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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
島村卯月誕生日記念小説その1 『DAYBREAK AFTER/事後処理は事件解決より大変だ』


新暦七五年(西暦二〇二〇年)六月十七日――午後十一時二分

雛見沢地区・古手神社境内



機動六課二度目の出張。その舞台は僕もよく知る雛沢。

古手神社の至宝≪フワラズの勾玉≫を巡る騒動は、なんとか決着し……僕もまた大事なものを一つ背負う。


「さて……ヤスフミ少年、竜宮君もひとまず無事ということで決着したが」

「はい。……タケシさん、いろいろとありがとうございました」

「あの、ありがとうございました。レナ、凄く迷惑もかけたのに……」

「私は大丈夫だよ。まぁ後で、のしてしまった店長さんには謝っておくことだね」

「はい、それはちゃんと」


大人として優しく窘めながらも、レナには大丈夫だと……そう笑いかける懐もある。

イオリ・タケシさんはガンダム・ガンプラ馬鹿なところはあるけど、立派な大人だった。僕もこういう人になりたいよ。


「それでヤスフミ少年に話を戻すが……君には世界大会を目指す理由があるんだね」

「はい。まぁ昔の話なんですけど――――」


そうしてかくかくしかじかで話すのは、サツキ・トオルとユウキ・タツヤ、クラモチ・ヤナさん……そして僕の、四人で過ごした夏の日の思い出。

家同士の付き合いがあって、巡り会ったトオルとタツヤ。ヤナさんはタツヤの家≪ユウキ家≫のメイドさんで。

僕は故あってそこに転がり込んで、第二種忍者という点を見込まれて、一夏のボディガードを買って出た。


TOKYO WARが起こった翌年……まだガンプラバトルが始まって一年も経っていなくて、世界大会もなかった時期だ。

タツヤはトオルをキッカケに、ガンプラバトルを始めて……僕は元々ガンダムも、ガンプラも好きだったからそれに乗っかって。

トオルの家に置いてあった試作型バトルシステムで、毎日毎日……朝から晩までバトルして。ガンダムのアニメも見まくって。プラモも作って。


マーキュリーレヴはそんな中、トオルからもらったオリジナル武装だった。それもランナーごとだったから、びっくりしたっけ。


「――――あの、話の途中……申し訳ありません」


するとディードが、疑問そうに挙手……。


「あの武器もかなり精密に見えたのですが……簡単に作れるものなのですか?」

「そのときだと相当難しかった。というか、トオルについては金型を作ってもらって、それで量産していたから」

「プラモの金型を!? あぁ、それは確かに……っと、君達にも説明が必要だね。
プラモというのは設計図に合わせ加工した金型という金属板に、プラスチックのチップを溶かし、流し込んで整形するものだ。
この金型も今ではコンピュータで大まかに設計はできるが、細かい調整は手作業……故にその価格も一つ辺り数百万となる」

「数百万……!」

「え、その武器のためにそんなお金を……ポンと出したの!? そのトオル君!」

「出したの。ただ十セットほど作ったら壊れちゃったそうだけど」

「もったいなさすぎる!」

「でもトオルの家……サツキ家は、それくらいできるくらいの財力はあったんだよ」


まぁ今だと技術も進んで、オオトリを作ったとき利用した射出成形機みたいなのもあるんだけどね。設計図さえあればなんとかって感じだ。


じゃあ話を戻して……マーキュリーレヴは、トオルなりの楽しさとガンプラへの好きが詰め込まれた武装だった。

多数の刀剣と銃器をコンパクトに集束し、オールレンジで戦える武装。しかも三ミリ穴接続もあるから、増設なんかも楽。

その後僕の方でもらったランナーを元に、物質変換でパーツを量産したこともあったけど……まぁそれはそれ。


それよりはトオルとタツヤの方だった。タツヤは最初こそもらった武装の多さに面食らっていたけど、そこから自分の道を見いだした。

僕のような戦闘経験と戦術、一撃必殺の刃もなく――。

トオルのように、自由な発想や突撃力もなく――。


ガンプラビルダーとしても初心者な自分に、一体何ができるか。

そう考え見いだしたのは、プラモの技法を一から学ぶことだった。


……ガンプラはあくまでも模型の一ジャンル。

そして模型の楽しさは、塗装や工作でいろんな世界を表現することにある。

それゆえに戦闘機系やカーモデル、建物、ジオラマ……様々なジャンルで、数々のモデラーがいろんな表現を試行錯誤し、積み重ねた。


実際に戦車模型などを作って、それを勉強し……その技法を持って、自分のガンプラ≪νガンダムヴレイブ≫をアップデートさせた。

更に戦闘機系を作る中で、武装の扱い方……得意レンジや的確な使用方法を学び、ファイターとしての自分も成長させた。


あれにはトオルも目を見張って、楽しそうだったなぁ。


「でも……僕もいっぱい楽しんだんだ。ちょうどトオルのお父さんが、舞宙さん達ポプメロのMV撮影を引き受けたから」

「……ポプメロ……あれっすよね! 恭文の彼女さんが所属している、声優さんのアーティストユニット!」

「その初シングルがガンダム関係でね? バトルシステムを持っているトオルの別荘で撮影しようーって話になったんだ。ついでいライブに向けての合宿もやったの。
そこで舞宙さんと再会して、MV撮影のお手伝いも少しやることになって……舞宙さんと、いちごさんと、才華さんにもガンプラバトルを教えることになってさ」

「リインもそのときに、ちょっとした事件で軽井沢に転移することになって……恭文さんと会ったのですよ。
……それで恭文さんは、舞宙さんに滅茶苦茶夢中だったのです。ずーっと一緒で、添い寝や一緒のお風呂も普通になったですから」

「ま、まぁね……!」


だからトオル達との思い出は、舞宙さんとの……いちごさん達との思い出でもあって。それは今も色あせない。

……だけど、そんな楽しい……夢のような日々は、突然終わりを告げた。

トオルの家は不動産業を営んでいたんだけど、それがイースター社に乗っ取られた。


「――――イースターって、なんっスか?」


そこでウェンディが首を傾げるのは……まぁ当然だね。だって次元世界の人間だもの。


「そう言えば、私もそういう会社があるってだけで余り詳しくは……恭文」

「あっちこっちの分野で成果を挙げている、世界的総合商社だよ。聖夜市っていう関東近辺の都市にあるんだ」

「家電、生活用品、石油、飲食……様々な業種に殴り込みをかけては、世界一位と称される売り上げを叩き出す。
この不景気が騒がれるご時世において、異論を唱えるまでもない勝ち組と言われる企業やな」

「はやて、そこはホビー関係と芸能関係を除いておいて」

「……あー、そうやったな。ホビー関係はPPSE社がおるし」

「芸能関係は、346プロがいる」

「346プロ……楓さんが所属しているっていう事務所じゃない! ……そういえば最大手に数えられるって」

「あそこは楓さんみたいなモデルだけじゃなくて、アイドルや歌手、俳優……芸能関係ならなんでもござれっていう超大手事務所だからね。
……本社ビル群がある敷地も正しくお城状態。その中で自社番組や映画も撮れる設備と人員が揃っている」

「お城……!」


だからイースター社でも……というか、イースター社はそっち方面が弱くて、どうもイロモノタレントしか売れなくてねぇ。

……まぁそんなイースター社なんだけど、ここ数年はかなり勢力を伸ばしていて……トオルも、そこに巻き込まれてしまった。


「それでね、イースター社はトオル達と知り合う一年くらい前に……お家騒動が起こったのよ」

「お家騒動?」

「元々イースターは、星名家という創設者一族によって運営されていた。
ただその創設者の孫娘が、月詠或斗という若手ヴァイオリニストと結婚してね。
創設者の死後は、月詠或斗はヴァイオリニストを辞めて、会社経営に集中しろって約束がされていたのよ」

「なんやそれ! 全くの門外漢を社長にしようとしたんかい!」

「それだけならまだしも、月詠或斗は創設者……奥さんのおじいさんが死後、失踪したんだよ」

『えぇ!?』

「その結果約束を反故にされた星名家は大怒り。二人の子どもともども残された孫娘を、相当に攻め立てたんだけど……そこで乗っ取りが発生した」

≪当時重役の一人だった一之宮一臣という男が、イースターの株式を過半数獲得。
更に失踪後しばらくして、その孫娘と再婚して星名家に婿入り……そのまま会社のトップに居座ったんですよ。
……会社を混乱に導いたとかなんとか言って、星名一族を会社から叩き出した上で≫


なんというか……驚くみんなの気持ちも分かると、神社の境内に座りながら、深くため息を吐く。


「ちょっと待って。恭文君……なんでそこまで知っているの? 結構有名な話なのかな」

「その月詠或斗と縁故があった人……まぁフィアッセさんなんだけど」

「フィアッセさんが!?」

「月詠或斗は学生時代、イギリスに留学していたそうなんだよ。その絡みで知っていたみたい。
……フィアッセさんも月詠或斗の失踪でたまげて、いろいろ手を尽くして調べていたんだよ」

「というか、その後の流れで恭文君も調べて……それでってことかぁ。……じゃあ、トオル君の家を乗っ取ったのは……」

「……その一之宮……いや、星名専務だ。
星名専務が会社のトップに立ってから、イースターの業績は明らかに上がったからね」


――――どうもトオルの家はユウキ家に援助の話を相談していたようで、タツヤとトオルが絡んだのもその辺りが原因だったらしい。


結果トオルは家や家財を含む、全ての財産を取り上げられた。

僕達が楽しんで見ていたアニメのディスクも、プレイヤーも、テレビも……もちろんバトルシステムも。

だからトオルとタツヤ、僕は約束を交わした。いや、トオル達の約束に乗っからせてもらったと言うべきか。


いつか……ガンプラバトルが普及して、世界大会なんてできるようになったら。

そんな大きな大会があったら、そこに出て……戦おうって。


「……………………いい話じゃないかぁ!」

『ひぃ!?』


…………って、つい集中して話しちゃったけど……ヤバい! タケシさんが物凄く号泣している!


「いや、そういうのは弱いんだよ! 私は!」

「私もっス! いいじゃないっスかぁ、それぇ! ドラマが作れるっスよぉ!
あのガンプラも、それで……友達のアイディアをまとめた、目印の役割ってぇ!」

「ウェンディ、待って! 近い近い近い! すっごく近い!」


というか、ウェンディもかぁ! ああああ……魔導師組もまた涙目になっているし! そうだ、コイツらがいるのを忘れていたぁ!


「……でもそれだと、確かに……恭文にももっと修行が必要だよね」


ただそんな中、オットーがやや心苦しそうに声を漏らす。


「実際今日勝てたのも、部活メンバーによる総力戦があればこそだし……軽く調べてみたけど、世界大会だと一対一が基本とか」

「……そうだね。つーかそれが悔しくて仕方ない……一人じゃ絶対勝てなかった!
そこにレナが加わっていたら、余計にアウトだったし!」

「……この発言って、魅音さん達的にはOKですか?」

「く、くきゅ?」

「問題ないよ。やすっちが基本戦うの大好きな大馬鹿ってのは知っているしさ」

「なにより”一人で戦って余すところなくぶつかった上で勝利したい”……なんて欲望は、途中の様子を見れば丸わかりでしたもの」

「部活の勝利は勝利として、ですか。男の子の世界ですよね」


キャロが何やら納得しているけど、僕としてはやっぱり……魅音や沙都子が言うように大反省。

でも同時に、滅茶苦茶胸が沸き立ってもいた。だって……”アレ”と最初から最後まで真正面で渡り合えるとか、最高だもの――!


「今年頭、トオルに再会はしたけど……連絡先とかは聞けなかったしなぁ。もっと考えないと」

「……って、それもあったっスねぇ。あの、その後連絡は」

「四か月経とうとしているのに、DMはなしだよ……!」

≪まさか、忘れていませんよね? 忙しすぎて≫

「その人、彼氏になったらすっごい振り回されそうだなぁ……」

「だったら今度豆柴に紹介してあげるよ」

「紹介できるようになったらいいよねぇ! いや、本当に!」

「あ、はい……うん、そうやなぁ……!」


そうそう、はやては反省してよ。そうして僕の青春を犠牲にもしているんだからさぁ。


「ですが……一つ解せないことが」

「ディード?」

「なぜ、星名一族が追い出されたのでしょうか。それも会社を混乱させたとか……」

「……まず創設者の子どもや孫が会社を引き継ぐのは、同族経営と言って……日本ではよくある経営スタイルなんだ。
ただこれには、幾つか欠点がある。イースターの場合だと、不公平感を生み出したのが大きい」

「不公平感、ですか?」

「十年二十年と毎日頑張って働いてきて、少しずつ出世してきました。その間大変なこともたくさんありました。
なのに、創設者の孫娘と結婚しただけで、大会社のトップに立とうとする奴が出てきました。
しかもヴァイオリニストが本業で、会社経営については素人なのに…………それで、納得できる?」


そう告げると、ディードもさすがに分かるらしく、表情を顰めた。


「確かに、それは……」

「実際星名専務は、その判断にかなり前から異を唱えていた。
それなら月詠或斗にはヴァイオリニストとしての才能を利用し、イースター所属のアーティストになってもらうべきとか言ってね」

「あぁ……腕のいいヴァイオリニストやったら、それもアリか。というか、フィアッセさんと知り合いっちゅうことは、その辺りも」

「新進気鋭……専門家からは世界に通用するレベルと言われていたそうだよ。
でも星名一族はそれを聞き入れず、結果月詠或斗が失踪して……会社トップ不在の時期ができちゃったからね。
そのせいで経営関係の取りまとめもできなくて、実はかなり危なかったみたい」

「そんな世界的にデカいとこが、アッサリ潰れるっスか!?」

「潰れる。特に不公平感を生み出す判断は、社員全体のモチベーションを下げるからね。実は前々から兆候はあった」

「それやったら星名専務は、大会社を……そこで生活する社員みんなを救ったヒーロー、なんやけどなぁ」


はやてが複雑そうに告げるので、その辺りは問題なしと頷いておく。

……向こうも仕事だったんだ。僕達では口出しできなかったビジネスの話……だから、それを今更どうこう言うつもりはない。

悲しいことだけど、そのとき悪だったのはトオルのお父さんだ。財産差し押さえすら発生する状況まで起こしたんだから。


だから…………うん、僕は何も言わない。何も、言う権利がない。


「まぁ過ぎたことをあれこれ言ってもしょうがない。それに……未来に繋がる約束はしているんだから」

≪……ですね≫

「ふむ……やはりその闘志は買いだね。
それならば、力になれることもあるかもしれない」

「……あの、タケシさん」

「ガンプラ塾……当然聞いたことはあるだろう?」


当然知っているので、すぐに首肯……まぁ渋い顔しかできないんだけどさ。


「それはもう……忍者的にも、いろいろと」

「奇遇だね。国際ガンプラバトル連盟の中でも、少々問題視されている」

「国際ガンプラバトル連盟って……あぁ、そうか」


基本的にオフィシャルな大会では、そこのスタッフがバトルの審判や、大会運営を監督する役割になっている。

で、その点からするとガンプラ塾の悪評はちょっと目に付くと。


……でも、それを知っているということは……。


「もしかしてタケシさん……」

「あの、アンタ……」


……って、ティアナ達は当然詳しくないか。小首を傾げまくっているし。


「まぁゲーム人口が増えれば増えるほど起きがちな問題なんだけど……マナーの低下ってのがあるのよ。
勝敗やら、使っている機体で相手を煽るとか、馬鹿にするとか、暴言を吐くとか……。
もちろん世界大会規模の話になると、いわゆる八百長やらの不正問題も発生する」

「なに、その世紀末状態……!」

「ガンプラバトルに限らず、様々なスポーツやホビーゲームでありがちなことなんだが……特にガンダムの場合は難しいところも多くてね。
数ある作品の、それぞれのファン同士が対立するとか、こき下ろしあうとか……いろいろあったんだよ」

「でもそれじゃあバトルがきちんと普及しない。
だからそれを取り締まるのとマナー向上を目的とした、オフィシャルな審判員や運営集団が存在する。
それが国際ガンプラバトル連盟。一応PPSE社の分社なんだけど、公平性のためスタッフやなんかも基本独立したものになっているんだ」

「……遊びを遊びとして、きちんと楽しむのも大変と……まぁそうよね。自主性でなんでもかんでもOKになるわけがない」


でもその内部事情……ガンプラ塾の問題視まで知っているんだから、タケシさんも結構関わりが深いと見た。

とはいえ、そこはツツかない方がいいんだろうね。どうにもそんな感じがしてきたよ。


「なら、ガンプラ塾ってのは」

「二代目メイジン・カワグチ……っと、そもそもそちらの説明が必要かな」

「あ、いえ。そちらはなのはさん……あの、この人から聞いたので」

「世界大会で殿堂入りも果たした、凄い人だっていうのは……でも、恭文とその人が近いっていうのは」

「彼は勝利を絶対のものと捉え、そのためならありとあらゆる努力をする修羅だったからね。
もちろんワークスチームメインファイターとしての責務を果たそうとすればこそだが……それでも尋常なものじゃなかった」

「ライバル格と言えるジョン・エアーズ・マッケンジー卿とのバトル、僕も何度も見ましたけど……どっちも鬼気迫るものがありましたしね」


もちろん静岡で、PPSE社特設スタジアムの会場まで行ったこともある。ふーちゃんや歌織達と一緒にね。タツヤとヤナさんもだよ。

それでさ、何度も思ったものだよ。あんな”楽しい”バトルがしたいって……心の底からさ。


「ガンプラ塾はそんな彼が塾長を務め、PPSE社がスポンサードをしている……世界初にして唯一のビルドファイター養成校だよ」

「ガンプラバトルの学校ってことですか!?」

「プラモ製作はもちろん、戦術や操縦技術……バトルに必要な様々なことを教える、静岡にある全寮制専門校。
ヤスフミ少年、どうだろう。私から推薦状を出すので、通ってみては」

「な……!」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』


僕が、ガンプラ塾に……二代目メイジン・カワグチのお膝元に?

…………そこで感じるゾクゾクとした重圧に、思わず笑っていた。


≪ちょっと、あなた……≫

「うん……」


確かに聞いている通りなら、とんでもない場所だ。法治国家的にも見過ごせるレベルを超えているかもしれない。

だけど、だけど、だけど……そこに行けば、もしかしたら――!


「僕より強い奴、きっと……たくさんいるよね」

≪えぇ、きっと≫

「だよね――!」


今日みたいなバトルが楽しめる。それも毎日……呆れるほどに。

そう考えたら、迷いなんてなかった。いや、まぁ……まずは高校卒業が優先だけどね? うん。




とある魔導師と古き鉄と機動六課のもしもの日常Ver2020

島村卯月誕生日記念小説その1 『DAYBREAK AFTER/事後処理は事件解決より大変だ』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


アイツは笑っていた。とても楽しげに……バトルしているときみたいに、空気が揺れるほどの覇気を放ちながら。

どうやらこの話、相当に魅力的なものらしい。ただ……対称的に、なのはさんや部隊長の表情は曇っていて。


「マジか……!」

「……でも、イオリさん……ガンプラ塾っていうと……あの……」

「なのは、どうしたの? これ……かなり凄い話……なんだよね!」

「……ガンプラ塾自体、入寮試験も厳しいしね。
ただ……」


それにも理由があるらしくて、なのはさんは困り気味に……タケシさんを見やった。


「スパルタがすぎて、いわゆる暴行や器物破損事件が後を絶たないって噂もあるんだ」

「暴行……器物破損!?」

「うちも聞いたで。授業でえぇ成果が出ないと、生徒のガンプラを壊すとか、教師が殴るとか……そういうのもアリってな」

「暴力沙汰、前提……!?」

「なんですかそれ! 学校……というか、ガンプラバトルって遊びなんですよね! さすがにあり得ませんよ!」

「ところがおかしくはない」


ざわつく私達に……さすがにどうなのかと声を上げるスバルに、タケシさんはすっぱりと否定を告げる。


「概要は今話した通りなんだが、その実体は≪次期メイジン育成機関≫だからね」

「次期メイジン……ということは、その人の跡継ぎというか、三代目!?」

「そうなればただ遊びの技術を教える学校というわけにはいかない。
いずれはPPSE社の顔として、世界大会で活躍するべき人材を選出するわけだからね」

「なるほど……つまり二代目メイジンの勝利至上主義は、むしろPPSE社の方針ってわけだね」


魅音は不敵に笑い、軽く左手でお手上げポーズ。


「で、そこまでのスパルタもPPSE社の方が認めている……というかむしろ後押ししていると」

「結果を出せなければ……勝者にならなければ意味がない。そんなビジネス理論も入っている。
しかもそれは間違いではない。二代目が強く、勝利し続けたからこそ、それに比例してガンプラバトルも、PPSE社も拡大していった」

「そしてそんな”スター”を夢見ているなら、塾生同士の生存競争も厳しいのも当然……くくくく! それはまた、面白そうな場所じゃないのさ!」

「まぁ、やっちゃんには関係なさそうですけどね……」

「確かにね」


魅音や詩音の言うことを認め、タケシさんは改めて……燃えているアイツを見る。

ただ、三代目になるとか、そこまで大それたことは考えているように見えないけど……!

タケシさんが本気になるのを喜んでいたときと同じよ! ただ強い奴と戦えればそれでいいって……馬鹿みたいに考えてる!


「だとしても……そんなところにどうしてヤスフミを! 実力を認めてくれているんですよね!」

「まぁ理由は幾つかあるが……そもそも彼、そんな真似をされたらどうする?」

「え、それは……ヤスフミなら……」

「まぁコイツなら…………」


フェイトさんが……私もそう答えかけて気づく。

というか、私達全員で気づく。何一つ問題がないことに……!


「よ、容赦なく反撃して……全員地獄行きにするでしょうけどー!」

「元々武闘派だからなぁ……!」

「だろう!? そういうタイプだろう!? 売られた喧嘩は買っていくタイプだろう!? まずその点から余り心配してないんだよ!」

『そりゃそうだ!』

「……人をけんかっ早い奴みたいに言わないでください。僕は専守防衛が常なんですから」

「……恭文の専守防衛は、その前に敵陣地スレズレの絨毯爆撃を行っているのですよ?」

「ホントよ! ほぼほぼ侵略と変わらないでしょ!? その自覚は持ちなさいよ!」


というかね……殺気を放つな! 今すぐそんな場所でバトルしまくりたいって欲望を全開にするな! さすがに怖いから! とっと落ち着きなさいよ!


「だが、それだけじゃない」


…………少しビビって後ずさっている中、タケシさんが……きっと今までで、一番厳しい表情を浮かべ、アイツを真っ直ぐに見やる。


「世界の壁を越えるためには……知っておくべきこともあるんだよ」

「知っておくべきこと?」

「君は第二種忍者……実戦経験者ではあるし、しかも星見プロ所属のVチューバーだったね」

「えぇ」

「なのでもしかしたら必要ないことかもしれない。
しかしあえて言おう。選ぶのは……君だ」


――――その言葉の意味は、私には分からなかった。

アイツも同じようなものなのは、表情から見受けられる。


だけど、何か……とても大きな決意をしているのは、確かで。


「……なら、タケシさん……僕からも二つ頼みがあります」


だから、唐突に……タケシさんにこう言いだした。


「頼み?」

「僕はまぁご存じな漢字の立場なので。入塾については……卒業の上で、親や星見プロとも相談しなきゃいけません。
なので、本当に勝手なんですけど……返事はしばらく待ってもらってもいいでしょうか」

「もちろんだよ。人生の大事な時間を使うわけだからね」

「ありがとうございます。
それでもう一つは……イギリスで、バトルしてほしい奴がいるんです」

「誰だい」

「ユウキ・タツヤです」


…………その言葉の意味は、さすがに分かった。

つまりは…………ある意味失礼に値する頼みだった。だけどタケシさんは、すぐに笑う。


「――――分かった。君の頼み、引き受けよう」

「本当ですか!」

「実はね、そのイギリスに行く用事がちょうどあるんだよ。まぁ秋のことになってしまうんだが」

「十分です! ありがとうございます!」


そうして話が奇麗に纏まる中、なんだか……私は、居心地が悪くなってきて。


≪……よかったですね。これでタツヤさんも……≫

「ヤナさんにはすぐ相談しておかないとなぁ」

「やすっちぃ……なになに、焼けるくらいに友達思いだねー」

「ぐずぐず燻っているから、発破をかけるだけだって」


だって……アイツはこれで、世界の舞台って夢に足がかりができるかもしれなくて。

今から相談やら、そのための調整やらで忙しくなる時期に入らなきゃいけなくて。

なのに、その時間を私達の部隊で消費する……消費せざるを得ない。その状況が、どうにも引っかかって。


仕事だから……そう割り切ればいいのに、まるで自分自身が悪いように感じてしまった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


まさか、まさか、まさか……あのガンプラ塾に誘われるなんてー!

タケシさん、ありがとうございます! そしていろいろ面倒なお願いもしたのに……やっぱりありがとうございます!

もう感謝に感謝しか重ねられないけど、それで喜んでばかりもいられない。


――まずはレナのお父さんに、レナの無事と事態解決を連絡。それから魅音のおじさんにも謝り倒す。

どちらも面食らっていたものの、レナのふだんの行いもあって、快く許してくれた。

まぁ少しばかりのお叱りは受けたけど、それは仕方ない。


イオリ・タケシさんとも、何度もお礼を言いつつ、園崎のホビーショップを…………ん?


『――――』


ディードとオットーと、ウェンディが……というかエリオとキャロもショーケースの中を見ていた。

圭一達のガンプラやらが飾られていた棚なんだけど、他にも飾っているものはあって。


「ドラゴンのプラモもあるんだ……!」

「こっちのは、騎士だよね。槍も持っているし」


二人が見ているのは、SDガンダム系列。騎士ガンダムとスペリオルドラゴンだよ。

更になのはと二人、ディード達の脇に……ディードが主だって見ていたのは、青と白のカラーリングが美しい機体だった。

ツインドライブの太陽炉にGNソードIIを装備。そう……ダブルオーガンダムです! 思えばディードの装備にそっくりだった!


「うんうん、やっぱり興味が出てくるよねー」

『あ、すみません!』

「いいよ。だってあんなバトルを見た後だものー。なのはもこう、いろいろ疼いて……うぅ……!」

「社会人は辛いねぇ」

「あー、そういやなのはさんもバトルしてたんっスよね」

「砲撃戦が中心って感じかなー。まぁさすがに……」


そこで横馬は僕や談笑している魅音達を見て、頬を引きつらせる。


「恭文君もそうだし、魅音ちゃん達ほどワイルドじゃないけど……」

「いや、あれはなかなか真似できないっスよ。私も初心者以前っスけど、それはよく分かるっス」

「えぇ……。でも、こうして見るとみんな前に出て戦うというか、後方支援的なのはなさそうですね」

「あ、それは大丈夫」


オットーがちょっと勘違いしているので、問題なしと……ちょうどあったね。右奥にセットされたEWACジェガンとザクタンク!


「元々ガンダムは人型機動兵器がある世界での戦争を描いていてね。
その関係からただ前に出て殴り合うだけじゃなくて、砲撃や地雷設置、電子戦、作業用など、様々なバリエーションがあるんだ」

≪この緑の……EWACジェガンは電子戦使用ですね≫

「でも、カメラがあるけど……」

≪ジェガンが作られた世界観だと、ミノフスキー粒子というもののせいで、誘導兵器やらが基本仕えないんです。更にレーダーも妨害される。
なので有視界戦闘を強いられるため、人型兵器であるモビルスーツを使ってた戦うんです。
EWACジェガンのカメラなどは、手に入れた光学映像を阻害されない形で母艦などに送信する……偵察機の役割があります≫

「なるほど……あくまでここにあるのは一例と」

「そう言えば沙都子さんのガンプラ……グリーンフレームでしたよね。
あれも前に出てドンパチというより、トラップに誘い込んでの戦い方が得意でした」


オットーも物静かかと思ったら……いや、ディードに引きずられている感じかなぁ。

ディードはダブルオーに目が釘付けだもの。あぁ、でも天使の目の輝きはなんて素晴らしい!


「ふむ……君達はガンプラを作ったことがないのかい」


するとタケシさんもこっちの様子に気づき、微笑みながら僕達のところに歩み寄ってくる。


「あ、はい。今までガンダムやバトルも見たことがなくて……」

「えっと……私ら、ちょーっと海外の方にいたので! さっきのも未体験で大興奮だったっス!」

「そうか……ならもう二時間ほど、私に付き合ってみないかい?」

「付き合って、ですか?」

「実は近隣の方々へ向けて、ガンプラ製作講習を行う予定でね。
今日はそのリハーサルの予定だったんだが……よければ私の練習相手になってくれ」

「えぇ! い、いいんですか!?」

「タケシさん、世界第二位の方で……いや、リハーサルに付き合うということなら、それも大丈夫なんでしょうけど」

「だから心配してくれなくていいよ? 私達も仮装客がいてくれた方が有り難いしね」


キャロがこちらを見るので、まぁ……そういうものだと頷いておく。

……そもそもここへ来たのも、ガンプラ普及の最中らしいしね。今のタケシさんは、そういう仕事を中心にしているってことだ。


「それはアリかも! 是非参加させてください!」

「なのはさんも、大丈夫でしょうか……仕事は」

「その辺りは上手ーく説明しておくから問題ないよ!
それに……現地の文化や風習を学び、溶け込むのは大事なことだ」

”確かにね……横馬の言うことは正しい”


さすがにタケシさんに聞かれるのはアレなので、念話に切り替えさくっと説明。


”ガンプラバトルもそうだし、その根源足るガンプラやガンダムは今や世界レベルのコンテンツ。
それに対して全く無知ってのも、現地民を装う場合引っかかる部分になる”

”だからこれも機動課のお仕事として、必要な勉強と…………”

”特に執務官志望のティアナはそうだね。
まぁ現地アドバイザーとして僕も念押ししておくから、本当に心配はないよ”

”助かるよー! 実は恭文君の念押しを期待していたからさー!”

”僕ありきの行動かい!”

”まぁまぁ……なのはさん、恭文、ありがとうっス!”


まぁ甘いとは思うけど、同好の士が増えるのは僕も嬉しいしね。だからそう念押しすると、みんな笑顔でタケシさんに向き合って……。


『……はい!』

「では決まりだな。早速始めようか」

『はい!』


――こうしてスバルとティアナも含めて、ガンプラ製作講習(リハーサル)に参加が決定。

まぁガンプラをお店で買って、指導の上で作るという貴重な機会で……僕? いやいや、ここはあえての我慢だよ。

みんなの時間を邪魔するのもアレだからね。なのはともども、温かく見守らせてもらおう。


それに……壊れたシエルやオオトリの修理もあるしね! まずはそこからだよ、そこから!


「楽しみですよね! 私も頑張ります!」


………………すると、なんだろう。


左側から……僕の隣を陣取る女の子が、突如として現れた。

長い栗髪がゆるふわウェーブを描き、その一部が左側でテールとして纏められている。

そのはつらつとした……花のある笑顔が印象的、だったんだけどー!


『…………どちら様!?』

「卯月!?」

≪あなた、なにしてるんですか≫

「はい! 恭文さん、ちょっとだけご無沙汰してます♪」


桜色のカーディガンにロングスカートという出で立ちの子は、僕の知り合い……うん、説明する! だからおのれらも睨み付けるな!


「ヤスフミ少年……」

「えっと……島村卯月。聖鳳学園って私立の学校に通っている子なんですけど」

「聖鳳学園!? うちの近所じゃないか!」

「あ……イオリ・タケシさんですよね! あの、いつもイオリ模型店のリン子さんやセイ君にはお世話になってます!」

「いや、これはどうも……初めまして。セイの父です」

『まさかのご近所さん!?』


あー、でもそっか! タケシさんの家……というか経営しているイオリ模型店って、三軒茶屋にあるもの!

あそこは聖鳳学園の学区だし、そりゃあそれなりに関わり合いはあるか! しかも卯月は腕前が腕前だし!


「じゃあ、恭文さんも……」

「いや、僕は卯月やタケシさんの家から、また北側の方なのよ」


と言っても分からないだろうから、スマホでマップを出し、エリオ達には位置関係を見せてあげる。


「あぁ……この輪っかみたいなレールウェイからしても、五駅くらい離れてるっスね。でもそれならどうして」

「聖鳳学園と僕が通っている学校、学校間で交流が盛んなんだ。
卯月もその関係で何度か来たことがあって……」

「えっと、もしかしなくてもこの人達は……あれですか?
大学受験も控えたこの微妙な時期に、面倒な仕事を押しつけてきた疫病神の……」

『疫病神!?』

「あぁ、うんそれ」

『否定すらしない!?』


はいはい黙れー。六課メンバーは黙れー。それもまた当然のことでしょうが。


「卯月さん……え、もしかしてあの卯月さんなのですか!?」


ただそんな中、リインはギョッとして卯月さんをガン見して……。


「はい……あ、もしかしてあなたがリインちゃんですか!? お話通り可愛いですー♪」

「ありがとうですー♪ ……でも、リインが元祖ヒロインなのですよ! 恭文さんとの浮気は許さないのです!」

「浮気じゃなくて本気だから問題ありません!」


そのとき、空気が凍り付くのを感じた。

……あー、はいはい。僕が悪いってことでしょ? 分かったからちょっと落ち着け。


「……恭文君、ちょっと……お話いいかな」

「大丈夫だよ、横馬。卯月はその前に夢があるから」

「何もよくないんだよ!? というかほら、あっち……あっち!」

「………………」

「なのは達はともかく、レナちゃんには話すべきだよ! さっきのあれからコレで、またバーサク突入だよ!」


だから分かってるって! 視線が突き刺さって仕方ないもの! しかもまたつや消しアイズだしさぁ!


「レ、レナ……」

「……別に、いいんだよ? レナは知っていたし……うん、恭文くんが浮気するなら、お仕置きするだけなんだから」

「だから卯月についてはまた違うんだって!」

「まぁ、そこもガンプラを作りながら聞いた方がよさそうですね。時間がもったいないですし」


確かに詩音の言う通りだった。というわけで、早速作業開始……部活メンバーも時期の修理があるからね! 頑張らないとヤバいぞー!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……なんで、ガンプラを作ることになったんだろう。いや、アイツのバトルとか見てたら、興味がないわけじゃ……ないんだけど。

とにかくアイツやなのはさん、タケシさんの意見も聞いて、私達も一個ずつプラモを購入。


それが、えっと……。


スバル:HGFC シャイニングガンダム

私:HG 00 ケルディムガンダムサーガ

エリオ:レジェンドBB ナイトガンダム

キャロ:レジェンドBB スペリオルドラゴン

ウェンディ:HG AGE ギラーガ

オットー:HGUC EWACジェガン

ディード:HG 00 ダブルオーガンダム

ヴァイス陸曹:HGAD ガンダムデュナミス

カリムさん:HGAC ウイングガンダムゼロ(EW版)

シャッハさん:HGCE ダガーL


……ガンダムっていろいろ幅広いのね。みんなそれらしいガンプラ、選んで作れることになったし。

更にはカリムさんとシャッハさんも……。


「恭文さん、このダガーLというのは、えっと……ストライクでしたよね。その仲間で」

「続編に出てきた量産仕様です。だからストライカーパックも対応するし、基本フレームも同じくなんです」

「なるほど……。いや、これは楽しみです」

「私もよ、シャッハ。子どもの頃に帰ったみたい」


まぁ問題があるとすれば……。


「――――では、ニッパーによる二度切り始め!」

『サーイエッサー!』


なぜかタケシさんの指示の元、軍隊式というか、士官学校時代に戻る形で組み立てていることなんだけど……!

しかも開店時間になって、村や街の子ども達も入ってきて……遠巻きに見られているから恥ずかしい!


”ちょっと、どういうことよ……アンタ!”


一つ隣の大型卓で、部活メンバーと壊れたキットの補修中なアイツに、慌てて念話を送る。

もちろん手は止めず、作業をしながらよ。私語なんて飛ばしたら鋭く叱責されるし、もうどうしようもない。

というかね、私が申し訳ないって思うのは…………騎士カリムなのよ! 後見人なのよ!? 偉い人なのよ!? それなのにー!


”いや、僕に言われても……ただ片鱗はあったでしょ”

”どこに!?”

”バトル中だよ。なんだかんだで子どもな梨花ちゃんや羽入達相手でも、一切加減なしだったし”

”あ…………!”


そう言えば……梨花ちゃんのベアッガイ、だっけ? それがプリプリポーズをしても、容赦なく射撃してたなぁ。唖然としたの、忘れていたわ。


”……タケシさん、基本全力投球なガンプラ馬鹿……って言っちゃっていいのかなぁ。とにかく大好きなことには一直線なんだね”

”きっとそういうところに、リンちゃんもメロメロだったんですよ”

”キャロ、よく分かるね……!”

”ボクとしても実に興味深い話です”

”はい……”


いや、アンタ達もそれで纏めていいの!? というかキャロはマジでよく分かるわね! 私はそこのところサッパリだったわ!


”まぁ教え方を見るに、本当にがちな初心者向けなのは確かだから……。いきなりキットを切り刻むようなことは要求されないよ”

”え、切り刻むことがあるっスか!?”

”たとえば……アニメのワンシーンを再現とか? 今のガンプラは関節とかも可動式だけど、それでも絵の上での嘘とかはあるのよ”

”……その嘘を普通に飾るだけじゃ再現できない場合、こう……関節とか弄る感じっスか?”

”足の長さとか、顔立ちとか、スタイルとか……そういうのも含めてね。
模型は自分なりの理想を心の中から出して、形にしていくものだから”

”理想を、形に……”


私達は入り方から違うってことかぁ。単純に戦わせる玩具じゃなくて、自分なりの……そういう形を楽しむためのものと。


”まぁあんまり気構えず、まずはタケシさんの指示通りに作ってみるといいよ。
今言ったのだって、遊び方の一つだしね”

”ただ普通に作るのも……その、遊び方になるんですか?”

”もちろん”


小首を傾げるエリオに、アイツは問題なしと笑って頷いていた。


”そうっスね……こういうのは、やってみてから考えた方が早いっス!”

”ボクの主義とは反するけど、ここはウェンディを見習うべきかな”

”えぇ。私も同感です”


というわけで、二度切り……付いているパーツを一度に切ろうとすると、パーツが抉れることがあるのよね。

だからランナーの端をちょっと残すようにして、ぱちん。それから面に沿ってぱちん……。


「き、騎士……カリムさん、慎重に……刃物ですから」

「大丈夫よ、シャッハ。やっぱり童心に返ったみたいで楽しいもの」

「そうっすねー! しかも色つき・説明書も見やすいとか、こりゃ楽っすよ!」

「ヴァイス君の言う通り、ガンプラは少年少女にも組み立てやすいよう、日進月歩している。安心して作ってくれ」


こうして少しずつ、初めてのガンプラ……というかプラモ、よね。それを形にしていく私達。

でもなんだろう。アイツがハマる理由、ちょっと分かってきたかも。

こうやって自分が手にかけたものが動いて、戦って……それで勝てたら、確かに嬉しいかも。


(……まぁ、修理とか大変そうだけど)


バトルさせたら壊れる仕様だしね……でも、アイツらは迷いなく、それでも戦いに挑んだ。

そこに飛び込めば、少しは見えるかな。アイツが見ている高み……その頂きの光が。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


いやぁ、タケシさんの申し出は非常に有り難かった。魅音達も愛機をぼろぼろのままは心苦しそうだったからね。

なので部活メンバーは部活メンバーで固まり、それぞれガンプラの補修作業に入る。

なお、この中で一番大変なのは、言うまでもなく魅音と詩音で……つーかエターナルで。


「ちくしょお……ミーティアがぶっ壊されたぁ。エターナルも艦橋が……無敵じゃなかったぁ」

「お姉、次からはラミネートコートもしっかりしましょうか」

「そうするー」

「ストライクフリーダムも、PS装甲……いや、ラミネートとか使えればなぁ! 俺の技術が足りないってことか!」

「G-3……ちょっとだけ待っていてね。すぐ治すから」


僕も頑張ってくれたシエルにはお疲れ様と念じながら、しっかり手を入れていく。

とはいえ……修復というか、作り直しの部分もあるんだけど。特にオオトリはなぁー。


「恭文、シエルは……それにオオトリも治りそうですか?」

「あの、レナも手伝うよ。レナのせいでもあるし……」

「大丈夫だよ。ストライク系列が、元々メンテ性も高いし」


脇から覗き込んでくる羽入とレナには、問題なしと……ボックス内の予備パーツを見せる。


≪本体の方も、致命的な傷はありませんね。基本的な整形と再塗装で何とかなりそうですよ。
ただ……オオトリについては完全破砕ですからねぇ≫


アルトがルプスレクス形態で見やるのは、真っ二つになったオオトリ。そしてよく見るとひび割れが発生していた対艦刀。

……うん、だから完全に作り直しなんだ。


「まぁ予備ランナーはあるんだけど……今回のバトルで気づいたこともあるし、もうちょっと調整したいかな」

≪対艦刀も、主様の技に耐えきれなかったっぽいの……あと一撃打ってたら、多分折れていたの≫

「……世界の壁はまだまだぶ厚く、遠いってことだ」


機体もチューニングし続けて、そうして理解度も高めて……それも僕の理想とするバトルなんだよなぁ。


(マニューバも洗練されたタケシさんのナナハチは、凄かったし)


うん、それも修行だ。そう考えるとちょっとワクワクしつつ、手を動かす。

傷ついたところは即硬パテで埋めてて、破損がヒドい部位はパーツごと入れ替え。

特にぶった切られた前腕部は……それに戦闘中に使ったサーベルも補充してっと。


「壊れても作り直して……という点も含めると、モータースポーツのようですね」

「だから世界大会なども含めて、滅茶苦茶盛り上がっているんですよ」

「とはいえ、子どもにはハードルも高そうですが……」

「そこが難しいところですねぇ。壊れるゆえの楽しさもありますし」

「楽しさ、ですか?」

「バトルでの負けや反省、思いついたアイディアを、修復しながら盛り込むんです。そうして自分だけの愛機を形作るんですよ」


そう、修復作業はただの欠点じゃない。シャッハさんが心配するのも分かるけど、それも含めての楽しさもあるのだと……ここは力説しておく。


「だから大人よりも、そういうのも純粋に楽しめる子どもの方が、滅茶苦茶順応するんですよ」

「それなら私も分かるよ。
各地の普及活動で思い知ったんだが、もし躓くとしたら、直し方……その知識や技術が分からないということが大半だったんだ」

「分からないことで、途方に暮れるわけですか」

「逆に大人は、分かっていてもいろいろ計算し、やらないことを選ぶ人も多い。痛みを最初から避けるんだ。
……それも善し悪しだがね」

「………………」


シャッハさんもいろいろ考えてしまうほど、この辺りの話は……複雑なんだよ。僕の場合それで突っ走った実例も知っているしね。

そう、言うまでもなくリカルド・フェリーニだよ。ちっちゃい頃に作った旧キットのウイングガンダムを、改造し続けてフェニーチェとし、今やイタリアチャンピオンだもの。

……今度、改めてバトルしたいなぁ。シエルと打ち合わせて……また修行だよ、修行!


「そうだ……恭文さん、イオリ・タケシさんとバトルしたんですよね」


すると卯月がレナの脇から、僕の手元を覗き込んできて……。


「どうでした? やっぱり強かったですか!?」

「それはもう……部活メンバー総力で挑んで、ギリギリだったもの」

「修行不足を思い知りましたわね。わたくし達も更に鍛えなくては」

「わぁ……私ももうちょっと早くこっちに来ていればー!」

「……っと、そうだ。卯月はまたなんでこっちに」


そう言えばまだ聞いてなかった。いきなりこういう状況になったし……。


「えっと、実は家族旅行なんです。綿流しって恭文さんから聞いて、興味があって」

「それでわざわざこっちまで!?」

「それで正解でした! こうしてまた会えましたし……私、とっても嬉しいです」


あ、うん……あの、卯月? やっぱり愛というか、笑顔が重たい……リインに近い匂いを感じる。


「恭文さん……!」


というかリイン本人がいるから、いろいろ比較がー! 余りに覚えがある重さだ!


「……恭文くん、レナ……浮気は許さないよ? 有言実行するよ?」

「レナも落ち着けぇ! というか、卯月についてはその前に……」

「そうです! その前に……」


そう、卯月はトタトタと走って…………。


「あの、イオリ・タケシさん!」

「なにかな、島村君!」

「今日じゃなくても構わないので、私とバトルしてください!」

『えぇ!?』


その宣言に、六課・部活メンバーは驚かされて……レナも目を丸くし、僕を見やる。


「……恭文くん、もしかしなくても卯月ちゃんって……」

「根っからのバトルマニア……それでアイドル志望なんだ」

「あれで!?」

「あれで」


だからえっと……さっき確認したんだけど、イオリ模型店の常連だそうなのよ。

タケシさんの奥さんや子どもとも縁故があって、それでいずれはバトルしたかったみたい。


ちなみにタケシさんの子どもも相当なガノタで、卯月とも姉弟的に仲良しだとか。……僕も会ってみたいなぁ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


なんやかんやで盛り上がりながら作ったら、二時間もかからなかった。

組み立てて、シールを貼って、つや消しスプレーっていうのを吹いて、スミ入れしたら……あ、追加。

クリアパーツはつや消ししない方が、質感の違いが出て見栄えが変わるそうなのよ。


なのでクリアパーツを使う勢……私やヴァイス陸曹は、その後に改めて機体にはめ込んで……。


『できたー!』


それでみんなとらしくもなくはしゃいで……あはははは、もう今更かー。


「し、尻尾が大変だったっス……!」

「うん、ウェンディはよく頑張った」

「でも成果はあったっスよ! このグリグリの尻尾を見ろっスー!」


あぁ……ギラーガって尻尾状の武装があるんだけど、それがリード線で動くようになっているのよ。

ただ、その節々が十以上のパーツになっていて……それを切出し、ゲート後を処理して……更にリード線を差し込んでーで苦労していた。

でもその甲斐は確かに合った。うねって長い尻尾は、それだけで迫力があるもの。


「だけど、艶が消えるだけで大分違いますよね……」

「うん。恭文さんや圭一さん達のガンプラに近くなった」

「うむ……基本通りに作られたよいガンプラだ。
では、今日の記念にそのニッパーとマーカー、ヤスリセットは君達にプレゼントしよう。
スプレーもまだ一体分くらいは残っているから、そのまま使うといい」

『プレゼント!?』

「「「えぇ!?」」」


するとなのはさんと部隊長、アイツが目を丸くして……。


「おいおいマジかよ!」

「おじさん、ちょっと奮発しすぎじゃないー?」


というか、部活メンバーも盛り上がってザワザワしていた……これは、一体。


「あの、さすがにそれはー! それ全部合わせると、一人頭三千円くらいするやないですか!」

『三千円!?』

「そうだよ! あの、ニッパーは千円! スプレーは六百円! マーカーは三百円! ヤスリは六百円……さすがに、それをスバル達全員分は!」


なのはさんの補足で、慌てて手元を見る。

そうよそうよ……明らかに安物って感じでもないし、ただなわけがない! さすがにこれがプレゼントは駄目よ!

だって一人とかならともかく、九人よ!? 二万七千とか五千とかよ!? さすがに負担が大きすぎるわよ!


「あの、それはちゃんと料金もお支払いしますから!」

「はい……私達もお給料はいただいていますので」

「大丈夫だよ、ランスター君、ディード君……これも私の仕事さ」

「どういう仕事ですか……!? でも、さすがに……」

「……タケシさん、ここはワークショップってことで、受け取ってもらえませんか?
僕はともかくなのはも提案者として恐縮しちゃいますし」


さすがにとアイツも見過ごせなかったから、妥協案を出しつつ提案する。

でもワークショップ……あ、そっか。元々の催しもそういうものだしね。うん、それなら納得だわ!


「恭文、それだよ! あの、昼のイベントもそんな感じなんですよね! だったら私達もそれに倣うって感じで!」

『お願いします!』

「そうか……なら支払いは私ではなく、このお店にだね。提供はこちらの店主さんからだ」

『ありがとうございます!』


カウンターに控えていた店主……魅音のおじさんには、全員で慌ててお辞儀。

でも提供……あぁ、ガンプラ作りの実習とか言っていたものね。宣伝費用として出しているって感じなのか。

いや、でもやっぱり気持ちは大事よ。楽しい遊びを……教えてもらったわけだし、その礼はきちんと尽くしたい。


「さて、これで君達も自分のガンプラを手に入れたわけだから……やっぱり動かしてみたいよね」

『はい!』

「ここのバトルベースには、練習用のシミュレーションモードもある。それで感触を掴んでみるといいよ」

「おじさん達も手伝うしねー。新しい顧客はしっかり掴んでおかないとー」

「私も頑張ります!」


……完成したガンプラを持って、空いていたベースの一つに。


えっと、まずはGPベースっていうのをセットして、それからガンプラを置いて……でも拳銃≪ピストル≫持ちのガンプラかぁ。

いや、銃はカービンやサブマシンガン、ピストル四丁も含めて七つあるんだけど。無茶を言ったと思ったけど、あるものね。

……ただ、結構業の深い話を聞かされたけど。


――ケルディムガンダムサーガは屋内戦……敵施設などでの戦闘を想定したバージョン違いだ。
取り回しのいい銃器を揃え、それらを駆使して戦う。コードネームはセブンガン――


まぁそんなふうに、製作途中にアイツやなのはさん、タケシさんから説明を受けてね。機体への理解が深まると、ガンプラ作りも捗るらしいし。


――サーガはベースとなったケルディムガンダムのパーツもほとんど入っているからね。
色違いのケルディムとしても組めるし、サーガとベースの装備を組み合わせたオリジナル仕様にすることもできる。プレイバリューの高いキットだよ――

――これがサバーニャだったら、多々買いですよね……――

――サバーニャ?――

――ケルディムはテレビ版00本編に出てきた機体だけど、終盤で大破してね。
完結編である劇場版だと、後継機であるガンダムサバーニャが登場するんだ――


更にパワーアップ形態があるんだと、このときは単純に思っていた。

このケルディム……サーガも結構かっこいいのに、ここからパワーアップってどうなるんだろうと、思っていたら……!


――サバーニャはGNホルスタービットの無線誘導が持ち味の一つ。
形状からシールドにもできるし、陣形を組ませ、砲撃用の粒子バレルを展開できる。
もちろん内部に仕込まれたライフルビットによるオールレンジ攻撃も強力だ。
……まぁキットだと十基あるうちの二基しか再現されていないんだが――

――え、それじゃあ他八基は――

――二基ずつがくっついた形でのダミーだ。なので完全再現する場合、五個購入するか、ホルスターとビットのパーツを足りない分部品注文しなくてはならない――

――なにその完全版商法!――

――ティアナ、完全版じゃないよ。劇中の最終決戦仕様は両肩に二基ホルスターが増設されるから、もう二つプッシュ――

――だったらその完全版で出しなさいよぉ!――

――あ、そっちはキット化されてないから――

――なんで!?――


…………するとアイツとタケシさんが、揃って顔を背けてため息……。


――時折、あるんだよ。こういうことがね――

――劇場版の頃だと、まだガンプラバトルもありませんでしたからね。
でも今なら出せる……出してくれるはずなんだけど……あとは待ちの一手か――

――実際ウィンダムも出たからね! 我々は十五年待ったのだ!――

――十五年!?――

――ウィンダム……シャッハさんが作ったダガーLの後継機で、ストライクの完全な性能再現もされた量産機だよ――


シャッハさんのあの、ダガーから更に強くなった機体……って、ストライクはどんだけ数がいるのよ! いや、ストライカーパックとか確かに便利そうだけどね!?


――そんなウィンダムが出た≪機動戦士ガンダムSEED DESTINY≫は、二〇〇四年の十月からの一年間放送。
そのとき主要な機体は出たんだけど、幾つかはキット化されなかった……ウィンダムもその一つだったんだ――

――ねぇアンタ、そういうのも……――

――キット化しても売れる見込みがない。または商品として生産すると、大きすぎて凄い価格になるとか……いろんな理由でね。
特にやられ役な量産機は、そういうのが多いのよ……――


――ガンプラって……ガンダムやアニメって、よく分からない。

ただ一つ言えるのは、プラモ一つに十五年待てる精神は……私にはないということだった。


……とにもかくにも私とスバル、ヴァイス陸曹。

エリオとキャロ、カリムさん。

そしてウェンディ達の三組に分かれ、それぞれ講習となった。


バトルベースが一つだけじゃなくて本当によかった……割と念入りに練習できるもの。

なお、このバトル講習も流れの一つとしてやるみたい。私達、本当にリハーサルへ参加した形になっているのよ。


『――じゃあみなさんには、この私……島村卯月が付きますね。よろしくお願いします』

「えぇ、よろしく。
……でも、シミュレーションモードがあるなら、アイツらはなんで」

『公式大会ではダメージレベルA……ようはみなさんが見たみたいな、普通にガンプラが壊れる戦いが基本なんです。
そのレベルならガンプラの補修技術も含めての腕前ですし、恭文さん達なら不思議はないかなぁっと』

『そっかぁ。でも、自分で作ったガンプラが壊れるかもしれないのに戦うって……直す楽しさがあっても、気持ちが強くないとできないね』

『確かにな……。素組みの俺達でさえ”これ”だ。部長の嬢ちゃんや坊主達なんてどれだけのものか』


なのはさんが言ってた。あのエターナルとか言う戦艦も、普通にプラモが売っていないものらしい。

プラ板やらパテやらを使って、いちいち整形して、形に纏めて作る物……スクラッチって言うらしい。

そんな何日も、何十時間も……もしかしたらもっとかかるものを、一度のバトルで壊すかもしれない。


普通に考えたら怖いわよ。そもそもそういうモードがどうして必要なのかって言う疑問もある。


『……そうですね。その辺りは……まぁ嫌な話ですけど、ガンプラの売り上げを増進させる手口なんて批判もあります』

『壊れたら修理用のキットを買うから、更に売り上げがってことか……』

『そういう意味では、私達はそれに乗っかっている犬かもしれません。
だけど……例え傷ついたとしても、証明したいものがあるのも確かなんです』

「証明?」

『例えば強さ……自分と、自分の作ったガンプラはすっごく……それこそ世界に届くくらい強いんだって叫びたい、とか。
何よりそれだって強制じゃない。私達は自分の意志で、そういう下らない遊びを楽しんでいる』

「……自分なりの理由を持って、戦うわけか」

『まぁそれも、実際やってみてからですね。
そういうのが嫌なら、普通に模型として楽しんでもいいんですし……今ならRGBNって選択肢もありますから』


RGBN……あ、それはジンウェンの配信で触れていたわね。というかあの、アンバサダー活動で見たわ。


「そっちだと仮想空間で、ガンプラが壊れないから?」

『それで実際に壊すとなると、そういう装置を自宅なりに置くの前提ですしねー』

「怖すぎるでしょ!」

『でも最初にガンプラバトルを描いた漫画(プラモ狂四郎)は、それでやっていたんですよ……』

「その原作再現いらないわよ!」

『だなぁ! ちょっと病気を疑うぞ!』

『ま、まぁまぁ! それもほら、やっぱり……ウェンディじゃないけど、やってみてからだ!』


自分で選び、自分で紡いでいく遊びかぁ。不思議なものだと思っていながら、深呼吸……。


≪BATTLE START≫

『じゃあ出撃です! もう準備できましたから、アームレイカーを押し込んでください。……ちゃんと出撃の名乗りも必要ですよー!』

「そ、それ……やっぱやらなきゃ駄目なの?」

『様式美です!』

「せめてルール上とか言ってほしかった!」

『まぁシンプルでいいだろ。……ヴァイス・グランセニック! ガンダムデュナミス――作戦行動に移る!』

『そうそう、そんな感じです!』


ヴァイス陸曹がノリノリ……! なんか、先に見える丘に飛び出していったし!


『えっと、それなら……スバル・ナカジマ! シャイニングガンダムでいきます!』


それにスバルも!? あぁもう……こういうの、ゴリライズとかで懲りたのに! もうやらないと誓ったのに!

しかも視線が痛い! でも……あぁもう、分かったわよ! やるわよ!


「ケルディムガンダムサーガ――ティアナ・ランスター! 乱れ撃つわよ!」


アームレイカーを押し込み、カタパルトを滑る……そのまま空の中へと飛び出した。

……ガンプラを通してだけど、一瞬風を感じた。

太陽の光、草木のそよぎ……画面を通し、世界の中へダイブしたような感覚。


アームレイカーを軽く右左と動かすと、機体もスライド移動したのか軽く動いてくれる。


(これがガンプラバトル……アイツが戦う世界)


少しだけ、胸が躍るのは……やっぱりアイツに思うところがあるせいかもしれない。

これは……ううん、恋なんて、認めてやらないんだから。きっとこれは、もっと違う……意地の悪い感情だから。


(その2へ続く)





あとがき


恭文「というわけで、雛見沢DAYBREAKの続編……横馬の合コン話をエピローグとして、さくっと四話くらいで纏めたいと思います」

卯月「……恭文さん、私の誕生日はまだ五日ほど後です」

恭文「だからこれをやっている最中にお誕生日おめでとうーだよ」

卯月「そういうことですね!」


(だから卯月も今回ゲスト的に出ています。なお中学生です)


恭文「というわけで、ガンプラ塾絡みの話も出しつつ、卯月がちょこっと登場。
更にみんなもガンプラ作り……とはいえこの辺りは何度かやった下りなので、いろいろ変えてはいるけど」

卯月「ちょっとダイジェスト的ですよね。
……でもこう言う文化関係の勉強も必要とか、やっぱり大変です」

恭文「それも仕事ってわけだ。
あと卯月の登場や、ティアナがケルディムガンダムサーガを使う辺りなどは、これまでいただいた拍手を参考にしています」


(あくまでも一部参考という感じになりましたが……拍手、ありがとうございます)


恭文「……で、卯月はオリュンポスを」

卯月「なんとかクリアしましたよー! 今回も茨木ちゃんと一緒の旅です!」

茨木童子「くくくくくくく……神だなんだと曰っていたが、吾にかかればこんなものよ!」


(そんなことを言うイバラギン、あっちこっち包帯だらけです)


白ぱんにゃ「……うりゅりゅ、うりゅー」

茨木童子「この程度の傷、なんの問題もないわ。だが、心遣いは感謝しておこう」

白ぱんにゃ「うりゅー♪」

フィア「まぁ肉を食え、肉を! そうすれば傷が治るとマーベラスが言っていた!」

茨木童子「にゃんだとぉ!?」


(それはマーベラスだけです。
本日のED:KNOCK OUT MONKEY『HOPE』)


卯月「恭文さん、誕生日には……いっぱい、いっぱい、お話したいです。それで一緒に…………ガンプラバトルです!」

恭文「まずそこか!」

卯月「はい! それに武蔵さんも本格的に始めるって言いますし……私、頑張ります!」

恭文「武蔵ちゃん、静香と仲良くなるのが一番っぽいけどねー。
……逆バニーの件でどん引きされたから」

ネロ(Fate)「むむ、あの二刀流女には負けていられん!
静香は余のハーレムの一角足る逸材! 手出しはさせんぞ!」

恭文「せめて本人の意志を確認してから言おうか……!」

ネロ(Fate)「……奏者! 余もガンプラバトルに参戦し、王者となるぞ!」

恭文「そして目標の立て方が大きすぎる!」

卯月「さすがは皇帝さんです……!」


(おしまい)





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