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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
幕間そのじゅうに 『ありえないことなんて、ありえない 真夏の夜の夢?・・・編』



古鉄≪さて、新章突入な幕間です。みなさん、おはこんばんちわちわ。古き鉄・アルトアイゼンです≫

ゆうひ「どもー。椎名ゆうひです。さて、こてっちゃん。今回の話は・・・アレやな? うちと恭文君の運命の出会い」

古鉄≪・・・あぁ、運命過ぎましたよね。アレは。というより、20歳ほど上のあなたにフラグ立てるってどんだけですか≫

ゆうひ「ノンノン、愛に年齢は関係ないんよ? 詳しくは絶賛発売中のうちのNewアルバムのトラック7の新曲を聴いていただければ」

古鉄≪そうですか・・・。というか、宣伝しないでください。そして誰も聞けませんから。さて、今回のお話は前回の幕間から数ヵ月後。
マスターが12歳になったばかりの頃。海鳴のとある寮に関わった時に起こった事件・・・あぁ、また事件なんですよね。とにかく、そんなお話です≫

ゆうひ「・・・ほんまにあの子は運が無いんやなぁ。まぁ、とにかく・・・幕間そのじゅうに、スタートです」

古鉄≪どうぞー≫




















魔法少女リリカルなのはStrikerS


とある魔導師と機動六課の日常


幕間そのじゅうに 『ありえないことなんて、ありえない 真夏の夜の夢?・・・編』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・夏・・・暑さ真っ盛り。セミは鳴き、太陽は燦々と・・・そして無駄にアスファルトの地面とコンクリートジャングルな町並みを焼く。





飲食店では冷たいものがバカ売れで、そして海ではジャガイモ洗いと言わんばかりに人が沢山居たりする・・・そんな、夏。





僕は・・・僕は・・・ヒマを持て余していた。





リビングでアイス(士郎さんと桃子さんに教えてもらった作り方をやってみた試作品)を食べつつ、思った。なぜ僕がヒマなのかと。夏だから恋のステップアップでもかませばいいのに、なぜそれが出来ないのかと。





そうだ、全部・・・あの5歳児が悪い。よし、ちょっと呪いでもかけて










「ダメだからっ! なに普通にそう言って買い物行こうとしてるのっ!?」

「・・・大丈夫ですよ。1割冗談ですから」

「9割本気だよね、それっ!!」



僕のそんな茶目っ気溢れる発言にツッコんできたのは、最近クロノさんとラブラブで、普通にうちに入り浸るようになったエイミィさん。なお、クロノさんはこれまた普通に本局で仕事なので居ない。なのに、エイミィさんはうちに居る。なんだろう、この不思議。

フェイトもお休みの予定だったのに・・・例のエロ男・揉んでやるの所に行っているのだ。というか、社会勉強も兼ねて2週間ほど小旅行に行くとか。・・・なんで一緒に暮らしてるのに会えないのだろう。



「いや、エリオ・モンディアルだから。そんな卑猥な名前じゃないから。・・・まぁ、気持ちは分かるよ? でも、フェイトちゃんの気持ちも分かってあげなよ」

「・・・分かってますよ。でも・・・こう、イライラするんです」



勝手だと分かってても、ヤキモチ焼いちゃうのだ。・・・僕、こんなに独占欲強いとは思わなかった。

なんて言いながら、アイスをパクリ。で、エイミィさんもなんだか苦い顔でパクリ。そして、二人でため息を吐く。



「まぁ、その気持ち・・・私も分かるんだよね。だってさ、クロノ君も同じだもの」

「あぁ、同じですよね。兄妹揃ってワーカーホリック気味なところとかが」

「そうでしょ? もうヒドイよねー」



つまらなそうにエイミィさんがつぶやいた。・・・実は、クロノさんは本来なら今日から夏休み(取るのに非常に苦労したのは、言うまでもないと思う)だったのだけど、急にスケジュールが変わって休みが無くなったのだ。

で、クロノさんに合わせて長い休みを取っていたエイミィさんは、一人ヒマを持て余していたのだ。なんというか・・・不幸だ。



「私も仕事するーって言ったのに、クロノ君『君は僕よりは休みが取りやすいんだし、ここでしっかり休養を取った方がいい。・・・しばらく、休んでないだろ?』・・・ってさ。
全く、気遣ってくれるのは嬉しいけど、クロノ君居なかったら休み取っても意味無いって事が分からないのかねぇ」

「分からないからクロノさんなんでしょ」



なんて言うか、クロノさんも若干鈍い人だからなぁ。エイミィさんも付き合うまで相当苦労したって言うし。



「あぁ、そうだねぇ。・・・ね、恭文くん。放って置かれてるもの同士で旅行でもしちゃう?」

「あぁ、いいですねぇ。夏の避暑地で甘いアバンチュールでもしましょうか」

「朝から晩まで遊んで・・・夜は二人心と身体を結び付けて・・・朝までベッドの中で語り合って・・・」



なんて言いながら、エイミィさんがどこからか取り出したのは某ハーレクイーン小説。最近ハマっていると言っていた結婚間近の女の人が一人婚前旅行に行って・・・そこで出会う青年とひと時の恋に落ちるというものである。

・・・かなり危ないよね、これ。クロノさん、しっかりしないとどこかのトンビにエイミィさんかっさらわれますよ?



「そして、休みが終わる時にはいつもの二人に戻って、ひと時の熱く・・・濃厚な恋の時間はずっと胸の奥に秘めるのさ〜」



小説を胸に抱いてなんか光悦とした表情で天井を見る。そして・・・ふと冷めた表情に戻って、本を机にポンと置いてから、僕が作ったアイスを一口食べて・・・ため息を吐く。

なんというか、人が作ったもの食べてため息吐くのはやめて欲しい。味に不備があるのかと思うから。



「あぁ、ごめんごめん。アイスは美味しいよ? いや、ホントにだよ?」

「ならいいんですけど・・・」

「でもさ、真面目に私達だけで旅行行っちゃう? もちろん、アバンチュールは抜きで」





退屈そうにそう言ってきたのは、ご存知エイミィさん。まぁ、アバンチュールは無しなのは当然ですよ。うんうん。

・・・なお、この数年後にマジでアバンチュールをかましたんじゃないかと疑われ、何回も家族会議が行われる事になるのを、僕もエイミィさんもまだ知らなかった。

理由は一つ。あんまりにも僕になつき過ぎるエイミィさんの子ども達。さっき言ったような感じで僕が本当のパパになったんじゃないかと思われたのだ。



そして、二人でこんな会話をしたことを反省したのは、言うまでもないと思う。





「暇ですしね・・・。日々の鍛錬は抜きにしても、すっごく暇です」

「だねぇ。というかさ、なのはちゃんもはやてちゃんもみーんな居ないんだもん。どうしろって言うのよ、これ」



そう、みんな局の仕事で居ない。・・・夏休みだって言うのに、元気な奴らだ。僕もここんとこ休みなかったから、皆について行くのもアウトだし。

でも、ふと思った。エイミィさんなら、美由希さんが居るんじゃないかと。僕と旅行行くよりは美由希さんと行った方が楽しいでしょうに。



「うん、だから美由希ちゃんの都合も聞いて、出来れば三人で。・・・あぁ、美由希ちゃんとアバンチュールする分には何も言わないよ? エイミィさん、口は堅い方だから」

「なんでそういう話になるっ!?」

「だって〜、美由希ちゃん結構恭文くんの事気に入ってるみたいだし・・・ねぇ?」

「誰に聞いてる誰にっ! そしてあさっての方向を向かないでっ!! つーか、どうしてこっち見てくれないんですかっ!?」



なんて、遊びな会話をかましていると・・・着信音が鳴った。僕の携帯端末の着信音だ。なお、FFのレベルアップ音。ただ、最後に音が力が抜ける感じで落ちるのだ。これが中々面白い。

ジーンズのポケットから端末を取り出し、画面を見る。・・・噂をすればなんとやら、美由希さんだった。で、僕は通話を繋ぐ。



「・・・もしもし?」

『あ、恭文? ね、いきなりだけど・・・確か暇を持て余してるって言ってたよね。それでちょっと頼みがあるの』

「・・・頼み?」

『うん。あのね・・・泊り込みのバイトしてみない?』

「・・・はい?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・そして、僕とエイミィさんと美由希さんはお昼過ぎに・・・とある場所に来ていた。そこは海鳴の一角にあるさざなみ寮。ここがバイト先らしい。





なんでも、ここの寮の管理をしている人がちょっとだけ怪我をしてしまって、治るまで手伝う人が欲しいとのことだった。で、ここの関係者と友達という美由希さんが・・・暇を持て余していてそこそこ家事スキルの高い僕に声をかけたのだ。

訂正・・・僕達だ。エイミィさんも話を聞いて乗っかってきたのだ。ついでに暇だったから。





というわけで、二階建てのそこそこ大きい建物を見上げて・・・僕とエイミィさんは、ヘバっていた。










「あ・・・あづい・・・」

「みゆぎぢゃん・・・ごこ・・・? てんごく・・・?」

「二人とも、ちょっと・・・しっかりして・・・。いや、確かに40度迫りそうな勢い・・・だけどさぁ」



訂正、美由希さんもヘバっている。三人して暑さに参りかけている。そして、そんな中、美由希さんが玄関に備え付けられているインターホンを鳴らす。



『はいー』

「あ、高町美由希です。バイト二名・・・連れて来ました」

『え、もうっ!? と、とにかく・・・今いきまーす』



そして、死にそうになりながら短くも長い時間を待つ。ドタドタと足音が中からして・・・ドアが開いた。出てきたのは、白いヘアバンドをしたショートカットの女の人。白い半そでのワンピースを身に着け、どこか温和な雰囲気を出している。

左手には、銀色に輝く結婚指輪・・・あ、ニコリと微笑まれた。とりあえず、会釈で返す。というか、挨拶。



「あの、初めまして。バイト1号です」

「バイト2号です・・・。あぁ、恭文くん。風が・・・風があるよぉ」

「そうですね。冷たい風が・・・あぁ、生きている感じがするー」

「と、とにかく・・・中へどうぞ。というより、汗を拭かないと・・・」





そして、僕達三人はリビングに通された。・・・うわ、なんというか・・・室内が凄まじく綺麗だ。ざっと見る限り埃一つないし。

そんな感想を抱きながらリビングに入ると、左腕に三角巾を巻いて、片手でアイスティーをお盆に乗せて運んでいるやたらとデカイ男の人が・・・。



僕達がそれを視認すると、僕達を案内していた女の人が走り寄った。というか・・・え、ちょっと怒ってる?





「耕介さんっ! なにしてるんですかっ!?」

「へ? いや・・・暑かっただろうからお茶を」

「そういう問題じゃありませんっ! けが人なんですから大人しくしていてくださいっ!!」



そして、そのやり取りで理解した。このデカイ人が管理人さんなんだと。

女の人が、お盆をひったくるようにして、テーブルにアイスティーを置く。そして、どうぞと案内してくれたので、僕達は席につく。二人も同じである。



「えっと・・・美由希ちゃん、私も耕介さんもかなりびっくりしてるんだけど」

「そうだぞ。まさか話をした当日にこれとは思わなかった」

「あはは・・・。すみません」

「というより・・・この子は小学生だよな?」



そして、男の人が僕を見る。・・・はい、小学生ですよ。学校行ってないけど。



「あぁ、問題ないですよ。恭文は翠屋の店員ですし、働きぶりは私が保証しますから」

「店員? ・・・そう言えば、翠屋に小学生くらいの小さな男の子のかわいい店員が居るって、うちの寮生が言ってたんだけど・・・もしかして君の事?」

「多分・・・僕です」



・・・か、可愛いって・・・なんだろう、すっごく複雑。

だって、僕男なのに。



「うちの母さん仕込みで、料理も家事も得意ですしお役に立てると思います。もちろん、耕介さんには勝てないと思いますけど」

「なるほど・・・。あ、自己紹介が遅れました。俺は槙原耕介。ここの管理人です」

「私が槙原愛・・・えっと、耕介さんとは夫婦なんです」



うん、見れば分かります。だって・・・なんか雰囲気が甘いし。つーか、距離感が近いし。あぁ、なんだろう。うらやましい。すっごくうらやましい。・・・夏なんて、嫌いだ(なお、八つ当たりという意見はスルーします)。

まぁ、そこは置いておくとして、僕は挨拶することにした。



「初めまして。エイミィ・リミエッタです」

「初めまして。蒼凪恭文です」



ペコリと会釈して、改めて挨拶。・・・こういうのは最初が肝心なのだ。どこかの横馬の如く(中略)。



「えっと・・・二人は美由希ちゃんの友達なんですよね」

「あ、大親友です」

「僕は友達というか・・・剣術の先輩なんです」

「・・・なんだ、君も剣術をやるのか」



僕は槙原さんの言葉にうなづ・・・え、君も? 何故にそんな答えが返ってくるのかちょっと分からなかった。



「うちの寮に居る・・・まぁ、今居るのは大半が里帰りみたいな感じでここにしばらく泊まるメンバーばかりなんだけど、剣術経験者が多いんだ。もしかしたら、話が合うかも知れないな」

「そうなんですか。・・・ちなみに、強い人は」

「恭文くん、その凄まじく楽しそうな顔はやめて欲しいんですけど。いや、エイミィさんね・・・意外とそれ怖いのよ」



気にしないでいただきたい。そして怖いってなんですか怖いって。

・・・くふふ、ひと夏のアバンチュールより楽しくなりそうな感じがびんびんしてきたぞー! さざなみ寮最高ー!!



「・・・耕介さん、愛さん、すみません。恭文はこう・・・うちの兄と同じく、バトルマニアというか、戦うのが好きな節がありまして」

「・・・あぁ、なんか分かった。よく分かったよ」

「まだ小さいのに・・・」

「あはは・・・」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、美由希さんは僕達を置いて帰って行った。





ありがとう、美由希さん。さようなら、美由希さん。あなたのことは決して忘れない。










「帰ってないからっ! そしてそんな私が死んじゃったみたいなナレーションはやめてっ!!」



・・・なぜだろう、美由希さんがご立腹だ。三昔前のアニメとかでよくやってたのに。



「今は21世紀だよっ!? あと・・・私も手伝うのっ!!」

「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」

「なんでそこで恭文もエイミィも驚くのっ!?」



だ、だって・・・ねぇ? いや・・・ねぇ? もう・・・ねぇ?

美由希さん、料理とか家事とかてんでダメなのに。



「美由希ちゃん・・・前にたまごをレンジに入れてボンってしたんだよね?」

「そんなことしてないからっ!!」

「あれですよね、ご飯を洗剤で洗って・・・」

「そんなこと・・・しました」



したんかいっ! 普通に言っててびっくりしたわっ!! つーか、翠屋二代目店長としての修行はどうなったのっ!? とりあえず家族のコミュニケーションとかしてー!!



「だって、恭ちゃんは忍さんと旅行行っちゃったし、父さんと母さんもお店臨時休業して旅行行っちゃって・・・なのはも泊りがけの仕事だし、姉妹のコミュニケーションも出来ないし。
香港に行こうかとも思ったけど、2週間くらいしないと美沙斗母さん忙しくて相手出来ないって言われて・・・もう、暇・・・で・・・」

「・・・泣かないでくださいよ」



とりあえず、リビングに蹲って泣いている美由希さんの肩にポンと手をあてる。予定・・・美由希さん以外はびっしりだったんですね。

お願いだから泣くのはやめて欲しい。まるで僕が悪いみたいだから。



「・・・えっと、仕事の説明して・・・大丈夫かな?」

「あー、はい。どうぞどうぞ。もうしちゃってください」

「えっと・・・。エイミィさんや恭文君に美由希ちゃんに頼みたいのは」



先日、槙原さんは



「あー、ちょっとストップ」

「人のモノローグに口出しするのやめてもらえますっ!?」

「いや、悪い悪い。・・・俺達の事は名前でいいぞ? 槙原が三人も居るしな。ややこしいことこの上ない」



・・・なるほど、なら・・・耕介さんに愛さんで。



「えぇ、それでいいわよ」

「で、事故で左腕の骨にヒビが入ったんですよね。それが全治二週間」

「あぁ」



本来なら、現在寮に住んでいる人間の大半は里帰り中で、耕介さんと愛さんだけ・・・なお、お二人には子どもさんが居るんだけど、現在サマースクールとかで同じくらいお泊りだそうだ。

つまり、怪我をして耕介さんが戦力から外れても特に問題はないはず・・・だったんだけど、そうも行かなくなったらしい。



「ただ、今年は以前寮に住んでいた人達が里帰り的にここに来るの。というより・・・もう来ている子も居て、合計人数も結構居るの」

「で、残ってる人間も居るんだけど、それがまた世話焼かせる人間ばかりでさ、愛は掃除や洗濯はともかく、料理関係ダメだからその辺りを何とかしなきゃいけないんだよ。
それで、美由希ちゃんに料理が出来て俺の怪我が治るまで補佐が出来る人間を紹介してくれないかって頼んだら・・・」

「僕達に声をかけたと。しかも、耕介さん達に相談された10分後に」

「あはは・・・。他に思いつかなくて」



まぁ、納得した。とにかく、僕はご飯作ればいいのね。あと、耕介さんの手が回らないところのサポートと。



「まぁ、そういう事だな。・・・もちろん、給料はしっかりと出すから、是非協力してくれると」

「おーす、耕介。腕の具合はどうだー?」



突然声がした。僕達が全員そちらを見ると・・・女の人が居た。黒髪のショートカットでメガネをかけて、黒い・・・パンツ・・・というか下着に、胸元なんにもつけてなくて、ワイシャツだけ羽織っていて・・・。

ごめん、見えてる。ぶっちゃけ見えてる。もうね、いきなりR18展開に突入した感じで、思考が止まった。



「・・・・・・・・・・・・え?」

「真雪さんっ! なんて格好してるんですかっ!!」

「あぁ? これくらい問題無い・・・って、美由希ちゃん来てたんだ」

「あ、あはは・・・どうも。お邪魔してます」



と、とりあえず・・・首を動かしてそれから視界を外す。よ、よし・・・気のせいだ。あれとかそれとか、通常版として描写すると問題な物質とかは全部気のせいだ。

脳内フォルダに保存・・・いやいや、これからここでお仕事するのにそれはだめだ。消去消去。



「・・・あ、もしかしてアンタらがピンチヒッター?」

「あははは・・・どうも、バイト2号です」

「私が3号なんです。で、この子が・・・」

「なんだ、全員女の子か」



グサッ!!



「でも美由希ちゃん、どこでこんな可愛い子達と友達になったの」



グサグサッ!!



「や、恭文くんっ!? ちょ・・・しっかりしてー! 泣かないでー!!」

「・・・え、どうした? というかそこの小さいの」



グサグサグサっ!!



「号泣しないでー! 大丈夫っ!! これからだよっ!? 君はこれから大きくなってクロノ君追い越すんだからっ!!」

「真雪さんっ! なに失礼な事言ってるんですかっ!?」

「へ? いやいや、あたしはなにも悪くないだろ」

「失礼ですよっ! 恭文君は男の子ですよっ!?」



・・・身長・・・ちょっとは伸びたのに。あ、でもフェイトには完全に抜かされたしなぁ。

あはは・・・世界なんて滅びてしまえばいいのに。



「物騒な事考えないでー!!」

「あ、そうなんだ。いやいや、こりゃ悪かったな。・・・まぁ、泣くなよ。な?」

「真雪っ! そう言いながら恭文君に近づくのはやめろっ!! つーか、とりあえずその格好をなんとかしろよっ! 俺もどこ見りゃいいのか分からないんだよっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・帰っていいでしょうか? もういいじゃないですか、夏休みなんて部屋に閉じこもって欝な気持ちで一日中寝てれば」

「恭文っ!?」

「まぁまぁ、落ち着きなよ。いや、マジで色々と悪かったねー。でもさ、アンタはまだ子どもなんだし、女の裸は見れるうちに見ておいた方がいいって。
アンタ、12歳になったばかりだろ? だったらまだギリギリオーケーだよ。あ、なんならあたしと一緒に風呂でも入るか? もうあたしは全然オーケー」

「真雪さんっ!!」

「・・・はい、ごめんなさい」



・・・とりあえず、ちゃんと服を着てくれた・・・露出狂なお姉さんに挨拶です。あぁ、心が・・・心が痛い。色んなものが突き刺さったからかな。

やっぱり、エロ男・揉んでやるには・・・あれだよ、将来的に剥げるなり影が薄くなるなり、なんかこう微妙な感じの呪いをかけると心に誓った上で(八つ当たりという意見はスルーします)話を進めることにした。



「で、ロシュツ・キョウさん」

「はいよ・・・って、アンタいきなりそれっ!? いくらなんでも礼儀ってもんがなってないだろっ!!」

「いや、真雪。お前・・・それ言えた義理か? 礼儀どうこうで言ったらさっきのアレは間違いなくアウトだろ」

「耕介、人間の美徳って何か知ってるか? それはな・・・過去を振り返らない事だ。そうして前を見続けることだ。だからこそ、人間は前に進めるんだよ」

「お前はちょっとは振り返れっ!!」



なんか・・・頭痛がしてきた。あれ、熱射病かな? 多分それだという事にしておこう。



「とにかく、あたしの名前はロシュツ・キョウなんて名前じゃない。仁村真雪って言う名前があるんだ」

「・・・今までの発言や行動から考えると、嘘みたいに綺麗な名前ですね」

「だろ? もう嘘みたいに綺麗・・・ちょっと待てっ! そりゃどういう意味だっ!!」

「まぁ、そこは置いておいて・・・」



何故だろう、お姉さんが『置いておくなー!!』とか叫んでるけど、きっと気のせいだ。

僕は耕介さんの方を見る。とりあえず・・・動きたい。この頭痛やらさっきのR18映像を消去するために働きたい。



「僕達はとりあえず何をすれば」

「・・・そうだな、とりあえず・・・里帰りしてきている元寮生と、現寮生が二人・・・合わせて三人居るから、挨拶してきて欲しいんだ。まずはそこからかな。
というより、まだ夕飯の準備には早いし、掃除や洗濯ももう愛が協力してくれて終わってるから、やることないんだよ。まさかこんなに早く来てくれるとは思ってなかったし」

「なるほど、では早速・・・」

「行きますか」



僕とエイミィさんは立ち上がって・・・立ち上がって・・・。



「「・・・どこに行けば?」」

「・・・そうだよな、分かるわけないよな。真雪、頼む」

「あいよ」

「あ、私も行くよ」





そうして、僕達は二階へ上がって・・・挨拶となった。どうやらこのお姉さんも二階らしい。



だって、ある一室を指して『ここがあたしの部屋ね』と親指で指して説明したから。





「知佳ー、入るぞー」



そう言って、その隣のドアのノブに真雪さんが手をかける。そうして、ドアががちゃりと開かれて・・・。



「あぁ、お姉ちゃんごめんっ! まだ着替え中ー!!」

「あ、悪い」



ドアは開かれなかった。どうやら鍵を閉めていたらしい。



「・・・えっと、今の声だけ出演があたしの妹の仁村知佳ね」

「・・・帰っていいですか? つーか、これはあれですか? いじめですか?
鍵かかってなかったら完全にアウトでしたよねっ!? ほら、怒らないからちゃんと答えてっ! ほら早くっ!!」

「あぁもう、帰るなって。怒るなって。・・・知佳ー、後で来るからそれまでに着替えとけよー」

「分かったー」



そして、仁村さんを先頭にまた移動開始。別の部屋の前に来た。僕はとりあえず後ろを向いておく。

だって、また・・・仁村さんが平然とドアノブに手をかけていた。



「大丈夫だよ、さすがにないから。つーか、それはもはや奇跡だろ。・・・いや、待てよ。アンタはあたしの素晴らし過ぎな裸を見てるんだから、もはや奇跡は起こって」

「真雪さんっ! とりあえずノックしましょうねっ!? 恭文がなんか頭抱え出しましたからっ!!」



そうして、美由希さんがノックすると、部屋の中からどうぞという声がした。そのまま開くと・・・あれ?

確か・・・この人って・・・どっかで見たような。あ、思い出した。



「あ、恭文」

「リスティさんっ!!」

「そうそう、コイツはリスティ・槙原って言うクソ生意気な・・・へ? なに、アンタら知り合いなの?」

「一夜を共にした仲だよ」

「違うわボケっ! 普通に偶然遭遇して、一緒にご飯食べただけでしょっ!?」










なお、この辺りには事情がある。そう、それは・・・3ヶ月くらい前のこと。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・ね、恭文君。せっかくだしお昼、一緒にどうかな? それで、色々お話」

「あ、はい。是非」





場所は数ヶ月前の海鳴総合病院。主治医であるフィリスさんの定期健診終了後、僕はこんな感じでフィリスさんにお食事に誘われた。



まぁ、病院の食堂でご飯という感じなんだけど。





「でも、予定とかは大丈夫?」

「はい、そこは。というか・・・フィリスさんみたいな素敵な女性から誘われたら、受けなきゃ失礼じゃないですか」

「もう、上手なんだから。・・・フィアッセに言っちゃうぞ? 恭文君が私と浮気する気満々だって」

「そ、それはやめていただけると・・・って、僕の本命はフェイトなんですけどっ!?」



なお、それならフィリスさんと食事するなという意見はスルーします。

・・・当たり前でしょ? 普通にお世辞だし、別にどっかのレストランとかじゃなくて病院の食堂なんだから。つーか、年齢差を考えて。



「でも、恭文君結構モテる上にプレイボーイみたいだし・・・私なんて、油断してたら簡単に落とされそうだもの」

「モテませんよ? つーか、プレイボーイじゃないですから」

「嘘。月村の家のすずかちゃんや、はやてちゃんの家のリインちゃんも恭文君に首ったけって聞いてるよ?」

「よし、フィリスさん。そんなこと言ったのはどこの誰ですか? ちょっとシバきたいんで教えてください」



なんて話をして食堂を目指すその道すがら・・・フィリスさんは声をかけられた。



「ハイ、フィリス」

「・・・あ、リスティ」



その人は、フィリスさんに似た銀色の髪をショートカットにした女性。ブラウンのコートに白のシャツ、黒のロングパンツを履いている。両手には黒いグローブ。

そして・・・おいおい、たばこはだめでしょ。ここは禁煙ですよ? 病院は全面的に禁煙ですよ?



「もう、またたばこを手に持って・・・」

「吸わないから問題無いよ。というか・・・ごめん、もしかしてお邪魔だった?」

「お邪魔?」



そう言いながら、僕を見る。結構興味深く・・・じーっと。

その様子に、フィリスさんが何かに気づいたようにニヤリと笑った。



「・・・あぁ、お邪魔かな。これから私、この人とデートだから」

「へ?」

「あぁ、そうなんだ。・・・もしかして、朝までの予定?」

「うーん、どうかなぁ」



おーいっ! 何を勝手に話を進めてるっ!? おかしいからっ! おかしいからねっ!!

ど、どうしよう。僕のドS本能が乗れと言ってるんだけど。でも、乗るとなんかマズイとも本能が言っていて・・・。



「まぁ、冗談はこの辺りにして」

「あ、そうなの? 小さいもの同士お似合いだと思ったのに」

「誰がピンセットじゃないとつまめないほどにミニマムですか」

「いやいや、そこまで言ってないから。・・・えっと、フィリス。この子は本当は・・・何者?」



そして、再び僕を見る。とりあえず・・・自己紹介、必要?



「ほら、恭也さん達の妹のなのはちゃん。あの子の友達なんだ。で、私の患者さん」



フィリスさんがそう言うと、目の前の女の人が納得した顔になる。

で、いいタイミングかなと思って、ペコリとお辞儀。そこから、自己紹介のコンボ。



「あの、初めまして。蒼凪恭文と言います」

「初めまして、リスティ・槙原です。一応、コイツの姉。あ、気軽にリスティって呼んでくれていいからね」

「はい、よろしくお願いします」










そして、結局リスティさんも一緒に食事を取る事になったのだ。いや、楽しかった楽しかった。





フィリスさんがいじられるという素晴らしい場面も見れたし・・・うふふ、面白かったなぁ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・と言う感じで、ボク達は出会って、一気に燃え上がって」

「・・・そっか、初対面でコイツとガチで絡んだのか。大変だったろ?」

「かなり大変でしたね。もう自由過ぎますよ」

「ちょっとっ!? 真雪も恭文も無視ってひどくないかなっ!!」



とりあえず、もうアバンチュールネタはいいから。きっと読者は飽きてるから。

とにかく、リスティさんもここに住んでいたと。また奇遇というかなんと言うか・・・あれ、槙原?



「えっと、耕介さんと愛さんと苗字同じですよね。美由希ちゃん、もしかして・・・」

「そうだよ、リスティさんは二人の養女なんだ」

「あ、それでなんだね」



確かに・・・槙原さんはダメだね。三人も居るのはめんどいもの。



「ということは、もしかして恭文と・・・そこに居る人が耕介の手伝い?」

「あはは・・・。なぜかそうなりました」

「どうも、エイミィ・リミエッタです。よろしくお願いします」

「あぁ、初めまして。リスティ・槙原です。・・・ふむ」



・・・なぜだろう、また僕のことをじーっと見て・・・見て・・・納得した顔になった。



「真雪、恭文なら大丈夫だよ。フィリスから色々聞いてるから」

「はぁ? なんだよそれ」

「まぁ、ちょっとこっちに・・・あ、美由希。悪いけどあと案内よろしくね。美緒の部屋はわかるでしょ?」

「あ、うん。それは・・・」



え、なにが大丈夫なの? というか、フィリスさんは一体なにを話した。それ以前に、何故僕達が住人に挨拶の途中だと分かった上での発言をするの。

・・・なんだろう、この妙な感覚は。な、なんかまた厄介ごとが待ってそうな気がするのは、なぜ?



「あー、そういうわけであたしはちょっとコイツと話すから。美由希、後よろしく」

「はい・・・わかりました」





そうして、僕達三人は部屋の外に出て・・・あれ、なんかおかしいな。なんでいきなり放り出された? どんなドSプレイ?



とにかく、次の部屋に行く。そうして美由希さんがノックしようとすると・・・。





「お、来た来たー!!」

「ひぁっ!?」



ドアがいきなり開いた。中から・・・黒のタンクトップを来た女の人が・・・あ、なんか美由希さんに抱きついた。

しかも嬉しそうに・・・すっごく嬉しそうに・・・。



「みゆきちー。手伝いに来てくれてありがとねー。いやぁ、もうあたしは色々と心配でさー」

「み、美緒ちゃんっ! 抱きつくのやめてー!!」



それを見て・・・僕は思った。あぁ、これが百合なんだと。

というか、なのはは危ないと思ってたけど・・・美由希さんもなんだね。びっくりだよ。



「ちょ、違うからっ! 私はそういう趣味じゃ」

「まぁ、なんというか・・・ごゆっくりー」

「エイミィまで逃げないでー! ドアを閉じないでー!!」



とりあえず、ドアは閉じた。

・・・うん、僕達空気読めてるね。すばらしいよ。



「・・・こちらの人への挨拶は後にしようか」

「そうですね。それじゃあ、さっきの仁村さんの妹だという方への挨拶を・・・」



そうして、先ほどの部屋の前まで戻る。で、ドアをノック。



「・・・あ、はーい。どうぞー」

「失礼しまーす」



ドアを開けると、そこは綺麗で・・・なんというか、女の子らしい部屋だった。こぎれいでぬいぐるみがあって、なんかパソコンが数台・・・あれ、最後おかしいな。

そして、そんな部屋の中に居るのは、白のワンピースを着た細身で小柄な女性。髪は金と間違えそうな明るいブラウン。その女性は、僕達ににっこりと笑いかけながら迎えてくれた。



「えっと、初めまして。今日からしばらくの間管理人さんのお手伝いをすることになったエイミィ・リミエッタです」

「あ、はい。初めまして、私は仁村知佳と言います。なんというか、すみません。うちの兄のために・・・」

「あー、いえいえ。・・・え、お兄さん?」



・・・苗字、違うよね。いや、ハラオウン家や八神家も家族構成複雑だったりするから、分からないぞ、ここは。



「あぁ、血のつながりはないんですけど、なんというか・・・義兄弟の契りを交わしていまして。私はお兄ちゃんと呼んでるんです」

「あ、なるほど。あと、この子が・・・」

「蒼凪恭文くん・・・だよね?」

「はい・・・え?」



僕が自己紹介しようとすると、仁村さん・・・あぁ、めんどいから名前で呼ぶ。

知佳さんが、にっこりと笑いながら僕の名前を言った。なお、僕は名前を名乗ってない。



「えっと、そうなんですけど・・・なぜに恭文くんのことを?」

「実は、前に一度会ってるんです。ね、私の事覚えてないかな? 私はよく覚えてるんだけど」










・・・あれ、確か・・・だいぶ前に・・・あ、1年前くらいに翠屋に来ていたような。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「えっと・・・シュークリームセット三つですね。飲み物は皆さんアイスティー・・・と」



やっと慣れてきた端末操作をする・・・前に、最終確認。すると、目の前の方々はうなづいた。



「ね、君・・・バイトの子?」



ふと、目の前の白いスーツを着た金色に割り合い近い髪の人が話しかけてきた。

にっこりと笑顔と共に聞いてきたので、うなづいた。



「まぁ、そんな所です」

「・・・というか、君スゴイね。歩く時、重心がほとんどブレてないし」

「そうだね、もしかして、なにか武術やってる?」

「真一郎君、弓華さん、そうなの?」



その言葉に、二人がうなづく。・・・そうなのかな。まぁ、恭也さん達との訓練も平行してやるようになって・・・こう、今までとは色々変わってきてるかなとは思うけど。

あ、こんな事してる場合じゃなかった。今はお仕事中。まだ僕がやることは沢山なのだ。



「まぁ、剣術を少々・・・って、すみません。まだ端末操作してなかった」

「あ、ううん。ごめんね、私達も引き止めちゃって。・・・お仕事、頑張ってね」



雰囲気の柔らかい白いスーツの女性に、にっこり笑顔で微笑まれて・・・つい口元が緩む。

だから、僕もその・・・忍さんや桃子さん仕込みのニッコリ笑顔で返す。



「・・・はい、ありがとうございます」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というような感じで、僕が注文取りしたんだ。名前は・・・あぁ、ネームプレートあるからだね。





あぁ、そうだそうだ。それで・・・香港で会った弓華さんと、あと一人のショートカットの女の人に間違えそうなくらいに綺麗な男の人・・・『真一郎』って呼ばれた人とも楽しそうに話してた人だ。

なんだか可愛らしい人だなぁと思ってたから、印象に残ってた。

明るい笑顔と、柔らかい雰囲気がすごく好印象で、桃子さんに『・・・あぁ言う子が好みなのかな?』とか言われてからかわれたけど。










「よかった、思い出してくれたんだね。私、学生時代からあそこの常連だったから、気にはなってたんだ。
あと、今年の2月くらいに本人から聞いたんだけど、弓華さんともあれから知り合いになったんだよね? お仕事場に何度も出入りしてるとか」

「まぁ、知り合いというかなんというか・・・」



香港に行くと、美沙斗さん共々必ずお世話になる人です。そして、死ぬ気で組み手やってぶっ飛ばされます。

ちくしょお・・・次の訓練の時には絶対一本取ってやる。



「あはは・・・。弓華さん、言ってたよ? 小さいけど、凄く強くて見込みのある子だって。是非将来はうちの隊に入って欲しいとかなんとか」

「弓華さんがそんなことを・・・」





うぅ、弓華さんみたいに凄い人から誉められると、なんか嬉しい。というか、将来は警防隊員か・・・。

魔法の事とか受け入れてくれるなら、それも選択肢かな。やっぱり・・・あそこは居心地がいいから。なんだか、すごく落ち着くの。多分、局で仕事してる時よりずっと。

最強で・・・最悪・・・か。



もしかしたら、目指すのはそこなのかな。あれから数ヶ月、局の事とか少しだけ見て・・・なんか局員は違うなって、思い始めてたりする。





「とにかく、改めまして・・・仁村知佳です。恭文くん、エイミィさん・・・ようこそ、さざなみ寮へ」

「・・・はい、これからしばらくの間、よろしくお願いします」










こうして・・・さざなみ寮での短いアバンチュール・・・もとい、バイト生活は始まったのだった。





なお、このあと終了まで美由希さんが料理関係では役に立てないのは、もう周知の事実だと思うので、触れないであげて欲しい。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「なぁ、リスティ。それ、マジ?」

「マジマジ。まぁ、どういう経緯で知ったのかとかは教えてくれなかったけどね。
ただ、フィリス的にはそうとうお気に入りみたいだよ? 自分の担当患者の中でも、随一に言う事を聞いてくれるらしいし」

「・・・あの子も苦労してるんだね。つーか、どこの誰だよ。あんないい子の言う事聞かない悪い患者は」

「その辺りは医者の守秘義務ってやつに阻まれて聞けなかったよ」



・・・でもあの小さいの、そういうのに理解あるんだ。今時珍しいね。

なら・・・知佳とも仲良くなれるかな。アイツ、何にも言わないけど、向こうで色々苦労してるみたいだし。



「まぁ、チビスケがオーケーな感じなのは分かった。あとは・・・」

「美由希はもうぶっちぎりで関係者だから大丈夫として・・・エイミィだね」

「さすがに・・・色々とびっくりするよなぁ。まぁ、2週間の事だからそこまで話すとは・・・話すとは・・・」



そこであたしは言いよどんだ。理由は簡単だ。管理人暦も10年を超えるかといううちの現管理人は・・・2週間でこの寮の特殊な事情の全てを知った。そして、理解し、受け入れた。だから今に繋がっている。

そして、幸か不幸か、これから寮に集まるメンバーは、あの時居たのが大半。・・・こりゃ、面白くなる?



「なぁ、リスティ。ちょっと賭けをしないか?」

「あ、いいね。で・・・内容は?」

「この2週間であの二人がどこまでこの寮の秘密に迫れるか・・・とか」

「よし、乗った」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・その後、夕飯の手伝いをして、夕食をみんなで食べて・・・その時に改めて自己紹介なんかしたりして・・・一日目は終わった。





なお、料理関係は僕とエイミィさんが二人で頑張ることになった。味付けは耕介さんのチェックを入れた上で。

でも、耕介さんの味付け・・・深いなぁ。指示された通りに味付けしてみると、確かに僕とエイミィさんが作ったものより数段上・・・いや、人を安心させる味になる。

こう、家庭の味というかなんというか。元々は九州にある実家のレストランを手伝ってたらしくて、すごく料理は得意らしい。





とにかく、現在夜の11時。僕は使われていない寮の部屋の一室を借りて、耕介さんに教えてもらったみんなの好き嫌いを復習中。あと、仕事内容もである。

朝は・・・朝食の準備とお風呂の掃除や準備・・・だね。

で、お昼は他の家事。洗濯や掃除、足りなくなった食材や備品関係の買出し。夕方より少し前から夕飯作って、それから後片付け・・・これ、普通に耕介さんだけで普段からやってるの? ちょっと信じられないんですけど。





それと好き嫌いとかも聞いた。えっと、真雪さんはネギとキノコ類がダメ・・・か。なんだかワンコのようだ。

なお、隣には・・・エイミィさんが寝てる。いや、エイミィさんはベッドで僕は床だけど。・・・部屋の空き室の関係でどうしてもこうなってしまった。美由希さんは美緒さんの部屋で問題は無いんだけど。

うぅ、さすがに男だからダメと言ったのになぁ。でも、皆から子どもなんだから変な遠慮するなって言われちゃったし、エイミィさんも今のうちだけなら特に問題無いみたいな顔するし・・・。





なんて考えていると・・・もう0時に迫ろうとしていた。・・・あ、だめだ。なんか眠れない。

隣にエイミィさんが居るせいなのか、無駄にドキドキ・・・というわけじゃない。こう・・・暑い。汗ばんでるの、すごく。

寝る時までクーラー使ってたら風邪引くから、エアコンは切っている状態。そして、外から風はなし。無風。暑くないわけがない。なんでエイミィさんがクロノさんの名前をつぶやきながら気持ちよく寝れるのかが疑問である。





仕方なく、僕は立ち上がって部屋の外に出た。・・・お風呂でも浴びて、さっぱりしよう。ここのお風呂は基本24時間使用は自由らしいから。

お風呂は一階。僕達の部屋は二階。なので、部屋から出て・・・歩き出す。そして、丁度階段の方、窓の所に視線が向く。

ここは当然だ。だって、階段を下りないと一階に行けないんだから。でも・・・当然じゃない事が起きた。





その窓に・・・こう、金髪で白い服を纏った女の人が・・・映った。すごくよく見えた。きっと幻覚じゃない。これがリアルだ。










「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、あると・・・さん」

≪はい、これが今回初登場の私です。・・・一応言っておきますけど、私も見ました≫

「そ、そうなんだ。でも・・・出来ればそこは言って欲しくなかったなぁ」

≪大丈夫ですよ。きっとお散歩中の外人さんですから≫



あぁ、なるほど。そりゃなっと・・・く出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! なんでこんな時間に空のお散歩中っ!? しかもここは二階だよ二階っ! ぶっちゃけありえないでしょうがっ!!

・・・いや、魔法訓練とかなら分かるけど、魔力反応とか無いし・・・よ、よし。もう気にしない。あれはきっと幻覚だ。真夏の夜の夢だ。そうだ、そうに違いない。



≪お風呂・・・入った方がいいですよ。きっと、知らないうちに骨まで溶けるテキーラでも飲んだんですよ≫

「・・・そうだね、そうするよ」










とにかく、頭を抱えながらお風呂場を目指す。とにかく早足で。もうとっととこの嫌な汗を流して寝たかったから。

階段を下りて、玄関とは反対方向へと足を向ける。そして、お風呂場のドアを開いた。この時間にも関わらず、お風呂場と、僕が足を踏み入れた脱衣所の明かりは煌々とついていた。

まぁ、ここまではいい。きっと誰かが明かりを消し忘れたとかだから。でも、ここまでじゃなかった。これだけじゃなかった。服を脱いでから、気づいた。





ドレッサーに下着があった。男性物じゃなくて・・・複数の女性の下着。で、お風呂場から声。それも、やっぱり女性。

僕はとてつもなく嫌な予感がして、そこから立ち去ろうとする。だけど、意味が無かった。だって、もうお風呂は終了なのか、お風呂場と脱衣所を仕切るドアが開いたんだから。

そして、脱衣所の煌々とした明かりの中に照らされてる。当然・・・あれです。





脱衣所に足を踏み入れようとして、僕と目が合ったのは・・・三人の女性。明るいブラウンのウェーブがかったロングの髪をして、身長が僕より20センチ以上高くて、スタイル抜群な人と、青いストレートロングで、こちらもスタイルが素敵な人。とてもバランスが取れている。

次に目に付いたのは、栗色でボブロングな髪をした女性。こちらは1番小柄で、細身だけど可愛らしい印象が目に付く。で、子狐なんか抱いてたりするから余計にプリティ。

・・・で、何故か裸。何も着ていない。ぶっちゃけ全部見えてる。でも、納得した。だって、ここはお風呂場なんだから、裸なのは当然だと。





だから僕はとりあえず、服をささっと着て・・・ゆっくりと脱衣所から廊下に出て、ドアを閉じた。驚いた表情をしている三人はきっと何かの気のせいとして。





そのまま、踵を返して部屋に戻る。いや、早足で。きっと気のせいだ。あれは気のせいだ。そうだ、さっきのアレと同じく気のせいだ。

あはは・・・嫌だなぁ。僕ももうろくしたのかな? いくらなんでもアレはありえないでしょ。どんなラブひ○だよ。どんな涼○だよ。おかしいでしょ、これは。

あれだよ、きっと今頃はやてが寝言で『それはただの夢や・・・』とか言ってるんだよ。そうだ、そうに違いない。絶対間違いない。










「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」










寮内に、黄色い絶叫が響いた。その瞬間、午前様だけど一気に全員が目を覚ましたのは言うまでもないだろう。





というか・・・あの、夢じゃなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「せやから・・・それはただのリアルやぁ・・・むにゃむにゃ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・しかし、またタイミングバッチリだったな」



バッチリ・・・でしたねぇ。もうここまで来ると神様居るんじゃないかって思うくらいに。



「でも、ゆうひさんも薫さんも那美さんも、明日戻る予定だったんじゃ」



愛さんがそう言う。現在はちゃんと服を着ている三人に対して。



「いやな、思うたより早くレコーディングが終わってもうたんよ。で、いそいそと帰ったら、丁度薫ちゃん達と遭遇して」

「私達も同じ感じで・・・ただ、ちょっと急ぎ足だったので、お風呂だけいただきたくて・・・」

「それで、耕介さんに許可をもらって、お風呂に入って、上がろうとした所で・・・この子が突入してきたとです」



嫌な事言わないでっ!? つーか、突入してないからっ! 脱衣所で服脱いだだけで、お風呂場には一ミリたりとも突入してないからっ!!



「まぁ、鍵をかけてなかったのは失敗だったな」

「うぅ・・・ごめんなさい、耕介さんしか男の人が居ないと思って、つい」



そうか、この細身の人が原因か。だから僕はこんな痴漢を見るような目で見られてるんだ。

・・・あぁ、ごめんなさいごめんなさい。気づかなかった僕が悪いんです。真面目にごめんなさい。



「それで真雪、この犯罪者はどうすればいいの? うちの猫達にお仕置きさせるなら、あたしはちょっと皆に収集かけるけど」

「いや、そこはいい。・・・まぁ、アレだよ。とりあえず警察行こうか。リスティ、連絡頼むわ」

「了解。・・・恭文、大丈夫。一杯目のカツ丼はボクが奢るから」

「お願いだからやめてー! そしてそのカツ丼の何がいったいどういう具合に大丈夫っ!? 違う、ワザとじゃないっ!! ワザとじゃないからー!!」



現在、リビングで正座の上、全員に囲まれて尋問を受けています。まぁ、当然だけど。すっごく当然だけど。

あぁ、視線が怖い。もっと言うと青い髪の人が怖い。なんか殺気が・・・というか、木刀から手を離していただけると僕が非常に嬉しいです。



「いやいや、ワザとじゃないって事はないだろ。いくらなんでもタイミングバッチリ過ぎだしさぁ。
・・・ほら、正直に吐けよ。本当は一緒にお風呂に入らせてくださいとか言いたかったんだろ? 入ってるのがあたしや美緒やリスティだと思ったんだろ?」

「でも、実際は違っていて、その上三人があまりに美人で美しかったからついつい言いよどんで犯行は未遂に・・・なんだろ?」

「そうなのだ、正直に自供すれば罪は軽くなるんだから、とっとと吐いた方がいいよ?」



真雪さんとリスティさんと美緒さんのそんな言葉に、僕はうなづき・・・うなづき・・・頷けるわけあるかっ!!



「んなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! つーか、僕はここに仕事しに来てるんですよっ!?
なのになんでそんなエロ感情全開にしなきゃいけないんですかっ! おかしいでしょうがそれはっ!!」

「いやいや、恥ずかしがることないって。耕介だって前にやらかしてるんだからさ」



え、マジっ!?



「あぁ、そう言えばあったなぁ。まだここに来て一日目のうちの純潔を狙って」

「夜中にゆうひのお風呂を覗き見・・・耕介、最低だったね」

「狙ってないからっ! しかも、今回の恭文君のと全くシチュが同じで、俺も事故だっただろっ!?」

「あー、そんなことはいいから。・・・で、ぶっちゃけ全部見たんだろ?」



・・・すみません、見えました。もうしっかり。

ここで見てませんとは言えなかった。だ、だって・・・そこまで神経太くない。



「誰が1番好みだった? ほら、答えろよ〜」

「答えられるかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



・・・好みで言うと、目の前で苦笑しながら僕を見る背の高い人とか? いや、絶対こんなこと口に出せないけど。



「なるほど、答えられるほどには見ているんだね。・・・恭文、残念だよ。まさか知り合いに手錠をかけることになるなんて」

「なにその誘導尋問っ!? というか、ガチに手錠取り出すのはやめてー!!」

「ららーらーららららー♪ らららーらーららららー♪」

「美緒さんっ! お願いだからその腐ったミカンどうこうを連想させる歌はやめてっ!? 普通に逮捕シーンじゃないのさっ!!」



あぁ、やばいっ! 真面目にやばいっ!! 今回は僕がブッチギリで悪いだけに、何の手も打てないっ! どうすりゃいいのこれはー!!



「お姉ちゃん、リスティ、美緒ちゃんも、あんまり恭文くんをいじめちゃダメだよ。恭文くん本当にパニック起こしかけてるじゃない。
・・・ね、恭文くん。まさかこんな時間にお風呂に誰か居るとは思わなかったんだよね。覗こうなんて、これっぽっちも思ってなかったんだよね」

「はい・・・はい・・・!!」



あぁ、天使が居た。いや、女神だ女神。この人は女神だ。何かの歌じゃないけど、どうしようもない僕に舞い降りた女神だよ。いや、あれは天使だけど。

僕は、優しく微笑みながらそう言葉をかけてくれた知佳さんを見てそう思った。なんかそれだけですごく救われた感じがするのは、どうしてなのかな。というか、後光が差してるよ後光が。



「えっと、そういうわけなのでゆうひさんも薫さんも那美ちゃんも・・・許してあげてくれないかな? 恭文くん、今日ここに来たばかりだから・・・」

「うちは別にかまへんよ? なぁ、薫ちゃんも那美ちゃんもそうやろ? いくらなんでもこの子はまだ子どもやし、ここで大事にするのも大人げないよ」

「私は別に・・・あの、本当に事故だったようですし」

「私も・・・まぁ、そういうことなら」



あぁ、全員許してくれた。とにかく僕は深々と土下座。うぅ・・・なんか涙出てきた。特に青い人が木刀を下げてくれたのが嬉しい。

なんというか・・・普通に負ける感じがしてたから。



「ただし、さっき見たのは今すぐ記憶から消去すること。うちはともかく、那美やゆうひさんに迷惑かかるようなんは認められんけん。もし、この事を誰かに話したり、不埒な真似をするようなら・・・」

「は、はいっ! 全力で消去しますっ!! というか、消去しましたっ! 忘れていいことなんて何もないけど、コレに関しては例外ということで忘れましたっ!! そして絶対に口外もしなければ不埒な真似はしませんっ!!」

「うん、ならよろしい」



よし、絶対に永久封印処理だ。思い出してもここでの仕事が辛くなるだけだし。



「いや、なんというか・・・すみません。うちの関係者がご迷惑を」

「ゆうひさん、薫さん、那美さんも・・・ごめんね」



もう一回深々と頭を下げる。・・・だってさ、ぶっ飛ばされてもおかしくないのに、寛大なご処置で済ませてくれたこと、感謝しなきゃいけないでしょ。



「いや、本当にワザとじゃないらしいけん。うちはもう気にせんとですよ。・・・あぁ、それと耕介さんから聞いとるかも知れないけど、私が神咲薫。ここの元寮生だ」

「同じく、神咲那美です。あなたのことは、美由希さんから聞いてるよ。えっと・・・ちょっとさっきはびっくりしちゃったけど、もう私も薫ちゃんも気にしてないから、大丈夫だから。
これから短い間だけど、よろしくね。それで、この子が久遠・・・久遠?」

「・・・くぅん」



あ、なんかリビングの隅の方で警戒して僕を見てる。え、えっと・・・やっぱりさっきので嫌われた?



「あぁ、ごめんね。久遠はちょっと人見知りする子だから」

「あたしらも仲良くなるまではあの状態だったんだよ。まぁ・・・あそこまで離れるのは、お前が始めてだけどな」

「うぅ、やっぱり嫌われてる・・・」



仕方ない、ここは仕方ないと思う。思うことにする。でも・・・なんだか前途多難やなぁ。



「まぁ・・・前途多難はこれからやと思うよ? フィアッセにはしっかり報告させてもらうしな」



それはやめ・・・え、フィアッセ? なんでそこでフィアッセさんの名前が出てくるんですか。

・・・僕の考えてる事が伝わったのか、背の高いあの人は僕の前にしゃがんで、にっこりと笑う。



「いや、フィアッセから君のことは聞いとるんよ。あの子がお気に入りの、大事な婚約者ー言うてな」

「へ?」

「・・・おい、ゆうひ。婚約者ってなんだよ、婚約者って。てゆうか、フィアッセって・・・あれだろ? お前と同門で後輩のフィアッセ・クリステラ」

「耕介くん正解や。この子、フィアッセの婚約者なんよ」



その瞬間、再び寮に絶叫が響いた。その中には・・・あぁ、エイミィさんには話してなかったっけ。だからなんか驚いて・・・。

あ、視線が痛い。なんか視線が痛いんですけど。



「この子とちょっとようあって、そうなったらしいんよ。ただ、その中で恭文君が大人になった時、互いに相手が居なかったら結婚しようね・・・言う、かるーい感じのお約束らしいけどな」

「・・・おい、恭文。そうなのか? お前、あんな美人たらし込んだのか?」

「たらし込んだなんて言わないでくださいよっ!! ・・・えっと、あの・・・なんでその事を? というか、同門って」



フィアッセさんと同門で・・・後輩ってことは・・・まさか、クリステラ・ソング・スクールの卒業生っ!? というか・・・待て待てっ! 改めて見るとなんかすっごい見覚えがあるんですけどっ!!



「まさか・・・SEENA(シーナ)っ!?」

「そうや。・・・初めまして、うちは椎名ゆうひです。それで、歌手名は・・・SEENA(シーナ)や。というか、うちの事知ってたんやな」

「あの、知り合いにすごくプッシュされて、CD持ってます」





忍さんがSEENA・・・このお姉さんのファンで、フィアッセさんの歌が好きならこれも好きになるはずだからと恐ろしい勢いでCDを貸してもらって、聞いた事があるのだ。

そして、その後・・・簡潔に言えば『よかったです』と素直に感想を言うと、CDを買うことになった。・・・この辺りのくだりについては、聞かないで?

フィアッセさんと同じくらいすごい世界の歌姫・・・シンガーソングライターSEENA。その歌声はデビューからだいぶ経つと言うのに、未だに若年層の女子や中年層の女性に人気というすごい人。そう言えば、声の感じが似てる。いや、本人なんだから似てるもなにもないんだけど。



ま、まさか・・・そんな人の裸・・・見ちゃったのっ!? や、やばいっ! 忍さんに知られたら・・・殺されるっ!!





「そういうわけやから、早速フィアッセに連絡をせぇへんとなぁ。あんたの婚約者に、いやらしい目で愛しい人にしか見せた事のない、うちの全てを覗かれたと。もう頭のてっぺんから足の先まで凝視されたと」

「それはだめぇぇぇぇぇぇぇぇっ! お願いだからフィアッセさんにはっ!! フィアッセさんにはー!!」

「さて、こっちもフェイトちゃんに連絡かな。恭文くんのさっきの狙っていたとしか思えないような出来事について」

「それもだめぇぇぇぇぇぇぇぇっ! お願いだからフェイトにはっ!! フェイトにはー!!
というか、狙ってないからっ!! 真面目に事故なんですからねっ!?」

「いや、恭文。正直私も疑わしいもの。だって、あれだけ私と恭ちゃんが鍛えてるのに、どうしてそうなるの? 気配とかで分かるでしょ?」



そ、それは・・・その・・・。あの時は色々あって、もうお風呂に入って早く寝たかったので・・・こう急ぎ足だったのです。



「色々って、なに?」

「え、えっと・・・それは・・・その・・・」



どうしよう、話し辛い。だ、だって・・・さすがにアレは・・・ねぇ?



「ふむ、話せないんか。ほな、やっぱりフィアッセに連絡を」

「あー、話しますっ! 話しますからそれはやめてー!!
・・・お風呂に行こうと部屋を出て、階段近くの窓が目に入ったんですよ。そうしたら・・・あの」

「そうしたら?」

「金色の髪で、白い服を着た・・・多分、女の人の姿が・・・外に映ってて・・・」



僕がそう言った瞬間、全員・・・いや、さざなみ寮メンバーが固まった。特にヒドイのが薫さんと那美さんだ。僕から見ても明らかに動揺が走っている。



「・・・恭文君、もう寝るとよか」

「へ?」

「そ、そうだね。きっと恭文くんがここでそういうのを見たのは、今日一日色々あって疲れてたからだよ。だから・・・ね、もう大丈夫だから」









・・・そうして、僕とエイミィさんと美由希さんはそのまま寝室に戻った。





え、あの・・・なんですか? この疎外感は。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・なぁ、薫。恭文君が見たのって」

「・・・間違いありません。あぁもう、だからうろつくなと言ってるのに」

「薫ちゃん、そこはしかたないよ。久々にここに帰れて嬉しかったんだろうし」



しかし・・・どうするこれ? いきなり色々不安要素出まくりだし。てゆうか、俺がここに関わった時と展開が似てないか?



「・・・まずいな、真雪との賭けに勝ちそうだよ」

「くそ、あのチビスケ・・・マジでどういう引きしてんだ? 初日でコレはおかしいだろ」

「そしてお前らは一体なにをしてる。賭けってなんだ、賭けって」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そして、翌日の事。朝食の準備などを終えて、昨日の事をもう床に頭をこすり付けるようなレベルで再び謝り倒した。

みなさん、もう快く苦笑いも浮かべつつ許してくれた。ここまではよかった。

でも、事件は起きた。そう、起きた・・・。





なぜ、僕はこの人と一緒に居るのだろう。誰か教えて欲しい。










「いやぁ、今日もいい天気やなぁ」

「そ、そうですね」





そう、椎名ゆうひさんだ。久々にやってきた海鳴の街をブラつくということで、僕をお供にして街を散策中である。一応名目としては、足りなくなった寮の資材の買出しなんだけど。

現在、海沿いの遊歩道を二人で歩いているのだけど、ぶっちゃけ、辛い。

昨日あんなことがあったので、さすがに・・・一晩経って冷静になると、辛い。



た、確かに女の人の裸を見るのは・・・シャマルさんとの事があったので初めてではないけど、それでも辛いんだー! これから2週間どうやって過ごせばいいのかマジで考えるんだー!!





「なぁ、恭文君」

「は、はいっ!? なんでしょうか椎名さんっ!!」

「あー、あかんなぁ。君、やっぱり昨日のこと意識してるやろ」



顔を近づけ、僕の事をじーっと・・・あ、あの・・・えっと、なんといいますか、その・・・はい、してます。

仕方なくうなづきで返すと椎名さんがため息を吐いた。そして、呆れたような視線で僕を見る。



「ホンマに事故なんやから、問題ないよ。フィアッセの話し振りから、君が覗きなんてするような子やないのは明白やし」

「そ、そう言ってもらえると嬉しいです・・・」



フィアッセさんが僕の事を一体どういう風に話していたのかとかは色々と気になるけど・・・ここは遠い空の下で歌っているであろうフィアッセさんに感謝しておくことにする。



「君は見たい女の子の裸は、フラグ立てて女の子の方から見せてくれるところまでやるんやろ? そやから問題は」

「いったいどんな認識っ!? というか、そういう言い方はやめてくださいっ! なんでそうなるんですか、どうしてそうなるんですかっ!! 訳が分かりませんよっ!!」

「なに言うてんの。なんや、フィアッセというものがありながら、色んな女の子のフラグを立てて、一緒にお風呂入ってるらしいやないか」

「入ってないからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



フィ、フィアッセさんはマジで僕の事をどういう風に話したっ!? おかしいでしょうがこの会話の流れっ! どんだけ超展開なんだよっ!! そしてそれが出来るんならっ! 僕は今すぐフェイトのフラグ立てて一緒にお風呂入りたいんだよっ!!

日が照りつける真夏の遊歩道を、白いワンピースに麦藁帽子という夏のお嬢さん的な格好の椎名さんと歩きながら・・・頭を抱える。きっと、暑さのせいだけじゃない。



「まぁ、そこはともかく・・・恭文君、ちょっとお姉さんと約束や」

「な、なんでしょうか」

「・・・自分、怯えて後ずさりはちょっと失礼やで? うち、傷つくわぁ〜」



うるさい、今までの会話の流れを考えればあんまりいい事じゃないような気がビンビンなのよ。

つーか、なんだか昨日といい今回は今までで最悪な部類になりそうだから怖いのよ。とりあえず怖いのよ。



「うちのことは、『椎名さん』やのうて・・・ゆうひや。そう呼ぶって約束して欲しいんや」

「・・・はい?」

「うちなぁ、根が単純というかなんというか、今ひとつ苗字呼びとかって苦手でなぁ。距離を取られてるみたいに感じてまうんよ。
こうしてせっかく知り合えて、フィアッセっちゅう繋がりもあることやから、この機会に仲良くしていきたいんよ。どうやろ?」



い、いや・・・どうやろと言われましても・・・。え、いいの? 真面目にいいの?



「えぇよ。さぁ、言ってみよか。さんはい」

「ゆ・・・ゆうひ」



・・・・・・・・・なぜだろう、嬉しそうな顔でお姉さんが笑って・・・そのまま場が沈黙した。

そして数秒後、沈黙は破られた。



「なんで自分いきなり呼び捨てっ!?」

「だって、さん付けしろとは言ってないじゃないですか」

「ふむ・・・ほな、しかたないな。フィアッセにちょお昨日の事を報告」

「あぁぁぁぁぁぁっ! それはやめてー!! もうゆうひさんでもゆうひ様でもなんでも言いますからー!!」










・・・こうして、さざなみ寮での日々は静かに・・・だけど始まっていった。





とりあえず、僕が思う事は二つ。これから楽しくなるといいなというのと、平穏無事に2週間を過ごせるといいなという事だった。










「しかし、その願いはむなしく破られ、戦いへと身を投じることに」

「その不吉なナレーションはやめてー! 本当にそうなりそうだからっ!! 真面目にそうなりそうですからねっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・でも、薫も来るのが突然だったな。忙しいだろうに」

「すみません、いきなり押しかけるような形になってしまって」

「いや、それはいいんだ。というより、家に押しかけるも何も無いだろ?」

「そう言ってもらえると、ありがたいです」



・・・でも、なんでこんなに突然? いや、さっきも言ったけど、帰ってきてくれるのは嬉しいからそこはいいんだけど。

俺は興味本位で、少し聞いてみた。



「なぁ、何か理由でもあるのか?」

「・・・実は、もしかしたら耕介さんの力も借りる必要があるかも知れないんです。そのために、十六夜だけでなく、御架月も来ています」

「もしかして・・・霊障絡みか?」

「はい。・・・実は最近、神咲の家であるものを追っているんです」



あるもの? しかも、神咲の家ってことは、薫だけじゃなくて、那美ちゃんや他の人達もって事か。



「新たに発見された霊剣・・・いや、妖刀です」

「妖刀・・・? おい、ちょっと待ってくれ。それを薫や那美ちゃんが探していて、二人がここに急に来たってことは・・・」

「はい。・・・海鳴にその妖刀があるかも知れないんです」




















(幕間そのじゅうさんへ続く)




















古鉄≪・・・さて、幕間そのきゅうとまったく同じ終わり方となった今回のお話、いかがだったでしょうか≫

恭文「アルト・・・頼むからそういうこと言わないで。悲しくなる、すっごく悲しくなるから」

古鉄≪気のせいでしょ。というわけで、本日のお相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「とりあえず・・・作者氏ね。蒼凪恭文でした」





(青い古き鉄、今回は美味しい思いをしたのに、なぜか不機嫌。うーん、どうして?)





恭文「当たり前じゃボケっ! どう考えたってこれおかしいよねっ!? また僕の株が下がるでしょうがっ!!」

古鉄≪大丈夫ですよ、あなたの株はもう下がりようがありませんから≫

恭文「余計に嫌なんですけど、それっ!?」

古鉄≪とにかく、今回は三話でまとめるのは無理そうなさざなみ寮編ですよ。またとんでもない事になりそうですね。作者的にもびくびくですよ≫

恭文「まぁ、ガチに霊とかじゃなくて、刀にしたのは色々と・・・あるのですよ。僕のセブンモードとティアナのセブンガンモードが、傍から見ると形態6つで『あれ、数足りなくない?』と思うくらいに」





(なお、セブンモードの剣の数が一個足りない理由は、雑記のプロフィールをご覧ください)





恭文「で、そこはともかく・・・何気に出てたよね。初代主人公」

古鉄≪あぁ、出てましたね。まぁ、一種のファンサービスって感じで。ナツノカケラやって、どうしても出したかったそうなんですよ≫

恭文「・・・あぁ、納得だ。アレでしょ? 心の去勢手術がすごいって思ったクチでしょ?」

古鉄≪正解です。あと、弓華さんもちょこっと登場です。・・・作者的には、また香港の話を書いて、絡みを書きたいそうなんですよね。色々共通点がありますから≫

恭文「いやいや、僕はあの人ほどハードな人生送ってないから。まだ楽な方だから」





(なお、その辺りのお話はぜひともとらハ本編でどうぞ)





古鉄≪と言う感じで、改めて始まった幕間の中篇シリーズ、お楽しみ頂ければ幸いです≫

恭文「今回は何気にエイミィさんとか居るしね。これは楽しくなりそうだよ。というか、楽しくする。・・・というわけで、本日はここまでっ! お相手は蒼凪恭文と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンでした。それでは・・・また次回にっ!!≫










(二人、手を振りながらどこかすがすがしくED。・・・多分、それは夏のせい。
本日のED:『風にまけないハートのかたち』)




















知佳「・・・お姉ちゃん、あんまり恭文くんのこといじめちゃだめだよ? お兄ちゃんから聞いたけど、最初の時も困らせたみたいだし」

真雪「へーへー。・・・でもよ、アイツってなんかこう・・・弄りたくならない? 弄るのが世界の至高の楽しみというかなんというか」

知佳「お姉ちゃんっ!?」

真雪「・・・はい、自重します。ごめんなさい」

???「というか・・・私達の出番はまだですかぁ?」

???「私もですね。・・・まぁ、私はしばらくは無いでしょうけど」










(おしまい)





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あきゅろす。
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