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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第6話 『人から何かを受け取る時には、きっと渡すのと同じくらいの覚悟がいる』



・・・それは、マリーちゃんに呼ばれた時の話。



私らが入ったところはデバイス用のラボで、マリーちゃんが必死に端末と向き合ってデバイス整備をしてた。



それは・・・見たところ官給品じゃない剣型。両刃でサイズは80センチ前後。でも、見た事が無いものだった。





「よ、マリーちゃん。ご無沙汰」

「あぁ、ヒロさんにサリさん。ご無沙汰してます。すみません、突然お呼び立てしちゃって」

「いいよいいよ。で、用件はなに?」

「はい。実は・・・」





マリーちゃんが視線を移す。そこに居たのは・・・一人の女の子。年のころは少年とキャロちゃんくらいかな。

水色の髪を肩まで伸ばしていて、瞳は赤。体型は・・・また細いねぇ。ちゃんとご飯食べてるのかしら。



とにかく、それだけで私は分かった。マリーちゃんが私らを呼んだのは、今は退屈そうに近くの椅子に座っているあの子が原因だと。





「あの子がどうしたの?」



サリが小声で話す。あの子に聞かれないように、慎重にだ。マリーちゃんも同じようにその疑問に答える。



「実は、昨日の夜に突然ヘイハチさんがここにやってきて、あの子をある人達に預けて欲しいって言ってきたんです。
私が返事する前に、あそこのロッカーの中に入って、そのまま消えちゃって・・・」



そう言ってマリーちゃんが指を指したのは、本当に何の変哲も無いロッカー。あそこに入ったら、どこにもいけないはずなのに、入った本人は消えたらしい。

てゆうか・・・ヘイハチ先生っ!? しかもロッカーの中って・・・あぁ、そっか、デンライナーのチケット使って、また乗り込んだんだっ! あのジジイは・・・!!



「ごめん、マリーちゃん。うちの師匠は・・・こう、アレで」

「もう慣れました」



そう言って苦笑するマリーちゃんに真面目に頭を下げる。そうしているだけで、本当にごめんなさいと思う気持ちと、涙まで浮かんでくるから不思議だ。



「で、突然あの子を押し付けられた可哀想なある人達ってのは誰?」

「・・・ヒロさんとサリさんです」



あのジジイはぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! なんでいきなりこれっ!? つーか、子どもいきなり預けてくるっておかしいでしょうがっ!!



「ただ、あなた達二人にも無関係ではない話なんです」

「はぁ? それってどういう・・・サリ、アンタどこの女さ。てゆうか、産ませて放り出すって・・・最低だね」

「バカっ! 俺はそんな真似しねぇよっ!! つーか、それならお前じゃないのかっ!?」

「んなわけあるかいっ! 私は生まれて此の方お産に立ち会ったことはあっても、お産したことなんて一度もないよっ!!」



・・・自分で言っててなんかすごい悲しくなってきたけど、気のせいだ。そうだ、気のせいなんだ。



「あぁ、そういう意味じゃないんです。・・・ヘイハチさんから話を聞いて、私の方でも少し検査をさせてもらったので、今から話す事は確定情報なんです。落ち着いて、聞いてくださいね」

「・・・あぁ。それで、どういうことなんだ?」

「あの子、フィーネ・スノウレイドの『娘』なんです」










その言葉に、私とサリも固まった。だって、それは知っている名前だったから。





フィーネ・スノウレイド。魔導師で、二つ名は『栄光の流星』。私とサリと同年代で一応知り合い・・・てゆうか、ケンカ友達みたいな感じの女。





だけど、そいつはもう5年ほど前に亡くなっている。もう、この世には居ないんだ。





その娘が、どうしてこんなところにっ!? というより、アイツに娘が居るなんて聞いた事ないんだけどっ!!




















魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常 Second Season


第6話 『人から何かを受け取る時には、きっと渡すのと同じくらいの覚悟がいる』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



時刻は午後の5時半。とにかく隊長陣は全員揃って、ヒロリスさんとサリエルさんの二人から事情を聞くことになった。どうしてこういう事態になったのかを。





場所は会議室。あの子は悪いとは思ったけどフレイホーク君に面倒を見てもらってる。1番なついているしね。










「で、俺らもそこで話を詳しく聞いて、さっき言ったような感じになったというわけ」

「簡単に言えば、あの子はスバルちゃんやギンガちゃん、あと、海上隔離施設に入るノーヴェと同じってことなのよ」

「なら、あの子は・・・戦闘機人っ!?」





フェイトちゃんが驚きの声を上げると、ヒロリスさんとサリエルさんがうなづいた。・・・二人の話を簡潔に言うと、こうだ。

あの子は戦闘機人。それも、特定の人物の遺伝子を元にして作り上げたクローンタイプ。

スバル達の場合は、どこかから盗み出された、母親であるクイントさんの遺伝子情報。だからこそ、あの子達は母親の先天スキルであるウィングロードを使えるらしい。



そして、あの子の場合、その元になっているのは・・・フィーネ・スノウレイド。



今日、偶然にも恭文君を訪ねてきたフレイホーク君の師匠で、ヒロリスさん達と同期の魔導師。なお、本人は既に亡くなっている。





「あの、それは本当に間違いないんですか?」

「あぁ、マリーちゃんが念のために、自分で検査したそうだから間違いない。俺もデータ見せてもらったしな。・・・どうもヘイハチ先生がどっかの違法な研究施設ぶっ潰した時に、助け出した子らしいんだよ。
で、それが2年位前。自分はぶらぶらするから、信用の出来るところに預かってもらってたんだとよ。だけど・・・」

「だけど?」

「それが先生より年上の爺さんだったらしくてな。丁度2週間くらい前にポックリと逝っちまったんだ。
それであの迷惑師匠、覚悟決めて自分で面倒見ればいいのに、今度は俺とヒロに預けてきやがった」



・・・ヘイハチさん、さすがにそれはどうなんですか? いくらなんでもヒドイですって。



「まぁ、あのチート能力の持ち主の側に居る方がよっぽど不安ではあるけどね。三度の飯より戦場が好きってタイプだし。
・・・それに、ヘイハチ先生としては、あの子には同年代の子どもの中で育って、友達とか作って楽しく生きてて欲しいってことらしくてさ」

「確かに・・・あのじーさんの側だとそれは出来ねぇよな。つーか、恭文の時だってそんな感じだったし」

≪でよ、なんにしても行くところもねぇし、特別保護施設預けるにしても少々不安があるんだよ≫



えっと、それってどういうこと? あの子の素性なら、特別保護施設も一つの選択肢ではあるのに。



≪・・・俺達で少し話したんだけどよ、あのガールは精神的にまだ子ども過ぎて、集団生活に適応出来るかどうか分からないんだよ≫

≪どうも、助け出される前に相当ひどい目に遭っていたらしく、その影響で精神年齢が実年齢よりも幼い・・・もっと言えば、幼児と言っても差し支えない状態なんです。
まぁ、だいぶ改善はされているそうですが、我らは少々不安を覚えました≫

「なにより、尊敬する師匠が俺らに預けてきた。そこになんか意味があるような気がしてな。
まぁ、大事なダチの忘れ形見と言えば忘れ形見だし、しばらくは俺らで面倒見ることにしたんだよ。・・・つーわけで、八神部隊長」

「あぁ、大丈夫ですよ。そういう事情なら、しゃあないでしょ。ここで放り出して何かあっても、うちは何の責任も取れませんし」





はやてちゃんがそう言うと、サリエルさんとヒロリスさんが深々と頭を下げる。・・・解散まで2ヶ月切って、恭文君とフェイトちゃんが戻ってきた途端にこれ・・・ですか。



うぅ、また何か起こるのかな? なんだか嫌な予感がするんだけど。





「でも、アタシわかんねーことがあるんですけど、なんであのフレイホークに、あの子はあんな懐いてるんですか? 面識無いんですよね」

「それなんだけど・・・どうもあの子、ヘイハチ先生からフィーネの事教えてもらってたらしくてね。その時にジン坊の事も聞いたんだって。で、どういうわけか・・・あれですよ」

「・・・アタシ、あのじいちゃんの考えてる事が今ひとつわからねぇんですけど」

「ヴィータちゃん、奇遇だね。私も弟子ではあるけど全然わかんない」



その言葉に、二人は顔を見合わせてため息を吐く。・・・私も、吐きたくなってくるから不思議だよね。



「とにかく、ヒロさん達が保護責任者・・・ですよね。なら、一応でも後見人が必要だと思うんですけど」

「フェイトちゃん、よければ頼めるか?」

「はい、任せてください。・・・あ、そう言えばあの子の名前は?」

「あぁ、それはもちろんちゃんとある。メイル。メイル・スノウレイド。それがあの子の名前だ」










こうして、日常は再び針を刻み始めた。





でも、これからどうなるのか・・・ちょっとだけ、不安も感じていたりする。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・というわけで、六課に新しい仲間が増える事になった。まぁ、あの子とはまた交流を深めていくことにするとして、僕とフェイトには別問題がある。





それは、コミュニケーションを週に何回するかという・・・って、ちがーうっ! それも問題だけどそっちじゃないっ!!





とにかく、ジンには暇ということらしいので、しばらくあの子の面倒を見るために六課に滞在してもらうことになった。というより、帰ろうとすると泣き出すので、もうどうしようもなかった。・・・タイミングって、あるよね。





で、僕のフェイトの問題はというと・・・。










「・・・いや、本当にご無沙汰しちゃって」

「いや、大丈夫だ。ナカジマ三佐から色々聞いているからな。・・・それで、野上殿やあの赤や青な方々は、もうお帰りになられたのだったな」

「うん。みんなによろしくって言ってたよ」

「そうですか」





あの子が隊舎に来た翌日のこと、僕とフェイトはミッドの海上隔離施設に居た。

そして・・・話しているのは本編では久々登場なチンクさん。ただ、チンクさんだけじゃない。

面会室には、ナンバーズフルメンバーに、アギトとルーテシアも登場していただいている。まぁ、この辺りは事情込みということで。



で、来た用件をそろそろ切り出すことにする。





「それでチンク・・・あとみんな。メールでも話したと思うんだけど」

「セッテの事っスよね。・・・うーん、説得はかなり難しいと思うっスよ?」

「そうだね。あの子、トーレ姉に似て頑固で強情っぱりだし。だからこそ、今の今までフェイトお嬢様や保護官の話も突っぱねてる」



口々に言うのは、ポジティブコンビ。表情が若干困っているように見えるのは、気のせいじゃない。



「教育係の影響、モロに受けてるよね。一応、チンク姉も話しているんだったよね」

「あぁ。だが・・・姉も同じくだ。情けない話ではあるが、どうにもならないと思っている」



ディエチの言葉に、セッテさんは腕を組みながら唸り出した。なぜだろう、だんだん悪い事をしている感じがしてきたのは。



「アタシもあんまアレとは付き合い長くねぇしなぁ。ルールーも同じくだし」

「・・・アタシもだ。まぁ、妹ではあるけどよ」

「ボク達は、セッテと同じ最後期だから、あまり力になれそうもないね」

「そうね。・・・恭文さん、フェイトお嬢様、申し訳ありません」

「ううん、大丈夫だよ。そうすると・・・ヤスフミ」



フェイトが僕の方を見る。・・・予想はしていた。していたけど・・・姉妹でもこれなのですか。

うーん、簡単じゃないってことかぁ。やっぱりアレしかないのかな。



「アレ? え、なになに。恭文、もしかしてセッテを説得するいい手立てがあるの?」

「・・・いい手立てというか、難易度を二つくらいあげることになりそうというか。
出来ればセインがシスターとして神の道を進む者として、セッテにそこに居る愚かさを説いてくれる・・・とかの方が嬉しい」

「いや、そんな無茶振りされても困るってっ! というか、シスターになるかどうかはまだ考え中だからっ!!」



・・・でも、シャッハさんが熱心に誘ってるって聞いたよ? 是非とも聖王教会にって。

あと、カリムさんがオットーとディードの保護責任者になろうとしてるとか。



「まぁ、それは事実だよ? でもさ、色々考えちゃって。・・・あのシスター服とか。どうも私の趣味に合わなくてさぁ」

「合わないなら改造しちゃえばいいじゃん」

「・・・それだぁぁぁぁぁぁぁっ! よし、それでいこうっ!!」



あ、なんかすごい納得してくれた。かなり適当に言ったのに。



「セイン姉、アンタ馬鹿だろ。つーか、シスター服を改造するなよ」



ノーヴェの的確なツッコミは、どうやらセインには届かなかったらしい。どう改造しようか、プランを練り始めた。

・・・一名役に立たなくなったと思いつつ、話を進めることにした。



「ところでお父さん」

「・・・ね、ルーテシア。お父さんはやめない?」

「だめ。だって、お父さんはお母さんと結婚するから。私はお母さんの娘だから、お母さんと結婚するお父さんはお父さんになるんだよ?」

「しないよっ!? 僕はフェイトが居るんだしっ!!」



僕が必死にそう言うと、全員が悲しそうな顔をした。



「あぁ、やっぱりそうなんだ。ここは年が変わっても変わってなかったんだ」

「セイン、変わると思うっスか?」

「ううん、思ってなかった」



・・・あれ? なんだろう、なんかこの視線にデジャヴを感じる。



「なぁ、お前・・・もういいんじゃねぇのか? つーか、そこまで行くとただのシスコンだって。いいじゃねぇか、ルーお嬢様のお母さんでも、セイン姉でも、ディードでも。
それとも・・・あれかっ!? お前、セイン姉やディードに不満があるってかっ! どんだけ高望みしてんだよっ!!」

「ちょっとノーヴェっ!? お願いだからいきなりキレるなぁぁぁぁぁぁぁっ!! つーか、僕はもう誰とも付き合えないのっ! 彼女居るんだからねっ!?」



僕がそう言うと、全員が固まった。そして、フェイトは顔を赤くした。

ま、まぁ・・・ちゃんと話しておかないとダメだろう。というより、よく考えたらみんなには話してなかったような気がする。・・・そっか、あの視線はそのせいか。



「・・・恭文、何か辛い事でもあったっスか? いや、私は大丈夫っスよ。脳内彼女にもちゃんと理解を示せるっスから」

「違うよっ! 現実に居るからっ!! 脳内じゃなくてちゃんとリアルに存在してるからっ!!」

「現実に居る・・・。あぁ、分かったっス。そういうお店に気になる子でも居るんっスか? それならまだ納得が」



違うわボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! つーか、そんなことをどこで教わったっ!!



「恭文、姉でよければ力になる。だからちゃんと現実を見てくれ。大丈夫、お前は一人じゃないんだ」

「チンクさんまで何言い出すんですかっ! だ、だから・・・僕はフェイトと付き合ってるんですってっ!!」



僕が荒い息をつきつつそう言うと、なぜか全員が泣き出した。

ねぇ、怒っていいよね? 僕、全力で怒っていいよね。



「つ、ついに恭文が幻覚を・・・あぁ、シスターシャッハっ! こういう場合はどうすればいいのっ!? やっぱり神の道に居るものとして真理を説いた方がいいのかなっ! お願いだから助けてー!!」

「・・・お父さん、あのね・・・やっぱりお母さんと付き合おうよ。そうすれば、きっと悪い夢から覚めるよ」

「頼むからちゃんと話を聞いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」





















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、数分後・・・。





ようやく・・・ようやくこやつらは僕の言う事が本当だと分かってくれた。僕と言うより、フェイトの反応と言動だけど。なんだろう、ちょっとムカつく。










「では、本当に恭文さんとお付き合いなさっているのですか?」

「う、うん。あの・・・付き合ってるよ。私から付き合って欲しいって言ったの。それで、ヤスフミがオーケーしてくれて・・・」

「・・・スバルからのメール、本当だったんだ。私達全員、あの子が今日をエイプリルフールだって勘違いしてると思ってスルーしてたのに」



・・・・・・へぇ、スバルが・・・ねぇ。ちなみにセイン、それって何時の話?



「かれこれ二週間くらい前かな。多分、恭文がその修行ってのに行った直後」

「あの女・・・もう一回ぶっ飛ばす。完全に見切り発車もいいとこじゃないのさ」

≪なんで誰も彼も状況証拠だけで動くんでしょうね、おかしいですよ≫



とりあえず、帰ったら他に誰かしらに言ってないかどうかを確認しよう。そこは、絶対に確認しよう。うんうん。

フェイトの方を見る。力強い何かを瞳に込めながら、コクンと頷いてくれた。意思の疎通が出来ているというのは、とても素晴らしい。



「でも、奇跡ってあるんだね。ボク、多分それを初めて見たよ」

「オットー、これから僕とうんと長くお話する? それはどういう意味かな」

「でもでも、よかったっスねー。あれだけスルーされまくってたのに諦めなかった成果っスよ」



・・・うん、そうだね。諦めないことって大事だと思った。だって、諦めてIFに言ってたら、あんな可愛いフェイトを独り占めなんて出来なかっただろうしさ。



「ありがと。そう言ってくれるのはうれしいんだけど、泣くのはやめて? なんで全員揃ってそんな泣いてるのかな。おかしいでしょうが」



まぁ、祝ってくれれる気持ちがあるのは嬉しい。うん、そこはすっごく嬉しい。

だけど、泣くのはやめて欲しい。なんか悪い事したみたいに思うから。フェイトもちょっと苦笑いだしさ。



「でもでも、そうするとルールー・・・『お父さん』呼びはやめないとダメだな」



アギトが涙を拭いつつ・・・あれ、描写の説明おかしいな。

とにかく、涙を拭いつつ言ってきた。それにルーテシアは、首を横に振って・・・あれ、また描写の説明がおかしい。



「大丈夫だよアギト。ほら、世界の文化とか法律関係のお話を聞いた時に教わったよね。『一夫多妻制』というのがあるって」

「ごめん、それは無理っ! 僕はフェイト一筋だからっ!! 第二夫人とかもらえる器量が無いからっ!!」



・・・・・・はいそこっ! 『またまた、冗談ばっかり』とか『リインがプラスされてる時点で同じじゃん』とか言わないっ!! あれはまた違う要因なんだよっ!?



「・・・そっか。じゃあ、お父さんって呼ぶの、おしまいにしなきゃいけないんだよね」










そうして、ルーテシアがこう・・・少しだけ悲しげに笑う。それに僕とフェイトが思わず息をつまらせる。そのルーテシアを見て、何も言えなくなってしまった。





だ、だって・・・あの、よく考えたらルーテシアってお父さん居なくて、それで僕をお父さん呼びしてて・・・。





もしかして、メガーヌさんの事だけで、僕をお父さんって呼んでたわけじゃないっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・作戦を立てよう。まずは、そこからだ。





まず、なぎ君とフェイトさんが付き合うようになったのは確定。間違いないらしい。

それを考えるだけで、胸がチクンと痛む。痛んで・・・軋む。

それを頭を振り払って、思考を元に戻す。・・・大丈夫、今はお昼休み。多少変な空気を出しても問題ない。





道はいくつかある。簡単に言えば三つ。まず一つ。このまま諦める。・・・嫌。このままなんて、私は嫌だ。だって、抱えてるだけで、後悔と自分への怒りで沸騰しそうだもの。

二つ目。なぎ君をフェイトさんから奪う。・・・きっと、いけないこと。フェイトさんもなぎ君も傷つける。場合によっては、なぎ君に嫌われる。だめだよ、これは。

三つ目。奪うとか付き合うとかそういうのは抜きで、なぎ君に・・・告白する。好きだと、気持ちを伝える。・・・迷惑、かけるよね。でも、せめて・・・せめてこれだけはしたい。





私、このままじゃ前を向けないから。だから、ちゃんと・・・伝えたい。





私は、あなたの事、好きだったんだよって、伝えたい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・なぁ、カルタス。ギンガの奴は何やってんだ?」



またまた108の隊舎。俺とカルタスは廊下から我が娘の様子を観察してる。

なんかまたすっげー顔しながら休憩室で唸ってやがるしよ。またなんかあったのかい。



「さぁ、今回は俺にも・・・。恭文とハラオウン執務官が結婚した・・・とかですか?」

「・・・ありえるな。あれ以上の衝撃となるとそこしかねぇ」



ただ、そこまで考えて思い直す。・・・さすがにそんな超速スピード結婚はねぇか。いくらハラオウンの嬢ちゃんがスピードファイターっつっても、限度ってもんがある。



「あ、そうそう。結婚と言えばナカジマ部隊長、八神の件、聞きました?」

「もちろんだ。いや、俺は地球行くのは初めてなんだけどよ、楽しみだな。向こうにはたんまりと美味い酒があるしな」

「あぁ、それは楽しみですね。・・・あとは、休みの調整ですね」

「そうだな、そこはしっかりしねぇと」





しかし、あの八神が結婚かぁ。なんつうか、全く想像できなかったな。

いや、アレは意外としたたかっていうか、しっかりしてやがるから、それは間違いか。

きっとそんな遠くないうちに、いい男を捕まえてただろ。それが今回はたまたまアコース査察官だったってだけだ。



・・・今、気づいた。ハラオウンの嬢ちゃんは恭文。八神のやつはアコース査察官。なら、高町の嬢ちゃんはどうなる? 娘も出来たし・・・よし、この想像は俺の胸の中だけにしまっておこう。それが正解だ。





「でもナカジマ三佐。確か八神は両親居ませんよね」

「あぁ。小さい頃に亡くなってるそうだからな」

「だったら、アレとかどうするんでしょ。ほら、バージンロードを歩く時に」



カルタスに言われて思い出す。・・・そういや、父親が途中までエスコートするんだったな。

あー、でもそれなら心配いらねぇと思うぞ。



「八神には後見人と言うか、両親が亡くなった直後から世話になってる叔父が居るって聞いた事がある。その人が来れるようなら来て、父親役をやるだろ」

「なるほど・・・。いや、俺はてっきり三佐がやるもんだと思ってましたよ」

「バカ、俺ぁそんなガラじゃねぇよ。それより前に、うちに娘達をなんとかしねぇと・・・」










まぁ、スバルはいい。あの野上って兄ちゃんになら、安心して任せられるしな。





あと、問題は・・・ギンガか。これが尾を引かないといいが。





てゆうかよ、もっと早く気づけよ。そうすりゃあ・・・お前、アイツは俺の息子になってたかも知れねぇのに。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・というわけで、今度八神部隊長と、アコース査察官・・・あ、隊長達のお知り合いの人なんですけど、その人が結婚することになりました。





今から、結婚式とっても楽しみです。私、こういうのに参加するの初めてで・・・。










「・・・スバル、アンタなにしてんの?」



中庭で、ちょっとだけ休憩しながらメールを打っていると、ティアが居た。

なので、笑顔で答える。



「良太郎さんにメール。ほら、八神部隊長の結婚の話」

「・・・あぁ、なるほど。でも、メールはほどほどにしておきなさいよ? 前にも言ったけど」

「分かってる。男の人引いちゃうんでしょ? 大丈夫だって」



まぁ・・・ちょっとびっくりしたけど。うぅ、ダメだなぁ。私全然加減できてないよ。

でも、なんだろ。このドキドキと幸せな感じ。それと、会えなくて感じてる寂しさ。・・・なんだか、不思議。心地よくて、恥ずかしさも感じるこんな気持ち、今まで触れた事無かった。



「で、交流は順調?」

「うん。それでね、良太郎さん今度・・・えっと、なんて言ったけなぁ。地球の制度で、試験を受けて高等学校の過程を卒業したって証明がもらえる試験を受けるんだって」

「そうなの? てか、高等学校って・・・あれよね。高校」

「そうそう。良太郎さん、高校を卒業する三ヶ月前にやめちゃったから」



色々な事情でやめたけど、こっちの世界に来て、私達と会って、少し頑張ってみたくなったってメールに書いていた。

とりあえず、何が出来るかなと考えて・・・そういう試験を受けるところから始めてみることにしたとか。自分の時間を、未来に繋ぐために。



「そっか。なんか、あの人も頑張ってるんだ」

「うん。やっぱり・・・会いたいな。ティア、私・・・おかしいんだ」

「おかしいって、何がよ」

「恭文とフェイトさんとか見てる時もそうだし、八神部隊長やアコース査察官の話聞いた時にさ、うらやましくなっちゃったの。それで、良太郎さんにすっごく会いたくなった」

「・・・そっか」










すごく優しくて、強い人。力は無いかも知れないけど、心が強い人。良太郎さんは、その強さで私の気持ちと夢を、守ってくれた。それがすごく嬉しかった。





だから、なのかも知れない。うーん、もしかして私・・・フラグ、立てられたのかなぁ。





・・・・・・よく、わかんないや。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



とにかく、お父さん呼びに関してはちょっとメガーヌさんなりゲンヤさんなりヒロさんなりに相談することということで、話をまとめた。・・・僕とフェイトの二人の間で。





そして、今は帰りの車の中。フェイトの運転で、隊舎へと戻る。なんだかんだかで・・・もう夕方。まぁ、途中で警備部を何件か回ったからなんだけど。










「・・・ね、フェイト」

「なに?」

「チンクさんが言ってた話、どう思う?」

「いい話だと・・・思うな」





帰り際に、チンクさんに相談されたことがある。それが、頭を離れない。





「でも、ゲンヤさんもまた思い切ったなぁ」

「二人も六人も同じ・・・か。すごいよね」

「すごいよね。まぁ、だから僕も好きなんだけど」





・・・セインがシャッハさん、オットーとディードがカリムさんから、自分達の保護責任者になってもいいかと相談されているのと同じように、チンクさんとディエチ、ノーヴェにウェンディ達も相談されているのだ。

それは・・・ナカジマ三佐。なんでも、娘が二人も六人も同じ事だから、うちの娘にならないかと言っているそうだ。

そして、現在その四人はその話を聞いて、迷っているらしい。JS事件中、ギンガさんなりスバルなりの事でそうとう色々あったから。



僕もフェイトも、すぐに返事はせずに、ここに居る間に、少し時間をかけてゆっくり考えてみた方がいいと言った。一応、こういう話は経験者だから。





「ただ、チンク達・・・ううん、セインやオットー、ディードもだね。迷う気持ちは分かるんだ」



ルビー色の瞳を車の進行方向に向けながら、フェイトは言葉を続ける。僕は・・・頷きを返す。



「私も、リンディ母さんからハラオウンの家の子にならないかって言われた時、戸惑ったから。本当に、私でいいのかなって、そう思った。ヤスフミはどう?」

「戸惑ったね。フェイトの事もあったけど、それと同じくらいにこう・・・僕でいいのかなと。・・・あぉ、フェイトと全く同じだね」

「そうだね、同じだ」





血が繋がってない・・・のは当たり前として、赤の他人で、それも相当な問題児で、それで養子にしようというリンディさんの気持ちが、失礼ながら今ひとつ分からなかった。

それでも了承したのは・・・まぁ、フェイトのフラグを立てやすいであろうというのと、その時僕はやっぱり子どもで、単独では魔導師としての活動もどうにもならないというのと、あと・・・あぁ、あれがあった。

リンディさんにその話をされた時、それで・・・いいかなと思ったから。本当に養子になるのはともかく、リンディさんを見ていて、いいのかなと、そう思った。



なんていうか、不思議な人徳がある人だしね。だめだ、あんまり上手く言えないや。





「あと、ルーテシアも、もうすぐ・・・だね」

「あ、裁判終わりそうなんだ」

「うん。刑は変わらない様子だけど。辺境無人世界に数年間隔離」

「・・・そっか、寂しくなるね」



なんだかんだで楽しい子だからなぁ。お父さんと呼ばれ、それ絡みで『お母さんと付き合おうよ』と何回も言われ、何回も言われ、何回も言われ・・・あれ? なんかおかしいな。



「そんなにプッシュされてたの?」

「かなり。フェイトがまだ気づいてくれてなかったから、それならお母さんと結婚して、本当のお父さんになってって・・・何度も、何度も言われて・・・」



何度も、何度も言われて・・・。

考えようとしなかったのは、ミスだったかも知れない。なぜあの子がそんな風に言うのかを。



「フェイト、もしかしてルーテシアって、お父さん・・・欲しいのかな」

「そうだね。そうとしか思えないよね。・・・でも、ルーテシアには悪いけどそれはだめだよ。だって・・・もう私、気づいてるし」

「・・・分かってるから。ちょっとにらみ気味に僕を見ないで。お願いだからやめて。というより、前見て前」



フェイトが、慌てた様子で視線を前に移す。それは当然だ。だって、フェイトは運転中なんだから。

あぁ、なんか戻ってきて早々色んな問題が露見していくなぁ。もしかして、試験の事やらで先送りにしてただけ?



「そう言えば、今日は隊舎に泊まるんだよね」

「うん。・・・おかしい祭りに参加が決まってて、一回出かけるけどあとはそのままって感じ?」

「おかしい祭り?」

「明日絡みでおかしい祭りにね」










こうして、2月13日は暮れていく。





そう言えば・・・ジン、どうしたっけ? まぁいいや、なんとかやってるでしょ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



なんともなってねぇんだけどっ!? てゆうか・・・頼むから離れろー!!





ここは六課の食堂。俺はなんとか俺に抱きついている女を引き剥がそうとする。だって、ご飯が食べられないから。





でも、てんでダメ。やたらと力が強い。










「だめー! メイルはお兄ちゃんの妹だもんっ!!」

「あいにく、俺の家族は数年前に全員亡くなってお星様なんだよっ! 妹も同じくっ!!」

「大丈夫っ! メイルは妹キャラなだけだからっ!!」

「なんだよっ! そのギャルゲー的な思考はっ!! そう言えばなんでも済むと思ってんのかっ!? だったらなぁ、それは思いっきり勘違いだっ!!」

≪マスター、モテモテだな。嬉しいだろう。人生で初のモテ期なのだからな≫



嬉しくないしっ! つーか、モテ期ってなんだよモテ期ってっ!! 言葉そのものもそうだし、発動時期の使い方間違えてるだろっ! あぁ、そしてなんか泣きそうになるのはやめてくれー!!

ど、どうしてこんなことにっ!? 俺は普通に運の悪さのせいで傷心状態と思われていたダチを励まそうかと思って、普通に会いに来ただけだってのにっ!!



「アンタ・・・大変そうね」



なんて言いながら俺と抱きついてくるこのメイルって子を呆れ気味に見つつ、一人の女の子が近づいてくる。

それは・・・ツインテールで釣り目の女の子。



「あぁ、そこに居るのはツンデレガールっ! 頼む、これを何とかしてくれっ!!」



ゴスっ!!



「・・・私をツンデレって言うのやめてくれる? 私、ツンデレって言われると殴りたくなるの」

「な、殴る前に言ってくれ・・・」

「あぁ、ごめんね。アイツの友達だから、容赦する必要が無いと思って」



納得した。この条件反射で飛び出した拳骨は、ヤスフミのせいか。アイツがこの子にツンデレツンデレ言いまくってるから、俺は今頭頂部が痛いんだ。あの野郎、ロクなことしねぇし。

・・・ただ、俺は何も言えない。だって、真面目にツンデレだと思うし。だってよ、『ツリ目+ツインテール+口調から判断出来る性格』というそれらがツンデレって大声出して自己主張してるんだぞ? 思わない方が無理だろ。



「うー、お兄ちゃん。この女誰?」

≪彼女はな、ツンデレという希少生物だ。しかも亜種などではなく王道だぞ王道。らき☆すたのかがみくらいに王道だ≫

「わけわかんないこと言ってんじゃないわよこのバカっ!! ・・・あとちびっ子、それは私のセリフよ。で、アンタの言うこの女は、アンタに用事があって来たのよ。
ヒロリスさんとサリエルさんが、呼んでたわよ? ちょっと話があるんだって」

「ヒロお姉ちゃんとサリおじさんが? ・・・わかった。ちょっと行ってくる」



そう言って、メイルはようやく俺から離れて、トタトタと歩き出した。そして、戻る。戻ってくる。



「どこに行けばいいの?」

「ヒロリスさんの部屋よ。場所は分かるわよね」

「うん、お姉ちゃんありがと。じゃあお兄ちゃん、また後でねー」



メイルは笑顔で手を振りながら、また歩き出して、食堂から出て行った。・・・や、やっと開放された。



「普通に挨拶とかは出来るのよね。ちょっと小生意気なだけで」

「あはは・・・そうだな」



別に迷惑とかじゃないけど、いきなり妹って・・・ヒロさん、サリさん、どういうことですかこれ。というより、なんで俺、帰れないんですか。



「そりゃあアンタ、あの子が離れようとしないからでしょ。離れたら泣きそうになるんだし」

「・・・そうでした」



目の前の子は、そのまま俺の前に座る。そして、じっと見る。・・・えっと、なんですか?



「いや、同年代で私より背の高い男ってのを久々に見て」

「・・・いやいや、他にも色々居るでしょ。あのグリフィスさんとかそれでしょ」

「それもそうね。いや、ごめんね。普段はアイツと絡む事が多いから、どうしてもそう思っちゃって」



・・・あぁ、ヤスフミは低いからなぁ。154センチって、あの年頃なら女でも低いと思うし。



「で、自己紹介が遅れたけど、私はティアナ・ランスター。機動六課のフォワードやらせてもらってる。よろしくね」

「あぁ、よろしく。俺はもう知ってると思うけど・・・ジン・フレイホークだ。で、こっちが」

≪ツンデレの少女よ、私がバルゴラだ。よろしく頼む≫

「・・・ハンマーで殴っていい?」

≪いきなり攻撃行動はやめてくれないかっ!? ツンデレは素晴らしい属性ではないかっ!!≫



いや、バルゴラ。多分そういう話じゃないと思うんだが。ほら、なんかランスターさんが頭抱えてるしさ。



「あのさ、そんなに私ってツンデレに見える?」

≪「見える」≫

「そっか、即答か。・・・正直ね、アイツからツンデレツンデレって言われまくってて、どうしたものかと思ってるのよ。私、なにがいけないのかしら」



やっぱりアイツか。まぁ、予想はしてた。

うーん、なにがいけないって言われたら、こう答えるしかないんだよな。



≪少し話しただけではあるが、その印象、髪型、顔立ち、口調にそこから判断出来る性格。それらが『私はツンデレ♪』・・・と自己主張しているようなものだからな、修正は難しいだろう≫

「・・・そこまでなんだ」

「あー、バルゴラの言う事は気にしなくていいから」



でもごめん、俺も全く同じ事を考えてた。もうなんのテンプレから持ってきたんだって言うくらいにツンデレだし。

いや、まてよ。全てが王道であり希少価値でありステータスなんだから・・・逆を言えば、どうなる?



「・・・なら、どれか一つ変えればいいんじゃないのか?」



俺がそう言うと、ランスターさんが少し驚いたような顔で俺を見る。そして、食いついたのか少し身を乗り出す。



「変えればいいって、どういうこと?」

「まぁ、性格や顔立ちは変えるの難しいから置いておくとして・・・。
髪型をツインテールから変えれば、その印象が減るんじゃないかな。そのツインテールって、ツンデレの代名詞みたいなもんだし」

「髪型・・・あ、そっか。それは考えてなかったわ。なら、どんなのがいいかな。私、ツンデレとかそういうのがどこで決まるのか、あんまりよくわかんないのよ」



その言葉に、俺は腕を組んで考える。うーん、ツンデレに見られないように・・・顔立ちがあるから・・・あ、それならあれがいいかも。



「ストレートヘアーなんてどうだ? これなら、パーマとかそういうので髪をいじったりする手間もかからない。そのままリボンを解いて下ろせばいいだけなんだから」

「あ、それいいわね。・・・よし、これでもうツンデレとか言わせないわよ。きっと唖然とするわね」

「・・・随分、ヤスフミのこと気にしてるんだな」

「そう見える?」



俺は頷いた。どうもランスターさんの話を聞いているとそういう印象を受ける。ヤスフミの評価というか、見られ方を気にしているというか・・・。



「別に恋愛感情とか無いんだけどね。なんていうかこう・・・アイツとは、気が合うのよ。うん、なんか一緒に居てすごく楽なの」

「・・・なるほど」

≪そういうデレなのだな≫

「違うわよっ!!」










でもごめん、俺もちょっと思った。





だって、そう言った時のこのお姉さん、なんだか嬉しそうだったから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・現在、地獄・・・じゃなかった、時刻は午後10時。なんか雪など降り始めた。





だけど、僕は・・・僕達は動かない。だって、動けないから。





理由は一つ。発売開始まで、あと2時間もある。










「うぅ・・・寒いわぁ。てゆうか、雪振るとか言うてへんかったのに」

「・・・予約、してるのに」

「何言うてんの。アンタ来んかったら、限定フィギュアコンプリート出来んかも知れんやん」

「物がかぶるという可能性もあるけどね」

「人間、チャレンジすることに意義があるんや。そないな無粋な事言うたらあかんよ」





ここは、ミッドの繁華街。その中の行列に僕とはやてはコートにマフラー・・・フェイトからもらった紺色の手袋もつけつつ居た。

仕事が終わってから、僕とはやては速攻でここへ来た。だけど・・・前、沢山居るなぁ。



これ、もしかして買えないとかそういう話じゃ。





「大丈夫、数は仰山用意してるらしいから、なんとかなるで。・・・で、自分は何でプレイする?」

「・・・やっぱ剣士かな。はやては?」

「あー、うちはまだ迷っとるんよ。今度はヒーラーやろうかなぁ。なんやかんやでPT誘われるやん。
でも、単独行動とかソロでのレベル上げとかを考えたら剣士の方がなぁ。ゲームの中まで後衛やりとうないし」

「あー、それはちょっと分かる。サリさんも言ってたから」





この行列は、2月14日の午前0時ぴったりに発売される『ウィザードハンター3』を買うための行列である。

なお、ウィザードハンターとは、自分だけの魔導師キャラを作り、それを使って冒険していくというオンラインRPGである。ミッドでは数年前から大人気で、僕がヒロさんとサリさんと会ったのも、このゲームの攻略サイトのチャットがきっかけだったりする。

今までは引き継ぎだったのだけど、今回から大量の新要素を追加したため、完全な新規となった。そのため、新キャラどうしようかと言う話で盛り上がるのは必然だ。



なお、僕はしっかり予約して明日の夜には届くことになっているのに・・・はやてが付属の限定フィギュア(全2種)が欲しいから保存用に買っておこうと、無理矢理連れ出されたのだ。





「ヤスフミ・・・はやて、もう帰ろうよ。明日も仕事があるし」





・・・訂正。僕ともう一人居た。首に・・・僕がプレゼントしたクリーム色のマフラーを巻きながら、寒さのせいで少し震えているフェイトが。



フェイトは、特に声はかけてないけど無理矢理ついてきた。なお、理由はある。





「いやいや、ゲームまだ買ってへんのに帰ったり出来んよ。
うち、ここ最近のゴタゴタで予約するのすっかり忘れてもうてたし。てゆうか、フェイトちゃんこそもう帰ってえぇから」

「そんなわけにはいかないよっ! だ、だって・・・夜にはやてとヤスフミが二人っきりなんて・・・だめっ!!」





そう、これです。なんか疑われているのだ。僕もさすがに無いと言った・・・いや、言おうとしたけどやめた。



なんか反撃が来そうだと本能が言っていたので、やめたのだ。





「しゃあないな。なら・・・」



そのまま、フェイトの手を取る。フェイトがビックリした顔をするけど、気にしない。



「ヤス・・・フミ?」

「こうすれば、安心出来る?」

「う、うん。あの・・・ありがと」



別にいい。フェイトと手を繋ぐの、嬉しいし。でも・・・やっぱ寒いなぁ。うぅ、早く買いたい。



「いや、自分ら、うちの目の前でいちゃつくっておかしいやろ」

「なら、はやても手を繋ぐ? ただし、私と」

「そこ念押しせんでえぇから。・・・はぁ、まぁえぇわ。全く、フェイトちゃんおったら話出来んと思うてたけど、もうえぇわ」



・・・お話? えっと、なんだろ。



「リインのことや。ほら、あの子アンタの所行きたがってたやろ」



あぁ、なるほど。そのためにこれと。なのにフェイトが乱入してきたと。



「・・・うん、そうだね」

「いやな、あの子の話はもう聞いとるんやけど、よう考えたらアンタの話を聞いてないと思ってなぁ。・・・アンタは、リインのことどうするつもりや?」





一応、考えてはいた。リインが側に・・・って考えて。





「僕・・・は・・・」





どうしよう。それはきっと・・・とても大変で、覚悟が必要で、それで、それで・・・。

その時、手をギュッと握られた。・・・フェイトだった。

そのまま、フェイトは優しく微笑んでくれる。大丈夫だからと、きっと大丈夫だからと、瞳で言ってくれてる。



それに少し・・・ううん、沢山勇気をもらって、僕は、口を開いた。





「リインに、側に・・・」





リインに、側に・・・そうだ、側に・・・。





「居て欲しい」





リインは、やっぱり特別で、大事なパートナーで・・・。



側に居て欲しい。側に居るだけで、強くなれるから。心と心が繋がっていることで、安心出来るから。





「・・・そっか」

「ただ」

「なんや、続きがあるんかい。・・・ただ、なんや?」

「それがリインにとっていい事なのかどうか、考えて・・・迷ってる」



空を見る。降りしきる雪は、まだ止まない。燦々と降り、明日には積もるのではと思ってしまう。

・・・あ、帰り道、足を滑らせないように気をつけよう。



「それはまたなんでや。あの子はアンタの側に居たい。アンタはあの子に側に居て欲しい。それなら、両思いやん」

「でも、リインはまた8歳だ。まだ・・・子どもなんだ」



大きくなって、これからどうなるか分からない。それに、僕の側に居るのは、多分今みたいな局員としての扱いは厳しいかも知れない。

だって、僕が局員じゃないんだから。はやてやシグナムさんみたいに出世していて、偉いわけでもなんでもない。



「今の事じゃない。先の事を考えるの。僕と一緒に居て、リインが僕と一緒に居る事以外でやりたいことや通したいこと、出来るのかなって。もしかしたら、僕と居るのは悪手打ちになるんじゃないのかって、考える。
・・・今更ながら、みんなが僕に局員になれ。将来的にやりたいことが見つかった時、すぐにそこに向かえるように、まずちゃんとした居場所を作ろうって言った気持ち、理解出来たよ」

「ようするに、リインの先の事まで含めて、あの子を受け入れる覚悟が・・・まだ出来ん言うことか」

「そうだね。・・・もう少し、本当にもう少しだけリインとちゃんと話してみたいんだ。そうじゃないと、決められない」



修行に向かう前は、先の事はともかく今の気持ちだけでいいかなとか思ってた。・・・イマジンの一件で、リインとアルト、三人で一つの鉄だって再認識したから。

だけど、雫や雫に接する忍さんや恭也さんを見ていて、それだけでいいのかなと、考えた。まだ小さくて、純粋なあの子の未来のことまで、ちゃんと責任を持てるのかなと。



「先の事なんてどうなるかわからへんやろ」

「でも、その事も含めて持ってく覚悟は必要・・・じゃないかな」

「・・・そうやな。うちも、リイン生み出す時に同じ事考えた。ほら、あの子・・・先代リインフォースの事があったからな」



・・・お姉さんのことか。今も、見てくれているのかな。僕達の事。



「うちな、結構悩んだんよ。もしかして、うちのやろうとしてることは間違ってるんやないかって。ただ・・・先代の代わりが欲しくてあの子を生み出そうとしてるんやないかって、何度も・・・何度もや。それで夜眠れんくなったことも、一度や二度やない」

「はやて、そうだったの? でも、私達にはなんにも・・・」

「ごめんな、フェイトちゃん。人に知られたら・・・なんや、余計にごちゃごちゃしてまうようで、言えんかったんや」



どうやら、この一人で抱え込む癖は昔かららしい。ちょっとだけ心の中で苦笑した。



「まぁ、結局は生み出した。あの子は代わりやのうて、うちの末っ子なんや。末っ子やから、目一杯可愛がって、幸せにしたろうってな。・・・せやけど、一度後悔した。その選択は間違ってたんやないかって思うことがあった。
うちはあの子を幸せになんて出来んかった。あの子の心には、一生消えない重石がのっかかったんやから・・・ってな」

「僕の・・・ことだね」

「そうや」





僕とリインが出会うキッカケは、捜査活動中にリインが次元のひずみに落ちた事。それでまず行方不明。

見つかったら見つかったで、リインは狙われていて、それを守るために・・・僕が、人を殺して、リインに背負わせた。自分のために他人に命を奪わせたという事実を。



はやてからしたら、たまったもんじゃなかったと思う。不幸せフラグが立ちまくりだもの。





「まぁ、要するに何が言いたいかと言うとや。選択なんちゅうもんは・・・自分で正しくしていくもんちゃうんかな? 現に、アンタとリイン、アルトアイゼンはそうやってきたやないか。そして、これからもそうする」

「うん」

「それにな、あの子はアンタに出会えてめっちゃ成長した。小さい風は、自分の全部で一人の人間の全部を肯定出来る大きくて優しい・・・祝福の風になったんやから。恭文、うちがアンタにリインを託すのにつける条件は一つだけや。
あの子の幸せ・・・それが、アンタの笑顔と今を守ることっちゅう事を、絶対に忘れんようにして欲しい。それだけや。あとはまぁ、なんとかなるやろ。今小さい言う事は、これから大きくなるまでまだ余裕ある言うことやから」



はやてが、いつものタヌキ顔とは違う真剣な顔で言ってきた。言ってきたので・・・頷いた。



「なんにしても、やっぱりリインとは、もう一回だけ話すよ。でも、それは最終確認かな。僕の気持ちは・・・固まったから」

「そっか」

「はやて」



・・・ちゃんと、言っておこう。きっと必要だから。



「ありがと」

「えぇよ。・・・で、ちなみにこれで三人体制が決定したわけやけど」



シリアスの長持ちしない女である。どうしてニヤニヤした表情になるのかが、僕には理解出来ない。



「いちおう、エロはあの子の身体でも出来るから、問題はないで? ただなぁ、さすがに今はやめて欲しいんよ。年齢が年齢やし」

「はやて、私達本気で怒るよ? いくらなんでも今の子どもなリインを交えてそんなこと出来るわけないじゃない」

「い、嫌やわぁ、フェイトちゃん。うちは可能性の話をしとるだけよ? お願いやからその執務官モードな目はやめて欲しいわぁ」



仮にも家長がそんな話をするなよ。僕は色々とビックリなんですけど?



「ただ、結婚式にはあの子にもウェディングドレスは着せてあげて欲しいんよ。やっぱりそこで着られへんと気にするやろうし」

「だからどうしてそんな話っ!? 少し落ち着けー!!」

「・・・でも、そうした方がいいよね。『ヤスフミ×私+リイン』なわけだから」

「フェイトも納得するなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





あぁ・・・やばいっ! マジでやばいっ!! もしかして選択ミスったっ!? なんか一夫多妻制な匂いがプンプンだしー!!





「そんなん当たり前やろ。あの子は色々言うやろうけど、基本的にはアンタは二人の女を娶るのと同じやで? 頑張らんとあかんよ」

「そうだよ、ヤスフミ。・・・私は大丈夫だよ? リインとヤスフミの絆は認めてるし、リインともそうなったら一緒に頑張ろうねって話もしてるし」

「なんか僕の知らない間に外堀がしっかり埋められてるっ!?」

「もう一度言うけど、そんなん当たり前やろ。・・・あ、そやそや。二人に話が有ったんや」





・・・なに? 改まって。



まさか、結婚式がダメになったとか。





「そんなわけあるかいっ! うちの結婚式は予定通り3月3日に行うんやっ!!」





なんだろう、結婚式までもう3週間とか切ってるのが怖いんですけど。本当に準備出来るの?





「問題あらへん。・・・ほら、戦技披露会の話、してたやん。丁度一ヶ月くらい前に」

「戦技披露会・・・あぁ、3月にやるって言ってたよね」

「そやそや」



なお、話が読めない人は、ファーストシーズン28話のおまけをご覧ください。



「で、日にちが大方決まったから、うちの方にも連絡が来たんよ。三月の中旬やな。あと、今回はなんや嘱託の人間も呼ぶとかって言うてるんよ」

「嘱託の人間? え、でも戦技披露会って・・・」



確か、基本的にはなのはみたいな教導隊所属・・・とか、シグナムさんみたいな武装隊所属・・・とか、武装局員やっている人間限定なんじゃ。

つまり、最低限の条件として正式な局員というのがついてくるのと同じ。非常勤である嘱託を呼ぶとは思えないんだけど。



「ヤスフミの言う通りだよ。なのに、どうして?」

「ようするに、嘱託も局の一員・・・戦力の一部として公的に扱う事で、管理局の戦力の厚さを見せ付けようっちゅうことやろうな。なんにしても、上の連中は威信回復になりふり構っていられんっちゅうことやろ」

「なんちゅうはた迷惑な・・・」



てーか、そんなのに担ぎ出される嘱託が可哀想だよ。局の都合なんて、関係ないってのに。



「でな・・・まず、フェイトちゃん。悪いんやけど出場して欲しいんよ」

「わ・・・私っ!? え、どうしてっ!!」

「何言うてんの。アンタも充分出場資格あるやろ。エース級で、あのジェイル・スカリエッティを捕縛した人間なんやから」

「それは、そうだけど・・・あの一件に関しては、色々反省があって・・・」



フェイトが戦技披露会に出場・・・あ、なんかいいかも。というか、普通に名誉なことじゃないのさ。



「フェイト、いいじゃん。出てみなよ。きっといい経験になるだろうしさ」

「ヤスフミ・・・」

「こらこら、何普通に言うてんの。アンタもそこに関係しとるんやから」



・・・へ?



「ドウイウコトデショウカ」

「なんでいきなり片言になるんや・・・。えっとな、恭文にも打診があったんよ」



・・・・・・へ?



「はやて、あの、それって・・・まさかっ!!」

「そうや。・・・あのヘイハチ・トウゴウのデバイスを受け継ぐ愛弟子で、数々の現場でその不利な状況を相棒と持てる技能で覆し」



驚く僕とフェイトを余所に、はやての言葉は続く。



「JS事件では次元世界でトップ20に入るであろう凶悪犯罪者だったフォン・レイメイの暴走を止め、今年の頭にはあの『エース・オブ・エース』の高町なのは一等空尉を5分弱で退けたちゅうところを、高く評価したようなんよ。
フェイトちゃん、それに恭文。今日の朝・・・局の方から正式に、アンタ達二人に今回の戦技披露会・エースクラスへの出場依頼が来た」



僕とフェイトは、顔見合わせて・・・当然のように、叫んだ。



「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」










二月の中旬、降りしきる雪の中。僕達は叫んだ。





だって・・・ありえないもの。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・二月の中旬、降りしきる雪の中。私は、震えていた。





何回かインターホンを押すけど、出ない。通信・・・繋がらない。電源、切ってるのかな。





こんな遅い時間に、どこに出かけたんだろ。結構待ってるけど、帰ってくる気配が無い。





ぶつけたかった気持ちも、覚悟も、宙ぶらりんのまま、私の心の中で揺れている。ぶつけどころを失って、どうすればいいのかと泣きたくなる。・・・理不尽だと分かっていても、泣きたくなる。










「・・・なぎ君、どこに・・・居るの?」




















(第7話へ続く)




















おまけ:二人だけの内緒の会話




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・フェイト、聞こえる?










”うん、聞こえるよ。でも・・・驚いたね”



そうだね。というか、うぅ・・・なんかめんどそうなことに巻き込まれたなぁ



”そんなことないよ。きっといい勉強になると思うな”



僕には、あの地獄の祭典の絵しか思い浮かばないんですけど?



”・・・そこを言われると弱い。実は、私も同じだから。あ、そ・・・それとね”

”うん?”

”明日、バレンタインじゃない?”



そう、明日はバレンタイン。一応、ミッドでもバレンタインはポピュラーなイベントだったりする。

今頃隊舎では、調理場が非常に大変な事になっていると思われる。



”だから、つまり・・・その、えっと・・・”

”フェイト?”

”わ、私とお泊まりデート・・・しない?”



・・・え、お泊り? フェイトと? ラトゥーアみたいに?



”・・・うん。ラトゥーアみたいというか、ラトゥーア。実はもう予約してたりするんだ”

”はいっ!? いやいや、またどうしてっ!!”



あ、ま・・・まさかっ!!



”・・・エッチな事は抜きだよ?”



・・・え、違うの? てっきりいつもの天然パワーで四度目の正直を狙っているもんかと。



”リインと、三人で。・・・確かに、四度目の正直を狙いたいというのは、ある。うん、それは本当に。だって、ヤスフミの自宅だと危ないみたいだし”



あぁ、そうだよね。過去三回の未遂は全て僕の家でだもんね。なんか呪われてるんじゃないかって思うくらいに色々あったよね。

でも、どうしてリイン?



”・・・リイン、少し寂しがってるんじゃないかと思うから。あんまり私が独り占めするのはだめかなと”

”そっか・・・”

”だから、お泊りして、そこで色々話そうよ。一応・・・三人体制になるわけだし、もう一度、ちゃんと三人で。これからどうしていこうか・・・とか。そうすれば、ヤスフミも気持ちが本当の意味で固まるんじゃないかな”

”そうだね、きっと必要だよね”



リインは、大事なパートナー。だけど、同時に悪友の末っ子。やっぱり、どうしても色々と考えてしまう。

だから、話さないといけないんだ。しっかりと・・・。うん、頑張ろう。



”でも、ヤスフミ一人じゃないよ? 私も頑張るから”

”・・・ありがと”

”いいよ。それとね”

”なに?”

”・・・ダメなの”



いや、あの・・・なにがっ!?



”なんだか、我慢・・・出来ない”



なぜだろう。思念通話なのにフェイトの声が艶っぽく聞こえたのは。



”一昨日の夜みたいに・・・ううん、もっと沢山、ヤスフミに触って欲しいって、考えちゃうの。もっと深く、強く繋がりたいなって、思っちゃう。そうじゃなくて、起きた時に隣にヤスフミが居ないの寂しいなって、そう思っちゃうんだ”

”フェイト・・・”



・・・そっか、それは・・・僕と同じだ。



”僕も・・・同じ”

”そうなの?”



返事の代わりに、フェイトの手を強く握り締めた。安心させるように、強く。



”・・・だったら、嬉しい。でも、ちょっと怖いね。あの温もりと安心感・・・やっぱり、手放せなくなりそうだよ。毎日一緒に寝たくなるから”

”うん、ちょっと怖い。まぁ・・・エッチなコミュニケーションはまたゆっくりでいいよね。あの、もちろんフェイトが気遣ってくれるのはすごく嬉しい。それは本当。でも、それだけが目的で付き合ってるわけじゃないから”

”そうだね。私も同じだから。ヤスフミのこと、もっともっと好きになりたくて付き合ってるんだから”



フェイトが手を握り返してくれた。それが、嬉しかった。

やっぱり、僕はこの人が好きみたい。これだけで、すごく幸せになれるから。



”やっぱり、私達・・・焦りすぎてたのかな”

”そうかも知れないね。なら、もうちょっとだけスピードを落として、ゆっくりしていく?”

”うん、そうしようか。まずは、こうやって手を繋いだりとか、あと・・・こう、キスしたりするところからで”

”・・・うん”










どうしよう。あの・・・どうしよう。ヤバイ、今からすごく緊張してきた。お泊りデートなんて、久々だし。・・・なお、あれは修行と旅行なので含めない。





でも、今回はホテルだし・・・邪魔は絶対に入らないはず。いや、エッチな事抜きだけど、最近そう言うパターンが多いから。





いや、これで入ったら僕は泣くよ? いや、真面目にだよ?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・どないしよ。





なんや、隣の二人がめっちゃ固有結界発動して来てるんやけど。もうあれやで? アンリミテッド・シュガー・ワークスやて。『無限の糖製』やて。





ちゅうか、なんでこないにいちゃつくだけでこの二人は甘ったるいんや? IFギンガ辺りは同じ事しても、普通に程よい甘さやのに。





あぁ、早く2月14日になってーなっ! うち、このままやとウィハン買えた頃には子豚ちゃんやでっ!? 結婚式でドレス着る前にそれは嫌やー!!




















(本当に続く)




















あとがき



古鉄≪・・・というわけで、本日のあとがきです。結局色々ゴタゴタして、話があんまり進んでいないように感じる第6話、みなさんいかがだったでしょうか。本日のあとがきのお相手は、古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「蒼凪恭文です。・・・さて、こうしてセカンドシーズンのメインイベントである戦技披露会編へのフラグが立つわけですよ。これ、トーナメントとかじゃないよね?」





(違います)





恭文「まぁ、嘱託の僕が出れる理由は劇中の通りってことで・・・納得してね? 当然嘱託の身で出られる事に関しては、色々付随イベントがあるんだから」

古鉄≪まるでどこぞのキャッチセールスのように付随しています。まぁ、それはまた次回に説明になりますが。・・・いや、しかし第6話。かなり時間かけましたね≫

恭文「リインとの問題をどうするのかって所で色々考えてたらしいから。普通に受け入れるのも違うのかなーってさ。まぁ、こんな形になりましたよ。しかし・・・ジンとティアナ、どうなんの?」

古鉄≪とりあえず、このノリだとジンさんも劇場版第二弾に登場しかねない勢いなのが怖いですけどね≫

恭文「でも、レギュラーってなるとそうなるんだよね。どうしてもさ」





(なお、劇場版第二弾・・・下書きに入りました。多分ですが、5話程度・・・本当に今回は劇場版というノリと展開でいくと思います。でも、某作品の劇場版方式にすると、多分2話で終われます)





恭文「いやいや、あれはだめでしょ。だって・・・ねぇ?」

古鉄≪ノリではなく展開的に最初からクライマックスですから。あれですよ? いきなり最終決戦のシーンから始まると考えていただければ正解です≫

恭文「ようするに・・・前説でこういうのが流れるのですよ。『・・・さらわれた蒼凪恭文と、さらったプレシア・テスタロッサと牙王一味を追い、フェイト達はようやく追いついた。今・・・最終決戦が始まるのである』・・・って説明が流れてから、どんぱちですよ。
基本どんぱちだけですよ。なぜさらったのかとか、さらわれた描写とかは一切抜き。いや、これの方が構築は楽ではあるけど、さすがに無いでしょ。読んでる人置いてけぼりだしさ」

古鉄≪現に、作者は置いてけぼりでしたしね。・・・まぁ、そんな話はともかくとして、次回です。次回はいよいよ・・・あの日ですよ。バレンタインですよ≫

恭文「どうなるのかなぁ。色々あるとうれしいけど」

古鉄≪とにもかくにも、今回はここまで。お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「蒼凪恭文でした。それでは・・・またっ!!」










(その展開的に最初からクライマックスな作品の歌をうたいながら、お別れ。
本日のED:愛内里菜『Code Crush』)




















リイン「というわけで、頑張るですよー♪ 美味しいチョコを作って、恭文さんをメロメロにするですー!!」

シャーリー「リイン曹長、気合い入ってますね〜」

リイン「はいです。でもでも、みんなの方が気合い入ってるですよね」

アルト「・・・ヴァイス陸曹は意外と甘いのが好きだから、うーんと甘めに・・・と」

ルキノ「グリフィスさん・・・」

キャロ「えっと、このエキスにこの薬草を煎じた物を入れて、あとあれの尻尾をすりおろして・・・と」

シャーリー「本当に入ってますねー。ただ、若干一名ちょっとあれですけど」

リイン「そうですね。・・・キャロ、一体何を作るつもりですか? お鍋から奇妙な色の煙が出てるです」










(おしまい)





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