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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第28話 『ガーディアン式・強くなる意味と答えのひとつ』



ラン「あとがき形式で前回のあらすじー♪」

ミキ「ブラックダイヤモンド事件も終結して、歌唄の事とか恭文の昔の事とか、りまの事とか、色々事後でやらなきゃいけないこともあるけど、一応は平和な日常に戻ったガーディアンと魔導師組。で、そんな中、留学先から帰国してきたなぎひこ。夏休みが来たら故郷の山口に戻る海里」

スゥ「そんな色々な変化の中で・・・一番大きな変化は、恭文さんとフェイトさんの愛の結晶が生まれたことですぅ」





(なんて話していると、上から降りて来た。その・・・愛の結晶が)





ミキ「いや、愛の結晶とかじゃないし・・・。てゆうか、フェイトさんはたまごは生めないから」

ラン「びっくりだよねー。恭文からたまごが生まれるなんてさ。しかもデザインがスターライト・・・だっけ? それらしいし」

スゥ「でもでも、楽しみですぅ。このたまごからは、どんな子が生まれるんでしょう・・・」





(ほんわかクローバー、なんだかうれしそうにたまごをなでなで)





ミキ「まぁ、そういうのも含めつつ、本編行ってみよー!!」

スゥ「はい〜」

ラン「がんばれー! がんばれー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・そして、愛の結晶(もう恭太郎やらティアナやら咲耶にそう決め付けられた)を持って、学校に行く。なお、ディードとシャーリーは涙しながら今日はお赤飯だと言っていた。止めたけど無駄だった。





とにかく、その日の放課後のロイヤルガーデンで行われたガーディアン会議で、事後の話もしつつ・・・そう、まずは事後の話だ。





最初は、僕の事。僕とリインの・・・始まりについて。










「・・・・・・それがきっかけでね、結局解決までずーっと関わってたの。守れなかった約束、今度こそ絶対に守り抜きたいって思ってさ。
その後、フェイトの母親であるリンディさんに保護責任者という形になってもらって、ハラオウン家で・・・海鳴で、暮らすようになったんだ」

≪あとはまぁ・・・色々ありつつですね≫

「そっか。あの、ごめん。なんか・・・思い出したくない話、させちゃったね」

「いいよ、別に。実際、みんな気になってたみたいだし」





僕がそう言うと、みんなの表情が少しだけ苦くなる。ここはみんなには責任はないと思う。つーか、勢いでカミングアウトした僕が悪い。



・・・あ、なぎひこは転校手続きとかがまだ済んでないから、それのために実際に聖夜小に入るのはちょい後になるとか。ただ、夏休み前には戻ってこれる感じだとか。





「でもさ、それだと恭文悪くないよね。リインちゃん助けるために・・・どうしても、でしょ?」

「そうよ、正当防衛は成り立つわよ。なのに、なんでそんなに気に病むのよ。リインの事だって、ちゃんと守れたのに」

「それでも、殺しは殺しだよ」



リンディさんもそうだけど、フェイトやなのは達にもそうとう言われたこと。だけど、誰がどう言おうと、どうしても納得出来なくて、今でも後悔していること。

全部を、守れなかったこと。『守る、力になる』・・・その約束を、最悪な形で破ったこと。



「相手の命を、時間を、全部奪った。それになにより・・・リインのこと、守れなかった。それが本当に腹立たしくて、辛くてさ」

「恭文さん、リインがそんなことないって言ってもずっと言ってるです。リインに、自分を守るために他人に殺しをさせたという重荷を背負わせたって」

「事実だもの。ただ・・・どうしても忘れたくないことの一つではあるかな。忘れると、下ろすと、きっと壊れて狂う。
それだけじゃなくて、なんだかんだで始まりだしね。忘れたら、リインと繋がった事、アルトとパートナーになった事、それまで消えちゃうから」



それがあるから、戦える。前を向いて、歩いて行ける。僕と言う人間を、自分自身を構成する荷物の一つ。

僕にとってはもう背負うべき十字架じゃない。前に持って行きたい荷物の一つなんだ。



「蒼凪君、どうして・・・そう思うの? 三条君にも同じ事を言っていたけど、それを10歳の子が背負うにはあまりにも大きいよ。
リンディさん達が事件後に言っていたように、忘れることが正解なんじゃないかな。きっと、その権利はあったと思う」

「・・・いえ、キング。既に答えは蒼凪さんから貰っています。実際、あの時の俺と同じ道を行った人間を、見たんですよね?
重さから逃げて、忘れようとして・・・いえ、忘れて、狂った人間を。だからこそ、俺をここに連れ戻した」

「うん」



それから、みんなに話した。1年半・・・あぁ、もうすぐ2年なんだ。なんか、あっと言う間だよなぁ。

2年近く前にミッドの方で起きた大規模テロ事件で対峙した一人の男。



「この事件、フェイトやティアナ・・てゆうか、咲耶と恭太郎以外のみんなが会ってる魔導師組全員も巻き込まれてるんだけどさ、僕とアルトは別行動でこれを起こした賊とやりあう事になってね、その時に・・・そいつと会ったの」

「リインも、よく覚えてます。人を人とも思わぬ思考と行動。悪意で濁りきった瞳。殺すこと、奪うこと、壊すこと、それを本当に楽しんでました。・・・・・・リインが見た中でも、最悪中の最悪の犯罪者です」



ソイツは、本当に・・・どうしようもなかった。どうしようもなくて、救いようも無くて・・・。



「アレを見てさ、再認識したの。僕も、忘れたらこうなるって、理屈じゃなく本能で分かった。忘れて普通の生活に戻るって言う事は、その時感じた重さや苦しさも一緒に忘れちゃう事だから。
まぁ、あれだよ。結局、持って行くしかないってことなんだよ。ううん、持って行きたい。大きかろうがなんだろうが、これは僕にとって大事な荷物。だからこそ、アルトと、リインと一緒にそうするって決めたんだし」

「・・・・・・そう。というか、僕がどうこう言うのも間違ってるよね。ごめん」

「ううん、大丈夫。・・・それで、海里。僕もそうだけど、海里も話があるよね」

「はい。みなさん、メールでも連絡したとは思いますが、俺は1学期を持ってジャックスチェアの任を降りることになりました」



まぁ、いきなり知らせてもビックリさせるということなので、海里は先立って連絡していた。で、そんな前置きをしてから簡単に話す。

親との約束で故郷に帰ることになったことや、後釜のJチェアももう見つけたことなど。



「うー、いいんちょいなくなるのやだー」

「そうよ。私達だってジャックが必要なのに」

「すみません。ただ・・・キングやジョーカーや他の皆さんとは、もう既に確固たる絆が出来ていると確信しています。俺が居なくても、きっと上手くやっていけるでしょう」

「みんな、三条君の転校は・・・その、親御さんとの約束もあるから、あまり無理は言えない。ただ、転校までまだしばらくある。だから・・・それまでは、三条君には頑張ってもらおう?」





みんな、一応その言葉に納得する。あむも・・・大丈夫そう。無理を言っても仕方ないと分かっているようなので、安心した。



・・・あ、そうだ。僕はもう一つの方も話さないといけないんだ。





「実はみんな、もう一つ話があるんだ」

「話? ・・・えっと、なにかな」

「あむ、そんなに身構えなくていいから。まぁ、ちょっとめでたい話なんだ。・・・これ」





僕は、ガーディアンケープの内側に手を伸ばし、そこに備え付けられているしゅごたま専用ポケットから、あるものを取り出す。



そう、それは・・・星の光のたまご。そのままテーブルに置く。



それを見て、全員・・・固まった。





「・・・恭文」

「なに?」

「いや、さっきの相当ヘビーな話から・・・まぁ、アレなんだけどさ。もしかして、たまご持ってないのそうとう気にしてた? てゆうか・・・あの、ごめん。
あたし、ちょっと共用するなとかなんとか言い過ぎてたよね。あの、大丈夫だよ? もうミキでもスゥでもバンバンキャラなりしてもらっても」



あむ、なんでそんな慰めモードで僕を見る。そして、なんでややも唯世も海里も泣きそうなのさ。



「あのね、たまごが無くても、ややもみんなも恭文を仲間で友達だって思ってるよ? その、年齢の問題とかあるかも知れないけど、それでも変わらないよ。
さっきの話聞いても同じ。やや、恭文のこと怖いとかそんなこと考えたりとかしてないし、リインちゃんも同じくだし。だから、こういうのやめようよ」

「そうだよ蒼凪君。今まで色々あったけど、僕達、それを一緒に乗り越えてきたでしょ? だから・・・こんなことする必要なんてない」

「蒼凪さん、蒼凪さんの強さと力はたまごの有無で変わる事はありません。もっと自分を誇ってください。俺は、その強さに救われたのですから」





言ってる意味がわからない。うん、分からない。



でも、数秒考えて、答えが出た。だから、僕は次にこう口にする。





「・・・・・・よし、お前ら全員表へ出ろ。それはあれかな? 僕がたまご偽装したとか思ってんのかな?」

『うん』



即答っ!? 待て待てちょっと待ってっ!!

これマジでしゅごたまなんだってっ! 僕はそんな痛いことした覚えないよっ!?



「みんな、信じられないのは無理ないけど事実よ。クスクスにも見てもらったし。ね、クスクス」

「うん。あのね、ちゃーんとたまごの気配するよ?」

「唯世、僕も信じられないが・・・間違いない。決してスーパーで売ってるようなものを元に偽造したものではない」

「拙者も確かにこのたまごからしゅごキャラの気配を感じる。正真正銘、本物のしゅごたまだ」



だけど、みんなが怪訝そうに・・・ねぇ、そこまで? いや、仕方ないんだけどさ。まじめに仕方ないんだけどさ。



「蒼凪君、だめだよ。リインさんのたまごを取ったりしちゃ」

「だから違うよっ! 朝起きたら普通に布団の中にあったのっ!!」

「あー、はいはい。やや達はちゃんと分かってるから。リインちゃんの布団にあったんだよね」



だぁぁぁぁぁぁっ! コイツらなにもわかってねぇぇぇぇぇぇっ!!



「僕の布団の中にだよっ!!」

「そうですね。リインを差し置いてフェイトさんとお布団で添い寝して、R18なコミュニケーションをして、それから生まれたんですよね。つまり、恭文さんとフェイトさんの愛の結晶なんですよ」

『えぇぇぇぇぇぇっ!!』

「そのネタはもうやめてぇぇぇぇぇぇっ! 朝に恭太郎や咲耶にシャーリー、ティアナとディードに散々言われまくったのっ!!」



でも、なんで僕たまご産んじゃったの? だって大人なのに。まじめに大人なのに。



「でも恭文さん、恭太郎の話だと、大人でもたまごをそのまま持っている人も居るらしいじゃないですか。だから、恭文さんが産めても不思議はないと思います」

「まぁ、リインさんの言う通りだよね。蒼凪君は話を聞く限り、結構特殊な環境で過ごしてたわけだし、その関係でこうなったのかも」

「あと・・・ボクとキャラなりして、自分の目標とか再確認出来たのが大きかったんじゃないかな? そういうのが作用して・・・」



この星の光のたまごと。



「でも、フェイトさんと一緒に寝て起きたらこれって・・・マジで愛の結晶だし」

「その・・・蒼凪さん、年齢的に仕方ないとは思うのですが、やはりこう・・・クイーンも今はご自宅で居候されているわけですし、あまりそういうことは」

「私は別に気にしてないわよ。でも・・・・・・ねぇ」

「りま、言いたい事があるならハッキリ言ってっ!? その軽蔑したような視線はやめてー! てゆうか、恋人同士なら普通のことなんだからっ!!」



とりあえず、視線が冷たいみんなは気にせずに、両手で持っているたまごを見る。

・・・暖かさは変わらず。安心するような、そんな温もりをずっと伝えてくれている。



「・・・とにかく、かえるまで大事にしようっと。壊れたり×がついたら洒落が利かない」

「そうだね。うーん、でも楽しみだなぁ。どんな子が生まれてくるんだろ」

「生まれてきた経緯はともかくとして、そこは楽しみだよね。・・・・・・それで蒼凪君、リインさん、実は僕・・・ううん、僕達からも話があるんだ」


唯世がそう口にすると、全員がかしこまる。あ、僕とリイン以外ね。

で・・・真剣な目で僕達を見て、次にこう言った。



「僕達、強く・・・なりたいんだ」










・・・・・・はい?




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第28話 『ガーディアン式・強くなる意味と答えのひとつ』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・うん、なればいいと思うよ?」

「ですです」

≪まぁ、頑張ってください≫





というわけで、お茶をずずーっと・・・あぁ、日本茶美味しい。唯世のお茶はやっぱり中々だねぇ。



あ、かりんとうもらおうっと。・・・あぁ、これも美味しい。お茶といい感じで合うしさぁ。





「・・・・・・え、いやいやあの・・・ちょっと待って?」

「どうしたの?」

「いや、だから・・・さ。ほら、ブラックダイヤモンド事件でこう・・・色々力不足を痛感したんだ」





ふむ。





「やや達、月詠幾斗に良いようにあしらわれまくったし」

「私達、四人でやっとだった。下手すれば・・・全滅してたって、この間まで話してたの」

「それだけじゃなくて、大本の浄化や歌唄ちゃんや三条君のお姉さんの救出にロストロギアに関してもなんだよ。
その中でも特に戦闘に関しては日奈森さんと三条君、フェイトさんに蒼凪君に頼りっぱなしで、僕達は有効な動き方が出来てなかったと思うんだ」





・・・ふむ。





「いや、あたしもエル達の力借りれなかったら同じようなもんだしさ・・・」

「俺も同じくです。今回起きた色々な事を通じて、まだまだ修行が足りないと痛感しました」





・・・・・・ふむ。





「だから、ここでやや達は修行編に突入して、一気にパワーアップするんだっ!!」

「これからほしな歌唄以上の強敵が出てくるのは確実。いい機会かと思ったの」

「ということで、僕達・・・強く、なりたいんだ」





・・・・・・なるほど、話はわかった。





「うん、それじゃあがんばってね。あ、差し入れくらいはするから」

「ファイトですよー♪」










ということで、僕はがんばっていくみんなを応援していくことにした。





みんな・・・頑張ってね。大丈夫、みんななら出来るから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・というわけで、その日の夕方。





家に帰りついた後の夕食の場で、みんなにその話をした。





いやぁ、子どもはどんどん成長していくから、見ていて楽しいねぇ。・・・やばい、僕ちょっとおじさんみたいだ。










「いやいや、ちょっと待ってっ!?」



・・・あむ、どったの?



「『どったの』じゃないよっ! なんで恭文もリインちゃんも傍観者なのかなっ!? そして文節変えて別のシーンに行こうとしないでよっ!!」

「そーだよっ! ここはやや達に『だったら僕達も協力しようか』とか言うところでしょっ!? どうしてそうなるのー!!」

「えー、だってめんどくさいし」



リインの方を見る。リインも力いっぱい頷いた。



「ちょっと二人ともっ!? さすがにそれを直球で投げられるのは傷つくんだけどっ!!」

「やかましい、さっきの恨みだ。10倍返しにしてあげるから覚悟しとけ」

「です。リインは今日ちょっと不機嫌なのです。どうせたまごを産むなら、リインと添い寝してる時に産んで欲しかったのです。そうしたら、リインと恭文さんの愛の結晶になったです」

「それはやや達の話とは全く関係ないよねっ!? てゆうか、そんなに恭文のこと好きなのかなっ!!」



いや、まぁ・・・海里はいいのよ? うん、海里はいいのよ。話はわかるから。きっとまじめに修行しようとかって思ってるのは目を見てわかったから。



「当然です。一日やそこらでどうこうなるとは思っていません」

「千里の道も一歩からと言うしな。我ら二人、まずは最初の一歩から考えていかねばならぬ」

「うん、いい心がけだ。僕とアルトもたまにそれはやる。やっぱり人間最後は基本だしね」



ただ、問題は他の四人だよ。あれでしょ? もう目を見てわかったよ。

僕に相談して、そこからシャーリー辺りが話を聞いて頑張って、なんか最近拍手でよく送られてくるデバイス的なパワーアップアイテムゲットでお気楽パワーアップとか考えてたでしょ。



「・・・え、なんでわかったの?」

「・・・バレてたわけね」

「ややにりま、アンタ達マジでそんなこと考えてたのっ!? あたしはさすがにそこまで頼むのはだめかなとか思ってたのにっ!!」

「え、えっと・・・だめ?」



唯世、おのれもかいっ! さすがにそこはないかなとか思ってたからちょっとびっくりしたわっ!!



「・・・・・・あのね、いい? みんなは基本的にパワーアップなんてする必要ないの。あんなの全部おもちゃ会社が関連商品売りたいがための策略なんだから。
主役がピンチになって、そこを燃える展開でパワーアップアイテムなり新機体なりを入手して、大活躍して・・・って展開は、全て視聴者の心をつかんでおもちゃを売るための手段なんだから」

「ですです。大体、パワーアップしちゃったらインフレ起こしちゃいますよ? もうこの状況でパワーアップなんて、それの典型的なスパイラルにはまるパターンじゃないですか」





今リインが言ったのは『突然強敵との戦いになんとか勝つor実質的に負けを経験する→力不足を感じる→そんなところに新たな強敵出現→そこでパワーアップ→以下エンドレス』・・・という変化球な流れですよ。

やばいね。天元突破するまで止まらないね。僕達アンチスパイラル倒すまで止まらないね。もしくは神様だよ。勝手な理屈で世界を滅ぼそうとする神様の軍団と戦うまで止まらないよ。

そのうちホーリークラウンで地球が割れちゃったりするとこまで行くって。そしてみんなからこう言われるんだよ。



『しゅごキャラは(うったわれるーものー♪)とか(俺達うったわれるーものー♪)レベルで強さのインフレが激しいから、クロスしにくい作品』だと。





「そんなことしないし出来ないしやる予定も無いからっ! というより、おもちゃ会社の話とかそういうのは今は関係ないでしょっ!? 普通に蒼凪君とリインさんにも協力して欲しいって話なんだからっ!!」

「だめです」

「そうだよ」

『だからどうして二人そろって即答っ!?』





いや、だって・・・さぁ? 修行編なんてあれだよ? 展開的に盛り上がらないって言うのは往々にして決まってるじゃないのさ。なんでそれをこの話でやるの?

これはね、もうDBが連載当初から決まってることなのよ。これ、別にバトルメインの作品でもなんでもないのに、どうしてやらなきゃいけないのかがわからない。

ほら、TV版のStSでも訓練風景なんてちょこちょこっとしかやらなかったし。しかもソレがメインの前半部分はあんまり人気なかったって聞いたことあるし。




だから、21世紀になっても修行編なんて最初のさわり程度だけ描かれて、後はサブキャラクターの苦戦する戦闘ばかりが映されるわけですよ。具体的に言うと、『・・・もう少し、もう少し・・・○○が来るまでは』・・・みたいな展開。まさにアレがソレですよ。





≪ぶっちゃけた話、あなた達強くなる必要ないじゃないですか。自分が何の作品の登場人物か忘れたんですか? 現代版魔法少女物じゃないですか。魔法少女物に一般レベルを超えた戦闘スキルなんていらないんですよ≫

「ですです。リイン達は熱血魔法バトルアクション物の登場人物だから、戦闘スキルとか必要ですけど、ガーディアンのみんなにはいらないです。例えるなら、猫に小判で恭文さんにリインとフェイトさん以外の女の子です」

≪その通りです。大体、三人体制だって『リア充もげろ』と言われまくってるのに、これ以上増えてどうするんですか。あれですか、もう腹上死とか狙ってます?≫



狙ってないよっ! むしろ避けて行きたいくらいだしっ!! そしていきなり何の話してるっ!? てーか趣旨変わってるでしょうがっ!!



≪そうでしたね。とにかく・・・必死に攻撃を避けて、適当な一撃で相手に隙が出来て、そこを狙ってあむさんなり唯世さんなりが浄化技というのが、魔法少女物の戦闘の流れなんです。セーラームーンとかだってそうなんですよ?
魔法少女物の味方内にヘタな戦闘スキルなどいりません。有ったとしても、空手の有段者とかそういう本当に一般レベルスキルまでですよ。味方でガチに強くていいのなんてタキシード仮面の立ち位置くらいですよ≫



なお、プリキュアは僕とアルトとリインの中では変身ヒーロー物として位置づけられているので、除外します。



「またすごいことを平然と・・・。いや、だから・・・あたし達全員それだと対応し切れなくなってるから、強くなりたいって思ってるんだけど」

「・・・本気?」

「本気だよ」





うーん、それなら仕方ないよね。





≪仕方ないですよね≫

「ですです」

「え、じゃあ・・・」










僕とリインは、笑顔で頷いた。それで全員の表情が綻ぶ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・そして、それから3ヶ月の時間が流れた。





季節はもう秋。結局夏休みとかは修行で潰しちゃったけど、それだけの甲斐はあった。





そう、皆は・・・・・・本当に強くなったのだ。










「・・・・・・いやぁ、大変だったよね。修行編」

「ですです。でも、雪山での修行は楽しかったですねー。最後は温泉入ったりしましたし」

≪私達も色々な意味で原点に戻れましたし、とても有意義でしたね≫










でも、みんなよく頑張ったなぁ。





うし、今日はお祝いになんかご馳走してあげよう。










「あの、蒼凪さんっ!? ここから一歩たりとも動いていないと思うのは俺の気のせいでしょうかっ!!」

「三条君の言う通りだよっ! しかも3ヶ月ってなにっ!? 普通にまだ1分も経ってないよっ!!」





・・・お、海里も唯世もいいツッコミだ。参考資料と同じ感じなのがうれしいよ。





「・・・恭文、なんで銀魂なんて持ってきてるのよ。てゆうか参考資料って・・・まさか、今までの会話全部それから?」

「りま、よくわかったね。いやぁ、修行の成果が出てきてるようでうれしいよ」





やっぱり3ヶ月だけでも頑張ると違うんだね。うん、よかったよかった。





「だから3ヶ月ってなにっ!? そして成果なんて出てきてないわよっ! というより、修行なんて私達まったくしてないわよっ!!」

「そうだよっ! リインちゃんまでどうしちゃったのっ!? てゆうか、雪山で温泉に入れるならやや行きたいー!!」

「ややっ! ツッコむべきところはそこじゃないわよっ!! ボケにボケで返したら収拾つかなくなっちゃうでしょっ!?」



うーん、みんなわかってない。まったくわかってない。あれだよね、本当に二次元の登場人物なのかって疑っちゃうよ。



≪いいですか? 例え今この瞬間、1分とか2分とかしか経っていなかったとしても、実際にはあなた方は3ヶ月・・・いえ、1年に渡って修行したことになっているんです≫

「ですです。もうどこかの魔導師よりもみんなずっと強くなってるんですよ? 地球だって割れちゃいます」

「だからもう納得しなさいっ! てゆうか、そんなに修行したいならしゅごキャラの子じゃなくて、BLEACHとかの子になって『卍解っ!!』とかやってなさいっ!!
本当にもう・・・アンタ達は一体なんなのっ!? そもそもそういうことは僕達じゃなくて、PEACH-PIT(ピーチ・ピット)先生かアニメ製作担当に頼めばいいじゃないのよっ! そんな事言うなら今日の夕飯は抜きよっ!!」

「納得出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! なんでいきなりお母さん口調で別作品への移住を勧めてるっ!? てゆうか、リインちゃんしっかりしてー!!
リインちゃんまで恭文とアルトアイゼンのボケに入ってたら、意味ないじゃんっ! いったい誰がツッコむのっ!?」



そうあむに聞かれたので、僕達は顔を見合わせてあむに指差した。

そして、この笑顔でガッツポーズだよ。うん、決まった。



「決まるかっ! それ以前に、あたし一人でこの量ツッコミ切れるかぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「頑張れあむ、僕は応援してる」

「応援なんてしなくていいからボケをやめてよっ! てゆうか、なんで協力してくれないわけっ!?」

「みんなが言うほど強くなるなんて簡単じゃないから」



そう声のトーンを落として、マジモードで返したら、全員が固まった。・・・その様子に、ため息を吐く。で、そろそろ遊ぶのはやめにして、ちゃんと答えることにした。



「あのね、強くなるなんて言うけど、簡単じゃないのよ? なにより、そんなパワーアップアイテム渡して終わりなんてお手軽な方法で強くなったって、意味ないでしょ。
そうしてそれがあってもだめな状況になったら、また別のアイテムが必要になるよ? そうしたらマジで堂々巡りのインフレパターンでしょうが。そんなのじゃ、本当に強くなったことにはならないよ」

「た、確かに・・・そこを言われると辛いかも」

「大体・・・あれだよ? 修行なんて言って、具体的なプランはあるわけ? どーせ魔導師式で手っ取り早い修行とかあって、それをちょちょーいとやれば強くなれるとか考えてたんじゃないの?」

「え、なんで分かったのっ!?」



・・・・・・やや、そこは否定して欲しかった。ほら、唯世達まで頭抱えてるし。



「そうよ。ちょちょーいとやって強くなれれば、誰も苦労はしないわよ」



後ろから声がした。・・・あ、ティアナだ。どったの?



「いや、今日の買い物当番アンタとリインさんに私でしょ? それで迎えに来たら、ちょっと声が聞こえてね。・・・で、修行したいとかなんとかって話になってるのよね」

「うん。でもさ、みんなだめなんだよ。海里以外はデバイスをシャーリー辺りが作ってお手軽にパワーアップ出来るとか思ってたの。
だから、それがやりたいならBLEACHの子になって『卍解っ!!』ってやりなさいってアドバイスしたのに、不満そうなの」

「・・・・・・確かにそうね。アンタもいっそ銀魂とかの子になったら? 絶対リリカルなのはのキャラの思考じゃないでしょ、それ」



いやだなぁ、本当にそれやったら寂しくて泣いちゃうくせに。ツンデレだから表情に出さないだけだってわかってるよ?



「誰がツンデレよっ! 誰がっ!!」

≪「ティアナ(さん)」≫

「ティアです」

「リインさんまで乗らないでくださいっ! ツインテールはもうやめたし、私は全然ツンデレじゃないじゃないですかっ!!」



いや、ツンデレでしょ。ツンデレオブツンデレで・・・ごめんなさい。お願いですから眉間にクロスミラージュを突きつけないでください。怖いんです。



「・・・・・・とにかく、全員揃って考え甘過ぎ。強くなるって、本当にそんな簡単じゃないんだから。だからコイツやリイン曹長だって協力的じゃないのよ。
短期間でガチに強くなろうと思ったら、学校をしばらく休むことくらいはしないと無理。そんな放課後とか休みの日にちょこちょこやって何とかなるほど、甘くないわよ」

「え、えっと・・・学校休むって、マジですか?」

「マジよ。朝から晩まで訓練漬け。早朝訓練から始まり、昼は模擬戦で隊長達にぶっ飛ばされる。夜はその負けた原因をシミュレーションで理解して、積めていく・・・・・・。
そんな生活を1年送って、ようやく強くなれるわけよ。ちゃんとやるという前提を守った上でかけた時間と成果は、比例していくわけなの。時間もかけずにパワーアップなんて絶対無理」

「・・・・・・あの、ランスターさん。それは誰の話でしょうか」

「もちろん私よ」



そうだーそうだー。それが出来るんなら僕だってもう地球くらい割れてるぞー? アイシクルキャノンで大気圏突き破って、攻撃した相手を太陽にぶつけるとか出来てるぞー?



「まぁ、ちょこちょこという感じでやって強くなる方法もある」

「あ、そういうのもあるんだ。それならややはそっちー」



全員が僕の言葉に表情を柔らかくする。そういう方法もあるのかということで、希望を見出したのだろう。

だから、遠慮なくその希望を砕くのである。



「朝から晩まで食事休憩以外はガチに斬り合い、ときたま砲撃魔法の雨嵐を防御せずに『斬るか回避するかでなんとかしろ』と言われてマジでそうすることになったり。
そして、演習場をまた壊して、みんなで貸してくれた人に謝る。そんな生活を2年ほど送って、ようやく強くなれるわけですよ。死にそうな思いもせずに強くなるなんて、無理だね」

「・・・・・・恭文、それは誰の話?」

「もちろん僕のだよ。4年くらい前からさっき話した大規模テロ事件が起きるまで、ヒロさんサリさんとそんなことをしてた」

「ようするに、現実的に言えばパワーアップアイテム貰ってとか、そうじゃなくても短期間で見違えるくらいに強くなるなんて、無理ってことよ。
なにより、私とコイツのした話は、全部それなりの下地があったからこそ成り立つ話。でも、アンタ達はまずその下地そのものがないじゃないのよ」



ティアナが投げたキツイボールで全員がうなだれる。言ってる事はまったく間違いじゃないから、反論出来ないらしい。



「そして、真面目な話をするなら、アンタ達はパワーアップなんてする必要はない」



またズバっと切り込んだティアナに、全員が目を丸くする。まさか、魔導師組の常識担当であるティアナにそこまで言われるとは思ってなかったらしい。



「ランスターさん、あの、でもそれだとこの間みたいな事が起きた時に対処が」

「話は最後まで聞きなさい。・・・・・・いい? 今のアンタ達に必要な『強くなる』は、パワーアップじゃない。バージョンアップよ」

「バージョン・・・アップ?」

「アンタやリインさんも同じ結論・・・よね?」





僕とリインは、その言葉に頷いた。そう、今ティアナが言った通りなのだ。



僕とリインもそうだし、実はフェイトやティアナにシャーリーも、今までのみんなの動き方を見ていて、思ったことがある。それは、キャラなり時の能力の高さだ。

身体能力や反応だけで言うなら、キャラなりした時のみんなはそこらへんの魔導師よりも動けるレベルなのだ。

攻撃能力や防御能力だって同じく。もしも今の状態で、特にパワーアップしなくても、普通に戦闘のコツを覚えたなら、多分それだけでみんなは相当強くなると僕は思う。



例えば海里のアシュラブレードやサムライソウル。近接攻撃能力はかなり高い。だって、僕の動きにもついてこれたし、ジガンやプロテクションでのガードも突き破ったんだから。



あ、海里だけじゃなくて、他のみんなも同じくだね。





「例えばあむのアミュレットハート。運動能力だけで言うなら、一般的な武装局員が魔法での強化込みでもついていけるかどうかわかんない」

「・・・え、あれってそこまで?」

「そこまでよ。言っておくけど、普通に高度数十メートルまで一気に跳躍出来て、空中に留まりつつ、あれだけ軽快に動ける陸戦魔導師はそうそう居ないわよ? なお、私も最近覚え始めた飛行魔法を使わないと無理」





まぁ、さすがにソニックムーブとかには負けるだろうけど、普通に動く分にはそれくらいのレベルはいってると思う。



ただ単に、あむがアミュレットハート以外の形態でもそうだけど、直接的な攻撃能力を持った技(例:サムライソウルのイナズマブレードや月詠幾斗のキャラなりのスラッシュクロウ)が皆無なだけで、動き自体には本当に問題はないのよ。





「例えば唯世のホーリークラウン。防御能力だけなら、相当だよ。もしかしたら僕やフェイトの本気の攻撃だって防げるかも知れない」

「いや、さすがにそれは・・・」

「リインも同意見です。唯世さんの防御能力の高さは定評を通り越して異常なのです。文字通り盾役になれるです」





唯世に関して言えば、先日の歌唄のブラックダイヤ時に使ってきたブーストされたグリッターパーティクル。僕とフェイトがカートリッジを使った上で、二人がかりでやっと防御出来たそれを、唯世は一人で防いだ。



この事から考えても、唯世は防御能力に関しては抜きん出たものがあると見ていい。フェイトも驚いてたくらいだし。





「例えばりまのクラウンドロップ。えっと、ジャグリングパーティーにタイトロープダンサーよね? それみたいに多弾生成・発射してコントロールして当てる技があるってことは・・・ようするに、中距離での空間制圧能力は高いの。
はっきり言って、ここはコイツに勝ってると思う。というより、コイツは多弾生成そのものが出来ないから、そこだけを比べたら勝負にならない」

「なので、りまさんは魔導師のポジションで言えば、ティアと同じ感じですね。中距離からの援護攻撃で力を発揮するタイプです。
射撃戦とか、その立ち位置や色んな状況での立ち回り方を練習すれば、かなり出来るようになるはずですよ?」

「私が・・・ティアナさんみたいに。と言うより、恭文に勝ってる」





縄やジャグリングのピンへの遠隔コントロール能力はかなり大きい。複数出せるのも同じ。その上動き方も多様に変化させていける。



ピンをぶつけるだけじゃなくて、以前幽霊騒ぎでやったような防御も出来るし、タイトロープダンサーを用いた捕縛という手段が取れるのも、クラウンドロップの中衛としての能力の高さを表していると僕は思う。





「例えばややちゃんのディアベイビー。×たまを眠らせる・・・ようするに、直接戦闘能力は皆無でも、そういう支援行動ならきっと能力は高いですよ」

「え、ややも?」

「はいです。フルバックと言って、直接戦闘はダメでも、そういうややちゃんみたいな支援行動を専門とするポジションはありますから、充分それで通せます」

「そういう後衛職は、居るとチーム戦では本当に重宝するのよ。それゆえに、かなり重要なポジションね」





あと、あのアヒル。あれ・・・考えようによってはあれは完全な自立行動を可能とするファンネルだよ? それも殴ったり盾になったり出来るわけ。そう考えたらむちゃくちゃいいじゃん。



赤ちゃんキャラな外見に騙されると痛い目を見るのは、間違いないでしょ。





≪いいですか? 今マスターやリインさんとティアナさんが話したように、あなた方は現状でも一般レベルの戦闘魔導師にも負けないだけの能力があるんです。
ただ、戦闘経験に乏しいがために、自分の能力の使い方がプロの目から見ると、非常になってないだけなんですよ。あなた方に足りないのは力ではなく、経験です≫

「てゆうか、アンタ達・・・自分達の力の大きさと有効性に対してマジで自覚無さ過ぎ。それで弱いとか言ってたら、努力してる人間から大ブーイングよ」

「そこは僕も同感。まぁ、キャラなりという特殊なものだから、魔導師の考え方をそのまま照らし合わせるのは間違ってるとは思うけど、それでもだね」



逆に使い方がなっているのが、月詠幾斗だ。だからこそ、僕ともやり合えるし、みんなも一人で押さえ込む事が出来る。そして、もう一人が海里。剣術を勉強しているという所から、自分の力の使い方とか体さばきの基本が出来てる。

・・・しかし、猫男はこれからどうするつもりなのかね。妹はこっちだし、一人っきりも同じだし。まぁ、ここはいいか。



≪今のあなた達は言うなら・・・まぁ、某漫画で有った言い回しですが、剣を投擲して攻撃しようとしたり、弓で相手を叩いて攻撃しようとするのと同じレベルです。まずは剣なら剣、弓なら弓の正しい使い方を覚える所からですよ≫

「その通りです。アイテムもらってパワーアップどうこうは、みんなが自分の現段階の能力をちゃんと使いこなせてからの話です。今するお話じゃないですよ」

「確かに、反論出来ないね。そう言われると、単純に能力が上がるだけじゃだめなのは確かだから。いや、こうなってくると、そもそも僕達は自分達の今の能力をちゃんと使えているかどうかも怪しくなってくる。なら・・・」

「僕達の立場から、その使い方を教えて欲しい?」





唯世が頷いた。まぁ、この話だとそうなるよね。うん、分かってた。なので・・・ここはちょっといじめることにした。





「ただ、キャラなりって別に戦闘形態ってわけじゃないでしょ? なりたい自分、未来への可能性が形になったもの・・・だよね?」



とりあえず、見ている人が居る。それは・・・アダルトチルドレン候補。



「恭文、ややに何か不満があるなら聞くよ? でもでも、それでもちゃんとしておきたいんだ。やや達、このままだと本当に恭文の足手まといになりそうで・・・ちょっと嫌だ」

「例の人形・・・×ロットだっけ? それが出てきた時に蒼凪君やリインさん任せになるのもだめだと思うし、本当に最低限のことだけでも、知っておきたいんだ。この間のアレで、本当に・・・力不足を感じちゃったから」





まぁ、その言葉に納得はした。うーん、それなら普通に教えてもいいのかな。元々そのつもりだったんだし。



だけど、せっかくの平和な時間なんだし、みんなには成長のために苦しんでもらう事にする。



やる理由? 僕が楽しみたいからですが、何か問題でも?(断言)





「分かった。ただし・・・僕が今から出す問題の答えが出せたら・・・だね」

「問題?」

「そうだよ。まぁ、僕も以前出されたことがある問題なんだけど・・・」



思い出すのは、フェイトとなのはの恩師で、先生とも懇意だというファーン先生の事。初めて会った時に戦って、負けて、その話をされたことがあるのだ。

まぁ、僕が答えを即答で出してたのには苦笑してたけど。・・・うぅ、やっぱまだまだ鍛えが足りないなぁ。分かってて負けるのはダメだって。



「『自分より強い相手に勝つためには、相手より強くなくてはいけない』。・・・この言葉の矛盾とその意味、考えてみて?
で、答えが分かったら教えて。正解だったら、僕だけじゃなくて、魔導師組は全員協力するよ」



ティアナが苦笑いする。そして視線で言ってる。『性格悪いわね』と。

僕はそれに、お手上げのポーズで返す。まぁ、これくらいは・・・ねぇ。何事も対価は必要なのよ。



「・・・え、あの・・・えっと、どういうことっ!? ややわかんないよー!!」

「蒼凪さん、これは・・・」

「当然、僕とリイン、ティアナからはノーヒントだよ。で、わかんなかったらこのまま何も教えない。
あ、フェイトや魔導師組のみんなにも言っておくから、答えを聞いても無駄だよ? んじゃ、シンキングターイム」

「スタートです♪」










・・・こうして、ガーディアンのみんなの苦悩の時間は始まった。





まぁ、これも修行のひとつということで、納得してもらえるとうれしいね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・で、恭文とリインちゃんにティアナさんはそのまま帰っちゃった。うー、てゆうかわけわかんないし。





なんなの、この問題? 自分より強い相手に勝つためには、相手より強く・・・って、マジでわかんないよー。










「・・・うーん」

「・・・・・・だめ、私降参」

「自分より強い相手・・・蒼凪さんに勝つためには、俺が蒼凪さんより強くなくてはいけない・・・うーん」



いいんちょ、なんかすっごい悩んでるね。てゆうかいいんちょ、やっぱ勝ちたいんだ。

でも、うーん・・・自分より相手が強いわけでしょ? でも、こっちは相手より強くなくちゃいけない。てゆうか、矛盾だよね。



「あ、ややわかったっ!!」

「ほんとっ!?」

「うんっ! こっちが相手より強くなればいいんだよっ!! そうすればおーけーっ!!」



・・・・・・却下。



「えー、どうしてー!?」

「結木さん、それだと相手にしているのは『自分より弱い相手』になるからだよ。相手が自分より強い・・・ようするに、今の僕達が蒼凪君と戦うような状況なのは確定だから」



唯世くんの言うように、そこは絶対的な前提。それを変えて答えを出しても、意味が無いことになる。

つまり、それを崩さないようにした上で、この矛盾を解決する回答を導き出す必要がある・・・・・・って、ことだよね。



「あ、そっか。うーん、じゃあパワーアップとかで相手より強くなるのはだめ・・・だけど、相手より強くなくちゃいけない・・・だめ、やや・・・限界」



あ、ややがりまと同じく頭から煙を出して沈んだ。てゆうか、だめだ。あたしもなんかスチームが出かけてるし。

だけど、これがわかんないとだめなんだよね? この言葉の矛盾とその意味・・・か。



「えっと、がんばれー! がんばれー!!」

「ね、ムサシ。ムサシはこういうの分からないの?」

「・・・すまん、クスクス。拙者も皆目検討がつかぬ」

「強い・・・だけど、強く・・・うーん」



しゅごキャラのみんなも、隅の方で頭を抱えている。まぁ、一緒に考えてくれているのはうれしいかな。

てゆうか、恭文意地悪だよ。もうちょっと素直に教えてくれてもいいのに。



「・・・いえ、蒼凪さんが意味もなくこんな謎かけをするとは思えません」

「いいんちょ?」

「そうだね。きっと、この問いかけの答えが、僕達が強くなる・・・ランスターさんの言うようなバージョンアップするために必要な答えなんだよ。だから、急にこんな話をし出したんだと思う」





な、なぜだろう。普通にこうやって考えてる姿を見たいがために問題を出したと思ってしまったあたしは、もしかしてちょっとダメな子なのかな。



いや、だって・・・アイツドSだし、意地悪だし。





「とは言え・・・あぁ、答えが分からないよ」

「唯世、ここはやはり知恵を借りるべきではないか? フェイトさん達に聞いてみた方がいいと思う」



・・・・・・え、でもキセキ。恭文言ってたよね? みんなには話しておくから、答えは教えないって。

それに、ノーヒントだって。



「・・・・・・あ、そういうことね」

「りまたん、わかったの?」

「答えじゃなくて、キセキの言った意味がよ。つまり、みんなは答えは教えないけど、ヒントはくれるってことよ。少なくとも、恭文とリイン、ティアナさん以外は」



そう言えば、自分達はノーヒントで、みんなも答えは教えないって・・・え、そういうことなのっ!?



「そういうことだと僕は思う。とりあえず、これならばルール違反ではあるまい。ダメならば警告が入るだろうしな。・・・・・・唯世」

「うん。聞いてみようか」










というわけで、まずは・・・フェイトさんに連絡。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・うん、ヤスフミからさっき連絡が来たから知ってるよ。でも、それは難問だね。私も結構考えて、ようやく・・・だったから』



電話の声はいつもの穏やかなフェイトさん。だけど、あたしはひとつ引っかかった。

フェイトさんも・・・考えた?



『この問いかけは、私となのはがみんなと同じくらいの頃に管理局の訓練校に入ってた時にね、そこの先生から出されたものなんだ。ヤスフミも知ってる人だから、きっとどこかで聞いたんだね。
あ、私とヤスフミだけじゃないね。ティアもそうだし、あとみんなの会った事のあるスバルも1年くらい前に同じ事をなのはから問題として出されたんだよ。そして、難しかったみたいだけど、ちゃんと答えを出した』

「そうだったんですか・・・」



でも、フェイトさんやティアナさんが悩んでたってことは、私達には下手をすると分からない可能性も・・・。



『そんなことないよ。ヤスフミとティア、なんだかんだ言いながら、みんなにちゃんとヒントは残してるし』



ヒント? でも、それらしいことは・・・。うーん、言ってた?



「やや達、覚えが無いんですけど」

「私も同じく」

『それはヒントだもの。簡単に気づいたら意味がないよ。うーん、これなら私がヒントを出す必要は無いかも知れないね』



そ、それは困ります。お願いです、ヒントを・・・。



『なら・・・そうだな。私がこの問題を出された時ね、なのはとコンビでその先生を相手に模擬戦をして、ボロ負けした時なの』



どうやら、これがフェイトさんのヒントらしいので、私達はちゃんと聞く事にした。



『その先生は私やなのはよりも・・・まぁ、自分を持ち上げるような言い方で嫌ではあるんだけど、魔力資質的には下の方になるんだ。魔導師ランクも、同じように下になる。それだけを見れば、先生は私達に勝てるはずがないの。
だって、資質も、ランクさえも下なんだから。ただ、それでも私やなのはは負けたの。それで、問題はその先生に模擬戦終了後に言われたんだ。そんな自分に、二人がかりでも勝てなかったその意味を考えれば、答えが見つかる・・・と』

「それで、ハラオウンさんは見つかったわけですよね。その・・・答えが」

『うん。・・・・・・うーん、ごめんね。あんまり確定的な事を言ってもだめだから、私が出せるヒントはここまでかな』



・・・え、この昔話だけっ!? さすがにそれだけって難しいと思うんですけどっ!!



『でも、答えを教えてもヤスフミから怒られるし、あなた達のためにもならないから。
・・・ただね、十分過ぎるくらいにヒントはあると思うし、みんなでもう少しだけ考えてみれば、すぐにわかると思うな』

「・・・分かりました。それなら、もう少しみんなと相談してみます」

『うん、頑張ってね』





というわけで、フェイトさんにみんなで重々にお礼を言って・・・電話を終えた。



で、どうしようか。あたしは本当にさっぱりなんだけど。





「うーん、フェイトさんや高町さんは、二人がかりで言い方は悪いけど、自分より弱い人に負けたということだよね。ただし、資質的というか、先天的な能力的に」

「例えるなら、私達が恭文やティアナさん、フェイトさんに勝つのと同じよね」



あ、それはさっきも言ってたことだ。・・・あれ? ということは、問題のシチュとその時の話は一緒ってことか。

でも、それは当然なのかも。だって、どうも元々はそこでどうしてフェイトさんとなのはさんに自分達が負けたのかを考えさせるための物だったみたいだし。



「でもでも、普通ならフェイトさんもなのはさんも負けるはずがないんだよね。能力や魔導師ランクって言うのは、相手より上なんだから」

「ならば、それ以外の要因が絡んだから・・・ということではないでしょうか」





あ、それなら納得出来るかも。で、恭文とティアナさんが話してた事にヒントがある・・・だよね。



うーん・・・。恭文とティアナさんはなに話してた? 最初は修行めんどくさいとかパワーアップなんてインフレの始まりだとか、BLEACHの子になりなさいとか言ってたよね。





「それで、普通に僕達のキャラなりの時の能力の高さを話してくれて」

「月詠幾斗やジャック以外・・・つまり私達は、それの使い方がちゃんと出来ていないということを話して」

「リインちゃんも一緒に、やや達はやろうと思えばこう言う事が出来るんじゃないかーって教えてくれて・・・」

「あと、クイーンの時には蒼凪さんよりも中距離での空間制圧能力は上なんだからとも言っていました」





まぁ、総合するとこんな感じだよね。



えっと、そうすると・・・うーん。





「・・・あのさ、ボクちょっと思ったんだけど」

「ミキ、どうしたの?」

「その人って、どうやってなのはさんやフェイトさんに勝ったのかな。
というより、なのはさんやフェイトさんはどうやって戦って、その人に倒されちゃったのかな」





ミキの言葉に、あたし達は顔を見合わせる。どうやって戦って・・・負けて、倒されて。





「そう言えば、そうですよねぇ。例えば例えば、あむちゃん達みんなで恭文さんに向かって行っても・・・」

「間違いなく返り討ちに遭うな。恭文は今の唯世達より小さい頃から色んな相手と戦ってきた歴戦の勇士だ。多少の事ではビクともしないだろう」

「でもでも、恭文にも苦手なものはあるんだよね。りまみたいにこう・・・弾をいっぱい作ったりとかは出来ないって言ってたし」

「クスクス、その通りだ。ならば、そこがまず我々の有利な点になる。むぅ、これは盲点だった」





まてよ、自分にどういう事が出来て、それがちゃんと使えて。



それでそれで、相手より強くなければいけなくて、だけど、相手は自分より強くて・・・。





「あ」

「日奈森さん?」





そっか。あたし達全員、考え方を間違えてたんだ。





「あたし、答え分かったかも知れない」

『えぇぇぇぇぇぇっ!?』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして翌日の放課後。ガーディアン会議で・・・恭文とリインちゃんがあたし達を不審な目で見ている。





まぁ、ここは当然か。だって、あたし達全員、鬼の首を取ったような顔をして、二人を見ながら笑ってるんだから。










「ふふふ、恭文。あたし達答え出したよ」

「ほう。また速いね。で・・・その答えは?」

「うん。・・・問いかけの内容は、『自分より強い相手に勝つためには、相手より強くなくてはいけない。・・・この言葉の矛盾とその意味を考える』ということでよかったよね」

「そうだよ」





心臓が高鳴る。合ってはいると思う。でも、不安はある。



それでも、頑張ってみる。前に進むために、必要だから。





「答えは、自分より『総合力』・・・ようするに、全体的に能力が強い相手に勝つためには、相手より秀でて強い部分を持ってなくちゃいけない・・・ということじゃないかな?」

「・・・・・・そう思う理由は?」





あの後、もう一度フェイトさんに聞いてみた。負けた時の戦い方の内容とか、なのはさんとフェイトさんの戦い方とか。





「それだけじゃなくてね、例えば・・・恭文と戦うとしたら、どんな風に戦うかって聞いてみたんだ」

「・・・フェイトのおしゃべり」

「そうしたら、欲しかった答えをくれたよ」





フェイトさんが出してくれた答えは、まず攻撃の確実な回避と防御。恭文は鉄輝一閃やクレイモア、砲撃魔法にバインドと、実はかなり手札が多い。その上、レンジ・・・だっけ? 戦闘中の射程距離もそこそこある。

しかも、それらの大半が高火力。だから、来る攻撃を確実に防ぐ、もしくは避けるところをしっかりとする。そして、比較的火力が薄くなる中距離から攻撃して、それで仕留める。フェイトさんはその辺りでも高火力な術がたくさんあるのが、その理由。

・・・というのが、セオリー通りにはなるけど、戦法としてオーソドックスなものだって言ってた。





ただ、フェイトさんは動きが恭文よりも速いそうだから、それを生かしてのヒット&アウェイ・・・って言ってたっけ、それをやっての高機動戦闘も絡める・・・だっけ?

あ、この辺りはいいんちょとムサシ、唯世くんにキセキがあたしやりま、ややにも分かりやすいように説明してくれて、なんとか分かった。いや、まだうろ覚えもいい所なんだけど。

それで、そこからまた皆で一緒にあれこれ考えて・・・結論が出た。





「それでね、僕達、ちょっとシミュレーションを立ててみたんだ。もし、僕達五人と蒼凪君が戦うことになったとして、どうやって勝つのかという仮定を。そうしたら、この言葉が矛盾なんかしていないということがよく分かったよ。
相手と同じ土俵で戦っても、能力に差があるなら簡単に負ける。ならどうすればいいか。今、日奈森さんが言ったように、相手より有利な部分で勝負するしかない」





つまり、これが強くないといけないという部分。最初、あたし達は強いという言葉をただ平面的・・・言葉の響きだけで捉えていた。

でも、そこから間違えてた。それじゃあ答えが出るはずがない。

求められていたのはもっと立体的な思考。



自分と相手とを比べて、どこがどう強いのかという具体的な思考が必要だったんだから。





「例えば、りまたんみたいにたくさんのピンで同時に攻撃ーとか、ややみたいにアヒルちゃんをたくさん出したりーとかは、恭文には出来ないもん。まず、ここがりまたんとややの有利な点。つまり、恭文より強い部分」

「だけど、それだけじゃ足りない。だって、決定打にならないもの。だからこそ、他の皆の力が必要になる」

「蒼凪さんの攻撃関係はキングの防御力で防ぎ、ジョーカーが機動力を生かしてかく乱して、俺が矛となり、あなたを仕留める。
それぞれがそれぞれの能力を生かして、特化部分を寄せ合って一つのチームとなれば、相手が誰であろうと簡単には負けませんし、それはより万全のものになります」

「それだけじゃなくて、そうすれば相手より高い総合力が発揮できるかも知れない・・・で、よかったっけ?」



唯世くんといいんちょを見る。で、頷いてくれた。・・・あー、よかった。あたし、自分で言ってて頭こんがらがってたし。

うー、やっぱりよくわからないよ。てゆうか、話しててこれで合ってるのかどうか無茶苦茶疑問だし。



「・・・恭文さん」

「まぁ、しゃあないか。てーか、ヒント多過ぎたかな」

≪そこですよ。本当にノーヒントで行けばいいのに≫



そ、それはやめて欲しかったんですけど。それだと、さすがに分からなかったし。

でも、その様子だと正解で・・・オーケー?



「うん。それでいいよ。・・・たださ、本当にいいの?」

「え?」

「あむ達だけじゃなくて、しゅごキャラのみんなもだよ。キャラなりは、戦う事が目的の形態じゃないでしょ? なりたい自分・・・・・・未来の可能性が形になったものだもの。
戦闘訓練なんてするのは、その趣旨に反するんじゃないかなと。しゅごキャラのみんなに、影響とかでないのかな。正直、僕はそれで出ても責任が取れない」



・・・・・・その言葉に、私達は顔を見合わせる。そして、頷き合って、恭文を見る。

てゆうか、そこを心配してくれていたから、あの態度だったのかなと・・・ちょっと思った。



「その話はね、ペペちゃんもそうだし、みんなにもしたんだ。そうしたら、みんなやや達と同じ気持ちだった」

「そうでち。昨日もややちゃんが言ってたでちけど、このまま恭文やアルトアイゼンやリインちゃんに頼りっぱなしは嫌でち」

「魔導師組レベルとは行かなくても、僕達も強くなっていく必要がある。少なくとも、お前達の背中を預る事が出来るようになるくらいにはな」

「あくまでも、ちゃんと使えていない力の使い方を覚える・・・という程度にはなると思うんだけど、ちょっと頑張ってみたいんだ。
理由は、今キセキが言った通り。僕達はガーディアンの仲間だから、蒼凪君達と一緒に戦えるようになりたい」



そう、それがあたし達の気持ち。信じてもらうために、信じるために、そのために強くなりたいと思った。



「てゆうか、この間爪で引っかかれて悔しかったし。リターンマッチはしておきたいの」

「りまがやる気だし、私は大丈夫ー」

「我が身は未だ未熟の身、ここが精進の機会と思えばこそのお願いです。俺は問題ありません」

「拙者もだ。蒼凪殿との再戦の日までに、より強い形にならなくてはいけないからな」



確かに、戦うための訓練って・・・その、出来ればやりたくない。やっぱりそういうのって怖いし。

だけど、それだけじゃだめなんじゃないかって、ちょっと思ったから。



「恭文、私達は大丈夫だよ。心配ないない」

「そうそう。ボク達もあむちゃん達も、×がついたたまご達を助けていきたいって気持ちは変わらないんだから」

「スゥだってがんばるですよ。だから、大丈夫ですぅ」

「まぁ、みんなこう言ってるし、あたしも・・・恭文と同じなんだ。×があるなら、全部取りたい。助けられるなら、全部助けたい。
もう・・・浄化すら不可能とか、そういうのは嫌なんだ。だから、お願い。力を、貸して欲しい」



みんなで頭を下げ



「あー、下げなくていいから。・・・じゃあ、試しに一日やってみようか。それだけでも違うだろうし」

「え?」



あ、あの・・・それじゃあ、いいの?



「あくまでも、みんながまだ使いきれてない力を使えるようにする・・・という趣旨ならね。この状態でガチに強くなるための訓練をやっても、みんなが身体を壊すだけだと思うし」

「・・・・・・あの、ありがと」

「いーよ。元々そのつもりだったし。ただし、厳しくはいくからね?」

「うんっ!!」










・・・・・・でも、楽しみだな。





これで一気にパワーアップ・・・とかはしなくても、もしかしたら少しは分かるかも。





あたしにとっての強くなるという言葉の意味が、もしかしたらほんの少しくらいは。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・というわけで、休日ー♪ 裏山に結界を張って、そこで訓練しまーすっ! みんな頑張れー!!」

「でも、魔導師の訓練って・・・どんなことするんだろ」

「みんなそれぞれに始めて居ますし、覗いてみましょうね〜」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・よっと。





ひょいっと。





こ、これくらいの速度なら・・・なんとか。










「・・・よし、そこまで」





声がかかったので、あたしは動きを止める。・・・てゆうか、やっぱ怖いよー。



うぅ、でもまだまだ初級レベルなんだよね。さっきのフェイトさんの模範は凄かったし。



とりあえず、さっきまで空中に浮きながら白い弾丸をあたしに向かって撃っていた丸い玉はそのまま停止したみたいなので、あたしはややとフェイトさんの所に戻る。・・・あの、どうでした?





「あむもややも初めてにしてはまぁまぁかな。うん、あむもちょっと危なっかしかったけど、ちゃんと出来てた」

「えへへ、ありがとうございますー。でもでもフェイトさん、なんでやや達はキャラなりしないで攻撃を避ける訓練なんですか?」

「あ、それはあたしも思いました。唯世くん達は普通にキャラなりしてたのに」

「私とキャラなりして、アミュレットハートになればもっと出来るのにー」





そう、あたしとややはキャラなり無しで攻撃を避ける訓練。現在、二人揃って体操着です。



まぁ、ちょっと速めにと飛んできた白い弾を避けるだけなんだけど。





「うん、この間みんなの動き方を見ててね、あむとややにはまずこれかなって思ったんだ。
例えば、唯世君はホーリークラウンという防御技がある。でも、二人はそうじゃないよね」

「うーん、確かに・・・唯世のあれみたいに硬いのはちょっと」

「あたしもあそこまでは・・・」

「だから、二人にはキャラなりの能力に頼らない上で、攻撃の回避の基本を覚えて欲しいんだ。
そして、それをキャラなりした時に生かしていく。だから、ランちゃん達にペペちゃんにもちゃんと見ててってお願いしたの」



攻撃の回避の基本・・・・・・。え、避けるのに基本なんてあるの?



「フェイト先生ー。基本ってなんでしょうかー」



ややに先生と言われて、ちょっとくすぐったそうに黒の半そでシャツと、紺のパーカーパンツを履いたフェイトさんが笑う。だけど、すぐに元の穏やかで真剣な顔になる。



「・・・それは、一つところに留まらない。動き回って相手に狙わせないこと。例えば、射撃ゲームでもそうでしょ?
止まってる的に当てるより、動いてる的に当てる方がずっと難しい。それが速ければ速いほど、動き方が複雑であればあるほど、当てる方からするとより難易度は上がる」



動き回って・・・あ、そう言えば恭文やイクトも同じようなことしてた。そっか、だから攻撃にあんまり当たったりしないんだ。

つまり、相手が狙いにくい状態に自分を置く事が、攻撃の回避の基本。



「あと、絶対に攻撃されたのにビックリしたからって目を閉じない」

「え、それはどうし・・・あ、目を閉じちゃったら見えないですよね」

「てゆうかフェイトさん、それって全部基本でちよね」

「そうだよ。基本で、だけどすごく大事なこと。さっき私がやったのも、そういう本当に基本的な回避アクションや、回避のための原則を守った上で、動きを早回しにしただけなんだ。やってることは、ややとあむがやったこととほとんど変わらない」



思い出すのは、あたし達がやったのよりずっと速い弾丸を、しっかり見据えた上でひょいひょいと避けていたフェイトさんの姿。

確かに、あれはすごかった。アレにハートロッドとか当てろと言われたら、絶対無理だと思う。



「特にあむは浄化役だから、×たまの攻撃を受けることも多いみたいだし」



・・・・・・そう言えばそうかも。そう言うとき・・・あぁ、だめだ。パニック起こしかけたりとかしてる。



「あと、アミュレットハートだと動きが本当によくなるよね。そういう時に雑な動き方をしてると、こけたりとかしてそこに集中攻撃・・・ということもあるから、安全で確実な回避アクション、ここでしっかり勉強していこうか」

「「・・・・・・はいっ!!」」










恭文やフェイトさん達の方針としては、攻撃に対しての対処の改善というのがテーマ。あたし達の対処は、本当に見てるとヒヤヒヤする感じらしい。

だから、攻撃を防御したり回避したり・・・みんなそういう練習が主。あ、いいんちょ以外か。いいんちょはなんかディードさんと恭太郎と一緒にバシバシやってるとか。

そう言えば、恭文がそういうのをやっておくと生存率が上がるって言ってたし、そのせいかな。でも、マジで覚えよう。フェイトさんの話聞いてたら、いかに今まであたし達が危なっかしい事してたかよくわかったよ。





だって、目を瞑ったことも結構あるし、パニくって変な避け方してこけたこともあるし。うぅ、頑張ろう。パワーアップアイテムの前にまずここだって。










「でも、ややちょっとすごいね」

「ほぇ?」

「だって、身体柔らかいし、動き方もちゃんとしてるし。私、見ててビックリしたの。というより、その辺りでは教える事が無いかも」

「あ、ややバレエ教室通ってるので、多分・・・そのせいかな。飛んだり跳ねたりとかもしますし」





あー、そうだった。ガーディアンのお仕事もやりつつ頑張ってる。うーん、また見に行こうかなぁ。





「あ、そうなんだ。なら、目の前だけじゃなくて視界以外の事にも気を配れているのも、そのせいだろうね。バレエって、他の人とも踊るわけだし」

「そうなんですか? やや、自分ではあんまり分からないんですけど」

「そうなんだよ」





・・・・・・そうらしい。そう言えばややはお世辞にも上手とは言えないんだけど、何度も通ってるバレエ教室の発表会で舞台を踏んだりもしてるし、代役でもプリマやったりもしてるし・・・あれ、もしかして何気にあたしより運動とか得意なキャラ?





「でも、ややがバレエか・・・」

「興味あるなら、今度見に来てください。もううちのレッスンは見学だけでも楽しいですしー」

「なら、そうさせてもらおうかな」










・・・・・・なぜだろう、急に体験レッスンさせられて、トゥシューズ履いてレッスン着を着て、涙目になりながらあの濃い先生に叱咤されながら踊っているフェイトさんの図が浮かんでしまった。





よし、気のせいにしておこう。てゆうか、あそこは子どものためのバレエ教室だし、それはないよね。うんうん。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・うむぅ、筋がいいわ。てゆうか、まさか自分が教える側になるとは思わなかった。





とにかく・・・それ。










「ジャグリングっ! パーティーっ!!」





私が放ったオレンジ色の弾丸は、見事にジャグリングのピンに撃墜された。でも、そのまま構わずに連続で放つ。



だけど、それも同じように発射された弾丸に撃墜される。誘導して、弾道も変えてるけど、あの子はそれに荒い息をつきつつしっかりと対処していく。





「・・・・・・うん、いい感じよ。コツはつかめた?」

「だいぶ。とりあえず、意味は分かってきた・・・かも」

【りま、ガンバレー!!】



そのまま、弾丸とピンをぶつけ合いながら、話を進める。

なお、緩めよ? さすがに私が普段されてるみたいにはしないわよ。



「この間も言ったけど、タイプ的にはアンタのクラウンドロップの出来る事と私のガンナーとしての戦闘の役割は似てるわ。
多弾生成・発射による中・長距離の制覇。てゆうかりま、アンタは相手に近づかれるとだめでしょ? 運動関係ダメっぽいし」

「かなり・・・」



でしょうね。最初は動いて避けたりとかしてたけど、動きが遅かったもの。あむや唯世辺りと比べたらきっと一目瞭然よ。



「アンタは体力の問題もあるから、動いて回避は本当に最低限にしなさい。その代わり・・・」

「相手からの攻撃やそのための移動は、ジャグリングパーティーやタイトロープダンサーで撃ち落として止める」

「アンタ達の場合は、たまごが相手だから壊さないように配慮する必要はあるけど、そっちの方がいいと思う。で、そのために必要な行動は・・・もう、分かるわよね」



後ろから1発回り込ませて、りまの後頭部を狙ってみる。まぁ、危なかったら止める気持ちで。

だけど、あの子はそれを撃ち落した。ピンを一本、背後に忍ばせていたらしい。それが射出され、弾丸とぶつかり合い爆発した。



「足を止めて、その分視野を広く持つ。そうして迎撃に徹する。それで・・・確実に速く当てていく」

「そうよ。求められる能力は攻撃速度と命中精度。まぁ、世の中には動き回りながら攻撃していくガンナーも居るから、あくまでも基本形の一つではあるし、状況によりけりではあるけど」

「でも、私には合ってる」

「正解」










そのまま、攻撃・・・ううん、訓練を続けていく。ただ、実はちょっと感謝してる。





なんか、基本に立ち返れたから。うん、試験前のいい勉強になってるのかも。これ、私の訓練でもあるわ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・アルトを抜き放ち、刃を打ち込む。





それは、金色の障壁。それを展開しているのはプラチナロワイヤル・・・唯世。





刃と障壁がぶつかり、せめぎ合う。唯世が苦悶の表情を浮かべるので・・・。





そのまま、アルトを振り切って、障壁をぶった斬った。そして、唯世はそのままたたら踏んで後ろにこける。










「・・・・・・いてて」

【唯世、大丈夫か? ・・・恭文、これはどういう訓練なのだ。さっきから唯世に向かって斬りつけてばかりではないか】

「それが訓練内容なんだよ。これ、防御訓練って言って・・・ほら、前に話したじゃない」

【そう言えば・・・あったな。だが、これが訓練なのか?】



訓練なのよ。・・・とりあえず、アルトを一旦引いてから、僕は言葉を続ける。

風景は森の中。僕と唯世は、マンツーマンでこれである。



「いい、唯世にキセキ。前にも話したけど、ホーリークラウンはとても防御力が高い。これは、それを用いての防御の練習なの」

≪しかし、ただ防げばいいと言うものではありません。唯世さん、攻撃を防ぐ時、ただロッドをかざすだけではなく、身体全体を使ってますよね。脚を、腕を使い、踏ん張るようにしている≫

「うん。・・・・・・あ、そうか。そういう身体の使い方も覚えていくんだね」

「そうだよ。こればかりは実際に攻撃を食らわないと分からないから、こうするの。なお、実際にこの訓練はあるんだ。僕もやったことがある」



あはは、師匠の打撃はこれよりキツイもん。もうちょっと頑張ってもらいたいくらいだねぇ。

うん、その辺りはかなり考えながらやってる。怪我するのもバカらしいしね。



「何回かやってみて、確信がもてた。やっぱりホーリークラウン自体の強度はかなりのものだよ」



斬れたのもこれが初めてだしなぁ。普通にプロテクション・・・ううん、下手するとその上位系くらいの防御力は出てるかも知れない。

一瞬、魔王の防御魔法の幻覚が見えたのは気のせいじゃない。手ごたえが似てたもの。



「それに応用力もある」

≪あぁ、それは大きいですね≫

【応用力?】





そう、ホーリークラウンは単純に防御だけのものじゃない。もっと言えば、エネルギーの行使術の総称。

例えば、唯世はあまり有効に使えてないけど、攻撃に転用したりもしてる。

あぁ、あと金色のエネルギー状の巨大な王冠型のクッションを出して、ヘリを受け止めたりもしてたか。あれは見てて関心したよ。



ホーリークラウンは使用者の唯世の性格故なのか、攻撃よりも防御や補助・・・誰かを守る事の方が効果が高い感じがする。





「応用力があるというのは、こういう使い方も出来るはずなんだ。見てて」



僕は右手をかざして、その手の平に魔法を発動する。

それは・・・これ。



≪Wheel Protection≫



右手に生まれるのは、渦を巻いた青い障壁。それに唯世が目を見開く。



「蒼凪君、それは?」

「ホイールプロテクションって言う上位の防御魔法。ほら、障壁自体が回転してるでしょ? それで防御効果を高めてるの。
例えばそうだな、さっきみたいに誰かしらが殴りかかってきても、障壁の回転で攻撃の軌道を逸らされて・・・ということが出来る」

【なるほど、ただ盾を形成するのではなく、そういう物理的な動きも含めることも有効な手の一つというわけだな】

「それが応用力なんだね。そう言えば、防御する時はただ防ぐ事だけ考えてて、こういうのはなかったかも。身体をどういう風に使うとかも、あんまり」





まぁ、今回はそういう所から考えていくのが目的ってことだね。



とりあえずプロテクションは消して・・・と。





「とにかく、今のところ唯世は浄化技以外はホーリークラウン一本だし、これでどうやったら確実に相手からの攻撃を防げるか・・・とか、そのための身体使いを実地で覚えるの。唯世がチーム戦で目指すべき役割は、文字通り盾役。
あむもりまもややも、本人達に確認したけどここまで防御効果が高くて応用力のある技は持ってない。海里はもうすぐ山口に帰っちゃうし、なぎひこに至っては今のところキャラなりどころかキャラチェンジも無理。これは、唯世がやらなきゃいけない仕事だよ」

≪そして、唯世さん。あなたが盾となる時、その背中には必ず守りたいものがあるはずです。その存在の前に立ち、敵の攻撃を受けると言うのは、それを背負うことに繋がります。
例えば自分自身。例えばあむさん達。例えば・・・たまご。にも関わらず、盾となったあなたが砕かれれば、それも同じように砕かれます。これは、中々に重い仕事ですよ≫

「・・・うん」

「ちなみに」



そのまま、アルトの切っ先を唯世に向ける。それに唯世が少し身をすくませる。



「防御が破られて尻餅はお話にならない。やろうと思えば追撃も出来るしね。ま、その辺りの対策も一緒に考えていこうか」

「・・・うん、頑張るよ」

【だが、出来るのか?】

「やるのよ。ただ、一気にパワーアップなんてのは無理だってのは、承知しておいて? 僕やフェイト達がみんなに教えられるのは、本当に最低限な心構えと改善点だけ」



僕だって、戦闘用の思考や体さばきが今の形に落ち着くまで本当に時間がかかった。

唯世達はしゅごキャラの力を借りてるとは言え、一気には無理だよ。



「分かってる。キセキ」

【あぁ、やろう。これも王の務めだ】










立ち上がろうとしていたので、僕は刃を引き、そのまままた鞘に収めた。




として、かがむ。・・・抜きの姿勢。これでもういっちょいく。










「行くよ、唯世」

「うん。大丈夫、今度は・・・防ぎ切る」

【例え、先ほどよりも強くともだ。さぁ、こい】










シャーリーや咲耶にリインがお昼作ってくれてるし、それまではきっちり頑張らないと。




・・・・・・さぁ、いくよ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、1時間後。もうお昼の時間なので、僕と唯世は訓練を切り上げて、みんなと合流することにした。





てゆうか、大丈夫?










「うん、大丈夫。でも・・・これはまたキツイね」

「そうだな。僕も少し来てる」

「ホントならお昼食べたら夜までまたミッチリ・・・なんだけど、みんなはキャラなり以外は普通の子どもだし、そこは無しだね」



これで身体を壊されても困るのだ。責任取れないし。まぁ、歩きつつ唯世の様子を見ているけど、とりあえず大丈夫と判断した。

ただ・・・意外にも成果はあった。唯世のホーリークラウンの強度が、手ごたえから僅かにでも上がったのが分かったから。



「とりあえず、あのホイールプロテクション・・・だっけ? 出来るようにちょっと練習してみるよ」

「してもいいけど、そのまま実戦での使用は許可しないよ? また僕が強度確かめて、それからだよ」

「うん、お願い。・・・・・・でも、すごいね」



なにが?



「僕、魔法って言うから、やってることはともかく訓練に関しては、そこまで体育会系な感じは想像してなかったんだ。でも、全然違った」

「それは僕もだな。だが唯世、それだけではあるまい。魔法がプログラム式である以上、それにも精通していなければならないし・・・うむぅ、見習うべき点は多々あるな」

「そんなことないよ。それを言えば、僕達だって唯世達を見習うべき点は多い。お互い様だって」



唯世とキセキが疑問顔だけど、ここはいい。・・・・・・大人として、色々あるということなのですよ。

そっか、僕・・・一応年齢的には大人なんだよね。なんか、不思議だ。中身は全然大人になり切れてないと思ってるけど。



「とりあえず、一度マッサージ・・・というか、ストレッチだね。僕も手伝うから、しっかりしておこうか。じゃないと、明日動けなくなっちゃうよ」

「そうだね。それは困るかも。明日はともかく、明後日は球技大会だし」





・・・・・・はい? え、球技大会ってなに。





≪あなた、忘れたんですか? 明後日は学校行事で球技大会でしょ≫

「・・・・・・そう言えばそうだった。
え、それなのにみんな運動して大丈夫なのっ!?」

「軽めという話だったし、なにより筋肉痛が来ても翌日だろうから、問題ないかなと。でも、やっぱり甘かったかも」

「・・・・・・ストレッチ、かなりしっかりやっておこうか。影響が出ないようにさ」

「お願いします」










・・・・・・でも、球技大会か。





うーん、楽しみだな。学校の中でのイベントとかってあんまり経験ないし。










「唯世、球技大会とかって、楽しい?」

「そうだね・・・楽しいよ。みんなで頑張るのは、やっぱり楽しい」

「そっか、それは楽しみだ」




















(第29話へ続く)





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あきゅろす。
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