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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Memory69 『ガンプラ・イブ/PART3』


――CPの活動方針を定めたところで、アラン・アダムスさんから連絡がきた。

なんでもCP所属アイドル:島村卯月として、お仕事を依頼したいとか。

そのためレナさんに連れられる形で、世界大会会場近辺へやってきた。


「えっと……アランさん、タツヤさんと一緒にガンプラ制作教室のお手伝い中なんだよね」

「そろそろ休憩時間に入るからとは言っていたんですけど……でもどうして私に」

「まぁ、それもアランさんに聞いてみてからだね」

「はい。……って、レナさんは会長やアランさんとも」

「お友達だよー。東京(とうきょう)に来てからだけど、恭文くん絡みで会うことがあったから」


あぁ、恭文さんは共通のお友達ですしね。それに納得しながらも、制作教室にお邪魔すると……あぁ、盛況ですねー。

みんな楽しそうにガンプラを作っています。というか、チナちゃんやアイラちゃん、リン子さん達の姿も……。


「やぁ、待っていたよ」


そこで黒ジャケット・スラックス姿なアランさんが、右手を挙げながら近づいてくる。


「「お邪魔しています!」」

「こんにちは、アランさんー」

「レナー! 聞いてはいたけど、本当にアイドルプロデューサーとはねぇ。むしろ君はアイドルになる方だと思っていたんだが」

「あははは、ありがとうございますー。それで、お話の方ですけど」

「こっちで話そう」


そのままアランさんに案内され、裏手のスタッフルームへ。その一角に座らせてもらい、説明を受ける。


「――新作ガンプラのテスター!?」

「卯月ちゃんが、ですよね」

「あぁ。この間のバトルを見せてもらって、君達なら適任だと考えた。それで一応確認なんだが、モックについては知っているよね」

「はい。CPU戦用のガンプラでもありますし、実際組んだことが……作りやすい上にがしがし動いて、可愛(かわい)くて凄(すご)いガンプラでしたー」

「ありがとう。今回君にテスターを頼みたいのは、そのモックの後継機」


アランさんがデスクに置くのは、ジム……でもかなりスタイリッシュです。

全長はジムというよりジェガンとかνガンダムくらいありますし、少なくともHGUC版などとは全然違います。


「PA/GM(パージム)だ」

「パー……」

「ジム……」


レナさんと二人、その佇(たたず)まいに身震いしてしまう――だったら、やってやります!

私なりのPA/GMを作って、一緒に頑張ります! 見ていてください!




魔法少女リリカルなのはVivid・Remix

とある魔導師と彼女の鮮烈な日常

Memory69 『ガンプラ・イブ/PART3』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


リナーシタ……それは復活を意味するワード。新しいフェニーチェのコンセプトは≪ウイングガンダムMk-II≫だ。

原典機と同じように、バート形態とバスターライフルによる強襲・一撃離脱を基本スタイルとしている。

だがフェニーチェの改造経歴から得た経験・発想を生かし、継戦能力の向上と新たな技術も注(そそ)ぎ込んでいる。


……月近海で飛び回っていたシャッフル・ハートは、MS形態に変形。

振るわれる左拳、続く右後ろ回し蹴りを飛び上がりながら回避し、きりもみ回転。

そのままシールドからビームサーベルを取り出し、唐竹(からたけ)に一撃――!


シャッフル・ハートは赤く燃える拳で受け止めるが、そこでサーベルの出力を調整。

このサーベルも粒子変容技術を用いる、いわゆるアンブロッカブル……敵の波長に合わせ、それを断ち切る絶対破砕の剣!

だからこそ突き出された拳ごと、シャッフル・ハートを一刀両断……そのまま宇宙の藻くずとする。


……この短期間で形にできたのは、あおの手伝いも大きい。本当はもっと早くに……いや、これは言い訳だ。

下手に新装備を持ち込むより、慣れた戦い方を……そうして挑戦に二の足を踏んだ、この俺の不徳。


なので来年に備えた試運転と考えれば、この状況も悪くない。あぁ、来年こそは頂くぜ……世界の頂き!


「どうした! もうチャレンジャーはいないのかい!?」

「あおあおあおー!」


かと思ったら、そこで新たな機影……これは、ピンクで角付きのガーベラ・テトラ。


「あお……?」

「ほぉ、ガーベラ・テトラか。荒削りだが、手間暇をかけて作ってある」

『ありがと、フェリーニさん』


が、そこで通信モニターにキララちゃんの姿ー!


「キ、キララちゃん!?」

「あお!?」

『このガンプラ、ちゃんと自分で作ったの。だ・か・ら……キララン☆ お手柔らかにねー』

「は、はい……」

「おー!」


おい、あお……暴れるな! 無理だ! 俺には壊せない! キララちゃんのガンプラと戦って壊すなんて……無理だー!

だから、つい……コブラツイストを受けて……受けてー!



「あ、キララちゃ……関節、キツい。でも、これはこれでー!」

「あおー!」

『あお君にも、あとで……やってあげるわね!』

「あお!? ……あおあおあお、あお……おー!」


あ、てめ! それはそれでアリかもって思ったな! だったらなんでまだ暴れるんだ! 落ち着け! 頭を叩(たた)くなー!


『――楽しそうだねぇ』

『「え?」』

「あお?」

『ならばリア充爆(は)ぜろ!』


その瞬間ぶち込まれたミサイルで、揃(そろ)って吹き飛ぶ馬鹿な俺達ー!


「なんだ一体ー!」

『私のガーベラがー! というか、この声は……!』

「あおあお! あお!」

『渡さないよ、ガンプラ一年分は』


更に……どっからか大型砲撃が飛んでくる。慌ててバード形態に変形して、キララちゃんを捕まらせて加速!

空間を切り裂くギロチンバーストを振り切ると同時に、ガーベラ・テトラがビームマシンガンで追撃するミサイル軍を次々撃墜!


「うーんキララちゃん、やっぱいい腕をしてるぜ!」

「あおあ……あお!」


……と、思っていたら、前方に百以上のミサイルが接近。


『これでも一家の大黒柱!』


更に飛び込んでくる”流星”からフルバースト。

ビーム砲撃、更なるマイクロミサイル軍、ビーム砲各種による一斉射撃で回避先を潰し……あれ、追い込まれた?


『うちには大食い大魔王もいるから、節約のチャンスは逃せないのよ!』

「あおぉ!?」

『リア充ども、覚悟しろぉ!』

『ちょ、嫌だ! 来ないでー! というか』

「テメェにだけは言われたくねぇ! ――ヤスフミィィィィィィィィィ!」


結果、俺達は自らミサイル群に突っ込み、地獄を見る羽目となる。そう……アイツのせいでな!

つーか切実過ぎる! 金にうるさいのは昔からだったが、レベルアップしてやがるし! これが夫になるということか!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


宇宙に刻まれる、キロ単位にも及ぶ爆発の帯。それを見つめつつ、一旦ミーティアとゴーストの状態チェック……よし。


「威力と装弾数、制御関係は問題なし。でも羽入、よく作ってたね」

「あうあうー! 実はここの射的で当てたのですよー」

≪部活ですね、分かります≫

「でも……アストレイやSEEDザク用のジョイントパーツも付いているって、とっても豪華なのです」

「外伝だと使っていたしね。ブルーフレームだけど」


そう、外伝だと各動力炉搭載型のミーティアも出ていてね。ブルーフレームとザクファントムが使っていたのよ。

本来はフリーダムとジャスティスの専用装備だから、漫画で見たときは驚いたなぁ。


その火力と突破力は見てもらった通り……うーん、しかもいいでき。


「でも使わせてもらってよかったの? 羽入も自分のザクファントムがあるのに」

「いいのですよ。恭文との合作みたいで楽しいのです」

「そっか」


この火力と機動力なら、大多数の相手を蹴散らすことも十二分に可能。やっぱり強力なサポートメカだった。

……相手がフェリーニレベルじゃなければ、これで決まっていただろうに。


「あうあう……恭文、やっぱりリカルド・フェリーニは凄(すご)いのです!」


爆炎の帯から飛び出す、トリコローレカラーの機体を確認。

軽く損傷はしているけど、致命傷ってわけじゃあない。遠慮なく攻撃してくるよ、あれ。


「仮にも世界ランカーだしねぇ。……ここからは肉弾戦だ」

「頑張るのですよ! ミーティア、下がっていてください!」


羽入作成のミーティアをパージし、リアスカートまで降りていたバックパックを元の位置に戻す。

まるで背骨のようなシルバーフレームに、しっかりと装着されてからスラスター噴射。宇宙に踊り出る。


――頭部はジャンクパーツやランナータグを使い、ブルーフレーム・フォースっぽく作った。

両肩はAGE-2ダークハウンドのものを使用。バインダーとアンカーショットは取り付けていないけど、その代わりに小型コーン型スラスターを装備。

でもこれだけでも大分フォルムが変わり、パワードレッドにも通ずる力強さが発揮される。


仕上がっている武装は四つ。

まずはバックパックの複合展開ブレード≪古鉄弐式≫二基。

頭部のイーゲルシュテルン一門。

両太もものアーマーシュナイダー二振り。


「それじゃあ行くよ」


なので右手で古鉄弐式を一振り抜刀し、蒼色に輝く刃を展開。ロングソードサイズの片刃剣を、そのまま手元で一回転させる。


「アストレイ・ゴーストフレーム!」


それじゃあデビュー戦――かと思うと、そこで紅の彗星が走った。それは全速力で……リカルドへと踏み込み、袈裟の一撃を叩(たた)きつける。


「……あれは!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『だがしかし待て--イタリアの伊達(だて)男ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

『なのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』


突然現れた流星をバレルロールで何とか回避しつつ、乱入者をチェック……おいおい、なんでコイツまでいやがる!


「スガ・トウリとAGE-2エストレアか!?」

『こんちわーッス! 乱入の許可を得たので、大暴れしに来たッスよ!!』

『なの!』

「乱入っていいのかよ!?」

『自分もガンプラ一年分は欲しい!』

「ですよねー!」

『ちょ、トウリさん! 僕は……ほら、新機体お披露目(ひろめ)で』

『はーはははははは! こういうのは早い者勝ちッスよ! それに――』


あぁ……俺に狙いを定めてくれたと。エストレアは流星を払いながらも停止し、シグルブレイドを逆袈裟一閃。その上で静かに正眼(せいがん)の構えを取った。


『イタリアの伊達(だて)男とは、一回やり合いたかったッスよ』

『なのなの! しかもそれが新機体となったら……おにいちゃんも興奮して本気モードなの!』

「そりゃあ光栄だが……と言うか、そこのキュートなお嬢さんはどなたぁ!?」


本来そこにいたベレー帽の男≪イビツ≫の代わりに、年端もいかないような金髪碧眼(へきがん)少女がセコンドとして参加していた。

少女ははにかみながらも一礼して静かに口を開いた。


『はじめましてなの。セフィ・S・アリエスなの。妹分として参加しますの』

「おい、明らかに血が繋(つな)がってなさそうな感じなんだが! てーかイビツはどうした!?」

『そこはほら、いろいろと事情があるんスよ。いろいろと。……そしてイビツさんはイビツさんで、AGE系統のガンプラ改造機で大暴れ中ッス』

「マジかよ……」


慌ててモニターとレーダーで確認したら、確かに奴は別機体で大暴れしていた。コイツら、混沌だけを持ち込んできやがったな……!


『さぁ建前はもういいッスよね?』


口調は軽めだが、溢(あふ)れんばかりの闘志をエストレアから通じて出してるのが分かる。どうやら本気らしい……面白ぇ!


「ヤスフミと斬り分けた実力者に御指名なんて、嬉(うれ)しい限りじゃねぇか! 良いぜ、相手になってやるよ!」

『そうこなくっちゃッスよね! いくッスよセフィ! イビツさんに頼み込んでセコンド変わったんスから、やる気十分ッスよね!』

『うん! ”打倒リインちゃん”目指してがんばるのー!』

『あ、あのー! 僕は』

『『『空気を読め!』』』

『おのれらぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


どうやらセコンドの嬢ちゃんの方もやる気らしい……普通に楽しくなってきたなぁ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……なんかセフィちゃん出てるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! え、いいの!? いや、よくない!

そもそも僕を置いてけぼりで、変形して機動戦闘を演じるなぁ!

くそ、サラッとミーティアの射程外に逃げようとしてやがる! これじゃあ再合体しても間に合わない!


『あ、あの……私、置いていかれちゃったんだけど』

「……ターゲットロックオンなのです!」

『ちょ、待って! 無理! さすがに勝てない! ここはお手柔らかに』

「キララさん、いいことを教えてあげよう――僕は男女平等パンチが撃てる」

『ですよねー!』


というかイビツは……は! まさか。


『いや、クビとかじゃないよー!? マジで!』


すると左側から、イビツの声。実に……実に楽しそうな表情で、また別の機体と戦っていた。

ドッズキャノンでザクやザクウォーリア(SEED機体)を次々撃ち抜き、落としていく。


『でだ、さすがに途中乱入も悪いってことで、トウリさんも気を使ってね』

「へ?」

『ここへ来る途中にバッタリ遭遇して、連れてきましたー』


……そこで六時方向・上四十五度の角度から、ピンク色の光条が走る。

それは素早く振り返りながら右薙一閃で切り払い、強襲者をチェック。


それは光の翼を翻し、僕を見下ろすように停止。……赤いV2ガンダム!

でもただの色変えじゃない! ディテールの追加や、カーモデル張りの奇麗な塗装! とても高い技量で作り込まれている!


『どうもー。あはははは、連れてこられちゃったよ』

「……ジュリアン!」

「タツヤと戦った、先輩さんですか!? でもあの機体は」

『≪V2ガンダムイマジン≫――悪いんだけど調整、付き合ってもらっていいかな。君のアストレイと同じく、まだまだ荒削りなのさ』

「で、サラッとガンプラ一年分をもらうつもりか……!」

『バレた?』

「当たり前だぁ!」


でもこれは……どうしようもなく胸が高鳴っていた。僕も何だかんだでさ、ジュリアンとは一度も戦ってなかったんだ。

しかもジュリアンの能力はタツヤ以上。ゴーストフレームの……ここから先で想定されるバトルの仮想相手としては、適切でもあった。

羽入を見ると、問題なしと頷(うなず)いてくれる。あははは、今日は修復作業が大変だぞー。


「仕方ないなぁ……まぁリカルドにはキララさんもいるし、ヤキモチ焼かせてもあれかー」

『ありがとう』

「でもまさか、考えることはみんな同じって……」

≪ガンプラ馬鹿が結集してますからね、今の静岡(しずおか)は。……でもいけますよね≫

「この機体はお兄様だけではありませんよ。私とショウタロス先輩、お姉様……詩音さん達も手伝ってくれて、形にできたものですから」

「結構大変だったけどな。ほぼ一日仕事だしよぉ」

「だが性能は折り紙付きだ。さぁやってやれ、六番目の幽霊」


ショウタロスに頷(うなず)きながら、跳ねるように跳躍――宇宙を粒子変容で踏み締めながら、一気に奴の懐へ飛び込む。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


いやー、恭文君は気に入ってくれたようで何よりッス! 実はジュリアン君も、あの子とは戦いたがっていたッスよ。

道中そんな話を聞いて、それならーって感じで……なので自分も心置きなく楽しむッスよー!

セフィもやる気を出しているし、加減はせずに全開で……!


いや、そうじゃなきゃ傷一つ入れられない! 機体性能で負けているつもりはないッスけど、新型フェニーチェもなかなか!

こちらの速度と縮地に対応して、剣戟(けんげき)をぶつけ合えるって! これも機体への理解度があればこそか!


なら、自分ももっといける。

エストレアと……愛機を理解し、もっと一つになれる!


『あの……それだと私、余っているような……いや、ここは引くわ!』


すると放置してしまったガーベラ・テトラから、キララちゃんの声が高らかに響く。


『――はい! ここで大会では実現しなかった夢のカードが連続発生! イタリアの伊達(だて)男と”流星の焔狼(えんろう)”!』

「なの!?」

「あれ、いつの間に自分、そんな二つ名が!」

『当然だ!』


そこでフェニーチェから左ミドルキックを食らい、更に左フック……マントを纏(まと)わせての一撃か!

セフィのサポートでシグルブレイドを振るい、刀身で受け止め……何とかいなす! そこを狙って、至近距離で三連続の刺突!

胸元・頭・腹を狙った一撃は、目も眩(くら)むような鋭いスウェーで全て避けられる。……それにゾッとしながらも、今度はボディブローが飛ぶ。


『キララちゃんだからなぁ!』


……だから右膝からビームスパイクを発進させ、そのまま拳とぶつけ合う。

粒子エネルギーがぶつかり合い、激しい火花が走ること数秒……衝撃に耐えかねて、それぞれの粒子が破裂。

その爆発に逆らわずに下がり、すぐさま虚空を踏み締め二時方向に加速。


背後に回りながらの右薙一閃を飛び越えた上で、フェニーチェは身を翻しつつ唐竹(からたけ)の斬撃。

それを返す刃で受け止めつつ、笑ってしまう。


あははははー! やっぱ最高ッスね、この遊び!



『そしてイギリスの新生(しんせい)貴公子と蒼い幽霊! それぞれ全力バトルです!
この行方はどうなるか……大会イメージキャラクターとして、より近い形で実況させていただきます!』

『ちょ、それは私の仕事ですー! 取らないでくださいー!』

『あはは、ごめんねー。ここは役割分担ってことで一つ!』

「……気づかいのできる人なの」

「ありがとうッスー」


そういうことなら……一瞬刃の拮抗(きっこう)を解除した上で、右薙・左薙・刺突・逆風と連撃。

すぐさま身を翻して背後を取るも、斬撃を全て捌(さば)いた上でフェニーチェは体当たり。

こちらと背を合わせ、押し込みながらも合わせるように回転……離れた自分達は右薙の斬撃をぶつけ合い、そこから袈裟の斬撃。


『あはは、いいのよー。でも、勝った方が私と戦う……あ、これってカテジナ的!? 私って悪女!?』

『ならば勝たせてもらおうか! キララちゃんの愛を受けるのは――この俺だぁ!』

『もうやだー! フェリーニったらー!』

「……お兄ちゃん、一言どうぞ……なの」

「あははははは……いちゃつくなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


というか、アイドルと恋愛って大丈夫ッスか! いや、自分が心配することじゃ……ないッスねー。

自分はただ、この状況を楽しめばいい。恭文君の隙(すき)を突いてまで突かんだチャンス……決して離さないッスよ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


『……!』


ジュリアンは冷静に突撃コースから下がりながら、光の翼による機動力を生かし、背後に回り込みながらも射撃。

虚空を踏み締め滑りながら。

袈裟。

右薙。

袈裟。

刺突。

左薙。

回転しながらの唐竹一閃で全て切り払う。


そのまま再度踏み込み、両肩の電磁推進システムを稼働。左右交互に噴射させることで、稲妻を思わせる超速軌道となる。

電磁推進システム自体は、SEED劇中でも量産機体≪シビリアンアストレイ≫にも使われているものだ。

設定だと推進力は低めだけど、そこは加速力・瞬間出力重視のセッティングで補っている。


更にAGE-2ダークハウンド(ノーマル)の肩パーツを応用したことで、横であれば百八十度近い方向転換が可能。

熱量を発生させないことで、これのみでの隠密(おんみつ)行動も可能としている。


『軽量型のアストレイとはいえ、これはまた身軽な……やるね、ヤスフミ!』


V2は左前腕部からビームサーベルを取り出し、発振。そのまま光の翼を翻しながら突撃してくる。

ライフルで牽制(けんせい)射撃を放ち、こちらの回避先を狭めた上で……進行方向上を抑える形で斬りつけてくる。

袈裟・逆袈裟と瞬間的に放たれた二連撃を払いのけると、交差したV2はすかさず光の翼を展開。


虚空を蹴り飛ばしての宙返りで、大きく広がる翼≪巨大ビームサーベル≫を回避する。

そのまま”着地”すると、V2は分身……M.E.P.E(質量を持った残像)か!


「あうあう! V2には搭載されていないですよね!」

『これも遊び心さ』

「なら、こっちも……と行きたいけど」


四方八方からの突撃を古鉄弐式でいなすけど、さすがにジュリアンとそのガンプラの機動力に剣一本では対応不可能。

だから左手でサッと印を組み……次の瞬間、本命を含んだ合計八体の連続切り抜けを食らう。


――が、そこでポンと音を立て、真っ二つにされたゴーストフレームはこの場から消失。


『……消えた? いや……上か!』


着られる瞬間、分身(粒子で作った偽者)を残し、その上で大きく跳躍……もちろん姿を消した上でだ。

そうして頭上から強襲したけど、さすがにジュリアンは気づく。すかさず宙返りしながら、多角的な連続射撃を放ってくる。

そのうち三発を左スウェーで避けた上で、再度左手で印を組む。


「ミラコロ忍法――マガノイクタチの術!」


鋭く突きだした左人差し指と中指から、電撃が空間一杯に走る。ジュリアンはすぐに後退するものの、その嵐にほんの三秒程度巻き込まれてしまう。


『く……!』

『ぎゃー!』

『なんじゃこりゃあああぁぁぁああぁあぁああぁ!』


あ、キララさんのガーベラや、近くにいたイビツを巻き添えに……なんというか、ごめんなさい。

とにかくV2の速度なら、すぐに脱出はできた。が……そこで展開し続けていた光の翼が消失。

代わりにこちらのエネルギーゲインは満杯。余剰分もリアスカートに装着した増設エネルギーパックに備蓄される。


『パワーダウンだと!』


そう、マガノイクタチの術……それはゴールドフレーム天に搭載されている≪マガノイクタチ≫を再現するもの。

≪SEED世界の技術≪ミラージュコロイド≫を用いて、範囲内の機体から電力を強制放出。更にそれを吸収するという非殺傷設定兵器だよ。

ガンプラバトル的には電力ではなく、機体を動かす流体が持つエネルギーを霧散させるのよ。


……大量の敵を相手にする場合、どうしてもエネルギー面の消耗がネックになるしね。

もちろん強敵相手でも、一時的なパワーダウンくらいは狙える。だからこれは絶対に実現するべき能力と定めた。


とはいえ、V2イマジンの性能は段違い。そんなパワーダウンも三秒……いや、二秒足らずですぐ復活する。

でもその二秒で十分だ。左人差し指と中指で古鉄弐式の峰をさっと撫(な)で上げ。


「ミラコロ忍法――千鳥流し!」


刃に千鳥≪電撃≫を流す。それを雷撃の鉄輝とした上で、体重を前のめりに傾けた上で……”地面”を踏み締め疾駆。

そう、真なる縮地。その加速で一気に、数百メートルという距離を駆け抜け、ジュリアンの迎撃射撃をも左肩上すれすれにすり抜け。


――その胴体部目がけて、刺突を放つ。

それは咄嗟(とっさ)に構えたサーベルで受け止められるものの、鉄輝に包まれた古鉄弐式はビームを両断。

これで捉えた……と思ったら、V2イマジンは咄嗟(とっさ)に身を逸(そ)らし回避。薄い剣閃が装甲表面に刻まれるだけだった。


「あれを、避けるですか!」

『試合で見たから……ねぇ!』


かと思うと身を翻しながらの蹴りを食らい、大きく吹き飛ばされる。

今度はジュリアンが突撃……更にビームサーベルの粒子を研ぎ澄まし、その出力と切れ味を大きく上げる。

大きめのデブリに身を翻し着地すると、光の翼が翻り、V2イマジンが消失。……背後へ振り返り、関節部を狙った斬撃は防御。


「僕もその剣筋、嫌ってほど見たよ!」

『あ……まだ抜けきらないかぁ』


笑いながら斬撃を弾(はじ)き、背後へと踏み込み左エルボー。それで胴体部を叩(たた)いた上で右薙一閃。

いや、V2イマジンは左掌底をこちらの腕にたたき込み、斬撃をキャンセル。その上で数歩下がったと思ったら、袈裟から始まる連撃を放つ。

こちらも受けて立ち、合計五十合以上の連撃が僅か三十秒足らずで打ち込まれ、お互いのボディを掠(かす)めていく。


かと思うとV2イマジンは加速。周囲のデブリを蹴り、光の翼による加速も行かした上で八艘(そう)飛び。

四方八方……視界では捉えられないほどの連撃。しかも射撃も交えながらなので、背筋から冷や汗が流れっぱなし。

一手でも読み間違えれば負ける……そう思いながら頭や腕を動かし、スウェーで三方向から放たれた射撃を回避。


左手でアーマーシュナイダーも取り出し、二時方向からの一撃を捌(さば)き、続けて後方からの刺突を時計回りに身を捻(ひね)りながら回避。

どんどん後ろに下がっていき、忙(せわ)しなく指を動かしていく。


≪縮地を使わせないよう、防戦一方に追い込むつもりですか。さすがにやりますね≫

「じゃなきゃ楽しくない!」


そう言いながら背後からの袈裟切りに対し、右後ろ回し蹴り。かかとに仕込んだアーマーシュナイダー(まさかりタイプ)で斬撃を受け止め……足を振り抜きながら払う。

刃が弾(はじ)かれ、動きが止まったところでアーマーシュナイダーの刺突。零距離で放たれたビームを散らしながら、銃口に突き立て粉砕する。

なおアーマーシュナイダーは粒子変容塗料により、ビームを切り裂くことが可能。アストレイ・ブルーフレームでもやってたね!


すぐさま身を翻し、左腕狙いの刺突を回避……そのまま古鉄弐式で右薙一閃。

咄嗟(とっさ)に防御するのはさすがだけど、今のも関節部狙いだった。……V2イマジンは右腕からもサーベルを取り出し、二刀の構え。

そこから放たれる刺突を伏せて避け、コクピット目がけてアーマーシュナイダーで刺突。V2イマジンは下がりながらもバルカン連射。


次の繋ぎになればと……でも弾丸はゴーストフレームのボディを叩(たた)きながらも、全て弾(はじ)かれる。


『VPS装甲か!』


そう……実はオリジナルアストレイ5号機≪ミラージュフレーム≫では、発泡金属ではなくVPS装甲で作られていたのよ。面白いでしょ。

左手のアーマーシュナイダーを鞘(さや)に収めて、すぐさま印を組む。


「マガノイクタチの術!」


再び立てた人差し指と中指から……ゴーストフレームから放たれる電撃。

しかし二度目ともなれば、V2イマジンはきっちり範囲を見抜き、一気に光の翼を羽ばたかせて上昇……距離を取って回避する。

でもそれこそが狙いだ。今のは見かけだけ広いから、奴との距離も十分取れている。


……そこで奥の手を出す。


「ミラコロ奥義――」


左手で古鉄弐式をもう一振り取りだし、柄尻で二基を接続。内部に仕込まれた金属・プラスチックの複合粒子が展開し、大型のロングボウとなる。

弓本体は刃のように鋭く、ビームで張られた弦を右手で弾(はじ)きながら後ろに跳躍。


……トウリさんに古鉄、壊されたからね。金属とプラスチックの複合素材を仕込んで、強度を跳ね上げたのよ。

なおこの辺りの合体機構は、デバイスの形状変換を参考にしている。今のもシグナムさんのレヴァンティンからだ。


『いや……それ、ミラージュコロイド応用技術ってことだよね? 何でもアリってことだよね?』


うん、その通りだよ! だってゴーストフレームは――Gの影忍やガンダムシュピーゲルみたいな≪忍者ガンダム≫なんだから!


「二大神に奉(たてまつ)る」


だからそのまま、粒子精製で生まれた矢を上四十五度に向けて。


「偽・訴状の矢文≪イミテーション・ボイボス・カタストロフェ≫」


瞬間集束された大量の粒子……もっと言えば、さっきの忍法≪マガノイクタチの術≫で吸収した粒子が込められた矢は、フィールド上方に放たれた上で消失。


「――なんちゃってー」


それを訝(いぶか)しみながらも、V2イマジンはこちらに近づきながら連続射撃。……射撃!? あれ、ライフルは潰したはずなのに!

慌てて左手首を回転させ、弓となった古鉄弐式の刃で全て弾(はじ)く。

よーく見るとそのビームライフルは……百式のだ! あのやろ、近くにいる奴らからパクったな!


でも射撃武器を手にしたのなら、ちょうどいい。そのまま大きく左に走り……真なる縮地!

跳躍も交えながら、奴のビームを避けつつ粒子矢を連続射出。


「羽入」

「粒子変容開始……三十秒待ってください!」

「お願い!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


光の翼で追撃しながらの射撃……このライフルも借り物だけど、実にいいものだ。あとでお礼を言わなくちゃ。

だが届かない。縮地による加速は、光の翼より……遅いんだけど、小回りは向こうの方が上だからなぁ。

弓をまるで琴のように弾(はじ)くだけで、走る光がホーミングレーザーとなり、こちらを責め立てる。


それをすり抜けながらも一撃一撃丁寧に放つけど、あの独特の走法と跳躍で一気に姿を消される。

ボク達のドッグファイトが宇宙に線を描き、次々放たれる光条が無数の爆発となる。

あぁ、やっぱりこの世界は最高だ。もっと自由に、自分自身を縛ることなく飛び込めたら――。


同時にわくわくもしていた。さっきの矢、まさか外したわけじゃあないだろうしね。

それにあのゴーストフレームも、かなり自由に作った機体だ。だから楽しみなんだよ。


ヤスフミが一体、何をしてくるかって……こんな気持ちも久々だった。


タツヤと先日戦ったときは、その……真意を確かめるので手一杯になっていたからなぁ。はははは、よくよく考えたらもったいないことをしたよ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


できる限り距離を保ちながら、V2イマジンの動きを制していると……ピッタリ三十秒後。

星の光のみが照らす世界に、突如として巨大な光が生まれた。


『あれは……そうか!』


意図を読んで、こちらに接近しようとするV2イマジン。なのでその足下に矢を一発放つ。

もちろん回避するけど、その途端に構築粒子は爆発。範囲最大・持続力〇の爆発に煽(あお)られ、V2イマジンの動きが一瞬停止する。

その間に光の中から災厄が訪れる。そう……一〇〇、二〇〇……そんな数ではない、無数の光る矢がV2イマジンに、その周囲に降り注ぐ。


『え、嘘……いやなのー!』

『マジっスかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

『何やってんだ、あの野郎はぁ!』


どこからか悲鳴が聞こえた気もするけど、気にしないこととする。あの三人なら大丈夫でしょ。

攻撃範囲となった”直線上”に十、二十と爆発が積み重なるけど、やっぱりスルーで!


――これは、とある女性が放った訴状を模したもの。

彼女は天穹の弓で、雲より高い山に二本の矢を撃ち放った。そうして太陽神と月女神の加護を訴えた。

荒ぶる神々は彼女の訴えに対して、敵方への災厄という形で加護を与える。


これはそれをガンプラ的に再現したものだ。放った矢に込めた変容粒子が、フィールド上空にて楔(くさび)となる。

あとはそれを用いて周辺の粒子を変容させて、矢として敵に撃ち出せばいい。

あむ達と会う二か月くらい前、ちょっとしたオカルト騒動に関わってね。だからこそ偽≪イミテーション≫……模倣だ。


災厄の豪雨は広範囲に亘(わた)って降り注ぎ、V2イマジンをあっという間に飲み込む。僕達はギリギリで何とか離れて無事です。


「あうあう……やっぱり凄(すご)い威力なのですよー」

「パクリだけどねー」


そう、ぶっちゃけちゃえばパクリ……マガノイクタチの術での粒子吸収、秘技による解放はスタービルドストライクもやっていたことだ。

当初はいろいろと装備を持ち込もうとも考えたけど、そうなるとやっぱり取り回しや耐久度の問題がある。

だから本体に組み込むのがベストだった。あとは僕の応用次第ってところだよ。


だって……まだ忍術、マガノイクタチと千鳥流ししかないしね! 奥義も偽・訴状の矢文と、あと一つだけなんだ!

弓についてはもう一つ再現したいんだけどね。同じ要領でできるはずなんだ……あの”宝具”は。


「でも、さすがにあれを食らったら」

「……甘いよ、羽入」

「はい?」


――偽・訴状の矢文が通り過ぎ、爆煙が帯となってフィールドを両断した中……翼が翻る。

粒子の光を羽ばたかせながら現れたのは、無傷のV2イマジンだった。


「な……あ……!?」

「光の翼なら、防げると思ってたよ。劇中でもいろいろやってたし」

『さすがに危なかったけどね……もうちょっと、矢一本一本の威力が高かったら』

「なら、反省点として改善しよう」


また二基目の古鉄弐式を取り出し、形状変換――展開した金属粒子は、一瞬でグリップ付きの鞘(さや)となる。

それを左サイドスカートにセットした上で、一基目の刀身をセット。そのまま右半身を向け、抜刀の構え。

古鉄弐式の形状変換は、地尾さんと戦った経験から得たものだ。あれだけ精密な……リアルタイムでの工作技術は見習うべきだしね。


先を行く強い人達から学び、その技を盗み取り、少しずつ自分の糧とする。ガンプラバトルでもそれは変わらなかったってわけだよ。


『そういうこともできるのか。となると、ボクも最大出力でいかないとね』


ジュリアンも両のサーベルを正眼(せいがん)に構え、突撃準備。

二振りの刃、その構築粒子が混ざり合い、一気に百メートルほどの巨大ビームサーベルとなる。あれは……最終回でやっていたやつか。

左手で鞘(さや)の鯉口(こいぐち)を握りつつ、じりじりと……突撃のタイミングを見計らう。


「恭文……」

「大丈夫、もっと楽しめるよ」

「はいです!」

『あぁ、そうだ。もっと……もっと楽しもう!』

「もちろん!」


その声を合図に、全力で踏み込み――左足を踏み出しながら抜刀。

振るわれる超巨大ビームサーベルに、研ぎ澄まされた鉄輝を叩(たた)きつけた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「イオリ君、覚えているかい。私がなぜ君にこだわっているか――私に勝てば、その理由を教えると言ったこと」

「はい」

「実はね、私がメイジンになったきっかけは、イオリ君のお父さん……イオリ・タケシさんなんだ」

「――父さんが!? あ、でも……待ってください」


そうだそうだ、地区予選優勝の副賞で、恭文さん達とミサキさんの旅館に泊まったとき……軽く聞いてる!


「あの、それなら恭文さんからも聞いたことが! 確か父さんとバトルして……ユウキ先輩をガンプラ塾に推薦したのも父さんだと!」

「でも、トオルの奴にガンプラを教わったんだよな。そっちは」

「もちろんそれも大事な始まりだ。……トオルと別れてから、私はガンプラバトルにのめり込んでいった。
恭文さんも揃(そろ)ってね。だが父はユウキの後を継ぐようにと、ガンプラとガンプラバトルを禁じた……まぁ、恭文さんが乗り込んで大暴れしたんだが」

「容易に想像が付きます……」

「ただ、あの人もアレで似たような苦労をしていたんだよ。だからどうしても見過ごせなかったという面が大きい。
とにかく父は恭文さんにボコられ……もとい、説得によって”生まれてきてごめんなさい”と……もとい、ガンプラバトルも許してくれたんだが」


先輩、漏れています。恭文さんが無茶苦茶(むちゃくちゃ)なところが、すっごいぜい沢に漏れています……!


「ただ私は、その件で迷いを生じた」

「迷い?」

「ガンプラバトルは遊びだ。それを将来にどう繋(つな)げるか……このまま続けて、どんな大人になりたいか。それが見えなかったんだ」


それは、あのとき出会った灼熱(しゃくねつ)のタツさんと同じ迷いだった。

遊びで、だから本気になれて……でも遊びだから、生活に繋(つな)げるのは難しくて。

かける時間やお金は、日常生活の余裕から出てくるものだよ。その余裕すらないのなら、やっぱり継続も難しい。


僕は環境から恵まれているんだ。だから先輩の悩みを直接理解するのは難しい。だけど……それでも、その苦しさは察するに余りあるもので。


「だから一旦ガンプラから距離を取り、決まっていたイギリス留学に集中することにした。
だが、燻(くすぶ)っていた……そんな私を燃え上がらせてくれたのが」

「セイの父ちゃんか」

「世界中にガンプラの普及活動を行っている最中、とあるお店に立ち寄っていてね。
そこでバトルをさせてもらった。……あ、恭文さんもちょうどその場にいたんだよ」

「それで、揃(そろ)ってボロ負けだったんですよね。父さんも大人げないから」

「こちらが真剣勝負を望んだんだ。その点はむしろ感謝しているよ。……そのとき、タケシさんはこう言ったんだ。
楽しさを伝えられた者は、また別の誰かに伝えていく――そうして自分達は繋(つな)がっていく。自分はそういう仕事をしていると」


楽しさを……あぁ、そうだね。父さんから僕、僕から委員長――委員長からアイラさん。

セシリアさんから母さん、恭文さんからあむさん達やフェイトさん、卯月先輩達。

そうして僕達は繋(つな)がっていくんだ。ただの遊びだけど、日常を彩る”おやつ”だけど、確かにその力は心を動かして――。


この会場には父さんや、ユウキ先輩達の理想が溢(あふ)れているのか。だから先輩は、あんなに優しいほほ笑みを浮かべていた。


「ガンプラ塾に入っても、いろいろあったよ。苦しいこと、辛(つら)いこと、楽しいこと、面白いこと。
勝つことの意味、負けることの意味、勝利者が背負うべきもの……でも、私は選んだ。
メイジンとなって、楽しさを多くの人に伝えたいと思った。――君のお父さんみたいにね」


その言葉が嬉(うれ)しくて、破顔する。レイジにも背中を押され、ユウキ先輩へもう一歩踏み出す。


「イオリ君、レイジ君、たとえこの場で戦うことができなかったとしても……最高のバトルをしよう。
世界中の人達に、ガンプラの楽しさを感じてもらえるように」

「はい!」

「もちろんだ!」

「話を聞いてくれてありがとう。これで心置きなく戦える」


そのままユウキ先輩は、満足そうにこの場を去っていく。


「では、決勝で……いや、その後もよろしく頼むと言うべきかな」

「おう! だが次はオレ達が勝つぜ!」

「私も負けるつもりはないよ」


僕達も笑いを返し、会長を見送った。


空を見上げると、大きな入道雲と透き通るような蒼が広がっている。

胸一杯に若草色の空気を吸い込み、何だかいても立ってもいられず、レイジと顔を見合わせる。


「やろうぜ、セイ……!」

「うん! 僕らの全てをぶつけよう、あの人に……ううん! これから戦っていくたくさんの人達に!」

「体がウズウズしてきやがったあ! セイ、少しバトろうぜ!」


……あぁ、そうだった。


テストバトルの相手なら、ここにいたじゃないか。なんで僕、思いつかなかったんだろう。

それを不思議に感じながら、レイジに頷(うなず)き会場へと戻る。


最高のバトルを――楽しさが伝えられるように、全力のバトルを。


今、僕達の心は燃え上がっていた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


戦国アストレイは調整と追加武装制作を終えて、恭文さんに預けた。カテドラルの件ではないが、この状況では一番安全な場所だろう。

というわけで、ダーグさんと会場の地下に侵入。警備システムに逆らわないよう、慎重に進んでいたところ……。


「静かなもんだ」

「えぇ。会場が予想以上に盛況なおかげですね。今のうちに……!」

「なぁに、探偵ごっこ?」

「ごっこではありません。これは立派な調査……!?」


そこで、初めて気づく。後ろに人の気配があると……慌てて振り向くと、そこにはミスキャロラインの姿があった。


「どちら様ぁ!?」

「キャ、キャロライン! どうしてここに!」

「あら、私はあなたの婚約者でしてよ」

「関係が進展している!?」

「ニルス……お前、彼女連れならそうと言ってくれよぉ。俺も気を使ったぞ?」

「違います違います! これは完全な誤解です!」

「まぁまぁ。調査だっていうなら急ぎましょ」


あなたが主導権を握らないでいただきたいのですが……! というか、ずかずか前に出ないでください!


「キャロライン、今すぐ戻ってください。これは」

「大丈夫。万が一に備えて、セバスチャンも控えさせていますわ」

「なぜそこまで状況を把握しているのですか……!」

「……もう連れていくしかねぇな、これは」

「悪夢のようだ……!」

『兄ちゃんも恋愛の主導権が握れないタイプかぁ。苦労するぜ、これから』


あぁ、不安だ……先行きがとても不安だ。この先に追い求めていた答えがあるというのに。

……それで終わりにしよう。彼らの愚行も……借り物の栄光も、全て。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


というわけで、大騒ぎな会場に戻り、フリーバトルベースに入ったところ――大人げない人達が増えてるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!

フェリーニさんだけならともかく、恭文さんやトウリさん、イビツさん、ジュリアンさんまでー!

というかトウリさん以外全員新機体って! ……あ、でもそっか! だからマオ君、ジュリアンさんに負けたんだ!


なお、大人げない人達は……それだけじゃなかった。


『ユージ!』

『OK……It's Show Time!』


黒くカラーリングされた陸ジム。更にフルメタルジャケットの弾丸を連射し、次々とガンプラを屠(ほふ)るあの人達は……!


『やっちゃん、悪いがガンプラ一年分は俺とタカがもらうぞ!』

『作り慣れれば、もう老化現象とか言われなくて済むしな!』

「鷹山さん、大下さんまでぇ!!」

「何やってんだ、あのおっちゃん達……つーか、やったら強ぇし!」


そう……鷹山さん達の射撃精度はとんでもなかった。反応速度もはっきり言えば、僕やレイジ以上。

どんな奇襲や包囲網も、的確かつ迅速な対処ですり抜け、逆に蹂躙(じゅうりん)していく。

ガンプラの出来映えからすると、初心者だろうに……戦闘技能だけは超一流だった。


ただ、それも考えてみれば当然のことで。

だってハマの伝説って言われる超すご腕の刑事さんで、しかも教科書に載るような凶悪テロ一味と戦って、勝利した人達だよ?

ずーっと……数十年単位で戦い続けていた人達だから、戦いに関する嗅覚というか、戦場の息吹を知り尽くしているんだよ……!


恭文さんだって第一種忍者として相応の経験があって、それをガンプラバトルに生かしている人だ。

だったら鷹山さん達が似たようなことをできても、何一つおかしくはない……でも技能の無駄遣いでは! ガンプラ一年分のためってー!


現実の非情さに悩みながらも、僕達は……そっちに参加することなく、普通にテストバトルをすることに。

……でもそうしたら。


『す、凄(すご)い……!』


涙目で暇そうにしていた、レインコスプレのお姉さんに見つけられ、衆人環視の注目を浴びることに……!


『ガンプラバトル選手権・世界大会ベスト4! イオリ選手とレイジ選手が飛び入り参戦です!』

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

「い、いや……あの、僕達は普通にテストバトルがしたいだけでしてー!」

『まさにスペシャルマッチ!』

「聞いてねぇみたいだぞ、セイー」

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


こんなに注目されることになるなんてぇ! 委員長やアイラさん、セシリアさん達もこっちを見てるし!

ゴンダ先輩やサザキ、それにレナさんと卯月先輩、アランさんまでぇ! というか、どうして!? なんで卯月先輩達までいるのー!


≪Please set your GP Base≫


と、とにかくバトルだ……バトルに集中すれば、全て忘れる! ――今回僕はビルドガンダムMk-IIを使用。

さすがにスタービルドストライクは使えないので、レイジはビギニングガンダムを使用する。


≪Field――Space≫


フィールドは資源衛星付きのコロニー付近か。地形を活用する場面もあるよね。

いろいろ想定しながらも、展開したコクピットベースの中でアームレイカーを握り。



「イオリ・セイ!」

『レイジ!』

「ビルドガンダムMk-II!」

『ビギニングガンダム!』

「行きます!」

『行くぜぇ!』


押し込んで加速――フィールドへ飛び込み、すぐにビギニングをチェック。右のビームライフルMk-IIをまずは一撃。

回避した上で放たれてくる反撃のビームを、上昇してのとんぼ返り……でも途中で急ブレーキ!

それで二撃目も避けた上で、改めてレイジに向き合ってお返しの二連射!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……あの攻撃を避けた!?」

「セイ君、上手(うま)くなってる……!」


ゴンダ先輩も、サザキって子も驚く、イオリくんのマニューバ。わたしもあれを見て、もうゾクゾクしっぱなしで……!

あの動き、ちょっとだけレイジ君に似てる……ううん、違う。どこがとは上手(うま)く言えないけど、明らかに違う。

だけどどうして。確かに途中、イオリくんが操縦する場面もあった。でもあそこまでの動きは……!


「わぁ、凄(すご)いです! レナさん!」

「……今の二連射、二撃目はタイミングを遅らせていたのにね。それを読み取った上での急制動……それもあんなすれすれだなんて」

「嘘、なんで……だって、セイは操縦が!」

「当然ですわ」


でもそこでセシリアさんは、自信満々に……それで、とても嬉(うれ)しそうに腕組み。


「あの子は世界大会の修羅場をくぐり抜けてきたんですから。……チナさん、気づいていますね」

「は、はい……そうです、そうなんです」


つい動きの鮮烈さに驚いたけど、冷静に考えたら……やっぱり考えていた通りなんだ。

イオリくん、気づいているのかな。イオリくんはね……元々、操縦が下手なんかじゃないの。

だってそうでしょ? ただ修羅場をくぐり抜けただけで、こんなに……対戦経験もあるみんなが”上手(うま)くなった”って言うはずないもの。


それはつまり、イオリくんの心が――気構えが変化したから。だから本来持っていた技量がちゃんと出せるようになった……そういうことだって思う。


……レイジくんは、気づいているよね。だってすっごく嬉(うれ)しそうだから。


例えもう自分が、ファイターとして必要ない……そういう状況なのに、本当に嬉(うれ)しそう。

その気持ち、今のわたしなら……少しだけ分かるよ。今、イオリくんとレイジくんは向き合っているから。


向かい合って、本気でぶつかり合っているから。それが嬉(うれ)しいんだよね、レイジくん。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


そうだ……それでいい、セイ! やっぱり想像していた通りだ! お前は操縦が下手なんかじゃねぇ!

お前はただ……だったら、もっとだ。テストバトルなんてまどろっこしいことは言わない。

もっとお互い、全力でやろうぜ! まずはここからスタートだ!


「やるじゃねぇか、セイ! だったら」



ライフルは捨て、サーベル三本を抜いて発振……そのまま突撃!


「コイツはどうだ!」


ビルドガンダムMk-IIも右手でサーベルを抜いて発振。……かと思ったら、左腕のライフルで射撃。

その射角はビギニングより下。コロニーの外壁をぶち抜き、爆煙を上げる。


「何!」


生まれた煙の前で停止すると、それを突き抜けビームがもう一発飛んでくる。

停止するタイミングで……機体が完全に止まり、避けるならワンアクションが必要なところで。

咄嗟(とっさ)に左腕のシールドで防御……いや、そのまま腕を跳ね上げ、軌道を逸(そ)らす。


それは何とか成功したが、一緒にシールドもはじけ飛んだ。

爆煙が晴れたところで、上昇して一気に距離を取る。だがさすがに振り払えねぇ……!

泳ぐように宇宙の中を突き進みながら、タイミングを見計らってサーベルで斬りつけ。


ビルドガンダムMk-IIと剣閃を交わしながら、光の帯を空に幾つも……幾度も交差しながら刻んでいく。


「やるやる!」

『当たり前だろ! ガンプラの出来栄えは、僕のMk-IIが上さ!』

「ちょうどいいハンデだ!」


お互いに斬撃を切り結び、押し込み……楽しい。あぁ、本当に最高だ。

これなら大丈夫だ。これなら……!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


レイジは袈裟にサーベルを引き、こちらの斬撃をいなした上で飛び込み蹴り。

強引に距離を取った上で、下がりながらビームアンテナを連続発射。

ビギニングのアンテナはビーム式で、そのままビームバルカンとして使用可能なんだ。


発射されては再構築していくアンテナだけど、それもまた次の弾丸として空間にばら撒(ま)かれる。

それを左のバレルロールで回避するものの、肩アーマーに数発が直撃……軌道が乱れる。


「くぅ……さすがはレイジ! でも!」


ビルドブースターMk-IIを分離させて、そのまま突撃――ビギニングにビームを連射!

当然ブースター単体の方が加速力も高く、距離を取ろうとするレイジのプランをかき乱す。


『ちぃ!』


回避行動を取らせ……足が止まったところで再合体! 最大出力でビギニングに肉薄!

更に左のビームライフルMk-IIからもサーベルを発振し、二刀流で斬りつけ!

零距離で交差しながらも振り返り、右薙・袈裟・刺突・逆袈裟・右切上・唐竹(からたけ)――幾度も、幾度も刃をぶつけ合う。


『やめらんねぇ!』

「あぁ、やめられない!」


お互いに踏み込み正面から斬りつけ……刃をぶつけ合ったまま回転し合い、僕達はどんどん上昇していく――!


『これだからガンプラバトルは!』

『「やめられない!」』


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


楽しい……夢のような時間はまだまだ続く。

ガンプラ制作教室ではアイラとチナ、セシリアとリン子さんが楽しくガンプラを作る。

マオもミサキとは仲直りしたようで、笑顔で新作ガンプラを完成させていた。


それもクロスボーンの改造機体。原典機よりも巨大なドクロを胸に付け、X魔王にも通ずるリフレクターを機体各所に装備した機体。

その名も≪クロスボーンガンダム魔王≫。でもフレキシブルスラスターまでリフレクター化している時点で、何となく嫌な予感が……!


結局イビツはガンプラ一年分をゲットし、山のようなAGEガンプラに囲まれ笑っていた。

それを見届けたあとは、ゴンダと卯月……それにタツヤと合流。カイラとヤナさん、アランもやってきて、号泣するゴンダをみんなで宥(なだ)める。


なお珍庵さんがリン子さんをナンパしかけたけど、それはラルさんがストップ。

更にタケシさんも鷹山さん達と登場したことで……熱い抱擁が見られました。いや、よかったよかった……。


夜にはキララさんのライブ。リカルドとあおも……ディアーチェ達も、みんなで行儀正しくその様子を見つめる。

なお……タケシさんとは、タツヤと一緒に改めて合わせてもらって、いろんな話をした。


短くもあっという間の充電期間は終わり……ゴーストも満身創痍(そうい)だったけど、修理完了。

明日、タツヤとのバトルで使うフェイタリーについても万全。古鉄弐式の予備も搭載した最新型になっている。


部屋のベランダに出て、日付が変わる直前……ドキドキしながら夜空を見上げる。


≪いよいよ準決勝ですね≫

「うん。……勝ちにいくよ、アルト」

≪もちろんですよ。というか、私と一緒なのに負けるつもりですか?≫

「それもそっかー」


――僕達のやっていることは、この時間にひとまずの終止符を打つことだ。にもかかわらず楽しんでいくのは、矛盾しているだろうか。

でも……でもね、終わらせるからこそ、終わるからこそって思う気持ちもあるんだ。

この時間を、この楽しさを絶対忘れないように、心と体に刻み込んでいく。


いつかまた、星みたいに輝くたくさんの笑顔と出会えるように――。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――曲がりくねった地下道を進み、いよいよ……世界大会会場の真下に到着する。


「……随分歩きましたわね。今はどの辺りでしょうか」

「世界大会会場のほぼ真下だ。だがお前さん、根性あるなぁ」

『だなぁ。実は俺達、もっと早くに音を上げるかと』

「当然ですわ。夫の夢に関わる一大事ですもの」

「夫ではありませんので……!」


というか、僕達はまだ結婚できる年齢でもないと言うのに! 頭が痛くなっていると……行き止まりに行き着く。

そこには一つのドアがあるので、ダーグさんを見ると『問題なし』と頷(うなず)いてきた。

……あさり開いたドア。その先は赤い照明に照らされた、一本道の通路だった。


奥にはまた別の扉があるので、そこまで慎重に進む……その扉も、また驚くほど呆気(あっけ)なく開くと。


「「あ……!」」

「……あぁ、これだ」



……それは、ダーグさんから提供された写真通りの光景だった。

部屋の中央は、巨大な円筒形ケース。透明なそれに入れられ、固定された結晶体……!


「ニルス、これは……」

「プラフスキー粒子の、結晶体……! しかし、なんと巨大な」


ダーグさんからの情報で、分かっていた。

いや、分かっていた……つもりだった。

だが実際に見てみると、その桁違いの質量に圧倒されてしまう。


レイジさんが持つアリスタの数百倍……いや、千倍以上の質量? あぁ、もう間違いない。

ここから粒子を取り出していたのなら、それは立派な”精製工場”だ……!


――更にそこで、部屋全体がライトアップされる。


「な、何!」


更に次の瞬間、僕達の身体全体が突如として重くなり、三人揃(そろ)って膝をついてしまう。


「がぁ!」

「きゃあ!」

「これは重力制御……いや、念力≪サイコキネシス≫か!」

「えぇ、その通りよ。名も知らぬ坊や」


そこで悠々自適に出てくるのは、ベイカー秘書。更に右手をかざしながら、数人の男達も一緒に登場する。

黒スーツにサングラスをかけた男達が、こちらに敵意を向けると……より重圧が激しくなり、僕とミス・キャロラインは床に這(は)いつくばってしまう。


「ニルス! キャロちゃん!」

「キャ、キャロライン……でしてよ……! まさか、あなた達は……」

「HGS患者……!」

「さすがはアーリージーニアス……この場所を見つけるだけでなく、そこまで理解できるのね。
……だったらこれも分かるでしょう? ここを知られたからには、無事に返すわけにはいかないの」

「正気か! 粒子結晶体の危険性は……お話ししたでしょう! 万が一事故が起きれば」

「そんなことはあり得ないわ。この十年、何事もなく進められたんですもの。
……それにとやかく言う行政だって、金の力で黙らせればいい……工場を作ったときみたいにね!」


あぁ、やはりか。恭文さんと鷹山さん達も予測していたことだ。工場がダミーならば、消防などの行政によるチェックはどうやって抜けたのか。

日本(にほん)は地震なども多いゆえに、特に防災設備のチェックは厳しいと聞く。十年以上の運営となれば、それも一度だけの話では済まない。

だが答えは実に簡単だ。……彼らには権力を買えるだけの実弾≪金≫があった。それで買収した可能性もあったんだ。


まさかそこまではと思っていたが……いや、今更か。僕達への買収を示準した時点で詰みだ。


「そうよ……あの人の、そしてアリスタのおかげで、私達は富を手に入れられた! いいえ、夢の時間を掴(つか)むことができた!
だったら私達の行いは正義であり、それを阻むあなた達こそが悪なのよ! さぁ、自覚しなさい! 痛みを持って」

「……お前らがな」


――だがそこで。

ボク達と同じように……サイコキネシスで押しつぶされていたダーグさんが平然と起き上がり――咆哮(ほうこう)。


「――――――――――――――――!」


一瞬甲高い音が響いたかと思うと、奴らが次々と目を丸くし、あぶくを吹きながら倒れていく。ベイカー秘書も例外ではなかった。

揃(そろ)いも揃(そろ)って耳から血を流し、ビクビクとひきつけ……その途端に念力による重圧も解除し、慌てて身体を起こす。

もちろん最優先はミス・キャロラインだ。下手をすれば骨が折れていてもおかしくない状況……だったのだが。


「大丈夫ですか、キャロライン!」

「えぇ、何とか……でもダーグ、あなたは何を」

「高周波で三半規管を刺激して、卒倒させてやったんだ。しばらくはよちよち歩きもできねぇぞ」

「凄(すご)い特技ですわね!」

「た、助かりました。ボク達だけならどうなっていたか」


……ですが、有意義な探索ではありました。だからダーグさんと頷(うなず)き合いながら、ゆっくりと彼女へ近づく。


「この姉ちゃんが、バトルシステムや粒子関係の設備を開発した主導者だ。徹底的に尋問すれば」

「粒子暴走の備えは万全……結晶体も確保できましたし、万々歳ですね」

「じゃあじっくり、朝までお話タイムといきましょうか」

「「Jud.」」


……っと、いけないいけない。ついダーグさんの口調が……だが、ボク達は一つ抜けていたことがある。

それは彼女が、そしてマシタ会長が、既に一手打っていたということだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


朝一番――ついに始まった準決勝・第一試合。初っぱなは僕とりん、そしてメイジン・カワグチの試合。

意気揚々と試合会場に乗り込んだのはいいけど、会場の雰囲気は……それまでのものとは一変していて。


『――ただいまよりガンプラバトル世界選手権、準決勝・第一試合を行います』

「始めるぞ」


その原因は、刹那・F・セイエイのようなマフラーを巻いたタツヤ。


手に持つのはガンダムエクシアの改造機体。

ソレスタルビーイングのエンブレムっぽいバックパックを筆頭に、各所がとげとげしく弄(いじ)られていた。


いや、それ以前に……タツヤの空気が。


「ガンプラバトルを――!」


尋常じゃない殺気。

人が変わったかのような眼光と立ち居振る舞い。

それは二代目のよう……いいや、二代目のコピーそのものだった。


(第70話へ続く)







あとがき

恭文「というわけで、長かった鮮烈な日常BF編も最終局面。……セシリアとセイ達の戦いはまた、後日談だなぁ」

古鉄≪それもまた新しい約束としましょう。というわけでどうも、私です≫

恭文「蒼凪恭文です。そして悩みに悩んだゴーストフレーム……コンセプトは忍者! Gの影忍読んでたら、このノリがいいなって!」

古鉄≪軽いですねぇ、あなた≫


(ミラコロで全てを解決する力技)


恭文「ブルーフレームのハイヒール脚部も採用しているから、足技による打破も得意。
もちろんバックパックを変えれば、M1アストレイのバックパックやら、タクティカルアームズも装備可能」

古鉄≪ブルーフレームなどはミッションに応じて、専用装備を用意していますしね。あんなノリで換装できます。
……でも忍術がマガノイクタチだけしかないのは、忍者じゃないでしょ。爆裂魔法しか覚えていない人みたいでしょ≫

恭文「じゅ、準備期間もあったので……はい」


(い、一応千鳥流しもあるから……)


恭文「それとトウリさんの絡みや、鷹山さん達のガンプラは読者アイディアとなります。拍手、ありがとうございました」


(ありがとうございました)


古鉄≪ただ鷹山さん達については、本格登場はまだ……次回以降ですね≫

恭文「だね。それとV2イマジンは、現在A-Rの第八回世界大会編で活躍しているあの機体の前身って感じです。
ここから一年かけて調整された結果、凄まじい性能に……!」

古鉄≪ジュリアンさんの戦闘、また出したかったんですよねぇ。それならってことで設定したものです≫


(もちろんフルバーニアンの方がカッコいい)


恭文「そんなジュリアンとV2イマジンのおかげで、大分改善点も絞り出せたしね。これで決戦の準備も整えられるよ」

ジャンヌ(Fate)「はい! 一緒に頑張りましょうね、マスター!」

恭文「……おのれは、出ないよ?」

ジャンヌ(Fate)「え……」


(蒼凪荘の聖女、突然登場。そしてとても寂しそう)


ジャンヌ(Fate)「そうか……ガンプラが必要なのですね。でしたら私はダブルーラーオーガンダムという新機体で」

恭文「どうやって!? 一応HP版でもApocrypha編はあったーってな感じで示準してるけど」

ジャンヌ(Fate)「そこは……なんやかんやです!」

恭文「そうか!」

古鉄≪それならどんな読者も納得ですね。失念していましたよ≫

あむ「――そんなわけあるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


(蒼凪荘の聖女、どうやら最近33分探偵のDVDを見たようです。
本日のED:LiSA『ASH』)


ジャンヌ(Fate)「りんやミオ、旋風龍達だけではなく、ウヅキまでメイドに……しかも咲夜まで!
なら私も……マスター、マスターと地球の未来にご奉仕するにゃん」

恭文「それはメイドじゃない!」

ジャンヌ(Fate)「え!? でもあのタヌキ似な人(はやて)が……また騙されてるんですか、私!」

恭文「間違いなく!」

古鉄≪あなた、ちょくちょく騙されて恥ずかしいことをいっぱいしてるのに……懲りませんねぇ≫

ジャンヌ(Fate)「ちょっとお仕置きしてきます……!」(恭文特製ソードメイスを持って)

恭文「行ってらっしゃいー」

フェイト「いや、止めようよ! さすがにあれは駄目ー! スプラッタになっちゃうからぁ!」


(おしまい)






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