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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第43話 『二人の世界/ライダー大戦』


突如、前振りもなく現れた侵略者。その結果地上部隊の人間は、ただ蹂躙(じゅうりん)されるしかなかった。

本局との連絡は取れず、各地上部隊も襲撃され、クラナガン方面からは火の手が上がり、黒煙が渦巻く。

更に遠目からでも見える中央本部……そこは、つい先ほどへし折れた。当然我々は現れた敵に対抗しようとした。


だが何もできない。魔法が……誇るべき矛が、突如展開したAMFにより奪われた。侵略者の本体は、廃棄都市部から堂々と進軍。

近づいた途端にAMFが発動し、航空部隊はそれだけで全滅。当然だ、高高度でいきなり魔法が使えなくなったら、あとは落下するしかない。

我々は陸上部隊だからまだ平気だった。いや、より悪いくじを引いたのかもしれない。


迫る怪人達に何もできず、突如として仲間達がはね飛ばされ、その体を引きちぎられる。

無力感が足に絡みつき、守ってきた世界が、その足場ごと崩れる恐怖に苛(さいな)まれ続ける。

そして中央にいた青年は、我々を見て笑う。笑って、笑って……死にたく、ない。


そう叫んで、逃げ出すことは簡単だった。だがどうやって生き延びる。既に世界は……だがそこで、不思議なことが起こった。


「なんだ、あれは……仮面、ライダー!? 嘘だろ!」

『馬鹿を言え! 子ども番組のキャラクターがいるわけないだろう!』

「でも戦っているんです! あの怪人達と」


本体から、真正面に飛び込んだライダー達。やけにスタイリッシュな1号、2号、V3は敵を次々と殴り飛ばす。


「ライドルスティック! はぁ!」


Xはライドルスティックで鋭く刺突。


「ギギィィィィィ!」


アマゾンは敵を斬りつけ。


「マシンガンアーム!」


ライダーマンはマシンガンアームを乱射。


「エレクトロファイヤー!」


ストロンガーは地面に手を叩(たた)きつけ、稲妻を放射。一気に数十人の怪人を焼き払い。


「ライダーブレイク!」


スカイライダーはバイク【スカイターボ】で一団を突き抜け、派手にひき逃げ……今だったら絶対放送できないだろ、あれ。


「冷熱ハンド!」


はね飛ばされた敵達、それを受け止め倒れた他の奴らも含めて、スーパー1が冷凍ガスを放射。

瞬間凍結した直後に、超高温の火炎で追撃。……子どもの頃に見た光景が、そのままだった。


「十時手裏剣!」


ZXは両肘の手裏剣を無数に取り出し、連続投てき。それで別の集団を足止めしたところで。


「「キングストーンフラッシュ!」」


BLACKとBLACK RXが、腰前面に拳を構え、ベルトから赤い光を放射。なんだよ、これ……!

ヒーローに憧れた。だから、この仕事を選んだ。でも忘れていた……ヒーローなんて、いないと知ったから。

ヒーローになんて、誰もなれない。正義のために戦っても、飯は食えない。日々の雑務をこなさなきゃ、仕事だってクビになる。


ヒーローは絵空事。子ども達が夢という遊びを楽しむための、分かりやすい題材。

でも勘違いだった。本当にいたんだ……ヒーローは、本当にいたんだ!




世界の破壊者・ディケイド――幾つもの世界を巡り、その先に何を見る。

『とまとシリーズ』×『仮面ライダーディケイド』 クロス小説

とある魔導師と古き鉄と破壊者の旅路

第43話 『二人の世界/ライダー大戦』




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 海東とあり得ない僕、本当にどこから連れてきたのよ! あれ、待って。BLACK……それにRX?

……だったらあの手が使えると思い、ゼクトクナイガン・アックスモードでワームやファンガイア、イマジンを払いつつ二人に接近。


「BLACK! RX!」

「「はぁ!」」


ダブルてつをは揃(そろ)って右ストレート。それでデスイマジンをアッサリ吹き飛ばし、ユウスケに絡んでいたバットファンガイアへぶつけ、なぎ倒す。

うわぁ、どっちもラスボス級のはずなのに! 更に揃(そろ)って一旦しゃがみ、一気に飛び上がり。


「ライダー」

「RX」

「「パンチ!」」


まずは赤光で輝くパンチ。それは二体のガードを【腕ごと】吹き飛ばし。


「ライダー」

「RX」

「「キック!」」


続けてBLACKは片足で、RXは両足でキック。ラスボス達はあっという間に粉みじんとなり、そのまま爆散。

周囲にいた戦闘員数十人も、その爆発に巻き込まれ消し炭となる。す、すげぇ……!


≪……もうあの人達だけでいいんじゃ≫

「同感……でもそのためには!」


あるものを取り出しながら、それで袈裟・逆袈裟・刺突・右薙・唐竹(からたけ)と連撃。立ちはだかる怪人、戦闘員達を切り払い、二人にようやく接近。


「君は」

「ダークカブト、どうしたんだ……ふん!」


RX、そう言いながら裏拳とかやめて。ドラゴンオルフェノクが、粉々になったんだけど……それもラスボス級。


「これを!」


そうして僕が二人に差し出したのは、サタンサーベル。……そう、一度この時間軸へきたとき、シャドームーンから奪ったもの。

僕では【滅茶苦茶(めちゃくちゃ)凄(すご)い切れ味の魔剣】止まりだけど、二人ならまた違う意味を持つ。


「これは……どうして君が!」

「奴らの幹部だった、シャドームーンから奪いました! 使ってください!」

「BLACK、これは君が持つんだ!」

「分かった、RX!」


BLACKがサタンサーベルを持ち、原作最終局面が再現。別世界のものだし、合うかどうか不安だったけど。


「はぁ!」


その一振りで懸念が消し飛ぶ。赤い刃は閃光(せんこう)を放ち、迫っていた混合怪人軍団、百体をあっという間に切り刻む。

す、すげー。これが本領……あぁそうか。シャドームーンとやり合ったときは、宇宙の眼が置かれている部屋だったからなぁ。

本気の火力は出していなかったんだね。そりゃあ八神の僕と瞬殺できるわ。


≪そうそう、その調子でお願いします≫

「もっと来ますからねー! どっさり来ますからねー!」

「どっさり?」

「いえ、ちょっと嫌がらせを」


そう、嫌がらせを施した。確かにダークディケイドの能力は驚異的。多方面に展開して暴れられると、さすがに僕も弱い。

でもね……アイツの能力がそこまで完璧じゃないのは、既に解析済みなんだよ。門矢士、おのれのミスはただ一つ。

僕を前に、切り札を見せたことだ。それも一度この時間軸にきて、【宇宙の眼】に接触している僕にだ。


教えてあげるよ。魔導師とは科学者――リナ・インバースに倣った、その基本を。


「……ボルティックシューター!」


え、ボルティック……慌てて左側を見ると、そこには黒地にオレンジラインを入れた、メカニカルライダーがいた。

それは右手の光線銃【ボルティックシューター】を構え、光子を連射。並み居る怪人達ですら、容赦なく蜂の巣にする。


「ロボライダー!?」

「何だと……だが俺は、RXはここに!」


そう、ロボライダーとRXは、実に密接な関係がある。そりゃあRX本人も驚くわ。いや、待てよ……まさか海東とあり得ない僕は!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


くくくくく……きっとヘタレな僕やら、何かまた違う世界の僕やらは驚いているだろう。

そう! 剣崎さんを徹底的にこき使い、光太郎さんを四人揃(そろ)えてみましたー♪ というか、一人は僕の世界にいた光太郎さん!

これでもう負ける気がしない。実家で見た資料では、『RXの戦力は無限大』とか書かれていたし。


楽しくなりながらも、ウィザードに変身した僕は……左手でケープを掴(つか)み、広げながら一回転。

瞬間的に数メートルに伸びたケープ、それが戦闘員達をなぎ払い、眼前にいたカメバズーカも巻き添え。

いや、奴は防御した上で後ずさっただけ。なので数度前転しながら接近。そのまま軽く飛び上がり、きりもみ回転しながら右回し蹴り。


唐竹(からたけ)に打ち込まれたそれでガードを崩し、左ラリアットを胴体部へ。呻(うめ)いたところで右ミドルキック。

奴の巨体を下がらせ、今度は六時方向へバク転。そのままサマーソルトキックで、迫っていたロブスターオルフェノクの頭を蹴り抜く。

着地した上でウィザードマグナムを取り出し、一回転。カメバズーカ、ロブスターオルフェノク、戦闘員達十数人を打ち抜き、改めて下がってもらう。


「Liquid!」


更に魔法で液状化。倒れ行く戦闘員達を尻目に、こちらにバズーカを向けてきたカメバズーカ。

背中に背負った砲塔から、大型の砲弾が三連社。更にロブスターオルフェノクも、僕の背中に向けて刺突。

それで後押しのつもりだったのだろう。でも奴は突きだしたレイピアごと、液状化した僕の体を突き抜ける。


そのまま射線上へ入り、僕の盾となって砲弾を食らう。そうして砲弾ごと爆散するロブスターオルフェノク。

それは気にせず、液状化したままカメバズーカに絡みつき、実体化。


「何ぃ……ぶべ!」


そのまま左腕で首をへし折り、絶命。そのまま巨体を放り投げ、手近な戦闘員達にパス。

……結果大爆発が生まれ、周囲にいたオルフェノク達も煽(あお)りを受けた。はい、ではそこでー。


「Flame!」


追加の爆炎を発生。指を鳴らしながら一回転すると、僕の周囲で次々と生まれる爆炎。

おぉ、よかったー。廃虚だから電気の類いは分からないけど、『火種』なら至る所にあるっぽい。

……でも廃虚なんだよね。それで火種? この世界、もしかしていわゆる世紀末なのでは。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


≪あの人達、別のRX世界からも連れてきましたね。ということは≫

「何ということをしてくれたのでしょう。……いや、よくやった! むしろ正解だ!」


だってマジで強いんだもの、この人達! 僕が渡したサタンサーベル片手に、BLACKも突撃。

飛び込みながら逆袈裟・右薙・逆袈裟・唐竹(からたけ)・左薙・逆袈裟と、たやすく怪人達を切り払う。

またラスボス級のがいたけど、サタンサーベルの前では溶けかけのバター同然。更にRXも無双。


「リボルケイン!」


変身ベルト【サンライザー】から現れた、赤いダイナモを備えたグリップ、それを引き抜き、一メートルほどの光の棒を出現させる。

それを持って、走り込みながら袈裟・刺突・逆袈裟・四時方向へ左薙・十一時方向へ逆袈裟と大暴れ。

ちなみにリボルケイン、誤解されがちだけど剣じゃあない。あれは光の杖(つえ)……そう、杖(つえ)なの。まぁライトセーバーっぽいけど。


そこで駆け寄り、光弾を放つ怪人達。しかし走る緑の稲妻を、BLACKとRXはそれぞれの得物で防御。

その稲妻を刃に巻き取り、回転しながら解放。赤と白の輝きが混じり合いながら、怪人達に迫る。

自らの力、更にサタンサーベルとリボルケインの力も上乗せされ、それら敵が切り刻まれていく。


おぉ、すげー! やっぱモノホンは違う! よし、僕もこれ、魔法相手にできるよう頑張ろう!


≪やっぱり、もうあの人達だけでいいんじゃ≫

「同感」


スーパー大ショッカーは愚かだ。世界に仮面ライダーが……いいや、てつをがいる限り、悪の栄えた試しはない。そう、てつをマジヤバい。


「バイオ! アタァック!」

≪「え?」≫


やっぱりきたー! 青いボディに赤い瞳、鍔(つば)のない両刃剣【バイオブレード】を携え、僕達を飛び越えるニューフェイス。

その名はバイオライダー……ロボライダーと同じく、RXの一形態。映画じゃ……映画みたいに、てつを達が共演している!

そしてバイオライダーは実に厄介。なぜなら……僕達を飛び越えながら、奴はゲル化しながら突撃。


それは戦闘員達の放った弾丸も、怪人達の斬撃や光線もたやすくすり抜け、集団に向かって激しい体当たり。

そして倒れた十数人は、ボルティックシューターであっさり打ち抜かれる。何という、恐ろしい連係プレイ……!


「バイオライダーまでいるのか!」



右側に忍び寄っていたワームの頭を、アックスで右薙一閃。口の辺りから真っ二つにして沈め、脇に蹴り飛ばして爆発させる。

やっぱこの人達だけでいいや。だってさ、こうして話している間に……一体何百人くらい倒された? もう鬼に金棒だよ。

というかやべぇよやべぇよ。特にバイオライダーがやべぇよ。あれ、攻撃無効化だけじゃないんだよ。


ミクロ化して敵の内部に入り込み、内部から敵を切り刻めるし? 自ら未知のウィルスに対抗して、血清も作れる。

ノーリスク・ノーモーションで別フォームに変身できるってのも、かなりヤバい能力。

ミクロ化した怪人に心臓を突かれても、バイオライダーに瞬間変身して無効化とか……していたなぁ。


「ならば俺も!」


そしてRXも、光に包まれながらバイオライダーに変身……そう、このように! 前振りもなくだよ!


「俺は怒りの王子――RX!」


バイオライダーその二は両手をカマキリのように構え、混乱する敵達に威嚇。


「バイオ! ライダァ! ……行くぞ、バイオライダー!」

「おう! バイオライダー!」

≪あなた達、疑問を持ちましょうよ。ややこしいでしょ、分かりにくいでしょ≫

「「ダブルバイオ! アタァック!」」


そして二つのゲルが、追加された一団を襲撃……その邪魔はさせないよう、ボルティックシューターとサタンサーベルが閃(ひらめ)く。

……ライドブッカーで無双していたもやしも、少し止まってこっちを見てくる。

いや、そんな……『これでいいのかよ』って視線はやめてよ。この人達は、こういうノリだから。


でもロボライダーか。一ついいことを思いついて、ロボライダーにそっと近づく。


「ロボライダー! 一つ頼みがあるんだけど!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


デルタ……デルタかぁ。仮面ライダーに変身って、夢がかなったー! しかもこれ、リスクらしいリスクはないっぽいし!

というわけで僕こと蒼凪恭文、昔の刑事ドラマをいろいろ見てきました。銃撃戦がたっぷりあるやつよ。

……太陽に吠(ほ)えろ、西部警察、あぶない刑事、刑事貴族……そのため、軽快に駆け出しながらデルタムーバーを連射。


一人、また一人と怪人を撃ち抜き、侑斗さんもデネビックバスターで光弾連射。どんなボス怪人だろうと、今は雑魚同然に倒れていく。

それはなぜか? 再生怪人には弱体補正がかかるもの。その時点でコイツらに勝利はない!


「おいチビ! 何かどんどん」


適当なワームを引っ張り、盾にしてモールイマジンのドリルを防ぐ。その影から侑斗さんが前方に弾丸掃射。

攻撃してきたモールイマジンも含め、一気に十数体が撃ち倒される。


「増えてきてるぞ!」

「そりゃそうですよ。中央本部や市街、各部隊を襲ってきた怪人部隊、ここに集結させていますから」


呻(うめ)くワームを蹴飛ばし、追撃してきたライオンファンガイアへぶつけ、そのままデルタムーバーを連射。

二体とも蜂の巣にして、派手に爆発してもらう。


≪もっと言えば、他世界で暴れている奴らも緊急招集しています≫

「はぁ!?」

≪それ、危ないじゃないか!≫

「危ないですねー」


まぁ最終決戦だし、ちょうどよくはあるけど? ……僕は今回サポート役。でも、だからこそいろいろ任されている。

ダブトの僕も、スーパー大ショッカーと渡り合うため、いろいろ研究していたんだよ。

放浪している間に得た知識もあるし? その一部を預かって、今はチャンスを待っているところ。


そのためにはまず、士さん達がダークディケイドに取り付かないと……今やったら、容赦なく潰される。


「……君だな、フェイトルートの蒼凪恭文というのは」


そこでボルティックシューターを気軽に撃ちながら、近づいてくる影。おぉ……ロボライダー!

でもその言い方をするってことは、ダブトの僕からか! ふふふ、これは面白くなってきたぞー!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


BLACKとRXが揃(そろ)って、もう最強に見える……! てーかロボライダーにバイオライダー!?

まんまあの映画じゃないか! 傷ついた仲間達を起こし上げ、安全圏まで退避する中、襲い来る怪人達……だが。


「お、俺達……いて、いいのかなぁ」


そう呟(つぶや)きながら、クウガが間に入ってくる。そして紫のクウガとなるので。


「……これを!」


咄嗟(とっさ)に、共用デバイスを放り投げていた。それをキャッチすると、デバイスは一瞬でタイタンソードとなった。


「ありがとう! ここは俺達に任せて、みんな逃げて!」


そしてクウガは前に出て、文字通り盾となる。どれだけ殴られても分厚い鎧で受け止め、タイタンソードで袈裟・逆袈裟と連撃。

重く、鋭い刃で一体ずつ切り払う。それに対しアギトが並び立ち、達人を思わせる右ストレート。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……はぁ!」


敵の打撃を手刀で難なく払い、的確に急所を狙ったカウンター。左肘が突き刺さり、かと思うと右足が腹を突き破る。


「行くぞ、シンジ!」

「はい!」

『かうかうかうー!』

「……なんだ、この鳴き声」


二人の龍騎とナイトは、ソードベントで敵を的確に切り払う。更に可愛(かわい)い鳴き声のドラグレッダーが、空から火球を落とす。

敵の数は減らない。それでも勇猛果敢に立ち向かう中、赤い閃光(せんこう)が走る。あれは、仮面ライダーファイズ。

その隣にいるのはブレイドだ。ファイズはファイズエッジを、ブレイドはブレイラウザーで乱撃。


勇猛果敢に血路を開き、二人の響鬼が走る。そしてその体が炎の紅(あか)に染め上げられ。


「「灼熱(しゃくねつ)真紅の型ぁ!」」


炎を宿した音撃棒二振りで、袈裟・逆袈裟・右薙・唐竹(からたけ)・左薙・袈裟・刺突と連撃。

清めの音に打ち抜かれた怪人達は、糸もたやすく破裂してしまう。しかし、そんな響鬼を囲む、更なる敵達。

当然響鬼は構えるが……そこでガタックが、両肩のガタックバルカンを連射。更にカブトもゼクトクナイガン・ガンモードで援護射撃。


ガタックからはイオンビーム光弾が毎分五千発放たれ、響鬼以外の敵を尽く打(ぶ)ち抜く。

その間に響鬼は大きく跳躍。後退しながらガタック達と並び立つ。


「ありがとうございます」

「全く、世話の焼けるロートルと新人だ」

「悪い悪い。……だがそっちの子は、まぁ頑張って」

「いきなり慰めないでもらえます!? 行け、阿木さん!」


更にサソードが……死んだはずのサソードが突撃。狙いはガタックの攻撃を止めるため、襲うワーム達。

しかし成体・幼体と関係なく、サソードヤイバーで袈裟・逆袈裟・刺突・刺突・刺突の乱撃。鋭い一撃で尽く断ち切られる。

第二陣の幼体十七体が、揃(そろ)ってその体皮を赤く溶かし始める。成体になる……と思ったが、そこでボディに覆われたチューブが展開。


それは触手のように揺らめき、伸び、奴らを二グループに分けて縛り上げる。全員が成体となるものの、その直後に右薙一閃。

一グループがサソード本人に倒され、もう一グループは駆けつけたダークカブトのアックスで真っ二つにされる。

それでもしつこく迫るワーム達に対し、四人のライダーは背を預け合いながら。


「「キャストオフ」」

「「キャストオフ!」」


それぞれのゼクターを操作。二人のカブトとガタックはゼクターホーンを跳ね上げ、反対方向へ折りたたむ。

サソードはゼクターの尻尾を押し込み、胴体部と接続。その途端、分厚いアーマーの各部がせり出し。


≪≪≪≪CAST OFF≫≫≫≫


装甲パージ。クレイモアのようにはじけ飛ぶそれは、周囲にいた怪人達にぶつけられ、そのまま爆散。


≪CHANGE――BEETLE!≫

≪CHANGE――DARK BEETLE!≫

≪CHANGE――STAG BEETLE!≫

≪CHANGE――SCORPION!≫

「「クロックアップ」」

「「クロックアップ!」」


更にベルト横のスラップスイッチを叩(たた)き……サソードだけは、スライド式なので操作して、キャストオフ。


≪CLOCK UP≫


目にも留(と)まらぬ……いいや、目にも写らぬ超光速移動を開始。それによりまだまだ減らない怪人達が、一人、また一人と爆散。

何が起こったかも分からず、戸惑いながら放つ断末魔。しかしそれは、我々にとって希望そのものだった。


「行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


そして電王……デンガッシャーを乱暴に振るい、切るというよりは叩(たた)きつけながら進軍。

その横で二人のキバも、アクロバティックに振る舞い、蹴り技で相手をなぎ倒していく。


「モ、モモタロスさん、慎重に……出過ぎると大変ですから」

「うるせぇ! こういうのは勢いなんだよ! いいからいくぞ、わたあめコンビ!」

「「ワタル(渡)です!」」


仲間達と退避しながら……ヒーローなんていないと分かっていても、ついつい見ていた特撮知識を思い出しながら、その活躍に見入っていた。

本当に、嘘みたいだ。ライダー達が、我々を守るために戦っているなんて。


「凄(すご)い人数だ! 昭和(しょうわ)・平成(へいせい)……知らないライダーも多数いる! 隊長、我々はどうすれば!」

「中央本部との連絡は取れません! 奴らが公共放送で宣言した通り、もう管理局は……隊長ぉ!」

『……確認だ。仮面ライダーはどうしている』

「戦っています! 負傷し、逃げ遅れた他部隊員も助けつつ、逃がしつつ……怪人どもを次々と倒しています!」

『そいつらが本当に仮面ライダーかどうかはともかく、スーパー大ショッカーというテロ組織撲滅のため、協力しているのは事実』

『そうです! 彼らは我々を、この世界を守ってくれています!』


なのに我々は、何もできないのか。このままただ見ているだけ……そんなのは嫌だ! ヒーローはいたんだ!

どこからきたかも分からない、目的も分からない! だが今、戦っている……守るために、立ち上がっている!

戦いたい……俺も戦いたい! 仲間達も同じらしく、失っていた炎を瞳に、心に宿していた。


『なら我々もできる限り援護するぞ! ただ通常の指揮系統、及び組織のバックアップは期待できん!
あくまでも個人の意志による介入行動となる! 命が惜しいものは今すぐに避難しろ!
それでもやるという者だけ、私と一緒にこい! いいか、これは命令ではない――選択だ!』

『私はやりますよ! ていうか、この状況でどこへ避難しろって言うんですか!』

『俺もだ! ヒーローショーなら応援が付き物だろ! 俺達がやらなくて誰がやるってんだ! 隊長、地獄の果てまでお供します!』


……希望はある。無謀かもしれない、潰(つい)えるかもしれない。だが、ただ訳も分からぬまま、潰されることだけは避けられた。

それに感謝していると、クウガがこちらへとやってくる。紫から赤に戻った彼は。


「ありがとうございます!」


先ほど貸したデバイスを、俺に渡してきた。わざわざ、返しにきてくれたのか。そのまま捨て置かれても、仕方ないと思っていたのに。

そんな彼が送るサムズアップに、迷いなく……俺もサムズアップを送る。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


道はみんなが開いてくれた。あり得ない僕も回転しながら敵を蹴り倒し、ウィザードマグナムで撃ち倒す。

海東もそれに加わり、ライオトルーパーを大量召喚。もう数の上では負けていない勢いだった。

そんな突破口を突き抜け、退屈そうなダークディケイドをチェック。


「お前達、少し調子に乗りすぎてないか?」


その手がライドブッカーに触れ……これは、マズい! すぐに取り出したカードの絵柄をチェック。


「今、身のほどを教えてやる」

「もやし、カブト!」

「あぁ!」


隣を走るもやしは、カブトのFFRカードを取り出し、セット。さぁ、間に合え……!


≪≪FINAL FORM RIDE KA・KA・KA――KABUTO!≫≫


二つのカードが同時に効果発動。


「うぉ……!」

「……こうきたか」


……その結果天道とソウジさんが、乱戦の中変形。カブトゼクターとなった。

ソウジさんのゼクターは、近くにいたモモタロスさんやワタル達を狙い、突撃。でも横っ面から天道のゼクターが体当たり。

ソウジゼクターをはじき飛ばし、そのまま衝突を幾度となく繰り返していく。


なおその余波で怪人達もかなりのかずなぎ倒されるけど、ここはちょうど良いので問題なし。

その場にライダー達が二人いるなら、効果はそれぞれに割り当てか。ソウジさんには悪いけど、ちょっと頑張ってもらおう。


「クロックアップ!」

「……クロックアップ」

≪CLOCK UP≫

≪ATTACK RIDE――CLOCK UP≫


僕はクロックアップで加速。先を読んだダークディケイドも、全てが静止する世界へと突入した。

その瞬間だけは爆音も、戦いの喧噪(けんそう)も消え去り、舞い散る粉じんでさえその速度を落とす。

逆手持ちのゼクトクナイで左薙の切り抜け……防御されるのも構わず、振り返り連続的な刺突に対処。


十合もの乱撃を払いつつ、こちらも右薙・唐竹(からたけ)・一回転しながらの右薙・袈裟・逆袈裟と連撃。

でも通じない。こちらのアーマーは傷を増やしていくのに、奴は掠(かす)りもしない。まぁ予想はしていた。

そして二十合目……逆袈裟一閃がぶつかり合ったところで、右ミドルキックを食らい吹き飛ぶ。


地面を転がりながら、クロックアップは解除。世界はまた元の速度を取り戻す。

奴はまた新しいカードを装填……もう指示の必要はない。もやしはちゃんとカードを見ている。


≪FINAL FORM RIDE KU≫

≪FINAL FORM RIDE KU・KU・KU――KUUGA!≫


素早く、それもダークディケイドよりも速く装填されたカード。結果ゴウラムとなったクウガが、こちらへと迫る。

更にソウジさんと天道の変形も解除。さすがにファイナルフォームライドの乱舞は無理か。……これも実験した通り。

邪魔な怪人達をやっぱりなぎ払い、モモタロスさん達もすれすれで通り過ぎ……狙いは僕だった。


ダークディケイドは余裕しゃくしゃくで僕を見ているけど、すぐに空気が変わる。慌てて後ろへ飛びのくと、その胸アーマーをゴウラムが掠(かす)める。

衝撃で転がる中、ゼクトクナイガン・ガンモードで牽制(けんせい)射撃。そのまま転がり攻撃を回避されたところで、別のカードが装填される。


≪FINAL FORM RIDE BL・BL・BL――BLADE!≫


今度は剣崎さんか! ブレイドは急に動きを止め、こちらへと跳躍。背中からラウズカード格納部分が現れ、展開。

閉じた両足のつま先から、ブレイラウザーの刃も現れる。てーか、巨大なブレイラウザーかい!


『う、わ……なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

「蒼チビ!」

≪FINAL FORM RIDE FA・FA・FA――FAIZ!≫


しかしもやしも負けていない。タクミをファイズブラスターに変形させ、こっちへと跳ばしてくれる。

それをキャッチし、ダークディケイド目がけてトリガーを引く。


「タクミ、お願い!」

『はい!』

≪FINAL ATTACK RIDE BL・BL・BL――BLADE!≫

「とっとと死ねよ……!」

≪FINAL ATTACK RIDE FA・FA・FA――FAIZ!≫


放たれたのは、フォトンブラッドによる光子奔流。それは青い斬撃波が真正面から衝突。

二色の力は混じり合い、せめぎ合いながら爆発。それに煽(あお)られ、変身解除したタクミと派手に転がる。

それはダークディケイドも同じ。……でもそこでもやしが踏み込み、ライドブッカーで袈裟・右薙・刺突・右切上・唐竹(からたけ)の連撃。


斬撃は向こうのライドブッカーで防がれ、更に至近距離からガンモードの射撃を食らい、アッサリ吹き飛ぶ。

でもこの流れだ……! あとはライドブッカーを何とかできれば! そう思いながら踏み込み……すぐに左へ転がる。

こちらへ向けられたライドブッカーから、弾丸が放たれたので散開。タクミも無事に回避し、剣崎さんやユウスケ共々静かに構えた。


「なるほど。武器化には武器化ってわけか」

「似たようなもんをぶつければ、お前のお遊びも相殺できるだろ」

「こざかしい。……いつまで俺をいらつかせるんだよ、お前達は」

「安心していいよ、すぐに終わ」


そこで取り出したカードは、見覚えのないものだった。そこに描かれていたのは、G4と巨大なミサイルランチャー。

ファイナルフォームライドのカードじゃ、ない? くそ、そうきたか! 慌ててゼクトクナイガン・ガンモードで牽制(けんせい)射撃。


≪ATTACK RIDE――GIGANT≫


実体化するのは、多目的巡航ミサイル【ギガント】。それを右肩に担ぎ、ダークディケイドは大きく跳躍。

僕が放った弾丸は……ミサイル本体に直撃するはずだったそれは、虚空を突き抜けるのみ。


「それはどうかな」


ミサイルが放たれてしまう。慌てて右へ走り込みながら、迫るミサイルに向かって連続射撃。

全てを撃ち落とすものの、衝撃から爆発に煽(あお)られ、全員揃(そろ)って地面を滑る。


≪ATTACK RIDE――SIDE BASSHAR≫


更にどこからともなく走ってくる、マシンディケイダー。奴は僕達から下がりながら、変化するディケイダーに着地。

それはサイドカー付きの二輪車となり、更に変形。バイク部が手・胴体。

サイドカー【ニーラーシャトル】は分割して足となる。結果逆間接・二足歩行型の大型メカとして、僕達の前に現れた。


「げ……! サイドバッシャー!」

「蒼チビ、何だそりゃ!」


すぐに分かる……慌ててスラップスイッチを叩(たた)き。


「クロックアップ!」

≪CLOCK UP≫


タクミを引っ張り、急速退避。……右腕に相当するのは、四連装濃縮フォトンブラッドバルカン砲【フォトンバルカン】。

左腕は六連装ミサイル砲【エグザップバスター】。それらから一斉にミサイルとバルカンが一斉発射。

そのフルバーストにもやしも慌ててクロックアップ。ユウスケと剣崎さんをカバーするものの、それじゃあ遅い。


≪≪ATTACK RIDE――CLOCK UP≫≫


そう、ダークカブトのやつ……サイドバッシャーごと、クロックアップしてきやがった! それも一斉発射される直前に!

結果通常時と変わらない加速で、ミサイルとバルカン弾が迫ってくる。……僕の狙い通りに。

だから奴は、見えていなかっただろう。奴がクロックアップした直後、天道がこちらに走り込んでいたのは。


更にハイパーゼクターが僕の左手にあることを……未来が予知できても、対処できなければ意味はない。

そのまま左腰のスロットにセットし、ゼクターホーンを押し込み。


「ハイパーキャストオフ!」

≪HYPER CAST OFF≫


瞬間変身――僕達は、更に速い時間流へと飛び込んでいく。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


劣化コピーを復活させたのには驚きだが、その理由もよく分かった。……俺への対抗手段だ。

ディケイドの能力は、王の命令に等しい。奴らでは抵抗などできない。だが、俺より早く命令する者がいれば?

俺は紛(まぎ)れもない門矢士で、仮面ライダーディケイド。だが奴の復活までは想定していなくてなぁ。


忌ま忌ましいことに、命令権も等しいらしい。しかも劣化コピーはそれを知り、使いこなしている。

ディケイドシステムの本質――支配をだ。どうやら入れ知恵したらしいなぁ、蒼チビ達が。

だからこそ奴も悪魔。早々に引き離したかったんだが……あぁ、恐れていたよ。奴は必ず気づく。


システムの本質、そして劣化コピーこそが、俺への対抗手段になり得ると。だが、それで俺は止められない。

切り札が使えないなら、別のカードを使えばいい。偽物が使ったことのないカードを。

それは実に正解だった。奴らが慌てふためき、蜂の巣にされる様を楽しんでいたら……そこで、見えていた未来が切り替わる。


反射的にサイドバッシャーから飛び降りると、その両足や胴体部が粉々に切り裂かれる。

更に俺より速い何者かが迫り、【二人揃(そろ)って】拳を叩(たた)きつける。その衝撃で跳ばされながら、また地面を転がる。

その間に逃げ惑う奴らも、攻撃範囲外へと救出。揃(そろ)って安全圏に立ち、バッシャーとミサイル立ちの爆発におののくばかり。


クロックアップ……より速いだと。いや、ハイパークロックアップか。しかも二人となれば。


≪≪HYPER CLOCK OVER≫≫


そこで奴らの前に現れたのは、ハイパーカブトと、ハイパーダークカブトの二人。やっぱり、コイツらか。


「お前ら」

「世話が焼けるのはロートルと新人だけじゃないか。面倒なことだ」

「じゃあその面倒な能力、封じていかないとね」

「おいおい、まさか俺がハイパークロックアップもできないと思っているのか?」

「そんなはずないでしょ。察するにタイムベントもできるんじゃないの?」


ほう……! そこを見抜かれるとは思っていなかったので、つい嬉(うれ)しくなってしまう。

さすがは蒼チビと言ったところか。奴がスーパー大ショッカーに与(くみ)すれば、どれだけの利益が得られたか……実に残念だ。


「な……! タイムベントって、レンさんが探していたカードじゃないか!」

「鳴滝は言っていた、この世界での実験は終わりだと。……あのときに気づくべきだったよ。
龍騎の世界は、お前達に支配されていた。ライダーバトルを持ち込んだのもお前達」

≪その目的は、ディケイドシステムの更なる完成。龍騎のカードシステムと、ディケイドのそれはよく似ていますしね。
いえ、ベースがそれなんでしょ。ライドブッカーはバイザーで、同時にディケイドのデッキとも言える。ライダー達は契約モンスターですか≫

「その結果が、俺も知らないカード達か。あの世界で俺がミラーワールドに入れたのも」

「御名答」


なのでライドブッカーからタイムベントのカードを取り出し、勝ち誇るように見せつける。

もちろんカメンライド用に調整されたカードだ。蒼チビと蒼豆が見抜いた通り、龍騎のシステムはとても参考になった。

置き換えただけなんだよ。契約モンスターをライダーに、デッキをライドブッカーやディケイドライバーに。


あの『龍騎』の世界は、そのシステムを確立させるための実験場。だが面倒だったよ。

別の世界でやらかしたせいで、ターミナルがデッキ捜索・回収に乗り出していたからなぁ。

もちろん原因はタイムベント……当然劣化コピーと蒼チビは、射撃でこちらの邪魔をする。


だがそこでおなじみ、オーロラ展開。銀色のカーテンが、難なく攻撃を防いでおく。


「これさえあれば、お前達の努力なんて全部無駄に終わる。残念だったな」

「くそ!」

「遅い」


というわけでカードをバックルに装填……時間は巻き戻る。奴らの対策、奴らのやり口、作戦は全て見えた。

あとはこれを元に、俺の仕事をもう二〜三個増やすだけ。それだけで万全となる。だからこれは勝利の笑み。

奴らは何もできず、ユウスケや剣崎達も走り込み、手を伸ばすだけ。届かなきゃあ意味がないのにな。


「……そう、遅いよ」


蒼チビが呟(つぶや)いた瞬間、勝利の未来が消え去る。見えていたカード発動の瞬間が消え去り、別の未来が浮かぶ。

それは動揺し、躊躇(ためら)う俺の姿。その理由が分からず一瞬混乱していると、まず辺りに漂っていた空気感が変わる。

その瞬間蒼い歪(ゆが)みが生まれ、タイムベントのカードが消失。更にライドブッカーが、腰から消えるヴィジョン発生。


慌てて身を引き、精密な『瞬間転送』から退避。蒼い歪(ゆが)みが、魔力によって生まれた空間置換が、俺の前で発生する。

デッキは守られた。だが……慌てて蒼チビを見ると、奴の手にはタイムベントが存在していた。


「おい、どういうことだ」


タイムベントのカードに、蒼い火花が走る。そうしてカードは砂となり、蒼チビの手元からこぼれ落ちた。


「おい蒼チビ、何避けられてんだよ」

「そう言わないでよ。未来予知相手に試すの、初めてなんだから」

「貴様、どうして魔法を」

「そんなの、AMFを解除したからに決まってるでしょ」

「馬鹿を言うな。そんな真似(まね)」


そこで勘違いに気づく。そうだ、できる……奴は宇宙の眼を見つけ、シャドームーンを倒した。それはどういうことだ。

俺達の基地内に、深く入り込んだという話だ。ならこの世界に設置した、AMF発生装置についても……!

気づくのが遅すぎた。そうあざ笑いながら蒼チビは、砂にまみれた右手を払い、天を指差す。


そうして差し込むのは太陽――奴が、忌まわしき悪魔どもが、その輝きに晒(さら)される。まるで選ばれた者のように。


「時間がなかったから、装置へのハッキングは他人任せになったけどね。それにあり得ない僕と海東は、いい仕事をしてくれた」

「どういう意味だ」


すると奴はくすりと笑って、俺を転送……未来が見えていたからこそ、咄嗟(とっさ)に右ストレートをたたき込む。

俺の体は、蒼チビの眼前に現れる。無駄だ、未来予知に転送は……だが打ち込んだ拳は俺の腹を、ディケイドライバーを打ち抜く。

突如生まれた空間の歪(ゆが)みに飲み込まれ、拳は俺自身を傷つけ、その衝撃で反吐(へど)を吐き出しかける。


そして自分で自分を殴るという矛盾に苛(さいな)まれながら、大きく吹き飛び地面を転がった。


「これから死ぬ奴には、意味のないことだ」

「蒼凪さん……言ってることが、悪役です」

「タクミは弱気すぎるんだって。もっとガーっていかないと、ゆりにも押し切られるよ?」

「は、はいー!?」

「恭文、そういう問題じゃない。というかお前、いろいろ吹っ切れすぎじゃね!?」


ふざけやがって。この俺を前に、漫才だと。それが余りにおかしくて、腹立たしくて、笑いながら立ち上がる。

そうだな、意味のないことだ。俺としたことが……これから死ぬお前達には、意味がない。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


はい、というわけで切り札……AMF解除! なおハッキング担当は現在、デルタで頑張っている僕とー。


「ロボライダー、ありがとう! 予想以上のスピードだったよ!」

「問題ない」

≪さすがは悲しみの王子。この人と違いますね≫

「どういう意味!?」


ロボライダーでお送りしました。……え、意味が分からない? では説明しましょう。

実はロボライダー、僕の瞬間詠唱・処理能力ととても近い力を持っている。というか、上位版に等しいかも。


「おいチビ、どういうことだ」


転送魔法発動――跳んできた炎の砲弾は、近くにいたワームやファンガイア、イマジン達を盾にして食らってもらう。

その爆発を見ながら、なぜか侑斗さんやデネブさん、モモタロスさんが疑問顔。……あー、そっか。みんなは出遅れたからなぁ。


「前提があります。ダブトの僕と阿木さん、この世界の基地で一度大暴れしているんです。時間軸的には数分前」

≪何だってぇ! じゃあAMF発生装置の場所とか、もう調べた上でここにきたのか!≫

≪その通りです。そうしたらまぁ、地下の至る所に設置してるんですよ。……全て破壊は時間もないので無理。
ハッキングによる機能停止が妥当だと、私達がその役を引き受けたんです。まぁそこは戦いながら、何とか進めたんですが≫


何度も言うけど、時間がなかった。なので同時進行でやるしか……ビバ、マルチタスク。

でもそこで助けに来てくれたのが、ボルティックシューターをまた連射し始めたロボライダーだよ。


「俺にはあらゆる電子機器をハッキング、操作することができる【ハイパーリンク】という能力がある。それで手伝いをさせてもらった」

【す、凄(すご)いですね。でも恭文君、それって】

「えぇ、僕の能力と極めて近いです」


言うなら瞬間詠唱・処理能力持ちが、二人いるも同然。おかげでさ、僕達の想定以上の範囲、掌握できたよ。

ミッドに敷かれ、現在稼働中な奴らのネットワーク……それも、内包されていた情報も込みでね。

ただ他のパラレルワールドへは、深いところまでアクセスできない。奴らが行動を起こしてくれたせいで、時間軸も滅茶滅茶(めちゃめちゃ)だし。


せいぜい通信網が限度。それに油断もできないんだ。奴らの手先に、似たような能力者がいる可能性だってある。

だから僕とロボライダーは、システム面の確保維持が命題。だから良太郎さん達も、他のライダーも、僕達を守る配置になりつつある。

敵も乗っ取られていると分かったら、本気を出してくるだろうから。通信網が限度なのにね。


でも戦争において、相手に通信・情報戦で負けることがどういうことか。それを今から証明しよう。さー、楽しくなるぞー。


「恭文君、俺の声は」

「市街にも届きますよ。ではどうぞ」


ワイヤレスマイクを取り出し、ロボライダーに向ける。


「……みんな、聞いてくれ! もう魔法を封じる檻(おり)はない! 奴らが設置したAMF発生装置は、既に掌握した!
今こそ一人一人の手で、悪に立ち向かうときだ! 俺の名は悲しみの王子――RX! ロボライダー!」

「はい……OKです!」


こういうのはシンプルなメッセージでOKなのよ。あとは定期的に、繰り返し流れるようセッティングしてーっと。

なお通常回線はめためただけど、さっきも言ったように奴らの通信網がある。そっちを使ったから、市街の至る所で放送されているよ。


【でも僕達、何も聞いて……いるわけないよね】

「……野上ぃ!」

「まぁいいじゃねぇか。つーことは、アレだろ? これで」

「えぇ」


オーナーとハナさんに頼んで、みんなには発破をかけてもらったからなぁ。……あとは雑魚どもの掃討なので、早速通信っと。

発破はかけてもらったけど、それは後に備えてのこと。念のため、止めておかないと。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


うちらの守った街が、世界が壊されていく。でも何もできん……そのための鍵は、うちらでは揃(そろ)えられんかった。

でも鍵を揃(そろ)えた子達が、道を開いてくれた。奴らが市街地に展開したAMFは解除された。


「じゃあ恭文、僕達も戦えるんだね!」

『いや、やめよう? こっちには来なくていいし、デンライナーでジッとしていて』

「それは、大丈夫。クロックアップとか、私達にはどうしようもないし」

「くきゅー」


あぁ、ちびっ子達の理解力がすばらしい。それに引き替えシグナムは。


「……クロックアップ……クロックアップ……主、なぜクロックアップに対抗できないのですか。高速移動魔法であれば」

「何でてめぇはまだ分かってないんだ!」

『僕が仮面ライダーカブトの映像も見せたのに……!』

「ほんとすまねぇ!」


オーナーやうちらに発破をかけられ、何とか復活。でもアホなままやった……!


『そう思うなら、飛び出すのもやめてくれます!? ワームもいるんですよ、ワームも!』

「でもそっちは恭文くん達が、通信網を利用して集めてくれるのよね。というか集めている最中」

『それでも飛び出したら、目を付けられるでしょ! サリさん達を見習ってくださいよ! もうお地蔵様みたいにジッとしてるし!』

「すまんが、もう止まることはできん。我らには成さねばならんことがある」


そうや、それだけは変わらん。局員として……ううん、この世界に住む人間として、この惨状は絶対見過ごせん。


【うぅ、リインもそっちにいきたいですー! はやてちゃん、自分のことは自分で何とかできるですよね! 大人だから!】

「何でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 主はうち! というか細かいコントロールや魔法制御、苦手なんは知ってるやろ! サポートしてよ!」

【だって恭文さんがいるですよ!? IFじゃなくて、本物の恭文さんがー! どっちを選ぶかなんて、明白なのです!】

「恭文ぃ!」

『僕に言われても困るよ! でも、別世界でもこれかぁ!』

「はやてちゃん、頑張って……!」


リインが、リインが大人になっていく。でももうちょっと、ゆっくり成長してほしい。

そのためにも頑張ろう、そんな時間を守るためにも、マジ頑張ろう。


「……とにかく行くぞ」

「えぇ。私達はもう局員じゃないけど」

「今傷ついている者達を、助けるくらいはできる」

『いや、だから駄目ですって! いいからジッと』


恭文には悪いけど、通信を切らせてもらう。……うちらはもう局員とちゃう。

それでも全員バリアジャケットを着て、デンライナーから飛びだそうとしている。それが全てや。


「ほら、スバル」

「……どうして、なのかな」

「スバルさん」

「管理局が壊れちゃったら、どうなるのかな。どうして残すのは、駄目なのかな……これから私達、どうなるの」

「……その答えを、見つけにいきましょ」


バリアジャケットは装備した。でも、それでも泣きじゃくるスバルを、ティアが背中を叩(たた)いて励ます。


「そのためにも今、無関係に傷ついている人達を助けなきゃ。アンタの力は、そのために使うんでしょ?」

「……うん」


スバルは涙を払い、真っすぐに前を見る。初めて会ったときみたいに、真っすぐに。

……たった一年で変動し続けた状況、その一端を担った人間としては、その視線が余りに突き刺さる。

とても苦しく、胸に……それでも今は、最初の頃みたいに……これ以上、誰も泣かせないために。


「ほな行くで、みんな! 機動六課最後の出撃や!」

『了解!』


デンライナーから飛び出し、傷ついた街へ飛び降りる。最後の仕事を、最低限残っていた意地を通すために。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


なぎ君達が飛び出して、一文字さんとヒビキさんまで続く。残された私達はわたわた……ただ朗報もあって。


「す、すまん……みんなぁ。私は」

「おじいちゃん、大丈夫です。ガイアメモリも壊しましたし、もう大丈夫……ですよね」


はい、栄次郎さんが復活しました。本当にキバーラ、毒素を吸い出したらしくて……もういつもの栄次郎さんだった。


「えぇ。でもぉ、もう二度とごめんかもぉ。一応毒だから、口の中が……うげぇ」

「あ、じゃあご飯を食べよう! 口直しに」

「そんな場合じゃありませんよ!? というか写真館だって滅茶苦茶(めちゃくちゃ)だろうし……あれ」


そこで空気の質が変わる。今まで漂っていた、張り詰めた感じが消失する。これは……!

慌てて左手をかざし、術式発動。あくまでも簡単な魔力強化だけど、左手は力の色で染め上げられる。


「ギンガさん、どうしたんですか」

「魔法、使えるんです!」

「え……いやいや! ついさっき、AMFが発生しているって!」

「なぎ君達です! これなら、局のみんなも戦えます! ……多分」


多分と言うのも察してほしい。だって現状、本局・中央本部ともに壊滅で、街も滅茶苦茶(めちゃくちゃ)。

恐らく最初の段階で、かなりの死者が……でもなぎ君達にも、それは止められなかった。

そもそも宇宙の眼……だっけ? それに接触できたの、ちょうど今くらいだとか。


……そこには矛盾もあるかもしれない。でも私達は、この痛みも受け入れて先に進む。その覚悟を持たなくちゃ、いけないんだ。


≪Sir、通信です……しかもこれは≫


ブリッツキャリバーが通信画面を展開。そこに映るアドレスは、八神部隊長のものだった。慌てて通話ボタンをクリックして、通信を繋(つな)げる。


『こちら八神はやて! ……ギンガァ! 無事やったんやな!』

「八神部隊長! はい、何とか戻ってきました!」


間違いない、本物の八神部隊長だった。それで背景がミッドの空で、バリアジャケットも着ている。やっぱり、魔法は使えるんだ……!


「あの、今は」

『……別世界の恭文やフェイトちゃんが乗ってた、デンライナーで保護されとった。スバルとティア達も無事よ。
それで市街地に回って、市民の救助活動中。向こうのことはもう任せるしかないし』

「あの、なぎ君達がワームを倒して、その上でなら」

『駄目よ。向こうの恭文が予測したところによると、まだデカいのが控えてそうや……って、やっぱりか!』


え、何! 何かあったの!? 八神部隊長との通信が途切れ、驚いてしまう。


「八神部隊長! ……八神部隊長!」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


やっぱ市街地におったで……敵の怪人! しかもワームがどっさり! でもひしめくそれらは全て幼体。

今のうちならと、ユニゾンしたリインが術式詠唱――そして発動。


【フリジットダガー!】


氷の短剣を八十ほど精製し、一気に射出。逃げ惑う市民の皆さんを飛び越え、短剣は奴らの足下に着弾。

……これは単なる布石や。短剣は奴らに突き刺さり、破裂しながら周囲に冷気をもたらす。

同時に細かい粒子となった破片は、春の温かい陽気と、戦場独特の熱気で瞬間溶解。


結果的にそれは、奴らの周辺にある水分濃度を高めることになる。そこを狙って。


【捕らえよ、凍てつく足枷(フリーレンフェッセルン)!】


リインが更に術式発動。フリジットダガーによる水分補充、その影響を受けて発動速度が極めて速くなった、氷の檻(おり)が精製。

横並びやった二十体ほどが一気に凍らされ、その動きを戒められる。……そこを狙って、シグナムが飛び込む。


「紫電――一閃!」


右薙一閃で氷ごと奴らを両断。尽く爆散させている間に、スバル達が避難誘導。


「さぁ、こっちです!」

「仮の避難ベースを作ってあります! 急いで!」

「くきゅー!」

「キャロ、お願い!」

「任せて!」


キャロが転送魔法で、事前に確保した安全圏までみんなを転送。あとはベースに控えている、シャマルとザフィーラ達が治療する。

そういうコースで何とかなってる。奴らの攻撃も市街地が中心やから、そこから離れると一段落。

あとヤバいんは陸士部隊の基地やけど、そこも訓練などがある関係で、基本郊外。


位置関係は当然把握しているし、問題は……そして頭上で、なのはちゃんの砲撃魔法が閃(ひらめ)く。

付き添っているヴィータも、鉄球を連続射出。あぁ、あっちはあっちで物騒な。


『はやてちゃん、やっぱり怪人がー! というかワームが多すぎ!』

『中央本部やらに入り込んでた奴ら、全員来てるっぽいな。こりゃ仲間(なかま)の局員が出てきても、油断できねぇぞ』

「……分かっとる。でも、今は」


そう、ワームもいる状況やから、そういう攻撃も予想される。局員の振りして近づいて……とかな。


「あなたは……シグナム二尉! シグナム二尉ではありませんか!」

「お前は、ピーターか! よく無事だったな!」

「はい! シグナム二尉もお元気そうで!」


そうそう、あんな感じで近づいてな。というかシグナムの知り合いか? あのロン毛イケメン。

でも、だからって放置できんし……ああもう、見抜く手段があれば、こんな不安には。


「ですがなぜ」

「すまん、話はあとだ」

【シグナム】

「安心してくれていい、前の部隊で一緒だったピーターだ。ピーター、協力してくれ。市民を避難させたい」


そう言ってシグナムがこちらへ振り向く。……その瞬間やった、ピーターとやらが笑い。


「えぇ、もちろんですよ」


銀色の、サソリを模したワームに変化。そのまま右腕のクローで、シグナムの背中を抉(えぐ)る。

……かと思ったら、シグナムも咄嗟(とっさ)に反応。レヴァンティンで右薙に斬りつけ、腕を払いながら退避。

すかさずティアとキャロが援護射撃。ティアはクロスミラージュを構え、キャロはケリュケイオンから弾丸発射。


しかしワームは迫る弾幕を、弁髪のひと薙ぎでいともたやすく払う。


「シグナム!」

「大丈夫です! どういうことだ、貴様は……ピーターはどうした!」

『いやだなぁ、シグナム二尉……俺がピーターですよ』


ワームの顔に、さっきまでのイケメン青年が映る。幻影のように揺らめくそれは、シグナムに嘲笑を向けた。

コイツ、サソリのワームか! スコルピオワーム……原作やと、神代剣の正体!


『でも、避難所を作っているならちょうどよかったぁ。そこへ連れていってくださいよ』

「断る! ピーターはどこだ……私の仲間に何をした!」

「シグナム!」


シグナムがレヴァンティンを右に引き、疾駆。でも止める間もなく、ワームはクロックアップ。

……そしてシグナムは遠慮なく弾(はじ)き跳ばされ、そのまま地面に叩(たた)きつけられる。その後ろにスコルピオワームが出現。


「が……馬鹿、な。本当に、見え」

『相変わらず頭が固いなぁ、シグナム二尉は。普通の人間が、クロックアップに勝てるわけないでしょ?』

「私の、剣が……心の、目が」

「このぉ……シグナム副隊長から」


そしてスバルが突撃。マッハキャリバーを走らせ、また止める間もなく。


「馬鹿! スバル、やめな」


ティアが言っている間に、スコルピオワームがまた消える。……そしてスバルも弾(はじ)き跳ばされ、そのままシグナムの脇に。


「がは……! う、そ」

「スバル!」


そして奴の両サイドから、ぞろぞろとワーム達が登場。全員幼体やけど、まだこんなに……!

しかもアイツは弁髪を振るい、その先をシグナムとスバルの背に連続で突き刺した。


「「……がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

「スバル!」

「シグナム!」

”み、みんな……駄目! すぐに逃げて!”

”クロックアップは言わずもがなだが、スコルピオワームは”


そして二人はゆらりと起き上がり。


『シグナム二尉、スバルちゃんだっけ? ……奴らを殺せ』


その途端シグナムがカートリッジロード。三発分の魔力をレヴァンティンに宿し、炎とする。


≪Schlange form≫


シュランゲフォルムに変形。そのまま敵意を向け、こちらに唐竹一閃。


「飛竜――一閃!」


展開された蛇腹剣は、揺らめきながらこちらに接近。慌ててみんなで散開すると、今度はスバルがこちらに突撃。

ちょ、待ってよ。今の……殺傷設定やった! ということは、スバルも!


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


慌ててキャロが前に出て、プロテクションを展開・防御。でもスバルは裂帛(れっぱく)の気合いとともに、強引に拳を振るう。

シールドが砕かれ、うちは吹き飛ぶキャロを受け止めながら一緒に転がる。……そこでなのはちゃんとヴィータが、頭上から射撃。

襲い来る魔力弾と鉄球は、引き戻された蛇腹剣の乱舞でたやすく払われ、頭上で幾つもの爆発が起こる。


「キャ、キャロ……大丈夫か?」

「はい。でも、どうして」

「スバル、アンタ何やってるのよ! しっかりしなさい!」

「黙れぇ! ピーター様の命令だ……お前達全員、死ねぇ!」


パートナーであるティアナへ、とんでもない言いぐさ。しかもシグナムも、レヴァンティンをシュベルトフォルムに戻し、眼光をたぎらせる。


「その通りだ。ピーター様こそ正義、ピーター様こそ、我らが真の主! もう貴様などいらぬわ、子狸(こだぬき)が!」

「ど、どういうこっちゃ。これは」

『そう、それでいいよスバル、シグナム』


スコルピオワームは愛(いと)おしそうに二人を抱き締め、その頭を撫(な)でる。

それだけで二人は、うっとりしながら身をくねらせ、異形の肌に豊かな乳房も擦(こす)りつけた。


『君達が頑張ったなら、御褒美をあげようかな……君達が望むもの、全てをね』

「それはつまり、管理局の再興も」

「私達、居場所を奪われないで済むんですか!」

『もちろんだ。僕達スーパー大ショッカーには、それだけの力がある』

「「……ピーター、様ぁ」」


なんやこれ……! ちょ、やめてよ! うち、リアルで洗脳墜(お)ちとかは趣味じゃ……洗脳!?

あ然とするティアナ達はさて置き、その能力に気づく。そうや、今更すぎる。答えはちゃんと出ていた。

なぜクロックアップしながら、シグナム達を殺さなかったのか。ただ首を抉(えぐ)るだけでえぇのに。


その答えは簡単や。こうやって二人を『利用』できるから、あえて加減した。


”なのはちゃん、ヴィータ!”

”……そうだよ。スコルピオワームの弁髪……ようはサソリの尻尾だけど、あれに刺されると洗脳されるの”

”どうやらアイツ、シグナムとスバルを『女』としても扱いたいらしいな。悪趣味な……!”


そうや、普通に尻とか腰とか触っとる。でもどうする、うちらにはどうしようもない。クロックアップもあるなら、このまま……!

恭文……別世界の恭文やけど、マジごめん。うちもアホやった。つい最終決戦時のノリで……ほんまごめんー!


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ダブルで揃(そろ)ったハイパーカブト。普通ならもう、僕達だけでOKなんだけど……そうもいかないかぁ。

奴は余りに強敵。ライドブッカーを奪うこともできないだろうし、できるとしたらカード本体……挿入タイミングを邪魔することのみ。

ようは思い通りに戦えないよう、嫌がらせをしちゃおうって話だね。幸い僕はそういうのが大得意。


「いいぜ、ハイパーカブトが二人くらい、俺には余裕だ」

「あとはお前達に任せる。行くぞ、剣崎、ファイズ」


そう言いながら天道は、剣崎さんとタクミを引っ張っていく……って、おーい!?


「ちょ、アンタら!」

「お前、マジかよ」

「自分達の世界くらい、守ってみせろ」


それはもやしに、僕とアルトに向けたものだった。そうだね、この世界は僕達の世界だ。

それを好き勝手された落とし前は、やっぱり僕達が付けなきゃ。まぁユウスケもいらないんだけど、コイツはお節介だからなぁ。


「お、おい待て天道! 引っ張るな! 子どもか俺は!」

「蒼凪さん、門矢さん、頑張ってください! 俺も……俺も、戦っています!」


素直なタクミにはサムズアップを送り、改めてダークディケイドと対峙(たいじ)。……大丈夫、切り札はある。


「お前達、勝機を逃したな。お前ら三人じゃあ」


ゼクトクナイガン・ガンモードを抜き撃ち二連射。一発目の弾丸は左スウェーでたやすく避けられるものの、二発目はその頭頂部を捉える。

その衝撃と火花は余りに大きかった。肉体ではなく、奴の心に確かな亀裂をたたき込む。


「なん、だと」

「弱い犬ほどよく吠(ほ)える。本当だね」

≪知っているでしょう? 私達、あなたみたいなのは一度戦っているんですよ≫


馬鹿だねぇ……予知されるなら、されること前提でその先を予測すればいい。……だから奴は疾駆。

ゼクトクナイガンを放り投げつつ前に出て、奴の逆袈裟・刺突・右薙の連撃を回避。

ただ動くのではなく、身の回転をギリギリのタイミングで加える。じゃないとコイツの予知を超えられない。


これも八神恭文の世界で、改めて学んだことだ。命中するという『経緯』は変えず、その結果だけを変える。

アーマーを叩(たた)き、貫く刹那……回転によって攻撃を捌(さば)く。皮を切らせ、その肉で交わす。

そうしながら左サイドへ回り込むと、今度は振り向きながらの左薙一閃。それを左肩アーマーで受け止め、曲面を利用して頭上へ流す。


その上で右フック。ライドブッカーを保持していた、右指を全力で叩(たた)く。怯(ひる)んだところで肉薄し、連続ボディブロー。

反撃の逆袈裟一閃は右下腕アーマーで受け止め、脇に流した上で左フック。ダークディケイドの顔面を叩(たた)き、地面を転がってもらう。

奴はこちらへ距離を開きながら、ライドブッカーをガンモードに変形。


≪≪ATTACK RIDE――BLAST≫≫


なので瞬間詠唱――発動。転送魔法でライドブッカーを強奪、その未来を予見した奴は慌てて射線を上げた。

部分分身が発動し、虚空へと放たれる弾丸達。そこを狙い、もやしのブラストが発動。

ダークディケイドはそれをまともに食らい、蜂の巣にされながら後ずさる。……奪えなくても、いいんだよね。


奪えるチャンスを狙い、かわされたっていい。奴にはそれを回避するしか、選択肢がないんだから。

そうして生まれた隙(すき)を突けばいい。僕が突けなくても、もやしとユウスケが突く。三人いるんだから、利用しない手はないでしょ。


「調子に乗るなよ、お前達」

「やられかけの悪党そのものだねぇ。……未来はお前達に渡さない。それを掴(つか)んでいるのは」


右手を挙げ、再び太陽の輝きを手にする。本郷さん達の世界で、天道がヒントをくれたから。

僕は既に未来を掴(つか)んでいる。だから僕が望めば、きっとコーカサスが出た段階でも、ハイパーダブトにはなれた。

でも掴(つか)んでいるのは、ハイパーゼクターだけ? そんなわけがない。……だから望む、更なる輝きを。


それは当然の事象として、傲慢に望む。僕が未来を掴(つか)んでいるのなら、きっと来てくれる。

だから太陽の光に導かれ、その刃は舞い降りる。光の如(ごと)きスピードで迫るそれを遠慮なくキャッチ。


「それは……! 馬鹿な、なぜ貴様がそれを!」


……それはカブトムシを模した両刃剣。金色の刃、その先は二叉(ふたまた)に分かれ、鍔(つば)元には赤・青・金・紫のスイッチ【フルスロットル】。

切っ先と鍔(つば)元付近には、他ゼクターをセットするための【セットアップサークル・セットアップホルダー】。

柄はハイパーカブトと同じく、ヒヒイロノオオガネを使用した【パーフェクトボディ】。


閉じられていたウイングが広がり、鍔(つば)となって輝く。その威圧感、その力強さに、ダークディケイドも後ずさる。

やっぱり、これを僕が使うのは予想外か。いいねぇ、またふざけた未来が覆された。


「恭、文……ここにきて新アイテムかよ!」

「お前、前振りとかはないのか」

「そう、未来(ひかり)を掴(つか)んでいるのは……僕達だ」

「「無視するな!」」


その名はパーフェクトゼクター。ワーム殲滅用の究極兵器であり、劇中だとハイパーカブト専用武器。

うん、これもゼクターの一種なんだよ。だからよーく見ると、カブトムシの頭になっている。

そして……八神の僕には謝らなくてはいけないだろう。嫌な予感は的中すると。


(第44話へ続く)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


恭文(とま旅)「次回――とある魔導師と古き鉄と破壊者の旅路、最終回!」

もやし「……お前は、誰かと繋(つな)がったことがないんだな」

門矢士「ディケイドの本質、だと」



フェイト「でも士さん、これからどうするんだろう。復活したのはいいけど」

オーナー「彼にとっては、余りに厳しい道かも……しれませんねぇ」



恭文(とま旅)「もやし」

もやし「なんだよ」

恭文(とま旅)「くたばるんじゃないよ」


次回――第44話 『Stay the Ride Alive』


もやし「俺は旅を続ける、そうして世界を破壊する。……面白いじゃないか」


(本当に続く)







あとがき


恭文「というわけで、いろいろ横道脇道のお話も書いていたら、あと一話くらいで終わる……はず」

あむ「あとはダークディケイドをぶっ潰せば……でもはやてさん達が!」

恭文「でぇじょうぶだ。ドラゴンボールが」

あむ「それでいいわけ!?」

恭文「だって人の忠告を無視してこれだよ!? もうどうにもできないよね!」

あむ「それでかー!」


(というわけで本日は……もうあの震災から五年。ヤフージャパンなどでは検索募金などを行っているようです。みなさまも是非)


恭文「というわけでお相手は蒼凪恭文と」

あむ「日奈森あむです。そう言えばFORCEって、ちょうど今くらいなんだよね」

恭文「年代設定で言えば、僕とあむが聖夜小を卒業したのが二〇一一年、その一年後にVivid編、その更に二年後だから……あ、超えてるな」

あむ「そうだった……!」


(つまり現・魔法少女、とまと設定では十七歳です)


あむ「そう言えばリインちゃん」

恭文「それ以上いけない。とにかく今回のお話、前回の流れも踏まえた上で……AMF、解除しない方がよかったかな」

あむ「いや、でもそのおかげで魔法での救助や治療も可能になったわけだし……うん。それにそこを入れても、タイムベントが」

恭文「テレポーターこそ最強なり」


(古き鉄、ここから本領発揮です)


恭文「そしてライジングアルティメットの出番はあるのか」

あむ「出番、譲ってあげようね……多少はね!?」

恭文「いや、僕に言われても困るよ。僕はこのとき、ロボライダーと一緒に」

あむ「そうだったー!」


(蒼い古き鉄(本編)、劇中通りサポート役で頑張っていました。そう、本編やA's・Remixも魔法解禁。
更にてつをが四人いる状況。てつをという時点でもう負ける気がしない罠。
本日のED:BLUE ENCOUNT『Survivor』)


恭文「てつをがヤバいよ。描写していくだけで無双しか思いつかないという」

古鉄≪ボスキャラ相手ならそうもならないんですけど、残念ながらそちらは≫

恭文「キングダーク、出てたよね。出てたはずだよね……うん、出ていた」

あむ「落ち着け! 記憶を改ざんしてきてるし!」

ラン「強敵って言って、それってー」

ミキ「いや、それで拾えるよね、スーパー大ショッカーの最後」

スゥ「映画の中身も拾っていくスタイルなんですねぇ」

ダイヤ「でもはやてさん達、どうするのかしら」


(おしまい)






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