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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第1話:おまけとあとがき



おまけ:出会いや繋がりは、どこでどう転がるか分からない。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・なぎ君とフェイトさんとリイン曹長がそんな話・・・いろんな意味で問題な話をする少し前。いや、真面目に問題だと思うんだけどさ。





とは言え・・・仕方ないのかな。なぎ君とリイン曹長の繋がりの深さは半端じゃないもの。リイン曹長だって、きっと男の子としてなぎ君の事大好きなんだろうし、もう・・・あれだよ。なぎ君はリイン曹長置いて相手の子と幸せにはなれないって。










「でも、それでリイン曹長も交えた一種の一夫多妻制って問題があるんじゃ」

「アルト、今更だよ。それなら逆に聞くけど、なぎ君がリイン曹長振り切ってフェイトさん・・・というか、他の女の人と幸せになるの、許せる?」





つまり、リイン曹長が図式に入らないということだね。例えるなら・・・『なぎ君×フェイトさん』・・・で終わるの。



もっと言うと『なぎ君×スバル』とか、『なぎ君×ティア』とかになっても、絶対にリイン曹長がプラスされないわけだよ。





「いいえ、許せません。だって・・・あんなにいじらしく想ってくれてるのに。
リイン曹長、付き合うとかそういうの無くていい、ただ側に居られるだけでいいからって言ってるんですよっ!? それすら振り切るって何事ですかっ!!」

「でしょ? だから、なぎ君は問題があろうとなかろうと、フェイトさんとリインさんの二人をお嫁に貰って、二人とも幸せにしないとだめなんだよ。
もうなぎ君はデフォルトで一夫多妻制の道を行く事が決定してるんだから」

「・・・アイツ、自業自得かも知れないけど大変ですよね。いや、真面目な話ですよ」










さて、そんな大変そうな三人を抜いた上で、ミッドで普通に日常を過ごしていた私達は、六課隊舎の休憩室に集まって色々と話をしていた。





まぁ、いつもの仕事終わりの雑談ってやつ? フォワード四人は今日の模擬戦の反省もやりつつ・・・だね。いや、みんな気合入ってていい感じだよ。





そして、そんな時・・・ふとルキノとアルトがこんな話をし出した。










「・・・なぎ君と初めて会ったとき?」

「うん。ルキノはなぎ君とは結構付き合い長いんだよね」

「そうだねー。私がアースラに乗艦する様になってから・・・だから、うわ、もう6年とかだよ」



なぎ君と初めて会った時の話になっていた。

・・・そう言えば、その頃なぎ君は主にその時アースラの館長・・・じゃなかった、艦長に就任していたクロノ提督の仕事を手伝う事が多かったんだっけ。



「ね、ルキノ。なぎ君ってその頃どんな感じだったの?」

「うんとね、今よりもちょっと身長が小さくて」

「・・・やっぱりなぎさんの話題だと、そこから入るんですね」

「本人が聞いたら怒りそうだけどね。最近、僕にもプレッシャーかけてくるんだよ。
身長伸びてもいいことないからやめようねってさ。・・・どうすればいいの、アレ?」



エリオ、そこは流していいよ。なぎ君も1割くらい冗談だと思うから。

とにかく、私はポテチをかじりつつ話を聞くことにした。



「それで、初回でいきなり命令無視の大暴れして・・・反省房に入れられたの」

「・・・アイツ、やっぱりそういうキャラなんですね」

「ただ、そこからが大変でさ。その数時間後に原因不明のエンジントラブルでアースラが完全に機能停止して、一週間くらい次元の海を漂流する羽目になったの」



・・・あぁ、フェイトさんから前に聞いたアレか。アースラ7不思議の一つ。なぜかなぎ君を反省房に入れたら必ず起こるという原因不明のエンジントラブル。



「ただ、その間になぎ君と色々話す機会があって・・・それで仲良くなったんだ。年も近いからいい感じでお友達」

「なるほどねぇ・・・。というか、なぎ君の運が悪いどうこうって、その頃からだったんだ。私、シグナム副隊長やグリフィスさんから聞いた時は何かのネタだと思ってたのに」

「アルト、残念ながらなぎ君の運の悪さは良太郎さんと同じくギネス級なの。もうそれだけでも伝説に残ってるようなのがいくつもあるんだから」

「良太郎さん・・・元気かなぁ。あ、後でメールしてみようっと」



・・・スバルが若干変なモードに入ったのは気にしないことにする。いや、まぁ・・・いいことじゃないの? フェイトさんも大人の階段上ったようだし。

よし、今度こそ聞けるね。初めての時の痛さに関して。どうも私の周りでその領域に達した人は少ないからなぁ。・・・八神部隊長? 一応聞いたけどなんか変なモードに入ったから参考にならなかった。



「・・・スバル、野上さんのこと相当気に入ってるみたいだね」

「というか、昨日もメールしてなかった? さすがにそんな何回も送ったら・・・」

「あぁ、アルトさんもルキノさんも、スバルのことは気にしないでください。私が後で言っておきますから。・・・あ、そう言えばシャーリーさんはどうなんですか?」

「・・・私?」



いきなり私に話の方向が向いた。そして、みんなの視線が向く。



「あー、そう言えば気になるかも。シャーリーさんって、なぎ君の家に何回も遊びに行ったりしてるんですよね」

「うん。それだけじゃなくて、泊まったこともあるよ。オールでカラオケも何回か」

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』



全員の絶叫が休憩室に響いた。・・・あぁ、これは外に聞こえたかな。



「・・・一応言っておくけど、私となぎ君はそういういかがわしい関係じゃないよ? というか、なぎ君はフェイトさん一筋だもの。余所見なんて全然しないし」



・・・そこまで言ってちょっと気づく。もうそういうの・・・無理なんだなと。さすがに彼女持ちの子にそんな真似するのは躊躇われるもの。

うーん、それは残念だな。私となぎ君はそういうの全然無いけど、あそこは居心地良かったのに。



「そうなんですか? え、じゃあ泊まってなにしてたんですか」

「うんとね、ゲーム合宿とか、私が趣味で作ってる自作デバイスの製作を材料や工具持ち込んで手伝ってもらったりとか・・・かな。うん、そんなに色っぽい感じじゃないの。
なんというかこう・・・なぎ君と私って、ノンセクシャルな友達だから。なのはさんやスバルやティアナ・・・って言うよりは、八神部隊長寄りかな」

「な、なんか分かるような・・・」

「分からないような・・・」





でも、なぎ君との付き合いも・・・あ、私もなんだかんだで来年で初めて会ってから5年だね。結構長いや。





「それでシャーリーさん、アイツとはどんな出会い方だったんですか?」

「・・・あぁ、アレはね。強烈だったよ。多分スバル達の何倍も」

「・・・・・・いや、おかしくありません? てゆうか、あの『邪魔するなら帰ってください』より強烈な出会い方って想像出来ないんですけど」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・新暦71年の4月。私は幼馴染のグリフィスと一緒に、とある管理世界の中継基地である人達を出迎えていた。





そう、その人達は現六課隊長陣であるなのはさんにフェイトさんにはやてさん。そして・・・。










「・・・へぇ、二人は幼馴染なんだ」

「はい」

「まぁ・・・腐れ縁というのなんです。家が隣同士なので」

「それは僕のセリフだ」



なによ、うーなんか可愛くないなぁ。



「まぁまぁ。・・・でも、いいな。私達も幼馴染なんだ」

「そういう友達は貴重だから、大事にしないとダメだよ?」

「「はいっ!!」」



・・・資料でしか見た事のないような憧れのエース達を前に、私の心は跳ね上がっていた。というか、うれしいよー! すっごくうれしいよー!!

でも、ちょっと気になっていた。そんなエース達の中に小さな男の子が居たのを。身長・・・あ、私と同じくらいかな?



「ほら、みんな。そろそろ行かないと時間なくなっちゃうよ? サクっと終わらせて、サクっとご飯だよ」

「あ、そうだね。というか・・・あの、恭文君」

「なに?」



え、待って。この子・・・今高町二尉に『やすふみ』って・・・。



「・・・いや、なにじゃなくてっ! どうしてそう言いながら肉まんなんて取り出して食べてるのかなっ!?」



私の視線はそこに集中した。そう、武装局員の青いアンダースーツを身に付けつつ、美味しそうにどこからか取り出した肉まんをほうばるあの子に。



「だって、みんなと合流する前に商店街の人達から『どっか行くなら途中で食ってけ』って言われてもらったんだもん。仕方ないじゃん」

「仕方なくないよっ! あぁもう、どうしてそんなに緊張感が無いのっ!?」

「魔王よりマシだよっ!!」

「なんなのっ! その意味不明な逆ギレの仕方はっ!!」



ま、まさか・・・やすふみって・・・蒼凪恭文っ!?



「・・・ん? なんや、フィニーノ通信士は恭文の事知っとるんか」

「はいっ! すっごくっ!! 私、お三方の次に会いたかったんですっ!!」



すると、あの子は驚いたような顔になる。いや、全員同じだね。



「え、えっと・・・それはどうして? ヤスフミは特に局員というわけでもないのに」

「それでも有名ですよっ!! ・・・あの伝説の魔導師であるヘイハチ・トウゴウの弟子で」



私も名前だけしか知らないような人だけど、凄い人だというのは聞いている。



「自身もとても優秀な魔導師で」



そして、その人が見込んで弟子にした魔導師が居ることも。



「本局医療施設を三度も混乱に陥れたという、生ける伝説ですからっ!!」

「なんじゃそりゃっ!? え、僕ってそんなしょうも無い事で有名なんかいっ!!」

≪まぁ、間違っては居ませんよね。現に混乱に陥れてますから≫

「そうやなぁ、それも2度目以外はホンマにしょうも無い理由でやで? それも女絡みや」



・・・あれ、でもおかしいな。こう・・・ちょっと違う。



「あの、私が聞いていた話だと・・・背中に翼が六枚あって、腕が左右あわせて八本。瞳は一つ目で角が生えていて、肌が赤黒くて口から怪光線を吐き出すと」










次の瞬間、私の身体は天高く吹き飛んでいた。いや、あの子が蹴りとか叩き込んできたからだけど。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「いやぁ、あの蹴りは危なかったなぁ。咄嗟にガードしたから良かったけど、さすがに・・・あれ? どうして皆はそんな目で私を見るのかな」

「・・・あの、シャーリーさん。非常に言いにくいんですが」

「それ、多分自業自得です」



・・・そうかな。私は平気だったけど、なぎ君はフェイトさんにそれですっごい怒られてたのに。

確かに若干テンションが上がっていてついやってしまった感は否めないけど・・・世の中ではよくあることだよ。



「いやいや、いくらなんでもそのどこかのゲームに出てくるようなモンスター的な扱いはなぎ君じゃなくても怒りますって。それも初対面の時の話ですよね?」

「というか、よく蹴りだけで済みましたね。アイツならそのまま斬撃とかかましそうなのに」

「あ、実際かましてきたよ? なのはさん達が必死に止めてくれたけど」

「マジでなにやってんのよアイツっ!!」





ただ、この話には続きがある。・・・この丁度1年後くらいに、アルフさんというパートナーが局を辞めてしまって、フェイトさんはその当時とても忙しかった。主に一人だと手間のかかる事務処理や渉外関係が悩みの種だったとか。

なぎ君も見かねてよく手伝ってたらしいんだけど、それでも何の資格も持ってなかったなぎ君だと処理しきれない書類もある。なにより、自分の仕事のためになぎ君の方針ややりたいことの邪魔をしているのではないかと感じていたフェイトさんは、早急に補佐官を探すことに決めたらしい。

そして、フェイトさんは1年前に会っていた私の事を覚えていてくれて、能力やなんかを確認した上で、もしよければ自分の仕事を手伝ってくれないかと声をかけてくれた。いやぁ、あの時は嬉しかったなぁ。




とにかく私その誘いに二つ返事で頷いて、それからすぐに補佐官資格の試験を受けて見事合格。晴れてフェイトさんの補佐官となった。



そして・・・それがまずかった。





「ほら、前にも話したけど、なぎ君ってその時フェイトさんの補佐官になろうとしてたんだよ」

「・・・あぁ、そういえば言ってましたよね」



なぎ君も同じようにフェイトさんの現状を非常にマズいと思っていたらしい。まぁ、実際に処理をしても本当に手伝い程度にしかならないんだから当然なんだけど。

それで、そんなフェイトさんの力になるために、そしてフェイトさんの側に居たいという動機も隠しつつ、必死に勉強して資格を取った。ただ・・・。



「でも、フェイトさんがシャーリーさんをスカウトしちゃったから」



そう、本当にタッチの差で私が先に補佐官に納まった。ほんの数時間とかそんな差で。



「なぎ君、頑張って資格取ったのに、長年IDカードの肥やしに・・・」

「それだけじゃなくて、フェイトさんからの100%の気遣いで二人目の補佐官になる道も断たれて・・・」



うん、そうなった。で、私はそんなこととは露知らずに・・・あ、このクッキー美味しいなぁ。今度ヴァイス陸曹が病院行く時に大量に買ってきてもらおうっと。



「それからすぐ、私となぎ君をフェイトさんが引き合わせてくれたの。まぁ、一応挨拶みたいな感じでね。そうしたら・・・」

「アイツ、今度はなにやったんですか?」

「うん、出会い頭に『よりにもよってお前かぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』って叫んだ上で私はドロップキックをかまされたよ。まぁ、これも何とかガードしたんだけど」

「だからなんでガード出来るんですかっ!? おかしいでしょそれっ!! つーか、それよりなによりアイツはマジでなんなのよっ! 理由は分かるけど、それでもいきなり女の子にドロップキックって絶対おかしいからっ!!」



いや、うちの親戚でシズカさんって人が居てね・・・。その人がプロレスノアが大好きで大好きで・・・『ノアだけはガチ』だって言ってはばからない人だったから・・・かな。

おかげで、一緒に見ていた私までそういうの詳しくなって、ガードとかも得意になって・・・。いや、その人が私に技をかけてきたりしたからなんだけど。



「と、とにかく・・・恭文とシャーリーさんって、初対面は色々問題ありだったんですよね」

「まぁね。互いに若かったから」

「・・・多分それ、違うと思うんですけど。でも、それならどうして仲良くなったんですか? 今の様子やさっきの話とかを見ると、普通に友達みたいですし」



エリオの言葉に私は思い出す。・・・アレもなぁ、不思議だよね。なんていうか、縁やめぐり合わせってどういう風に出来てるのかな。



「うん、それもきっかけがあるんだ。実は、それからまた1年くらい私となぎ君って接点がなかったの。なぎ君がハラオウン家の双子の子育ての手伝いに入って、魔導師の仕事をお休みしたから」

「・・・あぁ、アイツを『パパ』と呼ぶという子達ですか」



そう、今なおなぎ君をパパと呼ぶ子達。そのために幾度と無く家族会議が行われて、DNA検査なんて話まで飛び出しかけたとか。



「ティアさん、それだけじゃないです。なぎさん・・・カレルとリエラの出産にも立ち会ってますから」

「あと、母親のエイミィさんの次に生まれたばかりの二人を抱いたの、恭文です。当然クロノさんを差し置いて」

「あぁ、そうだったわね。・・・ねぇ、なんでアイツはあぁなの? 私はマジで疑問なんだけど」










まぁ、だからこそのなぎ君だとは思うんだけどね。ただ、本人や本物のパパやママ的にはなんとか修正したいらしい。うん、無理だと思うけど。





とにかく、話はなぎ君がその子育てをお役ごめんとなり、ミッドに引っ越してきてからになる。あの時のこと・・・やっぱり忘れられないな。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・アルト」

≪はい≫

「暇」

≪何を今更。だからここに来たんでしょ?≫



まぁ・・・ねぇ。



「なんて言うかさ、ミッドに引っ越してきたのはいいけど・・・フェイトとかと会わないね」

≪仕方ないでしょ、向こうは次元航行部隊でお仕事なんですから。それに、あなた補佐官でもないですし≫

「言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! あの失礼極まりないメガネ女に色々先を越されたかと思うと非常にムカつくから言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



・・・現在、新暦73年の11月。ミッドに引っ越してからまだ日は浅い。そんな中、僕達はクラナガンにあるアニメ関係の同人ショップ『りゅうのあな』に来ている。地球の同人関係なんかも置いてある結構大きいお店。

ヒロさんサリさんとの修行のために仕事の量を減らしてる感じなので、結構暇な日が多い。とは言え、うちでゴロゴロも勿体ないので、ここに暇つぶしに来た。なお、ここは3階の同人ゲームコーナーです。



「あー、でも熱が普通でよかった。空調も効いてるし」

≪まだコミケまでだいぶありますしね。これがコミケ終わってからだと大変ですよ?≫

「・・・うん、知ってる。あの熱気と匂いはひどいもの。もうムワってするし」



なんて言いながら、同人ゲームを見る。・・・ひぐらし買って全クリしようかな。最近話よく聞くし。



≪もうすぐPS2でファンディスク出るって噂もありますし、それ待ってからでもいいんじゃ?≫

「あー、それもいいね。中原麻衣さん出るし」

≪なにげにファンですか?≫

「かなりね。ミルモでポンでやられましたさ」



まぁ、そこは流して・・・やってきたのはエロなゲーム置き場。やっぱり、一人暮らしだからこういうのは・・・ねぇ?

というか、憧れていたわけですよ。一人暮らしするなら・・・こういうの買っておきたいなと。今まではご母堂様や鼻の利く使い魔や最近色々関係を疑われている義兄の嫁とかが居て無理だったもの。



≪・・・まぁ、止めませんよ? 性欲処理をきちんとしない人は性犯罪に走りやすくなるって言いますし≫

「そうなの?」

≪昔見ていた深夜テレビでそんな話をしてました。ただ、見つからないようにはしないと≫

「分かってますって」





一応サリさんから『お祝い』としてあれこれ貰ってはいる。だけど、やっぱり自分でもこういうのは買ってみたいのだ。

そんな時・・・目に入った。いわゆる義姉物っぽいのが。・・・本能的にそれに手が伸びた。

べ、別に・・・これはあれだ。市場調査なんだ。だからいいんだ。うんうん。あと、フェイトと言うよりはエイミィさん似なのはいわゆる偽装なんだ。いや、本人達には絶対言えないけど。



だけど、そんな事を考えながら出しかけていたその手が止まった。同じように伸ばしてきた人の手に触れたから。





「あ」

「あの・・・ごめんなさい」

「あ、いえ。こちらこそ・・・え?」





謝ろうとして、その人を見る。・・・ブラウンのコートを着て、紺のロングスカートにスニーカー。

長くつややかな栗色の髪にメガネをかけていて、僕より少しだけ身長が高い・・・女の子。



というか、見覚えがある。この人・・・つーか、コイツハ・・・。





「「あぁっ!!」」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・ごめん、私泣いていいかな? いや、答えは聞いてないんだけど」

「いいと思うよ。というかね、私も・・・なんか涙出てきた」

「ティアさん、スバルさん、大丈夫ですから。今はもうフェイトさんと結ばれてるんですから。・・・でも、まさかなぎさん、そんなゲームを手に取ろうとしてたなんて」

「やっぱり・・・色々溜まってたんだよ。8年だもの」

「と、とにかく・・・それでバッタリ会ったんですよね。それで、その続きは?」

「うん、それから・・・」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「でも、驚いたなぁ。まさかあんなところで偶然会うなんて。・・・運命って、あるのかもね」

「あぁ、そうですね。というわけで帰っていいですか?」

「だめ」



近くの喫茶店で現在、僕はこのアマに引っ張られてアイスティー飲んでます。ついついガムシロ四個入れちゃったけど、それでも僕はリンディ茶は飲めないと思う。

でも・・・気まずい。よりにもよってあんな所を見つかるとは・・・。



「・・・大丈夫だよ、フェイトさんには黙っててあげる」



なぜ考えてる事が分かるっ!?



「当然だよ。君・・・フェイトさんのこと、好きなんだよね」

≪JACK POT!!≫

「はい、とりあえず黙れっ! つーか、僕を差し置いて肯定するんじゃないよっ!!
・・・は、はて。僕には何の事やら」

「なのはさんに教えてもらったんだ。フェイトさんに連れられる形で何回か会った事があってね、その時にどうして君が私に対して攻撃的というかつっけんどんになるのかちょっと分からなくて、聞いてみたんだ。
それで・・・君がフェイトさんの力になりたくて補佐官の資格を取った事や、私がスカウトされちゃったからそれがパーになったこととか・・・全部聞いた。もうリアルにザ・クイズショウが出来るくらいに色々聞かせてもらったよ?」



あのバカがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 今度徹底的にマジに苛め抜いてやるっ!! それで今度と言う今度は真性Mとしての自分に目覚めさせてやるっ!!

つーか、ちょっとわからないってどういうことっ!? いきなりどこぞのレッドアリーマーの如き扱いを受けた事は十分そうなる要素があるでしょうがっ!!



「いや、なんというか・・・どんな子か興味があって、それで仲良くなりたくてとっかかりが欲しいなと」

「あぁ、そうですか。でもそれはとっかかりじゃなくて『喧嘩を売ってる』って言うんだよ? うん、広辞苑で言葉の意味を調べてから出直して来て欲しいな。というわけで、僕はもう帰」

「ダメだよ。帰ったら話すよ? フェイトさんに君が義理の姉を(どかーんっ!!)して(キンキンキンッ!!)させるゲームを買おうとしてたって」

「どんな脅迫っ!? つーか、それはマジでやめてー!!」



というか、そんな内容のゲームだって僕は今初めて知ったわっ! 表表紙だけならマトモだったのにー!!



「・・・ん、待て。なぜにおのれはそれを知ってる」

「だって、同人カタログに載ってたんだもの。で、どんなのかなーって興味があって」

「いや、興味持つのやめようよ。女の子だよね? 嫌悪感とかないわけですか」

「うーん、もちろんリアルでそういうのは絶対嫌だよ? 私だって女の子だもの、好きな人とだけそういうことしたい。ゲームはあくまでゲームなの。ただ、現実であんなのは・・・絶対に嫌」



どこか真剣な目でそう言ってきたのは憎きメガネっ子。・・・ま、まぁ・・・あれだよ。それならそれでいいかな。うん、趣味なんて人それぞれだし。



「とにかく・・・このまま君を帰すわけにはいかないかな」

「・・・よし、何が目的? 聞ける条件なら聞こうじゃないのさ」

「うん、話が早くて助かるよ。・・・私達は、どういう出会い方であれ今はフェイトさんがきっかけで繋がりを持ってる。だったら、仲良くしていくべきだと思うんだ。
でも、私達はお互いにお互いの事をあんまり知らない。そこで・・・相互理解が必要だと思うの」



・・・うん、ちょっとムカってきたけど話は分かる。



「なので・・・まず、私のことは『シャーリー』って呼んで。おのれとかあなたとかそういうの無し」

「お断りします。つーか、人をレッドアリーマーもどきみたいに言っておいてそんな事言える立場じゃ」

「えっと、フェイトさんの通信っと・・・。どう言おうかな、やっぱり君が女の子に(キンキンキンっ!!)をしてみたいと思うようなブッチギリの変態だったって件から喋ろうか」

「もうシャーリーでもシャーリー様でも呼ぶからそれはやめてー! フェイトへの連絡だけはやめてー!!」










・・・そしてこの後、僕はほぼ丸一日・・・シャーリーに引っ張りまわされることになった。





あれ、なんでこんなことに?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あ、フェイトさん。おはよーございまーす」

「うん、おはようシャーリー。・・・あれ?」

「どうしました?」

「シャーリー・・・なんかすごくごきげんだよね。というか、ちょっとお化粧してる」



朝、執務室に行くとシャーリーが早速書類整理に精を出してくれていた。だけど、ちょっと違った。

なんというかこう・・・普段よりおめかししているというか、明るいというか。いや、シャーリーは普段から明るいんだけど。



「いやぁ、フェイトさんの補佐官になってから1年。ようやくずっと引っかかっていた小骨が取れたんですよ。おかげでちょっとおめかししたくなるくらいに気分が良くて〜」

「・・・小骨?」

「はい。実は昨日、なぎ君と一日オールでデートしてきまして」



へぇ、そうなんだ。ヤスフミとデート・・・え?



「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」



ヤ、ヤスフミとデートっ!? それも一日オールって・・・どういうことかなっ! というか、ヤスフミは最初の時の事を気にしているせいか、シャーリーの事嫌ってて・・・!!



「実は、昨日私お休みもらっていたじゃないですか」

「あ、うん」

「その時に、街で偶然バッタリなぎ君と知り合ったんです。それで、逃げようとしたんですけどそこを捕まえて・・・朝までつき合わせちゃいました」



あ、朝までっ!?

その言葉に私の体温が急上昇していく。それって、つまり・・・。



「あぁ、そういういかがわしいことは全くないんです。ただ、オールでカラオケに行きまして。もちろん、途中で私は仮眠を取らせてもらったので、仕事には差し支えありませんから」

「・・・あ、だからオールなんだね。でも、どうしてカラオケ?」

「前にフェイトさんやなのはさんがなぎ君は歌が上手いって言ってたのを思い出して、それでカラオケとかだったら二人っきりにもなれるし、色々話せて仲良くなれるかなーと」



・・・なるほど。確かにヤスフミはフィアッセさんの影響からか、歌うのが好きみたいだからいい方法だったかも。



「だったら、いい感じだったんだね」

「はい。・・・わかります?」

「分かるよ。だって、ヤスフミのことあだ名で呼んでるし」

「・・・いや、ここに来るまでに苦労しましたよ。なぎ君、自分からは全く私の名前も呼んでくれないし、名前で呼んだら怒るんですもの。明け方になって帰る時に、ようやくこれならいいって許してもらえたんです」



泣きまねをしつつそう話すシャーリーを見て、私は苦笑する。・・・そう言えば、なのはと仲良くなった時もそんな感じだったような。ヤスフミ、やっぱり素直じゃないところがあるから。



「ね、シャーリー」

「はい?」

「出来れば・・・これからもヤスフミと仲良くしてくれるかな。ヤスフミ、本当に嫌な時は誰がなんと言おうと全部跳ね除けちゃうけど、シャーリーに最後まで付き合ったってことは、絶対に嫌ではなかったと思うんだ。
素直じゃなくて、自分の気持ちとかあんまり話してくれなくて、たまに本当に何を考えてるのか分からない時もあるけど・・・お願い、出来るかな?」



私がそう言うと、少しだけ考えたようなそぶりを見せて、シャーリーは笑顔でうなづいてくれた。



「いいですよ。私も昨日一日話してみて、なぎ君のこと好きになりましたから。出来るならもっと仲良くなってみたいですし」

「・・・そっか、ありがとね。シャーリー」

「というか、この私でも難攻不落な匂いがするというのが逆に燃えるんですよねー! ふふふ・・・必ずやデレさせてみせましょうっ!!」










デ、デレさせてって・・・・それはまた違うと思うんだけど。



















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・というような感じで、そこからまたあれこれ話したりするようになったんだ。元々趣味は同じだったから、そういうのも絡めて・・・うん、何とか仲良くなったの」

「なるほど・・・。なんだか、大変だったんですね」

「でも、さすがのシャーリーさんもなぎ君のツンには苦労したんですね。・・・やっぱり初手を間違えたんですって。それが無かったらまだ何とかなったのに」



・・・振り返ると、私もそう思う。いや、あの時はつい舞い上がってしまっていて・・・反省反省。



「・・・うーん、でもちょっと疑問なんですけど」

「なに、ルキノ?」

「それでシャーリーさんって、なぎ君のこと特になんとも思ってないんですか? だって、普通にお泊りとかも出来るし、オールでカラオケにも行けるし」



ルキノにそう言われて・・・少し考える。うーん、特にないなぁ。なんかこう、やっぱり八神部隊長の感覚に割り合い近いのかも。八神部隊長もそういうの出来るけど、異性的なアレコレは全く無いって言ってたし。



「残念ながら全く無いなぁ。・・・私はそれでいいと思ってるけどね」

「そうなんですか?」

「うん。きっとね、私や八神部隊長はなぎ君とは男女の関係どうこうにはなれないんだよ。でも、その分ずーっと友達で居られる。性別どうこうは抜きにした、大事な友達にね。
私思うんだ。そういう関係で居られる異性って、実は好きになったり・・・付き合ったり、そういう繋がりを持つ相手よりずっと少なくて、ずっと出会える機会に恵まれないんじゃないかって。だからね、私はこれでいいの」










・・・私、シャリオ・フィニーノ。現在18歳。ポテチを食べながら・・・少し思う。





私は割り合い友達作りやコミュ作りというのに、苦労した経験が無い。だけど、なぎ君に関してだけは違った。なので、そういう意味合いでもなぎ君はちょこっと特別。特別で・・・大事な友達。





だから、今嬉しく思っている。その友達が・・・ちょこっとだけ、私の目から見ても危うくて居なくなっちゃいそうな感じのあった友達が少しずつ変わって、大好きな人との時間を刻み始めているのを、とても嬉しく思っている。それは本当。





そしてさらに思う。・・・私も、もうちょい頑張らないとダメなんじゃないかと。行き遅れの心配なんておかしいけど、やっぱりフェイトさんや八神部隊長やスバルなんかを見ると、どうしても置いていかれた感じがして不安になる。





とりあえず、なぎ君が帰ってきたら少し相談することにする。私の周りにはいい男が居ないのだけどどうすればいいのかと。





え、グリフィスにヴァイス陸曹? あぁ、ダメダメ。グリフィスはルキノがお熱っぽいし、ヴァイス陸曹はアルトが入れ込んでるし。それ見ちゃったら、私が手を出すなんて出来ないよ。なにより、私の好みじゃないし。




















(本当に続く)




















あとがき



古鉄≪さて、第一回目でさっそく規制音が入ってしまった部分があること、平にご容赦ください。だって、載せたらブッチギリでアウトだったんですよ。とにかく、ようやく始まったセカンドシーズン一回目、皆さんどうだったでしょうか。
本日のあとがきのお相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

恭文「蒼凪恭文です。・・・でさ、なんかいきなりすずかさんとの関係決着でパンチ利かせたね」

古鉄≪初回のインパクトが必要かと思いまして。それで、そこを含めても比較的今回は静かな立ち上がりでしたが・・・どうでした?≫

恭文「なんかさ・・・ようやく始まったって感じ? しゅごキャラクロスとかもやってるけど、それでも本編としては半年近く間空いてたしさ。そりゃあ気合いも入るさ」





(そう、半年近く空いていた。そして・・・もうすぐとまとが開始されて1年が経とうとしてたりする)





古鉄≪某サイトにこの話の第1話を投稿したのが去年の7月8日ですしね、その前に自分で書き溜めてたのとかを入れるともう私達というキャラクターが生まれて一年以上経つんですけど、それでも7月8日が一応の誕生日ですよ≫

恭文「本当はその日に第1回目やるってのも考えてたらしいんだけどね。しゅごキャラクロスが続いてたのって、それが大きいのですよ。ただ・・・やっぱりあんまりお待たせするのも違うかなと。
というわけで、ここからまた仕切りなおしというか、再スタートですよ。でもさ・・・真面目になのははどうするの?」





(青い古き鉄、やっぱりそこが気になるらしい。いや、もうユーノに期待するしかないけど)





古鉄≪そうなんですよね、そこに期待するしかないんですよね。・・・なぜあの人はあんなに結婚させ辛いんでしょ≫

恭文「はやてやフェイトは結構楽と言えば楽なのにね。うーん、謎ですよ」

古鉄≪美由希さんだって意外とそういうのありそうな人なんですけどね。ただ描写されていないだけで≫

恭文「うんうん。でも、なのはは・・・だめと。クロノさんはなのはの中の人曰く『手近な所で済ませた』らしいし」

古鉄≪色々おかしいですよね。やっぱりあれですかね、小さい頃から過ごしてるとか、StSの話でフラグ立てるとかしないと結婚出来ないんですよ≫





(青いうさぎ、ため息をつきつつそう話す)





古鉄≪・・・あれ、あなた・・・立ててませんでしたっけ?≫

恭文「立ててるわけないじゃないのさ。だって、僕JS事件中は六課に居ないのよ?」

古鉄≪それもそうですよね。・・・さて、そんなどうしようもないやるせなさを抱えつつ次回です。次回はいよいよ・・・本編中では初めての海外ロケになりますっ!!≫

恭文「楽しみだよねー! というわけで、本日はここまでっ!!
お相手蒼凪恭文と」

古鉄≪古き鉄・アルトアイゼンでしたっ! それでは・・・またっ!!≫










(二人、なんかなにかが引っかかってるような顔を見せつつ・・・カメラ・フェードアウト。
本日のED:abingdon boys school『JAP』)




















フェイト「・・・あのね、ヤスフミ」

恭文「なに?」

フェイト「リイン、本当に恭文のこと・・・好きなんだよ。だから、側に居たいって思ってるの」

恭文「・・・うん」

フェイト「・・・三人で・・・なんて、ちょっと変なのかも知れないけど、それでも・・・大丈夫だよ」

恭文「・・・・・・待って待って、なんでいきなりそんな話っ!?」

フェイト「だって、やっぱり『ヤスフミ×私+リイン』なのかなって」

恭文「お願いだからその図式を前面に押し出すのはやめてー!!」










(おしまい)







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