小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説) Memory52 『リミットブレイク』 ――ミホシちゃんと楽しく飲み、適度にお別れ。 もう、悪酔いした姿なんて見せないように……! くぅ、ここで押し切れない自分が恨めしい! ただそれはそれとして……悩ましいこともあり、部屋に戻って。 「ただいま……」 「あお?」 あおに出迎えられても、上手(うま)く笑えん。なお奴は、HG サイコ・ザクをトマト色に塗っているところだった。 あの指すらどこにあるかも分かんない、ちっちゃな手で……スプレーをぷしゅーってな。 「あおあお、あお。あおー?」 「いや、すげー楽しかったさ。……お前の仕込みか、あれぇ!」 「あおあお。あおあおあお、あおあおあおあおー」 「本当か……おい」 コイツ、平然とキララちゃんと飲んでたこと、知ってたんだよ……! すげー疑わしいぞ、おい! 「……あお?」 「あ? ファイターを代わるって……そりゃ、どういう意味だ」 「おー」 「……!」 あおの言葉で、血の気が引いた。コイツは今、こう言ったんだ。 ――迷いがある状態で戦うなら、代わってあげるってこと―― あっさり、見抜いてきやがった。そうだな、迷ってる……迷っているんだよ。 「あおあおあお、あおー」 「あぁ。予選ピリオド突破が決定した時点で、次の試合を捨てるファイターもいる。相手も突破確定なら余計にな」 「あおあお、あお?」 「それで、お前がやられ役ってわけかよ。おい、まさかそのサイコ・ザク」 「おー」 ……あおに任せれば、スタービルドストライクの底も実地で引き出せるだろう。 決勝トーナメントでかち合ったとき、勝てる要素も増えるだろう。 決勝トーナメントで、かち合ったとき? そこまで考えて、つい口元が歪(ゆが)む。 「あおあお」 「……そうだな。スタービルドストライクの粒子システムは、荒削りながら凄(すさ)まじい力だ」 あおへの答えは一旦保留しつつ、状況整理も兼ねて窓の近くへ。 毎年のように来ているが、未(いま)だに変わらない目標……世界の舞台。 その輝きを見つめながら、右拳を握る。 「粒子を吸収し、解放<ディスチャージ>するシステム。それに……あのRGシステム」 「……あおー」 「あぁ。あれはヤスフミがフェイタリーで見せた、限界突破<ブラスター>と近い。 ほんと……恐ろしいよ、イオリ・セイ。あの短期間であれだけ作り込めるんだからな」 そう言って、すぐに訂正……首を振ってしまう。 「いや、違う。アイツには素養があった」 「あお?」 「それがレイジというビルダーを得て、強敵達との戦いを繰り返すことで、ついに覚醒した。 その進化は留(とど)まることを知らない……きっと、明日のスタービルドストライクは」 「あおー」 「そうだ、今までで一番強い――!」 俺は負けていい……負けていいのだろう。俺の愛機はやっぱり、フェニーチェだけだから。 「ここで機体が全損でもしたら、決勝トーナメントはヤバいことになる」 「おー」 「元々作っていた”リナーシタ”用のパーツもあるが……何がヤバいかと言うと」 そう、何がヤバいかと言うと……! 両手を振るわせながら、つい叫んでしまった。 「予選トーナメント突破記念で行われる、キララちゃんのミニライブを見に行けない! まず確実に!」 「あお!」 「そうだな、346プロのシンデレラプロジェクトとか、高垣楓さん達のライブも見に行けない! 一緒に行くって言ったもんな! せっかく揃(そろ)いも揃(そろ)って、こっちに来るんだから!」 「あおー!」 あぁ、あおが荒れている! さすがにエアブラシは止めたが、それは嫌だーっ荒れている! お前、そういう意味でも、自分がバトルするって言っていたんだな! ほんと欲望に忠実な奴! ……だが。 「あおあ」 「だが駄目だ」 「……あお?」 「それじゃあアイツらもそうだし、何より俺と」 そう言いながら、テーブル上に立っている相棒を見やる。 「フェニーチェが納得できない。……らしくないんだよ、そんなのは俺達じゃない」 「あお……」 「機体はウイングガンダムフェニーチェ、ファイターはこの俺」 気持ちは固まった。なのであおの脇へ寄り、その小さな頭を優しく撫(な)でてやる。 「セコンドはあお――今まで通りの俺達で行くさ」 「あお!」 「……ありがとよ、もう一人の相棒」 「あおあお、あおー」 「誰が悪酔いキングだぁ! 生トマトを食べて、派手に酔っ払うお前に言われたくねぇ!」 「あお!? あおあおあおあ! あおー!」 うわ、コイツはまだ自覚がないのか! というか信じないのか……映像も見せたはずなのに! ヤスフミと似ているのは外見だけじゃない! やたらと強情なとこもそっくりだ! このやろー! 魔法少女リリカルなのはVivid・Remix とある魔導師と彼女の鮮烈な日常 Memory52 『リミットブレイク』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 前回のあらすじ――346プロの方々、いろいろと大変なようです。 律子さん曰(いわ)く、その評判が外にも響いているようで、CPに好意的なアイドル・スタッフも限られているらしい。 僕もゴタゴタしていたけど、さすがに心配。……まさか、765プロが”関わるな”って通達を出すレベルとは思わなかった。 ”アルト、ジガン” ”私達から律子さんに確認しましたけど、やっぱり厳しい評価は変わらずですね” ”そこまで明確に、共演NGは出してないけど……CPについては様子見(ようすみ)継続って感じなの。主様にもまた説明したいそうだけど” ”後で連絡すると伝えて” CPの今後を見守り、その発展に利用されない距離感を取るって話か。 ほら、春香達と一緒に仕事をしたってだけでも、箔(はく)になり得るしさ。 ……それが律子さん、赤羽根さんの危惧するところだ。ほんと、凄(すご)いところまで来たものだ。 でも僕も同意見。実際346プロのジャッジは甘すぎるし、CPの評判がいいのも『ファンだけ』と言える。 CPというより、それを許す上層部への不信から……いずれ内乱でも起きるんじゃないの? 「残念だったね……もうすぐ346プロは内乱で潰れるよ」 「恭文さん!?」 「なんまんだー」 「「「なんまんだー」」」 「ヒカリちゃん達も手を合わせないでー! ……だ、大丈夫です! 少しずつですけど……私達のこと、認めてくれる先輩も増えていて!」 なのに……卯月の笑顔はいつも通りで。 少なくともCPという場所が、そこにいるみんなが、卯月にとって大事なのは確かだった。 「あぁ、そんな妄想をこじらせて」 「妄想!?」 「誰が卯月達を認めるって言うのよ」 「ヒドいですー! え、えっと……輿水幸子さんとか、美嘉さんとか……あ、楓さんと瑞樹さん達も!」 楓さんと瑞樹さんかー。そうだそうだ、あの二人も今は346プロでアイドルなんだ。 まぁ二人なら優しいし、認めてくれるだろうけど……でも、それに甘えさせてもあれなので、卯月の左肩を優しく叩(たた)く。 「卯月、社交辞令に甘えちゃいけない」 「恭文さん!?」 「ほんと芸能界は地獄だぜー」 「そこまでじゃないです! だ、大丈夫……大丈夫な、はずです! ……あ、そうだ」 卯月はまた笑って、足を止める。 潮風になびく髪を押さえながら、ライトアップされたスタジアムを見やる。 海ごしに見えるあそこは、まだ戦いが続いているような……そんな熱気が、ここまで漂ってきて。 その上で少し頬を赤らめながら、僕に一歩踏み出してガッツポーズ。 「おめでとうございます! 決勝トーナメント進出ですね!」 「ありがと。……これでタツヤに、積年の恨みを晴らせる……ふふふふふ」 「何があったんですかー!」 「いや、バトルロイヤルで戦えなかったから」 「あれは恭文さんも悪いと思います! そうです……だって」 あれ、卯月の目が怖い……一歩下がると、すかさず右手を掴(つか)まれた。 「だって……リインちゃんと、セシリアさんって人と修羅場を……」 「やべ……卯月、スイッチが入りやがった!」 「魔王エンジェルの朝比奈さんや、ともみさんとも――とても、仲よさそうに、いっぱい……ハグして。 そ、それにほしなさんも……あの人も、チームとまとで」 「お兄様、私達は失礼します」 「ちょ、待って!」 「「「とう!」」」 ショウタロス達が逃げたー! アルト達も早々に待機状態へ戻って、黙り込んだし! ヤバい……卯月が涙目! でもそれが怖い! 「あとはナターリアちゃんとも」 「う、卯月……あの、それは違うよ!? ナターリアについても、今現在進行形で話し合いを」 「私、頑張ります……頑張りますから!」 「何を!?」 「まずは大会を盛り上げるライブです!」 あ、よかった! ちゃんとアイドルとして、大会に関わっていくって意味ね! それなら安心。 「あと、セシリアさん達にも負けないように……ううん、チームとまとに入っている、朝比奈さんやともみさん、千早さん達にも」 できなかったぁ! 本当にスイッチが入ってる、この子! 「そちらはどうして!?」 「負けたくないからです!」 「だからどうして!?」 「そ、それは……その……」 お、おかしい……この感覚は、実に覚えが。 でも卯月、僕が結婚しているって知ってるのに! そのはずなのに! 「わ、分かりました。言います……ちゃんと、言いますから」 お願い、誰か助けてー! 卯月が離してくれないー! それで……一歩ずつ寄るなー! 「聞いて、くださいね」 「……はい」 そこで”はい”と言ってしまう僕は、相当甘いのだと思う。 まぁ、それにも理由があって……この子は、ずっと僕を探していたから。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 二〇一〇年十一月――世界行動不能事件という、今なお全容が解明されない、大事件が起こった。 そのときはアイドルでもなんでもない私や未央、うちのプロデューサーや……とにかく世界中の人間が、夜に突然行動不能となる。 それも過去の悲しいことや痛みを思い出して、悲しくて、辛(つら)くて、泣き続けるというもの。 その現状は時間にすれば、十分足らずで収まった。でもその間、世界中の交通や行政……犯罪、戦争すらも麻痺(まひ)。 その結果、各所で幾つもの事故が発生した。幸いなことに死者やら、大きな怪我(けが)を負った人は一人もいなかったけど。 そしてその直後から、過去を顧みた犯罪者が次々出頭するという不可解な事態も発生。 どうもあの……苦しい夢で、自らを省みた結果らしい。それも一年半……もうすぐ二年が経(た)とうとする今では、ある程度沈静化。 でも各国の犯罪率や、戦争被害は目に見えて減少。各国間の情勢や協力体制も、より前向きかつ綿密なものになった。 ある人はこう例えていた。現象の原因はともかく、あの日世界は変わった――。 少しだけ、優しい形に。世界は決してバラバラではなく、私達は繋(つな)がっている。 誰もがそう感じたと……そしてその日、不思議な夢を見た子がいる。 その名は島村卯月――私達の仲間で、大事な友達。 「しまむー、今頃は……大人の階段昇って、お願いシンデレラ?」 「未央、ゲスい」 「なんでさー!」 割り当てられたホテルの部屋から、窓の外を見ながらツッコミ。それでため息……深く、ため息。 「だって運命の出会いだよ!? あの事件で……戦っていたっぽい蒼凪プロデューサーのこと、夢に見てるんだから!」 「まぁ、それはね」 ……卯月の話ではそうらしい。 あのとき蒼凪プロデューサーは……黒いマシュマロマンみたいな怪物に立ち向かっていた。 泣きながら、剣を振るい、空を駆け……それで力を求められた。 力を貸してほしい……手を貸してほしいと、蒼凪プロデューサーは違う”誰か”に。 そうして手を伸ばしたら、蒼凪プロデューサーは羽を生やして大変身。あっという間にマシュマロマンを倒した。 その結果行動不能状態が止まり、事件も解決。その様子を卯月は、夢のように見ていた。 もし問題があるとすれば……その時点で卯月は、蒼凪プロデューサーと知り合っていなかったこと。 そして卯月以外の誰もが……もちろん私も、未央も、そんな”夢”を見ていなかったことだけ。 「あれ、でもそうすると……蒼凪プロデューサーって、世界を救ったヒーロー!? わ、なんか凄(すご)い!」 「でもツッコんじゃ駄目だよ? 未(いま)だに原因不明だし、やっぱいろいろあるのかも」 「分かってるってー」 振り向き念押しすると、未央は……脂汗を流しながら、右手で挙手。 「か、神に誓って」 「そんな蘭子みたいなことを言わなくても」 「漆黒とかは言ってないよ!? しぶりんと違って蒼くもないし!」 「そっちこそ電光石火の茨姫<ライジングジェイルプリンセス>でしょ!?」 あ、ヤバい……中二病時代を思い出すと、痛みが……痛みが……! 「「う……!」」 未央も自分で言ってダメージを受けたのか、ベッドに座りながら蹲ってしまう。 「し、しぶりん……ごめん」 「そ、そうだね。こっちも、ごめん」 お互いよそよそしく、顔を背けてしまう。……中二病って、一生苦しむそうだけど……いいのかな。 というか、蘭子は大丈夫なのかな……! 私、来年辺りが凄(すご)く心配で。 「……でもしまむー、チームとまとに入りたいとか……言い出さないよね」 その辺りも滅茶苦茶(めちゃくちゃ)心配で、より深く顔を背ける。 「まぁ、大丈夫……入っても、ほら。佐久間まゆさんってレジェンドが、いるから……346プロ、恋愛OKだし」 「プロデューサーやちひろさん、本当にそういう認識だったしね……!」 ……とにかく明後日(あさって)のライブが終わっても、私達は大会終了までこっちにいる。 トーナメント決勝の前――一週間のインターバル中にも、ライブイベントが控えているしね。 そのまま決勝も観戦するし、それで蒼凪プロデューサーが残っていたら、卯月は喜ぶよね。 うん、きっと喜ぶ。だってここまでの試合も、嬉(うれ)しそうに見ていたから。……女性関係で揉(も)めたの以外。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ よーく考えようー。事務所付き合いは大事だよー。 ……というわけで卯月とのお話も終わったので、宿泊予定のホテル入り口まで送り。 「恭文さん、ありがとうございました」 「ううん。じゃあライブ、見に行けそうだから……頑張ってね」 「はい!」 卯月は笑顔とお辞儀を返してくれて、その上で手も振って……ホテルの中へ消えていく。 その姿が見えなくなるまで見送って……それから静かに歩き出すと、ショウタロス達が平然と復帰……おのれらぁ。 軽くジト目を送りながらも、律子さんに連絡。律子さんはもう帰宅していて、のんびりガンプラを作っているところだった。 『――346プロについては、やっぱり様子見したいのよね。あなたが個人で、島村さんとお付き合いするのは構わないけど』 「そう言ってくれると助かります。ただCPのみんなは、見る限りはいい子達ですけど」 『そうね……でも、純粋過ぎるとも言えるわ』 「あー、それはありますね。特に年少組と諸星きらり」 『うちのようにオーナーや社員との距離感も近く、連帯感が売りの事務所ならいいの。 でも彼女達の行動は、美城という大企業に”勤める”人間としては……余りにも稚拙で』 「立てこもり、でしたっけ。それでデビューを迫った」 『えぇ。……前川みくと年少組二人が』 それに対し武内さんは、『全員のデビューを考えています』と打ち明けたらしい。 当時はまだ企画検討中で、確定してから話すつもりだった。……でも、それはミスジャッジ。 立てこもって、デビューさせろと脅迫……それに対して『考えています』だよ? 譲歩したも同然でしょ。 しかも本人達はカフェやアイドル部門の部長さんに謝って、万事解決したつもりだった。 周囲は……律子さん達も含めて、CPに対して総スカン状態だと言うのに。 うん、卯月に言ったことは本気だった。それでまた付き合っていこうとする奴は、早々いないって。 「普通ならそれも大人がフォローするでしょうけど、察するに」 『武内プロデューサーには期待できないわ。実直で、経験もある方なんだけど……』 「”シンデレラ”プロジェクトと言っても、魔法使いが至れり尽くせりとはいかない。 大人だけじゃ足りないなら、子ども達が頑張るしかない……厳しいですねぇ」 機動六課やハラオウン一派の”没落”、それを思い出しながら静かに首振り。 ……うん、没落だよ。リンディさんが馬鹿やらかした結果、クロノさんも出世が望めなくなっているしね。 いや、それは元機動六課メンバー全員に言えることかな。ほんと、今更だけど思うよ。 大人ってのはそれほど万能じゃない。僕自身が二十歳を超えてから、よく突きつけられている。 ただCPの場合、また違う問題があるわけで。……卯月の様子を見ていても思ったけど。 「まぁ話せてよかったですよ。少なくともみんなは、そういう部分も含めて信頼し合っている」 『えぇ』 「765プロ<うち>と同じように」 『……えぇ』 やっぱりそこがネックだったか。律子さんの声、急に重くなったもの。 ……え、だったら問題ない? ところがぎっちょん、346プロではそうもいかない。 『もう分かっているでしょうけど……346プロは芸能関係で言えば、イースターですら二番手に甘んじるような大御所よ。 歴史だって戦前からだし、自社制作の番組・映画も多く手がけている』 「765プロとは違う。でもそんな中でのCPは」 『一歩間違えれば独立愚連(ぐれん)隊。周囲との温度差で大やけどしかねないわ』 そういう意味でも、346プロでは異質に映るのだろう。律子さんが危惧しているのもそこだ。 『正直に聞かせて。その自覚が』 「ないですよ、卯月も含めて」 『やっぱりか。……とにかく慎重にお願い。今は北沢さん達のこともあるし』 「それも承知しています」 『ありがと。ところで……貴音と佐竹さん、響は大丈夫?』 「それなら御安心を。三人ともきびきび働いていますから」 夜の街を歩き、その輝きを眺めながら、改めて自分達のお話。 でもこうして、のんびりできるのも今のうち。決勝トーナメントの準備もあるし……また忙しくなるぞー。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ いよいよ、第八ピリオド・二日目……初っぱなからイオリくん達の試合。 しかも相手は、あのフェリーニさん。どぎまぎしながら、客席に座っていると……ラルさんが戻ってきた。 「ラルさん、どこに行ってたんですか」 「少し見回りを」 「え……ちょっと、ラルさん!」 「いや、あくまでもそこら辺だけだ! さすがに無茶(むちゃ)はせんよ!」 本当かな。だって、鉄砲を持ちだすような悪い人なのに……でも、これは大丈夫だよね。 だって一対一なんだもの。さすがに妨害なんてあったら、即座に分かるし。 「セイ君達のバトルは……もうすぐか」 「はい」 「フェリーニとしても、なかなかに厳しいところだな。あえて負ける方法もあるが」 「え……で、でもそれじゃあ決勝に」 「全勝組は全て、昨日の時点でトーナメント入りが確定している。その場合は機体と戦術の温存も兼ね、負けるファイターもいる」 「そんな……」 だって、イオリくん達、また頑張るって……それなのに、わざと負けるなんて。 どうして、なんだろう。それは本当に、一生懸命遊んでいることになるのかな。 勝つために、決勝へ行くために……やっぱり、わたしには分からなくて。 「それも致し方ないことだ。何せ決勝トーナメントに出れば、勝敗の如何(いかん)に問わず大破前提のバトルが続く」 「え」 「そこからは一度の負けも許されないトーナメント。今まで以上に戦い、傷ついていくのだ」 「今まで、以上に!?」 そう言えば……去年優勝した、カイザーさんの試合とかも……そこで強烈に寒気が走る。 勉強したはずなのに、忘れていた。イオリくん達が勝ち上がっていく中で置いていった? ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「だからこそ、大体のチームが機体を複数用意しているのよね。私も去年、そうして何とか乗り切ったわ」 今日も朝比奈さん達と一緒にしっかり観戦。レナート兄弟のように、ここで念押しの切り札を出すチームもいるから。 そういうのを生で見て、能力解析するのも今後のために繋(つな)がるのよ。 なおプロデューサーは……いいんです、ここで送り出せるのがいい女ですから。 「あとはあたし達<チームとまと>もそうだし、レナート兄弟も、だよね」 「バトルのシチュエーションに合わせた、的確な装備……場合によっては機体の変更。それもこの厳しい戦いを乗り越えるテクニックよ」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「むしろセイ君達や、リカルド・フェリーニみたいなタイプが珍しいッスよね」 「えぇ、その通りです」 ……何を仰(おっしゃ)るやら。何だかんだでこのアーリー・ジーニアスも、同じような感じなのに。 クールそうに見えて、その実熱い情熱を秘めている。トウリさん共々お見通しだよ、君も立派な”馬鹿”だってさ。 てーかそのトウリさんも、エストレアに拘(こだわ)りまくってるでしょうに。まぁ、だからこそ”できること”もあるわけで。 「わざと負けると言っても、それも相手次第……ですよね、トウリさん」 「当然ッス。今回みたいにトーナメントへ残りそうな上、有力選手であるならば……強引に粉砕するのも手」 「昨日、ルワン・ダラーラ氏がやられたように」 「それが無理だとしても、相手の手の内を極限まで晒(さら)してもらう手もある。 特にスタービルドストライクは、ここまでのピリオドで『底が見えた』と言っていいッスから」 「それもまた、厳しすぎる評価なのでしょうけど」 ニルス君は言葉とは裏腹な、厳しい表情で……壇上に上がる三人とぷちを見やった。 「彼らはミスター・フェリーニ達とは違う。世界大会初出場組です。それであそこまで戦えたことだけでも、賞賛に値する」 「確かに、ね。実際俺達だって、ギリギリな局面が多かった」 「えぇ」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「ガンプラとバトル……その枠組みだけで言うなら、イオリ・セイとレイジは間違いなく天才だ。だが才能だけじゃあ勝てない」 「場数が違うからね、ボク達は。もちろんミスター・ジオウも」 「まぁな」 その経験を用いて、ボク達は最適な形でバトルを超えてきた。全力を出しつつ、しかし先へ続くように。 初出場の彼らに、それを望むのはやはり酷なのだろう。特に……揃(そろ)って脳筋気味なところがあるしなぁ。 「だが、”経験”ならば彼らも積んできた」 「カワグチ?」 「見てみろ、彼らの表情を」 カワグチが見ているのは、イオリ・セイ達……なるほど。 それに気づいたのか、ミスター・ジオウも楽しげに鼻を鳴らす。 「何か秘策があるようだ」 「いい面構えだ。……負けたことから逃げないのも、一流のビルドファイターになれる資質」 「いわゆる負けず嫌いだね」 さて、この二日間でどう変わったか……見せてもらおうかな? その上で、改めて定めよう。イオリ・セイ……君が、ボクのライバルに足る器かどうか。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ そうだ、わたしは忘れていた。これが単なる予選<ふるい落とし>だと。 ここからは本当に、一度負けただけで全てが終わる。たった四回……負けなければいい、だけなのに。 「なら……もし、フェリーニさんが本気で勝ちにきて……そうしたら、イオリくん達は」 「十中八九フェリーニが勝つ」 イオリくん達が勝つ。そう言ってほしかったのに……ラルさんは冷静に、フェリーニさんの勝利を予言した。 「世界大会の常連であり、その経験と技量は圧倒的にフェリーニが上。更にレイジくんへの指導に関わったことで、彼の長所短所も理解している」 「で、でもイオリくんが……スタービルドストライクが!」 「そのスタービルドストライクも先日の試合でひどい損傷を受け、どこまで修復できているか」 そこで引っかかったのは、あの試合。 「……やっぱり、間違ってたんだ。ちゃんとやり直してもらうべきだったんだ。なのに、どうして」 「情けない女だねぇ」 そこであざ笑うように登場したのは……恭文さんだった。 「セイ達は腹を決めたよ。負けは負け……ちゃんと乗り越えるって。なのに信じてやれないなんて」 「恭文、さん……!」 わたしは、どうしてこんなに無力なの。 イオリくんが、一生懸命作ったガンプラが――。 あんなにキラキラ飛んでいた、素敵なガンプラが――。 まるで役に立たないと貶(おとし)められているのに。それで今、恭文さんを咎(とが)めることもできない。 一番悪いのは、わたしだから。イオリくん達の力にもなれない、弱い私が……! 「それでセシリアとレイジから言われたことも、全く守ってない」 「え……」 「なるほど……セシリア君はこの次だからね。君達は代理か」 「えぇ。隣、失礼します」 恭文さんがわたしの前を通り、ラルさんの右隣に。 それにあの、妖精みたいな子達も続いていく。 「チナ、もうバトルは始まっている。なのに……どうして僕や大尉を見るのよ」 「――!?」 そこで自然と……恐怖しながら、イオリくん達を見た。 ……そうだ、一番理解できないのは。 「お前が一番怖がっているのは、セイ達だ」 それで恭文さんが、改めて突きつけてくる。 「自分の理想通りに動かない……戦わない、その全てを恐れ、目を背けている」 「……はい」 やめて……。 「そうして自分もまた、戦って進むうちの一人だという事実を捨て置いた。誰も……誰一人、おのれのために戦っていないのに」 「はい……!」 もう、やめて……! 「ほんと、セシリアが言う通りに(ぴー)型女の典型的最悪パターンだね。自分の話ばかりまくし立て、会話が成り立つと勘違いする」 「はい――!」 分かってる! 私、(ぴー)型だって分かってるからぁ! あぁ、間違いない! これもセシリアさんから『絶対言うように』って言われてるんだ! 顔を見なくても分かる! 「……ヤスフミ君、いささか厳しすぎるのではないかね」 「いや、僕も言いたくないんですけど、セシリアが」 ――どうせ先日の試合について触れたら、自分が間違ってないと言い出します。なので徹底的に叩(たた)いてください―― 「……と。今のも全て、セシリアが言うようにと」 「……マジだぜ、大尉。鬼みたいな目で、笑って言い切りやがった」 「それは、また……」 やっぱりぃぃぃぃぃぃぃ! 怒ってる! すっごく怒ってる! それで全て読まれてる! 「……試合のやり直しなら、僕の方から進言したんだよ」 「え……」 「ほれ、創設メンバーのところへ乗り込んだとき」 あぁ、大下さん達と一緒に……え、聞いてない。何それ……レイジくんはそんなこと。 「ほら、僕も負けたでしょ? でもやり直しになれば、僕が勝っておいしいとこ取りできるし」 「なんですかそれぇ!」 それでつい恭文さんの方を見ると、鬼の形相で睨(にら)まれた。 なので慌ててイオリくん達に視線を戻し……り、理不尽だ……! 「まぁそれは冗談だけど……二人とも、即答で言い切ってたよ。自分達が弱いから、面倒もはね除(の)けられなかった。それだけだってね」 「……そうだったのか。楽しみにしていた世界大会で、あのような妨害を受け……腸が煮えくり返る思いだったろうに」 「どうして、二人は」 「その答えを確かめるためにも、君は二人との約束を守るべきだ」 ……わたしが一番怖がっていたのは、イオリくん達だった。 やっぱり分からないの。どうして、そんなに真っすぐフェリーニさんを見られるの? どうして……そんなに、強くいられるの。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 壇上へ上がり、特設ベースを挟んで……リカルドさんと対峙(たいじ)。 ……レイジから委員長が迷走しまくってて、大迷惑だって聞いてるしなぁ。 だから今日のバトル、きっちり決めていこう。きっと勝ち負けの問題じゃない。 委員長にも改めて示す。僕達は負けて終わりじゃない……限界は、突破できるんだって。 「行くぜ」 「うん」 『――ただいまより第八ピリオド、二十六試合目を開始します』 ≪――Plaese set your GP-Base≫ ベースから音声が流れたので、手前のスロットにGPベースを設置。 ベースにPPSEのロゴが入り、更にパイロットネームと機体名が表示される。 ≪Beginning【Plavesky particle】dispersal. Field――Canyon≫ ベースと足元から粒子が立ち上り、フィールドとコクピットを形成。 夕闇に染まりつつある、渓谷地帯か。ただそこまで入り組んだ場所じゃないし、ミーティアも十分活用できる。 ≪Please set your GUNPLA≫ 指示通りガンプラを置くと、プラフスキー粒子がガンプラに浸透――。 スキャンされているが如(ごと)く、下から上へと光が走る。 カメラアイが光り、首が僅かに上がった。粒子が眼前に収束。 メインコンソールと操縦用のスフィアとなる。 モニターやコンソール、計器類は淡く青色に輝き、アームレイカー型操縦スフィアは月のような黄色。 コンソールにはガンプラ内部の粒子量も逐一表示され、両側に配置された円系ゲージが忙(せわ)しなく動く。 両手でスフィアを掴(つか)むと、ベース周囲で粒子が物質化。 機械的なカタパルトへと変化。 同時に前・左右のメインモニターにカタパルト内の様子が映し出される。 ≪BATTLE START≫ 「スタービルドストライク!」 「行くぜぇ!」 レイジはアームレイカーを押し込み、加速――カタパルトを滑り、スタービルドストライクが夜闇へ飛び込む。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 腹は決めた。だから迷いなくアームレイカーを押し込み。 「リカルド・フェリーニ、ウイングガンダムフェニーチェ――出る!」 「あお!」 相棒は片翼を広げ、空へと舞い踊る。……すると早速二キロ先からどでかい反応。 おいおい……今回はまた、豪勢なのを付けてやがるなぁ。 「あお!?」 「あぁ、あれは」 宙間迷彩を施した、ブルーを基調としたカラーリング。 平べったい二股の戦闘機……その合間に、スタービルドストライクが収まっていた。 ――後部にコーン型ブースター。 両側面に93.7cmエネルギー収束火線砲装備。 その根元と後方へ伸びるテールスタビライザー上部は、60cmエリナケウス・対艦ミサイル発射管。 火線砲根本は二二連装が二基、テールスタビライザーには三連装が三基。 二つの砲塔はウェポンアームと言い、両手で掴(つか)んで操作する武装モジュール。 アーム根本付近には十二連装×二基のエリナケウス。 アーム先端中央には120cmエネルギー収束火線砲。大口径のビーム砲だ。 その上下にはビームソード発振器。戦艦なども断ち切る巨大な刃を形成できる。 「あれは、ミーティアだ……!」 いや、実際のものより一回りくらい小さいな。 何か持ちだしてくるとは思っていたが……面白い! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ミーティア――『Mobilesuit Embedded Tactical EnfORcer=モビルスーツ埋め込み式戦術強襲機』。 ガンダムSEEDに登場する、フリーダムとジャスティス専用のサポートメカ。 二機はSEEDのMSでは数少ない、核エネルギーで動く高性能機体。それに対応した武装なんだ。 MSに戦艦並みの推力と火力を付加するのが目的で、基本的なぶん回し方はデンドロビウムとかと同じ。 すなわち……一撃離脱で戦場をかき回す。 これはそのコンセプトを煮詰め、武装出力をそれぞれ強化。 更にレイジが扱いやすいようサイズダウンし、コア部分にユニバースブースターをセットしてある。 いや、本当はストライカーくらいにしようかなーって考えてたんだけど、先駆者様がいるためこういう形に。 とにかくこれなら、MSの俊敏さを殺すことなく暴れられる。 フェリーニさんは……真正面から突っ込んでくる? しかも、メテオホッパーもない。 「撃ってこない……アブソーブシールドを警戒? いや、今はミーティア」 「それだけじゃねぇな」 「え」 「こんなドレスを着込んでちゃ」 レイジはそう言った上で、スロットルを絞り、ミーティアで最大加速。 というか……ミーティアから分離したー! ちょ、何やってるの! 「邪魔くさいよなぁ」 「レイジ!?」 「御挨拶にはよ!」 そうして二機は一気に間合いを詰め。 「ぶ、ぶつかる!」 そのまま互いの額をぶつけ、頭突き。衝撃からはじけ飛び、空中ですぐさま体勢を立て直す。 「……フェリーニ」 『ふ……!』 通信でリカルドさんの声が響いたかと思ったら。 「アンタの覚悟――受け取ったぜ!」 そうして開戦――レイジは抜き打ち同然に、ライフルで一射。 「レイジ!」 「分かってる! ……ミーティア、頼むぜ!」 更にブースターキャノン、ライフルでの連射。 そしてミーティアも距離を取りながら、自立型兵器として援護射撃。 全ての武装を展開し、僕達に当てないよう……フルバースト! 無数のミサイルが、光条達がフェニーチェを次々と襲う。 でもフェニーチェは片翼を機敏に動かし、機体を精密制御。 上に動いたかと思ったら右・左・下……僕達が放ったのは、流星雨の如(ごと)き猛攻。 でも緑の電光石火はそれをすり抜け、小型ライフルとビームガン、ビーム砲で迎撃。 その変則軌道に流されるビームは、幾つものギロチンバーストとなって空を彩る。 結果百発以上のミサイルは爆炎の帯を作り、バスターライフルを使わせることなく消滅。 こちらの粒子砲撃も、近くの岩山(いわやま)や地面を撃ち抜き、クレーターを作るだけだった。 ウイングガンダムの特徴でもある、二枚の翼。 それを片方に寄らせ、機体バランスを【あえて】崩すことでの変則軌道……やっぱりとんでもない! 「あれを、避けるのかよ……!」 「やっぱり手ごわい!」 それでも手を緩めることなく、レイジは射撃。 ……そこで、地面すれすれを飛んでいたフェニーチェが消える。 着弾時の爆発に紛れて、姿を消し……レイジが一瞬、視線を泳がせ索敵したところで。 『どこを見ている!』 七時方向に回り込んだフェニーチェから、左跳び蹴りを食らって吹き飛ばされる。 そこでフェニーチェが追撃と言わんばかりにバスターライフルを構え、銃身下部のビームライフルを連射。 ピンク色の閃光(せんこう)三発が襲うけど、レイジは冷静に対処。後退しながらのスラロームで……すれすれだけど回避してくれた。 その上でアブソーブシールドを展開。……大丈夫。 アブソーブシールドも手を加えて、バスターライフルクラスなら飲み込めるよう調整している! 『そこ!』 ……そう思っていたのに、ライフルの矛先が左薙に動く。 そして一射目――イオンビームの極太奔流は、ミーティアを真正面から飲み込み、爆散させた。 「……あ」 「……嘘でしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」 「すまんー!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ イオリくんが凄(すご)く、大きなメカを持ちだした。モビルアーマーっていうのかな。 でもスタービルドストライクと合体しているなら……そう思っていたのに。 なのに、モビルアーマーは壊されて、イオリくん達の前で……何もしていないのに、爆散。 その大きな爆発に目を取られている間に、フェリーニさんが突撃。 左手のレイピア……その柄尻からビームの弾丸をまき散らして、スタービルドストライクに攻撃する。 無駄だと思った。だってあの、ビームを吸い込む盾があれば……きっとまた飛べる。 イオリくん達なら負けない。絶対大丈夫って……なのにビームは、スタービルドストライクの脇を抜ける。 そうして背後の岩肌を次々撃ち抜き、幾つもの爆発を起こした。 そこに構え直されたライフルの、小さいビームが連射。岩肌が一気に崩れたので、スタービルドストライクは上昇して退避。 でも、逃げられなかった。フェリーニさんが回り込んだまま、レイピアのビームを展開。 左薙に打ち込んで、スタービルドストライクを切り裂こうとする。 シールドで防御したけど、刃はそれを両断。スタービルドストライクは……咄嗟(とっさ)に下がって、無傷? 「イオリくん!」 「……お兄様、二人揃(そろ)ってアホです」 「いや、あれは……レイジも退避させていたし、攻撃もしていたよ?」 そ、そうだよね。ちゃんと、凄(すご)い攻撃はしてたよね。 ……やっぱりフェリーニさん、強いんだ。それをあんなふうに……信じられなかったの。 追いかけてくるミサイルとか、すれすれで全部すり抜けて。 でも、頭突きなら装備したままでもOKだったんじゃ。 「だがフェリーニも上手(うま)い。ミーティアとアブソーブシールド……懸念事項をあっという間に処理するとは」 「ビームを防がれないよう、あえて外れるように連射。そうしてアブソーブを意識させた上で、背後の壁とミーティアから意識を外す」 え、あえてって……まさか、イオリくん達を追い込むために!? 「チナ、ミスディレクションって分かる?」 「ミス……えっと」 「手品のテクニックだ。派手なアクションで観客の目を引きつけ、本命のタネを仕込んでおく」 「あ……!」 そうか、今の攻防……バスターライフルや、フェリーニさんが撃ったビームに引きつけられた、その隙(すき)に武装破壊が行われている。 もちろんそうして壊したものも、イオリくん達の目を引く要素になってる。 そういうところまで、利用して戦っていたんだ。これが……世界の強さ。 「二人とも、きっと楽しんでるね」 「たの、しい?」 「夢見た舞台は、簡単には踏破できない高さだ。それに挑み、乗り越え、進化する」 そうだ、二人は表情も険しいけど……必死だけど、悲壮な感じは一かけらもない。 「それが楽しくないわけ、ないんだよね――!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ スタビルはフェニーチェから距離を取りつつ、ライフルで牽制(けんせい)射撃。 でもすぐ回り込まれて、背中を蹴られる。そこを狙い、フェニーチェは下部ライフルを連射。 もうシールドはないから、スタービルドストライクは背中を見せ、左右のスラロームで回避するしかなくて。 でも、なんで……実況を忘れて、見守ることしかできなかった。 だって昨日、ああ言ってたじゃない。負けてあげるんじゃ、ないの? 「……フェリーニ」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ やっぱり、世界の壁は果てしなく大きい。それが怖い……負けるのが怖い。 でも、それに負けないくらいの楽しさがあった。やっぱり僕が、レイジが感じたことは間違っていなかった。 乗り越えたい――大きな壁なら、乗り越えられるくらいに飛びたい。 技量で負けているのは明白。ならまずは、気持ちで競り勝っていく――! レイジは岩山(いわやま)を回り込みつつ、第二射のイオンビームを何とかやり過ごす。 なお極太の黄色い奔流は、岩山(いわやま)そのものを両断……たやすく瓦解させた。 ……そんな爆炎を突っ切り、フェニーチェの背後を取りながら一射。 でも当然、ベテランの風格漂う反応で回避。こちらの突撃から距離を取りつつ、二射、三射と続く射撃も避けられる。 そうしている間に、スタービルドストライクは最大出力で突撃。左手でサーベルを抜刀し、そのまま刺突……! フェニーチェの腹を射貫いた……今のタイミングなら、ピッタリだと思った。 でも刃は何も捉えていなかった。フェニーチェは咄嗟(とっさ)に見切り、左脇で突き抜けた腕を抱え込んでいた。 「何!」 『残念』 更に右腕が後ろへ七十度回転。それに嫌な予感が走り、咄嗟(とっさ)にフレーム出力を操作。 それに伴い<VPS装甲>は粒子浸透度を上げ、その強度を増加させる。 フェニーチェはその直後、肩アーマーに埋め込まれたビーム砲を。 抱え込みながらも、こちらの胴体部に向いていたレイピアの柄尻――ビームガンを同時発射。 至近距離から頭部を、胸元を、肩を次々と撃ち抜かれながら、一回転したフェニーチェに放り投げられる。 『だったな!』 そのまま追撃のビーム乱射を食らい、各部がひび割れながら……岸壁に背中から叩(たた)きつけられる。 『バトルは地形を利用しろって教えたろ!』 そこで三射目のバスターライフル――咄嗟(とっさ)に離脱し、砲撃を二時方向に回避。 レイジは背を向け、この場から離脱。一旦身を隠そうとするも、フェニーチェのマシンキャノンとバルカンが乱射される。 それは次々とユニバースブースターに着弾。左のビームキャノンがへし折れ、その機能もどんどん低下していく。 「ブースターが!」 「くそ……駄目だ、もうブースターは使えない!」 出力が一気に崩れるも、レイジは必死に回避行動を取り、何とか渓谷の合間に退避する。 今のは本当に危なかった! RGシステムの応用で強度を上げてなかったら……! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ むしろあの至近距離でやられていなかったのが、驚きなのですけど。 フェニーチェは特別な機能こそ積んでいませんけど、それゆえに各部武装の信頼度は高い。 その直撃を食らいながら、耐えられるスタービルドストライクも相当ですわね。 「やはり、スタービルドストライクが劣勢ですわね」 「ガンプラの性能はセイ君の方がやや優れているッスね。でも」 「ファイターの経験値は、ミスター・フェリーニの方が高い……!」 「それだけじゃない」 そこでイビツさんが、冷や汗を垂らしながら呟(つぶや)く。 「俺には分かる。あの人、テクニック以上に”愛着”が深いんだ」 「愛着?」 「機体への愛着……それゆえの理解度が尋常じゃない! 性能を引き出すどころか、むしろ押し上げ、二乗化している!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「そう、それがリカルド・フェリーニの強さだ。フェニーチェという愛機とともに、ひたすらに進んできたバトル人生」 「ガンプラバトルが始まる前から……自身が子どもの頃に作った、ウイングガンダムがベースだからな」 「え……!」 スタービルドストライクが、またぼろぼろに傷ついていく。 それに心が痛み、苦しみ……そんな中、ラルさんと恭文さんは冷静に語る。 「そう、なんですか?」 「有名なエピソードだ。ガンプラバトルが始まって以来、フェニーチェは彼とともに戦い続けてきた。 傷つき、壊れても改修を施し、そのうちテセウスの船状態になったとしても――」 「僕もあのレベルには到達していない。この大会中で肉薄できるとしたら……ジオさんくらいか」 「じゃあイオリくん達は、本当にこのまま……!」 「いや、そうとも言えんな」 性能では勝っている。 でも戦い方や機体への理解度……そういう点から圧倒的。 わたしから見ても勝てる要素がほとんどないのに、ラルさんは待ったをかける。 「セイ君には、レイジ君の経験を補っても余りある、ガンダム作品の知識がある」 「それもレイジの短慮に押し切られやすい。でも今なら……どうかな」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 日本(にほん)のことわざで……何だっけな。 「”九割ほど事を進めたのなら、そこからが本番”って意味の言葉、あるんだよ」 「あお?」 「つまりは油断するなってことだ」 慎重に……各種センサーも駆使し、奴らを追撃する。 反応は、なしか。状況を切り返すために、不意打ちがくるとは思うが……さて。 「……あお!」 あおの声に反応して、左肩アーマーからビームマントを展開。 背部から放たれたビームキャノンを受け止め、払い……爆炎を切り裂きながら、ライフルを射線上に向ける。 「そこか!」 ……だが射線上にいたのは、がけの途中に差し込まれた……ユニバースブースター。 しかもそこからは、銀色の煌(きら)めきが生まれていた。それは下へと伸びていて……! 「ワイヤーか!」 逆襲のシャアで、アムロが仕掛けたバズーカの罠! それに気づいた瞬間、背後に直撃を食らう。 ライフルビーム…………その爆炎でよろめいていると、もう一発ビームキャノンが発射。 こちらのバスターライフルを破壊し、爆散させる。 その衝撃で吹き飛び、落下しつつ頭部バルカンと肩部マシンキャノン。 更に右肩のビーム砲と、レイピアビームガンで連続牽制(けんせい)射撃。 ブースターにキッチリとどめを刺しつつ、岩陰に隠れていた奴らへ攻撃。 ビーム砲が岩を砕き、その破片で奴らのライフルを撃ち抜き、へし折ってしまう。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ く……的確にブースターを潰してきたか! しかも今の連続射撃で、射線が開いた! 「退避して!」 誘爆、及びそれを突き抜けたビームガンの弾丸を左肩に食らい、スタービルドストライクは吹き飛んでしまう。 そこでビームレイピアを展開して、突っ込んでくるフェニーチェ……! 『もらったぁ!』 レイジが咄嗟(とっさ)に回避した結果、破損していた左肩が刃に貫かれ、両断される。 肩本体は無事なので、腕が落とされるようなこともない。それは安心だけど……! とにかく衝突して、揃(そろ)って倒れ込みながら地面を滑る……いや、フェニーチェの推力に押し込まれていく! 「やろぉ!」 レイジは右のサーベルホルダーを回転させ、ビームサーベルの刃を発振。 それがフェニーチェの左脇腹を貫き、その追撃を止める。 溜(た)まらずフェニーチェも退避して、こちらも二十メートルほど滑って何とか停止。 ……フェニーチェは膝を突いた。でも……まだそれだけだ。 こっちの被害は甚大で、もう一発直撃を食らったら……! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「スタービルド、ストライクが……!」 涙が瞳から浮かぶ。口元を両手で押さえて、そのぼろぼろな様子から目を背けたくなる。 「逃げるな」 でもそこで、恭文さんが小さく……そして鋭く、警告を放つ。 そうだ、あのときも……ユウキ先輩と、イオリくん達が二度目のバトルをしたときも。 イオリくん達が、スタービルドストライクがぼろぼろに負けた……あのレースも。 ちゃんと、最後まで見てあげられなかった。視線じゃない、仕草でもない。 わたしの心が、逃げていた。 二人が頑張った結果を――。 二人が立ち向かった全てを、否定していて。 それができたのは最初……イオリくん達と、まだ親しくなかったときだけ。 「そう……それでいい。今度はちゃんと、最後まで見るんだ。どんな結果になろうと」 「……はい」 それもきっと、セシリアさんから託されたこと。 わたしが忘れていたから……ううん、今までできなかったことを、できるように。 イオリくん達は……わたしのために戦っているわけじゃない。だから、受け止めなきゃいけない。 本当に頑張って、足掻(あが)いて、戦い抜いて……その上の敗北なら、わたしは。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ なんでよ……なんでアイツら、まだ戦おうとするのよ。 能力解析なら、もう十分じゃない。 ……ほんと、男って馬鹿……! もう分かってる。私とは違う……アイツは、バトルが好きで、ガンプラが好きで。 だから嘘をつきたくないんだ。好きでいることに、好きでいた今までに。 そして……好きでいるこれからに。好きだから、向き合うために全力を出している。 たったそれだけだった。だったら目を背けちゃいけない。だって私は、そんなアイツのバトルが……! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「痛いか? フェニーチェ」 「……あおー」 あおが俺の頭をぺしぺし叩(たた)く。それに合わせ、俺もアームレイカーを握り締めた。 「すまねぇ」 ほんと、何やってんだろうな。決勝戦もあるってのに……今更だけど、呆(あき)れてるよ。 「でもなぁ、俺がお前を作ったのは、棚に飾って愛(め)でるためじゃねぇ」 俺……こんなにバトルが、ガンプラが……好きだったんだな――! 「勝つためだ……!」 子どもの頃……アニメで放映された新機動戦記ガンダムW。それを見て作った、HG ウイングガンダム。 トリコローレカラーに塗って、今見ると荒削り以上の何かだが……大事にしていた。 どこへ行くのも一緒で、友達を紹介するように見せて回った。それは大きくなってからも変わらない。 ……さすがに、多少落ち着きは見せていたが。 もしかしたらそうして、忘れていったのかもしれない。 フェニーチェは子どもの頃にできた”友達”で、いずれ箱に仕舞(しま)われて、ゆっくりと眠る。 そうして俺がじいちゃんになったとき、ふとしたことで見つけて……懐かしむんだよ。 久々の友達と会えた喜びを、そのとき側(そば)にいる人達へ伝えてさ。そんな、ありふれた思い出になるものだった。 だがそれは変わった。 ガンプラバトルが普及して、イタリアに来て……俺のウイングガンダムが、初めてフィールドに降り立った日から。 「俺の作ったガンプラが。ウイングガンダムフェニーチェが」 戦った……戦った……壊れても、また直して戦った。 敗北も、勝利も、苦しみも、喜びも……全て分け合って、戦い抜いた。 「一番強いんだと」 この舞台へ初めてきたときも、ヤスフミやグレコとバトルしたときも、お前が一緒だった。 「世界に向かって叫ぶためだ――!」 そうだな、シンプルな話だった。俺はよぉ。 「あお……!」 誰より、何より……そんなお前に、嘘をつきたくなかったんだ――! もちろん頭の上に乗っかって、俺をサポートしてくれるナマモノにも。 「だから」 嘘のバトルに、付き合わせたくなかったんだ! だから――。 「もう少し付き合ってもらうぜ……相棒達!」 「あおー!」 「勝利をこの手で掴(つか)むために!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ……フェニーチェが立ち上がる。 オッドアイを輝かせ、顔を上げながら……静かに再起動する。 「……レイジ、RGシステムをフルモードで使う」 「いいのか、セイ。こんな状態でアレを使ったら」 「大丈夫」 レイジが迷いを見せてくれる。それに感謝しつつ、安心させるように断言。 「RGシステムは進化した」 「進化?」 「それにリカルドさんは……フェニーチェを失おうとも、勝ちに来ている」 それは、僕にはない覚悟だ。でも勝てない……それじゃあ追いつけない。 「あの人に勝つなら」 ほんと、情けないね。スタービルドストライクを仕上げたことで、満足していたのかも。 「僕にも」 でも、限界なんてない。 「スタービルドストライクにも」 僕達に……ガンプラに、限界なんてない――! 「覚悟が必要なんだ!」 「……なら見せてやろうぜ」 指を走らせ、早速起動準備。 「オレ達の覚悟を!」 ――RADIAL GENERAL PURPOSE SYSTEM Ver2.0―― 「あぁ――」 そうだ、限界なんてない。絶対もない……だから僕達は。 「RGシステムVer2.0」 ――LIMIT BREAK―― 「完全解放!」 もっと、高く飛んでいける! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 誰もが最初は思った。あの輝くシステムを発動したのだと。 それはある意味で正しく、そして間違いでもあった。 ストライクのフレームから放たれた光は、一つの形を取る。 各所に配置されたクリアパーツが青から赤に変わり――。 スタービルドストライク自体の色も、同じように変化する。 その姿に私も、朝比奈さんも……三条さんも驚き、息を飲んだ。 「何よ、あの光……いや、炎は!」 そう、ほしなさんが言うように、スタービルドストライクは燃えていた。 各所のクリアパーツから生まれた炎が、スタービルドストライクを照らしている。 それはまるで、太陽のようで……! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「プラフスキー粒子を外側だけやのうて、内側にも浸透させて……!」 「ガンプラを制御し、機体出力を極限にまで上げている!? いや、それだけではない!」 「あれはVPS装甲を元にしたもの。……なるほど、核爆発で死にかけた経験からですわね」 今まで静かに見守っていたマオさんが。 ニルスさんが、イビツさんが、トウリさんが――。 もちろんわたくしも、あの変化には驚くしかなかった。 でも冷静に考えれば納得もできます。PS装甲の電圧設定だと、赤色は比較的強度が高いものですから。 ……先ほど零距離での連射に耐えられたのは、これが原因。 フレームとクリアパーツを通し、装甲に粒子を注入。強度を獲得していたのですね。 だから厳密に言えば、VPS<ヴァリアブル・フェイズ・シフト>装甲ではない。 粒子出力によりその性能を、特性を変化させるのならば。 「あえて名付けるとしたら、VPS――ヴァリアブル・パーティクル・シフト装甲というべきでしょうか」 「しかも機体の負荷になり得る余剰出力を、装甲強度と”炎”に回して上手(うま)く逃がしている。以前の光るシステムより、ずっと効率的だ」 「劇中、ストライクのPS装甲は二度の致命的損傷から搭乗者を守っているッス」 そしてイビツさんとトウリさんも、冷や汗を流しつつ前のめり。ふふ、わたくしと同じですわね。 「ビーム攻撃には弱い欠点もあるけど、純粋な物理衝撃ならばこれほど頼れる盾もないね。でも、この短期間で……!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ スタービルドストライクは燃えていた。真っ赤に……熱く、太陽のように。 「ふん、小僧達にされたことへの対策か。少々遅かった」 「いや、違うぞ」 「違う?」 ディアーチェ達は俺の否定で、改めて機体を見やる。……そこで息を飲んだ。 「おい、ダーグ……!」 「あぁ。そんな後ろ向きじゃねぇよ、あの炎は……!」 「熱い……熱いです」 ユーリも、シュテル達も感じ取ったらしい。あの炎は単なるエフェクトのはずなのに、意志が感じられることを。 「私、こんなの初めてです。あの炎を見ていると、心の奥底から励まされるような」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「そう……彼らは変わったのだ」 イオリくん達のガンプラは、変わった。でもそれだけじゃない。 「今度こそ最後まで、戦い抜くために」 イオリくん達もまた、変わって……強くなった。その姿に、涙が零(こぼ)れる。 「敗北から逃げるのではなく、受け止め……前へ進むために!」 「……進むために」 やっぱり……わたしは、逃げていたんだ。二人が特別で、負けるわけないって……逃げて。 二人は逃げなかったんだ。逃げずに、言い訳せずに、負けた事実を受け止めた。 それで強くなろう、強くなろうって足掻(あが)いて。だから……炎はあんなにも、熱い輝きを放って……! 「あれが、セイくんの」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「レイジ君のガンプラか……!」 タツヤも、ミスター・ジオウも舌を巻くしかなかった。 彼らは敗北を糧に、変わりたいという炎を燃やした。 燃やして、燃やして、燃やし続けて――一つの形とする。 あれは決意の炎。 止まらず、進み、進化する。 限界は突破し続け、先を進む全てに追いつき、追い越す。 彼らの意志そのもの――ふ。 「どうやら認めるしかないようだ」 熱い……心が熱い。 「そして刻むしかないようだ」 このボクが、彼らの熱に絆(ほだ)されてしまっていた。 「イオリ・セイ――その名を、ボク自身に」 「若いってのはいいねぇ、あっという間に突き抜けちまう。……俺もうかうかしてられないわ」 「ふ……ならば燃え上がるがいい!」 そしてタツヤは右手を振りかぶり、そのまま彼らを指す。 「ガンプラに、ファイターに――限界はない!」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ よし……過負荷による損傷を避けるための、装甲変質と炎の放出は問題なし! ……今回、フェリーニさんとバトルして分かったよ。 下手に大きな力を求めても、ファイターが扱い切れないと意味がない。 そして今のボクの技量では、これ以上の出力を追い求めるのは無理だ。 求められるのは技巧――より効率的に、今ある力を活用する技。 ……もう、同じ負け方だけは絶対にしない。そう決意を込めて作り上げた、RGシステムVer2.0。 その姿には、レイジも笑うしかなかった。 「すげぇ……すげぇぞ、セイ! 上手(うま)く言えないけど、すげぇ!」 「でも今までの損傷もあるから、そう長くは動けない。それに平常出力も八割に減少している」 「落ちてるのかよ!」 「その代わり最大効率でのエネルギー運用ができるから、爆発力は半端ないよ」 「……爆発?」 「そう、爆発」 そういう意味でもVer2.0だった。常に最大出力で動かすんじゃない。 機体とそこに流れる粒子の力、それらを一つの機構と捉え、爆発させる。 カテドラルやフェイタリー、ジオさんのモンスターズレッドを見て、思いついた発想だ。 出力が落ちていると聞いて、また不安げなレイジには……大丈夫と笑ってやる。 「その調整はこっちでしていくから」 「より二人三脚ってことだな。……了解だ!」 話が早くて助かる。……それじゃあ。 「行くよ、レイジ!」 「おう!」 レイジがアームレイカーを押し込み、突撃――。 サーベルを抜刀しながら、フェニーチェへ肉薄。まずは斬り合いに殉じていく。 (Memory53へ続く) あとがき 古鉄≪と言うわけで、お待たせしました。鮮烈な日常第52話――。 とまとオリジナルで進化したビルドストライク。後のビルドバーニングにも通ずる形態です≫ (炎は光の翼にみたいなものと思いねぇ) 古鉄≪それとあおとリカルドさんのシーンは、読者さんの拍手からになります。拍手、ありがとうございました≫ (ぷちきゃら・あおのお仕置き劇場 Vivid・Remix Memory50?編 ー世界大会・選手村 リカルド&あおの部屋ー リカルド「…」 あお『ミホシお姉ちゃんとお酒飲んで帰ってきたわりに浮かない顔してるね。 楽しくなかったの?』 リカルド「いや、スッゲー楽しかったさ。 …お前の仕込みか?」 あお『そんなことしてないしする必要がないよ。 いい男には自然といい女性が寄ってくるもの、リカルドの魅力がミホシお姉ちゃんを引き寄せたんだよ』 リカルド「なら良いんだがな」 あお『…明日のバトル、ファイター代わろうか?』 リカルド「あ?」 あお『迷いがある状態で戦うなら代わってあげるってこと。 もちろんその場合使うのは僕の機体だからフェニーチェは温存できるし、僕なら見事なやられ役を演じてみせるよ?』 リカルド「お前…」 あお『セイくん達にも決勝トーナメント出てほしいんでしょ?』 リカルド「…そうだな」 あお『なら「でも駄目だ」 リカルド「それじゃああいつらもそうだし、何より俺が納得できない。 …それにここまで付き合ってくれてるお前にも悪いしな」 あお『なら明日は…』 リカルド「機体はウイングガンダムフェニーチェ、ファイターはこの俺、セコンドはあお。 今まで通りの俺達で行くさ」 あお『了解!』 リカルド「…カッコ悪いトコ見せて悪かったな」 あお『悪酔いしてるときのリカルドに比べれば全然オッケーだよ!』 リカルド「生トマト食べて酔うお前に悪酔いのこと言われたくねぇよ!」) 古鉄≪そして作者はGジェネにハマっていた。でも今月の幕間もあるので封印≫ (百式はいいぞ) 古鉄≪勝負の決着、及びトウリさんやセシリアさんの試合は次回以降に持ち越しですが……そろそろ触れましょうか≫ (真・主人公、耳をクシクシしながらとある方向を見やる) ジャンヌ(Fate)「……受け取ってください」 恭文「駄目です」 ジャンヌ(Fate)「なぜですかぁ! 夫婦の資産は共通ですよ!? だから通帳を受け取ってください!」 恭文「家族のお金でガチャなんて駄目! 堕落します!」 (涙目な聖女と蒼い古き鉄、膠着状態……なおその脇には、倒れている腹ぺこ王) フェイト「そうだよジャンヌ。ガチャってこう……賭博的な要素も大きいし、ヤスフミが遠慮するのも」 ジャンヌ(Fate)「奥様は黙っていてください! これは夫婦の問題です!」 フェイト「私が奥さんなのにー! というか今、奥様って!」 ジャンヌ(Fate)「私は、私は……嫌なんですー! ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィとか言う、てんこ盛りに先を越されるのは!」 (聖女、耐えきれず号泣……そうして黒いオーラを放出) 恭文「ジャンヌ、落ち着いて……ね!?」 ジャンヌ(Fate)「妹に先を越されるのは、嫌です……」 恭文「マテリアルの話もやめようか! とにかく……通帳は駄目! 大丈夫、いつか……いつか引けるから! というか引きたいし!」 ジャンヌ(Fate)「だったらこの通帳を」 恭文・フェイト「「それは駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」 (……真・主人公、荒れ模様な場からそっと離れつつ) 古鉄≪ぱんにゃさんへ乗っかり、アルトぱんにゃー≫ 白ぱんにゃ「うりゅー?」 (お外で遊んでいたふわふわ長女へ乗っかり、一緒に遊び始めるのだった。 本日のED:BACK-ON『wimp ft. Lil' Fang (from FAKY)』) 古鉄≪そう言えばこんな拍手が届いていました≫ ([トリコ]が終了したので、記念に 【ヤスフミの人生のフルコース】 を考えてみた。 オードブル:シャマル スープ :すずか 魚料理 :ギンガ 肉料理 : 歌唄 メイン :フェイト サラダ :アインハルト デザート:リィン ドリンク :フィアッセ) 古鉄≪拍手、ありがとうございます。……トリコ、いいラストを飾りましたね≫ 恭文「アウトォォォォォォォォ!」 シャマル「オードブル……なら、最初は私から」 恭文「乗っかるなぁ! というかアインハルト……アインハルトは駄目ー!」 あむ「そうじゃん! 結局改善できてないんだよね、愛人思考!」 (おしまい) [*前へ] [戻る] |