありえない 古き鉄、全力全開・・・編』



古鉄≪さて、幕間では未知のゾーンとなりました幕間そのじゅうごです。みなさんおはこんばんちわちわ、古き鉄・アルトアイゼンです≫

ゆうひ「おはこんばんちわちわ、椎名ゆうひです。えっと、前回からの続きやな。妖刀に操られてもうた美由希ちゃん、傷を負った恭文君がどないして事態に対処するか言うお話や」

古鉄≪実は、結構簡単になるかも知れなかったりそうじゃなかったり。しかし、あの人も運が悪いですよね。よりにもよってこれですから≫

ゆうひ「それでも解決していって、また成長する。いやぁ、少年漫画の王道やなぁ。とにかく、そんな幕間そのじゅうご、スタートや」

古鉄≪それでは、どうぞ≫




















魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常


幕間そのじゅうご 『ありえないことなんて、ありえない 古き鉄、全力全開・・・編』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



それは、もう夜も更けた時間。うちらが呑気にもテレビ見てゆったり過ごしてた時、それは帰ってきた。





恭文君が、傷を負って帰ってきた。










「・・・・・・じゃあ、みゆきちは?」

「すまん、陣内。見失ってしまった」

「そんなっ! じゃあ、みゆきちどうなるかわかんないじゃんっ!!」

「わかっとるっ!! ・・・・・・これからすぐに那美と美由希ちゃんば探す。それで、絶対に美由希ちゃんも神無月も止める」





傷を負って、動けなくなっている恭文君を部屋に寝かせて、うちらは何が起きとるのかを聞いた。



しかし、二人が帰ってきたのにそんな事情があったとは・・・・・・。それで毎日外に長い時間出てたんか。





「それでシャマルさん、恭文君の具合は」

「まず、斬られた箇所は那美さんの治療で塞がってます。私も処置をしましたから問題ありません。
ただ、内部浸透系の打撃を二度も食らって、内臓器官にまで少しだけダメージが来てます。二、三日は安静にしてないと」

「うぅ、失敗です。リインが居ながら何も出来ませんでした」

「リインちゃん、仕方ないわよ。あんまりにいきなりだったんですもの」



なんでも、シャマルさんは魔導師のお医者さんらしくて、すぐに恭文君の治療をしてくれた。

まぁ、今の話を聞く限りでは、命の心配はないな。それだけが救いや。



「あの、薫さん、那美さん」

「あぁ、なのはちゃん大丈夫だよ。美由希さんは必ず助けるから」

「なのは、だいじょうぶ。くおんもなみもかおるも、がんばるから」

「・・・・・・うん」



でも、人を斬りたがる物騒な妖刀か・・・・・・。これ、もしかしてそうとう早めに止めんとかなりマズイんやないか?

持っている美由希ちゃんは完全に支配下に居る言うし、下手すると恭文君やなのはちゃん達襲ったみたいに街に居る他の人を・・・・・・。



「とにかく薫、那美。早く神無月を止めましょう。大丈夫、私と御架月の方で気配はもう覚えました。久遠、あなたもですよね」

「うん。だからすぐにさがせるよ」

「そうか、それは心強い。・・・・・・あぁ、それと十六夜」

「はい」

「すまないが、お前は残っててくれ。ちょっとやってもらいたいことがあるんだ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・不覚を取った。てゆうか、二撃で一蹴されるなんて情けない。





てゆうか、なんだろ。悔しいのもあるけど、なんか引っかかる。すごく引っかかる。










「・・・・・・恭文くん、大丈夫?」



引っかかるものに頭を抱えつつ、横で心配そうな顔をして声をかけてくれた知佳さんを見る。隣にはリスティさんと真雪さんにエイミィさんとみなみさん。

な、なんとか。攻撃受けた直後に比べればまだいい方です。若干重たい感じはしますけど。



「シャマルさんの見立てでは、内部浸透の打撃を直撃で食らったせいで、内臓器官に負荷がかかってるらしいからね。そのせいだよ」

「表面的にじゃなくて、お腹の中に衝撃を受けてるってことですよね。私も試合で他の人と衝突して同じような事になった事があるから分かります。恭文君、かなりキツイよね」

「・・・・・・大丈夫ですよ」



会ってそれほど経ってないのに心配してくれてるみなみさんの言葉に微笑みで返す。多少無理はしてるかも知れないけど、それでも。



「まぁアレだ、お前はゆっくり休んどけ。あとは神咲姉や那美と久遠がちゃんとしてくれる。てゆうか、話聞くとわき腹に1発入れたんだろ? それだけでも大したもんだって」

「・・・・・・止められなかったんだし、失敗もいいとこですよ。拳じゃなくて、杭を突き立てて半殺しにするべきでした」

「ちょ、恭文くんっ!? さすがにそれだと美由希ちゃん死んじゃうからっ! なんでそんなこと言うのっ!!」



エイミィさんがそれはないと声を上げる。確かに、普通ならない。だけど・・・・・・今は普通じゃない。



「てゆうか、あれはまずい。まずいんです。普通にやったら、大抵の人間は負けます」

「恭文くん、それどういうこと? 薫さん、みんなの話を聞く限りじゃ恭也さんや美由希ちゃんレベルで剣術強いって言ってたけど」

「あぁ。お前やエイミィさんは知らないだろうけど、神咲姉は相当やる。アイツこそ、大抵の人間は相手にならないよ」



それでも、かなりマズイ。だって、あの美由希さんは・・・・・・。



「妖刀の支配下に居るのに、御神流の技が使えてるんです。僕が受けた内部浸透系の打撃も、その一つ。でも、御神流の技はそれだけじゃないです」

「・・・・・・つまり、恭文くんの見解としては、美由希ちゃんの技能や能力を、身体を支配している神無月は自由に使えるということだね。
美由希ちゃんも薫ちゃんレベルの剣の達人。だからこそ、余計に今の状況の悪さに拍車をかけている。それが怖い」

「はい」



万が一にも自分の時間感覚を引き伸ばす神速なんて使ってきたら・・・・・・いや、使ってきた。あの姿が消えたのは、間違いなくそれだ。

あんなチート技連発されたら、まじめに相手を出来るのは同じ神速を使える恭也さんくらいしか・・・・・・。



「とにかく、そこも薫ちゃん達には伝えておくよ。ううん、もしかしたらもう分かってるかも知れない。でも大丈夫、二人なら何とかしてくれるから」

「知佳の言う通りだよ。だから恭文、キミの仕事はゆっくり休む事。その身体じゃ、どうやったってそんな状態の美由希と戦うのは無理だろ?」

「そうだよ。さっきだって立ち上がろうとして知佳ちゃんに簡単に押さえ込まれちゃったんだし。無理に動いたら、傷に響くよ?」



リスティさんとみなみさんに言われて、思い出す。・・・・・・なんともないと思ったけど、やっぱりダメージは来てるらしい。

練習の時、恭也さんや美由希さんが徹を使っても加減してくれていたってのが、よく分かったよ。直接的に食らうとこんな危険な技だったとは。



「うぅ、そこを言われると辛いです」



この状態じゃ、多分1分と持たない。くそ、やっぱり負けだ。てゆうか、修行不足だ。まだまだ僕は弱い。



「とにかくだ、ゆっくり休んどけ。なに、大丈夫だって。退魔師には退魔師の戦い方って奴があるんだからさ」



手を伸ばして、少し乱暴に、だけど優しく、真雪さんが僕の頭をくしゃくしゃと撫でる。



「お前が美由希ちゃん心配するように、あたしらだって心配してんだ。・・・・・・さざなみ寮の総力結集してでも、ぜってーなんとかしてやるよ」



それが心地よくて、気遣ってくれるのが嬉しかった。だから、こう返事をする。



「・・・・・・はい」

「よろしい。それじゃあ、何か用があったらいつでも呼んでね。私達みんな、すぐに来るから」

「はい、ありがとうございます」





そのまま、四人は部屋の外に出た。



・・・・・・うー、悔しい。やっぱり悔しい。このまま何も出来ないのもそうだけど、リベンジ出来ないのも悔しい。





≪今回は負けもいいところですしね。しかし、あなたそこそこ鍛えているはずなのに、出撃にNGがかかるくらいにダメージがあるということは、美由希さん・・・・・・というより、美由希さんを操ってる神無月は、本気で殺そうとしてきたわけですか≫

「間違いなくね。・・・・・・斬る刃と、殺す刃ってどっちが強いのかな」

≪どちらかと言われれば、間違いなく殺す刃ですね。まぁ、状況によって変わりますけど≫



アルトの言葉に、気分が重くなる。こっちは美由希さんを助けようとする。だけど、向こうは殺そうとする。・・・・・・やっぱり、差が出てくるんだよね。



≪だけど、気になります≫

「なにが?」

≪いえ、なぜ神無月は美由希さんの技能を使えるんでしょう≫



え? いや、そりゃあ完全に美由希さんを支配下に置いてるから



≪ですが、薫さんや那美さんの話では、刀自体には十六夜さんのようなちゃんとした自我は存在せず、破壊衝動の塊となっていると言ってたじゃないですか。
そんなものに操られたなら、普通は闇雲に相手を斬りつけていくと思うんですけど。というより、過去でその手のロストロギアが起こした事件だとそういうパターンが多いです≫

「・・・・・・あれ、なんか変だね」

≪はい、変でしょ?≫



いや、待てよ。操られてるとか支配下に置かれてるって簡単に言うけど、本当に美由希さんは今どういう状態なの?

なんで、その状態で御神流の技が使えるの? 普通に自我すらなくしてるのに、技とか使えるのかな。



≪ちょっと整理してみます? ・・・・・・まず、支配下や操られているというのは、一種の精神操作系の能力の影響です≫

「じゃあ、その精神操作されている状態で、本人の能力を使える可能性は?」

≪かなり高度なレベルであれば可能です。その場合、洗脳と言った方がいいでしょうか。
ある程度操る対象の自我を解放した状態で、それに刷り込むんです。自分の命令に従うようにと≫





・・・・・・あれ、ちょっと待って。それやっぱりおかしい。もしも本気でそういう衝動の塊で、妖刀自体に自我がないなら、そんなことにはならないんじゃないの?

もしも、神無月が内包している強い破壊衝動で持ち主に凶行を強いる刀だとする。

それに美由希さんが飲み込まれて、その衝動のままに行動してたとしたらどうなる?



・・・・・・あ、それでも技が使える可能性はあるのか。技が身体に染み込んでるなら、使えていいわけだし。





「でもなんだろう、それが正解とは思えない。なんて言うか、あの時の美由希さんは・・・・・・こう」

≪冷静過ぎたですか?≫



アルトの一言で、気づいた。そうだ、美由希さんは冷静過ぎた。こっちの攻撃を食らって、わき腹を押さえて、数の上で不利と判断してすぐに逃げた。

もしもそういう破壊衝動のままに動いてるなら、これはありえない。きっとそのまま攻撃しようとしたに決まってる。というか、雰囲気が違う。



≪そうでない場合もありますが、今回は私も同意見です。なにより、あの時の雰囲気がそう言った衝動に飲み込まれたとは思えません。もっと冷徹で、底冷えのする鋭さがありました。
獣ではなく人・・・・・・人格を持ち得る者だけが到達出来る冷たい領域に、あの時の美由希さんは居ました。だからこそ、冷静に・・・・・・そう、冷静にです。冷静にあの場でパニックを起こして≫

「行動が遅れていたなのはやリイン、シャマルさんを狙った。そして、その中で自分を見て明らかに動揺していた横馬を狙った」



そうだ、行動や狙いの定め方が冷静過ぎる。倒れた僕だって明らかに最優先攻撃対象になりえるのに、迷うことなくなのはを狙った。

そう、なのはを狙った。あの場でパニックを起こして僕を止め、襲えば簡単に殺せそうななのはを。・・・・・・ということはもしかして、これは破壊衝動どうこうでなっている話じゃない?



「つまり今の美由希さんは洗脳されてる。決して完全に意識をなくしてるわけじゃなくて」

≪ある程度自分の自我を開いた状態なんですよ。いや、神無月がそうした上で美由希さんに精神操作を仕掛けている。
だからこそ、美由希さんは徹や神速を使えた。そして、あの妖刀はそこまで高度な精神操作を仕掛けられる。・・・・・・マスター、これはもしかしたら≫

「・・・・・・うん。美由希さんが刀剣屋さんに通ってたのは、神無月を見に行ってたせいだって言うし」

≪恐らくですが、その最初の段階から美由希さんに目をつけたんでしょ。そして、美由希さんに自分に会いに来るように催眠の類をかけた。そして・・・・・・決行です≫





なら、どうする? もしこの推測が当たっていたとしたら、神無月は宿した人格をなくして、持ち主を破壊・・・・・・殺人衝動の塊とし、狂った獣にする呪われたアイテムなんかじゃない。



その皮を被った、冷酷かつ冷静な狩人だ。これを早く薫さんに・・・・・・いや、待て。



・・・・・・あ。





「ね、アルト。洗脳されてるってことは、美由希さんはこう・・・・・・意識を失ってる状態ってわけじゃないんだよね」

≪はい。多分僅かですが覚醒状態、まどろみの中に居る感じではないかと思います。その人間の能力や経験も込みで操作するのであれば、そっちの方がやりやすくはありますから。
完全に自我を失っている状態でそれをやろうとすると、手間がかかって仕方ないんですよ。つまり美由希さんは≫





僕達と戦ってるという認識がない? ・・・・・・ならさ。



・・・・・・アルトは僕の提案に、それは試す価値があると言ってくれた。例えそれで完全に行動を止められなくても、弱体化は可能かも知れないと。

少なくとも、神速を連発なんてチートな真似はされなくなるはず。

低い可能性ではあるけど、やってみるか。でも、誰が? この中でそれが出来るのは?





「僕か」

≪そうですね。火力の点で言うならあなたと高町教導官の二人になりますけど、高町教導官はダメでしょう≫

「すっかり取り乱してたしね。美由希さん相手に力を向けるの、かなり躊躇うかも知れない。
かと言って、それで加減されても意味がない。1発で仕留めなかったら、多分そこで終わりだ」





よりにもよって取り込まれたのは美由希さん。僕とアルトの推測が当たっているなら、確実に警戒される。

なら、僕がやるしかない。・・・・・・でも、どうやって? うーん、ここはやっぱり・・・・・・悪手打ちかなぁ。

でも、リベンジはきっと出来る。決着自体は薫さんと那美さん達でいい。僕とアルトが無理に横からでしゃばって、決着をつける必要はない。



ここで重要なのは美由希さんの保護と、取り返しがつかなくなる前に神無月を止めることなんだから。・・・・・・なお、この時点ででしゃばってるとか言わないように。んなのはもう分かってるんだから。





≪というより、私の見立てでは、あなたは神無月のような相手からすれば、天敵となるはずなんです≫

「へ?」

≪忘れたんですか? あなたの手札には、こういう状況に強いものがあるじゃないですか≫





・・・・・・・・・・・・そうか。あの状態なら、神無月の能力を気にせずにやりあえる。



いや、神無月の能力がアレを上回っている状態だと、どうにもならないんだけど。でも、試す価値はある。



となると、まずは・・・・・・協力者が必要だね。僕だけが行って失敗した場合、なんのフォローも出来ないんだから。





「とりあえず、シャマルさんとリインに相談か」

≪そうですね≫










というわけで、念話を繋ぐ。・・・・・・まぁ、これで僕が出られなくても、なのはが何とか動けるようならオーケーではあるでしょ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



さざなみ寮のリビングで、すっかり落ち込むなのはちゃんをリインちゃんと二人でフォローしてると、恭文くんから念話が来た。





そして、簡潔に話をされた。妖刀・神無月が私達が考えている以上に危険な物である可能性と、その対処の方法を。










”・・・・・・なのはちゃんは無理ね。美由希さんがこんなことになって、すっかり気落ちしてるから”

”やっぱりですか”

”はい。というより、神無月がそんな能力持ちなら、今のなのはさんを出しちゃだめなのです。精神が不安定な時にそんな攻撃を食らったら・・・・・・”





そうね。正直、色々な戦場を周って来た身として、今のなのはちゃんを当てにするのは躊躇う。

・・・・・・やっぱり、まだ子どもなのよね。14歳なんて、1番多感な時期ですもの。

ここはやっぱり、恭文くんということになる。私はそういう火力関係はさっぱりだし、リインちゃんは補助魔法がほとんどだし。



なにより、恭文くんなら神無月相手でも、アルトアイゼンの言うように張り合える・・・・・・ううん、天敵になり得るかも知れないから。





"というか、あの・・・・・・止めないんですか?"

”あなたは、止めて聞く子じゃないでしょ?”



ここで反対して一人で飛び出すよりは、私とリインちゃんが見てた方がまだ安心出来るわ。薫さん達が怪我をした場合の治療も私なら出来るし。



”シャマル、恭文さんはユニゾンでなんとか動けないですか?”

”まぁ、それならギリギリかな。いえ、ユニゾンしなくても、私がもう一度回復魔法をかけてみるからなんとかなるかも。
ただし、戦闘は操られた美由希さんの弱体化が見られる場合のみよ? そうじゃなかったら、私は許可出来ません”

”それで、充分です。なにより、僕が無理に決着をつける必要はないです。恭也さんや美由希さんと同レベルの使い手って言う薫さんもこっちには居るんですから”



確かに、そうなのよね。もちろん、薫さん達がそういう手を使えるかも知れないし、対抗策もあるかも知れないけど、霊的な力同士の対決である以上、向こうがそうさせない可能性も出てくる。

だけど、私達は退魔師でもなんでもない。私達は魔導に通じ、学び、その道を進むもの・・・・・・魔導師なんだから。もしかしたら、そこから好機を見出せるかも知れない。



”かなり無茶ではあるけど、やってみましょうか。私も結界を張ってサポートすれば、美由希さんを閉じ込めることも出来るし、その手の能力に関しても、私なら対抗策がないわけじゃないもの”



これでも長い時間を生きてきたベルカの騎士。そういう能力や魔法が今みたいにタブー視される前から戦ってきたもの。

対策の一つや二つ、手札の中に加えていないわけがないわ。



”大丈夫ですか?”

”問題ないわ。湖の騎士・シャマル。癒しと補助と・・・・・・世界中の誰よりも、恭文くんあなたを愛する事が私の本領ですもの”

”最後は余計だからやめてっ!?”



余計じゃないわっ! 私、知佳さんやゆうひさんを見て、もっと頑張るって決めたんだからっ!!

・・・・・・とにかく、私達も薫さん達の邪魔を絶対にしないという条件付きで協力はしていいかも知れない。

少なくとも一時撤退という形になっても、神無月に結界を破壊する能力が無い限りは、閉じ込めて隔離出来る。そうして少しの間だけ時間を稼いで、対策を整える事は出来るはず。



本当は局の規約でこういう干渉は避けるべきなんでしょうけど、そんなこと言ってられない。

だって、大切なあの子恭文くんが私を頼ってきてくれてるんだもの。

現地妻1号として、お姉さんとして、そして1番最初に恭文くんにフラグを立てられてときめいちゃった女の子として、ここで頑張らないで、いつ頑張るのよ。





”それで、どうするですか? 普通に言ってもきっとみんな納得してくれないと思うです”



そうよね、恭文くんをキーとして使うところがこの作戦の問題だもの。絶対に納得してくれないわ。



”・・・・・・隙を見て抜け出すしかないでしょ”

”そうね。まぁ、それまでに事態が解決していることを願いましょ。無理なら、その時は・・・・・・”










私達三人も、神無月を追う。





とにかく、クラールヴィントに薫さんと那美さんの行方を追わせておかないと・・・・・・。





戦闘の状態が本当にアレなら、介入はきっと必要だわ。その辺りも含めて、様子を見ておかないと。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、数時間後。





事態は、解決しなかった。誰もが寝付いたような時間に、僕は身体を起こす。





リインとシャマルさんは、とっくに現地に飛んでる。もうどんぱちは始まってるらしい。そして、かなりの苦戦。

三人一緒に移動というのも考えたけど、寮の中で少しだけだとしても団体行動は、目立ってバレる可能性があるということで却下になった。なので、これです。

僕も、すぐに追いかけようと二階の部屋の窓を開け、身体を出す。そして、そのまま・・・・・・飛んだ。










「どこへ行かれるつもりですか?」





訂正、飛ぼうとする前に、声をかけられた。



気配を察知出来なかったのは、本調子ではない証拠と思いつつ右を見ると、居た。空をぷかぷか飛んでいる十六夜さんが。





「いえ、気晴らしに空の散歩にしゃれこもうかと」

「・・・・・・私も、よくそういう事をします。ですけど、そんな時に今のあなたのように強い瞳はしません。
恭文様、正直にお答えください。あなたは、美由希様と薫達のところへ、行くつもりですね。神無月を止めるために」



・・・・・・頷いた。もう十六夜さんは全部見抜いていたから、下手な否定や言い訳は無駄だった。

くそ、まさか見張りが居たとは。これ、薫さんの指示か?



「薫は、見抜いていました。あなたなら、確実にまた首を突っ込むと。・・・・・・部屋へ、戻ってください。今のあなたが行っても、何も出来ません。薫達の邪魔になるだけです」

「お願いですから、死にに行く人間止めるような口調はやめてもらえます? 出来る事なら、見つけてます。
僕だから出来る事を。そして、それをやりに行くんです。絶対に死ぬためじゃない。ダメならすたこらさっさと逃げますし」

「・・・・・・本当ですか?」

「はい。なにより・・・・・・」



そう、なによりだ。もうこの感情のおかげで身体の痛みや重さが少し吹き飛んでる。

僕の中にある美由希さんを助けたいという感情と同じくらい強いもの。それは・・・・・・戦う人間としての意地。



「このままやられっ放し、任せっ放しなんて、ごめんです。あのバカ妖刀には、僕に喧嘩吹っかけた礼をしてやらないと気が済まない。
というか、下手すると薫さんや那美さんがどれだけ強いか分からないですけど、止められない可能性があるんです」

「どういうことですか?」



うーん、とりあえずその答えは・・・・・・。



「一緒に空のお散歩としゃれ込みませんか? そうしながらお話します。というか、十六夜さんとデートしたいんですよ」

「・・・・・・あら、こんな時に女性をくどくなんて、感心しませんね。それに私、あなたよりもずっと年上です。それも大体30倍以上」

「大丈夫です、僕は年上の方が好みですから。十六夜さんみたいな素敵な女性なら、400歳だろうが4000歳だろうが、大歓迎ですよ」

「ふふ、お上手ですね。そんなことを言っても、何も出ませんよ?」










とにかく、一旦部屋の中に戻る。で、十六夜さんの指示で、気配を消した上で廊下に出る。そして・・・・・・明かりの付いていないリビングに侵入。





心の中で薫さんに謝りつつ、中にあった十六夜さんの本体を回収。てゆうか、また無用心な。薫さんの部屋の中に置いておけば、確実だったと思うのに。










「いえ、少し前までなのは様の相手をしていて、そのせいで」

「・・・・・・納得しました」





とにかく、両手で大事に本体の刀を回収。その重みを真摯に心に受け止めつつ、振り返る。



振り返って、止まった。だって・・・・・・あの、十六夜さんの胸が間近にあったから。というか、着物越しだけど大きい。





「恭文様、どうされました?」

「・・・・・・あの、ちょっとどいてもらえます? ちょうどいい具合に目の毒なので」

「・・・・・・あぁ、これは失礼しました」



十六夜さんがどいてくれて、ようやく息が吐けた。やばい、なんかいかがわしいこと考えてしまった。落ち着け、僕落ち着け。さすがにありえないから。びっくりだから。



「恭文様も、年頃なのですね。そう言えば12歳でしたよね? なら、女性の身体に興味が出てきてもおかしくない年齢です」

「あの、何故にそんなに微笑ましく笑うんですか。普通嫌がるとかなんとかだと思うんですけど」

「いえ、歴代の神咲の男の当主だったり、男の子の縁者がたまに私の乳房の部分をちらちらと見られる気配を感じるので。
なんというか、微笑ましいのです。そういう気配を感じると、ちょっと前までは赤ん坊だったのに、もうそんな年頃になったんだなと」



・・・・・・どうしよう。男としては仕方ないと思う部分もあるけど、なんかツッコみたい。



「これから少しずつ大きくなり、素敵な女性と恋をして、結婚し、子を産み、育てるのかと思うと、なんというか感慨深くて」



あの、すごくツッコみたいんですけど。というかさ、お母さんの心境なのはどうなのよ。



「最近は特にそう感じる事が多いんです。目が見えるようになったおかげでしょうか。体型や顔立ちの変化がすぐにわかりますし」

「え・・・・・・?」

「私、数年前までは視力がなかったんです。ただ、まだ薫がここに居た時に色々ありまして、そのおかげで視力が復活したんです」



そ、そんなハードな過去があったとは。というか、だから気配がどうとかって話をしてたのか。

そう言えば、五感に障害がある人は、他の感覚が無くなった感覚を補うように強くなるって言うし、そういうのを敏感に感じてたのはそのせいなのかも。



「ですから、先ほどの少し戸惑ったような恭文様の顔も、しっかり見えます」

「・・・・・・え、えっと。ゆうひさんや知佳さんにはご内密に。あとリインやシャマルさんには絶対秘密に。
特にこの二人に知れると・・・・・・僕が凄まじく大変なことになります。いや、真面目にお願いします」

「はい。では、私達だけの秘密ですね」



や、やばい。このお姉さんすっごく可愛い。というか改めて見ると無茶苦茶美人。だから微笑まれてドキドキしまくってるし。

てゆうか、落ち着け僕。バイトで来てるのにそこの人とそうなるってありえないから。知佳さんだっていかがわしい事抜きで仲良くしようねって話なんだから。



「とにかく、これで出発出来ます?」

「はい。・・・・・・ですけど、薫や那美に怒られてしまいますね」

「すみませんけど、巻き込まれてください。このお礼はたっぷりさせてもらいますから」

「はい、期待しています」





とにかく、また忍び足で気配を殺しながら部屋に戻る。玄関も考えたけど、絶対危ない。開けた途端にブザーが鳴り響くとか、寮の照明が全部点くとか、普通にありえそうだ。



だけど、窓なら大丈夫。窓なら十六夜さんだけしか居なかった。窓に足をかけても、防犯ブザーも何も鳴らなかった。





「・・・・・・あそこから見張ってたの、十六夜さんだけですよね?」

「はい、私だけです」





不安になったので小声で確認しつつ、部屋に戻り、ドアを閉める。そして、鍵も閉める。うし、これでオーケー。



そのまま、安堵するヒマもなく十六夜さんを抱きかかえたまま窓へ足をかけ





「どこ、行くつもり?」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?





「こんな夜中に抜け出すんは、感心せぇへんなぁ」





後ろを振り向くと、白いパジャマを着た知佳さんが居た。そして、紺色のパジャマを着たゆうひさんも居た。



思わずどっかのホラー映画の襲われた主要キャストよろしくな顔で叫びそうな口をなんとか押さえる。





「そんなに怖がらなくてもいいのにな。うー、私傷ついたよ」

「うちもや。知佳ちゃん、うちら嫌われたんかなぁ」





いきなり部屋の中に影が生まれたら誰だって叫びたくなるわっ! つーか、マジで心臓止まるかと思ったしっ!!



でも、うそ。何時の間に部屋の中に? だって、ドアも鍵も閉めたはずなのに。





「マスターキー、お兄ちゃんから預かってたんだ。それと、ごめんね。ちょっと裏技使って、ずっと行動をチェックしてたの。というか、君だけじゃなくてシャマルさんやリインちゃんも居ないよね」

「あ、うちは知佳ちゃんに付き合ってたんよ。君の事やから、絶対このままはないなぁ思うてたし」



そっか、管理人さんなら全部の部屋の鍵くらい持ってても不思議じゃない。てゆうか、どうやって行動をチェック・・・・・・あぁ、ここはいい。

くそ、色々と失敗だった。なんだかんだで僕の行動は見抜かれてたってことかい。



「・・・・・・どこ、行くつもりなの? 怪我してるのに、しかも勝手に十六夜さんまで持ち出して」

「い、いえ。なんというか、その・・・・・・十六夜さんと一夜のアバンチュールを。ね、十六夜さん」

「はい。私と恭文様は初めて会った時から胸の高鳴りを互いに抑えられなかったんです。だけど、もうすぐ別れてしまう身。せめて一夜の想い出を互いの心と体に刻み込もうと・・・・・。知佳様、ゆうひ様、すみません。
ですが、この霊剣・十六夜。今までとこれから先の長い時間の中で一度あるか無いかのときめきを、抑えることが出来ません。このまま、恭文様と行かせてください。一夜だけでも、恭文様と契りを交わしたいのです」





・・・・・・なぜにその綺麗で愛らしい顔と口からそんな嘘がペラペラと飛び出すんですか。僕は非常にビックリなんですけど。



とにかく、そこに乗っかる事にする。せっかく十六夜さんがハッタリかましてくれたんだから、乗らないと意味がない。





「というわけですみません、浮気しようとしまし」

「「真面目に答えて」」





・・・・・・・・・・・・え、言い訳だめ? 十六夜さんすっごい頑張ったのに。よーく見ると、かなり頬が赤く染まってるのに。



あ、なんか頷いた。それもすっごい怒った目で。しょうがないので、全部吐く。





「神無月を、潰します。シャマルさんとリインが居ないのは、それが理由です」

「・・・・・・そっか。でも、今の君が行っても、足手まといだよ」

「知佳ちゃんの言う通りや。怪我しとって、さっきまで満足に動けんかったのに、何の手段もなしでそんな事」

「手段があるって言ったら、どうします? それも、多分僕達にしか出来ない方法」

「それでも、だめ」



・・・・・・表情が崩れた。知佳さんが泣きそうな顔で、僕を見る。ゆうひさんは、今までとは違う大人としての顔。



「私とアバンチュール、するんだよね。いかがわしいこと抜きで、いっぱい仲良くなるんだよね。でも、怪我して、ボロボロになったら、そんなこと出来ないよ?」

「・・・・・・うちかて同じや。これで君になんか有ったら、知佳ちゃんもそうやけど他のみんなやフィアッセにも申し訳が立たん」



・・・・・・でも、やらなきゃいけないんです。何もしないのなんて、嫌なんです。



「また強情っぱりやな。そういうのもフィアッセや恭也君達そっくりやわ」

「恭文くん、やらなきゃいけないなんて、誰がそう決めたのかな。少なくとも私やゆうひさんは決めてない」

「でしょうね。だから、僕が決めました」



その二人の瞳を見返す。・・・・・・もう、決めたから。

だから、迷わないし躊躇わない。



「あのはた迷惑な妖刀に仕返しして、美由希さんも取り戻す。そう、決めました。誰でもない、僕が」



・・・・・・有効手になりそうな物があるからとか、そういうのだけじゃない。

結局、これに加わるのは僕のわがまま。だから、飛び込む。それだけ。



「それを止める言い訳になりそうもの、何もないんです。心が、想いが止まるな、戦えって言ってるんです。
だから、行きます。行って・・・・・・今を、覆します。誰でもない、自分のやらなきゃいけないと思う事を、通して来ます」

「そっか。ほな、十六夜さんが止めなかったのも、それが理由ですか?」

「はい。・・・・・・申し訳有りません。瞳を見た瞬間に、止められそうもないと、気づいてしまいましたから」

「・・・・・・分かりました。でもね、バイトの君が十六夜さんを勝手に持ち出したり、こんな事をしたら、きっとお兄ちゃんやお姉ちゃん、薫さん達からすっごく怒られるんだ。まぁ、十六夜さんは許してるからその行動みたいだけど」



うぅ、でしょうね。やばい、今度こそ死亡フラグが立つかも。



「だから、一緒に怒られようか。そうすれば、私とゆうひさんと、十六夜さんと恭文くんで4分割出来るし、少しはマシになるよ」

「え?」

「うちと知佳ちゃんも共犯言うことにすれば問題ないよ。・・・・・・ただし、ちゃーんと無事に帰ってくること。美由希ちゃんや薫ちゃん達だけやない。君とこてつちゃん、シャマルさんとリインちゃんもやで?」



あ、あの・・・・・・えっと、いいんですか?



「えぇも悪いも無いよ。うちら二人も、ここで十六夜さんや二人を止める言い訳が出来んのよ。困ったことになぁ」

「だから、行って来て。やらなきゃいけないと思うなら、それを通して来て。私達は帰ってくるの、待ってるから」

「・・・・・・・・・・・・はい、行って来ます」










そのまま、十六夜さんを抱えて空へ飛び出した。・・・・・・絶対に、止める。





今僕がやらなきゃいけないことを、そうしなきゃいけないと思う事をやる。それが、これなんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・赤い月が空に昇っている夜の街の公園で、うちは荒い息をつく。





恭也君とやりあった時も思った。かなりの者だと。でも、あの子のスピードはまだついていけた。神速とか言うものを使われてもだ。





だけど、この子の攻撃はそれよりもずっと速い。パワーはともかく、スピードと一瞬の鋭さだけなら、恭也君以上だ。





そして、それは威力へと変換される。スピードは速さ、速さは攻撃の重さ、攻撃の重さは威力・・・・・・そんな過程を通る事で、鋭い矛となる。










「・・・・・・薫ちゃん」





街で酔っ払いに襲い掛かろうとしていた美由希ちゃんを見つけてなんとか止めて、うちが前に出てあの子と斬り合う。

刃を打ち込み、打ち込まれ、払い、避け、夜の寒気がするような闇の中で火花を散らす。散らして・・・・・・思った。おかしいと。何かが妙だと。

うちの経験上神無月のように人格が無くて、その内包した衝動に持ち主が取り込まれる刀・・・・・・というより、アイテムがこういう事態を起こした場合、その持ち主はもっと理性無く暴れるはず。



だけど、今の美由希ちゃんからそれを感じない。衝動というより、もっとこう・・・・・・あぁ、ここはいい。今は目の前の事に集中や。





「やっぱり、美由希ちゃんをどうにかせんと止められんか」



出来れば無傷で捕まえて、なのはちゃんを泣かせたりとかはさせたくなかったんやけど、そうも言ってられんか。



「久遠」

「ごめん、かおる。みゆきのうごきがはやすぎて、こうげきがあてられない」





くそ、やっぱりか。せめて美由希ちゃんの持ってる技能が、何の制限も無く使えてるこの状況だけでも何とか出来れば。

那美の鎮魂術や補助系の術でもそれはだめ。対抗策が施されているのか、防御されるらしい。

久遠の雷撃も避けられる。そして、うちは防戦一方で傷だらけ。これ、どないしろと?



ええい、どうしろもこうしろもなか。やらんといかんこと、やるだけやろ。





≪那美、集中して。・・・・・・また来るよ≫



瞬間、目の前で立っていた美由希ちゃんが消えた。そして、背筋が寒くなり、全身が鳥肌になるような感覚を覚える。

うちは左に避けつつ、御架月を左から振るい、打ち込む。次の瞬間、うちの右の二の腕がざっくり斬られた。



「薫ちゃんっ!!」



ギリギリで避けられた。でも、まだだ。刃は水平に突き出され、その刀の刃は、うちに向かっている。御架月を盾にして、更に左に・・・・・・いや、後ろに飛ぶ。

その次の瞬間、鋭い斬撃がうちを襲う。御架月の刃と神無月の刃がぶつかり合い、火花を散らし・・・・・・吹き飛ばされた。



≪・・・・・・っ! 僕の身体になんてことするんだっ!!≫



とにかく、受身を取りつつ再び美由希ちゃんと対峙。・・・・・・確かに恭文君が言うてたように、相当やばい。こっちは美由希ちゃん人質に取られてるんと同じ。だけど、向こうはうちらを殺すつもり満々だ。この差はデカイ。

だから、そのまままた美由希ちゃんの姿が消える。消えて・・・・・・うちを刃が襲う。見えるわけじゃない。そう、見えない。空気の震えと感覚で分かる。



「薫ちゃんっ!!」

「かおるっ!!」





まずい、これは・・・・・・タイミング的に避け切れないっ!!





「フリジットダガーっ!!」





瞬間、青い短剣が美由希ちゃんを襲った。放たれた数は複数。それを見て取ったのか、美由希ちゃんはうつろな瞳をしながら左に飛び、それらを避けた。



短剣は後ろに飛び下がる美由希ちゃんに斬り払われ、避けられながら地面に着弾していく。うちがそれに呆然としていると、また変化が起こった。





「かおる、なみ。みてみて、そらが」





そらが、幾何学的な色に変わる。瞬間、眠る街から感じていた人の気配が消えた。赤い月も消えた。



これは、結界っ!? だが、退魔師が使うそれとはまったく違うっ! なんなんだこれはっ!!





「・・・・・・これでもう、逃げられないわよ」

「魔導師が使う閉鎖結界です。これを破りたければ、なのはさんのSLBでも撃つしかないですよ」





聞こえた声はうちや那美の後ろから。



そこには、いつの間にか緑色の服を着たシャマルさんと、白い薄出の服を着たリインちゃんが・・・・・・って、なんばしよっとっ!?





「もちろん」

「美由希さんと薫さん達を助けに来ました。あとあと、久遠もです。あぁ、やっぱり可愛いですー♪」

「リインちゃん、そこは後よ。とにかく・・・・・・」





シャマルさんが右手をかざすと、指につけている二つの指輪が輝く。瞬間、地面から翡翠色の光の刃が生まれ、美由希ちゃんを狙う。





「大人しく、なさいっ!!」





だけど、美由希ちゃんはそれを後ろに飛んで避ける。いや、それだけじゃない。次々と地面を割る形で襲ってくる刃を避け、こちらへと大きく・・・・・・飛んだ。



だからなのかも知れない。美由希ちゃんが白い色のわっかに両手両足を拘束されたのは。





「・・・・・・空間設置型のバインドです。空中での機動を読めば、これくらいは楽勝です。というわけで」

「恭文くん、行ってっ!!」





え?





「・・・・・・・・・・・・鉄輝っ!」





空中から声がする。そこを見ると、足元に青い翼を生やし、それを羽ばたかせながら美由希ちゃんに突進する小さな影。



その子の手には、蒼い光を放つ刃。





「一閃っ!!」





青い閃光は、そのまま動けない美由希ちゃんの肩口に打ち込まれて、その身体を真っ二つに斬り裂いた。



その衝撃のせいか、両手両足に仕掛けられたわっかは粉々に砕け、美由希ちゃんは地面に落ちる。あの子も、そのままゆっくりと着地する。





「・・・・・・恭文君っ!?」

「やすふみ、なにしてるのっ!!」

「もち、あのバカ妖刀にお礼をするために来たんですよ」



地面に降り立ち、不敵な表情で笑いながら・・・・・・そう、笑いながらだ。

笑うというのは、本来攻撃行動の一種とされている。今あの子がしているのは、まさしくそれ。つまり、そうとうやる気。



「・・・・・・さぁ」





そのまま、左手で倒れた美由希ちゃんと、神無月を指差した。





「お前の罪を数えろ」

「あほかっ! 時系列的にそのネタはまず・・・・・・というより、自分なんばしよっとっ!? 怪我しとるのにこんなとこまできてっ!!」





だけど、来ていたのは恭文君だけじゃなかった。空から・・・・・・あぁ、なんでお前まで居ると。あれほど止めるようにと言ってたのに。





「いざよいまで」

「というか、薫ちゃんっ! 恭文君の腰の後ろ、十六夜さんがっ!!」

「すみません、薫、那美。お叱りは後で受けます。だけど・・・・・・あの妖刀、私達が考えていたよりずっと危ないものかも知れないんです」



はぁ?



「恭文様」

「はい。・・・・・・那美さん、十六夜さんお願いします」



美由希ちゃんを警戒しながら、恭文君は腰の後ろ側に差していた十六夜を鞘ごと左手で抜き、近くに居た那美に差し出す。

那美は、それを丁寧に受け取ってくれた。



「そして、恐らく恭文様は神無月にとっては天敵となる存在です。止められないというのもあったのですが、詳しく話を聞いて、私の判断でこの場に連れて来ました」



まてまて。十六夜、それは一体



「ねぇ、そろそろ起きなよ。・・・・・・聞こえてるんでしょ? 僕達の声」



恭文君が声をかける。倒れた美由希ちゃんの手に握られている神無月に向かって。



「あの、恭文君。なにを」

神無月コイツ、人格がない破壊衝動の塊なんかじゃないです。人格なら、ちゃんとある。十六夜さんや、今薫さんが持ってる御架月・・・・・・でしたっけ? その子みたいに」

≪・・・・・・・・・・・・なんだ、バレてたのか≫



その声に寒気がした。・・・・・・いや、その可能性は私も考えた。だが、あまりに刀から感じる気配が禍々しくて、それをいの一番に捨てた。

訂正、捨て切れなかった。どこかでその可能性が引っかかっていたから。だから、さっきまでずっとそこを考えていた。



≪いつ、気づいたの?≫

「お前・・・・・・というか、お前に洗脳された美由希さんの攻撃を食らった時にね。今の美由希さんの状態が実のところどういうものかと真剣に考えて、答えに行き着いた。かなりギリな賭けではあったけど」

≪ですが、勝ちました。あなたは、破壊衝動の塊で、人格が既にない妖刀のフリをしていただけですよ。そっちの方が色々とやりやすいんでしょ?≫

≪うん、正解だよ≫



刀から光が漏れる。漏れて出てきたのは・・・・・・白い、色が違うだけでデザインだけで言うなら喪服のようなものにも見える服を着ている、恭文君と同じくらいの身長の男の子。

髪は白く、瞳は黒。・・・・・・異様な感じを受ける。いや、寒気がする。



「そういうのに対してと、僕やその退魔師が持ってる剣に対しての対処の術式は、違ったりすることが多いんだよ。まぁ、そうやっての予防策?
というより、こうやって話すのがめんどくさいからさ。そういうフリをしていたってわけ。でも、それだけが理由じゃないよ」



そう言って笑う。とても歪んだ、冷たい笑みを浮かべる。それにまた寒気が走る。



「僕、人間嫌いなんだよね。愚鈍で、ゴミみたいだからさ。君達だって、ゴミと真面目に話したりはしないだろ?」



これはまた・・・・・・そうとうやな。御架月もそこまでじゃなかったというのに。こうなったら、破壊するしか、ない。



「そっか。・・・・・・で、その嫌いな人間の力を借りないとどうにもならないお前が、これ以上どうする気? もう、今までみたいにはいかないよ」

「みたいだね。君、一体何したのさ。どんなに呼びかけても、意識が全く戻らない。
身体自体も、錆びついた機械みたいにガタガタ言ってる。これじゃあ、この女の身体に染み付いてる技が使えないよ」

「なに、ちょっとした裏技その1だよ。あぁ、しばらくは目を覚まさないから」





そのまま、恭文君が正眼に構える。・・・・・・そうか、身体を痛めつけるだけやない。多分、この子の能力である魔法で美由希ちゃんの意識を奪ったんだ。

でも、これで違和感に納得がいった。美由希ちゃんは操られている状況に置かれても、意識が多少なりともあったんや。

そこを誘導して、美由希ちゃんの持ってる技能を使わせたということか。要するに、一種の催眠状態に置いた。そういう事象は、過去に例がないわけやないからすんなり納得出来る。



それが神無月の本当の力。この刀は持つ者を飲み込むほどの破壊衝動を内包したものなんかじゃない。人を手ごまとして、殺し合いをさせ、それを楽しむ最悪な妖刀ばい。いや、存在するためにと考えるべきか?

霊剣というのは、あんな風に姿を表したり、その魂を保つのに霊力を消費する。だから、力と存在を維持するために常に霊力を必要とする。十六夜や御架月の場合は、うちや神咲の人間・・・・・・所有者の霊力でそれを補っとる。

恐らく、神無月はもっと手っ取り早い方法で自分の魂を維持してきたんだろう。すなわち、人の命。それを喰らい、自身が存在する糧としてきた。



うちは人を暴走させて、結果的にそうなったもんと考えていたんだが・・・・・・。





「まぁ、いいや。それでも・・・・・・」



そいつの後ろの美由希ちゃんが立ち上がる。

そして、神無月が刀の中に吸い込まれた。



≪こいつの身体、なかなかおもしろいしね。適当に有効活用させてもらうさ。ふふ、僕が本気を出せば、ガラクタをしっかりと一級品にすることも出来るんだ。
どう、すごいでしょ。例えボロボロでも、お前らを全員潰せれば問題はない。その後で、お前達の中から適当に使えそうな奴を攫って、また同じ事をすればいいんだからさ≫

「そっか。だったら・・・・・・」



恭文君の姿が消えた。そして、次の瞬間、刃が打ち込まれていた。肩口を狙った一撃に、美由希ちゃんが反応してそれを後ろに飛んで避けた。

だけど、本当に僅かにだけど、動きが鈍くなっていたのを、うちは見逃さなかった。・・・・・・確実に弱体化しとる。これなら、いけるかも知れん。



「有効活用する前に、ぶっ壊してやるよ」

≪薫さん、那美さん、下がっていてください。コイツは、私とマスターが叩き潰します≫

「ちょ、待たんかいっ! 自分、いきなりそんなこと」

「お願い、します」





恭文君が瞳を真っ直ぐに向けて、うちを見る。その瞳で言葉が止まる。

そして、伝わった。この子は別に考えなしでこんな事言うてるわけやないと。・・・・・・つまり、そういうことなんやな?

うちも視線に思いを乗せてあん子にぶつける。どうやら、それで正解だったらしい。ちゃんと返事が返ってきたから。



それなら・・・・・・ここは任せよう。





「那美、ここは任せるんや」

「薫ちゃんっ!?」

「えぇから。・・・・・・頼む」

「分かった」





そのまま、美由希ちゃんも構える。恭文君も構えた。二人は飛び出し、刃を袈裟に打ち込んで・・・・・・ぶつけ合った。



さて、うちと那美もやることやらんと。せっかく恭文君が時間を稼いでくれとるんや。無駄にするわけにはいかん。

・・・・・・そう、あん子は時間稼ぎをしてくれとる。うちと那美、久遠なら、あのぶっそうな妖刀の能力を無効化し、確実に潰せる手があると確信した上で。そして、それは事実。

那美は剣術はあれについて行けるほどレベル高くはない。久遠も同じく。加勢しないところを見ると、リインちゃんとシャマルさんも同じくだと思う。



そやから、うちはこちらに歩み寄ってきた那美が差し出してくれた十六夜を左手に持ち、そのまま抜く。那美も、それが分かったからその場で退魔術の展開を開始する。

そうして、うちの右手に御架月、左手に十六夜の二刀流体勢で、刃を下ろし、呼吸を整え、集中する。集中して、ようやく分かった。

あん子は美由希ちゃん助けに来たわけでも、神無月壊しに来たわけでもない。もちろん、うちらの邪魔をするつもりもない。



うちと那美が、神無月に対してちゃんと対処が出来るように・・・・・・ようするに、退魔師としての仕事を完遂出来るように、手伝いに来てくれたんやと。

それがわかったからこそ、十六夜かてここにあん子を連れてきたんや。付き合いが長いからこそ、行動だけで考えてることは分かる。

・・・・・・ただし、傷を負った身でこんな無茶かましたことに関しては、しっかり説教はさせてもらうから。



・・・・・・十六夜。





≪はい≫





御架月。





≪うん≫










・・・・・・行くよ。





集中しながら、闇を斬り裂く二つの銀色の刃の交差を見ていた。そして、何度目かの交差の時、うちは理解した。





確かにあん子は、神無月という妖刀にとって天敵足り得る存在だと、はっきりと理解した。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



刃を闇の中で幾度と無く打ち合わせる。距離は取らずに、襲い来る斬撃をたたき伏せる。





何度も、何度も。神無月とアルトの刃がぶつかり合い、火花を、衝撃を撒き散らす。










≪あはははっ! 君の刀もなかなか業物みたいだけど、そんなんじゃ壊れないよっ!!≫

「ぐだぐだ抜かすな三流が」

≪ほう・・・・・・なら、ほらっ!!≫





鍔迫り合いしていると、神無月が光を放つ。その刃が紫色に輝き、僕に照射された。



瞬間、身体が固まり、力が出なくなる。・・・・・・これは





≪あはははははっ! 動けないよねっ!? 動けないでしょっ!!≫





神無月を持った美由希さんが、二、三歩下がる。



下がって、そのスピードよりもずっと速い速度で、また踏み込んできた。





≪もらったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!≫




そのまま、神無月の喜びの声と共に、袈裟に刃が僕に向かって打ち込まれた。





「・・・・・・・・・で?」





そのまま、刃を払う。当然、右腕を動かし、アルトをその刃で打ち込んでだ。



夜の闇に火花が散る。散って、打ち込まれた刃は僕の右側を通り過ぎた。





≪・・・・・・え?≫





神無月が驚きの声を上げる。というか、美由希さんも隙だらけになる。



どうやら、僕が動けたのが相当お気に召さないらしい。





≪もう、ネタは上がってるんですよ≫





そう、上がっている。だから、僕は左手・・・・・・というより、左拳に青い魔力を纏わせて、それを美由希さんの右わき腹へと叩き込む。

狙った箇所は、数時間前にブレイクハウトで手傷を負わせた箇所。そして、何かが折れる音と感触を確かに感じた。

叩き込んで、そのまま吹き飛ばす。美由希さんの身体は、そのまま地面を転がり、すぐに受身を取った。



うつろな目をしながらも、美由希さんの表情が歪む。そして、左手で自分のわき腹を押さえる。うん、アバラへし折った。

この状況で無傷で助ける手段なんて、僕にはないから。つーか、スタン付与の魔法でも止められなかったし。ただ、殺しはしない。一生残る傷を付けるつもりもない。

ただし、それ以外なら遠慮なく攻撃行動を加える。美由希さんの反応と身体能力の高さはよく知ってる。油断すれば・・・・・・死ぬのはこっち。





≪そんな、どうして? 僕の能力が人間に通用しないはずがない。脆弱な精神しか持ち得ない人間に、敗れるはずがない。現に今までだって≫

「言ったろうが、ネタはバレてるってな。・・・・・・美由希さんに対しても同じ事をしたんだろ。そうやって、刃紋から出る光で催眠術をかけた」



だから、現状に繋がってる。だから、美由希さんは妖刀・神無月このバカの人形になってる。

そう、ネタはバレてるのよ。シャマルさんやリインと念話越しにあれこれ協議して、もう確信が持てた。ネタのバレてる能力なんざ、魔法やマジック以下。暇つぶしにもなりはしない。



≪それがあなたの本当の能力。そうして生ける者を殺すのがあなたのやり方。・・・・・・というより、分かってませんね≫



そう、分かってない。もう・・・・・・僕は鎖を、砕いてる。



≪知ってますか? 暗示は、より強く、強固な別の暗示の前では無効化されるんですよ。もちろん、かけられた内容やシチュにもよりますが≫

≪はぁ? いきなり何の話を・・・・・・・・・・・・まさ、か≫



また光が放たれる。身体に先ほどとは比べ物にならないくらいに強い虚脱感と痺れ、普通だったらここで意識が切れるけど、問題無い。



「邪魔だ」





それを、その言葉と共に払いのける。そう意識するだけで、身体は元の感覚を取り戻す。



もう、今の僕は普通の状態じゃない。こんなんじゃ、止まるわけがない。





≪そんな。僕の暗示が、力が・・・・・・跳ね返された≫

「どうした、おままごとはおしまい? ・・・・・・だったら、おとなしくぶち壊されてろ」





身体中から力が溢れてくる。周りの空気が、僕の放つ気迫・・・・・・いや、殺気で重くなる。それがどうにも楽しくて、思わず唇の端が歪む。



まぁ、ここは自重しとくか。相手は魑魅魍魎の類。油断したら、速攻で喰われる。これだけがコイツの能力ってわけじゃない可能性もあるんだし。





≪・・・・・・まさかお前≫





そのまま、飛び出す。飛び出して、袈裟にアルトの刃を叩き込む。





≪自己暗示による強化を使ってるのかっ!? それもそうとう強固・・・・・・僕の本気の暗示や催眠術を受け付けないほどのっ!!≫





神無月はそれを避けて・・・・・・いや、避けられない。



刃を翻し、僕はそのまま美由希さん目掛けて打ち込む。神無月はまずいと思ったのか、美由希さんの身体を動かし刃で防御する。そして、そのまま大きく後ろに飛んだ。





≪そんなバカなっ! こんな平和ボケした時代・・・・・・それも、こんなガキに、そんな真似が出来るわけがないっ!!≫





そんな戯言に耳を貸さず、僕は足を進める。



進めて・・・・・・走り出す。





≪嘘だっ! こんなガキに、ゴミに・・・・・・こんな、化け物染みた殺気が出せるわけが、僕の力が通用しないわけがないっ!!≫





また光が襲う。何度も、何度も、だけど、全く気にならない。もう虚脱感すら襲って来なかった。

そしてそのまま、神無月を持った美由希さんと斬り合う。

襲ってくる刃は、まるで生き物のようにうねる。その全てを払い、僕も攻撃を打ち込む。



こんなの、問題ない。美由希さんはいつもより弱い。そして、僕はいつもより、キレてる。もっと言うと、ノリに乗ってる。

そうだ、この程度の相手ならやれる。油断すればまずいだろうけど、油断せず、容赦しなければ魔法なしでもやれる。もう、あの時とは違う。

想像するのはより強い自分。そんな自分になれると心に、魂に言い聞かせる。そうして力を搾り出す。積み重ねて来た時間が、『必要ない』と言われても貫いた選択が、そうして得られた経験が、この状況を覆す切り札に変わる。



神無月の刃が僕に届く。髪、頬、二の腕、手の甲、太もも、それらを薄く斬る。ジャケットを破り、皮膚を切り裂き、血が出る。だけど、止まらない。

この空間、操られた美由希さんと僕との間で生まれるのは刃の嵐。銀色の風が敵を斬るために吹き荒れ、打ち合う。

そして、身体の痛みが消えていることに気づく。もう、いつも通りに・・・・・・いや、いつも以上に動けてる。こんなのじゃ、今の僕は止められない。



袈裟に打ち込まれた刃を下がって避ける。すぐに返す刀で突き出されてきた。それを右に避ける。だけど、また左から刃が襲う。

だから僕は、アルトの柄尻でそれを受け、弾く。そうして体勢が崩れたところを狙って、美由希さんの左胸辺りを狙って突きを放つ。

神無月は下がりつつ、自身の刃でその突きを防ぐ。だけど、衝撃は殺せずに、僕より体格の大きい美由希さんの身体が吹き飛ばされた。



そのまましゃがみこむように着地。そこを狙って上段から一戦・・・・・・もとい、一閃。神無月はまた後ろに飛んで避ける。だけど、切っ先は・・・・・・美由希さんの髪と、服の前部分を薄く斬った。





≪くっ!!≫





跳んで着地してからすぐ、美由希さんが踏み込んだ。数メートルあった距離は一瞬で詰められて、そこから突き出された刃を、僕は左に動いて避ける。避けて・・・・・・刃が襲って来た。



だから、そのまま前へ踏み込んで、美由希さんの右側面に移動。



身を翻しながら、回転の勢いを加えて、美由希さんの背中目掛けてアルトの峰を打ち込む。





「・・・・・・てめぇ、人間舐めすぎだ。こんな緩い突き技、返し技くらい1発見りゃあ思いつく」





手ごたえ、あり。そのまま、美由希さんは吹き飛ばされるようにして地面を転がり、倒れる。



いつもの美由希さんの突き技の方が、今日打ち込まれたやつの方が、ずっと怖かった。だから、カウンターが出来る。





≪・・・・・・言うな、ゴミが≫




そのまま美由希さんが立ち上がる。そして、構えた。その体勢は、突き。

右手の神無月の切っ先を僕に向け、左手は峰に添える。

神無月は刃が外側に向いており、そのまま第二弾の連続攻撃も出来る体勢。さっきも使ってた奴だ。



だけど、今度はさっきとは違う。完全に、決めるつもりだ。





「『ゴミ』はてめぇだ。そろそろ気づけ、自分が実は三流だってな」



だから、身体と心に満ち溢れる力と感情のままに、僕は・・・・・・左手で鞘を抜き、それにアルトに納めた。



≪・・・・・・お前、殺す。いや、せっかくだから半殺しにして利用してやるよ。お前の大事なもの、お前の手で全部壊してやる。そうして、終った後に解放するんだ。
くくくく・・・・・・見ものだよっ! お前は自分の手でそれを壊したことに苛まれ、苦しみ、狂うんだっ!! あははははっ! 最高だろっ!? お前はその最高の見世物の主役になるんだっ!!≫

「ぴーぴー喚き散らすな。『ゴミ』が」





そのまま、鞘を腰に当て、低く構えた。





「喋りたい事があるなら、地獄に行ってから喋れ。・・・・・・来い」

≪・・・・・・・・・・・・人間風情が。調子に乗るな、僕を誰だと思っている。齢200年を超える、霊剣・神無月だぞ≫





その言葉をあざ笑う。それはもう思いっきり。



だって、おかしすぎるから。





「調子に乗るさ。お前みたいな『ゴミ』が相手じゃ、乗らないわけがないだろ。てゆうか、男の時点でダメだな。
僕にマトモに相手して欲しかったら、十六夜さんレベルで美人なお姉さんになれ。そうすりゃレディとして扱ってやる」

≪貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!≫





そのまま飛び出す。先ほどよりもずっと速い速度。真っ直ぐに、僕へと向かう。・・・・・・まだだ。



距離は5メートルを切る。・・・・・・まだ。



美由希さんの右手が、ぶれた。・・・・・・今。





「鉄輝・・・・・・!」





そのまま、僕はアルトを抜き放ち、横薙ぎに刃を打ち込んだ。





「一閃っ!!」





だけど、刃は空振りに終る。理由は簡単。寸前で、美由希さんの身体の動きが止まったから。



そのまま、美由希さんの目前を通り過ぎる。そこを狙って、刃が突き出された。



だけど、ここで終らない。いや、終った。



左手が動いていた。右手に持った刃の切っ先が美由希さんの身体すれすれを通り過ぎながら、逆手に持った鞘が動く。いや、体ごと前へ踏み込む。

身体を捻り、その突きの射線上から外れる。刃は僕のジャケットを掠めたけど、それだけじゃあ意味が無い。服は斬れても、骨どころか肉が切れないんだから。

避けながら、美由希さんへと踏み込んでいた僕は・・・・・美由希さんの神無月を持つ右の手の甲と手首目掛けて、鞘を叩き込んだ。響くのは鈍い音と空気の震える感覚。徹を打ち込んだ。今、腕がすっごく痺れてるはず。



そして、美由希さんは神無月を手放した。手放された神無月は、そのまま地面に落ちた。落ちて、公園の土の地面に真っ直ぐに突き刺さる。



それから鳩尾に鞘の先で1発。美由希さんは・・・・・・そのまま後ろ向きに倒れた。





「・・・・・・飛天御剣流・双龍閃、もどき」

≪本当にもどきですよね。本物には遠く及びませんよ≫

「うっさい」





僕はと言うと、そんな話をしながら、美由希さんが神無月を手放したのを見て、少し距離を取ってる。





「シャマルさんっ!!」





声をかけると同時に、美由希さんの身体がグルグル巻きにされた。突如発生したのは翡翠色のワイヤー。



それを辿ると・・・・・・そこには、シャマルさんが居た。





「・・・・・・本当に、無茶するわね。これは、治療が大変よ」

「あははは、後でお願いします」

≪・・・・・・動け、僕を回収・・・・・・・動けっ! 動けっ!!≫





美由希さんの身体が震えるけど、そんなんじゃクラールヴィントのワイヤーは切れない。そして、地面に突き刺さった神無月が慌てるのには理由がある。

・・・・・・神無月や十六夜さんのような魂を内包した霊剣は、先ほどのように現界して人の姿を取る事が出来る。ただし、その状態では身体は幽霊みたいなものになる。

それでも、普通に手を繋いだりギューってしたりするくらいは出来るそうだけど、そんな霊剣でも絶対に干渉出来ないものがある。



それは・・・・・・自分の本体である刀。刀を持って自分で移動したりというのは難しいらしい。



だからこそ、神無月は自分の手ごまに使えそうな人間に催眠術をかけた。自分の存在の維持と、嗜好を満たすために。

・・・・・・あー、ようするに、自分で本体の刀を持って斬ったりとかは出来ないってこと。さっき十六夜さんに飛びながら確認した。

だから、こんなに慌てている。今この状態で自分の手ごまが居なくなれば、丸裸にされるのも同然だから。





「無駄よ。これは簡単には切れない。恭文くん、ついでに鞘も回収して。ただし、直接触らないようにね」



シャマルさんに言われて、美由希さんが放り投げたと思われる鞘を近くで見つけた。なので、アルトの鞘を腰に納めてから鋼糸を取り出し、投げて・・・・・・神無月の鞘へ巻きつける。それを引き寄せて、神無月の方へと届かせる。

それから、そのまま鋼糸もポイっとそこに向かって放り投げる。・・・・・・うし、これで処置は完了っと。



≪くそ、まだ終ってない。お前がダメでも他のやつを≫





光が一体を包む。それは、闇へ誘う光。今の状態でも少し来るほどに強力な光。



そして、その光が止む。目の前の刀から、勝ち誇ったような空気が放たれる。





≪ふ、ふふふ・・・・・・どうだ、これで数の上では4対1。しかもその内の一人はあの女と同じく剣の達人。
僕が操れるのが一人だけと思ったのが失敗だったな。もうお前に勝ち目はない。終わりだ≫

「いや、もう終りなのはお前たい」



その声の発生源を見ると・・・・・・薫さんが居た。二刀に炎を宿し、悪しき妖刀を睨みつけている。

それを見て、僕は更に神無月から距離を取った。



≪な、なぜだ。さっきのは僕の全力だったのに、なぜ操られていないんだ≫

「簡単だよ」



動揺の声を上げた神無月に答えたのは、那美さんだった。そう、あの催眠術にかかった人間は・・・・・・誰も居ない。

だから、薫さんは未だに顕在だし、那美さんも居る。シャマルさんも大丈夫だから、クラールヴィントのワイヤーも切れてないし、リインだって無事。コイツの奥の手は、失敗したのだ。



「その子が時間を稼いでくれている間に、私達はとっくにあなたの能力を無効化するための術式を展開してる。
・・・・・・ちょっと派手にやり過ぎたね。あれだけ何回も能力を見せられれば、私達なら返し技の一つも思いつく」

「悪いね、僕はお前の言うようなことなんてちっとも思ってなかった。つーか、刃紋から出る光で人を操ってるなら、普通に考えて見た人間は見境なしとか考えるのが常識でしょ」





そう、だから僕が前に出た。僕が操られても、作戦には支障は無い。シャマルさんとリインにはもしダメだったら遠慮なく潰していいと言ってある。

そして、二人はやる気だった。だって、僕が絶対に躊躇ったり迷ったりするなって言ってあったから。非殺傷設定ならまだ何とかなったと思うし。

だけど、薫さんと那美さんが操られるのはマズイ。神無月に対する対抗策がなくなるから。だから、僕が出て時間を稼いだ。言うなら・・・・・・囮だ。



コイツのミスは、僕が手負いの子どもだと侮ったこと。催眠能力を使えばいつでも状況を引っくり返せるなどと思っていたこと。だから、負ける。





「知ってる? 切り札は、本当に最後の状況まで取っておくのが望ましいんだから。恭文君のおかげで私達、それが出来たの」

「そして、ここは結界の中。他に邪魔が入るはずがない。妖刀・神無月、ここが年貢の納め時だ。これで」



薫さんが二刀を振り上げる。



「全部、終らせる」

≪黙れ・・・・・・!!≫



姿を現したのは、あのくそがき。鬼のような表情で僕達を睨みつける。



「黙れっ! 人間風情がっ!! お前ら如きに、この僕が」

「神気・・・・・・」



神無月の言葉に耳を貸すことなく、薫さんは刃を振り下ろした。

二つの炎・・・・・・いや、光が、刃から飛び出す。



「発勝っ!!」










放たれた二つの光は地面を走り、そのまま神無月を、刀を、鞘を飲み込んだ。





そしてそのまま、悪しき妖刀の長い、本当に長い時間を、終らせた。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・か、身体がギシギシ言ってる。やばい、これはやばいよ」

「あぁ、美由希さん無理しないで? アバラが折れたり、右手首にヒビが入ってたりしたんだから」

「恭文くんが綺麗に折ったからまだ大丈夫だけど、二、三日は安静です。あ、スタン効果は解除してますので、あしからず」





僕は何も聞こえない。というか、見えない。



具体的には、僕を恨めしそうに見る視線など、分からないのだ。





「君は、真面目に容赦せんかったんだな」

「薫さん、恭文さんの辞書にその言葉は存在しないのです」

「そして、そこが恭文くんの素敵なところです」

「それはまた違いませんかっ!?」





何の害も意思もない、ただの朽ち果てた刀となった神無月をしっかりと供養してから、僕達はさざなみ寮へと歩く。





「やっと、終ったね」

≪そうですね。またまた夜にトラブルになってますけど≫

「それは言わないで」





少し、夜が明けてきてる。もう早朝って言ってもいい時間だしなぁ。



なお、美由希さんはシャマルさんや那美さん、治療系能力が使える十六夜さんのおかげで、復活した。まぁ、ダメージ多めだけど。





「うー、恭文ひどいよー。助けてくれたのは嬉しいけど、ここまですることないのにー」

「いや、仕方ないじゃないですか」





あの中で神無月の催眠能力に生身で対抗できそうなの僕くらいだった。というか、実績があるし、先生やシャマルさんからも行けるってお墨付きもらってた。

現に、薫さん達もあれは退魔師特有の術式を展開しないとヤバかったとかって言ってた。確かにあれは怖かった。だって、本当に意識を奪われかけたから。

まぁ、バインドかけてくれたリインや治療してくれたシャマルさん、あと行く事を認めてくれた十六夜さんやゆうひさんに知佳さんの協力が有ってこそだけど。



絶対に僕一人の力でなんとかなったわけじゃないのは、留意していただきたい。





≪決着も、結局は薫さん任せになってしまいましたしね≫

「まぁ、ここはしゃあないでしょ。これで僕達が対処して、『実は退治出来てませんでした』じゃお話にならないし。・・・・・・でも、もう大丈夫なんですよね」

「大丈夫だ。中の魂は完全に斬ったし、刀自体も鞘を含めて供養をしとる。もうこの刀は、ただの古びた刀剣たい」



薫さんが歩道を歩きながら、那美さんが抱えている神無月を見る。・・・・・・供養した後、刃紋を見たら、くすんでいた。それを見て、この刀が死んだ事を、理屈ぬきで理解した。



「でも恭文君、よく神無月の催眠にかからなかったよね。最後のあれも結局平気だったし」

「私は刃紋を見ただけで1発だったのに。うぅ、なんでー?」

「秘密です」





・・・・・・皆が言う修羅モード。神無月との戦闘で僕はその状態だった。そして、それが神無月の催眠に対してのカウンターとなった。



修羅モードの正体は先生とシャマルさん曰く、自己暗示による潜在能力の解放と強化らしい。それも、発動すれば強力な暗示や催眠術、精神操作の魔法の類すら跳ね除けるほどのレベル。

というか、最初の事件の時に、催眠ヒュプノと呼ばれる、相手に幻覚を見せ、それが現実だと思い込ませることで精神と脳を通じ、心と肉体の両方にダメージを与える攻撃をリインとユニゾンしている時に仕掛けられ、跳ね除けた事がある。

人間と言うのは、とても強く、同時に弱い。特に感情からの身体への影響は強い。気持ち一つで病気にもなるし、元気にもなる。『病は気から』と言うけど、まさしくその通り。先ほど話した催眠ヒュプノも、それに当たる。



僕の場合、感情の昂ぶりで普段は押さえ込んでいる攻撃衝動などのタガが外れるとエンジンがかかり、強力な自己暗示がかかる。まぁ、これは副産物みたいなもので、基本は戦闘能力の上昇がその効果。

なお、この事を知ってるのは先生と師匠にアルトとリイン、主治医であるシャマル先生だけ。フェイトやなのは達にリンディさんは知らない。

この状態は、僕がただキレてるだけだと思ってる。でも、教えるつもりもない。さっきも言ったけど、魔法やマジックはネタがバレたら暇つぶしにもならないんだから。





「でも、やっぱりもったいないね。中身はどうあれ、すごく綺麗な刀だったのに」

「美由希さん・・・・・・懲りてないですね」

「あははは、ごめん美由希さん。私もリインちゃんと同意見」

「那美さんまでどうしてー!?」



刀剣マニアな美由希さんが、くすんだ神無月を見てなんだか残念そうな顔をしていたのがすごくあれだったよ。てゆうか、空気を読んでない。



「ちょ、それどういう意味っ!? てゆうか、これで私の身体に傷とか残ってたらどうするつもりだったのかなっ! これでも嫁入り前なんだけどっ!!」

「え、まだその話続いてたんですかっ!?」

「当然だよっ!!」



うーん、そうなったら・・・・・・まぁ、そうならないようには気をつけてたけどさ。

もしもそうなったら・・・・・・。



「責任、取りますよ」

「え?」



歩きながら、不服そうな美由希さんの目を見る。見て、そのまま言葉を続ける。

真剣に、真っ直ぐに視線をぶつけながらだ。



「美由希さんのこと、お嫁にもらって、責任取ります。それで、一生かかってでも幸せにします。蒼凪美由希になってもらって、美由希さんに永遠の愛を誓います」

「やす、ふみ」



まぁ、『これくらいはしないとその場合は責任を取れないですよね』という意味だった。そういう意味でした発言だった。

だったんだけど・・・・・・。



「あ、その・・・・・・あの、えっと・・・・・・」



今度は顔を赤くしてどもり始めた。なんというか、忙しい人だ。



「くぅん(なみ、やすふみ、じかくないんだね)」

「そ、そうだね。まぁ、知佳さんとの親交の深まり方を考えると、こういう子だと言うのは分かってたけど」

「ある意味では女の敵だな。今のうちに抹殺しておくべきか?」



何故だろう、薫さんがすっごく厳しい目で僕を見出した。那美さんもちょっと苦笑いだし、どうしてこうなるのかが分からない。

でも・・・・・・これで、終わりか。



「いや、まだ終っとらん。具体的にはこれから」

「・・・・・・はい、分かってます。お話はちゃんと聞かせていただくので、その怖い目はやめてください。逃げませんし隠れもしませんから」

「うん、それでよか」

「くぅん・・・・・・くぅん(やすふみ、ちゃんとわかってるね。えらいえらい)」

「うぅ、久遠が嬉しそうに鳴いてるけどなんか微妙ー!!」





そうして、さざなみ寮が見えてくる。それを見て全員がやっと一息つく。



だけど、それだけじゃなかった。寮の入り口に二つの影を見つけた。・・・・・・もしかして、ずっと待たせてた?





「・・・・・・知佳さん、ゆうひさん」

「うん」

「大丈夫・・・・・・やったみたいやな。ちゃーんと美由希ちゃんも居るし」





あははは、結構ギリギリでしたけど。



あ、そうだ。これ言わないといけないんだ。





「ただいま、戻りました」

「・・・・・・うん、おかえり」

「おかえり。あ、みんなもおかえりな〜」










こうして、長い長い四日目は終った。・・・・・・え、四日目?





もしかして、まだ折り返し地点にも来てない?










「そういやそうやな。・・・・・・あ、それとなのはちゃんとエイミィさんに耕介くんに愛ちゃんと真雪さんが角を生やして待っとるよ。
恭文君にこてつちゃんにシャマルさんにリインちゃんは、うちらと一緒にお説教タイムや」

「じゃあ、ここも折り返し地点に来てないし、一緒に頑張ろうか」

「・・・・・・・・・・・・はい」

≪あなた、謝ってくださいよ。主に私に≫

「なんでっ!?」




















(幕間そのじゅうろくへ続く)




















あとがき



古鉄≪というわけで、決着は付きました。・・・・・・あぁ、モデルガン向けるのやめてくださいよ。仕方ないじゃないですか。
この人に容赦なんて言葉が存在してなかったんですから。普通にこれで美由希さん相手だから加減して・・・・・・なんて展開はありえなかったんですから≫

ヒロリス「やっさん外道だよ。ひどいよこれ。しかもなんか文字通りの殺し文句まで」

恭文「だから何の話っ!? ・・・・・・というわけで、本日のお相手は蒼凪恭文と」

ヒロリス「ヒロリス・クロスフォード(これが正式名称です。クロフォードではありません)と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンでした≫





(・・・・・・しばし沈黙。そして、やっと二人が気づく)





恭文・ヒロリス「「終るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

古鉄≪あぁ、すみません。間違えてしまいました。ゲストのマスターとヒロさんでした≫

恭文・ヒロリス「「追い出すなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」





(まぁ、そこはともかく)





ヒロリス「しかしやっさん・・・・・・こんなことしてたんだ」

恭文「してましたね」

ヒロリス「なんつうか、どんだけ年上キラー? てゆうか、妹キャラキラー?」

恭文「なんですかそれっ!?」

ヒロリス「いや、だって・・・・・・ねぇ」

古鉄≪ちょっとあげてみましょうか≫





(フェイト・リイン・ティアナ・スバル・なのは・美由希・・・・・・という感じ?)





ヒロリス「あと、しゅごキャラクロスのほしな歌唄とか、IFヒロインじゃないけどこの話の知佳さんとか。アンタ妹キャラにフラグ立てる率が結構高いのよ。美由希ちゃんは年上だけど、恭也さん居るからやっぱり妹キャラだし」

恭文「な、なるほど。言われてみれば確かに」

古鉄≪もしくはお姉さんキャラなんですよね。例を出すと、ギンガさんやしゅごキャラクロスのあむさんとか。完全な一人っ子って、フィアッセさんやキャロさん、しゅごキャラクロスのりまさんくらいですね≫

ヒロリス「一人っ子で幼馴染な感じでって居ないのよ。はやてちゃんはまた違うしさ。・・・・・・姉妹丼とか狙ってる?」

恭文「狙ってませんよっ!! ・・・・・・えー、とにかく、さざなみ寮での日々はもうちょい続きます。なお、予定では戦闘絡みの話はもうないそうです。多分」

ヒロリス「いや、多分ってなにさ。とにかく、本日のお相手はここまで。お相手はヒロリス・クロスフォードと」

蒼凪恭文「蒼凪恭文と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンでお送りします≫





(・・・・・・あれ?)





恭文・ヒロリス「「始まるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

古鉄≪・・・・・・あれ、おかしいですね≫





(今日はちょっぴしおとぼけさんなウサギを映しつつ、カメラはフェードアウト。
本日のED:La-Vie『FREEDOM』)










知佳「・・・・・・怪我、しちゃってるね。それに髪も少し」

恭文「あははは、さすがに無傷は無理でした。まぁ、どれもこれも浅手なんで」

知佳「これ、恭文くんも湯治しなきゃだね。身体だってまだ本調子じゃないんだし」

恭文「はい」

ゆうひ「そして混浴でアバンチュールや」

恭文「その表現はやめてっ!? もうそれだけでいかがわしいからっ!!」





(おしまい)



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あきゅろす。
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