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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
幕間そのじゅうよん 『ありえないことなんて、ありえない 忍び寄る魔の手・・・編』



古鉄≪・・・さて、幕間そのじゅうよんですよ。さざなみ寮での日々はまだまだ続きます。お相手は、古き鉄・アルトアイゼンと≫

ゆうひ「椎名ゆうひです。さて・・・まだまだ日常パートやったなぁ」

古鉄≪えぇ。せっかくなのでとらハ2のノリで行くことにしました。とにかく、今回も新キャラが登場します≫

ゆうひ「新キャラっちゅうか、懐かしい顔ちゅうか、とにかくそんな感じやな。ほな・・・いこうか」

古鉄≪はい。それでは幕間そのじゅうよん、どうぞー≫

ゆうひ「うちと恭文君のロマンスにも、期待してもらえると幸いです〜」

古鉄≪・・・いや、それはないでしょ≫

ゆうひ「そうやなぁ」




















魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常


幕間そのじゅうよん 『ありえないことなんて、ありえない 忍び寄る魔の手・・・編』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・左手をゆうひさんと、右手を知佳さんと繋ぐという形で甘えながら、この道を歩く。





そう、夕方のさざなみ寮へと続く道を。










「さすがにこの時間になると涼しいですね」

「お日様ももうお休みっちゅう感じやからなぁ」





ゆうひさんと知佳さんがそんなことを話しながら、吹きぬける心地のいい夕方の風に髪をなびかせる。

その光景に視線を向けて、少し思った。もっと言うと、両手を包む温もりを感じながら思った。

・・・二人とも普通に美人だよね。ゆうひさんは身長もあるし、スタイルもいい。知佳さんはスレンダーで温和な雰囲気が○。



僕、もしかしなくても今・・・相当役得?





「そやなぁ、めっちゃ役得やろ」

「あのゆうひさんはともかく私は美人とかじゃないよ? ほら、こんな感じだから」



そう言って、空いている方の手で自分の胸に手を当てる。・・・・・・どうやら、大きさを気にしてるらし。

いや、あの・・・そういうことは聞いてないんですけど。



「うーん、そないなことないと思うんやけどなぁ。・・・・・・よし、恭文君。知佳ちゃんになんかフォローせんとあかんって」

「なにその無茶振りっ! てゆうか、そこは恋人でもなんでもない男がフォローするべきところなんですかっ!?」

「当然や」



なんかすっごい力強く言い切ったっ!?



「ほら、早よせんと知佳ちゃんが泣いてまうよ?」

「だったらゆうひさんが」

「いや、うちがフォローしたら余計にあかんやろ」





正直その発言が追い討ちだと思った。だけど、知佳さんがなんかちょっと俯いたのでもうそこはツッコめない。ここはフォローするしかないと思い、思考を働かせた。



えっと・・・その、あの・・・。



『小さくても可愛い』・・・根本的解決になってない。

『小さい方が好き』・・・僕の趣味を言ってどうなる。

『大きくすればいい』・・・セクハラだよ。



だめだぁぁぁぁぁぁぁっ! いいのがなんにも思いつかないぃぃぃぃぃぃぃっ!!





「いや、そないなことないやろ。特に1番最後や。ここに『僕が、大きくしてあげます』言うたらもう知佳ちゃん落ちるで?」

「落としてどうするっ!? 僕は本命居るんですけどっ!!」

「・・・なお、後日フェイトにコレを試したところ」

「今のところ彼女でもなんでもないのに試すかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





ヤバイ、知佳さんの方を見れない。無理・・・なんか無理。



普通に最後のはありえない。だめだ、絶対嫌われてる。





「え、えっと・・・大丈夫だよ? あの、そこまで真剣に考えなくていいから。でも・・・」

「でも?」

「フェイトちゃんって子の事、そんなに好きなの? よく話が出てるから」





・・・頷きました。まぁ、その・・・真剣な目で見られたので。でも・・・うぅ、全然ダメだし。僕はくじけそうですよ。



つーか、一緒に暮らしててフラグが立たないのがおかしい。どうなってんの? ずーっと弟認識って真面目に嫌なんですけど。





「うーん、フィアッセの話通りやなぁ。確かにそれはおかしいわぁ。耕介くんと愛ちゃんなんて、フラグ立ちまくりやったのに」





ゆうひさんが、足を進めつつ思い出したように言った。





「あぁ、そうですよね」





で、知佳さんもそれに納得したように乗っかった。だけど、僕は当然乗っかれないので疑問顔。



そう、なんですか?





「そうなんだよ。お兄ちゃんと愛さんは、元々いとこ・・・・・・ようするに親戚同士で、その上幼馴染なの。まぁ、本当に小さかった頃の話なんだけど」

「それでな、もう10年くらい前やなぁ。耕介君が前さざなみ寮の管理人から、ヘルパーを頼まれたんよ。その人と耕介くんは親戚同士で、前管理人の人が旅行行く言うから、その間の事をお願い言うてな」



ゆうひさんと知佳さんの話では、それがきっかけで耕介さんはそのままさざなみ寮の管理人になったらしい。

なんでも、その前管理人の人が旅行先で運命の出会いをして、帰れなくなったのが原因とか。・・・・・・どんだけ自由なんですか。



「で、耕介くんと愛ちゃんはそこで久々に再会して、一緒に暮らしているうちに意識し合って・・・」



付き合うようになったと。で、結婚したと。そしてラブラブと。あんな美人でスタイル抜群なお姉さんとラブラブと。



「正解や。・・・・・・こう考えたら、恭文君とフェイトちゃんとシチュは似てるんよなぁ。それやのになんでフラグ立たんのやろ」

「二人がまだ10代前半の子ども・・・・・・というのが大きいんじゃ? 私も同じくらいの頃は、恋愛とかそこまで興味なかったですし。あと、時空管理局、だっけ?
もしかしたら、二人ともそう言うところでお仕事しているせいかも知れないですよ。お仕事してると、どうしてもそっち中心になっちゃうから」

「あぁ、それなら分かるわ。うちも恋愛とか友達付き合いとか、そういうプライベートな事と仕事である歌をうたうこと、どっちよりの生活しとるかって言われたら、間違いなく後者やし」

「やっぱり中学生で働くのがあれなんですね。悪条件が二乗されてるわけですね。・・・いや、僕も人の事言えないんですけど。というより、フェイトがアウトなら僕はもっとアウトですし」



色々やらかしてるしなぁ。銃器持ち相手に魔法無しで戦闘・・・とかさ。

イレイン戦・・・とかさ。あはは、アウト過ぎて申し訳なくなってくるよ。それでも飛び込けど。



「そう言えば、恭文くんはフェイトちゃんやエイミィさんと違って、そういう正式な局員さんじゃないんだよね」

「まぁ、そうですね。嘱託・・・・・・ようするに非常勤ですから」

「それなら、将来的には局員になったりするの?」



知佳さんは、どうやらちょっと興味があるらしい。エイミィさんが話してた時にも、かなり詳しく聞いてたし。

とりあえずそこは置いておくとして、僕はその言葉に首を横に振った。



「あら、そうなんや。それはまたどないして? 話聞いてると、君の身内は全員局員みたいな感じやのに」

「うーん、そうですね・・・・・・。例えば、局員になると色々規律があるんですよ。昨日みたいな事件に巻き込まれても、勝手に魔法を使ったらいけないとか。いや、そもそも関わるなと言われます。
それと、地球みたいに管理局の事とか知られてないところに住んでる人に、魔法のこととかを原則的には教えちゃいけないとか。ようするに、管理局のルールって万能じゃないし、優しくない所もあるんです」

「それに納得がいかん言うところか? しかし、君はそれに見事なくらいに全部接触しとるやん。それも、ほんの3日の間に。さざなみ寮メンバーにはもう魔法の事知れ渡っとるし」

「どうりでエイミィさんが話してくれた時に、苦い顔してるはずだよ。それなら、今の状況は管理局の局員さんや関係者さん的には、完全に規律違反もいい所だもの」



あはは・・・・・・ですよね? 僕も視線で言われましたもの。これはさすがにおかしいって。



「ただ、現地協力者って言って、地球でも管理局の事を知ってる人は居ますから、そういう扱いなら問題なかったりするんですけどね。なのはの両親とか、恭也さんや美由希さんがそれなんで」

「あ、一応救済策はあるんやな。うん、それならうちらも安心や」

「だけど、原則的には教えちゃいけないのは変わらないと」

「・・・・・・はい」



今回の事だって、局員で局にバレたなら、普通に始末書物だもの。嘱託で仕事中の事じゃないから・・・・・・というより、バレてないから何とかなってるだけで。



「でも、こういうの初めてじゃないんですよ。数ヶ月前にはフィアッセさんと、ガードのエリスさんにも」

「あ、二人も魔法の事とかは知っとるんか」

「はい」



あれも申し訳なくて謝り倒したなぁ。色んな意味での身内のゴタゴタに巻き込んだ形だもの。二人は気にしないって言ってくれたけど、こっちは気にするって。



「というか、ゆうひさんはフィアッセさんと僕との出会いって」

「うん、そこは聞いとる。なんや去年のコンサートで恭也君と美由希ちゃんと一緒に派手にやらかしたらしいな。・・・・・・あ、まさか」



ゆうひさんは、察してくれたらしい。その時にも僕が魔法を使ったことを。



「でも、それはまた相当にルール違反やな。フィアッセから聞いとるけど、アンタ自分から飛び込んで行ったらしいし」

「まぁ、その辺りの事で家族会議が相当行われたりしましたね。さすがに一目見て魔法というか、異能力だって分かるようなものは使ってないですけど」

「そのコンサートの事は私には分からないけど・・・・・・普通に魔法使いまくって、その上戦ったりとかもしてるんだね。ね、それって本当に大丈夫なの?」





普通なら大丈夫じゃない。局員だったらクビと言われまくりましたさ。いや、嘱託の資格を剥奪されてもおかしくないとまで言われた。

魔法絡みでもなんでもない管理外世界の事件に魔法使って対処なんて、本当ならだめ。それが管理局と言う組織の、局員という立場の人間が守るべきルール。

つまり、フィアッセさんを助けたのも、昨日幽霊ぶった斬ったのも、本当ならだめなこと。道理的にはともかく、管理局的には確実にアウト。



ただなぁ、やっぱり飛び込むんだよなぁ。迷うのも、躊躇うのも嫌だし。





「僕、フェイトやエイミィさん達みたいに『魔導師だから』とか、『局員だから』とか、そういう風に考えられないんですよ。魔法あるなしに関わらず、目の前の事に手が届くなら、なんとかしたいなと」



『まぁ、だからって別に世界の全部なんとかしようとか思ってないですけど』・・・・・と、付け加えるのを忘れない。

僕、神様でもなんでもないし。手の届かないところのとこまでは責任持てないのよ。そういう所の出来事に心を痛めるほど優しくもないし。



「でも、これじゃあ局員になっても数ヶ月でクビは確定でしょうし。あと、特に局の中でやりたいことがないって言うのも大きいです」

「そやなぁ、普通にそれは間違いなくクビやろ。なぁ、知佳ちゃんのとこでもそうやろ?」

「そうですね。さすがに組織の規律を完全無視はちょっと・・・。
まぁ、言っている事は分かるし、私もそういう無茶をしないかと言われればそうでもないのであまり言えないんですけど」

「あぁ、有ったなぁ。海水浴に行って女の子助けたり・・・・・・とか」



あ、知佳さんもそう言うことがあったんだ。うーん、さすがレスキューのお姉さん。

でも、よく考えたら先生はよくクビにならなかったよなぁ。最後は引き止められたくらいだって言ってたし。やっぱり、なんだかんだで個人としては人望があった証拠だと思う。僕もそうありたいよ。



「でも恭文くん、本当にそれでいいの?」

「え?」

「そのために、あなたは自分では自覚が無いかも知れないけど、今の話を聞く限り本当に大変な目に遭ってる。
みんなから怒られて信頼を無くしかけたり、嘱託って言う仕事を無くしそうになったり、重い物を背負ったりもしてる。それでも、その考えは変わらない?」



知佳さんが僕を見て、静かな声でそう言ってきた。だから、僕も知佳さんをしっかりと見て、頷いた。

・・・・・・背負ってもです。怒られてもです。ルール違反はいけないことだろうけど、それでも、目の前で何かが壊れそうなのに、迷ったり躊躇いたくないんです。



「考える時があるんです。あの時、フィアッセさんを守りたいと思ってたのに『管理局や魔導師が魔法を使ってまで関わる理由はない』なんて言って、手を伸ばせなかったら、どう思ってたのかなと。
もっと近い所で言うと、昨日、あの子の助ける声を同じような理由で無視してたら。もしも、そのためにあの子があれ以上傷ついてたりしてたら・・・・・・と。そう考えたら、やっぱり変わらないし変えられないんです」



きっと、死ぬほど後悔してた。手が届いて、なんとかするための力が僕には・・・・・・まぁ、一応あったのに、それでなんで何もしなかったんだって、死ぬほど後悔してた。

リインの時とはまた違うけど、重い後悔。そんなの、背負いたくないし。僕は人生楽に歩きたいのよ。



「僕は、そんな言い訳出来ないんだって、この1年でやんなる位に知りましたから。飛び込みたいと思ったら、自分の勝手で、自分のわがままで、飛び込みます」

「でもそれはきっと、すごく苦労するよ? あなたの考え方は、組織という中では、そこに属する人からは、絶対に認められないよ」

「それでも、いいです。変えたい物を変えられないで認められても、そんなの嬉しくない。何の価値もない。そんなの、いりません。何も出来ないのなんて、僕が認められないんです」

「そっか。それは・・・・・・」



それは?



「私と、同じだね。私も、ルールや組織の都合で目の前の事を何とか出来ないのはすごく悔しいから。それで、ちょこっとルール違反したりもするし」

「知佳さんも、ですか?」

「うん。さっき言った事もね、ある先輩から言われた事なんだけど、それでも・・・・・・嫌なんだ。何も出来ないの、目の前で何かが壊れちゃうのは、本当に悔しいもんね」

「・・・・・・はい」



知佳さんの僕の手を握る力が、少し強くなる。痛い感じじゃなくて、気持ちを通じ合わせようとする感じ。

だから、僕も握り返す。知佳さんの手、あんまり強く握ったら壊れちゃうんじゃないかって思うくらいに細いから、優しく。



「あ、それはあかんなぁ。悪い大人とその候補が揃い踏みやし」

「いいんです、私はちょこっとですから。恭文くんみたいにブッチギリじゃありませんし」

「それもちょっとひどくありませんっ!?」



いや、何も反論出来ないけど。確かにブッチギリだし。



「でも、ちょお関心せぇへんな」

「へ?」

「うちや知佳ちゃんというものが目の前にありながら、他の女の子の事を考えるのはだめやろ。もっと言うと、フィアッセの事とかフェイトちゃんの事や。なぁ、知佳ちゃん」



はぁっ!? そっちが話振ったのにどうしていきなりそうなるんですかっ!!

・・・・・・いやいや、落ち着け僕。このお姉さんはともかく、知佳さんはこんなわけのわからない理論に乗るわけがない。しっかりツッコんで



「あ、そうだね。それはマナー違反だよ? 一緒に居る間は、ちゃんと私達のことだけ見てて欲しいな」



くれなかったぁぁぁぁぁぁぁっ! なんでちょっと怒ったような顔で僕を見るっ!? おかしいでしょうがっ!!



「まぁ、アレや。うちの裸を見たのも知佳ちゃんの胸を大きくするのに協力するのもひと夏のアバンチュールっちゅうことで納得しようや」

「そうそう。納得しようよ」





あぁ、それなら納得・・・・・・





「出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





出来るかっ! つーか出来るわけがないしっ!!



くそ、このままからかわれまくって・・・そんなん嫌に決まってるでしょうがっ! ここは反撃だっ!!





「分かりました。それならもう知佳さんしか見ません」

「・・・・・・え?」





なので、ジッと知佳さんを見る。見続ける。視線は力。それにより気持ちを伝えていくのだ。



ひたすらに真っ直ぐに、思いを込めて見る。眼力だ。眼の力発動だ。





「ここに居る間は知佳さんだけを見ます。余所見はしません。フェイトの事もフィアッセさんの事も、ひとまず置いておきます。
というか、僕は胸の大きさで女の子を判断したくないです。・・・・・・知佳さん、すごく素敵ですよ? 一緒に居るだけで、手を繋いでいるだけで、すごくドキドキします」

「あ、あの・・・恭文くん?」



両手を取る。そして・・・ギュッと握る。



「僕、知佳さんのこと嫌いじゃないです。むしろ・・・好きです」



なお、当然のようにゆうひさんの手は解いた。



「えっと、こういう言い方するといかがわしい感じですけど、そうじゃなくて・・・。
あの、ここに居る間に、いっぱい知佳さんと仲良くなりたいという話なんです。・・・・・・どうでしょ。だめ、ですか?」





潤んだ瞳で見上げる感じでやるのがコツ。だって、身長・・・横馬、とりあえず地獄へ落ちろ(注:八つ当たりです)。



とにかく、これで知佳さんが完全に固まった。・・・・・・ふ、どうだ。この見事な反撃。知佳さんがなんか顔を真っ赤にしてるし。





「・・・こてつちゃん、この子すごいなぁ」

≪普通に爆弾投下しましたよね。魔法どうこうよりこっちが問題でしょ≫





なんか聞こえたけど気のせいだ。





「それなら、えっと・・・あの・・・でも、年の差があるし」





なにをおっしゃいますか。知佳さんの方から言ってきたんでしょ?



だったら問題ないでしょ。アバンチュールでもなんでも頑張りましょうよ。





「それじゃあ・・・あの、私も今はそういう相手が居ないし・・・がんばっちゃおうか。ただし、今恭文くんが言ってくれたように、いかがわしいことは抜き。それで、私達がいっぱい仲良くなるためのアバンチュール」

「はい」

「なー、うちはどないなるん? それやとうちのけ者やんか。ゆうひちゃん、両手ががら空きで寂しいんやけどー」

「にゃんこと遊んでてください」

「自分普通にうちへの扱いひどいなっ!!」










そのまま、夕方の道を歩く。歩いて・・・さざなみ寮に到着した。





すると、音がする。それは庭の方から。『だむだむ』・・・という何かがバウンドする音。





これ・・・なんだろ、聞き覚えはあるんだけど。










「・・・あ、帰ってきたんだ」

「そういえば、予定やと今日の夕方言うてたなぁ」

「えっと、この音に心覚えがおありで?」

「「正解」」





そのまま、僕は二人に手を引かれ・・・あれ、描写表現がおかしい。もうバイト終了まで知佳さんだけしか見ないはずなのに。



とにかく、引かれて寮の中に入る。すると、そこには白のジャージを来た・・・あれ、女の人かな。



その人が一人コートの中・・・あ、そっか、バスケのバウンドの音だったんだ。





「・・・はっ!!」





そのまま、3ポイントのシュート。・・・ボールは綺麗な放物線を描き、おなじく綺麗にゴールにスパンと入った。



・・・すごい。あんなの僕は無理ですよ。





「いやぁ、相変わらずすごいなぁ」

「・・・あ、ゆうひさんに・・・知佳ちゃんっ! お久しぶりですー!!」

「みなみちゃん、お久しぶりー!!」



そのまま、その人はボールをしっかり回収した後でこっちに走り寄ってくる。

そして、僕にニコリと笑ってきたので、僕はお辞儀で返した。



「えっと、この子は」

「あ、耕介さんから聞いてます。・・・えっと、初めまして。ここの元寮生で岡本みなみです。蒼凪恭文君・・・で、よかったよね」

「はい、蒼凪恭文です。よろしくお願いします」

「うん、よろしく」





頭の中で、耕介さんからもらった僕のお仕事中にここで生活する人のリストを復習する。

岡本みなみ・・・あ、そうだ。確か大阪の保険会社のバスケの実業団チームで、エースを務めているって人だ。

知佳さんと同級で、当然元寮生。夏休みが取れたので帰郷してくる人の一人。



で、すごい沢山食べる人で、好き嫌いほとんどなし・・・と。





「ところで・・・ゆうひさん、知佳ちゃん。どうして恭文君と手を?」

「あぁ、デートしてたんよ。・・・恭文君はこれが中々にプレイボーイでなぁ、うちも知佳ちゃんももうメロメロなんよ」

「メロメロなんだ。もう私達、恭文くん無しで生きられないようになっちゃったの。というか・・・されちゃった。もうここでは言えないような事をたくさん」

「あぁ、そうなんで・・・・・・えぇぇぇぇぇぇっ!?」

「そんなことしてないからっ! 普通にお買い物して映画を見てただけですからっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、みなみさん(そう呼んで良しと許可を貰った)も交えて夕飯。今日のメニューは・・・焼肉。いや、みなみさんがお肉食べたいとリクエストしたかららしいけど。





だけど・・・量が多い。とても多い。なぜか倍近く増えているように見えるのは、僕の目がおかしくなったせいなのかとちょっと疑ってしまった。





そんな量をみなみさんがぺロリなのがびっくりです。ただ、まだビックリなところがある。





・・・・・・真雪さんだ。










「・・・よし、坊主。後で庭に出ろ。うちの妹に手を出せるだけの度量か、あたしが確かめてやる」

「なんでそうなるんですかっ!? てゆうか、殺気を出すのはやめてー!!」

「やかましいっ! お前、絶対あたしになんか恨みあるだろっ!! お前のせいで賭けに負けそうになるし、愛にはすっげー叱られるし、挙句妹はお前無しじゃ生きられないとか言い出すし・・・ほら、正直に言えっ! あたしがなんかしたのかっ!! あぁっ!?」



わけわかりませんよっ! そして賭けってなにっ!? 叱られたってなにー!!

あと、なんかしたでしょうがっ! 初対面でのあの光景で、僕がどんだけ先行き不安になったとっ!?



≪あなた、謝った方がいいですって。ほら、今なら命までは取られないでしょうし≫

「アホな事言うなー! 僕が何したってのっ!?」

≪アバンチュール≫



・・・・・・ソウデシタ。



≪というより、どんだけ守備範囲が広いんですか。ゆうひさんも知佳さんも15以上は離れているというのに≫

「だから何の話だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



あ、昨日の一件でもう魔法の事とかバレてるので、アルトが話してても問題はありません。

・・・なんだろう、最近こういうパターンが多いような。



「挙句、薫と那美で姉妹丼だろ? 恭文、鬼畜だよね」

「そうだよ。君は女なら誰でもいいの?」

≪JACK POT!!≫

「なんで大当たりっ!? そしてリスティさんも美緒さんも違うからぁぁぁぁぁっ! 薫さんと那美さんにフラグを立てた覚えなんてないからぁぁぁぁぁぁっ!!」

「そうだっ! リスティ、お前なんば言っとるっ!? 大体、恭文君とうちや那美とでは年齢差が有りすぎるだろうがっ!!」



大体、アレで立てられたのは僕の死亡フラグのほうですよっ!? 絶対に二人の恋愛フラグじゃないしっ!!

・・・・・・あぁ、思い出してしまった。また心のそこから謝りたくなった。なんか腹立つけど二人だけじゃなくてゆうひさんにも謝りたくなった。



「そうだね、結婚というのは人生の墓場とも言うし、ある意味死亡フラグ」

「だからどうしてそうなるっ!? そして食事中にそんな話をしないでー!!」



ヤバイ、なんかさっきからツッコんでばかりで全然お肉を食べてない気がする。よし、お肉を・・・あれ、ない。

桜色のお肉達がない。おいしそうだった牛肉さん達がない。BSE問題とかでうるさいけど、やっぱり素敵な牛肉さん達がない。



「・・・しっかし耕介、お前またいい肉仕入れたな」

「あぁ、お前の知り合いの肉屋さんからのお祝い品だ。妹が帰ってきてるんだったら、これくらいした方がいいだろうと。
いや、タイミングばっちりだったよ。ちょうどみなみちゃんからリクエストを聞いた直後だったしな」

「あ、おっちゃんのとこのなんだ。そりゃ納得だわ」

「うーん、なんというか味わい深いなぁ。やっぱりお肉は焼肉が1番だよ。これでお酒もついてたら言うことないんだけどね」

「そうだね、あたしもお肉は好きなのだ。いやぁ、ねこまんまもいいけどコレも中々・・・」



えっと・・・あの、みんなちょっと待って? なんかおかしくないかな。



「いやぁ、やっぱりここは落ち着くなぁ。ついついお箸が進んでまうよ。・・・あ、美由希ちゃん、その肉焦げてまうよ」

「あ、ほんとだ。いけないいけない」

「・・・はい、耕介さん」

「お、愛ありがと」

「いえ」



いや、だから・・・ね? もうちょっと考えてみようよ。もっと言うと常識的にさ。



「でも耕介さんのご飯・・・久しぶりだから普段の三割増しで食べちゃいますー。恭文君もそうですし、アルトアイゼン・・・でしたっけ? 二人のおかげで会話も楽しいしー」



えっと、そう言ってくれるのはありがたいんですけど、なんか忘れてるでしょ。ね、すごく大事なことですよ。



「あははは、ありがと。まぁ、俺は腕がこれだし、実際に作ってるのはエイミィさんとかなんだけどな」

「でもでも、ちゃんと耕介さんの味になってます。すごいですよ、これ」

「いや、なんというか・・・ありがとうございます。そう言ってもらえるとうれしいです」



・・・・・・なんか僕を差し置いてみんなお肉を堪能してるぅぅぅぅぅぅぅっ! なにっ!? もしかしなくてもお肉を食べてないの僕だけなのかなっ!!



「やかましい、うちの妹に手ぇ出すお前にやる肉なんざ一切れもないんだよ。
ほら、野菜食え。お前は今日からベジタリアンなんだからな。そしてあだ名は野菜くんだ」

「勝手に人の食の嗜好を決めるなぁぁぁぁぁぁぁぁっ! そしてそんな安直なあだ名は嫌ですよっ!!」

「もう、ダメだよお姉ちゃん。そんな意地悪しちゃ。・・・はい、恭文くん」



そう言って、知佳さんがお皿一杯に焼けたお肉を・・・知佳さぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!

知佳さんはそのまま、僕にニッコリと笑いかけてくれる。そう、知佳さんは僕の分のお肉を焼いておいてくれたのだ。あぁ、いい人だ。この人やっぱり女神だよ。



「あ、知佳さんもなんですね。・・・実は、私も」



そう言って、那美さんがお肉を・・・那美さぁぁぁぁぁぁぁんっ! あなたもいい人だぁぁぁぁぁっ!!



「恭文くん、お姉ちゃんやリスティの言う事は半分くらい聞き流していいよ? そんなことしてたら、本当にお野菜しか食べられなくなっちゃうし」

「ちょ、知佳っ! お前、いくらなんでも久々に逢った姉への扱いがヒドくないかっ!?」

「ボクもだよ。知佳、もっと優しさをくれないかな」



だけど、知佳さんはそんな言葉は本当に聞き流して・・・お肉をそのまま僕の前に置いてくれた。



「いいの。私は恭文くんと、ひと夏のいかがわしいことは一切抜きの健全なアバンチュールを楽しむことにしたんだから。ここに居る間に、いっぱい仲良くなろうねって約束したんだもん」

「・・・・・・お前、やっぱりあたしのこと嫌いだろ。初っ端で裸見たってのに」

「あそこに僕の意思はありませんので、問題はありません。とにかく、そういう約束をしただけですから。ね、知佳さん」

「うん」

「へぇ、そうなんだ。・・・あ、はい。お肉」



那美さんも同じく、僕の前にお肉を置いてくれた。



「うぅ、二人ともあり・・・あ・・・ありがとう、ございます・・・」

「・・・泣かなくても」

「そこまでお肉、食べたかったの?」



はい、食べたかったです。お肉、すっごい食べたかったです。育ち盛りなんで。でも、それだけじゃないです。

それよりもなによりも、二人の心遣いが嬉しいんです。はい、すっごく嬉しいです。



「あー、知佳さんに那美さんも、あんまり恭文くん甘やかさなくていいですよ? 恭文くんのこういう扱いはいつもの事ですし」

「そうですね、エイミィさんがクロノさんに放っておかれるのもいつものことですよね。だからここに居るわけですし」

「それひどくないっ!? というか、クロノ君の話はやめてー!!」










とにかく、その後は僕もちゃんとお肉を食べられた。もちろん、お野菜もきちんと食べた。




なんだろ、バイトではあるんだけど・・・やっぱり、楽しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、翌朝。僕は平和に起きて、平和にお風呂掃除をして、平和に耕介さんとエイミィさんと一緒に台所で朝食の準備を・・・。





僕は、泣いた。










「や・・・恭文君、どうした?」

「いえ、なんかこう・・・嬉しくて。普通に寝て起きられるって、こんなに幸せだったんだなって」

「・・・・・・そっか」

「あー、そうだよね。うん、ごめん。私知ってたよ。ここまで、夜に必ず何かしらのトラブル起きてたしね」



だから、ついついスープ用のベーコンを切りながら、泣くわけですよ。

あぁ、嬉しい。本当に嬉しい。ご機嫌だ。僕はとってもご機嫌だ。



「やっぱりみんな就寝してから、部屋の外から一歩も出なかったのが正解だったんだ。お風呂場に近づかなかったのが正解だったんだ」

「そ、そうだな。でも恭文君」

「はい?」

「それでここが嫌になったり・・・とかは、ないか? いや、なんというか君も複雑だが、うちの寮生もかなりのもんでな」



耕介さんがちょっと真剣な顔で僕を見てきたので、首を横に振って答えた。そんなことはないと、力強く。



「むしろ、ワクワクしてます。退魔師とか、霊剣とか、そういう今まで知らなかった事、見た事の無いものに触れられて。僕、そういうの大好きなんです」

≪まぁ、こういう人なので心配はいりませんよ。魔法の事もこんな感じで受け入れたそうですし≫

「そうか。ならよかった。いや、那美ちゃんや知佳にゆうひとも随分仲良くなってたみたいだし、そこだけが心配でな」



少しだけ、夢が膨らんだ。いつか、先生みたいに色んな所を旅してみたいという夢。

きっとこんなことが沢山あるんだろうなって、感じたから。



「それに・・・」

「それに?」

「魔法や次元世界に比べれば、まだ常識的ですって」

「・・・確かに。いや、俺もこの寮を任されて大分経つけど、魔法があるなんて思わなかったしな。
薫やエイミィさん達から聞いて、びっくりしたよ。しかも、あのなのはちゃんまで君と同じ魔導師なんだろ?」



耕介さんが怪我をしていない方の手で、鍋のスープを混ぜる。僕はそれに頷く・・・んだけど、なんでなのはの事知ってるんだろ。

・・・あ、そっか。那美さんと久遠経由か。美由希さんも恭也さんも、それがきっかけでここの人達と親しくなったらしいし。



「でも・・・本当に大丈夫か? いや、俺達のことじゃなくて、昨日の一件だ」

「大丈夫です。・・・そのまま、ちゃんと持っていきます。忘れる事も、下ろす事も出来ませんから」

「そっか・・・。強いんだな、君は」

「弱いですよ? 弱いから、全部持っていくんです」










そのまま、手早く朝食の準備を済ませていく。なんというか、楽しい時間。





やっぱり、ここに来てよかった。なんか居心地いいもの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



忘れる事も、下ろす事も出来ない・・・か。恭文くん、また背負ったのに、やっぱりその選択をするんだ。

一応さ、義理でも未来の姉としては、ちょっと心配なんだよ? 君、相当無茶する方だし、なのはちゃんやフェイトちゃんみたいに局員になるつもりも0みたいだしさ。まぁ、この間のはやてちゃんの一件で相当来たみたいだし、仕方ないかも知れない。

リンディさんやアルフにフェイトちゃんはともかく、クロノ君は納得してるみたいだから、まぁ・・・・・・その将来の伴侶としては、一応そこに乗っかるつもりだよ。だから、何も言わない。うん、言わない。言わないけど・・・。





そういう風に行き先を決めないのって、どうなのかな? そんなんじゃ、みんな恭文くんのこと心配するよ。

どこに行くにしても、自分のやりたい事・・・未来の行き先、一応でも決めておく必要はあると思うな。あ、局以外も含めてだね。

背負っても幸せになる、不幸になんてならないって、フェイトちゃんと約束したんだよね?





その約束を通すのなら、そういうのだって絶対に必要だよ。私は、そう思う。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、昼間の恒例行事となった買出し・・・がない。





なんというか、一昨日とか昨日のとかで三、四日は充分とか。というより、知佳さんや那美さんが帰ってきたという関係で、知り合い各所から相当量のお祝いの食料品を貰っているらしかった。





つまり・・・。










「買うどころかこれを食べきれるかどうかが問題と」





目の前に開く冷蔵庫の中はぎっしり。もうどうしてここまでというくらいに。

さざなみ寮は、寮という性質のため、当然住んでいる人間も多い。その関係で冷蔵庫も大型の業務用のものを使ってる。それが完全に埋まってるのだ。

冷蔵室も冷凍室ももうパンパン。これ以上何かもらったら、正直全員の胃袋にフルドライブ起こしてもらわないといけないと思う。



とりあえず、冷蔵庫のドアを閉める。地球温暖化に影響しないように、その辺りはしっかりしないといけないのだ。





「そうだな。とりあえず鮮生食品から片付けていかないと」





夏だし、生ものは一気に来るしなぁ。あと、食べ頃もあるから、当然そうなってくる。



正直、みなみさんが帰って来てくれて助かった。あの調子なら、なんとかなりそうではある。





「隣近所におすそ分け・・・あぁ、ダメですよね。もらい物だから、そのままはマナー違反ですよ」

「だろ? うーん、知佳や俺達の知り合いも夏休みで居ないから、誰かしら呼んでという手も使えないしなぁ。この辺り、対策を考えておかないと」

「うー、すみません。管理局関係者もエイミィさん以外は同じくです。どいつもこいつもワーカーホリック気味で」

「あははは、それは大変だな」





なんて会話を耕介さんとする羽目にもなったりもするのである。



ただ、嬉しい悲鳴というやつではある。好意でここまでしてくれる人が居るというのは、やっぱりこの寮の人達の人徳ではあると思うから。





≪あなたが毎日スターライトを使えれば問題なく食べられるんですけどね≫

「・・・スターライト? なんだ、それは」

「あー、魔法の一種なんです。ちょっと大技なんですけど、僕の場合それを使うと異常にお腹が空いちゃって・・・」



非常にもりもり食べる。それはもうすごい勢いで食べる。



「普通にみなみさんがもう一人増えると考えてもらえれば」

「あ、それは心強いな」



確かにあれを使えばこれは食べ切れそうだけど・・・だめだって。



「恭文君」

「ダメです。・・・その魔法、条件がクリア出来ないと使うなって言われてるんですよ。大技過ぎて身体に来るんです」



今はリインもはやてに付き添ってるから居ないし、単独で使うことになる。そんな真似したら・・・お説教が来る。それは嫌だ。



≪やっぱり成長ですって。体格を大きくしないとだめですよ。そのために、これを頑張って食べましょう≫

「いや、無理だから」





まぁ、みなみさんに頑張ってもらうという方向性で話はまとまったけど。



うーん、どうしようかなぁ。お掃除もお洗濯も洗車も終わったし、美由希さんはまたどこか出かけたし。





「つーか、なんか僕はあんまり仕事をしていないような気が・・・」

「いや、大丈夫だぞ? まぁ、仕事以外のあれこれが目立っているのは確かだけどな。・・・あ、そうだ」

「なにかあります?」

「せっかくだし、知佳と出かけてきたらどうだ?」



・・・・・・いやいや、ちょっと待ってくださいよ。昨日も出かけたじゃないですか。映画見に行ったじゃないですか。さすがにそれはだめですって。僕バイトなのに。



「いやな、知佳もさっき言ったような感じで夏休みのせいで友達がほとんどこっちに居ないんだよ。で、なんか退屈そうでな。まぁ、それはゆうひなんかも同じなんだが」

「なるほど、だからこれまで僕が引っ張り出されてきたと」

「まぁ、そうなるな。寮生とのコミュニケーションも大事な仕事だし、がんばってくれると助かる。それに、ここに居る間にいっぱい仲良くしていこうって話したんだろ?」

「そうですね。それじゃあ耕介さん、何かあったら」

「あぁ、携帯に連絡を入れるよ」










というわけで・・・本日の予定は決まった。知佳さんの遊び相手になるのである。





でも・・・僕、本命ほったらかして何やってんだろ。まぁいいか。ここに居る間は知佳さんしか見ないって言ってるし。





だけど、やっぱり恨むぞ。エロ男・揉んでやる(なお、逆恨みという意見はスルーします)。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



なんだろう、昨日拝見させてもらったあの刀・・・すごく気になる。だからまた見せてもらいに、おじさんの所へ足を向けている。

とても綺麗で・・・そうだ、妖しいくらいに綺麗で、惹かれている。

あんな綺麗な刀、見たことない。なんだろう、あれ。なんであんなに綺麗なんだろう。





確か、名前が・・・神無月・・・だったよね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「でも、やっぱり暑いね」

「夏・・・ですしね」



知佳さんと二人で夏の海鳴の街を歩く。そうして来たのは、海沿いの遊歩道。なんというか、お気に入りの場所。

そして、知佳さんとやっぱり手を繋いで歩く・・・あれ、おかしいな。また気配がする。



「そうやなぁ。うーん、うちでマッタリもえぇけど、こうやって街をブラブラも楽しいわぁ。しばらくは海外やったから、海鳴の街並みが新鮮やし」



もっと言うと、僕の左手を繋いでる。ブラウンのウェーブのかかった髪に、抜群なスタイルのお姉さんが居る。



「・・・・・・そうですね。でも、僕は今ひとつ新鮮味がないんですよ。このシチュを昨日も見たので」



そう、ゆうひさんだ。にゃんこ達と遊んでいるのは飽きたと言って、くっついてきた。で、例によってまた僕は宇宙人状態で二人と手を繋いでいる。

あれ、やっぱりおかしいな。僕・・・本命ほったらかしてマジで何やってるんだろ。



「いやぁほら、フィアッセに負けんように頑張りたいな思うてな」

「頑張らなくていいですから。お願いですから普通に接してください普通に」

「でもなぁ、あの運命の出会いが普通ちゅう言葉を否定するんよ。なぁ、普通に20歳近くの年の差カップルもありなんやないかな」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ! お願いだからもうその話はやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



や、やばい。色々と追い詰められてる。すっごい追い詰められてるし。

抑えろ僕。具体的には脳内の残骸データから修復されつつある生まれたままのゆうひさんの姿を消去するんだ。それが平和への道のりでありジャスティスだ。



「でも恭文くん、フィアッセ・クリステラさんとそんなに仲がいいの?」

「まぁ・・・かなり」





うん、かなりいいよね。普通にメールするしさ。恭也さんや士郎さんが複雑そうな顔をしてしまうくらい。



なんというか、通じ合える。年こそ離れてるけど、それでもこう・・・フィアッセさんとの時間は大好きなのだ。





「この子だけの話ちゃうんよ? フィアッセもめっちゃお気に入りなんやから」

「ふーん。恭文くんって年上ジゴロなんだね」

「・・・あはは」



知佳さんの言葉に、何一つ否定出来なかった。だって・・・あぁ、そうだ。シャマルさんもすずかさんもフィアッセさんもロッテさんも年上だ。問題ないんだ。

知佳さんの言う事、間違ってないんだよね。



「昨日、ちょっとドキっとしちゃったしなぁ。うーん、私ショタの気は無いんだけど。年上好きだし」

「なぁ、そういう魔法でも使ったんか?」

「あいにく、その手のは使えないんです。あんまりにもアウト過ぎて、術式とかも一般公開されてませんし、使ったら規律どころか法律違反ですし」



あのヒーリング結界以外はね。



「というか・・・あれや。うちも健全なアバンチュールの仲間に入れてーな。にゃんこ達とだけ遊ぶ言うんもちょおダメな気がするんよ」

「上手い具合に僕もそうだし、さざなみ寮の人達も知り合いな方々が居ないんですよね。
・・・あー、そう考えると、確かにずっとにゃんこと遊ぶのは独身女性としてダメかも知れません」

「そやろ? そやから、うちも恭文君とアバンチュールや」



あははははは、それはもっとだめだと思いますよ? 知佳さん丸め込んだから口に出せないけど。



「うーん、みんなで出かけるとかそういうのはないんですか? 知り合いな方々とかじゃなくて、寮のメンバーで」

「それも考えたんだけど、お兄ちゃんがあの様子でしょ?」



なるほど、怪我してるからアウトと。確かに腕・・・だからなぁ。

これだとガレージにあったセダンやらアメリカンタイプやらミニクーパーやらは当然運転出来ないし、出来る事にも限りが出てくる。



「恭文くんが来る前に、みんなで『出かけるにしてもあんまり遠出は無理だねー』って話してたんだ」

「納得しました。あ、それなら・・・・・・」



海の風を感じながら、太陽の熱を感じながら歩く。歩きつつ・・・いつの間にか旅行の話になってるのがちょっと不思議。



「近場で温泉ってありましたよね。傷の治療にいいとか言うの」



確か、車で1時間前後山間の方に進むと、そう言うところがある。てゆうか、横馬の実家である高町家では年に一回、そこでお泊りするのが恒例だし。



「あ、それはえぇかも知れんなぁ。傷の治療言う名目なら、耕介君も行きやすいやろうし」

「車の運転はお姉ちゃんや愛さんに私がすれば問題ないですし・・・考えてみます? 急だから予約取れるかどうかがわからないですけど」

「そやな、ちと耕介君と愛ちゃんに内緒で相談してみよか。せっかくの夏休みなんやし、イベント無しも寂しいやろ」



どうやら、寮メンバーの間で話は纏まったようである。いや、よかったよかった。

でも、そうすると僕はその間お休みかな。うー、暇つぶしを考えておかないと。



「あ、恭文くんも行くんだよ?」

「・・・・・・え?」

「当たり前だよ。発案者が行かないなんてありえないよ」

「あれや、混浴風呂も場所によってはあるそうやし、一緒に入ったりも出来るかも知れんなぁ」



ゆうひさんがすっごいいい笑顔で言ってきた。なぜだろう、知佳さんも同じ感じで笑ってるのがどうしても理解出来ない。

あはは・・・それだけは勘弁してください。いや、真面目に勘弁してください。もう初日のアレで懲りてるんですから。



「あ」

「どうしたんや?」

「いや、十六夜さんや久遠とあんまり話してなかった事を思い出しまして。あと、みなみさんとも」



いやー。久遠とコミュニケーションしたかったのにー。十六夜さんやみなみさんといっぱいお話したかったのにー。

やっぱり寮生とのコミュニケーションも仕事だと思うし、ここは帰ったら頑張らないと。



「・・・・・・だめ」



なんか、ほっぺたがつねられてむにーと・・・い、いひゃい。

僕のほっぺたを引っ張った人を見る。それは、知佳さん。ちょっと不機嫌そうな顔をしてた。



「恭文くん、よそ見しないって言ったでしょ? だから、だめ」

「ご、ごめんにゃひゃい」

「・・・なぁ、そやからうちも仲間入れて欲しいんよ。普通に寂しいもん。ゆうひちゃん泣いてまうよ?」

「泣いてください」

「だから自分はなんでうちに対してそないに容赦が無いんやっ!?」










いや、それが許される人だと思っているからですが、何か問題でも?





なお、ボケたら確実にツッコんでくれると分かっているからこその行動です。はい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・そして、僕達はやってきた。





ハラオウン家へ。なお、どうしてとは聞かないように










「・・・今は誰も居ないんだよね。どうしよう、私連れ込まれちゃったよ」

「よし、知佳ちゃん。まずベッドの下や。エロ本探すんや」

「とりあえず早速家捜ししようとする人は帰ってください。あと、いかがわしいことは0ですから。連れ込んだけど何もしませんから」

≪・・・・・・関西系はいつもこれですか? というより、はやてさんと被ってますから。同じ場面に出てきたら誰が誰だかわかりませんよ≫



とにかく、家を長期間開けっ放しもダメだと思ったので、ちょっと状態を見に来たのが一つの理由。まぁ、綺麗なもんだけど。

・・・というか、あの・・・これはなんだろ。はやてやなのはにリインとはまた違うよね。女の子家に連れ込んでる・・・って、問題無いか。年齢的にいかがわしいことになりえるはずがないし。



「でも、有明とかで売ってるあんな本とかそんな本とかやと、普通にうちらの年齢差でも問題は」

「大有りですからやめてください」



頼むから同人の話はするなっ! つーか、そこ含めたらなんでもありでしょっ!?



「・・・・・・あ、高町家が見えるなぁ。それも近くや」

「ホントですね。フェイトちゃんって、なのはちゃんの親友って言ってましたし、家が近いのはいいことですよね」

「そやなぁ。そう言えば、恭文君はなのはちゃんと仲良うしてるんか?」



窓から街の景色を眺めつつ、ゆうひさんが声をかけてきた。なお、僕はお茶淹れてます。いや、一応お客様だから。



「まぁ、普通ですよ? べたべたしてるわけでもなく、かと言って離れ過ぎてるわけでもなく。
あぁ、でもなのははやたらと近づいて来ますね。もう仲良くしよう仲良くしようって言いまくるんですよ」

「ほうほう、そりゃえぇことやなぁ。なのはちゃん、フィアッセから写真見せてもらったんやけど、かなり美人になっとるし」

「そうなんですか?」

「そうなんよ。ツインテールをサイドポニーにして、大人っぽくなっとるし。アレはめちゃくちゃモテると思うな」



あれが美人・・・ねぇ。どうもそうは思えないんだけど。だって、普通に中身魔王だし。

てゆうか、行動が魔法少女物じゃないって。普通に熱血魔法バトルアクション物だし。



「美人って言ってもゆうひさんや知佳さんには負けますって。そもそも、モテても意味がありません」

「なんでや?」

「まずひとつ。現時点でなのはもフェイトと同じくワーカーホリックで恋愛に全く興味がない。
そしてもう一つ。ここが大事なんですけど・・・なのはには、恭也さんというお目付け役が居るからです」



僕の言葉に、二人はすごく納得しつつ窓からリビングのテーブルに歩く。で、椅子に座る。

そこに僕が淹れた日本茶ですよ。熱い時に熱いお茶を飲むのも、またよし。・・・いや、冷茶作る時間がなかったんです。ごめんなさい。



「私は何回かしか会ったことがないんだけど・・・すごいシスコンだと言うのは那美ちゃんやお姉ちゃんから少しだけ」

「そやなぁ。美由希ちゃんは剣術の弟子っちゅうんがあるからまだ大丈夫なんやけど、なのはちゃんへの可愛がり方はもうすごいから。
フィアッセ共々、さすがにアレはないって苦笑してたわ。・・・・・・恭文君がそない言うっちゅうことは、恭也君のシスコンは相変わらずなん?」

「みたいですね。ちなみに、僕は初対面でなのはをいつも通りに虐めてたら、飛針をこめかみ辺りに投げつけられました。直撃したら死んでると思います」

「・・・・・・そりゃ相変わらずちゃうわ。めっちゃひどくなってるし」



そっか、あれは悪化したものだったんだ。あはは、そうじゃないよりは救いがあったのかな?

とにかく、お茶を一口・・・あぁ、クーラー効かせてるから、これはこれでよしだ。



「とりあえず、お茶飲んだら温泉予約出来るか調べちゃいます?」

「そうだね。いきなり借りちゃって申し訳なくはあるんだけど」

「いえいえ、大丈夫です」










・・・・・・そして、知佳さんとゆうひさんを家に上げた理由はもう一つ。もう今すぐに温泉の事とかも全部調べちゃおうと、僕が誘ったのだ。

ほら、ここならネットカフェとかみたいにお金取る必要もないし、普通に僕の端末立ち上げてインターネットすればいいだけだし。

なので、お茶を飲み終えてから僕の部屋に二人を入れて、端末を立ち上げて、ネットに繋いで・・・と。





近場の温泉・・・あ、ちゃんとHPまであるや。こりゃ問い合わせ楽だぞ。










「・・・・・・うーん、ないなぁ」

「ゆうひさん、ベッドの下にその突っ込んだ腕を踏まれたくなかったらすぐに出してください。
いかがわしいものは置いてませんから。てゆうか、大半女性しか居ないんで置けないんですよ」



マジで探索ってどういうこと? うー、段々とはやて辺りと話してる気分になるから、不思議だ。

さて、どうするかなぁ。傷の治療にいい所・・・いい所・・・。



「みんなそういうのが書いてるね」

「まぁ、考えたら湯治って言う言葉もありますし、温泉なら当然なんですよね」

「それなら、混浴のあるとこやて。アバンチュールなら、やっぱりお風呂やろ」



あ、ゆうひさんがこっちに復活した。てゆうか・・・あの、くっつくのやめてください。普通に胸当たってますから。

そして混浴にこだわらないで。入らないから。僕は絶対入らないから。



「大丈夫よ。うちは気にせんし、フィアッセにも内緒にしとくし」

「そう言う問題じゃないですからねっ!? なに考えてるんですかっ!!」

「そやかてー、自分知佳ちゃんとだけ仲良くしてるし、うちも参加したいー。いかがわしいこと0な健全なアバンチュールがやりたいー」



とりあえず、アバンチュールという言葉自体がいかがわしいというツッコミは受け付けない方向で行きたいと思う。そして、ゆうひさんの話もだ。

というか、普通に年齢差を考えると、これはいいのか? 色々問題のような気が。



「そやかて、なんや知佳ちゃんも恭文君も楽しそうやし、うちもそういうのやりたいもん」

「可愛らしく言ってもダメです。てゆうか、知佳さんに余所見しないって言ってるんですから、ダメです。ね、知佳さん」

「そうだね。余所見はだめかな。二人で健全なアバンチュールだもんね」

「知佳ちゃんまでいけず。うちの事はどうでもえぇんや。そうか、そうなんやな」



人の部屋でうな垂れて床に崩れ落ちつつ嘘泣きし始めたゆうひさんは気にしない方向で行くとして・・・・・・あ、いい方法があった。



「アルト、ゆうひさんとアバンチュールなんてどう?」

≪あぁ、それは面白そうですね。主に私が≫

「こてつちゃんと話すんは面白そうやけど、絵的に寂しい人やから嫌やー!!」

≪失礼な。私と話せば世界のことなど気になりませんよ≫

「それも嫌やー!!」





えっと、早速アバンチュール始めた感じな二人はともかくとして、旅館の空き状況を知佳さんと分担で電話をかけて調べたりとかして一応確認。



どうやら、空き自体は問題ないらしい。ちょうど団体客が帰ってヒマだというところまであった。そうすると、寮生のみんなの都合にかかってくるわけだけど・・・。




「その辺りは大丈夫だとは思うけど、本予約は一応確認を取ってからだね。あ、それでお兄ちゃんと愛さんの分の宿泊費用は私達が持って、二人へのプレゼントにするとか。今まで色々お世話になってるわけだし」

「あ、それえぇなぁ。うーん、夢が広がってきたでー」

「それで、お風呂入っちゃおうか」



・・・・・・知佳さん、僕を見ながら言うのやめてください。てゆうか、いかがわしいこと0なんじゃ。



「私はタオル巻くし、恭文くんも巻くなら問題ないよ」

「のんのん知佳ちゃん? それはマナー違反やから。普通にそのままで」

「それは僕的にアウトだからやめて欲しいんですけどっ!?」

「そうですね。それはやめてもらえると嬉しいです」





声がした。その声に身体が凍る。というか、ありえない声だったからかなりびっくりしてる。



そして、僕達全員その声の方を見る。そこには、横馬と主治医とソウルパートナー。



・・・え、なんで居るのっ!?





「り、リインっ! それにシャマルさんに魔王っ!!」

「魔王じゃないよっ! 恭文君・・・知佳さんやゆうひさんと何の話してるのっ!? というより、どうして二人が恭文君の部屋に居るのっ!!」

「というより、温泉とか混浴とかタオルを巻く巻かないって一体なにっ!? 恭文くん、私と言うものがありながら何をしてるのかしらっ!!」

「ですですっ! リインというものがありながら他の女にうつつを抜かすなんて、ありえないですっ!! しっかり白状してもらいますからねっ!?」

「シャマルさんもリインもツッコむところ違わないかなっ!? どうしてそういうところいくのっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、現在。僕達はリビングに居る。





三人には事情を説明して、ようやく納得していただきました。










「・・・・・・全く、それならそうと、まずはちゃんと現地妻1号である私に報告をしなさい。びっくりしちゃったじゃないの」

「もしくは、元祖ヒロインであるリインにです。というか、普通にいいお話じゃないですか。リインもシャマルも協力したですよ?」

「だから、二人とも報告して欲しかったらまずはそのみょうちくりんな称号はやめてっ!? なんか痛いからっ! すっごい視線が痛いからっ!!」










なお、僕はなんかすっごい謝り倒しました。うん、なんでかね。










「・・・・・・恭文くん、私との事は遊びだったの? 現地妻に元祖ヒロインなんて居たのにビックリだよ」

「そやなぁ。うち、弄ばれてたんやなぁ」

「人聞きの悪いこと言うなぁぁぁぁぁぁぁぁっ! つーか、知佳さんはともかくゆうひさんにはなにもしてないしっ!!」

「・・・初日」



ごめんなさいっ! 反省してますんでその話はやめてー!!



「でも、なのはちゃんホンマにどないしたん? 恭文君とエイミィさんから、管理局のお仕事で居ない言う風に聞いてたんやけど」

「あ、予定が繰り上がってお休みがもらえて・・・・・・え、ゆうひさん。なんで管理局の事知ってるんですか?」

「うちだけやのうて、さざなみ寮に今居るメンバーは魔法の事とかも全員知っとるよ? 那美ちゃんや久遠もやな」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!? くーちゃんまでって、どうしてですかっ!!
・・・・・・・・・・・・あ」



なのはとシャマルさんとリインが僕を見る。そして視線で言ってくる。『今度はなにに巻き込まれてこうなったの?』・・・・・・と。

失礼な連中だ。なんでもかんでも僕が原因と思わないで欲しい。



「てか、なんでリインとシャマルさんとおまけがここに?」

「私を何の前触れもなしでおまけ扱いってひどくないかなっ!?」

「・・・えっと、恭文くん・・・なのはちゃんに冷たい?」

「いや、あれはいじめて楽しんどるな。これはこれで新鮮や」



ほら、ちゃんと説明して。仕事はどうしたの仕事は。



「私とリインちゃんも、なのはちゃんと同じくよ。仕事の予定が繰り上がって、長めにお休みが取れたの。まぁ、他の皆はちょっと無理だったんだけど」

「それで、本局に居る時にリンディさんに頼まれて、三人で家の様子を見に来たです。恭文さんはエイミィさんとバイトで留守だからということで、合い鍵も貰って」

「で、来たらちょうど僕達が温泉旅館の検索をしてるところだったと」

「ですです」



うん、納得出来た。途中のやり取りと違ってここはすんなりだよ。



「でも、いきなり浮気してるとは思わなかったです。
しかも、こんな綺麗な人と・・・リインとのことはどうなったですかっ!?」

「なんで浮気表現っ!? てゆうか、普通にバイトしてる間は仲良くしようねって話しただけだしっ!!」

「えっと、リインちゃん・・・だっけ? 恭文くんと仲良しなんだ」

「仲良しというか、ラブラブです」



だからその表現やめてー! いいじゃん仲良しで止めればっ!!



「とにかく、そういう話ならリインもさざなみ寮へ」

「来なくていいから。部屋が満杯で入れないから」

「あ、いいよ。むしろ私達は歓迎するから」



ちょっと知佳さんっ!? 本気ですかそれっ!!



「大丈夫、その代わり・・・」

「・・・・・・あぁ、なるほど」



言いたい事は、知佳さんの目を見てすぐに分かった。

ようするに、例の大量にある食料を美味しく頂くお手伝いをしてもらおうと。うん、それなら納得だ。



「でも、バイトをこれ以上増やすというのは私の権限ではちょっと判断は無理なので、そこは食事時にお兄ちゃんに各自相談をしてもらえれば」

「よし、リイン頑張るです。アバンチュールに参加です」

「そうね、私も」

「だから、リインもシャマルさんも方向性を間違えてませんっ!?
でも、バイトどうこうはともかく、くーちゃんに久々に会えるのは楽しみだな」



そう言えば、仲良しなんだっけ。・・・あの可愛らしい純朴な子と友達なのにも関わらず、なんで本人こんな魔王なんだろ。



「だから魔王じゃないよー! うー、ゆうひさんに知佳さんもなんとか言ってくださいっ!! 恭文君、いつもこんな風に私を虐めるんですよっ!?」

「でも、なのはちゃんなんだか嬉しそうだよね」

「そうや。なんかほっぺた緩んどるし」

「嬉しくないですからっ!!」










とにかく、話を切り上げて、耕介さんに連絡した上で、僕達はさざなみ寮へと足を向けた。





もちろん、夕飯の仕込みの手伝いをするために、早めに戻る。いや、人数増えるし、僕もバイト中だし。





とりあえず、久遠の前でなのはをいじめるのはやめておこう。なのははともかく、久遠に嫌われるのは嫌だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、夕食時。今日の夕飯は・・・え、また焼肉?





いや、とりあえずお肉たくさんだからなんとかしないといけないんだけど。










「あー、くーちゃん久しぶりだよー。楽しみだよー」



・・・・・・なんか幸せそうだねぇ。久々に久遠に会えるのが楽しみとかで、横馬がなんかふにーってなりながら、ご飯を食べている。

てゆうか、真面目に来てるし。どういうことさ、これは。



「はい、恭文さん。お肉焼けましたよ」

「あ、ありがと」

「はい、私も焼けたわよ」

「・・・・・・えっと、僕自分で焼けますよ? てゆうか、リインもシャマルさんも自分の分焼いていいから」



とりあえず、僕の焼いた分のお肉を二人に渡す。・・・・・・あぁ、なんでこんなに嬉しそうに。てゆうか、居心地が急に悪くなったような気がする。



「あ、知佳さんもどうぞ」

「・・・・・・私の分も?」

「はい。昨日もらったので」

「そっか。ありがと」



僕がそう言うと、嬉しそうに笑ってくれた。あぁ、いいなぁ。なんか癒される。この程よい柔らかさが癒されるー。



「・・・・・・真雪、どうしようか。恭文は幼女にまで手を出してる感じだよ?」

「お前、知佳のどこに不満があんだよ。やっぱあたしになんか恨みあるだろ」

「というか、恭文ロリコン? うぅ、あたしは悲しいよ」



はい、そこ黙ってようねっ!? てゆうか、ロリコンじゃないからっ!!



「しかし・・・シャマルさんとリインちゃんとおっしゃいましたよね。なのはちゃん共々、協力してもらって助かりました。うちの寮生達の知り合いもみんな旅行などで居なかったので、呼ぶ人間がいなかったんですよ」

「いえ。こちらこそ美味しいお肉を頂いて、感謝しています。リインちゃんと二人だけですし、なのはちゃんもご両親や恭也さんが居ないのでどうしようかと思ってて・・・あれ、そう言えば美由希さんは?」

「そう言えば、帰って来てないね。みゆきち、ご飯の時間はちゃんと守る子なのに」



美緒さん、またそんな猫みたいに・・・。あ、でも那美さんと薫さんに久遠も同じくか。今日は帰りが遅くなる・・・って、プラマイ0?



「あー、なのはちゃんにシャマルさんにリインちゃんが来て、美由希ちゃんが居ないから、確かにそうだね」

「じゃあ、横馬が居なかったら久遠が帰ってくるかも知れませんね」

「それどういう意味かなっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・ここだね。ようやく見つけた。





とゆうか、ちょっと時間かかりすぎちゃったね。










「でも、これで積みだ。十六夜、御架月」

≪はい≫

≪準備はオーケーだよ。でも・・・≫



でも?



「なみ、かおる。ここからそういうけはい、かんじない」

≪僕も同じく。姉さまもだよね≫

≪えぇ。というより薫、那美。様子がおかしいです≫



久遠と十六夜さん達にそう言われて、改めてそこを・・・海鳴にある刀剣屋の様子を伺う。確かに、私にはなにも感じない。

そのまま中に入ってみる。確かに様子がおかしかった。だって・・・奥に倒れてる人が居たから。当然のように、私と薫ちゃんがその人に駆け寄る。



「・・・・・・あの、大丈夫ですかっ!?」



その人は年のころから40代前後の男性。というより、見覚えがある。このお店の店長さんだ。

・・・・・・私の声に、その人が瞼を開けた。とりあえず外傷っぽい外傷はないから、大丈夫とは判断した。



「・・・あぁ、確かアンタ達は、神咲の」

「はい、ご無沙汰してます。それで、これはなにがあったとですか?」

「そうだっ! 美由希ちゃん・・・・・・美由希ちゃんはどうしたっ!?」



私と薫ちゃんは顔を見合わせた。なぜここで美由希さんの名前が出てくるのかが分からないから。

だから聞く。胸に出ていた嫌な予感をぐっとこらえつつ。



「美由希ちゃん・・・高町美由希が、どないしたとですか」

「うちの刀を勝手にどこかへ持ってこうとしてたんだよっ! それも、最近入荷したばかりの上物っ!!」

「はぁっ!?」



ちょっとまって。まさか・・・まさか。



「その刀の銘は、なんですか?」

「あぁ、神無月だが・・・それがどうした?」










・・・・・・嘘。





それ、私達が探してた、妖刀・・・・・・!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



食事が終わって、僕は耕介さんの許可を貰って、なのはを高町家まで送っていた。というか、リインとシャマルさんもか。





人数的な問題でさざなみ寮は無理なので、三人は互いの家族が戻ってくるまで高町家に泊まるとか。・・・八神家じゃなくて?










「それも考えたんだけど、高町家の本格キッチンが使ってみたくて」

「・・・・・・納得しました」

「でも、ありがとね。わざわざ送ってもらっちゃって」

「いいよ。なんかあっても困るし」



視線を向けずに、歩きながら横馬にそう言う。



「・・・そっか」



ただ一言、なんだか嬉しそうに言ってきた。・・・・・・なんなんだろ。



「うーん、なのはさんもドキドキなのですね」

「恭文くん・・・本当によくフラグを立てるのね」





なにを話してるのかよく分からない。とにかく、それを考えつつも高町家に到着。そして、なのはが鍵を





「あれ、開いてる」

「え?」





そのまま中に入る。そして、中庭に人影を見つけた。・・・雲がその顔立ちを隠していて、誰か判別出来ない。



そしてそのまま、影が動いた。僕達の方へとすごい速度で踏み込んでくる。



咄嗟に前に出る。出て・・・アルトをセットアップ。そのまま抜き放ち、真一文字に打ち込む。そして、影が打ち下ろした斬撃とぶつかり合い、火花を散らした。



月に隠れていた雲が晴れる。晴れて・・・そこでようやく、影が誰か分かった。





「・・・・・・お、お姉ちゃんっ!?」





そう、それは・・・高町美由希さんだった。右手には、月の光を浴びて綺麗に浮かぶ波紋が特徴的な日本刀。そして、それをそのまま突き立ててきた。僕は当然のように左に飛んで避ける。

避けて・・・そのまま美由希さんはなのはに向かって突撃する。おいおい・・・まじかい。

強化魔法をかけた上でタックルをかます。だけど、足を止めて鋭く刃が僕に向かって打ち込まれた。



それを僕も同じように足を止めて寸前で避ける。避けて・・・避けられなかった。

胸元に痛み。そして、血がほとばしる。斬られてた。いつもの実戦稽古よりも深く、確実に。命を刈り取るための剣が、いつもの美由希さんとは違う剣筋が、僕に打ち込まれていた。

それから、美由希さんの姿が消えた。咄嗟に嫌な予感がして、僕は鞘を抜いて『防いだ』。



次の瞬間、身体が吹き飛んで、地面を転がっていた。体には強烈な痛み。口の中に血の味がする。

そして、吹き飛ばされながらその衝撃が来た方向を見ると、美由希さんの右手の刃の切っ先が、僕に向かって突き出されていた。

い、いきなり突きって・・・ありえないでしょ。これは。とにかく、立ち上がろうと・・・あれ、動けない。



まさか、徹っ!? そうか、斬られた時とあの突きで二連続の内部衝撃・・・くそ、身体が痺れてるしっ!!





「美由希さんっ! 一体どうしちゃったのっ!?」

「ですですっ! こんなの・・・おかしいですよっ!!」





だけど、美由希さんは答えない。だから当然・・・なのは達に向かって突撃する。



やら・・・せるかっ!!





「ブレイク・・・・・・ハウト」





痺れた身体に鞭打つようにして、僕は左手を地面に当てる。当てて、美由希さんの横腹・・・・・・というより、アバラ部分を狙って、中庭の土を硬質化させて作った拳を打ち込む。



美由希さんはちょうどなのは達に斬りかかろうとしていた直前。タイミング的に避けられずに、それをマトモに食らう。食らって吹き飛ばされた。



追撃を





「ダメっ!!」



横馬・・・この状況でなに言ってやがる。



「だって・・・お姉ちゃんなんだよっ!? こんなの、おかしいよっ!!」





悪いけど、それはとてもズレた認識だ。横馬の言葉も、横馬自身も、この状況を何とかする行使力を何一つ持っていない。



だから、横馬は背後を取られる。だから、美由希さんは横馬の首を狙って刃を振るう。





「・・・・・・え?」





横馬が呆けたような顔で美由希さんを見るけど、もう遅い。



僕にも、止められない。シャマルさんやリインにも止められない。だから・・・





「はぁぁぁぁぁぁっ!!」





タイミングよく、それを止める人間が出てきた。その人は塀を飛び越え、そのまま美由希さんに向かって上段から打ち込む。



美由希さんは刃を止め、横に大きく飛んでそれを回避。そして、着地と同時に対峙した。・・・・・・薫さんと。





「薫・・・さん」

「恭文君、大丈夫?」

「やすふみ、なのはっ!!」



那美さんと久遠の声・・・また、いいタイミングで。



「・・・・・・やはり、取り込まれている。十六夜、これは」

≪えぇ、破壊するしかないようですね。刀自体も、既に自我がないものと思われます≫

「破壊衝動の塊と化しているわけか。出来れば穏便に済ませたかったが・・・」



そのまま、薫さんが十六夜さんを持ったまま飛び出した・・・けど、美由希さんはそれを一瞥すると、右のわき腹を左手で押さえつつ大きく飛んで・・・あ、逃げた。

薫さんはそれを追いかけようとするけど、だめ。美由希さんの動きが速過ぎて、完全に見失った。



「那美、恭文君の方は」

「今治療してる。・・・どうかな」



あー、だいぶ楽になってきた。身体がまだギシギシ言ってる感じがするのがアレだけど。

久遠が心配そうな顔で僕を見るので、ニッコリ笑って返す。あ、表情が柔らかくなった。



「二、三日は安静だね。でも、ごめん。また・・・巻き込んじゃったみたい」

「那美さん、美由希さん・・・どうしちゃったんですか? なのはに斬りかかるなんて、ありえないでしょ」

「そ・・・そうですよっ! お姉ちゃん、絶対変だったっ!! あれ、どういうことですかっ!?」

「妖刀に、取り込まれてるんだ」



・・・・・・はい?



「今、彼女が持っていた刀は妖刀・神無月。人を操り、ただひたすらに目の前の生ける存在を斬り続けると言われる物騒な刀たい」

「多分美由希さんは・・・・・・神無月に操られて、こんなことをしたんだと思う」










妖刀? 神無月? で、美由希さんはそれに操られてる?





はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? なんですかそれはっ!!




















(幕間そのじゅうごへ続く)




















あとがき



古鉄≪まじめに中編レベルな話になりそうな予感がしてきた久しぶりのあとがきです。いや、構築が思いのほか大変で、お待たせしてすみませんでした。私、古き鉄・アルトアイゼンです≫

恭文「ども、蒼凪恭文です。・・・・・・さぁ、お前の罪を数えろ」





(どうやら青い古き鉄、某作品が電王張りに当たりな感じで、うれしいらしい)





古鉄≪それはあなたに言ってあげたいんですけど。いくつ罪・・・・・・というか、フラグ立てました?≫

恭文「・・・・・・ごめんなさい。でもでも、普通に知佳さんもゆうひさんもお姉さん的な立ち位置になるって言うし、IFヒロインになるとかじゃないし」

古鉄≪それでも数えてくださいよ。これ、まじめにフェイトさんに見てもらえなかったのは自業自得なレベルになってきてるじゃないですか。ファーストシーズンに看板偽りありですよ≫

恭文「でもさ、二話目見てから雑記でも話す予定なんだけど、W面白かったよねー」





(それで話を逸らすつもりらしい。・・・・・・だけど、いいたいことはわかる)





古鉄≪今回のテーマはハードボイルドで探偵ものですね。二人で一人というのも、探偵ものでお決まりな相棒かららしいですし。
なお、ハードボイルドの語源は『固ゆで卵』で、マーロン・フィリップの探偵小説・・・でしたっけ?≫

恭文「アルト、それ違うから。マーロウ・フィリップ」





(逆っ! フィリップ・マーロウだからっ!! あと、それは登場人物というか主人公で、レイモンド・チャンドラーという人が作者だからっ!!)





恭文「あ、そうなの? ごめんごめん、リアル感出すためにここまでWiki見てなかったから」

古鉄≪でも、主役は半熟卵ハーフボイルドですけどね。拍手であなたに似てるという意見も拍手で来てました≫

恭文「あぁ、来てたね。でもさ、11年目でディケイドやって、改めて平成ライダーシリーズがスタートを切ったわけだけど、楽しみだよねー。この調子で行って欲しいよ」

古鉄≪そうですね。最初からクライマックスでハードボイルドで探偵ものな空気を貫いて欲しいですね。これはいい雰囲気ですし≫

恭文「そうだねー。・・・・・・ということで、次回のWにも期待しつつ」

古鉄≪はい。本日はここまで。お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「蒼凪恭文でした。それでは・・・またっ!!」










(というわけで、二人楽しそうにエンディング。手を振る様子を映しつつ、カメラはフェードアウト。
本日のED:上木彩矢wTAKUYA『W-B-X 〜W Boiled Extreme〜』)




















薫「・・・・・・いやいや、ちょっと待たんかいっ! 話の中身にまったく触れてないじゃないかっ!!」

リスティ「大丈夫だよ、薫。これはいつものことなんだって」

薫「あの子達はどんだけ無軌道な事しとるかっ!!」

リスティ「まぁ、そこはともかく・・・厄介なことになったねぇ」

薫「あぁ。はよ美由希ちゃんば見つけんと、とんでもないことになる。あの子は腕が立つし、手ごわくがあるが・・・」

恭文「とりあえず、そこは次回のWで答えが」

薫「出るわけがなかっ! 頼むから普通に話をしてくれんかっ!?」

恭文「だが断る」

薫「こん子は・・・!!」

那美「薫ちゃん、抑えて抑えて・・・」










(おしまい)





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あきゅろす。
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