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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第6話 『ジョーカーの名は・・・・・・エンブリオ』:1



コンサートの翌日、魔道師が住んでいるマンションに主要メンバーが集まって、会議開始。





議題は、互いに隠している手札について。リビングでお茶を飲みながら・・・・・・まず、僕達の話。










「・・・・・・えっと、時空管理局というのが、その・・・・・・みなさんの所属なさっている警備組織の名称なんですね」



なでしこの言葉に、僕とフェイト、リインにシャーリーにティアナに咲耶は頷く。

今、丁度僕達が何者かという事についての説明が終わった所である。



「それがあっちこっちの世界の管理というか平和維持のための活動をしている。
地球もその次元世界の中にある世界の一つ。みなさんはその組織で仕事をしている魔導師」

「で、アルトアイゼンにフェイトさんのバルディッシュやティアナさんのクロスミラージュ・・・・・・だっけか。
みんなは魔導師の武器・・・・・・というか、パートナーのデバイス」

「しかもしかも、リインちゃんや咲耶さんは、ユニゾンデバイスっていう更に凄いデバイスなんだよね」

「はいです♪」

「・・・・・・な、なんかやや達の予想を、思いっきり飛び越えたすごい話になってきてる」



そうだよね。うん、その驚きと疑問に満ち溢れた表情は当然だと思う。だって、相当アレな話だし。

やっぱり僕みたいに素直に受け入れちゃうのって、相当に珍しいらしい。なんか今納得してしまった。



「そうだよ。それでこの街に来たのと滞在する事になった理由は、ヤスフミが言ったような感じ。私達は所属が本局」



フェイトが言いかけて、何かに気づいたように軽く目を見開く。それから改めて言い直した。



「・・・・・・あ、各世界の枠を超えて起きてる事件や犯罪を追いかける所に入ってるんだ。
でもそこに×たまの情報が入ってきてね、それの確認のために来たんだ」

「そこは蒼凪君の話通りですね。じゃあ、しゅごキャラや僕達の事をその管理局に報告するというのは」

「そこもヤスフミがみんなに説明した通りだから、安心してもらっていい。
ここはもう決定事項にしてるから、覆したりもしないよ」



苦笑気味にそう言うフェイトの言葉に、皆が安堵の色を含めた苦笑いを浮かべる。

まぁどっちにしても、嘘の報告書を作る事には変わりはないという事で。



「・・・・・・あれ、クロノ・ハラオウン提督? フェイトさんと苗字同じですよね」

「うん。クロノは上司であるのと同時に、私とヤスフミのお兄ちゃんでもあるんだ」

「あ、そうなんですか。・・・・・・え、恭文も?」

「ほら、前に話した僕の保護責任者が、クロノさんとフェイトのお母さんなんだよ。
僕も居候みたいな感じでお世話になってたの。今はもう違うけど」



僕の言葉に、あむが納得した顔をしてくれた。他の面々も、なんとかなく察してくれた様子である。



「でも、それならどうして最初から話してくれなかったんですか?」

「あ、そうですよー! 話してくれれば、やや達すごい協力したのにー!!
というかというか、全然やましいところないじゃないですかっ!!」

「確かにな。まぁデカい話ではあるから驚きはしたが、基本問題ない感じだろ?」



あむとややが不満げに言ってきた。で、空海もそこに乗っかってくる。・・・・・・もちろん、ここには理由がある。



「簡単よ、地球は管理外世界・・・・・・管理局の存在を知られていない世界なの」



そして三人の方を見ながら、腕を汲みつつティアナがそう言ってくる。



「実際、アンタ達も管理局なんて初めて聞くでしょ?」

「それは・・・・・・まぁ」

「管理局・・・・・・そこに関わる人間には簡単に言えばそういう世界に居る時は、ちょっとした制約があってね。
例えば魔法とかは簡単に使わないようにしろとか、管理局の事を簡単には教えるなって言う決まりがあるのよ」



それがみんなにあっさり話せなかった部分。まぁ僕だけが関わってるならともかく、仕事絡みだと色々あるのよ。



「例えばここ・・・・・・地球では、魔法やデバイスだけを取っても、充分オーバーテクノロジーだから」

「おぉばぁ・・・・・・てくのろじぃ?」



あ、ややの頭からなんかスチームが・・・・・・やっぱり難しい話はアウトだったか。

なんか顔赤くしてうーうー唸りだしてるし。



「結木さん、簡単に言えば、その時代や世界に存在しないような高度な技術って意味だよ。
ほら、蒼凪君の使っている魔法やアルトアイゼンみたいなデバイスは、地球には無いでしょ?」

「あ、なんとなーく・・・・・・分かったような、分からないような。
え、でも恭文は普通に戦ってますよね? 最初の時もそうだったし」

「・・・・・・そうなの」



ティアナがなんか呆れたように僕の方に視線を向ける。それにみんなも倣うように、僕を見てくる。



「つまりコイツが初手でセットアップして魔法使って×キャラ潰したのは、本当だったらだめだったって事なの。
勢いと成り行き任せでいい感じに転がったからよかったけどさ。でも、たまご的にも管理局的にも、下手すれば大問題だったんだから」



うぅ、なんかみんなの視線が辛い。で、でも・・・・・・あれがあったからなんとか現状に繋がっているわけでして。



「あと、おじいさまは結構昔からそういう事をやってるんです。理由は・・・・・・フェイトさま、どうぞ」

「うん。実はヤスフミ、偶発的に戦わなきゃどうにもならないような事件に巻き込まれる事が多いの。フィアッセさんの事もその一つ。
もちろん、あむさんと偶然会った事もそう。だからヤスフミの周りでは、局関係者じゃないのに魔法の事を知ってる人がかなり居る」

「そういうトラブル関係で、恭文が魔法の事を教えて・・・・・・なんっすね。
お前、マジでそんなキャラかよ。さすがにありゃネタだと思ってたんだが」

「実は私も。というかあなた、一度お祓いした方がいいと思うわよ?」



なでしこと空海に慰めるような視線と共にそう言われて、僕はそのまま崩れ落ちた。



「恭文君、どうしたの? あの、これは」

「・・・・・・ヤスフミ、お祓いもう受けてるの。それも相当本格的なの」

「それでこれなんですか」

「これなの。専門家からは『修正は不可』って断言されちゃってて」



うん、フェイトの言うようにやったよ? でもね、全く効果なかった。

むしろ『悪化したんじゃないの?』って言われるくらいなんですけど。



「・・・・・・あれ、でもどうして恭文は魔導師に?」



そんな僕達の会話など気にせずに、あむがこんな事を言う。なので僕は、軽く視線を上げてあむの方を見る。



「だって、地球で生まれたんだよね。魔法の事とかどうやって知ったの? 友達に魔導師の人が居たとかかな」

「あー、昔こっちの方で起きた魔法絡み事件に関わってね」



・・・・・・君達。その気の毒そうな瞳は今すぐやめて。いや、分かるけど。

さっきまでの話からなんとなく考えてる事は分かるけど、やめて。



「で、地球の方だと魔法資質持ってる人間って少ないんだけど、僕はたまたまそれを持ってる人間だったの」



とにかく僕はガーディアンのみんなの表情は気にしない事にして、話を続けた。



「そこからそのまま魔導師になって・・・・・・ってわけ」

「実際、私とヤスフミの友達で同じような経歴で二人ほど、地球出身で魔導師をしてる友達が居るんだ。
だから地球出身の魔導師というのは珍しくはあるけど、ありえない事ではないんだ」

『・・・・・・なるほど』



とりあえず僕は、テーブルの上のお茶を飲む。・・・・・・うん、ちょっと長めに話してたから、お茶冷めてるや。



「それでね、みんな。今まで・・・・・・嘘つく形になって、本当にごめん」



そう言いながら、フェイトが頭を下げる。僕達もそれに倣う。



「あのね、ヤスフミやリインは悪くないの。二人とも、みんなにちゃんと話せないのが心苦しいってずっと思ってた。
ここまで黙っていたのは全部、私やクロノ提督の指示なんだ。だから、お願い。ヤスフミやリインを責めるのだけは」

「いえ、そこはもういいです。色々と複雑な事情があったのは分かりましたから。
・・・・・・ね、蒼凪君。僕は君の口からちゃんと聞きたいんだ。隠し事は、これで全部?」



唯世が僕の事を真剣な瞳で見て、そう言ってきた。・・・・・・あぁ、やっぱそうくるよね。

実は最大級の隠し事がまだ残ってたりする。ある意味、僕にとってはここからが本番なのだ。うし、頑張ろう。



「実は・・・・・・あと二つある。たださ、そうとうデカイんで・・・・・・とりあえず全員、お茶を飲んで深呼吸を」

「え?」

「いいから」



全員、僕に言われた通りにお茶を飲む。そうして深呼吸。それが終わってから僕は、話を始めた。



「それで、言われた通りにはしたけど・・・・・・お話はなに?」

「うん、単刀直入に言うね。僕、みんなと同年代じゃないの」



瞬間、場の空気が固まった。なぜか固まった。



”・・・・・・あぁ、やっぱりか”

”そうだよね、普通にびっくりするよね。というより、この子達・・・・・・心からヤスフミの事、同年代の男の子って思ってたんだね”

”な、なんか複雑なんですけど”

「同年代じゃないって、どういう事かしら?」



なでしこが額から一筋の汗を流しつつも復活した。だから僕の方を見て、こんな事を聞いてくる。



「言葉通り。僕、年齢ごまかして学校に潜入してるの。あと、ティアナもだね」

「・・・・・・ちなみにお二人ともおいくつ?」

「僕は今年で19歳

「私は18よ」



硬直から戻りかけてた面々は、僕のそんなありふれた一言で完全に・・・・・・石になった。

そしてその石に、ヒビが入った。数瞬後、僕が予想していた事態が起きた。



えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?










・・・・・・あぁ、そうだよね。叫ぶよね。隣近所にも聞こえるような声で叫ぶよね。





うん、分かってた。すっごい分かってた。でも・・・・・・泣きたいです。




















『とまとシリーズ』×『しゅごキャラ』 クロス小説


とある魔導師と古き鉄とドキドキな夢のたまご


第6話 『ジョーカーの名は・・・・・・エンブリオ』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・それでどうしてこういう形になったのかを説明した。主にクロノ・ハラオウンという悪が居る事について。





みんなが僕の熱の入れように相当引いてたけど、きっとそれは僕にじゃなくて、某提督の悪逆非道っぷりに引いてたんだと思う。










「・・・・・・アレ? それならシャーリーさん、あたしにしてくれたあの話は」



あの話? ・・・・・・あぁ、あれか。だから僕もリインもシャーリーも納得した顔になる。



「あー、ごめんね」



両手を合わせて、シャーリーがあむに申し訳なさそうに頭を下げる。



「正直どのタイミングで話すとか私もさっぱりだったから、作り話しちゃったんだ。
昨日の段階では、まさか本当にフェイトさんとなぎ君が付き合ってるとは言えなくて」

「あぁ、そうですよね。それだと小学生と大人が付き合ってる事になりますよね。あたし、多分凄い驚いてたと思います」

「あらかじめその辺り、考えておくべきでしたわね。おかげで色々とらしくない行動の数々が」



まぁ、いいじゃないのさ。いきなり全部ぶっちゃけるわけには・・・・・・あぁ、でもなんかすごい楽になった。

なんか魔法の事とかぶっちゃけた時よりも楽になった。



「えっと、それで・・・・・・蒼凪さん」



唯世がいきなり凄い距離取ってそんな風に呼んで来たので、僕は座っているソファーの上で軽くコケる。

そこから立ち上がりつつ、呆れ気味に唯世を見てしまうけど・・・・・・きっと許されると思う。



「・・・・・・唯世、いきなりさん付けやめて。なんか距離取られてるみたいで困る。
というか学校の中でそれやったら、僕が影でガーディアンのKシメたと思われるじゃないのさ」





僕がそう言うと全員あらぬ方向を見て・・・・・・笑い出した。



おそらく、僕が唯世を影でシメた図を想像したのだろう。なんかムカつくので、ちょっと自分でも想像してみる。



・・・・・・あれ、なんか僕思いっきり悪役チックでちょっと面白いんですけど。ねぇ、なんで?





「・・・・・・とにかくみんな」



僕はちょっとだけ・・・・・・ちょっとだけ居住まいを正して、皆を見る。



「嘘ついてて、本当に」

「・・・・・・あぁもう、頭下げるのとかなしっ!!」



僕の様子を見て察して来たのか、あむがめんどくさそうな顔をしつつそう言う。



「てゆうか、そういうのはもういいからっ! あたしも正直めんどくさいのっ!!」

「・・・・・・いいの?」

「いいよ。・・・・・・ね、恭文。今ここで年齢の事話してくれたって事はさ・・・・・・まぁ、アレだよね。
そういうの関係なく、あたし達と友達に、仲間になりたいって事でいいんだよね」



その言葉に、ガーディアンの面々の視線が僕に集まる。僕はその視線をを受け止めつつ、あむの言葉に首を横に振る。



「・・・・・・ちょい違うな」

「違うのっ!?」

「昨日も言ったけど、ここからは僕の個人的なケンカ。局もフェイト達も関係ない。
僕があの猫男にムカついたから、ぶっ潰すだけ。で、そこにみんなも多分巻き込む」



なんて言いながらも、僕は軽くお手上げポーズ。フェイトやティアナが苦笑し気味だけど、気にしない。



「それに巻き込む以上、それなりの筋ってやつは通さないといけないってだけの話だし。
それが出来ないのは三流のやる事。そしてハードボイルドのやる事じゃない。だから話してるってだけ」

「・・・・・・なにそれ、意味分かんないし」

「あー、ごめんね。コイツ基本的にめんどくさい奴なのよ。素直にそういう事言うの、恥ずかしがってんの」



ティアナがそんな事を言うので、僕は軽く頬を引きつらせる。ま、まぁいい。とりあえず僕は。



「本心ではヤスフミ、みんなの事相当気に入ってるんだ。だから話したいと思うようになった。
まぁ徐々に素直になっていくと思うから、みんな温かい目で見守ってくれると嬉しいかな」

「なるほど、あなた人見知りしやすい方なのね。だからそういう風に強がって」

「あむちーと同じだー。やや、なんか親近感沸いてくるかも」

「「はぁっ!? 一体なに言ってるのっ! てーかそんなんじゃないしっ!!」」

「いや、ハモってちゃ説得力ないだろ。・・・・・・だが、これで今後の対応は決まったな」



だからおのれら、納得したように笑うなー! 普通に意味分からないしっ!!

・・・・・・とりあえず僕は、またお茶・・・・・・あ、もうなくなってるや。



「私、お茶を淹れてきますわ。皆様はそのまま話を」

「あ、咲耶。ありがと」

「いえいえ。・・・・・・おじいさま、もう少し素直になられた方が」

「そしておのれも笑うなっ! 僕は充分素直だっつーのっ!!」



そのまま咲耶は立ち上がって、お盆にみんなのカップを乗せてからキッチンに向かった。



「・・・・・・とにかく」



でも、話は止められない。ある意味ではここからが本題なんだから。



「僕はみんなより年上になるんだけど、今まで通りでいいから。敬語とかさん付けも無し」

「いいの? ややも一応はそういうの必要かなーって思ってたのに」

「いいの。てゆうか、そうしてくれないと困る。・・・・・・さっきも言ったけど、僕は潜入してるの。
どうしても学校の中である程度は溶けこむ必要がある。だから、そういうのは困っちゃうのよ」



もしもガーディアンのみんなに、さっきの唯世みたいなそんな態度取られたらどうなる?

間違いなく仕事に支障が出るね。まぁ、だからここの辺りも話すかどうか相当考えたわけだよ。



「あー、そういう理由もアリか。なら・・・・・・よし、俺は乗った。なぁ、みんなもそれでいいよな?」



空海の言葉に、全員なぜか笑いながらう頷いてくれた。

・・・・・・とりあえず心の中で小さく『ありがとう。それで、ごめん』と呟いた。



「それで蒼凪君、フェイトさん」

「なに?」

「・・・・・・ありがとうございます。僕達の事、信じてくれて」



そうして、唯世がペコリと頭を・・・・・・あ、あのなぜにそれっ!? 僕はかなりびっくりなんだけどっ!!



「あの、唯世君・・・・・・大丈夫だよ? みんなの事は、さっきも説明した通り現地協力者という扱いにするし」



あ、一応補足ね。唯世達は今後アリサやすずかさんみたいな、現地協力者という扱いになる事が決定した。

書類的な手続きがあるわけじゃないし、それなら特に問題は起きないという説明をしたわけだね。



「でも今までのお話通りなら、そういう事なら魔法の事僕達に話したりは難しいわけですから。その・・・・・・一応」

「そっか」

「はい」



唯世は視線を上げて、僕達を見る。それでその視線が少し真剣なものに変わった。



「・・・・・・それじゃあ、今度は僕達の番だね」

「あぁ、そうだな」



唯世達の番・・・・・・例の隠し事か。そうとうデカイとは聞いてたけど、どんなのだろ。

とにかく僕とフェイトにシャーリー達は、唯世の話をちゃんと聞く事にした。



「まずガーディアンの活動の目的は、×たま・・・・・・というか、こころのたまごを助ける事が一つ。
でも、実はもう一つ活動目的があるんだ。・・・・・・エンブリオ。僕達はそれを探している」

「・・・・・・エンブリオ?」



確か昨日も唯世はそのキーワードを・・・・・・あと、例の月詠幾斗も言ってた。うん、よく覚えてる。



「エンブリオは、どんな願いも叶える魔法のたまごなんだ」

「「魔法のたまごっ!?」」

「・・・・・・え、ちょっと待って。アンタそれ、マジで言ってるの?」

「残念ながら、マジです。俺らは唯世がそれを探してるって言うんで、手伝ってるんっすよ」

「面白そうというのもあるんですけど、私達も実際にあるなら見てみたくて」



ど、どんな願いでも叶える魔法のたまごって・・・・・・また魔法少女チックなアイテムが出てきたなぁ。



「・・・・・・ん? という事はもしかして今までのアレコレは、全部その魔法のたまご関連?」

「恭文君、正解よ。それでそれ関連でもう一つ。私達はイースターの人達と争う形で、エンブリオを探しているの」

≪イースター?≫



これも昨日飛び出した単語だね。・・・・・・アレ、なんか聞き覚えある・・・・・・って、当たり前か。

イースター祭とか、イースター島とかイースターホリデーとか、色々あるもの。



「恭文君、確かあなたはこの世界出身なのよね。
フェイトさん達のように、そのミッドチルダという世界の生まれじゃない」

「あ、うん」

「だったら『イースター社』と言えば、分かるのではなくて?」

「イースター社?」



イースター社イースター社・・・・・・待て待て、まさかとは思うけど『あの』イースター!?

・・・・・・そうだよそうだよ、僕それ知ってるっ! てか、なんで今まで気づかなかったっ!!



「ね、みんな。もしかしてイースター社って、マジで『あの』イースター社の事?」



ガーディアン組は・・・・・・というより、唯世は僕の言葉に頷いた。・・・・・・マジかい。



「ちょっと待ってよ。なんでイースター社の人間がそんなもんを探してるのさ」

「もちろん表立っては探していないわ。あくまでも水面下で、それ専用のチームを作ってる」

「で、それの一員が月詠幾斗ってわけだ。俺らがアレと敵対してるのは、そこも理由なんだよ」



あー、でもそれならあの猫男の発言のアレコレも納得だわ。

確かにイースター社くらいデカい企業なら、言っただけの事は出来そうだわ。



「ヤスフミ、あの・・・・・・みんなも待って。イースター社って何?」

「・・・・・・フェイト、地球で6年近く住んでたのに知らないの?」

「え、知ってなきゃマズいのかな」

「マズいね。一般レベルの常識の範疇だよ?」



やっぱりフェイト、ミッドや管理局の事中心で暮らしてたんだね。だからこういう常識レベルの事が分かってない。



「イースター社っていうのは、地球にある世界有数の大企業だよ。
今なおあっちこっちの分野に殴りこ込みをかけて、尽く成功を収めているトップ企業」

≪そして、昨日行われたチャリティー・コンサート・ツアーの協賛スポンサーの一つでもあります≫

「フィアッセさん達のコンサートの?」

「そうだよ。スポンサーになったのは・・・・・・大体僕とフィアッセさんが会った頃くらいからだね。
で、みんなの話通りならそこがそのエンブリオを探してるの」



イースターは、本当に多種多様な業界に殴り込みをかけてる企業で、その規模もデカい。

僕の知る限りでも、イースター工業にイースター食品にイースター電気と色々ある。あと。



「ちなみに昨日恭文が護衛したほしな歌唄ちゃんも、イースターの系列会社の所属なんです」



・・・・・・ややに言われちゃったけど。ふん、いいもんいいもん。



「イースター・ミュージックでしょ? 最近だとダーツとか香川まさしとかも所属してる」



あ、ダーツって言うのは三人組の10代前半の男の子三人組のアイドルユニット。

それで香川まさしは、有線のチャートで火がついてる若手の演歌歌手なんだ。



「うんうん。というか恭文、イースターの事凄い詳しいんだね。やや、ちょっとびっくりかも」

「まぁ、管理局の仕事中心で地球の事なんてどうでもいいって感じのフェイトよりはね」



僕が両手でお手上げポーズ取りつつそう言うと、フェイトが困った顔で唸り出した。



「あの・・・・・・えっと、そういう意地悪はやめてもらえると、嬉しかったり」

「そう。だったらもっとやるわ。フェイトをいじめていたぶって辱めるのは、僕の楽しみの一つだから」

「ヤスフミ、それひどくないかなっ!?」



気のせいだと思う。だってフェイトは誘い受けでいじめられるのが好きな子だろうし。

うん、僕はそれをよく知っているから断言出来るね。フェイトはMだと思う。



「いやいや、フェイトさんもアンタもアンタ達も、ちょっと待ってっ! それおかしいでしょっ!!」

「そ、そうだよね。いじめるのが楽しいって、それだとヤスフミ変態さんだし」

「いや、そっちじゃありませんからっ!!」



フェイトが驚愕の表情でティアナを見るけど、ここは無視。僕はティアナの言いたい事、大体分かってるから。



「何のために地球の一流企業が、専門チーム作ってまでエンブリオを探してるのよっ!!」



うん、ティアナの疑問はここだよ。というか、ロストロギアとかが跳梁跋扈してる次元世界ならともかく、ここは地球だよ?

しかもイースターは一流企業。この手の魔法のアイテムっぽいのを探すために尽力するとは、ちょっと考え辛い。



「あー、そこは僕も疑問なんだよね。唯世、そこの辺りは」

「ごめん、僕達にも・・・・・・まぁ願いを叶えるためというのは分かるんだけど」



唯世が申し訳なさそうに言うけど、そりゃあなぁ。だってそうとしか言えないよ? 僕だって同じ返しするよ。

とにかく、昨日×たまを欲しがってたのはイースターの関係者・・・・・・というか、捜索チームって事になるね。



「フェイトさま、一応お聞きしますがこの場合管理局としては、どういう動き方がありますか?」



咲耶がお茶を持ってきて、そのままみんなの前に置いていく。

そして咲耶の言葉で、フェイトに全員の視線が集まる。



「あ、そうだよねっ! というかというか、管理局ってすっごく大きな組織なんだから、それの力を借りられれば1発解決しちゃうよっ!!」

「・・・・・・ややさん、ごめん。多分それは相当に難しいと思うんだ」



フェイトから出てきたのは、そんな申し訳なさそうな声。表情も・・・・・・そんな感じ。



「もしかして、地球では管理局としての活動に制限がかかるからですか? 管理局の事は、地球では知られていないから」



思い当たったのか、フェイトの方を見ながら唯世がそう言ってきた。

フェイトは、浮かべている申し訳なさそうな色を隠さず・・・・・・いや、隠せずに、頷いて答えた。



「うん。この辺りはさっきティアナが言ったような理由だね」

「でも恭文は・・・・・・あぁ、ごめんなさい。恭文はすっごく運が悪いんでしたよね。
首突っ込むのもあるけど、あむちーと会った時みたいに巻き込まれる事が多いんですよね」

「うん」

「即答で認めるっておかしくないかなっ!? いや、事実だけどさっ!!」



・・・・・・まぁ、確かに僕は普通に魔法やアルト使って戦ったりしてるけどね。

いや、そうしないと死んじゃうからなんだけど。僕は規則なんかより、自分の命の方がとても大事なのよ。



「ただ」

「ただ?」

「だからってこのままにはしておけない。一度クロノに相談は必要だし、局の権限を思いっきり使うような事は出来ない。
けど・・・・・・多分、私達にはエンブリオの確保が指令として下されると思う。さすがにこれは放置出来ないから」



つまり管理局・・・・・・というか、クロノさんの判断を予想するに、そう言う可能性が高いのよ。

エンブリオをロストロギア・・・・・・それに準じるくらいに危険な代物の可能性がある。



「いや、ちょっと待ってくださいよ。確保って・・・・・・つまり俺らがエンブリオを手に入れたとする。
でも、それが管理局の物になると? それはいくらなんでも納得出来ないっすよ」

「ややも同じくっ! こっちが先にエンブリオを探してるのに、横取りされるみたいで嫌だっ!!」



そう否定の声を上げたのは、空海とややだった。ガーディアンの面々は・・・・・・見ると二人と同じくみたい。

だって、表情が苦くて不愉快な気分が思いっきり出てるものだったから。



「・・・・・・ね、フェイト。エンブリオの処置に関しては、今はいいと思うんだ。
実際に物を僕なり唯世達なりが確保してからじゃないと、話だけじゃ判断出来ないよ」

≪というか、この人達の言ってる事は正論でしょ。私だってこれはキレます。
反感持たれても当然ですし、行動の非はこちらにありますよ。ここは最大限配慮すべきかと≫

「うん、そうだね。・・・・・・みんな、嫌な思いさせてごめん。ただ、どうしても知っておいて欲しい事があるの。
今の私の話は、エンブリオが万が一にも危険な物だった場合の話なんだ。そしてその可能性は、かなり高いと思う」

「危険って、エンブリオがですか? いや、あたしマジ意味分かんないし。
ただ願い叶えるだけのものが、なんで危険って話になるんですか」

「あむさん、その疑問はもっともだと思う。でもね、『願いを叶える』からこそ、そういう風になっちゃうんだよ。
・・・・・・局の仕事の中には、ロストロギアの確保というのがあるんだ。あ、ロストロギアというのは」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



というわけで、改めてみんなに説明した。ロストロギアとは、今までの話にも何回か出たオーバーテクノロジーの塊。

過去に滅んだ世界や、あまりに進み過ぎた科学力の産物。それが、ロストロギア。

ただし今回出てきたエンブリオが、ロストロギアに分類されるかどうかは正直疑問ではあるんだけどね。





でも僕達からすると、『願いを叶える』って言う部分が非常に嫌なものを感じさせる。










「・・・・・・あの、それってどうしてですか? あたし、やっぱ意味分かんないし」

「ややもあむちんと同じく。あのね、今までのお話で『おぉばぁてくのろじぃ』・・・・・・って言うのが危険なのは分かるの。
でも、普通に願いを叶えるだけなら別にいいじゃないですか。なんで危険なのかが今の説明だけだと、ちょっとさっぱりだし」

≪ですから、ここからが本題なんですよ。実は局で確保・保管しているロストロギアの中には、そういう代物も存在してるんです≫



アルトの言葉で、ガーディアン全員の表情が一気に変わる。

それは驚きに染まった顔。そして、僕の予想通りの表情になった。



「こてつちゃん、それってつまり・・・・・・エンブリオみたいに願いを叶えるものが他にあるのっ!?」

≪正解です。ただ、それらの大半は非常に問題があるものなんです。
ですから今までの話は、この人達の意見というよりは統計的なデータの観点からの話になります≫

「その手のもの・・・・・・『願望実現器』なんて呼ばれてたりするものは、使用した際のリスクが極めて高い場合が多いんだ。
例えば私が過去に実際に仕事の中で確保したもので言うと・・・・・・願いを叶える代わりに、使用者なり周りの人間の命を奪うとか」

「あー、あったあった。僕もその時は手伝ったから、よく覚えてるよ。そのロストロギア、相当危険だったんだよ。
無差別に人間の命を奪って、その生体エネルギーによって願いを叶えるってシロモノだったから」



僕とフェイトがそう言うと、ガーディアンのみんなの表情が固まった。

多分、そこは予想してなかったと思われる。表情を見て、そんな感じを受けた。



≪そうでなくても、願いをあまりに湾曲に叶え過ぎて、それによって甚大な被害が出る可能性のある物・・・・・・というのもあります≫

「なお、今話したロストロギアもその類だった。だから危険物として、今も局で保管・管理されてる」

「湾曲に叶え過ぎてって・・・・・・どういう事だよ。『命を奪う』ってリスクとは、また違うんだよな」

「そうだよ。・・・・・・私がみんなと同じくらいの頃に、ジュエルシードって言うロストロギアに関わった事があるんだ」





フェイトが思い出すように話したのは・・・・・・あぁ、横馬との出会いの話か。うん、よく覚えてるよ。



横馬・・・・・・なのはとフェイトは、そのロストロギアをとある事情から探し集めていた。



そこが縁で、今までのアレコレが始まった。詳しくは、無印のDVDを見てもらえれば分かると思う。





「もしかして、それもその『願いを叶える』物だったんですか?」

「うん。ただしジュエルシードは今アルトアイゼンが言ったように、叶え方がすごく湾曲されるような物だったんだ。
例えば、これを拾った子が好きな子と一緒に居たいと願った。そうしたら周りの植物が変形して、二人ともその中に閉じ込められたの」

『・・・・・・え?』

「あと、小さな子猫がジュエルシードを拾って、そのまま10メートル弱に巨大化した事もあった」



へぇ、子猫が巨大化・・・・・・巨大化っ!? え、なんでっ! というか、そこは知らなかったんだけどっ!!



「あの、フェイトさん。どうして・・・・・・猫がそんなに大きくなったんですか? 僕には今ひとつ理由が」

「多分、あの子猫が『大きくなりたい』と考えたからだね。
その感情にジュエルシードが反応して、願いを叶えたんだと思う」

「いや、多分そんな怪獣サイズでは大きくなりたいわけじゃなかったと思うんっすけど」

「確かに・・・・・・湾曲にもほどがあるよね。ややがその子猫ちゃんでも、さすがに10メートル級にはなりたくないかも」



僕も正直、それは勘弁したいなぁ。・・・・・・よし、エンブリオに『身長を大きくして欲しい』って祈るのはやめよう。



「・・・・・・恭文さん、まさかとは思いますけどエンブリオに『身長を大きくして欲しい』なんて、お願いしようとか考えてないですよね?」

「ま、まさかっ! そんなわけないじゃんっ!!」

「・・・・・・考えたんだね」

「あなた、そこまでなの? そう言えば昨日もチビをミジンコだったり、ミジンコをナノミクロンにしたり」



なでしこ、そう言うのなら19歳まで平均身長より20p近く低い状態で居なさい。

そうすれば、僕の気持ちが分かるから。



「ヤスフミ、あの・・・・・・大丈夫だよ? 私は、自分より身長の低い男の子が・・・・・・こ、好みだから」

「・・・・・・フェイトさん、その言い方はやめてください。
それはなぎ君だけじゃなくて、唯世君や空海君も該当しますから」

「あ・・・・・・えっと、違うのっ! つまりその・・・私はヤスフミが好きなのは身長の違いとかそういうのは関係ないと言いたかったからであってっ!!」

「あぁもう、分かってるから落ち着けっ! そして顔真っ赤にしないのっ!!
・・・・・・とにかく、管理局では『願いを叶える』ってタイプのアイテムには相当注意を払ってるの」





とりあえずフェイトは、後頭部にチョップをもう1発叩き込んで黙らせる。

フェイトがなんかまた頭を抱えたけど、気にしない方向でいく。

いや、嬉しいけど・・・・・・だからってこれは無いと思うんだよねっ!?



フェイト、お願いだからちょっと落ち着いてっ!!





「その手のアイテムには、相当強いパワーが込められている場合も多い。
もしくは、何かを対価に強制的にそのパワーを捻出して被害を出す」

「それがさっき話に出た『命』の場合もあると。あとは湾曲して願いを叶えるタイプだったよな。
・・・・・・つまり魔道師組の意見としては、エンブリオがそういうアイテムの可能性もあるって事か」

「うん。もちろん現物が手元に無いわけだし、今の段階では確定は出来ないけど。
でももしそうだった場合、ちょっと注意する必要が出てくる」

「ちなみに恭文君、今まで局が確保した中ではいわゆるドラゴンボール的なものはないの?
もうちょっと言うと、リスク無しで使用者の願いを叶えるもの」

「データ的には・・・・・・ないね。ま、アレだよ。
神龍は僕達に『自分に頼るな』って言って、どっか行っちゃったんじゃないの?」



僕はそう言いつつもお茶を取って、一口飲む。・・・・・・うん、そうかも知れないね。GTの最終回みたいにさ。



「とにかくこの辺りは、やっぱり現物を調査してからだね。もしくは資料関係だよ。
今のままじゃ話にならないけど、そういう可能性がある事だけは覚えてて欲しいんだ」

「まぁそういうお話なら・・・・・・納得したわ。あむちゃん、ややちゃんも同じよね?」

「うん。本当にそういうアイテムだったら、やや達が本当に使っちゃうわけにはいかないもん。
ちゃーんと管理局の人達が保管してくれるなら、それでもいいかなーって」

「まぁ・・・・・・あたしも一応は。見つけたものを横取りされるのは、なんかムカつくけど」



あむはなんか不満そうに、僕とフェイトをチラチラと見てくる。フェイトは困った顔だけど、これが普通の反応だと思うな。

そりゃあ横から最もらしい事を言って、かっさらわれたら文句の一つも言いたくなる。



「でも日奈森、これで万が一エンブリオが話に出たようなアイテムだったらどうすんだ?」

「あ、それはあるよね。それでやや達の誰かが願いを叶えて、本当に大変な事になっちゃったら・・・・・・責任取りようがないよ。
例えばフェイトさんと恭文が実際に見たっていうアイテムだったら、使った人も周りの人も無差別にだもん。そんなの怖いよ」

「それはね? でも・・・・・・うーん、なんか引っかかるんだけど、どうしてなんだろ」

「あむちゃん、それはきっと私達が実際にエンブリオがどういうものかを、よく知らないし考えてないからじゃないかしら」

「そう、なのかな」



・・・・・・アレ、なんか今凄い気になる発言飛び出なかった? 『よく知らない』ってどういう事ですか。

だから僕もリインも、軽く首を傾げる。なおそこは僕達だけじゃなくて、困った顔をしてたフェイト達も同じく。



「それはそうだね。具体的にはなんにも・・・・・・ただ単に、願いを叶えるものとだけ考えてただけ。
・・・・・・でももしかしたら、そんな危険極まりないトンデモアイテムの可能性も捨て切れないんだよね」



唯世がなんか頭抱えてすっごい落ち込みだしたっ!? というか、オーラが暗いしっ!!



「だ、大丈夫だよ唯世っ! 主人公キャラっぽいあむが魔法少女な感じバリバリなんだよっ!?
きっとエンブリオも今言ったみたいな要素0で」

「いやいやっ! あたし基準に考えられても困るんですけどっ!?」

「この際いいでしょうがっ!! ・・・・・・で、僕からみんなから一つ質問。
エンブリオの事を『よく知らない』ってどういう事? みんな、探してるんだよね」

「・・・・・・実は、僕も藤咲さん達も実際にエンブリオを見た事が無いんだ。資料らしい資料もほとんどない」

『・・・・・・はぁっ!?』



魔道師組の声がハモってしまったのは、ここにきて判明したとんでも事実のせい。いや、これはこうも言いたくなるって。



「もう少し言うと僕達、エンブリオは人のこころのたまごが変化したものだという事しか、知らないんだ」

「誰かのこころのたまごを抜き出すと、それがエンブリオに変化する・・・・・・と言われてるの」



こころのたまごを抜き出す? そんな事出来・・・・・・いや、ちょっと待って。

そう考えると、色々話が繋がってくるぞ。例えば、どうして昨日の場にイースターが居たのかとか。



「それでね、恭文。イースターの連中・・・・・・何度かそういう事してるの。
子ども達の中からこころのたまごを抜き出して、エンブリオを手に入れようとしてる」

「でもでも、こころのたまごを無理矢理に抜き出しちゃうとたいていは×たまになっちゃうんだ。
そういう時はあむちーがキャラなりして浄化してって感じ」

「僕達、そういう部分からもイースターと敵対関係になってるんだ。
イースターの行動は・・・・・・人のこころのたまごを蔑ろにする行為は、見過ごせないから」

「つまりさっき話に出た『専門チーム』が、そういう博打的な事をずっとしてると。
で、察するにそのチームの中に居るんだね? 人のこころの中からたまごを抜き出す能力を持ったのが」



僕の言葉に、あむの目が見開いた。そして表情が驚きに染まる。



「・・・・・・そうだよ。あたしも後ろ姿しか見た事ないけど、大人の男の人。というかあの、なんで分かったの?」

「分からないわけがないでしょうが。大体、あむが今自分で『抜き出してる』って言ったし」

「あ、そっか」





まぁ話は大体分かった。イースターが、マジで悪の組織みたいな事してるってのもだ。

・・・・・・でも待って。ならどうして昨日はたまごを確保しようとしてたのかな。

以前あむから聞いた話も合わせて考えると、イースターは×たまになったたまごを『ガラクタ』と見てる。



だから壊したとも考えられるのよ。なら・・・・・・うーん、謎が多いなぁ。





≪じゃあ唯世さん、イースターの連中の情報量も、みなさんとさほど変わりはない感じでしょうか≫

「多分ね。そうじゃなきゃ、こんな非効率な事を続けるはずないよ」



うん、この作戦は非効率なのよ。小学生の唯世から見ても、そうとう非効率。

だって一人一人のたまごを、博打的にどんどん抜いてくのよ? めんどくさいって。



「とにかく唯世君達もあの月詠幾斗って子も、それほどエンブリオについて知識量があるわけじゃないんだね。
ただ単に願いを叶えるたまごってだけで、どこにあるとか実際にどんな形状をしているかとか、そういうのは分からない」

「分かってる事は、人の中からたまごを抜き出すとエンブリオか×たまのどちらかに変化するという事。
じゃあ昨日月詠幾斗君があの場に居たのも・・・・・・ううん、そもそもあのタイミングで×たまが出てきたのも」

「はい」



フェイトとシャーリーの言葉に、唯世は頷いた。



「多分・・・・・・アレはイースターの仕業です。×たま自体は自然発生する事もありますけど、タイミングがあまりに良過ぎる」



苦い顔でそう言う唯世を観て・・・・・・僕とフェイト達魔導師組は、顔を見合わせる。



「・・・・・・エンブリオの存在の有無や詳細はともかく、一度クロノには相談だね。
ここは絶対。ただ、実際にたまごを使って何かやろうとしてる人達が居るのは間違いない」

「それでアイツらは・・・・・・まぁ、あむ達の話を聞く限りはマトモな使い方はしなさそうですよね」

≪というか、しないでしょ。人の夢を『ガラクタ・道具』扱いするような連中に、そんな器量を求める方が間違ってますよ≫

「あー、そこは同意見ね。てーか私、そんなのが上司だったら一生お付き合いしたくないわ」



アルトとティアナの言葉で、フェイトが少し悲しげな顔になる。

それはきっと・・・・・・色々突き刺さってる部分があるせいだよ。



「とにかくフェイト、僕は連中をぶっ潰すから。・・・・・・イースターの連中、僕の嫌いなタイプっぽいし」

「そこはリインも同じくです。というかというか、ケンカ売ってくれた礼をしないといけないのです」

≪まぁ、付き合いますか。いつも通りに私達のクライマックス、見せつけてあげましょう≫

「・・・・・・もう、勝手に決めないで欲しいな。色々方針があるのに。
でも、そうだね。それならヤスフミ、アルトアイゼン、リイン」



フェイトが僕とリインを真剣な目で見る。なので僕達はその視線をしっかりと受け止める。



「しばらくの間、三人はガーディアンのみんなの・・・・・・エンブリオ捜索と×たま対処にこのまま協力して。
私達はバックアップに回る。それでもしエンブリオが確保出来る状況が来るようなら、確保して」

「・・・・・・それは執務官としての命令?」

「違うよ。私もそのケンカに乗るから、これはお願いだね。うん、そこは昨日言った通り」

「分かった。ま、さっき言った通りな感じだから、そこは大丈夫」

「ん、ありがと」



僕の返事に、フェイトはそう言いながら満足そうに笑う。

それだけでやる気がすっごい出てくるから、不思議だよ。



「ですがフェイトさま、それならエンブリオはどうなさるおつもりで?」

「実際に局で保管するかどうかは、やっぱり物を見てから判断だよ。
危険性が本当に少ないのなら、唯世君達に預けちゃってもいいんだし」

「えっ!? あ、あの・・・・・・いいんですかっ! 僕達、局員でもなんでもないのにっ!!」

「いいよ。というより、保管出来るような物かどうかが問題になってくるんだ。
例えばみんなみたいなキャラ持ちじゃないと、見えないものかも知れないし」

「・・・・・・あぁ、なるほど。私もフェイトさんに同感。確かにその可能性はありますね。
話通りなら、こころのたまごが変化したものがエンブリオなんですし」



ただ、ここの辺りもまだ確定じゃない。何にしても情報があやふやであいまいなのよ。

出現条件そのものが間違ってる可能性もあるし、やっぱり分からない事だらけではある。



「だからイースター社の人達も、同じキャラ持ちである月詠幾斗君を捜索に当てているとも考えられるよ?」

「エンブリオはなぎ君や唯世君達みたいに、こころのたまごやしゅごキャラが見える子じゃないと確保出来ないと」

「うん。ただ・・・・・・なんにしても、情報が少ないな。もうちょっと調べてみないと」



そう考えると、やっぱり今回はイレギュラー要素多いよなぁ。だからフェイトだって、ちょっと困り顔だし。

だって百聞は一見に如かずって言うのが、全く出来ない人も居るわけだし。



「え、えっと・・・・・・つまりどういう事っ!? ややよく分かんないー!!」

「つまり蒼凪君達に力を貸してもらった上で、エンブリオ探しを今まで通り出来るって事だよ。
あの、フェイトさん。それは僕達としてもありがたいんですけど・・・・・・いいんですか?」

「うん、いいよ。・・・・・・ただし、何回も言うけどエンブリオが本当に危険なものじゃないというのが、まず一つ。
そして唯世君達がエンブリオの力を悪用しないというのと、何か情報が入ったら私達にも相談して欲しいというのが絶対条件かな」

「あー、そこは大丈夫だよ。なにか面倒が起こるようなら、エンブリオには『世界で1番美人なギャルのパンティーおくれ』ってお願いすれば」



僕が安心させるように笑いながらそう言うと、フェイトが右手で僕の頬に張り手をかましてきた。



「フェイト、いきなり何するのっ!?」

「当たり前だよっ! い、い・・・・・・いきなりなに言い出すのっ!?」

「何言ってるのっ! ドラゴンボールではこうやって不老不死とか、そういうとんでもない願いが叶えられそうになったのを止めたんだからっ!!」



そう、ウーロンさんの素晴らしいアイディアである。なんの問題があると?



「だからってどうしてそういうセクハラ気味なとこに行くのかなっ! だめっ!!
それは絶対にだめっ! 普通に『髪のキューティクルをよくしてください』とかでいいよねっ!?」

「フェイトさんっ! それもちょっと違いませんかっ!? なんでキューティクルにいっちゃうんですかっ!!」

「え、えっと・・・・・・最近先の方にちょっと痛んでるとこ見つけて。うぅ、気をつけてたのになぁ」

「それフェイトさんの願望じゃないですかっ!!」





ティアナにそう言われてからすぐにフェイトは咳払いをして、僕に『ヤスフミのバカ』って言うような視線を送る。

それから、改めて唯世達の方に向き直る。理不尽だと思ったのは、きっと罪じゃない。

それになぜだろう、みんなが若干呆れた目で僕とフェイトを見るのは。



フェイトもそれを感じ取ったのか、ちょっと居心地悪そうだし。





「もちろんまだ上司に相談はしてないから、ここで私の言う事を確定で受け取られても困るんだけどね。
でも、出来る限りあなた達にいい方向で決着がつくようにはするよ。そこは約束するから」

「いえ、今こうやって言ってくれただけでも十分です。
あの、なんというか・・・・・・本当にありがとうございます」



唯世が頭を下げてペコリと礼。それにフェイトは首を横に振って答える。否定ではなく『いいんだよ』という意味で。



「というか・・・・・・あのね、実は結構打算的な部分もあるんだ。
多分にみんなの事を利用しちゃう事になるの」

「というと?」

「まぁ、いずれ疑問に思われる事だから今のうちに白状しちゃうと・・・・・・私やティアは、×たまへの対処が出来ないかも知れないの」



フェイトが少しだけ苦い顔で言うと、ガーディアンの面々が表情を変えた。

いや、二人だけ納得したような顔をしてるのが居る。それは・・・・・・唯世となでしこだ。



「もしかして、魔法の力で×たまを浄化出来るかどうか分からないんですか?」

「うん」

「でも、それなら恭文君は」



全員の視線が僕に集まる。ここは当然だ。僕は×たまの浄化が出来るから。



「ヤスフミがキャラ持ちでも無いのに浄化・封印出来る理由、私達の方でも全く分からないんだ。
ヤスフミは魔法の設定を弄ったりはしてないであれだから」

「つまり恭文君が×たまに対処出来るのは、魔法能力のおかげではなかったんですね」

「僕達、今までの話から魔法の力で浄化してるとばかり思ってたんですけど」

「そうなんだ。なにより私もティアも、肝心のしゅごキャラやこころのたまごが見えない。だから対処はかなり難しいと思う」





ここは大事な点である。戦うというのは、やっぱり視覚から始まる部分が大きい。

もっと概念的な事を言うなら、気配なり視覚なりで戦うべき相手の存在を認識するところから始まる。

というか、それが前提となる。ここが出来ないと、戦うという行為は出来ない。



いや、戦う以外の事・・・・・・例えば、話したり、触れたりというコミュニケーションも無理。

具体例を出すと、ラン達とフェイトがそれになる。今も話せないでいるもの。

でも、僕とリインとアルトはともかく、フェイト達は認識と言う前提を作る事が出来ないの。



これはとても重要な問題。フェイト達からすると×キャラと戦えというのは、かなりの無茶振り。



『実態の無い霧のようなものと戦え』と言っているのと同じなのよ。





「たまごの状態は大丈夫なんだけど、まさか浄化出来るかどうかを確かめるために、魔法でたまごを撃つわけにはいかないし」

「そんな事したら、×たまになった『なりたい自分』は粉々になるかも知れないでしょ? さすがにそれは責任取れないもの」

「なるほど、恭文君だけでは戦力として足りないかも知れないと。
私達と協力という形は、フェイトさん達管理局組にとっても必要手というわけですね」



そんな打算に納得した様子のなでしこを見て、フェイトの表情が申し訳なさそうなものに変わる。



「・・・・・・うん。本当はね、戦闘訓練も受けてないような、本当に普通の子どもであるあなた達にこんな事させたくない。
エンブリオの危険性の問題もあるから・・・・・・ごめん、もしかしたら昨日のヤスフミみたいな危険な目に遭う可能性もあるのに」

「あの、大丈夫ですから。僕達としても、蒼凪君が力を貸してくれるというだけで十分ありがたいですし。
それにエンブリオを探すのは・・・・・・僕達の目標の一つでもありますから。それで、僕の夢です」

「・・・・・・唯世君」



あぁ、なんか落ち込みモードに入ったしっ! フェイト、お願いだからしっかりしてー!!

と、とりあえずお茶を手に持たせて、飲ませよう。・・・・・・よし、飲み始めた。



「ただ、ちょっと安心しました」

「え?」

「フェイトさんやランスターさん達がたまごが壊れたり、なくなったりする事に恐怖というか・・・・・・躊躇いを持つ人達で」

「なに言ってるのよ、当たり前でしょ。確かにしゅごキャラは見えないけどね。
でも私やフェイトさんにだってあるもの。ちゃーんと、なりたい自分って言うのがね」










そんなティアナの言葉を聞いてから、全員お茶を手に取って・・・・・・一口飲む。





それで少しだけ、気分が楽になった。うん、色んな意味でさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



話はそこから少しだけ進行して終了。僕はあむ達を近くまで送る事にした。





そして全員・・・・・・なんか満身創痍というか、やり遂げた感が出てる。










「な、なんだか・・・・・・濃い話だった」

「というかさ、あたし・・・・・・途中から全然付いて来れなかった」

「ややも」

「まぁ、色々あるけど今まで通りでいいってのはよかったよな。
フェイトさん、お仕事キャラになっても話せる人だったし」

「そうね。あとはクロノ提督・・・・・・だったかしら。その人がどういう判断を下すかね」





夕暮れの街を歩きながら少し思う。その辺りは大丈夫と思いたい。

クロノさんは柔軟な判断が出来る人だもの。きっと、大丈夫だ。

まぁエンブリオが見つかるまでは、付き合うのは確定だね。



うぅ、それまでは小学生かぁ。やっぱり辛いなぁ。





「でも、あなた的には気分はだいぶ軽くなったんじゃないの?
ここに秘密を共有する人間が何人も居るんだし」

「まぁ、それはね」

「でもよ、お前俺より小さいのは問題だろ。ちゃんと食べてるのか?」



空海がそう言いながら頭を撫でてくる。・・・・・・なんだろう、やっぱり複雑。いや、自分でこれでいいって言ったんだけどさ。



「ちゃんと食べてるよ。前衛はカロリー消費激しいから、食べないと持たないし」

「前衛? ・・・・・・あぁ、そう言えばお前は刀使うんだったよな。だから前衛か」

「そうだよ」

「でも魔導師・・・・・・魔法使いなんだよな。なんつうか不思議だ」



歩きながら、空海が軽く首を傾ける。というか、他のみんなも同じくだね。



「アレだよ、僕やフェイトはRPGの魔法剣士みたいなものって思ってくれていいかも」

「魔法剣士・・・・・・あ、それなら俺でもイメージ出来るぞ。
ようするに、魔法使えるのが魔導師ってイメージでいいんだよな」

「そうそう。で、ティアナが遠距離タイプの攻撃が得意な魔導師? ほら、クロスミラージュが銃型だしさ」

「そう言えばそうだったわね。私、アレは驚きだったわ。魔法と言えば、そういう杖だと思ってたから」

「フェイトさんのバルディッシュも、杖みたいだけど実際は斧とか鎌だったしねー。うー、やや見ててドキドキだったよー」



ややになでしこが楽しそうな顔をするのは、デバイス説明の時にセットアップしたみんなを見たから。

特にバルディッシュは人気だった。ややはザンバーも見たがってたけど、さすがに部屋の中では無理だって。



「でもよ、だったらなんでそんなに小さいんだよ。身体ちゃんと鍛えてるなら、成長してくはずだぞ?
バスケやってるやつは、やっぱり身長伸びたりするしさ」



僕の頭に手を乗せながら空海がそう言ってきた。他のみんなも同じ疑問を持っていたのか、僕を空海と同じ目で見る。

・・・・・・まぁ、いいか。話しちゃおうっと。これからは年齢とかそういうの関係なく仲間やってくんだし。



「魔導師になったの、9年前なんだけどね。ほら、僕・・・・・・事件に関わったって話したじゃない?」

「あぁ、言ってたわね」

「で、その事件の中で強い魔導師と戦って死にかけて、大怪我したの。もう瀕死の重傷。
生きてるのが不思議なくらいでさ、みんなからしこたま怒られたりしたのよ」



みんなで歩道を歩き、車道を通り過ぎる車たちを見ながら話す。そうながら・・・・・・思い出す。

あの時の事。色んな意味でターニングポイントになった一件の事を。



「でさ、その怪我が治った後も事件が解決するまでは、僕より相当に格上な魔導師と何回も戦ったりしたの。
事件が解決してからも魔導師でも魔導師以外でも格上なのと戦ったりして・・・・・・その中で怪我とかも多くてさ」

「まさか・・・・・・そのせいなのか?」

「うん。僕の主治医の先生曰く『治ろう治ろうとする事で成長していこうとする力まで使ってる』・・・・・・だって。
まぁ、元々小さかったってのもあるけど。僕、あむと同い年の時はあむより10センチ近く低かったもの。これは体質だね」



10歳時、僕は大体140センチ前後だね。・・・・・・まぁ、150の大台は超えられたから、よかったのかな。



「そうだったのか。いや、悪いな。変な事聞いちまって」

「いいよ、別に。おかげでみんなと同じ学校に通えると思えば、まぁまぁ悪くは無い」

「お、嬉しい事言ってくれるじゃないか。お前って奴は」



ニコリと笑ってそう言うと、空海がまたくしゃくしゃと撫でてきた。・・・・・・まぁ、これもそこそこ悪くないかな。



「・・・・・・あ、ややはここでお別れかな」

「私もね」

「僕も同じ方向だから」



そう言って、交差点に付いた途端に少しだけ離れたのは唯世とややとなでしこ。



「恭文、お前ももうここまででいいぞ。日奈森は俺が家まで送ってくしよ」

「そっか。なら空海もあむも、気をつけてね」

「おう、お前もな」

「・・・・・・あのさ、恭文」



あむがクリクリな瞳で僕を見つめる。ピンク色の髪は、夕焼けの赤の中でもその色合いをくすませずにそこにあった。



「これから、よろしくね。まぁ、×たま対処とか、エンブリオとか・・・・・・色々」

「うん、よろしく」









そのまま、僕は手を振ってみんなを見送った。見えなくなるまでずっと。

それから僕は振り返り、歩き出す。もち、家に帰るために。・・・・・・あ、そうだ。

頼まれた夕飯の材料、ちゃんと買わなきゃ。





今日のメニューは・・・・・・とり天っ! 大分名物なんだけど、すっごく美味しいのー!!




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



ヤスフミがガーディアンの皆を送っている間に、私達はクロノに通信をかけて分かった事を報告。

まずエンブリオというアイテムの事。そしてイースター社がこの件に絡んでいる可能性。

そしてヤスフミとほぼ互角にやり合うだけの力を持った、あの男の子の存在。キャラなりの能力の高さ。





そのすべてを聞いてからクロノは・・・・・・また、頭を抱えた。










「・・・・・・クロノ提督。私が思うに、もうその反応は飽きられてると。いささかワンパターンですよ?」

『ほうっ!? なら、他にどういう反応をすればいいのかを聞きたいんだがな・・・・・・!!』



クロノはどこか恨めしそうに私達を見るけど・・・・・・見られてもどうしようもない。

だって、全部事実であるのは間違いないんだから。



『・・・・・・とにかくフェイトがその子達に説明したように、管理局として公に名前を出して介入するのは無理だ。
肝心要のキー達を、こちらは誰も視認できない可能性もあるわけだしな』

「百聞は一見に如かずってのが出来ないわけですしね。でも、だからと言ってエンブリオを放っておくわけにはいかない」

『そうだ。もしも本当に願いを叶える力があるなら・・・・・・いや、そうと取られてもいいほどの力か。
その力がそのエンブリオにあるなら、それを悪用される事は次元世界全体の問題にもなりかねない』





・・・・・・でも、これで少しだけ分かった。どうしてオーナーが咲耶をこの時間に送る事を許したのか。

多分未来のヤスフミから、エンブリオ絡みの話を聞いたんだ。

もしかしたらイースター社にエンブリオを渡すのは、相当まずいのかも知れない。



確保出来るなら、早めに確保しないとダメかも。





『フェイト執務官、たった今から任務内容を変更する』

「はい」

『今から君達はガーディアンの面々と協力して、エンブリオの確保を目的として動いてくれ。
あと、エンブリオが危険なものであるなら、破壊しても構わない。その辺りは君達の判断に任せる』





ここは予想通りだね。うん、予想通りだから、私達は全員揃って頷いて答える。

でも破壊出来れば・・・・・・・いいんだけどね。少なくとも、現状の私達には無理だと思う。

やっぱり、この状況でキーになるのはヤスフミとリインか。



私達はそのサポートに回る。それでみんなには頑張ってもらって・・・・・・だね。



なんというか、やっぱり私は最低だね。六課でのアレコレを、また繰り返してるのかも知れない。





「でもクロノ提督。失礼ながら・・・・・・それだとガーディアンの子達が。あとはエンブリオの最終的な所在が」

『もちろん、それは本当に非常事態の場合に限りだ。
・・・・・・なぁフェイト執務官、僕は目に見えないものは基本的には信じない主義なんだ』



クロノがいきなり神妙な顔でそう言ってきた。あ、あの・・・・・・それはどういう事かな。



『つまりだ、見えないものをどうこう言われても、仕事にそれを持ち込むような真似はしたくないんだ。
僕はどこかの王様が裸だったら、あなたは裸ですと言いたいんだ。分かって・・・・・・くれるか?』



その一言で、私は全て理解した。それから心の中で静かにお礼を言う。お兄ちゃん、ありがとう・・・・・・と。



「・・・・・・そうですね、私も見えないものどうこうを仕事に持ち込むのはあまり好きではありません。
やはり、ちゃんと目に見えるものを信じたいですし」

『そうか、分かってくれて嬉しいよ』



つまり、エンブリオが非常に危険なものでない限りは、唯世君達にそのまま預けてもいいと暗に言ってくれてる。

だって、本当に目に見えない可能性だってあるんだから。見えないものをどうやって確保して破壊しろと? そんなの、私には無理。



『とにかくだ、君達は今まで通りそちらに居てくれて構わない。
本局の方も今は平和だしな。それとランスター執務官補佐』

「はい」

『次の執務官試験・・・・・・9月だったな。君には試験の時期が近づいたら、勉強のための時間をちゃんと確保すると約束している事だし』





うん、私は六課でティアを補佐官に誘う時・・・・・・そう約束した。

ティアはここが終着点じゃないから、先に行けるように。

夢に向かって進めるように、そのための時間を確保すると。



もしかしたらそう言ったのは、私なりの罪滅しなのかも知れない。

そうすればみんなを利用した罪が少しは消えると思って・・・・・・ヤスフミと付き合うようになってから、そこに気づいたりした。

なんというか私、やっぱり中学卒業してからは色んな意味で不健康な生活を送ってたのかな。



ここ1年は局員としての自分に違和感を持ちまくりだから、どうしてもそう思ってしまうんだ。

うん、思ってしまうの。だから今だって、一応でも道は決めたけど・・・・・・迷っていたりはする。

このまま局員でいいのかなって、かなりね。それで私の夢、貫けるのかなと。



そこはJS事件を通して、私の評価が上がった事を実感すればする程かな。逆に居心地悪くなってくるの。

なんか色々だめだね。もう一度自分なりの夢を追いかけようって決めて、それでここまで来たのに。

局員・・・・・・辞めちゃおうかな。なんだかね、局員でなきゃいけない理由が全然見つからないんだ。



例えば嘱託になっても、執務官の資格や福利厚生の恩恵は受けられる。ただ、立場やキャリアがなくなるだけ。

もう私が執務官の資格を取った時とは違う。私が執務官で居るのに、局員でなきゃいけない理由はどこにもない。

・・・・・・ついこんな事を考えてしまうのは、きっとヤスフミには見えているしゅごキャラが見えないせいだと思う。



私にもこころのたまごがあるなら・・・・・・私のたまごは、本当にどこに行っちゃったんだろうって考えるんだ。



もしかして私のたまごは、私が局員であるために壊してしまってもう無くなっちゃったのかなって、考えちゃうんだ。





『もし君に不都合がなければ、そちらに居る間をその時間と考えて試験勉強に集中するというのは、どうだろうか』

「ありがとうございます。是非、そうさせて頂ければ嬉しいです」

『そうか。だが、試験問題はともかく、実技・・・・・・戦闘技能は』

「それなら大丈夫です。フェイトさんにアイツも居ますから」

『・・・・・・納得した』










こうして、しばらくはここで平穏な生活を送る事が決まった。

そして私のアレコレと、改めて向き合う時間の始まり。

ただ、悔しい。危険性が大きいから仕方ないと言えば仕方ない。





それでも・・・・・・大好きなあの子と一緒に戦えないのが、ちょっとだけ悔しい。やっぱり私も見たいな、しゅごキャラ。




というか、フィアッセさんは見れたのに・・・・・・なんだか私、ちょっと嫉妬してるのかも。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



それから三日後の放課後。僕は平和に、ロイヤルガーデンでお茶を飲んでいた。

なお、今日の茶葉は僕の差し入れたダージリン。それに合うようにスコーンも焼いて来た。

ジャムまで頑張って作ってきた。まぁ、嘘ついてきたお詫びも兼ねて。





みんなには非常に好評で、とても嬉しい気持ちになるのは、きっと気のせいじゃない。





ただ、一つ残念な事がある。日奈森あむが・・・・・・居ない。










「日奈森、今は職員室だっけ?」

「えぇ。授業中にたまごを没収されたの」

「まぁ、体育の授業でアレはなぁ」



あむは体育の授業中に腰にアクセサリーとしてつけてたたまご・・・・・・しゅごキャラ達を没収された。

で、没収した担任の二階堂先生にそれを返してもらいに行ってるとか。




「普通に考えたら、アレはアクセサリーだもんね。
ファッションリーダー過ぎるのも考え物でしょ」

「あら、あなたがそれを言えるの? 待機状態のアルトアイゼン、思いっきりアクセサリーだったのに」

「にゃはは・・・・・・そこを言われると辛いなぁ。普通に僕も没収対象だよね」





でも、変だなぁ。あむがあんな風にアクセサリーにしてたまご持ち歩いてるの、今に始まった事じゃないのに。

どうやら、僕が学校に来る前からやってたみたいだし。なのに、なんで今?

うーん、機嫌悪かったのかなぁ。でも、没収したのは二階堂先生でしょ? 基本温厚な人よ?



あの人、そんな気分でそんな事する人とは思えないし。





「そう言えば、こてつちゃんは無事だったの?」

「そういやそうだよな。お前、日奈森やなでしこと同じクラスだってのに」

「あ、大丈夫。今、アルトは家だから」



スコーンに同じく早起きして作ってきたマーマレードジャムをつけて、パクリ。

・・・・・・あぁ、今日食べ切るつもりで砂糖少な目煮詰め具合緩めで作ったから、新鮮な味わいがまたなんとも。



「家?」

「うん。シャーリーと咲耶と一緒に、お仕事。・・・・・・この間のコンサートで僕達を見てたストーカー野郎の割り出し」

「あぁ、そう言えば私達尾行されてたのよね。
でもあなた、どこに居るのかとか分からないって言ってなかった?」

「うん、言ったよ。だから、ちょっと絡め手を使った」

「絡め手?」



僕は紅茶をまた一口飲んでから、分からないという顔のみんなに説明する事にした。



「アルト・・・・・・デバイスには、各種サーチ機能があるの」

「サーチ機能・・・・・・あぁ、レーダーみたいなもんか?」

「そうだよ。これを使うと魔力反応とか生体反応、熱量とか体型とかで誰がどこに居るのかってのが分かるの。
で、アルトにはコンサートの時、バルディッシュやクロスミラージュに協力してもらって、会場中をサーチしてもらってた」



そのまま右の人差し指をピンと立てる。それから、言葉を続ける。



「ただし、ある条件を付けた上で。実は尾行に気づいてから、学校の中でもサーチしてたんだ。
なのでその時に取ったデータと、先日のデータを合わせてそれに符合する人間・・・・・・ようするに」

「この学校の人間でその時会場に居た人達を、そのサーチで絞り出したって事かしら」

「正解。・・・・・・でもさ、これが結構人数が居て、大変なのよ」



コンサート会場が学校・・・・・・というか、この街の近辺というのがネックだった。

おかげで三日経った今でも、ストーカー野郎の絞り込みに時間がかかってる。



「でもでも、それだったら誰がやや達を見てたとか、分かんないと思うんだけど」

「いや、結木さん。そこにもう一つだけ条件を加えれば分かるよ」

「え?」



・・・・・・さすがはキングである。僕が何をしたか、すぐに理解してくれた。



「いい? 僕が思うに、監視するためにはある一定の距離をしっかりと取らないとダメだと思うんだ。
あ、距離を取るって言うのは離れるという事じゃないよ? その距離を維持するという意味」

「まぁ・・・・・そうだな。監視カメラとかでずーっと見てるんじゃなければ、対称が見える位置に居ないと見る事自体が出来るわけない」

「うん。つまり、フィジカルでの戦闘や察知の専門家である蒼凪君でも分からないくらいに距離が離れている。
だけど、その距離を学校の中でもコンサートの時でもずっと維持している人間が」

「恭文君や私達を監視している存在・・・・・・というわけね。
もっと言えばコンサートの時のデータだけじゃなくて、学校内でのデータも合わせて検証していけば」



そう、確実に尻尾は掴める。ふふふ・・・・・・魔導師ナメるなよ。いや、僕ナメるなよ。

伊達に警防やらなんやらで、勉強しまくってたわけじゃないのよ。



「でもそうなると・・・・・・辺里君、やっぱりお話が変わってくるのではなくて?」

「そうだね。もしそういう人間が居るとしたら、多分それは」

「イースターの奴が、学校の中に入り込んでるってわけか。
確かにここ最近の×たまの発生率は凄かったしな。有り得ない事じゃない」



まぁ深刻そうなみんなはともかく、僕は自信を持って胸を張る。いやぁ、スコーンと紅茶が美味しいねぇ。



「・・・・・・恭文、それって恭文なにもしてないよね。こてつちゃんやシャーリーさんが居たおかげだよね?」

「そうでち。それなのになんか偉そうでち」



張っていた胸に、何かが突き刺さった。そして・・・・・・涙がポロポロと零れ始めた。



「あぁ、そんな事ないからっ! お願いだから泣かないでー!!
結木さんもペペもだめだよっ! そんな事言っちゃっ!!」

「・・・・・・恭文君、実はかなり気にしてたみたいね。というか、何気に打たれ弱い子なのね」

「だな。やっぱコイツ、色々面白いわ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



放課後、今日は授業が早く終わったから、私は一人で町をのんびり探索。

・・・・・・あぁ、だめだ。なんかマジで中学生生活に馴染んでるし。

とにかくちょっとだけ寄り道して、私は近くの公園に入るすると、どこからともなく音楽が聴こえる。





そちらを見ると・・・・・・あ、路上ミュージシャンか。それも沢山居るから、ここはそういうののメッカなのね。

そんな人達が奏でる、荒削りだけど・・・心地よい音楽に耳を傾けながら、私はその公園を散策する事にした。

なんだか、さっきはあぁ言ったけどここでの中学生生活を悪くは無いと思い始めてきた。





同年代の女の子・・・・・・いや、私も年ごまかしてるんだけどさ。

とにかく、そんな年代の子達とあれこれファッションの話や恋の話や昨日見たテレビの話をするのは、結構楽しい。

無駄な時間といえば時間だけど、それでも。なお、男子の視線にはシカトをかます事にした。





なんかさ、フェイトさんがエリオとキャロを学校に行かせたいとか思ったの、ちょっと分かった。

あと、その前だとアイツにもそう言ってたらしいんだけど、その気持ちも分かった。

多分フェイトさんは、こういう時間がとても大切だって分かってたんだ。だから話した。





自分もなのはさんやはやてさんと同じ学校に通ってたらしいから。

なんか、フェイトさんの執務官補佐になってよかったな。

普通に仕事を通して色んな事教わるのは、何気にいい経験になってる。





今回みたいな不思議なものに触れられるのもそう。

普通に局で仕事してるだけだと触れられないもの、沢山見せてもらった。

ただ・・・・・・アイツと甘い雰囲気になるのはもうちょっと自重して欲しい。





奇数日の朝になるとなんか肌がつやつやしてるのを見ると、ちょっと色々思う所が出来たりする。

なんだかさ、私も・・・・・・恋とかした方がいいのかな。いや、最近特にそう思うのよ。

フェイトさん、アイツと付き合うようになってから更に綺麗になったしさ。うん、凄い美人になった。





雰囲気もそうだし、肌のキメとか、スタイルとか、より洗練された。

特に奇数日の朝の肌のツヤの良さは、もう普通に嫉妬物だと思う。

あと、胸よ胸。聞くところによると、この1年でまた大きくなったらしい。




それで90の大台に乗ったとか。・・・・・・やっぱり、揉むと大きくなるらしい。

それにスバルね。アイツ、忙しいのに良太郎さんといい感じで交流してるそうだから。

なお、ヤンデレ臭とそう思われるような行動の数々は六課に居る間に修正した。





えぇ、かなりぎりぎりだったけど。私、あの子があんな危ない属性持ちだってあれで気づいた。

そして、思った。私はああいうのはやめようと。というか怖いわよ。

八神さんもアコース査察官と仲良くしながらも仕事ちゃんとしてるらしいし。





なんというか、すごいわ。出来る女は恋も仕事も両立出来るっていい見本だと思う。

あ、フェイトさんも一応それなのか。あんまりに甘すぎて今ひとつ認識できなかったけど。

でも不安な人もいるわね。・・・・・・やめよう。正直、私なんかが触れちゃいけない。





なんて考えながら歩いていると、目の前には一人の男の人。メガネをかけて、私を見て不敵に笑う。

それに嫌な予感がして、私は身構えて距離を取ろうとした。でも、遅かった。

あの人がかざした右手から黒い風が吹き荒れて、その風を身体全体で受けてしまった。





その風は私の身体の力を根こそぎ奪い去って・・・・・・私は、あっさりと意識を手放してしまった。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・へぇ、面白いのが釣れちゃったね。確かこの子、あのおチビちゃんの仲間だったね。

くくく・・・・・・せっかくだから、ちょっと遊んじゃおうかな。

アイツ、前に僕に偉そうな事言ってくれたし、ここで叩き潰そうか。





目障りなんだよね。キャラ持ちでもなんでもないのに、偉そうに干渉してきてさ。





あぁ、楽しみだなぁ。彼・・・・・・どういう顔をするんだろ。まぁいいや。どっちにしても、跪かせてあげるよ。










「・・・・・・ティアナさんっ!?」



あ、いい所に来たね。察するに、探し物の探索中ってとこかな。それで偶然ここへ来た。

うーん、バレちゃうよなぁ。でもいいか。それなら、ここからは楽しくショータイムだ。



「やぁ、ヒマ森さん。奇遇だね」

「・・・・・・なに、してるの?」

「簡単だよ。×たま集め」



僕がそう言うと、あの子はとても驚いた表情を浮かべた。

・・・・・・鈍い子だね。ま、だから僕も今まで好き勝手やれたんだけど。



「まさか」

「ご名答。僕、イースターの人間なんだ。・・・・・・で、もう一つ問題。そんな僕が君から大切なものを没収した」



そう、没収した。だって僕は、それが出来る立場だったから。



「そして、僕はそれを無くしたと言った」



ま、嘘だったけどね。実際は・・・・・・動けないように閉じ込めた。それなのに無くしたと言った。

だって彼女が困る顔が見たくて、それが面白い感じがしたからさ。ちょっとからかったんだ。



「それ、本当の事だと思う?」





彼女の表情が険しくなる。焦りと不安が入り混じった、見ていてとても胸がすくような表情を浮かべてくれる。



そんな楽しい感情を抱えつつ、僕は手に持っていた黒いショルダーケースを開けて、その中身を見せる。



その中には・・・・・・×印にテープを張られたタマゴが三つ。柄はハートとスペードとクローバー。





「ラン、ミキ、スゥっ!!」

「くくく・・・・・・ヒマ森さん、迂闊だったねぇ。君のたまごとあのチビの仲間のたまごは、いただいたよ。
あぁ、安心してくれていいよ? 美味しく・・・・・・有意義に調理してあげるからさ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・・・・あむ、遅くない?」





お茶を飲みつつ、今後の動き方の方針なんかも相談しつつ時間は過ぎる。

で、あと30分ちょっとで解散時刻。もうすぐ日も暮れ始めるという時刻。

にもかかわらず、あむはまだ来なかった。来る気配も連絡もなにも全くない。



さすがに全員になにか嫌な予感というか、そういう空気が流れ始める。





「そう言えばそうね」

「いくらなんでも、たまご返してもらうだけでこれっって」



そんな時、僕の携帯端末に着信が入る。というか、着信音も鳴り響く。

制服の上着のポケットから取り出して・・・・・・あれ、フェイトだ。



「もしもし、フェイト? どうしたの」

『ヤスフミっ! 大変なのっ!!』



受話口から、いきなり悲鳴にも近いフェイトの声。それに思わず耳を離す。それから、ゆっくりと近づける。



「フェイト、落ち着いて? というか、なにがどう大変なのさ」

『あぁ、ごめん。・・・・・・あのね、落ち着いて聞いて。ティアが』

「ティアナ?」

『突然公園で倒れたらしくて・・・・・・目を全く覚まさないのっ!!』

「・・・・・・え?」





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あきゅろす。
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