小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説) 第7話 『ハンプティ・ダンプティ あなたのたまごは今どこに?』:1 「ほう、現代版のお茶汲み人形か」 「うんっ!! ・・・・・・ロボット博士になって、究極のお手伝いロボットを作るんだ」 本当に、本当の子どもの時。これは工作クラブの顧問だった大好きな先生との会話。 僕は『将来の夢』というお決まりなお題で、ロボット博士になりたいって書いた。 「・・・・・・実はな、先生も子どもの頃にお茶汲み人形を見て感動してね。 同じものをどうしても作りたかったんだ。それで、ロボットの勉強を始めたんだよ」 「へぇ、そうなんだ」 あの時の先生の嬉しそうな顔、今でも覚えてる。そして、僕を苦しめる。 『ハンプティ・ダンプティ、夢は・・・・・・たまごはどこへ行っちゃったの?』ってね。 「よし、それなら・・・・・・どっちが先に夢を叶えるか、競争だな」 「よーし、受けてたった。でも先生年だから、定年までだね」 「お、言ったな? まだまだ若いもんには負け・・・・・・だめだな。これではまるで本当に年を取ったみたいだ」 楽しくて幸せで、ただ笑い合っていたあの日々。僕は何も分からなかった。でも、それでもよかった。 心の中にちゃんと大切なものがあって、それだけが全部だった。 そしてそれだけが行く先を照らしてくれて・・・・・・だから、必然だったのかもしれない。 僕の元に光り輝く・・・・・・・噛み合わさったいくつもの歯車が描かれたたまごが生まれたのは。 『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説 とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご 第7話 『ハンプティ・ダンプティ あなたのたまごは今どこに?』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「・・・・・・あむちー、大丈夫かな?」 「大丈夫だ。恭文だけじゃなくてリインや咲耶さんも・・・・・・あ、精神的にって意味か」 「うん」 「確かにそういう意味合いでは、マズいかも知れないわね」 僕達はロケ現場の人ごみを掻き分けるようにして、この近くに感じたしゅごキャラの反応を探し回っていた。 でも、中々見つからない。だけど日奈森さん・・・・・・・そうだよね。 自分のしゅごキャラを奪われて、蒼凪君がなんとか励まして一応大丈夫にはなった。 けど、現状がどうなるか分からないんだ。 「お前達、そこを今言っても仕方なかろう。今僕達が出来る事は、二階堂を見つける事だけだ」 焦る僕達を諌めるように、キセキが腕を組んでそう言ってきた。 「最悪ここで取り戻せなかったとしても、それでたまごの無事と奴の存在を確認出来ればまだいい。 それであむはまだ持たせる事が出来る。大事なのは、今ラン達がどうなっているかだ」 「・・・・・・そうだね。それでキセキ、しゅごキャラの気配は?」 「それが・・・・・・うーん、どこだ?」 キセキがあっちこっちを見て回るけど、表情に疑問の色が出ている。でも、本当にここに居るのかな? 蒼凪君じゃないけど、まさかラン達を抱えてロケを見に来ているとは思えないし・・・・・・あれ? 人だかりの中に道が出来ている。こう、モーゼのなんとかじゃないけど、その道を歩いてくる一団がある。 服装を見るにADと思われる人達と、それに守られるようにふくよかな熟年の女性。 メガネをかけて、ちょっと濃い目のお化粧をした人。あれは・・・・・・冴木のぶ子さん? そうだ。テレビで見た事ある。冴木のぶ子さん本人だ。あ、これからロケが始まるんだね。 「冴木先生、入りまーすっ!!」 「先生、ガツンと言ってやってくださいよっ!? なまいきアイドルにいつものスパイシー霊感占いをっ!!」 「分かってるわよっ!!」 な、生意気って・・・・・・またすごい言い方するなぁ。いや、確かにその通りなんだけど。 「でも私、あの歌唄って子ちょっと苦手なのよね。だってあの子の後ろ・・・・・・うぅ、怖いわ。 たまーに変なものというか、小さなものが見えて・・・・・・ま、まさか本当に守護霊なんて事は」 小さく呟いた言葉が、僕の耳に入った。ほしな歌唄の後ろに変なものが見える? というか、小さなもの? それって、まさか・・・・・・ううん、考えるまでもない。 「唯世、一つ確認だ」 「なに?」 「確か、あの者は霊感占いで有名だったな。守護霊の気配が分かるとか」 「そうらしい」 本当かどうかは知らないけど、それで有名になった人なのは間違いない。 「・・・・・・ちょっとキセキ、まさか」 「そういう事だ。・・・・・・いけっ! 家来達っ!!」 その号令にペペとダイチとてまりが敬礼して、全速力で冴木のぶ子さんの前に行く。 なお、僕は止める暇は無かった。とにかく、僕と結木さん達も顔を見合わせて動く。 「おばさん、それはしゅごキャラでち」 「・・・・・・え?」 冴木のぶ子さんが目の前に現れたペペを見て腰を抜かし、震えた手で指差しながら叫んだ。 「ぎひぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? お、お・・・・・・おばけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」 「おばけじゃないでち。しゅごキャラでち」 「おばさん、やっぱり俺達の事見えるんだな?」 「まぁ、珍しい事」 周りのスタッフはいきなり大きな声で叫ぶから大混乱。 冴木のぶ子さんは『これが見えないのっ!?』と必死にすがりつくけど、無駄。 どうやら見えているのは冴木のぶ子さんだけらしくて、全員首をかしげる。 その様子にまた顔を青くして・・・・・・ロケバスに走って戻った。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ロケバスに戻ってからも息をとても荒くついて、顔は思いっきり青ざめている。 とても申し訳ない気持ちになるけど、ここは心を鬼にしようと思う。 「な、なんなのよあれは・・・・・・! なんでみんなには見えてないのよっ!!」 『先生っ! お邪魔してまーすっ!!』 「・・・・・・え?」 冴木のぶ子さん・・・・・・いや、冴木先生がこちらを見る。 「あ、あんた達誰っ!? というより、何時の間にっ!!」 「ま、さっきの騒ぎの隙にな」 うん、僕達はバスに先回りしてた。なお、目的はある。なので僕は近寄って、挨拶から入る。 狭いバスの車内を乗車席の間をゆっくりと歩きつつ、怖がらせないように歩き方と同じくゆっくりと話しかける。 「初めまして、冴木先生。実は僕達今、とても困っていて」 身長は冴木先生の方が高いから、僕は見上げる感じになる。あれ、なんか顔赤いな。どうしたんだろ。 「・・・・・・あら、美少年」 「・・・・・・はい?」 「まぁ、僕には及ばないがな」 「・・・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 「キセキっ! だめだよ驚かせちゃっ!!」 とにかく、話を進めよう。だって大事なのはここからなんだから。 あくまでも安心させるように。僕達に敵意が無い事を、アピールしていかなきゃ。 「・・・・・・すみません、この子達は害はないので。 でも、僕達のしゅごキャラが見えるなんて、さすが冴木先生。やはり只者ではありません」 「え、いや・・・・・・あの、それほどでも」 よし、なんかいい感じだ。この調子でお願いしていこうっと。 「僕達、実は仲間のしゅごキャラを探しているんです。ただ、どうしても見つからなくて」 「そ、そうなの」 「冴木先生」 僕は冴木先生の両手をしっかりと掴んで、その目を真っ直ぐに見る。 「噂に名高い冴木先生のお力、ぜひともお借りしたいんです。だめ・・・・・・でしょうか?」 「・・・・・・いいわよっ! この私に・・・・・・冴木のぶ子に任せなさいっ!!」 「ありがとうございますっ!!」 ・・・・・・冴木先生はしゅごキャラが見える。噂ではそういう類・・・・・・霊のようなものの気配も分かるらしい。 なら、もしかしたらキセキ達の『なんとなくレーダー』よりも確実に、ラン達を見つけられるかも。 とにかく僕は更に冴木先生の両手を力強く握って、お礼を何度も言う。こういうところから、協力関係は円滑になるんだから。 「・・・・・・なぁ、やや。あれは計算だと思うか?」 「多分、素だと思う」 「そうだよな、やっぱ・・・・・・そうなんだよな。あぁ、分かってたよ」 「まぁそこはともかく、早く恭文とあむ達に合流でち。きっと待ちくたびれてるでちよ」 「そうね。なら早速・・・・・・行動開始といきましょうか」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「キミってキャラもちだったのっ!?」 「そうよ、アンタと同じくね」 あむがそう声を上げ・・・・・・え、待って待って。 あむ、歌唄と知り合い? なんかいきなりタメ口だし、歌唄も知ってるっぽいっし。 「えっとあむ、このお姉さんとお知り合い?」 「あ、うん。以前本当に少しだけ。なら、キセキ達が掴んだ反応は」 「多分、歌唄さんのたまごですよ。うぅ、外れです」 「振り出しですね、これは・・・・・・今日は仕切りなおしでしょうか」 僕達が顔を見合わせてうーんと唸っていると、肩をちょんちょんとつつかれた。 「ね、恭文」 「なに?」 「アンタ、もうイースターやエンブリオの事、知ってるの?」 その言葉に思考が固まった。だって直接的過ぎて、どう答えたらいいのか・・・・・・いや、分かる。 「まぁね。だからおのれらの敵って事になるわ」 「恭文っ!? アンタいきなり何言ってんのっ!!」 「アンタは黙ってて。・・・・・・そっか、見抜かれちゃったか。というか、話が早くて助かるわ」 不敵に笑いつつ歌唄は、右手で肩にかかっていたツインテールの髪をかき上げる。 「あの、すみません。少しだけ席を外しててもらえますか?」 歌唄が振り向いて、ボディガードのお兄さん達に声をかける。でも、その言葉に顔をしかめる。 「いや、しかし」 「お願いします。少し大事な話なので」 「・・・・・・分かりました。我々は近くに居るので」 「ありがとうございます」 そのままボディガードのお兄さん達は僕達を一瞥して、ペコリとお辞儀すると・・・・・・その場を離れた。 そして歌唄が僕の方を見る。ただし、その瞳は先ほどとは少し違う。どこか敵意を感じさせるものだった。 「実を言うとね、最初に会った時からアンタの事、知ってたの。アンタ、イースターに目をつけられてるわよ? 香港国際警防隊ってところに所属してる、私より年下なのにむちゃくちゃ強い奴・・・・・・って感じ?」 「だろうね。そんなもんあの反応を見た瞬間に気づいたよ」 お手上げポーズで当然という顔でそう言うけど・・・・・・うん、ごめんっ! すっごいハッタリなんだっ!! もうね、嘘八百もいいところなのっ! でもいいよねっ!? こういうの大事なんだからっ!! 「そう。でもなんて言うか、ライブに誘う前にこうなっちゃったのは残念かな。 アンタ中々面白いし、せめて借りは返してからやり合いたかったんだけど」 「そりゃどうも。で・・・・・・僕に喧嘩を売った以上、潰される覚悟くらいはあるんだろうね」 嘲るように笑うと、歌唄は予想に反して・・・・・・同じような笑いを僕に向けてきた。 「それはこっちのセリフよ。アンタが私やイクトに勝てるとでも思ってるの?」 「命のやり取りの経験もないようなトーシローに負けるほど、緩い生き方してるつもりはないよ。 子どもは子どもらしく、ミルクでも飲みながら寝てればいいのに。なんなら僕が奢ってあげようか?」 「・・・・・・へぇ、マジでやる気?」 「えぇ、やる気ですけど何か?」 いいねぇいいねぇ。こんな楽しい挑発合戦が、このゆるーい展開で出来るとは思わなかったよ。 そんな事を考えながら歌唄とニコニコと顔を見合わせて・・・・・・笑う。二人で大声を出して笑う。 「あ、あの・・・・・・恭文っ!? 歌唄も・・・・・・もしもーしっ! ちょっと怖いんですけどー!!」 「恭文さん、完全にエンジンかかっちゃったみたいですね」 「おじいさまの挑発にあぁまで返せるとは・・・・・・やはり歌唄さま・・・・・・いえ、何も」 「だから咲耶どうしたですかっ!? さっきからちょっと変なのですっ!!」 なんか聞こえるけど、きっと気のせいだ。うん、それよりもっと重要な事がある。 ・・・・・・これからどうすりゃいいのっ!? マジで行き先不明の五里霧中状態だしっ!! 「で、さっきから気になってたんだけど・・・・・・日奈森あむ」 「はひっ!?」 「アンタのしゅごキャラ、どうしたのよ。たまごも無いみたいだし」 そんな内心を見透かされたようなタイミングで出た歌唄の言葉に、僕達はまた顔を見合わせる。 ・・・・・・これを素直に受け取るなら、歌唄は二階堂が今日何をしたのか知らないという事になる。 ただ、普通に挑発の可能性もあるけど・・・・・・それはないと思う。 だって今のを聞く限り、そういう感じの言い方じゃなかったから。 「・・・・・・それ、マジで言ってるの?」 あむの語気が強くなる。それに歌唄が顔をしかめる。 「それ、どういう意味よ」 「アンタがマジでイースターの人間なら、知らないはずないよねっ!? あたしのたまご・・・・・・二階堂に、イースターに取られちゃったのにっ!!」 その言葉で、歌唄は事情を察したようだった。納得したような顔で僕を見る。 そして視線で聞いてくる。『本当なの?』と。だから僕は頷いて肯定した。 「・・・・・・二階堂さん、また大胆な手に出たわね」 「しらばっくれないでよっ! ねぇ、ラン達どこっ!? アンタなにか」 「はいはい、あむ落ち着け」 左手で掴みかかろうとしたあむの顔面を鷲掴みにする。なんかあむが痛そうに唸るけど、僕は気にしない。 「歌唄はマジでラン達の事は知らないっぽいのよ? それでどうしろって言うのよ」 「ぬーむー!!」 「日奈森あむ、コイツの言う通りよ。・・・・・・イースターの中でもね、エンブリオを探すチームは一つじゃないの。 二階堂さんは、あくまでもそのチームの一つ。私が所属するチームとどちらが先に見つけられるかって競ってるのよ」 呆れ気味に牛みたいにうーうー唸ってるあむを見ながら、歌唄は両手を組む。 「確か『エンブリオを見つけて会社に差し出せば、出世コースは間違いない』とか言ってたわね」 『はい?』 出世のために魔法のたまご探してるっての? 大の大人が? ・・・・・・バカじゃないのか、イースター社員。 つーかなんでも願いが叶うなら、差し出さないで自分で使えばいいのに。どうしてそこに頭が回らないのさ。 「夢とか願いなんかより、出世の方が大事なんでしょ。だから自分で使うって発想がないのよ」 「・・・・・・嫌だねぇ、大人は。他人から与えられたものだけで満足しちゃうんだ」 「そういうものなんでしょ。大人は」 「で、なんで歌唄はそんな事を僕達に教えてくれるわけ? 敵同士でしょうに」 僕がそう言うと、歌唄が鼻で笑って僕の方を見てきた。 「私、二階堂さんみたいなやり口嫌いなの。フェアじゃないし、楽しくないでしょ?」 「なるほど。イースターの事をあれこれ知られても、勝てる自信があると」 「正解。私はコソコソする必要も、小細工する必要もない。 ・・・・・・エンブリオを手にして、イクトをイースターから救うの」 自分の前に右の拳を持ってきて、ギュッと握りながら歌唄は言ってきた。 あー、もう言うまでもないけど、これは思いっきり宣戦布告である。 いやぁ、楽しいなぁ。こういう事にならなかったら、友達になりたかったのに。 そんな気持ちも込めつつ、僕はあむの顔から手を離す。あむは苦しげに息を吐いた。 「ね、恭文」 「なにさ」 「アンタは・・・・・・引かないわよね?」 「当たり前でしょ。歌唄、今から再就職先を探す事をオススメするよ。イースターは遠からず僕達がぶっ潰すから」 軽く笑いながらそう言うと、歌唄も釣られたように笑う。それから歌唄は、あむの方を見る。 「で、アンタはどうなのよ」 「・・・・・・え、あたし?」 「そうよ。私はアンタに負けるつもりはない。恭文達も同じく。 立場は違うけど、それでも。アンタは、どうなの」 あむは歌唄にそう言われて・・・・・・瞳を閉じ、右手を自分の胸の前へ持っていく。 それから力強く握り締めた。そして、歌唄を真っ直ぐに見る。 「あたしだって、負けない」 瞳は強く、その中に宿るのは炎。その炎の名は・・・・・・決意。 「最初は、唯世くんに振り向いて欲しくて、エンブリオ探してた。でも、今は違う。 恭文やみんなと同じだよ。イースターのやってる事、絶対に許せない」 その炎が僕やリイン、咲耶に歌唄の心を確実に捉えた。 「人のこころに勝手に×をつける人達になんて、悪いけど1ミリだって譲れないよっ!! なにより・・・自分が決めた事貫けなきゃ、キャラがすたるじゃんっ!!」 またタンカを切ったものである。思わず見入って・・・・・・あ、そう言えばマズい。 まだラン達の居場所の問題が何一つ解決してないっ! やばい・・・・・・やばいよこれー!! 具体的にはみんなを帰す時間っ!? さすがにこれ以上小学生を振り回すわけには。 「あむちゃーんっ! 恭文君もお待たせー!!」 なんて思っていると、僕達の背後から音。車が急ブレーキを踏むような音がした。 そちらを見ると、小型の10人程度が乗れるようなバスがあった。 『・・・・・・なんじゃこりゃっ!!』 そしてその窓から・・・・・・あ、いつものメンバーが出てきた。 「・・・・・・あー、なでしこ。それ・・・・・・どうした?」 「ふふ、色々あってね」 そっかぁ、それで納得しろと? なんか小型のバスっぽいのが来たのを、全部納得しろと? ・・・・・・出来るかボケっ! 一体どういう手管使ったらそうなるのか、小一時間程問い詰めたいんですけどっ!! 「それでね、ラン達の居場所、分かりそうなの」 「え、マジっ!?」 「マジマジー! やや達も頑張ったんだからー!!」 僕達は顔を見合わせ、思わず表情がほころぶ。と、とにかくそれでどうすればいいのかな。 そんな気持ちを込めて、もう一度なでしこ達を見る。 「とにかく、お前ら早くバスに乗れっ! 話はそれからだっ!!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ そうして僕達はバスに乗って・・・・・・よし、一つ質問がある。 うん、結構重要な質問がね? それは、なにかというと・・・・・・これ。 「なぜおのれがここに居るっ!?」 「あら、いいじゃないのよ」 そう、歌唄だ。普通にバスに乗ってきやがった。ガードの人達? あははは、完全無視ですよ。 コイツ・・・・・・自分で敵とかなんとか言っておきながら、もしかしてその自覚0だったりする? 「私、二階堂さんのやり方、好きじゃないって言ったでしょ?」 「あぁ、左様で」 「左様よ」 今ごろ、現場は大騒ぎだろうなぁ。だってこのバス、テレビ局のロケバスらしいし。 それで出演者『二人』居なくなっちゃったし。あ、あははは・・・・・・とんでもない小学生だなオイ。 なんだよ、このゆとり教育の弊害みたいな行動の数々はさ。 日本の未来が危篤寸前だって。だめだ、この国はきっともうダメだ。 「恭文さん、もう気にするのやめません? どうせグダグダなのは変わらないのですよ」 「そうだね、そうしようか。もうやめようか。具体的に言うと、運転席になんで冴木のぶ子が居るのかとかさ」 いや、事情は聞いたよ? しゅごキャラ見える上に気配も確実に掴めるから案内させるって。 あぁ、マジで怒られ・・・・・・よし、全部あのクソメガネのせいにしておこう。それがジャスティスだ。 「その方がいいですね。いくらなんでもフリーダム過ぎますし」 「咲耶が言えた義理じゃないからねっ!?」 「ですです」 「アンタ達、余裕あるわね」 歌唄、余裕はあるんじゃない。余裕はあるように見せてるだけだから。 ・・・・・・あ、そうだ。せっかく歌唄も居る事だし、ちょっと趣向を凝らすか。 「ね、歌唄。さっき二階堂のやり口が気に食わないって言ってたよね」 「えぇ」 「なら、ちょっと楽しい嫌がらせしない?」 「嫌がらせ?」 で、簡単に考え付いた事を話したら・・・・・・歌唄はニヤニヤと笑い出した。 「乗った」 「即答ですかっ!?」 「当然よ。まぁ、この私に対してそれはちょっと気に食わないけどね。 ・・・・・・でも、それだときっとあの人、ビビるわよね」 「ビビるだろうね。いや歌唄、人に嫌がらせって楽しいよね」 「状況次第だけど、そこは同意するわ」 そして歌唄はやっぱり楽しそう。というか、笑みが黒い。 「あー楽しくなりそう。いや、やっぱりアンタ面白いわ。敵なのが惜しいくらい」 「・・・・・・歌唄さま、この頃からおじいさまと同じでしたか。可哀想に」 「ドSだったんですね。若くして人生の歩み方を間違えてるです」 「よし、二人とも不満があるなら聞くよ? ちゃんと話しぃぃぃぃぃぃてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」 なお、僕が途中で叫んだのには理由がある。それはまぁ、今更なんだけどね? ・・・・・・このバス、なんかすっごいスピード出てないっ!? いや、それどころか車体が右に左に振られて、身体が揺れるー!! 「ちょ・・・・・・こらー! そこの占い師っ!! いくらなんでもスピード出し過ぎっ!! つーか、ふらふらしすぎだからぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 僕達が乗っているロケバスは、完全に交通法規を無視したスピードで走行している。 だから右にふらふら、左にふらふら・・・・・・前の車や『対向車』を避けながら進んでいる。 そして、当然中に居る僕達はたまったもんじゃない。みんな近くのものに捕まって必死に耐えてる。 咲耶は椅子についている手すりに掴まり、リインは僕に抱きつく。 僕は椅子にしがみついて、歌唄は僕の右腕に・・・・・・って、なにやってるっ!? 歌唄、なんか僕の右腕にしがみついてた。それも結構必死な感じで。 「普通にしがみつくのやめてもらえますっ!? ほら、僕達敵同士っ!!」 「しょうがないでしょっ!? 他に掴めて盾になりそうなものないんだからっ!!」 「バカっ! ナチュラルに僕を盾にしようとするなっ!!」 人様を盾なり衝撃緩和のクッション代わりにする気満々っ!? 待て待て、おかしいでしょうがそれっ!! 「うるさいわよ、そこのチビっ子っ! こっちは必死なんだから邪魔しないでよっ!!」 「誰がパンに入っていてもおかしくないくらいに豆だっ!! おのれ、今すぐそのメガネ砕いてただの細木数子にしてやろうかっ!! あぁっ!?」 「それはやめてっ! ただでさえキャラが被ってるって言われて辛いのよー!!」 「蒼凪君落ち着いてっ! 誰もそんな事言ってないからねっ!? アルトアイゼン持ち出そうとするのはやめ・・・・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 バスは凄いスピードでどんどん進行。そして突き当たりの道路を、左に曲がる。もちろん急激に。 そしてそのまま歩道を乗り上げ、公園にとつにゅ・・・・・・待て待てっ! マジで交通風紀無視だしー!! だけど、突入しかけて車道に戻った。ぎりぎりだったけど戻った。 いや、よか・・・・・・・よくねぇぇぇぇぇぇぇっ! 突入しなくても現状は何一つ改善されてないしっ!! 「・・・・・・はっ! もしやこのバスは、40キロ以下になると爆発するのですかっ!?」 「咲耶さん、こてつちゃん、そうなのっ!?」 ≪JACK POT!!≫ 「そんな・・・・・・これ、そんな危険なバスだったのっ!? あぅ、やや達大失敗だよー!!」 「んなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 咲耶もアルトもややもこの状況で遊ぶなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! つーか占い師っ! なんでこんなアホな運転っ!? おかしいでしょうがっ! おかしいでしょうがっ!!」 大事な事だから二回言いたくなるくらいにおかしいでしょうがっ! なんでこうなるのさっ!! 「しょうがないでしょっ!? 私はペーパードライバーなんだからっ!!」 「あーなんか予想してたー! つーか、思いっきり人選ミスじゃないのさっ!! いや、それ以前の問題としてこっちで合ってるのっ!?」 「そんなの、あてずっぽうよっ!!」 ・・・・・・・・・・・・え? 『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』 「しょ、しょうがないでしょっ!? 元々私の霊感なんて当てにならないんだからっ!! 美少年に乗せられてついついここまで来ちゃっただけなのよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 「・・・・・・なでしこっ! 空海っ!! これはどういう事っ!?」 ややはもうふらふらしてるし、あむも唯世も目回しかけてるからおのれらしかいないのよっ! ほら、答えてっ!! 「すまんっ! これはマジですまんっ!! だが、他に方法がなかったんだっ!!」 「そんなの勘違いでしょうがっ! 少なくともこれ以外の方法がなかったとは、おじさんちょっと思えないなっ!!」 「あぁそうだなっ! でも、そこは言わないでくれっ!! 俺もマジで後悔してんだっ!!」 だからちょっと泣きそうになりながら答えるなよっ! 確かにどっかのスピードみたいに暴走しまくってるけどさっ!! や、やばい。下手したらこれ・・・・・・大事故起こすんじゃ。やばい、魔法使ってでも逃げたい。 「恭文君っ! あなたの力でなんとかならないのっ!?」 「僕一人だけ脱出していいならっ!!」 「却下よっ! こうなったら死なばもろともよっ!!」 「なら無理っ! そしておのれらと心中したくないんですけどっ!?」 そしてバスは、またもや右に曲がる。そのまま数中メートル進んでいく。 そのあいだに唯世がゆっくりと・・・・・・ゆっくりとした足取りで動き始める。 席から立ち上がって、回しかけていた目に強い意志を宿しながら運転席へ行く。 おぉ、さすがキング。この状況を何とかしようとしてるんだね。 「大丈夫ですよ、先生」 うんうん、冴木のぶ子の肩になんて手を当てて優しく声を・・・・・・え、なんかおかしくない? 「きっと当たっていますから。それに、運転もお上手です。 とてもペーパードライバーとは思えません。まるで映画のスタントマンのようです」 「そ、そう?」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・唯世ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! 頼むから空気と状況と道理関係を読めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! おのれは一体どこのスバルっ!? なんでそこで頑張って飴あげちゃうのっ!? そこは鞭でしょうがっ!! 例え心が痛くても、鞭をあげなくちゃいけないんだよっ!! ほらっ! なんか喜んでるしっ!! 「・・・・・・おじいさま」 「なにっ!?」 「前を見てください」 「え?」 話したりツッコミ入れてる間に、状況は最終局面へと突入した。 咲耶に言われるままに目の前を見ると、そこには階段・・・・・・っておいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! 目の前には階段。うん、ブッチギリで階段だよ。 ただし、ちょっと都会のほうにあるような広めの空間にある坂が階段の形を取っていて、手すりやなんかはない。 だから、広さ的には十分バスは通れる。通れるんだけど・・・・・・危ないのには変わりない。 や、やばいっ! なんかポツンと一人だけ人影が見えるんですけどっ!? このままじゃ轢くっ!! 「やば・・・・・・止まってっ! 殺人犯になりたくなかったら、すぐに止まれっ!!」 「ブレーキどっちっ!?」 え、まずそこからっ!? どんだけペーパーなんだよっ!! あぁもうしゃあないっ! ブレーキは。 「えぇい、こっちよっ!!」 冴木のぶ子さんの必死な声を聞いて、寒気が走った。 それは戦ってる時、命の危険に晒された時に感じる特有の寒気。 僕は瞬間的に左側のリインと右側の歌唄の頭を抱えて、身を固めた。 次の瞬間、凄まじい衝撃と振動がバスを襲った。 そしてそのまま100メートル以上はあったであろう階段を走り、上りきった。 上りきってから・・・・・・数瞬の浮遊感を感じる。僅かに身体が浮きそうにもなった。 それから、何かに叩きつけられるような落下の振動。 そこからまた数メートル走ってバスは、ようやく停止してくれた。 僕は二人を抱えながら、改めて顔を上げる。 そして運転席の方を見ると、空海が運転席の近くに居た。 「先生・・・・・・ブレーキは、逆だ」 空海、ブレーキ踏んづけて止めてくれたんだ。空海すげーよ。あの状況であれはすげーよ。 「・・・・・・みんな、生きてる?」 「な、なんとか」 「やや、もう・・・・・・だめ」 「あたしも」 なら安心だ。人間、ダメって思えるうちはまだなんとかなるのよ。 そして、僕は周りも見る。・・・・・・咲耶も大丈夫だね。 「うーん、中々に楽しかったですね。ただ、私はもう少しハードな方が好みなのですが」 よし、このアマは後でぶん殴る。ここは絶対に絶対だ。後は両脇の二人だね。 「リイン、歌唄、大丈夫?」 「な、なんとか。でもでも、ちょっと川が見えました」 「・・・・・・あの、離して」 歌唄がどこか気まずそうに言って来た。なので、僕は両手を離す。 それでリインも歌唄も顔を上げる。二人共怪我は無いみたい。 「あの、ありがと」 「な、なにが?」 「守ろうとしてくれたから、一応お礼」 「いいよ、そんなの」 「よくないわよ。私、これ以上アンタに借り作りたくないの。私達、敵同士なのよ?」 ・・・・・・ここまで状況に乗っかっておいて、そこを今更言うっておかしくない? いや、真面目にそう思うの。 「大丈夫。歌唄がここから一気に僕のシンパになってくれれば、問題解決だよ」 「そう。だったらその可能性はないわね。私、男に頼った生き方するの嫌いだから」 「・・・・・・やっぱり息がぴったりですわね」 「咲耶、さっきからおかしいのですよ? なんでそんな納得しまくりなのですか」 「リインさま、気になさらずに」 とにかく僕達はふらつきながらもバスから降りる。 なお、僕は泡吹きかけていた冴木のぶ子さんを担いだ上で・・・・・・って、重いよこれ。 そうして通ってきた道を見て、驚いた。いや、とにもかくにも驚いた。 「・・・・・・恭文さん」 「あなた、一流の霊感持ってるわ。ありがと」 「・・・・・・え?」 そのまま、僕はバスの傍らに意識が途切れ途切れで泡を吹いてる冴木のぶ子さんを降ろす。 そして振り向いて、左手から蒼いベルトを取り出す。それは僕専用のDEN-Oベルト。 それを即座に腰に装着しつつ、僕はさっき窓から見えた奴の・・・・・・そう、奴の方へと歩いていく。 奴はメガネはかけていないけど、ノーネクタイの白と淡いブラウンのスーツを羽織っている。 そしてそれよりも濃い色で、あまり手入れされていないちょっと長めの天パー気味なブラウンの髪。 両手で抱えるようにして持っているのは、黒いアタッシュケース。 僕達がバスで駆け上がった階段の真ん中で、腰を抜かしたように蹲ってこっちを見てる。 ”咲耶、場合によってはアクセルフォーム行くよ。準備だけはしておいて” ”了解です、おじいさま” で、更に右手からパスを取り出し、開いてカードスロットを展開。そこに左手からどこからともなく取り出したカードを挿入。 ≪Sound Ride&Attack Ride&Fusion Ride Sakuya Set up≫ まぁまぁ確かに色々問題はあったけど、探し物は・・・・・・確かにここにあった。 「・・・・・・やっほー。二階堂、奇遇だね」 「に、二階堂先生っ!?」 「や、やぁ・・・・・・ガーディアンのみんな。よくここが分かったね」 探し物は・・・・・・ぶっ飛ばしたい奴は、確かにここに居たのだ。 「当然でしょ。でも、生きてたんだ。残念だなぁ。 せっかくミンチにしてやろうと思って、全速力で階段かけ上がったのに」 その言葉に二階堂が僅かに顔を青くした。なお、これはハッタリ。まぁ、これくらいはね? 「ふん、ずいぶん減らず口を叩くね。あんまりそういう強がりはしないほうがいいよ? 簡単にボロが出るんだから」 「強がり? ・・・・・・なんなら、試してやろうか」 「出来るかな?」 ニヤリといやらしい笑みを浮かべながら、二階堂は立ち上がる。 それから両手に抱えるように持ったアタッシュケースを開くと、その中にはたまごが四つ。 三つはラン達のたまご。もう一つは・・・・・・×たま。 アレが誰のかなんて、考えるまでもないね。 「ラン、ミキ、スゥっ!!」 「・・・・・・あむちゃんっ!!」 ハート型の装飾がされたたまごの中からランの声がした。 バッテンのテープが貼られてて、そのせいでたまごから出られない様子。 けどどうやら、また『調理』とやらはされてないらしい。 その様子に、みんな一様に安心の表情を浮かべる。ただ・・・・・・まだ、安堵は出来ない。 「おっと、動かないでよ? 動いたら、たまごを割っちゃうから」 二階堂が右手でアタッシュケースの中に手を伸ばす振りをして、にやにやと笑いながらこちらを威嚇する。 「人質・・・・・・いえ、キャラ質ですか。卑劣ですわね」 「ふん、なんとでも言え」 「えぇ、なんとでも言うわよ。二階堂さん、あなたちょっと・・・・・・ううん、すごくかっこ悪いわよ? ×タマもこの子のしゅごキャラも、エンブリオでもないなら必要ないでしょ。弱いものいじめ、もうやめなよ」 歌唄が前に出てそう言うと、二階堂のやつ、おかしそうに笑い出した。 「・・・・・・くくく」 「あなた、なにがおかしいですか」 「おかしいさ。だってあまりにズレてるんだもの。僕にとっては、たまごを奪う事自体が楽しくて楽しくて仕方ないんだよ。 現実を見もしないで夢だの希望だの、浮かれた事を言ってるバカな子ども達のたまごをさ・・・・・・奪うんだ。それが楽しいんだよ」 コイツ、心底楽しそうに笑いながら言い切りやがった。 また典型的な小悪党だな。もうオーラからしてそれだし。でも、納得した。 こういう精神構造だったから、あの発言になると。 そして思った。コイツには話し合いは無理だ。コイツは、今の自分の立場が全く分かってない。 「それに、全く必要ないってわけじゃない。 この子達には僕の料理の材料になってもらうんだ。アレを完成させるためにね」 アレ? ・・・・・・もしかしたら、咲耶の推測当たってるのかも。 「まぁ、あなたが何をしようとしてるのかは分かりませんわ。 でもあなた、もうたまごを返した方がいいですよ? そうでなければ、生きながらにして地獄を見ます」 「ですです。あなた、別に格闘術とか出来るわけでもなければ特殊な能力もないですよね? だったら、もうその辺りで降参するのがおりこうさんです」 「地獄? おりこうさん? ふん、君達バカでしょ。この状況で優位なのは僕なのに、なんでそんな事する必要があるのさ。。 ・・・・・・あぁ、返してあげない事もないかな。ね、蒼凪君。いきなりだけど土下座してよ」 どうやら本当に自分の立場が分かってないらしい。だから僕は、少しスイッチを入れる。 「ほら、この間偉そうな事言ったでしょ? だから、土下座してよ。 『二階堂様申し訳ありませんでした』ってさ。そうすれば」 ≪Stinger Ray≫ 僕が瞬間的に上げた左腕の右人差し指から、光が飛ぶ。 それが二階堂の左の頬を切り裂いた。そこから赤い血が、ゆっくりとその切り口から流れ出る。 「・・・・・・え?」 その血の赤さ故に、場が固まる。・・・・・・血を流し続ける左の頬に指を当てて、その指を見る。 指に付いた赤い液体を見て呆然とする二階堂に左の指を差しながら、僕はニコリと笑って言葉を続ける。 「勘違いしてんじゃねぇよ、このド三流が。お前、自分の立場をわかってないだろ。 お前なんざ、殺そうと思えば・・・・・・0コンマ何秒の間に殺せるんだよ」 そのまま僕が睨みつけると、二階堂の身体に震えが走る。それを僕の目は見逃す事はなかった。 ・・・・・・アクセルフォーム使う前に、多少威圧して動きを鈍くする必要があるね。じゃないと、やりにくくてしょうがない。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ なにあれ、なんか、恭文が凄い怖い目してて・・・・・・ううん、違う。 なんか、空気まで重くなるような怖い感じが・・・・・・! だめ、震え止まらないっ!! 「・・・・・・愚かですわ、せっかく救いの糸を出してあげたというのに」 「もう普通にやったんじゃ止められないですよ?」 「止める必要もないでしょう。悪党に容赦する義理立てなど、私達には存在しません」 「それもそうですね」 咲耶さんとリインちゃんが小さく呟く。というか、結構普通にしてる。 ややなんてもう泣き出す寸前で、唯世くん達も威圧されて動けなくなってるのに。 「あの、これ・・・・・・どういう事っ!?」 「簡単ですわ。おじいさま、キレました」 「キレたって・・・・・・えぇっ!?」 [*前へ][次へ#] [戻る] |