小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説) 第13話 『どうにも微妙なスタート・ダッシュ』:1 そして、放課後が来た。うん、なんとか・・・無事に済んだのよ。でも、これからのことを考えると頭が・・・あぁ、マジで痛いし。 つーか、二階堂が何かあったら助けてとか言ってくるし。あぁ、辛い。マジで辛い。どうすりゃいいのあれ。まさか初日でクラスが真っ二つに割れるとは思わなかった。 誰でもいいから・・・あの朝のすがすがしい気持ちを返してー!! 『そ・・・それは大変だったね』 「かなりね。いや、超展開過ぎて僕はついていけない。・・・でさ、まだ大変な事があるんだよ」 『なに?』 今日は始業式。なので、ガーディアンの会議を含めても早めに帰れるからとフェイトに電話して、今日の話をした。 まぁ、買い物とかないかどうか聞くため・・・ってのもあったんだけど、もう現時点で買い物してるので、大丈夫らしい。 というか、多分今フェイト・・苦笑いしてるね。うん、声でわかるもん。 ・・・実は、これはさっきまなみちゃんとわかなちゃんから聞いた事。例の転入生、真城りまについてだ。 「あの子、もしかしたら新任のクイーンズチェア・・・ようするに、なでしこの後任かも知れないの」 『えぇっ!? で、でも・・・それならリインが』 「多分、リインか真城りまのどっちかが今のあむ・・・ジョーカー的な役職になるんじゃないかな。ようするに、プラスアルファ? まさかなんの話も無くリインのガーディアン入りは無し・・・なんて、唯世がするわけないし」 『・・・なるほど、それもそうだね』 さて、そうすると出てくる問題がある。それも、結構重いのが。 「あとは、どのタイミングで僕達の事を話すか・・・だよね」 いや、正直あの強烈な三振で、いきなり学級崩壊という結果を導いたアレを相手に話すのは、かなり躊躇われるんだけど・・・。 出来るなら、単なる噂であって欲しいとも思う。 ただ、そこまで考えて思いなおす。 ・・・もしかしたら、あの子のあれはいわゆる外キャラというやつなのではないかと。ただ、あむや僕とかよりもそうとう分厚くて硬い。 うーん、ちょっと反省。ここで信用出来るかどうかなんて話をするのは間違ってるのかも。 やっぱここは基本どおり、あの子の事を知っていって・・・それからだよね。 『唯世君とはその辺り相談してるんだよね?』 「うん。・・・とりあえず、話すタイミングは僕とリインに任せてくれるってことになってる。 これ、唯世はともかくあむ達には言えないけど・・・話すタイミングは、やっぱりちゃんと考えたいんだ」 ここには理由がある。まぁ、さっき言った事と違うって言われそうなんだけど・・・二階堂のように学校にイースターの人間の誰かしらが入り込む可能性もまだ無くはないから。仲間内疑ってる行動だから、あんま気分はよくないけどさ。 『・・・まぁ、それでも状況が状況だから。必要な毒なら、飲み干すことも大事だと思うよ? もちろん、ヤスフミが話したいと思ったなら、いつでも話してくれていいから。そこは、任せる』 そう言ってくれると、非常にありがたい。・・・とにかく、なんか荒れそうだなぁ。なんかすっごい不吉な始まり方したし。 あははは・・・マジで頭痛いよ。特に二階堂の『頼むから僕に協力してー』的な視線が。 『二階堂先生とは、だいぶ上手くやっているみたいだね』 受話器越しから、どこか嬉しそうな声でフェイトが聞いてきた。それに・・・まぁ、苦い思いも抱えつつこめかみを押さえる。 「・・・あむ達見てたら、毒気抜かれたしね。でも、別に仲良しってわけじゃないけど」 『それでも、いいことだよ。もしかしたら、友達になれるかも知れないよ?』 「二階堂と? それはごめんこうむりたいなぁ。どこでそうなるのかがさっぱりだし」 『でも、私達だってそうだったよね。本当に初対面の時はぶつかっちゃったけど、そのあとすぐに仲良くなれたし』 ま、まぁ・・・それは確かに。フェイトの言うように、初対面でやりあって、印象悪くて・・・そこから仲良くなって。 ただ、フェイトのこととは一緒にしたくない。僕は別に男色の趣味はないから。 『そ、それもそうだね。・・・あ、ごめん。そろそろレジの順番来ちゃうから』 なにやら、夕飯の買出し中だったらしい。その待ち行列が長いとか。 「ううん、大丈夫。・・・フェイト、買い物ありがとね。あ、帰りも気をつけてね」 『うん。・・・じゃあ、また家でね』 「うん」 そのまま電話を切る。そして、制服の内ポケットに入れる。・・・さて、そろそろロイヤルガーデンに向かわないと。 で、また廊下を歩き出す。すると・・・見つけた。走ってどこかへと行くあむを。普通ならそれだけだった。でも、普通じゃなかった。 だって・・・泣いてるように見えたから。 ・・・僕はまた携帯を取り出した。電話するのは・・・我が王様。曲りなりにも剣を預けているわけだし、こういうのはきちんとしておきたいのだ。 ”・・・追いかけるつもりですか?” ”うん、なーんか気になるしね。それに・・・” ”そうですね。・・・空海さんもすぐ会えるとは言え居なくなって、なでしこさんも留学。やっぱり、フォローは必要ですよね” ”そういうこと” 『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説 とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご 第13話 『どうにも微妙なスタート・ダッシュ』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『・・・それじゃあ、6年星組かわいい女子ランキング・第1位の発表ー!!』 ロイヤルガーデンでお茶会も兼ねた会議があるので、それに向かう途中・・・ちょっと忘れ物をしたのに気づいて、教室に戻ると、クラスの男子がこんな事をしていた。 最初に聞いた時はくだらないことしてると思ってた。でも・・・違った。 『・・・やっぱりりまさまかー。まぁ、当然だよな。キツイけど可愛くて・・・そこがまたよしで』 『見た目とのギャップもオーケーだよな』 『でよ、日奈森あむはどうだ?』 突然あたしの話になった。・・・普通なら、気にする必要なんて無かった。 『あー、なんか意外と普通。女子とつるんでるし・・・一匹狼っぽいところがよかったのになぁ』 『だなー。クール&スパイシーが間近で見れるって期待してたのによ。てゆうか・・・あれだよ、あれ』 『そうそう』 『らしくなくなったよなー』 ・・・現在、あたしは近くの公園を歩いている。お茶会をサボって、憂鬱な気持ちを抱えつつ。 一匹狼・・・クール&スパイシー・・・全部あたしの外キャラ。ほんとのキャラじゃない。 ほんとのあたしは、ビビリで、情けなくて、弱くて・・・全然だめで・・・。 「あむちゃん・・・」 ランの声が聞こえる。でも、憂鬱な気持ち、全然消えない。 「てゆうかさ・・・いいんだけどさ、別にさ・・・」 モテたいわけでも、人気者になりたいわけでもないけどさ。 ただ・・・あんな風に外キャラで見られるのがいやで頑張ったのに。 一生懸命にこにこしてさ。キャラじゃないのに無理して・・・なのに、バカみたいとか、らしくないとか・・・もう・・・。 もう・・・!! 「もう嫌だー!!」 爆発した。色んな・・・ごちゃごちゃしたものが。声になって全部吐き出せと、体中で言っている。 「どーしろって言うわけっ!? わかんないよっ! 春なんて・・・嫌な事ばっかっ!!」 ホントのアタシって・・・! あたしらしさって、いったいなにっ!? わかんないっ! マジでわけわかんないよっ!! その時だった。カバンの中に大事にしまっていたダイヤのたまごがあたしの横を通り過ぎ、空に浮かぶ。 そして、黒ずんだ。その黒ずんだたまごに模様が浮かぶ。 それは・・・あたしがこの1年の間に見慣れたものだった。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ・・・くそ、居ない。こっちの方だと思ったのに。 アルト、たまごサーチお願い。なんかやばい感じがひしひししてるの。 ”もう行っています。・・・出ました。あっちです” アルトの指示された方向に向かって歩く・・・というか、走る。すると、人影を見つけた。それは・・・え、フェイトっ!? 両手に買い物袋を持ってフェイトが歩いていた。で、僕を見つけて笑顔で手を・・・触れないから。それでは触れないから、振ろうとしないで。 とにかく、僕はフェイトのところへと行く。さえぎる車道を、車の通りに気をつけて、横断歩道を渡って・・・到着。 そのまま、フェイトと合流。フェイトはその場で待っていた。 「ヤスフミ、もう会議終わったの?」 「それどころじゃないの。・・・あむ、見かけなかった?」 「あむさん? ・・・ううん、見かけてないんだけど、なにかあったの」 「かも知れないの」 まぁ、心配ないと思うけどさ。でも、さすがに・・・色々あったしなぁ。 ごめん、やっぱり心配だわ。なでしこから頼まれてもいるし、やっぱり心配。 ”マスター、フェイトさん” アルトの声がした。その思念は、フェイトにも伝わってるらしい。僕の胸元のアルトに視線を向ける。 ”・・・どうしたの?” ”おかしいんです。たまごの反応が・・・三つじゃないんですよ” 今、アルトはしゅごキャラじゃなくて、しゅごたま・・・ようするに、物理的に存在しているたまご本体を対象にサーチしている。 で、そのたまごが三つじゃない。だけど、あむのたまごは三つ・・・つまり、一個余っている。例え今ラン達が三人揃って無くても、ここに疑問があるのは同じ事だ。 とにかく、それならその一個は誰の? 普通にしゅごキャラとかならいい。でも、そうじゃないなら・・・1番可能性があるのは、×たま。 そして、僕とフェイトは顔を見合わせる。 「フェイトっ!!」 「うんっ!!」 そのまま、アルトにナビしてもらいつつ近くの遊歩道へと走る。そして・・・あむを見つけた。 いや、あむだけじゃない。ランに、ミキに、スゥ・・・そして、あむの上空に一つのたまご。 黒ずんでてよく分からないけど、ダイヤの模様がついていて、バッテンがついて・・・。 な、なに・・・あの×たま。今まで見たのと全然違う。 だけど、動揺してる暇なんてなかった。僕達が驚いている間に、たまごが空へ飛び立とうとする。 「ほっぷっ!」 ランの声と一緒に、あむの両腕にピンク色の羽が生える。 「すてっぷっ!!」 今度は両足。 「じゃんぷっ!!」 あむは、ランとキャラチェンジして、そのまま空高く跳ぶ。跳んでたまごを捕まえようとして・・・ぶつかった。 もうそうとしか言いようが無い。空高く飛んだ×たまにまっすぐ向かってたのに、何かにぶつかったように上昇していた軌道はストップして、そのまま落下を始めたのだ。 で、あむは地面に叩きつけられ・・・って、させるかっ!! 僕は咄嗟にダッシュして・・・あむをキャッチ。なんかお姫様みたいになってるのは気のせいだ。 「・・・あれ、痛くない。 というか・・・あの、恭文っ!? なんでここにっ!!」 驚いてるけど、そこはいい。問題はここじゃないんだから。 「あむさんっ! 大丈夫っ!?」 その声の方を見ると、フェイトが走りよってきた。・・・買い物袋を手から離さないのは、どう評価するべきかちょっと迷う。 「フェイトさんまでっ!! ・・・えっと、買い物帰りですか?」 「あ、うん」 まぁ、見れば分かるよね・・・って、そうじゃないっ! あの×たまが一体何かを聞かないと 「う、うーん・・・」 だけど、聞けなかった。だって・・足元から声がしたから。 それはピンクと白の柄のたまご。そのたまごの横に・・・小さな女の子。何故か風呂敷も横に落ちている。 金色の長い髪に白いワンピースに小さな羽根、頭の上に天使の輪がついて・・・。 え、この子しゅごキャラっ!? 「あの、君・・・大丈夫っ!? ねぇ、しっかりしてっ!!」 フェイトが買い物袋を置いて、その子とたまごを手にとって・・・あれ? なんかおかしいな。 ・・・ちょっと気になったので、フェイトに聞くことにした。 「・・・あのさ、フェイト」 「ヤスフミ、この子すぐに家に運ぼう? 見たところ怪我とかはないみたいだけど」 「いやいや、ちょっと待ってくださいよお姉さん。・・・ねぇ、その子多分しゅごキャラなんだけど、見えてるの?」 僕がそう言うと、フェイトが固まった。そして・・・ゆっくりとうなづいた。 それに僕とあむが顔を見合わせる。そして、すぐにスゥ達に視線を移す。で、スゥ達は敬礼すると、フェイトの前へレッツゴー。 「あ、あの・・・初めまして。私達のこと、見えますか?」 「・・・ボクのことは、どうです?」 「フェイトさん、スゥのことは・・・どうですかぁ?」 「・・・見えるよ。あの、みんな・・・見える。 あれ、私・・・しゅごキャラが見えてるっ!?」 「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」 ・・・6年生になった最初の日。そう、その日はきっと一生忘れられない日になった。 だって・・・あんまりにカオス過ぎるから。咲耶が来た時、超えてるんじゃないの? ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・え、恭文さん居ないんですか?」 「あむちーも来てないの? というか、これじゃあ会議できないじゃんー!!」 「うん、二人ともちょっと事情があってね。まぁ、会議って言ってもこれからのガーディアンについての方針を話すだけだから・・・」 やっぱり、蒼凪君は日奈森さんのことなんだかんだ言いながら気にかけてるよね。 まぁ、新生活の始まりがあれだったから無理ないんだろうけど。 うーん、日奈森さん・・・大丈夫かな。 というか、僕までなんか不安になってきたんだけど。新体制のガーディアン、大丈夫かな。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・で、とりあえずうちに連れてきたと。とりあえず・・・その白い子は私には見えません。 でも、ティアや咲耶は見えるんだよね。あと、フェイトさんも」 「はい、もうばっちり」 「同じくですわ」 「うん、私も見えるよ。どうしてかはわからないんだけど・・・やっぱりアリサのアドバイスのおかげかな」 ≪・・・あの人、あなたに一体なに話したんですか≫ 現在、あむとあのあむがぶつかった子を連れて、家に戻ってきた。 白い子はバスケットのベッドに寝て・・・なんか唸ってる。まぁ、心配なさそうな感じが見受けられるので気にしない。なんかね、ギャグ的な要素がたっぷりなの。 「というか、おじいさま。私このたまご・・・見覚えがあるのですが」 「・・・うん、僕も」 ≪私もですね≫ 「ヤスフミ、咲耶、アルトアイゼン、そうなの?」 僕と咲耶はうなづく。この子はともかく、ピンクと白い柄のたまごには見覚えがある。 あれは・・・三月の話。あの時・・・あの子が持っていたたまごだ。 「このたまご、ほしな歌唄が持ってたんだよ。多分間違いない」 「それじゃあ・・・この子、アンタ達の報告にあったほしな歌唄のしゅごキャラってことっ!? でも、それがなんで自分のたまご持ってあむと衝突事故・・・いやいや、ありえないでしょっ!!」 「そこは分からないけど、とりあえず・・・あむさん」 フェイトの言葉に、リビングの椅子に座って同じようにこの子を見ていたあむが、身体を硬くする。・・・何を聞かれるか分かったらしい。 「あの×たま・・・なんなのかな。普通のたまごと違う感じがしたけど」 「えっと・・・それは、あの・・・」 「・・・あむちゃんのしゅごたまなんです。でも・・・×が付きました」 ミキが静かに答えた。で、当然僕達は・・・驚きの表情を浮かべる。 「ミキっ!!」 「隠してても仕方ないよ。実際に見られちゃってるわけだし、なによりあむちゃんだけで何とか出来ることじゃないでしょ?」 その言葉に、あむが言いよどむ。すっごい勢いで目が泳ぐ。・・・かなり混乱してるな、これは。 「・・・あの、なぎ君。どうしたの?」 「・・・・・・あむのたまご、×が付いたんだって」 「えぇっ!?」 ・・・頭を右手でかく。なんか落ち込んでる様子だけど、聞かなきゃ分かんないので、ちょっとツッコんでいくことにする。 「あむ、しゅごたまってどういうこと? あむのしゅごたま、三つだよね」 でも、ランもミキもスゥもいる。そんなことになってるとは思えないんだけど。 「あ、私が説明するよ。えっと、今日の朝、あむちゃんが起きたらあのダイヤのしゅごたまが生まれてたんだ」 「つまり・・・四つ目のたまごってこと? あ、だからダイヤの柄だったんだ」 ・・・ハート、スペード、クローバー・・・なんて安直な。 「・・・予想通りだね」 「寸分違わずピッタリってどういうことだろ」 「きっと、スゥ達と恭文さんが仲良くなった証拠ですよぉ」 なぜかキャンディーズが僕を見て苦笑いしている。なぜだろう、ちょっと不愉快な感じがする。 「ね、予想通りってなに?」 「いやいやっ! そこは気にしなくていいからっ!! ボク達なにも言ってないよっ!?」 「と、とにかく・・・あの時それに×がついちゃって・・・そこに恭文さんとフェイトさんが来たんです」 で、それはそのままお空を飛行と。で、その代わりに・・・これですか。 僕は視線を向ける。バスケットの中に作られた即席ベッドの中でうーうー唸りながら未だに目を覚まさないこの子を。 「うし、これはキャラ質にでもするか」 そうすればほしな歌唄は・・・いや、あれがそんなの気にするとは思えない。僕と同じドSだしなぁ。二階堂の二の舞がオチか。 うーん、でもでも・・・そうすると・・・。 「・・・ヤスフミ?」 考え込んでる時にフェイトにそう声をかけられて気づいた。みんなの視線が・・・ちょっと冷たい。フェイトも、ちょっと怒ってる。 「い、いやだなぁ。本気なわけないじゃない。あは・・・あははは・・・」 「・・・いや、アンタ結構本気だったでしょ。目が物語ってたわよ?」 「恭文さん・・・メっ! ですよっ!?」 「はい、ごめんなさい。・・・でもさ、実際問題この子はどうする? 目も覚まさないし、ほしな歌唄に返すにしても本当にそうなのかって確証があるわけでもないし」 もしかしたら、あの時見たのとよく似ているたまごの可能性もあるわけでして・・・。 僕の言葉に全員が唸る。唸って・・・唸って・・・あむが叫んだ。 「あぁぁぁぁぁぁっ! どうすりゃいいのっ!? ×たま狩りが仕事なのに、自分のたまごに×付くなんてありえないしー!! リストラだっ! 絶対あたしガーディアンにリストラれるー!!」 え、そっちっ!? あなたそっち悩んでたんですかっ! いや、重要な問題だけどっ!! でも・・・そっか、あむのたまごの事もあるんだ。・・・あぁ、どうすりゃいいのよこれは。 「あむちゃん、落ち着いてっ!? 私やフェイトさん達も協力するからっ!!」 「そうよっ! こんなところで叫んだってどうにも・・・あぁもうっ!! 少し落ち着きなさいよっ! ×が付いちゃったもんはしかたないでしょうがっ!!」 ・・・だめだ、あむは頼りにならない。まぁ、自分のたまごに×がついたから当然か。 「でも・・・」 フェイトがその様子を見て考え込んだような表情を見せる。 ”・・・どうしたの?” 思念通話に切り替えて、聞いてみる。 ”あむさん、普通だよね。倒れたりとか、ティアの時みたいに寝込んだりとかもないし” ”・・・他にたまごがあるからでしょ。四つのうち一つだけに×がついた状態でも、他の三つがあるから心がからっぽになってない” ”そっか。・・・でも、なんだか嫌だね。それだと、あのたまごの子・・・居なくなっても構わないみたいだよ” ”まぁ、理屈は分かるけど、そこを言っても仕方ないよ。というより・・・あむに言ったらだめだよ? タダでさえアレなんだから” シャーリーとティアナになだめられて何とか落ち着いて・・・いや、今度は落ち込んだ。すごい勢いで落ち込んだ。 情緒不安定もいいところだね。・・・新学期初日なのに、なんでこんな未来への不安が大きくなってるんだろ。不思議だ。 ”うん、分かってる。・・・あむさんがそんなこと思うわけがないもの。とにかく、この子は目を覚ますまでここで預かろうか” ”いいの?” ”うん。・・・上手く行けば、情報がつかめるかも。あ、でも私達だけだと目を覚ました時にびっくりされちゃうね” まぁ、そうか。ほしな歌唄のしゅごキャラかどうかは別として、知らない人間ばっかりだし。 ”なら、ちょっと協力してもらおうかな。・・・よし、せっかくお話出来るようになったんだし、頑張ろう” フェイトは笑顔で微笑みながら・・・ある子に話しかけた。・・・ランに。 「・・・ランちゃん」 「あ、はい」 微笑みが深くなる。どうやらフェイト・・・この状況が嬉しいらしい。 「あ、あの・・・フェイトさん?」 「あ、ごめんね。・・・やっとみんなと話せるようになったの、嬉しくて。あ、それとメッセージありがと。すごく嬉しかったよ」 「いえ、あの・・・私達も、お話出来て嬉しいです。みんなみんな、フェイトさんもそうだし、シャーリーさん・・・はまだだけど、二人と話したいなって言ってたんです」 ランがにっこりと笑う。フェイト・・・マジで嬉しそうだなぁ。なんかあたまから『♪』マーク出てるし。 「それでね、少しお願いがあるんだけど、いいかな」 「お願い?」 ・・・何度も言うようだけど、今日は新学期初日。本来なら、普通に平和に過ごして、これから楽しい事があるといいなぁーとか考えて一日を終える。 なのに・・・なのに・・・なんでこんなため息吐きたくなるんだろ。あはは・・・マジでどうなんの、これ? ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・それで、ランがここに居るですか」 「うん。フェイトさんにこの子のお世話係を頼まれたんだ。あむちゃんのたまごの方は、スゥとミキが探してくれることになったから、今日はここでお泊り」 「でもランちゃん、本当にありがと。急な頼みだったのに、引き受けてくれて」 「あ、大丈夫です。美味しい夕飯もご馳走になってますしー。というかというか、恭文もフェイトさんもお料理上手だねー」 小さいチアガールが、シチューをすすりつつそう笑顔で言って来た。それに僕もフェイトも笑顔になる。だって・・・あの、やっぱり美味しいって言ってもらえるのは嬉しいから。 現在、夜の6時。1時間ほど前にリインが帰ってきたので、事情説明。そして・・・頭を抱えている。まさか自分がややと交流を深めている間に、こんな事になっているとは思って無かったらしい。 「でもその子・・・全然目を覚まさないわね。さっきから唸ってばっかり。ね、あむってどれくらいの速度でこの子と衝突したの?」 「・・・あむもなんだかんだで全速力だったろうから、結構速かったかも」 「あはは・・・次からは前方確認は怠らないようにするよ。さすがにちょっと反省」 「そうね、そうしときなさい。・・・でさ、6年星組・・・なにやら大変な事になってるみたいじゃない」 ティアナが夕飯のシチューを食べつつそう言ってきた。・・・それで、また頭が痛くなる。出来ればそれは・・・思い出したくなかった。 「ティアナ、なんで知ってるの?」 「学校中の噂よ。謎の転入生を巡って、男女に真っ二つに分かれて学級崩壊したって」 「あ、リインも唯世さんから聞いたです。恭文さん、大丈夫なんですか?」 「・・・ごめん、自信ない。あははは・・・第三勢力って、きっとどっちにもハブられるよね」 「なるほど、アンタの方針としては、どっちに付くつもりもないと」 ・・・当然でしょうが。正直、めんどくさいのよ。まぁ、心情的には女子側ではあるけど、そうすると今度はあの転入生の立場が悪くなる。ついでに、僕の男受けも悪くなる。 明日は・・・いい日でありますように。いや、真面目にだよ? ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ そして、翌日・・・。ガーディアン総会が行われた。 ガーディアン総会というのは、その名の通りガーディアンが開く総会。日々の活動の成果などを生徒に報告すると言うものになる。 そして、今日の総会の主題はたった一つ。・・・今年度のガーディアンメンバーの紹介。知っての通り、空海は卒業、なでしこは留学、つまり・・・特別職であるあたしを除くと、四人が定員のガーディアンの席は、二つ穴あき状態。 生徒達は、その穴に誰が行くのか・・・または、前期のメンバーから変更はあるのかと、かなり騒がしい。 そして・・・始まった。 『それでは・・・本年度、ガーディアンメンバーを発表します』 司会の子の紹介でまず出てきたのは・・・まずはキング。 『K(キングス)チェア・・・辺里唯世』 その瞬間、生徒から歓声が聞こえる。・・・あはは、やっぱり唯世くんは人気者だなぁ。 で、次はエース。 『A(えーす)チェア・・・結木やや』 「やっほー!!」 ややが笑顔と共に集まっている生徒のみんなに手を振ると、また歓声。どっちかと言うと男の子の比率が高い。 ・・・あぁ、ややも可愛いから人気だよね。うん、分かってた。 で、次は私。 『ジョーカー・・・日奈森あむ』 は・・・恥ずかしい。ロイヤルケープ着ているせいかすごく恥ずかしい。うぅ、本当は嫌だったのに。 なお、六年生の方から叫び声が聞こえたのはきっと気のせいだと言う事にしたい。というか・・・星組の女子全員の気合いの入れようが怖いんですけど。 てゆうか、なんであたしだけ歓声じゃなくて叫び声・・・。 「あむちん、よくケープ着てきたね〜。もしかして、初めてじゃないの?」 「ま、まぁ・・・一応ジョーカーだしね。こういう時くらいはね」 ややのひやかしには一応こんな形で流したけど・・・実は違う。たまごの事が引っかかって、後ろめたくて、着るという選択肢しかなかった。 『それでは、今期の新メンバーの紹介です』 そうして、体育館の両端に出てきたのは・・・あれ? 恭文とリインちゃんじゃない。 赤いケープを着た子は・・・例のあの子。 『Q(クイーンズ)チェア・・・真城りま』 そして、青いケープを着た子は・・・この子は見た事ない。 真ん中に髪を分けて、私や唯世君より背が高い。スラっとして細くて・・・線だけ見ると女の子みたい。 『J(ジャックス)チェア・・・三条海里』 そうそう、この子がジャックス・・・あれぇっ!? 恭文とリインちゃんはどうしたのっ! どこっ!? 一体どこっ!! 私は唯世くんを見る。・・・どういうことかと。なんで二人がいないのかと。 三学期に、今年度から二人は正式にガーディアン入りをしてもらおうって言ってたのに、これはどういうことかと。 てっきりあたしは、恭文がジャックで、リインちゃんがクイーンだと思ってたのに・・・・これ、なにっ!? あたしのそんな気持ちが伝わったのか、唯世くんが微笑みながら、指差す。それは・・・体育館の右側。そこから、二人の姿が出てくる。 『そして・・・今年度は新しい役職が追加されます』 青いケープと、赤いケープを着た子達。あたしやみんなのよく知る子達。 ・・・古き鉄と、祝福の風がそこに現れた。 あ、これは模擬戦見学した時にはやてさんとリンディから教わったこと。 優秀な魔導師には、その行動や功績に合わせて、どういうわけか二つ名が広まると。それは一種のスラングだったり、または賞賛を込めた名前だったり・・・。 えっと、なのはさんが『エース・オブ・エース』で、フェイトさんが『閃光の女神』。みんなして、二つ名なんてかっこいいって大騒ぎしたっけ。 ・・・フェイトさんはすごく恥ずかしがってた。いくらなんでも、女神なんて大げさだって。 そして、そこではやてさんが『そないなことないやろ、恭文にとってはフェイトちゃんは女神やし』・・・なんて言うから、フェイトさんはスチームを大量排出していた。 うぅ、うらやましいなぁ。・・・あたしも頑張ろう。頑張って、8年後には唯世くんとラブラブだよ。 『ジョーカーU・・・蒼凪リイン』 歓声が上がる。空色の髪をした子は、ニッコリと微笑みながら手を振る。・・・祝福の風。それが、リインちゃんの二つ名。 なんというか、ぴったりだと思う。うん、きっとこの二つ名をつけた人達は、リインちゃんの事をよく見てるよ。 『ジョーカーV・・・蒼凪恭文』 こちらは不敵に笑う。それだけで・・・あれ、意外と男連中が叫んで食いつくな。いや、女の子もなんだけど・・・一体どういうファン層なんだろう。唯世くんにややとはまた違うし・・・。 それで、栗色の髪と黒い意思の強さを感じさせる瞳の男の子・・・ううん、男の人は、古き鉄。ある意味嘲りとも取れるこれが、恭文の二つ名。 これも・・・ピッタリかな。言いようのない強さを感じるから。まぁ、そこはいい。問題は他にあるから。 ・・・ジョーカーUとVってなにっ!? 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