小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Memory63 『きらめく粒子の中で』
「さぁやろうぜ、ガンプラバトルを――!」
叩(たた)きのめすためじゃない。
仇(かたき)討ちのためじゃない。今更だが痛感している。
ラルのおっさんが言っていたこと……それは、オレの心がけ次第。
遊びを道具にしちゃ駄目なんだ。それじゃあコイツを縛っていた奴らと同じ。だから、オレはその先に進む。
≪BATTLE START≫
まずはコイツと……楽しく、全力で遊んでみるか!
「レイジ! ビギニングガンダム――行くぜぇ!」
アームレイカーを押し込み、笑いながら草原へと飛び出す。その上で近くの高台に着地してから、『ガンユニット』稼働。
三つ折り式のレールガンを展開し、静かに構える。チャージ開始――ファイア!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
答えを掴(つか)むために、迷いを払うために、飛び込んだフィールド。……その途端、粒子の波動を感じ取る。
世界レベルのガンプラに比べたら、か細く不安定。でも真っすぐな意志に満たされた波動。
咄嗟(とっさ)にアームレイカーを走らせ、火花走る砲弾を回避。右脇すれすれだったけど……よし!
「きゃあ! ……って、今のは」
ウヅキは素早く索敵し、データを送ってくる。
十時方向・距離八百……更に光学映像も映し出されると。
「それは……!」
『セイの奴に愛想尽かされちまったから……まぁ当然だな』
右手と両腕に携えたのは、十徳ナイフが如(ごと)き武器ユニット。
今のは左のガンユニットが展開したレール砲……ビギニングガンダムは、それで狙撃を試みた。
『オレが、お前に、ぶつけたいものは何かって話だ。だったら』
「<マーキュリーレヴ>じゃないですか!」
……トオルが、わたし達にくれたオリジナル武器!
『オレが血を流さなくてどうすんだ!』
「……!」
もう一発放たれるレール砲。それを回避しながら、こちらも<レールガン>展開。
「アイラちゃん、チャージサイクルはこっちに任せてください!」
「……えぇ」
そう……コマンドガンダムもマーキュリーレヴを装備している。
……憂鬱になったとき、気晴らしに弄(いじ)っていたから。それを持たせただけよ。
『は……てめぇもレヴ装備か! 面白ぇ!』
「なんでよ……」
……何のために戦うのか。何のために答えを得たいのか。それでこれから、わたしはどうしたいのか。
「何で、そんなに楽しそうなのよ」
それすら分からないまま、次々放たれる砲弾をスラロームで回避し、反撃のトリガーを引く。
「アンタはぁ!」
魔法少女リリカルなのはVivid・Remix
とある魔導師と彼女の鮮烈な日常
Memory63 『きらめく粒子の中で』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
さて、始まったね……まずは遠距離からの打ち合いか。お互いいい攻撃精度だ。
レイジも言った通りに割り切ったようだし、どうなるか分からないよ。
「マーキュリーレヴ! なぜあの二人が!」
「……サツキ・トオルか」
「そういうこった」
そこでトオルが登場。軽く手を上げると、トオルは楽しげにサムズアップ。
「そうか……君はレイジとウヅキ達に、ガンプラ作りを講習したと言っていたね。そのときかい」
「あぁ。まぁそのときは『アイラ・ユルキアイネン』だとは知らなかったけどな」
ビギニングは弾幕の中を強引に突っ切り、ソードユニットのナイフを展開し、逆袈裟一戦。
しかしそれはビームサーベルで防御され、コマンドガンダムは反時計回りに回転斬り。
ピンクの斬撃に煽(あお)られながら吹き飛んだところで、コマンドガンダムのグレネードが飛ぶ。
それはビギニングの眼前で爆発し、白煙を発生させた。すかさず肩のミサイルが飛び出し、揺らめきながらビギニングに迫る。
『そんなので!』
レイジもすぐ反応し、白煙を突っ切りながらもガトリング連射……が、ミサイルはまき散らされた弾丸を迂回(うかい)。
『何!』
「ただのミサイルじゃない……手動制御<マニュアル>によるファンネルミサイル化か!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
四方八方から襲ってくるミサイル……それを、ナイフでの回転斬りで払う。
だが刃が打ち込まれる直前、軌道変更の兆しが見える。仕方ないので頭部ビームバルカンも使い、周囲に掃射。
その結果直前ではあるものの、ミサイルを全て撃墜……その上で、奴は突撃してくる。
片刃のブレードを展開し、そのまま切り抜け。咄嗟(とっさ)にガンユニット表面で防御するも、確かに剣閃が刻まれる。
振り返りつつ上昇したところで、更にガトリング……くそ、やっぱ動きが読まれてやがる!
真正面からの打破は、今のところ不利……そう確信し、装甲を叩(たた)かれながらも急速退避。
近くの森林地帯へ逃げ込み、木々をすり抜けながらも反転。レールガンを展開して、まずは一発。
迫っていたコマンドガンダムは、当然すれすれで避ける……そこを狙い飛び込みながら、ナイフで刺突。
『……!』
アイツはブレードで受け止め、捌(さば)きながら頭突き。SDのでかい頭に煽(あお)られ下がったところで、懐にガトリングを向けられる。
……そこを狙い、こちらもブレードを展開して右フック。更にスウェーの形を取り、射線上からも退避。
結果ガトリングは真横から両断され、弾丸の掃射は停止。すかさず展開していたショットガンを発射。
コマンドガンダムのボディが無数の散弾に叩(たた)かれ、痛そうに目を瞑(つむ)りながら倒れ込む。
『これは……!』
「あぁ、フェリーニとヤスフミのバトルだ」
怒りのボルテージを維持するために、無理やりコイツの試合を見まくってたからなぁ。だが、目的はともかく効果的だった。
「……お前の粒子を見る能力、文字通り目に頼るところが大きいんだろ。だから視覚の外だと簡単に誤魔化(ごまか)される。
それとガンダムの知識に頼るところも、判断が追いつかないんだろ。オレも全く同じだから、すぐ気づいたぜ」
『……』
「どうした、立てよ……言っとくが許さねぇぞ」
『何でよ』
「このままオレにボコられて、フェードアウトするために出てきたとか」
どうやら図星らしく、アイラの奴が息を飲んだ。
「そんな甘えた言い訳は許さねぇ――言っただろうが! 遊びにきたってよ!」
『何でよ……じゃあ』
それでもアイツは……悲鳴を上げながらも立ち上がり。
『どうしろって言うのよぉ!』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ファンネルミサイルを掃射……感情に任せての全弾発射か。しかしその射角コースは、生い茂る木々ゆえに阻まれる。
『地形を利用しろ――』
レイジはコマンドガンダムから距離を取り、迫るミサイルを次々と撃ち落とす。当然ミサイルは回避コースを取っていた。
しかし先ほどと違い、縦横無尽とはいかない。コースが絞られているゆえ、その回避先も読まれて潰されていく。
『そうだろ、フェリーニ!』
「あぁ……その通りだ、レイジ!」
そうして幾つもの爆発の後、ミサイルは弾切れ。コマンドガンダムはミサイルポッドをパージし、ホバリングしながらレイジを追撃する。
「リカルド、遅いよ」
「悪い」
「ごめんなさいね。私の仕事が押しちゃったから」
「あおー!」
あれ……キララさん! しかもプライベートモード! あおがまた抱かれながら、胸に顔を埋めて……幸せそうに。
「だがレイジの奴、吹っ切れたみたいだな」
「セイのおかげだよ」
「いえ、僕は何も……ただ分からないんです。レイジ、どうしてあそこまで思い詰めていたのかなと」
その言葉には、リカルドとアラン、トオル共々ギョッとしてしまう。
「それはアイラさんもですけど……レイジが強く否定したからかなぁ」
『え……』
「確かにな。二人は静岡(しずおか)で知り合ったばかりと言うし、いささか感情が高ぶりすぎているとも思う」
『え……!』
というか、タツヤも……あぁぁぁぁぁ! お父さんとヤナさん達の危惧は正しかったかぁ!
「どうしたんだ、アラン……というか、蒼い幽霊も」
「フェリーニさん、あの……その、珍獣を見るような目は」
お互い接近し、射撃と斬撃を交えたクロスレンジバトルに突入。
それはそれとして……一旦二人から離れ、ミホシさんも交えてスクラムを組む。
「ねぇ、マジ……アレ、マジなの?」
「ごめん、あれはマジ……タツヤ、親にも心配されるほど朴念仁だから!」
「最初期から兆候はあったな。俺達と知り合う前はガリ勉だしよ。アラン、お前はパートナーだろ。そこはこう……英国(えいこく)式でレクチャーとか」
「無茶(むちゃ)を言わないでくれ……それならリカルド・フェリーニの方だろ! ほら、ガンプラでナンパして百発百中だし!」
「セイはまだ、思春期前とガンプラ馬鹿で言い訳できるが……いや、あの調子だと将来も不安だ!」
「おー」
リカルドの肩に移ったあおも、お手上げポーズを取る有様。まさか、本当に気づいてないなんて……。
僕も”もしや”って思っていたよ? ヤバい、またお父さんやヤナさんに相談されるの……辛(つら)い!
「いや、待て……それなら……そうだ、ヤスフミがいる!」
「それだ!」
混乱している間に、アランとリカルドがとんでもない結論を……!
「お、そうだな! お前、世界大会で修羅張ってるし……大丈夫大丈夫! 教えられるって!」
「そうね! 頑張りなさい、おチビちゃん!」
「待てやこらぁ!」
スクラムを解除しようとするので、咄嗟(とっさ)に力を込めて全員拘束……!
「僕に”アレ”を押しつけないでよ! しかもタツヤのことならともかく……セイまで!? そっちはリカルドでしょ! レイジの師匠なんだから!」
「お前も手伝っただろうが!」
「だったらこっちも手伝ってよ!」
「いや、ほら……俺にはキララちゃんという、ただ一人のアイドルがいるから。さすがにそれで、ナンパ実践とかはなぁ」
「もう、フェリーニったらー」
いちゃつくなぁ! それで離れようとするなぁ! 逃がさない……巻き込んだ以上は逃がさないよー!
「アラン、おのれももうちょっと頑張ろうよ! セシリアを口説いた勢いでさぁ!」
「人の黒歴史に触れるなぁ!」
「トオルは……うん、高校生活を頑張ろうか」
「優しくするなよ! いや、確かに恋愛どころじゃなかったけどよぉ! そうなると……やっぱり適任は」
「そんなオカルトあり得ません!」
『ハーレムしてるよね!』
「それでもあり得ません!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
あぁ、蒼凪プロデューサー達が、未来に怯(おび)えてる。スクラムで打ち震えているよ……でもミホシさん、スタイルいいなぁ。
朝比奈りんさんみたいなトランジスタ体型だし、大人っぽいし……くっ。
「……しぶりん」
「何かな」
「大人って大変だね」
「うん……」
『――がぁ!』
……って、そんな大人に構っている余裕はなかった!
今のはレイジの悲鳴……ビギニングがガンユニットを切り裂かれ、吹き飛びながら木々に叩(たた)きつけられる。
それを正気と見て取ったのか、コマンドガンダムは木々をかいくぐり、時にそれを足場に跳躍し、変則的に距離を詰める。
そうしてSDの体を回転させながら切りつけ、迫り、また刃を振るう。レイジは左手でサーベルを三本掴(つか)み、爪のように展開。
それも用いて乱撃をぶつけ合うけど、押し込まれてる……というか、コマンドガンダムの反応が鋭い!
「押し込まれてる……! SD、近接戦闘が苦手なのに!」
「……レイジも能力対策は整えているのに……それでも、まだ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
くそ……突き放そうとしても、こっちの動きを先回りして迫ってくる。ビームサーベルで引き裂こうとしても、たやすく避けるか捌(さば)かれる。
その上でガトリングを何発か食らい、放り投げられた手りゅう弾を引き裂くと……発生した爆煙を突き破り、鋭い砲弾が迫る。
レールガン……チャージしてたのかよ! 咄嗟(とっさ)にソードユニットを盾にして防ぐも、その衝撃でユニットは破壊。
仕方なく吹き飛びながら、左手のサーベルを投てき。それは鋭く、白煙に隠れる奴を貫いた。
そう、貫いた……奴が残した、マーキュリーレヴのユニット達を……!
「……上か!」
咄嗟(とっさ)に下がるものの、そこで逆手持ちのナイフが襲いかかる。それはがら空(あ)きだった左手を肩から断ち切り、接続部を粉砕。
更にアンテナ基部のヘッドキャノンが火を噴き、胴体部を撃ち抜かれながら吹き飛ぶ。
「く……!」
それでもスラスターを吹かせ立ち上がると、眼前には手りゅう弾。
また下がりながらビームバルカンを放つも、間に合わずに爆発。まともに炎を……放たれるヘヴィマシンガンの弾丸を食らう。
「くそぉ!」
損傷……うっし! ビギニングのボディが丸っこいから、直撃はない! 弾丸が上手(うま)く逸(そ)れやがった!
とにかく右手でサーベルを……そう思っていると、警告音が響く……それも、反応は後ろから。
振り返ると奴は……木々を足場に跳躍しながら、あっという間に後ろへ回っていた。
『もう……』
「くそ……」
何だよ、強いじゃねぇか。へんてこな装置がなくても……なのに。
なのになんで、お前は……そんなに、泣きそうな声を出してんだよ。
――いや――
思えば、お前のバトルを見返しているときから……ずっとだ。
――嫌……――
ずっと、頭からこびりついて離れない。楽しそうじゃない様子が……怒鳴りつけたときの怯(おび)えた顔が。
――嫌……!――
それが悲鳴のように聞こえて。頭の中で何度も鳴り響いて。なぁ、教えてくれ……。
――もう、嫌――
お前は、何がしたいんだよ。
――もう嫌だぁ!――
なんで……俺とのバトル、受けてくれたんだよ。教えてくれ……教えてくれ!
『終わりよ……!』
「アイラァァァァァァァァァァァ!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そのときだった。アイラが首元から下げた石が、金色に輝きだしたのは。
『な……!』
輝くのはそれだけじゃない。レイジが身につけている、あの石も同調。
「この気配は、あのときと……いや、あのとき以上!」
≪凄(すご)いエネルギーですよ、これ。まさか……暴走≫
「いや、違う」
この輝きは……フィールド中を満たす輝きは、そんなものじゃない。
「悲しみと痛みに溢(あふ)れている。でも、本気の声……アイラが覆い隠していた、心の光」
「あぁ、オレ達にも分かるぜ」
「もしあの石が、本当にイオリさん達を繋(つな)げたのなら」
「お前も伝えろ、レイジ……お前の気持ちを! お前の叫びを!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
いきなり石が……<アリスタ>が輝きだしたと思ったら、世界が真っ白になった。
――助けて……!――
それで響くのは、アイツの声。こりゃ、一体なんだ……オレもこんなのは初めてで。
「痛い……!」
「ん?」
前を見ると、アイツは蹲(うずくま)り、頭を抱えていた。
「頭が割れそう! もぉ嫌! 戦いたくない!」
それで悲鳴を……ようやく、本心を吐き出していた。
「……お前、本当に嫌々戦っていたのか」
ああもう、面倒くせぇなぁ。しかも悪い奴らから解放されても、これって……違うか。
これはオレのせいだ。オレがコイツとの向き合い方を、ちゃんと選べなかったから。
……だから笑って踏みだし、こちらを見るアイツに近づいてくる。
「悪かったな」
「え……」
「怒鳴りつけたことだよ。お前の事情なんざ知らなかったが、傷つけたのは確かだ。それは謝る……だがよぉ、それならやらなきゃいいだろ」
「駄目!」
「なんでだよ」
「わたしには、家族も……肉親もいないもの! 戦わないと生きていけない……勝たないと、居場所がなくなっちゃう……!」
「居場所なんてどうにでもなるさ!」
笑って言い切ると、アイツは目を丸くした。
「あのなぁ……忘れんじゃねぇよ。お前はもう、”それ”を自分で選べるんだぞ」
「そんなこと言われたって……分からないわよ! そんなの、やったこともないし」
「オレもこっちじゃ流れもんだけど、こうして生きてる……そうだ、なんだったらセイんちに来いよ!
オレも世話になってる! 一人や二人増えたって、どおってことねぇさ!」
「……本気で言っているの?」
「オレは何時だって本気だ!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
何よ、コイツ。何も知らないで……好き勝手なことばっかり。王子様だから、苦労なしってわけ?
だったら、聞く必要なんてない。私は王子様とは違う……でも……でも……。
否定しきれない自分がいた。それがなぜか、改めて考えてみる。
――オレに譲れ――
――あなたこそ譲りなさいよ――
――てめぇはさんざん食ってんだろうがぁ!――
――レディーファーストって言葉を知らないの? 男性は女性を敬うものよ――
例えば初めて会ったとき……名前も知らず、肉まんを奪い合ったとき。
――てーかアイツら以外に女性なんて見当たらねぇだろ、今この場では――
――何それ、ケンカ売ってんの……!――
――売るどころかただで配ってんだよ……!――
――口が減らないわねぇ――!――
――生意気――!――
ほんと、最悪な出会いだった。でもあんなふうに素を出して、誰かと喧嘩(けんか)したのも……初めてで。
――何だ何だぁ……ガキが何盛ってんだよー――
――ひゅーひゅー――
――いや〜ん、ここじゃダメェー♪――
――何言ってんのよ! 馬鹿じゃないの!?――
コンビニ前で、変な奴ら……野球部の奴らに絡まれたときも、そう。
――あぁ?――
――誰に向かって言ってんだ……オラァ!――
――まぁ待てよ。コイツは照れ隠しをしただけだ、笑って許してやれ――
――はぁ!? 照れてないわよ! アンタも馬鹿なの!?――
――オレのような超絶美男王子とそうなれるなんざ、そりゃあ女として光栄だろ。
だが素直に認められないんだよ、女はそういうものなんだよ。意地があるんだよ。
男ってのはそんなところも可愛(かわい)いもんだと受け入れて、笑ってやるのが器量なんだよ――
――アンタはどんだけ自信過剰なのよ! 自分で美男王子って言って、恥ずかしくないの!?――
――事実じゃねぇか――
あのときは、心の底から呆(あき)れたわ。その後の野球勝負で吹き飛んだけど……!
――いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! レイジィィィィィィィィィ!――
――お前の――
――俺達の――
――負けだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!――
――勝ちだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!――
大会でのガンプラバトルも。
――ポリキャップの入れ忘れに注意だ――
――あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!――
――……レイジ君、入れ忘れましたね――
――ちくしょー!――
――ふ……――
一緒にガンプラを、作ったときも。
――名前なんてどうでもいい! ファイターなのを隠していたこともだ! けどな……これだけは宣言するぞ!
あんな戦い方をするお前は! 絶対に許さねぇ! 倒す――次のバトルで、必ずお前を倒す!――
……わたしに怒りをぶつけたときも。
「……そうだね」
そこでようやく、痛みが振り払えた。もうエンボディも、スーツも着てないのに……ずっと痛かった。
でも笑えた。ようやく笑えた……コイツが”本気”だって分かって。
「馬鹿がつくくらいに……」
わたしでも、居場所は作れる。もう家族がいないことを、不幸なことを言い訳にしちゃいけない。
そんなことじゃ、前に進めない。大丈夫……大丈夫だよって。
「そうだったね」
そうだった……わたしは最初から、首ったけだったんだ。
力でもなく、才能でもなく、わたしに本気でいてくれた人。
そんなあなたのことが……わたしは――。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
タカと二人、ネメシス会長とルーカス君を連れてきたら……まぁなんか、すっごい不可思議現象発生。
それでおじさん二人、つい面食らっちゃう。なお、おじいさんとは言わせない……ルーカス君にも言わせない!
「……タカ、アレ……何?」
「全部蒼凪に押しつけよう」
「だね……」
「わぁ……アクシズショック!? おじいちゃん、あれってアクシズショックだよね!」
「そ……そうだね」
「「……若いって、いいなぁ……」」
ルーカス君、すっかりはしゃいじゃって。ヤバい、俺達も若さを取り戻さなくては……!
「だが、本当に私が……ここへ来ても」
「またまたー。直接謝りたいって言ったのはあなたでしょ?」
「あなたは自首した扱いになっていますから……まぁ、我々が離れなければ、問題は」
「……ありがとうございます」
『……ったくよぉ……悩んでるなら、さっさと言えよ。正体まで隠しやがって』
レイジの奴、スッキリしたようだな。昨日は相当お怒りだったのに……やっぱあれ? バトルをすると仲良くなれるというか。
『だって……あんなに、楽しそうにしてるのに。戦ったらわたし……勝っちゃうし……』
「……なるほどな。恋する乙女の悩みか」
「出会った時間は関係ないってことね」
『そうしたらもう、今までみたいに……』
『は? 勝つのはオレに決まってんだろ。バッカじゃねぇの』
……そこで、レイジのアホはとんでもないぶった切り。その結果乙女の表情だったアイラちゃんは、その笑みが歪(ゆが)み始め――。
『……レイジ君、お仕置き決定です』
『何でだよ! 当たり前だろうが! オレの方が強いんだからな……強いんだからな!』
『二度も言わなくていいですよ!』
『な……す……って』
『ア、アイラちゃん……落ち着いて。どうか冷静に』
『誰が――馬鹿ですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』
そしてアイラちゃんは激昂。止まっていたガンプラも動き出し……コマンドガンダムは、ビギニングに右フック。
『てめ……何しやがる!』
『馬鹿はアンタでしょう!』
『なんだとぉ!』
「……全く以(もっ)てその通りだ」
「女の扱いがなってないな」
「君と同じだね」
「タカァ!?」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ビギニングが右ハイキック。コマンドガンダムをいじめの如(ごと)く蹴り飛ばす。
『誰が馬鹿だぁ!』
『アンタよ!』
でも吹き飛びかけたコマンドガンダムは反転。そのまま跳び蹴りし、ビギニングガンダムを蹴り倒した。
『バーカ! バーカ! ヘナチョコパンチー!』
両手を広げて、ぴょんぴょんと横飛び……完全に馬鹿にしていた。
『ハ! さっきまでベソをかいてたくせによ!』
『してないし! 全然してないし!』
『してただろ!』
『してないって言ってるでしょうが!』
「……痴話、喧嘩(げんか)?」
その様子にキララさんも苦笑し。
「……楽しめとは言ったが、いちゃつけとは言ってないぞ」
「あおー」
あおとリカルドも呆(あき)れるばかり。というか、他の面々もあ然としていた。
『あはははは……もしかして私、お邪魔じゃ』
≪主様、卯月ちゃんが困り果てているの≫
「そりゃそうだよ。完全に被害者だもの」
『ガンプラバトル、やめたいんだろうが!』
『やめるわけないでしょ! ――アンタをギタギタにするまではね!』
『アイラちゃん……!』
『ウヅキ、勝つわよ!』
アイラの目に光が戻った。もう迷いは吹っ切り、ただ目の前を見つめている。
『このわたしのセコンドをやるんだから、当然よね!』
『はい!』
『それと……そこのクソジジイと孫!』
そこでアイラがギロリと振り返ると、鷹山さんと大下さんがいた。
二人はサッと左右に分かれ、両手で差す……ネメシス会長と孫<ルーカス・ネメシス>を。
『まず孫! ガンプラバトルに勝ちたかったら、自分でやりなさい!』
「は、はい!」
『次にクソジジイ! 孫馬鹿にもほどがあるでしょうが! 勝利くらい自分で掴(つか)めと躾(しつけ)なさい……家族でしょうが』
「す、すみませんでしたぁ!」
『あとはあのメガネザルども……あぁ、警察病院だったわね! じゃあ後でぶん殴りにいきましょ!
ヤスフミ、喜びなさい! このわたしを、警察病院までエスコートさせてあげる!」
「おいこら待て! それは違う……エスコートじゃない! ただのカチコミだぁ!」
『……恭文さん』
あ、あれ……卯月から殺気が……! またウヅキ・デラックスになってる!
『どういうことですか……駄目です! そんなの駄目です! アイラちゃんはどう見ても、レイジ君が好きなんですよ!?』
『ちょ、アンタは何を言ってるのよ!』
『いやまぁ、オレもコイツのことは嫌いじゃないが』
『な……何言ってるのよ、馬鹿ぁ!』
『また馬鹿っつったな、お前!』
あ、ヤバい……この流れは巻き込まれてる! 逃げなきゃ……逃げなきゃあ!
『逃げたら許しませんよ!』
先んじて止められた!?
『そうです、レイジ君が好きなんです。それなのにデートだなんて……絶対駄目です! 確かにアイラちゃんは大人っぽくて奇麗ですけど!』
「デートじゃないよね! 今のどこに恋愛要素があると!? バイオレンスしかないでしょうが!」
『ほんとよ! 別に、この馬鹿のことなんて好きじゃないし!』
『ふざけんな、てめぇ! それはこっちの台詞(せりふ)だっつーの!』
『なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇ!』
『恭文さん、どうするんですか! レイジ君達、またツンデレに戻りましたよ!?』
「僕のせいじゃないよね! 間違いなく僕のせいじゃないよね! ね、みんな!」
すると、どういうことでしょう。
みんな……あんなに一緒だったトオルやリカルドまで、すーっと離れていく。
「逃げるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「逃げてない! おチビちゃん……私達、逃げてないから! ただほら……愛は人それぞれだと思うの!」
「そうだぞ、ヤスフミ! デートならいいじゃないか! 病院へ行くまでならいいじゃないか! 応援してるぞ……なぁ!」
「だからデートじゃないっつってるよね! ……鷹山さん、大下さんー!」
「確かに俺達は……クリシュナになれと言った。でもほら、さすがに……これは」
「やっちゃん、ここが男の見せ所だぞ。……ファイト!」
「ファイトー!」
「頑張れるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
『さて、それじゃあ』
あ、話が進んでる! アイラの奴、人に迷惑をかけておきながら……まずおのれにカチコミじゃあ!
『行くわよレイジ――本気でバトルをやるわたしがどれだけ強いか、見せてあげるわ!』
『上等ぉ!』
――そうして始まる激闘。お互い、今までの遺恨も全て吹き飛ばすような、壮絶かつ楽しいバトル。
レイジは新しいサーベルを抜き、アイラはナイフとヘヴィマシンガンを携え、お互いの意志と力をぶつけ合った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
――バトルは無事に終了。お互いのガンプラもぼろぼろだけど。
「「ぷはぁ!」」
二人は心地よさそうにドリンクを飲み干し、楽しげに笑い合っていた。その様子に僕も、恭文さん達も安心していて。
……なお二人の頭頂部には、しっかりとげんこつの痕が刻まれているけど……気にしない方向で。
それよりも同じくホッとしていた、卯月先輩とお話だよ。
「卯月先輩」
凛さん達と話していたところ、邪魔して悪いけど……しっかりとお辞儀。
「変なことを頼んですみません」
「大丈夫ですよ。でも、あの光は」
「……届いたんだと思います」
そう言いながらまず見るのは、僕のGPベース。カメラ部にはめ込んでいた、あの石はなくて。
「他に思いつかなくて、駄目元でやってみたんですけど……でも、通じればいいなって」
次に見るのは、アイラさんが首元から下げている宝石。うん……最初、レイジに渡された石だよ。
卯月先輩に頼んで、アイラさんに渡してもらったんだ。
もう、僕には必要ない……そうも感じたから。
「アイラさんの祈りが、レイジに」
「人の心の光――私達が見たのは、本当に」
……だから、少し信じてみても……そう思った。
本当にレイジは異世界の人間で、あの石はその証明で……それに、プラフスキー粒子も。
「アラン、あの現象は」
「詳細は不明だ。……メイジン、ボクもニルス・ニールセン達の調査に加わらせてもらうよ。さすがに気になるからね」
「頼む」
その重要性をユウキ先輩達も感じ取っているようで、神妙な顔立ちだった。
ただ決して重い空気じゃない。一番問題だった二人が、ほんと……いい笑顔だもの。
「へへ……俺の勝ちだな!」
「そうね……今回は! わたしの負けだわ。それはともかく」
アイラさんはペットボトルをしっかりゴミ箱にして、軽くせき払い。
「さっきの約束、守ってくれるんでしょうね」
「約束? 何だっけ」
「……行く当てがないなら、セイの家に来いって言ったじゃない!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!』
な、何それ! いつの間にそんな話を!? あ、まさかあの、アクシズショックもどきのとき……そんな馬鹿なぁ!
「あぁ、あのことか! 悪い悪い! お前のデートやら何やらで、ごっちゃになってた!」
「ほんと、仕方のないやつねぇ」
「ちょ、ちょっと……ちょっとぉ!」
さすがに見てられなくて、慌てて二人に近づき静止。
「レイジ、何を勝手に約束しているのさ!」
「いいだろ、別に」
「良くない! というかほら、今の保護責任者は恭文さんで」
「お世話になるね、セイ」
「もう呼び捨てぇ!? 恭文さん!」
「ほい来た」
恭文さんは二人をハリセンでしっかりどつき。
「「がふ!」」
僕の嘆きを、幼子に接するかのように受け止めてくれる。
「よしよし……まずはリン子さんに相談だね」
「はい……!」
「おい、今……なんで殴られたぁ!?」
「わたしもよ!」
「やかましいわ! このバカップルが!」
「全くだ……もぐもぐ」
「「誰がバカップルだってぇ!? ……てめぇ(アンタ)、何が不満だぁ!」」
そして始まる二人の喧嘩(けんか)――もう、みんな心配などすっ飛ばし。
「……お前らのことだよ」
「ほんとにねー」
ただただ、あきれ果てるばかりで。あぁ、それより……母さんに、この状況で頼むの!? 仲直りとかまだなのにー!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
イオリ・セイは大変そうだが、安心もしていた。いや、レイジの様子は、タツヤも心配していたしね。
あの様子なら、二回戦も問題なく進められるだろう。……さて。
「それじゃあメイジン、ボクはさっき言った通りに」
「あぁ」
早速動きだそう……としたところで、携帯に着信が入る。これは……静岡(しずおか)ラボのスタッフから?
新機体の調整絡みだろうか。まずはここから解決と、隅に移って通話開始。
「もしもし」
『アラン主任、大変です!』
「すまない。だが新機体の調整なら」
『二代目が目を覚ましました!』
……彼の慌てた言葉は、ボクの勘違いを打ち砕くには十分。だが同時に、安堵(あんど)の息も吐く。
「そうか……峠は越えたか。三代目もきっと喜ぶよ」
『それが問題なんです!』
「どういうことだ」
『二代目は退院の準備をして……三代目とのバトルを所望しています! それも今すぐに!』
……本当に大問題だ。二代目は今まで、面会謝絶が続いていたんだぞ。意識だって定かではなかった。
それがいきなり……バトルゥ!? 死ぬつもりか、あの人は! いや……そうなのかもしれない。
たとえ命がけだったとしても、タツヤと向かうべき場所がある。もしそうなら、ボク達が止める権利は……ない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
今日は二回戦までのインターバル。それもあらかたの準備を終えて、さあ夕飯……と思っていたら、たまたまお母さんと遭遇。
それも恭文さんと、鷹山さん達と一緒だった。もしかしてCの一件かと思ったら、またぶっ飛んでいて。
「どういうことですか……!」
「それは私が聞きたいわよ! セイも、レイジくんも……散々好き勝手したのに! 困ったときだけ頼るなんて!」
「まぁまぁリン子さん、いいじゃないですか……そういうときに、『男を紹介する』とか言わなくて」
「恭文さん!?」
「ちょ、私は人妻よ!?」
「いるんですよ。そう言えば何でもOKと思っている人達が」
「「実在人物!?」」
そ、そんな人達が……あれ、鷹山さん達がそっぽを向いているような。
「それでよく無茶(むちゃ)をやらされる、トオルという人がいましてね。そっちには女を紹介するんですけど……ね、鷹山さん、大下さん」
「ヒドい奴がいるもんだな。タカ」
「あぁ。一体どんな顔をしているのか、見てみたいくらいだ」
≪ならどうぞ≫
そこでアルトアイゼンが鏡を取り出し、二人に向ける……いたよ、実在人物! 私達の目の前に!
「何々、思っていたよりも色男じゃないの。あれ、そっちの悪い奴、舘ひろしに似てない?」
「いやいや、最高のダンディーだって。そう言えばあっちの腰が軽そうな奴、柴田恭兵さん似だな」
「「……あーはははははははは!」」
「……恭文さん、この人達は……その」
「まともな警察官じゃないんだよ。悪人ではないけど」
あぁ、そうで……いや、でもラルさんも助けてくれたし、悪い人じゃないのは分かる。
でも、さすがにそれで言うこと聞かせるのは……むしろ聞く人が問題じゃ!
「リン子さん、そういうわけなので」
「どういうわけぇ!? いや、確かに……嫌よ!? セイがそんなこと言ったら、さすがに泣くし!」
「まぁ遠回しな離婚通達とも言えますよねぇ。散々足を引っ張ってきたわけで」
「がふ!」
「イオリくんにその権利はありませんよ!? でもその、アイラ……ユルキアイネンさん」
廊下の壁にもたれ掛かり、倒れかけたお母さんを支え……何とか足を進めていく。
「イオリくんや卯月先輩達も信頼しているなら、悪い人ではないと思うんです。だけどさすがに、急すぎるんじゃ」
「だからリン子さんとも相談したかったのよ。アイラの意志次第だけど、僕のところで預かることも考えていたから」
「分かったわ。恭文くん、ほんと……面倒をかけてごめん」
「いいですよ。世界大会開始前のアレに比べたら、まだ笑えるレベルだし」
「……ですよねー」
「そ、それはわたしにも突き刺さります……はい」
でも、こっちの方がまだ問題なしってどういうこと……!?
悩みながらもイオリくん達の部屋を訪ね、ノック。
「セイー、レイジー」
「素敵なお母様と、可愛(かわい)いガールフレンドを連れてきてやったぞー」
「まぁ!」
「か、可愛(かわい)い……なんて、そんな」
大下さんの発言にお母さんは沸き立ち、わたしは恥ずかしくて、モジモジ……。
するとイオリくんは慌てた様子でドアから出て、愛想笑いを送ってきた。
「や、やぁ……恭文さん、鷹山さん達もすみません」
「いいさ。ただまぁ、お母さんとは仲直りすることだ。蒼凪が『男を紹介する』って言って」
「恭文さん!?」
「たとえ話だよ。この二人はピンチのとき、そうやって切り抜けてきたから」
「どういうことですかぁ!」
でも事実みたいだよ。ほら……素知らぬ顔で揃(そろ)って、口笛を吹き始めたし。
「セイ、あの……ごめん。母さんも理解が及ばなかったのは謝るわ。でもね……いきなり女の子を引き取るって、それはないでしょ!
しかも本人との顔合わせもなしで! 母さん、さすがにそれは了承できないから!」
「分かってる! それはよく分かってる! だからその、ちょっと外で話そう!」
「外? イオリくん、それはどうして」
「セイ、お弁当が届いたの?」
あれ、中から可愛(かわい)らしい声……そこでドアの隙間から見えたものに、お母さん共々どん引き。
「ア、アイラちゃん、駄目ですよ! ちゃんと服を着ないと!」
「大丈夫よ、バスタオルは巻いてるし」
それは……シャワールームから出てきた、銀髪女性。しかもバスタオルだけを巻いて、モデルのようなスタイルを晒(さら)していた。
卯月先輩が慌ててシャツを渡すものの、その人は平然としている。まるで、自分の家みたいな勢いで……!
ただ問題は、その卯月先輩もお風呂に入った様子。服は着ているけど、かなりはだけていて。
「――セイ、とりあえず中に入れて?」
「え、あの……これは、違うんです!」
「何、卯月とアイラの(ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!)から?」
「誤解ですからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「蒼凪君……君、品がなさ過ぎ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
恭文さんがとんでもない……え、えっちなお話をしたところで、私達は中に入れた。
アイラさんには服を着てもらった上で……どういうことかを、しっかり詰問……!
「あ、汗をかいて辛(つら)いって言うから、お風呂を貸しただけなんだよ! 卯月先輩も一緒だったし!」
「そうです! いかがわしいことは全く!」
「それでも駄目です!」
「そうよ、駄目ぇ! それに……セイには、チナちゃんというガールフレンドがいるでしょ!」
「駄目だよ、母さん! 委員長に迷惑じゃないか!」
そこで否定されるの、わたしとの関係! あ、これは……いろいろ、ショック……!
「ちゃんと告白しないからー」
「ただ告白しても、日奈森さんのように振られる可能性もあるわけで」
「恋愛って難しいよなぁ」
恭文さんと妖精の声が、胸に突き刺さる……! や、やっぱりそういう、ケジメが必要なんだ。
「だったら……なんでレイジくんは寝てるのよ!」
「あ、そっちは寝不足」
「寝不足?」
「アイラさんを叩(たた)きのめすために、徹夜してビデオを見ていたらしくて。もちろん流れは違うんだけど」
あぁ……そう言えばアイラさん、バトルに有利な才能があるって。それに対抗するために……だから、この状況でも起きないんだ。
「だからちょっと静かに……無理だとは、思うんだけど」
「……分かったわ。でもねセイ、さすがにいきなり引き取るのは無理よ」
「え……」
「その場合母さんは、アイラちゃん……だったわよね」
「はい」
「アイラちゃんに相応の責任を持たなきゃいけない。衣食住はもちろん、保護者としての責任も。
……もしアイラちゃんが問題を起こしたら、日本(にほん)の親としてフォローすることも必要になるわ。それは分かるわね」
「うん」
お母さんはこめかみをグリグリしながら、マイナス面も含めて説明。それだけでアイラさんの表情は、どんどん重たくなって。
「その辺りはレイジが寝る前に説明してる。恭文さんも協力してくれたし」
「そう……だったらまずは」
「あの……御迷惑なら、わたしは病院に戻って」
「アイラちゃんには大会が終わるまで、私が泊まっている旅館に来てもらうわね」
「え……!」
「恭文くん、問題ないかしら」
「その場合でも、相応の責任は背負うことになりますよ」
それでもお母さんは問題ないらしく、胸を張って頷(うなず)いてきた。
「レイジと話すのは」
「そっちはまた後でいいわ。アイラちゃんのために、相当頑張ったのは伝わったし……セイ、アンタからも伝えておいてね。時間を作って話そうって」
「う、うん。でも母さん」
「後のことは、大会が終わってからまた相談しましょ。というか……チナちゃんもいないから、母さん寂しくてー!」
「そういう理由!?」
「なら、こちらの書類にサインをお願いします。アイラも分かるところだけでいいから、お願い」
その辺りは準備を進めていたらしく、恭文さんは何枚かの書類を置く。
「あとこれも」
更に白いスマホを取り出し、書類の上に置いた。
「これは」
「アイラには念のため、所在地認証をつけてあります」
「……これね」
アイラさんが困り気味に、右手のブレスレットを取り出す。えっと、つまり……!
「GPS機能で居場所が分かるようになっていますから」
「そんな! それじゃあ、監視しているのと同じじゃないですか!」
「いいのよ」
「でも!」
「チームネメシスが尻尾を巻いたとはいえ、まだフラナ機関の調査も続いているし……本当ならわたし、保護施設送りが妥当らしいの。
でもヤスフミと……こっちのおじ様達が保護責任者になってくれて」
「所在地認証は、そのための条件なんです。アイラちゃんは重要な証人ですし、何よりエンボディシステムの影響も未知数で」
そういう意味でも、所在地認証っていうのは必要だった。でも納得しきれずにいると、お母さんがわたしの肩を叩(たた)き、首振り。
「分かったわ。じゃあその、影響っていうのは……ようは体調不良ってことよね」
「日常生活は問題ありませんけど、何かあればすぐ連絡を。俺達が駆けつけますので」
「アイラちゃんも、あんま無理するなよ? またレイジとバトルするんだろ」
「えぇ。でもおばさまも、本当に」
「できればリン子さんって言ってほしいわねー。私、こう見えても三十台前半だし……そのためにもまずは、あなたの話を聞かせてね」
「……はい」
――こうしてアイラさんは、お母さんが引き受けることになった。相応の責任を背負った上で。
でも凄(すご)いというか、感心するというか……わたしもお母さんになったら、ああいうことができるのかな。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
バカップルの対処については、恭文さんに任せることとする。もう、あんなの……ボクと杏の領域外だ。
それよりも今日の一件で、いろいろ興味深いことが分かった。なので途中合流したディアーチェさん達共々、早速<アリスタ>の検証に入る。
「……どうだ、ニルス・ニールセン」
「先ほどのバトルで起きた、不可解な発光現象……いや」
バトル映像、及び届いた資材による解析……それらの結果から、こう断言できる。
「共鳴現象と言うべきでしょうか」
「共鳴?」
「アイラ・ユルキアイネンが渡された石……セイ君がレイジ君と初めて会ったとき、送られた石。
更にビルドストライクのロールアウト直後、サザキ氏とのバトルで起きていた、不可解なエネルギー発生現象」
そちらも映像・解析データともに、アルトアイゼン達からもらっている。おかげですぐに理解できたよ。
「祈りを届ける……人の思いを形にする。なるほど、そういうことか」
「ねぇ、どういうこと!? エネルギー発生現象ってあれだよね! ボク達が見てるとき、レイジが突然現れて!」
「えぇ。……みなさんは御存じのはずです。プラフスキー粒子は人の想(おも)いを形にする」
「もちろんだよ。でも、それって」
「それはガンプラという器を通し、想像力を詰め込むが故……ビルドファイターの戒めに近い話では」
レヴィさんが戸惑い、シュテルさんも迷いを見せるが。
「いえ、実際にはその通りだったと」
シュテルさんはとても聡明(そうめい)な方だ。すぐにボクの言いたいことを理解し、考えを正してくれる。
「ガンプラとは関係なく……粒子には人の感情を糧に、力をブーストする能力があるのですね」
「なんだと……!」
「じゃあ、レイジさんが言っていたのは!」
「……本当に、彼は異世界の来訪者なんですね」
「わたし達の同類ってわけね」
更にフローリアン姉妹は揃(そろ)ってボクと杏の両脇で屈(かが)み、解析データを見つめる。
「あのとき……イオリ・セイが願ったことを受け、召喚された。ならばニルス、アンズ、あの石は」
「そちらの調査結果通りです。……あれはプラフスキー粒子の結晶体」
「そしてプラフスキー粒子の特性は、結晶体であればより発揮される。文字通りの願い石――人の心を表す石ってわけだよ」
「つまり今日のことは、その石が二つ揃(そろ)って……レイジとアイラ、二人の石があればこそなのね」
「もちろんお互いに相手を憎からず思い、理解し合いたい……そう思っていればこそですよ」
そう、アイラさんと同じように、レイジ君もまた……本当に相思相愛<バカップル>だったわけだ。
「熱血……というよりロマンティックですね。でもそんな石のおかげで、レイジ君とセイ君がコンビを組むなんて……やっぱり熱血! これはまさしく運命です!」
「……お姉ちゃん、それは……ちょっと夢見すぎよ」
「キリエ?」
「ねぇニルス、人の想(おも)いで力が発動するってことは」
フローリアンさん……いえ、キリエさんは困り気味に右人差し指を立て。
「感情の中身は問わないってことよね。……どんなに汚く、おぞましい感情だろうと」
「あ……!」
「……その通りです」
最悪の事態を見据える。この方もシュテルさんに負けず劣らず、頭の回る方だ。
「これまで粒子災害などが起きなかったのは、粒子状態での運用なら安全だから。結晶体で見られるような”過剰反応”が起きないせいとも取れます」
「じゃあ、結晶なら……もしその数が半端ないとか、とてつもなく大きいとかなら!」
「早急に、PPSE社側の精製方法を見つけなくては」
「だね。もし本当に結晶体から取り出し続けているのなら」
「誰かしらの感情一つで、いつ暴走するか分からない……!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「――そう。ありがとう、ニルス」
ニルスからの電話を終了し、困りつつ頭をかく。
「やっちゃん、例の石……アリスタだっけ? 解析結果は」
「ビンゴですよ」
アイラとリン子さんを送った、その帰り道――ニルス達から連絡がきた。
鷹山さん達には軽く言うものの、どうも気が重くて。
「アリスタはやっぱり、プラフスキー粒子の結晶体でした。その特性は……人間の感情に反応し、力を増幅すること」
「感情に? じゃあ、あの金色ぴーかーは」
「セイがアイラに渡したアリスタと、レイジが元々持っていた石。それらが共鳴反応を起こしたからです。
……あのサイズと個数であれだけのエネルギー量ですから、もし……あれより大量の粒子結晶体があれば」
「感情一つで爆発しかねないわけか。ゾッとしないな」
鷹山さんは首を振り……すぐに停止し、まさかという顔を向けてくる。
「おい蒼凪、それは」
「おかしいですよね」
「あぁ」
「俺も同感。だってここ、世界大会の会場だよ? それなら今まではどうなのさ」
そう、勝者と敗者――様々なバトルと感情が渦巻いている。結晶体がそれらに反応するなら、とっくに暴走しているはずなんだよ。
なのでここで一つ、安全性……というにはほど遠いけど、仮説が立てられる。
「結晶体の近辺でどれだけ騒ごうと、直接的事故は起きにくいんじゃないの? その持ち主でもない限りさ」
「だと思います」
「でも持ち主であれば、今日のように反応するわけだ。それも本当に強い感情なら」
「……マシタ会長か」
≪……面倒ですねぇ、それは≫
≪えっと……マシタ会長が石の所有者なら、その感情に反応して……あ、あり得るの!? それは!≫
「そのマシタ会長も、小型のアリスタを持っているしね」
つまり所有物同士で共鳴して……そうするとヤバいなぁ。Cの捜査絡みでプレッシャーも与えているし。
「これからちょくちょくツツいていじめようと思っていたのに……駄目なのか」
「相変わらずだなぁ、やっちゃんは。だが今はやめた方がいい」
「レイジの一件でストレスはマッハ。そこでどう暴走するかも分からないんだ。……まずは結晶体の方を確保するべきだろ」
「……大下さんや鷹山さんが『やめた方がいい』って言うと、新鮮ですね」
「あ、やっぱり? 実は僕も……こう、何か胸の辺りが痛くて」
「タカ、それは老化現象」
「うるさいよ!」
焦(じ)れったいけど、ここは慎重にいかなきゃ。一度発動したら止める手段すら分からないんだし。
……居場所を見つけた上じゃなければ……マシタ会長達を刺激することは、爆弾でキャッチボールをするも同然だ。
腹を決めていると、携帯に着信。今度は一体なんだと思っていると、アランからだった。
「もしもし、アラン?」
『ヤスフミ、済まないが今すぐにカテドラルを持って、先ほどのバトルベースへ来てくれ。入館許可は取っている』
「返却しろってこと?」
『そうだ……いや、それを決めるのはボクじゃないな』
つまりタツヤにってことか。それも寂しいと思っていると。
『二代目だ』
「……は?」
『二代目は三代目メイジンとのバトルを所望している』
「ちょっと、アラン」
『そのためにカテドラルと、あの機体が必要だ。既に二代目も退院し、この場に来ている』
「……アラン」
もう一度名前を呼びかけても、アランは答えない。……もう意志は定まっているってことか。
だったら僕が何を言っても……仕方ないので、まずはジガンで時刻確認。
「一時間ちょうだい」
『分かった』
電話を終了すると、鷹山さん達が怪訝(けげん)そうに僕を見下ろす。
「忙しいことだ。今度はどこのドンパチだ?」
「鷹山さん達も見に行きます? 滅多(めった)に見られるショーじゃない」
「お、いいねー。今度はどんな美女が出てくるかな」
「ひげ面のおっさんと男子高校生です」
「「え……」」
「おっさんと、高校生です」
それでどん引きな二人の首根っこを掴(つか)み、早速選手村に戻る。でもこの状況で……いや、当然か。
約束は果たすものだ。二代目が命がけで守るつもりなら、誰にも止められないよ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
アランから突然話を聞かされ、戦慄した。しかし僕に拒否権はなかった。
僕が言いたいこと、止めたい理由……そんなことは、二代目が一番分かっている。
僕は感謝するべきなのだろう。二代目が命を賭けてでも、僕と向き合ってくれることを。
そして僕は、理解するべきなのだろう。そこまでする意味を……”体を治せば”などという、未来に期待しない覚悟を。
だから対峙(たいじ)する……今日、レイジ君達がバトルしたのと同じ舞台で、メイジンと。
預かったサングラスや衣装は脱ぎ去り、メイジン候補として……!
「……二代目」
「少し太った……いや、鍛えていたようだな。ユウキ・タツヤ」
「そういうあなたは、随分と痩せましたね。……思えば兆候はあった」
そうだ、あのときから……メイジン決定戦を断られたときから。
いいや、もっと早く……ガンプラ塾に入塾した日から? 気づくべきだった……もっと早くに、気づくべきだった。
あなたが命がけで……命を削るように挑み、戦っていたことを。僕は本当に、何も分かっていなかった。
「……きたか」
そこで二つのケースを持って、恭文さんが登場。
その後ろからには鷹山・大下両刑事が、ランスターさんとリインさんが付き添っていた。
まるで見守るように……まるで、支えるように。それはヒカリ達も同じだった。
「ヤスフミ、すまなかったね。忙しいときに」
「いいよ、事情が事情だ。……憎まれっ子世にはばかるって言うけど、死に損なったみたいだね。二代目」
「貴様も随分しぶといようだな……この馬鹿者が」
二代目は恭文さんを見下ろし。呆れ気味に言葉を贈る。
「カテドラルの本領を未(いま)だ発揮できぬどころか、敗北するとは。恥を知れ」
「な……!」
「いや、使わぬと言った方が正解か」
おい、待て。恭文さんはライナー・チョマーさんとのバトルで、確かに力を発揮したぞ。
……あれですらまだ、カテドラルの底じゃない……!?
「しかも”このまま”使っていたのも理解できん。分かっているだろう、現状のカテドラルは貴様に合わん」
「ちょっと、それって……」
「ユウキ・タツヤもそうだが、そいつも私の思い通りにならん。そういう話だ、娘」
「……恭文さん」
恭文さんも承知していることらしく、何も言わずに肩を竦(すく)める。
「貴様にくれたものだ。自分好みに改造してもいいはずだろうに……臆したか」
「そうだね、そういう気持ちもあった」
「情けないことだ」
「でもそれ以上に、信じたかったから……かな」
その上でまず僕に、右手のケースを差し出してきた。……中身は分かっているので有り難く受け取る。
「こういうときがいずれ、来るんだってさ」
「……下らん感傷だ」
「でも正解だったでしょ?」
「そして口も減らん」
「当たり前なのですよ。恭文さん、口げんかに負けたことがないですから」
それで近づくアランには、左手のケースを渡した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ヤスフミからケースを預かり、中身を確認。カテドラル……完璧な状態だ。
その輝きと威風堂々とした佇(たたず)まいに恐れながらも、ベースまでの階段を上がり、二代目に手渡す。
二代目はやや震える手で、機体を確認する。
「ふん、神棚に飾っていたわけではないようだ。瞬発力と加速力……更に機体追従性を中心に、随分と調整している」
パーツの状況を見ただけで、ヤスフミの調整を読み取った……いや、当然だ。
二代目が心血を注(そそ)ぎ、命を削って作り上げた機体だ。理解できないはずがない。
「ユウキ・タツヤ、なぜ私がカテドラルをお前ではなく、小僧に渡したか……理解できるか」
「……PPSE社に利用されないためには、一番安全な場所だったから」
「それもある」
「恭文さんの資質を見込んだから。実戦を勝ち抜いてきたこの人は、ある意味勝利絶対至上主義の極地にいる」
「それで半分と言ったところだな。一番の理由は……小僧が、パーツハンターを止めたからだ」
……そこも予想通りだった。だからタツヤは揺らがず、メイジンの厳しい視線を受け止め続ける。
「貴様は止められなかった。ただ愛を、信頼を説き、奴の心にあるものを見抜けなかった」
「……今なら分かります。ソメヤ・ショウキは……ガンプラにハマっていた。だが同時に憎んでもいた。
”やりたいこと”とバトルの才能……その解離が彼を苦しめ、否定の道へと走らせていた」
「貴様は強さと楽しさが同居する、新しいヒーローになると言った。だが現実はどうだ……貴様は失敗した。
ヒーローになろうとして、奴の心を正せなかった。……貴様は、メイジンにふさわしくない」
つまりソメヤ・ショウキの件は、彼自身を正すだけじゃない……メイジンがタツヤにしかけた試練でもあった。
タツヤはそれに失敗し、代わりに勝利したのは……つまり、メイジンが選んだ後継者は。
「そうだ。メイジンにふさわしいのは……私の後継者たる人間は」
そこで、足音が強く響く。……それはタツヤが、階段を踏み締めた音だった。
タツヤはそうして、一歩ずつ、ゆっくりとベースへ上がっていく。何の迷いもなく……胸を張って、堂々と。
「……ユウキ・タツヤよ」
メイジンは背を向け、ベースの反対側に回る。タツヤと同じ歩調で、確実に。
「どうやらお前と、バトルするべきときが来たようだ」
「……二代目メイジン、ありがとうございます。あれから……多くのファイターから学びました。
塾でジュリアン先輩が背負っていたもの……メイジンという名の重みも」
メイジンは認めたんだ。タツヤの今を……敗北を認め、強くなってきた歴史を。
「一年半前、僕は恭文さんとカイラ達に言われました。メイジンへの思いもなく、メイジンになる覚悟もないと。
だが今は違います。多くを知ってこそ、メイジンへの思いが……理想<三代目>の姿がある」
だからメイジンはタツヤと向き合い、その誇らしげな表情を見つめる。
「変わらず――この胸の中に!」
「タツヤ――!」
「……言葉などは不要」
そしてメイジンはマントを広げる。
「バトルで示せ!」
そこに収められていたのは、無数の工具と塗料……というか、エアブラシまで入っていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!」
メイジンはそれを素早く取り出し、的確に使い分け。
「はぁ!」
カテドラルを一瞬で調整完了――ヤスフミ仕様ではなく、自分の思い描く理想を形作った。
その勢いに、覇気に、誰もが威圧される。これが……本当に、死にかけていた人間の姿か。
だが、ついに始まるんだな。果たされなかった約束――タツヤにとって、越えるべきバトルが。
(Memory64へ続く)
あとがき
恭文「というわけで、アイラの一件は一応無事に解決……プラフスキー粒子の正体と危険性も見えてきたところで、続いては二代目とのバトル」
あむ「いいの、これ! 命がけじゃ!」
恭文「少年漫画ではよくあるから大丈夫」
あむ「駄目じゃん!」
(これが悪い意味で漫画脳です)
恭文「それに……下手に止めて、勝手をされるよりはずっと安全だよ」
あむ「た、確かに。えっと、お相手は日奈森あむと」
恭文「蒼凪恭文です。タツヤと二代目のバトルは、ビルドファイターズA最終刊のお話だね。こっちだとやってなかったんだけど」
あむ「漫画版と設定が違うしね。でも……どういうこと!? カテドラルの本領、発揮してないとか……合わないとか!」
恭文「それも次回だね。正真正銘……カテドラルの本気が見られるよ」
(そしてこの流れを受け、蒼い古き鉄用カテドラルフレーム新機体を考え中)
恭文「そう……スクランブルガンダムは違うよ? そっちは七年後」
あむ「それはアウトー! ……でもデートって……」
恭文「デートじゃないからね、本当に! ……相当ムカついていたんだろうなぁ、あのメガネザルどもに」
あむ「そっちか!」
(怒らない理由がないと言える)
恭文「それはそうとあむ、Nintendo Switchも発売されて……ちょくちょくゼルダをやってるんだけど」
あむ「あたしも……ヤバいよ、あれ。延々歩き続けちゃう」
恭文「いわゆるダッシュゲージとかの縛りはあるけど、行きたいと思えばどこへでも行ける……山登りも自由。
更にREG的なお使いについても、複数の答えを用意しているのが……」
(衝撃的だったのが……おっと、これはネタバレだ)
恭文「グライダーみたいなアイテムがあるんだけど、それで空を飛ぶのも楽しいんだよなぁ。というか滑空」
あむ「分かる! 湖とかを越えて、山も一つ越えて、一気に遠くへ行けちゃうんだよね……」
恭文「まぁ、僕達はまだいい。家族と共用だし、ゲームは一時間の精神が強制的に守られるから。……問題は」
あむ「うん」
恭文「なのはとはやてがはまり込んで、有休消化機関に突入したこと」
あむ「長期休みを取ったの!?」
(クリアするまで外出しない縛り、発生。
本日のED:鈴華ゆう子『天空の先へ』)
ヒカリ(しゅごキャラ)「これでアイラも私達の仲間か……もぐもぐ」
アイラ「ようやく本格参戦って感じね。これからよろしくー。……もぐもぐ」
恭文「早速何を食べてるの、おのれら……」
(おしまい)
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