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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第15話 『反撃開始』


大石さんは『考えを纏(まと)めたい』とのことで、静かに場を後にした。その後も話し合いは続く。

確認しなきゃいけないことが幾つもあるしね。例えば……梨花ちゃんに敷かれている監視体制。

結論から言えば厳重なものだった。ただそれも、一種の防災訓練時以外は単なる状況観察に留(とど)めている。


でも年に数回、その体制が強くなる時期がある。緊急時に備えた防災訓練だよ。

そのときは古手家裏手の小屋に常時二名の隊員が入り、家の不在云々(うんぬん)のみならず通話関係も監視されるらしい。

その訓練の発令権限があるのは三佐以上……つまり、鷹野三四三佐なら山狗を自然な形で動かせるわけだ。


「となると……まずは梨花ちゃん、そして沙都子さんの所在からだ。梨花ちゃん、園崎本家の守(まも)りは堅いんだね」

「はいなのです。本家内部には秘密の地下祭具殿があって、そこから裏山に抜ける抜け道もあります。
魅ぃ曰(いわ)く電気や食料もあるので、核シェルターみたいなものだと」

「うん、だったらそこだね。最悪の場合に逃げ道があるのは有効だもの」

「ただ沙都子が入れるかどうかが、かなり微妙なのです」

「症候群の件を材料に、お魎さん達と交渉するしかないよ」


綿流しまで、のんびり待っている余裕はない。強引に押し通るしかない……梨花ちゃんもそこは分かっているから、苦々しく頷(うなず)く。


「大丈夫大丈夫、僕に任せてよー」

「それが一番不安だって気づいてほしいのです……! どうせまたかますんですよね! 全力投球な大戦争を!」

≪「何か問題が?」≫


小首を傾(かし)げると、梨花ちゃんが拳を握り始めた。


「というか、大戦争でも押し切らないとアウトだよ。北条悟史の件もあるんだし」

「そうでした……! 入江、やはり悟史は」

「動かすのは無理です。仮に園崎家が受け入れてくれても、彼にとってその環境は最悪そのもの。
下手をすればお魎さんや魅音さん達を……沙都子ちゃんもどうなるか」

「兄である悟史が、沙都子を敵として認識するってのかよ! いや、そういう状態ってのは梨花ちゃんから聞いている。だが……」

「やり切れないって意味なら分かるよ」


圭一は入江先生を、梨花ちゃんを非難しているわけじゃない。ただその状況が、その光景がやり切れなくて……悔しげに首を振る。

そんな圭一を慰めるように、その肩を叩(たた)く。


「……それが、雛見沢症候群の恐ろしさなのです」

「しかも致し方ないとはいえ、彼女は悟史くんのストレスでもありました」

「そのストレスを発散するため、執ように狙う可能性もあるんですね。そうなったら……自身も重度の症候群患者である沙都子は」


入江先生は僕の問いに答えない。いや、口に出すことすら憚(はばか)られるという”明確な返答”を提示した。

……そうなったら連鎖的に症候群を悪化させて、兄妹共々共倒れってわけだ。


入江先生の説明に圭一も、赤坂さんも言葉を失い、どう対応するべきかと迷い始める。


「北条悟史君は”敵のお膝元”に残すしかないんですね。最悪の場合人質として利用されるにも関わらず。
沙都子ちゃんを……連鎖的に梨花ちゃんを引っ張る餌にされかねないのに」

「申し訳ありません。私の治療が……もっと上手(うま)く進んでいれば」

「いえ、こちらこそ済みませんでした。先生を責めるつもりはなかったのですが」

≪これも梨花ちゃんから聞きましたけど、本来末期患者は予後不良ということで献体に回すとか。二人が生きていられるのもあなたの配慮があればこそ≫

「……もう全て白状しますが、去年の事件は悟史君の仕業です。犯人と言われた麻薬常習者は……私が、『東京(とうきょう)』の権力を使って」


やっぱりそういうことか。だからつい視線で”何があったんですか”と問いかけると、先生は目を閉じ、悔恨の表情で教えてくれる。


「悟史くんは自首するつもりでした。でもその前に、沙都子ちゃんが欲しがっていた熊のぬいぐるみをプレゼントしようとした。
とても大きなぬいぐるみです。一人では運びきれないので、私も車を出して手伝うことにしました。
でも……それを買って、家に戻ろうとした最中に……症状が悪化して」

「そのまま入江診療所に運んで、治療を開始したのです。ただ今も話した通り、悟史の病状は一行に良くならず……。
でも救いもありました。悟史の治療データから新しい薬ができて、それは沙都子の身体にも合ういいお薬だったのです。
……そのときの沙都子もまた、鉄平達の暴力により症状が悪化していました。でもそのお薬のおかげで……何とか今の沙都子に落ち着いて」

≪それが、私達の調べた”栄養薬”……C120だったんですね≫

「本当はすぐに回復させて、家に戻すつもりでした。いえ……それができると驕(おご)っていたんです。
それで詩音さんや沙都子さん、竜宮さん達を酷(ひど)く苦しめる結果となった。……全て、私の責任です」


……入江先生が本気で苦しみ、悔やんでいることは分かる。きっと一年……ずっと耐え続けていたんだろうね。

それでも医者として、いつかは、いつかはと願いながら。……梨花ちゃんが信じたいと思った気持ち、また少しだけ分かった。


≪さてあなた、どうします?≫

「……悟史は動かせない」

≪ですがこのままでは確実に、診療所は奴らの手に落ちる。当然悟史や先生達も人質にされるでしょう。そのとき来院していた村人達も≫

「動かせないって前提を変えるのは無理だから、そこは頭を切り換えていかなきゃ。つまり僕達に取れる手は」


……待てよ。

そう言えば鷹山さんと大下さん達が以前……そうだそうだ! あの手があった!


「……手はあるよ」

「本当なのですか!」

「先生のおかげで、奴らのシステムにも侵入できそうだしね。なので梨花ちゃん、そっちは僕に任せてくれないかな」

「ボクももう腹を決めるのですよ。あとは魅音達にどう話すか」

≪園崎本家はまだ使えませんし、一度全員で集まって考えを纏(まと)めたいですね。となると――≫

「……だったら、うちでお泊まり会でもするか?」


そこで妙案を出したのは圭一だった。


「実はな……今日から父さん達は仕事の打ち合わせで、東京(とうきょう)の方に出向くんだよ!」

「また? 確かこの間もお出かけして……おのれ、家を危うく焼きかけたじゃないのさ」

「……前原くん、何をしたの?」

「みぃ……自炊に挑戦した結果、地獄を生み出しかけたのですよ。ボクと沙都子、恭文がいなかったら大火事だったのです」

「天井や近くの壁にも焦げ後があったんで、僕とアルトで補修したんですよ。その後の様子はどうかな?」

「その節はお世話になりましたぁ! というわけで、またお世話になりたいのですがぁ!」


そして圭一は平服。全力で、心から……僕と梨花ちゃんに頭を下げていた。そんな姿に赤坂さんも何とも言えない表情になる。


「それ、おのれの都合だよね……!」

≪いや、でも不自然ではありませんよ? 盗聴関係は気をつければ問題ありませんし≫

「確かに……よし、じゃあそれでいこう。あとはそのまま、勢いで園崎本家に乗り込めば問題ナッシングだ」

「では入江先生、緊急時の連絡方法を決めておきたいのですが……これはメモをせず、暗記でお願いします」

「は、はい! よろしくお願いします!」


――こうしてそれぞれ方針を定め、勝利のために動いていく。まずは……鷹野三四達をどうやって叩(たた)くか、だね。




とまとシリーズ×『ひぐらしのなく頃に』クロス小説。

とある魔導師と古き鉄の戦い〜澪尽し編〜

第15話 『反撃開始』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――夜八時。部活メンバーは前原家に緊急招集。

沙都子と詩音はいろいろ不満そうだったけど、それも許してもらう。

というわけで僕とレナからぶっちゃけました。……あれ、漫画の話じゃないと。


更に悟史の件もバラして、荒ぶる二人は海老(えび)反(そ)り固めで鎮圧。その上で平和的に話は終わった。


「――というわけで、全員何か質問は?」


みんなが来る前に仕込み、ついさっき焼成し終えたピザ(ジャーマンスペシャル)をテーブルに置き、改めて確認です。


「恭文くん、その前に詩ぃちゃんと沙都子ちゃんが……」

「二人とも、床でごろごろしてないで起きてよ。ほらほら、ジャーマンスペシャルができたからさー」

「恭文くんのせいだよね! 海老(えび)反(そ)り固めにコブラツイストで鎮圧してたよね!」

「症候群を発症して、バーサーカーになるよりマシでしょ」

「きょ、今日は厄日……ですわ……!」

「嘘、悟史くん……でも、ごめん。詩音は海老(えび)反(そ)り固めで……汚され、ました……」

「人聞きの悪いことを言うなボケがぁ!」


見てないからね!? なんかさらけ出されていたらしいけど、さすがに目は閉じていたから! 何の問題もないよね! はい、論理的に解決ー!

――解決したので、みんなにもピザを一ピースずつ食べてもらう。まずはこれで気力回復ですよ。


「お……やすっち、これ美味(おい)しいじゃん!」

「だな! 生地のさくさくと、濃厚なジャーマンポテトの味わいが後を引く!
しかもベーコンの塩気が泣かせる! これが本当に、うちの余り食材で作られたものか!」

「圭一のお母さんは凄(すご)いね。きちんといい材料を用意していたんだから」

「みぃ……沙都子、詩音、とりあえず食べるのです。後でお説教でもなんでも、しっかり受けるので」

「えぇ、そうですわね。梨花についてはほんと……説教が必要ですもの!」

「悟史くんのこととか、朝まで語り尽くしてもらいますから……!」


それはもはや恋の領域では。そんなことを思いながらも、ピザをみんなでがつがつと食べ、一応の腹ごしらえは完了。

僕達若人はさすがにこれじゃあ足りない。だからいろいろ用意するんだー。……話し合いが終わったらね!


「まぁ園崎家次期頭首としては、いろいろと聞きたいことはあるよ。連続怪死事件が『東京(とうきょう)』と雛見沢症候群の側(がわ)から全て説明できるってとこでね。
――でも、今はなしにする。当面の問題は梨花ちゃんと沙都子の身辺保護だ。それと悟史の件だね」

「梨花ちゃま、重ね重ねの確認になりますけど……悟史くんの容体は、本当に」

「今説明した通りなのです。……あなたどころか沙都子にすら黙っていたのは、”万が一”を恐れてのこと」


そう言いかけて梨花ちゃんは結局言い訳だと断じ、自嘲しながら首を振る。


「いえ……すみませんでした」

「まぁそうですね。正直……信じられませんし、溜(た)まったもんじゃありませんよ。悟史くんと沙都子がそんな、わけの分からない病気にかかっているなんて」

「なら詩音、もう一度寄生虫の怖さを説明するけど」

「それはやめてください!」


そう言いながら資料本を取り出すと、詩音は身を引いて『ごめんだ』と言わんばかりに首と手を横に振る。

……相当怖がってたしねぇ。猫にも寄生虫がいるって知ったら、それはもう。


「でも小康状態を保っているということは、にーにーは助かる見込みがございます……のよね」

「はい。沙都子と悟史、それにボクから得た臨床データによって、治療薬の開発は進んでいますから」

「でしたら梨花や監督に事の是非を問うのは、やっぱり鷹野さんと山狗部隊を蹴散らしてからですわね。詩音さんもそれで」

「えぇ」


詩音も何とか気持ちを切り替えるものの、今度は別の意味で迷いを見せる。


「ただ……言うほど簡単じゃありませんよ。雛見沢症候群の研究規模、それにこの間予測した背景から考えて、鷹野さんはトカゲの尻尾ですから」

「言うならこちらにだけゴールがあるサッカーだね。ううん、レナ達にだけゴールが見えていないというか……」


現在の状況をそう纏(まと)めながら、レナがボクを見やる。


「ならまずは、レナ達のゴールを固めることから。恭文くん、診療所の方は問題ないんだよね」

「手はずは整えているよ。ただ……そのためには、梨花ちゃんと沙都子、レナの協力が必須だけど」

「それでしたらお任せください! にーにーのためになるのならば……でも、何をいたしますの? まさかわたくし達が常駐して、診療所を守るわけでもなし」

「さすがに危険すぎるって。あと、詳細は聞かないで……共犯扱いになると困るから」

『何をするつもり!?』


それはもう、危ないことだよ。あはははー、僕も鷹山さん達に偉そうなことは言えなくなったなー。


「そのためにもまずはお電話からだ」

「電話? PSAにですか」

「ううん……頼れる先輩達だよ」


こういう状況に備えて、もう手はずは打ってある。そろそろ届いているはずだし……さて。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


今日もハマは騒がしくも楽しい時間を積み重ねている……そんな中、突然やっちゃんから電話がかかってきた。

それもいわゆる極秘回線を使って。いきなり俺達に携帯が届いたかと思ったら、まぁまぁまぁまぁ……!


『――というわけで、明日中に雛見沢(ひなみざわ)へ来てください。そのまま護衛対象の家に入っていてほしいんです』

「……蒼凪君、分かってる? 僕達もお仕事があるの。そんな、管轄外にホイホイはいけないの」

「そうそう。というかさ、課長の許可がないと」

『既にトオル課長の許可は取っています。御安心を』

「「いつの間に!」」

『というか――内心では”楽しめる”とか思ってるくせにー』


……その言葉には、タカと顔を見合わせてつい笑ってしまう。


いやー、やっちゃんもやっぱりあれだね? 三つ子の魂百までってやつだよ。

俺達と同じで、こういう”遊び”にどっぷりハマってるのは変わらずか。


「だがお前だけでも何とかなるだろ」

『今回は無理なんですよ。梨花ちゃん達の側(そば)にいなきゃいけないし、一番の問題はその所在をどう誤魔化(ごまか)すか』

「確かにな……話通りであれば、その子達が家にいると偽装する必要がある」

「いなかったら、園崎本家か友達の家ってすぐ気づかれちゃうしね。で、その赤坂さんも東京(とうきょう)に戻ったから……俺達と」

『えぇ』

「……一応聞くが、魔法関係者は。危険はあるが、リインちゃんとかなら背格好も似てるだろ」

『向こうで今、ちょっと面倒なテロが続いてまして。その関係で誰も彼も忙しいんですよ』

「そりゃ運の悪い……」


やっちゃんもその辺り、苦肉の策って感じみたいだね。俺達だと姿を見られただけでアウトだしさ。

今のうちに入り込ませて、病気か何かで誤魔化(ごまか)してってところか。……まぁ悪い気はしない。

俺もそうだし、タカも何だかんだでやっちゃんは可愛(かわい)いし? こういう状況で頼ってくれるってのは、本当に有り難いんだよ。


それにまぁ、ドンパチもOKっていうのなら……むしろ俺達の本分だしさぁ。

ただ、先輩のメンツってもんもあって、素直に引き受けるのもちょっと躊躇(ためら)われたところで。


『大丈夫大丈夫……素敵な女性、紹介しますから』

「おいおい、気を使うのはよせよ。そもそもお前に紹介できる相手がいるのか?」

『今回はいますよー。――紫髪ロングスレンダー美女とか。それもとってもミステリアス』


……やっちゃんがとんでもなく、すばらしい条件を提示してきた。


「ミステリアス!? おい、タカ!」

「悪いね。そういう悪そうな女に興味はないの。またテロリストとかゴメンだし」

「二年前のアレ、まだ引きずってるんだ……指タッチ恐怖症は治ったのに」

「そうは言うけどな……嫌だろ!? また平和活動でテロを起こす女とかだったら!
もうね、僕もそういう年じゃないの! 家庭にはただただ平和を求めていくの!」

『ならオレンジ髪ショートで家庭的な女の子とかどうですか。ほわほわして優しい子ですよ』


食いつく俺を制したタカも、続いて出された条件にびくりと震える。


「………………家庭的?」

『えぇ、家庭的です。そうそう、金髪ショートで活発な元気っ子なんてのもいますよ? なおこちらの子、得意料理は野菜炒(いた)め……しかも美味(おい)しい!』

「最高じゃないの、それ!」

「タカ、野菜炒(いた)めに食いつくの?」

「最近、お腹(なか)周りが気になってて」

「そんなにダンディーなのに!?」

『本当なら、美人グラマラス双子姉妹も紹介したかったんですけど』

「「何!」」


やっちゃん、いつの間にそんな知り合いを! しかも双子……双子……ハーレムですかぁ! ハ王によるハーレム推進ですかぁ!


『この二人はそれぞれ特定の相手がいるので。ごめんなさい』

「あら、そうなの? そりゃ残念……いや、でもいい! それで十分だよ、君! 何……何何! 成長してるじゃないの! おじさんは嬉(うれ)しいよ!」

「待て! タカ、待てって! ……やっちゃん、一応……確認するぞ。その子達、やっちゃんのことが好きとか」

『ありませんってー。むしろどいつもこいつも、僕を遠慮なく殴ってくるんですよ?』

「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」


タカと二人、おもちゃのサルみたいにひたすら拍手……拍手! こうして、俺達の気持ちは決まった。


「ユージ」

「やったるか。トオルの許可もあるなら、五月蠅(うるさ)いことにもならないし」

「何より……ちゃんと気を使ってくれているしなぁ!」

『あ、そうそう……武器については、今回は僕から提供しますよ』

「「マジ!?」」

「最悪の場合は『入江機関とその関係者を鎮圧しろ』って言われていましてね。その絡みで装備も送っているんです。
なので追加武装として、鷹山さんと大下さん好みのを、弾薬も含めてたっぷりと――」

「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」


またまた拍手ー! もうこうなったら、可愛(かわい)い後輩のためにひと肌……脱ぐしかなかー!


「よし、俺達に任せとけ! というか蒼凪課長――ありがとうございます!

「その代わり、頼むよ? 今言った感じで……な!? 僕達、すっごい期待してるから! 蒼凪課長に期待してるから!」

「俺達、一生ついて行く! 蒼凪課長に一生ついて行くから! ね!?」

『よきにはからえー!』

「「ははー!」」


携帯に――その向こうにいる蒼凪課長へ平伏し、俺達は急ぎGT-Rへ乗り込み、雛見沢(ひなみざわ)へレッツゴー!

今からぶっ飛ばせば、夜が明ける前には何とか着くだろ! そうしたらその、美少女の部屋で寝泊まりして……問題ナッシング!


「だがユージ、お前いいのか? 寄生虫に取りつかれるとか言ってたぞ」

「問題ないんじゃないの?」

「だな。何せ俺達」

「「すっごく運がいいし!」」


なんか寄生虫とかも出てくるらしいけど大丈夫! だって俺達――核爆弾でも死ななかったしね! もう何でもこいってことさー!

というわけで、アクセルを踏み込み高速だーっしゅ! でも捕まるのは馬鹿らしいから、法定速度は遵守だ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「よし」


これで梨花ちゃん達の在宅偽装も問題なさそう。入江先生にも協力してもらって、風邪ってことにしてもらえば何とかなる。

その辺りも既に話は通しているし、二人を送り込むときだけ注意して……!


「鷹山さん達がアホ……もとい、男気に溢(あふ)れる人達で助かった」

≪あの人達は、そもそも退職金とか気にしてませんしね。……ところであなた達、どうしました?≫


おぉそうだ。なぜか僕のことを、まるで異星人でも見るかのような目で……。


「……恭文くん、さっき言ってた家庭的な子とか、ミステリアスとか……もしかしなくても」

「わたくし達のこと、ですの?」

「うん」


すると、なぜか魅音と詩音以外の全員が揃(そろ)って跳び蹴り――それを全身にくま無く受けながら、派手に床へと転げ落ちる。


「――何するの!?」

「馬鹿じゃないのかなぁ!? その人達、五十代とかなんだよね! それで中学生のレナを紹介ってぇ!」

「そうですわよ! 犯罪ではありませんか!」

「いけません! 私の目が黒いうちは、沙都子に結婚なんて……恋愛なんて持っての他です!」

「詩音さんにそんな権利はございませんわよ!?」

「でも恭文は酷(ひど)いのです。ボクのことを散々振り回しておいて、いらなくなったら他の男にポイだなんて……」

「あ、そういう……大丈夫大丈夫」


なんだなんだ、誤解していたのかー。だったら問題なしと笑って、右手をぶんぶんと振る。


「二人とも年齢相応なレディしか口説かないから。中学生とか子どものように見守るスタンスだから」

「だったらより最悪ではありませんか! 完全に騙(だま)していますわよね! 完全に嘘(うそ)っぱちですわよね!」

「いや、騙(だま)してないって。僕は正直にあるがままを言っただけだから。まぁ、もしかしたら二人が勘違いしているかもしれないけど」

「勘違いを狙っている時点でギルティだろうがぁ! というか待て! グラマラス双子姉妹ってのは……魅音と詩音のことか!
両方に相手ってことは、魅音の相手は俺ってことか! 何出会ったこともないよそ様に勘違いを広めてんだぁ!」

「やっちゃん……ありがとうございます。だったら私、頑張ります! 悟史くんがいつか目覚めたときのために」

「お前も立ち直り方がおかしいだろうが! おい魅音……お前も黙ってないで何とか言えぇ!」

「け、けけけけけけ……圭ちゃんと、恋人、恋人、恋人……くけぇー!」


あ、また魅音がショートした。詩音がもじもじする横で、ばたりと倒れちゃったよ。相変わらず回路が弱いなぁ。


「というか……恭文くんは平気なの!? レナが他の人とお付き合いしても!」

「え、でもレナは浮気者が嫌いって」

「そういうことじゃないよ! レナのスタンスじゃなくて、恭文くんの気持ちを聞いているの!
レナが他の人とデートして、き、ききききき……キスとか、エッチなことをしても平気なの!?」

「なんでそんな話に!」

「恭文くんが振ったんだよ! それよりほら、想像して! 平気なの!? 想像して確かめてみてよ!」

「まぁまぁレナさん、落ち着いてくださいよ。もっと素直に、やっちゃんとお付き合いしたいーって言えば」


その瞬間、走る光によって吹き飛ぶ詩音。あぁ、今日もレナパンは全開かー。


「詩ぃちゃんは何を言ってるのかな! レナはそういうつもりで聞いてないよ!」

「いや……そういうつもり以外に、聞こえませんから……!」

「とにかく、三人の協力で鷹山さん達は呼びつけられた。PSAから届いた装備もあるし、それも渡せば鬼に金棒だよ」

「協力というより、多大な犠牲と言うべきでしてよ?」

「……恭文、絶対ろくな死に方をしないのですよ。ボクより死亡フラグが乱立しているのです」

「大丈夫大丈夫ー。二人も課長(トオル)に十数年単位で同じことをしているから」

『むしろ自業自得ぅ!?』

≪だからその課長(トオル)も許可を出してくれたんですよ。自分の気持ちを味わえーって感じで≫


そう……課長(トオル)も散々騙(だま)された。そのヒストリーを軽く公開しよう。


「あるときは、署の保管庫から二人の銃を持ちだす羽目になり――。
あるときは、ヤクザのたまり場に乗り込んで重火器を強奪させられ――。
あるときは、米軍基地の知り合いに自ら女を紹介して、重火器類をかき集め――。
あるときは、犯罪阻止のためとはいえ銀行強盗の濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)を着せられ――。
他にもまだまだあるけど、それが課長(トオル)という間抜けな動物なんだよ」

「そこまでの目に遭っている方を、間抜けな動物呼ばわりは酷(ひど)すぎませんか!?」

「そうだよ! 普通なら縁を切るレベルだよ! というか幾つか犯罪っぽいのがあったんだけどー!」

「まぁそれでも付き合っていけるくらい、深い友情で結ばれているんだよ。そう、僕達と鷹山さん達も同じなんだ」

「さらっと自分達も問題なしって話にしたのですよ、この男……!」

≪思い出しますねぇ。ハマを四人で駆け回ったあの日々……あの星に誓いましたよね、四人であぶない刑事だと≫

「おのれ、そのときさらっと逃げようとしていたよね! 数に入ろうとすらしてないよね!」


忘れてないからねー! あの……警官達に追い回されて、割とピンチだったときのこと!

僕達のこと、さらっと見捨てようとしたこととかさー! あのときは僕達の友情にヒビが入ったと思うよー!?


「恭文、一応聞くのですけど……それならボクだけが残るのは。沙都子さえ守ってくれるのなら、ボクは問題ないのです」

「却下。おのれがキーなのに、手の届かないところに置いておくってどういう了見よ。
それにおのれもいないと、園崎家も沙都子の保護に乗りだそうとしない。絶対に拒絶反応が起こる」

「や、やすっちの言う通りだよ……」


あ、魅音が復活した。テーブルを支えに何とか立ち上がり、ティッシュで鼻血をフキフキ……。


「でもやすっち、親族として言わせてもらうけど……婆っちゃや母さんが、この話を聞いても納得するかどうか」

「僕が主導で喧嘩(けんか)を売ったらどうなる?」

「はぁ!? いやいや、そんなことをしたら、まず間違いなく切れるって!」

「切れて、どうする?」


そう聞き返すと、魅音は『そりゃあ……』と言いかけて、小さく息を飲む。


「……でもやすっち、それは」

「園崎家もこの件を悪化させた責任がある。それを、全力で取ってもらうだけのことだよ。心配ないってー」

「いや、頭首代行として心配するんだけど。というか結局力押しに走るんかい!」

「どういう、ことなのですか? いえ、大戦争なのは分かっていますけど……!」

「明日になれば分かるよ。それに、鷹山さん達が来てくれるのなら百人力だ」

≪あの人達、何だかんだで三十年近い戦闘経験がありますしね≫


そう、鷹山さん達も異能力者じゃないってだけで、めちゃんこ強い部類の人達なんだよ。

戦ってきたのも軍隊崩れやら、超巨大テロ組織やら……一般警察が相手にしないようなものばっかり。

HGSのような異能力者とも、その流れでドンパチしたとか。……というか二人だけでも山狗部隊、全滅できるんじゃ。


「だよなぁ……! つーかあのブレーメンやNETの事件を解決した≪ハマの伝説≫だろ!? むしろ今回は小物だろ!」

「みぃ……そんなに凄(すご)い刑事なのですか?」

「そりゃあもう! 鷹山刑事達もまた日本(にほん)を守ったヒーローだぞ! 下手をすれば赤坂さん以上だ!」

「赤坂、以上……!?」

「例の核爆破未遂事件についても、やっちゃんと一緒に戦って解決していますしね。むしろこういうことのベテランですよ、ベテラン」


梨花ちゃんはとても信じられない様子だった。それも当然だろう。


一つ、まず会ったこともない上に、知識が昭和(しょうわ)で止まっている。

二つ、そもそもチキンで井の中の蛙(かわず)何とやらだから。

そして三つ……あんな手でほいほいやってくる初老の男達が、そんな伝説級の刑事とはどうしても信じられない。


それも、大石さんが相当に悩んでいた退職金絡みの話もすっ飛ばして。まぁそこも、見てもらった上で……だね。


「ただ……やっちゃん、水を差すようで悪いんですけど」

「皆まで言うな」


詩音はテンションを下げて、困り気味に声を漏らす。それに対してすぐ左手で制した。


≪私達が変えられるのは、局所的闘争の結果だけ。それが盤面を大きく左右するような戦いでない限りは……基本無力ですよ≫

「えぇ。やっぱり『東京(とうきょう)』については……」

「でも、奴らとの闘争に勝利することは最低条件だ。……梨花ちゃん、しつこいようだけど改めての確認だよ。
鷹野三四は雛見沢症候群の研究に、生涯をかけて挑んでいる。それは間違いないんだよね」

「あなたに……そしてさっき、魅音達にも言った通りです。でも、どうしてまた」

「……もしかするとだけど、焚(た)きつけた奴らが潰れても……とうの本人達が止まらない可能性もある」


それは梨花ちゃんも想定していたのか、困り気味に『みぃ……』と唸(うな)った。レナ達も似たような感じで。


「確かにな。鷹野にとっては、本当に……最後の最後、舐(な)めていた奴ら全員に泡を吹かせる一手だ。
それに反対派の連中がどうこう言おうと、本当に梨花ちゃんが殺されれば――」

「だからボク達は、何が何でも鷹野一派を叩(たた)きのめさなきゃいけない。本当に最低限の勝利条件……でも、本当にそんなことが」

「できるよ」

「レナ?」

「だって、恭文くんとアルトアイゼンがいるもの」


レナは楽しげに笑って、僕の目をジッとのぞき込んでくる。


「適切なタイミングで最大効果の勝利を収めれば、盤面を大きく動かせる――それこそが≪起爆剤≫たる所以(ゆえん)だよ。
梨花ちゃんはずっと、そういうところを見てきたはずだよ? 恭文くん達という起爆剤によって、村の淀(よど)みは少しずつ変わってきた」

「それは……」

「だが起爆剤だけじゃあ足りないのも確かだ。後はそれをどう強く燃え上がらせるか……へへへ」


その笑いに圭一も乗っかって、鼻の辺りを軽く拭く。


「いやさ、不謹慎かもと思ってはいたんだが……実はさっきから、ゾクゾクしっぱなしなんだよ。
……これは俺達部活メンバーの名を、世界に轟(とどろ)かせるチャンスじゃないのか? 沙都子、お前だって秘蔵のトラップ、まだまだ隠し持ってるんだろ」

「うんうん! 沙都子ちゃんのトラップなら、山狗さんなんていちころだよ!」

「をーほほほほほほほ! そんなの当然ですわ!」


その笑いに沙都子も、魅音も、詩音も……みんなが乗っかっていった。レナと圭一という火種に煽(あお)られるかのように、みんなで燃え上がる。


「今回のこと、そのお披露目(ひろめ)としてはまさにうってつけ! 山狗だろうが大犬だろうが、このわたくしのトラップで蹴散らしてみせますわ!」

「あらら、圭ちゃん達も? 実はおじさんもねぇ……楽しみで楽しみでしょうがないんだよ。
――――梨花ちゃん、よくこれだけの敵がいることを教えてくれた!
我が雛見沢(ひなみざわ)に喧嘩(けんか)を売ってくれようとしてる奴らには、ちょっとお仕置きしないとねぇ!」

「詩音、お前も実は内心わくわくしてるだろ。アイツらを叩(たた)き伏せれば、もうお前と悟史を邪魔するものもない。
病気も時間こそかかるが、監督が絶対に治す……そう断言してくれたんだからな! あとはそのままハネムーンだ!」

「それを言われると弱いですねー! ……この部活メンバーに関わって日は浅いですけど、相応の働きはさせてもらいますよ?
”園崎姉妹の奇麗な方”に許可なく勝手をしてくれた礼は、キッチリしたいですし」


そこで派手にずっこける魅音。姉としてはいろいろ黙っていられないらしく、全力で詰め寄り始めた。


「おいこら待て! それならわたしは何!? ばっちぃ方とでも言うつもりか!」

「いえ、エロい方です。圭ちゃんという婚約者がいるので」

「むしろばっちぃ方がマシだった!?」

「しかも俺も巻き添え事故なんだが……!」

「おのれら、ほんと……まともじゃないねぇ」


さすがに呆(あき)れるしかなかった。

権力も、武力も持たない小中学生が特殊部隊と戦う……出し抜こうとする。

本来なら、僕はプロとして止めるべきだ。全部僕とアルト達に任せて、下がっていろと。


……でも僕は知っている。


「うん、でも……最初からまともじゃなかった。あんな部活でずーっと戦い続けられるんだから」

≪それこそがあなた達の”一番強いところ”――武力でもなければ、権力でもない。勝利のために思考し、あらゆる手段を尽くす勇気ですか≫

「……”全部”なんて狂ったカードを入れる恭文さんにだけは、言われたくありませんわ」

「そうそう。レナ達がまともじゃないなら、恭文君達も十分”あぶない”よ。……でも、だからこそ二人は起爆剤なんだよ。
たとえ一瞬の爆発でも、後から続く炎を呼び込める。ううん、レナ達が全力で呼び込んでいくよ」

「だから、お前達だけで……なんて言うなよ? お前達は最大戦力で突撃番長だが、結局のところ手にできるのは『一瞬の勝利』だ。
……それを俺達全員で、最高の一勝に押し上げる! そうして初めて、梨花ちゃんを……雛見沢(ひなみざわ)を救えるんだ!」

「レナ……圭一」

「くくくく……! 火種に炎! きっちり揃(そろ)っている今なら、何だってできそうだねぇ! いや、やる……やってやる!
敵は確かに強大だ! しかし打ち破るだけの甲斐(かい)がある! そしてわたしらは、泣く子も黙る部活メンバー!」


みんなは僕やアルトとは違う強さを持っている、頼れる仲間だって。

フェイトやなのは達からは感じたことのない、妙な高揚感のままに……みんなと手を重ね。


「これも今までと同じだ! 徹底的に暴れるよ! ――ありとあらゆる手段を尽くし、最高の勝利をつかみ取る!」

『おぉー!』

「みんな……ありがとう、なのです……!」


心を一つに――そう決意を改めた上で、なんか……こう……ジッとしてられなくて!


「――ピザ、二枚目を焼く!」

「あ、いいですねー! というか、三枚四枚と焼いて、前祝いと行きましょうよ!」

「俺にも手伝わせてくれ! なんか、身体の中が熱くて、ジッとしてられないんだ!」


それは、僕と……ううん、全員の気持ちだよね。

……この気持ちが正しい未来に繋(つな)がるよう、全力で頑張ろう。

僕とアルトのことも信じてくれているみんなのために……何より、僕達自身のために。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


蒼凪さん達と別れて、一人悩んでいたところ……突然垣内(かきうち)署の山沖署長から連絡がきた。

巴ちゃんもそうですけど、署長さんとも昔からの付き合いでしてね。まぁ一緒に彼女達を見守っていた旧知の仲と言いますか。

そうしたら、まぁ……! あくまでも極秘事項って口止めをされた上で、とんでもないことを教えてもらった。


「――巴ちゃんが、御両親の仇(かたき)を討った……ですって!」

『えぇ。本当に、ついさっきのことですよ。恐らく明日にはニュースで出ると思いますが、垣内(かきうち)空港に千葉の一派が潜伏していまして』

「それで、ガサ入れを」

『PSAの協力もあって、署の全精力を叩(たた)きつけましたよ。……ですが、そのキッカケは間違いなく巴くんです。
彼女が警察官として、組織の人間として……正しい形で強さを身につけていったからこそ、小競り合いの続いていた相手とも手を取り合えた』


それはつまり、垣内(かきうち)署内の派閥闘争すらもまとめ上げ、千葉一派を逮捕するために……なんて、ことだ。

いや、それが困ったとか、嫌という話ではない。小さい頃から知っているので、とても……言葉に言い表せないほど、感慨深いと言いますか……!


『本件については、警察の威信も絡んで全てが公にはされません。ですが、大石さんだけにはと思い、お電話を』

「そうでしたか……! そうか、巴ちゃんが……山沖署長、ありがとうございます」

『いえ。……そう言えば、蒼凪くんや竜宮さんはどうですか』


……あぁそっか。巴ちゃん共々、顔を合わせたんだっけ。

竜宮さんも狙われているかもしれないから、一時的に保護されて……でも苦笑気味なのはどうしてか。


「まぁ蒼凪くんについては……無鉄砲というか、大胆不敵というか。悪い大人の影響を受けまくって、遠慮なく突き進んでいますよ。
竜宮さんも今のところは問題ありません。村内にそういう気配もありませんでしたし、千葉一派の悪事も証拠が掴(つか)めたのなら……」

『それは、何よりです。……できれば彼には、巴くんのような道を進んでほしかったとは思うのですが』


それもまた驚きだった。蒼凪さんの資質は相当なものだとは思うが、山沖署長にも見初められるほどだったのか。

彼の能力ならば、相応のポストに就き、警察内部の改革も……だからこそ署長は、口惜(くちお)しいという声を漏らす。


「そりゃあ無理でしょうな。私とかと同じで、”大人”にはなれない子ですよ」

『……ですな。後は彼に寄り添う火があればいいのですが』

「火……ですか」

『巴くんや、護衛に回っている御剣さんが言っていたんですよ。彼は状況を動かす起爆剤だと――だが、一時的な爆破だけでは何も変わらない』

「なるほど、そういうことですか」


火……燃え上がり、今を変えるための火。そうですね、私は何を迷っていたのか。

……迷うことは権利であり、証明でもあった。私が積み重ねたものが、進んできた道が誇らしいからこそ、惜しくなってしまった。

それは今でも変わりませんよ。でも……巴ちゃんの快挙で、曇りが晴れた。


やっぱり私は最後の最後まで刑事で、悪を討つために戦いたい。

いえ、信じたいんだと思います。正義はちゃんとあるんだって……あぁ、それでいいんだ。

退職金は惜しい。老後の生活だって絶対に何とかしたい。それで悪も討ちたい……だったら、全部やり通すしかないでしょ!


こんなわがままな老いぼれの気持ちも、火の一つとなるのなら……!

自宅の窓から見える月に、電話の向こうにいる山沖署長に、一人の刑事として誓いを立てる。

それで明日、久々に墓参りへ行くとしましょうか。


誓いを立てるべき相手は、もう一人いるから。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


気持ちを盛り上がったところで、情熱を叩(たた)きつけるようにピザ連続作成! それをしっかり焼いて、みんなでサクサクとした食感を楽しむ。


「――やすっち、このしぐれ煮とチーズのピザ、いけるよ!」

「えぇ。しっかり味の詰まったしぐれ煮と、チーズの相性が何とも……味が膨らみますね」

「よかったー」

「でもよく思いつきますわね。完全に違うジャンルですのに」

「宅配ピザのメニューで、プルコギを載せたものがあってさ。それならしぐれ煮でも合うかなーと思って。
……あ、トーストでやっても美味(おい)しいんだよ。しぐれ煮はひき肉のそぼろとかでもいいし」

「ひき肉も美味(おい)しそうですわね! ……うちでもやりたいですわね。常備菜でしぐれ煮やそぼろはよく作りますの」

「みぃ……一気にレパートリーが広がりそうなのです」


みんなも喜んでくれて何よりだよ。レナもグッドサインを送ってくれるし……何だか嬉(うれ)しいなー。


「しかしこうなると、赤坂さんと富竹のおじ様頼みってのもつまらないねぇ」

「特に富竹さんの重要性は、番犬部隊の絡みからも向こうに知られていること。
だからこそ梨花も予言とやらで、その死を明確に見てしまっているわけですし」

「そして番犬部隊との連絡は、部外者であるわたし達では無理。となれば……」

「なぁ、こっちの状況を引っかき回して、赤坂さん達の調査に貢献ってできないか?」


魅音と二人、チーズをびよーんっと伸ばしていると……圭一がグッドアイディア! だから慌ててチーズを食べきり、全員で『それだ』と拍手を打つ。


「それだよ圭一! それなら僕達にもできる!」

「えぇ! 最高のトラップシチュエーションでしてよ!」

「……でも、ボク達にそんな手があるのでしょうか」

「あるよ。レナ達は梨花ちゃんが思っているほど無力じゃないもの。……こっちの強みはなに?
女王感染者である梨花ちゃん、その担当医でもある入江先生の協力を取り付けていること。
梨花ちゃんについては、その身柄をしっかり保護できること……本来分からない向こうの動きを、その計画を察知していることだよ」

「対してあちらの弱みは何か。さっきも少し言ったけど、マニュアル発動に必要な手順だね。
今回間宮律子が殺されたのも……今年の綿流しで富竹のおじ様が狙われるのも、恐らくそういう意図がある」

「どういうことだ、魅音」

「恐怖だよ。間宮律子の死に方が異様なのは、症候群について知っている人間なら誰でも気づくことだ。
現に大石ややすっち達はすぐに気づいた。……そこでさらに、富竹さんが”同じ死に方”をしたら?」

「恐怖により村人達の行動を律し、村から出ないよう囲い込む。そこで更に症候群絡みの事件が起きればバッチリだよね」


改めてワンピースを食べ終えてから、魅音と僕達が見やるのは……詩音だった。


「……私が渡された、あのスクラップ帳ですか。確かにあれも……もし症候群患者が一人で、思い込むままに読んでいたら」

「そこで女王感染者が死亡すれば? そりゃあ『東京(とうきょう)』の連中だって黙っていないよ。同時に納得するのさ。
……ここ最近起きていた事件は、全て≪最悪の事態≫が起こる前兆だってさ」

「そういう意味でも囲い込みなんだな。村人達だけじゃなくて、『東京(とうきょう)』って組織の思考を硬直化させる」

「そうだね。でもそれは、極めて面倒な道筋でもある。……まぁ村を丸ごと消し去るような方法だし、面倒じゃないと駄目なんだけど」

≪そしてその手順を一つでも抜かしてしまえば、奴らの計画はただの蛮行と成り下がる。
そうなっては逆に追及されるのは継続反対派……だからこそ私達で何とかできるわけですよ。雛見沢(ひなみざわ)と梨花さんという鍵を揃(そろ)って持っているんですから≫


その鍵を上手(うま)く使って、相手に揺さぶりをかけるのが僕達のトラップってわけだ。

同時にその焦りから鷹野一派が、村内で迂闊(うかつ)な行動を取れば……こちらから先手を取ることだって!


「それなら、ボクが何かの囮(おとり)になるというのは」

「却下だよ。普通にやったら、梨花ちゃんの所在も明らかになっちゃう。……さすがにこれは、裏山頼みも難しいよね」

「裏山のトラップは防衛効果こそ抜群ですけど、攻撃には不向きでしてよ?」

「本当に最後の最後、あそこに立てこもって相手を返り討ちにする……そのための場所だ」

「……今更だけど、そんな場所で自由自在に行動できるのかよ。つーか俺は無理だったんだが」

「その辺りはわたしと沙都子で指示を出していくってー。トラップの師匠として、ある程度は熟知してるしね」

「それでもある程度なんかい……!」


それはつまり、全てを網羅しているわけじゃないって……そういうことだよね!? ねぇ、そうだよね!


≪……仕方ありませんねぇ。沙都子さん、私が協力しますから、裏山のトラップマッピングを今日中に済ませましょ≫

「そうですわね。超直感による探知能力が高い恭文さん、ふだんから勘のいいレナさんはともかく、圭一さんは見事に串刺しエンド直行ですし」

「そんなヤバいトラップを作るなよ! つーか村八分にしているくせに、どうして誰も止めないんだぁ!」

「……圭ちゃん、それについては……触れない方向で。実は私も公由のおじいちゃんとかに言って、顔を思いっきり背けられたことがあって」

「村長ー!」

「ま、まぁまぁ……ほら、そのおかげで、奴らを誘い込んでの殲滅(せんめつ)戦って選択肢ができるわけだし」


圭一にはパイナップルとチーズのデザートピザを食べてもらい、機嫌を直してもらう。


「……んお! このピザもやっぱいいな! つーかチーズとパイナップルが合う!」

「うん、レナも好きだよー。チーズのコクと風味がパイナップルの酸味を上手(うま)く包み込んで、甘みだけ引き立ててる感じだよー」

「みぃ……ボクにはハイカラ過ぎて、タイムスリップした気分なのです。……詩音、これも恭文みたいに」

「えぇ。宅配ピザから発想を……沙都子、どうですか?」

「……ゲテモノかと思いましたけど、なかなかのお味ですわね」

「ふふ、ありがとうございますー! というか、圭ちゃんのお母さんには感謝ですよ! ラクレットチーズまであるなんてー!」


少々煮詰まった気持ちを、変わったデザートピザでリフレッシュ。更にドリンクもぐいっと飲み干し……全員で一息吐いた。


「……いっそ小此木造園、焼き討ちにできればいいのに」

「お前は織田信長か何かかぁ! くそ……発想は悪くないと思うんだが、何か足りないな」

「しかも攻撃意図とパターンが読めないうちは、鷹野さん達の攻撃を退けても再戦があり得る。
防衛だけならまだしも、第二波第三波と攻められたら……やっぱり弱いよ」


何か……何か引っかかってるんだよ。手はあるんだ、それは見えているんだ。

でも輪郭だけに留(とど)まっている。一体何だろう……何か手があるはずなのに……!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


どうしましょう……デザートピザで気分転換! 一気呵成(いっきかせい)に解決ー! ……とはいかなかったし。

みんなで考えあぐねて、どうしようかと迷い続けたところ……。


「……みぃー」


どこからともなく、猫の声が響く。それで自然と中庭の方を見ると、縁側に乗っかる小さな黒猫がいた。


「みぃー」


その子はまた甘い声で鳴いてから、ぱっとその場から離れる。もしかして私が見たから驚かせたのかなぁ……そう思っていると。


――大丈夫よ――

「……!?」


そこで、とても穏やかな声が頭の中に響いて。


――あなたなら……だから、導いてあげて――


導く? 私が……声の正体なんて気にせずに、ただその言葉の意味を探る。


……そうして思い出すのは、あの”悪夢”。

鬼となった私が。

何一つ理解せず、妄想の中に逃げ込んだ私が。

狂い続けながら、この穏やかな日常を台なしにしたときのこと。


でも、そのとき確かに……あぁ、そうか。


「そういう、ことか……!」


思い出したくもない夢だった。苦しくて、悲しくて、情けなくて……でもそこに希望はあった。

もしかしたらそれはあり得た世界の話で……だったら、その応用も利くかもしれない!


「梨花ちゃま」

「みぃ……どうしたのですか、詩音」

「いっぺん、死んでください」

『――はぁ!?』


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……ふぅ、今度はちゃんと上手(うま)くできたみたいね。


「みぃー!」


えぇ、ありがとう。あなたのおかげよ、ランゲツ。……でも、恭文には気づかれたかしら。


「みぃ……みぃみぃ、みぃー」


一応気をつけたけど、かぁ。えぇ、それで十分……あとは、火の付いたみんなに大まかなところをお任せかしら。


「みぃ?」


戻るタイミングは考えているわよ? そろそろネタばらしをしないと、あの子も気づかないでしょうから。

それに……鷹野については、私もたっぷりと仕返しがしたいし? くすくすくすくす……。


「みぃー!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


本来であれば、身辺調査なんて一日二日で終わることじゃない。

ただ、今回については……梨花ちゃん達が言うように、何かが動き出していた。

その予兆は確かにあったんだ。幸か不幸か、僕達は出だしで遅れることだけは避けられていた。


『もしもし――あぁ、何度もお電話をさせてしまって申し訳ありません、富竹二尉』

「いえ。それより何か分かりましたか」

『蒼凪恭文氏については、先日もお伝えした通りです』


そう、蒼凪くんの存在だ。第二種忍者である彼が派手に動いていたことは、入江機関や『東京(とうきょう)』でも既に掴(つか)んでいたことだ。

だから前々からその動きについては探っていたんだ。同時に、入江機関周囲にそれらしい要素が漏れていないかという確認もね。


……とはいえ、彼についてはさほど大したことは掴(つか)めなかったけど。

忍者の中でも相当なイレギュラーで変わり者。対異能力戦闘のエキスパートで、オカルトにも精通。

基本能力はあるのに、組織に属さない一匹狼≪フリーランス≫。ただそのせいか、様々な方面に顔が利く。戦闘要員か否かを問わずね。


曰(いわ)く決戦兵器、曰(いわ)く切り札――将棋で言うなら飛車か角。

その高い突破能力を生かし、敵の中枢に刃を突きつけるのが、彼の主な役割だ。

それはTOKYO WAR、核爆破未遂事件などをクリアしていくごとに、より鮮烈となっている様子。


……できることなら今回刃を突きつけられるのが、鷹野さんじゃないことを祈りたいけど。


「あぁ、そちらはいいんです。それより」

『……鷹野三佐については、現在調査を続けています。アルファベットの客員に迎えられる際、既に別の部署で身辺調査を行っていたようで。
その資料の引き渡しも要求しています。その後については、総員態勢で当たらせているところです。もちろんプラシルαの件も含め』

「助かります。ただ事態は相当に切迫しているように感じます。くれぐれも緊急にお願いします」

『はい、もちろんです。それと富竹二尉の依頼とは別に、本日付で入江機関への緊急内偵が命じられました。優先度最大……命令書は、幕僚長名です』

「幕僚長!? 私の調査依頼とは別に!」

『はい。飽くまでも別件となっていますが、私の見たところ……これは富竹二尉の調査に対する、トップからの強力な後押しではないかと』

「……幕僚長が、協力……」


それが何を意味するか……そう問われると、かなり難しい。

ただ一つ言えるのは、入江機関を巡る陰謀説に対し、陸自トップが十分な危険性を認識したことだけ。

TOKYO WARの反省も込みで、この手の話には過敏になっている……というのも否定はできない。


だが梨花ちゃん達が主張とするように、この陰謀の主軸が≪緊急マニュアル執行≫にあるのなら、彼らと対立する陣営はそれを止めたいはずだ。

私の調査依頼は、それを食い止めるための一歩となる。もし幕僚長が黒幕の側(がわ)なら、調査が止まるよう圧力をかけるはずなんだ。

それが後押しということは……幕僚長は敵ではなく、陰謀とは逆側に属している? もちろん千葉氏側の人間でもない。


いや、属しているかどうかも怪しい。逆側の陣営に属する黒幕から、そうするよう命じられただけかもしれない。

ということは……ということは、だ。陰謀側の陣営に嗅ぎつけられ、逆に圧力をかけられる危険性も高まっていることに。

そうなる前にどこまで調べられるか……自分には雲上の出来事など知る由もないが、そこで幕僚長というのは予想外だった。


鷹野さんの是非はともかくとして、やはり入江機関を中心に……何か、とんでもないことが動き始めているのは間違いない。


『入江機関についての調査も、急ピッチで進めています。まだ分析は終わっていませんが、入江機関内の予算に不審な動きがあるようです。
単なる書類のミスなのか、何かの工作なのかは現在、腕利きに洗わせています』

「口座に不審とはなんです?」

『はい。入江機関の運営資金用に、分配口座があるのは御存じかと思います。そこの数字が微妙に合いません。
プール金への流出、若しくは不明金流入の可能性があるとのことです。また領収書の日付にも不審な点があり、ねつ造の疑いが持たれています』


予算というのは、基本的には年度の最初に出されるものだ。

例えば『一年間に百万円がかかる』という予算書が通過したら、四月にその金額が支給され、それで一年間をやりくりする。

ただ、上手(うま)くやりくりして安く過ごせればいい……というものでもない。それならばと翌年の予算が削られかねない。


それどころか余っていた分も加味して、更に予算が削られる可能性もある。だから政治関係に限らず、与えられた予算は基本的に全て使い切る。

が、そこで悪い大人はこう考える。余った分は使ったように見せかけ貯金しようと……。

そうして前年と同じ予算をもらい、また節約して――そうしてプール金、通称『裏金』は蓄積されていく。


これが公金着服、あるいは私物化の仕掛けだ。APもこの仕掛けによって、ばく大な公金をある特定の黒幕が吸い出している。

こういう事態を防ぐため、毎年のように会計事務監査があり、裏金の制作阻止を目的として監視し続けている。

……そう言えば、番犬部隊にいるいわゆるオタク……特撮やアニメとかが大好きな子が、こんな話をしてたっけ。


とある特撮ドラマで余った予算を”爆薬”につぎ込んだところ、ラスボスを倒した際の爆発がとんでもない規模になったって……。

テレビで見ても分かるらしいんだよ。ずーっと番組を追いかけているから、今までの爆発と全然違う……それも怖いなぁ。


じゃあ閑話休題……さて、ここまでは『予算が余る』という幸せな例だ。でも、逆に足りない事態というのも起こりえる。

一年の最初に配当されるお金だからね。私生活のように貯金を崩すとかも無理だ。

よって予算報告は、支出が収入を上回ることだけはあり得ない。もしあり得たとしたら……予算配当分以外の金があるということ。


これが裏金の発覚ってやつだよ。今の入江機関は、その両方の動きが疑える状況なんだ。


前者ならまだ可愛(かわい)い……いや、駄目なことだけどね? 公金横領だもの。

でも後者の場合、今回の陰謀と絡んで面倒な話になる。それも、相当に。


「――――入江機関には、正規スポンサー以外の金が入り込んでいる」

『かもしれません』


よく分からない人もいるかもしれないので、もう一つかみ砕こう。

入江機関に何者かが金を出し、介入している……その立場を、その力を利用しているんだ。

僕は鷹野さんと山狗が造反している可能性を、調べてもらうようお願いしていた。特に問題なのが山狗だ。


蒼凪くん達にも言ったことだが……正直なところ、山狗が荷担すること自体信じられない。だが、そこで裏金の存在だ。

山狗が裏切るだけの金が動いたとするなら、この”不審な点”がその証明かもしれない。


『……あ、もしもし? 失礼……今、一件報告が来ました。富竹二尉は小泉先生を御存じですね、小泉派のトップです。
近年お亡くなりになって、派閥は瓦解しましたが……そのトップと、鷹野三佐の個人的親交については御存じでしたか』

「……高野一二三博士と小泉先生が旧友で、その関係から鷹野三佐を孫のように可愛(かわい)がっていた……そういうお話でしょうか」

『えぇ。ちなみに、そちらはどちらから』

「情けないことに、蒼凪くん達からですよ。親交自体は前々から知っていたんですが」

『そうですか……あ、いえ。それについては彼らの言う通りです。ふむ……これは興味深い内容です』


電話の向こうで彼は、着たばかりの報告を確認。その上で――ある事実を告げてくる。


『実は小泉先生の死後、その隠し口座の精算が行われたらしいのです。
ただその際、金庫番の弁護士を通さず、小泉先生御自身で下ろされた額があると判明したそうです。
時期は入江機関設立が、アルファベットで承認される半年前です』

「それは……入江機関設立の根回しに、小泉先生が使ったのでは」

『いえ、その”根回し”は弁護士が管理を任されていました。……腹心の金庫番を素通しして支払うというのは、よほどの個人的支出です』


……鷹野さんと小泉先生の個人的親交が、それに重なるということか。


「では鷹野三佐に対し、小泉先生が個人的に資金を提供したと」

『はい。こちらでもそう分析し、現在裏付けを勧めております。
先生御自身による設立根回しとは別に、個人的に……三佐へ設立工作用の現金を提供したのではないかと考えています』

「ということはつまり、鷹野三佐は『造反工作を行いうる現金』を多額に持っている可能性があるんですね」

『鷹野三佐は機関設立では、各方面への調整に当たりました。が、それは全て表ルートの接触で、裏ルートからはありませんでした。
ですので設立工作に際し、その提供された資金を使用していないのなら……それは丸々残っている可能性があります』

「話は前後しますが、その提供を受けたと思われる額は……幾らですか」

『十億』


――――――――その額に。

その、普通の人間であれば一生働いても稼げないほどの価値に。

全身から怖気(おぞけ)の炎が吹き上がる。


「そ、そんなに……!?」


鷹野さんとの個人的付き合いはそこそこあったけど、彼女をそんな……とんでもない大金持ちだと感じたことはない。むしろ几帳面(きちょうめん)な方だ。

そんなお金を……いや、違うな。彼女にとってそれはお金ではない。祖父の友人からもらったエールであり、ここ一番で切るべきジョーカー。

新しい理事会に対し、現金で買収できる程度の魚心があれば使っただろう。だが、新理事達は研究自体をあざ笑ったんだ。


だから鷹野さんは買収を諦め、症候群研究終了というこの土壇場で……それを、行使した……!?


『山狗は非正規部隊。中にいる人間も元傭兵(ようへい)などが中心です。十億もあれば……買収は、可能かもしれません』

「鷹野さんの背後にいるであろう”何者か”も後ろ盾をちらつかせれば、それは更に容易……!」

『はい』


果たせなかった祖父の悲願。それに対する壮大な最期を、彼女は演出しようと企(たくら)んでいる。

くそ……それは、彼女の『本当の意志』じゃない。心の弱い彼女を、誰かが唆したんだ!


鷹野さん、ごめん。僕は君の側(そば)にいながら、君の悲しさを受け止められる……そんな頼もしさを見せられなかった。


(第16話へ続く)







あとがき

恭文「というわけで、巴さんのお話についてはまた機会を見つけて……お相手は蒼凪恭文と」

あむ「日奈森あむです。……魅音さん達、やっぱり無茶苦茶……!」

恭文「もちろん圧倒的に立ち回れるわけじゃないけどね。実際これまでの世界では散々負けまくってきたわけで」


(たくさんの良識的な大人の力もあって、初めて戦えるわけです)


恭文「そして赤坂さんが東京に戻ったため、鷹山さん達を招集……ありがとう、トオル課長!」

あむ「容赦なく騙してるんだけど、どういうこと!?」

恭文「自業自得」

あむ「そっかー!」


(なおトオル課長、即決だったようです)


恭文「それで僕についても……後々の事件にも繋がる要素が、ちらほらと」

あむ「だよねぇ。アンタも結局、一番の仕事は大事なところで勝つアタッカーだし……まぁそれはそうと」

恭文「今日のバトローグ、凄かったね……! というかフリオ達にもう……あ、これは駄目だ」


(あの衝撃は、是非初見で感じてほしい)


あむ「でもさ、冒頭のあの……口パクがおかしくなかった? なんか声とズレてて」

恭文「あれ、百四十四分の一のフィギュアだよ?」

あむ「あぁ、やっぱりか……! あれだよね! タツヤさんとバトルしたときのジオン兵みたいな!」

恭文「それ。そういうところから作り込んでの遊び……そう言えば言ってたしなぁ。
なんかそれで運動会をやったとか……新型塗料で黒くしすぎて、作ったガンプラを踏んづけてしまったとか」

あむ「レナートさん達、意外とドジっ子?」

恭文「いや、ただのガンプラ馬鹿だよ」


(レナート兄弟、自分達なりに遊びまくっているだけです)


あむ「それとさ、恭文」

恭文「うん?」

あむ「ピザ、食べたいんだけど」

恭文「うん、言うと思った……! というか僕も!」

あむ「じゃあ割り勘で注文しようよ!」

恭文「むしろ作るよ?」

あむ「え、作れる……って、作れるかー! やってたもんね、アンタ!」


(サクッと行けるらしいです。……というわけで次回『梨花ちゃん死す!』にご期待ください。
本日のED:『スプラトゥーン2で残り一分になったらかかるBGM』)


恭文「FGOハロウィン2017、ツッコミ疲れでペースダウンしていたものの、なんとかメインクエストクリア……! そして悪は成敗された」

フェイト「うん、教授は悪だったね。遠慮なく叩かないと駄目だよね。……あとはミッション制覇と高難易度クエストだね」

凛(渋谷)「やっぱ配布キャラ入手については、これくらいの難易度が嬉しいなぁ……」

恭文「あぁ、夏のイシュタルはやや難易度高めだったからなぁ。……あれも前にちょろっと言ったけど、第七章クリア後とかなら問題なかったと思うんだけど」

凛(渋谷)「ストーリー自体も、その辺りが前提になっていたしね。……そういえばあの、Mk-I(仮称)がいなくなっていたのって結局なんなの?
第七章でもそうだし、結局イベント内で結論は出ていなかったし」

恭文「あれ、なんでも別のFate作品世界に出張していたせいらしいのよ」

凛(渋谷)「そういうところでリンクしてたんだ!」

古鉄≪イシュタルさんが予測の一つとして挙げていましたね。別世界に行ったと……その結果が駄女神ですよ≫

イシュタル「駄女神言うなぁ!」


(おしまい)




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