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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
幕間そのじゅう 『生きていると、やるせないと思うこともある 生きていると、色々考えて色々思うこともある 14歳が世界で一番頭が悪いと言われるのは、間違いなく厨二という言葉のせい・・・編』:2




・・・イギリスでそんなことが起こっていた頃、私とアルフはエイミィと一緒にあれこれ調査中。案件はもちろん、はやて達を狙ってきている人達について。





アースラの端末とにらめっこしながら、データを引き出す。数は・・・16人か。結構多いね。でも、まさか同じ局員が来るなんて・・・。










「・・・まぁ、クロノ君やリンディさんみたいに、闇の書の被害者・・・というか、その関係者って言った方がいいかな?
それは局の方が多いかも知れないしね。現に上層部の方だと、それが原因ではやてちゃんや守護騎士のみんなは相当受けが良くないらしいから」

「なんかそれ、嫌だなぁ。だって、はやては悪くないじゃん。ザフィーラ達だって、昔はともかくはやてが主になってからは、そのはやてが闇の書のせいで命の危機に立たされて、やむなく・・・だろ? なのに、なんで今更恨み買ってそのせいで狙われなきゃいけないのさ」

「事件としては解決しても、遺族の気持ちは癒えない・・・ということじゃないかな。事件は解決して、ロストロギアはなくなりましたーじゃ、納得出来ない人だって居るんだよ。怒りややるせなさ、どこにもぶつける場所が無い人はさ」



・・・私も、そうなのかな。私も、自分では知らないだけであの時傷つけた人が沢山居て、それで・・・あぁ、やめよう。今は仕事だよ。

とにかく、行方を消したのは全員エース級・・・って、またこれはひどいよ。どうして揃ってランクがAAもあるの?



「・・・ねぇ、これってもしかして、恭文くんの運の悪さのせいかな?」

「そうじゃないことを祈るよ、いくらなんでもこれは無いって。それでフェイト、どうする?」

「まずは、このデータを向こうのグレアムさんとリーゼさん達に。この通りかどうかは分からないけど、きっと必要なものだから」



そうして、データを纏めて送ろうとした時、通信がかかった。これは・・・ヤスフミ?



『フェイト、聞こえる?』

「あ、うん。・・・ヤスフミ、どうしたのかな」

『どうしたのかじゃない、なんで僕に黙ってたのさ。・・・今そっちに写真送ったけど、一人グレアムさんに接触してきた』



そうして送ってこられた写真を見て、私達は驚愕した。だって・・・居なくなった局員のうちの一人だったから。



『今は動けないようにして納屋にぶち込んでる。まったく、ふざけた奴だよ? グレアムさんにはやてと師匠達を引き渡せって恥ずかしげも無く要求してきやがった』

「ちょ、ちょっと待ったっ! 恭文くん、もしかして・・・」

『もちろん知ってます。はやて、狙われてるんですよね? まぁ、原因に関しては全部は聞いてないけど』



まさか、相手がもう行動を起こしてるなんて・・・。これ、急いだ方がいいかも。



『それで、はやてや師匠達には黙ってることになったから。あ、グレアムさんの判断ね。僕達揃って、どういうわけか巻き込まれることになってるんで、よろしく』

「よろしくってお前・・・。またそんなぶっとんだ事を」



というより、グレアムさんの判断って・・・。あぁ、なんだかとんでもないことにならなければいいんだけど。



「・・・ヤスフミ、無茶しないでね。あの、それだけは絶対」

『分かってる。大丈夫だって、リインも居るから切り札も切れるし』



それだけ言うと、ヤスフミは右の手を拳に変えて、ぎゅっと握り締めた。



『事情がどうあれ、売られた喧嘩は買って、そして勝つ。それだけだよ。あと・・・』



あと・・・?



『いや、フェイトには話したと思うけど、こっちにフィアッセさん帰ってきてるしさー♪ チャリティー・コンサート無事に見に行かなきゃいけないのに、負けてなんていられるわけがないでしょっ!!』



その言葉に、全員がコケた。思いっきりコケた。



『あー、楽しみだなー♪ ワクワクだなー♪ フィアッセさんもそうだけど、他のお姉さん達の歌も楽しみだなー♪』



そして、立ち上がろうとした時に続けの言葉も聞いてまたコケた。だって、あんまりと言えばあんまりな理由なんだもの。



「なぁ、恭文。お前・・・そんなにあの歌手の人が好きか?」

『はい♪』

「むちゃくちゃいい笑顔で言い切ったっ!? いや、あの・・・まぁ、なんて言うかさ、もうちょっと頑張ろうよっ! もうフェイトちゃんと仲直りしてるよねっ!!」

『それとこれとは話が別ですよっ! フィアッセさんの歌、素敵なんですよっ!?』



そう力いっぱいに力説するヤスフミを見て、全員が頭を抱える。どうやら、ヤスフミのフィアッセさんが大好きなのは、どんな状況でも変わらないらしい。

確かにあの人はすごい。ヤスフミがあれからCDとかを探し出してよく聴いてたのも知ってる。私もあの一件で生の歌を聴かせてもらったから、本当に良く分かる。でも・・・あの、なんて言うか・・・大丈夫なのかな。やっぱり年齢差もあるし、このままずっとなんてことは・・・。



「・・・うん、まぁ、それならいいんだ。あ、すぐにこっちから相手のデータを送るから、グレアムさんとリーゼさん達に渡してね」

『分かった。それじゃあ、フェイト。捜査関係お願いね。暴れるのは僕がやるから』

「了解」










笑い合ってそう言ってから、通信を終える。・・・向こうは大丈夫。ヤスフミ、本当に強くなったんだから。





だから、信じよう。私・・・そう決めたもの。話して、理解して・・・分かった事、無駄になんてしたくない。










『しかし、そう思った気持ちも数年後には色々な事情から忘れ、私は大事なあの子を子ども扱いするようになった。そして私は思う。あぁ、時の流れはなぜこんなにも残酷な』

「変なナレーション入れないでっ! というより、どうして通信切ってないのっ!?」





と、とにかく・・・改めてしっかりと通信を切った。うぅ、私、ヤスフミの強さにちょっとついていけてないかも。





「・・・でもフェイト、これからどうする? いや、アイツのことじゃなくて事件のこと」

「まず、身辺調査だよ。この人達は、闇の書事件の真相を知ってる。でも、あの一件は情報制限が敷かれてて、普通の局員が真相を知りえるはずがない。だから・・・」

「なるほど、どうやって知ったかを調べるんだね」





アルフの言葉に私は頷く。私の知る限り、本当に普通の局員ははやてや守護騎士のみんなのことを詳しくは知らない。特秘事項になってるもの。なのに・・・これ。

素直に考えるなら、誰かが教えた・・・とかかな。もちろん、自力であれこれ調べたという可能性もあるけど。あと、他に協力者が居ないかどうかも徹底的に・・・だけど、迅速に調査。



現場はヤスフミやグレアムさん達が居る。だから私は執務官として、捜査に全力を出す。





「エイミィ、悪いけど」

「了解。執務官補佐としての力、見せてあげようじゃないのさ。一気に調べて、ぱぱっと解決しちゃいましょ」










・・・出来れば、これ以上なにも起きないで欲しい。





もし、この件をはやてが知ったら、きっと・・・気に病むから。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・なるほど、局員がはやてを襲撃ね』

「あぁ、済まないが大至急調査を頼めるか? こっちの担当はフェイト執務官だ。上手くやってくれ」

『了解。あ、そう言えばクロノ、例の子元気なのかい?』



例の子? ・・・あぁ、もしかして・・・アイツか。



『そう、アイツ。クロノからよく話の出てる例の子。確か、彼も今グレアム元提督の所に居るよね』

「あぁ。これが中々無茶なやつでな、本人は今回の一件にも巻き込まれてやる気満々だ」

『なるほど・・・。ね、今度会わせて欲しいな』



そう言いながら、通信画面の中のロッサが笑う。・・・なぜか彼は、うちの弟に興味があるらしい。なんでも、話を聞いていると自分と騎士カリムに姉のように接してくれる人に似ているのだとか。

確か・・・クロスフォード財団の分家の娘さんだったな。



『そうだよ、これがまた無茶な人でさ、今でこそおとなしくしてるんだけど、数年前まではもう暴れ馬も同然だったんだから。で、それに似ている11歳児となると、やっぱり興味があってね』

「なるほどな・・・。まぁ、機会があれば会わせるさ。君とは多分気が合うと思う」

『そっか、それは楽しみだよ』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「へ・・・へ・・・へっくしゅんっ!!」

「・・・どうしたヒロ、風邪か? つか、さっきもしてたよな」

≪あー、サリ。それはねぇって。馬鹿は風邪引かねぇって言うだ≫

「あ?」

≪すみませんっ! 出すぎた事を言いましたマスターっ!!≫

≪ヒロリス女史、具合が悪いのであれば早退というのも手ですが≫

「あー、大丈夫だよ金剛。・・・おかしいな、ちゃんと毛布はかけて寝てるし、ご飯もちゃんと食べてるし・・・誰か私の噂でもしてるのかね」

「それこそありえないな、それならくしゃみは二回のはずだ」

「・・・サリ、アンタそれどういう意味さ」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・やはり現役の局員か」

「それも一応のエース級か。こりゃ、てこずるかもね」



グレアムさんの自室・・・センスのいい調度品が置かれ、魔法やらなんやらの書籍も大量におかれている部屋で、僕はロッテさんとグレアムさんと共に作戦会議。

なお、アリアさんははやて達に付いて、それとなく周辺を警戒している。なんでも、アリアさんは魔法戦が得意で、それの技量は相当とか。探知なんかも専門と言えば専門だから大丈夫と、グレアムさんが僕を安心させるような顔で言っていた。



「ふむAAか。・・・よかった」

≪Sクラスとかストライカーとかぶっちぎりのエースではありませんしね≫

「こっちが知覚出来ない攻撃やら移動とかするわけじゃないなら、大丈夫でしょ」



・・・あれ、どうしてグレアムさんもロッテさんも僕をそんな目で見るの? 嫌だなぁ、なんか僕とアルトが悪い事言ったみたいだからやめてくださいよ。



「・・・そっか、やすっちそういう子だったよね。うん、ごめん。知ってたよ」

「ロッテさん、どうして僕の肩を持って泣くんですか? お願いだからぎゅーって抱きしめて頭撫でるのやめてください。色々悲しくなってくるじゃないですか」

「とにかく、恭文君が潰した男を含めても・・・こちらの戦力とは比べる事は出来ない」



ぎゅーってされてるのに助けてくれないグレアムさんが真剣な顔でそう話す。



「いや、この状況見てシリアスするっておかしくありません?」

「大丈夫だよ、私のやすっちへの愛はもうシリアス全開だから」

「アンタはお願いだから黙ってろっ! そしてなぜいきなりそんな話になるっ!! つーか、会ってまだ2話目っ! リアルに言うと4日目っ!! いつ僕達はそんなことが言える関係になったっ!?」



だぁぁぁぁぁっ! からかわれてるだけだろうけど性質が悪いっ!! この人は真面目にシャマルさんレベルで性質が悪いっ! だって、全然離してくれないしっ!!



≪もしかしてロッテさん、Mだったりします? だから、ドSであなたを苛め抜いたマスターに惚れて≫

「あ、正解。いや、アタシはずっと自分をSと思ってたんだけど、違ったみたいなんだ。私はいわゆる隠れM」

「そんな正解聞きたくなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





・・・確かにその通りだ。MかSかって話じゃない。こちらと向こうの戦力の話。だって、ランクどうこうは抜きにしてもチーム戦闘で八神家潰そうなんて無理だし。

あれかな、局には隠しているだけで、厨二なチート能力持ってるのがこの中に居るとかかな? 満月の番に血液量が三分の二を下回ると両目が金色になり異次元空間の中にあるエネルギースポットとリンカーコアが繋がって、実質的に無限の魔力を使えるようになる・・・とか。

感情のタガが外れると第二の人格が目覚めて能力3倍になるとか、寿命を対価に能力を跳ね上げられるとか・・・あ、色々あるな。持ってるだけでパワーバランス崩壊な能力って。



えっと、あと他にはあったっけな・・・あ、アレだアレ。むちゃくちゃ特殊なスキルなり、強力な魔力を持ってるんだけど、コントロール出来なくて普段は使わないようにしてるとか。

実は幼少のころにむちゃくちゃ強い暗殺術を仕込まれていて・・・とか、自分の才能を見抜いた組織の連中の手によって家族やら恋人やら殺された上でさらわれて、あれこれ仕込まれてるとかあーだこーだ・・・とか。

で、それが無駄に設定重たかったりするわけですよ。もうね、人生の辛い事は全て酒の肴になるって何かの漫画で言ってたけど、あんまりに重過ぎて肴どころかメインディッシュにすらならないの。一口食べただけで胃もたれ確定ですよ。



もしくは、チートなアイテム持ってるとか。例えば映したものをパーペキにコピーする鏡とか。つまり・・・映したら偽シグナムさんとか偽シャマルさんとかが生産できるわけですよ。ただ、それの代価には一定量の血とか魔力が必要で・・・。





「・・・やすっち、さすがにそれは無いって。いや、ありがちだけどさ」

「だが、相手方が何かしらの切り札を持っているのは確かだろう。それも確実に使えて、強力な・・・だ」

「とりあえず、満月は当分先だから、それに関するのはないね」

「そっか、ならよかったです。それでグレアムさん」



いや、その『なんだ?』って顔はやめてくださいよ。分かるでしょ? 僕の言いたい事。



「スマンが無理だ」

「どうしてっ!?」

「いいじゃんいいじゃん。やすっちは抱き心地最高だし、私はそこそこスタイルいいし」



だからって、ここ3日の間にアンタは何回僕に抱きついた? そろそろ自重していこうよ、大人なんだからさ。



「なに言ってるの? アタシの心は永遠の少女だよ」



そんな女の辞書を持ち出すなっ! つーか、どこのチートカードっ!? それだけであらゆる意見が封殺出来るでしょうがっ!!



「あぁ、やっぱりやすっち好き〜♪ もっと言うと抱き心地が好きー! もうもうアタシ専用の抱き枕にしたいー!!」

「なにげに危ない願望を僕にぶつけないでもらえますっ?! グレアムさんっ! お願いですからこのフレンドリー過ぎる猫娘をどうにかしてくださいよっ!!」

「・・・今日はいい天気だな」

「目の前の現実から逃避しないでー!!」

「何を言うんだね、私は現実から逃げてなどいない。・・・それで、今はアリアに付いてもらっているわけだが」



そっちじゃないからっ! 今あなたの目の前にある現実から逃避するなって言ってんのっ!!

あぁもう、言っても仕方ない。とりあえずこの胸しか見えないのだけはなんとかしてもらおう。



「・・・ロッテさん、せめて後ろから抱えてください。じゃないと、僕何にも見えませんから」

「えー、見えるでしょ? ちょうど胸だからアタシの心とか」

「見えるかボケっ! んな千里眼あるならもっと別のもん見たいわっ!!」



フェイトの心とかフェイトの心とかフェイトの心とかっ!!

・・・あ、もしかしたらサイコメトリー能力持ってるのが居るとか。こちらを見るだけで考えが分かって、そいつが司令塔になって戦うことで戦闘能力が倍加するんだよ。



≪あなた、まだ言いますか≫

「やすっち、もしかしてそういうの好き?」



気にしないで。えー、とにかくロッテさんは後ろから僕に抱きついてもらいつつ、話を進行することになった。



≪さて、はやてさん達にはアリアさんが付いています。基本的に海外ということもありますから、単独行動は絶対に控えるようにと言うグレアムさんからのお達しも守っていただいています。この場合・・・どういう手で来ると思います?≫

「普通に考えれば、この状況で襲ってくるような真似はしないだろう。私ならばここは手出しせず、帰りの道中を狙う」



道中・・・か。海鳴で襲撃とかは・・・あ、ないか。



「そうだね、海鳴に戻ればまた局の業務に戻るからチャンスは少なくなるよ。なにより、アタシ達や父様は居ないけど、今度はフェイトやなのはにくろすけに君も居る。ガードは更に固くなるも同然だよ」



あと、魔導師じゃないけど恭也さんやら美由希さん、ノエルさんやファリンさんとかも居るしなぁ。なんていうか、海鳴って魔窟だもの。

こう考えると・・・あの布陣がプライベートから固まって行動しているのは最硬であり最強だよね。恨み持ってる奴からすると、手出しにくいって。だって、一人に手出したらその数倍の勢いの反撃が周囲から帰ってくるんだから。



≪ただ・・・私達、向こうの人間を一人潰してますしね。もうそれには気づいているでしょう。マスターが言ったように、交渉は決裂。向こうから見れば、グレアムさんとリーゼさんに私達は『犯罪者』を匿う悪人・・・と言ったところでしょうか≫

「アタシやアリア、父様もやすっちも、もう連中の恨みを買ってるかも知れないね。もしそうなら、特に父様とアタシとアリアは『自分達と同じ境遇でありながら、どうして』ーって思われてると思う。
そして、一人捕まってるわけだから、そいつの口を割ることで自分達の行動や切り札が局や私達にバレる可能性も考えるはず。その場合、この場に居る人間だけじゃなくて今度は局まで敵に回す事になる。時間かける暇ないと思うな」



・・・つまるところ、残った連中は切り札をここで切ってくる可能性が高い・・・と。『犯罪者』と『悪人』を叩き潰すために。それも今すぐにでも・・・という感じで。

あはは・・・。もしかしなくても僕があれをぶっ潰したのって、結構早計?



「いや、アレでいい。君がしてなければ私がやっていたところだ。・・・さて、恭文君」

「はい?」

「先ほど、話したね。私も・・・そして、アリアやロッテも、はやて君が知らずに所有していたロストロギアの被害者の関係者だと」



言ってましたねぇ。よーく覚えてますよ。本当についさっきの話ですから。



「実は、我々も今朝の男と似たようなことをしたことがある」

「・・・はい?」



同じ事・・・つまり、復讐? しかも我々ってことは、ロッテさんとアリアさんもっ!?



「そうだ。失ったものが、とても大きくてね。それ故に、私達は愚かな選択を取った。君の言うように、復讐しようとしたんだよ。こんなはずではなかった今になってしまった憤りを、私達は抑えることが出来なかった。
・・・はやて君や、その時はもうはやて君と一緒に居た守護騎士達を、ロストロギアごと亡き者にしようとした。転生機能を発動させないために、はやて君ごと強力な氷結魔法で永久的な封印処理を施そうとした」



・・・グレアムさんの表情が重くなる。多分、僕の後ろに居るロッテさんもだけど。だって・・・僕を抱きしめる力が弱くなったもの。



「実はさ、アタシはあんなこと・・・やすっちにお願い出来る立場じゃなかったんだ」



頭のすぐ上から、ロッテさんの声が聞こえる。



「アタシは・・・自分の感情を止められなかった。怒って、悔しくて、そして・・・怖がった」



そして、思い出す。ロッテさんに、はやてと何があっても友達で居て欲しいと頼まれたことを。



「アタシ・・・アタシ達ね、三人揃って本当にバカだったんだ。そんなことしても意味ないって、なくなった物は帰ってこないし、なんにも変わらないって分かってたのに、止まれなかったの。
そのロストロギアをはやてごと封印するのは、世界のためで、同じ事を繰り返さないため。何も知らないはやて、あと・・・守護騎士がそこに巻き込まれるのは、必要な犠牲だから仕方ないんだって、そんな・・・バカでどうしようもないことを、本気で思ってたの」

≪・・・そうですね、バカでどうしようもないことですよ。本当に、どうしようもないことです≫

「あはは・・・。アルトアイゼンキツいなぁ。でも、そうなんだよね。ダメだよね、私達、やすっちよりもずっと年上なのに、そういうこと全然分からなかったの。
必要な犠牲だからだとか、誰かが死んだり消えたりすることを『仕方ない』なんて言うのは、ただ罪悪感から逃げるための言い訳に過ぎないのにさ」



その声は僕が今まで聞いて来たロッテさんとは違う・・・本当の意味で大人の女性としての声。胸に秘めていた後悔が直接伝わってくるような、そんな声。



「だがね、その時それを知ったある男の子・・・まぁ、クロノ君なんだが、私達全員叱られてしまったんだよ。
そして、言われた。こんなはずではなかった過去は誰にも変えられないから・・・今を戦って、未来を変えていこうとね」

「・・・クロノさんなら言いそうです」

「君は、さっき言ったね。『事情はともかく、友達だから守る』と。我々も同じだ。
・・・我々の口から言うと軽く聞こえてしまうのがアレなのだが、今はもうはやて君の事を恨んではいない。むしろ、過去の自分を悔いている」



とりあえず、僕は一つ聞いてみることにした。全部、それからだと思ったから。

人の過去になんざ、文句つけようがないし、つけたくもない。だから、今への疑問をぶつける。



「なら、今はどうなんですか。過去・・・グレアムさん達にとって、はやては復讐の対象だった。なら・・・今は?」

「今は・・・彼女は私にとって、家族のようなものだと思っている。もしくは、年の離れた友人だな。・・・君から見ればおかしく見えるかも知れないが」



僕はその言葉に対して、首を横に振って答えた。もちろん『そんなことはない』という意味で。



「やすっち、本当に・・・そう思ってくれてる?」

「思ってますよ。てか、僕はグレアムさんやロッテさんにアリアさんの事をどうこう言える立場じゃありませんもん。僕だって・・・基本はグレアムさんや、連中と同じです。壊されたら、やっぱりムカつくし、壊した相手をぶん殴りたくなります。
ほら、よくテレビとか漫画とかで、復讐なんてしたって意味がないとかって言うじゃないですか。そうかも知れないけど、それで止まれなんて・・・奇麗事ですよ」



・・・もし、フェイトやはやて・・・あと、なのはとかがどっかのバカに壊されたり、殺されたりしたら、きっと僕だって・・・同じ事を思う。相手を、その結果を呼び起こした奴を、ブチ殺してやりたいと。同じなのに、否定なんて出来るわけがない。

あぁもう、なんつうか・・・やるせないなぁ。なんにしても、こんな喧嘩意味ないよ。喧嘩や戦いってのは、自分の大事なものを守るためにするものでしょ? こんなことして、なにが守れるって言うのさ。ついでに、楽しめそうにもないし。



「ならば、君はどうやって・・・いや、違うな。どんな理念を掲げて、それを止める?」

「理念なんて立派なもんは、あいにく持ち合わせていません。・・・僕のわがままで止めます」



そう、僕は結局これ。先生から受け継いだのはアルトだけじゃない。

僕の心の中にある鉄もそれだ。そしてその鉄は・・・正義や道理なんて必要としてない。必要なのは、自分の今の心。それを理由とする。



「どんな事情があれ、僕はもうあのタヌキが居ない生活なんて考えられませんから。アレが居ないとオタク話に花を咲かせる事も出来ない。アレは、僕の大事な荷物の一つです。
だから、僕の都合で、僕の勝手で、連中の正義って奴を、ぶち壊します。そうして、はやてや師匠達を、僕の大事な今を守ります。それが傲慢で、愚かな事で、罪だって言うなら、笑って背負います」



それから、自嘲気味に笑う。・・・きっと、それしか僕には出来ないから。



「・・・そうか。ふむ、これならば私達も安心して背中を任せられる。改めて頼む。すまないが、君の力を貸してくれ。私達も、守りたいんだ。はやて君や守護騎士達の・・・今を」

「もちろんです」





・・・あの、ロッテさんっ!? どうしてまたそんなにギューってするのっ!!





「いや、やっぱりやすっちいい子だなーって思って。あぁ、アタシなんか胸にグっと来たよ。ね、このままイギリスに居ない? やすっち居たら、訓練の相手にもなるし、面白そうだしさ〜」

「お断りします」

「にゃんでー!?」

「僕、本命居ますからねっ!? なんでそれほったらかしてイギリスに永住しなきゃいけないんですかっ!!」

「私がして欲しいからだよっ!!」










な、なんかすっごい欲望に忠実な発言を迷い無く言い切ったっ!?




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・・・・・・・なんて話をした日の夕食時。事件は一気に進展した。





もっと言うと・・・この辺り一体が強力な閉鎖結界で囲まれた。










「な、なんやこれっ!?」

「えっと・・・結界反応ですっ! でも、どうしていきなりっ!?」

「あー、グレアムさん。サラダどうぞ」

「あぁ、すまないね」



取り分けたシーザーサラダをグレアムさんに渡す。で、隣のリインとロッテさんにも。



「でも、結構早く来たね。全く、夕飯時だって言うのに・・・」

「空気読めない奴ららしいね。まったく、これから私とやすっちのラブラブタイムが始まるって言うのに」



そんなもん始まるかボケっ! つーか、なんでそうなるっ!?



「まぁ、ちょうど食べ始めた時でよかったじゃないですか。終わったら、祝勝会にも持っていける。・・・あ、リイン。悪いけどはやてと今すぐユニゾンして。僕は何とかなるから」

「は、はいです」

「おい、バカ弟子・・・いや、リーゼさんやグレアムさん達も、なに落ち着いてるんですか」

「まさか、蒼凪もお三方もこの事態に何か覚えが?」



とりあえず、シーザーサラダを皿に載せた分だけさっと口の中にかき込む。・・・うん、アリアさんの料理の腕は中々だわ。とっても美味しい。



「簡潔に言うが・・・この結界を張った人間は、君達を狙っている」

「・・・グレアム殿、まさか」

「そのまさかだ。昔の私やリーゼ達と同じく・・・ということだ。あと、恭文君にはロストロギアがどういうものだったかという説明をしただけで、事件の詳細や君達の過去に関しては話していない。
・・・あぁ、アリア。今日のサラダはまた格別の出来だよ。今年一番の出来じゃないのかね」

「ありがと、父様。・・・あ、はやて。60秒後に角度45度・6時の方向に向かってディアボリックエミッション撃って。それで三人は墜とせるはずだから」



アリアさんがテーブルから立ち上がる。それに、僕とロッテさん、グレアムさんも続く。そしてそのまま・・・セットアップ。僕はいつものバリアジャケット。

グレアムさんとリーゼさん達は黒いローブ姿。そして、アリアさんとグレアムさんの手には、官給品ではあるけどワンド式のデバイス。



「え・・・えぇっ!?」

「いいから、早くして。もうカウントは始まってるんだから」

「は、はいっ!!」



はやてがリインとユニゾンした上で、早速詠唱を開始。その間に僕達は・・・外に出る。空は星空ではなく、言いようのない幾何学模様で埋め尽くされ、ここがいつもとは違う空間であることを示す。

そして、僕の後に続くようにシグナムさんが出てきた。



「・・・蒼凪、後で色々と説明してもらうぞ」

「説明って・・・大した事は言えませんよ? ただ、僕もグレアムさん達も全員揃って巻き込まれてやろうとしただけで」



そう言って、左手を開く。生み出されるのは氷結の息吹を内包した砲弾。

それをそのまま・・・空中にぶっ放すっ!!



≪Icicle Cannon≫

「ファイアっ!!」





闇に向かって放たれた砲弾は、そのまま直進し・・・何にも命中しなかった。だって、そこに居た奴らは散開して逃げたし。でも、問題ない。

もうロッテさんとシグナムさんが突撃してるから。そう、アレは囮。本命は今猛スピードで散開した五人に向かっていった奴ら。



ロッテさんが突撃しながら、相手の腹に一発。そいつの頭をわしづかみにして、デバイスを構えて狙っていた一人にぶん投げる。それが衝突したところを狙ってまた踏み込み・・・とび蹴り。そのままそれを足場にして、もう一人の顔面をぶん殴る。それであっと言う間に三人。

シグナムさんも同じく。突撃してレヴァンティンを抜き放ちながらの一閃で一人。スピア型のデバイスで打ち込んできたもう一人の攻撃を身を翻すようにして避けて・・・そのまま、左から打ち込み沈める。

そのまま、五人は地面へと落下。・・・まぁ、生きてるでしょ。あ、なんか緑色のバインドがふんじばった。





「まったく・・・恭文くんだけじゃなくてグレアムさんやリーゼさん達までなに考えてるのかしら」

「言っておきますけど、グレアムさんのアイディアですからね? ところで、はやては?」

「大丈夫。もう・・・60秒だもの」



瞬間、僕達とは反対側の空に巨大な球体が産まれた。瞬間的に産まれた球体は、こちらへと迫ってきていた悪意を確実に仕留めた。うーん、さすが固定砲台。あれでおしまいですか。

というより、今回は僕なーんにもしてないなぁ。いや、いいことではあるんだけどさ



「・・・さて、マジでこれどういうことか説明してもらおうか?」

「いや、事情は分かったけどよ。どうなってんだよ、これ」

「蒼凪、何故我らに話さなかった。そうすれば」

「はやてとザフィーラさん達だけで対処・・・ですか?」



家の中から出てきたはやてと師匠とザフィーラさんに、静かに言い放つ。そのまま・・・振り向く。



「悪いですけど、それは無理です。相手がこの状況でケンカ吹っかけた意味、みんななら分からないはずないですよね」

「まぁ・・・なぁ。ただ恭文、アンタ事情を詳しくは知らんのやろ? なのに、なんでそこまでするんや」

「みんなが大事な友達で、仲間だから。そして、売られた喧嘩はしっかりと買って叩き潰す。それ以外に、理由・・・いる?」

「・・・そうやった、アンタはそれで命賭けられる生粋のバカやったな」



そのまま、向き直る。どうやら・・・まだ来るらしいから。

ただ、次に来た三人は、こちらの予想に反して普通に・・・歩いてきた。



「・・・グレアム提督、我らが同志を連れ去ったのみならず、こんな真似までしますか。管理局を離れて、お心が腐りましたか?」



リーダー格らしき男の一人が怒り交じりにそう言ってきた。コートに両手両足に金属製のブーツや小手。手にはロッド式のデバイス。どうやら・・・事前に予想した通りらしい。

僕は、黙ってることにする。口出しなんて出来る立場じゃないから。



「それはこちらのセリフだ。君の同志にも言ったが・・・はやて君と守護騎士はうちの客人、それに対してこのような真似、見過ごせるわけがない。そのように言われる筋合いは無いな」

「そうですか・・・。確かに、非はこちらにあるようですね。ならば提督、しっかりと順序立てた上でならば、彼らを引き渡してくれますか?」

「いまさらだな。そして、例えそうだとしても彼らを渡すつもりはない。君達こそ、早めに投降した方がいいと思うが? あと・・・」



グレアムさんが男達をにらみつける。それだけで男達の身体が固まり、その警戒の色が強くなる。



「私は・・・もう提督ではない。ただここで静かに娘達と余生を暮らす一人の老人だ。そして、はやて君は娘同然であり、守護騎士はその娘の家族だ。これ以上家族に手を出そうと言うのなら・・・容赦はしない」

「・・・どの舌でそのような事が言えるのか、私には疑問ですな。提督」

「そうだな、私は君達と同じだ。だから分かる、君達のやっていることは・・・間違っている。そんな事をしても、なにも変わらないし、変えられはしない」

「いや、変えられますよ。少なくとも・・・その害虫どもは駆除出来る」



男がそう言うと、その右側に居た少々小太りな男が鏡を持ち出した。銅色で少々不気味な装飾を施された少し大きめな鏡。そしてその鏡が光って・・・その光に、僕達全員が当てられた。

一瞬の事で回避は不可能だった。でも・・・あれ? なんともないや。



「映し身の鏡というのがありましてね」



鏡が光に包まれる。その色は黒。黒い光・・・それが、鏡の鏡面部分にたまり、飛び出す。それが・・・影を作った。黒く、白のラインでかろうじてボディの凹凸を表現しているような、黒い人形が。



「・・・ち、これが限界か。まぁいい、これで対等だからな」



数は・・・7人。ユニゾンしているリインを除いた八神家全員にロッテさんとアリアさん。



「あぁ、すみません。説明が途中でしたね。これはロストロギアの一種だが、映した物をコピーして、実体化させる能力があるんですよ」



そう、その黒い人形は・・・僕達を模倣していた。体型から髪型、手に持っている武器に至るまで。

・・・というか、昼間僕が言ってたやつじゃないのさっ! うそ、かなり適当に話してたのにっ!!



「それも能力も本物とほぼ同じ。なおかつ契約を結んだ所有者の言う事を素直に聞く素直な人形となっている。まぁ、これだけの人数を映すのには相当魔力が必要でしたが・・・」



男がこちらを指差す。その瞬間、はやての人形が詠唱を開始した。黒い十字槍の先に、流星が流れ込む。それは・・・黒い光。

黒い、星の光が一つの形に・・・まさか、あれは・・・!!



「四人のAAクラスの魔導師が死ぬまで魔力を絞り上げられれば・・・それくらいはなんとかカバー出来たりするんですよ」



スター・・・ライトッ!?



”はやてっ! まさかとは思うけど・・・!!”

”・・・うん、使える。まぁ、アンタやなのはちゃんと違うてうちのは広範囲拡散攻撃としてしか発動出来んのやけど”



マジかいっ!!



「人数が足りない分は、私達がカバーすればいいでしょう」



僕達は飛び出す・・・いや、その場を後にする。当然、逃げるために。

詠唱を止める? 自分達とほぼ同じ能力を持った人形があんなに沢山居るってのに・・・無理。チーム戦で最強の八神家がコピーされてるわけだし。



「お前達の人形を使役するのは少々不愉快だが・・・贅沢は言ってられん」



全員全速力で必死で逃げるっ! だけど・・・やばいっ!!



「さぁ・・・覚悟してもらうぞ、害虫どもっ!!」









こうしている間にも、はやての人形から黒い・・・星の光が放たれようとしてる。

やばい・・・これは防御しかないっ! 広範囲攻撃、逃げる時間は多分ないっ!!





僕達は全員、ある程度距離を取ってからすぐに地上に降りて・・・防御魔法を展開。あのデカぶつの攻撃に備える。





・・・訂正、そうしようとした時、異変は起こった。










≪マスターっ!!≫

「なに、この非常事態にっ!!」

≪後方約700メートルに人の反応を発見しましたっ!!≫





・・・はぁっ!?





「・・・間違いないわ。アルトアイゼンの言う位置に二人居る」





シャマルさんが、青い顔でそう言ってきた。

まさか、連中の閉鎖結界に巻き込まれたっ!?





「すみませんっ! 聞いての通りなんで、僕はそっちに向かいますっ!!」




放っておくわけにはいかにあ。多分その距離だと・・・これの餌食だ。なんとか防御魔法で防いで・・・。





「だめっ! この状況でやすっち一人になんてさせられないよっ!! アタシも行くっ!!」

「・・・主はやて、蒼凪とロッテ殿と一緒にそちらに向かってください。ザフィーラ、お前もだ。行ってその人達も一緒に守ってこい。
私達は前に出て・・・連中を叩く」

「シグナムっ!?」



まてまて、なんでここで戦力分散っ!? いや、僕が一人だと危ないのは確かなんだけどっ!!



「もちろん、我々も死ぬつもりはありません。・・・数は減らします。残った連中は、任せます」



どうしてかな。シグナムさんの言葉が今ひとつ信じられなかった。

なんというか、こう・・・危うい感じがした。



「・・・分かった、主・・・行きましょう」

「ダメやっ! そんなんアカンっ!! うちも一緒に」

「大丈夫です。・・・アリアさんやグレアムさんも居ますから。恭文くん」



・・・はい。



「はやてちゃんのこと、お願いね」

「・・・そう言って死ぬつもりなら、僕は何にも約束しませんよ?」



そう言うと、シャマルさんの表情が固まった。それだけじゃなくて、シグナムさんと師匠も。・・・マジでそういうつもりだったか。



「つーか、それは完全に死亡フラグじゃないですか。あとで洗いっこでも添い寝でもピロートークでもデートでもなんでもしてあげますから、とりあえず・・・生きてください。死ぬのは、絶対に認め」

「わかったわっ! 湖の騎士シャマル・・・恭文くんとのラブラブタイムのために、頑張るっ!! ヴィータちゃん、シグナムっ! 守護騎士の意地・・・見せるわよっ!!」

『すさまじく気合い入れて即答っ!?』

「さぁ、みんなっ! 主に私のために頑張ってっ!! これでついに私がヒロインになるんだからっ!!」

『アホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』



うん、余計な事言ったね。すっごく余計な事言ったね。分かってる。分かってますよ?



「とにかく・・・みんな、また後でっ! アルト、行くよっ!!」

≪Axel Fin≫





ジガンからカートリッジを1発使用。そうして両足に生まれるのは青い空を駆けるための翼。はやての手を引っ張って、そのまま全速力で直進。それにロッテさんとザフィーラさんも続く。



そうして、さほど時間が経たずにそこに到着。そこに止まっていたのは一台の車。そしてその傍らには・・・二人の女性。そこに全員焦るように降り立つ。その様子に当然だけど二人の女性は目を丸くする。





「アンタ達っ! いきなりで悪いけどちょっとアタシ達の言う事聞いてっ!!」





ロッテさんが焦り気味にそう言う。だけど・・・僕は言葉を失っていた。

いや、僕だけじゃない。はやてもザフィーラさんも、当のロッテさんもよーくその二人を見て、言葉を失った。



だって・・・それは・・・。





「恭文・・・くん?」










僕の名前を呼ぶのは、金とブラウンの混じった色合いの髪を緩めのポニーテールにして、白いセーターを身につけた女の人。驚いたような顔で、こちらを見る。

隣に居る人も同じ。淡い桃色が入ったスーツを着こなす、金色の髪をポニーテールにしている女性。普段は冷静な表情を浮かべている顔が、今は驚きに満ち溢れている。





うそ・・・なんで、なんで・・・こんなところにっ!?










「フィアッセ・・・さん。それに・・・エリスさんも」





そう、フィアッセさんとエリスさんだった。

・・・って、こんなことしてる場合じゃないっ!!



ザフィーラさんが障壁展開。僕もシャマルさんから習った全域防御魔法を展開。青と白のドームが僕達を包む。





「蒼凪、しっかり気を持て。大丈夫、お前ならば出来る」

「はい。・・・フィアッセさん、エリスさん、ここから絶対に出ないでください」

「待て・・・待ってくれっ! なんなんだこれはっ!? どうして君達はいきなり空を飛んで・・・」

「というか恭文くんと・・・はやてちゃん、だよね。あの、これって」

「説明は後っ! ・・・来るよっ!!」










そうして、この辺り一体が包まれた。





黒き、全てを破壊する星の光・・・スターライトによって。




















(幕間そのじゅういちに続く)




















あとがき



古鉄≪・・・はい、お約束と言えばお約束な物が登場です。なお、スターライトが黒なのはそういう仕様ですので、ツッコミは受け付けません。こっちの方が絵的に面白いので。
そして、フィアッセさんとエリスさんを巻き込んだ上で次回に続きます。今回のあとがきのお相手は私、古き鉄・アルトアイゼンと≫

フィアッセ「えっと、あとがきでは初登場で、恭文くんの婚約者のフィアッセ・クリステラです。うぅ、この時はびっくりしたなぁ。だって、本当に突然だったから」





(光の歌姫、そう言いながらなんか楽しそう。というか、嬉しそう)





古鉄≪あなた、まじめに楽しそうですよね。なんでですか≫

フィアッセ「だって、この一件があったから恭文くんと本当の意味で仲良くなれたし、アルトアイゼンともこうやってお話出来るんだもの。事情は重い感じだったけど・・・私は感謝してるんだ」

古鉄≪・・・そんなにあの人好きですか?≫

フィアッセ「うん♪」





(光の歌姫、全力全開で言い切った。どうやら、まじめに婚約者でいいらしい)





古鉄≪えー、それでも本編はあんな感じですよ?≫

フィアッセ「あぁ、そうだね。・・・あ、ここでの私は読者の皆さんと同じ感じで色々知ってるってことで、納得してくださいね。
でも、本編はフェイトちゃんヒロインだから仕方ないけど、IFでは頑張りたいもの。恭文くんと、ラブラブしたいなーって」

古鉄≪具体的にはなにしたいですか?≫

フィアッセ「うーん・・・添い寝? あと、洗いっことか一緒に遊んだりとか・・・とりあえずリインちゃんに勝つのが目標かな。リインちゃんよりもずっと強く、深く、恭文くんと繋がって、愛し合えるようになるの」

古鉄≪そこまで・・・ですか≫

フィアッセ「うん、そこまでだよ」





(・・・青いウサギ、なんか頭が痛くなってきた。というか、つい耳をくしくしといじりたくなった)





古鉄≪えー、というわけで、疲れたので今日はここまでにしましょう。お相手は古き鉄・アルトアイゼンと≫

フィアッセ「フィアッセ・クリステラでした。あぁ、IF話楽しみだなー♪」

古鉄≪ギンガさんルートですさまじく苦戦しましたから、当分は無いですよ?≫

フィアッセ「そうなんだ・・・。残念」










(本当に残念な光の歌姫の表情を映しながら、カメラ・フェードアウト。
本日のED:AAA『ZERO』)




















フィアッセ「というわけで・・・IF話頑張ろうよ」

恭文「なぜ突然そんな話っ!? いやいや、作者はギンガルートですさまじく苦戦して、しばらくは」

フィアッセ「・・・恭文くん、私の事嫌いになった?」

恭文「だからなぜそうなるんですかっ!!」

フィアッセ「だって、なんだか冷たい。・・・そうだよね、私、フェイトちゃんやすずかちゃん達と違ってもうおばさんだし、お肌だって張りがちょっと弱くなってるし」(泣き出す)

恭文「そんなことないですからっ! フィアッセさんは出会った頃と変わらずずっと綺麗ですよっ!!」

フィアッセ「それなら、問題ないよね。よし、次のIF話は私とだよー♪」(にっこり)

恭文「う、嘘泣きっ!?」










(おしまい)





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