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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
act.30 『協力』:おまけ


新暦七十五年・十月中旬――JS事件から一か月後。

世界は混乱から立ち直りながらも、日常を進む。


≪昨日の女性はどうしたんですか≫

「午前○時の鐘と同時に別れた」


そんなある日の深夜――二つに輝く月を見上げる。

遠くから汽笛の音が響く中、港湾区の貨物線路を、ゆっくり歩く。


≪素敵な女性だったのに≫

「だって生活変えてくれって言うんだもの」

≪男を変えたがるものですよ、女は≫

「……今更変えられるわけがないのに」

≪えぇ≫


懐からFN Five-seveNを取り出し、マガジンもチェック。弾は問題ないので、再装填。


「こんな面白いこと」

≪やめられませんよね≫


そうして道なりに進み、あるビルの一角へ。

階段をゆっくり歩き、ノックをした上で。


「はいはーい……つーか遅ぇよ、もっと早く」


FN Five-seveNを構え、そのまま弾丸連射――。

駆け寄ってきた犯罪者もろとも、ドアを蜂の巣にする。


≪「It's――Show Time!」≫




魔法少女リリカルなのはStrikerS 外伝

とある魔導師と機動六課の日常 Ver2016

第1話 『あぶない魔導師/予告編』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


――事の起こりは、JS事件が終わって二週間……いろいろやらかした、リンディ・ハラオウンから呼び出されたこと。

まさかあれだけやらかしておいて、僕を遠慮なく呼び出すとは思わなかった。


「――というわけで、嘱託魔導師・蒼凪恭文君、あなたに本局遺失物捜索課【機動六課】への出向を命じます」

「断る」

「これはどうしても必要なことなの。お互い過去のことは水に流して、またやり直しましょう?
それで改めて、ここから家族になっていくの。私達を信頼して、大人になって」

「その前に土下座しろよ」


なので踵を返して、部屋から退室。すると僕の手を掴もうとするので、スウェーで回避。そのままドアをくぐると。


「待ちなさい! お願いだから話を」


リンディ・ハラオウンという愚物は、閉じた自動ドアに衝突してご臨終。……第一部、完!


「話を……聞きなさい!」


ち、まだ生きてやがるか。やっぱ額を撃ち抜かないと駄目だな。


「お願い、今すぐに受けて! というかあなた、ニュースを見てないの!? ミッド地上でまたテロが起こったのよ!」

「何、こんな朝っぱらから呼びつけておいて、常識を問うの?」

「あなたが指定したんでしょ!? いいからこれを見て!」


リンディさんが朝の五時から張り叫ぶ中、モニターが展開。


するとクラナガン近くの道路を闊歩する……二メートルほどの装甲車が出てきた。

それも大砲や機関銃を携えたもので、その周囲を局の警邏車両がガードしている。まるでパレードのようだった。


「……何これ」

「装甲車よ!」

「砲撃でぶっ飛ばせばいいでしょ」

「駄目なのよ! 本局の戦力も、この間の事件で疲弊していて……それで機動六課におはちが回ったんだけど」

「いや、だから砲撃で」

「装甲車の周囲にAMFが張られていて、魔法が通用しないの!」


あぁあぁ、そういうことで……なので背を向け歩き出すと。


「待ちなさい! どこへ行くの!」


突撃を影際すれすれで回避すると、リンディさんは自ら激突。顔面からぶつかり、そのまま引っ繰り返った。


「リンディさん、依頼を受けてもいいよ」

「ほ、本当に!?」

「ただし依頼料は十倍」


笑顔で告げると、反比例するかのように……リンディさんは顔を真っ青にした。


「あらゆる活動は僕の好きにさせてもらう」

「え、待って……あなた、何を」

「僕は飽くまでも六課の権限を利用するだけで、奴らの指揮系統には加わらない。
それが一欠片でも破られた場合、遠慮なく見捨ててやるから」

「何を言ってるの! そんな条件では受けられないわ! ちゃんと私やはやてさん達の指示を」

≪なんで裏切り者であるあなたの指示を、私達が受けるんですか≫

「だから、待って! それは誤解よ! 事件はもう終わった……私はあなたを裏切ってなどいないわ! ここにいるのがその証拠よ!」

「じゃあ地獄へ落ちろ」


そうしてお手上げポーズで置いていく。


「待ちなさい! どうしてなの……どうして信じてくれないの! 私は、六課は正しかったのよ! あなたは間違っていたの!」


なおリンディさんが何か叫んでいるけど、決して気にしない.

……既に気にするべき権利など、あの女にはないのだから。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


最強の敵はゆりかごでもなければ、戦闘機人でもない……装甲車や!

放たれた砲弾によって、再び吹き飛ぶ警邏車両。

それを防ぐこともできず、うちらは影に隠れるばかりやった。


……そんなとき、奴は現れた。


『あーあー、そこの装甲車……今すぐ止まれ。止まらないと撃墜する』

「あれ、この声……!」


慌てて障壁から顔を出し、装甲車の後ろから迫るティアナ(車)を見やる。あれは、まさか……!


「恭文君!?」

「金の匂いを嗅ぎつけてきたか!」

『そう、じゃあ死ね』

「おいこら待て! 返事してないやろ!」

「駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 刺激しないで! 刺激しちゃ駄目ぇぇぇぇぇぇぇ!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


助手席の分身に、NTW-20を構えさせ……タイヤを狙撃。

その衝撃で車体が揺れるものの、上手く制御。


しかし通常の装甲車すら砕く弾丸なのに、タイヤは健在。

向こうの車体も揺らぐことは一切なく、平然と走り続けていた。


「……あら?」

≪……傷一つ……は入っていますね。というかあれは≫


そこで上部ハッチから、軍服姿の黒人男性が登場。

筋肉むきむきマッチョマンは機関銃を手に取り。


「ヒャハハァァァァァァァァ!」


こちらに弾丸をばら撒いてくる。咄嗟に右へ交わしつつ、分身が弾丸を再装填。

その上で追撃する機関銃……その射手を狙い、もう一発発射。

すると今度は、装甲車の周囲にエネルギーフィールドが展開。


20mmx82弾を受け止め、せめぎ合い……結果数秒後に弾いてしまう。


「ちょ、マジかい!」

『これは予想外ですねぇ』

「なら」


車両の先を取り……放たれる射撃も、頭を伏せつつ回避。

その上でグレネードを取り出し、窓から放り投げる。

あとは最高速で離脱――。


そして五秒後……車両がグレネードの真上を通過したところで、爆発。

これで少しはダメージが……と思ったら、装甲車は平然と場に出てきた。


「……アルト」

≪はい≫

「逃げよう」

≪そうですね≫


というわけで、最高速で離脱! すたこらっさっさと、公僕のみなさまにお任せー!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「あれ、ルーイカット装甲車を改造したものだね」

「ルーイカット?」

「地球――南アフリカ性の八輪式装甲車。実戦投入は十五年ほど前だけど、その七年後には主砲をGT7 105mm対戦車砲に換装している」

≪ただそのままではありませんね。全体を液体装甲に類似するものと取り替えていますし、エネルギーフィールドまで≫


コンソールを叩き、ウィキペディアのデータを見せておく。それになのは達も、それに豆柴達も食いついた。


「恭文さん、その液体装甲というのは」

「最新型の装甲だよ。着弾時に分子変化を起こし、その強度を劇的に跳ね上げる」

「だから物質操作魔法も通用しなかったのか……! えっと」


エリオは前のめりになりながら、文面を指差ししつつチェック。


「兵装は主砲と、MG4 7.62mm機関銃二挺」

「前面と上でドンパチしてたやつね。それと81mmスモークディスチャージャー。
……あの機関銃も、AMFを発生させる弾丸だったわ。完全に魔導師を殺しにきてる」

「問題は航続距離だね。聖地速度は百二十キロで、その行動距離は……約千キロ」

「千キロやて! ちょ、ちょお待って……素のスペックでそれってことは」

「改修されているであろう今なら、それ以上。つまり燃料・弾薬切れは期待できない」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


車両の解析が進む中、はやてが実にすばらしいニュースを持ってきた。

本当にすばらしいはずだよ。だって……本人、顔が真っ青だし。


「……犯人から、新しい要求がきたで」

「何」

「午後三時までに、管理局が捕縛した犯罪者達の全解放……!」

『はぁ!?』

「それが成されん場合、あの装甲車で街を破壊すると言ってきた!」


わーお、金じゃないと来たもんだ。しかもあれについては、今のところ僕も手の打ちようがない。

もちろん機動六課も……だからなのはも、ティアナ達も顔が真っ青。


≪さて……どう読みます?≫

「金が目的じゃないのは予想していたけど、最悪のコースだ」

「あれもスカリエッティ達と同じね。表現したい思想があって、そのために……ねぇ、装甲車は複数あると思う?」

「最低でも主要都市には仕掛けられているかな。中央本部の事件以上にお笑いぐさだよ?
これだけ戦力も整った組織が、魔改造した装甲車一つ止められないんだから」


ヴェートルの事件、そしてJS事件で露呈したように、管理局の問題点がまた浮き彫りとなっている。

魔法戦力に一極化しすぎて、その保険が存在しないのよ。だから簡単に蹂躙される。


「それならもう遅いでしょ。……爆弾も駄目。アンタの対物ライフルも駄目。エネルギーブレードでもタイヤすら潰せない」

「乗務員が出てきても、今度はエネルギーフィールドが邪魔をする。
AMFがなかったとしても、転送阻害のジャミングまで仕掛けている」


お昼のハンバーガーを食べつつ、時計を確認。えっと……今が午後一時だから、残り二時間か。


「念入りなことだよ」

「ヤスフミ、呑気にしてる場合じゃないよ! あの……アルトアイゼンのシステムを、私達に譲ってほしいんだ。
そうすればAMFでも魔法が使えるし、それで私達も戦えれば」

「アホか! 二時間で形にするなんて無理やで!」

≪それ以前に、GPOとの約束がありますから≫

「駄目だよ。あのね、もう一度私達のことも、母さんのことも、ちゃんと信じてほしいんだ。
そうして改めて、家族になっていくの。だからね? 母さんが言う大人になって」

「それでお前みたいに、アジトに閉じ込められる役立たずになれと? 馬鹿馬鹿しい」


バーガーを食べきり、手をサッと拭いて立ち上がる。


「そんな奴の家族だなんて、僕はごめんだわ。アルト、行くよ」

≪えぇ≫

「ヤスフミ、待って!」

「そうだぞ馬鹿弟子! 行くってどこに」

「はやて、六課隊舎ってまだ修復中だよね」

「うん。修復作業も来週頭から……え、なんで確認するの」

「つまり、装甲車が一台爆発したとしても、誰も困らない」


市街地で暴れさせるのも、破壊するのも危険。なので暗に提案すると、はやてと師匠達があんぐり。


「たとえ、今度こそ更地になったとしても」

「……アンタ、まさか!」

「他にないでしょ。金が目的じゃないとすると、最悪自爆する可能性も」

「それがあったか……! 分かった、そっちはうちで調整する! でも、何か手があるんやな!」

「二時間あればね」

「ほなエリオ」


そこでちびっ子その一がさっと出てくるけど。


「あ、ごめん。アンタは駄目や」


はやてが即座に訂正して、その勢いのままずっこける。……仕方ないので、起こしてあげよう。


「ねぇエリオ、再就職先は探すべきだと思うな」

「あと半年の、我慢ですから……!」

「今のは悪かったよ! うちの判断ミスやから! あとエリオ、今の発言については後でお話や!
……さすがにあれに接近戦もないし、やっぱティアナかキャロかな」

「ならそっちの」


えっと……何だっけ、名前……つい声の方が印象的で。


「中原麻衣さんボイスの子がいいな」

「「「「誰!?」」」」

「それがティアナや。そっかそっか……アンタ、中原麻衣さんも好きやったなぁ」

「「「「しかも通じている!?」」」」

「舞-HiMEもよかったしねー。さぁ行くよ、マイマイ!」

「変なあだ名を付けるな馬鹿! ティアナ……ティアナよ! ティアナ・ランスター!」

≪楽しくなりそうですねー≫


携帯を取り出し、ツテに連絡――二時間はあるから、なんとかなるでしょ。


「どれだけ壊れようと、心の痛まない場所があるって……すばらしいねぇ」

≪さて、楽しくなってきましたね≫

「ほんとほんと」

「あ、あの……待って! ヤスフミ、駄目だよ! 六課はこれから、ヤスフミにとっても家になるんだから! そんなことしちゃ」


戯言を抜かすフェイトは置き去りにし、早々に連絡。


「あ、もしもし……副会長? 僕だけど」

『……皆まで言うな。例の装甲車だろ』

「そうそう。悪いんだけどさぁ、局とは別口に声明の音声認識、やってほしいのよ。犯人にアテがあるから」

『マジかよ!』

「偶然ってあるんだねー」


……普通にやっても無理だし、いろいろ準備しないと。

まさか最強の敵が装甲車だとは、最高評議会も予想していまい。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


そしてついに出会う、あぶない魔導師二人!


『GPOが出るまでもないよ! 嘱託魔導師たる僕が始末してあげる!』

『てめぇ……ぶっ殺してやるぅ!』

「ティアナ、牽制・フォロー・囮とガード、ついでに主砲もよろしく!」

「全部じゃないのよ、この馬鹿!」


ティアナは喚きながらも、助手席から身を乗り出し、M16を連射。

牽制は当然障壁で防がれるけど、挑発目的だから問題なし。


「アルトー!」

≪分かってますよ≫

≪The song today is ”長く熱い夜”≫


そうしてかかる音楽――一気に展開する音響サーチ。

それを元に銃座の動き、弾丸の射線を読み取り、ハンドルを動かす。

加減速もしっかり交えつつ、奴の射撃をすれすれで、しかし的確に回避。


『下手クソだねー。あんな射撃で当たるわけないっつーの!』

『まだまだぁ!』


そうして飛び出す主砲――ティアナが引っ込んだのを見計らって、速度を上げる。

奴との距離を十分に離し、AMFの完全キャンセル範囲から離れる。


『そんなんで逃げられるかぁ!』


そして、主砲が発射――。

その砲弾を空間接続で飲み込み、奴にお返しする。

なお空間接続の範囲は思いっきり広げ、砲弾自体のAMFに干渉しないよう設定済み。


結果奴は自らの砲撃をまともに食らい、爆発に包まれる。

これでやられてくれると、問題ないんだけど……そうはいかない。

奴は爆炎を払い、未だ無傷で現れてくる。


「わーお、自分の主砲を食らっても無事か」

≪ただ最大火力については、使いにくいと思うでしょ。それだけで万々歳ですよ≫

「アンタ、まともじゃないでしょ! なに楽しんでるのよ!」

「危険と戦いは楽しんでいけって」


鋭く右にカーブし、隊舎までの道のりへと入る。あと六百メートル……隊舎内に入れば楽勝だ。


「教わらなかった?」

「教わってないわよ!」

「そりゃあいけない。なのはは一体何をしているのか」

「アンタよりまともなせいよ! で、どうするのよ! まともじゃないのはアイツらも同じだけど!」

「大丈夫、我に秘策あり……しっかり捕まって!」

「捕まってって、まさか」


術式発動――ティアナ(車)の相対位置を固定。

一つのオブジェクトとして安定させた上で、加速術式発動。


「突っ込むよ!」

「やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


砲弾としてそのまま突撃し、固く閉ざされた正門を突き破る。

更に奴から、二発目の砲撃発射。

それは僕達の真後ろに着弾し、爆発。


そんな炎上を背後にしながら、機動六課隊舎へと飛び込んだ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文「――という、西部警察第一話みたいなプロットはどうだろう」

ティアナ「ミッドはどれだけ末期なのよ!」

古鉄≪いいじゃないですか。私達が楽しく暴れられば≫

恭文「そうだよ。ツンデレガンナーとしてキャラも立てていけるよ?」

ティアナ「うるさい馬鹿!」(ごふ!)

恭文「そげぶ!?」


(本当におしまい)





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あきゅろす。
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