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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第8話 『とある部隊のバレンタインの風景 そして、とある魔導師の参戦決定』



・・・・・・季節は、バレンタイン。あ、表現間違えた。今日は、バレンタイン。バレンタインとは、2月14日に行われるロンリーな人には全く関係が無いというある種差別的なイベントである





女の子・・・・・・というか、大好きな相手や、日ごろお世話になっている人間にチョコなどのプレゼントを渡して、その感謝や気持ちを伝える日。それが、バレンタインだ。・・・・・・な? マジで関係なさそうだろ。





この行事は、管理局の認定で言うと第97管理外世界・地球発祥ではあるが、ミッドでも結構有名なイベントだ。この辺りは、ミッドに日本文化が多く取り入れられている事が関係していたりする(俺はヒロさんサリさん経由で知った)。





なので、当然のように・・・・・・。










「はい、お兄ちゃん。チョコあげるー♪」





なんて言って、可愛い妹『キャラ』から俺は可愛らしくピンクと白の包装紙でラッピングされ、赤いリボンを結んだハート型のチョコを渡されるわけですよ。そして、とりあえず受け取るわけですよ。



なお、俺にチョコを渡してきたのはメイル・スノウレイド。奇しくも先生と同じファミリーネームを持った少女。一応言っておくと、ガチでこの子のお兄ちゃんなわけじゃない。





「・・・・・・ちょこ?」

「うんっ!!」





場所は、隊舎の食堂。俺はひとり、朝ごはんパン・コンソメスープ・オムレツにサラダのセットを食べているところ。

そこにいきなりこれである。なかなかに空気を読んでいないと言うべきか、チャレンジャーと賞賛するべきか、悩むところだ。

ちなみに俺は、ジン・フレイホーク。年齢は今年で18。今のところ『年齢=彼女居ない暦』の図式が成立している身。そして、本来であれば今日の事なんて何の関係もない人間。つまり、ロンリーボーイ。



そこを考えると・・・・・・あはは、なんかうれしいなぁ。おかしいくらいにうれしいなぁ。





≪マスター、なぜ泣いている。いや、わかるが。確かにわかるが≫

「あー、妹キャラからチョコもらえてうれしいんだ。お兄ちゃんはそういう属性なんだね」





違うわボケっ! 未だに家に帰れていない事実が辛いんだよっ!! どうしてその辺り誰もわかってくれないんだっ!?



ついでに言うと、俺は妹キャラより姉キャラの方が好きなんだっ! いいじゃん年上キャラっ!! もう大好物ですよっ!?





≪メイル、属性とはまた難しい表現を使うな≫

「ヒロお姉ちゃんに教えてもらったの」

≪なるほど、それは納得だ≫



そうかそうか。余計なこと教えやがって・・・・・・陰険に仕返しでもしてやろうか、コレはさ。



「・・・・・・あー、居た居た。フレイホーク君、おはよ」



内心頭を抱えまくっていた俺に声をかけてきたのは、八神部隊長。ここ、機動六課の部隊長さんだ。

声は明るいけど、顔を見るとその印象が一気に崩れた。・・・・・・どうしたんっすか? 目の下にクマなんか作って。美人が台無しですよ。



「いや、ウィハンでリトライ祭りしとったんやけど」



その一言で全部分かった。そう言えば昨日は発売日で店頭によっては0時開店で売ってるところもあるらしいし、買いに行ったんだ。

それで、そのまま帰って来て直でアカウント作成に励んだんだ。なんつうか、どんだけ元気ですか、この人?



「また物好きな。ヒロさんやサリさんにヤスフミでさえ、初日組入りはあきらめたってのに」

「問題無い。グリフィス君に怒られて、ソフト取り上げられてもうたから」



えっと、グリフィスさんって部隊長補佐で交代部隊の副隊長とかもやってる人だよな。めがねでキチっとした感じの人。

てゆうか、見つかったんかい。取り上げられたんかい。なんだよこの人。



「でも、問題はない。昨日フェイトちゃんと恭文と買いに行ったから、ソフトは実はもう一本あるんや。
あ、もう一本はフェイトちゃんにそのままあげた。恭文もやっとるし、共通の話題でも作ったらどうやと提案したら、即飲み込んだわ」

「・・・・・・よし、グリフィスさんに」

「いけずー! そないな空気読めんことせんでよっ!!」





朝っぱらから、思いっきり人を疑ってしまった。もっと言うと、この人は本当に部隊長なのかと疑ってしまった。いや、真面目に。

・・・・・・まぁ、数時間後にこのソフトの存在も俺が言わずともグリフィスさんにバレて、取り上げられる運命にあるんだけど。

なお、俺もリトライ祭り不参加なのは、ヤスフミやヒロさん達と同じ理由なのであしからず。普通にあれはいやだ。初日なんてまさに地獄に一本だけ落とされた細い細い蜘蛛の糸にすがりつくのと同じだし。



てゆうか、家に帰れないのになぜログインする必要があるのかがわからない。もっと言うと、ソフトは家に届くんだ。

もっと言うと、今日の夜届く予定だったんだ。密林で予約したんだ。それなのに、届け先を変更でもしない限り、俺はソフトを手に出来ない。

だって、帰れないから。帰る事を誰一人許可してくれないから。



なんだよこれ、俺が何したってんだ?





「あぁ、その問題やけど、解決するよ?」



その言葉に耳がピクリと動く。そして、いつの間にか俯きかけていた顔を上げて、八神部隊長を見る。きっと、視線は何かにすがる色で満たされているに違いない。



「マジですかっ!?」

「マジや」



その言葉をキチンとした意味で解釈するとだ、つまり俺は、ようやく家に帰れるということになる。なるったらなるんだ。

・・・・・・あぁ、神様ありがとうっ! 俺、がんばったよっ!!



≪しかし、それでは本編レギュラー入りが≫

「その前に自宅へ帰還だ。レギュラー入りは先でいいだろ」

「あぁ、それもちゃんと解決出来るよ。・・・・・・ほれ」



そう言って八神部隊長が俺の前に一枚の紙切れを置いた。というか、書類だな。

そして、それを見て俺は固まった。身体もそうだが、思考さえも止まってしまった。脳と心がそこに書かれている内容を認識したがらない。だけど、それでも口に出して読んでしまうから不思議だ。



「・・・・・・しゅっこう、いらいしょ?」





出向依頼書。まぁ、嘱託もそうだけど局員が自分の所属とは別のところの部隊の仕事をしばらくする時に使うものだ。

この場合は、期間を定めてその間はそこの仕事に従事するというものだな。多分、ヤスフミだったり元は教導隊所属って言う高町教導官とか、同じく次元航行部隊所属のフェイトさんとかは、この書類を書いているはず。

えっと・・・・・・書類によると出向するのは、俺。出向先は、機動六課。期間は今日から部隊が解散する4月の初頭まで。



そして、八神部隊長や俺が会った事もない後見人の人のハンコはもう押されてる。つまり、あとは俺本人のサインを書き込むだけで、今日から俺はここの部隊の人間になるってこと?





「そうや。後見人の方々とも相談の上で、ジン・フレイホーク君にバルゴラ、アンタ達を正式に機動六課へ出向という形で所属してもらうことにした。そやから」



そのまま、ニッコリ笑顔で言葉は続く。



「ウィハンのログインはここでしてもろうてえぇし、ご飯の面倒も見るし、本編レギュラーもこのまま最後までクライマックスや。どうや、問題ないやろ」

「え、お兄ちゃんずっとここに居るの?」

「そうや。まぁ、ヒロリスさんから聞いとるとは思うけど、解散するまでの間やけどな。メイルかて、そっちの方がえぇやろ」

「うんっ! メイル、お兄ちゃんにずっと居て欲しいっ!!」





ほうほう、つまり俺は・・・・・・家に、帰れない?





「まぁ、古代ベルカ語辺りで言うとそうなる可能性も否定出来んなぁ」

「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

≪よし、これで私も出番が増える≫

「お前も納得するなっ!!」




















魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常 Second Season


第8話 『とある部隊のバレンタインの風景 そして、とある魔導師の参戦決定』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、ご飯を食べた後、俺は体調質・・・間違えた。やばい、あんまりな事態のせいで錯乱してるな。





六課の部隊長室へ来た。で、八神部隊長だけでなく、フェイトさんに高町教導官が居たので、話をする。もう当然のように話をする。





議題は当然、このあんまりな事態についてだ。俺に何の許可もなく出向なんて話になっていることについてだ。




もう朝まで生討論するよ? えぇ、させてもらいますとも。つまり、15日の午前5時まで俺が帰るために討論ですよ。










「どういうことですかっ! なんでいきなり出向っ!? ぶっちゃけありえないでしょっ!!」

≪Max Heart♪≫

「どうしていきなりプリキュアっ!? お前絶対空気読んでないだろっ!!」

≪すまん、ついやりたくなったんだ。なお、反省はしていない≫



頼むからしてくれー! あぁ、ここはいいからとにかく目の前の問題だっ!!

さぁ、どういうことですかこれっ!? ちゃんと聞きますから早く答えてっ!!



「大丈夫、恭文よりはありえるから」

「そうだよ、フレイホーク君。恭文君よりはありえるから」



あぁ、それなら納得・・・・・・出来るわけないでしょうがっ! てゆうか、ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!



「あのありえない事のオンパレードな奴と比べられても困るんですけどっ! アイツはリアル特異点でしょうがっ!!」



ヤスフミがなんか泣いてる感じがしたけど、気のせいだ。てゆうか、泣きたいのは俺だ。



「というか、はやてもなのはもヤスフミのことをなんだと思ってるのっ!? た、確かにヤスフミはその・・・・・・ありえないくらいに運がないけど、良太郎さんレベルで運がないけど、それでもそんな言い方ないよっ!!」

「そうです・・・・・・え、俺を襲っている事態についての言及はなしっ!?」

「フレイホーク君、大丈夫。こういうのはよくあることだから」

「ないでしょ、普通っ! てゆうか、アンタまで同意見なんですかっ!!」



つーか、マジでどういうことだよこれっ! おかしいだろうがっ!!

誰かちゃんと俺に分かるように説明してくれっ! 俺はニュータイプでもなんでもないから、ツーと言えばカーとか無理なんだよっ!!



「大丈夫やて。ある人はこう言うてるよ? 『子どもはみんなニュータイプ』と。アンタかて、人の革新に触れる資格は充分あるって」

「誰もそんなこと聞いてねぇしっ! なにより年齢的な事を言えば俺はもう子どもじゃないっ!!
つーか、真面目に帰らせてくださいよっ! 俺になんか恨みでもありますっ!?」

「残念ながら、恨みはないけど用はあるんよ。いやな、あの子メイルの状態が問題なんよ。ちと協力してもらいたくてなぁ」



だから、どういうことですか。



「えっと、それは私から説明するよ。まず、あの子が一応ではあるけど、ヒロさんとサリさんが保護者で、後見人が私という形に落ち着いたのは、知ってるよね」



あぁ、それならヤスフミから聞きましたよ。なんか六課が運営されている間だけにはなるかも知れないけど、一応そうなったって。

で、それと俺と何の関係があるっていうんですか。ヒロさんサリさんはともかく、俺とあの子は全く関係ないでしょ。



「それがね、あの子は生まれや育ちが少し特殊で、そのせいで実年齢に比べると、精神がそこに追いついてないんだ。それで・・・・・・」



フェイトさんが、簡潔にではあるけど説明してくれた。そのために、このまま一般社会に出すのはまずいと判断して、ヒロさん達が預かることにしたらしい。つまり、それで一般教養のお勉強。

で、偶発的にも俺が離れるとそれに支障が出る形になってしまったので・・・・・・ごめんと、謝られた。素直にペコリと頭を下げられて、何も言えなくなってしまう。



≪・・・・・・マスター、こうなっては仕方がないのではないか? 実際、彼女はマスターが帰るそぶりを見せると情緒不安定になる。マスターが離れるのは、あまりいい行動とは言えないだろう≫

「けどよ、解散まで二月切ってるんだぞ? そうなった時はどうするんだよ」



言っておくが、俺だって仕事で自宅にほとんど居ない時もあるし、ここに来る前にやったみたいにしばらく遠出する時もある。

まさか解散後もずっと一緒というわけにもいかないだろうし、そこまで付き合えと言われても困る。



≪問題はなかろう。ヤスフミを見てみろ、リイン女史ともアレなのだからな。マスターも見習え≫

「ほうほう、つまりソウルパートナーにしてしまえと」

≪正解だ≫

「よし、お前地獄へ落ちろ。つーか今すぐ落としてやろうか」



あはははは、アレと比べるなよ。つーか、あの小さい曹長さんは妹キャラとかそういうの超えてるじゃねぇかよ。



「もちろん、そこはちゃんとするよ。ただ、八神部隊長もそうだし、私やなのはも、今までの様子や、話した感触から考えて、今あなたが居なくなるのはとてもまずいと判断したんだ。あ、それはヒロさん達もだね。
出来るなら、あなたにしばらくここに居て欲しいと考えてる。だからお願い、力を貸してくれないかな。出向という形にして報酬も出るように、私とはやて達に六課の後見人の皆さんの法で、きちんと手配はするから」

「つまり、ここに居る事自体が俺の不利益にならないように協力はしてくれると? 個人的約束ではなくて、ちゃんとした正式な契約に乗っ取って」

≪だからこその、この出向依頼書・・・・・・と私とマスターも受け取るが、それでよろしいのですね?≫

「うん」





まぁ、仮にもこの人達はヤスフミと長年の付き合いのある人間ばかり。その上ヤスフミの恋人フェイトさんも噂話を聞くに相当な人情家らしい。

なら、俺にもちゃんとした対処をしてくれるだろう。少なくともここに居る事で俺がなんらかのリスクを背負ったり、不利益を被ったりするようなことにはならないと思う。

そして、依頼料までちゃんと出してくれるのだから、これはありがたい話だと思った。



いや、逆にいい話か? 六課自体はレリック専任として作られた部隊と聞いてる。

だけど、それも大元の原因であるジェイル・スカリエッティとその一味、レジアス中将や最高評議会が全員捕縛、または死亡したりなど、壊滅状態になったことで解決してるわけだし。

つまりだ、ここでダチと適当に過ごしてるだけで、もっと言えば平和に過ごしてるだけで、俺は仕事することになるわけだ。・・・・・・やばいな、普通に働くのがバカらしくなるかも知れなくて、ちょっと怖い。





「ただ、あなたが何か予定があるというのなら、そこは仕方ないからあの子メイルにも納得してもらうように説得するよ。そこまで強制は出来ないから」

「あー、もういいですよ。ちゃんとしてくれることだけ保障してもらえれば」

「あの、ということは・・・・・・」

「出向依頼、お受けします。ただし、何度も念を押すようであれですけど、仕事の報酬と飯と当面の寝床の確保だけは、お願いしますよ? 俺にも生活があるんで」



これでも天涯孤独の身の上。数ヶ月も収益なしは非常に困る。そこさえちゃんとしてもらえるなら、特に仕事を入れていたわけでもないし、俺の方は問題はない。

まぁ、これも何かの縁と・・・・・・待てよ。そうだよな、これも何かの縁だよな。だったら、ちょっと協力してもらうか。



「ほな、話は纏まったな。フレイホーク君は、今日から晴れて六課の一員言う事で」

「フレイホーク君、ありがと。正直助かったよ」

「いえいえ」





・・・・・・で、お世話になるついでにちょっと頼みたい事があるんですよ。それも早急に。





「アンタまたゲンキンやな。まぁえぇわ、議題はなんや?」

「俺の相棒バルゴラのことなんです。ちょっと手伝って欲しい事があって」










世のことわりは等価交換と言う。なので、俺は時間を払う。





その代わり、六課には、その設備と優秀なスタッフをちょっと貸していただこうと言う腹積もりである。うん、これくらいは許して欲しいな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・それでシャーリー、どうかな」

「うーん、これはまた・・・・・・ジン君って、言ったよね」

「はい」

「ごめん、これは私の手に余るよ」





六課のラボで、フェイトさんの補佐官であり、ロングアーチで通信主任もしているシャリオさん・・・・・・シャーリーさん(そう呼んでいいと言われた)に、バルゴラの解析を頼んだ。なお、どういうわけか高町教導官も同席してる。

理由は簡単。バルゴラのシステムには、先生前マスターによってロックがかかっているからだ。簡単に言えば、俺は現時点ではバルゴラの全性能を引き出せない。

先生はバルゴラの判断でそのロックが外れるようにしていると言っていたんだけど、どうもそういう気配がない。てゆうか、マジで覚えが無い。



なので、この際だからバルゴラを解析してもらってたんだけど・・・・・・手に余るってどういうことですか。





「まず、バルゴラにはカートリッジや形状変換のモードがいくつかある。これは知ってる?」

「えぇ、先生が使ってましたから」



当然俺も見たりしてるから、その辺りの機能があるのは知っている。

だからこそ、おかしいと思ったわけなのですよ。



「だけど、まずバルゴラにはその機能を使うためのソフトウェアが入ってないの」



・・・・・・はい?



≪ようするに、私自体にはその機構を使うためのギミックは入っているし、特に封印もされていないが、肝心要のそれを起動・作動させるためのプログラムが存在しないということだ≫

「だから、形状変換もカートリッジも使えない?」

≪そういうことだな≫



メンテ用のポッドに浮かびながらそう言ってきたのは我が相棒。そして俺は当然・・・・・・睨む。

待て待て、どういうことだ? 俺は何にも聞いてないんだがな。



≪すまんすまん、あんまりな事実に言うのを躊躇った。というより、私も今気づいた。どうりでロックを解除しても作動せんなと思った≫

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁっ! なんだよそれっ!? 普通にありえねぇだろうがっ!!」

≪問題はなかろう。真実は今こうやって日の目を見たわけだ≫

「大有りだっ! お前、デバイスじゃなかったらガチで袋叩きにしてるとこだぞっ!!」



・・・・・・あぁもういい。どっちにしろ先生のやったことだ。それなら何か意味が・・・・・・あるの?

いや、待てよ。メカのこととか詳しくて、六課のデバイス整備担当になってるシャーリーさんがお手上げってことは、そのプログラムを1から作るのとかは・・・・・・無理っすか?



「月単位で時間をくれていいなら。ただ、私も六課の仕事もあるしこれにかかりっきりにはなれないんだよね。下手をすると、プログラムを完成出来ずに六課が解散という可能性もあるんだ」



そ、そこまでっすか。あー、俺もデバイスマイスターの資格取るべきだったかな。普通に難しいんだ、これ。



「いや、なんというかごめんね。せっかく頼ってくれたのに。私もなぎ君の友達なら、なんとか力になってあげたかったんだけど」

「あー、大丈夫です。とりあえず原因が分かっただけでも御の字ですから」



あのバカバルゴラ任せだったら、一生このままだったかも知れないし、これは収穫だろ。

うん、これだけでもよしとしとくか。何事も程ほどが1番だ。



「ただ、このままじゃ私のデバイスマイスターとしての沽券に関わる。なので、夕方までバルゴラを預からせてくれないかな」



シャーリーさんが俺を見ながら言ってきた。その瞳には、何か強い核心というか、手ごたえを感じているように見えた。

つまり、何か考えがある。なので、俺は当然そのあたりについて聞こうとする。



「シャーリー、どうするの?」



俺が聞こうとした途端になのはさんが聞いたけど。



「とりあえず、カートリッジシステムだけは使えるようにしておきます。それなら、搭載方法が似通ったデバイスのシステムからの流用でプログラムはすぐに作れますから。まぁ、要調整ですけど」

「ということだけど・・・・・・フレイホーク君、どうする?」

「お願いします」



それだけでも御の字だ。いや、よかった。初めてここに来てよかったと感じたよ。俺、幸せものだ。

今まではカートリッジ使えなかったからなぁ。ヤスフミとかが『ガシャンガシャン』してるのを見て、羨ましかったんだよ。だって、楽しそうだし。



≪よかったな、マスター。感謝しろよ≫

「お前には絶対感謝しないけどな」

≪・・・・・・そんなんだから女に持てないのだ≫

「関係ねぇだろ、そこはっ!!」










とにかく、他のデバイスのシステムを流用する形で、使えるようにしてくれるということで、夕方までノンビリ待つことになった。





いや、楽しみだな。カートリッジかぁ・・・・・・。砲撃で大気圏突きぬけとか出来るかな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・フレイホーク君が『カートリッジ使ったら地球割ったりとか出来るかな』なんて、とても楽しそうな顔でつぶやきながらラボを出た。なお、私はちょっと怖かった。

どうしよう、あの期待に満ち溢れた瞳が怖い。とても怖い。もっと言うと、それは無理だと言うのが怖い。教導官として不覚にも躊躇いを持ってしまった。

だって、本当に『出来そうな気がする』と言わんばかりの目だったんだよ? アレを見た人の大半が、真実を告げるのに罪悪感を持つのに充分すぎるくらいの輝きだった。





とにかく、そんなフレイホーク君の話は置いておく。きっと真実はすぐにあの子の目の前に出てくるから。そして、このラボには私とシャーリーとバルゴラだけが残った。





残ったんだけど・・・・・・シャーリー、用件はなに? ちょっと話したい事があるって言ってたけど。










「はい。・・・・・・実は、バルゴラの中に封印状態にされているシステムを見つけまして」

「え、でもさっきは」



プログラムは無いと話していた。つまり、機構自体はともかくそれ以外は特に何も無いと思って聞いてたのに。

だから、フレイホーク君だって何も言わずに儚い期待だけを胸に抱いたわけだし。



「一応解析はしたんですけど、ちょっと物が物だったんで、フレイホーク君には話し辛かったんですよ。
とりあえず、後でヒロリスさん達にも聞いてみないといけないかなとは思います。それで・・・・・・それがこれなんです」





そうして画面に映し出された物がある。





「グローリー・・・・・・システム?」

「はい」





それは、外部的な拡張デバイスを用いて、ジャケットそのものも含めた形状変換・・・・・・というより、パワーアップ形態。言うなら、私のエクシードやブラスターのようなもの。



なんだけど、これは、その・・・・・・下手をするとそれを超えてる。というか、本当にフィーネ・スノウレイドさんはこんなシステムを使ってたの?





「バルゴラ、これ・・・・・・」

≪ハイ・マスターの切り札だ。まさか、私の中にデータがあったとは≫

「まぁ、データと言っても起動プログラムは他のものと同じで無い状態なんだけどね。でも、それも知らなかったんだ」

≪すまん。実は機能封印される時、私もスリープモードにされて、その関係では情報らしい情報を知らないんだ≫



それであれか。でも、これは本当にどうしよう。私やシャーリーにバルゴラだけじゃ判断出来ないよ。

とりあえず・・・・・・ここはアレだね。



「ヒロリスさんに相談してみようか」

「そうですね」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・ということなんです」

「あー、グローリーシステムか。あったあった。しかし、またフィーネのやつ厳重に封印してんな。プログラムもそうだけど、拡張デバイスも一から作らないと使えないよ、これ」

≪相当ボーイの心配してたんだろ。確かにこのシステムは、だ。その運用方法そのものから、術者への負担が大きくなるのは明白だしよ。まぁ、ガールのブラスター自己ブーストの重ねがけよりはマシだと思うが≫



どうやら、ヒロリスさんは友達というだけあって知ってたらしい。もうツーと言えばカーな感じだったから。あ、サリエルさんは朝から居ないので、今回はヒロリスさんだけ。

それで、あの・・・・・・どうしましょ。正直私とシャーリーだけではどうとも判断が出来なくて。



「当然、バルゴラの判断を聞いてからだよ。バルゴラ、ぶっちゃけた話、今のジン坊にこれ使えると思う?」

≪最大出力で10分が限度だろうが、一応使えると私は思う。ただし、私の認証とは別に条件が二つある。それも難易度はベリーハードだ≫

「拡張デバイスとそれ用の起動プログラムだね」

≪そうだ。恐らくアレ拡張デバイスはハイ・マスターが処分したと考えられる。そして、シャーリー殿の解析によると、システムの起動プログラムさえも私の中には存在しない。その両方がなければどうにもならん≫



つまり、その二つの条件・・・・・・ううん、問題が解決出来ればバルゴラ的にはオーケーと。まぁ、ここは口出しできないか。

話を聞く限り、フレイホーク君の師匠であるフィーネ・スノウレイドさんは、パートナーとなるバルゴラに最終的な判断を任せたんだから。だから、カートリッジシステムの復活だって、特に反対意見を言わなかったわけだし。



≪私の意見としてはこんな感じなのだが、ヒロリス殿の意見としてはどうだろう。私から見て、マスターは一応成長していると思うが≫

「悪いけどまだ及第点はやれないかな。シグナムさんとの模擬戦だけじゃ、私やサリの知ってるレベルと変わらない。
とにかくアメイジア、その辺りは考えておくとして、私らで準備だけは始めちゃおうか」

≪そうだな。ボーイが六課に来たのも何かの引き合わせだろ。頑張っておこうぜ≫



え、あのちょっと待ってください。



「準備って、このシステム、使えるようにするんですか? また即決ですね」



いや、さすがに物が物だからもうちょっと揉めるかなとか思ってたのに。



「一応ね。元々フィーネからも頼まれてたんだよ、私らの判断で、渡せる時が来たと思ったら渡して欲しいって。もしかしたら、本当にそういう時が来たのかも知んないしね」





どこか寂しげな瞳でヒロリスさんがそう口にした。普段は見せない、何かを思い出すような色を含んだ眼に、私は思わず息を呑み、言葉に詰まる。



やっぱり、寂しいのかな。友達が永遠にいなくなるって。私は経験ないんだけど・・・・・・寂しいに、決まってるよね。うん、考えるまでもない。





「それなら、その辺りのことはお任せしちゃっても大丈夫ですか?」

「あぁ、それは構わないけど、いいの?」

「フィーネさんのことや、バルゴラ、フレイホーク君の事をよく知っているのは、ヒロリスさんと、今日は居ませんけどサリエルさんのお二人ですから」



教導官としても先輩ではあるし、そこで私が口出しする道理はないと思う。うん、これはヒロリスさん達の問題なんだから。



「もちろん、部隊的に必要な手続きはちゃんとしてもらうのが条件ですけど。もうフレイホーク君とバルゴラは、六課の一員ではあるわけですし、そこだけお願いしたいんです。
そこさえちゃんとしてもらえれば、私の方からも他の隊長陣には話しておきます。まぁ、みんな納得してくれるとは思いますけど」

「分かった。私とサリでそこはちゃんとする。んじゃ、シャーリーちゃん。悪いけどカートリッジの方だけ頼めるかな?
拡張デバイスと形状変換の起動プログラムの方は、私らの方でなんとかしてみるから」

「わかりました。・・・・・・うーん、ワクワクですね。楽しいですね〜♪」

≪マジで楽しそうだし。つーか、そこまでかよ≫










うーん、なんだろう。





上手く言えないけど、シャーリーと同じで私もどういうわけか少しだけ、楽しくなってきたかな。うん、なんか楽しくなってきた。










「そういやなのはちゃん、アンタ本局行かなくていいの?」

「え?」

「解散後のスケジューリングの打ち合わせ、行く予定だったんじゃなかったっけ」





・・・・・・あぁぁぁぁぁっ! 忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!



す、すみませんっ! ちょっと急いで行ってきますー!!





≪珍しいな。つーか、慌てて事故ったりするなよー≫

「はーいっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「そして、あっという間に夕方。バルゴラも戻ってきて絶好調だ」

≪ふ、まるで世界そのものが新しい私達を祝福してくれているようだ≫

「その通りだ」





だって、俺もこれで『ガシャンガシャン』が出来る。そして地球が割れて、大気圏を突き破れる。これが嬉しくないわけがない。



あぁ、これで何時ドラゴンボールとクロスしても問題ないぞ。フリーザもセルも魔人ブウも敵じゃないんだ。





「アンタら、なに独り言言ってんのよ。それも無茶苦茶ニヤニヤしながら」

「そうだよー。寂しいよ? というより、ちょっと怖いよ?」



うっさい、スターズコンビとちびっ子コンビ。お前らこそどうしたんだよ。



「いえ、恭文の友達ということなので、僕達も仲良くなりたいなと」

「フレイホークさん、なぎさんって、やっぱり外でもヘタレなんですか?」

≪・・・・・・ちびっ子ガール、お前のヤスフミへの認識はどうなっているんだ? いきなりその質問はおかしいだろ。直球とかそういうレベルではないだろ≫

「いや、分かるけどな。アイツプライベートだと天然とかじゃなくてヘタレとか来るけどな」





とにかく、食堂でまたノンビリご飯でも食べようかと思ってたら、四人が俺と同席してきた。

で、普通に両手で抱えないと持てないような容器に入ったバカでかいサラダと、同じような大きさの皿に乗っかってるバカでかいスパゲティもってきやがった。

・・・・・・つーか、これ四人で食うつもりなのかよ。おかしいだろ、これ。



まぁ、それに動揺している様子などおくびにも見せずに、俺は言葉を続ける。





「ただ、アイツは外ではヘタレなだけってわけじゃない。普通にハードボイルドキャラとか言われるくらいだ」

「アイツがハードボイルド・・・・・・あんま想像出来ないわね」

「私もそうだな。まぁ、あくまでも普段の様子からのイメージだけど、どっちかって言うと半熟卵ハーフボイルドじゃない?」

「あ、それなら分かります。程よい感じのトロトロ加減と柔らかさですね」





ランスターさんとナカジマさん・・・・・・だっけ? あと、ちびっ子な男の子が言うのも無理はない。

普段のアイツからそれを想像するのはかなり難しいだろう。俺だって初対面の時は、ヒロさんサリさんから話を聞いてなかったら想像出来なかった。

だけど、それがあっても俺は初対面でアイツを見て、真面目に疑った。あんまりに三枚目というか緩くてヘタレで、逆にカチンと来て、疑った。



こいつが本当にあの悪名高き古き鉄なのかと。伝説の魔導師であり、局で唯我独尊の最強の称号である達人マスターの称号を持つ魔導師の弟子なのかと。



だけど、その疑いはすぐに晴れた。そう、とても簡単にだ。





「普段こそアレだけど、アイツは実戦の中だと、嘱託の中でも・・・・・・いや、局の関係者の中でも、指折りの武闘派だからな。
遠慮なく魔法なしで犯人ぶっ潰すわ、腕やら足の腱を斬って使い物にならないようにするわ、局員だったら免職ものの恫喝をかますわ」





だからこその二つ名なんだと納得した。時代遅れの錆びた鉄と形容されるのは、そういう部分が大きいらしい。



まぁ、俺もあそこまで過剰な事する魔導師・・・・・・つーか局員は、見た事が無い。一昔前ならともかく、今の世代ではまずいないだろ。





「・・・・・・ごめん、実戦の中と限定されると、すっごい想像出来た。アイツ、基本敵に容赦しないって聞いてはいるし」

「というより、容赦なかったよね。アレとかコレとか。ティアやキャロと同じく」

「失礼な、私は容赦するわよ」

「私もです」



まぁ、この辺りの話は避けておこうか。食事時にする話じゃないし。

とりあえず、ご飯が食べられないような会話はやめておこう。



「でも、あなたが知ってる恭文ってそういう感じなんだ」

「まぁ、その手が必要だと言うのが前提だけどな。そうじゃなけりゃあ、基本はヘタレだ。で、その温度差で引く奴も結構居る。二重人格じゃないかとか、一種の気色悪い感じを受けるとか」





あ、俺はそういうのはなかった。多分、日常と戦いの線引きを本当にきっちりしてるだけなんだと思った。

ヘラヘラ出来るなら出来るうちにやっておくという姿勢が、改めて観察すると見えたから。

そういうところは、真面目に尊敬している。戦う事を主な仕事としていると、そういう部分というか境界がどうしても曖昧になるから。



俺も経験がある。正直、あれは一種の病気だ。なかなかに難しいところではあるが、俺も線引きは出来るようになりたいと、ちょっと思ったりする。





「それ、ちょっと分かるかな」



・・・・・・へ?



「私もね、今は大丈夫だけど、最初の頃は普段の恭文と戦ってる時の恭文が全然違って、すごく戸惑ったことがある。なんか、今考えるとおかしいんだけどね。
日常の中でヘラヘラしてる恭文も、戦ってる時のちょっと怖いくらいに真剣な恭文も、どっちも本当の恭文で、私の大好きで、大事な友達なのは、絶対に変わらないはずなのに、なんで戸惑ってたんだろーって」

「そっか」



JS事件の時もそれっぽい感じでもめたとは聞いてる。まぁ、大丈夫そうで安心したが。

でも、そういうのはこの子みたいにそういう部分も含めて、楽しそうに話をしてくれるような子が居るおかげだろうな。なんか、ちょっとわかった。



「そう言えば、アンタは大丈夫なの?」

「俺はヒロさんやサリさんもそうだし、先生も知ってるから、まだ耐性がある。てゆうか、俺だってアイツ側の人間だ」

≪だからこそヤスフミと古鉄殿、マスターと私は嘱託をやっているとも言える。我らのようなアウトローが局員をやるには、今の世の中はあまりに狭過ぎる≫

「嘱託は、基本的に局員よりはその辺りの縛りが少ないですしね。それは、少し分かります」



とりあえず、夕飯のランチについていたパンプキンスープを飲む。・・・・・・お、いいお味だ。うーん、飯が上手いのはすばらしいな。



「まぁ、アレよ。ヴィータ副隊長から聞いたけど、解散まで居ることになったんでしょ?」





あはは、色々あってな。結局ソフトの送付先はここに変更で、俺は六課隊舎でウィハンのアカウントを作る事になったよ。



てゆうか、普通にプレイする時間あるかな? 八神部隊長がアレだったし、あんまズルズル遊んでると俺もソフトを没収されそうだ。気をつけておこう。





「だったら、仲良くしていきましょうよ。いや、アイツはアレだし、アンタは比較的まともな感じの人間で助かったわ」

「またひどい言い様だな」

「これでも色々と苦労してんの。少しくらいは許して欲しいわ」










あー、わかる。でも、なんでか嫌いになれないんだよな。多少過激なとこはあるが、根はホントに隙だらけなやつだから、安心出来るのかも。





そして、それはこのフォワードメンバーも同じくらしい。なんだかんだ言いながらヤスフミへの悪意とかそういうのは感じないから。なんというか、いいことだと思った。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、その後天候が思いっきり崩れて・・・・・・海沿いの隊舎は嵐に見舞われた。





当然、ヤスフミとフェイト隊長とリイン曹長が泊まったラトゥーアも・・・・・・。










≪明後日まで帰れないらしい。今、古鉄殿から連絡が来た≫

「また運悪いなぁ。てゆうか、空気読まないよなぁ。今日はバレンタインだってのに」

≪いやいや、マスター。もしかしたらこれで意外と燃え上がる可能性もあるぞ≫

「不謹慎だぞ。さすがにそれは・・・」










ない・・・よな? いや、俺は何も言い切れないんだけど。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「というわけで、泊めてください」





雨が降りしきる音に耳を傾けながら、大事なヘリの整備に勤しんでいると、そんなことを言う奴が来た。



なので、俺は当然こう返す。





「よし、雨ん中ずぶぬれになって帰れ」

「ヴァイス陸曹ヒドイですー! 女の子の必死な誘いを断るなんてー!!」



あほかっ! そんなことやったらたちまち部隊から追い出されるぞっ!? 俺の立場も考えろよっ! てーか、普通に通信主任とかに頼んで泊めてもらえっ!!



「まぁ、そこは冗談なんですけど」



冗談なのかよっ!!



「はい、これどうぞ」





そう言って、可愛げのない後輩アルトが渡してきたのは・・・・・・ハート型の包装。俺はそのまま受け取った。

これが何かなんて聞くほど俺は野暮じゃねぇ。整備員の連中が嫌にそわそわしてやがったし。てゆうか、もう仕事終わりで可能性が0に近づきつつあるこの状況でも、まだしてるし。

それだけじゃなくて、今度こそ坊主とフェイト隊長とリイン曹長がそうなるかならないかで賭けてまでいやがる。なお、俺はそうならない方に賭けた。



もっと言うと、坊主とフェイト隊長の良心と常識に賭けた。さすがにあんな幼女を巻き込んでエロはねぇだろと。あ、配当倍率はこっちの方が高かったことだけ、付け加えておく。





「・・・・・・あんがとな」

「はい。あ、お礼は3倍返しですよ?」

「わぁってるよ。3倍どころか9倍で返してやらぁ」

「やったぁっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・と、というわけで、あの・・・・・・これ、どうぞっ!!」

「あぁ、ありがとう。そう言えば、今日はバレンタインでしたね」

「はい」

「八神部隊長がアレだったので、すっかり忘れてましたよ」



あ、あははは・・・・・・仕事しながらログイン祭りしてましたしね。



「ソフトを二個持っていたのは予想外でした。まぁ、二つとも回収できたので問題はありません」

「それ、どうするんですか?」

「近いうちに半日お休みをあげて、その時に返しますよ。このまま没収してたら、また買いに行く可能性もありますから」

「納得しました」



てゆうか、チョコ配ってお返しをたんまりもらうとかしませんでしたよね。

108みたいな過去の出向先でバレンタインの時は、そういうことしてたとかなんとか武勇伝を聞いた事があるんですけど。・・・・・・なぎ君から。



「まぁ、結婚間近ではありますし、色々考えたんでしょう。これを機会に、落ち着いてくれると助かるんですが」



ため息混じりにあの人グリフィスさんが言う。だけど、すみません。多分無理だと思います。

まぁ、そういう所が部隊長のいい所ではあると思うんですけど。だからグリフィスさんだって、ちゃんと譲るところは譲ってるわけだし。



「・・・・・・あぁ、すみません。なんだか愚痴になってしまいましたね」

「あ、いえ」

「とにかくルキノ、ありがとう。チョコは大事に食べさせてもらいます」

「はいっ!!」










あぁ、なんか嬉しいよー! うぅ、色々あったけど六課に来てよかったー!!





てゆうか、なぎ君ありがとー! 普通に作るチョコ何がいいかとかアドバイスくれて助かったよー!!





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「というわけで、バレンタインだからチョコ、作ってみたんだ」



エリオ君の部屋に仕事終わりなところに突撃。そして、私の髪の色と同じ包装紙に包まれたチョコを渡す。



「あ、ありがと」



あれ、なんでかエリオ君が引き気味だ。どうしたんだろ。



「いや、あの・・・なんで緑色?」



それを開けたエリオ君が凝視していたのは、チョコの色。



「あ、別に変な状態だからとかそういうのじゃないよ? ほら、抹茶味だから」

「・・・・・・まっちゃ?」



うん、抹茶『も』入ってるんだよ。

まぁ、ここは口に出さないけど。



「フェイトさんやなぎさんから、地球・・・・・日本にはそういう味のチョコもあるって聞いたんだ。それで、自分で取り寄せて、食べて・・・・・・」

「実際に作ってみたと」

「うん」



ライバルが多い可能性もあったから・・・・・・というより、多いよね。ベッドになんだかチョコがいっぱいだもの。

なので、目新しさとアピール力のあるものと考えて、これになった。



「というか、キャロありがと。これ、美味しかったよ」

「うん、よか・・・・・・え、美味しかったっ!? あ、もう全部食べてるっ!?」

「うん」





は、はや・・・・・・私、本当に少しの間考えに浸っていただけなのに。

せめてもうちょっと味わって食べて欲しかった。

うー、これがなぎさんならどうやって作ったのかとか、分量はどうしたのかとか、そういう話をしながら楽しく過ごせたはずなのに。



でも、まぁ・・・・・・いいか。





「エリオ君、喜んでくれて嬉しいよ。うん、すごく嬉しい」

「あの、ホワイトデーってあるんだよね。僕もちゃんとお返しするから」

「うん、期待してるね」










・・・・・・ふふふ、準備はちゃんと整ってる。ここ最近の天然スルーっぷりを考慮して、色々と仕込んでるんだから。





なぎさんは直球で8年スルーだったけど、私はそうは行かない。これでも女の子。恋にはしたたかであり、情熱的に行くんだから。





とりあえず、今年の目標は婚約だね。うん、大丈夫。なんだかいけそうな気がするよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・雨、真面目にすごいね」

「そうだね」





はい、みなさんどうも。僕です。現在、ホテルのベッドで左から僕、リイン、フェイトの順で寝てます。とりあえず今日は腕枕はなしの方向性になりました。



で、リインはすやすやなので、僕はそのままフェイトとちょっと起き上がって、窓の横の椅子に座ってお話中。静かに、小声で。





「そう言えばさ、前はあまり気にならなかったよね」

「うん。雨が夜半過ぎには弱くなってたから。あと・・・・・・その、すごくドキドキしてたから」

「あ、僕も。というか、フェイトも?」

「うん。だ、だって・・・・・・あの、お泊りデートなんて、ヤスフミが初めてだったんだよ? ドキドキするに決まってるよ」



それは僕も。実を言うと、1時間くらい眼を閉じても眠れなかった。なお、体内時計で時間は分かった。

でも、フェイトもだったんだ。うー、真面目に余裕なかったんだな。そこまで気づかなかった。



「僕も、ドキドキしたよ?」

「ホントに?」

「うん。でも、嬉しさの方が強かったかな」



ドキドキややましい気持ちよりも強かったもの。それは、嬉しさ。

フェイトが、僕の事を男の子として見てくれた上で信じてくれたこと。それが本当に、嬉しかった。



「フェイトが、僕のこと信じてくれて。・・・・・・ありがとね」

「ううん、私がそうしたかっただけだから。でも、そう考えると」



なに?



「私達、やっぱり焦り過ぎてたのかも知れないね。だって、その・・・・・・いきなりエッチしようとしたりしたし」

「そ、そうだね。やっぱりゆっくりかな」

「私は、そうしてみたいかも。あの、もちろんキスとか胸への愛撫とか、そういうのはいいよ? ただ、あの・・・・・・ゆっくりラブラブも、してみたいんだ。
男の子と本気の交際なんて初めてだから、色んなコミュニケーションを、ヤスフミとしてみたい。いきなり最後までは、ちょっとだめだったかなって反省してるの」



暗い部屋の中でも分かるくらいに頬を赤く染めて、フェイトが僕を見ながら言う。それに胸の鼓動が高まる。

やましい気持ちじゃなくて、求められているのが、触れる事を許されているのが嬉しくて、誇らしくて、とっても幸せになるから。



「でも、ヤスフミはそれだと、辛いかな。我慢、しちゃう?」

「僕も、大丈夫だよ? ただ、あの・・・・・・キスとかまで我慢はさすがに辛いけど」



だって、あの・・・・・・チュってするの幸せだし。フェイトにいっぱい触るの、嬉しいし。

そんな事を考えながら、フェイトの方を見る。瞳がすごく潤んでて、その・・・・・・可愛い。



「じゃあ、しばらくは・・・・・・そこまでの清い交際で、いい? 最高で、添い寝とおはようとおやすみと、行って来ますと行ってらっしゃいのキスまで」

「うん。そういう欲求は、ちゃんと対処してくから大丈夫だよ。うん、大丈夫」

「偶数日に?」



ま、まぁ・・・・・・そうだね。うん、偶数日にだね。やっぱりそうなるんだよね。



「ね、一つ聞いてもいい?」

「なにかな」

「そういうことする時って、誰のこと・・・・・・考えるの?」



・・・・・・はいっ!? いきなりなに聞いてんのっ!!



「あの、その・・・・・・き、気になっちゃって。やっぱりそういうエッチなディスクからとかなのかなとか、小説とかでそういうのあるからそれかなとか、色々考えちゃって」

「・・・・・・フェイトのエッチ」

「やっぱり、エッチかな」

「エッチだよ。彼氏のオカズが何かを聞く女の子は、きっとすごくエッチだ」



僕がそう言うと、フェイトが困ったような表情になる。それがまた可愛くて、いっぱいいじめたくなる。

こんな表情を見れるのは、僕だけになるように、いっぱい、いっぱい・・・・・・。まぁ、いい感じで抑えるけど。



「でも、僕もエッチだから何も言えないかな」

「そうなの?」

「うん。だって、そういうときはフェイトの事・・・・・・考えるし」



あ、なんか凄く真っ赤になった。てゆうか、僕も顔が熱い。ヤバイ、僕もそうとう糸が切れてる。



「あ、あの・・・・・・えっと」

「嫌、だった?」



失敗したかも。やっぱり、これはだめだよね。うー、我ながら空気読んでなかった。



「ううん。あの、大丈夫。ちょっとビックリしちゃって。えっと、ありがと・・・・・・で、いいよね。うん、いいんだ。
だって、私の事女の子として見てくれているわけだから。それに、あの・・・・・・」

「え?」



・・・・・・続く言葉に、顔の熱さが増した。うれしい。すごくうれしい。だけど、あの・・・・・・恥ずかしいよー。やっぱり恥ずかしいよー。



「フェイト・・・・・・あり、がと」

「・・・・・・うん。私も、ありがと。というか、あの・・・・・・だめ。なんだか、抑えられなくなる」

「じゃあ、あの・・・・・・少しだけ、しちゃう?」



リインは寝てるし、一応二人っきりだから。ただ、ディープにじゃなくて、優しく、穏やかな・・・口づけ。

つまり、おやすみのキスだね。どうかな。



「うん」



そう口にして、フェイトがそっと眼を閉じた。だから僕は、身体を前へ乗り出して、フェイトの左肩に右手をかける。そして、そのまままずは右の頬に優しくキス。それから、唇を重ねた。

そして、雨音が聞こえる部屋の中で少しの間沈黙が訪れて、唇を話した。二人とも眼を開けて、近くで見つめ合って・・・・・・赤面する。



「・・・・・・じゃあ、おやすみだね」

「うん。でも」

「どうしたの?」



いや、なんというか・・・・・・あれなんだよね。



「これ、毎日したいな」

「キス、好きになったの?」

「いや、そうじゃなくて」



それもあるんだけど、ちょっと違う。



「前に聞いた事があるんだ。夫婦・・・・・・というか、恋人関係の円満の秘訣は、おはようとおやすみと行って来ますと行ってらっしゃいのキスを欠かさない事だって」

「そっか。それなら納得だ。その、仕事の都合とか暮らしてるところの関係で難しくはあるけど、一緒に居る間は、二人っきりの時間の時は、それでもいいかもしれないね。・・・・・・ううん、私も、そうしたいな」

「うん」










そう言って、二人で布団に入る。真ん中にリインを置く形でおやすみを言い合ってから、眠りについた。





・・・・・・頑張ろう。もっと強くなって、もっと成長していこう。目の前の大好きな女の子と、大事なパートナーに愛想尽かされないように、もっと前へ。





今の幸せを感じてたら、そのための気持ちがどんどん沸いて来るから不思議だよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして翌日。幸せを感じながらもお仕事をする。





リインと二人で、フェイトの仕事の処理のお手伝いです。まぁ、日ごろの頑張りのおかげで休みの間に溜まっていた分は片付きつつあるけど。










「・・・・・・そう言えばね」



フェイトがベッドに腰掛けながら、私服姿で空間モニターとにらめっこしながら指を動かす。そして、そうしながら言葉を続ける。

なお、僕とリインも同じ感じで指を動かしつつ、フェイトの声に答える。・・・・・・どったの?



「六課が解散してから、どこで暮らそうかなとか、ちょっと考えてるんだ」

「本局に寮なかったっけ」

「うん。でも・・・・・・それだとヤスフミやリインと離れてるから、ちょっと嫌だなと思って。あと、ヴィヴィオとなのはも」



そう言えば、なのはも本局の寮暮らしじゃなかった? あ、ヴィヴィオが娘になったのにどうするんだろ。サンクト・ヒルデ魔法学院はミッド地上なのに。

一応転送ポートもあるけど、それだとヴィヴィオへの負担が大きいし。



「そう言えばそうですよね。恭文さんやリインはまぁ自宅があるので気にしてなかったですけど」

「だから、なのはもちょっと悩んでるみたい。探してはいたんだけど、中々いい所がないってボヤいてた。
・・・・・・ね、私もあのマンションにお邪魔しちゃだめかな。同じ部屋じゃなくても、お隣さんとか」

「うーん、どうだろ。その辺りはやっぱりヒロさんと相談だよ。ほら、4月って新年度だから、引越し率高いわけだし」



新生活とかそういう関係でどうしても多くなるそうだ。逆にヒマなのがそれを過ぎた6月とか7月とかそれくらいとか。そういう時に家探しをすると、中々にいい物件があるらしい。

まぁ、そこは置いておくとして、今は2月の中旬過ぎた辺りだから、今から探すとなるともしかしたら結構厳しいかも知れない。かき入れ時ではあるとか言ってたし。



「あ、部屋に空きがあるようなら、なのはさんとヴィヴィオもあそこでいいんじゃないですか? 環境はいいですし」

「だめ。あそこだとまた学校から遠いもの。何駅か乗り継ぐことになるし」

「あー、そうですね。うーん、家は難しいです」

「まぁ、私は最悪リインと一緒にヤスフミの部屋に住まわせてもらえればいいんだけど」



え、そこまず確定っ!? で、リインとフェイトを見ると・・・・・・当然と言わんばかりの顔で頷いたしっ!!



「あ、あの・・・・・・確かにあそこはいい部屋だけど、さすがに三人は無理だって。着替えとかプライバシーとかどうするのさ」

「それもそうだね。私達は平気だけど、ヤスフミに負担かけちゃうか」

「ですね。女の子は秘密がいっぱいですし」



そうだね、その秘密いっぱいな所に触れたりはしたくないよ。三人体制だからって、何でもかんでも知った顔ってのは違うと思うのよ。

・・・・・・えっと、これはフェイトに送って、確認してもらったうえでサインをお願いしてと。



「そうすると、私とリインとヤスフミがそれぞれ一部屋ずつでも持てて」

「各自の最低限なプライバシーが守れる部屋・・・・・・ですか。中々に条件厳しいですね」

「それで今からでしょ? ・・・・・・あー、あと横馬もあったんだ。ヴィヴィオが学校通いやすいとこじゃないとダメだろうし」



うーん、そうすると・・・・・・待って。なんかもうフェイトとリインと一緒に暮らすみたいな話になってるんですけど、これはどうなの?

あぁ、ここはいいや。もう覚悟決めたんだし、それでいこう。とにかく、こういう場合はやっぱりツテを頼るべきかな。



「無事に帰りついたら、ヒロさんに相談してみようか」

「ですね」

「クロスフォード不動産なら、いい物件あるだろうしね。でも、ちょっとドキドキしてきた」



フェイトが書類を打つ手を止めずに、そんな事を言った。

どうして? というか、また嬉しそうだね。



「だって、新しい事、新しい生活を始めるって感じがしてきたから。今までの私とは違う、なにも諦めない姿、追いかけていくんだなと思って」

「・・・・・・フェイトも、諦めてることがあったの?」

「うん。私も、ヤスフミと同じだったみたいなの。だから、一緒に頑張っていこうね。もちろん、リインと一緒に」










うん、そうだね。頑張っていこうね。





ここで終わりじゃないんだから。楽しい事、嬉しい事、たくさん待ってるはずなんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そしてお昼過ぎ。かなり集中していたのか、今日片す分の書類が全て片付いた。





あ、あはは・・・・・・僕達頑張ったね。










「そうだね。でも、時間空いたし、書類もグリフィスがチェックしてくれて全部オーケーだったし」

「遊べますね」

「うん」



二人して嬉しそうに・・・・・・。旅行のせいで遊び癖ついてるんじゃないの?



「いいの。ワーカーホリック気味だったんだから、ちょうどいいくらいだよ。・・・・・・あ、そう言えばヤスフミ」

「なに?」

「ウィハンって面白いの?」



突然、そんな事を聞いてきたのは、ゲーム関係にあんまり興味を持っていないフェイトさん。なお、一昨日の夜に行列に並んだ関係でソフトだけは購入しているのだ。

僕にあげると言ってくれたんだけど、僕はまた通販で届く予定なのでお断りした。なので、当然ソフトはフェイトの物になった。



「うーん、やる人によるけどね。コツコツスキル上げとか他の人とパーティー組んでバトルとかしなくても、普通にチャット・・・・・・ようはコミュニケーションツールとしても優秀だし」

「え、でも通信とかあるよね」

「それとはまた違うのよ」



別世界に居ても出来るしなぁ。あれは真面目にすごいよ。僕もヒロさんやサリさんもそうだし、僕達のコミュでゲームやってない人間には内緒な話をする時には重宝したよ。

だって、ゲームをやってるか、その場面を見られない限りは会話内容が知られる心配ないだんだから。



「とりあえず、一回やってみたら? 幸いなことにプレイする人間が関係者で多数だからサポートは出来るし、やらなくなっても今話したみたいにチャットツールとしてキャラクターだけ維持しておくって手もあるし」

「そうなの?」

「そうなの。ヒロさんサリさんでしょ? ジンでしょ? あとははやてに師匠となのは」

「リインもちょこちょことですけど、やってたです。恭文さんとリアルタイムで通信以外でお話したり、ゲーム上でも一緒に遊んだりする機会が欲しくて、頑張ったのです」



なお、師匠は普通にレベル上げてます。なんでそこまで上げられるのかって言うくらいに上げてます。

たまに思う。師匠はリアルに精神と時の部屋を持っているんじゃないかと。



「あ、結構居るんだね。それなら・・・・・・うーん、頑張ってみようかな。一応ゲームはなのはやアリサ達との対戦で経験はあるし。ヤスフミと共通の話題も・・・・・・欲しいし」

「そっか。ちなみに、その思考はどこから?」

「はやてに言われたんだ。普通にキャラクターを作って、ヤスフミとリインが今話したような、チャットやコミュニケーションツール的な使い方でも損はないからって」



・・・・・・よし、今回はいいアドバイスだ。毎回この調子で行ってくれると嬉しい。



「ちょっと迷ってたんだけど、リインもそれで頑張ってたし、私も・・・・・・頑張るよ」



でもちょっとやり過ぎじゃない? フェイトから『頑張るオーラ』が出まくってるんですけど。ガッツポーズとかしてるしさ。



「ま、まぁ無理しない程度にね? これからは離れ離れとかじゃないし、あのタヌキみたいになられても困るし」

「確かに、あれはすごかったよね。うん、私は自重していくよ。お仕事は大事だもの」





そうしてくれると非常に嬉しいです。

あ、でも待てよ。それなら僕よりもいい相手居るんじゃ。

まぁ、ここは後で二人に入れ知恵してビックリさせようか。そうしたらフェイトが長くプレイするきっかけになるかも知れないし。



・・・・・・って、結構話し込んじゃったね。いけないいけない、とりあえずご飯食べ行こうか。お昼抜きだったし。





「うん。でも、どこで食べようか」

「歩きながら考えればいいですよ」

「そうそう。幸いなことにここはそういうの沢山だし」

「それもそうだね」










部屋を後にして、三人でご飯を食べるためにホテルの廊下を歩く。





外は雨。だけど、昨日に比べると少し雨足が弱くなってる。





どうやら、台風一過の時は近づきつつあるらしい。それが、ちょっと嬉しかったりする。




















(第9話へ続く)




















おまけ:グローリーシステム




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・やっさん達とのニアミスにキモを冷やした翌朝。というか昼。





俺は、ヒロから連絡をもらった。用件は、ジン坊とバルゴラについて。










「・・・・・・まぁ、どっちにしてもジン坊の現在の能力をしっかり見てからだな。カートリッジも復活したなら、それの使いこなしも含めてだ」

≪どちらにしてもグローリーシステムの本復活は、今話すことではないでしょう。もちろん、準備だけはしておくべきでしょうが≫

『だよねぇ。で、拡張デバイスとプログラム、どうしようか』



あー、そこだよな。1から作るのは相当大変だぞ? くそ、せめて設計図かなにかでも残ってれば・・・・・・。



「サリエル、もしかしてお困り?」



後ろからドゥーエが声をかけてきた。・・・・・・まぁ、かなり困ってる。

うん、かなりな。俺達だけでシステムの全復旧は無理だと思うし。



「話は少し聞いちゃったんだけど」



まぁ、同室だから仕方ないんだよ。俺もここに関して文句言うつもりはない。

なにより、他言するようなやつじゃないから、俺もヒロも金剛も平気で話せる。



「ようは、そのシステムを動かすためのデバイスの設計図も、プログラムも無いのよね」

『まぁ・・・・・・そういうことですね』

「私が思うに、どこかに隠しているということは考えられないかしら」



隠してる? つまり、デバイスの設計図・・・・・・いや、もしかしたらデバイスそのものや起動プログラムがか?

でも、どこにだよ。アイツの遺品関係は俺やヒロ、ジン坊が整理したけど、それらしいのはなかったしよ。



「ただ隠したのでは、それが悪用される・・・・・・または、そのジンって子が使用するに値するだけの実力を持ちえていなかった場合に危険だと判断したと考えれば? そうすれば、普通に隠したという話はなくなるわ。
つまり、普通じゃない方法で隠している。恐らくは、弟子であるその子とパートナーデバイス、サリエルやクロスフォードさんにしか分からない場所に。そして、ヒントも本当によく考えないと分からないようにしてある」

「・・・・・・あぁ、なるほど。そういうことか。その場所は、もしかしたら本当になにげない会話の中にヒントとして紛れ込ませている可能性があると」

『だから、私らもそうだけどジン坊も普通に考えたら覚えがないし、バルゴラ当人もわかんないという妙な話になってると。
・・・・・・あのバカ、悪戯好きなとこがあるなとは思ってたけど、これは念入り過ぎでしょうが。それをどうやって見つけろと?』



いや、ヒロ。結構絞られてくるぞ。



『え?』

「今ドゥーエも言ったが、そういうヒントを辿って、ジン坊やバルゴラ・・・・・・いや、俺らでも分かるような場所に隠してるんだよ。
もしこういう方向性であのバカが隠したんだったら、俺らやジン坊に縁もゆかりも思い出も関係すらも無い場所ってのはまず削られるだろ」

『あぁ、それもそうだよね。とにかく、サリ』



あぁ、分かってる。これは俺達だけでどうこうなる話じゃない。確実にジン坊とバルゴラの協力が居る。

まぁ、グローリーシステムのことは隠しておくか。とりあえず形状変換のプログラムがあるかも知れないってことだけ言えば大丈夫だろ。



『いや、ドゥーエさん助かりました。おかげで取っ掛かりがつかめました』

「いいえ。というより、ごめんなさいね。横から勝手に口出ししてしまって」

「いや、感謝してるよ。あんがとな」

「・・・・・・えぇ」










なんか嬉しそうな顔で笑った我が相方にドキっとしつつ、俺は雨が降りしきる空を見る。





・・・・・・フィーネよ、俺も謎解きは得意なほうだが、もうちょい難易度下げるわけにはいかなかったのか? こんなベリーハードな謎解きはだめだろ。見つけられなかったらどうすんだよ。いったいどこの宝探しだよ。





くそ、お盆の季節だったら交霊術でもなんでもやってヒント聞きだすってのに。




















(本当に続く)




















あとがき



古鉄≪さて、人気投票がすさまじくカオスになってきて面白いと思う古き鉄・アルトアイゼンです≫

恭文「とりあえず一人でいろんなところに『連続で』『何回も』入れてる人。ここからはどこに入れても全削除だから覚えておくように。というか、組織票はやめいと言いたい蒼凪恭文です。
・・・・・・うし、次回からは外部の投票システム使おう。えむぺはちょっと不便だ。てゆうか、一人組織票とかやめてと言ってるのに」

古鉄≪ここはしかたないでしょう。こちらにも不備はありましたから。まぁ、一日一票とかならいいですよ? 常識の範囲内でならいいですよ? えぇ、それならまだ笑って許せますから≫





(うん、大変だよね。次へとか戻るとか次へとか戻るとか)





古鉄≪私としては、9月10日の時点でシュリンプカレーがトップ10に入ってたのがびっくりですよ。作者も覚えてこそいましたけど、なんでトップ10入りなのかと≫

恭文「でさ、恭太郎も善戦してるんだよね。あと、あむと良太郎さん。いや、まさかこの二人が来るとは・・・・・・」

古鉄≪あとティアナさんが上位に食い込んでいます。・・・・・・あ、ちなみに普通に投票結果などが見られない仕様にしているのは、さっきも話したような『あのキャラに勝たせよう』というような組織票的な行動を防ぐためですので。
コメント自体は投票結果が終わってから整理して、雑記に載せる予定なのでそのときにでもご覧ください≫

恭文「てゆうか、普通は投票しても見られないのが常識ですよ。ほら、雑誌のアンケートとかでもそうでしょ?
うー、そのあたりでもいい外部ソフトがあるとうれしいよね。投票すると現時点での結果が見られるなんて知らなかったし」

古鉄≪ここは次回での反省点です。構想では、細かい順位や票数を隠した上での中間発表を行ったりするつもりだったんですけど、これでお流れになりましたし。
まぁ、次回はお約束的な要素も外れますし、本当の意味での人気者が誰かがわかりますね。これであなたが一位取ったらそれはもう本当に人気者ですよ≫

恭文「・・・・・・うん、そうだね。でもさ、それでも今回みたいな感じだったらどうする? いや、僕の話じゃなくて、あの人よ」

古鉄≪ありえそうで怖いんですよね。だって・・・・・・ねぇ?≫




(青いウサギ、現時点での結果にかなりビビリまくっているらしい。だって、いろんな意味でぶっちぎってる人が居るから)





古鉄≪まぁ、個人的には誰がトップを取ってもいいので、あなたがトップ10から外れてくれると面白いんですが≫

恭文「それは僕的には面白くないけど、言いたいことはわかる。確かにそれは笑える。僕は笑えないけど。でもさ、人気投票やったんだし、銀魂でやったみたいな話書きたいね。人気投票編」

古鉄≪面白そうですね。そこだけクロスオーバーでいろいろなキャラが出るんですよ。でも・・・・・・まじめに誰がシュリンプカレー入れたんですか? しかも相当来てますし≫

恭文「そこはなぞだよね。とりあえず作者じゃないのは明白だけど。・・・・・・というわけで、そろそろ終わっておこうか」

古鉄≪そうですね。えー、本日のお相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「蒼凪恭文でした。・・・・・・みんな、空気読んでね?」

古鉄≪そんな念押しするから、同情票が多数とか言う主役として情けない方向になるんですよ≫

恭文「それは言わないでー!!」










(というわけで、終了ー。
本日のED:リインフォースU(CV:ゆかな)『小さな誓い:アコースティックバージョン』)




















リイン「・・・・・・トップ10に入れないのです。元祖ヒロインなのにトップ10に入れないのですー」

ヒロリス「それ言ったら、私だってサリに負けてるんだよっ!? いや、それ以前にシュリンプカレーに私ら負けてんだよっ!!」

リイン「なんかそれ、すっごく悔しいですっ! あんなワンシーンだけしか出てない小道具に負けるなんて、屈辱ですー!!」

ヒロリス「でもさ、この調子でシュリンプカレーが1位とったらそれはそれで面白いなとかちょっと考えたりするんだよ」

リイン「あ、それはちょっとわかります。それで、みんなヘコむです。次回の人気投票では、シュリンプカレーからトロフィー変換とかされるです」

ヒロリス「絵的にシュールだよね。そして面白過ぎる。そんな二次SSは今のところ存在していないだろうし、それはいいかも」

リイン「ですです」

ジン「・・・・・・いやまてよっ! その前に今回の話の内容に一切触れてないよなっ!! いくらなんでもありえないよなっ!? これはさっ!!」

バルゴラ≪何を言うかマスター、強敵であるシュリンプカレーをいかに倒すかを考えていかなければ、我らに未来は≫

ジン「頼むからシュリンプカレーから離れろよっ! いや、それより人気が下ってのは俺も悔しいけどっ!!」










(おしまい)





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