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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
ケース12 『ティアナ・ランスターとの場合 その6』



全開・・・・・・もとい、前回のあらすじ。





今、六課演習場で木にくくりつけられたまま気を失っている愚か者アルフさんに喧嘩を売ったら、見事に買ってくれました。





挑発に弱い所は確実に契約した主フェイトからの遺伝だと思いました。リンディさんが『育て方間違えたかしら』と、マジに反省モードでした。





で、そこはともかく、どっちにしろマジな戦闘にもなるし、これは新装備の実験台にもなってくれると密かにアルト共々喜んでいました。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



≪「つよーきものーにつよーきちかーら♪ いっておく」≫

「かなりつよいよー♪」



自宅のソファーに座って、布を右手に持って、キュキュと磨くのは黒がベースで、オレンジと蒼のラインが入ったベルト。

いやぁ、楽しいなぁ。楽しいなぁ。



≪「きわーめつけのー」≫

≪Bladeー♪≫

「Strikeー♪」

≪はじまるBattle(Don't stop) Action-Zeroー♪≫



るんるんるー。



≪「つよーきこころーつよきーねがーい♪ かさなるとーき」≫

≪むてきになるー♪≫



楽しいなったら楽しいなー。



≪「デュアルしようー♪」≫

「Rieseー♪」

≪Vinculumー♪≫



・・・・・・・・・・・・あれ?



「アルト、ヴィンクルムってなに?」

≪そういうあなたこそ、リーゼってなんですか。真逆の体型なくせして≫

「誰がナノミクロンレベルだってっ!?」

≪そこまで言ってませんよ。でも、なんででしょうか。すっごく自然に出てきましたし≫



あー、そうだね。なんかこれが本筋というかなんというか、そんな電波を受け取ってしまったのですよ。うーん、なんでだろう。



≪というか、途中歌詞変わってますし≫

「うーん、僕達二人して謎だね。そんな名前じゃなかったのに。よし、変えよう」

≪そうですね≫



というわけで、右手を動かしつつ・・・・・・さんはい。



≪「つよーき」≫

「もういいわよっ! てゆうか、どんだけ嬉々としてベルト磨いてるわけっ!? 明日遠足に行く子どもじゃあるまいしっ!!」

「恭文さん、明日は絶対絶対、ベガフォーム出すですよっ!? リインも『最初に言っておくっ!!』をやりたいのですっ!!」

「リイン曹長も乗らないでくださいっ! てゆうか、三人して明日なにするか分かってますっ!?」



あははははは、そんなの決まってるじゃないのさ。



≪「「あのバカを徹底的に叩き潰して、地面に這い蹲らせる」」≫

「・・・・・・あぁ、もういいです。うん、私分かってた。こういう連中だって分かってた。
でもどうしよう、それでも好きな気持ち変わらないっておかしくない? いや、いいんだけどさ」

「だったらティアもこっち来なよー。おいでおいでー」

「絶対行かないからっ! 私はそれでも常識の中で生きていたいのよっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



うーん、なんか改めて思い出すと、すっごい失礼な事を言われたような気がしてきた。僕とリインとアルトだって常識人なのに。





とにかく決戦当日、契約した主フェイトが空気を読まずに・・・・・・もとい、空気を読んだらしく、マジで怒られて、やるなら契約解除するとまで言われて相当ショックを受けたので、無しにして欲しい。そして冷静に話そうと言われました。





なので、泣く泣く新装備の実験台はやめて、木に縛り付けた上で最近練習している新魔法とかの実験台になってもらいました。なお、シーンはカットです。いや、ちょっとやりすぎたんで。





そうしたら、気を失ってしまいました。うーん、何故だろう。普通に炎の弾丸とか雷撃の弾丸とかの的になってもらっただけなのに。なお、魔力変換は休職中にリインと練習して覚えました。





それも全部直撃してない。せいぜいかする程度のレベル。それで気を失うなんてありえない。そんなので喧嘩売ってきたのかと失望すらしてしまった。





これはもうあれだよ、実戦から引いて、神経緩くなってる証拠だね。うちの姉弟子兄弟子を是非とも見習って欲しいよ。見習っても足元にも及ばないだろうけど。





とにもかくにも、これで僕の障害となるものは居なくなりました。・・・・・・マルっと。










「いや、それどこの作文やっ!? てゆうか普通に日記形式で言う事ちゃうやろっ! 内容が外道過ぎやしっ!!
てゆうかアンチやろっ! これはアンチアルフさんやろっ!! いくらなんでもあんまりにひど過ぎやろっ!?」

≪え、そうなんですか?≫

「それは知らなかった。アルト、世界はおかしくなってるね。僕達が知らない間に常識が変な形になってるよ」

「おかしいのはアンタらの方やろっ! 世界や常識ちゃうよっ!? てゆうか、そんなんやから最低物とかなんとか言われるって自覚持とうやっ!!」





あいにく、誰がなんと言おうとそんな自覚は持たないことにしてるのよ。だって、めんどくさいし。

もういいの、僕とこの話はただひたすらに我が道を行くの。炎や雷の技も主人公っぽいからバシバシ使うんだから。

・・・・・・というわけで現在、六課の部隊長室で、久々にはやてとお話。リインは、シャーリーがバイタルチェック中。ティアは、部屋に私物を取りに戻ってる。



で、僕とアルトがここに居る用件は、旅に出るのを本決定したということを伝えるため。で、今ちょうど伝え終わったところ。





「・・・・・・アンタ、マジで行くんか?」

「うん。もう家族はフェイト以外では問題ないし」



リンディさんとクロノさんとエイミィさんは納得してくれたし、バカ使い魔は僕達が既に縁を切っているというのを自覚してもらった上で、しっかりとぶっ飛ばした。いやぁ、すっきりしたなぁ。

やっぱり、魔王の『お話』って有効なんだね。さすが魔王、世界のルールそのものを理解しているよ。



「いや、それ以外ではまだ不服そうなのが居るんやけどな」



はやての言いたい事はなんとなく予測が付いた。スバルやエリオ、キャロになのはの事を言ってるんだ。あと、下手するとフェイトも。

主と使い魔って似るって言うし、主の感情がフィードバックされてアレな可能性もあるのだ。・・・・・・そう考えると、もう一戦なのかな。



≪残念ながら知りません。私達の夢と希望の日々が目の前に広がっているんですから、止めるなら・・・・・・叩き潰します≫

「僕の今行きたい場所は、やりたい事がある場所は、六課ここじゃないの。ましてや管理局でもない。だから、旅に出るんだ」



そう、もう説得とかそういうのめんどくさいので、力ずくで行く事にした。ほら、リリカルなのはってそういう作品でしょ?

僕とアルトがそう言うと、はやてはニッコリ顔で納得してくれた。



「残念ながらそれは幻覚や」



はやてはそう苦い顔で言うけど、問題はない。

だって、僕とアルトにとっては現実だから。



「そう言う問題ちゃうから。それに、そう言われて納得出来る人間なんておらんて。
特にリリカルなのはについての認識や。まぁ間違ってはないけど、正確でもないやろ」



大丈夫、大体合ってるから。



「大体どころかちょっとしか合ってへんやろっ!? 確かに行動は結果的には力ずくやけど、ちゃんとそれでなのはちゃんは相手と会話しとるやんかっ!!」

≪ピンク色のぶっといので女の子を貫くのは会話じゃありませんよ≫

「あぁ、うんそうやなっ! そう言われたらうちは『その通り』としか言えんわっ!! てゆうか、その卑猥な何かに聞こえる言い方はやめんかっ!?」



ちゃんとなのはのことだと分かってくれるから嬉しい。というか、やっぱり横馬はそういう認識なんだ。僕はビックリだよ。

とにかく、書類は書いて提出したし、もう行くと決めたし、問題は無い。それに、六課解散前には一度帰ってくる予定だしさ。あんまり言わないで欲しいんだけど。



「てゆうかさ、はやては今僕の休みとかアレコレを受理したじゃん。なんでそれなのに引き止めるのさ」

「それとはまた別問題やから引き止めるんよ。・・・・・・アンタ、また悪い癖が出とるし」

「なに言ってるの。全ての状況をよくする素晴らしい手段だよ」

「普通やったら悪化させるだけやっちゅうに。てゆうか、主人公補正かかっとるからそうなるだけやろ。・・・・・・とにかくな、恭文」



うん、なに? てゆうか、またマジな顔で・・・・・・あ、なんかあったとかかな。



「フェイトちゃんは、もうアンタが旅に出ることは許しとる。もちろん、アンタが約束を守る事が前提やけど。ただ、問題はスバル達やなのはちゃんや。
特にその中でスバルにキャロは、アンタが休職したことに責任感じとるから、このままさようならは納得出来んと思うんよ。もう一戦は、むしろそっちやて」

「なんで?」

「スバルはアンタと空気が微妙やったこと。キャロは・・・・・・前にフェイトちゃんとうちらがちょお気になって聞いてみたら、ちょこっと話してくれたんや。
うちやなのはちゃんは知らんかったけど、前にフェイトちゃんがずっと独身やったら自分が嫁にもらうみたいなこと、言うたんやろ?」



はやての言葉に、記憶を掘り返して思い出す。・・・・・・・・・・・・あ、言ってる。うん、その場限りの冗談で言った。

なお、分からない方はティアナルート『その1』をごらんください。



「その時に、即答でアンタとフェイトちゃんがくっつくんが嫌とか言うたんをそうとう後悔しとるらしいんよ。それでアンタの症状が悪化したんやないかとも思うてる。
もしもアンタがその時、フェイトちゃんの事今も好きでそういう事を言ったんやったら、友達として仲間として、真面目に応援するんが正解やったんやないかってな。それもかなりや」

「・・・・・・そっか。まぁ、いいや。後悔するならしてればいいんだよ。僕は知らない」

≪また冷たいですね。何か言うこと無いんですか≫



アルトの言葉と、はやての視線を受け止めつつ考えるけど・・・・・・特に無い。だって、事実ではあるだろうし。

僕みたいなフラフラしたのと自分の保護責任者がくっつくのに拒否反応を示さないはずないもの。キャロ、リアリストだしさ。



「まぁ、来るなら来るでいいや。・・・・・・『お話』せずにぶっ飛ばすから」

「こらこら、それはいくらなんでも言い過ぎやろ。キャロは仮にもアンタの家族ちゃうんか。そないなこと言われたら、あの子マジで傷つくよ?」

「あいにく、その家族のおかげでここ数ヶ月ロクな目に遭ってないんだ。なので、そんな理屈はゴミ箱へポイだよ。もしくは張り付けにして魔法の実験台にするよ」



ニッコリ言うと、はやてがすごく苦い顔をし出した。でも、言いたい事は分かってくれているらしい。

だって、現実問題として本当にロクな目に遭ってないし。



「恭文、マジな話・・・・・・もうホンマに全てがめんどくさくなってるやろ」

「うん。だから、もう全部ぶっ飛ばして行く事にしたんだ。・・・・・・てゆうかさ、結構真面目に言えば、今更そんなことで謝られてもめんどくさい」



例えどんな状況でも、はやてが聡い子だというのは変わらない。だから、僕の言いたい事もすぐに分かったらしく、納得した顔になってくれるのだ。

このツーカーな感覚が非常に嬉しい。うん、通じ合える、分かり合えるって言うのはこういう感覚だよ。



「向こうは謝りたいかも知れないけど、謝られたってこっちはどう反応すればいいの? あれかな、もう神様の如く『大丈夫、僕は気にしてないから』とか許せばいいわけ? あいにく、そんな気分に僕はなれない。
かと言って、責め立てるのもまた違うでしょ。でさ、許さなかったら許さなかったで、またなのは辺りが『そんな言い方ない』とか言って、しゃしゃり出てくるだろうし・・・・・・向こうの自己満足に付き合わされるこっちの身にもなってよ」



あー、それとキャロもそうだけど、スバルもだよ。スバルが僕を怖がる要素があるのは事実なんだし、もういいよ。

僕は気にしないし、それで二人を責めるようなこともしない。てゆうか、今更そんな話を蒸し返されても困る。



「アンタなぁ・・・・・・。それでそのまま飛び出されたら、うちらどうなるんよ。めっちゃ後始末大変やんか」



なんかすっごい嫌そうな顔でそう言ってきたので、ガッツポーズを取る。

そして、当然これ。



≪はやてさん、頑張ってください≫

「ガンバっ! ガンバっ!!」

「頑張れるわけないやろっ!? 頼むから出てくなら出てくでちゃんとうちのフォワード達と話して欲しいんやけどっ!!」

「えー、だってめんどくさいもん。もう一度言うけど、今更そんな数ヶ月前の話を蒸し返されても僕がめんどくさい。それで謝られても更にめんどくさい」





僕に一体どう反応しろって言うの? 謝った二人は満足かも知れないけど、僕はそんな話を蒸し返されて気分が滅入るだけじゃん。



僕はもうそんなことどうだっていいもん。もっといい言い方をすると、気にしてない。気にするのもめんどくさい。それについて話すのもめんどくさい。





「アンタはそれでも、二人は気にする。それに、そういう風に言われたら、もう自分達に関心が無い思うて更に傷つくやろ。そうなったら、もう仲良くなんて出来んで?」

「・・・・・・やっぱり?」

「やっぱりや。・・・・・・なんや、一応は分かってたんやな」

「まぁね。でもさ、もう何度も言うようだけど、正直僕もそこを思い出してイチイチ相手するのめんどくさいのよ。気分も滅入るし疲れるしさ。だから、そういう話されるのは本当に嫌なのよ」



なので、そのまま飛び出せるようなら飛び出したかった。あれだよ、僕居なくてもなんとかなるでしょ。ヒロさん達だって居るわけだし。



「そこは分かるんよ。アンタはまだ病気中やし、ウジウジするのやめたみたいやけどそれでも完治ってわけやないやろうし、そういう話をするのは精神的に負担大きい言うんは、まぁ分かるんよ。
ただな、シャマルと相談の上でどう話して行くかを考えるだけでも考えて欲しいんよ。もし今話すんが無理っぽいなら、旅から帰ってきた後でも構わんから。その場合は、うちやみんなが責任持ってフォローはしておく」

「とにかく、話すだけ話せってこと?」

「そうや。タイミングは主治医シャマルと決めて構わんから。結局は当事者の問題やし、なのはちゃんがまたなんか言うようやったらうちも止めるわ」

≪だが断る≫



・・・・・・アルト、そういうわけにはいかないよ。真面目にめんどくさいのは間違いないけど、必要な事ではあると思うから。

あー、でも本当に断れたらいいのに。真面目に考えるだけで気分重くなってくるもん。



「まぁ、いつになるかとかそういうのは確約出来ないよ? もしかしたら死ぬまで話さないかも知れないし」

「そうならんことを祈るわ。ホンマやったらすぐにでも話して欲しいとこやけど、またシャマルにお仕置きされるんは避けたいしなぁ。・・・・・・で、これからどないするん?」

「あのバカ使い魔は叩き潰したし、必要な書類も書いたし、もうやることないから家に帰る。
・・・・・・全く、新装備の実験台にもなれないなんて、あの人は何しにここに来たんだよ」

「アンタに謝るのと話すためとか言うてたけどな。まぁ、殺さんでくれて助かったわ。フェイトちゃんもなんやかんやで心配はしとったし」










・・・・・・・・・・・・当然でしょ。僕、自分にとって無意味な殺しはしない主義なんだよ。ちょぉぉぉぉぉっといじめるのはよくても、ここであの人再起不能にしてもそれこそ自己満足じゃないのさ。





それに・・・・・・ね、本気で潰そうかと思ったけど、あの子達に止められたし。





とにかく、問題の大半は解決出来て来てる。あと、少しだね。




















魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と彼女のありえる繋がりとその先のこと


ケース12 『ティアナ・ランスターとの場合 その6』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・え、恭文とリイン曹長にティア、もう帰っちゃったんですかっ!?」

「そんな、やっと話せると思ってたのに。リイン曹長やティアさんが居るなら、大丈夫と思って・・・・・・」

「恭文、僕達と会うの・・・・・・避けてるのかな」

「かも、知れないね。私にも挨拶してくれなかったから」





で、そんな話をチビスケとした10数分後、なのはちゃんやみんなが駆け込んできた。

なお、フェイトちゃんは恭文の状態を考えて、また自宅行って、リインやティアが居る時に話すことにしたようや。

まぁ、今会って、自分の気持ちが抑えられるかどうか自信無いとも言うてたけど。・・・・・・マジで、告白、するんかなぁ。



しかし、ホンマに寸前の差やな。アイツのスルースキル、上がってるんやないのか?





「あー、それでな。スバル、キャロ。アンタら恭文と話したい言うてたけど」

「「はい」」



あぁ、無駄にユニゾンしとるし。うぅ、言いにくいなぁ。でも、さっき通信でシャマルに相談したら、変な暴走されんようにちゃんと伝えておいた方がえぇ言われたし。

よし、これも部隊長の務めや。恭文、病気やなかったらマジで恨んでるとこやで? 完治したら美味しい居酒屋でたんまり奢ってもらうからな。



「それ、もうする必要ないわ」

「「・・・・・・え?」」





あぁ、一気に困惑した顔になってもうた。うぅ、部隊長やってて辛い思うたことは結構あるけど、今回は極めつけや。

ティアの時にも(解決後に初めて話聞いて)思ったけど、やっぱ人間関係は難しい。上手くいっていたのが、実はなぁなぁの馴れ合いしてただけだったのかとちょっと疑ってまうもん。

うー、ここまでこじれんうちに・・・・・・もっと言えば、去年の11月のうちに対処しとけばよかった。



うちやフェイトちゃん、なのはちゃんやヴィータ達は大丈夫やったから、きっとスバル達とも上手くやれるようになる思うて、油断してたわ。





「うちからアンタらから聞いた理由で話したいとは伝えたんやけどな、恭文が相当嫌がってるんよ」



まぁ、『めんどくさい』とかそういうのは伏せておくか。ここで泣かれてもそれはうちがめんどくさい。



「あー、別にそれで怒ってるとか、アンタらの事嫌いになったとかちゃうからな? なお、理由は・・・・・・」



かくかくしかじか・・・・・・というわけや。アイツの病気、まだ完治したわけでもなんでもないし、そんな気の滅入る話をされても治療の妨げになる。

なにより、恭文はもう気にしてないから話す必要はないと言っていたと言う。で、当然のように全員の表情が曇る。



「・・・・・・私達、恭文に嫌われちゃったのかな」



い、いやいやっ! そんなことはないでっ!? お願いやからスバル、そのつや消しの目はやめようやっ!!

てゆうか、うちの話聞いてたかっ!? 嫌いになったとかそういうことちゃうって言うたやんっ!!



「なぎさん、気にしないって、1番突き刺さる言葉だよ。私に、謝る権利すらくれないなんて、やっぱり・・・・・・」



キャロまで泣きそうな顔したらあかんっ! アイツかて話せれば話してるやろうけど、精神衛生上よろしくないんが自分でも分かってるからそう言ってるだけなんよっ!?

なによりシャマルも同意見やもんっ! それでうちにどうしろっちゅうんやっ!!



「もう僕達、家族どころか仲間や友達とすら思われてないのかも知れないね。だから、そんな風に」



え、エリオまでっ!? そやから説明したやんかっ! 普通に状態を鑑みてそういう事になってるってっ!!



「・・・・・・はやてちゃん、私ちょっと恭文君と話してくるよ。これはいくらなんでもひどいよ。行くなら行くで、ケジメとして話すくらいのことは」



きゃー! 我らがエース・オブ・エースの顔がStSのTV版第8話バージョンになっとるー!! 怖いっ! マジで怖いー!!

そしてアンタ忘れてるやろっ! 前回のお話でシャマルにイエローカード出されてるやろっ!? それでどないして話すつもりやっ!!



「なのはちゃん、アンタまでなに言うてんのっ!? てゆうか、みんな落ち着いてやっ! アンタ達、うちの話聞いてなかったやろっ!!
うち、さっき説明したやろっ! 恭文の病気は、幾分か吹っ切れたとは言え、完治したわけでもなんでもないんよっ!?」

「それは、そうだけど・・・・・・」

「・・・・・・とにかくや、今アンタ達が無理に押しかけて謝ったかて、それは間違いなくただの一方通行な自己満足やで? 今謝っても、意味がないんよ。
アンタ達はそれですっきりするかも知れんけど、恭文は下手したらその時の気持ちまで思い出して、ほんまにアンタ達のこと嫌いになるかも知れん」



・・・・・・全部シャマルの受け売りやけどな。反応を予想して、こう言うたら問題なく説得出来るって自信を持って教えてくれたわ。

そして、それは事実や。全員なんか渋い顔しとるし。



「まぁ、それでもえぇんならうちは止めん。もう警告はしたし、それでもやるなら全部アンタ達の自己責任や。今から家に乗り込んでみんなで話して来て、今度こそ決定的に嫌われてくるとえぇわ。
見事に赤の他人に戻るやろうけどな。いや、その前にシャマルからレッドカード出されるやろ。今度は条件付きでの締め出しやない。完全に会うのも連絡を取るのも禁止されるわ」

「はやてちゃんっ! いくらなんでもそんな言い方」

「そうでも言わんと、アンタも含めて分からんやろ。うち、同じ失敗を繰り返すんは嫌なんよ。てゆうか、これで恭文の状態悪くなったら、アンタ達全員責任取れるんか?」










・・・・・・やっと納得したのか、なのはちゃんも渋々下がった。いや、ホンマ良かったわ。真面目に良かったわ。





うち、あんな冷たい床に正座なんて、もうしたくなかったし。





ただな、恭文。これはやっぱり今すぐに話した方がえぇと思うわ。別にスバル達とこの場限りの付き合いするんならえぇよ。このままでもな。





でも、もしそうやないんやったら、ほんのひとかけらでも、スバル達のことを仲間思う気持ちがあるんやったら、話した方がえぇ。アンタはともかく、この子達が持たんわ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



家に帰り着いた。着いたけど・・・・・・リインが気を利かせて出て行こうとした。僕とティアを見て『ごゆっくりですー♪』とか言い出した。





どうも、恋人タイムの邪魔と判断したらしい。とは言え、8歳児にそんな気を使われて、平気な顔でラブラブモードになれるほど僕もティアもバカじゃない。





なので、僕達が外に出ました。だって、そうしないとマジで最低だと思うし。










「・・・・・・なんて言うかさ、リイン曹長に気を使わせちゃってるわよね」

「そうだね」

「うーん、やっぱりあの話したのが大きかったのかな」



お昼過ぎの街をティアと二人、手を繋いで歩く。空を見上げながら、ティアが苦笑しつつそう口にした。

僕は当然首をかしげる。一体なんの話をしたのかと。



「いやね、お風呂に一緒に入ってる時に、リイン曹長に聞かれたのよ。アンタと・・・・・・その」



ティアの声が小声になった。そのまま、歩きながら話す。



「アンタとエッチな事・・・・・・ようするに、セックスしてる時ってどんな感じかって」

「・・・・・・はぁっ!?」

「いやさ、リイン曹長ってまだ子どもでしょ? デバイスだから経年での普通の成長は見込めないし、やっぱり気にはしてるらしいのよ」



・・・・・・そこまでなんだ。確かにたまにそういう発言が来るのは分かってたけど。



「そこまでらしいわね。・・・・・・いつかはさ、三人でとかって、あるのかな」



ティアが少し真面目な目をして、空を見上げながらポツリと呟いた。当然、聞き流せるレベルじゃない。

え、えっと・・・・・・どうしたの? というか、なんでいきなりそんな発言。雑踏のせいで他の人には聞かれないだろうけどさ。



「・・・・・・想像できないわね」

「そうだね。というか、無理。こう・・・・・・シチュ的に無理」

「やっぱり? 実は私も。てゆうか、三人でなんてわかんないし」



僕もわかんない。でも、このままだと・・・・・・うーん、悩む。かなり悩む。

リインに対しての好きは、ティアナとは違って、だけど同じくらい大切で、好きで・・・・・・ずっと側に居られるなら、そうしたいなと思うのも事実。



「うーん・・・・・・」

「そんなに悩まなくてもいいわよ。そういうことするにしても、8年後よ?」



ティアが苦笑しながらそう言ってきた。まぁ、確かにそうだ。

今やったら、絶対に犯罪だから。うん、確実に犯罪。



「それまで、リイン曹長も交えて少しずつ話せばいいじゃない。そういうことも含めた関係で行くか、そうじゃなくて私はアンタの恋人として。リイン曹長はパートナーとしてで、ちゃんと分けていくか」



でもでも、さすがにそれだとティアに悪い気が・・・・・・。

うー、ごめん。やっぱり負担かけてるよね。



「問題ないわよ。そりゃあ? これが愛人みたいな感じだったらかなりムカつくし、イラっともするわよ? うん、そこは確実に。でも、話を聞くにリイン曹長とアンタの絆は、切れないでしょ。
もう心と心がひとつになって、完全に繋がってるんだから。それで、相思相愛。アンタもそうだし、リイン曹長も想いは一緒。それなら、一応アンタの本妻に納まっている私としては、認めるしかないわよ」

「ティア・・・・・・」



歩きながら、安心させるように僕に笑いかけてくれる。

だから、こう口にする。きっとこれしかないと思ったから。



「あの、ありがと」

「ううん、大丈夫。・・・・・・そう言えばさ、具体的な行動スケジュールは決まった?」



うん、決まった。はやてともその辺り相談したし、もう明後日明々後日には良太郎さん達帰っちゃうから、そろそろ決めないとまずい。



「とりあえず、デンライナー乗る前に一度海鳴に帰る。てゆうか、準備して一度乗り込んで、みんなに送ってもらう」

「はぁ? なんでそのまま行動しないのよ」

「神速の関係だよ。海鳴に僕や美由希さん、あと恭也さんの主治医の先生が居てさ、その人の所で整体受ける」



で、その後はすぐに恭也さんのところに飛んで、ドイツで修行して・・・・・・デンライナー乗るの、それからかな。



「そっか。じゃあ、それまでにはスバル達と話す感じ?」



歩きながら思い出してしまった。あの方々とどうしたもんかと。うーん、正直めんどい。すっごくめんどい。僕はもう気にしない方向でいきたいのに、ちゃんと話すとか言い出してるしなぁ。

とは言え、はやての言ってる事も分かるのよ。話さないと今後の付き合いに支障が出る。でも、僕はそんな今更謝られてもめんどくさい。うーん、どうしよう。



「私は、出来ればちゃんと話して欲しいな。まぁ、アンタの言うように、もう数ヶ月前の事をイチイチ蒸し返されてもめんどくさいってのは分かるわよ?
だけど、きっとそれだけじゃないわよ。アンタにとっても、スバル達にとっても、いい結果は残せると思うの。だって、今までと違うんだから」

「・・・・・・なら、考えるだけ考えておこうかな。いつやるとかそういうのは確約出来ないけど」



でも、ティアの言うように今までとは違う。だったら・・・・・・少し、考えてみてもいいかも知れない。そんな意固地な感じにならないでさ。

ちょっとシャマルさんに相談してみようかな。多分話は通ってるだろうし。歩くスピードに合わせて吹き付ける風を受けながら、少し思った。



「うん、それでいい。でも、いよいよなのよね」

「うん」





少しの間、お別れになるんだよね。



うぅ、それはちょっと寂しいかも。まぁ、メールとかも定期的にするとは思う。それでも寂しいのさ。





「まぁ、アレよ。浮気したら殺すから。なお、私はしない。絶対しない」

「いやいやっ! デンライナーの中でやりようないでしょっ!?」



そしてその殺し屋の目はやめてー! てゆうか、なんで僕だけ念入りに警告っ!?

・・・・・・いや、覚えあるからなんだけど。すっごいあるからなんだけど。



「それもそっか。・・・・・・てゆうか、しばらく我慢しちゃうし、今のうちに」



続いたティアの言葉に、驚く。

だ、だって・・・・・・今、昼間だし。



「だめ、かな。あの・・・・・・実を言うと、私結構限界なんだ。しばらくリイン曹長と一緒だったし、アンタと本当に二人っきりになりたい」



う、その潤んだ瞳で見るのなし。なんか色々突き刺さってくるから。

でも、あの・・・・・・なら、いいかな。



「その、実は僕も。こう、限界だったり。じゃあ・・・・・・これから少しだけ、がんばる?」



イマジン退治に協力した仕事料もたんまり入ってるし、僕は問題無い。・・・・・・うん、問題無い。

うぅ、やっと社会復帰出来た感じがする。彼女だけが働いてるって、なんか辛いしなぁ。



「ん・・・・・・がんばろうか」










一応・・・・・・頷いてくれた。





ちょっとだけお別れ。そんな時間が近づいてる。だからかな、なんか・・・・・・行きたいと思う気持ちと矛盾する形で、ティアと離れたくないって思っちゃうのは。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・うーん、やっぱりしばらくはお姉さん的な立ち位置かな。





あの、今告白して、焼けぼっくい・・・・・・じゃなかった、焼けぼっくりに火をつけるようなことしたくないし。まぁ、うぬぼれだと思うけど。










≪Sir、正確にはやけぼっくいです。先ほどので合っています≫

「そうなの? でもはやてが」

≪間違えて覚えていたのでしょう。少し気になって辞書サイトに繋いで調べましたから、間違いありません≫

「そっか」





とにかく、自分のオフィスでお仕事中。これでも分隊長で執務官で、六課の捜査主任。事件は無くてもやることは結構ある。



でも、好き・・・・・・私が、ヤスフミを好き・・・・・・。うぅ、本当にもっと早く気づいてればよかった。そうすれば、ティアに遠慮なんてしないで、ちゃんとアタック出来たのに。



やっぱり私、ダメだな。いろんなこと、気づかなくちゃいけなかったこと、見えてなかったよ。





「ねぇ、バルディッシュ」

≪はい≫

「私、もっと強くならなくちゃいけないね」

≪そうですね。もしそれが出来なければ、彼は何時まで経ってもあなたから離れられませんから≫










そうだね、それは・・・・・・あ、この書類はすぐにはやてに確認してもらわなくちゃ。よし、はやての端末に送信と。





とにかく、それはだめだよ。ま、まぁ・・・・・・本当にティアとヤスフミを取り合う感じなら問題ないとは思うけど。でも、それはダメだもの。うん、ダメ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



お昼、なんとなく私やキャロ、エリオは三人でエリオの部屋に集合して、ちょっとお話。





・・・・・・どう、しようか。










「もう僕達、仲間じゃないんでしょうか」

「一緒に旅行に行ったり、お話したりしたこと、全部意味が無かったのかな。私、なぎさんのことがもう分からないよ」

「そうだね、私も。病気のせいだって分かってても、ちゃんとお話も出来ないなんて、嫌だよ」



分かってる。私達はちゃんと分かってる。蒸し返されても、恭文にとっては迷惑なだけだって。恭文にとっては話じゃなくて、過去の古傷にただ触れられるだけなんだって。

だけど、それでも・・・・・・うぅ、どうすればいいんだろう。イマジンの事件の時は、これでようやく元通りになれると思ったのに、今はそれが全部無しになったみたいで、少し辛い。



「どうして、なんだろうね」

「スバルさん?」

「恭文と会って、友達になって、ちょっと気になる事とかもあったけど、まぁまぁ上手く行って・・・・・・なのに、どうしてこんな風になっちゃったんだろ。
一緒に居られるのは、この場所で仲間が出来る時間は、もう本当にあと少ししかないのに。それなのに、どうして恭文、私達から離れちゃうんだろうね」










やっぱり、話したいよ。自己満足でも、蒸し返すことが無意味でも、ちゃんと話したいよ。

私、いっぱい考えたんだよ? 恭文のこと知りたいから、本当に友達になりたいから、どう話そうかなーって。

話せば、今までとは違う、本当の意味でちゃんとした友達になれるって、そう考えてたから。





エリオやキャロだって同じ。自分達の世話のせいで、恭文からフェイトさんとの時間を奪ってたのは、仕方のないことかも知れないけど事実で、それについてどう責任を取ろうかとずっと考えてた。

そんな必要ないって私やティア、みんなが言っても、自分達のことがなければフェイトさんは恭文の事をもっと見れて、恋愛・・・・・・自分のための幸せにも目を向けて、もしかしたら告白をオーケーしたんじゃないかって、かなり悩んだりもしてた。

・・・・・・ここに居て欲しい。確かにシャマルさんの言うように帰ってくるかも知れない。だけど、恭文が六課の仲間で居られる時間は、今しかないんだよ?





その時間は、二度と帰ってこない。なのに、どうして離れちゃうのか、私・・・・・・やっぱり分かんないよ。

押し付けで、わがままかも知れないけど、本当に分からないよ。恭文に、ここに居て欲しいよ。それが無理なら、せめて・・・・・・せめて、ちゃんと話したいよ。

今離れたら、もう私達は友達でも、仲間でも、エリオとキャロに至っては家族ですらなくなってしまいそうで、とても怖い。それが私達みんな、すごく、怖いの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・で、なんとか帰って来れたと」

「うん。でも・・・・・・全然話が出来なかったよ。アイツ、キレてアタシの事『他人』とか『家族じゃない』とか言いまくって」

「そりゃそうだよ、アルフだって、フェイトちゃんに止められなかったら話するつもりなかったでしょ?
というより、それはアルフが言ったことだよね。今日恭文くんが言った言葉は、ぜーんぶアルフが恭文くんにぶつけた言葉」

「そう、だよね」





夕方、結構ボロボロな感じでアルフが我が家に帰ってきた。そう、海鳴のハラオウン家の自宅に。



で、私としては話を聞いて・・・・・・あー、やっぱりかと。あの子、基本的に人とぶつかって迷う子でも揺らぐ子でもないから。





「なぁ、エイミィ。本当にこのままでいいのか?」

「・・・・・・アルフ?」

「アタシのことじゃない。・・・・・・アタシはさ、自業自得だから」



リビングのテーブルで、紅茶を飲みながら目の前のアルフの言葉に耳を傾ける。なお、うちの双子ちゃん達はお昼寝中。

あ、でも一応自覚はあるんだ。よかったよ、これでまだ何かあるようならどうしようかと思ってたし。



「なら、何が気になるの? やっぱり、フェイトちゃんの事かな」

「フェイトもそうだけど、エリオやキャロもだよ。というか、フェイトよりもエリキャロだね。フェイトはもういいんだよ。
フェイトはなんか納得してる感じだから。・・・・・・アタシさ、あれからまた二人に連絡を取って話を聞いたんだ」



・・・・・・そう言えば、これに関しては緘口令が敷かれてて、エリオとキャロも黙ってたんだっけ。

察するに、アルフなりに最近の状態とかを知っておくためとかかな。



「そうしたら、悲しがってた」

「悲しがってた?」

「アイツとちゃんと話せない事、向き合えない事をだよ。このままアイツが旅に出ちゃったら、もう友達でも、家族でも、仲間でもない。
自分達は本当にただの赤の他人になってしまいそうで怖いって。泣きそうになってた。それ見たらアタシ、余計に・・・・・・」

「・・・・・・そっか。でもね、アルフ。恭文くんの病気、まだ治ったわけでもなんでもないんだよ? 今の状況で全部の事に完璧な形での解決を求めるのは、無理だよ」



少なくとも、主治医であるシャマルさんのゴーサインが出ないとそれはダメ。求めること自体が負担になるんだから。

・・・・・・そこまで、追い詰めちゃってたんだよね。なんか、ダメだな。子育ての同志として、気づけなかったのは失敗だったよ。



「でもさ、そんな風に言っていられないと思うんだよ」

「まだ何か、気になる事があるの?」

「うん。・・・・・・もしも、自分達が居なければ、自分達の世話でフェイトさんの時間をアイツから奪わなければ、アイツのフェイトと付き合いたい、同じ時間を過ごしたいという願いは叶ってたんじゃないかって。
それが叶ってれば、そうでなくても可能性が残っていれば、こんなことにはならなかったんじゃないかって。アタシ、そんなことないって言ったんだけど、全然だめで」

「・・・・・・そっか」



追い詰められているのは、エリキャロも同じか。確かにこれはアルフも気にするよ。てゆうか、私も気になり始めた。

いくら大人びていても、二人は子ども。一度周りの人間から否定され、居場所をなくしたこともある。だから余計に来るのかな。



「でも、事実である可能性は捨て切れないから、言っても無駄だった・・・・・・という感じかな」

「うん。というかさ、そんなことは関係ないって証明出来ないのかな。そうすりゃ、二人だって納得するだろうし」

「アルフ、それは無理だよ。現状で、二人がそういう関係ならその証明は出来るよ? 最悪、フェイトちゃんが男性としての恭文くんに惹かれていても同じ。
でも、そうじゃない。フェイトちゃんは答えを出した。だから、二人は姉弟のままだし、恭文くんはあのティアナちゃんと仲良くなってる」

「そう、なんだよなぁ。なんか、アレだよな。悪魔が居るのを証明するよりも、居ないのを証明する方が難しいってやつになっちゃってるよな」



前に読んだ本でそういうのがあった。紅茶をもう一口飲みながら思い出す。・・・・・・悪魔が居る事を証明するのは簡単。悪魔が居るという証拠を提示すればいい。1番いいのは、生きているそれを連れてくること。

フェイトちゃんと恭文くんの問題に置き換えると、付き合う可能性がある事を証明するのは、二人が付き合う。最悪、フェイトちゃんが恭文くんに惹かれればいいという感じかな。逆に、居ない・・・・・・可能性が無いということを証明するのは難しいという論法。



「・・・・・・フェイトちゃんが心変わりしないという前提でその証明をすると考えるなら、そうなるね。エリオとキャロの事が関係あると証明するのは、簡単だよ。
現状が全てを物語っていると言えばいい。フェイトちゃんが恭文くんと付き合ってない今という時間そのものが、その証拠なんだよ」



細かい因果関係とかそういうのを突き詰めて行くと矛盾は出てくるかも知れないけど、フェイトちゃんが執務官の仕事や二人の世話を優先して、恭文くんとの時間・・・・・・というより、自分のための時間が取れなくなってた部分があるのは事実だから。

そこは、フェイトちゃん本人が否定しようが変わらないと思う。個人の概念どうこうの話じゃない。そこをするのは筋違いもいいところ。あくまでも見るべきは・・・・・・事実。だって、これは証明なんだから。



「だけど、関係ないと証明するのは本当に難しい。キャロは大体3年近く。エリオは6年近く付き合いがあるんだから、その中で二人が恭文くんからフェイトちゃんとの時間を奪ってた部分が全くないとは、誰にも言い切れないでしょ」

「エイミィの見解だと、その部分がもしあったら、恭文とフェイトは付き合っていたかも知れないってことか?」

「まぁ、可能性の問題だけどね。エリオとキャロには厳しいし残酷なように聞こえるかも知れないけど、一つの事実ではあるんじゃないかな。ただ・・・・・・」

「ただ?」

「IFの可能性なんて、それこそ無限にあるんだよ? 『もし・たら・れば』なんて言ってたら、誰でも生きてるだけで『世界中のみんなにごめんなさい』状態だよ。
私は、今話した事はそこまで気に止む必要はないと思う。これで恭文くんがブッチギリで不幸とかならともかく、少なくともブッチギリではないんだから」










うん、ブッチギリではない。リインちゃんが居て、アルトアイゼンが居て、ティアナちゃんって言う理解者が出来た。だから、ブッチギリではない。





うー、やっぱりアルフの言うように話してもらった方がいいのかな。でも、主治医シャマルさんがかなり硬めにガードかけてる感じだし・・・・・・うーん、どうしよう。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



夜、フェイトが家に来た。





ティアとリインが夕飯を作っている間に、二人でベランダに出て、お話。・・・・・・大丈夫、アルトも同席してるから、なんとかなる。










「・・・・・・もう、決めたんだよね」

「うん。デンライナーに乗って、しばらく旅してくる。やっぱり、止められないのよ」

「そっか」



ベランダから見える夜景を二人で見ながら、そんな簡単なやり取りをする。

・・・・・・うん、大丈夫。なんとかなってる。



「本当はね、ここに居て欲しかった。みんなと一緒に、色んな事を考えて欲しかった。それは、実は今もあんまり変わってないんだ。
だけど・・・・・・旅に出て、いろんなものを見ていく生活を送るのは、ヤスフミの昔からの夢、だもんね。どんな形でも、大切な願い」

「うん」

「だから、止めないよ。アルフの暴走を見ててね、すごく反省したの。私もアレと同じ事をしたから。・・・・・・行ってきて、いいよ。
でもね、定期的に帰ってくる約束は守って欲しいんだ。じゃないと、みんなきっと悲しくなるから。私も、悲しい」



優しく、だけどいつも通りな真剣な声で、フェイトがそう言ってくれた。それだけで・・・・・・嬉しくなった。

あの、ありがと。てゆうか、その・・・・・・ごめん。



「謝らなくていいよ。あの、私こそごめん。・・・・・・私、本当にヤスフミのこと傷つけてばかりだった。あのね、ヤスフミ」

「うん?」

「ヤスフミの好きは、嘘じゃない。絶対に、嘘じゃないの」



フェイトが何を言いたいか、すぐに分かった。フォン・レイメイの事を言ってるんだ。

・・・・・・いいよ、無理しなくて。もう大丈夫だから。



「無理じゃないっ!!」



いきなりフェイトは大きく声を上げた。そして、僕をじっと見てた。顔を赤くして、じっと、瞳を潤ませながら僕を見てた。



「無理、なんかじゃないよ。あのね、私ヤスフミに沢山、何を言おうって考えてたんだ。それで、やっぱりこれだけ知って欲しいと思ったの。ヤスフミの好きは、絶対に嘘じゃない。本当の好きだった。
あの、結果的に断っちゃったけど、違うの。・・・・・・ヤスフミから好きって言われた時、泣きたくなるくらいに嬉しかった。生まれてきた中で1番嬉しくて、ドキドキしたの。だから、嘘じゃない」

「・・・・・・ホントに?」

「うん。だから、あの・・・・・・姉弟という形ではあるけど、嘘にし続けるから。私に向けてくれた気持ちと言葉は嘘なんかじゃなくて、本当の気持ちだった。
そんな風に、私のありったけで嘘にし続ける。だから、あの・・・・・・その、えっと・・・・・・と、とにかく嘘にするから。絶対に、し続けるから」

「・・・・・・・・・・・・それに僕にどう答えろと? もうティアが居るのに、何も返事出来ないじゃないのさ。フェイト、空気読まな過ぎ」



フェイトの表情が固まる。それがなんだかイラってくる。



「う・・・・・・あの、ごめん」

「謝らないで。謝られても迷惑」

「そう、だよね。・・・・・・うん、そうだよね」



なんか落ち込み始めた。さらにイラってくる。

・・・・・・ふん。



「ありがと」

「え?」

「一応、お礼は必要でしょ? まぁ、その・・・・・・空気は読めてないけど、嬉しかったから」



僕が夜景を見ながらそう言うと、フェイトの雰囲気が変わった。安心したような、嬉しがるような、そんな空気を出してる。



「あの・・・・・・ありがと」

「いいよ、別に」

「よくないよ。ちゃんとこういうのは、必要なことなんだから。あのね、そう言ってくれてすごく嬉しい。ほんとに、嬉しいの」



そういう、ものなのかね。・・・・・・あ、ちょっと動いた。まただ。朝から少し迷うと、後押しするようにちょっとだけ動く。

どうやら、この子達から見るとそういうものらしい。僕にはよく分からないけど。



「ヤスフミ?」

「・・・・・・まぁ、いいか」

「え?」

「あのね、はやてやなのは達にもまだ内緒なんだけど・・・・・・これ」



僕は、懐から二つのたまごを出す。一つは、黒ベースの青い星の光のたまご。

そして、もう一つは緑色に銀の十字の柄が刻まれているたまご。



「ヤスフミ、それは?」

「しゅごたまって言うんだ。今日の朝起きたら、普通に布団の中で産まれてたんだよ。というか、僕が産んだんだって」

「あぁ、なる・・・・・・えぇっ!? あの、それどういうことかなっ!!」



僕も今のフェイトと同じようにびっくりした。なお、リインとティアも一緒にびっくりした。ただ、おかしいのだ。こんな柄のたまごなんて買った覚えがないし、売ってる所を見たこともない。

それで、隊舎に行くついでにちょっと調べてもらおうと思ってあの時持って来ていたのを、オーナーとモモタロスさんが気配を察知したのだ。で、デンライナー組にたまごを見せたら、見事に正体が分かった。



「オーナーの話だと、子どものこころの中にはこういうたまごがあるんだって」



中には夢や希望、なりたい自分の形や未来への可能性が詰まっていて、夢が叶う時それがかえる。それがこころのたまご。

でも、ごくたまにその前にたまごが外に出てきて、かえっちゃう場合があるとか。で、その出てきた珍しいたまごがしゅごたま。そこから生まれてくるのが、しゅごキャラ。



「じゃあ、これがそのしゅごたまなの? え、ちょっと待って。ヤスフミ子どもじゃないよね。というか、私もこんなたまごは見たことがないし、さすがにそれは」

「ありえないことなんて、ありえないよ。それ言ったら、デンライナーのみんなだってありえないじゃないのさ」



フェイトが、僕の言葉に納得したように頷いた。まぁ、あれに比べたらこれはなぁ。

なお、オーナーの説明だと大人でもこころのたまごを持っている人間は居るそうだ。ようするに、ずっと夢を持ち続けている人だね。



「つまり、ヤスフミがたまごを産んでもおかしくないんだね。・・・・・・でも、どうして今このタイミングで」

「なんか色々吹っ切れてきて、僕の中のなりたい自分が一応でも一つの形になって来てるのが原因じゃないかって言われた。
というかさ、説明を受けた時になんか疑いもせずに納得したんだ。もうすっごくすんなりと」

「どうして?」



改めて聞かれると、ちょっと困る。特に理由があるわけじゃないから。

疑問を隠そうとせずに僕に向けているフェイトに、どう話せばいいのかと困って少し考える。それで、思いついた。



「うーん、触ってみればわかるかも。フェイト、両手出してみて」



僕がそう言うと、フェイトが素直に両手を出したので、右手に星の光のたまご。左手に十字のたまごを乗せる。僕の夢やなりたい形を触られているのと同じ感じだから、ちょっと感覚がくすぐったい。

それを感じながらもフェイトを見る。すると、フェイトの表情が柔らかくなった。どうやら、僕の言う理由が分かったらしい。



「・・・・・・・・・・・・暖かいね、すごく。スーパーで売ってるたまごとは全然違う。本当に生きているたまごだ」

「でしょ? まぁ、そのしゅごキャラって言うのが何時かえるかは分からないんだけどさ。たまごがかえるように、頑張りたいなとちょっと思ってて。
だって、このたまご達の中には、ちゃんと生きてる存在が居るんだもの。だから、暖かい。それなのにいつまでもたまごの中じゃ、可哀想だし」

「うん、そうだね。ヤスフミが納得した理由、私も分かったよ。私もすごく納得した」



フェイトが僕を見ながら微笑む。優しく、自分の事のように嬉しそうに。

それがなんだろう、すごく嬉しい。こうやってちゃんと話せてることと同じくらいに、嬉しい。



「この言いようのないくらいに優しい暖かさを感じれば、そう思っちゃうよ。私も触ってみて、感じてた疑いが晴れたから」

「あのね、リインやティアも同じ事言ってくれた。・・・・・・早く、この中の子達に会いたいな」

「会えるよ、きっと。だって、この子達はちゃんと生きてるんだから」










うん、そうだと嬉しいな。





本当に、嬉しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ふーん、アンタアレ見せたんだ」





あ、あのティアさん。なぜにそんなに不機嫌顔? そんなにフェイトに見せたのがご納得いただけないですか。





「うん、見せてもらったよ。やっとヤスフミとちゃんと話せたし、仲直りも出来たから」

「そう、ですか」

「うん」





な、なんだろう。フェイトがニッコリ笑顔で言い切るのが怖い。いつも通りなはずなのに怖い。

なぜこんなに見せたのはミスジャッジだったんじゃないかって本能のレベルで考え始めてるんだろ。

やばい、僕はミスを犯したのかも知れない。それも重大なミスを。



というか、フェイトが普通に戻ったからやっとティアが帰れるのかなとか、ちょっとホッとしてたのに、なんでそのゴールが遠くなったのっ!?





「それでティア・・・・・・ごめん。私、本当にだめだった。あのね、もう大丈夫だから、今日、一緒に隊舎に」

「あー、コイツが出発するまではここに居る事にしましたから。まぁ、色々話したいこともあるんで。あと、私は気にしてませんから」

「そう、ならよかった。あの、本当にごめん」

「いいですよ。ただし、フェイトさん」



フェイトがいつの間にか俯いていた顔を上げる。上げて、ティアを見る。

ティアが、どこか挑むような目でフェイトを見る。・・・・・・フェイトも、それを受け止めて同じ目になった。



「私、負けませんから。というか、やるならやるで別に遠慮しなくていいですよ?」

「・・・・・・いいの?」

「はい。今のところ王手にかかってはいますけど、それでも1番のライバルはフェイトさんかなーと。
いい機会ですし、ここでちゃんと白黒つけるのも必要とか、ちょっと思ったり。それに、渡さなければいいだけの話ですし」



すみません、僕置いてけぼりです。リインはふむふむとか唸ってますけど、僕はさっぱりです。

聞きたいけど、本能が聞くなと止める。これは今聞いてどうにかなる問題じゃないと妙な声がする。これは、なに?



「じゃあ、そうする。ただ、ヤスフミの事を戸惑わせたくないから、今はお姉さんの位置で・・・・・・かな。
だけど、もし自分の気持ちが抑えられなくなったら・・・・・・遠慮しないよ。私だって、負けないんだから」

「望むところです」



・・・・・・・・・・・・あの、リインさん。あとアルトさん。この二人は僕を見ながら一体なんの話をしてるんでしょうか。僕はさっぱりなんですけど。

というより、火花散ってるんですけど。おかしいんですけどこれ。僕完全に置いてけぼりなんですけど。



”まぁ、今は関係ない話だから大丈夫ですよ。将来的にはしっかりする必要ありますけど”



いやいや、一体何をっ!?



”ですです。まぁ、今までとは違ういい関係が出来てるんじゃないですか? というか、ある意味では同盟です”

”恋は戦いと言いますし、これくらいはいいですって。問題ないでしょ”

”フェイトさんも本当の意味で吹っ切れた様子ですし、例え抑え切れなくなってもちゃんと解決は出来ますよ。うん、いい感じですー”



ごめん、僕にはさっぱりなんだけどっ! てゆうか、これは何の同盟っ! お願いだから、誰か僕にちゃんと教えてー!!



「でもでも、リインもティアも朝起きた時に恭文さんと一緒にビックリでしたー」



お願いだから話を変えないでー! 僕だけを置いてけぼりにした状態で話を進めないでー!!



「うん、かなりビックリした。というか、私はしゅごたまなんて聞いた事がないし」

「私も同じくです。ただ、オーナーの話だと、普通の人・・・・・・ようするに、私やフェイトさん、なのはさん達にはそのしゅごキャラとかが見えないそうなんですよ。たまご自体は大丈夫らしいんですけど。
同じようにしゅごキャラ産んでる子や、霊感が強いとか、まだたまご自体がこころの中に生まれていないくらい小さな子じゃないと、見ることどころか存在の感知や認識自体が出来ないとか」

「だからなんだね。というか、ヤスフミ嬉しそうだよね」



えー、遅くなったけど現状の説明。ティアとリイン作の夕飯(メンチカツカレー)が出来上がったので、フェイトと二人部屋に戻ってきた。

で、四人でご飯を食べながら、お話。途中まで置いてけぼりだったけど、これは大丈夫。そして、みんながなんだかにこやかに僕を見る。・・・・・・なんかおかしい?



「あの、おかしいとかじゃないの。ただ、良太郎さん達絡みじゃない時にこんなヤスフミを見るの、久しぶりだから」

「恭文さん、たまごの話になるとこうなんですよ? そうとう嬉しいらしいのです」

「だって、面白そうだしさ。・・・・・・うーん、やっぱりワクワクするよ」



ソファーの前のテーブルの上にクッション入りのバスケットがある。そこに二つのたまごは鎮座している。

それに視線を向けてから、僕は目の前のメンチカツをパクリ。・・・・・・うん、いいお味だ。ティアも料理上手になってきてるなぁ。



「知らなかった事に触れられる。未知の世界を感じる。やっぱり僕にとっては幸せで、嬉しいことだから」

「・・・・・・そっか」

「でも、本当にどんな子達が生まれてくるんでしょうね〜。オーナーの話だと、一人の人にたまごが二個生まれること自体もそうとう珍しいらしいですから、その辺りも楽しみなのです」

「まぁ、どっちにしてもアンタの影響を受けまくった個性的なのが生まれてくるのは決定でしょ。間違いなくね」










本当に久しぶりに、穏やかにフェイトと話しながら、ティアやリインとも話しながら、食事は進む。





フェイトは、明日も仕事だから食事が終わったらすぐに車で隊舎に戻った。あ、無事に帰りついたってメールも来た(シャマル先生の許可はあり)。





それで・・・・・・たまご、早くかえるといいねと文面にあった。





本当に、そうだね。いつになるかとかは分からないらしいけど、かえるまで・・・・・・かえってからも、大事にしたいな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「つーわけで、青坊主が産卵した記念に、パーティーやろうぜパーティー。またタヌキ女からカラオケセット借りてよ」

「先輩・・・・・・どうしてそうデリカシーがないのさ。別にパーティーはいいよ? だけど、夢のたまごが産まれたのを産卵って言うのはやめようよ」

「亀、お前そうは言うけどよ、間違ってはないだろ?」

「いや、それはまぁ・・・・・・確かにね」



食堂でコーヒーを飲みつつそんな話。確かにあれはなぁ。というか、ビックリしたし。

でも、オーナーもよくあんなこと知ってたよね。やっぱり謎が多いよ。



「せやけど、何時かえるかは分からんのやろ?」

「そう言ってたね。恭文君が産んだたまご・・・・・・その中から生まれてくるしゅごキャラは、なりたい自分そのもの。
その概念がここから更にちゃんとした形で固まっていかないと、ずーっとたまごのままの可能性もあるって言ってたし」



コーヒーを一口すすりながら、オーナーの言葉を思い出す。そういう概念そのものがとてもあやふやで、それを持ち主が信じられなければ簡単に消えるとか。

ということは、やっぱり色々難しいのかな。うーん、スバルちゃん達のこともまだ解決していないみたいだから、そこで悪影響が出なきゃいいんだけど。



「うー、難しいことはいいじゃん。とりあえず『たまごが産まれておめでとー!!』でさ」

「それもそうだね。でも、どんな子が生まれてくるんだろ。たまごは二つだし」

「きっとよ、青坊主レベルでキャラの濃いやつだって。間違いねぇって」

「そこは誰にも否定できないのが辛いところだよね。でもさ、恭文のなりたい自分ってなんだろ」



・・・・・・そう言えばそうだよね。あ、でもウラタロス、そこは話を聞いたじゃない。

恭文君は、守りたいと思ったものを全部守れる『魔法』が使える魔法使いになりたいって。



「なら、どうしてたまごは二つ産まれたの?」

「え?」

「普通に考えて、全く同じ形が生まれてくるとは思えない。どちらかがそれとして、もう一つは・・・・・・いったいなに?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・うーん、なんだろう。





何度考えても、今ひとつ分からない。










「・・・・・・アンタ、まだ寝ないの?」



布団にリインと入ったティアが、起きてきた。なお、僕は普通にソファーです。電気を消して、あるものを見ながら考えていた。

いや、さすがに・・・・・・ねぇ? ティアだって、仕事持ち込んできてるわけだし、いかがわしいことは出来ないよ。



「あ、ごめん。起こしちゃった?」

「ううん、目が冴えちゃっただけ。・・・・・・なに、またたまご見てんの。アンタも好きよね」

「その言い方やめて。いやさ、ワクワクするとかそういうのとはまた別の話なんだよ」



小声で言葉を交わしながら、パジャマ姿のティアが僕の隣に座って、そのままたまごを見る。

・・・・・・少し、話そうかな。そうすれば考えが纏まるかも。



「なんでたまごが二つ産まれたのかなーって」

「・・・・・・あぁ、そういうことか。アンタの今感じている目標以外に、なりたいものがあるんじゃないかと」

「うん。だから二つ産まれたのかなって」



一つは、『魔法』が使える魔法使いのたまご。このどちらかがきっとそれ・・・・・・のはず。まぁ、それとは全く違う可能性も0じゃないけど。

二つとも同じ形とはちょっと考えにくい。だから、なんか眠れなくてたまごとにらめっこしてたんだけど・・・・・・うーん、なんだろう。



「まぁ、いいことではあるんじゃないの?」

「そうかな」

「そうよ。なりたいもの、やりたいことが少なくとも二つはあるってことだもの。いいこと、なんじゃないかな。アンタの中の夢の形は、一つだけじゃないってことなんだから」

「・・・・・・そっか。これはいいことなんだ」



二つあるから、色々考えちゃったけど、そう、だよね。普通にいい事なんだよ。なんで今まで気づかなかったんだろ。

暗い部屋で、もう一度たまごを見る。・・・・・・うん、大丈夫だよ。ここに居ていいから。どっちかがいらないなんてこと、絶対に思わないから。



「その形もさ、旅の中で、これからの時間の中でじっくり考えればいいのよ。たまごは、すぐにかえるって決まってるわけじゃないんだしさ」

「そうだね、そうする。ティア、ありがと」

「うん」



隣を見ると、少し・・・・・・ティアの瞳が潤んでた。それがすごく可愛くて、綺麗で・・・・・・あの、ごめん。

我慢出来ない。そのまま、僕はティアを押し倒した。ティアは少しビックリした顔で、僕を見上げる。



「・・・・・・だめ、ここだとリイン曹長が起きちゃう」

「そ、そっか。そうだよね、ごめん」

「だから・・・・・・お風呂、行きましょ? あそこなら鍵がかけられるし」



え、えっと・・・・・・いいの? 僕、結構強引だと思うし。



「ちゃんと避妊してくれる事と、リイン曹長起こさないように静かにしてくれるのが条件よ?」

「・・・・・・うん、ありがと」

「いいわよ。でもさ」



ティアが、身体を起こす。起こして、少しおかしそうに僕を見て笑う。



「なんだか私達、子どもに見つからないようにエッチしてる親みたいよね」



その表情のまま、リインを見る。・・・・・・確かに。



「でも、それ聞いたらリインが怒るよ?」

「それもそうね。リイン曹長はパートナーであって、アンタと私の子どもじゃないんだから」

「今のうちにさ、見つかった時の言い訳考えておく?」

「あ、いいわね。うーん、どういうのがいいかな」



・・・・・・ちょっとだけ冗談めいた会話。リインが聞いたらきっと怒るだろうけど、それでも楽しい。



「典型的なのは、プロレスごっことかそういうのよね」

「そうだね」



なぜだろう、その言い訳はすっごい使われているような気がする。昭和の時代からだよ。

うーん、プロレスって言えばプロレスだけど、言い切るには無理があるような。・・・・・・あ、前にラジオですごいの聞いた事がある。



「なに?」

「えっと、女の人が上になって、身体を起こした状態で見つかったってのがあったのよ」

「うわ、そりゃまた決定的ね。それは言い訳できないでしょ」

「それがしたんだって。お馬さんごっこって言って」



ティアが小声で『マジっ!?』と聞いてきたので、頷いて答えた。とりあえず、真偽はともかく以前聴いたラジオでのはがきはそんなのがあった。で、そこからが驚きだった。それはもう僕もビックリしたし。



「それで、お馬さんごっこの振りで最後までしたとか」

「・・・・・・そ、それはまた度胸があるというかハングリーというか。ごめん、私は絶対無理」

「奇遇だね、僕もだよ」



想像してみる。例えばリイン・・・・・・はまぁ、性的知識があるようなので除外して、カレルとかリエラとかに見られた場合に、お馬さんごっことかそんな言い訳して続けられるかと。

無理だ。絶対無理だ。てゆうか、そんな真似したら僕はエイミィさんとクロノさんに殺される。確実に殺されるから。



「と言うより、子どもに見せるもんじゃないわよ。・・・・・・そう、言えばさ」

「うん?」

「アンタって、子ども・・・・・・好き?」



そう聞かれたので、頷いて答えた。まぁ、嫌いではない。カレルやリエラの世話も楽しいし、慕ってくれるのは嬉しいし。

ただ、頭の痛い事もある。それはもうかなり。



「そう言えば、子育ての手伝いしてたくらいだしね。当然か」

「まぁね。でもさ・・・・・・カレルとリエラもそうだけど、ルーテシアの『パパ』とか『お父さん』呼ばわりはなんとかしたいの。すっごく頭が痛いし」

「・・・・・・そう言えばそれがあったわね。でも、そっか。子ども好きなんだ。私は・・・・・・ちょっと、苦手なんだ」



ふーん、そうなんだ。まぁ、苦手な人は苦手だって言うしなぁ。ここは仕方ないでしょ。

でさ、どういうところが苦手なの?



「なんだろ、理屈じゃないの。自分の子どもの時の事とか思い出すからかな。エリキャロみたいにある程度大きくなってるならともかく、それより小さいのは少し、苦手。・・・・・・幻滅、した?」



ティアが不安げな顔で僕を見て、聞いてきた。だから・・・・・・まぁ、首を横に振った。



「してないよ」

「ホントに?」

「ホントホント」



ティアの不安げな表情が、明るくなった。嬉しさと安堵が入り混じった顔で、微笑む。

もしかして、僕の評価とか気にしてたのかな。うーん、子ども産むとか、そういうの将来のことだからまだ分からないのに。



「ありがと」

「ううん。・・・・・・ね、ティア」

「なに・・・・・・あ、ごめんね。じゃあ、あのお風呂場で」



首を横に振った。立ち上がろうとしていたティアを、右手で腕を掴んで止めた。

なんか、今日はいいや。こう・・・・・・そういう気分じゃなくなったから。



「もっと、こういう話したいな。リインが起きないように今まで通り小声でだけど。あの、ごめん。僕から誘っておいて」

「・・・・・・もう、仕方ないなぁ。いいわよ、ここじゃなんだから、ベランダに出て、夜景でも見ながら色々話そうか。
結構遠い未来のことだけど、その時になって慌てないようにさ。子どものこととか、そういうのも含めて」

「うん」










どうしよう。





僕、この子のことドンドン好きになってる。この子との時間が大切になってきてる。





だから、これから一緒の時間をどうやって過ごしていくかとか、色々考え始めてる。・・・・・・なんか、不思議。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「「・・・・・・へっくしゅんっ!!」」

≪あなた達、風邪ですか?≫

「というか、同時にくしゃみは怪しいのですー。恭文さんもティアも、昨日の夜リインに内緒で、二人でいかがわしい事をしてたんじゃないですか?」

「してませんから。ただコイツと、明け方くらいまでベランダで静かに将来のこととか話してただけで・・・・・・あ、そう言えば話せたのよね」



朝食、トーストと目玉焼きとサラダをつまみつつ、ティアが嬉しそうに僕を見る。・・・・・・そっか、話せてる。今まではあんまり見えてなかったのに。

なんか、症状がよくなり始めてるのかな。色々問題も解決してきてるし。



「それで、今日はどうするですか?」

「とりあえず、旅の準備はあらかた整ってるんだよね。あとは暗器の整理だけで」

「デンライナー、基本的にお風呂や就寝施設に売店まであるって言ってたしね。それほどそろえるものもないか」



ティアの言う通り、色々施設があるのだ。なんか、Newデンライナーになってから食堂車のデザインが変わっただけじゃなくて、他のも色々追加されたらしい。

なので、僕は暗器類や最低限の身の回りの物だけでオーケーなのだ。



「そうだ、ティア」

「なに?」

「この家、ヒロさんの厚意でこのままで大丈夫だからさ、合い鍵あげようか」

「・・・・・・え?」



いや、荷物の管理とか掃除とか頼もうかなと。あと、書庫やらで必要なものがあるなら持ってっちゃってもいいし、一人になりたいなら僕が居ない間使ってもらっても・・・・・・。

なんで顔赤いの? というか、なんか涙目だし。おーい、どうしたー?



「な、なんでもないっ! なんでもないわよっ!! ・・・・・・ま、まぁっ!? くれるって言うんならもらってあげないこともないわよっ!!」

「おぉ、ティア久々にツン発動なのです」

≪さすがツンデレ・オブ・ツンデレ≫

「違うわよっ! てゆうか、リイン曹長も乗らないでくださいっ!!」










・・・・・・平和だなぁ。





僕が居なくなっても、帰ってくるまでこの調子だと非常に嬉しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・早朝、夜が明ける前に神社に来た。なぜか港湾部、隊舎の近くにある古びた神社。





なんでも、昔開発地域だった名残らしい。事故が起きないように、安全無事に工事が終るようにと、地球出身の工事主任が会社とかけあって建てたものとか。前に見かけた時、フェイトさんが教えてくれた。





なので、神社と言っても本当に小さくて、参拝客もほとんど居ない。・・・・・・でも、ここしか思いつかなかった。聖王教会は遠すぎるから。










「お願い、します」





私は、神棚に手を合わせて、お願いする。





「なぎさんと、お話させてください」





ちゃんと、謝りたい。奪って、傷つけて、苦しめて・・・・・・ごめんなさいって。



神頼みなんて、主義じゃない。だって、神様なんて居ないんだから。うん、居るわけがない。私はもうそれを知ってる。



だけど、もうこれしかない。これしか・・・・・・なんでもいい。自分の気持ちを何かにぶつけたかった。そして、吐き出したかった。





『・・・・・・・・・・・・その願い、叶えよう』





だから、返事なんて期待してなかった。だけど、その声は聞こえた。



・・・・・・え?





「お前の望み、確かに聞いた」





私の目の前に突然砂が噴き出し、それが形を取り、一つの生命として姿を現した。



そこに姿を現したのは、赤いマントを纏い、錆びた朱色の鎧を身体に装着し、大きな両手剣を持った人。だけど、顔が鳥。というより、ツバメに見える。





「・・・・・・ただ一人、ここで待ち伏せていた甲斐があったな。神社ならば、すぐに契約者が見つかると思ったのは正解だった」





うそ、これ・・・・・・!!





「おい、娘。願いはすぐに叶えてやる。安心しろ。ただし・・・・・・お前にも、代償をしっかり払ってもらうがな」










イマジンっ!?




















(その7へ続く)




















あとがき



やや「・・・・・・外道ー」

恭文「いきなりなにっ!?」

古鉄≪さて、結局ギンガさんルートを越えることになりました。・・・・・・どうなるんですか、これ≫

恭文「もう書き続けられるところまで書くしかないでしょ。えー、今回出てきたイマジンは・・・・・・すんません、適当に考えました。だって、またライオンとか死神だしてもマンネリかと思って。
なお、モチーフは某童話のツバメと金ぴかな王子の像を掛け合わせました。あれですよ、困った市民のために自分の身体の宝石や金をみんなに分け与えるっていうお話」

やや「恭文、それっていいの?」

恭文「大丈夫、幽霊とかのイマジンも居るんだからなんとかなるはず。それに主軸は外してないはずだもの。・・・・・・とにかく、そんなティアナルート第07話、いかがだったでしょうか。お相手は蒼凪恭文と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンと≫

やや「結木ややです。うーん、なんか20話とか行きそうで怖いねー。さすがパーフェクトカップル」





(きっとそれは何か違うと、古き鉄コンビは思う。でも、何も言わない)





古鉄≪さて、幕間そのじゅうごもなんとか書きあがりつつ、こっちも頑張ったその6ですけど・・・・・・ついにたまごが≫

やや「それも二つー。完全にやや達のお話とクロスする感じだよね」

恭文「まぁ、その後1年くらいあの状態(予定。そして未定)らしいけどね。あ、でもこの一件の終わりでかえるかも知れない(予定は未定)とは言ってたような」

やや「ホントに? じゃあじゃあ、星の光のたまごが先行公開なんだ」

恭文「いや、そっちはしゅごキャラ本編内でやるからお預け。やるのは、もう一つの方なんだって。・・・・・・まぁ、そこも次回以降ということで。それでさ、やや」

やや「なに?」





(いや、なんて言うか・・・・・・さぁ)





恭文「マジでレギュラー?」

やや「うんっ!!」

恭文「やや、人には向き不向きってあると思うんだ」

古鉄≪そうですよ、唯世さんや海里さんだって、ヒロイン出来ませんよ? みんな違ってていいじゃないですか。みんなヒロインじゃなくていいんですよ≫

やや「うー、それどういう意味っ!? というか、唯世やいいんちょは男の子だよねっ!!
それにそれに、ややだって、立派にヒロインできるもんっ!パーフェクトティアナさんを超えたスーパーヒロインになれるもんっ!!」

恭文「そっか。じゃあさ、プロットとかないの?」

やや「えっとね・・・・・」





(エース、そのまま笑顔を浮かべて固まる。固まって数秒後、明るい声でこう切り出した)





やや「本日はここまでっ! お相手は結木ややでしたー!!」

恭文「え、もう締めっ!? てゆうか、なんでそうなるっ!!」

古鉄≪プロット、考えてなかったんですね≫










(エース、何気に勢いだけの子。そんなことが露見しながらカメラはフェードアウト。
本日のED:ティアナ・ランスター(中原麻衣)『二人の翼』)




















恭文「さて、とりあえずスエキとどう話すか。めんどくさいから肉体言語でいい? ほら、三人相手なら試し切りもいいと思うし」

ティアナ「その攻撃思考はやめなさい。普通に話せばいいじゃないのよ。気にしてないから大丈夫ーだけでも、問題ないわよ」

恭文「それを言ってアウトだったんですけど」

ティアナ「あー、そっか。あの子達もまた強情だからなぁ。多分、引かないわよ?」

恭文「だよねぇ。とりあえず・・・・・」

ティアナ「とりあえず?」

恭文「やっぱ肉体言語じゃだめ? もう力ずくで」

ティアナ「アンタ、ぶっ飛ばすわよ? ちょっとマジに考えなさい」

恭文「いや、冗談だから。てゆうか、ティアが厳しいー」

ティアナ「当然でしょ? 優しいだけと思ってたら、大間違いよ」

恭文「納得しました」










(おしまい)





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あきゅろす。
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