[携帯モード] [URL送信]

小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
Memory53 『戦士<ファイター>の輝き』

よし……過負荷による損傷を避けるための、装甲変質と炎の放出は問題なし!

……今回、フェリーニさんとバトルして分かったよ。

下手に大きな力を求めても、ファイターが扱い切れないと意味がない。


そして今のボクの技量では、これ以上の出力を追い求めるのは無理だ。

求められるのは技巧――より効率的に、今ある力を活用する技。

……もう、同じ負け方だけは絶対にしない。そう決意を込めて作り上げた、RGシステムVer2.0。


その姿には、レイジも笑うしかなかった。


「すげぇ……すげぇぞ、セイ! 上手(うま)く言えないけど、すげぇ!」

「でも今までの損傷もあるから、そう長くは動けない。それに平常出力も八割に減少している」

「落ちてるのかよ!」

「その代わり最大効率でのエネルギー運用ができるから、爆発力は半端ないよ」

「……爆発?」

「そう、爆発」


そういう意味でもVer2.0だった。常に最大出力で動かすんじゃない。

機体とそこに流れる粒子の力、それらを一つの機構と捉え、爆発させる。

カテドラルやフェイタリー、ジオさんのモンスターズレッドを見て、思いついた発想だ。


出力が落ちていると聞いて、また不安げなレイジには……大丈夫と笑ってやる。


「その調整はこっちでしていくから」

「より二人三脚ってことだな。……了解だ!」


話が早くて助かる。……それじゃあ。


「行くよ、レイジ!」

「おう!」


レイジがアームレイカーを押し込み、突撃――。

サーベルを抜刀しながら、フェニーチェへ肉薄。まずは斬り合いに殉じていく。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


スラスター全開での飛び込み……それに合わせ、ビームレイピアで刺突。

刃は確かに、スタービルドストライクの腹を捉えた……そう感じた……感じ取った。

いや、感じ取るよう誘導された。揺らめく炎に目が眩(くら)んだ、とかじゃねぇ。


「あお……!?」


炎の揺らめきそのものが幻影となり、レイピアの切っ先を一瞬制止。その間に奴は、こちらの背後へと回り込んでいた。

「速ぇ!」


振り返るとスタービルドストライクは、軽く跳躍して唐竹一閃。

サーベルもRGシステムとやらの影響を受けているのか、ビームが揺らめくように燃えていた。

左肩アーマーのビームマントを展開し、防御。が……そこで猛烈に嫌な予感が走る。


咄嗟(とっさ)に後ろへと跳び、受け止めるのではなく”流して避ける”方向にシフト。


サーベルの切っ先から数センチほどが、ピンク色のビームマントを掠(かす)め……”巻き込み”、両断した。

これは……ち、<ファントム・ライト>と<フレイムソード>かよ! 面倒なもんを出しやがって!


ならば、炎の出ていない箇所を狙い、ピンポイントで……右にレイピアを振りかぶったところで、スタービルドストライクが肉薄。

逆に突き出されたサーベルを左スウェーで避けると、すぐさま身を翻しつつの右ハイキック。

アゴ先を蹴り飛ばされ、よろめきながらもバルカンとマシンキャノンを連射。実弾で炎を抜きつつ、奴の装甲に負荷をかける。


一瞬で放たれた数十発の弾丸。そのうち三分の一ほどを食らいながらも、スタービルドストライクはターン。

反時計回りに回転し、勢いを付け、右薙一閃――。

それをレイピアで受けつつ、身を伏せる。……そこでレイピアの発振を停止。


こちらの刀身を、構築ビームを巻き込みつつ、突き抜けかけたスタービルドストライクの刃。

それがフェニーチェの頭上すれすれに振り抜かれたところで、レイピア基部の切っ先を腹に突きつけ……再発振。

再び展開されたレイピアの刃が、スタービルドストライクの動体を……内部フレームを、メインスラスターを貫き、大穴を開ける。


『ぐ……!』


すかさず振り下ろされた、奴のフレイムソード――それをビームマントで防御。

……炎による巻き込みが始まるまで、コンマ二秒。それだけあれば十分だった。


マントの角度を変え、刃の勢いを流す。更にレイピアの発振をもう一度止めて、九時方向に投てき――。

マントの構築粒子が再び巻き込まれ、アンブロッカブル効果を発揮。

マントを突き抜け、振り下ろされた燃える刃は、フェニーチェの右腕を根元から両断する。


その下で投げられた、レイピアの基部。それを左手でキャッチし、再発振しつつ袈裟一閃。


『……!』


スタービルドストライクは咄嗟(とっさ)に左スウェーで下がるが、それでは無意味。

脇から振り抜かれる刃で、奴の右腕もまた根元から両断。

無論炎の発生箇所をすり抜ける、ピンポイント攻撃。このまま一気に……と思っていると、奴が向き直りながらイーゲルシュテルン連射。


レイピア基部を的確に撃ち抜き、破損……こちらも得物を捨て去ることとなった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


くそ……余剰出力でのファントム・ライトやフレイムソードでも、決め手にならないのか!

しかもより負荷を与えられて……やっぱ、このままだとそう長くは。


……でもやることは今までと変わらない。


「負担に耐えられない……!」

「構うなぁ!」


レイジが迷うなら、僕が背中を押す。

大丈夫だと思えるように、一緒に戦えるように。

最初に……『前へ出ろ』って、レイジが言ってくれたときみたいに。


あのとき、本当に嬉(うれ)しかった。だからセコンドに立つなら、僕もって……だから行け、レイジィ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


二人とも、右腕が落とされて……剣も落ちた。なのに、戦いは止まない。

フェニーチェはビームマントを腕そのものにまき付け、左アッパー。

炎が出ていない箇所を……スタービルドストライクの左アゴを打ち上げ、体を跳ね上げる。


かと思ったら、スタービルドストライクも炎の拳で左フック。

そうして殴り、殴られ……そのたびに全身から火花が走って。


「あぁ……!」


もう、見てられない……嫌だ。またイオリくん達が負けるのは、嫌だ。

でも見なきゃ……きっとここで逃げたら、本当にもう、追いかけることすら……!


「……ファントム・ライトとフレイムソードでも、この状況の決着にはなり得ないのか」

「えぇ」

「ファントム……?」


ファントムなんて、言ってたかな。イオリくん達、RGシステムって。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「漫画作品【機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト】にて登場する、ファントムガンダムの機能と武装ですわ」


続く殴り合い――もはや我慢比べの領域にもある。ここからは精神力の戦い。

最後まで自分のガンプラを信じて、全力を震えるかどうか。それができるかどうかで勝敗が決まる。


「ファントムが搭載したミノフスキー・ドライブを起動させた際、生まれる余剰エネルギーの炎。
それは全身に纏(まと)った、Iフィールドの嵐となって、ビーム兵器類の射撃・格闘・防御を無効化するッス。フレイムソードも同じく」

「えぇ。同時に機動力・推力は既存モビルスーツを大きく超えています」

「セイ君達の場合、全面無効化ってレベルの性能はなさそうだけど……でも、それを初見ですり抜けるのか。あの人」

「圧倒的な戦闘経験値があればこそ、ですわね。あの方も十分、本大会最強ファイターを名乗れましてよ?」


信じられない様子のイビツさんに補足していると。


「……なぜああまでして戦う」


ニルスさんは困惑気味に、二人の戦いを見続けていた。


――フェニーチェの左ストレートが、スタービルドストライクの頭部に命中。強引に首関節をへし折り、外した。

そのお返しと言わんばかりに、スタービルドストライクも左ストレート。

フェニーチェの顔面を粉砕し、追撃を止める……いえ、止めたと思っていた。


そこで至近距離でのマシンキャノン連射――ファントム・ライトの比較的薄い箇所を突き抜け、必殺の弾丸達が襲う。

スタービルドストライクの装甲表面から次々と火花が走り、そのうち十三発はVPS装甲を穿(うが)ち、爆炎を生み出す。

しかし、あちらも弾切れ……からからという、砲身の稼働音のみが虚(むな)しく響き渡った。


「ミスター・フェリーニは、決勝の出場権を得ているというのに」

「分からないのですか?」

「理解に苦しみます」

「あなたは、ガンプラが余り好きではないようですね」


そう……これが優勝のみを目的としたことならば、ニルスさんの言うことは正しい。


「いえ、その気持ちに目を背けている……でしょうか」

「……それは、どういう」

「分からないのならば、よく見ておきなさい」


でもこれは、遊びなんです。自分の楽しさも、喜びも追求する遊び。


「本物の、ビルドファイターズの戦いというものを――!」


だからこそ、馬鹿は行く――馬鹿は強い。こんなバトルを見せられたら、燃え上がるしかありませんわ……!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


警告音が四方八方から鳴り響く。もう残る武器は……この、拳だけ。

でもそれは、リカルドさんも同じ。だからレイジは構わずに踏み込む。

もう、僕が言うことはない……それでも……だとしても!


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! レイジィィィィィィィィィ!」

「お前の――」


リカルドさんも最高出力で踏み込み、マントの輝きを最大限高めながら……いいや。


『俺達の――』


マントの粒子を回転させていた。炎という【膜】を穿(うが)つ、拳<弾丸>とするために。

「負けだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

『勝ちだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


そして、炎と弾丸の拳は正面衝突。お互い狙いは同じ……ボディを粉砕するかのような、ボディブロー!

フック気味のそれは、相手を突き抜けようと抗(あらが)う。


こちらのファントム・ライトをもはじき返す、鋼鉄の意志。

でも、レイジも負けていない。震えるアームレイカーを押し込み……押し込み、押し込み……!


『「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」』


――爆発が起こる。

お互いの拳が、炎と輝きがつぶし合い、ひしゃげ、爆炎を生む。

炎の中、スタービルドストライクは完全に脱力。RGシステムVer2.0も停止。

倒れかかり、お互いを支えるようにして停止する。


≪BATTLE END――≫

「はぁ……はぁ……はぁ……!」

『はー……はー……!』


荒く息を吐く二人。でもすぐに、決着の鐘が鳴る。


≪DRAW≫

『――ただいまのバトルは……ドロー! 引き分けです!』


引き分け……その決着にぼう然としていると、フィールドが少しずつ焼失。

もう動くことすらできない……戦えない二機は、やっぱり支え合ったまま。


そして、小さく『パン』と弾(はじ)けた音が響く。

それは一つ、二つと続き――いずれ会場中を包む、喝采と拍手を呼び起こした。

僕達はブースから解放され、汗だらけのまま……笑い合っていた。


僕に至っては、涙は零(こぼ)れてるのに、笑ってる。もうわけ分からないよ。


「ごめんよ、スタービルドストライク」


漏れそうな嗚咽(おえつ)を必死に飲み込み、それでも……一番大事な言葉を贈る。


「ありがとう――!」



魔法少女リリカルなのはVivid・Remix

とある魔導師と彼女の鮮烈な日常

Memory53 『戦士<ファイター>の輝き』



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


最後まで、ちゃんと見届けた。本当に最後まで……わたし、まだ知らなかったんだ。

バトルがこんなにすばらしくて、熱くて……素敵なものだったなんて。


「ラルさん、恭文さん」

「何かね」

「イオリくん達は……どんどん、先に進んでるんですね」

「あぁ」

「わたしも、もっと強くならなきゃ」


わたしもやっぱり、戦う一人で……そうして進む一人で。だったら、伝えなきゃ駄目……なんだよね。

セシリアさんにも言われたことだったから。でも今は、大会中だし……それが終わったら、必ず。


「でも、まだ次があるよ」

「あ……セシリアさんの、試合」

「しかも相手はモンスターズレッド――ジオウ・R・アマサキだ」


あの、叫んで大暴れした人。恭文さんも苦戦した……止まらない拍手の中、一旦ハンカチで目元を拭う。


「ヤスフミ君はそのどちらとも対戦経験があるが、どう見るかね」

「正直分かりません。セシリアも決勝用の機体を温存していますし」

「え……それって、ストライク劉備じゃ」

「んなわけないでしょ。間違いなく本丸がある」


じゃあセシリアさんも、まだ全力ではない?

……これまでの大会でも、すっごく強かったのに。そう思って身震いしてしまう。


「ただ……セシリアのガンプラとモンスターズレッド、そのスピード・パワー・テクニックを比べると」


その言葉を自分でも考えてみる。えっと……あ、分かった。


「スピードとテクニックは、勝ってるんですよね。なら」

「いいや、勝てるのはスピードだけだ」

「ど、どういうことですか! だって、セシリアさんは……ガンプラ塾で強かったんですよね! それなら技術だって」

「まずパワーは言わずもがな。テクニックは……モンスターズレッドとジオさんも相当レベルだ。何せ自己修復まで行うんだもの」

「あ……で、でもスピードで勝てるなら」

「それも絶対じゃない。トランザムがあるでしょうが」


そっか、あの赤くなる必殺モード……そういうのがなかったら、スペックで押し切られかねないんだ。

そういうのを使いこなすことも、テクニックで……じゃあセシリアさん、かなりマズいの!?


「もちろんセシリアも、それは承知している。どうせ逃げるつもりもないだろうし、対策くらいはしてるでしょ」

「あとは、それでどう乗り切るかだな。まぁ見てみようじゃないか、いずれにせよ激戦になる」

「……はい」


……でも、そんな予測は無意味だった。


≪――BATTLE END≫


試合時間、一分足らず――セシリアさんのストライク劉備が、アマサキさんのガンプラと向き合ってからは、三秒足らず。


『だ、第二十七試合――勝者』


残っているのは……カレトヴルッフっていう武器を背部に三つ付けた、SDの……ガンダムアストレイ。

両腕がやたら長居、ゴリラみたいな体型で、長く……長く……数百メートルに渡って伸びた、銀色の刀を突き出し続けていた。


そう、あのアストレイがやったのは、たったそれだけ。

セシリアさんに対して刺突をしたら、いきなり……凄(すご)い勢いで、剣が伸びたの。

それに突かれ、押し出され、抵抗もできずに吹き飛んで……!


『ブラジル代表、ジオウ・R・アマサキ――ベビーR!』


セシリアさんを一蹴し、この大会初めての黒星を……突きつけた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


さすがに今回の大会、波乱に次ぐ波乱って感じだね。まさかセシリアが一瞬でやられるとは。

しかも……モンスターズレッドじゃないと来たもんだ。機体名は確か。


「ベビーR……ベースはBB戦士のものだが、中身は全くの別物。とんでもない性能だ」

「あぁ。アラン、あの伸びる剣については」

「十三キロや」

「……は?」


カワグチが呆(ほう)けているので、ボクから軽く補足。


「BLEACH、知らないのかい?」

「漫画だな。それくらいならまだ」

「いわゆる能力バトル漫画だが、その中に出てくる特殊な刀に『どこまでも伸びる刀』があるんだよ。ただし、音よりも速く……鋭く」


設定などについて説明すると面倒なので、簡潔に結論だけを言う。するとカワグチは察したようで、顔をしかめた。


「だがそんなものをどうやって……いや、粒子制御か」

「御名答。恐らくは周辺の粒子を収束させ、変換・再構築している。それも尋常じゃない速度で」

「槍と思えば短剣、かと思えば斬馬刀――驚異だな」

「それもまた、今更な評価とも言える。……ここまで残ったファイターの誰もが、君と同等以上なのは間違いないんだから」


あえてプレッシャーをかけておこう。だって……それでも打ち勝つのがカワグチだろ?

さて、次はアイラ・ユルキアイネンとスガ・トウリ&イビツ組の戦いだ。果たしてこちらはどうなるか。


『――これより、第二十八試合を開始いたします』


お、来た来た……ん?


「アラン」

「しっかり見えているよ」


彼女のセコンドが出したガンプラは……クシャトリヤだった。

ガンダムUCに出てくるニュータイプ専用機。正しその色合いはキュベレイ・パピヨンと同色。

右手には長物武器を装備し、無骨な印象を与えていた。


「ここでガンプラを変えてきたか」

「分からなくはないね。彼女達も土俵際だ。……となれば、気になるのは性能だけど」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


頭が重い……相変わらず、面倒な格好。でも、付けないと駄目だし……またうるさいし。


「アイラ、作戦通り……まずは見だ」

「……はい」


確実に勝つ、確実に……本当にウザい。

衣食住が満たされて、遊んでばっかのキリギリス達に、そこまでするなんて。

そんな奴にはもう負けない……誰であろうと、踏みつぶしてやるのに。


……レイジも?


一瞬そう自分に問いかけ、止まってしまう。


≪――BATTLE START≫


でも、わたしは……それでも。


「……アイラ、どうし」

「……クシャトリヤ・パピヨン、行きます」


アームレイカーを押し込み、深い宇宙へと飛び出す。

以前のおもちゃより大きく、力強くなった。動きは若干鈍いけど、問題ない。

見えているから……飛び込んでくるあの、飛行機みたいなガンプラ。


そう、見えていた。……それが流星みたいに赤く輝き、粒子を振りまきながら……飛び込んでくる姿が。

問題は振りまかれる粒子の波によって、その動きが見えにくくなっていること。


「……!」


だから慌てて、右手の長物で防御……回避する余裕もなく、奴の突撃・切り抜けに弾(はじ)き跳ばされた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――超速軌道でかき乱すエストレア。その加速にクシャトリヤ・パピヨンは追いつけない。

というより……エストレアは、赤い輝きを放ちながら超加速。そうして周囲の粒子を変容・形成。

自身を包む、機体色と同じフィールドとした。それはファンネルミサイルの直撃すら物ともせず、全て砕いていく。


言うなれば、今のエストレアは……!


「紅の彗星<ハイマニューバ>……アイラ!」

「……見えません」

「くそ!」


恐れていたことが起きたか。アイラの能力には、実は一つ欠点がある。

機体そのものが発する粒子、その動きや大きさを見て、ガンプラの動きそのものを先読みできるわけだが……大きすぎても問題だ。

この場合の『大きい』は機体サイズではなく、発生している粒子放出量。


それが濃密だと、機体制御の流れが見えなくなってしまう。

実際トランザムなどでは、アイラでも『見えない・見えにくい』ということが多々あった。

それを補うためのエンボディシステムでもあるが……こうもたやすく突破してくるか!


こうなったら仕方ない……もう一回も負けられない戦いだ。すぐコンソールを叩(たた)き、準備開始。


「二十秒持たせろ! ”ITF”の準備をする」

「……了解」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


スガさんのAGE-2は、重力を感じさせない軌道を見せる。

飛行形態なのに、ジグザグや急速反転……四つの羽を広げて飛ぶ、蝶に次々突撃。

新しいパピヨンはそれを羽根で受け止め、やり過ごし、でも振り切れなくて……どんどん傷ついていく。


「凄(すご)い……」

「まさかここで、紅の彗星を見られるとはな」

「でも、どうして! だってユウキ先輩しかできないって!」

「その条件は明白だからね。整いさえすれば、あとは練度の問題だよ」


そ、そういうものだったんだ! つまりあの人も……ユウキ先輩に負けないくらい、強いファイター。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「超絶軌道によって、周囲の粒子を圧縮・変容。文字通り彗星(すいせい)を纏(まと)いながらのハイマニューバ。
あのフィールドが発生している間は、多少の攻撃じゃあ揺らがない」

「だから、ただ体当たりするだけでも、大ダメージってわけか」

「ユウキ先輩の二つ名……紅の彗星は、あそこから名付けられたんだ。今までユウキ先輩にしか使えなかった技」


原理は分かるけど、それを実現するのは大変だ。

しかもハイマニューバの速度と威力は圧倒的だけど、それゆえに機動は単純になりがち。

直線機動しかできないとも言えるから、使いこなすのは大変だ。


でもトウリさんは。


「多分、姿勢制御システム『SPALLOW』を発展させている」

「スパロー?」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


プロデューサーがいない……いえ、試合会場にはいるんだけど。本当に今更なんだけど。

でもオルコットさんの頼みだなんて。やっぱり大きい人が……くっ。


「小説版に登場する設定で、全身にエネルギーフィールドを形成。それによって斥力を発生させ、機動力を向上させられるのよ」

「確かAGE-1スパローに搭載されていたもの、ですよね」

「だけどAGE-2も両肩の可変翼に、同型システムを応用しているの。……じゃなきゃ、あのトランザム張りの軌道変更は」


ていうかまた、シンプルな作戦を……いや、シンプルだからこそ対処が難しいのよね。


「機体の動きが見切れないほど、膨大な粒子放出量。それを持って、人間の反射を超えるレベルで動く」

「あの人の技量が、とんでもないから……というか」

「えぇ」


三条さんも思っていたことを、あえて……あえて口にしてみる。


「もしかしたらあれは、プロデューサー以上……!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「そう、それこそが自分達と」


突撃の瞬間、振るわれたアックス。でも獲物が大ぶりな上、攻撃の精度も決して高くない。

動きが読めない……分からないことへの恐怖、いら立ち。そういうものを感じながらバレルロール。

粒子フィールドで刃を軽く流しつつ、右肩のバインダーを根元から粉砕。


そのまま交差・反転しながら急速変形。刃を右薙に振るい、胴体部を両断。


「エストレアの本気ッス!」


しかし敵も然(さ)るもの。急上昇で回避してくる。刃が捉えたのは右足だけ。

右膝から下を切り落とされながらも、パピヨンはこちらへ向き直る。そうして胸元の拡散メガ粒子砲を連射。

すぐさまストライダーモードへ再変形して加速。減衰しかけていた粒子フィールドも、それに合わせすぐ再形成される。


そうして距離を取った上で反転……またまた突撃じゃあぁぁぁぁぁぁぁ!


「AGE-2……いけー! やったれー! ははははは、これで勝つる!」

「それフラグッスー!」


更に残りのファンネルミサイルが、真正面から飛んでくる。そんなものも全て貫き、切り裂きながら、再度肉薄していく。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ファンネルミサイルも、あの赤い粒子障壁を貫けず……だから、このまま行けると思っていた。


『もらったッス!』


そう、思わせた。だからほくそ笑みながら、アイラに指示。


「アイラ、ITF発動」

「……発動」


その瞬間、クシャトリヤ・パピヨンの隠された能力が発動。

不可視の鱗粉(りんぷん)をまき散らし、機体周辺三十メートルを”結界”とする。

それで相手の動きを止められはしないが……一つだけ確実なことは。


あのハイマニューバを、問答無用で殺せるということだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


一瞬、クシャトリヤ・パピヨンから歪(ゆが)みのような物が見えた。各部スリットから煌(きら)めくものが生まれ、嫌な予感が走る。

でも紅の彗星と同質の、粒子フィールドがあるなら……そう思って、自分達は油断していた。

油断してしまった。ほんのコンマ一秒だろうと、油断は油断。


そこから一気に思考が加速し、自分のミスを悟る。


「……!」


咄嗟(とっさ)に減速し、モビルスーツ形態に変形。フィールドは多少の減衰を始めながらも、まだエストレアを守ってくれていた。

でも”多少”じゃなかった。


粒子フィールドは三十メートル圏内に入ってから……一気に焼失した。


「な……!」

「ちぃ!」


咄嗟(とっさ)にバレルロールで回避するも、粒子の鎧が再構築されるも、全てが遅かった。

フィールドによる目くらましが消え、既に奴の”感覚”は復活している。


結果振り返りながらの左薙一閃で、胴体部を断ち切られながら交差。


「やられた……まさか、こう来るとは」

『……当然よ』


その声は、嫌悪感……いや。


『遊んでいるだけのアンタ達とは、違うのよ……!』


自分や大会出場者……ガンプラそのものへの、憎しみに等しい声だった。


「エストレア」

≪BATTLE END≫

「すまないッス」


そんな怨嗟(えんさ)に苦い顔を浮かべながら、敗北を示す爆発に飲まれ、エストレアにも静かに謝る。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


優勢からの敗北……それ自体はよくあることよ。私自身も経験はある。

でも問題は、負け方。何、あれ……粒子フィールドそのものが、霧散した?


「ちょ、何あれー!」

「……まさか」


リインさんが小さく呟(つぶや)いた。プロデューサーがいないから、未知への解説は任せっきりになってしまう。

……この子も幼く見えるだけで、プロデューサーと同じ実戦経験者……それも歴戦の勇士だから。


「AMF!? いえ、プラモですけど!」

「えーえむえーふ? あれ……それって……りん!」

「そうか、同じ原理の能力!」


それで私とほしなさんは顔を見合わせる。

……以前聞いたことがあるの。プロデューサーが魔法使いだって知ったとき。

AMF……ジェイル・スカリエッティという人が持ちだし、管理局の威信を揺らがせた”枯れた技術”。


魔法を殺す魔法――魔導殺しの一端。まさか、その言葉をこんなところで思い出すなんて。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


今日はうちに集まって、みんなで試合観戦。そうしたら、寒気が走る現象を見てつい立ち上がる。


「あれ、AMF!? ティア! シャーリー!」

「フェイトさん、ガンプラですから……でも」

「消え方は同じだね。粒子フィールドの結合そのものが解除された」

「ちょ、AMFって確か!」

「……魔導師殺し、ですよね」

「うん!」


AMF……私達がガジェットや戦闘機人、スカリエッティと戦っていたとき、散々苦戦させられた結界魔法。

まぁガジェットは機械的に再現したものだから、完全な魔法とは言わないんだけど。

と、とにかく今の消え方、AMFなんだよ! きっと原理は同じなんだ!


「フェイトさん、えーえむえふってなんですかー?」

「わたしも初耳なんだけど」

「そっか……りっか達は知らないんだっけ。あのね、アンチ・マギリンク・フィールドっていう、高難易度な結界魔法なんだ。ルティ」

≪ぴよ!≫


フォルティアがモニターを展開して、実際の使用例……ヤスフミが展開したAMFを見せてくれる。

そこにあむの魔力弾を撃ち込むと、その全てが奇麗に霧散する。


「あれれ!? これって!」

「AMFの特性は、魔力攻撃を防ぐとか、弾(はじ)くとかじゃなくて……消しちゃうの。
魔法を構築する、魔力の結合そのものを解除するから。この中だと魔法そのものが使いにくくなる」

「……それで一番厄介なところは、その威力が”濃度”で示されるところなんだ」

「濃度? つまり濃くなれば濃くなるほど強力なのか」

「最終的には魔法そのものが使えなくなる。あの、新しいパピヨンがやったのも、同じだと思う」

「それでエストレアの粒子フィールドを消して……で、でもそれなら、自分も動けなくなるんじゃ! ガンプラも流体的に粒子を動かして!」

「当然、そうならないように対策もしている」


察するに範囲は……三十メートル程度? 自分が動いて、あの大物で攻撃できる範囲だ。

だとしたらAMFと違って、空間一杯ではなく……膜状になってるのかも。

だからこそより凝縮されて、あんな真似(まね)が可能になる?


「でも厄介ですね。あのフィールドの中だと」

「蒼凪さんのフェイタリーやカテドラルがやった、粒子制御による攻撃も無効化されます。
もちろん通常のビーム攻撃なども。……なるほど、だからこそ斧は物理兵器だったのか」

「やっぱり強敵なのね、アイラ・ユルキアイネン……チームネメシス」

「強敵じゃないはず、ないんだよねー。だって世界大会だもん」

「うん……そうだね」

「ああー」

「まあー」


ベビーチェアのアイリと恭介も、心配そうに私を見上げる。

これは……うん、奥さんとして頑張らなきゃ、だよね。なので全力でガッツポーズ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


警察やらの動きも怖いけど、それでも本日の大会は終了。

結構大荒れな感じだったらしいけど……さてさて、あのガキどもは一体どうなったかなー。

さすがにリカルド・フェリーニ相手だし、無理だよねー。だってドローだよ、ドローだよ!


中途半端すぎて笑うしかないよ! ……そう思っていたら。


「よ、よよよよよ……予選、通っちゃったの!?」

「……はい」


また別宅にて、勝利の美酒に酔っていたら……ベイカーちゃんが眼鏡を曇らせ、現実を突きつけてきた。


「イオリ・セイ&レイジ組は、引き分けの二ポイントを入手。十五位で決勝トーナメント出場を……」

「なんで!? どうして!? だって……ドローだよ!?」

「総合的な試合結果では、二敗がボーダーラインだったんです」

「へ!?」

「十六位は全試合終了後行われた、十六位決定バトルロイヤルにて勝利した……ジオウ・R・アマサキ氏です」

「あ、なるほど」


先日負けて、今回ドローだから余裕だったのね。なんだなんだ、それなら納得。


「……納得できないよぉ! なんなのそれぇ! ゴーストボーイも予選通過してるし……ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


も、もう妨害なんてできないよね! ここからはタイマンだし……何かしたら、こっちの責任問題になる!

ただでさえCやB.O.B絡みの一件で、スポンサーからもうるさく言われてるのに! 最悪だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ついに決勝トーナメント……! ここからは一度の負けも許されない、ハラハラドキドキな戦いが続く。

ジオさんやアイラ・ユルキアイネンの新ガンプラも面白そうだし、もうワクワクで各機体の整備と改良を推し進めていた。


それも目処(めど)が立ったので、シオン達だけを連れてふらりと外出。と言っても、決して遊びではなく。


「じゃあCの行方は変わらず」

「あぁ」


近くのカフェへ入り、ホットドッグをもぐもぐ……そうしつつ、鷹山さん達と合流。

本日は夏海さんもいて、いろいろと話を聞いていた。そう、C関連の問題です。


「ただ、静岡(しずおか)……最低でも日本(にほん)からは出てない。B.O.Bも絡んでいるせいで、検問も厳しくなっているそうだ」

「鷹山さんの言う通りよ。なのでそちらは……まぁ、こちらに任せてもらえれば」

「お願いします。それでですね、僕の方でも国際ガンプラバトル連盟にお願いして」


用意してきた資料を取り出す。これは”違法ファイターとしてのC”をまとめたものだ。


「Cの情報、かき集めてもらいました。参考になるかと」

「サンキュー。……タカ、夏海ちゃん」

「えぇ」

「とはいえ、俺達素人が見て、分かることがあるか……」


そう口にした鷹山さんだけど、資料の『特記事項』を見て、表情が変わる。


「……あったな、早速」

「Cは一度狙った獲物を逃がさず、必ず仕留める……執念深い男か。つまりセイとレイジを、もう一度狙ってくる」

「その公算は高いです。ただ大会中はないかと」

「だよなぁ。ここからは決勝で、相手選手とのタイマンが基本だろ?」

「なら、それ以外……鷹山さん、二人に警護は」

「その可能性も考えて、内密に付けている。例のラルさんと、チナちゃん、セイの母親も納得済みだ」

「特にチナちゃん、一途(いちず)にお願いしてきたからねぇ。俺達なんて平社員も同然なのに」


……鷹山さん達は挙げてきた戦歴だけなら、ハマの伝説を名乗れる最強コンビ。

でも、警察官としては問題行動だらけで……出世とは縁遠い。少なくともトオル課長達よりはねぇ。

それでも堂々とした生き方が、僕には眩(まぶ)しく映って。この二人と一緒に戦えたことは、今でも誇りです。


≪さて、私達はどうします?≫

「対戦相手になるかもだし、不用意に近づけない。特に今は、スタービルドストライクの修理で……修羅場中だろうから」

「昨日の試合でも派手に壊れていたからなぁ。でも五日もあれば」

「全く足りないです」


そう断言すると、大下さんがガクッと崩れ落ちる。鷹山さんも目を丸くしていた。……あぁ、やっぱ分からないか。


「え、五日あって……足りない? 何でまた」

「まぁ……大会出場者の共通認識なんですけど」

「あぁ」

「スタービルドストライクは性能こそ凄(すご)いけど、その根底にあるのは徹底した作り込みによる完成度。
ようは……作るのに手間が極めてかかる。それゆえに整備性も劣悪で、連続した破損には対応し辛(づら)い」

「……逆を言えばあの子達のガンプラは、五日間以上の時間をかけて……それこそ寝る間を惜しんで作って、ようやくできるようなもの」

「PPSE社のケンプファーアメイジングみたいな、ワークスモデルレベルですからね。しかも今回はミーティアも加わってる」


そうそう、あれがあった……あれも手間がかかっている。

振り返りながらも、アイスコーヒーを静かに頂く。


「だったら余計に、Cの奴には退場願わないとね」

「アイツらだけじゃない。そう言った努力を重ねて、戦っている奴ら全員への侮辱だ。……早速聞き込みに行くか」

「了解」


ホットドッグは食べ終わったので、ごちそう様でした――鷹山さん達に続きながら、カウンターへ。


「じゃあここは、やっちゃんと夏海ちゃんの分も含めて、俺が払うってことで」

「蒼凪はともかく、夏海の分は俺が払うさ」

「いやいや、ここは俺に」

「俺に任せろって」


あ、出た。二人の意地っ張りが……そこで夏海さんは。


「駄目よ、会計前に揉(も)めちゃ。なのでここは私が」

「「ゴチになります」」


名乗り出た瞬間、即座に頭を下げた二人に苦笑。

なのですかさず間へ入り込み、笑顔を送る。


「いやいや、鷹山さん達はともかく、夏海さんには悪いですって。ヒカリがまた大食いしましたし」

「ここのホットドッグはよかった。肉が違うな」

「……だからって十本は食い過ぎだろ」

「なのでここは僕が」

「「「蒼凪課長、ゴチになります」」」


それで、即座に頭を下げられた……しかも夏海さんまでー!

――そんなお茶目(ちゃめ)な大人達には、お礼としてしっかり奢(おご)りつつ……暑い夏の陽気へと戻っていく。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


鷹山さん達と別れ、スタジアム付近へと戻る。時刻は十三時――そろそろだしね。

会場近くに設置された、特設ステージ。今日ここで、346プロによるスペシャルライブが行われる。

卯月達も出演するもので、予選ピリオド終了記念ってところかな。更にその周囲はお祭り騒ぎ。


「アッガイ焼きー! 静岡(しずおか)名物アッガイ焼きはいかがっすかー!」

「ドネルケバブ、美味(おい)しいですよー!」

「……アッガイ焼きは美味(うま)そうだなぁ」


お、ショウタロスが興味を示してる。うんうん、カステラ生地がフワフワで、最高だよねー。


「千早達への土産で買っていこうか」

「「「さんせー!」」」


はい、出店なども多く出展しています。そんな中、子ども達に囲まれている影を発見。


「――はい」

「ありがとう、三代目メイジン!」

「これからも応援、よろしく頼む」

「うん!」


サインを求められ、返し――走る子どもと、それを受け止めお辞儀する御両親。

その姿を見送るタツヤに近づき、軽く手を振る。


「好評みたいじゃないのさ。三代目」

「恭文さん……えぇ、まぁ」


タツヤは苦笑。それからあらぬ方向を見て、瘴気を放ち始めた。


「……各所には、凄(すご)く怒られましたけど」

「だろうね」

「特に、ゴンダ君が大変で――学校の先生達も」

「だろうね。僕にもきたから、全部おのれへ押しつけるよう流したし」

「でしょうね! 言ってましたから! ……でもありがとうございます」


そう言いながら二人歩きだし、ステージ裏へ向かっていく。


「島村くんには、直接話したかったので」

「いいよ。僕も765プロの仕事絡みだし」

「……それなら、四条さん達は」

「CPの現状を考えて、顔出しはしない方向。楓さん達だけならともかく」

「やはり厳しいんですね」

「まともじゃないのよ、アイドルとしては」


少なくとも346プロとしては……そう思いながら、頭上のアルトを左手で撫(な)でる。

……そうしていると、関係者用の出入り口から武内さんが登場。


「蒼凪さん……遅れてすみません」

「いえ。こっちが無理を言ってますから。改めて紹介します――三代目メイジン・カワグチです」

「恭文さん!?」

「初めまして。346プロでCPのプロデューサーを務めております、武内です……お噂(うわさ)はかねがね」

「武内さん、やめてください! 初対面ではありませんよね! その、慶さんの絡みで……今はプライベートですから!」


律儀な武内さん、慌てるタツヤにクスクス笑いながら、中へと入っていく。


はい……実はタツヤ自体、CPのみんなとは初対面じゃありません。

346プロのトレーナーである【青木慶】は、PPSE社が選出したメイジン候補の一人。

去年の世界大会にもその流れで、特別枠として出場していてさ。タツヤともバトルしたのよ。


その関係から、タツヤを物すごく慕っていて……ガンプラ指南役として、何度か呼んだらしい。


晴れてメイジンの正体も明かされたところで、ライブ前の卯月に激励です。僕も……楓さん達に挨拶しておきたいし。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


今日のライブ……CPとして、ユニットの完成を見る日。

初めて全体曲をやるんです。すっごく練習して、大変で……でも頑張りました!

だからドキドキと同時に、ワクワクしていると……控え室をノックする音が響く。


「はいー!」

「蒼凪さんと……ユウキ・タツヤさんがお見えになりました」

『はい!』


それでドアが開けられる。


「失礼します」

「やっほー。卯月」

「恭文さん! ……ユウキ会長ー!」


化粧台から立ち上がり、一目散に二人へ駆け寄る。……っと、プロデューサーさんも入ってくるから、途中で止まって。


「よかったです……本当に、ユウキ会長ですよね!」

「すまない、島村くん。模型部部長としても、会長としても……不義理を重ねてしまい」

「いえ、それは大丈夫です!」

「しかも君自身、大変な状況だったというのに」


あ……みくちゃんの立てこもり事件や、未央ちゃん・凛ちゃんの離脱未遂。

それに伴う、CPの現状……会長、気にしてくれていたんですね。


「いえ、大丈夫です! それに……みんなと一緒に、一歩ずつ進んでいますから」

「そうか」

「タツヤさん」


そこで未央ちゃんと凛ちゃんが脇によって。


「渋谷さん、本田さん、御無沙汰しています」

「「ごめんなさい!」」


全力で頭を下げてきた。


「全部私達のせいです! 私達が勝手な勘違いで、卯月に負担をかけたから!」

「本当にごめんなさい! でも……しまむーのことは、私達で守ります!」

「り、凛ちゃん!? 未央ちゃんもー!」

「迷惑かけた分、全力で! だから」

「その必要はありません」


慌てていると、タツヤさんはぴしゃりと一言。それを拒絶と捉えたのか、凛ちゃん達の体が震える――でも。


「仲間として、島村くんと一緒に戦ってください」

「タツヤさん」

「守ってあげる、あげられる――ではなく、隣に立てるように。同級生として、模型部部長として、それだけはお願いします」

「「――はい!」」

「会長……なら、やっぱり学校には戻ってきますよね!」

「夏休みを終えたらね。……その分すっ飛ばした期末試験やら、いろいろ大変だけど」

「よかった……本当に、よかったぁ……!」


その言葉にホッとしつつ、気が抜けてしまう。恭文さんからも聞いていたけど、会長が直接……だから。

だから近くの椅子に座り、笑うことしかできなかった。それはもう、全力で。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


タツヤと卯月、それに凛達を残し、既にメイク済みなみんなと退室。積もる話もあるだろうしなぁ。


「ありがとう、恭文くん」


廊下を歩く中、美波が笑顔でお礼を言ってきた。


「卯月ちゃんに約束してたのよね。タツヤ君を連れてこられる状況なら、必ず会わせるって」

「まぁね。……おのれらの自業自得に巻き込まれた上で”アレ”だし」

「う……で、でも莉嘉達、今はちょーイケてるよ!? だから大丈夫!」

「はい……少しずつ、頑張って……先輩の人達からも、信頼されて」

「……TOKYO WARという事件に関わったとき、特車二課第二小隊の隊長――後藤喜一さんからこう言われた」

『えぇ!』


話に入ろうとしたら、全員が驚き詰め寄ってくる。なので一歩下がって対処。


「ちょ、それって……!」

「十年前に起きた、都市型テロ事件にゃ!」

「蒼凪さん、あなたは……あの動乱に関わっていたのですか。それも解決の立て役者である、旧特車二課に」

「えぇ。……まともじゃない警察官には、二種類しかいない。悪人か、正義の味方か。僕はどうも”まともじゃない”方らしくてね」


先頭を切りながら、踵(きびす)を返し……奴らを指差す。


「それはおのれらもだ」

「えー! あの、違うよ! きらり達、アイドルだもん! お巡りさんや忍者さんじゃ」

「……そういう意味じゃないよ、きらり」

「杏ちゃん?」

「CPそのものが、346プロという枠組みではまともじゃない……だよね」

「そう。もし”まともじゃないアイドル”がいるとすれば、それは何だろうね。悪人か、それとも」


悪人か……はたまた別の何か。その意味を察し、美波や武内さん達の表情が重くなる。


「……それは、誤解です」

≪誤解? どこが≫

「もし我々が犯してきたミスを指して言っているのなら、撤回してください。……我々もまた、346プロの一員です。
だからこそこれからも一歩ずつ、先輩達と……仲間達と一緒に進んでいければと、そう思って」

「じゃあはっきり言ってあげる。律子さん達も全く同じ見解だよ」

「なんですって……」

「だからこそ、CPへの厳戒態勢を一切解除しない」

『えぇ!』


僕の判断だけではない。765プロも――その事実は、みんなを動揺させるには十分で。


「僕達は後藤さんやその友人達から、エールをもらった。まともじゃないなら、せめて正義の味方になれと――。
だからこそ今、おのれらにも同じものを送ろう。……どうするかを決めるのはお前達だ」

「みりあ達が……悪人か」

「でも、もう一つは何ですか。わたし達、正義の味方……違う、思います」

「それは自分達で考え、見つけていくんだね。ただまぁ」


残念ながら僕にも、アイドルの場合を示す答えは分からない。


でもきっと……それは、希望に等しい輝きを放っていて。そう、みんなには可能性もある。

346プロのアイドルという、まともな道では救えない――手が伸ばせない、そんなものを掴(つか)める可能性。


それが花開くと信じて、背を向けて早足で歩き出す。


「”頑張っている”なんて言って、自分を甘やかしているうちは無理だけど」

「「え……!」」

「蒼凪さん、待ってください! 本当に……765プロは、我々に対してそんな評価を!」

「その言葉でよく分かったよ。自覚がないなら、CPへの厳戒態勢はやっぱり解除できない。律子さん達の判断は正しかった」

「ですから、それは」

「それにもう一度、卯月を巻き込んでみろ――そのときは戦争だ」

「――!」


そう言い残し、楓さん達のところへ急ぐ。みんなはまた、別室なんだよねー。

差し入れも持ってきているし、楽しみだなー。……早苗さんは気づかう必要があるけど。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


言いたいことだけを言って、嵐は去っていった。これは警告、だろうか。

だが納得するわけには、いかない。それでは完全な誤解――偏見もいいところだ。


「……みなさん、余りお気になさらず」


なので動揺するみなさんにフォローを。ライブ前にこの状況は、決してよろしくない。


「これは、完全な誤解で成り立っていることです。765プロとも改めて話をして、それが解消できるように」

「無理だよ、プロデューサー」

「双葉さん」

「プロデューサーだって分かっているでしょ? これは警告だ」


……双葉さんの言葉で、つい首の裏を掻(か)いてしまう。

そう、警告――765プロサイドとの本格的雪解けには、我々がその”何か”を見つけて、掴(つか)んでいく必要がある。

だが同時にそれは、絶対的平行線でもある。”まとも”な方々とは、決して分かり合えない。


理解は示せても、混じり合うことができない。それは美城という企業の中で、死を意味する。

それだけは、絶対に避けなくては。しかも蒼凪さんが出した警告は、常軌を逸している。


「そうね……まぁいいじゃないの。まともじゃない私達に、『まともになれ』って説教じゃないんだから」

「新田さん、それは駄目です。どうか冷静に」

「それに……そういうの、何だかロックじゃん。よし、私も美波さん達に賛成!」

「差し当たっては、やっぱり今日のライブよね。よし……頑張っちゃうんだから!」

『おー!』


……意気揚々と、気を取り直したみなさん。それを止めることができず……また、首裏を掻(か)いてしまう。

常軌を逸している……今ならば修正も効くだろうに、それを『突き抜けろ』と言ったんだ、あの人は。

無駄だということ、なのか。まともになろうとしても、それは抗(あらが)えないもので。


それは経験から? だとしても……自分は、どうするべきか。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


きっと今頃、悩んでいることだろう。まぁ僕も数年単位で、失敗も繰り返しつつ進んだ道だ。死ぬ気で頑張れ。

――というわけで、楓さん達の控え室に到着。しかし、感慨深いなぁ。


「恭文、どうした」

「感慨深いって思ってさ。……早苗さんは鷹山さん達と知り合った頃からの付き合いだし」


港署に初めて訪れて……まだ新人婦警だった頃だよ。

片桐早苗さん――真山課長の下についている、少年課の一人でさ。

とても気さくで、僕にもよくしてくれた。……そして、どんどん港署の空気に染まっていった。


今では立派な新世代あぶない刑事<アイドル>だよ。その活躍は鷹山さん達も、真山課長も喜んでる。


「なおその辺りの経緯については、とまと記念小説内にある『まだまだあぶないD』を御一読ください」

「宣伝するなよ……」

「瑞樹さんはそれより少し前か。大阪(おおさか)のテレビ局で知り合って」


川島瑞樹さん――元々は大阪(おおさか)出身のアナウンサーだったんだけど、アイドルに転身。

346プロの社風もあってか、あっという間に売れたのよ。ルックスも最高だしなぁ。

なお僕が好きなのは、今やっているMC番組で見せる……髪を下ろした姿!


瑞樹さん、ウェーブがかった長い髪を、基本一つに結わえてるのよ。だからロングって貴重でー。

一緒にMCをしている、十時愛理って子も好きだけど……ロングの瑞樹さんもいいのよ。


べ、別に……一緒にお風呂へ入ったときのこととか、添い寝したこととかを、思い出すわけじゃ……ありません。


「なおその辺りの経緯については、とまとパイロット版にある『VSクイズ王』を御一読ください」

「またかよ!」

「お兄様、幸せそうでしたよね。……私というものがありながら」

「おのれはまだ生まれてなかったよね! ……楓さんは機動六課ができる直前だ」


その頃から活躍していたモデルさんだったけど、プライベートでの旅行中にバッタリとね。

そうしたら村ぐるみの犯罪に巻き込まれ、それを解決する羽目に――楓さんとの付き合いも、何だかんだで四年とかだ。


「なおその辺りの経緯については、とまとパイロット版にある『灰色の村 前・後編』を御一読ください」

「天丼かよ!」

「二度あることは三度ある、だな。……しかし楓達だけじゃない。加蓮やまゆも……346プロ、狙ってないか?」

「偶然でしょ」


それを狙ってるって、さすがに怖すぎる。そう思いながらもノックをすると。


「はいー」

「蒼凪です」

「私達もいるぞー」

「あ、恭文くん! どうぞどうぞー!」


瑞樹さんの声が響き、ドアが解錠。なのでゆっくりと開けると。


「失礼しますー」

「「「やっほー」」」


楓さんがオッドアイを輝かせながら、僕に全力ハグ。


「か、楓さん!?」

「恭文くん、決勝トーナメント出場、おめでとうー!」

「あ、ズルいー! 私も……おめでとうのハグ!」


そして瑞樹さんまでー! 二人の温(ぬく)もりや匂いを受け止め、一気にドキドキ……と、特に瑞樹さんが凄(すご)い。

相変わらずナイスバディだから、それが押しつけられて。いやが応でも、意識してしまう。


「あ、ありがとうございます。でも、離れて」

「「どうして?」」

「疑問を持つなぁ!」

「……恭文くん、それは無理だって。ほら、まゆちゃんの影響で、うちの事務所は恋愛OK」

「そうだったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


呆(あき)れ気味に近づく早苗さんに、死刑宣告を食らう。そしてドアが閉じられ……ちょ、引きずるな! 引っ張り込もうとするなぁ!


「あ、それと早苗さん、こちらが……鷹山さん達からの、差し入れです」

「ありがとー!」


左手でどこからともなく、大きな風呂敷包みを取り出す。早苗さんはそれを受け取り、ほっこり笑顔。

でも、助けてくれないんですねー! 二人揃(そろ)って、すりすりしてくるんだけど!


「鷹山さん……あぁ、港署の刑事さん達よね。もしかして恭文くん、わざわざ横浜から?」

「いや、どうもこっちに来てるらしいのよ。ライブが終わったら、また飲もうねって言われてて。……二人も一緒に来る?」

「もちろん! 恭文くんの師匠達でもあり、あの『あぶない刑事』のモデルとなれば!」

「実は前々から、興味津々だったの。恭文くん、今日は寝かさないから」


そう言いながら、楓さんが耳元で囁(ささや)いて……や、やめてー! というか、今日!?

ちょっと、まさかその飲み会……僕も参加するんじゃ! やめてよ、また鷹山さん達に『クリシュナになれ』って言われる!


「まぁ預かってくれたお礼もしたいし、付き合ってよ。それで改めてお祝いよ、お祝い」

「は、はい。ただ早苗さん」

「分かってる……君が出た第七ピリオドの試合絡みで、鷹山さん達も動いてるんでしょ? そっちは配慮するから」

「お願いします。というわけで、そろそろハグを解除」

「「駄目」」

「なぜだぁぁぁぁぁぁぁぁ! 早苗さん!」

「「「「……南無」」」」


シオン達と一緒に合掌した上で、離れていく!? いや、部屋から出ようと……待って!

待って待って……待ってぇぇぇぇぇぇぇぇ! 今の二人と僕だけを残さないで! 猛烈に嫌な予感がするのぉ!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


予選ピリオドが終わって、三日間の充電期間に入った。いや、トーナメントの組み合わせ発表があって、その翌日に試合だろ?

何だかんだで五日間くらいは猶予がある。その間にビルドストライクを修理していくんだが。


「セイ、ピンバイスを貸してくれ。ドリルは○.五ミリを」

「紙やすりも使います?」

「あぁ、八百八十番で頼む」

「あおあおあおー」

「はいはい、君は四百番のスポンジヤスリだね」

「おー♪」


……なんでアイツら、オレ達の部屋で作業してんだ?

ベッドの上で豆大福を食べながら、ただただ不思議で仕方なかった。


「というかリカルドさん、ライブに行くんじゃ」

「夕方頃からな。楽しみだな……高垣楓さん! 川島瑞樹さん!」

「あおー!」

「昨日あんなにやりあったくせに……あむ」


あ、この豆大福、豆が違うな。つぶつぶしててうめー。……それはそうと、一つ聞いてみる。


「なあ、ガンプラ作りってそんなに楽しいのかよ」


そして三人は振り返って、満面の笑み。


「もちろんだよ!」

「もちろん!」

「あおー♪」

「えへへへ……」

「ふふふふ……」

「おー!」


そういうもんらしい。楽しそうに、ワクワクしながら……その姿は見慣れていたはずだった。

でも、何だろうな。何かこう……羨ましくなってきたんだ。不思議なくらいに。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ついに……ついにセイ達も決勝トーナメント!


『……はい! みなさーん、こんにちは! ガンプラ選手権世界大会のイメージキャラクター!
ガンプラアイドル、キララでーす! ――キララン☆』


なのでリビングで、ノリノリでお化粧。テレビ中継をBGMに、静岡(しずおか)へ出る準備中です。


『……はい! 世界大会も十日目! 予選ピリオドが終了し、ついに決勝トーナメントに進む十六のチームが決定しました!』


歯ブラシや枕、置け商品など、身の回りで使うものはよし。


『……はい! 今回は五日後に控えた試合を前に……惜しくも予選で敗退したドイツ第一ブロック代表、ライナー・チョマーさんに起こしいただきましたぁ!」


下着も問題なし。新調したスーツ類も問題なし!


『チョマーさん、どのような大会が予想されるのでしょうかー!』

「まさかセイとレイジ君がここまで勝ち残るなんて……ふふふふー!』

『まぁ、この際だからはっきり言わせてもらいますが……フェリーニの野郎は負けますね』

『んん?』

『ボコボコにされて終わりですよ!』

『く……』


あとは出発日を待つだけ――ニコニコしながら食卓に座り、用意していたどら焼きをかじる。


『あんな価値もない男にときめいているキララちゃんは――実に趣味が悪い!』

『チョマーさん!』

『え、何……ぐえ!? ちょ、まった! カメラカメラぁ!』

「これで、どんな取材が来ても……!」


そう、例えばこんな感じで!


――お母さんはイオリ・セイ君を、どのようにお育てになられたんですか!――


フラッシュを浴びながら、おしとやかに……上品に!


――特に何も――素直でいい子に育ってくれればと――

――夫であるタケシさんは第二回大会準優勝者。息子であるセイ君はベスト16。
まさにガンプラ一家ですねぇ、しかも、お母さんはとびっきりの美人だ!――

――まぁ――

「お上手ですこと……おーほほほほほほほほ!」


リビングで笑いながら、勝利者気分で沸き立ってしまう。


「それにほら、私の言った通り問題がなかったし!? これでセイの機嫌も治って万々歳よね!
何よー、世界大会なんて言ってー! セイとレイジ君にかかったら、お茶の子さいさいじゃないのー! ……よっし!」


それに向こうにはチナちゃんもいるし……まぁあの、いけ好かない金髪もいるけど、気にしなくてもいいわよね!

どーせセイとレイジ君の前じゃあ、敵になるはずないし!? ていうかコテンパンに負けて、あの偉そうな鼻がへし折れればいいのよ!


よし、この調子で励ましていこうー! やっぱり母は強しってね!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「……あぁ、そうだ」


楽しげににんまりしていたセイが、突如殺気を放出。


「うお!?」

「あお!?」


その純度が余りに高くて、リカルド達も身を引いた。


「ど、どうした……すまん! オレがそんなに壊したせいで!」

「いや、レイジのせいじゃないよ。相手はリカルドさんだったんだし……そうじゃなくて、母さんが」

「ママさんが? そういや、もうすぐこっちに来るって」

「そうしたら、ちょっと説教をね……!」

「……おー」


そこであおが拍手を打つ。お、コイツは知ってるのか! どうしたどうした!


「ほら、初日に対戦したゲーマルク、いたよね」

「あぁ……あのオレンジ色で、ファンネルを出してた奴か」

「それを使っていたファイターが、セレモニーで絡んできて。しかもそれが」

「「それが?」」


……なんで参加していたリカルドが、オレと同じように前のめり? 疑問に思っていると。


「父さんや僕のこと、軽く馬鹿にしてきて……!」

「デンマークのルイーズ・ヘンリクセンが? まぁアイツは荒っぽいところもあるが、イオリ・タケシもってのは普通じゃ」

「えぇ、普通じゃありませんでした。……母さんが原因なんですよ!」

「あおあおあおー!」

「はぁ!?」

「おい、フェリーニ」

「……セイの母さんが、イオリ・タケシの妻を名乗りながら」


あ、通訳してくれるんだな。それは有り難い。


「ザクとボルジャーノンの区別も付かない愚物! ならばその血を引く息子も、嫁として選んだタケシ氏も三流……そう煽(あお)られたらしい!」

「あお!」

「何じゃそりゃ!」

「レイジが抜け出したこととか、初日の大遅刻ですっかり忘れてたけど……説教しなきゃ。
僕だけならともかく、海外で頑張っている父さんにまで、恥をかかせるなんて……!」


あぁ、セイから黒いオーラが! ヤバい、全然楽しそうじゃない!


「ふふ……ふふふふふ……ふふふふふふふふふふふ………………」


なのに笑って、ヤスリがけってのをしてるんだよ! だからこそ俺達は。


「なぁ、フェリーニ」

「ルイーズの奴なら、今年は予選落ちだ。意趣返しは十分できているが」

「意味、ねぇみたいだな」

「あぁ……! ま、まぁその……なんだ」

「「――頑張れー」」

「あおー」


全力で、セイを後押しするしかなかった。……ママさん、こっちに来たら地獄だな。


だが、それとは別の衝動が疼(うず)いていた。

怒りとかじゃない。焦りというか、ソワソワした感じというか。

ヤスフミからも前に言われてたのに、ここまですっ飛ばしていた。


ガンプラ……ガンプラを動かし、戦わせるだけじゃなくて、自分でも作る。

戦わせるたび、壊すことも多くなった現状。オレにそれができたら……できる力が、あるなら。


(Memory54へ続く)








あとがき

恭文「というわけで、幕間第49巻が販売開始。ご購入いただいたみなさん、ありがとうございました」

あむ「そしてルイーズさんの煽りやら、ベビーRなどは読者アイディアからとなっております。アイディア、ありがとうございました」


(ありがとうございました)


恭文「ちなみに同人版では、このライブがファーストシーズン最終回のアレとなる予定です」

あむ「あぁ……前に言ってたね。お相手は日奈森あむと」

恭文「蒼凪恭文です。……HG ガンダムヴィダール、明日出荷!」

あむ「まずそこか!」


(先週の戦闘、カッコよかったですしね)


恭文「いいのよ、そこからで。十二月一日出荷……今年もあと一か月だよ」

あむ「あぁ、そういうところから季節を感じたわけか。それでえっと、今回のバトルは」

恭文「十三キロなベビーR……その本領はまた後日。そしてとまとオリジナル機体<クシャトリヤ・パピヨン>登場」

あむ「クシャトリヤの基本武装に、ビットハルバート――それと、”ITF”」

恭文「そして作者は、何の略称か忘れてしまったという大ポカを」

あむ「ちょっとー!?」


(待って、今思い出す……今、必死に思い出してるからぁ! え……Fは、フィールドのエフー。Tは……Tはー!)


あむ「ドレミの歌!?」

恭文「ちゃんとメモしておかないから……ただその特性はAMFと同じ、粒子異能殺し。それ故に僕達魔導師組にとっては楽勝モードで」

あむ「……それ、アンタ達には……だよね。もっと言えば、トーナメントで対戦すれば」

恭文「そう。つまり――」


(原作だとアイラは……あ)


恭文「しかもこれはガンプラで、『現段階』という前置きがつく」

あむ「あ、そっか。セイがビルドストライクでやったみたいに、改良してより強力になる可能性も」

恭文「楽しくなりそうだねー。というわけで、次回は箸休め回。いよいよレイジのあの話になります」

あむ「アンタとタツヤさんにとっても、恩師たるあの人も登場だね」


(ここからは激戦に次ぐ激戦――じっくり書いていこう。
本日のED:BACK-ON『セルリアン』)


フェイト「FGOのイベント、BOXガチャは六週目へ突入……! もうのんびりコースだね」

恭文「ドレイク様々だよ。こな雪級も≪モードレッド・カルナ・ドレイク≫の三人でいけるし」

フェイト「えっと、一ウェーブ目はカルナさんとドレイク中心で攻撃して、二週目もカルナさんの宝具。
それでEXアタックが出れば、ゲイザーもすぐ倒せちゃう」

恭文「出せなくても、ドレイクがきっちり攻撃できる状況なら、問題なくいけるよ。
モードレッドが弓に弱いけど、それもマスター礼装などでフォローできるし。三ターン目はドレイク・モードレッドで宝具チェイン」

フェイト「敵ボスがランサーオルタにセイバー・リリィだから、アルトリア顔特攻が通用するんだよね」

恭文「凄いダメージが出るよ。元々槍のランサーオルタはともかく、セイバー・リリィの方まで……全体で七万とか削ってくるし。
おかげでうちには、チーズケーキがたっぷり。アイテム交換してても追いつかないー」

フェイト「うぅ、美味しいけど……多すぎるかも」

茨木童子「クリスマスもよいものだな! お菓子がこんなに食べられるとは! ……あ、あとで歯磨きもしなくては」

白ぱんにゃ「うりゅー!」


(おしまい)






[次へ#]

1/21ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!