小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
第42話 『二人の世界/終わりの始まり』
蒼凪君はとても苦しげに自嘲する。こんな状況でも、冷静に『復活させない方がいい』――そう結論付けてしまう自分に対して。
確かに、士さんがこのままだったら……それは私達や、他の世界にいる人達からしてもアリなんだと思う。
だけど、こんなのは。偽者で、ただ利用されただけなんて……こんなの、ひどすぎるよ。
「そうだな、お前は切れすぎる。だからこそその速度に誰もついてられないし、スーパー大ショッカーも早々に警戒した。
……だが分かっているはずだ。そうして他者の速度に合わせたとしても、それは何の意味もないと」
「僕は突き抜けることで、太陽になる。誰でもない、僕が目指す未来を照らす太陽に……うん、分かっている」
それでも、蒼凪君は両手で頬を叩(たた)く。全力で叩(たた)いて、気合いを入れる。……見ていることしかできないのは、やっぱり辛(つら)い。
プロデューサーさんが暴れるときだって、私達は……でも、それでも心は止まらない。
だってああやって、『それでも』って頑張っているんだもの。なのに私達が迷ったり、できないよ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「安心しろ。それに関してだが、一つ方法がある。……どうするかを決めるのは奴だが」
「あとは僕達次第と」
「そうなる」
……そう、僕達次第。でもまずは。
「まず……本当に可能かどうかから考えようか。これでぬか喜びじゃあ意味がない。
記憶した物ならディケイドライバー、又はもやしのトイカメラって言うところなんだろうけど」
「ディケイドライバーはアイツに……! それにトイカメラも壊されちまった! ……あ、アルトアイゼンのデータは!」
≪……それなんですが、すみません。今までの記録映像、そのほとんどに異常が≫
「異常?」
≪今確認したんですけど、もやしさんの部分だけがボヤけてしまっているんです。プリントアウトしても恐らくは≫
「特異点でもあるもやしが、『本人』に倒された影響か……!」
「あの」
そこであずささんが恐る恐る挙手。なお八神の僕は。
「なぁヤスフミ、これは」
「僕達には口出しできないって。それよりもサイン、どうしよう」
「お前、むしろ空気を読んでないわ!」
「どちらにしても、私達もディケイドを放置できませんが」
「ミトラ・ゴレムを取り戻さないといけないしなぁ……もぐ」
まだサインのタイミングを計っていました。こちらもブレない……! いや、口出しできる問題じゃないと、遠慮しているのだろうか。
「記憶した物、ですよね。それって写真とかでも駄目なんですか?」
「あ、そうじゃんー。もやし、よく亜美達の写真を撮ってたしー」
「それならOKじゃんー」
「悪くはないな。もしかするとプリントアウトよりは使えるかもしれない」
「いや、駄目だ。士の写真なんて……そうだよな」
ユウスケは頭をかき、どうしようもないのかと絶望する。それもとても簡単な理由だった。
「アイツ、ずっと世界の写真ばかり撮ってたんだ。でも、自分の姿はそこに」
そう、ない。もやしが自分を撮ったことなんて一度も……撮っていたのは世界の、自分以外の何かばかり。
ファインダーにもやしの姿が入ることなんて、一度もなかった。誰かが撮らないかぎり……誰、かが?
……そこで思い出すのは、カブトの世界へ入った直後。ダブタロスを、そしてアルトを見やり、あの記憶を引き出す。
――ギンガマン、それは当たり前だろ。お前達の世界とは違うとこが発端なんだからな――
あのとき、もやしはうんざりしながら、トイカメラでギンガさんを撮影。次にフェイトをファインダーに収め、ピントを合わせていた。
――でもまぁ、それなら納得だわ――
でもフェイトを撮っていいのは僕だけなので、素早くもやしからカメラをふんだくり。
――……って、おい!――
カメラを奪い返そうとしたもやしに、狙いを定めて撮影。それからすぐトイカメラをもやしに返した。
そうだ、撮影していた。たった一度だけ、もやしを世界に刻んだ。いや、二度だ……!
ちょっとした戯れが、まさかこんな大きな希望になるなんて。
≪……いや、あるじゃないですか≫
「そうだよ、あるよ……忘れた!? カブトの世界へ入った直後、僕……もやしのカメラで写真を撮ってる!」
「あ……!」
「それに、龍騎の世界でシンジさんも!」
「それだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そう、二度だ。龍騎の世界でシンジさんは、僕ともやし達を撮ってくれた。あの写真もある。
慌てて荷物を取り出し、その中に仕舞っていた写真を取り出す。もしこれでOKなら……!?
「恭文、どうだ!」
「駄目、シンジさんの写真は使えない」
実際の、既に記録された写真もアウトみたい。ユウスケには渡す……もやしの部分だけが、かすれてしまっている写真を。
それはジュースをこぼして汚したとか、そういう理由じゃない。写真じゃなくて、中のもやしが駄目になっている
「いや、それでも……特異点でもあるお前が撮った写真なら! 天道さん!」
「まずは写真館か。……結論は出たようだな」
「うん。過去は取り戻せない――もやしが『偽者』であることも、スーパー大ショッカーそのものを根っこから壊すこともできない。
僕達はその結果を背負った上で、今を変える。でもね、そこにはもやしも絶対に必要なんだ」
ここまで考えて、思い返して分かった。……僕はこんな結果、絶対に納得できない。
確かに僕達だけで、ダークディケイドは倒せるかもしれない。ほら、僕だってめちゃくちゃ強いし?
そうしてもやしの旅もあそこで終わり、世界は平和になる。でも駄目だ……そんなの、絶対に嫌だ。
「僕はまだ、もやしに『僕達の世界』がどこだったか、ちゃんと見せていない。
だから今を変える――もやしの旅がここで終わりなんていう、ふざけた今はぶち壊す」
≪……そうですね。このまま終わりは、納得できません≫
「それでいい。俺は同伴できないが」
「まだ用事ってわけ?」
「連れていきたい奴がいてな。だがすぐに追いつく……そうそう、そこのお前」
天道は阿木奈央に声をかけると、足下からあるものがジャンプ。それは紫色のサソリ……サソードゼクター!?
阿木奈央は慌ててそれをキャッチし、手の中で跳ねるゼクターとにらめっこ。でもすぐに。
「……サソードゼクターだぁぁぁぁぁぁぁぁ! わぁ、可愛(かわい)い−! 本物!? 本物だよね!」
「当然だ。さすがにその黒子姿では力不足だろ」
「え、でも装着者に選ばれないと」
「どうだ、そいつと戦ってみるか」
するとサソードゼクターは、手の中で一回転。そのまま天道へ向き直り、こくこくと頷(うなず)く。
「い、いいの!」
「……すげー頷(うなず)いてるな。問題ないようだぜ、ヤスフミ」
「天道総司が言うように、確かに今のままではキツいでしょう。キャラなりもできませんし」
「フォーゼドライバーも使用禁止だからな……もぐ」
「なら決まりだな。これも持っていけ」
更に紫の片刃剣も渡される。これはサソードヤイバーと言って、サソードゼクターをセットできる武装。
ようは変身ベルトの替わりだよ。あれにサソードゼクターが合体すると、仮面ライダーサソードに変身できる。
阿木奈央はそれを受け取り、やっぱり破顔。でも、なぜだろう。何となく嫌な予感が。
「ありがとうございます、天道様!」
『天道様!?』
「ね、ねぇ天道……大丈夫だよね。サソードゼクターって、確か」
「急ぐぞ」
天道に促され、僕達は仕方なく歩き出す。阿木奈緒もスキップしながら、サソードゼクターと走り出す。
「あの、お世話になりました!」
「いえ。あの……気をつけてください」
「分かってる」
みんなには右手を振り、振り返ることもなくそのまま別れる。……さぁ、まずは写真館だ。そこから反撃と行こうじゃないのさ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
なぎ君が出ていってから、ポテトチップスを食べきった。それでお茶を飲んで、気持ちを入れ替える。
まだグスグス言っているフェイトさんの脇へしゃがみ込み、一緒に涙をこぼす……そうして数える、私達の罪を。
「……フェイトさん、私達……なぎ君に甘えすぎていたんです」
「ギンガ、待って……ヤスフミを止めるの! 今ならまだ間に合うから! それで私達の言う通りに」
「違います! それは……なぎ君を助けることにも、一緒に戦うことにもならない!」
叫んで、話を聞いてと念押し。それでフェイトさんはぼう然としながら、私を見上げた。
「だって私達、ずっとなぎ君を困らせてた。自業自得で怪我(けが)をしたり、デバイスを壊したのに……戦えるようになりたい。
どうしてすればいいか、一緒に考えてって。そんな時間も、余裕もないのに。自分達のことだけ考えて」
「どうしてそれが駄目なの!? だって私は、ヤスフミの助けになりたくて……それでここへきたの!
一緒に戦えないなんておかしいの! ギンガだってそうでしょ!? 何か手があるはずだから、一緒に……そうすれば」
「なぎ君は私達じゃ無理だって、言ってたじゃないですか! ずっと……最初から! ……でも信じたくなかった。
何かある、何かあるはずだって……その『何か』を自分で探そうともしないで」
それで信頼できるはずがない、一緒に戦えるはずもない。ライダーや怪人についてもよく分からない私達じゃ。
「それに、スーパー大ショッカーはきっと……AMFについても知ってる」
「……ギンガさん、すみません。そのAMFって……前にも聞いたかもしれないんですけど」
「簡単に言えば、魔法を無効化する魔法です。半年前、それを搭載した機械兵器が大量に出てきて、都市を襲って。
犯人達は逮捕されたんですけど、そういう弱点が露見した事件だったので」
「じゃあスーパー大ショッカーがそれを使ったら、魔導師さんは戦えないってことですか?」
「今、ようやく分かりました。私達は、最初からなぎ君と一緒に戦えない。だって私達は」
震える両手で涙を払う。でも無念は止まらなくて、しずくとなって次々こぼれ落ちていく。
「魔導師以外の戦い方を知らないから――!」
「だから鬼になるって言ってるよね! どうして駄目なの……今まで頑張ってきたのに!
今まで、必死にやってきたのに! どうして私達じゃ駄目なの! 私達ならきっと何とかできる……そのはず、なのに」
そしてフェイトさんもまた泣く。私達にはもう、これしかできないらしい。ごめん、なぎ君。
私はなぎ君の彼女なんかじゃなかった。自分のことしか考えてなかった、自分が不安にならないことしか。
守ってもらうことしか考えず、ただ依存していただけだった。もう私は彼女じゃない……ただ、エッチなことをする関係だよ。
「……もう遅いよ」
そう、遅い。栄次郎さんが言うように……そこでキッチンの方から殺気を感じる。
その瞬間、いきなりヒビキさんが飛び込んで、思いっきり抱きつかれてしまう。それに驚く間もなく押し倒された。
……でもそれでよかった。私達がいたテーブルを粉砕する、黒いコウモリの群れ。
それが写真室を突き抜け、窓を突き破り外へと飛び出す。攻撃、された……!?
慌ててコウモリ達が飛んできた方を見ると、栄次郎さんは不敵に笑い、黒いメモリを取り出す。Dと書かれた、そのメモリは。
「ガイアメモリ!」
「おじいちゃん、何やってるんですか!」
「栄ちゃん!」
キバーラが声をかけても、帰ってくるのは鋭い視線のみ。いつもみたいな、甘い声と笑顔は返ってこない。
「もう、作戦は決行される……お前達も用済みだよ、仮面ライダー達!」
更にキンと空気が軋(きし)む。今度はAMFが発生して、魔力が完全キャンセルされた。
「ふぇ、ふぇ……どういうことなの! ギンガ、夏海さん!」
「まさか、栄次郎さん」
「……なるほどな。『門矢士(かどやつかさ)』を逃がすのに協力したのなら」
「アンタもまた……利用された一人か、スパイのどっちかってわけか。てーか写真館が移動しまくっていたのは、このせいか」
ヒビキさんが私から離れ、更に寝ていた一文字さんも立ち上がり、フェイトさん達をカバー。
そして笑いながら、栄次郎さんは左の袖口を捲(めく)る。そこにはガイアメモリのコネクタがあって。
「今こそ正体を明かすときがきた……そう、この私こそが! 偉大なるスーパー大ショッカー、大首領を生み出した」
……でも、そこで破裂音が連続的に響く。その発生源は遠慮なく右拳を振るい、栄次郎さんの右側頭部を殴り飛ばした。
栄次郎さんは一回転して、そのまま床に衝突。停止したその子は、落下したメモリに向かって。
「させるとでも?」
神速の抜刀――目にも映らぬ斬撃で、メモリを一刀両断。すると破壊されたメモリから、黒いもやみたいなのが飛び出してくる。
『ば、馬鹿なぁ! この私が……死神博士がぁ!』
天井近くでもがきながらも、それは破裂。……場が静まりかえった中、夏海さんが栄次郎さんに駆け寄る。
「おじいさん、しっかりしてください! というかあなたは……え、もう戻ってきたんですか!」
「何のこと? 戻ってきたも何も、ようやくここを見つけたところで」
……飛び込んできたのはなぎ君とアルトアイゼンだった。でも、ジャケットが違う……このマント付きは。
「も、もしかしてフェイトさんとお付き合いしてる、なぎ君?」
「……鬼退治に出た方の! あ、そう言えば身長がちょっと小さい!」
「小さいって言うな! というか、僕がフェイトを放り出すわけないでしょ。ギンガさんは馬鹿だなー」
≪あの人、やっぱり天然がひどすぎますしね≫
ヒドい断言をされた! ……だよね。フェイトさん、放置したら一人で生きていけないもの。
「お、遅く……なりました」
更にゼーゼー言いながら、細身の男性が入ってくる。この人は見たことが。
「紅(くれない)! あぁよかった……お前もきていたのか!」
「紅(くれない)……紅渡(くれないわたる)さん!? なぎ君が言っていた、仮面ライダーキバの!」
「士くんと私達を騙(だま)した極悪人じゃないですか!」
「す、すみません。ただその件はまた後で」
「その方がよさそうねぇ。栄ちゃんもこれなら」
キバーラが話を纏(まと)めようとすると、フェイトさんが飛び込んでくるので。
「後でじゃない! 今すぐあなたの変身アイテムを頂戴!」
「はぁ!?」
「あなたなんかより、私の方が正義の味方としてふさわしい! そうだよ……ヤスフミも早くして!
そうすれば管理局も守られる! 私達は管理局も含めて、この世界を守らなくちゃ」
だからなぎ君は遠慮なく回り込み、フェイトさんの腹部を蹴り飛ばす。
そして吹き飛んだフェイトさんは、壁に叩(たた)きつけられ気絶……放り出してるよ! というか殴り飛ばしてるよ!
「ほら、ヒドすぎる。……とにかくみんな、すぐに移動するよ」
≪何とか追い抜いてきましたけど、管理局の連中がこちらへ向かっています。恐らくは怪人でしょうが≫
「嗅ぎつけられた……当然だよなぁ。じいさんがスパイときたもんだ」
「だけどどうしてですか! それなら私達、もうとっくに踏み込まれていいはずです!」
「……最終作戦、発動直前ってことだよ」
「栄ちゃんというより、死神博士の戦線復帰が近かったせいよ。普通ならこのまま本隊と合流するはずだった」
「おじいちゃん……ほんと、何者なんですか」
その答えは誰も持っていない。ただ一つ言えるのは……やっぱり、もう遅すぎた。
この状況で最終作戦なんて、絶対にどうにもできない。また後悔を抱えながら、二人に引っ張られ私達は移動。
そのとき、大事なものも回収した。なぎ君の指示で写真室を漁(あさ)り、必死に見つけたもの。
それはカブトの世界を訪れた直後、なぎ君が撮影した……士さんの写真だった。そう、そのはず……なんだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『恭文(本編)達が移動を開始した同時刻――ウィザードの世界へ戻る前の八神恭文達は、ある真実と向き合っていた。
未来と過去が交錯しまくってややこしいが、だからこそこの時間軸は乱れいてるとも言えた』
僕が使ったのは新能力『紫電の暴風』。暴風というのはどういうものか……それは風圧を操作し、相手の動きを制限する能力。
うん、追加で疲労ってのも制限だよ。でも風を操るということは、中二病なら誰でも憧れること。
僕も実は例外ではなく……魔力の性質変換で風変換ってのを開発しようと試みてさ。
性質変換は炎熱・凍結・電撃の三種でそれ以外はない。だからやろうとして、頓挫しました。
リインフォースとシャマルさん曰(いわ)く、やる意味が分からないとまで言われた。うん、そうだよね。
衝撃波の類なら普通の魔法でもOKだし、空気圧操作とかならブレイクハウトでもできるもんね。
まぁそんなわけで風――空気については中二病の中二時代に勉強していて、紫電の暴風ではその成果も生かしている。
だからこそ一日で能力が完成したのよ。じゃなかったらさすがに無理だって。
とにかくそれで何をしたかというと……あのね、空気っていうのも波動の一種なんだよ。
だから屈折の法則が成り立ち、それを操作することでステルス効果も発揮できる。
まぁ簡単に言おう、僕は能力で周囲の空気圧を操作。ステルスフィールドをまとった上で二人と外に出た。
見つかるとヤバいなら、姿が見えなければいい。何という暴君理論だろう。
なお転送魔法はサーチャーもあるし、魔力反応の関係からなしになった。人混みに紛れ、怪訝(けげん)に思う人々を量産しながらも市街地脱出。
写真館はクラナガンの中心部にあり、別世界と言えどそこは変わっていなかった。ていうか、それでどうして気付かれなかったのか。
疑問に思いながらもミッド郊外――108の管轄下からやや外れている森林部。その奥に小さな入り口を発見。
いわゆる洞窟の入り口なんだけど……さて、どうやって侵入するかねぇ。セキュリティもばっちりだろうし。
木陰に不可視状態で隠れながら、まずはゴーグル型のセンサーで周囲を確認。ふむふむ、なるほど。
「やっぱただの洞窟じゃないね。入り口にセンサー類がびっしり走ってる」
「君のエグい暴風でやり過ごせないかな」
「まぁセンサー類は屈折率を調整すればいけるだろうけど、熱源はちょっと分からないなぁ。調整時間もなかったし」
「なら僕がハイパークロックアップ……でもなぁ。タキオン粒子の反応で掴(つか)まれるかもしれないし、しょうがない」
ダブトな僕は携帯を取り出し、その先を洞窟入り口へ向け。
「アルト」
«監視カメラ、ロックオン。アクセスできます»
「OK」
スマホというらしいそれをぽちっと操作。なるほど、この手があったね。
「えっと、君は何を」
「瞬間詠唱・処理能力でハッキングしてるんだよ。あらゆるプログラムを瞬間詠唱できるってことは、プログラム操作に長(た)けてるってことでもあるし」
「なるほど、それで中の状態も確認しようと。やるね、異界の魔導師」
「いやいや、オーラには負けてるよ。さて……監視カメラは至る所に仕掛けられてるね。二人とも、ちょっと待ってて」
「大丈夫なの?」
「慎重にやるよ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
まずはカメラの機能確認……やっぱりなぁ。赤外線に暗視センサーまで仕込んでるよ。
とにかくカメラのオート撮影は弄(いじ)らないようにして、その根本を辿(たど)る。
平然と構築されている膨大なネットワーク、それに驚きながらも監視システムの根源をチェック。
そこから基地全体をチェック。やっぱいるよ、ショッカー怪人が。
廊下、会議室らしき場所、実験場やろう屋らしき場所……そして、【それ】は地下の奥深くにいた。
……そこまでは専用エレベーターを使うしかないか。カードがないといけないタイプだけど、問題ない。
ハッキングでロックは解除できるもの。……これが瞬間詠唱・処理能力が持つ、一つの可能性。
ディオクマへ言ったように、プログラム処理に特化しているからこそできる裏技。
僕ならどんな電子ロックだろうと、どんなセキュリティだろうと一瞬で理解・分解が可能。
まぁそればっかやるとすぐバレるから、スニーキングもできるようしっかり訓練してるんだけど。
よし……掌握完了。奴らの実験データ、それに通信記録もコピーしておく。それを確認して、また一つ確信を得た。
フェイトがどう言おうと、この事実を公表すれば管理局は崩壊する。まずは、そこからだ。
「……掌握完了。もうこの基地の全ては僕のものだ。八神の僕、暴風で遠慮なく突っ切っていいよ。
ダミーのデータを送るようセッティングしてるから。でも研究員っぽい奴らが多数いるから、気付かれないように」
「御苦労様。それで当たり、かな」
「大当たりもいいところだよ。どうやらこの基地、もやしが脱出してから作られたっぽい。
研究員達や設備も揃(そろ)ってこっちに移送されている。目標物は……地下十階。地下百五十メートルの位置だ」
「よーし、じゃあ行こうか」
頷(うなず)いて、八神の僕が生み出す暴風に身を委ねる。でも、何なのあれ……正直カメラで見るまでは信じられなかった。
いや、信じたくなかった。こんなことを確認もせず言えなかったし、助けるとも約束できなかった。
僕が約束できたのは、二人を必ず送り返すということだけ。それだけしか……僕にはできない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ダブトな僕が頑張ってくれたおかげで、紫電の暴風による【かくれる】で潜入開始。
迷うことなく、途中遭遇する戦闘員も足音を殺してすり抜けスルー。ていうか生で初めて見たよ、ショッカー戦闘員。
いや、白衣を着ているから研究員なんだけど。どうやら地下に掘り下げる形で展開しているらしく、問題のエレベーターにはすぐ到着。
人の気配がないこと、エレベーターが既に来ていることを確認し、ダブトな僕がコンピュータを操作。
重々しい扉が開き、僕達はエレベーターへ乗り込む。そのまま下へ……とにかく下へ。
途中に幾つも階層を挟みながら、停止することはなく一直線に最下層へ。エレベーターを降りてから、一直線の廊下を進む。
途中の部屋などはなく、ただ突き進むのみ。それだけでこの階が異質なのを理解できる。
「ヤスフミ、一直線……だよな」
「うん。つまりここにあるのは、奥に存在するものを置くためだけの部屋」
「『それ』ですね」
どれだけ歩いただろうか。余りに変化がない道のりに感覚さえも狂い始めていた頃、ドアが存在する。
もったいつけたわりには質素な作りに首を傾(かし)げながらも、ダブトな僕がハッキング。
ゆっくりと扉が開かれ、中へ入る。……その中は運動場レベルな広さだった。
薄緑の壁が気色悪さを生み出し、その奥にあるものはそれすら圧倒する異物感。
僕も、ショウタロスも、シオンも……正体を察していたであろう、ダブトな僕とディオクマでさえ絶句する。
「ディオ……ディオ、クマ。まさか、宇宙の眼って」
そう聞きながら、僕も思い出していた。本当に小さい頃大好きだった、恐竜惑星というアニメがある。
天才てれびくん内でやっていた、実写とCGにアニメが融合した意欲作品。ストーリーの内容はこうだ。
恐竜時代を再現したバーチャルワールドに、てれびくん出演者な一人が飛び込んでいく。
同じく出演者な一人と、バーチャルワールドの管制官みたいなキャラがサポートし、その子は冒険していく。
バーチャルでも生態系はきっちり描かれていて、その当時の恐竜考察を徹底的に再現していた。
でもバーチャルだったはずの世界は、いつの間にかとんでもない交差点となっていて……というSFストーリー。
かなりハードな展開もあって、お姉ちゃんと毎日夢中になっていたっけ。では、宇宙の眼とは何か。
「そう……確か、アニメだとこうだよね。量子力学の不確定性理論に基づく人間原理宇宙論を利用。
バーチャル大陸の観測者たる恐竜の、進化上重要な個体脳を集めて作った……バイオコンピュータ。
全ての世界が交わる多元宇宙……その全てを観測し、全てを好きなように作り変える装置」
「神の理論を冒とくする行為。支配者が支配者足る意思を追求した結果生まれた……悪魔の行為。
アニメだと製作者達は、各時代の恐竜達を襲っては殺していた。首を落とし、脳を一つずつ集め……『それ』に搭載する」
二人の説明も上手(うま)く頭に入らない。でも理解する……理解できる。こんなの、どうやったって教えられない。
正体に気づいていたら、これを見たことがあるなら……教えられるはずがない! こんなの、教えていいことじゃない!
知る権利があるとかそんな次元の問題じゃない! もしこれで堕天龍達を責める奴がいたら、ソイツは何も理解していない!
『これ』を知る事そのものが、心を壊しかねないんだ! 現に織斑一夏だってそうなった!
これに……こんなものに! 大事な人が取り込まれているなんて考えて、普通はまともでいられるはずがない!
僕が耐えられるのも、きっと第三者だから……お姉ちゃんが、フェイトが、セシリア達がと考えたら、さすがに冷静でいられない。
紛(まぎ)れもない絶望だった。希望がなかったら諦めてしまいそうになるほどの、とびきりの絶望。
「じゃあ奴らは……奴らはそれを現実でやったってのかよ! 恐竜ではなく、人間や怪人達で!」
「織斑夫妻が、他の博士達がさらわれたのは、単純に優秀な科学者だからでは、なかったんですね……!」
«『これ』に耐えうる脳だから……それほどに優秀なものだから»
«嘘なの……スーパー大ショッカーは、人の組織だって聞いてるの! これを、人ができるの!?»
僕達の前にあるのは、眼(め)というより樹木だった。ジャーマングレーとカーキグリーンが交じり合ったそれは、イビツに歪(ゆが)み枝葉を広げる。
高い部屋の天井を埋め尽くさんばかりに広がり、その一つ一つに……そして木の幹に無数のポッドが埋め込まれていた。
そこに脳髄が、又は頭部そのものが、体の一部などが入れられ、翡翠(ひすい)色の液体に浸され命を刻む。
その状態でも生きていた……それは、生きていた。感じ取れるんだ、小さいけど無数のオーラが木に埋め込まれているのを。
「これが、宇宙の眼――!」
「そう! 奴らは神に――全ての世界を観測する者になろうとしている! これはその証明だ!」
ディオクマの叫びが響く中、改めて絶望と向き合う。これは決して、奪われたというだけでは終わらない。
スーパー大ショッカーは人の組織であるなら、これは人の所業。つまりそれは……自分への絶望。
欲望をたぎらせ、突き抜ければ誰でもこうなる。神さえも超える傲慢さで、世界を自分色に塗り替える。
そんな可能性と傲慢は、自分の可能性を諦めかねない絶望だ。……胸元を右手で握る。
立ち向かって、越えなくちゃいけないと今一度決めていく。それでも……それでも僕は。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
宇宙の眼――そう、蒼凪恭文(本編)とウラタロスが予測したものは、実際に作られていたのだ。
それもアニメに極めて近い形で。その後、彼らは宇宙の眼を停止状態へ追い込み、その上でウィザードの世界へ帰還する。
その後の流れは今までのお話を見てもらった通りだが……では、そんな『今の』恭文(とま旅)の視点へ戻ろう。
もやし復活のため、再びこの時間のミッドへと降り立った。ギンガ達からすれば一時間にも満たない、すぐの再会。
しかしその時間差も、起きた出来事の密度も違いすぎる。そんな差を埋めることなく、更なる試練が襲いかかる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
僕とユウスケ、阿木奈央はタッチの差で間に合わなかった。でもそこでフェイトルートの僕と、紅渡(くれないわたる)さんが合流。
ミッド都心部から離れた森林地帯……気絶してる馬鹿二人を引っ張り、必死に逃げてきたらしい。
それで合流してからすぐ、渡さんを改めてどつく。阿木奈央を紹介する暇もなく、ギンガさんからA4サイズの写真を出された。
涙目で渡されたそれは、僕が撮ったもやしの写真。でも。
「感光、しちゃってたみたいです」
顔や胴体部などは写っておらず、ギリギリテーブルや腰の一部が覗(のぞ)けるだけ。
それを受け取ると、夏みかん達が涙をこぼす。……もう事態は知っていたよ。
「多分士くん……現像するのに、時間をかけすぎたのかも」
「アイツらしいって言えば、そうなるのかな。自分の写真だしな」
「それでも、ちゃんと現像したんです。あなたが撮ってくれた、世界に映る自分だから」
「元のフィルムは」
「駄目……見つからなかった! ごめん、なぎ君! 私、結局何の役にも立てなかった!」
「いいや、これで十分だ」
写真を持って、意識集中……そのまま太陽と二つの月にかざす。そこには、当然シンジさんの写真も合わせた。
これだって、ただもやしを写しただけじゃない。もやしと、ユウスケと、僕が一緒にいたという証明だ。
「もやし……うん、もやしでいいよね。僕にとっての門矢士(かどやつかさ)は、『もやし』だ」
≪私にとってもそうですよ。ちゃんと覚えていますよ、あなたのことは。忘れるはずがありません≫
「お前の旅は、無意味なんかじゃない。あんな奴らに利用されたままで終わる、悲劇でもない」
そう言いながらユウスケが、笑って写真に触れる。
「お前は世界を壊し、そして繋(つな)いできた。俺達だけじゃない……火野の恭文も、春香ちゃん達も覚えている。きっとこれまでの旅で出会ってきたみんなも」
「それは、間違いありません」
夏みかんもユウスケと反対方向から近づき、細い指先でそっと触れてくれる。真っ白にぼやけた中に、もやしの姿を浮かべながら。
「だって別世界にいた私も、ヒビキさん達も……ちゃんと覚えています。忘れようと思っても、忘れられるはずがない。
……だから、戻ってきてください! ようやく……望んだ形ではないけど、あなたが生まれた世界を見つけたんです!」
「ほんと、ビックリだよ。お前と恭文のゴールが同じだったなんてさ。……士、あと少しなんだ! お前だってこのままは悔しいだろ!」
「認めないよ、僕は。アイツが門矢士(かどやつかさ)で、ディケイドだなんて……絶対に認めない!
ディケイドは確かに破壊者だ! でも全てを繋(つな)ぐ! アイツが何を繋(つな)いだって言うんだ!
何も繋(つな)いでない……ただ陰に隠れて、僕達の旅を利用した! そんな奴に名前を取られたままでいいの!? ……奪い返せ」
太陽は、月は、静かに風となって流れていく。でも終わらない……このままじゃ終わらせない。
「僕達が仇(かたき)を討つことは簡単だ。でもそれじゃあ駄目だ。だから、お前が自分の手で、奪い返せ――!」
その叫びは意味がないのだろうか。いいや違う、叫びは思いを届けるためだ。そのために誰よりも鮮烈に、奴の姿を思い出す。
偽悪的で、素直じゃなくて、大事なことはちゃんと言わない。でも誰よりも真っ直(す)ぐに、世界を見ていた男。
それは門矢士(かどやつかさ)――仮面ライダーディケイド。僕達の、大事な仲間……だから戻ってこい、もやし!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
……俺の旅は終わったはずだった。意味も分からず、突然に……ただ踏みつけられて、終わった。
そうだ、俺は死んだ。なのになぜか、まだ意識というものがあった。伸ばす手もなく、開く目もなく、ただ闇をさ迷う。
赤子が揺られるゆりかごのように、ただ眠れと……ただ終われと、世界が俺を否定する。
よく分かったよ、俺には帰るべき世界なんてない。そんなもの、どこにも存在していないし、してはならなかった。
だから俺の旅は終わった。なのに、声が響く。耳もないというのに、何かが伝わってくる。
すると声を通し、景色が広がる。一人はとんでもなくお人よしで、でも笑顔のために戦える奴。
一人は素直じゃない上に悪党だが、やっぱり誰かの笑顔を守るため、戦ってきた奴だった。
もう一人はそいつらより俺を知っている、クソ生意気な女。特にあの親指には要注意だ。
奴らは必死に呼びかけていた。こんな状態なのに、まだ戦えと……あの絶対的な悪魔に立ち向かえと、遠慮なく要求する。
正直に言えば、お断りだ。奴と向き合うだけで、俺はきっと……今までの全てを否定される。いや、もうされているか?
なのにまた別の景色が浮かぶ。一人は泣き虫で、本能に流される自分を怖がっていた、小さな王様。
だが必死に頑張っていた。世の中を、人を、同族を知り、少しずつ理想の王へと近づく。
そいつもまた、あの……悪魔が巣くう世界に降り立っていた。
――ワタル、いよいよだな――
――……うん――
――だが、ディケイドは――
――大丈夫。士さんも、ユウスケも……大丈夫――
一人は真実を追い求めるカメラマン。疑念と憎しみに駆られた瞳は、真っすぐに前を見据える。
相棒と、更によく知らない男と一緒に、やはり悪魔の世界へ。
――これは、記事にはできそうもないな――
――だから俺達の胸に刻もう。この真実は、決して揺らがせない。それで城戸さん、蒼凪さん達も――
――もう来ているはずだ。あとはタイミングを見計らうだけ――
――かうかうー!――
――あぁ、一緒に頑張ろうな――
次は……これまた写真繋(つな)がりだな。怪物である自分を恐れ、それでも宝を守ろうと戦っていた、赤き戦士。
どうやら高校にもなじめているようだ。奴らも分かったらしい……大事なのは心だと。
――そっか……でも、必ず戻ってくるよね――
――うん。それは、約束する――
――分かった。こっちのことは心配しなくていいから。……あ、でも士さんや、恭文君達にはよろしく――
――それも了解――
今度は八代刑事(別世界)と、あのひげ面ホームレス。が、奴のひげは奇麗にそり上げられていた。
更に身なりも制服姿でまた奇麗。今景色が見えていることより、そっちの方が驚きだぞ。
――じゃあショウイチ、いってらっしゃい――
――あぁ。奴らに恩を返してくる――
――八代、お前も成長したなぁ。俺ぁてっきり、泣き崩れ錯乱するかと――
――しませんよ。ショウイチが帰ってこられる場所を守る、それが私の使命ですから。
というか……絶対帰ってきてよね!? G3-Xの新規装着者捜しとか、やることは山のようにあるんだから!――
――あ、あぁ――
――八代よぉ……それは蒼凪を基準に、装着者を選出してるせいだろ――
――しょうがないですよね! あの子が残してくれたデータで、G3-Xはより強化されたんですから!
……あ、いっそ連れてきてくれない? 大きなゴタゴタが片付いたら、しばらくは暇よね――
……あえてここには触れない。続いてはあの騒がしいイマジン達。どうやらこそこそ動いていたようで、結構な大所帯だった。
――オーナーのおっさん、蒼坊主達だけ行かせてよかったのかよ!――
――まぁ、僕達がぞろぞろ行くわけにもいかないけどさぁ――
――仕方ないでしょう。彼に頼まれたこともありますから、急いで準備しなくては――
――そうやで、桃の字。恭文はちゃんと決めてくれる。何せ良太郎と同じで、『ここ』が強いからな――
――……知ってるよ、そんなのはよ。でよ……その良太郎はどこなんだよ!――
――良太郎、自転車でトラックに飛び込んで、そのままどっか消えちゃったらしいしねー。それも探さないとー――
――ふぇ……ふぇー! ヤスフミ−! 良太郎さんー!――
その後は、いろいろな意味で転機となったカブトの世界。そこにはあの天道がいて。
――アンタはよかったのか。あの子についていなくて――
――もう奴は自分の太陽が見えている。ハイパークロックアップに振り回されることもないだろう――
――しかも、『アイツの』ダークカブトゼクターがついているから……か?――
――あぁ――
――だがな、天道……ホントどういうことだよ! いや、ダークカブトゼクターについては聞いていたぞ!
とにかく他のことだよ! まずここはどこ! この人は誰! そして俺の仕事はどうなるんだよ!――
――安心しろ、お前の代わりは幾らでもいる――
――てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!――
次は鬼達の世界。奴らは流派を取りまとめ、試行錯誤の毎日だ。だが基本は絶対に忘れない。
人を守るための鬼であり、そのための自分達だと。新しい道の中、やはり鍛え続けていた。
――そしてその傍らには、弟子達を応援する師匠の姿が。どうやら揃(そろ)ってラーメン屋になったらしい。
――そうかそうか、ついに出陣か。まぁラーメン食って、元気をつけてから行け。腹が減っては戦はできぬってな――
――はい。でもお店、好評みたいですね――
――ヒビ……店長がどんぶり勘定で大変ですけどね。その分僕と副店長が脇を締めて――
――コイツ、鬼時代と何一つ変わってないからな。ほんと……少しは成長しろよ! トドロキとあきらだって進展してるぞ!――
――し、進展って! 自分達はそんな……ちょ、ちょっと手を繋(つな)いだくらいで!――
――えぇえぇ!――
――……現代っ子として、それで全力はどうなんだよ――
それ以外にもたくさんの奴らが出てくる。旅の中で出会い、すれ違い、時として衝突した奴らだ。
しかし絆(きずな)を結んだ。俺は確かに……この、記憶もない俺が、自分が何者かすら分からない俺が、何かを繋(つな)いだ。
言いようのない喜びを感じていると、光が見える。目も、耳も、口も……伸ばす手も奪われたのに、見えるんだ。
そして叫びがまた聞こえる。俺を覚えてくれている、俺と何かを繋(つな)いでくれた奴らの声が。
寂(さみ)しがり屋の子どもが叫ぶように、手を伸ばしてくる。本当はこのまま眠ってもよかった。
もう十分すぎるくらいに戦い、答えを突きつけられた。だが……仕方ない、あぁ仕方ないよな。
もう少しだけ、嫌われ者の破壊者を続けてみるか。だから『足』を踏み出す。体ではなく、その心を。
前に進むため、旅を続けるため、光へと進みたい。あの思い通りにならない、広い世界へ戻りたい。そう、願うことで。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そのとき、不思議なことが起こった――それは奇跡か、それとも必然か。きっと一生涯答えを出せない。
でも写真から生まれた光は、僕達の前方にプリズムを呼ぶ。それがディケイドのライダーキックみたいに、幾つも折り重なる。
……その中を通り抜ける影が生まれる。ぼやけた人型は少しずつ、プリズムを通り抜ける毎(ごと)に鮮明となる。
あの長い手足、すらっとした体型は黒のスラックスとジャケットに包まれ、壊されたはずのトイカメラを首からぶら下げる。
そして不敵な表情を見せながら、最後のプリズムを抜け……僕達が望んだものは、足を止めた。
「……ここが俺達の世界か。ゾッとするほど、醜いもんだ」
「……士ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「士くん!」
『士さん!』
そして飛び込むユウスケと夏みかん……二人を受け止め、揉(も)みくちゃにされながらも笑うもやし。その姿にそっと……安堵(あんど)の息を吐く。
「しかし蒼チビ、お前らしくないな」
「どういうことよ」
「お前なら分かってるはずだぞ。俺を蘇(よみがえ)らせるのが、どれだけ厄介か……なのにぎゃーぎゃー叫びやがって。
おかげでお前を見習って、天使ハーレムを作ろうとしていたのにドタキャンだ」
「そりゃ悪かったね。でも……問題ないよ。渡さん達を死ぬほどこき使って、問題解決させるから」
「は、はい……頑張ります」
「俺も、頑張ります。鍛えてますんで……はい」
ギロリと睨(にら)み付けると、二人は揃(そろ)って反省顔。うんうん、それでこそ正義の味方……外道手段は僕だけに許された特権です。
「ギンガマン、取りあえず姉さんと夏みかん達を頼む……あとはじいさんもだな」
「ちょっとー、あたしのこと忘れてないー? 栄次郎ちゃんは任せてよ」
そこでキバーラは僕達の間を飛んで、楽しげにウインクしてくる。
「メモリの毒素もチューチュー吸い出しておくから」
「え、そんなことできるんですか!?」
「コウモリだもの、あたしー♪ なのでギンガちゃんもちょっと手伝ってね。あなた、サキュバスの資質がありそうだし」
「あっても関係ないよね! というか、士さんはどうするのかな! ドライバー、奪われたままですよね!」
「何とかするさ。……それじゃあ」
……そして突如として、首都から響き渡る爆音。空から降り注ぐのは、悪魔の兵団達。
それが人々を、街を泣かせ、混乱に陥れる。さて、それじゃあ行くとしますか。
「一暴れするか」
「あぁ」
「僕達の世界を好き勝手にした報い、地獄でたっぷり受けさせてやる」
≪それで取り戻しましょうか。私達の未来を≫
そして僕達は飛び出す――戦場は廃棄都市部。奴らはそこに集まり、名乗りを上げている。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
実にあっさりとしたもんだ。まぁ都市機能から掌握していたら、楽なもんか……なので軽いお遊びをさせてもらう。
――全次元世界の諸君、ごきげんよう――我々はスーパー大ショッカー。この世界を影から牛耳っていた者だ――
廃棄都市部を怪人どもと歩き、ゆっくり、じっくり、中央本部へと向かう。するとどうだ、管理局残党どもは大慌て。
――突然だが本日を持って、時空管理局は終わる。まぁ、元々俺達が乗っ取っていたんだが。
差し当たっては……侵略行為というものを、始めさせてもらう。もう気づいているだろう、この攻撃は我々の仕業だ。
……なぜ支配しているのに、攻撃が必要か? 簡単だ……見せしめだよ、見せしめ――
必死にこちらを攻撃してくるが、そんなんじゃあ進軍は止められない。だがほんと、滑稽だ。
――俺達に逆らうことが、どれだけ愚かなことか。それをしっかり学んでもらいたい。
大丈夫……お前達が本当に必要な人間なら、誰も死なない。死ぬのは俺達にとって無価値で、不要な人間だけだ――
「撃て……撃て撃て撃てぇ!」
「駄目です……やはりAMFが! 中央本部とも連絡が取れません!」
「本局もです! これでは本当に、奴らが宣言した通り!」
「くそ、何なんだ……! これは一体、何なんだ!」
もう中央本部なんて、とっくに掌握しているのにな。それを守ろうとしているから、笑えることこの上ない。
しばらくはこれで時間が潰せるだろう。奴らの絶望も楽しみながら、他の世界がぶっ潰れるのも待つ。
既に『眼』は起動状態。やりようは幾らでも……だがそこで、バイクの音が響く。
そこで走ってくるのはトライチェイサー、デンバード。それにマシンディケイダー。
しかもディケイダーに乗っているのは……さすがに、嫌な動悸(どうき)で心が満たされる。
奴らはバイクを降りて、俺達師団と真正面から向き合った。距離も二百メートルほどしか離れておらず、恐れることもなくだ。
小野寺ユウスケ、阿木奈央……八神恭文、蒼凪恭文。それにダブトの蒼凪恭文と、『俺』。
何とも嫌なメンバーが勢揃(せいぞろ)いじゃないか。まだ抵抗するというのが余計に笑えてしまう。
「よぉ、俺」
奴は、俺の劣化コピーは楽しげに笑い、両手を仰々しく広げた。
「楽しげなパーティーをしているじゃないか。だが少々悪趣味だ……そんなんじゃ友達はできないぞ?」
「……どういうことだ」
「自分で考えたらどうだ? 全知全能の神様同然なんだろ……なぁ? ダブトの恭文、阿木さん」
「そうだよ。例えば宇宙の眼、とか」
……慌てて宇宙の眼とのリンクを確かめる。だがさっきまで存在していたはずのそれは、一瞬で断ち切られていた。
「無駄だよ。それはとっくに僕達が潰している」
≪シャドームーンも、秘密基地にいた怪人達も倒し尽くしました≫
ダブトの蒼凪恭文とデバイス達から、とんでもない宣言がされた。おいおい……さすがにそれは予想外だぞ。
というか、シャドームーンが負けたのか? 組織のナンバー2だぞ、あの男は。
「お前がせっせと小悪党をやっている間に、こっちも動いていたんだよ。……宇宙の眼を用いた、全次元世界の統一と支配。
ディケイドのことも、ライダー達を影から利用していたのも、全部はそれを覆い隠すためのカモフラージュだ」
「こっちもほぼ無関係なのに、散々迷惑をかけられてるのよ。放置するわけがないでしょ。ちなみに宇宙の眼、最初に気づいたのは」
阿木奈央が少し楽しげに、ライダーじゃない蒼凪恭文を差す。
「僕とウラタロスさんでーす♪ でもおかしいなー、全知全能なのに、それすらさっぱりって」
「これからなるところだったんだよ。なのに、遠慮なく邪魔してくれて……ありがとな――!」
「どう致しまして。そうそう、死神博士も潰したよ。これで光栄次郎は完全に解放された。
……でもほんと、よく考えてるよ。全部の主軸をディケイドシステム、そしてお前に置いてみると、いろんな疑問が奇麗に解ける」
≪全てはあなたが神となるための儀式。そうも言えますからね≫
「……やはり貴様は悪魔だな。思えばそこの劣化コピーより、お前達の方が厄介だったよ。
別世界にいる奴らも含めて……こっちの計画や思わく、それを尽く見抜いてくる。お前達は何だ、シロアリか」
「同感だ。こんな性悪が三人四人と揃(そろ)ってたら、忌ま忌ましいってレベルじゃないよなぁ」
「だが……無駄だよ。それならそれで、力で全てを破壊すればいい」
俺も両手を広げ、部下達に命令。この虫けらどもを、今すぐ殺せと――!
「お前達仮面ライダーに、もうできることはない……あばよ、クズども」
「……よく分かったよ、お前はやっぱりディケイドじゃない」
「おいおい、錯乱しているのか? 俺は」
だがそこで言葉を止めてしまう。奴は……劣化コピーは、本気で言っていた。もう変身もできないだろうに、俺がディケイドではないと。
「ディケイドは壊した先に、全てを繋(つな)ぐことが使命だ。お前達から見ても、天道達から見ても、それは変わっていなかった。
……だがお前達が作る未来には、繋(つな)がるものがない。全てが奪われ、踏みつけられる。それが旅の終着点なんて、誰が認めるか」
そして汽笛が響く――デンライナーが三時方向から、ゼロライナーが九時方向から走り、奴らの後方で交差・通過。
更にオーロラのカーテンも各所に展開。その中から飛び出してきたのは、ライダー達だった。1号、2号、V3達昭和ライダー。
更にアギト、龍騎と言った平成(へいせい)ライダーが二セット。電王とクウガ、ファイズ、ブレイド以外、二人ずついるんだよ。
それを伴って出てきたのは、火野恭文と海東大樹、剣崎一真、天道総司……それに、野上良太郎とモモタロス達だった。
そうそう、桜井侑斗とデネブ――ゼロノスまでいる。奴らもこそこそ動いていたのか。
「そうだ、認めない……俺達仮面ライダーは、自由を守るものだ! だから俺達の旅はどこまででも続く!
俺達が諦めない限り、全て未来へ繋(つな)がる! 可能性という名の自由を――命と魂を賭けて守り通す!」
更に奴はディケイドライバーを取り出す。俺が今、腰につけているそれを……それと、全く同じものを!
おい、どういうことだ。奴のドライバーも、カードも、旅の成果は全て返してもらった。なのに、なぜ。
「お前達」
初めて、あの虫けら達に押されていた。畏怖と、見えない未来に怯(おび)えながら、奴らを……憎き仮面ライダー達を指差す。
「一体何者だ――!」
「通りすがりの仮面ライダーだ」
しかもライドブッカーから、奴は平然とカードを取り出す。それはもちろん、俺のカードだった。
「覚えておけ、偽者!」
……その言葉に怒りをたぎらせ、咆哮(ほうこう)。獣の叫びを上げ、奴らを指差す。殺せ……いいや、殺す。
奴らに生存権など認めない。そうだ、それでいい……これは世界を制覇する前の、ほんのお遊び。奴らの命など、すぐに捻(ひね)り潰す。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
しっかり宣戦布告をしたところで、知った奴らや知らない顔が勢揃(せいぞろ)い。それにはユウスケも頬が緩む。
「ワタル……シンジさん! それにショウイチさん達も!」
「お前達……暇人か」
「ヒドいなぁ。士さん達に任せられないから、仕事を放り出してきたのに」
「……俺なんて、蒼凪を連れてくるように言われたんだぞ」
「何でですか!」
「俺よりアイツの方が、G3-Xを使いこなせるからだ……!」
あぁ、言ってたなぁ。てーかアレ、マジだったのか。……コイツらとも繋(つな)がっているのかと、つい笑ってしまう。
そしてこの場にいる『1号・2号・V3』を見やる。そう、コイツらは俺達の知る本郷達だ。
てーか一文字は置いていったはずなのに。さすがに重量オーバーなんだよ。
「で、何でお前まで」
「俺の体、直してくれる約束だろうが。その前に潰れても困るんだよ。……てーかそれは本郷達に言え」
「いや、俺も授業中のところ、いきなり引っ張られて」
「必要だったからね」
そこでサムズアップしてくるのは、海東だった。……やっぱてめぇとハ王の仕業か! 本気で戸惑ってるだろうが、コイツら!
「私は社の再建に向けて、大事な会議中に……そこの、少年が相手の社長を口説き落として」
「余りに素敵だったんで」
そしてハ王がサムズアップ……てめぇもいらねぇ! てーか何してやがる! 増援を連れてきたんじゃないのか!
「すまん、俺には止められなかった……! というか相変わらずか、君は!」
「素敵な女性に敬意を払っただけですけど」
「嘘でしょ! ……まぁ、今はよしとしましょう。我々のやることは、大して変わらない」
「だな。ショッカーが敵なら、遠慮はいらない」
それでいいのかと笑ってしまうが、もう遅いな。何せ奴は噴火寸前……これで逃げても、世界が全部好き勝手にされるだけ。
さて、後は姉さんルートの蒼チビが言っていた通り、俺がどこまでシステムを使いこなせるかだ。
向こうのディケイドは相当チートらしい。だが俺なら……俺達なら。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
おぉおぉ、小物っぽく怒りを滲(にじ)ませちゃって。ダブトの僕もその様子がおかしいのか、肩を竦(すく)めて笑っていた。
……お前には分からないだろうね、偽者。確かにディケイドライバーは忌むべき遺産であり、士さんはその器だ。
しかもお前という本体のコピー。でもね、お前自身がダブトの僕やユウスケさん達に言ったことだ。
カメンライドはただのシステムじゃない。そのライダーの在り方や存在意義を理解し、初めて永続使用が可能となる。
士さんはデータ収集機として、それを肌で理解したんだよ。実際に旅をして、人と触れ合うことで。
だから既に士さんとディケイドライバーは、一心同体。そのシステムも士さん自身と言っていい。
同時にお前という本体から離れたことで、士さんは全次元世界でただ一人……お前に一番近いカウンターともなった。
そのことはここへ来るまでにも説明してあるから、あとは士さん次第だ。
「恭文君」
良太郎さんはややへろへろしながらも、僕の隣に立ってくれる。更に侑斗さんもついてくれる。
その間にダブトの僕やユウスケさん、士さんもベルト装着。僕もデルタギアを取り出し、腰に素早くセット。
デルタフォンを右手で持って、顔に添える。もちろん良太郎さんもデンオウベルトを巻き付け、バックルの赤いボタンを押す。
「ごめん、遅くなった……というか侑斗、ありがと」
「礼を言う前に、お前は運の悪さを何とかしろよ! 何で北海道(ほっかいどう)まで行きかけてんだ!」
「北海道(ほっかいどう)!?」
≪……長距離トラックだったんですね≫
「そうなんだよー。おかげで俺達も……あ、お土産にカニを買ってきたから、あとで食べようね」
「お前は何やってんだぁ!」
あぁ、デネブさんが相変わらずマイペース。侑斗さんにヘッドロックされている様を見て、何だか安心してしまった。
「ありがとうございます。……さぁ、気合いを入れましょ。奴をぶっ飛ばせば」
「僕達の体も戻る――!」
「えぇ!」
さてさて、忘れているかもなので、一応補足。僕と良太郎さん、なのはとフェイトは未(いま)だに小学生サイズ。
でもそれも当然だった。鬼退治以外で、ここまで派手に時間や世界が歪(ゆが)められていたら……!
「フェイトさん達もだよな! 一緒に頑張ろう、侑斗!」
「うるせぇ! というか野上! お前……そんなに戻りたかったのか! 必死すぎだろ!」
「だって、この格好じゃあ大検も受けられないし……姉さん達からも心配されっぱなしで」
「僕だって、成長の証しを奪われたままじゃ……!」
「お前はさほど変わってないだろ!」
だから、アイツをぶっ飛ばす! そうすれば全部問題解決だ! まぁさすがにデルタだと力不足だし、僕がやるのは露払い程度だけど!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ワタル、シンジさん、タクミ、ショウイチさん……みんなも来てくれたのか。しかも原典っぽいヒビキさん達と一緒に変身してる。
なお僕達が知っている良太郎さん達は、外の世界担当らしい。もちろんここにいる以外のライダーも大暴れしている頃だろう。
くぅぅぅぅぅぅぅぅ! このシチュエーション、燃えるね! 笑いながら、飛んできたダブタロスをキャッチ。
天道もカブトゼクターを受け止め、なぜか僕と並び立つ。……って、その隣にいるのは。
「加々美新!?」
「あ、どうも……初めまして。……ていうか天道! 何だよこれ! 誰だよアイツら! ここはそもそもどこだよ!」
「流れに乗れ。そうすれば分かる」
「現時点で分かってないのにか! ああもう……とにかくアイツらを倒せばいいんだな!」
そう、警官服姿の、加々美新さん……仮面ライダーガタックだった。その右手には、クワガタ型のガタックゼクター。
うん、この人が原典のガタックなんだよ。しかも強引に連れてこられたっぽい……まぁいいか。ここはみんな一緒に。
≪≪KAMEN RIDE≫≫
≪Wizard≫
『変身!』
声を上げて変身――もやしと海東は、それぞれのドライバーにカードを装填。
≪DECADE!≫
≪DIEND!≫
あり得ない僕はウィザードライバーにメモリを装填・展開。
≪Wizard≫
良太郎さんはパスをセタッチ、初対面な桜井侑斗さんは、カードを挿入。フェイトルートの僕も、どういうわけかデルタギアで変身。
≪Sword Foam≫
≪Charge And Up≫
≪Complete≫
そして僕と天道、加々美さんも、ベルトにゼクターをセット。阿木奈央も……やっぱり嫌な予感がする。
とにかく地中から飛び出したサソードゼクターをキャッチし、ヤイバーの鍔元(つばもと)にセット。
するとセット箇所からヘックス型の光が生まれ、そのままヒヒイロノカネの装甲となって身に纏(まと)う。
≪≪≪≪HENSIN≫≫≫≫
そうして全員が変身完了――モモタロスさんは自分を指差し。
「俺」
両手を広げ、一気に見栄(みえ)切り。
「参上!」
「「最初に言っておく!」」
デルタとゼロノスは声を揃(そろ)え、背中合わせになりながら奴らを指差し。
「「俺(僕)達はかーなーり――強い!」」
≪ついでに言っておきましょう、私達をよろしく≫
≪俺もよろしく!≫
一人黒子状態を脱却できた、阿木奈央――八神の僕。あぁ、嫌な予感がする……!
とにかくサソードヤイバーを右肩に担ぎ、左半身を突き出して、膝に腕を載せる。
まるでファイズが必殺技を撃つような、そんなラフスタイルを取りながら。
「ひとっ跳び付き合えよ――!」
しっかりと名乗りを上げる。おぉ、これはいいかも!
「It's」
あり得ない僕はケープを揺らしながら一回転。奴らに右指を向け、二回鳴らす。
「Show Time!」
なので僕も……前に出て、右手をスナップ。
「さぁ」
そのまま奴らを――たくさんの悲劇と死、涙を呼び起こしてきた奴らに、あの言葉を突きつける。
「お前達の罪を――数えろ」
「……殺せ!」
そして怪人達は疾駆――それに合わせ走り、降り注ぐ戦闘員爆弾を回避。
その着弾と爆発を背にしながら、奴らと肉薄。ついに最終決戦の火ぶたは、切って落とされた。
世界の破壊者・ディケイド――幾つもの世界を巡り、その先に何を見る。
『とまとシリーズ』×『仮面ライダーディケイド』 クロス小説
とある魔導師と古き鉄と破壊者の旅路
第42話 『二人の世界/終わりの始まり』
(第43話へ続く)
あとがき
恭文「というわけで、久々なディケイドクロス! 今回は最終決戦のプロローグという感じですが……お相手は蒼凪恭文と」
フェイト「フェイト・T・蒼凪です。……士さんはついに復活! この辺りはMOVIE大戦だよね」
恭文「うん。そして最後の世界、そのタイトルは『二人の世界』。これはずっと前から決めていてね」
フェイト「あっちのヤスフミとギンガの世界?」
恭文「ううん。ダブトとディケイドの世界って意味合い」
フェイト「そっちなんだ……!」
(そしてなにげに蒼凪・蒼凪(とま旅)・八神・火野の初同時変身でもあります)
恭文「あ、そうなんだよね。もちろんこのとき、僕と火野の僕は、八神の僕が絡んでいるのとかサッパリだったけど」
フェイト「でもサソード」
恭文「……フォーゼドライバーが使えないから、ああいう形に……なお、あとは分かるね。でもツッコまないのが様式美だよ」
フェイト「様式美!?」
(ある意味フラグです)
恭文「これで劇場版のネタはあらかた回収したからなー。あとは決戦だよ、決戦。
もうあとやってないのは、及川奈央さんやらドラスやら」
フェイト「そ、その辺りは出なくてもいいんじゃ……でも士さん、どうするの?」
恭文「あぁ……大首領を倒しても、同質の特異点として残っちゃうからね。そしてここでテレビの最終回を回収して」
フェイト「それは駄目−!」
(そしてループになる罠……いえいえ、そんなことはしません。ちゃんと落としどころは考えています。
それもウィザード特別編とか、昭和ライダーVS平成ライダーにも繋がる方向で……ある意味地獄かもしれませんが。
本日のED:GACKT『NEXT DECADE』)
あむ「地獄って何!?」
恭文「ある意味ビターエンドかもしれない。とにかくこういう感じで、スーパー大ショッカーと戦ったわけだよ」
あむ「でもアンタなら他の変身……あ、そっか。この時点だと同人版でも、カクレンジャーの事件とかは起きてなかったっけ」
恭文「だから魔法を封じられると、さすがにね。……というわけで設定変更で、A's・Remixの一件にも出張します。
あれだ、駅長に頼まれて、わけ分からないうちに飛び込んだとか、そういう話にすれば」
あむ「駄目に決まってるじゃん! 出張してどうするの!?」
恭文「いや、メカアクションの手本を示していこうかと……分かったよ、同人版だけでも頑張るよ」
あむ「サイズ差を鑑みろぉぉぉぉぉぉぉぉ! あと何遠慮してるの!? 遠慮する意味もないし!」
古鉄≪それなら士さんの方がいいでしょ。オールライダーVS大ショッカーのラストバトル、拾えますよ≫
(おしまい)
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