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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第2話 『水面に石を投げ込めば、必ず波紋が生まれ、広がる』



・・・時間は、本当に・・・本当に少しだけ遡る。もっと言うと、29話のラストから少しだけ時間が経って、もう朝になろうかという時の事。





突然だが俺、サリエル・エグザは、そこそこキツイ状況ってのを多く潜り抜けてきた。ま、自慢じゃないけど、年だけは食ってるからな。





例えばヘイハチ先生に連れられて極寒の山奥で熊と対決させられたり。

例えばヘイハチ先生が綺麗だからと言ってどっかから取ってきた宝石を追いかけてきた邪教集団とガチでやりあったり。

例えばヘイハチ先生が・・・あれ、おかしいな。なんで俺の命の危機の9割がヘイハチ先生と居た時の記憶で占められてるんだ? ちょっとおかしくないか、これ。





と、とにかくだ。そんな俺でも今の状況は辛い。なぜ辛いかと言うと・・・これが一種の魔女裁判だからだ。

一応分からない奴のために説明しておく。魔女裁判というのは、中世期のヨーロッパ地方で行われていた非人道的な虐殺を指す。

この頃、この時代ではまだ治療法の無かった疫病が蔓延したり、国の治安が荒れたりとさほど環境はよくなかった。





そして、それを『魔女の呪い』として、魔女をとっ捕まえて裁判を行って、処刑した。それが魔女裁判だ。ただ、ここにはとんでもない事実がある。





魔女裁判にかけられる『魔女』達は、言いがかりをつけられて処刑されたからだ。つまり、体のいい人柱。または、人々の八つ当たりの対象として、殺された。

火あぶりに串刺しに・・・言い用の無いくらいに残虐な方法で何人も・・・何人も殺された。

どうやら、人間って奴の愚かさは、世界や時代が変わっても、変わらないらしい。俺はこの話を初めて聞いた時、そう思った。次元世界に関わる人間だって、同じようなもんだからな。





でだ、なぜこの状況でこんな胸糞悪い話をしたかと言うと・・・やっさんとフェイトちゃんが付き合ってると誤解されて、五人の鬼が生まれてから一晩、審議が続いているからだ。

陪審員は五人の鬼。裁判官・・・というか、議長と言うか進行役は俺。で、被疑者と弁護人は・・・あの二人なんだよ。










「・・・よーし、それじゃあ結論付けようか。ロッサ・・・ヴェロッサ・アコースは私らがフェイトちゃんの歌に乗せてフルボッコってことで、オーケー?」

『意義無し』





その声に、俺は思わず安堵した。・・・あぁ、これでようやく・・・ようやく眠れ・・・るわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!




「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇっ!!」

「なにさサリ。もう結論出たんだからまず寝かせてよ。私はもう眠くて眠くて仕方ないんだからさ」

「それはこっちのセリフだっ! だから・・・何度も言ってるだろうがっ!! どうしてそれを全く聞いてくれないわけっ!?
もう二人とも色々な意味で納得して付き会うことにしたんだよっ! なんでそこでお前らがソレスタルなんちゃらバリに介入して、空気読まずにフルボッコっ!? 訳分からないだろうがそれっ!!」

「なにを言っているんですか、サリエルさん。そんなの当然ですよ」



いや、だから何がどういう具合に当然っ!? 俺はマジで全然わからないんだけどっ!!



「アタシらの主を傷者にした以上は・・・以上は・・・! テメェ、覚悟しとけよっ!? ぜってーぶっ壊してやるっ!!」



きゃー! なんかいきなりリミットブレイクなアイゼン持ち出したー!! やっぱりヘイハチ先生と肩並べてやっさんの師匠やるだけあって、攻撃行動に躊躇いが微塵も感じられねぇしっ!!



「待て待てヴィータちゃんっ! 女はね、誰でも大人になったら傷物って言えば傷者になるんだよっ!? 親とか兄弟が知らない間に大人の階段上るんだよっ! そうして愛する人とステップアップしていくんだからっ!!
でも、そこでリミットブレイクしちゃだめだからっ! そこはどんなに悲しかろうと、涙を流しながらお赤飯を炊くのが正解なんだよっ!!」

「いいえ、違いますっ! ここの正解は・・・私の『・・・なぁ、シャマル。うち好きな人が出来たんよ』『え、本当ですかっ!?』『でな、今度その人の家に行く事になったんやけど・・・』みたいな相談をされる・・・という夢を砕いたこの男を潰すことですっ!!」

「中途半端に妄想入れるなっ! つーか、それはどこのお母さんっ!?」

「お母さんなんてヒドイっ! 私はお姉さんという立ち位置がいいんですっ!!」



そういう事を聞いてるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ! どうして揃いも揃って破壊行動に出ようとするのかを聞きたいんだよっ!!



「ザフィーラ、奴の動きを止めておけ」

「心得た」

「心得ないでくださいよっ! お願いだからそこの良識派二人も殺気を出さないでっ!!」

「なら、どうしろと言うのですかっ!? 主を傷者にされて」



あぁぁぁぁぁっ! なんか会話がまたまたループしてるしー!!



「みんな、お願いやから落ち着いてくれへんかなっ!? うちは・・・あの、ほんまに気にしてへんからっ!!」

「な、なんというか・・・すみませんでした。ですけど、あの・・・」

『なに?』

「な、なんでもありませんっ!!」

「お前らもそのクマが付いた目でこっちにらむのやめろっ! 無駄に怖いんだよっ!!」





・・・現在、六課隊舎の会議室はこのような状況に陥っている。なお、さっき言った通り1晩中ずっとである。正直、俺は無事に何も無く朝を迎えられた事に関して、神様に踊りながら感謝したい気分だ。

とにかく、俺としては『色々ありはしたけど、二人は大人として話し合ってもう納得しているので、みんなで暖かく見守ろう』・・・というような結論にしたいのだ。

もうアコース査察官は十分に責を受けることは決定している。これが終わったら、今度はヒロ経由で既に事態を知っているであろう騎士カリムやシスターシャッハにも、徹底的に搾られたり殴られたりするんだから、それで納得しようと。



だけど、ヒロとヴィータちゃんとシャマル先生にシグナムさんにザフィーラさんは全然納得してくれない。とにかく『フルボッコ』と馬鹿の一つ覚えに言ってくる。戦争根絶もとい・・・ヴェロッサ・アコース根絶を掲げて来るのだ。

なんかいつの間にかヒロがシグナムさんやシャマル先生差し置いて守護騎士メンバーのリーダーみたいになってるのとかも気になってるけど、そんなのはこの連中の無駄なしつこさに比べたらきっと些細な問題だと思うので、流しておこうと思う。

とにかく・・・そう、とにかくだ。大事なのは、ただただ萎縮するばかりのアコース査察官の今後の身の上だ。



このままだとマジで廃人が一人出来かねない。正直、そういうのはもういい。なにより八神部隊長が辛い。

なので、俺も八神部隊長と一緒に説得をしているのだけど・・・聞きやしねぇし、こいつらはよ。

え、とうのアコース査察官? この状況で自分から発言する権利が存在しているわけがないでしょうが。殺意と憎しみぶつけられて、それに体勢を崩さないようにしてるのがやっとだよ。



まぁ、そこはともかく・・・おい、やっさん。生きてるか?





”・・・部屋の中から漂ってくる瘴気に当てられて、沈みそうです”

”そうか、ならもう一頑張りしてくれ。じゃないと、ミッド崩壊のお知らせだ”

”サリさん、僕が思うに・・・ミッドが崩壊して僕達の安眠が得られるなら、それでよくありません?”



そうだな、俺もちょっとそう思ってきた。でもさ、やっぱり色々問題大有りだからここは頑張ろうぜ? いや、真面目に頼むわ。お前が折れたら・・・きっと、俺も折れちゃう。



”あぁもう、先生来てくれれば蹴散らしてもらうのに。秘蔵のあれとかこれとか渡した上でさ。今頃なにしてるんだよ”

”そうだな、先生入ればこれも一蹴だろうな。・・・ったく、マジでなにしてる? 肝心な時に居ないってことが結構多いし”




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・へ、へっくしゅっ!!」

「あぁ? どうしたじじぃ、風邪か」

「いや、さっきナオミちゃんの暖かくて美味しいコーヒーもらったからそれは無いと思うんじゃが・・・あ、もしやかわいこちゃんがワシの噂をっ!?」

「・・・じじぃ、やっぱ亀と同じくスケベだな。スケベじじぃだな」

「失礼な事を抜かすな。ワシは死ぬまで愛を求める狩人なだけじゃ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・なんだ、今の妙な電波は? まぁ、いいか。





とにかく、現在やっさんは、現在会議室の近くに気配を消した上で待機してもらっている。理由は・・・そう、例のヒーリング結界だ。

ただし、ここで問題が一つ。やっさんの技能・・・というか、あのレアスキルに認定してもいいくらいの精神を癒し尽くす結界は、せいぜい大人一人分のサイズでしか構築出来ない。

あと、魔力の消費量も多い。やっさんの魔力量だと、結界を構築するのはフルの状態でもせいぜい3回がやっと。



そして、一回使われたら顔見知り連中はもうハマってくれないだろう。もしかしたら、やっさんが待機してもらっていることは無駄なのかもしれない。

だが、それでもオーバーSやニアそれな連中の一人だけでも結界の中に閉じ込めてしまえば、それは戦闘も無しに確実に沈められるのだ。有効活用しない手はない。

やっぱり、ここはヒロかシグナムさんだよな。いや、回復役潰すと方がいいかも・・・などと協議しつつ、幾千時間、まだやっさんの出番は来ない。





まぁ、アレだ。フェイトちゃんと中学生日記やってるツケが来たと思って、やっさんには是非頑張って欲しいものだ。










”サリさん、僕いい方法を思いついたんですよ”

”なんだ?”



なんかまた言い争ってる連中を見つつ、俺はやっさんの思念の声に耳を傾ける。眠さで思考が鈍くなってきている頭に鞭を打ちつつだ。つーか、夜明かしたからって、たった数時間でここまで疲労するっておかしいだろ。

まぁ、やっさんはこれで案外出来る奴だから、それがいい方法って言ってるんだ。きっととてもいいアイディアなんだろう。・・・なんだかんだで、弟弟子だからさ。結構可愛いんだよ。



”僕がヴェロッサさんを徹底的にシバキ上げるから、それで納得してもらいましょ。なに、骨の二、三本はもらうでしょうけど、命に比べたら十分安いですって”

”お前もかぁぁぁぁぁっ!!”



お前、さっき俺がお前に寄せた信頼を今すぐ利子つけて返せっ! なんかすっげー損した気分になって、もう色々と辛いじゃないかよっ!!



”じゃあ、他にどういう結論をつければいいんですか? 真面目な話、ヴェロッサさんが色々行き違いがあったとは言え、はやてを弄ぶようなことをしたのは事実でしょうが”

”・・・そこ言われると弱いな”

”みんながフルボッコとか言い出してるのは、ようするにヴェロッサさんに、それに対してどう責任を取らせるのかって話じゃないですか。
ただ『二人は納得してるから、もう言わないでおこう』って言うだけじゃ、僕達はともかく、はやての家族である師匠達や、ヴェロッサさんと姉弟も同然なヒロさんは納得しませんよ”





確かに、やっさんの言う通りだ。まぁ、俺も同じ事を考えていた。だから、言いたい事は分かる。フルボッコってのは行き過ぎとしても、事がバレた以上、アコース査察官はなんらかの形で責任を取らないといけないわけだ。

ヒロがここまでやるのは、昔からよく知る人間として、このままでは八神部隊長もそうだし、シグナムさん達八神家メンバーにも筋が立たないという理由だろう。じゃなきゃ、コイツはここまで関わろうとしない。

結婚とか交際ってさ、本人同士だけの問題じゃないとかって言うけど・・・その通りだよ。少なくともこの問題を解決するためには、当人も家族も納得する方向の落としどころを見つけないとお話にならない。



とはいえ、どうする? 責任を取るなんて簡単に言うけど、それを実際にやるとなると非常に難しい。まさか地球にある任侠映画みたいに指詰めさせるわけにもいかないし・・・。





”もうそれでよくありません?”

”いいわけあるかっ! お前、疲労困憊のせいかのか、思考が普段より3割増しでおかしくなってるぞっ!?”



・・・あぁ、やばい。俺ちょっとそれでもいいかなって納得しそうになったよ。

とにかく・・・その方向で考えていかないとずっと平行線だ。さっき言った通りそれでいこう。ならまず・・・。



「・・・なぁ、みんな」



俺が眠さと疲労で動きが鈍くなった頭にムチを入れつつその辺りを考えていると、八神部隊長が真剣な顔で守護騎士の方々(+ヒロ)を見て、話し始めた。

で、一応議長として俺もそれに耳を傾ける。



「みんな、ようするにロッサに責任を取って欲しいんよなぁ」

「・・・まぁ、簡潔に言えば」

「そうなる・・・よなぁ」



その言葉に、シグナムさんとヴィータさんが顔を見合わせてつぶやく。



「つーか、取らなきゃ私としては交際は認められないよ。いくらなんでも、ロッサがやらかしたことはあんまりにアレだもの」



ヒロが真剣な顔でそう言うと、八神部隊長が他の守護騎士メンバーを見る。

他の面々も、同じらしい。どうやら、俺ややっさんが考えていた事は正解だったようだ。



「・・・よし、みんなの気持ちはよう分かった。それなら」





そして、爆弾が投下された。



というか、あの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?





『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』

≪・・・八神部隊長、マジですか?≫

「マジや」




















魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常 Second Season


第2話 『水面に石を投げ込めば、必ず波紋が生まれ、広がる』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・え、なにこれ。なんでこれ? つーか、なんかいきなりカメラ入ってきてるんですけど。つーか、さっきまでのシーンと繋がらないんかい」

「みたいだねぇ。・・・えっと、なんか知らないけど、フェイトちゃんとやっさんが付き合うようになったことについて話せばいいの? つーか、モノローグ?」





あ、なんかカメラがうなづいた。・・・え、一応時間軸説明しろ? またいきなりだなぁ。

あー、コホンコホン。・・・やっさんが婚前旅行(間違いにあらず)へと出発したその日の夜の事。

俺とヒロは昨日の模擬戦のデータなんて見つつ、話をしていた。議題は、当然アレらについて。



・・・これでいい? あ、うなづいたな。いいってことか。





「でもさ、やっさん・・・もう魔法使いにはなれないんだね。あの伝説、マジかどうか確かめることになると思ってたのに」

「お前、いきなり切り口そこからっておかしいだろっ! いや、俺も同じ事考えたけどっ!!」

≪主、それでは何も言えません≫



金剛のツッコミは気にしないことにする。でも・・・マジで射止めるとは思わなかったぞ。俺、案外ギンガちゃん辺りが本気になって押し倒すのかなとか思ったのに。

いや、だって・・・なぁ? 一気に4つ成立だから、そりゃあ行くんじゃなかろうかと。



「でも、リインちゃん・・・マジであれに割り込んだわけ?」

≪もうよ、どう考えても邪魔だと思うの、俺だけかな?≫

「いや、俺も思う。・・・まさかリインちゃんも一緒に三人で・・・なんて、するわけないしなぁ」

≪リイン女史はともかく、蒼凪氏とフェイト執務官が絶対にツッコむでしょうしね。将来はともかく、今回はありませんよ≫





そうだよなぁ、さすがに・・・なぁ。これで俺は三人体制マジで作ってたら、二人にお説教すると思うよ。最近表現規正法とか色々あるのにさ。

でも、アレで漫画とかアニメとか表現の幅がマジで狭くなるのかね。・・・それは嫌だなぁ。それだったらこの話なんてアウトだらけだしさ。



ただ、普通にマジでやり過ぎ・・・ようするに、違法な児童ポルノだったり、虐待・・・いや、虐殺としか思えないような性描写を描いてるようなのだったり、それらを推奨しているとしか思えないようなのを規制するのならオーケーだとは思うけど。

あとはそこの基準だよなぁ。あれを極端にすると、少年漫画とかにありがちな小学生がカードなりフィギュアのゲームなりで戦って傷つく描写もアウトなわけだし・・・うーん、難しい・・・って、話が逸れた。





「・・・でも」

「なんだ?」

「いやさ、現地妻問題とかどうするのかな。ほら、ギンガちゃんもそうだけど、シャマルさんとか美由希ちゃんとか。あと・・・」

「・・・あぁ、それがあったな」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



今頃、恭文くんはフェイトちゃんと・・・かぁ。昨日の今頃は、フェイトちゃんと・・・かぁ。










「はぁ・・・」





医務室で書類仕事をしつつ・・・私はちょっとだけアンニュイな気持ち。なので、ため息も出たりする。

・・・一応、分かってた。こういう日が来る事は。別に、フェイトちゃんに限った事じゃない。誰か・・・相手が出来て・・・って。

私はやっぱり、現地妻1号なのかなぁ。うぅ、私がリインちゃんを除くと、私が1番最初にフラグ立てられたのになぁ。



恋って言うのとはちょっと違うのかも知れない。でも、私・・・なんか気になって仕方なかった。まぁ、初めての出会い方が出会い方だからかも知れないんだけど。

胸、触られちゃったし、情熱的に手も握られちゃったしなぁ。その後にも、お風呂に入って洗いっこしたり、布団の中でぎゅって抱き合って眠ったり・・・あ、そのときにも胸揉まれたけど、嬉しかったなぁ。

別に、触られた事がじゃない。恭文くんにとって、私は・・・甘えたいお姉さんなんだなと。弱気になっちゃう時に、甘えたくなるのは私なんだなって。それだけで嬉しかった。



恋人というのも、考えたけど・・・私はプログラムで、人間じゃなくて・・・恭文くんの子ども、きっと産んであげられなくて、そういうの考えたりして・・・やっぱり二の足を踏んだりもして。

・・・ちょっとだけ、選択ミスしちゃったかな。チャンスはいくらでもあったのに。

デートも何回かしたことがあるし、主治医だから二人っきりになるチャンスも多かったのに。



なんだか、胸・・・チクンと痛い。まるで自分の気持ちを確かめるように私は、そっと呟く。





「・・・もしかして、本当に・・・好き、だったのかな」










・・・だとしたらマズイわね。私、完全にショタだもの。あーん、シャマル先生普通なのにー。





なんて思っていると、携帯端末に通信がかかった。それは・・・あの子だった。

少しだけ考えた後、通信を開く。モニターに出てきたのは、お風呂上りなのかパジャマ姿な一人の男の子。

私は、いつもの飄々とした顔とは違う、真剣な顔をしたその子を安心させるように、笑いかける。いつも通りに・・・優しく。










『あの、シャマルさん。・・・こんばんは』

「はい、こんばんは。恭文くん、どうしたの?」

『えっと、今大丈夫ですか?』

「えぇ、仕事も一段落してるから。・・・真剣なお話?」

『・・・少し』










私は、その言葉を受け止める。受け止めて・・・思った。





私は、この子のお姉さんで、いいかなって。それだけでも、私・・・嬉しいもの




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・へぇ、そうなんだ。付き合うことになったんだ」

『は、はい。あの・・・色々ご鞭撻頂いたおかげで』



夜、そろそろ眠ろうかなと思った所に・・・最近お気に入りな男の子から通信がかかった。そして、報告したい事があると言うので聞いてみると・・・例の女の子と付き合う事になったとか。



「そっかそっか。・・・で、どうだった?」

『はい?』

「だって、昨日の夜、恭文くんの家にフェイト執務官夜這いかけてきたんでしょ? ということは・・・大人の仲間入りしたんだよね」



私がそう言うと、恭文くんは恥ずかしそうに・・・あれ、しないな。なんか俯き気味で苦い笑いを返してきた。



『じ、実はですね・・・。波紋を呼び込むとまた面倒なので、ちゃんと説明しておきますと・・・してないです』

「・・・してないの? え、待って待って。夜這いかけられてそれは・・・なにかあった?」

『・・・えぇ、色々と』



なんだろう、さっきまで考えていた『知識的な話で恭文くんをサポートする私』という図式が一瞬で崩れた音がするんですけど。

お、おかしいなぁ・・・。恭文くんの運が悪いと言っても、そういう時くらいは空気読んであげてもいいのに。



「・・・・・・ね、フェイト執務官とちょっと話させてもらえるかな。さすがにそれはひどいよ」

『なんでいきなりそんな話にっ!?』

「というかさ、夜這いかけたんだから責任取らなきゃだめだよ。何もなしなんて、恭文くんが可哀想だもの。
・・・知ってる? 口でも手でも、フェイト執務官や私だったら胸でも、女の子は男の子を喜ばせてあげられるんだから」

『昨日のフェイトと全く同じ事言うのやめてくださいよっ! つーか、雰囲気っ!! 初めてなのにいきなりそこはさせられませんよっ!!』



あ、フェイト執務官も言ったんだ。さすがに私は冗談のつもりだったのに。



「うーん、でもそれなら溜まってるんじゃないの? ・・・あ、恭文くんもしかして、私と通信で」

『アホかぁぁぁぁぁっ! そんなことしないからっ!! つーかシモから離れてっ!?
・・・普通に・・・あの、ちゃんと報告しないといけないかと』

「どうして?」

『だ、だって・・・あの、僕のこと気に入ったとか、好きとかって言ってくれましたし』



・・・・・・うん、気に入ってたよ。面白くて、可愛くて、それで・・・すごく危うくて放っておけなかったから。

本当に、色んなものを振り切ってどこかへ行ってしまいそうだったから。なんかね、色々思い出しちゃった。同僚のこととか、そういうの。



「・・・ね、恭文くん」

『はい』

「私ね、恭文くんとは・・・友達で居たいな」



通信越しに映る、不安げで、申し訳なさも映る表情を見て、私はにっこりと優しく微笑む。

安心させるように、ちゃんと分かっているからと言うように。



「まぁ、本当なら・・・あなただけのメガーヌになってもよかったんだけどね。でも、フェイト執務官と付き合うようになったなら、その道はもうだめだもの。・・・君、浮気とか一夫多妻とかだめそうだしさ。
だから、友達。私はあなたよりお姉さんで、経験豊富だから、いろんなこと相談し合える友達として、繋がってたいな。せっかく、こうして出会えて、色々話せるようになったんだもの。私は・・・これで恭文くんとの繋がりを切るような事、したくない」

『メガーヌさん・・・』

「どう、かな?」

『あの、僕で・・・いいなら』



私は、その言葉に嬉しくて・・・微笑みながらうなづく。



「・・・ありがと。すごく嬉しいよ」



ちょっとだけ感じたときめきを、胸の奥の小箱にしまいながら、優しく、微笑む。



「で、もし練習したい時は私に言ってもらえれば・・・あ、冗談だよ? うん、さすがにそれは無いから。お願いだからその怖い目はやめて欲しいな」










ゼスト隊長、クイントちゃん、私ね・・・目が覚めてよかったよ。だって、大好きな友達が出来たから。なんだかね、この子とはすごく長い付き合いになりそう。





あなた達やみんなが居ないのに、私だけが生きている喜びを満喫するような真似するのは、ちょこっとだけ忍びないよ? でも・・・ごめん、それでも幸せに浸ってもいいかな。





私がいつか・・・そっちの世界に旅立った時、沢山、沢山・・・土産話を持っていくから。










「・・・そういえば」

『ほい?』

「ルーテシアとアギトちゃんからちょこっと聞いたんだけど、恭文くん、ゼスト隊長と話したんだよね」

『まぁ・・・話したというか、斬り合ったというか』



どうもそうらしい。それで、仇を討ってくれたとか。アギトちゃんが、どこか苦い顔で話してくれた。



「・・・ね、今度時間のある時、少しだけその時の話・・・してもらっていいかな?」

『いいですけど・・・でも、あんまり親密にはなってませんよ? それならアギトの方が』

「アギトちゃんからも聞いてるけど、君からも聞きたいの。・・・隊長がこの事件でどう動いていたのか、色んな角度からちゃんと知っておきたいんだ。部隊の生き残り、私だけだしね」

『・・・わかりました。なら、時間のある時にまた』

「うん。・・・ありがと、わがまま聞いてくれて」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



朝・・・目が覚める。見慣れた天井。そして、両腕に重み。





右と左に、寝ぼけた頭を働かせつつ視線を送る。・・・右で僕の腕を枕に眠るのは、金色のロングストレートの髪をした女性。左には、同じように眠る空色の髪を長く伸ばした女の子。

そして、思い出す。昨日一緒に眠ったことを。なお、エロはなしです。えぇ、当然ですよ。片方は8歳ですよ? 犯罪ですよ犯罪。表現規正法に引っかかるから。

そこはともかく、そろそろ起きて・・・起きて・・・起きて・・・おき・・・て・・・。





どうしようか、これ。










「・・・起きられない」










というより、腕が動かせない。もっと言うと・・・指先の感覚がなんか麻痺してる。いや・・・しびれてる?





も、もしかしなくても・・・僕、二人が目を覚ますまで動けないっ!?










「・・・ん」





僕が内心焦っていると、右腕に頭を乗せている女性が、唸った。

そして、部屋の窓から差し込む光にまぶしそうに身体を震わせると、ゆっくりと・・・目が開いた。

僕は当然そっちを見ているので、目を開いた女性と当然のように視線がぶつかる。



そして、ほぼ同時に・・・真っ赤になった。





「あ、あの・・・フェイト、おはよ」

「うん、おはよ・・・というか、これだと昨日と同じだね」

「うん・・・そうだね」



でも、なんかこう・・・ドキドキする。だって、今まではこういうの無かったわけだし。



「えっと・・・あの」

「・・・どうしたの?」



フェイトがなんかもじもじしてる。それで、頭も同じようにもじもじと揺れてるから、腕がくすぐったい。



「こういう時って、おはようのキスって・・・した方がいいんだよね」



・・・・・・・・・・・・ど、どうしよう。なんかすごく可愛い照れた顔して、すごいこと言ってきたんですけど。

とにかく・・・あれだよ、あれ。こ、ここは・・・とりあえず問題の解決にいそしもう。



「じゃあ・・・あの、起きてからに・・・して、欲しい」

「え?」

「だって、このままじゃ僕・・・起き上がれない」

「あ、そうだよね。あの・・・ごめん」



フェイトが頭をどけて、半身を起こした。それで右腕が自由になったので、痺れの残る手を何回か握って開いてを繰り返して・・・左に居るリインの頭から、そっと腕を外す。

どうにか起こさずにその作業を終えて、あの・・・なんとか、起き上がった。



「うにゅ・・・やすふみさぁん・・・スクール水着は・・・だめですぅ・・・」



起き上がって、後ろから聞こえてきたとんでもない寝言に二人揃ってずっこける。そして、見る。気持ちよさそうに眠っている女の子を。



「ど、どんな夢見てるんだ・・・」

「ヤスフミ、スクール水着ダメなのって・・・私が着ても似合わないから?」

「どうしていきなりそんな話っ!? そしてそうじゃないからっ! ダメなのはアブノーマルだから以外の何者でもないからねっ!?」



あ、朝っぱらからなんで僕こんな血圧上げてツッコまなきゃいけないんだろ。おかしいぞ、おい。というか・・・あの・・・キツイ。



「う、腕が・・・なんかしびれる」

「・・・大丈夫? あ、もし辛いならマッサージするよ」

「お願い・・・出来る?」

「うん」



フェイトに右手を出すと、それをフェイトは両手にとってもみもみと力強くマッサージを加えてくれる。・・・あぁ、フェイトが触ってくれてるから、結構気持ちいいかも。

なんかマッサージしてくれつつ、僕のことを心配そうな顔で見ていたので、ニコリと笑って『大丈夫だよ』と表情で伝える。そうすると、僕の言いたいことが伝わったのか、フェイトが安心したような顔になる。



「腕枕・・・キツイ? 私はすごくよかったんだけど」

「うんとね、腕枕がキツイじゃないの。これだと僕が全く動けない体勢なのがキツイの」

「あ、そうだね。うーん、それなら・・・」



あ、あの・・・フェイトさん? マッサージをしながら何を考え込んでるんですか。



「リインを真ん中にして・・・あ、それだと私がヤスフミにくっつけないよね。なら、私が真ん中・・・ダメ。今度はリインがくっつけない。うーん、それなら」



いや、だから・・・三人体制での就眠の取り方についてあれこれ思考をめぐらせる前に・・・ですね、なんというかかんというか・・・。

とにかく、考え込み始めたフェイトの頬に、ちょっとだけ痺れの取れ始めた左手を当てる。それで、僕のほうに向かせる。



「・・・その、おはようの・・・キス、しても・・・いい?」

「ヤスフミ・・・あの、ムードとか無いよ。もうちょっとこう・・・」

「じゃあ、さっきのフェイトはムードあるの?」



僕がそう言うと、フェイトの表情が固まった。そして、頬を更に赤く染める。

ない・・・よね?



「・・・ないね。でも、こういう時は頑張る必要あるかなとか、ちょっと思って。本当は昨日出来ればよかったんだけど・・・あの、なんだか恥ずかしくて」

「そうだね。だから、僕も頑張るの。・・・でも、ムードは無いね」

「うん、私も・・・そう思う」



うーん、それなら・・・よし、あれで行こう。



「ね、フェイト。それならほっぺにするのはどうかな」

「ほっぺ?」

「うん。それなら・・・ほら、ムードとかそういうのあんまり関係なく、挨拶みたいな感じになるし。どうかな?」

「うん、それ・・・なら、あの・・・お願い、します」





右の手をまたフェイトの頬に向かって伸ばす。ふにふにとして柔らかい感触が・・・なんとも心地よくて、優しく・・・優しく撫でていく。





「・・・本当に、いい?」

「うん・・・いいよ」





そんな言葉達を交わして、少しの間見つめあう。そうして・・・フェイトがゆっくりと目を閉じる。少しだけ、震えてる。右の手はまだフェイトの頬に触れてるから、よく分かる。

それを見てから、僕も目を閉じる。そのまま・・・本当に少しだけ勇気を出す。顔を近づけて、フェイトの右の頬にそっと口付けをした。

伝わるのは、優しくて甘い感触。唇じゃないけど、フェイトにキスするのが初めてなのは変わらなくて・・・とてもドキドキする。



それから、顔を・・・唇を、ゆっくりと離す。瞳を開くと、フェイトも同じタイミングで目を開いてて・・・あの、だめ。可愛過ぎる。





「ほっぺただけど、あの・・・キス、されちゃったね」

「うん、しちゃった」

「なら、私も・・・あの、お返し」





僕は目を閉じる。フェイトがさっきの僕と同じように左の頬に手を当てて、そっと撫でてくれて・・・それからすぐ、右の頬に柔らかくて、暖かいものが触れた。



それが離れてから目を開ける。・・・ごめん、やっぱり可愛過ぎる。





「ヤスフミ、顔・・・真っ赤だよ」

「そう言うフェイトだって・・・」

「だ、だって・・・その、ほっぺただけど、キスしたのなんて、初めてだから」

「僕も・・・」










そのまま、二人・・・何となしに両手を自分の前で繋いで、見つめ合う。





胸を支配するのは、甘い疼きと幸せな気持ち。本当に想いが通じ合ったんだという事を確かめられて、あの・・・その・・・えっと・・・。





ごめん、また少し泣いた。隣のリインが目を覚ますまで、フェイトにギュってしてもらって・・・肩で泣かせてもらった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



キス・・・しちゃった。ほっぺただけど、キスはキスで・・・あの、その・・・うぅ、どう言ったらいいのか分からないよ。





でも、ヤスフミがまた泣いて・・・なんだろう、すごく胸が苦しい。





嫌とかじゃなくて、なりかけかも知れないけど、好きな男の子に女の子としてそこまで求められてて、想われている事が嬉しくて、幸せで・・・。





ほっぺたにキスだけで、これ・・・なんだよね。これが・・・もし、もしも・・・。





唇だったら、私・・・どうなるんだろ。それだけじゃなくて、例えば・・・心も、身体も結ばれたら、私・・・だめ、なんだか、身体がすごく熱い。





想像するだけで、ドキドキ・・・止まらなくなっちゃうよ。





というか、私・・・ダメだよっ! どうしてそれでダメな日来ちゃうのっ!! うぅ、ヤスフミには止められたけど、やっぱりあれとかそれで頑張った方がよかったのかなっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・朝が来た。今日の朝練は無しなので、ちょこっとゆっくり目。朝食のために食堂に行くんだけど・・・あの、なんというか、モヤモヤしてる。





でも・・・恭文君とフェイトちゃんが・・・その・・・ねぇ?





あれ、なんで私こんなちょこっと落ち込んでるんだろ。おかしいな、普通に喜べばいいのに。





・・・あれ、なんで私なんか寂しくなってるんだろ。おかしいな、普通に二人と友達なのは変わらないのに。










「それは・・・失恋ですね」

「にゃにゃっ!? シャーリーっ!!」





背後からいきなり制服姿のシャーリーが来た。と、



というか・・・あの、なんかニヤニヤしてて怖いんですけどっ!?





「あ、あのシャーリー、おはよう。というか、失恋ってなにっ!?」

「え、なのはさんってなぎ君の事好きだったんですよね」



・・・はいっ!?

その言葉で私の体温が急上昇する。私が恭文君を好き・・・好き・・・好き・・・だよね?



「だって、恭文君は私の友達で、大事で、大好きな男の子だもん。好きなのは当たり前だよ」

「・・・なのはさん、普通友達に『大事で大好きな男の子』なんていうフレーズは付けません」

「そんなことないよ。普通に友達になったころから言ってるし・・・あれ、シャーリー、なんでため息吐くのかな。私、ちょっとそれ気になるんだけど。ね、目を合わせて欲しいな。
・・・ねぇ、どうして置いていこうとするの? あのさ、シャーリー、お願いだから・・・少し、頭冷やす?」

「どうしていきなりそんな話になるんですかっ!? というか、なのはさんっ! お願いですからその目はやめてくださいっ!!」










だ、だって・・・シャーリーが変な事言うからっ! 私は恭文君とは友達なのっ!! 普通に何もないんだよっ!?





フェイトちゃんとの事だって応援出来るのに・・・なのに、なんでそんな話になるのかなっ! そうだよっ!! これはみんながあとがきとか拍手とかで好き勝手言っているせいだよねっ!? 私は普通に友達なんだからっ!!





よ、よし・・・せっかくセカンドシーズンに突入したんだし、それをここで証明していくもんっ! 絶対の、絶対にっ!!










「・・・いや、もう無理ですから。逆のを既に証明しちゃってるのに」

「そんなことないよっ!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・キャロ」



二人で書類仕事をこなしていると、エリオ君が唐突に話しかけてきた。その表情はどこか真剣なもの。

それに私は笑顔で返しつつ・・・何かなと答える。すると、エリオ君は言葉を続けた。



「恭文・・・フェイトさんとそうなったってことは、僕達にとってはお父さん・・・なのかな」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その言葉をすぐには認識出来なかった。でも、少しして理解した。

私達にとってフェイトさんは保護責任者・・・お母さんみたいなもので、そのフェイトさんと付き合うということは、お父さんみたいな位置になって・・・でも、なぎさんがお父さんかぁ。



「うーん、なんか違和感があるね」

「きゅくきゅくっ!!」

「実は・・・僕も。恭文ってさ、お父さんというより、お兄さんって感じだと思うんだよね」

「それもギリギリだよね」



フェイトさんもそうだし、なのはさんやティアさんより身長低いから、今ひとつ男性と言う感じじゃないんだよね。私達とも年は関係なく友達として付き合っていっているわけだから、余計に。

私は書類をポチポチと打ちながら考える。もし・・・もしも・・・なぎさんがお父さんなりお兄さんなり、そういう立ち位置なら・・・どう呼べばいいのかなと。



「でも」

「なに?」

「なぎさんなら、フェイトさんのこと・・・ちゃんと任せられるかな」



出てきた言葉は自分でも意外なものだった。私、なぎさんのことヘタレとかちょっとダメダメとか言いまくってるのに。

・・・やっぱり、好き・・・だからかな。うん、なぎさんのこと好きかな。



「そうだね、フェイトさんのことずっと想ってくれてたんだもの。下手に新しい人よりは・・・僕も安心出来るかな」



あ、言っておくけど好きって言うのは友達としてだからねっ!? 別になぎさんに恋してるとかそういうのじゃないんだからっ!!

私の本命はエリオ君なんだからねっ!? そこのところ、忘れないようにっ!!



「ね、エリオ君」

「なにかな」

「私達も負けてられないね」

「・・・はい?」










とりあえず・・・エリオ君の鈍さはフェイトさん譲りだと思う。そして、考えた。





やっぱり私達は・・・いろんな意味でちゃんと家族を出来ているんだなと。あ、もちろんなぎさんも入れた上でだよ? そこは、絶対。血の繋がりは無いかも知れないけど、私達は・・・家族なんだから。





なら・・・お父さんでいいかな。あ、でもルーちゃんも言ってるし・・・ここはパパ・・・だめだね。なんだかこれだと私、なぎさんの愛人みたいだし。やっぱりお父さんだよ。うん。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・ねー、ティア」

「なによ」

「恭文とフェイトさん・・・よかったね」



・・・ちょっと所用で隊員寮に向かう道すがら、唐突にそう言ってきたのは、私の隣を歩く相棒。表情は、とても嬉しそう。今日は天気がいいから、日の光にそれと青い髪がさらされて、余計にそう思ってしまう。明るい太陽の光は、この子によく似合う。

ただ、私はどうにもこうにも、こう・・・すんなり受け入れられなかった。理由はある。



「ねぇ、スバル。これ・・・他のみんなには内緒にしててもらいたいんだけど」

「なに?」

「フェイトさんとアイツ、きっと何にも無かったと思うのよ」

「えぇぇっ!?」



私は咄嗟に叫んだバカの口を右手で塞ぐ。そして、辺りを見る。・・・よし、誰も居ない。大丈夫だ。

私は口から手を話す。すると、スバルは大きく息を吐いた。どうやら苦しかったらしい。



「バカ、叫ぶんじゃないわよ。誰かに聞かれたらどうするつもり?」

「ご、ごめん・・・。でも、どうして? だって、フェイトさん恭文に夜這いかけたんだし、何もないわけないよ」



夜這い・・・いや、その通りなんだけどさ。普通はきっと・・・そうなると思うのよ。こう、エロい感じの事に。

ただ、それはあくまでも普通なんだ。フェイトさんとアイツにそれが適用されるかと言うと・・・絶対にない。



「スバル、ちょっとだけ考えてみて? あの二人は前にも同じ部屋で一晩過ごしてなにもなかったのよ?」

「そ、そう言えば・・・」

「正直ね、みんなが言うようにお赤飯炊くような事態になってるとは、どうしても思えないのよ。まだ審査中じゃないかしら」

「いや、まさかそれは・・・それは・・・」



スバルが表情を固めて言いよどむ。どうやら、私の言う事は可能性としてかなり高いと思ったらしい。

・・・真面目に自分でもこれはかなり高いと思うのよね。むしろ、付き合ってたらびっくりするわよ。



「あー、でもそれならちょっとマズったかなぁ」

「・・・なにがよ」

「いやね、昨日の夜・・・ついつい嬉しくなって、ギン姉や海上隔離施設のみんなに報告しちゃったんだよ。ついに恭文がフェイトさんと結ばれたーって」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁっ!?」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・なぁ、カルタス










「なんですか、部隊長」

「ギンガのアレは・・・なんだ?」





まぁ、うちの娘の事を聞くのもアレなんだが、あまりにおかしい。書類仕事しているんだが、問題はそれをやりながら出している空気だ。雰囲気が暗いというか、沈んでいるというか、辛そうというか。



普段元気なアレが落ち込んでると、どうにも部隊内がギスギスしてる感じがしてならない。・・・つーか、昨日まで普通だったよな?





「・・・あぁ、実はそこには原因がありまして」

「原因?」

「八神二佐から連絡があったんですが・・・大輪、咲いたそうなんです」



カルタスの言葉に俺は頭を捻った。それだけじゃあ言っている意味が分からなかったからだ。

それを察したのか、カルタスが更に言葉を続けた。



「・・・恭文の奴が、ハラオウン執務官と付き合うことになったらしいんです。というより、一昨日の夜にハラオウン執務官が恭文の自宅へ行って夜這いをかけたとか」

「はぁっ!? そりゃマジかっ!!」

「部隊長っ! 声が大きいですからっ!!」



カルタスが視線でうちの娘を指す。なんか・・・凄まじくよどんだ目で俺達を一瞥してから、仕事に戻った。

な、なぁ・・・マジで怖いんだが、なんであぁなる・・・よなぁ。あぁ、俺には原因が分かったよ。



「それで・・・あれか?」

「それしか考えられません。すみません、誰かは知りませんけど、空気読めないどこかのバカが話したらしいんですよ。・・・やっぱり、ギンガは恭文の事好きだったんですね」

「本人は全く自覚がねぇけどな。・・・あれ、どうするかな」

「男だったら酒盛りにでも連れて行くところなんですけど、ギンガはそういうのダメですし、なにより自覚がありませんから」










・・・どうするかなぁ、マジで。俺は頭が痛いんだけどよ、どうすりゃいい?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・なぎ君が、フェイトさんに夜這いをかけられて・・・ということは、つまりその・・・しちゃってるわけで。





そうなると、あの・・・つまり、お付き合いということになって・・・。





なんだろう、胸の中がもやもやする。イライラして、ムカムカして、悲しくて、辛くて、泣きたくて・・・訳分かんないくらいに心の中がごちゃごちゃしてる。





なんで、なんだろう。私、なぎ君の事応援してきた。フェイトさんと上手くいったらいいとも思ってた。なのに・・・こんな・・・。





なんでこんなに私、フェイトさんやなぎ君に対して、イライラしてるんだろ。なんで私、自分に対してムカムカしてるんだろ。










『それはきっと恋や』

「・・・え?」





いきなり通信画面が開いた。



そこに映るのは・・・や、八神部隊長っ!?





「・・・すみません、一旦切らせていただきます」

『あぁん、いけずー! なんでいきなりうちのラブコールにそんな態度取るんっ!? ギンガ、いつからそんなツンデレになったんやっ!!』

「意味が分かりませんよそれっ! というより、お願いですからかけ直させてくださいっ!! ここどこだと思ってるんですかっ!?」

『・・・うーん、女子トイレ?』



・・・正解。ここは女子トイレの個室。なお、何故ここに居るのかとか、そういうのは無しで。

と、当然でしょっ!? 女の子には色々あるんだからっ!!



『で、そこはともかくや』



え、普通に話を進行っ!? ちょっとそれおかしくありませんかっ!!



『ギンガ、ナカジマ三佐にラッドさんから聞いたんやけど、なんか今日相当らしいな。・・・どないしたん?』

「い、いえ・・・別に」

『隠したらあかん。正直に言うてみ? ・・・恭文とフェイトちゃんの事やろ』



私は・・・うなづいた。その時に自分の格好とか見えちゃったけど、気にしない方向でいく。



『二人が付き合うようになった言う話聞いて、なんか知らんけどイライラしたりムカムカしたりしてるんやろ?』

「・・・はい」

『それはな、恋や』



・・・・・・はい? いやいや、八神部隊長。あの、いきなり何を言い出すんですか。



『せやから、アンタ自覚無かったやろうけど・・・恭文のこと好きやったんよ。そうやから、今めっちゃ情緒不安定になっとるんよ。自覚も無しで失恋してもうたから』

「・・・私が、なぎ君を?」

『そうや』

「好きって・・・恋愛感情?」

『そうや』










次の瞬間、私は・・・頭を抱えトイレの個室の中で絶叫した。もちろん、否定の意味で。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・町並み、綺麗だねぇ。





うーん、やっぱり異国情緒って好きだなぁ。特に、ドイツは来たこと無かったし。










「そうだね。・・・私もね、執務官の仕事で色んな世界に行くの、ちょっと好き。知らない文化や町並みに触れるの、楽しいから」

「なるほど・・・」










僕達は起きてから準備をして・・・さっそくドイツへと向かった。ドイツとは、ヨーロッパ中部にある連邦制の共和国である。なお、首都はベルリン。僕達もそこに来ている。

首都から少しだけ離れた住宅街。石畳の足場を踏みしめつつ、三人で歩く。そして・・・やっぱり楽しい。

なお、公用語はドイツ語・・・アルトに通訳してもらいながら何とかなってます。うぅ、これから勉強しなきゃだめかなぁ。





日本との時差はマイナス8時間・・・なので、準備って言ってもまた高町家や知り合いの方々に顔を出して行ってきますと挨拶をして・・・夕方の6時くらい・・・あ、普通に夜だね。

そういうわけで、実はドイツは真昼間もいい所なのだ。な、なんというか・・・やっぱり転送魔法で国家間移動は慣れない。時差の問題があるから、こう・・・ちょっとだけ変なのよ。










「・・・ヤスフミ、どうしたの? 何か考え事かな」





僕の右手をぎゅっと握って、隣を歩くフェイトの心配そうな顔に・・・うなづきで返す。



不安にさせないように、微笑みながら。





「うん。・・・仕事選ぶなら、そういうのも大事かなと思って」

「・・・そうだね、結構大事かも。私はそこまで考えて執務官になったわけじゃなかったんだけど」

「じゃあ、フェイトさんの補佐官になれば、恭文さんの『色んなところを旅したい』という夢、先取りですねー。というか、恭文さん」



次は左を見る。左には、白のコートを来たリインが居る。

・・・うん、だいぶ慣れてきたぞ。だいぶこの宇宙人的な立ち位置に慣れてきた。



「この辺り・・・じゃないですか?」

「うん、地図だとそうなるんだけど・・・あ、あれかな」



僕達は、住宅街の一角にあるひときわ大きな赤い屋根の家の前へ行く。そして、インターホンを鳴らす。

すると、中から足音。ドアは・・・ゆっくりと開かれた。



「・・・恭文さん、お久しぶりです」

「こんにちは、ノエルさん。お久しぶりです」



中から出てきたのは、薄い青と紫が混じったような髪をした一人の女性。なお、服はメイド服。

彼女の名前なノエルさん。この家の・・・主に仕えるメイドである。



「フェイト様にリイン様も、お久しぶりです」

「ノエルさん、お久しぶりです。あの、しばらくお世話になります」

「なるですよー♪」

「とにかく、上がってください。もうお待ちかねですよ」










そうして、僕達は家の中に上げてもらった。・・・いよいよか。とりあえず、僕は気を引き締めた。





ここは、ドイツの月村邸。そして、ここの主を訪ねて、僕はやってきた。





なのはの兄。月村・・・恭也さんだ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・恭文君、おめでとー!!」

「おめでとー!!」



・・・リビングに入るなり、クラッカー(Notモビルスーツ兵装)による洗礼を受けた。あれ、なんだろ。僕もフェイトもすっごくデジャヴなんだけど。

そして、そんなクラッカー(Not投擲武器)を使用したのは二人。一人は紫の髪をロングにした女性と、もう一人は同じ色の髪をショートカットにした、4、5歳くらいに見える子ども。なお、女の子。



「・・・いやぁ、ついにフェイトちゃんとリインちゃんとの三人体制樹立だってっ!? 私は美由希ちゃんから聞いてびっくりしたよー!!」

「お兄ちゃん、ついに可哀想なお兄ちゃんの称号は返上だね。つまんないけど、おめでとう」

「・・・・・・よし、雫。今すぐ表へ出ろ。ちょっと叩き潰してやる。大丈夫、将来的にはともかく今なら勝てる」

「ヤスフミ、だめだよっ! 雫ちゃんはまだ子どもだよっ!?」





まず、女性の方は月村忍さん。すずかさんのお姉さんで、僕とも一応お付き合いのあるお友達。

そして、女の子の方は月村雫。忍さんと、この家の主である月村恭也さんの間に生まれた一人娘・・・なんだけど、かなり僕に対してのみ生意気。

2年ほど前だろうか。僕に対して『パパ』と言ったことで、僕と恭也さんのガチバトルが繰り広げられたのは、記憶に新しい。



・・・忘れていいことなんて、なにもないんだけどさ。それでも、あれは忘れたい。真面目に忘れたい。だって、普通に神速からの斬撃来るし。僕、死ぬかと思ったもの。





「なに言ってんのっ!? これは無茶苦茶ハイスペックの塊なんだからっ! 普通に加減なんてしたら僕が負けるわっ!!」

「そんなことないよー? 私、まだ斬までしか出来ないし、鋼糸や飛針の扱いもお兄ちゃんには負けるし」

「そんな5歳児がどこの世界に居るんだよっ! つーか、なんかまたパワーアップしてるってどういうことっ!?」



・・・そう、雫は凄まじく強い5歳児なのだ。理由はある。まず、忍さんの娘ということで、夜の一族としての能力を持っているということだ。身体能力など、この年頃の子どもと比べるまでもない。

そして、恭也さんの鍛錬を傍らで見ていてもうすでに基本的な御神流の構えや動きはマスターしてるのだ。暗器の扱いまで出来るし・・・末恐ろしい。なんですか、このチートキャラは。



「・・・お兄ちゃん、器量狭いよ。男は、女の子のどんな部分でも受け入れなきゃいけないんだよ?」

≪そうですよ、器量の狭い男ですね。そんなことだとフェイトさんにあっという間に愛想を尽かされますよ?≫



受け入れるのにも限度ってあるんだけどねぇ・・・! つーか、おのれらは絡むなっ!! 普通にパワーアップしてうっとおしいんですけどっ!?



「まぁまぁ・・・。それで忍さん、恭也さんは」

「あ、ごめんね。実は仕事で外に出ててさ、戻ってくるの夜になりそうなんだ。まぁ、その間・・・」





忍さんが視線で指す。それは・・・リビングのテーブルに置かれたご馳走の数々。



僕達がそれを見て感嘆のため息を吐くのを見て、忍さんが嬉しそうに笑う。





「ご飯でも食べて、色々聞かせて欲しいな。どのようにしてそういう風になったーとかさ。・・・あ、それと恭文君」

「はい?」

「その前に、少しだけ私とお話。いいかな?」

「・・・はい」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・まぁ、ファリンから聞いたけど、すずかの事振ったんだって?」

「振り・・・ました」



忍さんに連れられる形で、僕達だけ廊下に出る。で、切り出された話は・・・これ。

いや、予想はしてた。きっと来るだろうなと思ってた。



「正直ね、安心してる」

「え?」

「君がすずかを愛人にしようとか考えるような子じゃなくて。もうそれだけは救いかな」



にこやかに笑いながらそう言ってきた忍さんに、僕は苦い表情しか返せなかった。

だって・・・何を言えばいいのか、わかんないから。



「大丈夫だよ、君はちゃんとすずかの気持ちを受け取って、それで応えてくれたんだもの。ただね、恭文君」

「はい」

「もちろん、互いの気持ちがあるから色々難しいんだろうけど、すずかと・・・これからも友達で居て欲しいんだ。・・・契約の事どうこうは抜きにして」



・・・契約。夜の一族という吸血種であるすずかさんと過去に結んだ契約。それは、僕みたいな外部の人間にその正体が知られた時に行うもの。内容は・・・秘密を共有しあう同志・・・友達で居るというもの。

僕は過去にすずかさんや忍さんが夜の一族だという事を知って、契約を結んだ。契約を結ばなければ、忘れることがもう一つの選択だったから。そんなの、選べなかった。忘れていいことなんて・・・何もないから。



「あの子ね、君の事・・・本当に大好きなんだ。恋愛感情の事とかは抜きにして、自分の事、自分の全部、受け入れて、変わらなかったから。・・・どうかな」



真剣な、お姉さんとしての表情で僕を見下ろし、言葉をかけている忍さんの瞳を見返しながら、僕は答える。僕の気持ちを、しっかりと。



「友達・・・続けていければいいなと思っています。あ、これはすずかさんにも話したんですけど」

「・・・そっか、ならいいんだ。あと」

「はい」

「フェイトちゃんと、ちゃんと幸せになるんだよ? そうじゃなかったら、きっと・・・すずかは納得しない。もちろん、私もね」

「・・・はい。その言葉、心にしっかりと刻みます」










僕がそう言うと、忍さんは僕の頭に右手を乗せて・・・乱暴にくしゃくしゃと・・・あの、髪・・・髪が乱れるー!!










「いいじゃない。うちの可愛い妹を振ったんだから、普通なら潰してるところだよ? これくらいで済ませる忍さんの器量に感謝して欲しいな〜」

「そ、そういう問題じゃ」

「そういう問題なの。うーん、君と義理でも姉弟になるのも面白いかなーと思ってたのに、計画がパーだよ」

「一体なんの計画立ててたっ!?」





などと言っていると・・・インターホンが鳴った。僕と忍さんは顔を見合わせて・・・一緒に玄関に行く。



そして、忍さんは躊躇い無くドアを・・・え、なんで躊躇い無く開けるっ!?





「・・・こら、忍。躊躇い無くドアを開けるなと何度言ったら」

「大丈夫だよ、恭也だって分かって開けてるし。忍ちゃんの愛の力を甘く見ないで欲しいな」

「バカモノ」



コツン。



「いたーいっ! うぅ、恭文君・・・恭也がぶったよー!! これどう思うっ!?」

「忍さんが悪いと思います。海外だから物騒な事が起きる可能性だってあるのに、無用心すぎです」

「全くだ」

「ひどーいっ! そんなこと言うなら、また雫に君を『お父さん』って呼ばせちゃうよっ!?」



それだけはやめてー! 死ぬからっ!! 真面目に死ぬからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

・・・そして、そんなトラウマ発言で頭が痛くなった僕は無視して、なんだか目の前の二人はラブラブな空気を出し始めた。というか、見つめ合ってる。



「・・・おかえり、恭也」

「ただいま、忍」



そう言いながら、恭也さんが脱いだコートを受け取る忍さんは、やっぱり恭也さんの奥さんだなとかちょっと思ったりした。

というか・・・やっぱりお似合いだなぁ。なんというか、理想だよね。理想の夫婦だよ。



「でも、仕事の方はどうしたの?」

「それがな、明日でも大丈夫という話になってな。それならと早めに帰らせてもらったんだ。・・・久しぶりだな、恭文」



ブラウンのコート姿で親しげに僕に話しかけてきたのは・・・恭也さんだった。というか、全然変わってないな。

具体的に言うと、裾とか腕とか懐に何か仕込んでそうな感じとかが。



「ども、久しぶりです。恭也さん。フェイトとリイン共々お邪魔してます」

「あぁ。・・・そう言えば聞いたぞ。ついにフェイトちゃんとリインちゃんと三人体制樹立だそうだな」

「そうなんですよ・・・って、違いますからっ! 普通にフェイトと付き合いだしたって言う風にどうして言えないんですかっ!?」



僕がそう言うと、恭也さんと忍さんが顔を見合わせてやれやれと・・・あれ、なんだろう。僕なんか右の拳を握り締めてるんですが、どうしてなのでしょうか。



「あのね、恭文君。君がフェイトちゃんと付き合おうとすずかと付き合おうと、リインちゃんがそこにプラスされるのはもう確定なんだよ?
君が誰かと付き合うということは、イコール三人体制樹立ということになるんだから」

「忍の言うとおりだ。恭文、お前は二人をちゃんと幸せにする義務があるんだ。今のうちに覚悟を決めろ」

「だから・・・リインの年齢考えてから言ってますっ!? リインまだ8歳じゃないですかっ! 普通に考えてリイン交えてはアウトコースでしょうがっ!!」

「分かってないな。愛に年齢は関係ないと言うだろうが」



関係あるからっ! この場合、僕とフェイトが捕まらないために関係あるってことにしなきゃいけないからっ!!

・・・って、違うからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! なんか普通に僕、三人体制の話受け入れてたしっ!! 落ち着けっ! 落ち着け僕っ!! 僕の彼女はフェイトだけだからねっ!?



「まぁ、その辺りの話もしつつ・・・とりあえず、ご飯にしない? 雫もノエルもフェイトちゃん達も待たせてるしさ」

「そうか。・・・恭文、食事をしながらでいいから詳しく話を聞かせてくれ。それで・・・早速始めるぞ」

「・・・はい」










そして、僕達はリビングに入り、恭也さんも交えて豪華な食事に舌鼓を打ちつつ・・・話した。





僕がどのようにして神速の領域に足を踏み入れたのかを。まぁ・・・ねぇ、反応は大体分かるでしょ。










「・・・ねぇ、お母さん」

「うん、なに?」

「愛の力って偉大なんだね。お兄ちゃんでも凄くなれるんだから」



5歳児のポタージュスープを食べつつ発せられた。そんな言葉に、フェイトは顔を赤くし、リインやノエルさんはなんか嬉しそうにニヤニヤ。あ、忍さんと恭也さんもだね。

・・・とりあえず、このガキは絶対に僕を年上として見ていないと思われる。お兄ちゃん『でも』ってなんですか。おにいちゃん『でも』って。



「まぁ、神速についての詳しい話は父さんや美由希から聞いているだろうから、食事が終わったら早速訓練に入るが・・・恭文、装備は用意してきているな?」

「もちろんです」

「・・・だろうな。俺や美由希が教えたように色々身の回りのものも気遣っているようだし、問題無いのは一目見て分かった」



・・・まぁ、袖に暗器仕込まないとアウトな人生ってどうなのかなって思うけど、もう気にしない事にした。しても楽しくないし。

とりあえず、サラダを一口・・・あぁ、美味しい。さすがノエルさん特製だよ。もう幸せで幸せで。



「・・・フェイトちゃん」

「はい?」

「少々危ない目に遭わせるが・・・大丈夫か?」



フェイトは恭也さんの自分を見つめてくる真っ直ぐで真剣な視線を受け止めつつ・・・うなづいた。

それを見て、恭也さんは満足そうにうなづく。



「どうやら、色々変化があったらしいな。以前とは別人のようだ」

「はい、色々・・・話しましたから」

「納得だ。なら恭文、久々にやるぞ」

「了解です」










・・・そして、この数十分後。食事は楽しく終わり・・・家の裏庭に移動して、始めることになった。





ここで決まる。僕が本当の意味で神速の領域に到達出来るかどうかが。絶対に・・・物にしてみせる。





変わらないまま変わっていくと、そうして強くなっていくと、約束したから。




















(第3話へ続く)




















あとがき



古鉄≪さて、六課メンバーの反応なども描いていった今回のお話・・・いかがだったでしょうか? 次回は生けるチートキャラの恭也さんとの対決です。いや、楽しみですねぇ。
というわけで、本日のあとがきのお相手は私、古き鉄・アルトアイゼンと≫

フェイト「え、えっと・・・フェイト・T・ハラオウンです。というか・・・あの、ラブラブ・・・しちゃった」





(閃光の女神、顔を真っ赤にする。・・・それに対して、青いウサギは二丁のビームライフルを抜いて、向ける)





フェイト「いきなり攻撃しようとするのはやめてくれないかなっ!!」

古鉄≪気のせいですよ≫

フェイト「気のせいじゃないからっ!! ・・・と、とにかく・・・あの、キスシーン・・・恥ずかしかった」

古鉄≪なに言ってるんですか。しゅごキャラクロスではあんな事やこんな事もしてるくせに≫





(1話:キスして押し倒す 2話:行って来ますと行ってらっしゃいのチュー 3話:『あなたの子どもを産みたいから、子作りしよう』発言。そして、そのまま避妊してたけどR18シーン突入。6話:ちょっとだけ仲直りっぽくキス・・・そこから布団に入って手を繋いでピロートーク)





フェイト「あ、あれは・・・また違うのっ! このシーンだと、私と恭文は・・・その、恋人なりたてだし」

古鉄≪なるほど、あっちはなりたてじゃないから新鮮さの欠片もないから、いくらでも出来ると≫

フェイト「そんなことないからっ! あの・・・何回キスしても、えっちなことしても・・・ドキドキもときめきも全然薄れないし、触れ合えるのはすっごく嬉しいし・・・!!」

古鉄≪あぁ、もういいですから。・・・で、実は私気になってたんですけど≫





(青いウサギ、耳がぴくぴくしている。閃光の女神、それを見てはてなマークを放出)





フェイト「なにかな?」

古鉄≪はやてさんとあなたは・・・まぁ、大人になったわけじゃないですか≫

フェイト「・・・うん、なったよ」

古鉄≪で、そういう夜のコミュニケーションについて話すんですよね≫

フェイト「う、うん・・・。あの、情報交換というか、最初は恥ずかしかったんだけど・・・女の子同士だし、私も色々勉強したいから・・・それで・・・ごめんなさい」





(閃光の女神、突然謝る。誰に対してかは・・・きっと考えるまでもない)





古鉄≪大丈夫ですよ、そこに対して男は何も言いませんから。別に悪口とか言ってるわけじゃないんですよね≫

フェイト「うん。ただ・・・あの、どうしたらヤスフミやアコース査察官が喜んでくれるのかーとか、そういう話をするだけだから」

古鉄≪なら、別にいいでしょ。・・・で、そんな時、高町教導官はどうしてるんですか?≫

フェイト「え、えっとね・・・前に一度なのはも参加したんだけど、なんというか・・・話についていけないらしくて、それ以来そういうのは無いかな」

古鉄≪・・・ついていけると思ったんですか? また残酷な事しますね≫

フェイト「あの、私とはやてから話をしたわけじゃないの。だって、こう言ったらなのはに悪いけど・・・ついてこれるとは思ってなかったから」





(閃光の女神、結構ひどいことを言っている。でも、事実だったりする)





フェイト「ただ、どんな感じなのかって聞かれたから・・・それで、私もはやても答えて・・・そこから話が発展したの」

古鉄≪あの人、興味あるんですね≫

フェイト「みたい・・・。なんだか、本人はついていけると自信満々だったけど」

古鉄≪どこから沸いてきたんですか、その自信は≫

フェイト「・・・ごめん、私にも分からないの。でも、なのは・・・ユーノとはどうにもならないのかな。なんだか、ヤスフミに気があるみたいな感じになってるし」





(どこかから否定の声が上がるけど、きっと気のせいだ)





古鉄≪まぁ、そこはいいでしょう。というわけで・・・本日はここまでっ! お相手は糖分過多はそろそろなんとかして欲しい古き鉄・アルトアイゼンと≫

フェイト「もう恋人同士なんだから、糖分過多でいいと思うフェイト・T・ハラオウンでした。それでは・・・また次回にっ!!」










(そうして、どこか自信満々に手を振る様子を映しつつ・・・カメラフェード・アウト
本日のED:『銀色の空』)




















フェイト「・・・あの・・・ね、ヤスフミ」

恭文「どうしたの?」

フェイト「本当は・・・危ない事、して欲しくない。神速ももう使って欲しくなんてない」

恭文「うん・・・」

フェイト「でも、頭でっかちに止めたりしないって、もう決めたから。だから・・・これだけ言うね。
絶対に、ちゃんと無事に訓練を終える事。それだけ、約束だよ?」

恭文「・・・うん、約束するよ。フェイトの事、泣かせたくないし」

フェイト「うん、それならいいんだ」

恭也「・・・フェイトちゃんは、随分変わったな」

忍「色々あったらしいしね。というわけで・・・恭也、私達もー♪」

恭也「バカモノ、恥ずかしいだろうが」

忍「いたーいっ! 恭也がまたぶったー!!」

雫「・・・どっちもどっちだよね」

リイン「ですです」










(おしまい)





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