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小説(魔法少女リリカルなのは:二次小説)
幕間そのじゅう 『生きていると、やるせないと思うこともある 生きていると、色々考えて色々思うこともある 14歳が世界で一番頭が悪いと言われるのは、間違いなく厨二という言葉のせい・・・編』:1



古鉄≪さて、せっかくの休日も悪運スキルによりブッ潰れそうな感じになった幕間そのきゅうからの続きです。皆様、いつも応援ありがとうございます。私、古き鉄・アルトアイゼンです≫

はやて「どうも、八神はやてです。・・・さて、今回の話は前回の続き。イギリスを舞台にしたハードボイルドやな」

古鉄≪・・・はやてさん、意味分かって言ってます?≫

はやて「ごめん、うち今めっちゃ適当に話したわ。とにかく、なにやらキナ臭くなった感じやけど・・・どうなるかな」

古鉄≪それは見てのお楽しみです。さて、それでは幕間そのじゅう、どうぞー!!≫

はやて「どうぞー!!」




















魔法少女リリカルなのはStrikreS 外伝


とある魔導師と機動六課の日常


幕間そのじゅう 『生きていると、やるせないと思うこともある 生きていると、色々考えて色々思うこともある
14歳が世界で一番頭の悪い生き物・・・なんて言われるのは、間違いなく厨二という言葉のせいだ・・・編』




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ルルルールルールルルー♪」

「・・・フィアッセ、ごきげんだな」



スクールに戻ってから、校長室で色々と書類を片している最中、横に付いていてくれたエリスが話しかけてきた。

それに私は、笑顔で返す。



「うん、ごきげんだよー。恭文くんにまた会えたから」



・・・それに・・・ついチュってしちゃったから、さらにごきげん。ふふ、あの時の恭文くんのビックリした顔、今思い出してもなんだか楽しくなってくるよ。

うーん、年の差って・・・越えられるよね。うん、問題ない。フェイトちゃんがダメならという条件が付くけど、それも超えて・・・。



「だがフィアッセ、私は前々から気になっていたんだが」

「なに?」

「いや、自分でもいきなり過ぎる質問だとは思うんだが・・・彼は、一体何者なんだ」



何者・・・。うーん、恭也と美由希になのはのお友達で、すっごく強い子。それで、私の婚約者。



「いや、そういう事では無くてだな・・・。というより、婚約者というのは本気なのか?」

「本気だよ。まぁ、7年後に私が独身で、恭文くんも恋人とか居なければ・・・だけど」

「逆を言えば、そうなった場合君は冗談抜きで結婚するのかっ!?」

「もちろん」



・・・あれ、どうしてエリスは頭を抱えるの? 別におかしくないと思うんだけどなぁ。例えば、私が75の時、恭文くんは60という話だよ? 女性と男性の寿命ってそれくらいあるらしいし、気にすることないと思うんだけど。



「・・・彼、まだ小学校に通うような年齢だろ?」



あ、なんか流した。というか、私に目を合わせてくれない。



「にも関わらず銃弾や刃物による攻撃が飛び交う実戦をこなし、私やガードの人間でさえ遅れを取るような手練と対等に渡り合い、挙句追い詰めている。
あれは口には出してないが、命のやり取りの場を相当数潜り抜けている。キョウヤやミユキ、私達ほどではないにしろ、恐らくは・・・日常的に」

「そうなの?」

「そうだ。そうでなければ、普通に銃器と刃物を持った連中相手に戦えるはずがないだろう。ここだけの話・・・私だってあれは慣れない」



・・・確かに、恭也や美由希もそういう訓練をちゃんとした上でこの間みたいなガードの仕事をしているから、恭文くんも同じって考えるのが自然・・・だよね。



「それにだ、あの最後の局面・・・」



エリスが言ってるのは私にも分かる。あの時・・・あの人が爆弾を持ち出してきた時のことだ。



「彼は、押す押さないに関わらずあの男を斬ろうとしていた。ボタンを押す前に、目の前の男の命を絶とうとした」



そして、思い出す。あの時の恭文くん、恭也や美由希が戦う時の姿とそっくりだった。

奪う覚悟をして、それでも・・・守りたいものがあるから、引く事なんて出来なくて。強いけど、どこか危うい背中をしてた。



「・・・正直、アレを見た時驚いたよ。あんな子どもがそこまでの行動に出れるものなのかとな」

「・・・エリスは恭文くんのこと、そういう部分があるから怖いとか、嫌いとか、思ってる?」

「不思議なことにそれはない、彼は私から見ても、好感が持てる人間だ。ただ・・・年不相応な程に慣れているのがとても気になっているんだ。どこでどういう経験をすれば、あの人格が形成されるのかとな」



どこでどういう・・・か。そう言えば私、恭文くんの10歳より前のこと、聞いた事ないな。フェイトちゃんの家に居候しているとか、そういう、海鳴で暮らし始めてからのことはよく聞いてるけど。



「まぁ・・・なにか事情があるんだよ」

「・・・11歳前後の子どもが、あそこまで戦い慣れている事情・・・か。あまりマトモなものとは思えないな」

「エリス、だからって恭文くんのこと勝手に調べたりとかはダメだよ?」

「分かっている。私も、そこまで趣味は悪くないさ」










それに・・・あの子は悪い子じゃないもの。むしろ、いい子。ただ、人とは少しだけ違うものがある。それは心。





心にすごく強いものを持ってる。見ていて、少し頑ななんじゃないかと思うくらいに強いものを。だから、ブレないし迷わない。こうありたいと思う姿に真っ直ぐに向かっていける子だと、私は思う。





だから・・・かな、結婚の約束とかしちゃったのは。うん、大好きだよ。大好きで、とっても大切な男の子。





でも、恭文くんの昔のことか。・・・まぁ、いいか。もしかしたら、恭文くんには話し辛いことかも知れないから。





それに、私だって恭文くんに話してないことがある。ただ単に話さなかった事や、話しにくかったこととか・・・。





もし・・・もしも、話しにくかった事の一つ・・・それを聞いたら、あの子は、私という存在をどんな風に感じるんだろう。





あの子は、普通とは違うものに対して、どういう目を・・・向けるんだろ。大丈夫だって思ってても、やっぱり怖い。こういうのは、慣れないね。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ねー、お風呂一緒に入ろうよー! アタシが隅々まで洗ってあげるからさー!!」

「嫌です」



付け合せのポテトサラダをパクリ。膨れる顔した猫なあの人は気にしない方向で行く。



「むむ、やすっち素直じゃないなぁ。・・・あ、私の身体も隅々まで洗っていいよ? それならいいでしょ」

「いいわけあるかボケっ! つーか、普通にそれセクハラですよねっ!? なんでいきなりそんな話になるんですかっ!!」

「大丈夫だって。それで胸とかいやらしく揉まれても、やすっちだから許してあげるし。・・・あ、それ以外でも触りたいとこあったらいくらでも」

「そういう話じゃないからぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」





・・・夕食時、こんな話をするのはきっと色々間違ってると思う。いや、まじめによ? だって・・・ねぇ。





「・・・ロッテ、もうやめておきなさい。恭文君困ってるじゃないの」

「えー。だって、やすっちからかうの楽しいんだもん」

「からかわないで欲しいんですけどっ!?」





この人には多分勝てない。というか、視線が厳しい。

具体的に誰が厳しいかと言うと、シャマルさんとかシャマルさんとか・・・シャマルさんとか。





「ねぇ、ロッテさん。そのお風呂には私も一緒させてもらっていいかしら。現地妻1号としてそのイベントを見過ごすわけにはいかないの。
恭文くん、その・・・恥ずかしいけど、愛する人のそういう部分を受け入れるのも愛情っ! あなたになら、私は・・・私は・・・!!」

「シャマルっ! なんでアンタ普通に混じろうとしてるんやっ!? お願いだから旅行来てまでそんな会話するんはやめてーなっ!!」

「あ、最初にアタシがやすっちと洗いっこさせてもらえるなら、いいよ?」

「ロッテももうそんな会話しないっ! 恭文君すごく困ってるじゃないのっ!! あぁ、もう大丈夫だよっ!? この子もシャマルさんも全力で私が止めるからっ! お願いだから頭を抱えないでー!!」





とりあえず・・・お肉をぱくり。イギリスのアンガス・ビーフがたっぷり入っているというボリューム満点のビーフシチュー。・・・あぁ、とろとろだよー。美味しいよー。ごろごろ入っているお野菜も美味しいよー。

なお、アンガス・ビーフというのは高級牛肉の代名詞的存在。アメリカなんかでも飼育されている品種だけど、スコットランドの南東部アンガス州が起源。

これ、アリアさんが主立って作ったと言うから・・・すごいなぁ。だって、10人近く居るのに。リインもいつもと違って、フルサイズで美味しそうに食べてるし。



・・・まだロッテさんとシャマルさんが期待に満ち溢れた目を僕に向けてくるけど、気にせずいく。アリアさんが止めてくれるというのなら、僕はそれを信じたいのだ。





「それで、はやて君達は春休みいっぱいはこっちに居る予定だったね」



グレアムさんがシチューを食べる手を止めて、はやてを見ながら話しかけてきた。



「あ、はい。それでちょっと見てみたいとこがあるんですよ」

「ほう、どこかね?」

「うちと恭文のリクエストで・・・大英博物館です。思いっきり観光スポット的ではあるんですけど」



さて、説明しよう。大英博物館というのは、イギリスの首都であるロンドンにある世界最高の博物館。貴重な文化物が数多く展示されている広大な博物館だ。

僕も前に来た時に見れたら見たかったんだけど・・・フィアッセさんの警護があったから行けなかった。



「そんなことはないさ。あそこには私も何回も足を運んだが・・・実に素晴らしいものが沢山ある。行く度に新しい発見があってね、それで年甲斐もなく胸が震えるんだ。きっといい勉強になると思うよ」

「・・・はい、ありがとうございます」

「でも、はやては分かるんだけど・・・やすっちもあそこにあるようなものに興味あったんだ。ぶっちゃけ、アタシと同類だと思ったのに」

「あぁ、ロッテは退屈そうにしてたわよね。おかげで父様も私も恥ずかしかった」

「にゃんだとー!?」



・・・うん、分かってた。なんとなくこういう人だったんだなーって、分かってたよ。

ユーノ先生の発掘の手伝いに何回か付き合ったりしたせいかな。そういうのすごく興味あるの。昔の文化とか、その遺物とか・・・。戦う考古学者・・・あ、インディージョーンズみたいでかっこいいかも。



「あと、蒼凪・・・というか、我ら全員はもう一つあるな」

「あぁ、そうだったな。結構帰りギリギリだけど、しっかりいかねぇと」

「ほう、他になにかあるのかね?」

「クリステラ・ソング・スクールのチャリティー・コンサートです。蒼凪経由で我ら全員、招待を受けまして」



シグナムさんがそう言うと・・・グレアムさんやリーゼさん達が固まった。そして、次の瞬間驚きの表情を浮かべた。



「クリステラ・ソング・スクールのコンサートっ!? え、やすっち経由で招待されたってどういうことさっ!!」

「というか、私達すごく行きたかったんだよっ! 恭文君・・・君いったい何者っ!?」

「そうだな、そこは私も詳しく聞きたい。もっと言うと、今度のコンサートも是非観覧したかったんだ。だが、あいにく満席になってしまって・・・」





グ、グレアムさんまでなんか迫ってきてるっ!? とりあえず、ちゃんと説明から落ち着いてー!!



・・・それで、説明した。僕が校長であるフィアッセさんと仲良しだということ。





「そうですよね、仲良しですよね。ほっぺに・・・ちゅ・・・ですもんね。リインだってしたことないのに」

「そうね、本当に仲良しなのよね。会うなりいきなり嬉しそうにハグだもの。それでほっぺにちゅ・・・だもの。私だってちゅ・・・なんてしたことないのに」






・・・妙なオーラを出している二人は無視する。



それで、僕が今回またイギリスに来ることになったのを知って、それならとコンサートに招待してくれたと・・・話した。





「・・・ね、やすっち」

「こらロッテ、それはダメだ。恭文君やはやて君達が招待されたのは、あくまでも相手側の好意なんだからな。私達が首を突っ込む理由はないだろう」

「でも・・・父様、私が思うに大人が3人増えた所で問題は無いと思うんだよね」

「まぁ、数の上でそうなるな。だが、そういう問題ではないだろう。アリアも自重しなさい。恭文君に無理を言って困らせるくらいなら、私達はコンサートの時間におとなしくCD音源で歌を聴けばいいんだ。それなら問題ないだろう」



な、なんかさり気にプレッシャーかけられてるっ!? というか、なんでグレアムさんまでそこに乗っかるのさっ!! つーか、オーラがめんどくさっ! 何よりオーラがめんどくさいよっ!!

そして三人揃ってそんなにコンサート行きたいんかいっ! なぜにそんなに三人揃って表情暗くするのさっ!!



「・・・なぁバカ弟子、一応フィアッセさんに聞くだけ聞いてみてくれよ」

「え、僕が交渉役っ!?」

「しかたないやろ? アンタしかフィアッセさんと面識あって仲良しな人居ないんやから。まぁ、気分害するようやったら、うちらからも謝るからなんとか頼むわ」

「グレアムさん、リーゼさん、大丈夫です。恭文さんはフィアッセさんと結婚の約束するくらいに仲良しさんですから、きっと何とかしてくれます」

「リインもお願いだからハードル上げないでっ! そしてグレアムさん達もなんで僕を拝むっ!? お願いだからその頼り切るような目はやめてー!!」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・というわけで、大人三人って追加出来ませんかね? 出来ませんよね。出来るわけないですよね。はい、ファイナルアンサーですよね」

『あ、問題ないよ。関係者席なら、まだ空きがあるし』



・・・食事が終わった後、外に出させてもらってフィアッセさんに電話。ちょうど時間が空いてた時だったので、そのまま話をさせてもらった。そうして出てきた返事に、僕は崩れ落ちた。

マジでOK出ちゃったしっ! あぁ、なんか喜んだ顔した三人が目に映ったっ!!



『なにより、そこまでうちのコンサートを見たがってくれている以上、無碍には出来ないよ。恭文くんのお友達の紹介なら、変な人とかでは間違いなくないだろうしね』

「・・・すみません、若干一名変なのがいます」

『そうなの? えっと・・・どんな具合にかな』

「他二名はしっかりとした英国紳士なおじいさんにお姉さんで大人っぽい素敵なレディなんですけど、その一名は・・・猫っぽいです。なんというか、普通に猫っぽいです。あと、僕にセクハラかましてきます」



僕がそう説明すると、フィアッセさんが電話の向こうで笑い出した。・・・あはは、笑い事じゃないのよ? 僕、意外とアレに追い詰められてるから。



『猫っぽいか・・・。コンサートの途中に鳴き出さないなら、問題ないよ。セクハラも、同じように自重してもらえると嬉しいかな』

「なら、本人にそう言っておきます。でも・・・無理言ってすみません」

『ううん、気にしてないよ。むしろお客さん連れてきてくれて、助かったくらい。・・・ね、恭文くん』

「はい?」



・・・あれ、フィアッセさん・・・なんで黙るんだろ。



『なんだか、本当にモテるんだね』

「はいっ!?」

『だって、リインちゃんもそうだし、シャマルさんもそんな感じだった。あと・・・海鳴の様子を見るにすずかとも何かあったよね』



す、するどい・・・。いや、すずかさんはなのはと同じく昔からの知り合いって言ってたから、そのせいだとは思うけど。



『それで、今度はセクハラしてくる猫っぽい人・・・。うーん、私婚約者としてはちょっと考えちゃうよ』

「いや、あの・・・フェイトが本命ですので」

『でも、当のフェイトちゃんは家族的な感じなんだよね。だったら、今から私の事真剣に考えてくれてもいいんだけどなぁ』



・・・泣かない。絶対に、泣かない。なんか突き刺さったけど、泣かないもん。



『ごめん、ちょっといじめ過ぎちゃったね。えっと、それでね・・・』



フィアッセさんがまた黙った。というか、聞こえる呼吸が・・・苦しそう。



『あのね、いきなりなんだけど一つ質問。普通と違うって・・・どう思う?』

「はい?」

『例えば、普通と違うことって・・・あるよね。こういう言い方は差別的な言い方かも知れないけど、障害で知能が遅れていたり、身体に不自由な部分を持っていたり、特殊な病気を持っていたり。
もしくは・・・何かの漫画やアニメみたいな感じだけど、普通とは違う力やそういう部分を持っていたり。そういう部分を親しい人が持ってたら・・・どうする?』



・・・なんだろ、最初のはともかく、後者は色々と・・・だってねぇ?



「うーん、特に気にしないです。その普通じゃない方が、中身まで悪い意味で普通じゃない・・・とかじゃなければ」

『・・・本当?』

「本当です。だって・・・僕だって普通じゃないですし」



そのまま、草むらに座り込んで星を見る。郊外だからか、すごくきれいな星空を。



「僕・・・実は魔法使いなんですよ」

『え?』



受話口から聞こえてきたのは・・・驚く声。だけど、それにかまわず話を続ける。



「あの刀もいわゆる魔法の杖で、銃持ってる連中とも戦えたのも、魔法使いとして戦ってきたおかげ・・・もしも、もしもの話ですけど、僕がそう言ったらどうします?
まぁ、魔法使いは突飛にしても、僕に普通じゃない所があったら・・・フィアッセさん、僕の事嫌いになります?」

『なるわけないよっ!! ・・・なるわけない。魔法使いだったとしても、恭文くんが私の婚約者というのは、変わらないよ?
いっぱいお話して、いっぱい仲良くなったこと、絶対に変わらないから』

「・・・ありがとうございます。僕だって・・・同じですよ」



僕の周りには、普通じゃないことが沢山。だけど・・・変わらない。それでも、みんなの事が大好きで、大切な繋がりだってことは、何にも変わらない。

まぁ、その中でも限りなく一般人に近い身としては、そう思うのですよ。



「仮にフィアッセさんがどこかの妖怪の類だったとしても、変わりませんよ? 結婚の約束は、条件さえ守られれば遠慮なく執行させてもらいたいですし」

『・・・そっか。なら・・・よくはないかな』

「え?」

『女の子に向かって妖怪呼ばわりは無いんじゃないかな? 私・・・ちょっと傷ついた・・・』



あ、あの・・・フィアッセさんっ!? お願いですから電話越しにシクシク泣くのはやめてー! な、なんというか・・・ごめんなさいっ!!



『なら・・・イギリスに居る間に洗いっこだね』

「だからなんでそうなるっ!?」

『婚約者として当然だよ。それに、リインちゃん達に負けないようにするためにはこれしかないんだから』



いや、いったいどんな理屈っ!? あぁ、なんで僕の周りはこんな人ばかりなんだよっ! 絶対おかしいからっ!!



『おかしくないよ。・・・あ、でもね』

「はい」

『一度、コンサートの前に会えないかな。どうしてもね・・・ちゃんと、話しておきたいことがあるから。というより、話したくなった』

「・・・はい」










そのまま、電話を終えた。チケットの事へのお礼を重々に言葉にして伝えたうえで。

でも・・・話したいことってなんだろう。フィアッセさん、すごく真剣な声だったけど・・・。





まぁ、そこはいいか。とりあえず・・・次だ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『・・・そっか、それは大変だったね』



今日一日に起きた事をフェイトに報告。時差で考えると・・・向こうは朝な感じかな。なんとか大丈夫な時間帯。

うーん、でも報告じゃないかな。なんというか・・・まぁ、コミュニケーション? こういう地道な行動がフラグ成立に結びつくのよ。



「うん、大変だった。でもさ・・・まさかグレアムさん達があそこまでスクールの歌のファンだとは思わなかったよ。すごい勢いだったし、はやて達も知らなかったのかびっくりしてたもの」

『スクールはイギリスが本拠地だし・・・そういうのもあるのかも知れないよ? スクールの活動は世界的にも有名だから』

「なるほど・・・」

『でも、よかったね』



・・・なにが? というか、なんでそんなに嬉しそうなのさ。



『フィアッセさんにまた会えて』

「ま、まぁ・・・それはね。あとね・・・」

『うん?』

「フィアッセさんに魔法使いでしたーって言っちゃった」



瞬間、フェイトの絶叫が響いた。あー、耳が痛い。いきなり叫ばないで欲しいよ。色々辛いからさ。



『あ、あの・・・ヤスフミっ!? それだと次元世界のことや管理局のことや・・・』

「あー、そこは大丈夫。・・・実はさ、フィアッセさんに聞かれたのよ。『普通とは違うものや人について、どう思う?』・・・って。だから、逆に聞き返したの。もし僕が魔法使いとかだったりしたら、フィアッセさんは僕のこと嫌ったりしますかーって」

『そ、そうだったんだ・・・。というか、それならそういう紛らわしい言い方しないでっ! 私びっくりしちゃったよっ!!』

「にゃはは・・・ごめんごめん。ついからかいたくなって」

『からかわないでっ!!』



・・・いーじゃん、少しくらい・・・いじめたってさ。そういうのも必要なのよ。



「それでね・・・」

『うん』

「なんにも変わらないって・・・言ってくれた。それがなんか、嬉しかった」

『そうなんだ。・・・ね、ヤスフミ。もしかして、その時魔法の事とか、魔法に初めて会った時のこととか・・・本当に話したいって思った?』



フェイトが優しく・・・本当に優しい声で、僕に聞いて来た。

なので、僕は少しだけ考えてから・・・返事を返した。



「・・・うん」

『・・・・・・そっか』

「多分・・・フィアッセさんはともかく、エリスさん辺りは疑問に思ってるだろうしね。僕が戦闘に慣れてる所・・・とか、気にはしてるんじゃないかな。
これ、恭也さんに教えてもらったんだけど、一緒に居る時に恭也さんや美由希さんにそれとなく聞いてきたらしいんだよ。僕の出自のあれこれ・・・とかさ」



だから、あんなことを聞いたんじゃないかとちょっとだけ思った。でも・・・話せなかった。びっくりさせちゃうのと、距離を取られると考えたら、怖くて・・・話せなかった。



『だったら、いつかは話さなくちゃいけない・・・かもね』

「そう思う。まぁ、大丈夫だと思うけどね。フィアッセさんとはすごく仲良しなんだから。・・・ね、フェイト」

『なに?』

「もし・・・もしだよ? 僕とフェイトの出会い方が違って、最初の時の事とか全然知らなくて」



うん、それで・・・。



「僕が・・・人を殺したって知ったら、やっぱり、怖いよね」

『・・・ヤスフミ』



少しだけ、沈黙が襲った。僕は首を横に振って、心を支配していた暗い物を振り払う。

それから、さっきまでとは違う明るい声で、端末の向こうのフェイトに話しかける。



「ごめん、変な事聞いた。忘れて」

『怖がらないよ』



・・・え?



『だって私、ちゃんとヤスフミのこと知ってるもの。まぁ・・・知らなかったらいろいろびっくりするだろうけど、それでも、絶対に怖がったりしない』

「ほんと・・・に?」

『うん。・・・ヤスフミだって、同じだよね。私が・・・クローンだって知っても、変わらなかった。友達で、仲間のままだった。それと同じだよ。誰がなんて言ったって、絶対に・・・同じ。フィアッセさんだって、きっとそうだよ』



その言葉が嬉しかった。言われた瞬間に、心に暖かいもので満たされるのが分かった。



「フェイト・・・あの、ありがと」

『ううん。だから・・・不安になったりしなくて、大丈夫だよ?』

「・・・うん」



優しく・・・暖かい声でそう言ってくれた。それがホントに嬉しかった。

フィアッセさんも、同じだと嬉しいかな。うん、うれしい。



『・・・・・・あ、ごめん。ちょっと仕事の連絡入っちゃった』

「ううん、大丈夫。こっちこそ長話しちゃってごめんね」



僕がそう言うと、フェイトが『大丈夫だよ。むしろ、お話出来て嬉しかった』といつもの穏やかな声で返してくれた。それもまた嬉しかったり。

うぅ、やっぱり僕・・・フェイトが好きみたい。話してると、ドキドキするから。・・・ただ、気になった。



「それじゃあ、フェイト。仕事頑張ってね」

『うん。ヤスフミ・・・気をつけてね』

「・・・うん」





そう言って声だけの通信を終えた。終えた途端に妙な違和感を感じた。



それが何だろうと考えて見る。そして・・・思い当たった。さっきの・・・『うん。ヤスフミ・・・気をつけてね』・・・なんだ。



この時のフェイトの言葉に、少し妙なものを感じた。海外でいつもと違うから・・・という意味合いに受け取ったんだけど、なんか・・・こう、それだけじゃないような・・・うーん、なんだろう。



その違和感が何かどうしても分からなくて、それについて考えながら草むらから立ち上がる。そして、見る。グレアムさんの家の近くにある森を。





≪・・・どうしました?≫

「アルト、念のためにサーチで常時この近辺の状態探っておいて。あと、グレアムさん達やはやての行動や状態も。それで、妙だと思う所があったら教えて。ただし、他のみんなには絶対に気づかれないように」

≪いや、それは構いませんけど・・・またいきなりなんでそんな話に?≫



自分でも分からない。ただ、こう・・・嫌な予感がする。用心だけはしておきたいと思った。



「とにかく、お願い」

≪わかりました。まぁ、何が気になってるかは知りませんけど・・・杞憂で済む事を祈りますよ≫










うん、そう思う。心から思うよ。





この胸の中に広がった小さな不安が、単なる気のせいでありますようにってさ。




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



・・・はやて君達がうちに来てから3日が経った。時間はまだ朝靄が消えない早朝。私は家の近くの森に来ていた。





いつもの散歩・・・というより、ロードワークのコース。普段ならリーゼ達も付き添うのだが、今日は一人。





なぜなら、いつもより少しだけ早い時間に外を出たからだ。これは早朝というより・・・夜明け前だな。





それでも、いつも歩いている道。この年でもなにかにつまづくようなこともない。そんなちょっとした事が嬉しかったりするが、もしかしたら、老いた故の喜びかも知れんな。





まぁ、そこはいい。問題は・・・そんな朝の心地よい空気をぶち壊しにしようとする輩が居ることだ。










「・・・そろそろ出てきてはどうかね」



足を止め、私は声を上げる。叫んでいるわけではない。だが、それでも森に声が響く。



「せっかく話が出来るようにと一人で来たんだ。・・・早くしたまえ。私はさほど気が長い方ではない」



私がそう言うと、それは気の影からようやく出てきた。身長にして180ほどの男。その身には・・・本局の制服? なるほど、やはりクロノから聞いたとおりというわけか。



「お初にお目にかかります、ギル・グレアム提督」



敬礼などつけてきた。一応の礼儀は心得ているということだろう。

ただ・・・一つ間違っている。



「・・・元、だ。君一人だけかね」

「はい。実はいきなりではありますが、あなたにお願いがあります」

「八神はやて君と守護騎士の面々を渡せ・・・。もしくは、彼らに対してこれから自分達が行う行動を黙認しろ・・・というのであれば、答えはノーだ」



私がそれだけ言うと、男がため息を吐いた。それが妙に癪に障る。・・・いかんいかん、これも年ゆえか?



「グレアム提督、なぜあれらを庇うのですか」

「彼らは家の客人。それを守るのに理由が要るとでも?」

「ですが、提督もあれらが何をしたかご存知のはずです」



そうだな、よく知っているよ。数年前の私は、今の君と同じ感情を抱いていたのだからな。

はやて君は何も言わないが、今の局にはその時の私と同じ感情を抱いてる人間が大勢居るはずだ。怒り・・・恐れ・・・嫌う人間がな。



「あれらを恨む被害者は多い。提督、あなたもその一人のはずです。あなたの部下、クライド・ハラオウンはあれらが原因で殉職。そして、あなた自身もそのために職を追われた」

「そうだ。だが、一つ改めたまえ。職を追われたのは・・・誰のせいでもない、私自身の責任だ。決して彼らのせいではない」

「否っ!!」



声が上がる。それが森に響く。怒りと、やるせなさと・・・彼らに対する憎悪が混じった声が。



「あれらは我らが局に様々な形で傷を残した害悪っ! それが・・・正義を貫こうとした提督が職を追われ、奴らは入れ替わるようにのうのうと局員として平和に生活っ!? そんな真似が許されるわけがないっ!!」



男の表情が歪む。声に含まれていた様々な黒い感情が顔の皮膚の下でうごめき、鬼のような表情を形作る。

それを見て、私は少しだけ思った。もしかしたら・・・あの時の私もこんな、見れたものではない悲しい表情をしていたのではないかと、ほんの少しだけ。



「奴らはその責を払わなければならないっ! 我らが味わった苦痛を、痛みを、何倍にもしてその魂に刻まなければ、被害者と遺族は浮かばれないっ!!
そうだっ! これは・・・正義だっ!! 奴らを潰す事、これこそが正義っ! 決して奴らを許してはならないっ!!」

「・・・だから、はやて君達を殺すと?」

「殺す? ・・・ふふ、ぬるい事を言いますね。提督、ご存知ですか? 世の中には殺されるよりもずっと辛い地獄というのがあるんですよ。奴らには・・・それを味合わせる」



・・・なるほど、これでは交渉は無理だな。少なくとも目の前の彼の頭の中にはもうはやて君と守護騎士の皆に対する復讐しか頭にない。

そして、完全にそれを正当化している。自分達を何かのヒーローのようにも思っているのかも知れない。



「・・・ということだが、どうする?」

「・・・提督?」

「今のところ君は全く事情を知らない。関わる理由が無いと私は判断するが」



私は声をかける。ただしそれは・・・目の前の彼ではない。

その瞬間、斬撃・・・否、打撃が生まれた。銀色の刃の峰、目の前の男の背中目掛けて打ち込まれる。そのまま、男はうめき声をあげ崩れ落ちた。



「・・・あー、そりゃ無理です。どう聞いても胸糞悪いことしか想像できないようなこと言うし。事情はともかく、人の友達にんな馬鹿な手を出そうなんざ、中々ナメてやがる」

≪あの人は、私の友人でもあるんですよ。事情はともかく・・・邪魔させていただきます≫



出てきたのは、右手に刀を持った小さな少年。・・・私の家の客人の一人だ。



「しかし、人の後をつけるとは趣味が良くないな。・・・いつから気づいていたのかね?」

「すみません。・・・実は、しばらくグレアムさん達の行動をアルトのサーチで把握させてもらってました。あと、この周辺も出来る限り」

≪この人、初日の夜に妙な感じがするからって言って、ずーっと私に働かせてたんですよ。いや、気づかれないように見張るのは大変でしたよ≫



なるほど、理由はともかく異変に気づいていたと。中々に勘の鋭い子らしい。

さすがはあの方が見込んで弟子にした三人目の人間だ。どういう道を行くにしても、将来有望だな、これは。



「あぐ・・・き、貴様・・・」

「動くのは止めといた方がいいよ? 内部打撃で内臓器官がボロボロのはずだから。あぁ、それと・・・」



彼は懐から分厚い布を取り出すと、それを男の口に無理矢理押し込んだ。



≪舌を噛まれても困りますので、口は塞がせてもらいます。あ、マスター≫

「ほい」



彼は、刃を何の躊躇いもなく男の腕に突き立てた。



「ぐうぅぅぅぅぅっ!!」



一回ではない。うめく男の両手足に向けて四回。それから、男の頭を左手で鷲掴みにして、顔を見据える。



「一応言っておく。・・・抵抗するなら、殺す。魔力弾生成しても殺す。もちろん、ちょっとでも魔法を使おうって気配があっても殺す。念話しても殺す。通信しても殺す。さ、どうする?」



私はそれを見て非常に驚いた。彼は男の両手足の健を切った。最小限に小さく、死なない程度の傷をつけ、動けないようにした。そして、まさかここまで徹底した脅迫をするとは。

確かにこれは一般的な魔導師とは違うな。普通はここまで痛めつけようとはしない。・・・いや、それは違うか。恐らくはあの方なら同じ事をする。間違いなく。やはり、彼の魂は・・・鉄か。



「あー、そんな怯えた目をしなくていいから。何もしなければ、僕だって鬼じゃないんだからそんなことしないって。ただし・・・お前、もしなんかしたら、さっき自分が言った目に遭うぞ。いいな」

≪・・・さて、グレアムさん。これはどういうことですか?≫

「簡単な話だよ。・・・どうやら、はやて君達は狙われているらしい」




















◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「・・・つーわけで、しばらくここでじっとしてろ。大丈夫、事件解決まで放置し続けるだけだから」





などと言って、グレアムさん所有の納屋に男を放り込んでから、僕達は戻ることにした。なお、簡単には見つからないようにグレアムさんと一緒に色々処置をした上で。



あー、でも・・・朝焼けが綺麗だねぇ。あんな馬鹿に付き合わなかったら、もっと気分いいのに。





「・・・で、どうしてはやてがあのサイコ発言かますような奴に狙われるんですか。あれ、ヘタしたらR18ですよ? ぶっちぎりで色んな規定にひっかかりますって」

「そうだね。しかし、そこには理由がある。ある部分では、当然とも言える理由だ」



当然・・・ね。まぁ、話を聞かないとどうしようもないかな、これは。



「・・・確か君は、はやて君が魔導師になったきっかけは知らないんだったね」

「はい」



まぁ、リインのお姉さん絡みでなんやかんやあった・・・ということくらいしか。



「なら、私から全てを話してもいいが・・・どうする?」

「いや、いいです。それって・・・はやてや師匠達にとっては重いことですよね?」

「そうだね、かなり重い事だと思う」

「なら、みんなから直接聞きます。これ、前にアルトやロッテさんにも言ったんですけど、グレアムさんもそうだし、他の人から聞くのは・・・ちょこっとルール違反でしょ」



僕がそう言うと、なぜグレアムさんが優しい表情で笑い出した。・・・えっと、なんで?



「あぁ、気にしないでくれ。はやて君から聞いていた通りだと思ってね」

「そうですか?」

「そうなんだよ。・・・それなら、簡潔に話すが、はやて君が魔導師になったのは、あるロストロギアが原因なんだ」



・・・・・・ロストロギア? いや、あの・・・僕、聞かないって言ったのに、なんで話すんですか。



「これは必要なことだからだ。賊は恐らくこちらの動揺を狙った上で、この部分を突いて来る。もちろん、君の意思を汲んで全部は話さない。だが、君も大体の事情を知って、心構えをして欲しい」



妙に真剣な顔のグレアムさんの言葉に、僕は頷いた。なんか・・・色々あるんだろうと納得した上で。



「それで、話を続けるが・・・はやて君は物心付いてから9歳になるまで数年、それがロストロギアだとは知らずに所有し続けた。そして、はやて君の膨大な魔力やレアスキルはそのロストロギアから受け継いだものなんだ。
ただ、問題があってな・・・。アルトアイゼン、君は知っているだろうが、そのロストロギアが原因で、長年局は甚大な被害をこうむってきた」

≪・・・そうですね。被害は施設や物資だけでなく、局員にも及びました。つまり・・・人も大勢亡くなったんです。それも、数年間隔で何度も≫

「え、ちょっと待って。ロストロギア被害は分かるけど、それが数年間隔で何度もってどういうこと? しかも長年って・・・」

≪そのロストロギアには、転生機能というものがあったんです。所有者が何らかの原因で死亡した場合、ランダムに別の適合者を捜索して、見つかればそれを新しい主とし、その人間の元へと転生する。その上、それ自体にも強力な再生能力が付与されていました。
なので、破壊も不可能。そのせいで局は長年・・・管理局の設立当初からですね。はやてさんが産まれるずっと前から、そのロストロギアが問題を起こしたら主をどうにかして止めて・・・という形でしか対処できなかったんです≫



そ、そんな物騒なデビルガンダムもどきが存在してたんかい。恐ろしいな次元世界。

でも、これでわかった。はやてのところにそのロストロギアがあったのは、その転生機能のせい・・・と。局ではそのロストロギアの問題を抜本的に解決する方法が今まで取れなかった。



≪そうです。ですが、高町教導官、フェイトさんが事件に関わって対処することで、そのロストロギアは消滅したんです。はやてさんの中に、その力を残した上で≫



そうだったんだ・・・。つか、そんな物騒なもんを壊せたんかい。やっぱり連中おかし過ぎるぞ。色んなモンぶっちぎってるって。あ、でもこれでまたまたなんか読めてきたぞ。

あのおっちゃんははやてに強い恨みを抱いているようだった。つまり・・・そのロストロギアが原因で起きた事件や災害の被害者? もしくは、その関係者。だから、そのロストロギア・・・引いてはそんな事態を引き起こした所有者を恨んでいる。



「そうだ。だが、先ほども君のパートナーが話したように、そのロストロギア自体は既に消滅している。はやて君より前の所有者も、全員既に亡くなっている。だから・・・」

「その力を受け継いだ・・・一番最後の所有者となったはやてを狙った。・・・なんですか、それ。はやては全く問題ないじゃないですか。はやては直接的にそれを使って、自分から破壊活動とかはしてないんですよね?」

「それはもちろんだ、あの子はそんな子ではない。むしろ、ロストロギアの事を知った時は危険性を誰よりも把握して、自分が生きている間・・・所有者でいる間だけでも、使うのをやめようとしたくらいだ。
実際、事件解決にはあの子の力が必要不可欠だった。だが・・・はやて君自身はそうは思ってない部分もある。少々事情込みだが、自分がもう少し異変に早く気づけば・・・と責めてさえいる」



・・・あの狸、無駄に責任感あるしね。もうちょい楽に生きられないもんか。



「恐らく、君には言われたくないと思うが」

「なんでですか。僕は人生楽に生きたい生きたいと思い続けてますけど」

「だが、君はそれとは真逆の道を歩いている。・・・犯した罪を下ろさず、忘れず、そのまま進むという道をな。はやて君もきっと同じだ」



歩道を歩きながら、そう言ってきたグレアムさんの言葉に、僕は何にも返せなかった。まぁ・・・それを言われたらなぁ。



「僕はあの狸ほど立派な思考はしてませんよ。・・・必要なら、またやるでしょうし」

「怖くはないのかね」

「怖いですよ。殺しなんて、絶対にしたくない。でも・・・だからってなにも守れないのも、嫌なんです。なんか、馬鹿ですよね。普通に非殺傷設定使ってればいいのに」



アレ、本当に便利だもの。色々利用価値もあるしさ。・・・ま、いいか。今更それを言ったって始まらない。僕はもう・・・決めたんだから。

そういう戦い方も出来るようになるって。全部背負って、全部忘れずに、下ろさずに進むってさ。だけど、らしさも忘れずに。また負けるの嫌だしねー。



「・・・とにかく、話は分かりました。でも、これからどうするんですか? これで交渉は決裂。相手はきっと実力行使で来ます」

「そうだね。そこで実は、気になっている事がある」



・・・実は、僕も。多分グレアムさんが今思っていることと同じだ。



「なぜこのタイミングで賊が手を出そうとしてきたか・・・だ」

「さっき少し話を聞いちゃったんですけど、グレアムさんもその・・・ロストロギアの被害者なんですよね」

「そうだ。・・・確かに、そんな私の元に居るなら、引き渡してくれる可能性があると考えるのが妥当だろう。だが、それだけでは足りない」

「分かってます。多分ですけど・・・手札にあるんですよね」



元は優秀な魔導師らしいグレアムさんに、リーゼさん達。そして現役の局の魔導師であるはやてに師匠達。そんなトップクラスメンバーを相手にしてもなお、勝てるだけの手札が。

だから、このタイミングで襲ってきた。・・・あー、なんつうかまた面倒な事に。僕、ぶっちぎりで邪魔じゃないの?



「・・・とりあえず、様子を見てみるとしよう。恭文君、まだはやて君達には黙っててもらえないか?」

「いや、それはいいですけど・・・どうしてですか」

「はやて君のことだ。この事を知ったら、すぐにイギリスから出立しようとするだろう。私やリーゼ達に迷惑をかけないために。そして、自分だけで対処しようとする。恐らく、守護騎士メンバーも同様だ」



・・・なるほど、言いたい事は分かった。



「つまり・・・巻き込まれてやろうと。もし相手が本気でこっちをどうにか出来る手札を保有していた場合に備えて、今は一緒に居た方がいい」



なお、はやてを説得とか考える方もいるだろう。では逆に聞きたい。・・・あのタヌキが説得されると思う? しかも師匠やシグナムさん達も一緒に。僕の経験から言わせてもらうなら・・・答えはノーだ。

自分達はチーム戦なら最強で無敵だからとか言って、絶対に自分達だけで決着をつけようとするに決まってる。いつもの状況ならともかく、今回はそれはまずい。



「そういうことだ。私の家を襲撃してくれれば、それで戦闘参加の理由付けも可能だ。問題はない。まぁ、はやて君達から決して離れないのが条件だがね」

「納得です」










こうして、またまた事件に巻き込まれる事になった。それもまたまた思いっきり部外者な感じ。





ま、いいか。はやては大事な友達だもの。手ぇ出すってなら・・・潰すだけだ。





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あきゅろす。
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