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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第24話 『青き修羅対黒き阿修羅』:1



・・・・・・夜の街を歩き、あむを家まで送りながら、やらなきゃいけないことを頭の中で順序立てる。





とりあえず、明日中にフェイトと二人でりまの両親に挨拶に行くでしょ? で、デビューライブとかそういうのがないかどうか情報を集める。





で、集まってなにかやるようだったら踏み込んで・・・。踏み込んで?





まて、これはちょっとまずくないですか?










「なんで? だって、歌唄やいいんちょがそこに居るなら行かなきゃいけないじゃん」

「・・・あむ、自分の立場忘れた? 小学生だよ? 普通に一般人なんだよ? それでインディーズとは言えライブ乗り込んで大暴れなんてしてみなよ。親と学校を巻き込んだ大騒ぎに発展するに決まってるでしょうが」

「た、確かに・・・そこを言われると辛いかも」



そう考えると・・・ここは魔導師組だけで乗り込んだ方がいいかも。僕達は最悪本局に逃げられるわけだし。

あー、さっきあむにイースターの行動予測について話さなきゃよかったな。そうしたら楽だったのに。



「・・・またそうやって自分だけでなんとかしようとする。あたし達仲間でしょ? だったら、今回も信じてよ」

「悪いけど今回はそういうわけにはいかない。これであむ達の将来のことまで責任は取れない」

「大丈夫だよ、もしこれで学校の受験とか就職とかに響くようなら、時空管理局にお世話になるし」



歩きながら、それはいいアイディアだと思った。確かに時空管理局なら・・・待て。どうしてそんな話になる。



「リンディさんが遊びに来た時に誘われたんだ。管理局は優秀な人材を沢山募集しているって。
あたし達くらいの年齢から働いている子も居るし、ちゃんとやれば魔法能力無しでも生活出来るからーって」

「あの人は・・・!!」



クロノさんからなのはと会った時もすごい勢いで勧誘してきて大変だったとは聞いてたけど、ここでそれをやるか? ありえないでしょうが。



「ごめん、あむ。リンディさんのアレはちょっとした病気・・・というか、世話焼きみたいなもんでさ。あんまり気にしないで?」



提督の立場に立つ人間として、優秀な人材のスカウトには余念が無いとか。でも、正直あってもいいと思うのは気のせいかな。



「あぁ、大丈夫だよ。さすがに皆断ってたから。もちろん、あたしも含めて。まだ管理局がどういう仕事なのかもよくわかんないし。
なによりあたし達・・・というより、あたし、将来のこととかさっぱりだもん。それで返事は出来ないよ」

「まだ小学生だもん。しゃあないよ」

「確かにね。ただ・・・さ」



・・・なに?



「いやね、ダイヤのたまごに×がついちゃってからずーっと考えてるんだ。あと、恭文が唯世くんに言った『どうなっていきたくて、そうなった後に何をしたいのか』・・・って話を聞いてからさらになんだけど、あたし・・・それがよくわかんないの」

「・・・そっか」

「うん。なんかさ、ここ最近のアレコレで色々痛感しちゃって。あたし、足りないものだらけのダメな子だなって。例えば歌唄だよ」



少しだけ、憧れと羨ましさの篭った光を瞳に宿しながら、あむが話す。

街頭の明かりに照らされているせいか、右隣を歩く瞳が、いつもより輝いているように見えた。



「たまご関連は抜きにして、トップアイドルで、きっと見えないところですごく頑張ってると思うの。
だから、あんなにキラキラ輝いててさ。・・・だから、ダイヤは歌唄の方に行っちゃったのかなって、ちょっと考えた」

「ダイヤだけに、輝きを追い求めて・・・と?」

「そうそう。・・・って、誰が上手い事言えと言ったっ!?」



まぁ、それはおいといて・・・。



「おいとくなー!!」

「僕も・・・そうだな、輝きとかそういうの、わかんないな」

「恭文も?」

「うん。・・・僕は古臭い鉄だもの。輝きなんてのとは無縁だから」



まぁ、それでいいと思っている。僕は輝きたいわけでもなんでもないし。



「そんなことないと思うけどな」

「へ?」

「あたし、恭文って・・・まぁ、この間はちょっとキツイこと言っちゃったけどさ、すごいなぁって思ってるんだから。
自分の強くなる理由、そうしてどうしたいのかって目標、ちゃんと見つけてるんだもん。一応、認めてるんだよ?」



そう・・・かなぁ。まぁ、一応でもちゃんと指針はあるけど。フェイトの今と笑顔を守る。ここですよ。

大好きな人が笑ってないのも悲しそうなのも、やっぱり辛いしさ。



「でも、僕だってあむと同じだよ? 迷って悩んで・・・を何度もやってる。僕だって、足りないものだらけのダメな子だったんだから」



主に資質的に。まぁ、精神的にもだけど。



「・・・ほんとに?」

「ホントホント。まぁ、僕の周りもやりあう相手も、誰も彼も優秀過ぎる人間ばかりだってのが余計にそれを際立たせてたけど。
それで負けたり、もやもやしたり、で・・・結局戦いの中で自分なりの答えとか見つけていったりして、今に繋がってる」



フェイトもなのは達もそうだし、恭也さん達もすごいからなぁ。そりゃあ色々考えてたさ。



「そっか、恭文もなんだ。ならあたしは・・・どうしようかな」

「んな今すぐに答えを見つけようとしなくても・・・。時間は無限じゃないけど、じっくりあるんだし。ほら、前に空海だって言ってたじゃない? 分からないってことは、どんな自分にもなれるってことだってさ」

「あー、そう言えばそうだね。でもさ、話を聞くとフェイトさんやなのはさんもそうだし、恭文だってあたし達と同い年くらいの頃には自分の方向性決めてたって言うし、やっぱ考えるよ。あたし、もしかしてちょっとダメなのかなーってさ」

「決めてすぐに仕事出来る環境は、多分管理局だけだろうけどね。そんな就労年齢低いのは他にないって」



管理局は普通に9歳くらいの子をスカウトするしなぁ。あの組織、今更だけどおかしいって。うーん、だからなのはだったりフェイトだったりが色々とアンバランスなのかなぁ。仕事は出来るけど、プライベートはアレ・・・って部分もあるし。

あむ達見てて、子どものうちは沢山遊んで沢山同い年くらいの子達の中に混ざった方がいいのかもって思うようになったし。そういうの、大事だからなぁ。



「そう言えば・・・恭文はさ、どうして魔導師にやろうと思ったの?」

「僕?」



いやいや、前に話したじゃないのさ。事件に巻き込まれて・・・って。



「でも、巻き込まれただけだったら、そのままフェードアウトって言う手も使えたよね」

「・・・まぁね。実際、初めて会った頃のフェイトはそれだった。戦った事とか忘れて、普通の生活に戻ろうって言ってきて、何度喧嘩したことか」

「あはは・・・そりゃ大変そうだ。フェイトさん、なんか強情そうだし」



あむはどうやら人を見る目があるらしい。ただ、一つ間違っている部分がある。

フェイトは『強情そう』なのではない。『強情』なのだ(断言)。



「まず一つ。実の親から自立したかった。管理局はあむも知っての通り就労年齢低めだからさ、僕の能力なら嘱託扱いでもなんとか可能だったんだ」

「・・・そっか」

「それで二つ目。その事件の中でね、沢山・・・守りたいものが出来たんだ。それを守るために戦う力、欲しくてさ。だから、魔導師として経験を積んで、強くなろうって思ったんだ」



フェイトやリイン達もそうだし、皆から貰った時間も、アルトやリインと繋がった時の記憶も、全部今の僕を構成するものだから。

そういうの守りたくて。あと、忘れて何も無かった事にして、平穏無事な生活になんて戻りたくなかった。そんなことしたら、おかしくなりそうだったから。



「でもさ、戦う・・・強くなるって、本当にどういうことなんだろ。唯世くんに言ってたことは、あくまでも答えの一つなわけじゃない」

「そうだね。本当に答えの一つ。あれが全部ではないから」

「歌唄も同じ事、言ってたよね。強くなるために優しさという甘えを捨てた・・・って。イクトを救いたいって。それも、ちょっと嫌だけど答えの一つ。うーん、やっぱりよくわかんないなぁ・・・」



家へと歩を進めながら、あむが夜空を見上げる。本当に少しだけ・・・星が見える空を。

それを見ながら話を続ける。というより、思い出している。あのバカのことを。



「それは結局本人にしか分かんない。歌唄然り、僕然り、唯世然り、そしてあむ然り・・・てね。答えなんて、極論を言えば自分を動かすためのものなんだし。
世界中の人間が納得出来なくても、自分が納得出来ればそれでいいのよ。ただ・・・」

「ただ?」

「歌唄の答えも、月詠幾斗を救いたいって願いも、悪いけどこれで否定させて・・・いいや、ぶち壊させてもらう」



右の拳を強く握る。握って・・・力を更に込める。



「僕にも僕の答えと道理があってね、それが言ってんのよ。このまま放置なんてするな・・・ってさ。そんな事をすれば、一体これから先どんなことになるか分かったもんじゃない」

「・・・そうだね。もしかしたらあのCDが普通にお店に並んで、それを買った人達のたまごが取られちゃうかも知れないしね。絶対に、止めないと」

「だね。・・・というわけであむ」

「恭文やフェイトさん達だけに任せる・・・なんて、出来ないよ? 大体、また×たまや強化ボディが出てきたらどうするの? 恭文か、恭文とユニゾン出来るリインちゃんと咲耶さんしか相手出来ないじゃん」



そ、そこを言われると辛い。結局フェイト達の魔法では浄化は無理なのは変わってないしなぁ。

確かに、×たまが出てくるとなると、あむなり唯世達なりの力を借りる必要がある。



「てゆうか、内緒にしててもあたし達は着いてくから。大体、歌唄やいいんちょの事で色々考えてるのは、恭文達だけじゃないんだしさ」

「・・・止めても無駄と」

「そういうこと。・・・大丈夫、アンタの邪魔はしないから。あたしは剣なんて使った事ないからよくわかんないけど、その・・・信じるから」



・・・何を?


「だから、アレだよアレ。剣を使って肉体言語で話すってやつ。・・・恭文はさ、弱くて、だめで、足りないものだらけのあたしの事、何度も信じてくれた。
まぁ、そのお返しってわけじゃないけど・・・あたしも信じる。アンタの強さ、信じるから」

「そっか。ありがと、あむ」

「いいよ、お礼なんて。その代わり、失敗したら許さないからね?」

「・・・そうだね、絶対に取り戻さなきゃ」










絶対に止める。こんな事、僕の目の前でやられちゃ迷惑なんだよ。





歌唄、歌唄の願いがどれだけ大事かは知らないけど・・・覚悟しておいて。





僕のわがままで、僕の勝手で、全部ぶち壊すから。










「・・・あ、そうだ」

「なに?」

「いや、今思いついたんだけどさ・・・あむ、将来のこととか色々考えてるんだったら、まず見てみない? 中に入るかどうかとかそういうのは抜きで、管理局の仕事とかそういうの」

「へ?」



まぁ、一種の社会科見学というかそういう感じ?

ちょうどいい感じで所用もあるしね。



「いや、実はさ・・・まだ本決まりじゃないんだけど、丁度夏休みに入った直後くらいに、僕もフェイトも一旦ミッドに戻るのよ」

「ミッドって・・・恭文やフェイトさんの家があるとこだよね。
・・・え、帰っちゃうのっ!? あの、そうしたらガーディアンとかは」

「あー、別にここから居なくなるとかじゃないんだ。あくまでも一時的な帰郷。実は、僕が戦技披露会への出場を要請されていてさ」

「・・・戦技披露会? なにそれ」



歩きながら、あむに簡単に説明する。局の強い魔導師を集めて、模擬戦形式で持っている戦闘技能を観客に披露するというイベントがあると。



「去年から僕みたいな嘱託扱いの人間も出れるようになったんだけどね。戦技披露会は局の中でも選りすぐりの強い魔導師も沢山出るし、出られるだけで公式的に『アンタは強い』って認められるのと同じだから、局の魔導師なら誰でも出たいってイベントなのよ」

「恭文、それに出るの?」

「うん」

「それってすごいじゃんっ!!」





・・・まぁ、すごいんだけどさ。色々準備は大変なのよ。そういうコンセプトだから隠し手の大半は封印だしさ。だって、見られたくないし。あれとかこれとか。

特に大変なのが、出場した後の各部隊からの勧誘。もう異常に来るのだ。公共の場で能力が証明されてるのと同じだから。

こっちが嘱託扱いでフェイトの補佐官やるって言ってるのに、そんなことを言わずに局員やろう、うちの部隊で出世しよう、高給取りになろうってしつこいしつこい。



嘱託の人間を戦技披露会に出すの、そういう風に一種のスカウトのための場を作るためだって、もっと早く気づくべきだったよ。





「で、多分野次馬的に僕の知り合いの局員の人達も来るだろうし・・・あぁ、この間の模擬戦みたいなノリね?」

「・・・うん、なんか納得した。あたし、すごい納得したよ」

「その時に、色々聞いてみれば? 丁度いい感じで色んな役職にバラけてるから、参考にはなると思うし、許可を取れば局の施設の見学も出来るし」

「えっと・・・それってつまり、あたしも行っていいってこと?」



まぁ、端的に言えばそうなるので、僕はあむの言葉に頷いた。やっぱりこういう場合は僕も経験があるけど、実際に色んなものを見たり、話を聞いたりするのが非常に参考になる。

自分一人で考えてると、煮詰まりそうになるしね。あと、まぁ・・・ねぇ。



「なにかな」

「嫌な思い、させたし。あの・・・ごめん」



それだけ、本当にそれだけを言った。するとあむは・・・優しい声で、言葉をかけてくれた。



「・・・もう、大丈夫だよ? その・・・恭文が別にそれで楽しんでたとかじゃないってのも分かったし、必要な事だと思ったのも分かったし。ただ・・・なんて言うかさ。
まぁ、状況が状況だったから仕方なかったとは思うよ? 思うんだけど、話してくれなかったのが、ちょっと寂しかったんだ。だから・・・その、あたしもマジでごめん」

「うん・・・」



そのまま、少し無言で歩く。まぁ、なんて言うか・・・互いに照れくさいと言うか、この後の会話をどう続けていいか分からなくなって。

とにかく、戦技披露会の話に戻すことにする。その方がいいような気がしてきた。・・・あー、でも親御さんの許可が必要か。



「でも・・・あたし、行ってみたいかも。夏休みでそんな長期間じゃなかったら、パパやママも許してくれるだろうし。
それに、別の世界に行く機会なんて、これを逃したらあるか分かんないじゃん? やっぱ行ってみたいよ。・・・あ、でも」

「でも?」

「どうせなら、みんなで行きたいな。唯世くんにややにりま、空海になでしこ・・・は留学中だからちょっと無理か。それに・・・いいんちょと」

「・・・そうだね、それは面白そうだ。というより、そのままの勢いで唯世が王様キャラでミッド支配とか言い出しそうでちょっと怖いね」



少し冗談半分で言うと、あむの表情が崩れて・・・楽しそうに笑う。



「あははは、それありえるー。でも、楽しそうだよね」

「だね。うし、これが片付いたら真剣に考えてみようか。みんなに相談しつつさ」

「うん」










・・・そうだよね、みんなで行けたら・・・いいよね。





そのためにも、頑張りますか。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第24話 『青き修羅対黒き阿修羅』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・で、アンタは結局あのおチビちゃんにスパイの事もCDの事も看破された上に、ガーディアンの内部分裂作戦も失敗し、フェイト・T・ハラオウンも含めたおチビちゃんの戦力に関してもさっぱりと」

「申し訳、ありません」



ここはイースター所有のレコーディングスタジオ。そこに海里がやってきて・・・報告を受けた。

・・・はぁ、なんて言うか、こんなに早く見抜かれるとは思ってなかったわよ。なんて勘のいい連中なのかしら。やっぱり、少し甘く見てたわね。



「いいわよ。話を聞く限り、アンタは相当うまくやってくれてたわけだし。スパイやCDの事が気づかれた原因だって、アンタの預かり知らぬところでの出来事がきっかけ。
さすがにそれに関して文句を言うつもりはないわ。とにかく海里、これで連中がこちらの邪魔をしてくるのは明白よ。その時は・・・」

「はい、俺がなんとかします」

「よろしい」





そのまま、私は正面のブースに目を向ける。現在、歌唄のレコーディング中。だって、もうすぐデビューなんですもの。



でも、ここまではかなり順調だったのよね。歌唄の歌・・・最近怖いくらいに磨きがかかってるし、ダイヤが来てくれたおかげでたまごを奪う力もアップしてるし。もうダイヤ様々って感じ?





「でも・・・」

「姉さん、どうかしましたか?」

「なんでもないわ」





・・・気のせい、よね。最近の歌唄が、比喩じゃなく本当に怖いと感じるなんて。



確かにトップに上がるにはハングリー精神が必要だけど、あの子の目を見てそれが行き過ぎているように感じるけど、大丈夫・・・よね。





「とにかく、ご苦労様。てゆうか・・・ありがとね」

「え?」



いや、専務のあのキレっぷりを見てから色々自重していこうと考えててね。こういうのも大事だと思ったの。

ようするに・・・飴と鞭の使いよう? 人の心を掴んで動かしていくには、鞭だけじゃだめなんだと痛感したわけですよ。



「わざわざ転校までしてくれて、私の事手伝ってくれた弟にお礼くらい言えなかったら、私はだめな姉だもの。結果は結果として、そこはちゃんと言うわよ。海里、ありがと」

「・・・いえ、お気になさらずに」










さて、気づかれちゃったものはしょうがない。あとは・・・こっちの今出来ている札で勝負していくしかないわ。かなりの大博打だけど、頑張っていきましょ。これも出世のためよ。





でも、やっぱりミスったなぁ。気づかれない事が作戦のキモと言いながら、海里に尾行をさせたのが失敗。ようするに、こちらからアクションを起こして尻尾を出してしまった。





三条ゆかり、一生の不覚よ。しかし、蒼凪恭文・・・どんだけスペック高いわけ? こっちのやろうとすることに確実にツッコんで来てるし。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いいえ、ただ単に運が悪いだけですわ。それも致命的に」

「・・・咲耶、誰に対して話しているんですか?」

「ディードさま、お気になさらずに。ちょっと電波を受け取ったので。・・・しかし、お料理お上手ですね。見ていて安心できます」

「隔離施設で色々と教わっていたので。あと・・・恭文さんからも」



・・・なるほど、愛ゆえに・・・なんだなぁ。

うーん、やっぱり四人体制なのかな? おじいさまがまた頭抱えている未来が見えたもの。



「ねぇ、ディード。第三夫人という立ち位置で満足出来る? 私は意外とそこが大事だと思うんだよね」

「そうだな。まぁ、やっさんはあれだ。悩みつつも覚悟は決めて三人とも幸せにしようとするに決まってるから別にいいんだ。あとはディードちゃんの気持ちだって」

「あの、シャーリーさんにサリエルさん? 私は何度も言うようですけど、恭文さんとそうなるつもりはなくてですね・・・」










でも、ここもすごい人が増えたよね。おじいさまにフェイトさま、シャーリーさまにリインさまにティアナさま。私に恭さまにエルさまにディードさま。あと、一時的になんだけどりまさまにサリエルさま。





こんな大所帯で暮らした事、実は無かったりするんだけど、でも・・・楽しいな。これだけでも、この時代に来た甲斐があったかも知れない。





よし、この調子で恭さまとの既成事実を作ろう。ここなら、かえでさまとかあの人とかその人とかは来れないんだから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうだ、もう俺はあそこに戻れない。姉さんの言うように俺はあの人達の仲間でもなんでもない。だったら、やるしかないんだ。

俺の手は・・・汚れてしまった。沢山の人間から可能性を奪い、壊してしまった。直接ではないにしろ、その種を撒いた。

真の侍になりたかった。子どもの頃に呼んだ宮本武蔵に憧れて、悪い奴をやっつけて困っている人を助ける・・・そんな侍になりたかった。ムサシは、俺のそんな憧れから生まれた。





そのまま、両手を見る。そして思う。でも、もう無理だと。それは・・・無理なんだと。

むしろ俺がその悪い奴なのに、なれるわけがない。なにより・・・ムサシだ。

・・・はは、自業自得とは言え・・・きついな。姉さんが優しい言葉をかけてくれただけで、まだ救いがある。





そうだ、もう俺はこちら側へ来てしまった。理由はどうあれ、来てしまったんだ。





だったら・・・やるしか、ない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・やっぱりだ。ここ数日で、私の中で疑念が確信に変わった。さっきのレコーディングで、かなりの手ごたえを感じた。

ブラックダイヤモンズのデビューシングルのレコーディングを終えて、スタジオの通路を歩きながら、私は右拳を握る。その衝動は、答えをしっかりと得られた確信から。

この胸元の宝石・・・私に力をくれてる。私がもっと歌えるようになりたいと思うと、その通りに力が溢れてくる。たまごを奪いたいと思うと、いつもより沢山奪える。





そんな時、必ずこの宝石があった。ううん、それだけじゃなくて・・・一瞬だけ輝きが増すようになった。どうしてかはわからないけど、そんなことはどうでもいいか。










「そう、どうでもいいこと」



隣に居るダイヤが静かに言って来た。どこかうつろにも見える瞳を私に向けながら語りかけてくる。



「この石は歌唄、あなたの輝きに引き寄せられてきた。だから、この石の力はあなたのもの。重要視すべき事実は、それだけだわ」

「・・・この石に力があるって、分かってたの?」



ダイヤがコクンと頷く。・・・って、それならそうと話してくれるとありがたかったんだけど? 私、あれこれかなり考えまくってたのに。



「自分で考え、答えを導き出すのも、輝くためには必要だから」

「・・・あぁ、そういうこと」

「そういうことよ。それで、あなたの答えはどう?」



右手を口元に当てながら、足を進めつつ考えを纏める。・・・多分、これで正解のはず。



「多分だけど、この石は私の感情によって力を発揮しているわ。私が力が欲しい・・・強くなりたいと願った時、必ず応えてくれる。いわゆるブースターよ」

「正解よ。この石から感じる輝きは、あなたの心の動きと直結している。石も、あなたを持ち主と認めているみたいね」

「だったらうれしいわ。でも、それだけじゃ足りない」



どこまでブースターとしての機能が働くかが問題なのよ。例えば歌声・・・とか、たまごを奪う力は何とかなってる。私としては、別の能力も強化出来ると嬉しい。



「別の能力?」

「戦闘能力よ。それも直接的な。今のままじゃ、輝きどうこうの前に叩き潰される」

「・・・彼のことね」

「えぇ」



とりあえず、ここはこっそり試す事にしよう。方法はいくらでもあるんだし。



「でも歌唄、気にする必要はないと思うけど? 彼は屑鉄。聞こえる心の声は不規則でデタラメ、輝きを感じる事など出来ない。
なにより、そんなどうしようもない自分を受け入れ、輝こうとすらしていない。そんな人に、あなたが負ける道理などないわ」

「・・・ダイヤ、あなたのその心を読む能力も、案外大した事ないのね。アイツのこと、何にも分かってない」



そう言って、少しおかしくなる。・・・まるで私はアイツのこと分かってるみたいな言い方だったから。まぁ、ダイヤよりは分かってるかな。

アイツは私と同じドSで、楽しく挑発合戦が出来て、中々に面白くて、そして・・・話してて、楽しい相手。でも、それだけじゃない。



「どういう、こと?」

「私ね・・・アイツのこと、好きみたいなのよ」





・・・別に恋愛感情とかじゃないわよ? 私はイクトが本命なんだから。アイツにだってあのフェイトって言う本命が居る。

私もそうだし恭文にだって、そうなる理由が無いわよ。恭文にはただ単に興味を引かれているだけ。

で、特に嫌いでもない・・・まぁ、だったら好きな部類なのかなという程度の認識。



大丈夫、私のイクトへの愛は永遠だから。それにこういう場合、往々にしてイクトと両思いになったら『実は本当の兄妹じゃなかった』フラグが立つんだから。昔見たマーマレードボーイとかもそうだったし。





「歌唄、それは悪い意味でゲーム脳だと思うわ。そしてどう考えてもフラグ成立5秒前よ」

「アンタ、そういう言葉をどこで覚えたの? 私は真面目に疑問なんだけど」

「気にしないで。でも・・・なぜあなたが彼にそこまで興味を持つのかしら」

「簡単よ。アイツにも輝き・・・ううん、瞬きがあるから」



歩きながらの私の言葉に、ダイヤが怪訝そうな顔をする。表情の変化が少ない子ではあるけど、それでも最近、少しずつ分かるようになってきた。



「アンタの言うように、アイツは屑鉄かも知れない。だけど・・・アイツの瞬きは、その鉄の中にある」

「鉄の・・・中?」

「そうよ。優しく・・・だけど強い光がね。私、初めて会った時からどうもそれを感じて仕方なかったの」



私より小さい身体のくせに一途で、真っ直ぐで、そして・・・揺るがない。迷わずに真っ直ぐに私達に向かってくる。ダイヤの言う輝きとはまた趣が異なるんだろうけど、それがアイツの強さ。

そうだな、私・・・アイツのそんな強さに引かれてるのかも。その鉄で、どうしてそこまで出来るのか・・・という感じにね。



「・・・歌唄」

「なによ」

「愛は奪うものだと誰かが言ってたわ」

「あいにく、私はそんな真似はしない。むしろ振り向かせて自分からこちらに来るように仕向けるわ。そっちの方が後々有利・・・って、なんでいきなりそんな話になるのよっ!!」





とにかく、私は控え室のドアを開ける。だって、丁度付いたから。でも、開けて驚いた。



だって、中には人が居たから。私の控え室なのに。でも、その人は私の想い人で・・・。





「よ」

「・・・・・・イクトォォォォォォォォォォォォォッ!!」





そのままソファーに座っていたイクトに抱きつくために飛びつく。でも、避けられた。もう一回。でも、避けられた。



もう一回、もう一回、もう一回、もう一回、もう一回・・・。でも、全部避けられた。





「うぅ・・・イクトの意地悪。どうして逃げるの?」

「うっせぇ、いい加減読めてんだよ。お前の抱きつきパターン」



・・・確かに、子どもの頃からこれだったから、読まれてもおかしくないかも。うぅ、ここは反省だわ。



「・・・歌唄、それはどう考えても奪う人間の思考だと思うのだけど」



はい、ダイヤは黙っててっ! というか、そこは言わないでっ!! イクトはガード固いからこうなるだけなんだからねっ!?

とにかく、抱きつくのは一旦なしにして隣に座る。イクトも、普通に近くに座ってくれる。



「でも、どうしてここに?」

「バイオリンの音取り、もう終わったけどな」

「そっか」



デビューCDには、イクトのバイオリンが伴奏として追加される。ここがインディーズの頃とは違う部分の一つ。

でも、うれしいなぁ・・・。イクトのバイオリンのメロディーを乗せて歌えるなんて。



「・・・専務さんのやつ、何考えてんだろうな。俺から音楽を奪おうとしてたくせによ」

「あの人の話はいいよ。・・・それと、イクト。聞いた?」

「なんだ?」

「私達のこと、ガーディアンの連中にバレたって」

「・・・らしいな」



それでも、イクトは普通。すごく普通。それが頼もしく感じるのは・・・やっぱり恋の魔力?



「歌唄、やっぱりそれは奪う思考」

「いいのっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、りまが来て三日が経った。いつものようにロイヤルガーデンでガーディアン会議・・・なんだけど、ちょっと大変。





まぁ、一応・・・ね。シャーリーからも言われていたので、説明は必要かと思って、りまに話した。そう、あのことだ。










「・・・魔法・・・次元世界・・・その上恭文が19歳・・・ありえない。ありえないわよ。もう最期よ最期」

「おーいっ! なんか字が違うよー!? いや、真面目に違うからねー!!」

「でも、本当のことなんだ。まぁ、やや達も最初に聞いた時はビックリしたんだけど・・・。絶対最期だよ最期」

「だから字が違うって言ってるよねー!! ・・・まぁ、ややだから仕方ないのか」

「恭文がなんかヒドイよー!!」



反応は・・・まぁ、こんな感じ? うん、予想はしてた。すっごい予想はしてたよ。



「ただ真城さん、ありえないどうこうを言ったらしゅごキャラも同じなんだし」

「それもそうなのよね。これ、納得しないとだめか。・・・でも、なんで今このタイミングで私に?」

「一時的にでもうちの居候になったしね。どっちにしてももうりまには隠し通せる状況じゃないと思ったの。というより、うちの人間の大半がそういう結論に達した」

「納得したわ。・・・あ、やっぱり敬語とかさん付けの方がいいのかな」



僕は気づいたように行ってきたりまの言葉に、首を振って『大丈夫だから』と返す。

いや、だって・・・ねぇ? 学校の中でそんなことされたら相当怪しまれるし。



「今まで通りでいいよ。元々僕も年上とかそういうのであれこれ気を使われるのも使うのも好きじゃないしさ」

「・・・分かった。なら、今まで通りでいく」



その言葉に、他のガーディアンメンバーも安心した表情を浮かべる。僕も・・・多分同じだ。



「それで今後の事なんだけど・・・デビューするのは当然として、どのタイミングでそれが来るか・・・なんだよね」

「もういつ来てもおかしくないと思います。ブラックダイヤモンズへの注目度はどんどん高まっていますし・・・というか、ネット検索したらホームページまで出来てました」

「完全にやる気・・・って感じだよね。うー、たまごのことがなかったらややも普通に応援してるのにー」



奇遇だね、やや。それは僕も同じくだよ。・・・やっぱりこの場合、ライブ・・・とかかかな。歌って、そこでまたたまごを集めて・・・って感じ。

でも、海里が消えた事で向こうにこちらのことがバレているのは確実だし、そこを考えるとやらない可能性も出てくる。僕達が邪魔しにくるのは読めてるはずだもの。



「ねぇ、その時空管理局・・・だっけ? その組織の力でイースターを止めるのは無理なの?」

「それがね、無理なんだって。ややも同じ事を前に聞いたんだけど、地球は管理局のことが知られてない世界で、そういう世界には極力魔法を使ってどうこうとか、管理局が介入とか、そういうのはしないようにってルールがあるとか」

「なにより、管理局の人達の大半はしゅごキャラが見えないようなんだ。この辺りはこっちの世界の大人が見えないのと同じ理屈だね。
本当に最初の頃、僕達が初めて会った時には、ランスターさんやフェイトさん達も見えなかったくらいだから。つまり・・・」

「ルール的にもそうだし、たまごやしゅごキャラの存在が認識出来ないから動けない・・・ね。なんだか、不便よね」



それはそう思う。ぶっちゃけ、介入してくれると非常にありがたいし。こういう状況になってくると特にさ。

・・・あー、そう言えばアレもあったんだ。今のところは大丈夫だけど、アレもどうなるか分かったもんじゃない。



「アレ?」

「うん。まぁ、今回の一件に関しては全く関係ないんだけど、地球の方にロストロギアが落ちてきたんだよ」

「さっき言ってたオーバーテクノロジーの産物・・・よね。でも、それが恭文やフェイトさん達とどう関係するのよ」

「それが関係するの。僕達も今はエンブリオの捜索がお仕事とは言え、一応局の関係者で、そのロストロギアが落ちた地球に居る。
機動課・・・あ、ロストロギア絡みの事件を捜査する部署なんだけど、そこの人達から何かあったら手伝ってくださいって言われてるんだよ」



まぁ、その場合は僕じゃなくて恭太郎なりに行ってもらうことにはなるだろうけど。さすがにこの状況でこっちを離れるわけにはいかないし。

とりあえず、日本茶をひとすすり。・・・あぁ、落ち着く。



「なんだか、大変なんだね。というかというか、やや達知らなかったんだけど」

「僕もフェイトも皆も、りまがうちに来る前日くらいに地球にロストロギアが落ちてきたのは確定だって聞いたんだよ。うぅ、嫌だなぁ。なんか厄介な事になりそうだから嫌だなぁ」

「そうなの?」

「うん。大体ロストロギア絡みの事件は大事になりやすいから。場合によっては大災害に繋がる場合もあるし。物が物だから、今のイースターの連中みたいに、手段を選ぶ気なしで来る場合もあるし」



出来れば、誰かに使用される前に機動課に回収されているという感じで解決して欲しいよ。もう本能が危険信号出しまくってるんだから。



「まぁ、そこはいいか。例え魔導師組が動く事態になっても、僕はこっち専任だもの。とにかく・・・ほしな歌唄のことだよ」

≪ただ単にデビューを記念するライブと言っても、色々な形式がありますしね。例えば、応募者の中から厳選した数人を招待したシークレットライブ・・・とか。ライブの日にちと時間と場所はその招待状にだけ書かれてるんですよ≫

「そういうのをやられたらあたし達にはわかんないじゃん。あぁもう、どうすれば・・・」

『それなら問題無いよ』



突然通信画面が立ち上がった。

そこには・・・フェイトっ! あ、なんかすっごい勝ち誇った顔してるしっ!!



「フェイトさんっ! あの・・・なんですかいきなりっ!?」

『みんなにいいお知らせだよ。ほしな歌唄・・・ブラックダイヤモンズのデビュー記念のシークレットライブ、今日の午後16時から、市外のライブハウスで行われるんだって』

「ほんとですかっ! というか、あの・・・どうやってそれをっ!!」

『ヤスフミと私の共通の友人に調べてもらったんだ。前々からイースター社の動きを追って欲しいとは頼んでたから。それでさっき連絡が来たの』



・・・アリサかっ! なんていいタイミングで結果出すかねあの人はっ!!

でも待てよ。僕は少し気づいたことがあるので、携帯端末を開いて時計を見る。



「今が15時半だから・・・」

「ライブまでもう1時間切ってるじゃんっ!!」

「これ、急がないとダメですよ。フェイトさん、場所の方は」

『もう二人の端末に送っておいた。そこからなら・・・ギリギリ間に合う』





なら、やることは一つだ。とりあえず、ガーディアンの皆を見る。





「・・・みんな、本当にいいんだね? これ、ぶっちぎりに犯罪だよ? 冴木のぶ子にロケバス運転させたりとか、そういうのを軽く超えてる。みんなの将来にだって響く可能性がある」





つまり、最終確認だ。真面目に僕はみんなの将来のことにまで責任は取れない。だから、聞いた。



だけど、そんな僕の考えは、どうやら無意味だったらしい。だって、みんなもう目が据わってるもの。





「それでも、やらなきゃいけない。・・・蒼凪君やフェイトさん達がどう言おうと、僕達は行く。行って三条君を取り戻して、ほしな歌唄も止める。そうしなかったら、沢山の人達の夢と願いが奪われるから」

「まぁ、ここまで来たら乗りかかった船だもの。付き合うわよ。それに、こういうのはバレなきゃいいんだもの」

「そうそう、りまたんの言うようにバレなきゃ大丈夫だって。向こうだってやましいことしてるんだしさ。
というか、やや達も恭文と同じでバカなんだよ? こんなところで途中退場なんて出来ないって」

「だから、恭文、フェイトさんも・・・納得してください。あたし達全員、もう覚悟は出来てます」





その言葉に通信画面のフェイトと顔を見合わせて・・・頷いた。



それから右隣に座っていたリインの方を向く。リインも、頷く。





「なら・・・みんな、行くよ。これで決着をつける」

「やるですよー♪」

『おー!!』





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あきゅろす。
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