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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Tips 『第17.5話/一番強い武器』




とまとシリーズ×『ひぐらしのなく頃に』クロス小説。

とある魔導師と古き鉄の戦い〜澪尽し編〜

Tips 『第17.5話/一番強い武器』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


それは、母さん達が出る前に……マジで行われた感想戦。

やすっちとアルトアイゼンは実にいい笑顔で、『なんで園崎がへぼなのか』と切り出したわけで。

やすっちによって修繕された大広間にて、母さんと婆っちゃ、葛西は実に苦い顔をしていた。


「プロから講習を受けられるなんて、滅多(めった)にありませんからねぇ。泣いて感謝してください」

「言われなくても泣きそうだよ。こんな性格の悪い奴らがこの世に生まれ落ちていた絶望でさぁ……!」

「そんな……さすがの僕も、終わったらノーサイドですって。そこまでは罵りませんって」

≪そうですよ。人間は間違えても、反省して前に進むことができるんですから≫


自分達のこととは一切視野に入れていない言いぐさに、母さんもさすがに唖然(あぜん)。

いや、その……うん、この二人は『自分達がカッコよすぎる良識派』という妄想に取り憑(つ)かれているので。

ある意味デフォルトな雛見沢症候群患者とも言える。恐らく監督でも治せないと思う。


「……それで蒼凪さん、我々のどこが問題だったんでしょうか」

「全てです」

「全て……とは」

≪では私から説明しましょう。……下手に手数を増やしたために、葛西さんも迂闊(うかつ)な射撃(手出し)ができなかった。
散弾銃を持ちだした後は特に顕著……なお、雑魚組員達も同じくです。この人が敵陣中心に陣取ったので、誤射を恐れて積極的攻撃ができなかった≫


そこで葛西は息を飲み、婆っちゃも恥辱で目を見開く。


それはそうだ。年若いバーサーカーに、駒の運用を説教され始めたんだから。

数十年……数百年に亘(わた)ってこの村を守ってきた一族からすれば、その経歴を侮辱されたも同然だろう。


≪茜さんもこの人が適当な奴らを盾にしていくから、効果的な突撃や攻撃が逐一遮られる。
というか……その茜さんが飛び込むからこそ、組員達は余計に誤射を恐れ、半端な攻撃しかできない≫

「まさか、負けに行ったというのは……」

≪その隙(すき)をこの人が突いていくから、茜さんも手傷を負い、全力で戦えなくなった。
その上あなたも、お魎さんも、茜さんも、その辺りを改善できる指示は一切出さなかった。
”長として”きちんと統率を取らなかったせいで、揃(そろ)いも揃(そろ)って殺されていましたよ? ……私達が本気なら≫

「というか……もともとの話をすれば、魅音達や茜さん達をこの場から離そうとすらしなかったのもアウト。
射線上に入るよう動いたら、揃(そろ)って動きが鈍くなりますし」

「あんた、正気かい! そんな真似(まね)して、万が一魅音達に当たったら」

「えぇ。だから茜さん達を盾にしてたんですよ」


そこで母さんは呆(あき)れたと言わんばかりに、口をあんぐり。


「さっき、全てって言いましたけど……まずお魎さんと茜さんだけは外に逃がすべきでした。
なのに揃(そろ)いも揃(そろ)って突っ込んでくるってなんですか。幾ら僕達を試す意図があったとはいえ、とんでもないミスですよ」

「そうやって盾に使われた場合や、人質に取られた場合のデメリットを考えると……思い返すと首を括(くく)りたい気持ちです」

「だから聞いたでしょ。自分より強い相手に勝つためには――って」

「みぃ……恭文、それは何なのですか。茜が言ったように矛盾しているのです」

「その矛盾を解決する問いがあるんだよ。……これ、アルトの元マスターで、先生第一号の友達から教わったことでね。つまり」


やすっちはメモ帳を取り出し、さらさらとある一文を書き込み、見せてくる。


「こうすれば、矛盾は解けるんだよ」

――自分より”総合力で勝る”強い相手に勝つためには、相手より強く”得意な武器が”なければならない――

「総合力……得意な、武器?」

「とことん鍛え上げ、どんな相手だろうと絶対に負けない……そう言える武器をぶつけるのよ。
……例えば沙都子だ。数と権力じゃあ園崎にも、山狗にも劣る。でも双方が持ち得ない、トラップ山という広大なフィールドがあるでしょ」

「あ……!」


それは昨日も話したことだ。だから梨花ちゃんは息を飲んで察する。

この矛盾を解くことこそが、私達に必要な答えでもあったのだと。


「魅音なら園崎家頭首として培った、長(おさ)としての統率能力。圭一なら固有結界とも称される口の上手(うま)さ。
レナなら高い身体能力と前線指揮官として十分な判断力……でも単独で勝てるってわけでもない」

「そうです! 山狗も、鷹野達も強大……だったら、やっぱり矛盾しています!」

「だから各々が得意な武器を持ち寄り、一緒に戦おうって話をしたんでしょうが。で……」

「なら茜達は! 茜達だって、園崎の一番得意な武器≪数と暴力≫を振るいました! だったら恭文が勝てるはずないのです!」

「人の話は最後まで聞こうか。……確かに、数という点では僕は園崎に勝てない。鹿骨界わいでの権力関係でも同じ」

「そうです! だから」

「でもガチな戦闘訓練もなく、僕に対抗できる異能力もない。暴力の密度で言えば僕達が上……だから、力だけで園崎を潰せる」


それはまた手痛い指摘だ。確かにね、以前園崎家は軍事演習も受けたよ。でも……それは戦って勝つためのものじゃない。

指揮や負傷者救助・治療などが中心だし、そんなガチなわけでもない。それが示す事実に、梨花ちゃんも絶句する。

本当に……ガチに鍛えている人達と≪田舎のチンピラ≫では、それだけの差があるってことにさ。


もちろんやすっちも、そんなことはホイホイしない。うちは確かにスネに傷もあるけど、いきなり暴れたらただの押し入り強盗だもの。

でも、そういう……常識とか、法的な制限がなかったら? 園崎と敵対する流れができてしまったら?

それも暴力も視野に入るほど険悪に……さっき、母さん達は刀を抜きかけ、そう警告した。


これ以上好き勝手をすれば……ってさ。これは単純な脅しじゃあない。……抑止力という概念は有名だと思う。

相手を殴れば、同じだけ……又はそれ以上の力で殴られる。国家間の間で大規模な武力衝突が控えられたのは、この概念によるものだ。

つまり母さん達の警告は、お互いにただでは済まないという意味も含んでいた。勘違いだったんだけどさ。


……園崎とやすっち達に限れば、抑止力など存在しない。

園崎が力を振るえば、やすっちはそれ以上の力で……暴力だけで園崎を壊せる。

話し合いの余地もなく、その意味もなく、ただただ蹂躙(じゅうりん)を行って、破砕する。


まぁそれがやすっちだけの話であれば、『第二種忍者で異能力者は凄(すご)いネー』という身も蓋もない結論になるんだけど……そんなわけがない。


「というかこれ、山狗連中も恐らくは実践できることだよ」

「な……!?」

≪梨花さん……そこで驚くのはないでしょうに。相手が実戦経験者なのは知っていたでしょ≫

「しかも対異能力戦は、経験がものを言う世界だ。力の内容によっては接触致死……ようは触れただけで終わるものもあるしね。
不用意に飛び込んで、自分の刀を折られるようじゃあ全く駄目ってことだよ」

「おば様のことだね。……でも、そんなに尖(とが)った力もあるんだ」

「そりゃあもう。相手の能力をリアルタイムで……それも素早く考察し、対応する力が必要になる。
だから必要な材料……考察するための知識と経験、それに解決策を実行できるだけの地力を、訓練で揃(そろ)えておくのよ」


……まぁもう分かり切ったことだけど、あえてもう一度……今日のやすっちは『仮想山狗』なんだよ。

やすっちは飽くまでも、『ガチな戦闘経験者』の一例。もちろん異能力者のサンプルってだけだ。

わたしらの獲物は……婆っちゃ達が、自分達だけでたたき潰すと曰(のたま)った相手は、その二つの要素を兼ね備えているわけだしさ。


それが数と暴力を備えた、雛見沢(ひなみざわ)の最大勢力≪園崎家≫で押さえ込めるかどうか。それを試したとも言える。

その辺りは、改めて梨花ちゃん達にも伝わったようで……。


「なら余計にこの結果は見過ごせませんね。……そもそも鬼婆(おにばば)と母さん達には、山狗達に対するだけの指揮能力がないって話ですし」

「だからこっちを脅して試すとか、ホントお門違いもいいところなわけだ。繰り返しになるかもだけど、むしろ試したのは僕達だもの」

「……く!」


だから母さんは痛むはずの拳を振り上げ、畳を殴りつける。それは、どうしようもない完全敗北だった。


「……だが恭文、そんな相手に……本当に沙都子のトラップ山で」

「鍵の一つとしてなら通用する。……今も言った通り、連携戦には相応の時間をかける必要がある。でも、今はそれを確保できる」

「そうして俺達の一番強いところを、百パーセント……いいや、それ以上に燃えたぎらせた上で、重ねてぶつける……!」

「経験が物を言う対異能力戦でも、その準備を十分に積み重ねている恭文さんがおられますわ。
ただわたくし達にはそのノウハウがありませんから、連携するのであれば御教授いただかないと」

≪私達は逆にトラップ山……雛見沢(ひなみざわ)での局地戦に必要なものが欠けています。それをお互いに埋め合えば、面白いことができますよ≫

「でも……今日の茜さんや園崎の面々は、それができなかったときの僕達でもある。気を引き締めていかないとね」


でも、その姿をやすっちはあざ笑うこともない。


……実戦経験者でもあるやすっちが一番分かっているしね、それくらいヤバい相手ってのはさ。

それでも笑って、ゲームを楽しむみたいに自分を奮い立たせているだけ。だから……改めて戒めてもいた。


「とはいえ一般人を巻き込むのはちょーっと忍びないので……えっと、圭一をヒナミザワレッドにして……あ、僕はヒナミザワブルーね?」

「戦隊もの!? 戦隊ものか! おま、それで巻き込んでよしってことか!」

「……蒼凪さん、それはさすがに……大人として見過ごせないのですが」

「親としても見過ごせないよ! せめてまともに許可を取りな!」

「よぉし分かった! ならば元祖部長として許可するよ! 設定も今すぐに考えて」

「そんな許可もいらないんだよ! この馬鹿娘がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


――とまぁ、こんな感じで『半端物は出しゃばるな』と改めて釘(くぎ)を刺した上で、各々の荷物を客間に置く。

それで泊まり支度を済ませて一時間後……お昼も間近に迫ったところで、やすっちを自室に呼びつける。

決して女の子らしくない、ゲーム機やボードゲームがひしめく中、辺りを窺(うかが)いつつ戸締まりして……っと。


まぁふすまを閉める程度だけど、それでもね。ここからは聞かれたくないことだし。


「やすっち、ほんとありがと……! 特に家を壊さないでいてくれたのとか!」

「さすがに悪いし、異変を丸わかりもアレだしね。でもあんな感じでよかった?」

「バッチリ。……これで婆っちゃと母さん達も、自分から村の淀(よど)みを払おうとするだろうしね」

「新しい風理論は納得がいかなかったと」

「そうでもないよ。ただ……今、この好機を逃したくないんだ。婆っちゃ達には悪いけど、貧乏くじを引いてもらう」


祟(たた)りの後押しをしたのは、間違いなく園崎家なんだ。でももうそんなことは止めなきゃいけない。

わたしらが成長するまでなんて待っていられない。沙都子の一件で思い知った……そんな暇はない。

だから、ここで主導権を握れば……って思ってたんだ。そのためにやすっちには無茶(むちゃ)をさせちゃったよ。


だから本当に感謝だ。それを受け止め、苦笑しているやすっちには頭を下げる。


「苦しいところだねぇ、お互いに」

「苦しいさ。……前にね、婆っちゃの検診に監督がきたとき、石臼の話をしてたんだよ」

「石臼?」

「石臼って、動かすのに最初は大きな力が必要でしょ? でも勢いが付いたらさほどでもない……政(まつりごと)も同じ。
前例主義もそうだけど、その力を集めるまでが大変だ。たくさんの手が必要になるからね。それで……一度動き出した石臼は、簡単に止まらない」


それは言い得て妙……というか、雛見沢(ひなみざわ)の現状そのままだった。

……鬼ヶ淵死守同盟を結成し、まとめ上げ、雛見沢(ひなみざわ)を守る力とした。でも、そのために随分と無茶(むちゃ)もした。

北条家のことだけじゃあない。村人達にも随分と負担をかけた。にもかかわらずずっと……ずっと続けているんだ。


そういうことへのたとえ話なのは、やすっちもすぐ理解してくれた。


「まぁあれだ……みんなで幸せになろうか」

「……だね」

「魅音と圭一の結婚式には、是非お祝いを贈りたいし」

「けっこぉ!?」

「テントウムシのサンバ、うたうよ? あ、サントワマミーの方がいいかな」

「それは絶対駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇ! というか、けっこ、けこ……けっこー!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


大石の旦那と面白い話もできて、本当にスッキリした。なので……まぁお灸を据える意味も込めて、詩音にはネタばらし。

あれは負けるのも覚悟の上で、わざと暴れたって話をしたら……面白いくらいに目を見開いてねぇ。


「母さん……馬鹿なんですか! それで怪我(けが)したんですか!」

「馬鹿って言うなよ。あの子らが殺すつもりはないって言ったし、技量も見た上で実行したからね?」

「それでも馬鹿でしょ! やっちゃんが殺る気だったらどうしたんですか!」

「さすがにそれくらいは見れば分かるよ。ただまぁ……そうだね、本当に馬鹿なんだよ」


右の後部ドアに軽く頬杖を突いて、流れる初夏の景色を見やる。それだけで鬱屈とした気持ちが晴れると思うほど、空と山々の色は清々(すがすが)しかった。


「あの子はアンタ達の切り札になるんだろ? その実力を見て起きたかったってのが一つ」

「……それでも、試練もおこがましいほどの経験・実力差を突きつけられましたが」

「それはねぇ」


実際……一番強いところをって話には、頭をハンマーで殴られたような衝撃があった。

知らず知らずに実践していたはずなのに、あのときは……そうだね、わたしらが頭失格なのは変わらない。

結局組員達をそれに巻き込んじまった。きっと心のどこかでは、本気で思ってたんだよ。それを捨てきれなかった。


……この件を利用すれば、雛見沢(ひなみざわ)をもっと発展させられる。園崎がそれを成せるってさ。


だから、これは負け惜しみに近い。

騙(だま)した騙(だま)されたっていうより、後出しジャンケンみたいな言い訳だった。


「それで……キッカケが、欲しかったんだろうね」

「キッカケ?」

「私らのやり方が古くて弱い、村を襲う危機すら守れないもんだって……誰かに、力尽くで突きつけられたかったんだよ」


そう口にすると、詩音が小さく息を飲む。……私らは自分から変わる勇気をなくしていた。

そうして祟(たた)りを助長させ、年端もいかない子どもに叔母を殺させた。とても重い……拭いきれない罪さ。

なのに私も、母さんも、葛西も……それを病気の話で、祟(たた)りの根源が病気だって話で悟りながら、あの子に詫(わ)びることすらできなかった。


あの子達が狙っているところも何となく分かっていたのに、欲も捨てきれなかった。確かに私らは半端物だ。

結局あの子や魅音を利用して、組員達も巻き込んで……ようやく、ようやく堂々とおはぎを届けられた……それだけだしねぇ。


本当なら魅音や前原君達が成長して……と思ったけど、考えを改めた。だってさ、あの子だって村の外から流れ込んできた風だろ?

だったら、あの自分勝手で気ままな風に振り回されるのもいいかもって……の結果が御覧の有様さ。



「でも、これからはそうも言ってられない。アンタらに雛見沢(ひなみざわ)を託すまでに、わたしらもどんどん変わっていかなきゃ」

「……えぇ」

「……結局なんなんですか、それ。負け惜しみでもあり、言い訳でもあり、してやったりでもあり……じゃあのドンパチって」

「そうだねぇ……淀(よど)みを底の底から弾(はじ)けさせるため、ぶち込んだ爆薬ってところかい?」


結局のところ、私らは……大人も子どもも、最初から望んでいたんだよ。

この状況をぶち壊しにするだけの破壊力を……勢い任せでも、こっちのケツに火を付けてくれる≪起爆剤≫を。


蒼凪恭文……それにアルトアイゼンだっけ。いい子達じゃないか。前原くんとはタイプが違うけど、行動力に溢(あふ)れてる。

魅音達に相手がいなきゃ、どっちかに嫁がせてもよかったんだけどねぇ。


……あの子達なら大丈夫だ。

力云々(うんぬん)じゃないよ。私も、葛西も、母さんだって、ある一点は文句なしだって最初から思ってた。

顔も知らない組員達の命まで心配して、自分の異能を晒(さら)してまで警告して……しかも、村のために命まで賭けるときたもんだ。


変われない私らや、変わっていくあの子達のために……そんな、損得を超えた優しいところはさ。

そんな子達ならきっと、魅音達を理不尽に利用することはない。戦うのなら一緒に命を賭けていく。


あとは……私ら大人が油断せず、様子を見守るだけさ。そこはきちんとしないとね。


差し当たっては――。


「……詩音、魅音が言っていた御当地ヒーローってのは……本当にあるのかい」

「あるみたいですよ。御当地の名産を狙う悪党に、敢然と立ち向かうって体で……ようは観光PRの一環ですよ」


いや、あの……雛見沢(ひなみざわ)レッドやらなんかを、マジで考え始めてるんだよ。魅音の馬鹿が……!

さすがにないと思ったら、逆に蒼凪君共々『アリ!』って言われる羽目になった。


なお、母さんはその話を真に受けて。


――レッド……ブルー……ピンク……――


と、呟(つぶや)いていた。それが溜(た)まらなく恐ろしく感じたよ。


「私さ、あれだけは止めなきゃ駄目だって……思うんだよ。今回の件はもうお任せだけどさ、あれだけは……ね」

「まぁまぁ。それにほら、母さんもやっちゃんに『だったらヒナミザワピンク』って言われて嬉(うれ)しそうだったじゃないですか」

「そりゃあまぁねぇ。まだまだ私も若い奴には負けないってことだよ」

「……茜さん、さすがにそれは」

「なんだい、アンタは不満なのかい」

「はぁ……戦隊もののヒーローでも、茜さんくらいの年齢でピンクをやっている人はいないので」

「葛西……!?」


葛西とは、しっかりとした話し合いが必要だと思う。それはもう、念入りに……念入りにねぇ……!

つーかふざけんじゃないよ! 私だってまだまだ……まだまだいけるさ! ピンク!? あぁそうだよ、私はどこもかしこもピンクさ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


圭ちゃんとの未来……やっぱ、今は想像できない。なので一旦置いておこうと思う。

その前にやすっちだよ。……やすっちには、ある重要な点を確認しておきたくて。


「……やすっち、梨花ちゃんのことは」

「間違いない。実際分かりやすく反応していたもの」

「だよね……」


――――――結論から言おう。

梨花ちゃんは鷹野に対して同情し始めている。

気づいたのは……改めて『東京(とうきょう)』の状況に考察したときかな。ほら、やすっちも言ってたでしょ。


――三年後に終わる、三か月後に終わる、三日後に終わる――期間が違うだけで、結局ゴールは定められているよね。
それって聞いた本人にとっては、結局同じことなんじゃないかな――


そのとき、梨花ちゃんの表情……その変化が余りに重くてさ。中二病の痛みに呻(うめ)きながら、凄(すご)く気になったんだ。

それがずーっと引っかかっていて、一体なんだろうなーって思って……ようやく気づいた。


……鷹野は、梨花ちゃんと同じなんだって。


おじいちゃんから受け継いだ研究を形にするため、生涯の全てをかけて戦い抜いた。

その結果訪れた終焉(しゅうえん)にも、必死に抗(あらが)おうとした鷹野。


予言という滅びの未来を覆すため、幼いながらも一人で戦い続けてきた梨花ちゃん。


二人とも、困難な運命を打破しようと必死に抗(あらが)っていた。定められたゴールを覆そうと全力だった。


しかも鷹野自身も悪行に手を染めているとはいえ、今回についてはトカゲの尻尾に仕立て上げられた被害者でもある。

だから……でもその迷いは悪だ。鷹野を切り捨てろって意味じゃない、そうやってまた一人でウジウジ悩んでいるのが悪だ。


ならどうする? きっかけを与えればいい。母さん達も馬鹿をやってくれたし……があああああああ!

でもどうしよう。まさかそれで加減をするとか、無理だしさぁ。相手は重火器を装備したプロの特殊部隊。

やすっちが今日教えてくれた兵法も鑑みると、やっぱり……そもそもそれだけの技量差もないわけで。


「どうしようか」

「そうだねぇ……わたしとしてはさ」


そう言いかけて止まるけど、まずは……部長として、一番動くことになる実行部長と方針を定める……そこを徹底させてもらう。


「梨花ちゃんが加減しろとか、殺さないでほしいって言われても、約束はできない。こっちも命がけだもの」

「うん」

「個人的感情を言えば、鷹野を許すこともできない。幾ら何でもこれで村を壊滅って、洒落(しゃれ)が効いてないもの。
……でも……でもね、それはわたしの感情だ。わたしの都合で、わたしの勝手。だから……」


わたしが都合を叫ぶように、わたしの勝手でそれを通すように、梨花ちゃんにも梨花ちゃんの勝手がある。

それは、臆病だった梨花ちゃんが勇気を持って踏み出し……ようやく掴(つか)めるものだ。わたしはそれを、横からぶち壊しにしたくない。


だってそれは……そう思っていたら、自然と迷いは晴れていて。


「梨花ちゃんが許したい、鷹野の手を取り和解したい……そう思うのなら、邪魔する権利はないと思う」

「……そうだね。僕も同意見だ」

≪ただし、梨花さんに及ぶ危害は私達で払うと。面倒ですねぇ≫

「それでもお願いをさせてもらうよ。やすっち、部長……ううん、園崎魅音としてあなたに頼みたい。
……鷹野は殺さないで。山狗についても同じだ。もちろん自分の命が危ないときは、破ってくれて構わない」

「友達のお願いなら仕方ない。何とかしてみるよ」


断言してくれたことには一応の感謝。無茶(むちゃ)を言っているのはわたしだってのに……わたしも、最大限のフォローはしよう。

やすっちは異能力使用も前提に置いている。赤坂さんとかとも相談して、不都合が出ないようにしないと。

その辺りのプランも立てて……あ、結構ぎりぎりかな。


だって……綿流しはもう、すぐそこなんだから。


(――本編へ続く)






あとがき


恭文「はい、というわけで……澪尽くし編もあと少しでクライマックス。その辺りを書きつつも、番外編に回した方がいいと思ったお話とTips化。
ここからはこういうちょっとした短編の更新が多くなるかもです。じゃないと、余裕が……!」


(師匠も走り回る忙しさ。でもHP版もあまり話の長さとか気にせずやっていかないと、更新が滞るので……うん、短編中心でもいいや!)


恭文「それと鮮烈な日常Fourth Season第3巻は好評発売中。ご購入いただいたみなさん、ありがとうございました」


(ありがとうございました)


恭文「お相手は蒼凪恭文と」

古鉄≪どうも、私です。こちらは本当にやった感想戦……そしてオヤシロ戦隊ヒナミザワジャーの誕生秘話≫


(『本当に作るつもりかよ!』
『というか、オヤシロ戦隊は何を守りますの? 特産品とかありませんのに』
『そんなの決まってるじゃんー! 世界の平和を守るんだよ! 雛見沢(ひなみざわ)を飛び越え、世界というどでかい宝をね!』
『魅ぃちゃん、また……悪い夢を』)


恭文「なおVivid編の頃、ガチで作って村人達から唖然とされたのは内緒」

レナ「そこで変な未来予想図を作らないでぇ!」

恭文「いきなり出てきた……だと」

古鉄≪それは助かります。ツッコミは任せました≫

レナ「レナに任されても困るんだけど! というか無理だよ!」


(そういうわけで、Tipsなのでサクッと終了……。それでは十八話の執筆に……残り半分……半分!
アルテラサンタも確保し、宝具レベル五にもしたので、今年のクリスマスも終了ムードです。
本日のED:雛見沢(ひなみざわ)合唱団『オヤシロ戦隊ヒナミザワジャー』)


レナ「いつの間にか歌まで作ってる……!? というか合唱団って何! そんなのあったっけ!」

魅音「あ、富田岡村達に協力してもらった」

レナ「分校のみんなぁ!?」

志保「私の、テッキイッセンマン絡みみたいに……でも、これはなんですか」

恭文「単純に……本編がラストを迎える前に、やりたい話が幾つか出てきて。やっぱりTips絡みなんだけどね」

古鉄≪というわけでもしかしたら、同じ形でもう一話……今日中に短編を更新するかもしれません≫

恭文「できたらいいなー」

志保「願望ですか!」


(おしまい)





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